...

JP WO2012/117688 A1 2012.9.7 10 (57)【要約】 酸素化体の安定性が

by user

on
Category: Documents
27

views

Report

Comments

Transcript

JP WO2012/117688 A1 2012.9.7 10 (57)【要約】 酸素化体の安定性が
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
(57)【要約】
酸素化体の安定性が高く、生体適合性が高く、且つ、
調製(合成)が容易である新規なヘモグロビン−アルブ
ミン複合体、並びに該複合体を含む人工血漿増量剤及び
人工酸素運搬体を提供する。本発明のヘモグロビン−ア
ルブミン複合体は、コアとしてのヘモグロビンと、前記
ヘモグロビンに架橋剤を介して結合されたシェルとして
のアルブミンと、を有することを特徴とする。また、本
発明の人工酸素運搬体は、本発明のヘモグロビン−アル
ブミン複合体を含むことを特徴とする。
10
(2)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コアとしてのヘモグロビンと、前記ヘモグロビンに架橋剤を介して結合されたシェルと
してのアルブミンと、を有することを特徴とするヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項2】
前記ヘモグロビンにおける前記架橋剤との結合部位がリシンであることを特徴とする請
求項1に記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項3】
前記アルブミンにおける前記架橋剤との結合部位がシステイン34であることを特徴と
する請求項1又は2に記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
10
【請求項4】
前記ヘモグロビンと前記架橋剤との結合がアミド結合であり、前記アルブミンと前記架
橋剤との結合がジスルフィド結合及びスルフィド結合のいずれかであることを特徴とする
請求項1から3のいずれかに記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項5】
前記アルブミンの数が1個∼7個であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに
記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項6】
前記ヘモグロビンが、ヒトヘモグロビン、ウシヘモグロビン、組換えヒトヘモグロビン
、及び分子内架橋ヘモグロビンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特
20
徴とする請求項1から5のいずれかに記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項7】
前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、及び組換えヒト血清ア
ルブミンからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1から6のいずれかに記
載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【請求項8】
前記架橋剤が、下記一般式(1)∼(3)及び化学式(1)で表される化合物からなる
群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記
載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【化1】
30
一般式(1)中、R1は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。
【化2】
40
(3)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【化3】
一般式(2)中、nは、1∼10の整数を表す。
【化4】
10
一般式(3)中、R2は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。
【請求項9】
前記架橋剤が、下記一般式(4)で表されることを特徴とする請求項1から7のいずれ
かに記載のヘモグロビン−アルブミン複合体。
【化5】
20
一般式(4)中、R3は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、R4は、下記一
般式(5)∼(6)及び下記化学式(2)∼(4)のいずれかを表す。
【化6】
30
一般式(5)中、nは、1∼10の整数を表す。
【化7】
【化8】
【化9】
一般式(6)中、nは、2、4、6、8、10又は12の整数を表す。
40
(4)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【化10】
【請求項10】
請求項1から9のいずれかに記載のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特徴
とする人工血漿増量剤。
【請求項11】
請求項1から9のいずれかに記載のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特徴
とする人工酸素運搬体。
10
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘモグロビン−アルブミン複合体、並びに該複合体を含む人工血漿増量剤及
び人工酸素運搬体に関し、特に、ヘモグロビンとアルブミンとが架橋剤を介して結合され
たヘモグロビン−アルブミン複合体(ヘテロクラスター)、並びに該複合体を含む人工血
漿増量剤及び人工酸素運搬体に関する。
【背景技術】
【0002】
血液の重要な役割の1つとして酸素の輸送がある。血液に含まれる赤血球中のヘモグロ
20
ビン(ヘムを活性中心とする分子量が約64,500のヘムタンパク質)が、肺で酸素を
結合し、末梢組織で酸素を解離することにより、体組織細胞に絶え間なく酸素が供給され
ている。
【0003】
ところで、災害や事故などによって人体から大量の出血が生じた場合、輸血により体内
の酸素輸送を回復/維持する必要がある。多くの医療先進国においては、献血/輸血体制
が整備されており、輸血に伴うウイルス感染などのリスクはかなり低い。
しかしながら、赤血球を投与する際には、事前に血液型の確認(クロスマッチング)を
行う必要がある。また、未知ウイルスに感染するリスクを完全に排除することはできない
。また、赤血球の保存期間は4℃で3週間と短いため、大規模な災害が発生した場合、充
30
分な量の輸血液を確保することができないという懸念がある。さらに、今後、少子高齢化
が進むにつれ、血液提供者(ドナー)層の人口が減少して、輸血液の安定供給が困難にな
ることが予想される。
また、現在、赤血球以外の血液の成分(例えば、血漿タンパク質)の代替物については開
発が進んでいるものの、赤血球の代替物としての人工赤血球(酸素運搬体)の開発が遅れ
ている状態である。よって、赤血球の代替物としての人工赤血球(酸素運搬体)が開発さ
れれば、人工血液の開発も大幅に進むことになる。
【0004】
斯かる状況の下、血液型が存在せず(あらゆる血液型の人間に対して投与可能であり)
、ウイルス感染などのリスクがなく、長期保存可能で、必要な時にいつでも使用可能であ
40
る人工酸素運搬体(人工赤血球)の開発が国際的に展開されている。
例えば、米国では、人工酸素運搬体として、ヘモグロビンを分子内架橋した分子内架橋
ヘモグロビン(例えば、特許文献1参照)、ヒトヘモグロビンを架橋剤で結合したヘモグ
ロビン重合体(例えば、特許文献2参照)、ウシヘモグロビンを架橋剤で結合したヘモグ
ロビン重合体(例えば、特許文献3参照)、ヒトヘモグロビンの分子表面に水溶性高分子
であるポリ(エチレングリコール)(PEG)を結合させたPEGヘモグロビン(例えば
、特許文献4参照)、などが開発され、臨床試験が進んでいる。これらの人工酸素運搬体
は、サブユニット間を架橋したり、分子サイズ(分子量)を大きくしたりして、ヘモグロ
ビンのサブユニットへの解離等による腎排泄を回避するという分子設計であるが、臨床試
験において、血管収縮による血圧亢進等の副作用が生じたり、人工酸素運搬体投与群と生
50
(5)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
理食塩水投与群との間に効果の差が認められない、などの理由から、食品医薬品局(FD
A)に認可されて、臨床使用されている製剤は、未だ存在しない。
一方、日本でも、リン脂質分子が水中で自己組織化されて形成される二分子膜小胞体(
リポソーム)の内水相にヘモグロビンを封入した細胞型人工酸素運搬体の開発が進んでい
る(例えば、特許文献5参照)。この細胞型人工酸素運搬体には、問題となる副作用もな
く、実用化が待望されるが、高度な調製技術及び初期コストが必要となるという課題があ
り、臨床試験まで至っていない。
【0005】
また、本発明者らは、タンパク質のうちヘモグロビンの次に多く血液中に含まれる血清
アルブミンの多分子結合能に着目し、その疎水ポケットに酸素結合部位となる鉄ポルフィ
10
