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3 埼玉教育の課題
生きる力と絆の埼玉教育プラン Ⅲ 埼玉教育の課題 教育を取り巻く社会の動向を背景に、本県の教育の課題として、 (1)学び や自立、 (2)心や体、 (3)学校教育、 (4)家庭や地域の教育、 (5)生涯学習やス ポーツ、の5つに大きく整理することができます。 (1)学びや自立について ■「活用」に関する学力の育成、学力分布の分散拡大 全国学力・学習状況調査の結果によると、本県の子どもたちの学力は、全 国の子どもたちとほぼ同レベルにあるものの、 「知識」そのものよりも、得た 知識を「活用」することに課題があることが明らかになりました。 全国学力・学習状況調査における埼玉県の平均点 ー 文部科学省(平成₂₀年度)ー 点 100 ■主として「知識」に関する問題 90 ■主として「活用」に関する問題 80 70 60 50 73.2 72.3 66.2 61.1 51.8 52.5 61.1 47.8 40 30 20 10 0 6 小₆国語 小₆算数 中₃国語 中₃数学 第1章 総論 Ⅲ 埼玉教育の課題 国際的な学力調査(PISA調査)の結果でも、わが国の子どもたちの学力 は、全体としては上位にあるものの、 「活用」に関する学力である 「読解力」に ついてはOECD平均程度まで低下していることが示されています。 また、成績中位層の減少とともに低位層の増加も見られ、学力分布の分散 が拡大しています。 「読解力」を支える基礎学力を、 すべての子どもたちに身 に付けさせることが必要です。 読解力の習熟度レベル別の生徒の割合 ー 経済協力開発機構(OECD) :PISA調査 ー % 40 ■₂₀₀₀年調査 ■₂₀₀₃年調査 ■₂₀₀₆年調査 30 20 10 0 レベル₁未満 レベル₁ レベル₂ レベル₃ レベル₄ レベル₅ ※対象学年:高校1年生 [参考] ■PISA(Programme for International Student Assessment)調査は、 「生徒の学習到達度調査」と訳され、OECD(経済協力開発機構)が実施して いる。高校₁年生を対象とした、知識や技能等を実生活の様々な場面で直面す る課題にどの程度活用できるかを評価するための調査。 ■「読解力」 とは、書かれたテキスト (情報) を理解し、利用し、熟考する能力のこと。 7 生きる力と絆の埼玉教育プラン ■目的意識や学習意欲の低下 「目的意識を持って学校で勉強している」と答える子どもの割合は、学校 段階が進むにつれて低くなっています。子どもたちに目的意識を持たせるな ど、内発的な学習意欲を向上させることが必要です。 「目的意識を持って学校で勉強している」と答えた児童生徒の割合 ー 埼玉県教育振興基本計画策定に係る意識調査(平成₁₉年)ー 0 20 小学生 中学生 高校生 40 33.8 21.0 60 40.3 38.6 18.1 80 18.6 28.6 35.4 100 % 6.5 10.6 32.3 12.5 0.8 1.1 1.6 ■あてはまる ■ややあてはまる ■あまりあてはまらない ■あてはまらない ■無回答 国際的に見ても、 日本の子どもたちは諸外国に比べ、宿題をする時間は短 く、逆にテレビやビデオを見る時間は長くなっています。 学校外での一日の時間の過ごし方 3 時間 ー 国際教育到達度評価学会(IEA) :TIMSS調査( * 平成₁₉年)ー ■日本平均 ■国際平均 2.5 2 1.8 1.6 1.2 1 1.0 0.6 0 宿題をする テレビやビデオを見る 家の仕事(手伝い) をする ※対象学年:中学校2年生 8 第1章 総論 Ⅲ 埼玉教育の課題 ■若者の自立の遅れ 進路未定者や一時的な仕事に就いた者(フリーター*)の割合は、近年減少 していますが、就業構造の変化もあり、いまだ相当数にのぼっています。子ど もたちに、将来の生き方を考えさせることが必要です。 埼玉県公立高校卒業者に占める進路未定者などの割合と人数 6 ー 埼玉県高等学校卒業者の進路状況調査:埼玉県教育委員会 ー % ■進路未定者 ■一時的な仕事に就いた者 (フリーター) 5 4 2.5 977人 2.2 3 2 2.7 1 0 1,059人 867人 2.4 平成₁₈年₃月 955人 平成₁₉年₃月 1.8 660人 1.8 709人 平成₂₀年₃月 ※「進路未定者」は、 「無業者」から「家事手伝い」 「自宅浪人」 「求職者」など を除外した数値。なお、予備校などへ通う浪人も含んでいない。 ■特別な教育的ニーズへの対応 障害のある子どもたちなどに対し、一人一人の教育的ニーズに応じた適切 な支援が求められています。 すべての公立学校において、特別支援教育の推進体制を整える必要があ ります。また本県では、全体の児童生徒数が減少する中、特別支援学校の児 童生徒数は増加しており、教室不足の早期解消や、複数の障害種への対応な ど、特別支援学校の機能の充実が課題となっています。 