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工業用ミ シン機構に関する動力学的研究

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工業用ミ シン機構に関する動力学的研究
工業用ミシン機構に関する勅力学的研究
平成元年5月
-J
た、
∧☆/
04 700(
村 松 直 樹
目
l欠
第1章 序 論
●●
1
1
1
1 緒 言
1
2 工業用ミ
1
3 従来の研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥●●4●●●●●t●●●●●●●●嫌雛●●楠●●嚇馨●●樋●緬
1
4 本研究の目的と論文の構成 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
●●
ウ一″ £り
7
Qf O/
第2章 天ぴん・針棒機構の動力学的研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2.1 緒 言 ‥‥
2.2 力学的モデルと運勤方程式 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
9
2.3 ミシン本休に作用する加振力 ‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
11
4 5
2 2
肇 瞭
12
12
5.1 実験装置と実験方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
12
2
5.2 実験結果 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
14
2
6 構成部材の軽量化によるミシンの低振動化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
17
6.1 構成部材の軽量化の効果 ‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥
17
6.2 低振動ミシンの実用化 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
22
2 2
2
2
7 結 言
●●章●
第3章 送り機構の動力学的研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
24
31
31
緒 言
3
1
3
2 力学的モデルと運動方程式 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
31
3
3 水平と上下送り機槽の構成部材に生じる力 ‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥
34
3
4 構成部材に生じる力の検出 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥
35
3
4.1 構成部材へのひずみゲージの貼付状況 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
35
3
4.2 実験装置と実験方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
35
3
4.3
38
3
5 水平と上下送り機楕の構成部材に生じる力の発生機構 ‥‥‥‥‥
41
3
6 二又ロッドしゆう動部のpv倣 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・・‥…・
45
-I
7 送り調節機構に作用する力と送り量の安定保持機能の評値 ‥…
にノ 0
‘4 ・'り
3
3.8 結 言
第4章 押さえ機構を含む送り機構の勤力学的研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
51
4.1 緒 言 ‥‥‥
51
4.2.力学的モデルと運勤方程式 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
51
4.3 押さえの押圧力と上軸のトルク ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
55
4
4 押さえの押圧力と上軸のトルクの検出 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
56
4
4.1 実験装置と実験方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
56
4
4.2
56
4
5 押さえの押圧力と上軸のトルクの発生機構 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
58
4
6
押さえの押圧力におよぼす構成因子の影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
61
4
7 押さえ機構振動系におよぽす縫製物の影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
68
4
8 結 言 ‥‥‥‥‥
72
第5傘 押さえ機構の追捉性 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥
73
73
緒 言
5
1
5
2 押さえの運動の検出 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
73
5
3 押さえの運動の発生機構 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
5
4 押さえの追捉性におよぼす構成因子の影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
5
5 結 言
'4 n5
7・ 71
2
・7 {一5
8 Ry
Q/ Q'
第6章 針の貫逓力や上糸の引締め張力による上軸の動的応答 ‥‥‥‥‥‥
6.1 緒 言
●●●●●●●●・●参参膝●●瞼●t噸●●導●●秘●●t蓼●●喩●●●●●●●●●●●嗇●参●
善●,
6.5 数俵計算法と上軸のトルク ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
4・ rつ
○/ Q'
6.4 針の貫通力や上糸の引締め張力の導入 ‥‥‥‥‥‥‥‥・‥‥‥‥
Q″ 0
6.3 力学的モデルと運動方程式 ‥‥‥‥・‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
Ry Q″
6.2 配 号
R` 7ー
2 2
実験装置と実験方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
5 5
1
73
6.6 針の貫通力や上糸の引締め張力作動時に上輪に生じる
96
-U-
6.1
6
6.2 実験方法 ‥奉参●●噛●●嚇●糖奉●●●●t●●馨●粂●参毎●●・喩●1‘毎●it峻4岫●嚇●●●希
6
6.3
q″ 0/
/り /り
6
98
6.7 針の貫逢力が上軸のトルクにおよぽす影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
102
6.8 上糸の引締め張力が上軸のトルクにおよぼす影響 ‥‥‥・・‥‥‥
107
6.9 押さえの押圧力が上軸のトルクにおよぽす影響 ‥‥‥‥‥‥‥‥
i10
6.10 天ぴん・針棒機構と送り機構運勤系の上軸のねじり剛性に
HO
6.H 結 言
114
第7章 自動糸切り機構の動力学的研究 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
7.1 緒 言
摯●楯●●讐希●●●●傭
●●●●●
t●●●●●●●奉●●暴●馨●蕃●●●希●●泰●
115
●●●●●
H5
7.2 記 号
115
7.3 糸切り機構と糸の切断厘理 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
H6
7
4 力学的モデルと運勤方程式 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
120
7
5
121
7
6
121
実験装置と実験方法 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
121
2
125
7
糸切り機構の作動により発生する力の検討 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
127
1
カムに作用する外力 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
127
下軸のトルクの発生機構 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
130
7
2 3
7 7
7 7
7 7
6 6
7 7
1
7
7
4 実機の設計公式に対する考え方 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
7
8 結 言 ‥‥‥‥
133
133
135
第8章 結 論 ‥
136
139
謝 辞
●●●●・俵
m
142
1夥1j傘
庁:
謳l
1.1 緒 言
本縫いミシンの原形は1846年にアメリカ人Eoas H owe により発明された。その
後。1851年にアメリカ人A 1 1an B 。 Wilsonにより回転釜が発明され,本縫いミシ
ンの基礎が確立されたといわれている。またわが国への初渡来は,中浜万次郎により
アメリカから持ち帰られた1860年だとされている1≒発明以来,150年近《経過する
が,ミシンは現在でも世界中で使用されているきわめて歴史の長い機械の一つである。
しかし工業用ミシンに限れぱその歴史は比較的浅く,1934年にアメリカのシンガー社
により作られた高速本縫いミシンが最初とされている。そして工業用ミシン産業はわ
が国でも戦後急遠に発達し,いまや工業用ミシンの生産は台数比で世界のご70%を占
めるに至った。
シンガー社製品の模倣から始まったわが国の工業用ミシンの発達を技術史的にみれ
ぱ,1950年代からの喬速化,1960年代からの省力化,1970年代からの自動化,さらに
は1980年代からのシステム化と特徴づけることができる.高速化ミシンについては,
たとえぱ1本針<本縫いミシンの場合,現在の最高回転数は5000
6000 rplに達し
ており,もはや作業者の縫製能力の限界にぎている.省力化ミシンの代表例は自動糸
切り装置付きミシンであり,現在わが国の本縫いミシンにおける白動糸切り化の割合
は40%に至ったという見方もある。またそれまで手注しであった給油方式が自動化
されたことも省力化に貢献した.この給油方式ぱミシンの高速化の面からも必要であ
った.自動化ミシンの代表例は電子パターン縫いミシンであり,入力プログラムによ
り縫製物がχ-y平面上をステッピングモータで駆勤される。システム化ミシンの代
表例ぱ自動縫製ラインであり,そこではミシンぱ縫製加工工程の一部として使われる,
このような発達の反面,副作用の影響も大き《,機械面ではとくに高速化や省力化
にともなう振動,騒音,軸受しゅう動部からの油の漏洩の問題は重大であり,本質的
な対応策が切望されている。このような要望は,見方を変えれぱ操作性からくる快適
さへの要求であり,低振動化,低騒音化,無給油化などの達成は大きなセールスポイ
ントに成り得る。しかし高速で低振動,低騒音。しかも縫製物を決して汚さないため
の無給油ミシンの團発などは,課題そのものが二律背反の関係にあり設計条件として
は高度である。このため従来の経験技能の延長線上でこれらの問題に対応することは
困難になってきている。工業用ミシンに組込まれる機構を動力学的に解析し,構成部
1
材に対する負荷条件を定量的に把握した上で適切な強度設計をしていく必要がある。
しかし長い歴史のわりには,実用のミシン機槽についての動力学的な研究はこれまで
ほとんどみられない。そこで本論文は工業用ミシンの主要機構について動力学的な研
究を行ったものである。本研究では,実際に用いちれているミシン機構を動力学的に
理論解析し,その解析結果の妥当性はすべて実験により検証してある。
この第1章では,本研究の意義を明確にするために,まず工業用ミシンの構造につ
いて説明する。その上で従来の研究を分析し,この結果と関連づけて本研究の目的と
論文の楕成について述べる。
1.2 工業用ミシンの構造
工業用ミシンの楕造を見取図で図1.1に,またその主要機構を図1.2に示す。こ
こではこれらの図を対応させながら,工業用ミシンの構造について説明する。
ミシン機構は,動力学的観点からみるとき,天ぴん・針棒機構と送り機構に大別で
きる。前者は釜機構とともに縫製物に縫い目を形成する機構であり,後者は押さえ機
楕とともに縫製物を送る機構である。なおここで使用する部a記号は各章を通して共
通である。
(1)天ぴん・針棒機楕
天ぴん・針棒機楕は天ぴん・クランク機構と針棒・クランク機構の複合機構から成
る。天ぴん・クランク機楕は,天ぴんクランク①(thread take-up crank〉,天ぴん
②(thread take-up lever),そして天ぴんささえ③(thread take-up lever l ink)
から成り,4節リンク機楕を楕成している。天ぴんの先端には糸穴⑥(thread eyelet}
が設けられている。一方,針棒・クランク機構は,針棒クランク④(needle bar
crank),針棒クランクロッド⑤(needle bar connectiTlg Hnk),そして針棒⑥
(needle bar)から成り,スライダ・クランク機楕を楕成している.針棒クランクロ
ッドと針棒は,針棒に固定された針棒抱き㈲(needle bar eonneeting stud)のピン
を介して連結されている。ピンによる連結はその他の回り対遇部についても同様であ
る。針棒は二つのすべり軸受⑧,⑤(sl ide bearing )でアーム⑥(arl)にしゅう齢
(直進)支持されており,下端には針がねじで装着される。.なお天ぴんクランクと針
棒クランクは所定の{立梱鞠を有する一倖物であり,上軸◎くarl shaft)に固定され
ている。また上軸は三つのすべり軸受○,④,⑥でアームに回転支持されており,は
ずみ車⑧(balance wheel)とVベルトを介して電動機に連動されている。
2
図1.1
工業用ミシンの構造
3
①;天びんクランク,②;天ぴん,③;天びんささえ,④;針棒
クランク,G) 針棒クランクロッド,⑥;針棒,⑦;水平送り軸
送りリンク,⑩;送りカムスリープ,⑩;
⑧;二又ロツ
上下送り軸,⑩;リンク,⑩;送り台,⑩
クランクロッ
- /へ , 。。a。 t-4-奮
⑨⑩
ド ド
y ー
;押さえ棒,
⑤⑧
一参
図L2
軸 '
下え
⑩挿⑨①
;4C
⑤;アーム. ⑧;はずみ車,○,⑩;送りカム,⑥;糸穴,⑥;
送り調節器,⑩;釜,①:縫い目加減腕,③;コイ
送り歯
送り目盛板パD:送り調節レバー、⑩:押さえぱね,
ルばね
◎;上軸,⑩:針棒抱き,◎;押さえ調節ねじ,⑧
⑧:送り調節ねレ①;針板,⑨;立軸,
⑩ すべり軸受(直進〉,○,④,○;すべり軸愛(回t)
⑧ 傘歯軋⑥;すべり軸受(直進〉
工業用ミシンの主要機楕
4
(2)送り機楕
送り機構は,水平送り機構,上下送り機構,布送り機構,そして調節機構から成る。
水平送り機構は,水平送り軸⑦(feed rock shaft),二又ロッド⑧(feed forked
connection),そして送りリンク⑨(feed coneeting link〉から成り,4節リンク
機構を構成している.二又ロッドの二つの腕は送りカムスリープ⑩(feed and
feed lifting eccentric sleevO と送りカム◎(feed and feed lifting eccentrie〉
を介して上軸◎に連艶されている。上下送り機槙は,送りカム⑩,クランクロッド⑩
(feed l i fting rock shaft conneding rod ) ,そして上下送り翰({〕X)(
roek shaft)から成り,4節リンク機構を槙成している。なお送りカム◎と送り力
ム⑩は所定の{立相角を有する一泳の円筒カムで,上翰に固tされている.また水平,
上下送り軸はそれぞれ二つのすべり軸受でミシン本休に回転支持されており,それぞ
れの両端部には腕が固定されている。布送り機構は,リンク⑩(link〉,送り台4〕4)
(feed bar),そして水平送り軸と上下送り軸の腕から成り,5鯵リンク機構を構成
している。送り台上には送り歯⑥(feed dog)が固定されており,この送り歯には針
板①(throat r・1ate)を介して押さえ機構が対向している。
調節機構は,送り調節器⑥(feed regulator〉,縫い目加滅腕①(reverse sewing
crank),コイルぱね(J)(coil spring),送り調節レバー⑩(feed reverse lever),
そして送り調節ねじ⑧(feed regulating stud)から成り。水平送り機構の送りリン
ク⑨に連動されている。このため送り目盛板⑩(feed regulating stud head)を回
転することにより,送り調節器の回転位置と送りリンクの支点位置が決まり,送り量
(縫い目長さ)は任意に選定される。また送り調節レバーを下方に操作することによ
り,クランクロッド(U)に対する二又ロッド⑧の位相が反転し,布送り方向は前進から
後進に変わる。
(3)その他の機構
押さえ機構は縫製物に所定の押圧カを負荷する機楕であり,押さえ棒⑩(presser
bar),押さえぱね⑩(presser bar spring),押さえ(R)(presser foot)などから
成る。押さえ棒は一つのすべり軸受⑥でアーム⑥にしゅう動(腹進)支持されており,
押さえ棒抱き(presser bar guide bracket)や糸取調節板(slack thread regulator)
とともに押さえ機楕可動部を構成している。
釜機構は下糸を格納し,この下糸に上糸を交絡させる機構であり,蓬⑧(hook),
5
下軸⑧(hook shaft),そして立軸⑨(vertical shaft)から成る.下軸は二組の傘
歯車①と面(bevel gear)を介して立軸と上軸◎に連艶されている.下軸の回転数は
上軸のそれの2倍になるように歯数比が定められている.
(4)ミシン機構の動作
篭動機により上軸◎が回転駆艶されると,糸穴⑧は天ぴん②の4節リンク機構の運
動により,針は針棒⑥のスライダ・クランク機構の運勤により,それぞれ上下方向に
揺動回転運動と並進運動する.同時に,釜機楕は上軸の2倍の角速度で回転する。そ
して針に導かれた上糸は外釜に捕捉され,内釜⑧の外周を回る。この結果,上糸は下
糸と交絡する。このとき上糸は天ぴんにより適度に引締められ,縫い目が構成される。
なお上,下糸の初期張力は,それぞれの調節器により,あらかじめ適当な大きさに設
定される。一般的に上糸の初期張力は下糸のそれの2
5倍である。
一一方,二又ロッド⑧とクランクロッド(印ま送りカム◎と⑩の回転により,それぞれ
ロッド方向に運動する このため送り台⑩こは水平と上下方向の合成運動から成る楕
円状の連鸚が楕成される.そして送り歯⑥が針板①面上に突出時,押さえ機構に押圧
された縫製物は送り歯の摩擦力により所定の縫い目長さ分だけ送られる。
以上の運動は,通常,1000
4000 rpmの高速で行なわれる。この結果,ミシン機構
の各部には慣性力に基づく大きな力が発生し,振動や騒音を誘起する。またとくに高
遠運転時には,押さえ⑥のジャンピングや送り量の増大現象,さらにはしゅう動部の
焼付き現象などの発生する可能性がある。
焼付き現象に対しては,ミシン底部油槽内の潤滑油がポンプにより強制給油される。
すなわちパイプや中空軸内に導かれた油は,直接あるいは浸潤した紐を介して軸受部
に供給される。しかし給油がなされれぱなされるほど,ミシンにとっては重大問題と
なる油の漏洩に発展する可能性がある.
1.3 従来の研究
ミシンの発達は機絨工学全般の発展に負うところが大きい。しかしそれを利用する
儲があまりに経験技能にたよってきたためか,従来,ミシンの力学に関する研究は少
ない。とくに動力学まで言及した研究はほとんどない。これには,公立機関の研究者
は特定産業の研究には関与しにくいためであるという意見2'もある。
このような技術環境の中で,最近の機絨技術課題は高度化してきている。このため
これらの課題に効率よ《対処するには,設計段階で負荷条件を的確に把握し,楕成部
6
材の強度について+分な評価をしておくことが必嬰である。
これまで家庭用ミシンを対象にした力学に関する研究には,構成部材の運動を解析
的に検討したもの3≒振動・騒音におよぽす構成因子を実験的に検討したもの4)^゛6》
天ぴんの運動から上糸の張力を推定したもの7≒ごく低速時の構成部材の摩擦力を上
軸のトルクとして実験的に検討したもの8)などがある。
一方,工業用ミシンを対象にしたものには,回転天ぴん方式(現在の直線本縫いミ
シンでは往復天ぴん方式が主流)のミシンの振動を検討したもの9)1o≒千鳥縫いミ
シンを対象にFFT(F ast F ourier T ransform )装置によるモーダル解析により
振勤低滅を検討したもの11)などがある。
これらはミシンの力学に関する数少ない研究であり,ミシンの機絨設計者にとって
は貴重な参考になっている。しかしこれらの多くはいずれも運動や実験主休の振動・
騒音の検討であるため,強度評価のための設計公式として応用するには限界がある。
あるいは対象ミシンの主要機構の一部が,現在では一部のミシンにしか使用されてい
ないというような機槙上の問題もある。
1.4 本研究の目的と論文の楕成
本研究では,工業用ミシン機構の負荷条件を明らかにし,強度設計のための検討を
目的とした。検討では,まずミシン機楕の動力学的解析を試み,構成部材に作用する
力を椎定した.つぎにこの推定値を実験値と比較することにより,本推定法の妥当性
を評値した。そしてこの結果に基づき,力の発生機楕を明らかにし,現場の強度問題
や今後の開発課題に対する設計思想を示した.
第2章では,4節リンク機構とスライダ・クランク機構の複合機構から成る天ぴん
針棒機構を対象に,楕成部材の軽量化による振動低減の可能性について検討した.そ
してこの結果に基づき,低振動高速度ミシンを試作した。
第3章では,二つの4節リンク機構と一つの5節リンク機構の複合機構から成る送
り機構を対象に,24元1次の連立運動方程式による動力学的解析手法について検討
した。そしてこの結果に基づき,強度上重要な楕成部材の節点力やしゅう動部のpv
債(圧力×速度),送り調節器⑤による送り量設定状態の安定性に対する設計裁準な
どについて検討した.