リン(ヘム)を包接させたアルブミン−ヘム複合体を開発した(例えば、特許文献6参照
)。このアルブミン−ヘム複合体は、酸素結合能及び生体内酸素輸送能を有することが明
らかであるが、ヘム誘導体が特殊構造であるために合成が煩雑であること、ヘム誘導体の
酸素化体の安定性がヘモグロビンの酸素化体の安定性に比べると低いこと、などの課題が
ある。
【0006】
以上のような背景から、酸素化体の安定性が高く、生体適合性が高く(例えば、腎排泄
がなく、血圧亢進等の副作用がなく)、且つ、調製(合成)が容易である新規な人工酸素
運搬体の開発が強く望まれていた。
【先行技術文献】
20
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−306036号公報
【特許文献2】特表平11−502821号公報
【特許文献3】特表2006−516994号公報
【特許文献4】特表2005−515225号公報
【特許文献5】特開2004−307404号公報
【特許文献6】特開平8−301873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
30
【0008】
本発明は、酸素化体の安定性が高く、生体適合性が高く、且つ、調製(合成)が容易で
ある新規なヘモグロビン−アルブミン複合体、並びに該複合体を含む人工血漿増量剤及び
人工酸素運搬体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、酸素結合能を有するヘモグロビンからなるコアに、負の表面電荷を有する
血清アルブミンを、架橋剤を介して、クラスター状に結合させることにより、その目的を
達成し得ることを見出した。
【0010】
40
すなわち、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、コアとしてのヘモグロビンと
、前記ヘモグロビンに架橋剤を介して結合されたシェルとしてのアルブミンと、を有する
ことを特徴とする。
【0011】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記ヘモグロビンにおける前記架橋剤と
の結合部位がリシンであることが望ましい。
【0012】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記アルブミンにおける前記架橋剤との
結合部位がシステイン34であることが望ましい。
【0013】
50
(6)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記ヘモグロビンと前記架橋剤との結合
がアミド結合であり、前記アルブミンと前記架橋剤との結合がジスルフィド結合及びスル
フィド結合のいずれかであることが望ましい。
【0014】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記アルブミンの数が1個∼7個である
ことが望ましい。
【0015】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記ヘモグロビンが、ヒトヘモグロビン
、ウシヘモグロビン、組換えヒトヘモグロビン、及び分子内架橋ヘモグロビンからなる群
から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
10
【0016】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記アルブミンが、ヒト血清アルブミン
、ウシ血清アルブミン、及び組換えヒト血清アルブミンからなる群から選択される少なく
とも1種であることが望ましい。
【0017】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記架橋剤が、下記一般式(1)∼(3
)及び化学式(1)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種であるこ
とが望ましい。
【化1】
20
一般式(1)中、R1は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。
【化2】
30
【化3】
40
一般式(2)中、nは、1∼10の整数を表す。
【化4】
一般式(3)中、R2は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。
50
(7)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【0018】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、前記架橋剤が、下記一般式(4)で表さ
れる化合物からなる群から選択される少なくとも1種であることが望ましい。
【化5】
10
-
+
一般式(4)中、R3は、水素原子及びSO3 Na のいずれかを表し、R4は、下記一
般式(5)∼(6)及び下記化学式(2)∼(4)のいずれかを表す。
【化6】
一般式(5)中、nは、1∼10の整数を表す。
【化7】
20
【化8】
【化9】
30
一般式(6)中、nは、2、4、6、8、10又は12の整数を表す。
【化10】
【0019】
本発明の人工血漿増量剤は、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特
40
徴とする。
本発明の人工酸素運搬体は、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特
徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、酸素化体の安定性が高く、生体適合性が高く、且つ、調製(合成)が
容易である新規なヘモグロビン−アルブミン複合体、並びに該複合体を含む人工血漿増量
剤及び人工酸素運搬体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
50
(8)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【図1】本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明について必要に応じて図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
(ヘモグロビン−アルブミン複合体)
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、少なくとも、コアとしてのヘモグロビン
と、シェルとしてのアルブミンとを有し、さらに必要に応じて、その他の部位を有する。
前記ヘモグロビンと前記アルブミンとは、架橋剤を介して結合されている。
例えば、図1に示すように、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体(星型へテロク
10
ラスター)100は、コアとしてのヘモグロビン10と、シェルとしての4個のアルブミ
ン20とを有する。図1において、ヘモグロビン10とアルブミン20とは、架橋剤(不
図示)を介して結合されている。
【0024】
<ヘモグロビン>
前記ヘモグロビンは、分子量が約64500である。
前記ヘモグロビン分子は、4つのサブユニットから構成され、各サブユニットは、それ
ぞれ1つのプロトヘムを有する。該プロトヘム内の鉄原子に酸素が結合する。即ち、1つ
のヘモグロビン分子には、4つの酸素分子が結合する。
前記ヘモグロビンとしては、ヒトを含む脊椎動物のものである限り、特に制限はなく、
20
目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒトヘモグロビン、ウシヘモグロビン、
組換えヒトヘモグロビン、分子内架橋ヘモグロビン、などが挙げられる。これらは、1種
単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、ヒトヘモグロビンが、生体適合性が高い点で好ましい。
また、前記ヘモグロビンは、タンパク質合成(培養)により容易に製造することができ
る。
【0025】
−ヒトヘモグロビン−
前記ヒトヘモグロビンとしては、ヒト由来の赤血球から精製したものである限り、特に
制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
30
【0026】
−ウシヘモグロビン−
前記ウシヘモグロビンとしては、ウシ由来の赤血球から精製したものである限り、特に
制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0027】
−組換えヒトヘモグロビン−
前記組換えヒトヘモグロビンとしては、通常の遺伝子組換え操作、培養操作により産生
したものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0028】
−分子内架橋ヘモグロビン−
40
前記分子内架橋ヘモグロビンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択するこ
とができ、例えば、ヘモグロビンにおけるサブユニットが架橋剤を介して互いに結合され
たヘモグロビン、などが挙げられる。
前記分子内架橋ヘモグロビンの具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選
