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鹿児島県天降)1の水質と水辺環境整備に関する調査研究

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鹿児島県天降)1の水質と水辺環境整備に関する調査研究
鹿児島工業高等専門学校
研究報告 36(2001
)
3
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鹿児島県天降)1
1の水質と水辺環境整備に関する調査研究
疋田誠↑
西 留 清 T 榎並利征 T 川崎博靖 T
A Study of the Water Quality and the Waterfront Development
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n Kagoshima Prefecture
Makoto HIKIDA, Kiyoshi NISHIDOME, Toshiyuki ENAMI and Hiroyasu KAWASAKI
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1.まえがき
水環境計画は長期観点にたち立案することが肝要
である。天降川は、鹿児島県姶良郡横川町国見岳を
水源とし、横川町、牧園町、隼人町、国分市を流域
2
とする流域面積 404m 、流路延長 42kmの国分
平野を貫流する県内最大の二級河川である。計画流
s、超過確率 1/60である。当地域は、
量は 1970m3/
国分隼人テクノポリスに指定され、人口は鹿児島市
に次ぎ、県内で最も急速に都市化が進行中である。
現在、生活汚水、先端企業の工場排水、温泉水、農
業肥料等を含む河川水の錦江湾奥部への流入により
この海域では、水質汚染が懸念されている。
本報では、天降川の水辺環境の現況把握を行うた
めに実施した河川調査結果を報告する。水質の空間
分布及び時間的変化に着目、現地調査を行い、その
分析を行う。通常の中小河川においては、土木技術
者として、水辺空間を水上から観察する機会が乏し
いようにある。本調査の水質計測では、図 -1に示さ
れる河川│沿い空間的水質分布の測定を行い、 GPS
を利用した。さらに、定地点で観測し、時間的推移
も調べた。最後に、本研究では、水辺環境整備の観
点から、河川の現地調査を陸及び水上にて調査をす
すめ、その結果に基づき、今後の河川整備計画指針
を提供している。
図-1.天降川の流域図
土木工学科
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疋田
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利征
川崎 博 靖
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. 水質調査について
1)環境庁の公共水面の調査結果
国立環境研究所の公共用水域水質年間値データを
示すと次のようである。
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写真-2. U-23の表示部(左上)
印字部(右下)及びGPS (右上)
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①水質測定に使用する計器は、堀場製作所のマルチ
水質モニタリングシステム (
U-23) を用いた。測定
項目として、 pH,溶存酸素 (DO) ,導電率,塩分
,全溶存固形物量 (TDS) ,海水比重,温度,濁度,
水深,酸化還元電位 (ORP) ,硝酸イオン,塩化物
イオン,カルシウムイオン(またはアンモニア)の
13項目で、同時測定が可能である。
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図-2. 天降川の水質 (pH) の経年変化
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図-3. 天降川の水質 (00) の経年変化
犬飼橋(中津川=天降川の支)1
1
) 、下原橋(天降川
上流)、新川橋(天降川下流、国道 1
0号)の 3地点
の p H、 D Oの値を示してる。原因はよくわからな
いが、犬飼橋と新川橋地点で、 pHの値が経年的に
増大する傾向が見られる。
2)水質計 U-23における測定
写真-1. U-23のセンサ一部(測定時)
3
2
②パックテストと同様に、バケツで川の真ん中の水
をくみ、 U-23を水の入ったバケツに差し、測定
を行う。
③各測定の原理は、以下のようである。
1. pH
U-23では、 pH測定をガラス電極法にて行って
いる。ガラス電極法とは、 pHに応答するガラス膜
と、比較電極の電位差を測定するものである。
2. 溶存酸素 (00)
D0 (
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dOxygen) は水中に溶け込んでい
る酸素濃度のこと。 D Oは河川や海域の自浄作用や、
魚類なと、の水棲生物にとって不可欠であり、また D
Oの測定は排水処理および水質管理などにとっても
不可欠である。 D Oの測定法は、隔膜電極法と呼ば
れ、還元物質や酸化性物質の影響を除くために複雑
な前処理を必要とする化学分析法の較べて、大変簡
便に D Oを測定することができる。
3. 導電率 (CONO)
導電率は物質中における電流の流れ易さを示す指
標です。塩類が水に溶けると陽イオンと陰イオンに
分かれる。このような溶液を電解質溶液と呼んでい
る。電解質溶液に電流が流れる性質があり、オーム
の法則が成り立つ。乙の性質は、電解質溶液のイオ
ンが移動することによって、電流が流れるため、イ
オン伝導性と呼ばれる。一方、貴金属は、電子によ
って電流が流れるため電子伝導性と呼ばれ、イオン
伝導性とは区別される。
U-23は交流四電極法を採用しており、電圧検出極
