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特 集 オ ン ネ ッ ト 時 代 の 企 業 革 新

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特 集 オ ン ネ ッ ト 時 代 の 企 業 革 新
Vol.79 1999
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ル
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創
造
The Executive Magazine from UNISYS
特
集
オ
ン
ネ
ッ
ト
時
代
の
企
業
革
新
The Executive Magazine from UNISYS
Vol.79
INDEX
特集 オンネット時代の企業革新
ネットワークを基盤としたビジネス・モデルの創造
「ネットワークが実現する企業革新」
2∼9
ボストンコンサルティンググループ バイスプレジデント 内田 和成氏
「ネットワーク」は、社会全体のルールを変えてしまう。企業は競争相手
ではなく、顧客の動きと市場の動きを見るべきであり、また、ネットワ
ーク組織においては、どれだけ情報を収集してそれをどれだけ加工でき
るかに勝敗がかかっている。ネットワーク時代は勝者一人勝ちの時代、
いかに他に先んずるかが成功のポイントである。
オンネット時代におけるEC成功の条件
10∼17
日本ガートナーグループ コンサルティンググループ
シニアコンサルタント 真木 恵美氏
シニアコンサルタント 目黒 豪氏
ECビジネスの特性は、企業規模の大小に関わらず、時間と空間の制約
を超えて市場に参入できることである。そこでは、市場や競争が世界的
なものとなるため、企業はグローバル・スタンダード経営への転換を余
儀なくされている。本稿では、最新のビジネス事例を挙げ、オンネッ
ト・ビジネス成功の条件を考察する。
経営戦略としてのサプライチェーン・マネジメント
野村総合研究所 ECソリューション部 上級コンサルタント 藤野 直明氏
オンネット時代に対応した新しい経営モデルや事業の再構築の焦点は、
従来の自己完結型経営モデルから脱却し、企業内やグループを超えて価
値の連鎖を築くことである。これを実現する手段がサプライチェーン・
マネジメント(SCM)である。ここでは、SCMの本質とは何か、サプラ
イチェーンをどう設計すれば新しい経営モデルとなり、企業の競争力を
強化できるのかを紹介する。
18∼25
インターネットの拡大によって、オンネット・ワールドでのビジネスが急進展している。
これに伴い企業間競争はさらにグローバル化され、従来のビジネス・スタイルや経営シス
テムのままでは、新規事業の創出はもちろん、経営課題の解決も困難になってきた。
企業はオンネット時代に対応したビジネス・モデルの革新を迫られている。そこでは事
業システムの再定義、リアルタイム経営の展開、ECへの対応、顧客関係性管理(CRM)な
ど、さまざまな新たな課題を解決していかなければならない。
これらの課題を解決する手段として、このたび日本ユニシスが提唱したものが
“OnNet Solution"である。今号ではオンネット時代における企業革新の方向性と、それ
を支援するOnNet Solutionについて論じる。
26∼37
オンネット時代の企業情報システム構築に向けて
−日本ユニシスからの提言
日本ユニシス株式会社 商品企画部 オンネット・ソリューション室 担当部長
ソフトウェア・アーキテクト 水丸 晴雄
オンネット・ワ−ルドにおけるビジネスは、一言で要約すれば“リアル
タイム経営”の展開である。オンネット・ワールドにおけるリアルタイ
ム経営のための情報システムに求められるものは何か、日本ユニシスは
そこでの課題にどう応えようとしているか、この稿では日本ユニシスの
ソリューション戦略を明らかにする。
解説
38∼49
オンネット時代のソリューション体系「OnNet Solution」
日本ユニシス株式会社 マーケティング部
プログラムマーケティング室 担当部長 今江 泰
日本ユニシスでは、オンネット時代において、企業が抱える課題の解決
と、同時に新たなビジネスの創造を支援するソリューション体系
「OnNet Solution」を提唱している。本稿では、OnNet Solutionとは何か、
情報技術の側面から紹介する。
事例紹介
50∼63
青山学院大学におけるサイバーキャンパスへの取り組み
