Comments
Description
Transcript
第 5 章 ビデオ回路
ビデオ・アンプ,SDI 伝送回路,同期分離回路など 第5章 ビデオ回路 q トランジスタで構成する 75 Ωドライバ付き 6 dB ビデオ・アンプ ディスクリートで構成する 6 dB ビデオ・アンプの定 こで注意したいことがあります.Tr2 のエミッタ電流 番回路を紹介します.IC に比べて安価に構成できます. を決めると V4 の電圧が決まります.このとき,V3 は エミッタ・フォロア 4.3 V なので Tr 2 が能動領域で動作するためには V CE を 0.7 V 以上確保します.また V4 が最も低くなるのは まず R1 と R2 の定数を決めましょう.決定するため のポイントは, b無信号時に Tr1,Tr2 に不要な電流が流れない b入力インピーダンスが下がらないようにする b Tr1 のエミッタ電流が十分確保される ことです.ここでは R1 を 47 kΩ,R2 を 47 kΩと決め ます. C 1 の値はビデオ信号を十分に通す帯域が必要 です.ここでは C1 と R1//R2 で決まる HPF になるので, 信号にサグを発生させないために,カットオフは 0 Hz 近辺に設定する必要があります. 6dB アンプ ここでアンプのゲインを決めているのは主に R 4 と R 5 です.無信号の際に不要な直流電流が流れないた めには,このアンプのバイアス回路ものエミフォロ 回路に従わなければならないので R7 = R8 = 47 kΩと します.こうすれば, V 1 = V 5, V 2 = V 3 となって余 分な直流成分は発生しません.ちなみに V1 は 5.0 V な ので,V2 は 5 − VBE で約 4.3 V となります. R 5 ですが,この値を決めるにはビデオ帯域をカバ ーできる十分な f 特が取れることが前提となるので, 通常,負荷容量を考慮すると 1 kΩ以下の値にします. ここでは仮に 1 kΩとしてほかの定数を決めていき, 問題が発生すれば調整をしていきます. R 5 を 1 kΩとしたので, R 4 = 500 Ωとなりますが, Tr1,Tr2 に流すエミッタ電流によってエミッタ抵抗 ぶん r e 1 と r e 2 が生じてくるので,それも考慮します. なので,厳密にはこのアンプのゲイン G は, R5 G= R4 + re1 + re2 となります. では,Tr1,Tr2 のエミッタ電流を決めますが,こ 1 エミッタ・フォロワ部 〈図 1 − 1〉トラン ジスタで構成する 75 Ωドライバ付 き 6 dB ビデオ・ アンプ ビデオのシンク部分になるので,このシンクが 5.0 V 以上になるようにエミッタ電流値を決めます.また, R 4 に流れる電流ぶんを十分確保できるだけの電流も 流れるように設定します. V 4 の位置ではビデオ信号 は 2 V p − p となるので, V 4 の電圧としては 7 V くらい が適当です. こうすると Tr2 のエミッタ電流は, IEQ 2 = 10 V − 7 V = 3 mA 1 kΩ このエミッタ電流にするには R 6 を 4.3 V/3 mA から 1430 Ωとします.R6 を実在する 1500 Ωとすると IEQ 2 は 2.9 mA となります.そこで先ほどの re を求めてみる と,re = 26 mV/2.9 mA = 9 Ωとなります.ただし,26 mV は熱電圧で半導体の物性で求まる値です.R4 は re の影響が加わるので 500 Ωよりも小さい 470 Ωとします. 75 Ωドライブ ビデオ出力の接続には 75 Ωのインピーダンスで受 けることが前提になっているので送り出しのインピー ダンスも 75 Ωにします.ただ,Tr 3 の r e が数Ω存在 するので,そのぶんを考慮して R 10 は 75 Ωではなく, 68 Ωを使います. Tr 3 に流すエミッタ電流は 1 V P − P のビデオ信号が 75 Ωを十分ドライブできるだけのものを流します. ドライブ電流として流し込みのほうは Tr3 の供給能力 いっぱい流せるので問題ありませんが,引き込む側の 能力は Tr3 のエミッタ電流で制限されます.シンク縮 みなどを起こさないためには 1 V/75 Ω= 13.3 mA 以 上の電流を流す必要があります.