および、電圧印加極の計 4つの電極から構成される。
電圧検出極は、交流電圧を検出する電極であり、電
鹿児島県天降川の水質と水辺環境整備に関する調査研究
圧印加極は、交流電圧を印加する電極です。この方
法は非常に導電率の高い領域まで測定できる大変優
れた方式である。
4. 塩 分 (SAL)
ここでいう塩分濃度は、海水の塩分濃度である。
或る温度における導電率と塩分濃度の聞には一定の
関係があるので、導電率と温度が分かれば、相当す
る塩分濃度が決まる。 U-23の塩分濃度計は導電率
および温度の測定値を利用して塩分を演算するとい
う原理に基づいている。
5. 全溶存固形物量 (TDS)
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溶存固形物量を意味する。溶液の導電率は、塩分や
鉱物、溶存ガスの量に起因する。つまり、導電率は、
、
溶液の全ての物質の送料示す指標となる。 TDSは
そのうち、全溶存固形物量だけを示すも。この TD
、 N
aClのような単一成分からなる物質の状態の
Sは
比較に用いることができるが、違う種類の溶液を比
較するときは誤差が大きくなる。
は、水の深さと圧力の関係を用いている。この水深
センサーは圧力を行っているため、気圧による影響
を受けるが、測定前の自動校正にてゼロ点を調整し
ている。
9. 酸化還元電位 (ORP)
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略で酸化還元電位のこと。すなわち、溶液中に共存
する酸化体と還元体の問の平衡状態によって定まる
測定は
エネルギーレベル(電位)を意味する。 ORP
溶液の性質を表す尺度の一つであるとして理解する
必要があり、溶液の分析(電位差滴定)あるいは廃
液処理などに有益な指標として広く用いられている。
oRPの高さが殺菌作用に効果がある」と
最近では r
oRPの低い水を飲むと体内細胞中の活性酸素
か
、 r
と反応するので病気になりにくい j といった説があ
り、アルカリ飲料水などの指標として使用されるこ
とがある。
1O. 硝酸イオン(例
N03+
)
シウムイオン (
C
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針
2
勺
イオンセンサーの応答膜は測定溶液中に特定のイ
オンが存在すると、そのイオン濃度に相応した電位
を発生する。発生した電位は比較電極を基準とした
電位差としてイオンメーターで測定される。一般に
イオンセンサーでは測定電位差と測定溶液中の対象
イオン濃度の対数が比例関数にある。
6
. 海水比重 (σt)
海水の密度と比重は、 CGS単位系では、数値的
には等しいので、一般的に厳密に区別しないで用い
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られている。海水の密度 ρは、1.0
000倍した値 σとし
あることから、便宜上、 1減じ 1
て表わす。
。
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海水の密度 ρは温度、水圧、塩分の関数表で表され
るが、特に大気圧の時の σを σtとして示す。これは
温度・塩分によって決まる。 U-23では、温度の
測定と導電率換算より塩分の測定をおこなっている
ので、計算により、 σtを算出している。
7. 濁度 (TURB)
濁度を算定する方法はいくつかあるが、 U-23シ
リーズでは透過散乱方式を採用している。光源より
サンプルに光束を照射するとサンプルを通過する透
過光と、サンプル中の濁度成分によって散乱された
散乱光が生じる。透過散乱方式は、この散乱光と透
過光の強さを各々の受光器で測定し、その比率に基
づいて濁度を表示する方式である。なお、濁度の値
はセルの構造によって変化するため測定計器によっ
て異なる。
8. 水深 (DEP)
水深測定について U-23では、圧力ゲージにより
水深測定を行うことができる。この水深測定の原理
3)U-23における測定結果と考察
天降川の水質の空間分布を知るために、上流から
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河口に至る縦断方向の測定を行い、図 (左図)に示す。 1
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河川を横断する橋から、川中央部の河川水を採水し
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て測定。 1
は、ゴムボートを利用して船上から連続測定を行っ
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(木)、塩止堰より錦江湾の海域へは、ゴ
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ムボートに船外機を付け、測定地点の現位置を確定
するために GPSを利用した計測を行った。
次に、水質の時間的分布、日変動を知るために、
48時間連続計測を、①泉帯橋 (9.54km地点、
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3日関連続測定可能で、 1
0分間隔で観測した。
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図-6. 天降川の水質(導電率)の空間分布と時間的経緯
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鹿児島県天降川の水質と水辺環境整備に関する調査研究
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図-1 3.天降川の水質(塩化物イオン)の空間分布と時間的経緯
図-4の pH:左図で、上流では 6
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3程度。