青山学院大学 経営学部 教授 玉木 欽也氏
日本ユニシス株式会社 新事業企画開発部 市場開発室 塚田 勝之
青山学院大学では、日本ユニシスと共同で「青山学院大学AMLプロジェ
クト(Aoyama Media Lab.)」として新しい教育方法論の構築を中心とし
たプロジェクトを推進している。これは、97年度からスタートさせた
バーチャル・ユニバーシティ構築のための実証実験プロジェクトをベー
スにした産学官共同プロジェクトである。「サービス(大学教育)」を「顧
客(学生)」に提供するEC実践プロジェクトの概要について紹介する。
ネットワークが実現する
企業革新
ネットワークのインパクト
ネットワークは社会全体のルール変えてしまう。競争
相手だけなら、注意深く相手を見ることで対応策を見い
出すことができるかもしれない。しかし、企業が変わる
だけでなく、消費者が変わり、市場が変わってしまうと、
企業にとって今までの常識が通用しなくなってしまう。
例を挙げよう。金融業界では、これまでいかに自社の
チャネルを効果的に展開し、消費者に選択してもらうか
に腐心してきた。都市銀行の場合、多数の支店網を展開
することで自前のネットワークをいかに充実させるかと
いう点に注力してきたし、有人店舗で足りない部分は無
ボストンコンサルティンググループ
バイスプレジデント
内田 和成氏
人店舗やテレフォン・バンキングで補ってきた。さらに
の利用しているネットワーク・サービスにその銀行がサ
はファーム・バンキングやホーム・バンキングなど自行の
ービスを提供しているかどうかに変わってしまう。これ
端末をユーザに設置することで顧客を囲い込もうと試み
は、CVSの場合も同様であり、都銀1行でCVSにATM
てきた。
を置いてペイするところはない。そうなると、CVSが
ところが、自宅のPC、コンビニエンス・ストア
設置したATMを利用させてもらうことになる。
(CVS)のATM、携帯電話などで金融サービスが利用で
となれば、銀行にとってATMを置いているCVSに入
きるようになってくると、主客が逆転する。ある消費者
り込めるかどうかが勝敗のカギになる。消費者に支持さ
が利用しているインターネット・サービスで、A都市銀
れるだけでは不十分であり、流通にも支持されないと、
行がインターネット・バンキングを提供できなければ、
結果として消費者に支持されなくなってしまう。別の言
消費者はインターネット・バンキングを提供しているB
い方をすれば、金融機関の戦い方が自前のネットワーク
都市銀行に取引を変えてしまう可能性が高い。すなわち、
を充実させることから、他人のネットワークをいかに活
銀行の選択基準が近所に支店があるかどうかから、自分
用するかに180度変わってしまったのである。
ネットワークがもたらすインパクトを図1に沿って説
明しよう。まず左端の企業が変わる。PCネットワーク
が社内外に普及すれば、インターネットやイントラネッ
トなどの利用があたかも電話を使うように内線・外線の
区別なく利用できるようになる。そうなると組織の形態
もピラミッド型の組織からネットワーク型の色彩が強く
なり、上司・部下の関係も従来に比べれば、大幅に緩や
かになる。
図1 日本の企業・社会が変わる
企 業
●ネットワーク型
市 場
●流通革命
組織
顧 客
●ハイパー階層型
購買活動
●新しいマーケ
●外部資源の活動
ティング手法
ITネットワーク
●ナビゲーション
さらに企業の定義も大きく変わる。今までのような固
をさらに上司の本部長や役員へ伝える、あるいはその逆
定的な組織で、かつ正社員中心からフレキシブルな組織
にトップの方針や考え方を部下に伝えるのが社内的な仕
になり、今まで以上に外部の資源を活用できるかどうか
事であり、営業などでも、まとまりかかった商談の最後
が主部の分かれ目になる。
に出ていって挨拶をするような仕事が多かった。別の言
次に右端に位置する顧客が変わる。アメリカではイン
い方をすれば上の情報を下に伝えたり、下の情報を上に
ターネット・ユーザの48%を女性が占めるまでに、広く
報告して了解を取ったり、他部門と自部門の情報のやり
一般に普及し、生活のあり方や消費者のあり方を大きく
とりをするのが主な仕事であった。情報が部課長を通ら
変えている。日本も2∼3年を待たずしてそうなるであろ
ないと仕事が進まない構造になっていたのである。
う。ネットワーク化で最も変わるのは、消費者の購買行
ところが電子メールやグループウェア、あるいはイン
動である。消費者の方から売り場を探して歩き回る必然
