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学費相当額の負担又は奨学金制度への 寄附をした場合の役員
Selection C A S E 4 学費相当額の負担又は奨学金制度への 寄附をした場合の役員給与の取扱い 税理士法人プライスウォーター ハウスクーパース 税理士 UESTION 塩谷 洋子 外国人役員の子弟のインターナショナルスクールの 学費に係る税務上の取扱い 当社の役員 A は、当社の韓国親会社か 先日、このインターナショナルスクール ら 3 年間の予定で派遣され、韓国から家 にスカラーシッププラン(奨学金制度)が 族とともに赴任しております。赴任に伴い、 あることを知り、同制度に基づく寄附を行 A の長女が日本にあるインターナショナル うことになりました。 スクールに通うことになり、当社は学費相 当額を負担しています。 学費相当額の負担は役員Aに対する 額の金額を負担している場合には、定期同額 経済的利益の供与となり、役員給与の 給与に該当し損金算入されます。ただし、例 対象となります。一方、インターナショナル えば、インターナショナルスクール側の取扱 スクールに対する寄附は、一定の要件を満た いに基づき、3か月に一度まとめて3か月分 す場合、法人税法上の寄附金に該当し、損金 を支払っている場合には、定期同額給与に該 算入限度額を超える部分については損金不算 当しないものとして、損金不算入とされる可 入となります。 能性がありますので、留意が必要です。 解説 1 学費相当額を支払った場合 (1)法人における取扱い 海外の親会社から日本の子会社等へ役員が 参 考 法法34①④、 37 法令69①、77①四 77の2 法基通9-2-9(10) 9-2-10 9-2-11 (4) 9-4-2の2 所法36① 所基通36-15 直審3-68 昭和53年4 月6日 「アメリカンス クールの寄附金募集 に関する課税上の取 扱いについて」 34 zeimu QA このような場合の学費や寄附に係る支出 は、税務上どのような取扱いとなりますか。 一方、いずれの場合も法人には、負担した 学費相当額について給与に係る源泉徴収の義 務が生じます。 (2)個人における取扱い 派遣された場合、その子弟が日本にあるイン ご質問における役員Aは、上記(1)の前提 ターナショナルスクールへ通う場合の学費相 においては、経済的利益を享受したものとさ 当額を法人が負担することがあります。この れ、学費相当額が給与として課税されます。 場合、法人においては原則として「支払った なお、補足ですが、4月 21 日現在審議中 学費相当額を、その経済的利益を受けた役員 の平成 23 年度改正法(案)によると、平成 24 に対する給与」として認識します(法法34 ④) 。 年分以後の所得税から、役員に対する給与所 平成 18 年度税制改正以降、役員給与につ 得控除額の改正が行われ、給与等の収入金額 いては、原則として定期同額給与制度が適用 が 2,000 万円超の場合には給与所得控除額が されており、経済的利益については、「継続 一定額減額されます。海外からの派遣時に、 的に供与される経済的な利益のうち、その供 法人とその役員Aの間において手取り額保証 与される利益の額が毎月おおむね一定である 等の取り決めをしている場合には、この改正 もの」が損金算入されるものとされています に伴い、法人が給与額の見直しを行う必要が (法法 34 ①一、法令 69 ①二)。 本ケースでは、法人の負担額の詳細が明ら かではありませんが、仮に毎月、おおむね同 2011.5 生じる可能性があり、その場合には、定期同 額給与の改定時期に留意する必要があります (法令69 ①一イ∼ハ) 。 〔表 1〕課税関係のまとめ 2 学費相当額の 支払い スカラーシッププランに基づき寄附した ・ 場合の取扱い (1)法人における取扱い 法人 海外の親会社から日本の子会社等へ役員が 派遣された場合において、その子弟が日本に あるインターナショナルスクールへ通う場合 の学費相当額の支払いに代えて、スカラーシ 役員 A に対 する経済的利 益の供与(役 員給与として 源泉徴収/定 期同額給与規 定にも留意) 経済的利益とし 個人 (役員 A) て給与課税 スカラーシッププラン制度に 基づく寄附 ・ いわゆるひも付き関係がないなど 一定の要件を満たす場合には、法人 税法上の寄附金に該当(一定の限度 額を超える部分について損金不算入) ・ 上記以外の場合には、給与として 源泉徴収、かつ、定期同額給与規定 にも留意 課税関係なし ッププラン制度に基づき寄附をすることがあ 金算入限度額を超える部分の金額が法人税法 れる仕組みになっているようです。 上損金不算入となります。 なお、法人において給与として取り扱わな この寄附に係る法人の取扱いについては、 法人税基本通達9-4-2の2において、「法人 い前提としては、「所得税法上経済的な利益 が損金として支出した寄附金で、その法人の として課税されないものであり、かつ、当該 役員等が個人として負担すべきものと認めら 法人がその役員等に対する給与として経理し れるものは、その負担すべき者に対する給与 なかったものであるとき」とされています (法基通9-2-10) 。 原則としては、本ケースの寄附は、支出の相 また、寄附金額が学生の数に比例して決定 手方や目的等からみて役員A個人が負担すべ される等、寄附金額と免除される学費の金額 きものと認められると思われ、その場合には に関連がある場合には、寄附金ではなく、従 役員Aに対する給与として取り扱われます。 業員等に対する給与として取り扱われること ただし、このような場合の経済的利益につ いては、これまで実務上「経済的利益の発生 になりますので留意が必要です。 (2)個人における取扱い の経緯等からみて、強いて課税しない」もの 上記(1)により、経済的利益が「強いて課 として取り扱われているようです(直審3- 税しない」ものとされる場合には、経済的利 68 益を享受する個人においては、給与課税はあ 昭和 53 年4月6日)。その場合には、給 与ではなく寄附金として認識し、寄附金の損 CASE 4 とする」ものとされています。したがって、 Selection Q&A ります。この場合、その子弟の学費は免除さ りません。 塩谷 洋子 SHIONOYA yoko コメント インターナショナルスクールの中には、 人に該当する旨の証明書(寄附金支出日以 いわゆる特定公益増進法人(法法 37 ④、 前5年内に発行されたものに限る)を保存 法令 77 ①四)に該当するものもあるよう することが要件(法法 37 ⑨、法規 24 ①三) です。特定公益増進法人に対する寄附とし となっています。本ケースのような場合に て、一般の寄附金とは別枠での損金算入限 も、該当するインターナショナルスクール 度額の計算をする場合には、①その特定公 から当該書類が発行されるか否かを確認し、 益増進法人の主たる目的である業務に関連 特定公益増進法人に対する寄附として損金 する寄附金である旨をその法人が証明する 算入限度額の計算をする場合には、当該書 書類、②所轄庁が発行する特定公益増進法 類を保存する必要があります。 税理士。中央大学経済 学部卒業。会計事務所 勤務を経て、2001 年 9 月、税理士法人プライ スウォーターハウスク ーパース入所。日系企 業及び外資系企業に対 する税務関連業務に従 事。 共著に 『三訂版 完全ガ イド 事業承継・相続対 策の法律と税務』 (税務 研究会出版局)、 『国際 税務ハンドブック』 (中 央経済社) がある。 2011.5 zeimu QA 35