択することができ、例えば、Diaspirin架橋ヘモグロビン(物質名:DCLHb
、バクスターヘルスケア社)、などが挙げられる。
【0029】
<アルブミン>
前記アルブミンは、血液中ではコロイド浸透圧調整を主な役割とする単純タンパク質で
あるが、栄養物質やその代謝産物(例えば、脂肪酸)あるいは薬物等の輸送タンパク質と
50
(9)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
しても機能し、その他、pH緩衝作用、エステラーゼ活性、などを有する。また、前記ア
ルブミンは、血漿タンパク質であるから、生体への適用、特に、赤血球代替物としての利
用に関して格段に有利である。
前記アルブミンの等電点は、7よりも低く、生理条件では、分子表面が強く負に帯電し
ているため、血管内皮細胞の外側にある基底膜(負に帯電)との静電反発により、血管外
に漏れ出しにくい。
また、前記アルブミンは、タンパク質合成(培養)により容易に製造することができる
。
【0030】
前記ヘモグロビンに架橋剤を介して結合するアルブミンの数としては、特に制限はなく
10
、目的に応じて適宜選択することができるが、1個∼7個が好ましい。7個以上は、立体
障害のため結合することが困難と考えられる。
前記アルブミンの数の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択する
ことができ、例えば、(1)電気泳動法により測定したヘモグロビン−アルブミン複合体
全体の分子量と、ヘモグロビンの分子量(64500)と、アルブミンの分子量(665
00)に基づいて算出する方法、(2)シアノメトヘモグロビン法(例えば、アルフレッ
サファーマ社、ネスコートヘモキットN、No.138016−14)を用いたタンパク
質の定量により算出したタンパク質の濃度、及び、660nm法(例えば、Pierce
社、660nm Protein Assay Kit、No.22662)を用いたヘ
ムの定量により算出したヘモグロビンの濃度に基づいて算出する方法、(3)電子顕微鏡
20
で観察する方法などが挙げられる。
また、アルブミンの数が異なるヘモグロビン−アルブミン複合体の混合体から、アルブ
ミンの数が所定の個数であるヘモグロビン−アルブミン複合体を単離する方法としては、
特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、カラムクロマトグラフ
ィーによる単離方法、などが挙げられる。
【0031】
前記アルブミンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例
えば、ヒト血清アルブミン、ウシ血清アルブミン、組換えヒト血清アルブミン、などが挙
げられる。
【0032】
30
−ヒト血清アルブミン−
前記ヒト血清アルブミンとしては、ヒト由来の血漿タンパク質から精製したものである
限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記ヒト血清アルブミンは、血漿タンパク質の約60%を占める単純タンパク質(66
500Da)であり、血中では、コロイド浸透圧を維持する役割や、各種内因性/外因性
物質を貯蔵乃至運搬する役割を担っている。前記ヒト血清アルブミンの等電点は、4.8
と低く、生理条件では、分子表面が強く負に帯電しているため、血管内皮細胞の外側にあ
る基底膜(負に帯電)との静電反発により、血管外に漏れ出しにくい。
【0033】
−ウシ血清アルブミン−
40
前記ウシ血清アルブミンとしては、ウシ由来の血漿タンパク質から精製したものである
限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0034】
−組換えヒト血清アルブミン−
前記組換えヒト血清アルブミンとしては、通常の遺伝子組換え操作、培養操作により産
生したものである限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
なお、近年、日本では世界に先駆け、ピキア酵母を宿主とした組換えヒト血清アルブミ
ンの量産体制が確立し、その臨床利用が開始されている。
【0035】
<架橋剤>
50
(10)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
前記架橋剤としては、ヘモグロビンとアルブミンとを連結可能な2官能性架橋剤である
限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、下記一般式(1
)∼(4)及び化学式(1)で表される化合物、などが挙げられる。これらは、1種単独
で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、α−(N−スクシンイミジル)−ω―ピリジルジチオ架橋剤(下記一
般式(1)において、R1が水素原子であり、nが5であるもの)、α−(N−スクシン
イミジル)−ω―マレイミド架橋剤(下記一般式(4)において、R3が水素原子であり
、R4が一般式(5)であるもの、さらには、R3が水素原子であり、R4が一般式(5)
であり、かつn=5であるもの、さらには、R3が水素原子であり、R4が化学式(3)で
あるもの)が好ましい。
【化11】
10
一般式(1)中、R1は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。例えば、n=5のものなどが一般的に挙げられる。
【化12】
20
【化13】
30
一般式(2)中、nは、1∼10の整数を表す。例えば、n=2のものなどが一般的に
挙げられる。
【化14】
40
一般式(3)中、R2は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、nは、1∼10
の整数を表す。例えば、n=5のものなどが一般的に挙げられる。
【化15】
50
(11)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
一般式(4)中、R3は、水素原子及びSO3-Na+のいずれかを表し、R4は、下記一
般式(5)∼(6)及び下記化学式(2)∼(4)のいずれかを表す。
【化16】
一般式(5)中、nは、1∼10の整数を表す。
【化17】
10
【化18】
【化19】
20
一般式(6)中、nは、2、4、6、8、10又は12の整数を表す。
【化20】
【0036】
前記架橋剤におけるスクシンイミジル基と、ヘモグロビンにおけるリシン残基のアミノ
基(−NH2)とは、アミド結合(共有結合)を形成する。
前記アミド結合を形成するための方法としては、例えば、ヘモグロビン及び架橋剤を5
30
℃∼30℃で0.2時間∼3時間攪拌すること、などが挙げられる。
前記架橋剤におけるピリジルジチオ基(SS結合)と、アルブミン分子におけるシステ
イン34(還元型システイン)とは、ジスルフィド結合(共有結合)を形成する。なお、
該ジスルフィド結合は、切断されやすいという特性を有する。
前記ジスルフィド結合を形成するための方法としては、例えば、アルブミン及び架橋剤
を5℃∼30℃で1時間∼40時間攪拌すること、などが挙げられる。
前記架橋剤におけるマレイミド基と、アルブミン分子におけるシステイン34(還元型
システイン)とは、スルフィド結合(共有結合)を形成する。
前記スルフィド結合を形成するための方法としては、例えば、アルブミン及び架橋剤を
5℃∼30℃で1時間∼40時間攪拌すること、などが挙げられる。
40
アルブミン分子において、システイン34(還元型システイン)は1つしか存在しない
ため、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、星型のクラスター構造(例えば、図
1)となり、分子構造が明確である。
【0037】
<その他の部位>
前記その他の部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、
例えば、アルブミン表面に共有結合により導入されたポリ(エチレングリコール)、アル
ブミンとともにヘモグロビンに結合された蛋白質、などが挙げられる。
【0038】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体の等電点としては、特に制限はなく、目的に
50
(12)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
応じて適宜調整することができるが、4.7∼6.5が好ましく、4.7∼5.5がより
好ましい。
【0039】
以上より、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、酸素結合サイトがヘモグロビ
ンであるため、安定な酸素化体を形成することが可能であり、体組織に効率良く酸素を供
給することができる。また、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、コアヘモグロ
ビンの周囲がアルブミンで覆われているので、等電点がアルブミンと同程度に低く、腎排
泄、血管内皮細胞からの漏出、血管収縮による血圧亢進も惹起しない。また、ヘモグロビ
ン及びアルブミンは生体物質であるため、代謝が良いと考えられる。さらに、本発明のヘ
モグロビン−アルブミン複合体は、調製が比較的容易であるにもかかわらず、三次元構造