ターネット技術を使用したイントラネット、エキストラ
性が今までに比べてはるかに少なくなる。というのも、こ
ネットの登場がホワイトカラーの仕事の進め方を大きく
れまでのチャネルというのは、あくまでも供給者論理の
変えてしまった。情報は誰にでも平等に利用できるので
仕組みで出来上がっており、必ずしも消費者の方に都合
ある。そうであれば、仕事で差がつくのは、その情報を
の良い仕組みになっていなかった。一方で消費者の選択
いかに上手に収集し、加工するかということに変わる。
の自由度が増せば情報の洪水に溺れる危険性も出てくる。
そうなると管理職も地位・役職(ポジション)でする仕事
企業の組織や仕組みが変わり、顧客の購買行動が変わ
れば、間に存在する市場も進化せざるを得ない。結果と
して、流通の中抜き(ディス・インターミディエーション
と呼ぶ)が起きたり、ネットワークを使った、新しい流
通方法が誕生する。さらに従来型の一方通行の広告も大
きく変わる可能性があり、よりインタラクティブ(双方
向)な広告が誕生する。
こうして、ネットワークの進展が企業、顧客、市場を
大きく変え、新しいビジネス・モデルが次々と生まれて
くる。そこにはネットワークを巧みに利用して、新しい
事業を成功させる新規参入者もいれば、ネットワークの
持つインパクトに気づくのが遅れ、凋落していく大企業
も出てくる。
ネットワーク時代の働き方と組織
ネットワークが発達すると仕事のやり方がどう変わる
のであろうか。最も大きな違いは、従来のような役職や
部署でする仕事のやり方から、自分のスキルで仕事をす
るやり方に変わることであろう。ヒエラルキー型の組織
で課長や部長がする仕事といえば、部下がまとめた仕事
から自分の技(スキル)でする仕事へと定義が変わる。
いわばネットワークのノード(中継点)のような役割を
果たすことになる。
大事になる。こういうことを言うと、直ぐコンピュータ
によるデータベース構築やナレッジ・マネジメントを導
強い組織の定義が、「与えられたことを迅速かつ正確
入することが大事と勘違いする人がいるが、そうではな
に実行できる」ことから、「組織内できちんと情報の共有
い。大事なことは、どんな知恵を、どういう風に、皆で
化が行われ、それらを使って一人ひとりが創造的な仕事
共有化し、どのように発展させていくかをまず議論し、
がどれだけできるか」に変わる。ただし、創造的仕事と
決定することで、システムはあくまでも手段であり、目
いってもニュートンやアインシュタイン・クラスの人間
的ではないことを忘れないようにすべきである。そうし
が、そうごろごろしているわけではないから、皆で知恵
ないと多くの小売業が、POSを入れると自分もセブン
を出し合って創造的なビジネスや製品を考え出していく
イレブンになれると勘違いして失敗したのと同じことが
しかない。世の中でナレッジ・マネジメントの仕組みが
ナレッジ・マネジメントでも起きてしまう。
重要視されているのも、まさにこの理由からである。
社内に散在しているアイデア、成功のカギなどを他の
部門や他の地域の人間が活用する。さらに他で活用され
て、より高度化された知恵が自分のところに戻ってくる。
顧客中心主義
伝統的な統合型モデルが崩壊すると生まれてくるのは
こういうスパイラルの仕組みを、どれだけ企業内部、あ
より顧客中心主義のビジネス・モデルである。伝統的な
るいは取引先を含めた関係者全員の間に作り込めるかが
ビジネス・モデルにおいては、製品の設計、資材・部品の
購入、生産、物流、販売をいかに川上の資材メーカーか
ら川下の小売店まで効率的に流すかということが勝敗の
カギを握っていた。例えばジャスト イン タイム方式で
は、工場での原材料や部品が必要なだけ運び込まれるよ
うにして生産し、部品や製品の在庫が最小限になるよう
に工夫されている。
さらに流通段階でも同様な考え方で売れただけ補充し
て在庫するようになっており、効率第一主義である。私
はこれを「トコロテン方式」と呼んでいるがメーカーから
見て、いかに効率的に商品を市場、あるいは消費者に向
かって押し出していくかという方法である。
これに対して、ネットワーク時代のビジネス・モデル
は消費者(顧客)を中心においたものである。例えば、デ
ルコンピュータのビジネス・モデルを考えてみよう。こ
れまでのPCメーカーのビジネス・モデルは、PCの製品
企画ならびに設計を数カ月かけて行い、それを生産し、
新製品発表を経て、代理店、小売店を経て、発売すると
いうものであった。これはPCに限らず消費財を開発し、
