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防災教育に向けた被災経験ブログの収集 Collection of Disaster

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防災教育に向けた被災経験ブログの収集 Collection of Disaster
防災教育に向けた被災経験ブログの収集
Collection of Disaster Experience Blog for Education of Disaster Prevention
安部 智也*1, 安藤 一秋*2
Tomoya ABE*1, Kazuaki ANDO*2
*1 香川大学大学院工学研究科
*1 Graduate School of Engineering, Kagawa University
*2 香川大学工学部
*2 Faculty of Engineering, Kagawa University
Email: *1 [email protected], *2 [email protected]
あらまし:防災教育には,被災者の経験情報が活用されている.本稿では,Blog 中の震度を基に被災
経験 Blog を判定・収集すると同時に被災者が実際に受けた震度を自動抽出する手法について検討する.
キーワード:防災教育,被災経験,東日本大震災,ブログ
1.
はじめに
近年,日本国内において大規模地震が多発し,多
くの被害を引き起こしている.また,今後の大規模
地震に伴う被害も懸念されており,防災対策の重要
性が益々高まっている.各省庁や地方自治体は,小
中学校などの教育機関に対して,防災教育の実施を
推進している.教育機関における防災教育では,過
去の震災による被害や経験を活かし,数学や理科な
どの授業と関連させて地震と津波の仕組みを学び,
災害時に的確な行動が取れるような態度や能力を身
に付けさせることを目的としている.
防災教育を実施するにあたり,被災者の経験談や
意見などの被災経験が有用な情報として活用されて
いる.各省庁や地方自治体,企業などでは,アンケ
ート調査(1)によって被災経験を収集している.しか
し,アンケートの配布・集計は労力を要するだけで
なく,コストに見合った情報が必ずしも得られると
は限らない.
この問題に対し,個人の経験や意見などが書かれ
ている Blog を活用することで,不足する情報量を
補うことができると考えられる.しかし,Blog 上
の被災経験を検索エンジンで調べようとしても,
Blog は構造化されていないため情報が分散してお
り,効率的に被災経験を収集できない.
そこで本研究では,Blog から有用な被災経験を
マイニングすることで,防災教育に役立つ知識を構
築することを目的とする.特に,本研究では,防災
対策とその効果や地震中・後の行動・状況などから
得られる知識を震度ごとに整理し,防災教育に活用
することを想定している.
本稿では,まず,東日本大震災後に実施された被
災者向けアンケートを整理し,アンケートを補う情
報源として Blog の妥当性を検証する.次に,Blog
中の震度を基に被災経験 Blog を判定・収集すると同
時に,被災者(Blog 著者)が実際に受けた震度を自
動抽出する手法について検討する.
2.
アンケート項目の調査
地方自治体や企業が実施している地震被災者に対
するアンケート 11 件に対し,複数のアンケートで
頻出する項目を整理し,重要項目を調査する.
調査結果を以下に示す.
・津波と避難行動
67 件
・避難生活
45 件
・日常の防災対策
22 件
・地震後の行動・状況
16 件
・回答者の属性
12 件
・地震中の行動・状況
12 件
・地震後の生活
11 件
・人的・物的被害
2件
東日本大震災では,津波の被害が甚大であり,多
くの人が避難生活を余儀なくされたため,津波と避
難行動,避難生活に関する項目が最も多くなったと
考えられる.上記に続いて,日常の防災対策や地震
中・後の行動・状況に関する項目が多い.これらの
情報は,防災教育の指針や教材作成などに有用であ
ると考えられる.
3.
Blog 調査
3.1 Blog 件数推移
被災経験 Blog の存在を簡易的に確認するため,
東日本大震災発生日を含む,2011 年 1 月 1 日から 6
月 31 日の期間に記述された Blog 件数の推移を調査
する.なお,被災経験 Blog には,本文に「地震」と
いうキーワードが存在すると仮定し,Yahoo!ブログ
検索を用いて記事数の推移を調査する.
調査結果を図 1 に示す.図 1 より,地震発生後は,
急激に「地震」を含む Blog の件数が増加しているこ
とが分かる.したがって,平常時に比べて Blog 記
事数の推移に変動が大きい期間に書かれた Blog に
は,被災経験が書かれている可能性があると考えら
れる.また,重度の被災者は地震発生後すぐには
Blog を記述できないため,長期間に渡って被災経
験 Blog を収集する必要があると考えられる.
70000
3月12日
58751件
60000
50000
件 40000
数
30000
3月13日
42446件
3月11日
東日本大震災発生日
34673件
3月14日
37448件
20000
10000
3月10日
2033件
被災経験 Blog と判定し収集する.なお,Blog から
複数の被災震度が抽出された場合は,SVM のスコ
アで決定する.
