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愛媛県消防広域化推進計画 愛 媛 県

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愛媛県消防広域化推進計画 愛 媛 県
愛媛県消防広域化推進計画
愛
媛
県
目
次
第1章
自主的な市町の消防の広域化の推進に関する基本的な事項 ・
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・1
第1
市町の消防の広域化の必要性 ・
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・1
第2
本計画の目的 ・
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・2
1
計画策定のスケジュール ・
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計画の位置付け ・
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・2
第3
本計画における広域化の理念 ・
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第4
消防広域化基本計画の取扱い ・
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・3
第2章
市町の消防の現況及び将来の見通し ・
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第1
市町の消防の現況・
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これまでの消防広域化 ・
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消防本部の現状 ・
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(1)管轄区域の状況 ・
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(2)職員数の状況 ・
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(3)消防用車両数の状況 ・
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(4)人事管理の状況 ・
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(5)消防本部の運営方式 ・
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・7
(6)消防本部の体制 ・
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・7
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消防需要の動向 ・
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(1)火災発生件数 ・
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(2)防火対象物の推移 ・
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・8
(3)救急出場件数 ・
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・9
(4)危険物施設の推移 ・
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・・10
4
消防の決算状況等 ・
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・10
第2
消防を取り巻く環境の変化と将来見通し ・
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・11
1
災害や事故の多様化及び大規模化等 ・
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・11
2
人口減少、高齢化時代への突入 ・
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・11
3
市町の財政 ・
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・13
第3章
自主的な市町の消防の広域化の対象となる市町の組合せ ・
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・15
第1
本計画における広域化対象市町・
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・15
第2
広域化対象市町の組合せ ・
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・15
1
組み合わせ検討パターン ・
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・15
2
広域化効果の検討 ・
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・16
3
検討結果 ・
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・17
第4章
自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置に関する事項 ・
・19
第1
広域化を推進するための協議機関の設置等 ・
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・19
第2
広域化を推進するための県の体制の整備等 ・
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・19
1
「愛媛県消防広域化推進本部」の設置 ・