生産する場合の普通のやり方である。ところがデルの作
り出したビジネス・モデルはまるで逆であり、まず消費
者に何が欲しいかを聞き、受注してから生産にかかると
い込んでくるという意味で「掃除機モデル」と呼ぶ。(図2)
今後はこうした形で消費者ニーズに応えるような企業
いうものであった。
そして顧客からの注文を受けた商品は、原則その日の
うちに生産し、翌日には発送する仕組みを作り上げた。
が続出すると思われる。
アメリカで成功しているアマゾンコムやオートバイテ
そのためには、必要な部品を確実に納品してくれるよう
ルもまさに掃除機モデルであり、消費者が今までの供給
部品メーカーを数社に絞り込むとか、生産ラインを工夫
者が作り上げたビジネス・モデルに満足していない点を
して受注した製品が直ぐラインに流れるようにしたり、
インターネットを使うことで巧みに解消している。
あるいは物流業者と組んで確実に翌日配達できるように
例えば、アマゾンコムの場合は、書店で本を購入する
するといった工夫がなされている。PCの特徴として、
となると、わざわざ本屋を探さないといけない点、ある
部品が汎用化しており、誰でも簡単に組み立てられると
いは、大きな書店に行けば行くほど欲しい本を見つける
か、部品の陳腐化スピードが早いので、デルのような受
のが難しい、本の価格が高い、持ち帰るのが重くて大変
注生産が有利だとかいろいろ言われているが、いずれに
である、自分の好きな作家の新作がいつ出るのか分から
しても今までの見込み生産から受注生産に仕組みを変え
ないといった消費者の不満を解消する仕組みを作り上げ
たところにデルの真骨頂がある。
たことが成功の大きな理由である。アマゾンコムを利用
ちまたに言われているような小売店を使わず、直販を
すれば250万冊の中から書籍を選ぶことができるし、
しているからデルが成功しているというのは、デルの成
自分が欲しい本についてはタイトル、著者名ももちろん
功の本質ではない。こうした消費者が欲する製品を、消
のこと、キーワード、ベストセラー、関連書籍といった
費者の代わりに(代理人として)川上のメーカーから調達
さまざまな視点から検索できるようになっている。さら
してくるビジネス・モデルを、欲しいものを川上から吸
に定価の2∼4割引で販売されているし、自宅へ宅配便
図2 供給者論理からユーザ論理へ
供給者論理
トコロテン方式
商品企画
設 計
部品調達
ユーザ論理
掃除機モデル
配 送
アセンブリ
(組み立て)
生 産
部品調達
マーケティング
営 業
アセンブリ
指示
販 売
チャネル
受 注
などで迅速に送ってくれる。単にインターネットで書籍
を売るだけなら、あれほどは成功しなかっただろう。
このように考えると、従来のビジネス・モデルが企業
という意味で、もちろん良いことである。
しかし、一方で情報洪水に溺れてしまう可能性も出て
くる。例えば、地上波しかテレビが見られない時代には、
側の立場に立って、いかに効率的な事業展開やチャネル
わざわざ新聞の番組欄を見なくてもチャンネルを適当に
の仕組み、物流の仕組みを作るかという競争だったのに
変えれば、1分足らずで自分の見たい番組を探し当てる
対して、ネットワーク時代には「いかに消費者(顧客)の視
ことができた。チャネル数が東京・大阪でも7つしかなか
点に立ったビジネス・モデルを作り上げるか」というルー
ったためである。ところがCATVや衛星TVが登場した
ルに変わっていることが分かる。別の言い方をすれば供
ことで、チャネル数は50から300という大変な数にな
給者論理(サプライヤー・ロジック)の世界から顧客論理
った。選択の幅が広がったことは素晴らしいが、一方で
(ユーザ・ロジック)の世界へのパラダイム・シフトである。
従来のように適当にチャネルを変えていたのでは、いつま
顧客中心主義を実現するためには、いくつかの方法論
でも自分の見たい番組が見つからない可能性が出てくる。
があるが、ここでは2つの例を挙げておく。企業成功の
そこで、消費者が見やすいような番組ガイドあるいは
尺度を業務効率化から顧客満足度へシフトさせるのが
それをさらに発展させて一人ひとりの好みを把握して番
1つの方法である。ただし、普通に顧客満足度を上げよ
組を紹介するようなガイドが登場してくる。例えば、プ
うとすれば、多くの場合、事業の仕組みとしては非効率
な部分が発生する。したがって、顧客満足度と業務効率
という一見、二律背反することをうまくバランスさせる
必要がある。それをインターネットの利用やIT(情報技
術)を利用して解決していくのである。