第4傘では,第3章との関係で1自由度の強制振勤系から押さえ機構の運動を解析
し,送り機楕に作用する押さえ⑥の押圧力を求めた.そしてこの結乗に蓮づき,押圧
7
力の構成因子や縫製物挿入時の送り機楕系のぱねに対する考え方などについて検討し
た。
策5章では,誰4傘との関係で可縫性の主要因子の一つである押さえ⑧の追捉性に
ついて検討した.押さえ⑧の運艶を実験で求め,これを計寡憤と比較した。そしてこ
の結剰こ基づき,押さえ⑧の追捉性におよぼす構成因子の影響や押さえ⑧のジャンピ
ングに対する設計基準などについて検討した,
築6章では,布への針の貴通力や上奈の引締め張力などの外力による上軸◎の勤的
応答について検討した。検討では,針の貫遁力,上糸の引締め張力,あるいは押さえ
⑥の押圧力作勤時の上軸のトルクを実験で求め,これを計寡値と比較した.そしてこ
の結渠に裁づき,針の賃逓力,上県の引締め張力,あるいは押さえ⑧の押圧力が上軸
トルクの動的応答におよぽす影響,トルク推定時の天ぴんツ針棒機楕と送り機構のそ
れぞれの運動系に対する考え方などについて検討した。
第7章では,省力化工業用ミシンの代表的付加機能である自動糸切り機楕を対象に,
糸切り時に回転軸に生じるトルクを解析した。そしてこの結果に基づき,糸切りトル
クに対する外力条件の影響や動荷重係数などについて検討した。
第8傘では,工業用ミシン機楕の強度設計に対する考え方という観点かち,本研究
で得られたことがらをまとめた。
8
第2章 天びん・針棒機楕の
動力学的研究1 2 '
2.1 緒 言
ミシンの振勤を問題にする場合,通常,垂直方向の振動を対象とする13)。この振
動は主として天ぴんツ針棒機構の運動に基づいて発生する。
そこで本章では天ぴん・針棒機構を対象に,動力学的見地から楕成部材の軽量化に
よる振動低減の可能性について検討した.天ぴんツ針棒機楕の運動を剛休の平面問題
として,まず節点力や加振力を解析した。一方,節点力を上軸のトルクとして検出し
計算値と比較することにより,本椎定法の妥当性を評倫した。つぎにこれらの結果に
基づき,加振力の発生機構や低振動化に対する構成部材ごとの寄与率を明らかにした。
そしてアルミニウム合金による部品の軽量化を試みた。
2.2 力学的モデルと運動方程武
(1)力学的モデル
天ぴん・針棒機楕の動力学的解析では,天ぴん・針棒機構の運動を平面上の剛休問
題として扱う.すなわち上軸◎の軸心を原点oとし,上軸に直角なz-y座擦面にお
いて,4節リンク機槽の天ぴん・クランク機楕とスライダ・クランク機構の針棒・ク
ランク機楕がクランク①・④により駆動される問題である.ここにクランク①・④は
図1.2の天ぴんクランク①と針棒クランク④の一体物を表わす.とくに両肴を区別
する必要のない場合,以降もこのように称する。
以上の考え方から,天ぴん・針棒機構を力学的モデルに表わせぱ図2.1のように
なる.すなわち構成部材①
⑥の各対偶素に節点力成分FIJX, F IJyが,しゅう動部
⑨,⑤に軸受力成分FO6&9 Fooが作用するモデルである。ただし,力成分FIJX,
F,,。の添字は構成部材①から①に作用する力のzとy軸方向を,力成分FO6&,
F。いのそれはミシン本悼から構成部材⑥に作用する力のしゅう動部に垂直方向を示
す.回転角汐・は楕成節材①の時計方向の回転変佼を衷わす.また対偶秦の白丸は変
位する回り対偶を,黒丸はミシン本休に支持された回り対偶を,hはリンクの長さ
を表わす。ところで力の作用・反作用の関係からF IJ,,=-FJlx, F ,Jy=-FJ,yで
ある。このため図2.1のモデルは,けっきょく5儒の回り対偶素と2個のすすみ対
偶素14'に合計12個の力成分が作用するモデルである。
9
ず≒よ皆 印
F23x
y
ら2x
13
Foly
F12
①
Folx
X
④ t4
F21y
ミ
晦lx
1
F45y
ド54y F七4x
Fo6a
F65y
Fo6b
図ご1
針棒機槽の力学的モデル
10
F45x
(2〉運動方程式
天ぴん・クランク機楕と針棒・クランク機構の構成部材について運動方程式をたて
れぱ,力成分に間してそれぞれ6元1次の達立方程式を得る。これらをマトリクスで
表わせぱ式(2.1〉と式(2.2〉のようになる。
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O
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○
j
23
j
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○
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(2.1)
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F6,。
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1630
1 65 1 66
F 6o,,
0
く2.2)
式(2.1〉と式(2.2)において,111は重心G,から力成分への腕の長さ,
ml,I,は構成部材①の質量と慣性モーメント,mlタI,ml夕1,hぷ,はそれぞれ
χ軸,y軸,そして回転角∂l方向への運動(角運動)量の時間的変化割合である。
ここで図2.1の幾何的間係から,,腕の長さl t1は回転角θ,の間数として,重心G1
の座標(z,,y,)と回転角θ,は天ぴんクランク①(上軸◎)の回転鈎汐1の間数と
して表わすことができる。
2.3 ミシン本休に作用する加振力
式(2.1)と式(2.2)の達立運勤方程式はガウスの消去法を用いて数値計算し
た。計彝では独立変数θ,の刻み暢は1.00゛ , 上軸◎の駆動回転数は一定とした。こ
のため時間tは回転角汐,を角振動数∂1で除して求めた。数値計算により12個の力成
分が求められると,楕成部材に生じる力はその回転角成分として求めることができる。
この結果,設計段階で構成部材の強度評価が可能となる。
11
一方,ミシン本休に作用するχとy軸方向の加振力成分F。とFyは,各構成部材の
慣性力の総和から式(2.3)で表わされる。
FX
一
九ドノ
Fy
(F。1x- F 3ox- F 56x )
--
(F,ly- F 3oy)
-一
(2.3〉
ただし,力成分F01x, Fo,。はクランク①・④に関する運動方程式から宋めること
ができる。また力成分F,とFyは,節点力成分との混同を避けるために,以降は加振
力F,,Fyと称する。
2.4 上軸のトルク
摩擦力は上軸◎とすべり粕受O,④,⑥の間のみに作用するとして,上軸のトルク
Ttoを求めると式(2.4)のようになる。
Tto=―忿1(F 12xsin∂l+F 12ycosθ1)-14(F 45xsinθ4+F 45ycosθ4〉
+
μd
2
(2.4)
F1,x2 + FI,y2
ただレ第3項は上軸◎の摩擦トルクを表わし,4は上軸と軸受間の摩擦係数,d
は上軸の直径である。
式(2.4)からわかるように,上幟◎のトルクT,,は羞本的にはそれぞれ独立し
た第1項の天ぴん・クランク機構によるトルクT t。。と,第2項の針棒・クランク機
構によるトルクTtoから構成される。このため本理論の検証では上軸のトルクを対
象にするのが便利である。
2.5 上軸のトルクの検出
2.5.1 実験装置と実験方法
図2.2に本実験装置の構成をプロック図で示す.本装置は供試ミシン(後述の試
作斟こ対して捉来aを示す)と上軸◎のトルク検出県で構成した.供試ミシンはDB
-130G形高遼本縫い工業用ミシンで,おもな仕檄は最大送り量5-,最高回転
-12-
Mercury ↑ronsml↑↑e「
Sewin9 mochine for ↑es↑
図2.2実験装置の測定系ブロック図
13
数4500 rpm, 質量25 kgである.また天ぴん・針棒機構の構成部材はいずれも鉄鋼
製である。トルク検出系は外周に2枚のトルク検出用ひずみゲージを貼付した上軸,
弾性継手を介して上軸端に連結した水銀スリップリング,そして動ひずみ計とオシロ
スコープで構成した。なお水銀スリップリングの端面には針棒⑥の上死点に対応させ
て鉄片を固定し,これに渦電流方式の非接勉形微小変位計を対向させた。
実験は押さえ⑧を外した無負荷(縫製物を挿入しない〉状態で供試ミシンを定速駆
艶した。このとき上軸◎に生じるひずみゲージの出力篭圧をオシロスコープに表示し
記録した。そしてこの結果をあらかじめ求めておいた較正値と比較するすることによ
りトルクT,(計算値T,oに対し実験値を示す〉を求めた。同時に微小変位計の出力
電圧も記録した.なおトルクTdこ送り機構の影響が入らないように送り機構は取り
外した。また上軸の駆動回転数は実験装置の構成上2000 rpmとし,Vベルトの張力
はすべりの生じない範囲で弱くした。
2.5.2 実験結果
(1)天ぴん・針棒機楕の運動による上軸のトルク
供訳ミシンを駆艶したとき,上軸◎に生じるトルクT,の変動欲況を図2.3に示す.
ただし,トルクT、の向きは上軸が回転方向にねじられるときを正にとってある。ま
た図2.3は予備実験の結果に基づき300 Hzのローパスフィルタを介してある。フィ
ルタを介さない場合には,基本波形に600 Hz前後の高次調波が約10%の大きさ
(基本波形のp-p値に対して)で重畳した。これは上軸系のねじり自由振動である。
この高次調波を除けば,フィルタの有無による差異はほとんど認められなかった。
図2.3から次のようなことがわかる。トルクT、の変動には全領域にわたって周期
の異なる三つの振動がみられる。針棒の上死点付近で生じる振動の周期は他の二つに
比べて小さい。一方,振動の大きさには大差はみられず,いずれもp-p値で600
m N・m程度である。ところで平均値は一様に1 00 1 N・m程度だけ正側に移動している。
(2)上軸の動摩擦トルク
上軸◎にクランク①・④のみを固定して供試ミシンを駆動したとき,上翰に生じる
トルクT、を図2.4に示す。
図2.4から,トルクTdこは全領域にわたって60
80 mN・mのトルクが生じている。
このトルクの大きさははずみ車⑧に対するVベルトの張力により変化する.ここで上
粕◎とすべり軸受O,③,⑥の間の摩諮僑数をい19として,この場合の摩擦トル
14
Tt一-
Top de(]d
poin↑()仁--→。
needle b(]「
v ertical scale : T t
H orizontal scale ; t
図2.3 上軸に生じるトルク
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-
-
300 mN・m/div
5 ms/div
Tt一-1
Top de(]d
poin↑ o仁一-→,
needle b(]「
v ertical scale ; T t
-
H orizontal scale ; t
一
図2.4 上軸に生じるトルク
-16-
-
-
300 1N・m/div
5 ms/div
クを求めると53 1N・lになる。この俵は実験値に比べて若干小さいが,上軸のみで駆
動したときにも 1 0 1 N・I程度のトルクが生じたことから,上軸と軸受間の摩擦係数は
O。3程度が実用的と考えられる。
(3)計算値と実験値の比較
図2.3の場合のトルクの計算値T,,を実験値T,と比較して図2.5に示す。また
図2.6と図2.7にはそれぞれ天びん・クランク機楕と針棒・クランク機構によるト
ルクT,o,とT,oの同様の結果を示す。この場合の実験値T,。は針棒クランクロッド
⑤と針棒⑥を,実験俵T-は天ぴん②と天ぴんささえ③を取り外して求めた結巣であ
る。なお時間の厘点は針棒の上死点にとっており,これは以降も同様である,
図2.5から,計算値ぱ実験倣と比較的よく対応している.このことから節点力や
加振力を推定する本理論は妥当であると考えられた.そして図2.6と図2.7から,
トルクT,の構成はつぎのように考えることができる。すなわちトルクT,の三つの変
動は,針棒上死点付近で生じる顕著な1周期のトルクT,。と,全領域にわたる第2次
調波的トルクT9がほとんど干渉することなく重って楕成されている。なお図2.5
の場合の軸受の摩擦トルクは全領域にわたって15
1 40 m N・mの範囲で変動する。140
1N・mのトルクはトルクT,の振幅に対し約40%に相当する。
2 2
6
6.1
構成部材の軽量化によるミシンの低振動化
構成部材の軽量化の効果
(1)供試ミシン本休に作用する加振力
ミシン本体に作用する水平と垂直方向の加振力F,,とF。の計算値を図2.8に示す。
図2.8から次のようなことがわかる。加振力Fyのp-p値は加振力F。の約2倍
である。主としてこの加振力Fyがミシンを垂直方向に振動させる.この振動はベッ
ドとテープル間に挿人された防振ゴムによりある程度は滅衷されるが,ミシン振動の
中では最大である.このためミシンの振勤低減においては加振力Fyそのものの低減
が最重要課題となる。
ところで加振力F。とFyの変動はいずれも基本調波に主として第2次調波が重畳し
て槽成されている。これらの力は慣性力であるため上軸◎の駆艶回l数には2乗で比
例する.このためたとえぱ供試ミシンが4500 rpmで駆勤されると,ミシン本休には
天ぴん・針棒機楕による加振力が垂直方向に300 N近《作用することになる。
17
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図2乃
上軸に生じるトルクの計算値と実験値の比較
18-
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図2.6
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クランク機楕の運動により上軸に生じるトルクの
計算値と実験値の比較
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図2.7 針棒・クランク機楕の運動により上軸に生じるトルクの
計算値と実験値の比較
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-40
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-60
図2.8 ミシン本休に作用する水平と垂直方向の加振力
21
(2)楕成部材の軽量化による加振力の低滅
加振力におよぼす柵成部材の質量の影響を求めた計算値を図2.9に示す。図2.9
の縦軸も横軸もそれぞれ加振力と質量の割合で示してある。これらはいずれも供試ミ
シンの場合を 100%としている(加振力はp-p値で示す)。
図2.9から次のようなことがわかる。まず全構成部材⑩の一様質量割合の減少に
対し加振力は比例して減少する。このため,たとえぱ全構成部材を鉄鋼からアルミニ
ウムに変更できれぱ,加振力F≒とFyはいずれも従来の1/3程度になる.しかし現
実には耐摩耗や曲げ剛性など機械的強度に関する技術問題が多くある。その上,製造
原価の問題があり一朝一タには実現できない。換言すれぱ許容製造原価内でこれらの
枝術問題をいかに効率よく解決するかが重要になる.そこで構成部材ごとの影響をみ
てみると,加振力Fよ対しては針棒⑥,天ぴん②,針棒クランクロッド⑤,そして
天ぴんささえ③の順に効渠が大きい。これに対してクランク①・④の軽量化は加振力
F≒の低減には効果があるが,加振力Fyには逆効果である16ヒ
2.6.2 低振動ミシンの実用化
(1)軽量化部材の試作
翁鈴の結聚から,本検討では,針棒⑥,天ぴん②およぴ針棒クランクロッド⑤を対
象に,従来機楕のままアルミニウム合金に変更することにより軽量化を試みた.
まず針棒⑥については,材料は力成分F…による曲げと針棒抱き⑥の締付けに対
する強度評価から高カアルミニウムを選定した。そして表面には力成分F。6.とF,0
に対する耐摩耗性からテフロン系の硬質皮膜処理を施した17ヒ寸法精度は 5 μm
の最終研摩代により確保した。また先端の針取付け部は,ねじによる針の着脱上,鉄
鋼製とし針棒本体とはねじ連結とした。
一方,天びん②と針棒クランクロッド⑤は,節点力成分から求められる各部の曲げ
や引張負荷に対する強度評価からダイカスト用材とした。たとえば供試ミシンの針棒
クランクロッドの場合には,上軸◎の駆動回転数が5000 rpmのとき,上側の支点
(回り対偶素)付近には280 Nの軸方向節点力F45が生じる。そこでこの力を基準
に,軽量化針棒クランクロッドの引張応力が材料の疲労限度よりも+分に小さくなる
ように材料と断面係数を選定した.なお本ダイカスト鋳造では無孔性ダイカスト法
(pore free die casting)18)を採用したことにより,錫巣の減少ぱかりでなく熱処
理が可能となった。この結果,材料の機械的強度が30%程度向上した。またそれぞ
れ二つの軸受部には耐摩耗の目的で鉄鋼製のブッシュを圧入した。
22
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図2.9加振力と楕成部材の質量の関係
23
%
○
以上の結果得られた軽量化の内容とその部晶の外観を供試ミシンの場合と比較して,
それぞれ表2.1と図2.10に示す.表2.1から,新部材は捉来の70
80%に軽量
化されている。なおこれによる製造原価の上昇は十分に許容できる範囲のものであっ
た。
(2)低振動ミシンの加振力と振動
軽量化部材になる低振動ミシンと供試ミシンの加振力F。とFyの計算値を,リサー
ジュ波形で図2.□に示す。また表2.2には,両者の振動の大きさを周波数分析によ
り比較した結渠を示す。周波数分析ぱ,加遠度ピックアップをアーム⑤の外周面上ク
ランク①・④の位濯に固定し,FFTを用いて行なった.
まず図2.11から,低振動ミシンの加振力Fyは供試ミシンの場合の66%に減少し
ている。これに対して加振力Fjこはほとんど差異はみられない。これは図2.9から
もわかるように,低振動ミシンでは水平方向の加振力に顕著な影響をおよぽすクラン
ク①{)の不つりあい量が変化していないためである。また表2.2から,低振動ミシ
ンの垂直方向の振動は第1次および第2次成分とも供試ミシンの場合のほぽ半分に,
オーバ・オール値で68%に減少している。オーパ・オール値の減少状況は図2.11
の加振力Fyの減少状況とよ《対応している。一方,水平方向の振動はいずれの成分
とも両者はよ《似た大きさを呈している。
2.7 結 言
本章で得られたことを要約すれぱ次のとおりである。
(1)本理論による上軸トルクの計算値は実験値と比較的よい対応を示した。このこ
とから天ぴん・針棒機楕の運動に基づ《節点力や加振力を推定する本理論は妥当であ
ると考えられた。
(2)水平と垂直方向の加振力F,,とFyは,基本調波におもに第2次調波が重畳して
構成されている。そして供試ミシンの加振力Fyの大きさは加振力F。の約2倍であり,
これらは回転数の2乗に比例して増大する。
(3)加振力F。の低滅に対する槽成部材の鰐量化の効果は,針棒⑥,天ぴん②,針
棒クランクロッド⑤,そして天ぴんささえ③の頗に大きい,これに対してクランク①・
④は加振力F,の低減には寄与するが加振力Fjこは逆効果である,
(4)本理論の動力学的解析に基づき,針棒⑥,天ぴん②,そして針棒クランクロッ
ド⑤をアルミニウム合金で従来の70
80%に軽量化した。その結果,製造羅僑のわ
ずかな上昇内で,加振力Fyを従来の70%程度に低減することができた.
24
表2.1 従来および試作ミシン部品の質量と慣性モーメントの比較
1tem
Mass(10'2k9}
Conventional
lmproved
m2
140
l.10
m5
1.80
1.30
3、40
2,40
3、25
2.55
3.72
2.69
『‐Q‐Q
Moment of
NomenclatUre
lnertia(m9・m2)
(a)針棒
図2.10 軽量化部品の外鎖(上側;従来部晶(鉄鋼製),下側;
軽量化部品(アルミニウム襲))
25
cこTy
`●IFF・
でで12 ,,。,, ll7りβl
(b)天びん
くc)針棒クランクロッド
図2,10 軽量化部品の外観(上側;従来部品(鉄鋼製),下側
軽量化部品(アルミニウム製))
26-
60
くふ
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Z 、ご Qハ)」○` {一}c
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-60
一一一Convention(]L
-40
O
-20
Sh(]kin9 force FX
図2.□捉来ミシンと試作ミ
-27
20
40
N
シンの加振力の比較
表2.2従来ミシンと試作ミシンの振動加速度の比較(m/s2)
Direction
Order
Conventional
lmproved
= ♂r - 1.67
1
1.86
2
0.20
O。29
2.06
2.06
1
3.53
L76
2
1.08
0.59
4.02
2.74
orizontal
x
over-all
〃=¬7・rW¶7・¶ - 匹〃・rj j¶♂¶7・・¶・・
vertical
y
over-all
28-
本検討に基づく低振動ミシンは,昭和57年にLS2-150形高遠本縫い工業用ミ
シンとして装いも新たに製晶化された.その外観を図2パ2に示す.