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・19
2
住民及び関係者に対する情報提供、普及啓発等 ・
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・20
3
市町への県の援助等 ・
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・20
4
関係市町間の協議の積極的な推奨、調整等 ・
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・20
第5章
広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項 ・
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・21
第1
広域化後の消防の体制の整備 ・
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・21
第2
構成市町等の関係 ・
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・21
第3
広域化後の消防の体制の整備のために考えられる方策 ・
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・21
第4
広域化後の消防の体制の円滑な運営等 ・
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・22
第6章
市町の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項 ・
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・23
第1
消防団との連携の確保 ・
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・23
第2
市町防災担当部局との連携の確保
愛媛県消防広域化推進計画
第1章 自主的な市町の消防の広域化の推進に関する基本的な事項
第1 市町の消防の広域化の必要性
消防は、災害や事故の多様化及び大規模化、複雑化、過疎化、少子高齢化、住
民ニーズの多様化等の消防を取り巻く環境の変化に的確に対応し、将来に向けて
住民の生命、身体及び財産を守る責務を全うしなければならない。
しかし、一般的に小規模な消防本部においては、出動体制、保有する消防車両、
専門要員の確保等に限界があることや、組織管理や財政運営面での厳しさが指摘
され、消防体制としては必ずしも十分でない場合がある。
本県においては、これまでも自主的に消防広域化が推進されてきたところであ
るが、現在県下 14 消防本部のうち、管轄人口が 30 万人を超えている消防本部は
1 つ、消防職員数が 200 人を超える消防本部は2つのみであり、小規模な消防本
部が多く、管轄人口 10 万人未満の消防本部が約 6 割を占める全国の状況と同様
の課題を抱えている。
また、県内の総人口は昭和 60 年をピークに減少局面に入っており、今後も少
子化の進行により将来人口が減少する一方で、高齢者人口は増加していくと予想
されている。このことは、高齢者の増加に伴う急病による救急出場の機会が当面
は増加することが予測され、消防力の整備指針の基準となる消防本部の管轄人口
の減少とともに、将来的に大きな影響があるものと考える。
このような状況から、これらを克服し、将来に向けて本県の消防力の維持強化
を目指すためには、市町の消防の広域化により、行財政上の様々なスケールメリ
ットを実現することが極めて有効である。
具体的には広域化によって、
○
災害発生時における初動体制の強化
○
統一的な指揮の下での効果的な部隊運用
○
本部機能統合等の効率化による現場活動要員の増強
○
救急業務や予防業務の高度化及び専門化
○
財政規模の拡大に伴う高度な資機材の計画的な整備
○
消防署所の配置や管轄区域の適正化による現場到着時間の短縮
等、消防力の強化による住民サービスの向上や消防に関する行財政運営の効率化
と基盤の強化が期待される。
−1−
第2 本計画の目的
1
計画策定のスケジュール
平成 18 年 6 月に一部改正された消防組織法では、市町村の消防の広域化に関
し、次の事項について定めている。
① 市町村の消防の広域化の理念及び定義
② 消防庁長官による基本指針の策定
③ 都道府県による推進計画の策定及び都道府県知事の関与等
④ 広域化対象市町村による広域消防運営計画の作成
⑤ 国の援助及び地方債の特別の配慮
同法第 33 条第 1 項においては「都道府県は、基本指針に基づき、当該都道府
県の区域内において自主的な市町村の消防の広域化を推進する必要があると認
める場合には、その市町村を対象として、当該都道府県における自主的な市町
村の消防の広域化の推進及び広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する計画
(以下、
「推進計画」という。)を定めるものとする。」と規定され、同年 7 月に
消防庁から出された、市町村の消防の広域化に関する基本指針(以下、
「基本指
針」という。)の中では、都道府県における推進計画を策定後、5 年以内(平成
24 年度まで)を目途に広域化を実現することなど、消防の広域化に係るスケジ
ュールが示されている。
2
計画の位置付け
本計画は、本県における推進計画として、消防組織法及び基本指針に基づき、
消防の広域化を推進する必要があると認める市町(以下、
「広域化対象市町」と
いう。)について、その広域化を計画的かつ円滑に推進することを目的として、
策定するものであり、本計画に基づいて、広域化対象市町の自主的な取組みに
より、消防の広域化が実現することを期待するものである。
第3 本計画における広域化の理念
本計画における市町の消防の広域化とは、消防組織法及び基本指針に規定さ
れているとおり、2以上の市町が消防事務(消防団の事務を除く。以下同じ。)
を共同して処理すること又は市町が他の市町に消防事務を委託することによ
り、消防の体制の整備及び確立を図るものである。このため、広域化によって
各市町の消防の対応力が低下するようなことがあってはならないと考えてい
る。
また、本県において消防の広域化を推進していくにあたっては、市町、住民、
消防関係者の意見を十分に聞きながら、理解を得る努力をしていくこととして
−2−
いる。