例えば、顧客ごとに異なるニーズを営業マンや店頭で
受けていては、膨大な営業コストがかかってしまう。そ
こで、顧客が自分の注文をインターネット上でできるよ
うな仕組みを作り上げるのである。そうなれば、営業や
受注に関わるコストを大幅に削減できる上に、顧客が自
分で注文を確認できるので顧客満足度も高くなる。さら
に24時間対応も追加コストなしに簡単に実現できるの
である。ネットワークと情報技術の発達により、コスト
をあまりかけずに顧客の情報やニーズを入手し、それに
対応する商品やサービスを提供できるようになったこと
が、こうしたワン トゥ ワン的なサービスと企業の経済
性を両立させる背景にある。
もう1つの方法が顧客の商品・サービス選択のガイダ
ンスを果たす機能を作り上げることである。これをナビ
ゲータと呼んでいる。ハイパー階層型のネットワークが
張り巡らされると、消費者がさまざまな情報に自由にア
クセスできる。商品やサービスに関する選択肢が広がる
ロ野球をよく見る人には、まずプロ野球の番組を紹介し、
それに対してネットワークでは、「ネットワークの外
一方でニュースが好きな人にはニュースをまず紹介する
部性」という原理が働き、新しい加入者が2つのネット
といった機能を持ったガイドである。ただし、これらの
ワークを比較するときに、より大きな方を選択する傾向
好みはユーザが自分で入力するのではなく、ユーザが過
がある。なぜならば、より加入者の多いネットワークに
去に見た番組を解析した上で、ユーザの嗜好にあった番
参加した方が、より多くの加入者とコミュニケーション
組を紹介する仕組みでないとうまくいかない。こうした
を取ることができるからである。ネットワークの魅力度
消費者の情報選択を助けるようなナビゲータが新しいビ
は、加入者の二乗に比例するといわれている。例えば、
ジネス・モデルとして、さまざまな分野で登場してくる。
2つの携帯電話会社があって、どちらかに入ると自分が
いわば消費者の購買代理店である。
加入しなかった残りの電話会社の加入者とは会話ができ
ないと仮定する。この場合、より多くの加入者を持つ携
帯電話会社に加入した方が、より多くの加入者と話をす
勝者一人勝ち時代の意思決定
ることができる。そうなると、特定の相手だけと話をす
ネットワーク時代のもう1つの特徴は、「勝者の一人勝
るのでなければ、なるたけ多くの加入者を持つ方に参加
ち」(英語ではこれを「Winner takes all」という)である。
するのが普通である。結果として加入者の多いネットワ
ネットワークの持つ特徴から、最も大きな加入者・利用
ークの方がますます成長し、そうでない方との差が開い
者を獲得したプレーヤーだけが成長と利益を享受できる
てさらに有利になるという法則がネットワークの外部性
という過酷なルールである。従来のビジネス・モデルで
であり、ネットワークを押さえた方が利益もどんどん増
は、あまり高いシェアを持つようになると、だんだんと効
え続けることから「収穫逓増の法則」とも呼ばれる。(図3)
率が低下して、利益が減ったり、増えなくなる傾向があ
WindowsというOS(オペレーティング・システム)が
り、この頭打ちの減少を捉えて「収穫逓減の法則」と呼ぶ。
「CP−M」と呼ばれるOSやMacのOSに勝利したのもこ
図3 ネットワークの外部性
勝者一人勝ちの論理
当初
3ヵ月後
6ヵ月後
9ヵ月後
1年後
1年半後
2年後
A社加入者数
(シェア)
55
(55)
75
(56)
103
(58)
143
(61)
199
(63)
392
(71)
774
(79)
B社加入者数
(シェア)
45
(45)
58
(44)
74
(42)
93
(39)
115
(37)
164
(29)
210
(21)
スタート時に55:45と差のあまりないネットワークのシェアが、
1年後にはほぼ2:1、2年後には4:1まで開いてしまう
前提条件:毎月利用者が10%増加するネットワーク
新規加入者のシェアは既存シェアの二乗に比例と仮定
のネットワークの外部性が働いたためである。
右肩上がりの成長時代は周りを見回して、うまくやっ
体である。したがって、競争相手ではなく、顧客の動き
と市場の動きを見るべきである。またネットワーク組織
ているものを見つけて真似をすれば、おこぼれにあずか
においては、ポジションや役職で仕事をすべきではなく、
ることができた。したがって、あまり早く手を打つより
どれだけ情報を収集して、それを加工できるかに勝敗が
は、競争相手の様子を見ながらうまくいくようであれば