10
は明確である。
また、本願発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、ヘモグロビンが酸素結合部位で
あることにより、酸素結合解離曲線がS字曲線となり、特に、末梢細胞の酸素分圧が低下
した場合に、酸素運搬能力が向上するという効果を有することが予測される。
以上より、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体は、安全性(生体適合性)と有効
性を併せ持った類例のない人工酸素運搬体といえる。
【0040】
(人工血漿増量剤)
本発明の人工血漿増量剤は、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特
徴とする。なお、前記人工血漿増量剤とは、出血などにより、循環血液量が不足した患者
20
に対して、循環血液量を回復・維持させる目的で投与される輸液剤乃至輸液製剤である。
【0041】
(人工酸素運搬体)
本発明の人工酸素運搬体は、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を含むことを特
徴とする。なお、前記人工酸素運搬体とは、酸素分子を運搬可能な物質であり、生体に投
与した場合には、赤血球の代替物として機能するものである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に
限定されるものではない。
30
【0043】
(実施例1)
−調製例1:メルカプトヒト血清アルブミン(HSA−SH)の調製−
まず、メルカプト分率が約25%と低いヒト血清アルブミン(HSA)におけるシステ
イン(Cys−34)の残基を全てチオール基に還元しておくために、以下の操作を行っ
た。
まず、サンプル瓶(30mL容量)にヒト血清アルブミン(920μM)1.3mLを
入れ、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS、10mM、pH7.4)10.7mLで希釈
し、0.1mM(12mL)のヒト血清アルブミン溶液を調製した。
次に、エッペンドルフチューブ(2mL容量)にジチオスレイトール(Dithiot
40
hreitol)(DTT、和光純薬社製)12.3mgを入れ、軽く脱気した後、別途
脱気したリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)1mLを加えて溶解し、ジチオスレイトー
ル(DTT)溶液(80mM)1mLを調製した。
ヒト血清アルブミン溶液(12mL)にジチオスレイトール(DTT)水溶液30μL
(ジチオスレイトール/ヒト血清アルブミン(DTT/HSA)=2(mol/mol)
)を加えてよく振とうし、室温で40分間静置した。
その溶液12.0mLを数本の遠心濃縮器(Sartorius Stedim Bi
otech社製、VIVA SPIN 20、限外分子量5kDa)に分け入れ、それぞ
れをリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS、10mM、pH7.4)で希釈後、遠心分離機
(BECKMAN COULTER社製、Allegra X−15R Centrif
50
(13)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
uge)を用いて、4000rpm、30分間、4℃の条件で、約1.0mLまで濃縮し
た。
さらに、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)19mLを添加し、同条件で約1.0m
Lまで濃縮した。
この希釈/濃縮操作を3回繰り返すことにより余剰のジチオスレイトール(DTT)を
除去することができた。
最後に数本のチューブ内の試料をサンプル瓶(8mL容量)にまとめ、リン酸緩衝生理
食塩水溶液(PBS)で全容量を2.4mLに調整した結果、メルカプトヒト血清アルブ
ミン(HSA−SH)濃度は0.5mMとなった。
チオール基とジスルフィド結合の交換反応を利用して、ヒト血清アルブミン(HSA)
10
のメルカプト分率を定量した。2,2'−ジチオピリジン(2,2'−Dithiopyr
idine)(2,2'−DTP)は遊離チオール(SH)基と反応し、2−チオピリジ
ノン(2−Thiopyridinone)(2−TP)を生じるので、ヒト血清アルブ
ミン(HSA)に2,2'−ジチオピリジン(2,2'−DTP)を加え、生成した2−チ
オピリジノン(2−TP)の量を測ることにより、システイン34(Cys−34)にお
けるチオール(SH)基の量が定量できた。
エッペンドルフチューブ(2mL容量)に2,2'−ジチオピリジン(2,2'−DTP
)2.2mgを入れ、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)1mLを加えてよく振とうし
、2,2'−ジチオピリジン(2,2'−DTP)溶液(10mM)1mLを調製した。
まず、分光用石製セル(1cm)にリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)2.7mLを
20
加え、紫外可視吸収(UV−Vis.)スペクトル(190nm−700nm)を紫外可
視分光光度計(商品名:紫外可視分光光度計8454、Agilent社製)を用いて測
定した(ブランク)。
次に、石英セルに、メルカプトヒト血清アルブミン(HSA−SH)(500μM)0
.3mLを加えてよく振とうし(10倍希釈となる。ヒト血清アルブミン(HSA)濃度
=50μM)、紫外可視吸収スペクトル測定を行った。
続いて、2,2'−ジチオピリジン(2,2'−DTP)溶液(10mM)0.075m
Lを添加し(ジチオピリジン/ヒト血清アルブミン(DTP/HSA)=5(mol/m
ol))、よく振とうした。
30分間静置した後、紫外可視吸収スペクトル測定を行った。342nmの吸光度と2
3
−チオピリジノン(2−TP)のモル吸光係数(ε342=8.1×10 M
-1
30
-1
cm
)から
、ピリジルジチオ基の濃度を算出した。ヒト血清アルブミン(HSA)濃度で割ることに
より、ヒト血清アルブミンのメルカプト分率(還元型システイン34の割合)を算出した
ところ、約80%∼100%であった。
【0044】
−調製例2:ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDPH)の調製−
サンプル瓶(8mL容量)にCO化ヒトヘモグロビン(Hb)水溶液(509μM)0
.39mLを入れ、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)1.61mLで希釈し、0.1
mM 2mLとした。
次に、エッペンドルフチューブ(2mL容量)にスクシンイミジル−6[3−(2−ピ
40
リジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Succinimidyl−6[3
−(2−pyridyldithio)propionamido]hexanoate
)(SPDPH、PIERCE社製)2.1mgを入れ、エタノール(EtOH)0.25
mLを加えて溶解し、20mM スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プ
ロピオンアミド]ヘキサノエート(SPDPH)のエタノール溶液を調製した。
先のヒトヘモグロビン(Hb)溶液(2mL)にスクシンイミジル−6[3−(2−ピ
リジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(SPDPH)溶液0.2mLを撹拌
(100rpm)しながら添加し(スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)
プロピオンアミド]ヘキサノエート/ヒトヘモグロビン(SPDPH/Hb)(=18(
mol/mol))、室温で30分間撹拌した。
50
(14)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
得られた反応溶液から、調製例1に記載の方法で未反応のスクシンイミジル−6[3−
(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(SPDPH)を除去した。
具体的には、ヒトヘモグロビン(Hb)溶液2.2mLを遠心濃縮器(Vivaspi
n20)に移し、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)約18mLで10倍に希釈後、4
000rpm、30分間、4℃で約1.0mLまで濃縮した。
そこに、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)19mLを添加し、同条件で約1.0m
Lまで濃縮した。
この希釈/濃縮操作を数回繰り返すことにより未反応のスクシンイミジル−6[3−(
2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(SPDPH)を除去すること
10
ができる。
最後にチューブ内の試料をサンプル瓶(8mL容量)に移し、リン酸緩衝生理食塩水溶
液(PBS)を添加し、全容量を2.0mLに調整した。
ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDPH)濃度は0.1mMとなる。
ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDPH)分子表面に導入されたピリジル
ジチオ基の数は、ジチオスレイトール(DTT)で末端ジスルフィド結合を還元し、遊離
した2−チオピリジノン(2TP)の量を測ることにより決定できる。
エッペンドルフチューブ(2mL容量)にジチオスレイトール(DTT)12.3mg
を入れ、軽く脱気した後、別途脱気したリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)1mLを加
え溶解し、ジチオスレイトール(DTT)溶液(80mM)1mLを調製した。
分光用石英セル(1cm×1cm)にリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)2.85m
20
Lを加え、紫外可視吸収(UV−Vis.)スペクトル(190nm−700nm)を測
定した(ブランク)。
次に、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDPH、100μM)0.15m
Lを加えてよく振とうし(20倍に希釈となる。ヒトヘモグロビン(Hb)濃度=5μM
)、紫外可視吸収スペクトルを測定した。
引き続き、ジチオスレイトール(DTT)溶液(80mM)18μLを添加し(ジチオ
スレイトール/ヒトヘモグロビン(DTT/Hb)=95(mol/mol))、よく振
とうした。
30分間静置した後、190nm∼700nmにおいて紫外可視スペクトルを測定した
。342nmの吸光度と2−チオピリジノン(2−TP)のモル吸光係数(ε342=8.
3
-1
1×10 M
30
cm
-1
)値から、ピリジルジチオ基の濃度を算出した。
ヒトヘモグロビン(Hb)濃度との比率から、ヒトヘモグロビン1分子当たりのピリジ
ルジチオ基の本数を決定したところ、8∼9本であった。
【0045】
−調製例3:ヒトヘモグロビン/ヒト血清アルブミン(Hb/HSAn)ヘテロクラスタ
ーの調製−
調製例1で得たメルカプトヒト血清アルブミン(HSA−SH)(500μM)2mL
をサンプル瓶(8mL容量)に入れ、撹拌子で撹拌(100rpm)しながら、調製例2
で得たヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDPH)1mLをゆっくりと滴下し
、室温・遮光下で20時間反応させた。
40
反応溶液(3mL)をDismicフィルター(口径0.45μm、Advantec
社製)で濾過し、得られた混合物のうち2mLを低圧クロマトグラフィーシステム(GE
ヘルスケア、AKTA prime plus、カラム:Superdex G200 10/300 GL、溶出液:リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS))を用いて、4℃に
て分離・精製した。溶出液はフラクションコレクターで捕集した。溶出曲線においては、
ヒトヘモグロビン(Mw:64.5kDa)やヒト血清アルブミン(Mw:66.5kD
a)のピークより早い時間に複数のピークが出現し、高分子量体の生成が示唆された。主
要な4つのピークを含む分画について、Native−PAGE電気泳動測定(和光純薬
、SuperSep Ace 5−12% 13well)を行ったところ、Mw:18
0kDa、260kDa、360kDa、470kDa付近に明確なバンドが現れたので
50
(15)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
、それぞれの各成分のみを含む分画を単離し、回収した。
単離した高分子量体について、シアノメトヘモグロビン法(アルフレッサファーマ社、
ネスコートヘモキットN、No.138016−14)によりヒトヘモグロビン濃度を定
量し、660nm法(Pierce社、660nm Protein Assay Ki
t、No.22662)によりタンパク質濃度を定量した。
分子量の低い成分から、ヒト血清アルブミン/ヒトヘモグロビン比が1.1、2.2、
3.0、3.8となり、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2、3、4つ結合
したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SPDPH、(Hb/HSA2)SPDPH、
(Hb/HSA3)SPDPH、(Hb/HSA4)SPDPH)が生成していることが分
かった。
10
【0046】
(実施例2)
実施例1における調製例2で、スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プ
ロピオンアミド]ヘキサノエート(Succinimidyl−6[3−(2−pyri
dyldithio)propionamido]hexanoate)(SPDPH、
PIERCE社製)の代わりに、スルホスクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチ
オ)プロピオンアミド]ヘキサノエート(Sulfosuccinimidyl−6[3
−(2−pyridyldithio)propionamido]hexanoate
)(SSPDPH、PIERCE社製)を用いた以外は、実施例1における調製例1及び
2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SSPDPH)を調
20
製した。ピリジルジチオ基の濃度を算出し、ヒトヘモグロビン(Hb)濃度との比率から
ヒトヘモグロビン1分子当たりのピリジルジチオ基の本数を決定したところ、7∼8本で
あった。
引き続き、実施例1における調製例3でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SP
DPH)の代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SSPDPH)を用いた以
外は、実施例1における調製例3と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清ア
ルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SSPDP
H、(Hb/HSA2)SSPDPH、(Hb/HSA3)SSPDPH、(Hb/HSA
4)SSPDPH)を合成し、それぞれを単離した。
【0047】
30
(実施例3)
実施例1における調製例2で、スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プ
ロピオンアミド]ヘキサノエート(Succinimidyl−6[3−(2−pyri
dyldithio)propionamido]hexanoate)(SPDPH、
PIERCE社製)の代わりに、4−スクシンイミジルオキシカルボニル−メチル−α(
2−ピリジルジチオ)トルエン(4−Succinimidyloxycarbonyl
−methyl−α(2−pyridyldithio)toluene)(SMPT、
PIERCE社製)を用いた以外は、実施例1における調製例1及び2と同様な方法に従
って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPT)を調製した。ピリジルジチオ
基の濃度を算出し、ヒトヘモグロビン(Hb)濃度との比率からヒトヘモグロビン1分子
40
当たりのピリジルジチオ基の本数を決定したところ、7∼9本であった。
引き続き、実施例1における調製例3でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SP
DPH)の代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPT)を用いた以外は
、実施例1における調製例3と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブ
ミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SMPT、(H
b/HSA2)SMPT、(Hb/HSA3)SMPT、(Hb/HSA4)SMPT)を
合成し、それぞれを単離した。
【0048】
(実施例4)
実施例1における調製例2で、スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プ
50
(16)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
ロピオンアミド]ヘキサノエート(Succinimidyl−6[3−(2−pyri
dyldithio)propionamido]hexanoate)(SPDPH、
PIERCE社製)の代わりに、スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオ)プロピ
オネート(Succinimidyl−3−(2−pyridyldithio)pro
pionate)(SPDP、PIERCE社製)を用いた以外は、実施例1における調