第4 消防広域化基本計画の取扱い
本県では、平成 9 年 12 月に「愛媛県消防広域化基本計画」
(以下、
「旧計画」)
を策定したが、その後、消防の広域化の目立った動きはなく、平成 16 年頃に行
われた市町村合併に合わせて、14 消防本部に再編され現在に至っている。
本計画においては、平成 18 年 6 月の消防組織法の一部改正及び消防庁から出
された基本指針を踏まえて、消防の広域化を推進していくこととしており、現
時点において、旧計画に基づく消防の広域化についての協議実態がないことか
ら、本計画の策定をもって、旧計画は廃止することとする。
−3−
第2章 市町の消防の現況及び将来の見通し
第1 市町の消防の現況
1
これまでの消防広域化
(昭和期)
県内の消防は、昭和 23 年3月7日の消防組織法施行とともに、松山市消防本
部(現松山市消防局)が設置され、同年 11 月に宇和島市消防本部、昭和 24 年
に新居浜市消防本部及び今治市消防本部、昭和 27 年に西条市消防本部、昭和 36
年に川之江市消防本部、昭和 37 年に伊予三島市消防本部、昭和 44 年に北条市
消防本部が発足して、単独消防 8 市が誕生した。
次いで、消防の常備化の必要性や広域行政の推進などにより、市と周辺の町村、
また、同じ郡内の町村が共同で消防業務を行うため「一部事務組合」が組織され、
昭和 48 年に周桑事務組合・伊予消防等事務組合・宇摩地区広域市町村圏組合に
それぞれ消防本部が設置された。
その後も随時、消防の常備化が図られ、昭和 59 年には八幡浜地区施設事務組
合消防本部の設置をもって、16 消防本部(単独設置 4、組合設置 12)となった。
(平成期)
平成 6 年には、消防庁が小規模消防の広域再編を計画的かつ円滑に進めるため
消防広域化基本計画の策定指針が示され、本県においても平成 9 年 12 月に「旧
計画」を策定した。それによると、広域再編の組合せ案として、3 案(「3 ブロッ
ク案」
、
「6ブロック案」、
「12 ブロック案」)を参考として示したが、広域再編の
具体的な動きはなかった。
平成 13 年頃から市町村合併の検討がなされ、本県においては積極的に合併が
推進された結果、平成 14 年度末に 70 あった市町村が平成 17 年8月には、20
市町に再編され、これに伴って、常備消防も再編がなされ、10 の単独消防本部
(7市3町)と、4つの組合消防本部という、現在の体制となった。この際、今
治地域においては、今治地区事務組合消防本部と越智郡島部消防事務組合消防本
部が合併し、今治市消防本部及び上島町消防本部に再編されたが、結果的に上島
町消防本部は従前より小規模な消防本部となった。
また、県内で唯一消防の常備化がなされていなかった中島町が平成 17 年 1 月
に松山市と合併したことにより、県内の常備化率が 100%となった。
−4−
2
消防本部の現状
(1)管轄区域の状況
ア
管轄人口
県下 14 消防本部のうち、管轄人口が 30 万人を超える規模の消防本部が1つ、
10 万人以上∼30 万人未満の規模の消防本部が4つ、そして 10 万人未満のいわ
ゆる小規模消防本部が半数以上の9つとなっている。なお、全国の状況は、平成
18 年4月1日現在で 811 の消防本部があり、そのうちの6割が管轄人口 10 万人
未満の小規模消防本部であり、また、全国の消防本部の管轄人口の平均は約 16
万人となっていることから、本県は小規模の消防本部の比率が高い状況にある。
イ
管轄面積
管轄面積は、最大が宇和島地区広域事務組合消防本部の 809.9k㎡、最小は、
島嶼部にある上島町消防本部の 30.4k㎡で、平均は約 406k㎡である。なお、全
国の管轄面積の平均は約 450k㎡で、最も管轄面積の広い消防本部は 3641.9k㎡
(管轄人口 484,595 人)で、実に本県の面積の6割以上の管轄面積を有している
消防本部もある。
(消防本部データ)
面 積
消防本部名
人 口
(16 年度)
職員数
(17年国調)
消防署所数
(18 年度)
(18 年度)
四国中央市
420.1
92,854
141
6
新居浜市
234.3
123,952
123
3
西条市
509.0
113,369
134
4
今治市
419.7
173,985
215
8
上島町
30.4
8,098
23
1
松山市
428.9
514,944
443
10
東温市
211.5
35,279
44
1
伊予消防等事務組合
316.4
92,483
148
6
久万高原町
583.7
10,946
40
2
大洲地区広域消防事務組合
731.7
70,405
101
5
八幡浜地区施設事務組合
268.7
61,866
100
4
西予市
473.4
36,442
68
4
宇和島地区広域事務組合
809.9
106,567
138
4
愛南町
239.6
26,633
44
1
5677.2
1,467,824
1,762
59
合
計
−5−
ウ
地域の特徴
(東予地域)
東予地域は、海岸沿いに石油コンビナートの大規模な危険物施設とともに、製
紙、機械、鉄鋼、造船、食品などの工場も数多く立地している。また、瀬戸内海
にある多くの島々がしまなみ海道として結ばれたが、四島からなる上島町は隣地
の今治市と現在のところ橋で結ばれておらず、救急患者の約9割は、広島県尾道
市に搬送しているほか、四国中央市においても、地理的状況、経済的な結び付き、
住民の生活圏等から、県境を越えた消防の連携がなされている。
(中予地域)
中予地域は、県の人口の約3分の 1 が県都松山市に集中し、高層マンションや
大型ショッピング施設など人の集まる施設が多く、都市型災害への備えが必要で
ある。また、久万高原町は、深い山里に集落が点在し、消防救急ともに現場到着
時間や搬送時間の短縮が課題となっている。
(南予地域)
南予地域は、複雑で長い海岸線を有するとともに、四国山地の一部を形成し、
広い中山間地に今後限界集落も増加することが予想されることから、地域の消防
力の維持が課題である。また、佐田岬半島には、四国唯一の原子力発電所が立地
しており、原子力災害への備えが必要である。
(2)職員数の状況
消防職員数(平成 18 年 4 月 1 日現在)の状況は、100 人以上の職員を有してい
る消防本部は9消防本部あり、そのうち、松山市消防局(443 人)、今治市消防本
部(215 人)が、200 人を超えている。職員数が 50 人未満の消防本部は、4消防本
部あり、そのうち、最も職員数の少ない消防本部は、上島町消防本部(23 人)と