かかっている。当然ながら、情報を活用できる人間のと
真似をし、そうでなければ無視をするということで、そ
ころには、さらに情報が集まることになり、相乗効果で
れなりの成功を収めることができた。ところが、ネット
情報の質が高まる。ネットワーク時代には情報が行き交
ワーク時代にはそうはいかない。上に述べた理由から、
う結節点、すなわちネットワークのノードとなるように
最初にリスクを取って事業を始めた人間・企業のみが利
努力すべきである。
益を享受できる可能性が極めて高いのである。従来の日
一方、ネットワーク時代のビジネスの主役は企業から
本企業の得意技である「柳の下にドジョウ作戦」は通用し
顧客に移り、そこでの成功のカギはどれだけ顧客中心のビ
ないのである。
ジネス・モデルを構築できるかにかかっている。新しいビ
日本企業は、ジャスト イン タイムや商品開発期間の
ジネスを考える人間であれ、既存の事業を守りたいと思
短縮化などオペレーション・レベルの時間短縮にはきわ
っている人間であれ、一度顧客の視点に立って、製品やサ
めて優れていたが、一方で経営の意思決定となると稟議
ービスを検討してみたらどうであろうか。すでに述べた
システムに代表されように集団意思決定という名の下に
ようにネットワーク時代は、勝者一人勝ちの時代、いかに
できるだけリスクを取る決定を避けてきたのが現実であ
リスクを取って、人に先んずるかが成功のポイントであ
る。となると、これまた日本企業の不得意な迅速な意思
る。失敗を恐れずにチャレンジしていただきたい。失敗し
決定をどう下すかがカギとなる。
たらどうするのか、また次のリスクを取ればよい。「人間
そのためには一人の人間が意思決定するように仕組み
を変える必要がある。ただし、案件の重要度、性格によ
って担当者が意思決定するものもあれば、部長がするも
の、経営トップがするものと分かれる。要するに1つの
ことは一人が決めるようにして、皆で決めるやり方を排
することである。もちろん意思決定の結果責任は、本人
が取らなくてはならない。しかし、成功すれば昇進や報
酬が約束され、失敗すればそれらは達成できないといっ
たメリハリが必要である。ただし、失敗した場合にも次
のチャンスを与える敗者復活の道は残すべきである。
一言でネットワーク時代の意思決定を語れば、「リス
クを取って、人より早く意思決定し、もし間違っていれ
ば直ちに軌道修正する」ということになる。
顧客中心のビジネス・モデル構築を
ネットワークによって変わるのは企業ではなく社会全
は失敗の数だけ賢くなれる」というのが私の信念である。
オンネット時代における
EC成功の条件
日本ガートナーグループ
コンサルティンググループ シニアコンサルタント
真木 恵美氏
目黒 豪氏
たな世界(市場)でビジネスに取り組む企業は、この新し
EBCのコンセプトに基づくビジネス戦略
いルールにより、新たなバリューを創出することで競争
インターネットの登場によって、短期間に世界は大き
に臨まなければならない。企業はデジタル・ネットワー
く変化した。通信と交通の発展により、徐々に縮小され
クの優位点を最大限に活用し、従来とは異なるコンセプ
つつあった地球上の地域間の距離と時差は、このインタ
トを創造していかなくてはならない。
ーネットによって、あっという間に消え去った。これら
このビジネスがElectronic Business and Commerce
の制約から解放された環境の中では、今までと異なるル
(EBC)である。これは、従来の企業∼企業間(B to B:
ールによるビジネスが展開されるようになった。ビジネ
BTB)および企業∼一般消費者間(B to C:BTC)の決済
スや業務、さらには生活にまでインターネットが浸透し
を伴う取引であるElectronic Commerce(EC)をより大
ている現在、企業経営は、このルールの上で活動し、競
きくとらえ、企業内のビジネス・プロセスの電子化、
争優位を確立し、そして成功を収めなければならない。
BTB、BTCのネットワークを介してのさまざまなやり
そのためには、インターネットの普及の本質を、デジタ
とりも含む、デジタル・ネットワーク上のプロセス全体
ル・ネットワークととらえ、このインフラがもたらすさ
を包括する概念である。
EBCは、スピード、物理的な“地理”からの開放、
まざまな変化を理解することが大切であるとガートナー
価値の変化、テクノロジーの多様化などの要素で成り立
コンサルティングでは考えている。
インターネットは、従来のインフラの同一線上の発展
