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海外トピックス - Nomura Research Institute

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海外トピックス - Nomura Research Institute
海外
トピックス
16
米労働省解釈、ESGインテグレーションを後押し
昨年10月に米労働省が公表した
した背景には、同省の08年の厳格
従業員退職所得保障法(ERISA)
な解釈によって、年金基金がETI や
に基づく受託者基準に関する解釈
ESG投資に対して過度に消極的に
が、米機関投資家のESG(環境・
なっているという認識があった。
社会・ガバナンス)投資に弾みを
ESG要因が企業のパフォーマンス
つけるのではないかと注目されて
に貢献するとの認識が世界的に高ま
いる。
る中、米国でも機関投資家がESG
この解釈は、受託者が行う「経済
課題を投資プロセスに組み込む
目的投資(ET I)」の是非について
「ESGインテグレーション」の動
労働省の見解を示したもの。ETI と
きは拡大している。今回の解釈はこ
は、投資リターン以外の経済的利益
うした動きを正当化し、更なる拡大
の獲得を目的とした投資のことで、
に向けた弾みとなる可能性もある。
社会責任投資やESG投資もこれに
一方、年金受託者がESG課題に
関係する。労働省は従来、受託者は
どう対応すべきかについては今後も
基金の受益者の金銭的利益を犠牲に
議論が続きそうだ。PRI(国連責任
社会・環境政策の促進を追求しては
投資原則)、UNEP FI(国連環境計
ならないが、リスク・リターンが競
画・金融イニシアチブ)らは、昨年
合する投資先と同等であればETI 投
9月、報告書「21世紀の受託者責
資を行ってもよい、としてきた。今
任」の中で、各国の規制当局に受
回の解釈では、こうした従来の解
託者が投資プロセスにおいてESG
釈を確認するとともに、新たに、
課題を考慮することを義務づける
ESG課題は投資の経済価値に関係
提言を行った。今後は、米国を含
する可能性があり、投資先の経済価
む8カ国でロードマップを作成し、
値を分析するための主要な構成要素
2018年末までにESGインテグ
となり得る、と認めた。
レーションの促進に必要な改革に向
今回、労働省が新しい解釈を発表
けて成果を出したい、としている。
野村総合研究所 金融 ITナビゲーション推進部 ©2016NomuraResearchInstitute,Ltd.Allrightsreserved.
SIFI 認定の米保険会社2社、事業再編へ
米国でシステム上重要な金融機関(SIFI )
の負担を軽減できるとみられる。
に認定されている保険会社3社のうちの2社、
一方、AIGの再編計画は、純粋に収益性の改
メットライフとAIGが今年1月、それぞれ事業
善や事業の集中を意図したもので、メットライ
再編計画を公表した。SIFI に認定されたノン
フと異なりSIFI 認定に伴うコスト軽減は視野
バンクはドッド・フランク法に基づき連邦準備
に入っていない。同社では「SIFI 認定は今す
制度理事会(FRB)によって銀行と同様に厳
ぐ資本制約とはならず遵守コストの負担もそれ
格な健全性規制などを課されるが(2社に対す
ほど大きくない」と説明している。
る具体的な規制内容はまだ決まっていない)、
同社では昨年来、アクティビスト投資家の
両社の事業再編はそうした新たな規制負担に対
カール・アイカーン氏が「会社を3分割すれば
する捉え方の違いを反映したものとなった。
3社ともSIFI 認定を回避できる」と主張し、生
メットライフの事業再編は、同社の米国内
保部門、モーゲージ保険部門を分離して損保事
における変額年金口座価値の6割を含む米リ
業に集中させるよう強く求めていた。しかし会
テール事業のかなりの部分(米リテール部門の
社側は、今すぐに分割すると、1)事業分散の
営業利益の半分、会社全体の営業利益の2割に
メリットが失われ、信用格付けの維持に必要な
あたる)を分離する内容だが、SIFI 規制に伴
資本が増加する、2)金融危機時の巨額の損失
う負担を軽減したいという動機が強く働いたよ
に由来する繰延税金資産の価値が失われる、と
うだ。
反論。今回の事業再編計画には、1)モーゲー
メットライフでは、米金融安定監督評議会
ジ保険部門の IPOとブローカレッジ部門の売却
(FSOC)が同社をSIFI に認定した決定を不
に加え、2)コア事業を9つの「モジュラー」
服として提訴している最中だが、もし訴えが認
に再編すること(説明責任の所在をより明確に
められず、米リテール部門の販売する変額年金
し、状況によってはモジュラーごとの売却も選
などに新たに厳しい資本要件が課されれば、競
択肢になり得るとしている)などが含まれた
争上不利になるという認識があった。メット
が、アイカーン氏の主張する抜本的な事業再
ライフ本体は事業分離後も規模が大きいため
編は拒否した形となった。なお、会社側は2月
SIFI 認定を取り消せるか不透明だが、分離さ
に、アイカーン氏側の取締役を受け入れる形で
れる新会社はSIFI の対象にならず資本や規制
同氏と停戦している。
<文責>
金融 I T ナビゲーション推進部
國見 和史
[email protected]
Financial Information Technology Focus 2016.4
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