ここでは余裕をみて 20 mA とすると,R9 = 6.3 V/20 mA = 315 Ωとなりま 〈赤塚 博道〉 す. 2 6dBアンプ部 3 75Ωドライブ部 VCC V2 R4 V3 R8 470Ω R3 1.5k V5 R6 1.5k 47k V6 R 10 fT が50MHz以上で hFE が100くらいの ものを選ぶ C3 1000μ R9 330Ω vout 2VP-P 68Ω C 5 47μ V4 V1 R2 10V Tr3 2SD 1937 47k Tr2 2SD1937 47μ 47k 1k C 4 0.1μ vin 1VP-P C1 Tr1 2SD 1937 (松下) R7 C 2 0.1μ R1 47k R5 GND 2004 年 1 月号 137 r OP アンプを使った 75 Ωドライバ付き 6 dB ビデオ・アンプ サが必要ないことです.0 V 基準でアンプされているの ディスクリート回路と比べると実装面積も小さく性 能も出しやすい回路です. で,0 V を中心としてビデオ信号 2 Vp − p が出力されます. この回路ではまず OP アンプの基準電位を 0 V にす るため,入力ビデオ信号をコンデンサ C 1 ,C 2 で DC 実装の際の注意点としては,この OP アンプは高い 周波数特性をもっているので,とくに電源のデカップ カットしています.ここで C 2 をわざわざ並列に入れ てあるのは高周波特性を良くするためです. リングのコンデンサはできるだけ IC の電源ピンの近 くに配置するようにしてください.こうすることで, また R1 の 10 kΩは C1,C 2 にチャージされた電位を 不要なノイズの発生や発振を防ぐことができます. 〈赤塚 博道〉 放電し IC1 の 3 番ピンの電位が 0 V になるように入れ たものです.IC 1 には二つの OP アンプが入っている 〈図 2− 1〉OP アンプを使った 75 Ωドライバ付き 6 dB ビデオ・アンプ ので,一方を 6 dB アンプとして,もう一方を 75 Ωド ライブ用として使用しています. I C1 AD8058ARM (アナログ・デバイセズ) 6 dB アンプ用回路は非反転入力を使用しており, VCC VDD 8 1 R2 アンプ・ゲインは,1 + R2/R3 で決まります.ここで は R2 を 2.2 kΩ,R3 を 2.2 kΩとしています.この抵抗値 2.2k C 2 0.1μ でゲインが決まるので精度の高い金皮抵抗(0.5 %)を 使います. 3 1VP-P C 47μ 1 R1 2VP-P 6 − 4 VSS −5V うになります.そして,ドライブ抵抗として直列に vout 75Ω + VSS もう一つのアンプは 75 Ωドライブのバッファ回路 となっているので,帰還抵抗が 0 Ωになり回路図のよ 7 − + vin +5V R4 2 5 R3 10k 2.2k C3 75 Ωを入れれば完了です. この回路の特徴は 75 Ωとシリーズに入るコンデン C4 C6 C5 47μ 0.1μ 47μ 0.1μ GND s プログレッシブ信号を扱える 6 回路入りビデオ・アンプ 周波数特性が 10 MHz までほぼフラットなので,約 なります.ただし,− 5 V の追加が必要になります. 9 MHz の帯域をもつプログレッシブ信号を扱えます. この IC を使った回路構成の特徴は出力ビデオ信号 一般的な注意点としては電源のデカップリングのコ ンデンサ C7 ∼ C10 はできるだけ IC の近くに配置する が 0 V を基準にしてある点です.こうすることのメリ ことです.また,グラウンドの強化も必要です.ドラ ットは,75 Ωドライブの際に容量の大きなコンデン サを使わずに出力が可能な点です.大きなコンデンサ イブ回路でかなり電流が流れるのでグラウンドがしっ かりしていないとチャネル間のクロストークが発生す を使わないので,スペース的にもコスト的にも優位に る可能性があります. 〈図 3 − 1〉プログレッシブ信号を扱える 6 回路入りビデオ・アンプ vout 1 vout 2 vout 3 vout 4 vout 5 2VP-P 2VP-P 2VP-P 2VP-P 2VP-P R8 75Ω R7 〈赤塚 博道〉 R9 R 10 75Ω R 11 75Ω 75Ω R 12 vout 6 2VP-P +5V C 10 47μ R 13 75Ω 75Ω C9 0.1μ 10k C 8 47μ 36 35 34 33 32 31 30 29 28 27 26 25 24 23 22 21 20 19 1 2 3 4 5 6 R 1 47k C1 47μ 138 7 LA73053 (三洋) C 7 0.1μ 8 −5V 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 R 2 47k R 3 47k C2 47μ C3 47μ R 4 47k R 5 47k R 6 47k C4 47μ vin 1 vin 2 vin 3 vin 4 vin 5 vin 6 1VP-P 1VP-P 1VP-P 1VP-P 1VP-P 1VP-P GND 2004 年 1 月号