つため、これらを活用して創出されるビジネスには、従
ではなく、根本的な構造変化をもたらす、まったく新し
来型のビジネスでは不可能だったことを可能にすること
いルールである。デジタル・ネットワークが形成した新
ができる。言い換えると、従来型のビジネスは、これま
図1 EBC(Electronic Business&Commerce)のコンセプト
Enterprise
Electronic Work Place
変化に迅速に対応できる
企業内のビジネス・プロセス変革
●厳しい経済状況下で着実に収益を
維持・増加できる仕組みの構築
●
ERP
DWH
個人のニーズの多様化
各個人に適した
ライフスタイルを模索
●
DSS
●
CRM
CRM
Enterprise
Electronic Market Place
Electronic Work Place
B to C
B to B
SCM
ERP
Electronic Lifestyle
DWH
Consumer
DSS
Consumer
商品/サービスの複雑化
●情報の氾濫
●
Consumer
Consumer
Consumer
Consumer
図2 ビジネスの転換期:市場構造の変化
デコンストラクションと新しいバリューチェーン
メガコンペティション、グローバル・コンペティションの時代
ビッグバン:金融∼通信∼経営…
インフラの変化:Digital Network
今までの常識を覆す新しいビジネス・モデルの成功
◆新しい価値の創造
新たなバリューチェーンの形成:New Business Modelの提案
◆新しい市場開拓
既存の物理的資産の有無にとらわれないビジネス・チャンス
◆新しいキーワード
ビジネス・スピード、物理的距離の克服
でのコンセプトを、EBCによって根本から覆される危
そこが前提となり、競争が激化する。世界の経済におい
(図1)
ては、景気低迷からの本格的な回復が見通せないという
次に、EBCによって提供されるバリューについて分
大きな課題に直面している。厳しい環境の中で、ますま
析していく。まず、従来型のビジネスからEBCへのシ
すEBCのコンセプトの重要性が増していると言えよう。
機にさらされているということになる。
フトの要素、環境などを整理する。
従来型のビジネスは、マスマーケティングの原則と物
理的な資産や地理的要因などから成立し、このようなビ
ジネスに適したバリュー・チェーンと組織構造で活動し
メガコンペティションにおける
戦略の必要性
てきた。しかし、インフラが変化したことで、これらの
これまでの企業活動を支えてきたバリュー・チェーン
価値と重要性の前提が変わる。デジタル・ネットワーク
は、デジタル・ネットワークという新しいルールにより
の下での「規模の経済」の追求では、顧客ニーズの多様化
解体され、このルール上での戦略に合わせて再構築され
やメガコンペティションに対し価格競争でしか対応でき
なくてはならない。これがデコンストラクションである
なくなり、収益は漸減していく。また、既存資産や販売
が、今までの常識を覆すさまざまなビジネス機会が登場
チャネルは、新しいビジネス展開に対して、むしろ足か
してくるため、一段と競争が激化していくことになる。
せとなるケースも出てくる。また、これまで一部の組織
新しい取り組みにおいては、新しい価値の創造、新しい
内に閉じていた高度な技術、ノウハウを水平展開できる
市場の開拓、新しいキーワードが重要になってくる。こ
ような新しい組織体系が必要となってくる。
のような取り組みに早い時期に挑戦していかないと、既
このようにして発生したビジネスは、加速度をつけて
存のプレーヤーは、次第に新しい身軽なプレイヤーに市
次々と新しいビジネスやバリューを創造していき、また
場を食われていき、危機にさらされることになる。(図2)
各企業は、これらの変化に迅速に対応できる企業内部
のビジネス・プロセスの変革を要求されているだけでな
く、厳しい経済状況下でも確実に収益を維持・増加する
仕組みの構築が期待されている。一方、一般消費者にお
いては個人のニーズの多様化、激化する競争下での商品
やサービスの複雑化、情報の氾濫という現実に置かれる
中で、個人個人に適したライフスタイルを模索している。
オンネット・ビジネスにおいては、特にビジネス・スピ
ードの追求、物理的距離の克服が大きなポイントとなる。
BTBの分野においては、デジタル・ネットワーク上での
調達プロセスや情報共有化などが競争優位を確保する武
器となる。また、BTCの分野では、ワン トゥ ワン・マ
ーケティングなどによるきめ細かな対応が、顧客を確保