なっている。県内 14 消防本部の平均の職員数は約 126 人で、全国平均 168 人(東
京消防庁を除く)と比較して、職員数でも本県は小規模な消防本部が多いといえる。
また、平成 18 年度に行った実態調査に基づく「消防力の整備指針」の基準数と
の比較では、その職員の充足率の平均は 71%、消防本部別では、48%の消防本部
から 120%の消防本部まであり、地域格差が大変大きいのが特徴である。
(3)消防用車両数の状況
消防活動に必要とされる消防ポンプ自動車、救急自動車などの車両の配置状況
(平成 18 年度実態調査)については、消防ポンプ自動車(消防団分含む)325 台
−6−
(整備指針充足率:103%)、はしご自動車 16 台(同:94%)、化学消防車 17 台(同:
81%)、救急自動車 75 台(同:106%)、救助工作車 17 台(同:85%)となってお
り、各市町等において計画的に整備してきた結果、充足されつつある状況にある。
(4)人事管理の状況
(年齢構成)
県内消防本部の年齢別職員構成は、東予地域においては、50 歳から 54 歳と 30
歳から 34 歳の職員が多く、以下、中予地域は、30 歳台から 34 歳台、南予地域は、
45 歳から 49 歳が多いなど、消防本部、地域によって偏っている状況にある。これ
は、これまでの常備化や広域化の過渡期において、一時期に大量に採用するなどし
て、ばらつきがあったためと思われる。
(課題)
小規模の消防本部や職員充足率の低い消防本部では、人事ローテーションの硬直
化がみられるほか、長い研修期間を必要とする救急救命士養成あるいは各種教育訓
練の期間中の補充要員が確保できないなどの理由により、救急救命士の養成や各種
訓練機会の確保が困難をきたしている。
さらに、小規模消防本部ほど、救急隊員、救助隊員及び予防要員などの養成や専
従化に、苦慮している状況にある。多くの消防本部において、予防査察業務は非番
の職員が行ったり、初動出動で対応しきれない場合の2次出動においても非番の職
員が対応する例も見受けられる。
(5)消防本部の運営方式
14 消防本部のうち、10 消防本部が単独市町、4消防本部が一部事務組合として
消防業務を行っており、広域連合方式はない。また、新居浜市の旧別子山村につい
ては、地形の状況から、四国中央市消防本部が新居浜市消防本部から消防に関する
事務(ただし緊急出動のみ)の事務委託が行われている。
また、20 市町のうち、松山市、新居浜市、西条市の3市を除く 17 市町について
は、現在又は過去に事務組合方式での消防事務の共同運営を行った経験を有してい
る。
(6)消防本部の体制
県内の消防本部の一部には、市町単位で消防職員の人事、消防本部の財政及び
119 番に基づく指令業務、部隊運用等を行っているところもあり、現在、本部への
人事交流を行うなど、広域運営に向けて新たな取り組みが始まっている。
−7−
3
消防需要の動向
(1) 火災発生件数
火災発生件数は増加と減少を繰り返す傾向にあるが、過去 10 年間の平均は年間
643 件となっている。このうち、最も多い年が平成 14 年の 776 件、最も少ない年
が平成 10 年の 565 件で、毎年ほぼ 600 件前後発生している。また、死者数は毎年
30 人程度で推移している。
住宅火災発生件数は、平成 9 年の 435 件に対して、平成 18 年が 389 件となって
おり、46 件、約 10%減少している。
火災発生件数の推移
愛媛県件数(件)
全国件数(件)
70,000
2,000
63,015
62,913
64,066
63,591
61,889
1,800
63,651
60,387
62,454
60,000
58,526
56,700
54,514
1,600
57,460
56,333
53,260
50,000
全国
1,400
40,000
1,200
30,000
1,000
愛媛県
792
800
755
600
20,000
776
708
656
659
611
565
660
626
630
627
H15
H16
653
580
400
10,000
0
H5
H6
H7
H8
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H17
H18
(年)
(2) 防火対象物の推移
防火対象物は、消防法施行令の改正等による影響はあるものの、平成8年度末の
37,006 施設に対して平成 18 年度末が 41,222 施設となっており、4,216 施設、11.4%
増加している。
−8−
防火対象物の推移
(件)
42,000
41,222
41,000
40,736
40,137
40,000
39,694
39,000
38,943
38,500
38,152
38,000
37,767
37,000
36,000
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
(年度末)
(3) 救急出場件数
救急自動車の出場件数は、一貫して増加しており、平成8年の 38,863 件に対し
て平成 18 年が 57,416 件となっており、18,553 件、47.7%と大幅に増加している。
しかし、今後、高齢化は進むものの、人口減少が予測されることから、適正な救急
自動車の利用が徹底されれば、将来的には救急の出場件数の増加率は鈍化するもの
と思われる。
救急出場件数
件
70,000
57,416
60,000
52,673
48,719
50,000
42,062
43,765
55,009
57,191
48,996
45,699
40,000
39,684
30,000
20,000
10,000
0
平成9年
平成10年 平成11年 平成12年 平成13年 平成14年 平成15年 平成16年 平成17年 平成18年
−9−
(4) 危険物施設の推移
危険物施設数は、平成8年度末 7,470 施設から、18 年度末の 7,115 施設となっ
ており、355 施設、約 4.8%減少している。
危険物施設の推移
(件)
7,500
7,472
7,470
7,422
7,400
7,405
7,386
7,400
7,300
7,249
7,214
7,213
7,200
7,190
7,115
7,100
7,000
6,900
H8
4
H9
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
(年度末)
消防の決算状況等
県内市町の消防に係る平成 17 年度歳出決算額は 243 億円、そのうち常備消防に