埼玉県公立特別支援学校幼児児童生徒数の推移 ー 埼玉県教育委員会 ー 6,000 5,000 4,000 5,900程度 人 5,183 3,846 4,157 4,449 特別支援学校幼児児童生徒数 3,000 2,000 1,151 1,217 1,000 0 1,258 1,397 重複障害の幼児児童生徒数 平成₁₁年度 平成₁₄年度 平成₁₇年度 平成₂₀年度 平成₂₃年度 9 生きる力と絆の埼玉教育プラン (2)心や体について ■いじめ、不登校、高校中途退学の解消 いじめや不登校児童生徒が依然として多く、特に不登校児童生徒数は、小学 校から中学校に進学する段階で、約₃. ₅倍に増加しています。 埼玉県公立小・中学校における学年別不登校児童生徒数 ー 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査:文部科学省(平成₁₉年度)ー 3,000 2,500 人 不登校児童生徒数 小学校 1,238人 中学校 6,117人 2,522 2,206 2,000 1,500 1,389 1,000 500 0 51 102 152 小₁ 小₂ 小₃ 202 小₄ 330 小₅ 401 小₆ 中₁ 中₂ 中₃ 高校中途退学率は、特に高校₁年生で高い状況が見られます。 埼玉県公立高校(全日制) における学年別中途退学者数と構成比 ー 児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査:文部科学省(平成₁₉年度)ー 6.3% 3.2% 162人 28.3% ■₁年 ■₂年 ■₃年 ■単位制 83人 724人 1,589人 62.1% 10 第1章 総論 子どもたちに、規範意識や社会性の低下などが生じています。この原因は、 少子化や核家族化が進行する中、体験の機会が減少していることや人と人と Ⅲ 埼玉教育の課題 ■規範意識や社会性の低下、自信の欠如 のつながりが弱まっていることなどが考えられます。 「友達が悪いことをしていたらやめさせる」割合 ー 青少年の自然体験活動等に関する実態調査報告書 ー 国立青少年教育振興機構(平成₁₇年) 0 20 平成₁₀年 40 60 80 53.0 47.0 44.0 平成₁₇年 100 % 56.0 ■やめさせる ■やめさせない ※対象学年:小学校4、6年生、中学校2年生 自分に自信がある子どもの割合が減っているなど、子どもたちの自己肯定 感の低さが指摘されています。 「自分に自信がある」と答えた児童生徒の割合 ー 低年齢少年の生活と意識に関する調査報告書:内閣府(平成₁₉年)ー 0 20 小学生 (平成₁₁年) 60 80 56.4 小学生 (平成₁₉年) 39.2 47.4 中学生 (平成₁₁年) 中学生 (平成₁₉年) 40 52.5 41.1 29.0 56.9 71.0 100 % 4.4 0.1 2.0 0.0 ■自信がある ■自信がない ■わからない ※対象学年:小学校4年生~中学校3年生 11 生きる力と絆の埼玉教育プラン ■子どもの体力の低下、生活習慣の乱れ 子どもの体力は、長期的に見て低下・停滞傾向にあります。 埼玉県公立小・中・高等学校児童生徒の体力の状況 ー 運動能力テスト・新体力テスト結果(埼玉県平均値)ー 高2 7.0 【50m走 (男子)】 秒 中2 8.0 7.5 8.5 8.0 9.0 8.5 9.5 9.0 S62 H元 3 5 7 9 小6 【50m走 (女子) 】 秒 11 13 15 17 19 年 10.0 S62 H元 3 【ボール投げ (男子) 】 m 34 32 30 28 26 24 22 20 S62 H元 3 5 7 9 11 13 15 17 19 年 5 7 9 11 13 15 17 19 年 【ボール投げ (女子) 】 m 24 22 20 18 16 14 12 S62 H元 3 5 7 9 11 13 15 17 19 年 ※小学校はソフトボール、中・高等学校はハンドボールを使用 また、就寝時間が遅かったり、朝食を食べない子どもがいたりするなど、幼児 も含め、基本的な生活習慣の乱れが見られます。 児童生徒の就寝時間 ー 埼玉県教育振興基本計画策定に係る意識調査(平成₁₉年)ー 0 20 40 60 80 100% 1.6 小学生 79.2 中学生 高校生 26.0 10.8 18.7 60.3 57.9 12.7 30.0 0.5 1.0 1.3 ■₁₀時より前 ■₁₀~₁₂時頃 ■₁₂時より後 ■無回答 ※「幼児の生活アンケート」 (教育研究開発センター) によると、₁₀時以降に就寝する幼児(₆か月 ~₆歳)の割合は₂₉.₃%である。 * ※「教育に関する₃つの達成目標 」質問紙調査(埼玉県教育委員会:平成₁₉年度) によると、小学 生の₁. ₅%、中学生の₃. ₉%が朝食を「ほとんど食べない」 と答えている。 12 第1章 総論 Ⅲ 埼玉教育の課題 (3)学校教育について ■教職員の大量退職への対応 大量の公立学校教員が退職の時期を迎えています。 