SVM の素性は,「震度」の前後 n 文に含まれる名
詞と動詞の単語特徴量を計算し,閾値を超えた特徴
量をもつ単語で 2 値ベクトルを作成し利用する.な
お,前後 n 文の範囲と利用する特徴語およびその特
徴量の計算法などは,次の実験で決定する.
0
5.
日付
図 1 キーワード「地震」を含む Blog 記事数の推移
3.2 Blog 内容の調査
本研究では被災経験 Blog から得た知識を震度ご
とに整理して活用する.そこで,東日本大震災発生
日 2011 年 3 月 11 日と翌日に記述された Blog から,
「地震」と「震度」を含む Blog を 40 件収集し,被
災者(Blog 著者)が受けた震度(被災震度)が記載
されているか,また,どのような内容が記載されて
いるかを調査する.
調査の結果,28 件(70.0%)の Blog には,被災震
度が記載されていた.記載内容を分類した結果(上
位 5 件)を以下に示す.
・地震中の状況
24 件
・被災場所
15 件
・被災時の心境
12 件
・自宅の被害状況
12 件
・避難状況
11 件
調査した Blog には,揺れの様子や被災場所,被
災時の心境,被害状況などが多く記載されていた.
また,これら以外にも,地震後の状況や安否確認な
どが記載されていた.被災震度の前後には,著者が
経験した上記の内容が書かれやすい傾向があること
も確認した.以上より,Blog を情報源とすること
で,様々な被災経験の収集が期待できる.
しかし,Blog には震源地の震度や身内・友人が
受けた震度など,Blog 著者と直接関係のない震度
が記載される場合がある.また,地震を経験してい
ない著者が書いた Blog もある.本研究では,被災
経験 Blog から得られた知識を震度ごとに整理・活
用することが目的であるため,大量の Blog から被
災経験 Blog を判定する共に,被災震度を抽出する
必要がある.
4.
被災経験 Blog の収集と震度抽出
ここでは被災経験 Blog の判定と被災震度を抽出
する手法を検討する.3.2 の調査により,被災者が
受けた震度の前後文には,状況や心境などの経験情
報が記載される傾向があることがわかった.そこで,
「震度」を含む文と前後 n 文に含まれる名詞と動詞
に注目し,SVM(Support Vector Machine)を使って,
Blog 著者の被災震度を判定・抽出する.また,被
災震度と判定された場合,その震度を含む Blog を
評価
被災経験 Blog の判定性能は,被災震度の抽出性
能に依存するため,本稿では被災震度の判定性能に
ついて評価する.前後 n 文の範囲は 0~5 文,特徴量
計算には,TF,IDF,TFIDF の 3 種を利用する.ま
た,利用する特徴語は,正解・不正解 Blog の両方
または一方に出現する名詞・動詞とする.その他に,
形態素の構成語数,漢字表現の有無を利用する.こ
れらを組み合わせ,最適なパラメータを求める.な
お,比較手法にはベイジアンフィルタを利用する.
評価データには,東日本大震災から 5 日間の Blog
から「地震」と「震度」を含む Blog を抽出し,「震
度」の前後 5 文を 1 単位(記事)として,正解・不
正解各 100 件を用意する.評価は,各手法の精度,
再現率,F 値で行う.なお,実装には,SVMLight
(線形 SVM)と NaiveBayes を採用した.
表 1 に評価結果を示す.表 1 より,提案手法がす
べての面でベイジアンフィルタを上回っていること
がわかる.精度も 89.33 と高い.この時のパラメー
タは,前後文の範囲が前 3 後ろ 5 文,単語特徴量は
IDF,語数 1 語以上,漢字表現を考慮しない場合で
あった.また,利用する形態素が一方のみに出現し
た場合と考慮しなかった場合で同じ結果となった.
なお,再現率は 67.00 と低いため改善を要する.
表 1 各手法の評価結果
比較手法
精度
再現率
43.16
41.00
ベイジアンフィルタ
89.33
67.00
提案手法(SVM)
6.
F値
42.05
76.57
まとめ
本稿では,情報源としての Blog の有用性,被災
経験 Blog を収集すると同時に,被災震度も抽出する
手法について検討・評価した.今後は収集した被災
経験 Blog から被災経験をマイニングする手法を検
討し,防災教育に役立つ知識として体系化する.
参考文献
(1) 内閣府防災担当,東日本大震災時の地震・津波被害
に 関 す る WEB ア ン ケ ー ト 調 査 ,
http://www.bousai.go.jp/jishin/chubou/taisaku_tsunami/10
/4-1.pdf
(2) 城下英行,河田惠昭:“学習指導要領の変遷過程に
見る防災教育展開の課題”,自然災害科学,26-2,
pp.163-176 (2007)
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