LS2-150形ミシンは,本検討による低振動化と同時に,送り機構(送り台⑩)
の軽量化により従来機構のまま5000 rplの高速化が達成された(高速化については
3.3項で簡単に触れる)。そのときの振動加速度の大きさは20 m/s2程度である。
これは従来のミシンが30 m/s2以上の振動加速度であったのに比べて30%以上の低
減になる。
本検討結果は,その後に続く新製品LS2-190形高速本縫い工業用自動糸切り
ミシン(昭和57年7月発売〉,LS2-210形高速本縫い工業用針送りミシン(昭
和60年10月発売),LS2-180形高速本縫い工業用自動糸切りミシン(昭和60年
10月に発売されたこの機種は,現在三菱電機会社のメイン機種である)を初め,他社
の製品にも応用されている。このような新製品技術を背景に,昭和57年i1月にはLS
2-150形ミシンに関し,昭和60年10月にはLS2-180形ミシンに関し,中国
技術総公司との間で技術提携契約が締結された。とくに前者の技術提携はわが国工業
用ミシン業界では初めての中国との契約となった19'。
29
恥ノペ・7-÷
lt`--y ̄‘ ̄ ̄ ̄' 9
図2.12 LS2-150形高遼本縫い工業用ミシンの外観
仙
第3章 送り機構の動力学的研究2o)
3.1 緒 言
ミシンの送り機構は押さえ機楕と協働して縫製物を送る機楕である。その運動の良
し悪しぱ可縫性を左右する。従来,高速駆動の工業用ミシンでは,速度の増大にとも
なって送り量が増加したり,最悪の場合には軸受しゅう動部が焼付いたりする問題が
あった。このような現象の発生には,部晶精度とともに,負荷条件の評価不足が起因
している場合が多い。このため設計段階における送り機楕の的確な強度評価は,今後
の必須基本技術になってきている。
そこで本傘では第1段階とにて,縫製物を挿人しない無負荷状態の送り機楕を対象
に,動力学的解析による力の椎定法について検討した。まず送り機構の運動を剛体の
平面問題として節点力を解析した。一方,実験では二又ロッドの腕とクランクロッド
に生じる節点力を検出した。そして両結果を比較することにより本椎定法の妥当性を
評価した。つぎにこの結果に基づき,力の発生機楕やpv値,送り調節器の送り量設
定状態の安定性などについて検討した。
3.2 力学的モデルと運動方程式
(1)力学的モデル
送り機構の動力学的解析では送り機構を平面上の剛体問題として扱う。すなわち上
軸◎心を原点oとするz-y座標面において,5節リンク機楕の布送り機構が4節リ
ンク機構の水平と上下送り機構により駆勤される問題である。
ここで次の仮定を設ける。
a二又ロッド⑧と送りカムスリープ⑩まスリープの両端⑨と砂でしゅう艶する.
b。運動にともなう槽成部材開の摩擦力は無視できるほど小さい。
以上の考え方から,送り機構は図3.1の力学的モデルに表わすことができる。す
なわち構成部材⑦
⑩の各対偶剽こ節点カ成分EIJX, F IJyがしゅう動部⑨,(節に節
点力成分F810v讐 F810wが作用するモデルである。ここで力成分の添字や対偶素記号
の意味,座標の定義などは図2.1の場合と同様である。このため図3.1のモデルは,
けっきょ《11個の回り対偶素と2個のすすみ対偶素に合計24個の力成分が作用するモ
デルである。
31
①
R7y
R)12.
1314X `ヽ7 ̄‘ ̄゛
F1112y R112x
図3.1 送り機構の力学的モデル
-32
(2〉運動
図3.1において,送りカム◎(上軸◎)の回転角を汐・とすると,重心G1の座標
(χhyt)と回転角汐t,タ。は幾何的関係から式(3.1)で表わされる。
χt= X,(∂l)
yl= Y,{汐l)
(3.1)
∂t= Θ1(∂7)
∂o= Θ(∂7)
ただし,1=7,8
14
式(3.1)の初めの3式から,水平送り軸⑦の回転狗(播動殉)恥に対して梢成
部材の位置が決まる。さらに第4式からそのときの回転角θoが決まる。このように
送り機構の運勤解析では回転角恥を独立変数に選ぷのがボイントである2'。なお送
りカム◎の回転角汐,は第2章の天ぴんクランク①の回転角汐1とは所定の拉相角を有
している.
ところで上軸◎の回転角速度ω,が一定の場合には,回転角恥の角遠度と角加遠度
は式(3.2)で表わされる。
d∂7
- -
dt
Jと2_
d∂。
〃
d∂7
-
d
d2θ7
d ∂72
t
〃
---
2
dt2
4ーノg
-
(3.2)
d2∂。
d ∂7
ωo
j
翁
したがって重心GIの遠度と加遠度は,式(3.1)の微係数と式(3.2)の関係
から回転角汐7の間数として表わすことができる。そのときの時間tは回転角汐。を角
遠痩ω,で除して求められる。ただし,式(3.1)の座標は実際には複雑な合成関数
となる。このため微係数の膜開においては注意を要する。
-33-
(3)運動方程式
構成部材⑦
⑩こついて運動方程式をたてれぱ,カ成分に関する24元1次の連立方
程式を得る。これらをマトリクスで表わせぱ式(3.3)のようになる。
A・B
一
-
{m7戈7,m7y7,17ぷ7,……,m14夕14,m14y14,1 14 ぷ14}c(3.3)
ただし,Aは(24,24)形マトリクスである。その要素は力成分と慣性項の間の等
価関係を表わす孫数であり,図3.1の幾何的関係から求めることができる.Bは24
個の力成分から成る行マトリクスである(式(2パ)と式(2.2))。またCはマ
トリクスの転置を表わす。
3.3 水平と上下送り機構の構成部材に生じる力
(1〉数値計算
武(3.3)の連立運動方程式は,式(2.1)と式(2.2)の場合と同じ方法に
より数値計算した。数値計算により24個の力成分が求められると,構成部材に生じる
力はその回転角成分として求めることができる。
たとえぱ二又ロッド⑧の腕に生じる乗直方向の節点力F、と,クランクロッド⑩の
下側の支点(回り対偶素)付近に生じる軸方向の節点力F心式(3.4)で表わされ
る
F1
一
---
.t、._
 ̄な
F lo8=F lo8v+F lo8w
F121t=F12 1 重x cos∂11- F 1211ysinθH
ートーーーノ
Fh
(3.4)
(2〉本検討でとくに対象とする力
以下の検討でぱとくに力FhとFiを対象に検討を進める。これは次のような理由に
よる。
a.送り機構にみられる焼付き現放の多くは,経験的に二又ロッド⑧と送りカムス
リープ(〔卵)間で生じる。この現象は力Fhと二又ロッドの相対すぺり速度の積から成
るpv値2oの高いことに起因している.
このため水平送り機構の一般的傾向として駆動回転数の4500 rplを境にして,こ
れ獄上の饅禽回転数仕様のミシンにおいては二又ロッド⑧の伐りにクランクロッド⑩
と同じリング状ロッドを採用している。しかしこの結果,リング状ロッドを上軸◎よ
34-
りも後で組むことができず,訓節機構もベッド内に移るため組立性では不利な点があ
る。このような問題に運動部晶の軽量化で対処したのが第2章の検討である。、この検
討に基づくLS2-150彩工業用ミシンは,二又ロッド⑧の送り機構のまま5000
rpmの高速化が達成された12≒
b。可縫性の評価基準の一つに高速時の送り量の増大程度がある。これは慣性によ
る構成銘材の弾性変彩に大き《鎚因しており,とくに力Fjこよる二又ロッド⑧の腕
の曲げ変形の影響は無視できない。
c。力F1は押さえ機構の影響を大き《受ける可能性がある(第4傘),
3.4 構成部材に生じる力の検出
3.4.1 構成部材へのひずみゲージの貼付状況
本実験では,力F,、の検出用に,二又ロッド⑧の二又腕しゅう動面裏側の付根にそ
れぞれ1枚のひずみゲージを貼付した。また力FI用に,クランクロッド(口)の下側の
支点付近軸方向に表裏2枚のひずみゲージを貼付し,直列に結線した。ひずみゲージ
の貼付状況を図3.2に示す。なお供試ロッドはいずれも炭素鋼の鍛造晶である。
3.4.2 実験装置と実験方法
図3.3に実験装置の構成を示す。本装置のひずみ検出系は動ひずみ計とオシロス
コープで構成した.供試ミシンはLS2-150形高遠本縫い工業用ミシン1 2 ' で,
おもな仕様は最大送り量5 mm, 最高回転数5000 rpm, 質量26 kgである。なお第2
章の場合と同様に針棒のタイミングに対患させてはずみ車⑧に鉄片を固定し,これに
非接触形微小変位計を対向させた。
(1)二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力の較正
力F。の較正では二又ロッド⑧を固定した我態で,腕のしゅう艶面に垂直方向に引
張荷重を順次負荷した。そしてこのときの曲げひずみによる出力電圧を検出した。つ
ぎに荷重点を変え,同様に両腕について行なった.これらの結果から作用点に対する
荷重とひずみの関係を求めた.
(2)二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力の検出
本実験では押さえ⑧を外した無負荷状態で供試ミシンを駆動した,上軸◎の駆動回
転数は4000 rpl, 送り量は3 mlを選定した。このとき二又ロッド⑧の腕とクラン
クロッド(口)に生じるひずみゲージの出力電圧をオシロスコープに表示し配録した。そ
して,この結果を較正俵と比較することにより力FhとFiを求めた。
35
い1)し又ロッド
(h)クランクロッド
図3.2 槙成部材へのひずみゲージの貼付状況
36
Sewin9m(]chine
S↑r(]in
卯jJqes
DispLocemen
図3.3実験装置の測定系プロック図
37
3.4.3 実験結果
(1〉二又ロッドの腕に生じる節点力の較正
力Fhの較正結果を単位ひずみ当たりの荷重で図3.4に示す。横軸は,二又ロッド
⑧の上削の支点(回り対偶梁)から力の作用線までの腕の長さhにとってある,ただ
し,らは右側の腕(図3.1の状態で)に,臥は左側の腕に生じるひずみを示す。
図3.4には,腕部を断面一様の片持はりとして求めた計算値も併記してある。
図3.4から,単位ひずみ当たりの荷重は腕の長さhに対して双曲線状の特性を示
す。そして計算値は実験値と比較的よく対応している。このことから二つの腕はほぼ
断面一様の片持ぱりの変形挙動をしていることがわかる。
そこで本理論の二又ロッド⑧にも較正実験と同様の荷重方式を路用すれぱ,モーメ
ントの釣合いから等価長さhは式(3.5)のように表わされる。
h
hvFIO8v + hwF1.皐w
-
F lo8v + F lo8w
(3.5)
ただし,h、,,h。は上側の支点から力F108vとF108wの作用線までの腕の長さであ
る。
したがって式(孔5)から求められる各時刻あるいは各回転角での長さhに対し
て図3.4を参照すれば,そのときの較正値を知ることができる。
(2)二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力
前進送り時の力FhとF1の変動状況を図孔5に示す。ただし,力Fhはひずみら,
Gで表わしてある.またひずみと力の向きは,引張りを正,圧縮を負にとってある。
図3.5から次のようなことがわかる。力Fhには左右交互に半正弦波状のひずみ変
動がみられ,いずれも駆動回転周波数に対応している。ひずみの大きさは左側成分が
右側成分の約2倍である。これらの変動にば約500 Hzと1300 Hzの高次調波が重畳し
ている。とくに前者は右側成分のみにみられるが,後進送り時には左側に変わる。後
者は腕の運動面内での自由振動である(詳細については第6章でふれる)。
一方,力Fdこは振幅が約30 Nの正弦波状の変動がみられる.これは二又ロッド
⑧の腕に生じるひずみ変鵬とは所吏の棺相角を有して単振艶している。
38
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図L4二又ロッドの腕に生じる力の較正
39
40
S匹→
&匹→
Fご→
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300μstrain/div
Fi = 135 N /div
H orizontal scale ; t = 5 狙s/div
図3,5 二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力
40
3.5 水平と上下送り機構の構成部材に生じる力の発生機楕
図3.5の場合の力FhとFIの計算値を実験値と比較して図孔6に示すバカFhの
向きは右測成分を正にとってある.
図3.6から、力F,、とF1の計算値は基本的には実験値とよ《対応している。この
ことから本理論は送り機構の力を椎定する方法として妥当であると考えられた。そこ
でここではこの結果に基づき,力FhとFIの発生機構について考察する.
(1)二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力の発生機構
図3.7に二又腕の等価長さhの計算値を示す。図3.7を図孔6と比較すれぱ,
力Fhの右側成分は等値長さhが増大する領域Rで,左側成分ぱ減少する領域Lで生
じている.そしてそれぞれの領域でのピーク値は等価長さhのほぼ中立位置で生じて
いる。これは二又ロッド⑧の力F訪向への加速度が領域Rでは正方向に,領域Lで
は負方向に作用するためである。すなわち送りカム◎の力匹方向への簿心径成分は
領域Rでは,軸線に対して負方向に,領域Lでは正方向に単振動する。これにともな
って力Fhは領域Rでぱ右側の,領域Lでは左側の腕に生じる。なお力Fhのピーク時
に二又ロッド⑧の並進変位(送り台⑩の水平変位)も,後述する回転角恥の変動
(図3.8)からわかるように最大変位(振幅)を示す。
ところで腕の等価長さhは26.5へ,35.5 mlまで変動しているが,変動幅ぱ送りカム
○の偏心量の2倍に等しい。またこのとき図3,4から,二又腕の較正値はo.6
0.35 MNまで変化する.したがって腕の変形に対する剛性などを問題にする場合に
は腕の等価長さも十分に考慮する必要がある。さらに本理論の節点力から水平送り軸
⑦や上下送り軸⑩のねじり嘲性などの妥当性も評価できる2宍
一方,力F心領域Rでは圧縮から引張りに,領域Lでは引張りから圧縮に変動し
ている。これは送りカム⑩の位相が送りカム○より165°進んでいるために,クラン
クロッド⑩の軸方向への加速度が領域Rでは負から正方向に,領城Lでは正から負方
向に作用することによる.
(2)二又ロッドの腕の節点力にみられる高次の振動
ここでは力Fhの変動にみられる約500 HZの高次調波の発生機構について考察する。
まず腕の運動面に垂直方向に加遠度ピックアップを取り付け,アーム⑥を打撃して
求めた振動数は490 Hzであった。つぎに図孔8に示す二又ロッド⑧の節点力恥
(≒F,,)と水平送り軸⑦の回転角恥の計舞債から改のようなことがわかる.回転
角恥は領域Rにおいては二又ロッドの中立位置(汐ド13.2‘〉に対して正の領域にあ
41
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図3.6 二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力の
計算値と実験値の比較
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図3.7二又ロッドの腕の等価長さ
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図孔8 二又ロッドに生じる節点力と水平送り軸の回転角
44
12
14
る.このためこの領域の力町は圧縮力となる。以上のことから,約500 Hzの高次調
波の発生は力町の圧縮時に二又ロッド伝達系の運動面に垂直方向の自由振勤による
ものと考えられる。
一方,後進送り時には力Fhの左側成分において同様の発生機構が考えられる。
3.6 二又ロッドしゆう動部のpv値
ここでは二又ロッド⑧と送りカムスリーlダ⑨めしゅう艶面におけるpv債について
考察する。実際のしゅう動部は送りカムスリーブと面接触しており,自動給油されて
いる。
図3.5の奈件で求めた二又ロッド⑧のpv俵の計諌俵を図3.9に示す。図3.9
から前進送り時のpv値はo
2.2 M Pa ,I/sの幅で変動している。変動周波数は駆動
周波数の2倍である。これは速度変動Vの向きが力Fhのそれに近いことによる。一
方,後進時の変動は運動の反転にともなう変化を除けぱ,前進送り時の場合と同様で
ある。
このpv値は上軸回転数には3乗に,送り量には1次に比例して増大していく。こ
のため高速化や無給油化の開発においては,軸受の検討と同時に圧力Pそのものの低
滅,すなわち力Fhの低減が重要課題となる。
3.7 送り調節機構に作用する力と送り量の安定保持機能の評催
調節機楕には送り量の調節機能と同時に安定保持機能が要求される。そこでここで
は送り量設定状態の安定性という観点から,調節機構への伝達力について考察する。
(1)調節機楕の構成と勤作
図3.10に調節機構の詳綿を示す。送り量の調節は送り調節ねじ⑧の回転によって
行なわれる。すなわち送り調節ねじの先端には送り調節器◎のカム舗上面が対向して
おり,二又部には縫い目加誠腕①を介してコイルぱね③が引張状態で装藩されている,
このため送り調節ねじの進み量により送り調節器の回転位置が決められる。この結果,
送りリンク⑨の下渕の支点(回り対偶素〉佼鷹が設定され,二又ロッド⑧の並進変拉
の大きさが決められる。
一方,後進送り時には送り調節レバー⑩(図1.2)の掻作により,送り調節器⑤
は反時計方向に回転される.このため送り講節器はカム藻下面で送り調節ねじ⑧に押
圧される.この結果,送りリンク⑨の支点佼覆が設定される.
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阿孔り 二又ロッドと送りカムスリーブの間のPV値
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③
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⑨
◎
送りリンク,
送り調節器,
コイルばね,
①
⑧
図3.10 送り調節機構
47
縫い目加減腕,
送り調節ねじ
調節機構は獄上のように禍成されているため,ミシン駆艶時には送りリンク⑨を介
して節点力が伝達される。この力は送り調節器頃)にトルクとして作用する。
(2)送り調節器に作用するトルクと送り量の安定保持機能の評価
a。前進送り時の場合
図3.5の奈件で求めた送り謨鈴器⑤のトルクT,の計諌鎧を図3.11に示す.ただ
し,トルクの向きは時計方向を正にしている。また図3.11には,送りリンク⑨に生
じる軸方向の棉点力F。(≒F,,),回転角(揺齢角)汐,,そしてコイルぱね②によ
るトルクT。も併記してある.力F。の実験値は力FIの場合と同様にして求めた。
図3.11から,前進送り時のトルクT。はほとんど全領域にわたってトルクT。と同
じ正方向に作用している。これは力F。が領域に対応して変動するためである。すな
わち回転角汐,がこの楊合の送り調節器◎の設定角ら,け300‘)よりも小さい領域で
は引張りであるのに対して,大きい領域では圧縮になる.このトルクは送り調節器の
カム上面を送り調節ねじ⑧に押圧する。このため送り調節器にはトルクT,とT,の和
のトルクが作用する。この結果,送り調節器の設定状態は安定である。この和のトル
クはミシンが高逮になれぱなるほど大きくなる。
b。後進送り時の場合
後進送り時には,送りリンク⑨への力の向きが反転する.このためトルクT心ほ
とんど全領域にわたってトルクT,とは反対方向に作用する.しかしこの場合にもト
ルクT。とT。の和のトルクは,逓常,正になる。このため後進送り時に送り調節器の
設定歌態を安定して保つためには,送り調節レバー⑩は操作力によるトルクがこの和
のトルクよりも大きくなるような力によって保持される必要がある.
(3)送り徽の安定保持性からみた調節機構の設計に対する考え方
自動糸切り装置付きミシン(第7傘)のほとんどに装着されている送り方向の自動
反転(自動返し縫いautolatie reverse sewing)装置では,送り調鯵器⑥はソレノ
イドによりトルクT。とT。の和のトルクに抗して作動される。この和のトルクは送り
調節器がいったん反転されると滅少する。このためソレノイドのトルク容景は,前進
送り時に発生するトルクT。とT。の和のトルクに基づいて選定されなけれぱならない.