係る経費が 213 億円となっており、平成 15 年度から徐々に増加傾向で推移してい
る。一方、市町の決算総額は減少しているため、決算額に占める消防費の割合はよ
り大きくなってきている。
また、県民一人あたりの消防費は、平成 18 年度 12,300 円となっているが、一般
的な傾向として、小規模な消防本部を構成する市町ほど住民一人当たり消防費は割
高となっている。
愛媛県市町消防費性質別歳出決算額
年 度
消 防 費 消防団
合計
(百万円)
常 備 消 防
常備合
人件費
物件費
計
維持修
補助費
普通建
繕費
等
設事業
その他
費
15
22,379
3,359
19,020
11,006
1,051
38
5,592
1,260
73
16
23,752
3,099
20,563
12,783
1,456
70
4,572
1,762
9
17
24,304
3,031
21,273
11,117
1,307
76
4,641
2,044
8
(消防庁:消防年報)
−10−
第 2 消防を取り巻く環境の変化と将来見通し
1
災害や事故の多様化及び大規模化等
近年、全国各地で、新潟県中越地震や中越沖地震及び岩手・宮城内陸地震など
の大規模地震災害が発生するとともに、平成 18 年 7 月豪雨、北海道佐呂間町の
竜巻及び平成 19 年台風などによる大雨や暴風による災害、サリン事件などのテ
ロ攻撃、JR福知山線脱線事故、東京都渋谷区温泉施設爆発事故、秋葉原無差別
殺人事件など、多様な災害や事件・事故が発生している。
県内においても、平成 13 年 3 月の芸予地震、平成 16 年 7 月 8 月の集中豪雨災
害が発生し、近い将来には、東南海・南海大地震の発生が予想されている。
これらの災害や事故は、一度に多数の部隊や資機材の投入、さらには高度な資
機材も必要となるため、単一の消防本部のみで対応することは困難な状況である。
2
人口減少、高齢化時代への突入
日本の総人口は、平成 17 年に戦後初めて減少に転じており、今後の長期的展
望においても、少子化の進行により将来人口は減少すると予想されている。
(愛媛県)
愛媛県の総人口は、昭和 60 年(1985 年)にすでにピークを迎え、約 153 万人
を最高に年々減少している。その後、平成 7 年(1995 年)には、約 150 万 7 千人、
平成 17 年の国勢調査結果では約 146 万 8 千人となっており、この、20 年間で、
愛媛県の総人口は、実に約 6 万 2 千人、4.1%減少した。
将来においても、社会保障・人口問題研究所の推計では、愛媛県の 25 年後(平
成 42 年)の人口予測は、総人口は約 124 万 6 千人で 22 万 2 千人、15.1%の減少
となっている。
また、本県の高齢者(65 歳以上)の人口は、平成 17 年 351,990 人であり、県
人口に占める割合(以下、「高齢化率」という)は、23.9%であるが、推計によ
ると平成 42 年では、高齢者人口 410,275 人、高齢化率 31.0%となっている。
将来人口の推移(推計)
万人
180.0
160.0
145.0
153.0
140.0
136.0
148.0
131.0
141.0
125.0
120.0
100.0
80.0
60.0
40.0
20.0
0.0
昭和60年
平成17年
平成22年
平成27年
−11−
平成32年
平成37年
平成42年
(消防本部別)
人口について、消防本部別に見てみると、県下の消防本部はすべて、平成 42
年には減少しており、そのうち 10%までの減少に止まっているものが2消防本部、
10%∼30%が6消防本部、30%以上減少するものが6消防本部となっている。
また、各消防本部の高齢化率については、平成 42 年の推計では、松山市消防
本部を除きすべて 30%を超えると予想されている。
消防本部別人口の推計
消防本部名
四国中央
17 年
22 年
27 年
32 年
37 年
42 年
対 17 年 増 減 率
92,590
90,039
86,805
82,853
78,362
73,614
△ 20.5
新居浜
122,993
119,201
114,538
108,812
102,467
95,932
△ 22.0
西条
113,615
111,242
107,281
102,669
97,640
92,473
△ 18.6
今治
175,312
169,030
161,575
152,970
143,580
133,792
△ 23.7
上島
7,691
6,888
6,080
5,283
4,515
3,817
△ 50.4
松山
518,598
525,216
527,863
525,590
519,154
509,517
△ 1.8
東温
36,042
36,860
37,145
37,041
36,559
35,717
△ 0.9
伊予
92,682
91,985
90,651
88,556
85,897
82,868
△ 10.6
久万高原
10,994
10,091
9,188
8,284
7,450
6,745
△ 38.6
大洲
71,398
68,901
66,129
63,213
60,250
57,413
△ 19.6
八幡浜
53,455
49,266
45,227
41,128
37,090
33,263
△ 37.8
西予
45,188
42,765
39,926
36,936
33,905
31,011
△ 31.4
107,481
100,867
93,800
86,381
78,961
71,725
△ 33.3
愛南
27,599
25,798
23,921
21,977
20,042
18,157
△ 34.2
合計
1,475,638
1,448,149
1,410,129
1,361,693
1,305,872
1,246,044
△ 15.6
宇和島
(国立社会保障・人口問題研究所の人口推計から計算)
消防本部別人口高齢化率予測
消防本部名
17 年国調
22 年
27 年
32 年
37 年
42 年
四国中央
21,948
25.1%
28.2%
30.1%
30.8%
30.9%
新居浜
30,160
26.4
30.0
31.3
31.4
31.3
西条
28,375
26.5
29.4
31.0
31.6
31.9
今治
44,319
27.4
31.1
32.5
32.5
32.1
上島
2,775
37.8
42.5
44.5
44.2
42.6
松山
98,265
21.2
24.5
26.6
27.8
28.9
東温
7,625