製例1及び2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDP
)を調製した。
ピリジルジチオ基の濃度を算出し、Hb濃度との比率からヒトヘモグロビン1分子当た
りのピリジルジチオ基の本数を決定したところ、8∼9本であった。
引き続き、実施例1における調製例3でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SP
10
DPH)の代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SPDP)を用いた以外は
、実施例1における調製例3と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブ
ミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SPDP、(H
b/HSA2)SPDP、(Hb/HSA3)SPDP、(Hb/HSA4)SPDP)を
合成し、それぞれを単離した。
【0049】
(実施例5)
実施例1における調製例2で、スクシンイミジル−6[3−(2−ピリジルジチオ)プ
ロピオンアミド]ヘキサノエート(Succinimidyl−6[3−(2−pyri
dyldithio)propionamido]hexanoate)(SPDPH、
20
PIERCE社製)の代わりに、スルホスクシンイミジル−6[α−メチル−α−(2−
ピリジルジチオ)トルアミド]ヘキサノエート(Sulfosuccinimidyl−
6[α−methyl−α−(2−pyridyldithio)toluamido]
hexanoate(SSMPTH、PIERCE社製)を用いた以外は、実施例1にお
ける調製例1及び2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−S
SMPTH)を調製した。ピリジルジチオ基の濃度を算出し、Hb濃度との比率からヒト
ヘモグロビン1分子当たりのピリジルジチオ基の本数を決定したところ、7∼8本であっ
た。
引き続き、実施例1における調製例3でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SP
DPH)の代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SSMPTH)を用いた以
30
外は、実施例1における調製例3と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清ア
ルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SSMPT
H、(Hb/HSA2)SSMPTH、(Hb/HSA3)SSMPTH、(Hb/HSA
4)SSMPTH)を合成し、それぞれを単離した。
【0050】
(実施例6)
−調製例1:ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の調製−
サンプル瓶(8mL容量)にCO化ヒトヘモグロビン(Hb)水溶液(509μM)0
.39mLを入れ、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)1.61mLで希釈し、0.1
mM2mLとする。次に、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)
40
ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopropi
onamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)7.6mgをジ
メチルスルホキシド(DMSO)0.25mLに溶解し、80mMスクシンイミジル−6
−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)のジメチルスルホキ
シド(DMSO)溶液を調製した。先のヒトヘモグロビン(Hb)溶液(2mL)にスクシ
ンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)溶液
0.047mLを撹拌(100rpm)しながら添加し(スクシンイミジル−6−(β−
マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート/ヒトヘモグロビン(SMPH/Hb))
=18(mol/mol))、室温で30分間撹拌した。得られた反応溶液から、実施例
1における調製例2に記載の方法と同様の方法で未反応のスクシンイミジル−6−(β−
50
(17)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
マレイミドプロピオンアミド)ヘキサノエート(SMPH)を除去した。具体的には、ヒ
トヘモグロビン(Hb)溶液2.1mLを遠心濃縮器(Vivaspin 20)に移し
、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)約18mLで10倍に希釈後、4000rpm、
30分間、4℃で約1.0mL(1/10)まで濃縮した。そこにリン酸緩衝生理食塩水
溶液(PBS)19mLを添加し、同条件で約1.0mLまで濃縮した。この希釈/濃縮
操作を3回繰り返すことにより未反応のスクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピ
オンアミド)ヘキサノエート(SMPH)を除去した。最後にチューブ内の試料をサンプ
ル瓶(8mL容量)に移し、リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)で全容量を2.0mL
に調整した。ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)濃度は0.1mMとな
った。
10
【0051】
−調製例2:ヒトヘモグロビン/ヒト血清アルブミン(Hb/HSAn)ヘテロクラスタ
ーの調製−
実施例1の調製例1で得たメルカプトヒト血清アルブミン(HSA−SH)(500μ
M)2mLをサンプル瓶(8mL容量)に入れ、撹拌子で撹拌(100rpm)しながら
、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)1mLをゆっくりと滴下し、室温
・遮光下で20時間反応させた。
反応溶液(3mL)をDismicフィルター(口径0.45μm、Advantec
社製)で濾過し、得られた混合物のうち2mLを低圧クロマトグラフィーシステム(GE
ヘルスケア、AKTA prime plus、カラム:Superdex G200 20
10/300 GL、溶出液:リン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS))を用いて、4℃に
て分離・精製した。溶出液はフラクションコレクターで捕集した。溶出曲線においては、
ヒトヘモグロビン(Mw:64.5kDa)やヒト血清アルブミン(Mw:66.5kD
a)のピークより早い時間に複数のピークが出現し、高分子量体の生成が示唆された。主
要な4つのピークを含む分画について、Native−PAGE電気泳動測定(和光純薬
、SuperSep Ace 5−12% 13well)を行ったところ、Mw:18
0kDa、260kDa、360kDa、470kDa付近に明確なバンドが現れたので
、それぞれの各成分のみを含む分画を単離し、回収した。
単離した高分子量体について、シアノメトヘモグロビン法(アルフレッサファーマ社、
ネスコートヘモキットN、No.138016−14)によりヒトヘモグロビン濃度を、
30
660nm法(Pierce社、660nm Protein Assay Kit、N
o.22662)によりタンパク質濃度を定量した。分子量の低い成分から、ヒト血清ア
ルブミン/ヒトヘモグロビン比が1.2、2.3、3.3、3.9となり、ヒトヘモグロ
ビンにヒト血清アルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HS
A1)SMPH、(Hb/HSA2)SMPH、(Hb/HSA3)SMPH、(Hb/H
SA4)SMPH)を合成した。
【0052】
(実施例7)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエートSuccinimidyl−6−(β−maleimidopro
40
pionamido)hexanoate (SMPH、PIERCE社製)の代わりに
、(α−マレイミドアセトキシ)スクシンイミドエステル((α−maleimidoa
cetoxy)succinimide ester)(MAS、PIERCE社製)を
用いた以外は、実施例6における調製例1と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架
橋剤結合体(Hb−MAS)を調製した。
実施例6における調製例2でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の代
わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−MAS)を用いた以外は、実施例6にお
ける調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2、