一方,低速でしかも大きな負荷が作用するような場合(たとえぱ厚物縫製時)には,
前進送り時にもトルクT。に負方向の変勤が生じる可能性がある。このためコイルぱ
ね②は,この場合にもトルクT。とT。の和のトルクが常に正方向に所定の大きさ以上
になるように選定されなけれぱならない。
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図孔目送り調節器に作用するトルク,送りリンクに生じる節点力と回転角
49
12
14
3.8 結 言
本傘で得ちれたことを要約すれぱ次のとおりである。
(1)送り機楕を剛休の平面問題として,24元1次の連立運動方程式から求めた二又
ロッド⑧の節点力F,とクランクロッド⑩の節点力F,は実験債とよく対応した.この
ことから本理論の動力学的解析による力の推定法は妥当であると考えられた。
(2)とくに節点力Fhについては,
a。左と右側成分のピーク値は腕の等価長さhのほぼ中立位置で生じる。このとき
二又ロッド⑧は轍方向〈送り台棟ま水平方向〉に饅大変位する,
b。変動には約1300 Hzと500 Hzの高次調波が重畳する.前者は腕の運動面内で
の自由振動により,全領域でみられる。これに対して後者は伝達系の運動面に垂直方
向の自由振動により,ロッドの圧縮時にみられる。このため前進送り時には二又腕の
右側に,後進送り時には左側のみに生じる。
C
送りカムスリーブ⑩との間のpv値は,送り量3 mm,上軸回転数4000 rpm
のとき2.2 M Pa ・m/sである。このpv値ぱ上軸回転数の3乗,送り景の1次に比例
して増大する。このため高速化や無給油化においては,軸受の検討と同時に、軸受圧
力pそのものの低滅が重要である。
(3)また送り調節箱⑤のトルクについては,
a.前進送り時には,鯵点力によるトルクT。はコイルぱね⑦によるトルクT,と同
じ向きに作用する.このため送り調節器⑤の設定状態は安定である,しかし低遠で大
負荷縫製の場合には,トルクT。は負方向に作用する可能性がある。このためコイル
ぱねは,この場合にも和のトルクが常に正方向に所定の大きさ以上になるように選定
されなければならない。
b。後進送り時にはトルクT,、はほとんど全領域にわたって負方向に作用する。し
かしトルクT。との和のトルクは,逓常,正になる。このため送り調節レバー⑤の操
作力はこのトルクよりも大きな力によって保持される必要がある。
50
獅S4j軟
押さえ機構を含む送り機楕の
動力学的研究23'
4.1 緒 言
縫製時の送り機構には第3傘で述べた運勤にともなう力に加えて,押さえ機構への
衝突による反力が衝撃的に作用する。このため第3章との比較において,押さえ機構
作動時の力の作用状態を明らかにしておくことは設計上必要である。
従来,押さえ機楕作動時の送り機楕に関する動力学的研究には,工業用ミシンを対
象に押さえ機楕に生じる衝撃力から押さえの追従性について検討したもの24)25)があ
る。しかしこれらは衝撃力の理論が+分に検証されているとはいえない。その上,送
りの運動を実験値に基づく高次曲線で近似しているため,送りの運動と間連づけた設
計公式としては利用しにくい。
そこで本章では,押さえ機構作動時の送り機構を対象に,動力学的解析を試みた.
まず押さえ機楕を送り機構系のぱねも考慮した1自由度の振動系にモデル化し,押さ
えの押圧力を解析した.つぎにこの押圧力を第3章の運動方程式に外力として代人し
送り機構の節点力を求め,この力から上軸のトルクを推定した。そしてこれらの結果
を実験値と比較することにより,押圧力の発生機構や構成因子の影響,送り台の見掛
けのぱね定数におよぽす縫製物の影響などについて検討した。
4.2 力学的モデルと運動方程式
(1)押さえ機構の構成と動作
図4.1に押さえ機構を見取図で示す。押さえ機柵は縫製物(図示せず)に所定の
押圧カを負荷する機構である.このため押さえ棒⑩と押さえ調節ねじ(q)の間には挿さ
えぱね勢が圧縮状態で挿入されている。押さえ棒はすべり粕受⑥でアーム⑥にしゅう
動支持されており,下端には押さえ⑥がねじで固定されている.押さえ⑥の布挿さえ
部は,所定の角度回転自在にピン支点pで連結されている。なお押さえ棒には押さえ
⑧のほかに押さえ棒抱きや糸取調節板が固定されており,これらは押さえ機柵可動部
⑩(運艶体を意味し,押さえ棒皐弛とは区別)を構成する。
以上の構成においてミシンが駆動されると,送り歯⑥はその楕円状運動にともなっ
て針板⑦面上に突出時,押さえ⑧に衝突する.このため送り台棟こは,押さえ⑧から
の反力が押圧力として衝撃的に作用する.
51
喚ー
図4パ
一寥
⑩⑥
押さえ棒,
⑩ 送り台,
送り歯,(S);押さえぱね,
⑥ アーム,
押さえ調節ねじ,⑥;押さえ,①;針板,
⑩
⑥ すべり軸受
押さえ機構
52
(2)押さえ機構の力学的モデル
押さえ機構作動時の送り機構の動力学的解析では,第3章の仮定に加えて押さえ機
構に次の仮定を設ける。
a‥送り歯⑥は押さえ⑥との橋突期間,接触を採つ.
b。このとき押さえ機構可憩齢(印ま,押さえぱね肺と送り機横貳のぱねで並列に支
持される。
c.衝突直後,押さえ⑥の押圧力は押さえぱね(M)の初期荷重に達するまでは,送り
台(〔卸)垂直変引こ比例して増大する.したがってこの期間の送り歯⑥は針板⑩面上に
突出しない.このことは衝突終了直前の期間においても同様である。
d。押さえ機楕への衝撃力はピン支点pに垂直上向きの一点集中荷重として作用す
る。またこの力に基づく摩擦力が水平方向に作用する。一方,送り機構へは反力とし
ての押圧力と摩擦力が送り歯⑥の中間点に垂直下向きおよぴ水平方向に作用する。
e。押さえ棒⑩とすべり軸受⑥との間の摩擦カは撫視できるほど小さい.
以上の仮定から,押さえ機楕と送り機構の一部を力学的モデルに表わせぱ図4.2
のようになる。すなわち押さえ機構はぱねk。で圧縮支持された可動部(〔シ)下端に,
送り台(〔炉)見掛けのぱねkfを介して送りの運動y14が強制付与される1自由度の振動
系である.一方,送り機構は送り台に押圧力Pと摩擦力μ。Pが外力として作用する
点を除けぱ,築3章の場合と同様である。ただし,肖,は押さえ⑥と送り備⑥との間
の摩擦謀数である。押さえ⑧を介して可動部に作用する摩擦力はすべり軸受⑥からの
反力とつりあう。なお後進送り時には摩擦力の向きが逆転する点を除けぱ,前進送り
時と同様に扱うことができる。
(3)押さえ機構と送り機構の運動方程式
押さえ機構可動部⑩こついて運動方程式を立てれぱ式(4.1)で表わされる
m15y15+
(cf 十 c。)夕15 十(kf + k。)y 15
=cf夕14 十 kfy14 - k。y 15o (yl4 ≧ y 14o)
j‐-y--ノ
(y 14 ≪ y 14o)
く
y 15 = 0
4.1)
ただし,c f,c。はそれぞれ送り機構運動系と押さえ機構運動系の粘性減衷係数,
k,は送りむ(〔卸)見撥けのぱね定数,k,は押さえぱね參のぱね定数,mldま押さえ機
構可動節(〔砂)賃量,yぶま送り白(送り歯⑥の中間点)の針板①面上に突出する垂直
53
y14
μ。
P
1F714x
H{'
F714y
kf
F1314y
F1314x
図4.2
押さえ機槽の力学的モデル
54
変位で式(3.1)から求められる。y 14。= k,y 15o/k 心境界値,y 15は可動部の
垂直変佼,y-は挿さえぱね參の初期変位である。
一方,送り機構の構成部材⑦
⑩こついての運艶方程式は,武(3.3)に押圧カP
による外力条件を付加して,式(4.2)のように表わされる。
A・B
一
-
{m7戈7,m7夕7,17ぷ7,……… ,m14夕14 - μoP
m14夕14十 P,1 14ぶ14十 M。}
(4.2)
C
ただし,M。は押圧力Pと摩擦力μoPによるモーメントである。その他の記号の意
味は式(3.3)のそれらと同じである。
4.3 押さえの押圧力と上軸のトルク
送り機構では,5節リンク機構の布送り機構が4節リンク機構の水平およぴ上下送
り機構を介して上軸駆動される。このため送り機構に生じる力の検証では上勅のトル
クを対象にするのが便利である。そこでここでは押さえ⑧の挿圧力Pとともに上軸◎
のトルクTf。を導く。
(1)数値計算
式(4.1)の過渡振動はルンゲ・クッタ・ギル法を,式(4.2)の平面運動はガウス
の消去法を用いて数値計算した。計算条件は第3章の場合と同様とした。数値計算に
より押さえ機構の変位や送り機構の力成分が求められると,押圧力PとトルクTf。は
次のように表わされる。
(2)押さえの押圧力
式(4バL)の結果から,押圧力Pは式(4.3)で表わされる。
(y 14<y 14,)
fyl4
く3)上軸のトルク
ヽし'1ノ
作勺
(y 14≧y 14,)
バy 14-y 15〉
(4.3)
トルクT,。は送りカム◎,⑩の節点力F10c, F 11.と上軸◎の節点力F。。から式
(4.4)で表わされる。
55
Tf。= lc(-F10cxsinθ。 - F locycosθ。)
+ 仁1{-F11Dxsin(汐。+ ∂ca)-F11DycOs(∂。 十 ∂。a)}
+
乙佐
F cox2十F c。y2
2
(4.4)
ただし,渠3項は式(2.4)と同じ上軸◎の摩擦トルクを表わす.節点力Fcox・
F。。。は送りカム◎・⑩の運動方程式から求めることができる。ここに送りカムO・
⑩は図L2の送りカム◎と送りカム⑩の一俸物を表わす.とくに両者を区別する必
要のない場合,以降もこのように称する。j。,仁lは上軸心から送りカム○,⑩まで
の長さ,心冶送りカム⑤と⑩との位相角である,
4.4 押さえの押圧力と上軸のトルクの検出
4.4.1 実験装置と夷験方法
挿さえ⑧の押圧力Pと上軸◎のトルクT,(計舞値T,.に対し実験憤を示す)の検
出は,第3傘の供試ミシンを用いて行なった。このため送り台(U炉)中間には曲げ力検
出用,上軸の送りカム◎・⑩とはずみ車⑧の間にはトルク検出用ひずみゲージをそれ
ぞれ2枚貼付した.そして前者のひずみゲージは動ひずみ計を介しオシロスコープに,
後者のそれは水銀スリップリングを介し同様に結線した。なお天ぴん・針棒機構は天
ぴんクランク①を除き取り外した,
実験は押さえ機楕を作動させた状態で供試ミシンを駆動し,ひずみゲージの出力電
圧をオロシスコープに表示し記録した。本実験ではとくに断らない限り縫製物は挿入
せず,送り歯⑥を押さえ⑧に直接策突させた,そしてこの結果をあらかじめ求めてお
いた較正値と比較することにより,押圧力PとトルクTIを求めた。また送り台4〕炉)
見掛けのぱね定数k心,押さえ調節ねじ⑩と押さえぱね勢を取り外した歌態で押さ
え棒⑩こ荷重を直接負荷レ送り庸⑥の垂直変位をハイトゲージで測定して求めた。
なお上軸◎の駆艶回転数は爽験装薦の槽成上2000 rpmを基串とレ送り量は3ml
を選定した。
4.4.2 実験結果
挿さえ⑧の押圧力Pと上軸◎のトルクT,の変艶我況を図4.3に示す。ただし,力
の向きは送り台⑩を上に削こ曲げるときおよぴ上軸を回毅方向にねじるときを正に
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P = 36.0 N /div
H orizontal scale ; t = 5 ms/div
図4.3 送り台に生じる押さえの押圧力と上軸に生じるトルク
57
とってある.またトルクTfは第2傘の予備実験の結果に基づき300 Hzのローパスフ
ィルタを介してある。
図4.3から次のようなことがわかる。まず押圧力Pの変動には針棒上死点の約5
ls前に負方向に急激な荷重が作用する.この荷重は77 Nまで増大し,つぎに43 N
まで滅少する。その後,約55 Nのレベルを中心に約300 H z の減衰振動が半周期の
期間みられる。この薮準レペルは挿さえぱね姉による初期荷重であり,計算上は56
Nである.
一方,この期間トルクTdこは約250 mN・mの正弦半波状の変動がみられる。これに
対して残り半周期にみられる正弦波状の変動は小さく,振幅は40 mN・m程度である。
なお後進送り時の押圧力PとトルクTfの変動は,前進送り時の場合と基本的には
同じ変動を示した。
4.5 押さえの押圧力と上軸のトルクの発生機構
図4.3の場合を例にとり,計算による押圧力PとトルクTf。を実験値と比較して
図4ぺに示す。表4∧1には計算に用いた定数を示す。定数はいずれも実験値である.
また計誄割こは送りが緋(送り歯⑥)の針板①面上突出の垂直変伎も併記してある。
なおトルクの実験値Tfぱ,摩擦係数μを0.3(節2.5.2参照)として求めた天ぴん
クランク①の偏東心に悲づ《上軸◎の皐擦トルク53 mN・mは減じてある。
図4.4から,押圧力PとトルクTf。の計算値は基本的にぱ実験値とよく対応して
いる。このことから,これらの力の発生機楕は次のように説明づけることができる。
(1)押さえの押圧力
まず送り台(X〕炉)運鸚軌跡から,送り歯⑥は針棒上苑点の5 ms(6o‘)前に押さえ⑥
に衝突する。このため送り台には反力としての押圧力Pが発生する。この力は最初送
り白の上昇運艶に対店して療線的に増大する。そして挿さえぱね帑の初期荷重に達し
た後は,送り台の強制変位y14に基づ《減衰振動に移行する。この振動は主として送
り機楕系のばねから構成される。すなわち押さえぱねのぱね定数k。は微調節用で小
さ《,送り台の見掛けのばね定数kfの約 1 %である。このため衝突時の押さえ機
構振動系の固有振動数は実質的には送り機構系のぱねkfから決まる。この場合の固
有振動数の計算値は300.5 Hzである。その後,送り台の下降運動とともに押圧力P
は急減し,送り歯の針板①面下注下と同時に終了する.
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送り台に生じる押さえの押圧力と上軸に生じるトルクの
計算倣と実験債の比較
59
30
表4.1押さえ機構の仕様
Mass(10゛2k9)
7.80
rn 15
viscous dampin9
coefficient(kN ・ s/m)
Cf
〇。03
Cp
○。0
kf
289
Sprin9 constant(kN/m)
kp
Pre-displacement(mm)
y150
-60-
2.56
22.0
(2レ1ュ軸のトルク
トルクTf。を槙成成分単位で求めた計算値を図475に示す.図4.5のトルク成分
T,。E Tf。,は式(4バ1)の第トヽ3項に対応させてある。なお図4パ5には押さえ機
槙を考慮しない無負荷時の結果も併記してある、
図4.5を図4.4と比較すれば,摩擦トルクTf。が全体の半分以上を占めている
ことがわかる。そして最大値は無負荷時のトルクTf。3の約2倍である。このように
トルク成分Tf。,が大きいのは,図4.6に示す二又ロッド⑧の腕に生じる節点力Fh
とクランクロッド⑩の節点力匹(式(孔4))の計譚債からもわかるように,上下送
り機構に作用する力の顕著な増大による。すなわち押圧力Pの荷重方向のため,力
Fよ比較して力F,の増大は著しい.これにともなって送りカム⑩と上轄◎に作用す
る節点力F皇1DI F。。は顕著に増大する。この結果、トルクT f。2 とTI。3が急増するが,
楕成割合としてはトルクTf。3が全体の半分以上を占める.なお図4.6は第3傘との
比較の意昧で4000 rpmの場合を示してある。
七 G 押さえの押圧力におよぼす構成因子の影響
前節の検討から,押さえ⑥の押圧力Pの発生機楕が明らかになった。ところで,縫
製物は押さえ⑨と送り歯⑥との間の相対的摩擦力により送られる。このため押圧力P
の変動が小さいことは,押さえ⑧が縫製物によく追従して安定した可縫性が得られる
ための必要条件となる。そこでここでは押圧力Pにおよぼす構成因子の影響について
考察す机
(い速度の影響
押圧力Pと上軸◎の駆動回転数との関孫を求めた計譚債を図4コに示す。押圧力
Pは変動状況と鼓大鎖を示レ前者の横軸は上軸◎の回転角汐,に,後肴のそれは回
転数nにとってある。なお最大値には実験値も併記してある。
図4.7から,押圧力Pの増分は回転数nが2500 rpmまでの領域では回転数に対し
てほぽ1次の比例関係にある。そして計算値は実験値とよ《対応している.しかし回
転数nが2500 rrmを越えると,増分は減少する。これは送り台⑩自身の慣性力の影
響である。供試ミシンを回転数4000 rpmの無負荷状態で駆動したところ,送り白に
は送り街⑤の針板①面上突出領域において正方向に約7Nの恨性力が生じた,この
力を図4、7の回転数4000 rpmのときの実験値に加えれぱ,そのときの押圧力Pは約
94 Nとなり計算値とよく対応する。慣性力は回転数nの2乗に比例するため,2500
rpm以下の回転数領域ではその影響は非常に小さい。
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上軸に生じるトルクの構成成分
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二又ロッドの腕とクランクロッドに生じる節点力(4000 rpm)
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図4.7
送り台に生じる押圧力と上軸の駆動回転数との関係
64
○
以上から,押圧力Pの増分は全回転数領域において回転数nの1次に比例すると考
えられる.
ところで供試ミシンの場合,回転数が5000 rplのとき押圧力Pの変動は最小で約
5Nまで誠少する。この押圧力Pが負になると挿さえ⑥は送り歯⑥からジャンピン
グすることになる.このため供試ミシンの押さえは回転数が5000 rp皿までは送り歯
に追従していることがわかる。しかし可縫性の面からいえぱ,回転数の増大にともな
って縫製物を送る送り歯の摩擦力の変動が大きくなるために不利である。したがって
とくに可縫性が問題になるような薄物縫製などの場合には,許容生産内で回転数はで
きるだけ小さくせざるを得ない.
なおトルクTf。も回転数nに対して押圧力Pと同様の傾向を示した,そして計算値
は実験値とよく対応した。
(2)貫量の影響
押圧カpと押さえ機楕可艶蘇⑩の誓量mいとの関儡を求めた計寡鎧を図4.8に示
す。図4.8の質量は供試ミシンの場合を1としたときの割合で示してある。
図4.8から,質量m15に対する押圧力Pの増分はほぽ1次の比例間係にある。こ
れは次のように説明づけることができる。すなわち式(4.1)において,ぱね定数
kf〉〉k,,変位y 15<くy 15o (y 15o/y 15≧36),そして粘性滅衷項<<憤性項,と考
えられることから次の関係を得る.
(4.5)
P-k。y 15,≒ m15y15
ところで,質量m15の変化にともなう加遠度変動の差異は小さい。したがって初期
荷重k。y l5oを基準とする押圧力Pの大きさは質量m15の1次に比例することになる。
換言すれぱ,質量m15の減少は押さえ機構振動系の固有振動数を増大させ,押圧力P
の動荷重孫数を減少させる.この結果,押さえ⑧の追提性は向上する.
く3)ぱね定数の影響
a。押さえぱね
押圧力Pと押さえぱね⑩のぱね定数k,との間俤を求めた計諌値を図4.9に示す.
図4.9から,衝突直後の押圧力Pの変動は押さえぱね帑のぱね定数k,の増大とと
もに急減していく。ぱね定数k,に対するこの押圧力Pの動荷重係数を求めると,指
数関数的に減少してい《。そしてぱね定数k。が供試ミシンよりも小さい領域では,
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図4.8
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送り台に生じる押圧力と押さえ機楕可動部の質量との関係
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図4.9
送り台に生じる押圧力と押さえぱねのぱね定数との関係
67
動荷重係数は2より大きい。k。が供試ミシン以上の領域では,回転数nを5000 rpm
まで考慮しても2以下である。このため初期荷重は可縫範囲内でできるだけ大きくす
る方が有利である。
このような傾向は変位(y 14 - y 15)の振動数応笞から説明することができる。
すなわち式(4.1)において,
y 15
一
(y 14 - y)・
(4.6)
と置換すれば式(4.7)が得られる。
mlsy 十 (cf + c。)夕 + (kf 十 k,)y
= m15y14 十 c。夕14 十 k。(y 14 + y 15o)
(4.7)
式(4.7)の右辺は変位yに対する外力であり,その変動は図4.10のようにな
る。図4.10から,この外力P。はほぼ矩形波状の変動を示し,その大きさはぱね定数
k,が小さいほど小さく,継続時間は小さいほど大きい。この結果,押さえ機構の周
期に対する外力P。の継続時開の割合,つまり時開比が大きくなり,押圧力Pの動荷
重係数は増大する.以上は初期変位y 15oについても同様である.
b。送り機楕系のばね
押圧力Pと送り台⑩ァ)見掛けのぱね定数k,との開孫を求めた計算依を図4バ1に示
す.ところでぱね定数kfは送り機構楕成部材の弾性変形のほかに対偶部のクリアラ
ンスなどから決まる26)`28へこのためこれを設計段階で椎定することは困難である.