22.8
25.8
28.3
30.0
30.6
伊予
21,630
25.5
28.7
30.6
31.5
31.4
4,678
41.1
40.8
40.1
39.0
37.7
久万高原
−12−
大洲
20,662
28.9
30.7
31.8
32.0
31.4
八幡浜
16,649
31.4
33.7
34.8
34.7
33.8
西予
15,421
34.4
36.5
37.4
36.8
35.8
宇和島
31,654
29.6
32.7
34.0
34.1
33.4
愛南
7,829
28.4
31.8
34.1
34.6
33.7
合計
351,990
25.5
28.6
30.3
30.8
31.0
(国立社会保障・人口問題研究所の人口推計から計算)
(消防団)
消防団員数は、全国の傾向と同様に減少傾向にあり、また、団員の平均年齢の
高年齢化、サラリーマン化(昼間における地域内の団員が減少)が進んでおり、
地域の消防に対する常備消防への期待と負担は更に高まるものと予想される。
消防団員数の推移
H8
21,963
(人)
H10
H11
H12
H13
H14
H15
H16
H17
H18
21,804
21,702
21,506
21,361
21,361
21,464
21,429
21,171
21,197
団員の平均年齢の推移
H8
H10
37.8
3
38.2
(歳)
H11
H12
38.4
38.6
H13
H14
38.8
H15
39.1
39.1
H16
39.2
H17
H18
39.6
39.8
市町の財政
(財政規模)
平成 18 年度の県内市町の普通会計(地方公共団体における地方公営事業会計以
外の会計)決算の特徴としては、事務事業の見直しや経費削減に努めたことから、
2年連続で決算規模が減少し、前年度より歳入が 5.1%、歳出が 4.7%とそれぞれ
減少し、ピークであった平成 11 年度と比べると歳入歳出とも 1,000 億円程度減少
し、平成3年度並の水準となっている。また、地方税が3年連続で増加する一方、
地方交付税は税収増に伴う基準財政収入額の増により 94 億円の減少となってい
る。
(億円)
決算規模の推移
年度
14
15
16
17
18
歳入額
6,308
6,392
6,431
6,024
5,716
歳出額
6,023
6,145
6,149
5,763
5,490
−13−
(財政の弾力性)
財政構造の弾力性を示す経常収支比率は普通交付税の減少や扶助費・公債費等
の増加により悪化し、財政状況が一段と厳しさを増している。
また、平成 18 年度の実質公債費比率(前 3 年度平均)の算定結果(速報値)
によると、地方債の発行に国や県の許可が必要となる実質公債費比率 18%以上の
市町村は、3市2町で、全体の 25%となっている。
各市町では、扶助費など必要な予算を確保しながらも、人件費や補助金の抑制、
普通建設事業のうちの単独事業費の縮小など、一層の歳出削減により財政の健全
化を図っている状況にあり、この厳しい財政運営は今後も継続するものと考えら
れる。
市町経常収支比率の推移
%
92.0
89.9
90.0
88.9
88.0
88.2
86.0
85.2
84.8
84.0
82.0
81.4
80.0
79.1
78.0
79.3
76.0
74.0
72.0
平成11年
平成12年
平成13年
平成14年
平成15年
平成16年
平成17年
平成18年
愛媛県実質公債費比率の段階別団体分布状況(18 年度)
区
分
10%以上14%未満
14%以上18%未満
18%以上
市
3
5
3
町
1
6
2
計
4
11
5
−14−
第3章 自主的な市町の消防の広域化の対象となる市町の組合せ
第1 本計画における広域化対象市町
消防は今後とも、住民の生命・身体及び財産を守る責務を全うする必要がある。
しかし、これまでに見たように、今後の本県の総人口はすでに昭和 60 年を境
に減少傾向にあり、今後もこの傾向は続くとともに、平成 32 年には高齢化率が
30%を超え、限界集落も増加することが予想され、地域の防災力の低下への懸念
は強い。
また、市町においては、高齢者福祉・医療関係の扶助費や職員の人件費等の義
務的経費の割合がますます増加していくことが予想され、今後の財政見通しは、
より厳しくなってくるものと考えられる。
これらのことから、将来においても、県民の安全・安心を確保するためには、
県内の全ての市町が、消防の広域化による行財政上の様々なスケールメリットを
バランスよく享受し、又、補完しあって、将来の消防力の強化、住民サービスの
向上、組織管理、財政運営の基盤強化につなげていく必要があると考えることか
ら、広域化対象市町は、県内のすべての市町とし、県全体で消防体制の充実強化
を目指すこととする。
第2 広域化対象市町の組合せ
広域化の組合せ案は、地理的、経済的、生活圏などの条件や救急医療圏などから、
1 ブロック案、3ブロック案及び5ブロック案の3案とする。
この3案について、今回の消防の広域化の基本である、現在の消防職員、消防署
所は削減しないという原則を踏まえて、消防本部の統合により、本部から現場への
再配置可能要員を探るとともに、財政基盤の強化、初動体制の強化を図ることを目
指して、将来の人口動向、現場の意見など踏まえて、比較検討した結果は次のとお
りである。
1 組み合わせ検討パターン
1ブロック
3ブロック
東 予
全 県
中 予
5ブロック
構 成 市 町
東予第1
四国中央市、新居浜市、西条市
東予第2
今治市、上島町
中予
松山市、伊予市、東温市、砥部町、松前町
久万高原町
南 予
南予第1
大洲市、八幡浜市、西予市、内子町、伊方町
南予第2
宇和島市、鬼北町、松野町、愛南町
−15−
2 広域化効果の検討
【組合せパターンの比較】
ブロック案
1ブロック
長
所
短
所
・職員数、財政基盤が最大となり、業務の ・消防本部と消防団、市町防災部局との
効率化により、職員の再配置などスメ
ールメリットが大きい。
関係が希薄になる恐れがある。
・組織体制や人事管理などの検討課題が
・指令センターの整備及び維持管理費が
長期的には、縮減できる。
複数ブロック案より、多岐にわたる。
・消防本部を新設しなければならない可
・広域的な指令により、消防・救急におい
能性が高く、初期投資が大きくなる。
て現地到着時間短縮や応援など初動
体制の充実が図られる。
・大災害時において統一された部隊運用
が可能となる。
・専門家の育成、弾力的な人事運用が可
能となる。
3ブロック
・管轄人口30 万人以上が達成される。