3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)MAS、(Hb/HSA2)MA
S、(Hb/HSA3)MAS、(Hb/HSA4)MAS)を合成し、単離した。
50
(18)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【0053】
(実施例8)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopr
opionamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)の代わり
に、(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スクシンイミドエステル((ε−maleim
idocaproyloxy)succinimide ester)(MCS、PIE
RCE社製)を用いた以外は、実施例6における調製例1と同様な方法に従って、ヒトヘ
モグロビン−架橋剤結合体(Hb−MCS)を調製した。
実施例6における調製例2でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の代
10
わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−MCS)を用いた以外は、実施例6にお
ける調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2、
3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)MCS、(Hb/HSA2)MC
S、(Hb/HSA3)MCS、(Hb/HSA4)MCS)を合成し、単離した。
【0054】
(実施例9)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopr
opionamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)の代わり
に、(ε−マレイミドカプロイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(ε−male
20
imidocaproyloxy)sulfosuccinimide ester (
MCSS、PIERCE社製)を用いた以外は、実施例6における調製例1と同様な方法
に従って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−MCSS)を調製した。
実施例6における調製例2で、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の
代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−MCSS)を用いた以外は、実施例6
における調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、
2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)MCSS、(Hb/HSA2
)MCSS、(Hb/HSA3)MCSS、(Hb/HSA4)MCSS)を合成し、単離
した。
【0055】
30
(実施例10)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopr
opionamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)の代わり
に、スクシンイミジル−4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシ
レート(Succinimidyl−4−(N−maleimidomethyl)cy
clohexane−1−carboxylate)(SMCC、PIERCE社製)を
用いた以外は、実施例6における調製例1と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架
橋剤結合体(Hb−SMCC)を調製した。
実施例6における調製例2で、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の
40
代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMCC)を用いた以外は、実施例6
における調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、
2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SMCC、(Hb/HSA2
)SMCC、(Hb/HSA3)SMCC、(Hb/HSA4)SMCC)を合成し、単離
した。
【0056】
(実施例11)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopr
opionamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)の代わり
50
(19)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
に、スクシンイミジル−[(N−マレイミドプロピオンアミド)−6−エチレングリコー
ルエステル(Succinimidyl−[(N−maleimidopropiona
mido)−6−ethyleneglycol] ester)(SM(PEG)6、
PIERCE社製)を用いた以外は、実施例6における調製例1と同様な方法に従って、
ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SM(PEG)6)を調製した。
実施例6における調製例2で、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の
代わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SM(PEG)6)を用いた以外は、
実施例6における調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミ
ンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SM(PEG)6、
(Hb/HSA2)SM(PEG)6、(Hb/HSA3)SM(PEG)6、(Hb/HS
10
A4)SM(PEG)6)を合成し、単離した。
【0057】
(実施例12)
実施例6における調製例1で、スクシンイミジル−6−(β−マレイミドプロピオンア
ミド)ヘキサノエート(Succinimidyl−6−(β−maleimidopr
opionamido)hexanoate)(SMPH、PIERCE社製)の代わり
に、κ−(マレイミドウンデカノイルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(κ−(Ma
leimidoundecanoyloxy)sulfosuccinimide es
ter)(SMUS、PIERCE社製)を用いた以外は、実施例6における調製例1と
同様な方法に従って、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMUS)を調製した。
20
実施例6における調製例2でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMPH)の代
わりにヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMUS)を用いた以外は、実施例6に
おける調製例2と同様な方法に従って、ヒトヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2
、3、4つ結合したヘテロクラスター((Hb/HSA1)SMUS、(Hb/HSA2)
SMUS、(Hb/HSA3)SMUS、(Hb/HSA4)SMUS)を合成し、単離し
た。
【0058】
(実施例13)
実施例1における調製例2で、ヒトヘモグロビンの代わりに、ウシヘモグロビン(BH
b)を用いた以外は、実施例1における調製例1及び2と同様な方法に従って、ウシヘモ
30
グロビン−架橋剤結合体(BHb−SPDPH)を調製した。ピリジルジチオ基の濃度を
算出し、ウシヘモグロビン(BHb)濃度との比率からヒトヘモグロビン1分子当たりの
ピリジルジチオ基の本数を決定したところ、7∼9本であった。
引き続き、実施例1における調製例3でヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SP
DPH)の代わりに、ウシヘモグロビン−架橋剤結合体(BHb−SPDPH)を用いた
こと以外は、実施例1における調製例3と同様な方法に従って、ウシヘモグロビンにヒト
血清アルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((BHb/HSA1)S
PDPH、(BHb/HSA2)SPDPH、(BHb/HSA3)SPDPH、(BHb