ここでは押圧力Pにおよぽす影響について考察する。
図4.1iから,ぱね定数kfの滅少にともなって押圧力Pの動荷重係数は減少してい
る。これは時間比が小さくなるためである。またこの場合,外力P。の大きさは一定
である帆送り歯⑥の針糎①面上への突出量は小さくなる。このため送り量は小さく
なる可能性がある。
4.7 押さえ機構振勤系におよぽす縫製物の影響
縫製することな《キャラコ布(cal ieocloth)2枚を送ったとき生じる押圧力Pと
トルクT,の変動状況を図4.12に示す。図4.12から,この場合の押圧力Pとトルク
Tfの最大ピーク値はそれぞれ63 Nと23,0 1 N・Iである、
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v ertical scale ; T f = 178 mN・l/div
P =36.0 N /div
H orizontal scale ; t = 5鋤s/div
図4.12 縫製物挿人時に送り台に生じる押さえの押圧力と
上軸に生じるトルク
71
倣。
讐11
1.F.
図4.12を図4バ3あるいは図4.4と比較すれぱ,押圧力Pの振動振幅の減少と立
上り時開の増大がみてとれる。布を4枚挿人した時にはこれらの傾向は一段と著しく
なった。また図4.目から,図4.12の押圧力Pは縫製物のない場合のぱね定数kfを
1/3
2/3にして求めた計算値によく似ている。このときトルクTf。の減少量は14
3l mN・mであるが,これも図4.12の減少量27 mN・mによ《対応している。以上のこと
から,縫製時の押圧力Pの発生機構は実際には複雑であるが,等価的にはぱね定数
kfが滅少すると考えることから本検討の延長上で取り扱うことができる.
4.8 結 言
本章で得られたことを要約すれぱ次のとおりである.
く│)計剪による押さえ⑥の押圧力Pと上軸◎のトルクT,.は実験値と比較的よく対
応した。このことから,押さえ機横は押さえばねk i,と送り機構系のぱねkfの並列ぱ
ねで支持される可揃部怖こ,送りの運揃が強制付与される1自由度の振動系であると
する本理論は妥当と考えられた。
(2)トルクT,。の横成成分のうち半分以上は軸受の摩擦トルクTi。、である.この
トルクは無負荷時の約2倍である。このようにトルク成分T f。3が大きいのは,押圧
力Pによる上軸の節点力F。。の顕著な増大に起因している.
(3)押さえ⑥の押圧力Pの構成因子に関し,
a‥押さえぱね姉の初期荷重を基準とする挿圧力Pの大きさは,押さえ機構可艶部
姉の剔斟こほぽ1攻で比例す机このため可動銘の軽量化は押圧カpの動荷重係数を
滅少させ,追従性を向上させる。
b。ばね定数k。や初期変位y 15oの増大に対しては,押圧力Pの動荷重係数は指数
関数的に滅少していく。そしてばね蜜数k,が供誠ミシン以上の領域では,上軸◎の
駆動回転数を5000 rpmまで考慮しても,動荷重係数は2以下である。このため初期
荷重は可縫範囲内でできるだけ大きくする方が有利である。
(4〉縫製時の押汗力Pは,,送り機構系のぱね定数kfが縫製物の挿人により滅少す
ると考えることから,本検討の延長上で取り扱うことができる。たとえぱ供試ミシン
にキャラコ布2枚を挿入した場合の押圧力Pは,挿人しない場合のぱね定数kfを
1/3
2/3にして求めた計算値とよ《対応する。
72
第5章 押さえ機構の追従性23)29)
5.1 緒 言
押さえ機構の追従性はとくに高速縫製時や段縫い(double fabric sewing 布重ね
の異なる段部を縫うこと3o))時に問題となり,これの高いことは可縫性のための必
須条件となっている。このため送り機楕側の検討とは別に押さえの運動そのものを対
象にした検討が必要である。
従来,押さえ機楕の追従性に関する研究には,工業用ミシンを用いて押さえの送り
歯からの分離期間について検討しているものがある31)。これは押さえの分離は送り
歯の最高速度あるいは最大変位時点で起こるとし,エネルギ保存則から分離時間を求
めている。また尾上らは,この研究の追実験とともに,押さえの運動におよぽす押さ
えの押圧力や上軸の駆動回転数の影響について実験的に考察している32'。しかし前
者は送り機構系の弾性を考慮していないために,計算値は実験値に対応していない。
その上,送り歯の運動に実験値を用いているために,送りの運動と関連づけた設計公
式としては利用しにくい。後者については押さえの運動そのものが把握されていない
ために,押さえのジャンピングの発生機構やその程度を解明するまでには至っていな
い。またこのような問題はカム機楕にもよくみられ,たとえぱ自動車用動弁機構の力
ムフォロワの追従性を検討しているもの33)がある。しかしこの場合にもカム曲線に
は実験値を用いており,フォロワの変位からはジャンピングの発生機構は説明づけら
れていない。
そこで本章では,第4章と間連づけて押さえの追従性について検討した。まず押さ
えの運動を実験的に求め,これを第4章の理論による計算値と比較した。つぎにこの
結果に基づき,押さえのジャンピングの発生機構や追従性におよぽす構成因子の影響
などについて検討した。
5.2 押さえの運動の検出
5.2.1 実験装置と実験方法
押さえ⑥の運動は第4章の供試ミシンを対象に変拉計を用いて検出した,すなわち
押さえ棒(〔知)上部にある糸取調節板のねじを利用してアルミニウム製のターゲット
(質量2gの被測定休)を押さえ棒に固定し,これに非接触形微小変位計を対向させ
た。この変位計は取付台を介しアーム正面に固定した。
73
実験は押さえ機構を作動させた状態で供試ミシンを駆動し,変位計の出力電圧をオ
シロスコープに表示し記録した。そしてこの結果をあらかじめ求めておいた較正値と
比較することにより
押さえ⑧の垂直変位y1、を求めた.なお本実験では送り台(}〕抑
押圧力Pも同時に検出した。また上軸◎の駆艶回転数nは,築4傘の場合と同じく
2000 rplを基準とし
送り量は3 mlとした。
5.2.2 実験結巣
(1)押さえの運動
押さえ⑧の変位yいと押圧力Pの変艶伏況を図5.1に示す.ただし,図5.1は縫
裂物を挿人しない歌態で上軸◎を駆艶した場合であり,送り歯⑥は押さえ⑧に直接衝
突している.
図乳1から次のようなことがわかる。まず変位ysの変動にはわずかに振動の重畳
がみられるが,基本的には正弦半波状の変動を呈している。しかし詳細に観察すると,
教初の約L5 msの期間はその直後の変動に比べゆるやかな立上りを示している。こ
の期間は押圧力Pが挿さえぱね勢の初期荷重に達するまでの期間であり,理論上の変
位yldまOである。その後,変動は針棒の上死点付近まで急増するが,そこで増分は
いったん滅少する。そしてO。57 mmの最大値まで漸増したのち復帰に移行する。
一方,この間送り台⑩こは負(圧縮)方向に約75 Nで300 Hzの押圧カPが作用
する。約300 H z の振動は,主として送り機構系のぱねkfから決まる押さえ機構系
の自由振動である(節4.5(1)参照)。換言すれば,送り台の垂直変位y14に対し
て,見掛け上押さえ⑧が約300 Hzで振髄していることを意味する.このため押さえ
⑧の送り歯⑥との接触の程度にも変動が生じていると考えられるが,図5.1の場合
両者が分離するまでには至っていない。
(2)押さえの運動におよぼす縫製物の影響
縫製することな《キャラコ布2枚を送ったとき生じる押さえ⑧の変位y 1,と押圧力
Pの・変動状況を図5.2に示す。この場合の縫製物の厚さはO。33 1mである.
図5.2を図5几と比較すれぱ,変位ylsと押圧力Pの大きさの滅少がみてとれる。
つまり変位y 15は0.57 mmからO。47 mmに,押圧力Pは75 Nから60 Nに滅少して
いる。これは送り歯⑥の歯部が(目II程度縫製物にくいこむためであり,等価的に
は送り機槙系のぱね定数kfの滅少と考えることができる(節4.7参照)。さらに縫
製物の厚さに対する変位y 15と押圧力Pの関係を実験値からみてみると,図5.3か
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図5.1 押さえ機構可動部の垂直変位と送り台に生じる
押さえの押圧力
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P =36.0 N /div
H orizontal scale ; t = 5 ms/div
図5.2 縫製物挿人時の押さえ機構可動部の垂直変位と
送り台に生じる押さえの押圧力
76
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図5.3 縫製物の厚さに対する押さえ機構可動部の
垂直変位と押さえの押圧力の間係
-77
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≫
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らわかるように両者ぱほぼ1次の減少関係を示す。これらのことから縫製物挿入時の
押さえの追従性は挿入しない場合よりも高い。したがって以降の検討は縫製物のない
直接駆動条件を対象とする。なお図5.3の実験では。縫製物の挿人による変位y 15
のO点移動と縫製物の淳さによる押さえぱね⑩の初期荷重は,あらかじめ基準レベル
になるように補正した。
5.3 押さえの運動の発生機構
図乳1の場合を例にとり,押さえ⑧の変位yいの計算債を実験値と比較して図
5.4に示す。図乳4には,比較の意昧で送り台(〔炉)垂直変位(y 14- y 14o)く押
さえ機構作動時の送り歯⑥中間点の針板①面上への突出垂直変位)も併記してある。
図乳4から,変位y 15の計算値は実験値と比較的よく対応している。そして変位
yいの大きさは送り台(けの畢直変位(y 14-y 14o=O。55 mm)にほぽ等しい、このこ
とから変位y 15の変動は次のように説明することができる。式(4ハ)から,外力
の作用時間と押さえ機楕の周期との時間比は約3.5と大きい.このため変位y 15の
動荷重係数は1に近くなる。この結果,変位yぃの変動は送り台(X〕炉)垂直変位(yH
-y 14o)を基準に約300 Hzの振動が重畳して構成される。この高次の振動が大きく
なるとついには押さえ⑥が送り歯⑥から分離する,いわゆるジャンピングが発生する.
しかし図乳4の場合の押さえ⑧の相対変位(y 1.-y 15)は全領域にわたって正で
ある.このため押さえ⑧は送り歯⑥から分離するまでには奮っていない。
5.4 押さえの追従性におよぽす構成因子の影響
第4傘では,押さえ⑥の追捉性向上には押圧力Pの変動は小さい方がよいという観
点から,押圧力Pの動荷重係数について検討した.その結果,この動荷重係数に対す
る構成因子の影響が定景的に把梶された。
そこでここでは策4傘の結乗と関連づけて,押さえ⑧の運動そのものを対象に追捉
性におよぽす楕成因子の影響について考察する。
O)速度の影響
押さえ⑧の変位yい(変艶歌況を示す場合を除いて鰻大憤を示す.このことは以降
も同様である)と上軸◎の駆鯉回転数nとの関孫を図5,5に示す.図5.5には,計
算による変位y,5とy 14の変動状況も示してある。ただし,変位ylsの変動状況ぱ回
転数nが2000,3000,4000,5000 rplの場合を,変位y 14のそれは押さえ機構が作
動しない無負荷時の場合を示している。また横軸は回転角汐oにとってある。
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図乳4
押さえ機槽可動部の垂直変位の計算値と実験値の比較
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270
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図乳5
押さえ機構可動部の車直変位と上軸の駆動回転数との関係
80
360
図5.5から次のようなことがわかる。まず変位y 15ば約2800 rp皿までの回転数領
域では,送り台(}渉の垂直変位(y 14- y 14.)にほぼ等し《一定である.その後,約
8000 rp・までの領域(ただし,計算上。図5.5には5000 rp・まで示す)では,回転
数nに対して直線的に増大する。このため5000 rp。を越す領域で,変位ylsは無負
荷時の送り台の垂直変位y 14=O。74 ・Iを上回る.換言すれぱ,ジャンピングによっ
て押さえ⑧は送り歯⑥から分離する。変位y l,のこのような特性は振鵬数店答から攻
のように説明することができる。
すなわち式(4.1)から,右辺の外力Poと周期に対するこの外力の作用時間比R
を回転数nに対して求めると図5.6のようになる。図5.6から,まず外力Poは回
転数nに対してほぼ一定である。これに対して時間比Rは双曲線状の特性を示してい
る。ところで時間比Rに対する動荷重係数は時間比Rが2.5以上では1.1でほぽ一
定,それ以下では約L7まで直線的に増大する34≒この結果,変位ylsの変動は回
転数nが約2800 rp・までの領域では送り白(}〕?吋)垂直変位(y 14-y l4。)にほぽ等
く,それ以上の領域では回転数nに対して直線的に増大することになる。
(2)質量の影響
押さえ⑥の変億y l,と押さえ機構可動部(〔知)質量ml,との間係をまめた計霖結乗を
図5.7に示す。ただし,この場合の回転数nは図5.5の変動状況の場合と同じ例を
示している。また図5.7には,無負荷時の変位y 14も併記してある。
図5.7から次のようなことがわかる.まず質量m15に対して変位y 15は,送り台
(〔?卵)垂直変位(y14- y14,)を基準にほぽ直線的に増大する。そして質量mlsが供
試ミシンの場合(表4.1)以下であれぱ,変位y 15は送り台の垂直変位y14よりも
小さい。したがって供試ミシンの場合,送り機構系の振動が重畳するとしても押さえ
⑥は5000 r,)Iの回転数領域まで送り歯㈲からジャンピングすることはない。
以上から,押さえ機構可動部(〔知)設計においては,変位y 15の最大値が垂直変位
y14よりも小さくなるように質量m15を選定する必要がある。たとえぱ押さえ機構可
動部の全部晶をアルミニウム程度に軽量化できれぱ,回転数nが5000 rp・までほと
んど振動がなく追従性のよい押さえ機構の実現が可能である。このとき送り台の押圧
力Pの変動も小さくなる.
(3)ぱね力の影響
a.押さえぱねの初期荷重
押さえ⑧の変位yl,と押さえぱね恭の初期変拉y 1,,との間煤を図5.8に示す。
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図孔6 [y軸の駆動回転数に対する押さえ機楕可動部の外力と時間比の関係
82
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押さえ機構可動部の垂直変位と質輦との関係
83
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270
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図孔8
押さえ機構可動部の垂直変位と押さえぱねの初期変位との関孫
84-
360
図5.8には,回転角汐oに対して計算による変位y 15の変動状況も示してある。ただ
し初期変位y ls。ぱ供試ミシンの場合を1としたとき,これの1/3,2/3,1,4/3倍
の場合を例示している。
図乳8から,初期変位y ls。に対して変位y,5は直線的に減少する。これは式
(4パ.)かち次のように説明づけることができる。すなわち変位y 15は右辺の外力
に比例して増大するが,この外力は初期変位yいoに対して直線的に減少するためで
ある。また変位y tsの変動状況から,この場合の初期変位y 15oが供試ミシンのI/3
程度になると高次の振動幅が送り台(〔炉)垂直変位(y,4-yHo=O。68 mm)の約7
%に増大する.この結果,変位y 15は無負荷時の送り台の垂直変位yt4に接近する。
この結果と図E5および実用上から,押さえぱね赫の初鼎変位yい,としては供試ミ
シンの場合の1/3程度が可縫性の限界と思われる。なお変位y,sの減少傾向は押さ
えぱね架のぱね定数kμこついても同様である.
b.送り機構系のぱね力
押さえ⑧の変位y l,と送り台(〔炉)見掛けのばね定数k,との関係を求めた計誄結渠
を図5.9に示す。図5.9には,回転角汐oに対する変位y 15の変動状況も例示して
ある。ただし,この場合のぱね定数kfは図5.8の初期変位yH,の場合と同じ割合
で示してある.
図5.9から,変位y 15はぱね定数kfが76 kN/mから急激に立上ったのちに,増
分は漸減していくことがわかる。これは次のように説明づけることができる。まず式
(4パ)において,粘性滅衰項(cf十c。)夕ls《《m 15y 15,k fy ls, ぱね定数
k。くくkfと考えられることから,式(4.1)は近似的に式(5.1)のように表わす
ことができる。
m15y15十k fy 15=P 。 sin ωot
(5.1 )
ただし,右辺のP。sinω。tぱ押さえ機楕可動部り〕夕/ヽヽ、の外カであり,ωoは回転
に基づく外力変動の角速度である。
ここで押さえ機構振動系の固有角速度をω。とすれぱ,式(5.1)より定常振動項
は式(5.2)のようになる。
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1
一
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(5.2)
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図乳9
押かえ機槽可勁部の季直変位と送り機構系のばね定数との開係
86-
360
ところでぱね定数kdこ対して外力P。は1次間数の開係にある。また外力P。の作
用時間は周期のほぼ半分と考えられる。したがって式(5.2)の最大値は,外力の
作用時間と周期との時間比Rを用いてさらに式(5.3)のように表わすことができ
る。
y 15
-
レ仁土仁
(5.3)
ただし,a,bは外力P。とぱね定数k,の関係から求められる定数で,供試ミシン
の場合それぞれO。75 mmと57 Nである.
式(5.3)から,変位yl5の動荷重係数は時開比RがO。5付近で急増することが
わかる。これは図5パ)の変位y,5の特性が急激な立七りを示していることと対応し
ている。とくにぱね定数kfが76 kN/mのとき,境界値y l4。は無負荷時の送り台⑩
の垂直変位y 14に等しくなる.この結果,この場合の変位ylsはOになる。しかし現
実には時間比Rは↑以士、である(供試ミシンの場合,回転数nが5000 rpmの場合で
も 1.5である)。このため1に対して(1/2R)2項を無視すれば,変位(y l s- a 〉
はばね定数kdこ反比例することになる。
なお図乳2の変位y 15の最大値から,キャラコ布2枚挿入時のぱね定数kfは等価
的に供試ミシンの2/3程度であるとみなすことができる。
5.5 結 言
本章で得られたことを要約すれぱ次のとおりである。
吋)押さえ⑧の変位yliの変動は,送り台⑩の垂直変位(y l,- y l,,)に送り機
楕系の自由振動に基づく約300 Hzの振動が重畳して構成されている。この高次の振
動が大きくなって無負荷時の送り台の乗直変位y,。を端すと,ついには押さえ⑧が送
り歯⑧から分離するジャンピングが発生する。
(2)供試ミシンの挿さえ⑧の追従性に関し,
a‥上軸◎の回転数nが約2800 rpmまでの領域では変位y15の動荷重孫数は1に
近く,変位y 15は送り台白吋)垂直変位(y,4- y t4o)にほぽ等しい。その後,8000
rpmまでの領域では直線的に増大する。このため5000 rpmを越すとジャンピングが発
生し,押さえ⑧は送り歯⑥から分離する.