10kmより下流では 8に近い値を示す。右図で、川
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)では 7
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5程度であるが、岸辺 (
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)で
中央 (
は、泉帯橋で日当山の温泉水の流入の影響を受け 8
程度と大きく、野口橋では更に小さく、 7弱の値で
ある。野口橋の観測では、降雨 (
11/16,
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1mm) が見られ、浮流物の影響を受けたため、観測
値が不安定となっている。
図-5の DO:左図で、下流では 1
0程度。上流で
3
. 水辺環境整備について
5に漸増する。岸辺では川中央より若干小さく、
は1
降雨があると、急激に大きな値に変化している。
図-13の塩化物イオン:左図で、河口に行くに
従って上昇傾向を示し、泉帯橋は野口橋より、約
5.86km上流に位置しているため、小さな値となるは
ずである。しかし、右図では、日当山の温泉街では、
岸辺 (
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)の値が、 12/23,
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4
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0の時間帯で顕
著に大きく、生活汚水等の汚濁物質の排出があった
と考えられる。
2)水辺の風景
1)天降川の川下りと水辺環境整備状況
水上の河川調査を通して、水辺環境整備について
述べる。川下りの案内標識、資料は皆無。 1回目
(
1
0/1
1
) は、ゴムボート利用のための足場捜しを
行った。 2回目 (
1
0/1
2
) は川下りの可否の調査。
3回目 (
1
0/1
9
) に、やっと水質測定に成功した。
携帯電話を使いながら、陸上と連絡をとりながら 実
施。水辺に親しむことの難しさと感激を味わった。
1)水辺への昇降口の整備:ゴムボートを降ろす場
所、引き上げる場所が、極めて少ない。係船構造物
はほとんど未整備、ボートは係留できず、危険であ
る
。
2
) 川下りへの傷害物:泉帯橋下流の旧固定堰は支
障なく通過できたが、 JR橋下流の旧橋脚地点は狭
く、ゴムボートの底が破れ、最初の川下りでは、沈
没事故が発生した。
3) 川の原風景:船上から見ると、川の中や岸辺に
アユ釣りの人、水上に水鳥が数多く見られた。岸辺
は緑で覆われ、船上は微風、湯田橋から、塩止堰ま
で、約 8.
7km、約 2時間の川下りは、貴重な体験で
あった。
4)生活汚水等:晴天時でも、河川では汚濁物質の
みならず、草木等の浮流物が結構多いととが理解で
きた。
写真一 3. スタッフ(予備調査)
写真一 4. 船底破損のゴムボート(京セラ付近)
3
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疋田
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写真一 9
. 川下り開始(予備調査)
写真一 5
. 新川渓谷(鮎釣り)
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写真一 6
. 新川渓谷
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. 日当山小の児童の遠足
写真一 1
1
. 固定堰(日当山)
写真一 8
. 川下り開始地点(湯田橋下流,左岸)
写真一 1
2
. 観測中のゴムボート
3
8
鹿児島県天降川の水質と水辺環境整備に関する調査研究
3
. 鮎釣り(日当山)
写真一 1
写真一 1
7
. J R橋と旧橋脚(日豊本線)
4
. 鴨(日当山)
写真一 1
8
. J R橋下流の狭窄部
写真一 1
写真一 1
5
. 日当山温泉街の排水孔
9
. 岸辺(野口橋上流)
写真一 1
6
. 岸辺(泉帯橋下流)
写真一 1
写真一 2
0
. 観測の終点(塩止堰)
3
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疋田
誠
西留
清
榎並利征
写真一 2
1
. 川下りの終点(塩止堰)
川崎博靖
写真一2
2
. 海岸の堤防(右岸)
4. まとめ
天降川の水質と河川水辺環境整備の実態調査を
行った。上流では道路沿いに河川を横断する橋地点
を基準に実施。自然の状態が温存されている区域、
河川改修工事中のもの、流れを遮断する取水堰の存
在など、様々な形態がみられた。中下流では、移動式
ゴムボートを用い、水上から観察。大人の鮎釣り、
鳥類など。天降川は、豊かな水辺に育まれ、自然が
残された水辺空間を形成していることを認識した。
然しながら、水域に至るボートの搬入路の案内標識
はなく、係留施設も皆無。旧橋脚による狭窄部では通
過危険箇所が残存。河口近くでは、透過型ブロック
積みの塩止堰があり、海域との問で流れが遮断。水
面では、子供の姿はほとんど見られなかった。水面利
用の観点から、随所に整備が不適切な箇所があるこ
と。教育行政において川に近づけない方策がとられ
てきたととも判明、今後の河川整備の進め方の問題
点を数多く把握することができた。今後、川内川、
肝属川、甲突川など、県内河川の水辺環境の把握と問
題点等をすすめる予定にしている。
謝辞:
本研究を進めるにあたり、国土交通省川内川工事事
務所、鹿児島県河川課、加治木土木事務所、鹿児島
高専の前田滋校長より、ご支援とご助言をいただき
ました。(財)河川環境管理財団より河川整備基金及
び鹿児島高専より研究助成金を頂いた。ここに、関
係各位に、心から厚く謝意を表する次第である。
4
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