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食べ物を大切に-小学生向け食育プログラムの開発

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食べ物を大切に-小学生向け食育プログラムの開発
第
28 回
もったいない!食べ物を大切に
-小学生向け食育プログラムの開発-
中島 真紀
認定特定非営利活動法人フードバンク関西ボランティアスタッフ
Nakashima Maki
このコーナーでは、消費者教育の実践事例を紹介します。
なぜフードバンク関西が食育を?
小学校低学年向け
食育プログラムの開発
ラベル印字ミス、外装破損、納品・販売期限
切れ、定番カット、見た目が悪い、過剰生産な
2014 年4月から月1回、C・キッズ・ネット
どの理由で食品としては問題がないのに廃棄さ
ワークと当法人の食育メンバーが集まり、検討
れてしまう食品
(以下、食品ロス)があります。
を重ねました。食品ロスの具体的な現状の写真
フードバンク関西では、主に食品関連企業から
や情報を当法人が提供し、それにC・キッズ・
これらの食品を無償で預かり、弱い立場の人た
ネットワークの蓄積された教材作りのノウハウ
ちを支援する非営利団体に無償で届けるフード
を用いて、一緒に議論しながら食育プログラム
バンク事業を行っています。
を完成させました。
① カードゲーム
私たちは日々、食品ロスの現状を間近に見な
がら、
「食べ物は命の糧。無駄なく大切にした
「ルーツをさがそう! あなたはだーれ?」
い」という思いで活動しています。若い人たち
まず、なぜ
「食べ物は大切なのか」
、子どもた
を対象にこの活動を紹介したとき、
「食べ物は
ちに感じ取ってもらいます。
大切なんだ」という基本的な意識が希薄だと感
加工食品の写真と動物のイラストのカード
じます。わが国は食糧の大半を輸入に頼り、子
(図1)
を使ったゲームで、食品がどの生き物か
どもの6人に1人が食事にも事欠く貧困状態に
ら作られているのかを答えるうちに、普段食べ
あるにもかかわらず、全国の米の収穫量とほぼ
ている物が生き物からできていて、生き物の命
匹敵する量の食品ロス
(500 万~ 800 万 t)を毎
を頂いているということに気づきます。
年排出しています。この状況を改善するには、
将来を担う子どもたちに
「食べ物は命の糧、大
切にしよう」という意識を培う必要があるとの
思いから、私たちも食育に取り組むべきだと考
えるようになりました。
とはいえ、私たちには食育を伝えるノウハウ
図1 カードゲームで使用する写真とカード
がありません。そこで、消費者教育の出前講座を
② ゴミ袋シアター
開発し実践しているNPO法人C・キッズ・ネッ
トワークと協働で食育プログラムを作成するこ
「ぼくたちを捨てないで!」
とになりました。
男の子とお母さんが主人公で、普段の生活で
2016.5
国民生活
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ありそうな場面設定になっています
(図2)
。
講座の主催者にも、
「本当にまだおいしく食べら
●ストーリー
れるのにもったいない」
ことを体感してもらい、
ある日、ゴミ捨てのお手伝いを頼まれた男の
好評でした。
子。ゴミ袋を運んでいると袋が破れ、中からお
食育講座のお披露目と参加者の感想
まけだけ取って捨てられたチョコレートや腐っ
ていないのに皮が黒くなっただけで捨てられて
2014 年度は、西宮の公民館などで実験的に
しまったバナナ、大袋で買って食べきれずに捨
2講座実施し、その後、講座に参加した子ども
てられたポテトチップスなどが飛び出てきて、
の家族にも内容が伝わるお土産の工作を取り入
怒りだします。ゴミたちの言い分を聞いた男の
れるなどプログラムをバージョンアップさせて、
子とお母さんは、これまでの行動を反省して、
C・キッズ・ネットワークが宝塚市の学童保育児
食べ物を大切にし、捨てないようにすることを
童を対象に多くの講座を実施しました。当法人
約束します。
としては、2015 年7月に
「あしや市民活動フェ
「もったいない」
の振り付けで挿入歌を参加者
スタ」
でお披露目をしました
(写真2)
。
も一緒に歌って踊ることで、自分たちの生活の中
参加者には毎回、講座の最後にアンケートに
でどうすれば食
記入してもらっていますが、
「まだ食べられるの
べ物を無駄に捨
に捨てるのはもったいないと思った」
「こんな簡
てないようにで
単なことで食べ物が捨てられるのを知ってびっ
きるのか、メッ
くりした」
「これからも食べ物を残さずに食べ
セージを理解で
ようと思いました」
などの感想が多く寄せられ、
きるようになっ
講座の趣旨が伝わっていると感じました。
ています。
図2 登場するキャラクター
③「どうして捨てられたの? クイズ」
当法人に提供された食品の写真
(写真1)
を見
て、なぜ捨てられることになったのかを当てる
クイズです。実際の食品ロスの例なので説得力
があり、実施後のアンケートでも、
「もったいな
い」を実感してもらえたことが分かりました。
写真2 あしや市民活動フェスタでの講座のようす
今後の展望
C・キッズ・ネットワークとの連携を続けて、
2015 年度は親子向け講座の実施と、授業での
実施を想定した小学校高学年向けプログラムの
開発を行いました。講座を実施するなかでの要
望を受けて、2016 年度は大人向け講座と中学
生向け講座を開発していく予定です。
写真1 フードバンク関西に提供された食品
フードバンク活動と食育を両立させながら、
④ 当法人で取り扱う食品の試食
無駄を無くして食べ物に困る人のない社会の実
現に向けて、今後も活動を続けていきたいと思
1時間 30 分の講座の場合は、最後に当法人で
います。
取り扱う食品を試食してもらいます。保護者や
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