87
b。質量mHに対して,変位y 15は送り台白吋)垂直変位(y 14-y t4。〉を基準に
ほぽ直線的に増大する。したがって押さえ機楕可動部(}〕知)設計においてば,変位y15
が無負荷時の送り台(9)の垂直変位y 14を越さないように質量m15を選定する必要があ
る。
乙押さえぱね赫の初期変位y li.に対して,変位y1心直線的に滅少する。そし
て回転数nが2000 rplの場合,初期変位y t5.が供試ミシンの1/3以下になると,
押さえのジャンピングが発生する。なお変位yいの減少頌向は押さえばね勢のばね定
数kμこついても同様である。
d.送り台(強の見掛けのぱね定数kfの増大に対して,変位y 15は負の双曲線状特
性を示す。
88
第6章針の貫通力や上糸の引締め張力
による上軸の動的応答39
6.1 緒 言
前章までの動力学的検討では,縫製をともなわない場合を対象にした。これに対し
て実縫い時には,布への針の貫通力や上糸の引締め張力が外力として作用する。そし
てこれらの外力はミシン機構運動系に大きな過渡振動を誘起する可能性がある.縫製
条件によっては針の布貫通時にミシンが停止させられることがある。このような問題
は針の貫通力による負荷トルクの増大に起因している。このため前傘までの検討結果
との比較の上で,これらの外力の影響を明らかにしておく必要がある。
そこで本章では,針の貫通力や上糸の引締め張力が上軸のトルクにおよぽす影響に
ついて検討した。まず天ぴん・針棒機構運動系にラグランジュの運動方程式を,送り
機楕運動系にニュートンの運動方程式を適用して外力作用時のトルクを解析した。つ
ぎにこれらの結果を実験結果と比較することにより,本理論の妥当性を評柵した。そ
してこの結果に基づき,外力作用時のトルクの発生機楕や動荷重係数について検討し
た。
6.2 記 号
本章で用いるおもな記号は次のとおりである。
c :粘性滅衰係数
E :運勤系の運勤エネルギ
f :上軸のねじり固有振動数
ff :送り機構運動系における上軸のねじり固有振動数
f,:天ぴん・針棒機楕運動系における上軸のねじり固有振動数
F。:針の貫通力
F,:上糸の引締め張力
11:楕成部材①の重心回りの慣性モーメント
k :天ぴん・針棒機構運動系における上軸のねじりぱね定数
K :散逸関数
m・ :構成部材①の賃量
89
n :上軸の駆動回転数
P :押さえの押圧力
t :時間
T :上軸のトルク
Tf :送り機構運動系による上軸のトルク
Tf。:上軸は剛体として求めたトルクTfの計算値
TI :天びん・針棒機構運動系による上軸のトルク
T,。:上軸は剛休として求めたトルクT,の計算値
U :運動系のポテンシャルエネルギ
χl :楕成部材①の重心のχ座標
yl :構成部材①の重心のy座標
タ :上軸のねじれ角
汐。:上軸の駆動回転角
恥 :楕成部材①の京心回りの回転角
& :対数滅衰率
μ :上軸と軸受間の摩擦係数
6.3 力学的モデルと運動方程式
(1)仮 定
外力作用時に上軸◎に生じるトルクTの鰐析では,節1.2に示すミシン機構の槽
成から次の仮定を設ける。
a。天びんツ針棒機梢運動系の上軸◎の長さは、送り機構運動系のそれよりもかな
り長い。このため前者の上軸は弾性休とし,後者のそれは剛体とする。
b。針の賃通力は針棒⑥の下端に,上糸の引締め張力は天ぴん②の糸穴⑥にそれぞれ
垂直方向に作用する。
c、唯搾力は上軸◎と軸受O,④,⑥の間およぴ送り歯⑥と押さえ⑧の間のみに作
用する.
(2〉力学的モデル
送り機楕運動系によるトルクTf。の解析は第4傘のとおりである。このためここで
は主として天ぴん・針棒機楕運動系について述べる。仮定に基づき天ぴん・針棒機構
運艶系を力学的モデルに喪わせば図6バLのようになる。すなわち針棒⑥の下端に外
90-
①士‥
図6.1 天ぴん・針棒機構の力学的モデル
91
力F。が,天ぴん②の糸穴⑧に外力F,が作用する天ぴん・針棒機構運動系において,
弾性軸である上軸◎にトルクT,(本章ではトルクT,を計寡債にも実験鍍にも荊い,
トルクT,。とは区別する)が作用するモデルである.ここで上軸の中心を厘点とし,
χ,y,z軸と回転角θ,θo,θlの向きを図のように定義する。
(3〉運動方程式
図6.1のモデルに対してラグランジュの運動方程式を適用すれぱ,一殼座標∂,
θ,に関し次式の関係を得る。
一
-
d
a
E一・θ
∂
-
∂ E
ーー1/ノ
d
-
-
&
θ
∂U
+
-
∂ K
+
-
-
-
∂ θ
汐 ∂
Q
(6.1)
Jθ。
tーー//
ド
δE
゛ ̄ ̄-“r‘-
δ E
一
+
-
∂ θ。
ぞ{レ十ぞ」ョレ= Q。十Tt
∂∂。
○
ただし,Q,Q。はそれぞれ一般座標汐,θ。に関する一般力である。またエネルギ
E,Uと滅衰力による散逸間数Kは次式で表わされる36)。
-
1
Σ一
1
2
6
1
E=
{ll∂,2十ml(II2十夕12)}十
-
1
6
I。(∂12十θ1ω。十ω。2)(6.2)
U=をmlg y l十本kθ2十U。
1=1
K
一
レお
92
(6.3)
(6.4)
ただし,式(6.2)のI。とω。は上軸◎の軸心回りの恨性モーメントと駆動角速度
である。また式(6.3)のU。は運動系が基準位置に対しz軸上で有する位置エネルギ
である。
式(6.2)
(6.4)を式(6.1)に代入することにより,系の運動方程式は一般座
標汐。汐oに関し次式で表わされる。
I,
Γーー』
r1、
2ω。1
lwl
1
I
r--L rーーー」
4Σ一
rぐぃ、
6Σ'
訃トづ作)寸制士ヤ・ト
(汗)滸ド㈹洽)ル)(川]・
(汗)(
訃ド牡洽汗訟)
r-‐-L
X
fy.、、
゛Σ心
Σ
+
十 kタ 十ltlくω゜
づ 侑 却→づ紬(績)パ緋京))]
∂
-
∂
∂2
(緋=
+ mlg
S-1
Λyノ
バ抄)(ブル
Q
レ(抄)2‥ヅ抄ハ(仕力卜かルh
[I・抽(京ドG柚(翔咄う訃ド
≒t[ゾ川(依トづ抄)(依)
6.6)
パ
)(京))]匹呼汗l(川(位)
G抄)(活ト(抄)(績牛一(抄)
∂yl
∂∂
+m,
6.5)
= Q。十 Tt
-93-
6.4 針の貫遣力や上糸の引締め張力の導入
(1)針の貰遭力による一般力
針棒⑥の微小変佼をδy.=δy,として貫通力F.による仮想仕事δW.を考えると,
∂W。は式(6.7〉で表わされる。
∂W。=
-
一
Fa
∂y。
F。
g.(θ,θ。〉(δθ 十 ∂θ。〉
(6.7)
したがって貫遣力F。による一般力Q,Q。は式(6.8)のようになる。
Q=QO
-
一
F。g。(∂,θ,)
(6.8)
なお貫逓力F。は,本検討では実験から求めた.またg。(∂,∂o)は第2章の針
棒⑥の垂寵変拉y,から求められる,
(2)上糸の引締め張力による一般力
天ぴん②の糸穴⑧の微小変拉をδy,=δy,として引締め張力F,による仮想仕事
δWtを考えると,δW、は式く6.9)で表わされる。
∂Wt
一
-
-
- -
Ft
∂ yt
Ft
g
,(∂,∂,)(δ∂ 十 δθ。〉
(6.9)
したがって引締め彊力Ftによる一般力Q,Q,は式(6.10}のようになる。
Q
一
-
QO
一
Ftg,(∂,∂。)
(6.10)
なお引締め張力Ftは,本検討では実験から求めた。またg,(汐,θ。)は第2章
の天ぴん②の垂直変拉y,から求められる.
(3)上軸の節点力による摩擦力
上軸◎の緻小円周変拉をδ.=δ(d/2)汐1として摩擦力zzFI,による仮想仕事
δW.を考えると,δW。は式(6.11)で表わされる。
-94-
∂Ws
=-μFI。&。
エ_ぶd
F lox2十F loy2 汐タo
--
(6.11)
2
ただし,FIox, F,o。は外力作用時のクランク①・④を介して上軸◎に作用する節
点力で,第2章と同様にして求めることができる。
したがって 節点力FI。による摩擦力Qoは 式(6.12)のようになる(式(2.4)
参照).
Qo=一μ_d
(6.12)
F lox2+F loy2
2
6.5 数値計算法と上軸のトルク
式(6.5)の運勤方程式は非線形微分方程式である。このため本検討では,ルンゲ・
クッタ・ギル法により数値計霖した。計霖では,上軸◎の角遠度は一定とし,時間の
刻み幅△tは回転角汐oのO。1°相当の時間とした.また回転角∂と角速度・うの初期
条件は次式で定義した36)。
θt。o
Tt。
一
-
一
(6.13)
θt。o
θt=ムt ̄ ̄∂奮=o
一
一
△t
ただし,トルクT,。は式(2.4)から求められる.
数値計算により回転角汐が求められると,式(6.6)からトルクT,が得られる。こ
の結果,天ぴん・針棒機構と送り機構運動系による上軸◎のトルクTは次式で衷わさ
れる。
(6.14)
T= Tt十Tf。
ただし,トルクTf。は式(4.4)から求められる。
95
6.6 針の賃通力や上糸の引締め張力作動時に上軸に生じるトルクの検出
6.6.1 実験装置
本実験では,上軸◎のトルクTにおよぼす外力の影響を検討するために,トルクと
同時に針の貫逓力や上糸の引締め彊力も検出した。このための実験装置の構成をプロ
ック図で図6.2に示す。
(1)供試ミシンと上軸のトルク検出装置
供試ミシンは第3
5傘の検討と同じLS2-1 5 0形高遠本縫い工業用ミシンを
用い12),トルク検出系は第2章のそれと同様に構成した.なお動ひずみ計の応答周
波数は2 kHzである。
(2)針の貫通力検出装置
貫通力F。は図し2に示すロードセルにより検出した。このロードセルははりの曲
げを利用したもので,T字形の針止めと蓋状の針止め受けで楕成した.これらはいず
れもアルミニウム合金で製作した。針止めのT字形はり部の上面には軸方向に2枚の
ひずみゲージを貼付し,これらを直列に結線した。そしてはり部両端は針止め受けの
下端面ポス部に接着し,中央支桂部にはDBX1(No。14)形針37)を装著した。針
止め愛けの上面支柱斟こぱねじを廸こし,針棒⑥の下端に連結した。
(3)上糸の引締め張力検出装置
引締め張力F心天びん②をロードセルとして検出した.すなわち天ぴんの引上げ
腕付根付近にひずみゲージを貼付し,布引締め時の上糸張力が天ぴんの曲げひずみと
して検出できるようにした。ただレこの場合天ぴんの糸穴⑧には,上糸謁節器②
(図7パ〉側と針側にある上糸の張力の和の彊力が作用する。このため本検討では,
便宜上この和の張力を上糸の引締め張力F、と称する。
(4)押さえの押圧力検出装置
押圧力Pの検出系は第4章の場合と同じ構成とした。
6.6.2 実験方法
(1)針の賃通力と上糸の引締め張力の較正
貫通力F。の較正ぱ,針を軸方向に静的に引張と圧縮して行なった。すなわち引張
りは,針棒⑥を固tした我態で,針穴に弗を逼しこれを引っ張った,圧縮は,直径約
1 ll,長さ約3 cmの2本のぱね棄線を針板⑦面上針穴にわたし,その両端部を針
板に固定した。そしてこの鋼線間に針先を挿入させた状態で針棒上端を押圧した。荷
-96
Mercury
Strain 9au9es
図6.2
実験装置の検出系プロック図
97-
重はそれぞれ30 Nまで段階的に負荷し,このとき発生するひずみゲージの出力電圧
を検出した.
一方,引締め張力F,の較正は,天ぴん②の糸穴⑧に糸を通しこれを垂直方向に引
っ張って行なった。このときひずみゲージの出力電圧は天ぴんの傾きに依存すること
が予想された。このため天ぴんの位置ぱ,上死点をはさんで回転角汐oの200°の範
囲で変化させた。荷重は各位置でそれぞれ、15 Nまで段階的に負荷した。
く2)ミシン駆動時の上軸のトルクと外力の検出
トルクTは,倶試ミシンを定速で駆動させ,このときひずみゲージに生じる出力電
圧をオシロスコープに表示し記録した.一定回転数nぱ,第2章の場合と同じ2000
rpmとし,送り量は3 mmを選定した。針の貫通力F ・, 上糸の引締め彊力F,あるい
は押さえの押圧力Pも,実験条件に応じて同様にして求めた。そしてこれらの結果を
較正値と比較することにより,各力の大きさを求めた。なお実験条件に応じて,機構
の一部は取り外した。とくに釜機構によるトルクは,大きさも変動も小さいことが予
想されたため,縫製柴件の場合を除いて取り外した.
(h 6.3 実験結果
(1)針の貫通力と上糸の引締め張力の較正
図(3に、貫通力F≒、と引締め張力Fiの較正結果を示す.引締め張力F,の較正値
は天ぴん②の冬位漱における荷重のひずみに対する比例定数で示してある,このため
横軸は回転角汐oにとってある.貫通力F。の場合には,引張りと圧縮それぞれの比例
定数を全回転角範囲に適用してある。
図6.3から,まず貫通力F。の圧縮特性は引張特性よりも約17%大きい。これは
貫逓力検出用ロードセルを構成する針止めのはり部における境界条件の差によるもの
と考えられる。すなわち圧縮負荷の場合,はりとしての長さは針止め受けのボス部内
径に等しい.これに対して,引張負荷の場合のそれは接著強度の関係から相対的には
圧縮の掲合よりも長いと考えられるためである。
一方,引締め張力F、はほぼ正弦波欲の特性を示している。これは天ぴん②のひず
みゲージ貼付部分の傾きによるものである。そこでこの傾きを考慮して,はりの理論
から求めた計算値を実線で示すが,この計算値は実験値とよく対応している.このこ
とから,天びんのひずみゲージ貼付杭麗と糸穴⑧間の部分はほぽ片持はりとしての変
形挙動をしていることがわかる.
98
14
12
/
/ 几
メ)一〇-
ノ/
拘 8 6 4
Z(らtxy‘ぷ9xjL)ci}の』①a召〇J
O Experimental Theore↑ical レ1
レ
l
、。。、。。-゛--一一↓,l
l l-Aドり'III1511`Cll
一- -compression l
2
一一一 Tension l
l ,
315
270
図6.3
360
45
An9le θ0
de9
針の貫通力と上糸の引締め張力の較正
99
90
135
(2)縫製時に上軸に生じるトルク
カツラギ布(drillcloth)4枚、重ねをビニロン30番の糸3s)で縫製したとき,上軸
◎に生じるトルクTの変動状況を図6.4に示す,この場合,上糸の初期張力は2N
に,下糸のそれはO。5Nに設定した。図6.4には,賃通力F。と引締め張力Ftの変
動状況も同時に記録してある.ただし,トルクTの向きは上軸が回転方向にねじられ
るとき,貫逼力F。は針が布から引抜かれるとき,引締め張力F,は上糸が天ぴん②に
より引上げられるときをそれぞれ正方向にとってある。ここではトルクTの変動状況
を貫通力F。と引締め張力F,の発生状況と間達づけて分析する。
a。針の貫逢力との間係
まず針には,針棒⑥の上死点後約10 ・sに,負方向に衡撃的な三角形波状の貫遵力
F。が約1.5 1sの期間みられる。この変動は針先端部の布貫通により生じており39),
大きさは30 Nに達する。説明上,この変勤は貫通力F。1と称する。貫通力F。1の発
生直後,トルクTには550 H z 前後で振幅が800 1N・Iに達する急激な振動が約15 1s
の期間みちれる。この変動はトルクTIと称する.トルクTIの最初の応答は貫通力
F。1のそれに約0.5 1s遅れている。
トルクTIの発生期間,針にはさらに負方向から正方向にかけて,それぞれ10 N
と 17 Nのほぽ正弦半波状の変勤がみられる。前者の変動ぱ針幹部の布貫通により,
後者のそれは針の運動方向の逆転にともなう布からの引抜きにより生じている.これ
らの変動ぱそれぞれ貫通力F。2,F。3と称する。貫通力F。2とF。3はトルクTIに急
激な振動を重畳させている様子はうかがえない.
なおトルクT1にみられる550 H z 前後の振動数は,よくみると500
580 H z の間
で変化している。この振動数は上輸◎のねじり固有振勣数fと考えられる。
b。上糸の引締め張力との間係
天ぴん②には,針棒⑥の上死点前8 ・sから,正方向に二つの正弦半波我:の引締め
張力F,が約10 ・sと5 ・sの期間みられる。前者の変動は上糸による内釜⑧の外周回
転により,後者のそれは天ぴんの上昇運勤にともなう布引締めにより生じており4°),
大きさは3Nと 8Nである.これらの変勤はそれぞれ引締め張力F ,1,Ft2と称
する。引締め張力FnとFt2の発生期間,トルクTの変勤は小さい。この変動はトル
クT2と称する。なお引締め張力F,2の大きさから,上糸1本に作用する平均引締め
張力は4 Nである。したがって,この場合の上糸の繰出しは初期張力の約2倍の力
で行なわれていることになる。
100-
Fn-→・・
Top deadx
器次こ
T----
Ft-→-
v ertical scale ;
T
F
445 mN,m/div
一
一
43.5 N /div (colpression)
-
a
-
一
-
37.0 N /div (tension)
Ft= 1000μstrain/div
H orizontal scale ; t = 5 朧s/div
図6.4 縫製時に上軸に生じるトルク
-10卜
6.7 針の貫逓力が上軸のトルクにおよぽす影響
(1〉天ぴん・針棒機構運動系による上軸のトルク
送り機構と釜機構を教り外した我態でミシンを駆動したとき,上軸◎に生じるトル
クTtの変動状況を図6.5に示す。この場合,貫通力F。は較正実験の場合と同じ2
本のぱね鋼線で負荷した.また図6.6には,比較の意味で貫通力F。の作用しない場
合の同様の結果を示す.図6.6の結果は図2.3の同様の結果と比較すれぱ,供試ミ
シンの軽量化による慣性力低減の効果がうかがえる12≒
図6.5と図6.6かち次のようなことがわかる。まず図6.5のトルクT,には,図
6.4の場合と同様,貫通力F。1の発生直後,550 Hz前後で振幅が500 1N・Iに達する
変動T,1(図6.4のトルクTIに相当)がみられる。これに対して,図6.6のトル
クT,には激しい振動はみられず,わずかに自由振動(固有振動数f,)が重畳してい
るにすぎない。基本的には100 Hz前後の複数の振動から楕成されている。これらの
ことから,トルクT,1は貫逓力F。1の衝撃による過渡振動である.
貫通力F。1に続《F。2とF。3は,図6.5の場合,ノコギリ波状の変動を呈してい
る。これはぱね鋼線による針への垂直力が,布に比べてはるかに弾性的であることに
よる。そして貫通力F。2とF。3は,図6.4の場合にも図6.5の場合にも,トルク
T,への影響は小さい.