・職員数、財政的に充実し、職員の再配
置等スケールメリットを享受できる。
・生活圏、経済圏が近接し、人事配置の
・県内に 3 ブロックの境界が存在し、県下
の一元的な部隊運用が出来ない。
・消防本部と消防団、市町防災部局との
関係が希薄になる恐れがある。
調整等が1 ブロック案より比較的容易。 ・南予地域は、消防署所間の距離が長
・ 指令センターの集中により、整備、維 く、地形的にも到着時間短縮のメリットが
持管理費の縮減可能。
5ブロック
少ない。
・管轄人口 10 万人以上となる。うち、東予 ・東予第2、南予第 1 及び第2地域は、管
第1及び中予地域は管轄人口 30 万人
轄人口 10 万人台であり、規模が小さ
を超える。
く、再配置人員や財政面でのスケール
・地域のつながりが深く、組織の調整が比
較的容易。
−16−
メリットは小さい。
3
検討結果
1ブロック(案)
・職員数、財政規模が最大となり、本部人員や指令台の集約効果により、広域化
による行財政のスケールメリットを最大限活用し、全県一体となった初動・応
援体制や計画的な施設整備による消防力の充実強化が可能となる。
・ 大規模災害時に一元化された指揮命令系統により効率的な部隊運用が可能で
ある。
3ブロック(案)
・すべて管轄人口 30 万人以上となり、基本指針の基準を達成し、組織及び財政
基盤の強化が可能である。
・ メディカルコントロール協議会の活動を通じ、ブロック内での救急連携体制
が確立されている。
・ 行政、経済、地理的に関係が深く、生活圏が近いことから、組織体制づくり
や人事の調整等が 1 ブロック案と比較して容易と思われる。
5ブロック(案)
・5ブロックのうち2ブロックについては、管轄人口が 30 万人以上となるが、
残りの3ブロックについては管轄人口 10 万人台で規模が小さい。今後の人口
予測から、規模がさらに縮小することが予想され、20 年後には 10 万人を割る
と推定される消防本部もある。
・ 管轄人口、財政基盤等において、スケールメリットの地域間格差が大きく、
県全体からみると、バランスのよい消防力強化に結びつかない。
まとめ
県全体の消防力の維持強化を図るため、県下全域を一つに統合した消防本部体制
を目指すことが必要である。
ただし、消防の広域化は、平成24 年度までに実現させなければならないこと、「県下1
ブロック案」は全市町の合意が必要であることなどから、今後、関係市町により具体的な
議論を行う過程においては、一定のメリットのある「県下 3 ブロック案」も視野に入れて、
実現性を考慮しながら選択していくことが必要である。
−17−
(基礎データ)
ブロック案
1
3
5
東予
地
域
全県
東予
中予
南予
南予
南予
第1
第2
中予
第1
管轄面積(k㎡)
東予
小計
第2
小計
5,677
1,613
1,541
2,524
1,163
450
1,541
1,474
1,050
1,468
512
654
302
330
182
654
169
133
59
22
19
18
13
9
19
13
5
1,758
641
670
447
398
243
670
262
185
本部職員数(同上)
296
124
90
82
77
47
90
41
41
再配置可能数(人)
59
24
13
12
49
11
4
13
4
4
36
時間短縮可能箇所数
11
3
6
2
11
2
0
5
0
0
7
初動応援可能箇所数
15
4
3
5
12
2
1
3
3
1
10
1,500
700
700
300
1,700
300
300
700
300
300
1,900
管轄人口(17年国調)
(千人)
署所数(18 年度)
職員数(20年1月1日)
指令センター整備費
(百万円)
【注】
○本部職員数(20 年1 月1日現在調査)
4 月 1 日現在では、新規採用職員が総務部門配置となっているが、研修終了後は、各現場配置とな
ることから、1 月1 日現在で総務部門(総務、警防、予防、通信)の人員を調査した。
○再配置可能数
これまでの広域化事例においては、本部職員は約20%から30%削減され、再配置されていることか
ら、再配置可能人員を本部員 100 名以上は 20%、50 名以上は 15%、50 名未満は 10%と見込んで試
算した。なお、本部職員数は、管轄面積や地形、組織体制などの地域の事情により、消防本部間の差
が大きいことから、各消防本部の再配置可能人員は、実際に配置できる人員ではない。
○現場到着時間短縮箇所数、初動の消防力の充実(複数応援体制)
消防署所の配置の地理的状況を見て、他の消防本部の署所からの出動、応援が可能な箇所数を
抽出した。
○通信指令センターの整備
消防救急無線のデジタル化のため、28年度までには、必ず各消防本部とも通信指令センターを
整備する必要がある。また、10 年から15 年で更新整備が必要である。このため、通信指令センター
を集中することで、整備費及び維持管理費の縮減が可能となる。
−18−
第4章 自主的な市町村の消防の広域化を推進するために必要な措置に
関する事項
広域化の実現のためには、財政負担、給与調整、消防職員の身分や異動、出動
体制の統一や消防本部の位置など、解決すべき多くの課題があることから、具体
的に関係市町間で協議を行っていく中で、一つ一つ解決していかなければならな
い。
(広域化のスケジュールの例)
20年度 広域化に関する事前協議 開始
広域化に関する協議会・準備室等の設置
広域消防運営計画の作成
・
経費負担、人事管理計画、整備計画、部隊運用指令計画、
市町長及び消防団との連携計画など
・
設立準備
24年度 広域化実現
第1 広域化を推進するための協議機関の設置等
消防の広域化を推進するには、広域化対象市町村の組合せごとに、法第 34
条の「広域消防運営計画」
(以下「運営計画」という)作成の協議を行う機関を
設置する必要がある。
そして、充実した協議を行うためには、協議機関の性格、組織体制及び事務
局体制等について、現行の消防本部や構成市町間のバランス等を考慮した事前
調整が必要である。
また、協議にあたっては、エリア内の消防広域化のメリット等の具体的検討
とともに、他の組合せの有効性など幅の広い協議が行われ、構成市町が共通の
認識となることが重要である。
なお、住民や消防職員及び関係機関とのコンセンサスを得ることにも配慮す
る必要がある。
第2 広域化を推進するための県の体制の整備等
愛媛県消防広域化推進計画に基づく、消防広域化の推進のため、県において
は次の取り組みを行う。
1「愛媛県消防広域化推進本部」の設置
−19−