/HSA4)SPDPH)を合成し、それぞれを単離した。
【0059】
40
(実施例14)
実施例8で、ヒトヘモグロビンの代わりに、ウシヘモグロビン(BHb)を用いた以外
は、同様な方法に従って、ウシヘモグロビン−架橋剤結合体(BHb−MCS)を調製し
た。
実施例8で、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−MCS)の代わりにウシヘモグ
ロビン−架橋剤結合体(BHb−MCS)を用いたこと以外は、同様な方法に従って、ウ
シヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスター((
BHb/HSA1)MCS、(BHb/HSA2)MCS、(BHb/HSA3)MCS、
(BHb/HSA4)MCS)を合成し、単離した。
【0060】
50
(20)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
(実施例15)
実施例10で、ヒトヘモグロビンの代わりに、ウシヘモグロビン(BHb)を用いた以
外は、同様な方法に従って、ウシヘモグロビン−架橋剤結合体(BHb−SMCC)を調
製した。
実施例10で、ヒトヘモグロビン−架橋剤結合体(Hb−SMCC)の代わりにウシヘ
モグロビン−架橋剤結合体(BHb−SMCC)を用いたこと以外は、同様な方法に従っ
て、ウシヘモグロビンにヒト血清アルブミンが1、2、3、4つ結合したヘテロクラスタ
ー((BHb/HSA1)SMCC、(BHb/HSA2)SMCC、(BHb/HSA3
)SMCC、(BHb/HSA4)SMCC)を合成し、単離した。
【0061】
10
−等電点電気泳動測定−
実施例1で得た(ヒトヘモグロビン/ヒト血清アルブミン)ヘテロクラスター(Hb/
HSA1)SPDPH、(Hb/HSA2)SPDPH、(Hb/HSA3)SPDPH、
(Hb/HSA4)SPDPHの等電点電気泳動(Invitrogen、NOVEX IEFゲル)を測定したところ、各ヘテロクラスターの等電点(pI値)は、5.1、5
.1、5.2、5.3であり、ヒトヘモグロビン(pI=7.0)に比べ大幅に減少して
いることがわかった。ヒト血清アルブミンの結合数の増大に伴い、pI値が減少している
ことからも、ヒトヘモグロビンの分子表面にヒト血清アルブミンが結合している構造であ
ることが示された。
なお、ヘモグロビンを分子内架橋した分子内架橋ヘモグロビン、ヒトヘモグロビンを架
20
橋剤で結合したヘモグロビン重合体、ウシヘモグロビンを架橋剤で結合したヘモグロビン
重合体は、いずれも、等電点が7.0付近であると考えられ、また、アルブミン−ヘム複
合体の等電点は4.8である。
【0062】
−酸素親和性(P50)測定−
実施例1で得たヒトヘモグロビン−ヒト血清アルブミン ヘテロクラスター((Hb/
HSA4)SPDPH)のリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)を窒素で十分に置換して
脱酸素した後、別途窒素雰囲気下で調整した亜ニチオン酸ナトリウム水溶液を添加するこ
とにより、ヒトヘモグロビンのヘム鉄を還元した。
このリン酸緩衝生理食塩水溶液(PBS)の紫外可視吸収スペクトルは、λmax:43
30
0nm、557nmを示し、ヒトヘモグロビンの脱酸素化体(デオキシ体)のスペクトル
パターンと一致したことから、ヒトヘモグロビン−ヒト血清アルブミン ヘテロクラスタ
ー((Hb/HSA4)SPDPH)のヒトへモグロビン部位が酸素を結合していないデ
オキシ体を形成していることが分かった。
そこへ酸素を通気すると、直ちに酸素化体(オキシ体)のスペクトルが得られ(λmax
:412nm、540nm、575nm)、再度窒素を通気すると、デオキシ体のスペク
トルパターンとなったことから、ヒトヘモグロビン−ヒト血清アルブミン ヘテロクラス
ター((Hb/HSA4)SPDPH)が酸素を可逆的に吸脱着していることが示された
。
一方、一酸化炭素を通気すると、きわめて安定な一酸化炭素化体(λmax:419nm
40
、538nm、569nm)を形成した。異なる酸素分圧に対する紫外可視吸収スペクト
ル変化から、Hill式を用いて、酸素親和性(P50)(酸素結合解離曲線グラフにおい
て酸素結合率が50%の時の酸素分圧)を算出したところ、ヒトヘモグロビン−ヒト血清
アルブミン ヘテロクラスター((Hb/HSA4)SPDPH)のP50は13Torr
(37℃)であった。
他のヒトヘモグロビン−ヒト血清アルブミン ヘテロクラスター((Hb/HSA1)
SPDPH、(Hb/HSA2)SPDPH、及び(Hb/HSA3)SPDPH)につい
ても同様の実験を行ったところ、P50(37℃)は、それぞれ、12Torr(37℃)
、12Torr(37℃)、11Torr(37℃)であった。
さらに、実施例14で得たウシヘモグロビン−ヒト血清アルブミン ヘテロクラスター
50
(21)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
((BHb/HSA1)MCS、(BHb/HSA2)MCS、(BHb/HSA3)MC
S、及び(Hb/HSA4)MCSについても同様の実験を行ったところ、P50(37℃
)は、それぞれ、10Torr(37℃)、10Torr(37℃)、11Torr(3
7℃)、12Torr(37℃)であった。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を有効成分とする人工酸素運搬体は、生体内
に投与する場合も安全度の高い輸血代替物として利用できる。加えて、移植臓器又は組織
の保存液、再生組織の培養液、腫瘍の抗癌治療増感剤、術前血液希釈液、人工心肺などの
体外循環回路の補填液、移植臓器の灌流液、虚血部位への酸素供給液(心筋梗塞、脳梗塞
10
、呼吸不全、など)慢性貧血治療剤、液体換気の灌流液としても利用できる。また、ガス
吸着剤、酸化還元触媒、酸素酸化反応触媒、酸素添加反応触媒として利用した場合、従来
の血清アルブミン−ヘム錯体と比較して、酸素化体が安定であるため、精密に酸素供給量
を制御できる。
また、本発明のヘモグロビン−アルブミン複合体を有効成分とする人工酸素運搬体を稀
少血液型患者、動物の手術、などにも適用することができる。
【符号の説明】
【0064】
10 ヘモグロビン
20 アルブミン
100 ヘモグロビン−アルブミン複合体(星型へテロクラスター)
【図1】
20
(22)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
【国際調査報告】
10
20
30
40
(23)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
10
20
30
40
(24)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
10
20
30
40
(25)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
10
20
30
40
(26)
JP WO2012/117688 A1 2012.9.7
フロントページの続き
(51)Int.Cl.
A61P
FI
7/06
(2006.01)
A61P
テーマコード(参考)
7/06
(81)指定国 AP(BW,GH,GM,KE,LR,LS,MW,MZ,NA,RW,SD,SL,SZ,TZ,UG,ZM,ZW),EA(AM,AZ,BY,KG,KZ,MD,RU,T
J,TM),EP(AL,AT,BE,BG,CH,CY,CZ,DE,DK,EE,ES,FI,FR,GB,GR,HR,HU,IE,IS,IT,LT,LU,LV,MC,MK,MT,NL,NO,PL,PT,R
O,RS,SE,SI,SK,SM,TR),OA(BF,BJ,CF,CG,CI,CM,GA,GN,GQ,GW,ML,MR,NE,SN,TD,TG),AE,AG,AL,AM,AO,AT,AU,AZ,BA,
BB,BG,BH,BR,BW,BY,BZ,CA,CH,CL,CN,CO,CR,CU,CZ,DE,DK,DM,DO,DZ,EC,EE,EG,ES,FI,GB,GD,GE,GH,GM,GT,HN,HR,H
U,ID,IL,IN,IS,JP,KE,KG,KM,KN,KP,KR,KZ,LA,LC,LK,LR,LS,LT,LU,LY,MA,MD,ME,MG,MK,MN,MW,MX,MY,MZ,NA,NG,NI
10
,NO,NZ,OM,PE,PG,PH,PL,PT,QA,RO,RS,RU,RW,SC,SD,SE,SG,SK,SL,SM,ST,SV,SY,TH,TJ,TM,TN,TR,TT,TZ,UA,UG,US,
UZ,VC,VN
Fターム(参考) 4C084 AA02 AA03 BA41 BA44 CA17 CA18 CA20 CA53 CA59 MA16
MA66 NA03 NA10 NA14 ZA511 ZA512 ZA521 ZA522
4H045 AA10 AA30 BA41 CA40 DA70 EA20 EA34 EA60 FA20 FA50
(注)この公表は、国際事務局(WIPO)により国際公開された公報を基に作成したものである。なおこの公表に
係る日本語特許出願(日本語実用新案登録出願)の国際公開の効果は、特許法第184条の10第1項(実用新案法
第48条の13第2項)により生ずるものであり、本掲載とは関係ありません。
20
Fly UP