(2)計算値と実験値の比較
図6.5の場合のトルクT,の計算値を実験値と比較して,図6.7に示す。図6.7
の横軸は針棒⑥の上苑点を原点に対拓させてある。表6.1には計算に用いた諸元を
示す。表6.1中,慣性モーメント以外は実験値である。ただし,粘性減衰係数cは
固有振動数fdこ依存するため,対数減衰率δを示す。また貫通力F。は,図6.5の
夷験結果かち,図6.7に示す三角形波状とノコギリ波状の力の合成で近似した。な
お図6.7には,トルクT,。12'も一点鎖線で併記してある。
図6.7から,計算値は実験値と比較的よく対応している。そしてトルクT,1の最
初の応答は,トルクT,。の約1.5倍に達する。これは,時間比,つまり運勤系の周
期に対する貫遁力F。1の作動時間の割合が1に近いためである。その後の変動につい
てもトルクT,の応答は,トルクT,。の変動とは大きな差異がある。換言すれぱ,上
軸◎に弾性を考慮しない燭合には過渡振動の権定ができない。この結果,トルクT,,
の初期応答ぱかりでな《叢大応答も知ることができない。
また固有振動数f,がわずかに変化するのぱ,天ぴん・針棒機構運勤系による上軸
102
・
e
Top dead --。
V
pointof
needle bar
Fn--
M
し
1‥,
一一
T
略
一
1
“ Z`心め,
V'゛S S4Z
tslt
tS恥g
‥4
・ i 哨
亀t4i
A‥、
iltl
●iii
14ゝ│
lll縁
Tt--,・
M柚 A。 池内 瀧‰ム {
≒ リVドV 譜V' Vド y
¥ ミ
f蓼
S
W
4
弓
l
四
1
柵
・
l
り
9
匍
馨S
v ertical scale
Tt = 445 mN・m/div
F。= 43.5 N /div (compression)
= 37.0 N /div (tension)
H orizontal scale ; t = 5 腫s/div
図6.5 針の貫通力作動時に上軸に生じるトルク
-103-
l
Top dead
pointof ““-needle bar
Tt---
vertical scale ; T t = 445 捷N・m/div
H orizontal scale : t = 5 皿s/div
図6.6 無負荷時に上軸に生じるトルク
-104-
750
1 1
Experimental
H
 ̄ ̄Ttj Theoretical 500
250
-250
よよレ
且4
√や 国 m 脂 坑
ゾ 1削 ド 匝 円
リ
削
V
V
-
ヘ/
゛亀
X
ゝ
t
-750
-
│
0
5
几ヽノレ。,
10
15
20
-
25
Time t ms
図6.7
針の貫通力作勤時に上軸に生じるトルクの
計算値と実験値の比較
105-
30
⑩0」o`ac一尨』}のcの^¨一
Fn3
-
‘ ‘ 〈U I ワ』
1
1
3 珀 00
-500
A
`',/X
Z dL
E・ZE‘トQコFoト
0
一一-一一Tto f
表6.1 天ぴん・針棒機構の仕様
lo
163
11
44.6
Moment of inertia
12
2.55
13
1.33
15
2石9
(m9・m2)
16.9
ml
Mass(10-2k9)
m2
1/10
m3
1.30
m5
L30
m6
2渇0
Lo9arithmic decrement
δ
Sprin9 constant(N・m)
k
-106-
○/141
660
の恨性モーメントが変化するためである。計算によれぱ52.9
ーメントの変化に対応して,固有振動数f,は557
63.5略・
「の慣性モ
508 Hzの範囲で変化する。
(3)数値計算の精度
ミシン駆動時,トルクTμこは貫逼力F。による過渡振動がくり返し作用する。この
ため本数値計算によるトルクT、は,かならずしも(60/ n )sを周期とする変動には
ならない。しかし実際のトルクT心上軸◎の1回転ごとによく叡た変動を星する。
したがって本計算法が設計公式として妥当であるためには,計算値のバラツキは周期
のくり返しにかかわらず実験値のそれと同程度でなけれぱならない。そこでここでは,
図6.5の場合を例にとって,本計算法の精度について考察する。
時間の刻み幅を回転角∂。のO。1゛相当の時間△t1=O。0083 msに対して,0.5゛相
当の時間△t2=O。0417 msに拡大してともに10周期まで求めたトルクT,の計算値を
図6.8に示す.ただし,図6.8のトルクT,は変動T,1の最初の応答と変動Tt2
(図6.4のトルクT2に相当〉の最大応答で示してある。
図6.8から,第1周期目のトルクTtが若干小さくなる点を除けぱ,時間の刻み幅
が△tlと△t2の場合のトルクT,1とT,2にはほとんど差異は認められない。すなわ
ち刻み幅が△t2の場合の第2
10周期までのトルクT,1とT,2の平均値は470 mN・m
と361 1N・Iであり,これらに対する標準偏差の割合はそれぞれ2.7%と7.4%で
ある。これは,刻み幅が△tlの場合の平均値459 mN・I, 352 mN・Iとこれらに対する
標準備差の割合2.9%,6.3%によく似ている。この結果と図6.7から,本理論は
外力作用時の天ぴん・針棒機構運動系によるトルクT,2の椎定法としては妥当である
と考えられた。そして△tl程度の時間刻み幅は設計公式としては+分な精度である。
なお図6.7の計算値は第2周期目の結果を示したものである。
6.8 上糸の引締め張力が上軸のトルクにおよぽす影響
図6.4の場合を例にとり,引締め張力F,作用時の天ぴん・針棒機構運動系による
トルクT,の計算値を図6.9に示す。引締め張力Ftは,図6.4の実験結果から,図
6.9に示す正弦半波で近似した。また図6.9には,引締め張力Ftが作用しない場
合のトルクT、の計算値も一点鎖線で併記してある41≒
図6.9から,引締め張力F,の作動期間のトルクTdこは顕著な過渡振動はみられ
ず,基本調波の増大に自由振動(固有振動数fl)がわずかに重畳しているにすぎない.
このように引締め張力F,がトルクTdこ顕著な過渡振動を誘起しないのは次のような
107
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図6.9
上糸の引締め張力作動時に上軸に生じるトルク
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理由によるものと考えられる。すなわち天ぴん・針棒機構運動系の周期に対する引締
め張力Ftの作用時間比が約4と大きいために,トルクT,の勤荷重係数は1に近くな
る。,なお図6.9の引締め張力F,が作用しない場合のトルクTtは,図6.6の実験結
果に対応している。
6.9 押さえの押圧力が上軸のトルクにおよぼす影響
釜機構を取り外した状態でカツラギ布4枚重ねを送ったとき,上軸◎に生じるトル
クTの変動状況を図6.10に示す。図6.10には,押さえの押圧力Pの変勤状況も同1時
に記録してある。また図6.11には,送り機構運動系のみによるトルクTfの変勣状況
を示す。ただレ図6.11の場合は布はなく送り歯⑥を押さえ⑧に直接衝突させた,
まず図6.10から,押圧力Pは針棒⑥の上死点前5 msに発生し,約3 msの立上
り時間後に55 N程度まで増大する.その後,約12 msに消失する約15 msの期間,
基本的には台形波状の変動を示す23)。つぎに図6.10を図6.5と比較することによ
り,トルクTには押圧力Pによる顕著な過渡振動は生じていないことがわかる。トル
クTの基本調波にわずかな増大がみられるにすぎない。
一方,図6.11から,トルクTfには約1080 Hzの高次調波が重畳している.ところ
で送り機槽運動県の上軸◎のねじりぱね定数は天ぴん・針棒機構運動系のそれに比べ
て2倍以上に大きく,逆に上軸に関する慣性モーメントは小さい.また約1080 Hzの
高次調波は押さえ機楕を作動させない場合にも発生した。これらのことから。この高
次調波は送り機楕運動系における上軸の自由振動(固有振動数ff)である.
以上のことから,押圧力PがトルクTfに顕著な過渡振動を誘起しないのは,引締
め張力F,の場合と同様に考えることができる。すなわち送り機構運勤系の周期に対
する押圧力Pの立上り時間の比が約3と大きいために,トルクTfの勤荷重係数は1
に近くなる。
6.10 天ぴん・針棒機楕と送り機楕運動系の上軸のねじり剛性に対する考え方
天ぴん・針棒機構運動系の上軸◎は弾性詠とし,送り機構運動系のそれは團休とし
て,図6.10の場合のトルクTを求めた計算催を実験債と比較して図6.12に示す。た
だし,この場合の送り台4〕j炉)見掛けのぱね定数は,布を挿入しない場合の2/3とし
た23'29≒また図6.12には,比較の意味でトルクT,。も一点鎖線で併記してある。
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F。= 43.5 N /div くeolpression)
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P = 36.0 N /div
H orizontal scale ; t = 5 ms/div
図6.10 押さえ機構作動時に上軸に生じるトルク
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P = 36.0 N /div
H orizontal scale ; t = 5 ls/div
図6.11 無負荷時に上軸に生じるトルク
-112
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図6.12 天ぴん・針棒機構と送り機構の運動により
上軸に生じるトルクの計算俵と実験値の比較
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図6.12から,計算値は高次調波の周期がわずかに大きい点を除けぱ実験値と比較
的よく対応している。そしてトルクTに占めるトルクTf。の割合は小さい。ところで
量産ミシンの送り機構連艶索における上軸◎のねじりぱね定数は,天ぴん・針棒機構
運動系のそれの約4倍である。これらのことから,外力作用時のミシン機楕運動系に
よるトルクTの推定においては,送り機構運動系の上軸は剛休として取り扱っても差
し支えないと考えられた。
これらの考え方を実際に応用する場合には,無負荷時の場合12)20)とは区別すべき
である。たとえぱ電動機との組合わせ特性や上軸系の剛性などを評価する場合には,
本推定法による過渡振動を+分に考慮する必要がある.
6.11 結 言
本章で得られたことを要約すれぱ次のとおりである。
く1)ミシン機槽運動系に作用する外力のうち,針の貫通力F。は三角形波状の変動
F。1と二つの正弦半波状の変動F。2,F。3から,上糸の引締め張力Ftは二つの正弦
半波状の変動F,h F,2から,押さえの押圧力Pは台形波状の変動Pから構成されて
いる。
(2)これらの変動のうち,とくに賃通力F。心上軸◎のトルクTdこ動荷重係数が
1を越す過渡振動を誘起する。このトルクTdこ対して,上軸を弾性休として天ぴん・
針棒機構運動系にラグランジュの運動方程式を応用して求めた計算値は実験値とよく
対応した。
(3〉一方,貫通力F。2とF。3,引締め張力F,1とF,2や押圧力Pは,運動系の周期
に対する作動時間や立上り時間の割合が1に比して大きい。このためこれらの力は上
軸◎のトルクT(T.あるいはT,)に顕著な過渡振動は誘gしない。
く4)以上から,外力作用時のミシン機構運動系によるトルクTの椎定においては,
天ぴん・針棒機構運動築の上軸◎には弾性を考慮する必要がある。これに対して,送
り機構運動系の上軸は剛休としても差し支えない。
-114
第7傘 白動糸切り機構の
動力学的研究4n4幻
7.1 緒 言
近年,縫製業界の省力化、合理化により,工業用ミシンの主流は自動糸切り装置付
きミシンに置き換わりつつある。このミシンでは。縫製後の糸は一般にカム駆動によ
る糸切りメスによって白動的に切断される。このとき回転軸にはトルクが衝撃的に作
用する。このトルクは糸切り速度の高速化ともあいまって増大する傾向にある。この
ためこのトルクを設計段階で的確に推定することは,糸切り機構各部の機械的強度の
評借や電動機との組合わせ特性などを検討する上で必要である。
捉来,カム機構に関する研究は数多く行なわれている。しかしミシンに関するもの
は少なく44),糸切り機構について検討されたものはほとんどない。
そこで本章では回転軸を実験用に楕成した工業用自動糸切りミシンを対象に,糸切
り作動時に回転軸に生じるトルクについて検討した。まず糸切り機楕を3自由度のね
じり振動系に等価し,この等価系の下軸と立軸に生じるトルクについて理論解析を行
なった。同時に,ひずみゲージを用いて下軸のトルクを検出した。そして両結果を比
較検討することにより,本理論の妥当性を評価した。つぎにこの結果に基づき,トル
クの発生機構や設計公式に対する考え方などについて検討した.
7.2 記 号
本章で用いるおもな記号は次のとおりである。
cl :下軸の粘性滅衰係数
c2 :立軸の下軸等価な粘性滅衰係数
c3 :弾性維手の粘性滅衰係数
F。 :カムに作用する外力
F。1 :従動休による力
F。2 :コイルぱねのぱね力
F。l :メス機構の動作に基づく外力
I。1 :カム部の慣性モーメント
I。2 :歯車部の下軸等価な慣性モーメント
I。3 :スリップリングの慣性モーメント
II5
ke
:コイルぱねのぱね定数
KI
:下軸のねじりぱね定数
K2
:立軸の下軸等価なねじりぱね定数
K3
:弾性継手のねじりぱね定数
mc
:従動休の質量
r t
:カムの半径
:時間
t6
:停止時間(上軸の回転が停止するまでの時間)
t4
:糸切り作動時間(上軸が定常回転している時間)
Tc
:下軸あるいは立軸のトルク
χ
:従動体の変位(カム曲線)
χ0
:コイルぱねの初期変位
α
:圧力角
φ1
:カム部の回転角
φ2
:歯車部の下軸等価な回転角
わ
:スリップリングの回転角
μc
:ローラとカムの間の摩擦係数
ωむ
:立軸端部の下軸等価な角速度
7.3 糸切り機楕と糸の切断原理
(1)糸切り機構
糸切り機構は図1.1のミシンヘの付加機構であり,図7.1の見取図で示される.
糸切り機構はカム機楕とメス機構に大別できる。
カム機構は下軸⑩に固定された囚筒カム紐(cyl indrical eal)と従動泳から成る
従動休の主楕成因子はカム軸(け)(cal shaft)とカム追従腕⑩(ca● follower er
である。カム軸はカム軸駁付台⑧(cal shaft braeket)の二つの軸受間をしゅう動
する。この軸受間には糸切り作動魏④(aetuating crank)が躯込まれており,リン
ク⑩(Hnk)によってロータリソレノイド⑨(rotary solenoid)のアーマチュア作
動腕⑥(ar・ature erank)に連動されている。カム追従腕は軸でローラを支持してお
り,糸句り作動腕のピンに連動されている。またカム軸にはコイルぱね秘(s,ring)
が圧縮状態で装着されており,カム追従腕を所定の位置に侍機させている。
116-
乖瞥
カム,⑩;カム軸,⑩;カム追従腕,⑩;メス駆動腕,@;メス腕,
瞼寥
⑩⑩⑧⑧
プリテンショナ,
沓ー
下軸,◎;上軸,⑥;ロータリソレノイド、⑨;立軸,騨;コイルばね,
移動メス,⑨;固定メス,②;上糸調鈴器,
①,⑥:傘歯車,面;カム軸取付台,⑦;糸切り作艶腕,⑩;リンク,⑥;
アーマチュア作動腕,(回);上糸,(勁;ピッカ,(回);レバー,(わ;ワイヤ,G)
リンク,(D;駆動腕,
図フス 糸切り機構
117
一方,カム軸の他端にはメス駆動腕⑩(knife driving crank)を介してメス機楕
が構成されており,これは主として移勤メス⑧(lovable knife〉と固定メス⑨
(fixed knife)から成る.移動メスはメス腕効くlovable knife crank)の上端部に
固定メスはメス台に,それぞれ取付けられている.
以上の糸切り機構ば,二組の傘歯車①,⑧と立軸座)を介して上軸◎に連動されてい
る。
(2)上糸の張力調節器
糸切り機構には,そのほかに糸切り作動時の上糸⑥(needle thread)の張力を調
節するプリテンショナ⑩(pretensioner)が付設されている。これはもう一つの上糸
調節器②(thread tension regulator)およぴピッカ⑩(picker)と連動して用いら
れる。上糸調節器の端部には,レバー④(lever),ワイヤ②くwire),そしてロータ
リソレノイド⑩から成るぱね力開放機構が構成されている。ピッカはリンク⑧(link)
と駆艶腕①(driving erank〉を介してアーマチュア作動腕⑥に連動されている.
(3)糸切り動作
図7.2に糸切りメスの動作状況を示す.ここでは図7,1と関連づけて糸切り機構
の動作について述べる。
メスの待機状態(図7.2(a)〉で糸切り指令信号が投人されると,ロータリソレ
ノイド⑨はl磁されアーマチュアは回転する。これにともなってピッカ⑩はポビンケ
ース⑥(bobbin case)の穴に,ローラはカム溝に入り込む.同時に上糸調節器②の
ぱね力は解放される。この結果,上糸⑥の張力はプリテンショナ⑩のみによって負荷
されることになる。
一方,ローラのカム溝への突入直後に下軸⑧は上軸◎とともに回転される(ミシン
の停止歌態から糸切り動作に人る場合)。このため釜の剣先⑧(hook l)oint)に掛け
られた上糸Oは内釜⑧の外周に導かれる.同時に針⑦(needle)は下死点付近より上
昇する。従動休は,ぱね力に抗してまず矢印Aの向き(図7.1)に変位する。これ
にともなって移勤メス⑧ぱ矢印aの向きに回転し,切断すべき上下2本の糸を選別す
る(図7.2(b))。選別後,2本の糸は移動メスのフック⑧(thread catcher
hook〉に捕捉される。このとき内釜の外周を回った上糸はピッカ⑥に掛けられ,切断
後の残り糸長さが確保される。その後,従動体が矢印Bの向きに復帰し始めると
(図7.1),移動メスも矢印bの向きに回転する(図7.2(c)》。この回転によっ
て捕捉された糸は引出され,移動メスが復帰し終わる直前に固定メス⑦との間で切断
118
⑧;釜、⑧;移動メス,(y);固定メス,
⑩;ピッカ,伍);ボビンケース,(S);剣先,(y);針,⑧;フック
図7.2
糸切りメスの動作状況
H9
される(図7.2(d))。移動メスの復帰後,上軸の回転は停止される。
なお糸切り回転数nは各社製晶とも200 rpm前後である。
7.4 力学的モデルと運動方程式
(1)力学的モデル
糸切り機構の運動解析においては次の仮定を設ける。
a。傘歯車①,⑥のバックラッシュは無視できるほど小さい。
b。捉動体が変粧するt,時間,上軸◎の狗速痰は一定である.その後,直線的に
減遠され,t6時間に停止に至る。
c。カムには従動休による力,ぱね力およぴローラとの間の摩擦力のほかに,メス
機構の動作に基づ《外力が作用する.この外力は糸の引き出し領域において三角形波
状の変動を示し,糸の切断時に最大となる。
aの仮定と上軸◎は下軸⑩や立軸⑨のねじりぱね定数に比較して嗣休とみなせるこ
とから,糸切り機構は図7.3の力学的モデルに等価することができる。ただし,破
線部は供試ミシンに対するトルク検出用機器であり,スリップリングが下軸の延長端
部に弾性継手を介して連結されている。ところで弾性継手のねじりぱね定数が下軸や
立軸のそれに比較して無視できるほど小さい場合や実機の場合には,実線部から成る
2自由度の振動系モデルに等価できる.
(2)運動方程式
いま,図7.3のねじり振鯉系において,ω。の角速度が立軸⑨に鼠達され,外力
F。がカム柚こ作用している我態を考える.このとき各可艶牒の運動方程式は式
け.0で表わされる。ただし,力と変位は図7.3の矢印の向きを正とする。
hlぷ汁clμ1- j;2)十KI(φ1-φ2)=一F。r(tan a 十μ。)
1.2ぶ之+cl42-,ん)十c2(必2-Ω)十c3(ぷ2-必3)
+KI(φ2-φ1)十K2(φ2- ∫;Ωdt)十K3(φ2-φ3)=0
l c3ぷ3+c3(ぷ3-j2}十K3(φ,-φ2)=0
ただし,
Fc=Fc1十Fc2十Fc3=m。戈十kc(z十χc)十Fc3
(7.1)
120-
ωC
Ω=
-
t
ωC
t t,
-
-
t
b
一
t4
○
式(7.1)中,圧力角α,変位Z,そして外力F。3は,いずれも回転角φiの関数
として表わすことができる4946≒また停止時間t、は,電動機のプレーキ特性と回
転子の慣性モーメントが知れれぱ,エネルギー保存則から容易に求めることができる。
7.5 上軸と立軸のトルク
運動方程式の解は、ルンゲ・クッタ・ギル法を用いて数俵計算した。数値計算によ
り回転角釦とφ,が求められると,下軸咎と立軸⑨に生じるトルクT。は次武で衷わ
される。
KI(φ1-φ2)
jしfリ
ドーペーし
Tc
:下軸
(7.2)
K2(φ2-むΩdt) :立軸
7.6 下軸のトルクの検出
実験による本理論の検鉦では下軸⑩のトルクを対象にした。図7.4に夷験装簾の
外観を示す。
7.6.1 実験装置と実験方法
実験で供試したDB-1 9 9形高速本縫い工業用自動糸切りミシンのおもな仕様を
表7.1に示す。このミシンは基本的には第2章のDB-130G形ミシンを母体に
しており,さらに軽量化技術により高遠化されたのがLS2-1 9 0形ミシンである
(節2.7参照).