市町間の調整、相談体制の充実並びに市町関係者、消防関係者及び住民に対す
る普及啓発活動等を実施するため、庁内関係部署からなる「愛媛県消防広域化推
進本部」を設置する。
国
県
広域化対象市町
推進本部
支
援
指
導
事前協議
調整
協議会の設置
情報提供
広域消防運営計画
相談
組合等規約の作成
支援
議会議決
統合準備
2
申請・許可
組合等の設立
報告の受理
広域化実現
住民及び関係者に対する情報提供、普及啓発等
県の広報の活用や消防広域化に関するホームページ開設により、広く県民及び
関係者への情報提供や普及啓発活動を行う。
3
市町への県の援助等
消防広域化の実現のためには、県として今後も幅広く関わり、構成市町によ
る「運営計画」の作成の協議等へは、積極的に参画していくとともにその他必
要な援助を行う。
また、国の支援策の充実、財源の確保については、引き続き国に要請してい
く。
4
関係市町間の協議の積極的な推奨、調整等
広域化対象市町の全部又は一部から求めがあったときは、法第 33 条第4項に
基づき、市町相互間における必要な調整を行うものとする。
この調整とは、当該広域化対象市町間の広域化に関する事項についての幅広い
仲介、連絡調整等を指すものであり、関係市町の合意形成のために積極的に調整
を行うものとする。
なお、この協議を通じ、よりよい消防の広域化のために、本計画を変更した方
がよいと思われる場合には、予め関係市町の意見を聞いて対応する。
−20−
第5章 広域化後の消防の円滑な運営の確保に関する基本的な事項
第1 広域化後の消防の体制の整備
市町の消防の広域化が行われた後に、広域化の効果を十分に発揮することが出
来るよう、広域化後の消防においては一元的な部隊運用、出動態勢、事務処理等
が行われることが、特に重要である。したがって、本部機能、指令業務及び職員
の身分の一元化が必要と考える。
また、消防の広域化に伴い、管轄する面積が広大となるので、消防本部と消防
署間の連絡調整、複数の消防署にわたる災害防御活動の指揮及び統制や管理、指
導の円滑かつ適正な執行を確保するため、地域の拠点に総務機能を持つ「中核消
防署」(仮称)の配置や、住民サービスを低下させないため、積極的に許認可事
務など一定の窓口業務を消防署長に権限委譲することが有効であると考えられ
る。
組織図(案)イメージ
消防長
本
部
総務・企画部門
警防部門
予防部門
通信指令部門
中核消防署
分
署
出張所
消防署
分
署
出張所
第2 構成市町等の関係
市町の消防の広域化は、事務組合、広域連合又は事務委託により行われること
になるが、それぞれの特徴を十分認識した上で、構成市町又は受託市町若しくは
委託市町(以下「構成市町等」という。)との意思疎通及び情報共有が円滑に行
われる方式を、構成市町等の協議により選択することが必要である。
−21−
第3 広域化後の消防の体制の整備のために考えられる方策
広域化後の消防の円滑な運営の確保のためには、広域化後の消防の体制を適切
に整備することが重要であり、次の事項等について、構成市町等の間において十
分協議の上、事前に決定しておくことが必要である。
① 経常的経費、投資的経費の構成市町等ごとの負担金の額又は負担割合等
② 職員の任用、給与、教育訓練等に関する計画
③ 消防力の整備計画及び部隊運用、指令管制等に関する計画
④ 構成市町等の間の連絡会議の定期的な開催、消防長の専決対象の明確化等構成
市町等の間の迅速な意見調整を可能とするための仕組み
⑤ 消防本部の運営に関し、住民の意見を反映できる方法
⑥ 消防本部の位置及び名称
⑦ 市町の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項
⑧ 災害時に構成市町等の長と消防長、消防署長又は消防団長とが緊密に連携する
ことができるよう相互連絡、情報共有等に関する計画
第4 広域化後の消防の体制の円滑な運営等
消防本部の体制整備については、構成市町等の数も多い上、都市部、山間部
あるいは周辺部の住民ニーズも違うため、適切な住民意見の反映が不安の解消
につながると思われる。構成市町等の間の迅速かつ円滑な意見調整を図り、適
切な消防本部の管理、運営を行っていくため、広域市町圏(又は準じた圏域)
単位の「消防運営委員会」(仮称)等の仕組みの構築も有効である。
また、現場の消防職員にも情報を開示し、意見が反映できるよう十分配慮す
る必要がある。
−22−
第6章 市町の防災に係る関係機関相互間の連携の確保に関する事項
第1 消防団との連携の確保
消防団は、地域に密着した消防防災活動を行うという特性上、法に基づき推進す
る自主的な市町の消防の広域化の対象とされておらず、従来どおり、一市町に一団
を置くこととなる。
このため、地域の実情に応じて広域化後の消防本部(消防署)と消防団との密接な
連携確保を図る必要があり、具体的には、次の方策等が考えられる。
①
常備消防の管轄区域内の複数の消防団の団長の中から連絡調整担当の団長を
指名することによる常備消防との一元的な連絡調整
②
各消防団合同又は常備消防を含めた訓練の実施
③
構成市町等の消防団と当該構成市町等の区域に存する消防署所との連携確保
のため、消防署所への消防団との連絡調整担当の配置、定例的な連絡会議の開催
等
④
常備消防と消防団との連絡通信手段の確保
第2 市町防災担当部局との連携の確保
市町の防災や国民保護業務は、住民の安全・安心の確保という最も基本的かつ
重要な業務であり、また、関係部局・関係機関が多岐にわたるため、それら全体
を総合的に調整することが必要である。このため、地域の実情に応じて広域化後
の消防本部と構成市町等の防災・国民保護担当部局との連携の確保を図る必要が
あり、具体的には次の方策等が考えられる。
①
夜間・休日等における市町の防災業務について、初動時の連絡体制などを消
防本部に事務委託
②
各構成市町等の長及び危機管理担当幹部と消防長及び消防署長による協議
会の設置
③
各構成市町等と当該構成市町等の区域に存する消防署所との連携確保のた
めの、定例的な連絡会議の開催、各市町の災害対策本部への各消防署所の消防
職員の派遣等
④
防災・国民保護担当部局と消防本部との人事交流
⑤
総合的な合同防災訓練の実施
⑥
防災・国民保護担当部局と消防本部との情報通信手段の充実による連絡体制
の強化
⑦
防災行政無線の親機や遠隔操作機を消防本部の通信指令部門に設置するこ
とによる 24 時間体制の確保
−23−
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