埼玉県公立学校教員の年齢構成 ー 教職員年齢構成調査:埼玉県教育委員会 (平成₁₉年度)ー 10,000 人 9,031 8,285 8,000 6,145 6,000 5,013 4,000 2,000 0 3,202 2,944 3,077 30∼34 35∼39 1,272 20∼24 25∼29 40∼44 45∼49 50∼54 歳 55∼59 教員の大量退職などに伴い採用数が増加する一方で、採用試験の受験倍率 が低下していることから、志願者の確保などが課題となっています。 埼玉県教員採用試験における受験倍率の推移 ー 埼玉県教育委員会 ー 35 倍 30 25 30.2 28.3 高校 20 15 10 10.0 中学校 小学校 5 0 平成 11 8.4 6.4 2.8 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 年度 13 生きる力と絆の埼玉教育プラン ■学校運営の改善 学校の様々な課題解決のために、教職員一人一人が学校運営に参画するこ とによって組織力を強化することが求められています。また、地域に開かれた 学校づくりを進めるため、地域住民や保護者などによる学校関係者評価*の実 施や、その結果を公表していくことが求められています。 埼玉県公立学校における学校関係者評価の実施状況 ー 学校評価及び情報提供の実施状況調査:文部科学省(平成₁₈年度)ー 100 80 60 100.0 % ■保護者等による学校 関係者評価の実施率 ■結果の公表率 48.3 46.2 40 60.0 20 37.5 34.7 0 小学校 中学校 県立学校 ※学校の自己評価は、全ての小・中・高等学校で実施している。 14 第1章 総論 ■家庭・地域の教育力の低下 子育てや教育の問題点として、親は、 「家庭でのしつけ」や「地域社会での安 Ⅲ 埼玉教育の課題 (4)家庭や地域の教育について 全な生活」をあげています。 親が考える子育てや教育の問題点 ー 低年齢少年の生活と意識に関する調査:内閣府(平成₁₉年)ー 0 10 20 30 40 50 60 59.9 家庭でのしつけや教育が不十分であること 地域社会で子どもが安全に生活できなくなっていること 50.0 メディアなどから、子どもたちが悪い影響を受けること 44.2 教師の教育する力が不十分であること 38.9 子どもたちの遊びの場が少ないこと 37.3 受けられる教育の機会や質に差があること 24.1 地域社会と子どもたちのかかわりが乏しいこと 22.5 教師と生徒の接触が乏しいこと 22.1 受験競争が厳しいこと 18.1 子どもたちの生活が勉強に偏りがちであること 17.1 教師の数が少ないこと 学校の規則が厳しすぎること その他 58.3 44.8 世の中全般の風俗が乱れていること 学校で教えることが多すぎること 70 % 6.1 2.5 4.5 保護者は、近所づきあいは多くない反面、地域での助け合いは重要である と感じています。 保護者が地域について感じること ー 埼玉県教育振興基本計画策定に係る意識調査(平成₁₉年)ー 0 自分の近所づきあいは多いほうである 20 40 40.0 60 80 27.3 100 % 30.1 2.6 3.2 81.3 地域での助け合いは重要である 地域での出来事や問題に関心がある 地域での行事にはなるべく参加したい 12.5 55.6 43.6 28.9 33.2 12.0 19.5 3.0 3.5 3.7 ■そう思う ■どちらともいえない ■そう思わない ■わからない 1 生きる力と絆の埼玉教育プラン (5)生涯学習やスポーツについて ■生涯学習への支援 人生を豊かにしたり、知識や技術を高めたりするための多様な学習の機会 が求められています。特に団塊の世代*は、そうした目的に加え、社会貢献や将 来の仕事に役立つなど、質の高い学習機会を求める割合が高くなっています。 学習活動を行う理由 ー 文部科学省(平成₁₈年)ー 0 10 20 30 40 50 人生を豊かにできる 60 70 69.0 54.5 地域や社会との関わりが深められる 80 % 人間関係を広げられる ストレスの解消になる 知識や技術を高められる 72.4 53.5 余暇を楽しく過ごせる 24.0 22.0 今の仕事や将来の仕事に役立つ 健康に役立つ 老化防止になる 資格取得に役立つ 24.0 18.0 社会に貢献できる 家庭生活に役立つ ■団塊世代 ■全体 ■スポーツ活動への支援 県民は、生涯にわたって、スポーツ活動に親しむ機会を求めていますが、活 動時の苦労や問題について、 「時間がない」、 「場所や施設がない」などの意見 が多くなっています。 スポーツ・レクリエーション活動時の苦労や問題 ー 埼玉県県政世論調査(平成₁₉年)ー 0 仕事や家事・育児が忙しくて時間がない 身近に利用できる場所や施設がない 費用が高い 病気・年齢など 参加したいイベントがない つきあいが面倒 予約が取れないなど場所や施設が利用しにくい 仲間がいない (足りない) 嫌い・興味がない 下手だから 指導者がいない その他 特にない (十分にできている) 無回答 16 5 1.9 2.0 10 7.8 6.5 6.0 5.0 4.3 4.1 10.2 9.7 15 20 19.0 16.9 19.8 25 30 % 29.9