トルク検出装麓は,外周に2枚のトルク検出用ひずみゲージを貼付した下軸咎,下
軸の延長端部に弾性継手を介して達結した水銀スリップリング,応答周波数2 kHzの
動ひずみ計,そして電磁オシログラフで構成した.
121
〔尹耶吋「引ower body
T「8nsmi吋e「
目ook s隔吋 日ex㈲e coU匹∩9
図y3 糸切り機構の力学的モデル
-122-
図7.4 実験装置の外観
123
表7.1 供試ミシンの仕様
Thread trimmin9 speed(rpm)
Sewin9 machine
200
Maximum stitch len9th (mm)
4
Maximum sewin9 speed (rpm)
4500
Moment of inertia(m9・m2)
lcl
24.4
lc2
28、5
lc3
CI
240
16.9
viscous dampin9
C2
Thread trjmmin9
1.55
coefficient{mN・m・s)
C3
21.7
mechanism
(N・m)
KI
284
K2
237
K3
155
Sprin9 constant
(kN/m)
Mass(10 ̄2k9)
kc
mc
-124-
○。353
17.8
なお本実験では,下軸⑩のトルクT。と同時に,メス機構の動作に基づく外力F。,,
従動休の変位χ,ローラのカム講への突入状況,ロータリソレノイド電源の投入状況,
そして上軸◎の回転数nの変動状況も検出ししすなわち外力F。4ま,メス腕⑩を介
しメス駆動腕({〕タの二つの腕に作用する曲げ力として検出した。このため二つの腕の
根外側面にそれぞれひずみゲージを貼付した。変位χとローラの突入状況は板ばねの
変位最として検出した.このためカム軸(〔知)端路とアーマチュア作動腕⑥にぱ,遮当
に薄い板ばねから成る変伍計を設涙した。また回転数nの変勤歌況は上軸◎の端部に
連結したタコメータにより検出した。
実験は,縫製後いったん停止させた供試ミシンに指令信号を投入し,糸切り機楕を
作動させた。そしてこのとき下軸参のトルクTよ対妬して生じるひずみゲージの出
力電圧を電磁オシログラフに記録した。同時に外力F。3や変位χも同様にして求めた。
7.6.2 実験結果
糸切り作髄時に下軸⑧に生じるトルクT。の変動状況を回7.5に示す。この場合
の縫製条件は,ブロード布2枚重ね,ポリエステル20番の糸45≒そして送り量2自
を選定した。回転数nは200 rpmである。
(1)下軸のトルク
図7.5のトルク変動から次のようなことがわかる。トルクT。は約500 Hzの振動
を呈し,その大きさは従動休の登はん時よりも復帰時の方が顕著である。すなわち従
動休が変位し飴めて登はんし終わる45 msの期間,トルクT。の変動振幅は35 mN・m
程度である。これに対して復帰時の55 msの期間には100 mN・mを越すような二つの
衝撃的なトルク変動がみられる。これらの変動はそれぞれ糸の捕捉領域と引出し領域
で発生しており,そのピーク値は-280 mN・mと220 mN・mである.説明上,これらの
変動はトルクT。,とT。,と称する。なお上軸◎の回転後,従動休が変位し始める65
sの期間にも若干の変動がみられる。捉動休が復帰し終わると,電動機の急激なプレ
ーキ作動により上軸は直線的に滅速され,約15 ms後に停止に至る。これにともなっ
てトルク変動は低次の自由振動に移行する。
一方,ローラの突入とロータリソレノイド電源の投入状況から,ローラは電源の
投入後20 msにカム講に突入し,電源の遮断後85 msにカム溝から脱出している。
(2)メス機構の動作に基づく外力
図7.5の外力変動から,メス機構の動作に基づ《外力F。3は登はん時よりも復帰
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F。3は10 N程度であるのに対して,復帰時には左側に55 Nにも達する直角三角形
波状の変動がみられる、この外力F。3のピークの発生時点はトルクT。2のそれと対応
している.
7.7 糸切り機構の作勤により発生する力の検討
7.7.1 カムに作用する外力
式(7.1)によれぱ,下軸⑩に生じるトルクT。の発生には外力柴件が大きく影響
している。このためここでは外力F。の発生機構について考察する。
図7.5の場合にカムに作用する外力F。を下軸⑩の回転鈎との関係で図7.6に示
す。従動休による力F。,とコイルぱねく秘のぱね力F。心計誄憤であり,メス機構によ
る外力F。3は直角三角形波による実験値の近似である。
(1)従勤体による力とコイルぱねのぱね力
図7.6から,従勤休の力F。1の変動は領域φA
もとφe
必)において顕著であ
る。これは,これらの領域のカム曲線が比較的曲串半径の小さな円曲線から構成され
ているために,急激な加遠度変動が生じることによる.その他の領域では直線あるい
は曲率半径の大きな円曲線から構成されているために,力F。1はほとんど生じない。
一方。ぱね力F。2の変動はきわめて小さく,大きさは全領域にわたってほぽ初期荷重
に等しい。これはぱね力の変動をできるだけ小さくする目的で,ぱね定数の小さなぱ
ねが大きな初期変位状態で装着されているためである。
(2)メス機構の動作に基づく外力
a‥楕成因子
ここでは図7.6の領域φE
φμこみられる変動外力F。3の構成因子を明ちかにす
るために,次のような実験を試みた。すなわち固定メス⑨を除去した状態で糸切り機
構を作動させた。その他の条件は図7.5の場合と同様である。ごうして求めた外力
F。3の変動状況を図7.7に示す。
図7.7から、復帰時のメス駆動腕⑩こは約70 Nの変動外力F。3がみられる。こ
の外力は図7.5の場合よりも大きく,糸切り動作の終了後も保持されている。同様
の実験をさらに糸を除去して行なったところ,顕著な変動外力F。3は生じなかった。
これらのことと領域必E
φΓが糸の引出し領域であることから,顕著な変動外力F。3
の発生には移動メスに捕捉された糸が大き《影響していることがわかる。これに対し
てメスのかみ合いによる摩擦力の影響は小さい.
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図7.7 メス機構の動作に基づく外力(固定メス除去)
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b。モーションダイアグラムとの関係
ここでは糸の張力変艶について,図1.2の天ぴん③,送り歯⑥,そして捉動体の
モーションダイアグラムと関連づけて考察する。
図7.8は送り量2-の場合のモーションダイアグラムである。天ぴん②の垂直
変佼は県穴⑥で,送り歯⑥の水平と垂直変位は先端部で測定した.垂直変棺の原点は
針板①の上面位置に,水平変拉のそれは送り歯が縫製作業者に最接近したときの淵定
点にとってある。なお従動休の変位には目視による糸の選別領域必。
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φ。,引出し領域φ。
φt,,捕捉領域
φ4,そして切断位置φaも併記してある。
図7.8から次のようなことがわかる。糸切り動作の開始後,糸の捕捉領域までは
天ぴん②の垂直億簾と送り歯⑥の水平位麗はともに下苑点付近である,このためこの
領域の上県◎には張力は作用しない。これに対して引出し領域では両変位の急増にと
もなって,縫製物とプリテンショナ⑩の間の上糸には張力が作用する。とくにφ1の
位置で天ぴんの変位は全変位量の90%にも達し(上死点214皿),張力も最大に
なる。この張力は,通常,下糸の張力よりもはるかに大きい。糸の切断後この張力は
消失する。
以上のことから,メス機構の動作に基づ《外力F。3は,主として移動メス⑧のフッ
ク⑧に捕捉された上糸◎の張力が移動メスに作用することにより艶生するものと考え
られる,
7,7.2 下軸のトルクの発生機構
前節の変動外力F。を用いて,図7.5の場合のトルクT。を数値計算した結果を実
験値と比較して図7.9に示す。数値計算では,時間の刻み幅はo。2 ms, 摩擦係数
μ。は予備実験からO。14とした。
図7.9から,計算値は実験値と比較的よく対応している。このことから,従動体
の復帰時にみられるトルクT。1とT。2の発生機構は次のように説明づけることができ
る。
まずトルクT。1は,ぱね力F。2に従動体の力F。1が重畳した外力に基づいて発生す
る。すなわちこの領域は糸の捕捉領域であり,図7.6から明らかなように力F。1の
向きはばね力F。2と同じである。このため両者の和の圧力角成分はカムの回転角方向
に作用する。これにともなって下軸⑩には負のトルクT・1が生じる。
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下軸に生じるトルクの計算値と実験値の比較
-132-
つぎにトルクT。2は,ぱね力F。2に上糸⑥の張力による外力F。3が重畳した外力に
基づいて発生する。すなわちこの領域は糸の引出し領域であり,張力による外力F。3
の向きはぱね力F。2とぱ反対である。このためカムの円周方向には両者の差の圧力角
成分が作用する.図7.5の場合には張力による外力F。3はばね力F。2よりも大きい
ために,両者の差の圧力角成分はカムの反回転方向に作用する。これにともなって下
軸⑧にぱ正のトルクT。,が生じる。
7.7.3 トルクの動荷重係数
ここではトルクT。1とT。2の動荷重係数について考察する。図7.10はトルクT。1
について動荷重係数を求めた結果であり。横軸は回転数nの2乗にとってある。
図7.10から,トルクT。1の動荷重係数は回転数nの2乗に比例して増大する。こ
れは,前節で述べたように,トルクT。1の発生には従動休の力F。1が大き《寄与して
おり,この力は回転数nの2乗に比例して増大するためである。
これに対してトルクT。2の場合は,動荷重係数は回転数nにはほとんど関係な《1
である.これは張力による外力F。3の作用時間がトルクT。2の変動周期に比較してか
なり大きく,かつこの外力の大きさは回転数nにはほとんど依存しないためである。
しかし外力F。3の大きさは糸の太さやプリテンショナ⑩の調節量により大きく変化す
る。このため仕様条件での外力F。3を的確に把握しておくことが重要となる。
7
7.4 実機の設計公式に対する考え方
ここでは本計算法を2自由度系に変換して実機の下軸⑩に生じるトルクT。を求め
た。その結果,供試ミシンの場合よりも滅衰が小さくなる点を除けぱ,両者はよく似
た変動を示した。このことから,糸切り機構におけるローラの寿兪や柵成部材の強度,
あるいは電動機との組合わせ特性などを設計段階で評価するためには,動荷重係数を
十分に考慮する必要がある.とくに糸切り速度の高速化を計る場合には,トルクT。l
が急増するため注意を要する.このトルクはカム曲線の検討などとともに本理論から
求めることができる.これに対してトルクT。2のみを問題にする場合には,張力によ
る外力F。3とぱね力F。2の差の圧力角成分がカムの円周方向に静的に作用するとして
求めることができる。
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-134-
7.8 結 言
本章で得られたことを要約すれぱ次のとおりである。
く1)糸句り作動時に供試ミシンの下軸⑧に生じるトルクT。の計算籤は,実験俵と
よい対応を示した.このことから,本計算法は実機の回転軸系に生じるトルクの推定
法として妥当であると考えられた。
(2〉下軸⑩のトルクT。には,従動体の復帰時に二つの顕著なトルクT。1とT。2が
みられる。
(3)トルクT。1は,糸の捕捉慨域において,コイルぱね喩のぱね力F。2に従動休の
力F。,が重畳した外力に基づいて発生する。このトルクは下軸⑧の回転を増速させる
向きに作用する。
(4)トルクT。,は,奈の引出し領域において,上奈◎の張力による外力F。,とぱね
力F。2の差の外力に基づいて発生する。外力F。3は糸の太さやプリテンショナの)の調
節量によってぱね力F。,よりもかなり大きくなる.このときトルクT。,は下軸⑩の回
転を減速させる向きに作用する。
(5)トルクT。1の動荷重係数は回転数nの2乗に比例して増大する,これに対して
トルクT。2のそれはほとんど1である。このためトルクT。2は,張力による外力
F。3とぱね力F。2の差の圧力角成分がカムの円周方向に静的に作用するとして求める
ことができる。
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擲S8j傘
糸占
謹兪
近年,工業用ミシンも電子化時代に人ったとはいえ,捉来機能の向上に対する要求
は依然として強い。換言すれぱ,掻作性からくる快適さが求められており,可縫性の
向上とともに,低振動化,低騒音化,軸受しゅう動部の無給油化などはその代表例で
ある。しかしこれらの課題に経験技能の延長線上で対応するには限界があり,設計段
階における負荷条件の定量的な把握とこれに基づく的確な評価が必要である。
そこで本研究では,まず工業用ミシン機構を動力学的に解析し,負荷条件を明らか
にした。つぎにこの結果に基づき,現場の強度問題や今後の開発課題に対する設計思
想を示した。本研究で得られたことを要約すれぱ次のとおりである.なお各章の理論
はいずれも夷験値との対応により,その妥当性が検証された.
第2章では,天ぴん・針棒機楕を対象に運勤部品の軽量化による振動低減の可能性
について検討した。その結乗,針棒⑥,天ぴん②,そして針棒クランクロッド⑤の軽
量化が有利であることが判明した.このため材料を鉄鋼からアルミニウム合金に置き
換えて従来の70
80%に軽量化したところ,振動の大きさは許容製造厘価内で従来
の約?o%に低滅された。
第3章では,送り機槙を対象に二又ロッド⑧とクランクロッド⑩の節点力F・ヽ,FI,
や9V債(圧力×速度),送り調飾器◎の送り量設定状態の安定怪などについて検討
した。その結果,とくに節点力Fhについては,二又腕に等価長さの考え方を導入す
ることにより,送りカムスリープ⑩との間の一点集中荷重として扱うことができる。
この考え方によれぱ,送り量3 -,上軸回転数4000 rpmのときの節点力Faによる
pv値は2.2 M Pa ・m/sである。pv値は回転数の3乗に比例するため,高遠化や無
給油化の開発においては軸受の検討と同時に圧力pそのものの低減が重要になる.
前進送り時の送り調鈴器◎には,節点力によるトルクT,がコイルぱね②によるト
ルクT。と同じ向きに作用する。このため送り調節器の設定状態は安定である。トル
クT。は回転数の2乗に比例するため,自動反転装置のソレノイド容量は高速時のト
ルクT,とT・の和に蓬づいて選定されなけれぱならない。一方,コイルぱね③は,低
速で大負荷縫製の場合にもトルクの和が常に正方向に所定の大きさ以上になるように
選定されなけれぱならない。
策4章でぱ,押さえ機構作動時の送り機構を対素に,送り台⑩こ生じる押さえ⑧の
押圧力Pを解析した。そして押圧力Pの変動ぱできるだけ小さい方がよいとする可縫
-136-
性の観点から。この押圧力におよぽす構成因子の影響について検討した。その結果,
押さえ機構は押さえぱねk。と送り機構系のぱねklの並列ぱねで支持される押さえ機
横可艶蔀⑩こ,送りの遁艶が強劇付与される1自i度の振飴県と考えられ,挿さえぱ
ね勢の初期荷重を基準とする挿圧力Pの変飴についてぱ浹のことが明らかになった。
(い上禰回転数にほぽ1次で比例する。
〈2〉可鯉熊(〔知誓量にほぼ1攻で地例する。
(3)ぱね定数k,や初期変位y 15.に対する動荷重係数は指数関数的に滅少する。
(4)縫製時はぱね定数kfの減少と考えることから,本理論の延長上で扱うことが
できる。
第5章では,第4章と関連づけて,押さえ機構の追従性におよぽす構成因子の影響
について検討した。その結果,押さえ⑥の運鮪yldま送り白(〔炉)垂直変拉(y 1,
y 14,)に送り機構系の自由振動が重畳して構成されていると考えられ,垂直変位
(y 14-y 14.)を基準とする押さえ⑧の変位yldこついては次のことが明らかになっ
た。
(1〉供試ミシンの実験条件の場合,2800 rpmまでの上軸回転数領域における動荷重
係数はほぽ1であるのに対して。それ以上の領域では直線的に増大する。このため回
転数が5000 rpmを越すとジャンピングの発生する可能性がある。
く2)可動部⑩の質量にほぽ1次で比例する。
(3)ぱね定数k,や初期変位y 15。に対しては直線的に滅少する。
(4)ぱね定数kdこ対しては負の双曲線状特性を示す。
第6章では,布への針の貫通力や上糸の引締め張力などの外力が上粕◎のトルクT
(T,あるいはTf)におよぼす影響について検討した。その結果,針の貫通力のうち最
初の三角形波状の変動F。1は,トルクT,に動荷重係数が1を越す過渡振動を誘起す
る。これに対して。その他の変動F。2,F。3,上糸の引締め張力F,や押さえ⑥の押
圧力Pは,顕著な過渡振動は誘起しない。このため,たとえぱ電動機との組合わせ特
性を評価するために,外力作用時のトルクTを推定するような場合には,天ぴん・針
棒機構運動系の上軸には弾性を考慮する必要がある。この考え方に基づき,天ぴん・
針棒機楕運動系にラグランジュの運動方程式を,送り機構運動系にニュートンの運動
方程式を適用して求めたトルクTの計算値は実験倣とよい一致を示した.
第7章では,自勤糸切り装置付きミシンを対象に糸切り時に回転軸に生じるトルク
について検討した。その結果,下軸⑧には捉動俸の復帰時に二つの顕著なトルクT・1
137
とT。,が生じる.前者のトルクは,奈の播捉領域において,コイルぱね扉のぱね力
F。2に従動休の力F。1が重畳した外力に基づいて,下軸の回転を増速させる向きに生
じる.後者は,糸の引出し領域において,上糸○の張力による外力F。,とぱね力F。
の差の外力に基づいて,下軸の回転を減速させる向きに生じる.またトルクT。1の動
荷重係数は上軸回転数の2乗に比例するのに対して,トルクT。2のそれはほとんど1
である.このためトルクT。2は,外力F。3とぱね力F。2の差の圧力角成分がカムの円
周方向に静的に作用するとして求めることができる,などの基礎的知見が得られた。
138
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3射
否辛
本論文の作成にあたり,ご指導とご助言を賜わりました名古屋大学工学部 太田
博教授,近藤一義教授,そして安田仁彦教授に深甚なる謝意を表わします。
本研究の遂行において,変わらぬご指導とご鞭捷を頂きました浜松職業訓練短期大
学校 古橋 猛博士(前 静岡大学工学部助手)に厚《お礼申し上げます.
また本研究の遂行に対し,ご支援頂きました三菱電機会社 坂田邦壽専務取締役
(元 名古屋製作所長),本社 吉川恵三縫製機械部長,中津川製作所 三上英一副
所長(元 名古屋製作所ミシン製造部長),長崎製作所 二川暁美開発部長(前 中
央研究所機械技術研究部長),名古屋製作所 松野博朗ミシン製造部長,志賀康宣ミ
シン製造次長,名菱産業会社 松本好三取締役(元 名古屋製作所副所長),ほか関
係者に深謝致します。
さらに名古屋製作所 玉国法行主事には実験装置の楕成や入力データの作成に関し、
ご協力頂きました。ここに感謝致します。
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