する決め手となる。次章からは、BTBおよびBTCにお
ける最新のビジネス事例を挙げ、オンネット・ビジネス
成功の条件を考察する。
最新のビジネス事例:BTB
化に取り組み始めた。将来は、世界標準的な自動車業界
ネットワークに育て上げようとしている。ANX導入で、
グローバル・コンペティションの中で、世界標準を目
米国自動車業界は、年間10億ドルのコスト削減が可能
指す動きとして注目されているものの中から、まず
になると算出している。実際に、業界標準的なエクスト
BTBの 分 野 で の 、 ANX ( Automotive Network
ラネットの導入により、例えばクライスラーは新車開発
eXchange)、TPN(Trading Process Network)および
を5年から2年に、部品調達を910日から200日に短縮す
それらの日本市場進出を取り上げる。
ることに成功してきた。サービス開始してまだ1年弱で
ANXは、米国クライスラー、フォード、GMという
もあり、米国でもANXの具体的成果は未知数であるが、
ビッグスリーおよびその部品供給業者、OEM取引先な
ビジネス・スピードの追求、物理的距離の克服という面
ど約1,300社が参加している自動車業界における業界横
で、参加企業の国際競争力強化が期待できる。
断的エクストラネットである。TCP/IPの閉域ネットワ
日本もこの業界全体の効率化、コスト削減の動きに乗
ーク上で、資材調達から始まり、設計・製造データのや
り遅れないように、日本版ANXであるJNX(Japanese
り取りや非定型のコミュニケーションも行おうとするも
automotive Network eXchange)が1999年10月をめど
ので、Informediaryな場を提供するものである。1998
に自動車メーカー、部品メーカーなど33社にトライア
年の米国、カナダでのサービス開始に続き、1999年に
ル・サービスを開始することになった。EDSジャパンな
はメキシコや欧州で稼働またはテストが開始される。
ど4つのプロバイダが高品質ネットワークを提供し、米
ANXのコンセプトの背景には、1980年代、日本の自
動車メーカーが「カンバン方式」などで下請け企業との情
国でANXを推進してきたIBMが品質基準の監査機関役
となる。
報共有化を実現し、競争力を強化したことがある。この
業界横断的ネットワークとしてもう1つ、TPN(Trading
例に習い、ANXでは流通を含む業界全体での情報共有
Process Network)の例を挙げる。TPNは米国でGEが
図3 TPN:サービス・イメージ
・開発元:GE、電通国際情報サービス
・トライアル開始:1998年11月
Buyers:月額150万円
TPN POST
調達方法の決定
●見積依頼
●ネゴシエーション
●繰り返し
…
●契約先決定
●
・ブラウザによる
インターネット接続
・容易な操作性
インターネット
TPNセンター(エクストラネット)
セキュリティ:SSL使用
TPN Mart
(日本では今後検討)
●発注
●オーダ管理
●納入・検収
●支払
オープンなシステム環境
プレEDIのシステム化
●大きなBIDに対応
●画像・図面などイメージデータ
の交換
●新規パートナーの開拓
業界別EDIとの連携
●
●
日本の商習慣への対応
参加企業増加後に検討
●
●
Suppliers:年額150万円
推進しているエクストラネットでの購買・調達システム
内容の評価・分析機能という「デジタル・ネゴシエーショ
で、米国では、GEはもとよりコカコーラ、HPなどが利
ン機能」を有しているのである。この部分の定型化が可
用している。開発の背景には、やはりオープン化、国際
能になれば、企業は大きな業務効率改善を実現すること
競争力強化に適応するネットワークの必要性があった。
が期待できる。反面、サービスが軌道に乗るまでは月額
日本市場でも昨年11月より、電通国際情報サービスが
150万円(バイヤー)に対する費用対効果の説得は厳しい
(図3)
面があり、現時点では一にも二にも、参加者の増加が急
トライアルを開始した。
GEの持つネットワーク構築ノウハウ、電通国際情報
サービスの持つ顧客DB、販売チャネル、システム構築
ノウハウを活用するものである。日本の商習慣の特殊性
を考慮し、当面は見積依頼、ネゴシエーションなどの
務だと言える。
日本においてJNXやTPNが成功を収めるためには、
留意しなければならない点が2つある。
第1に、日米のネットワーク構造の違いが挙げられる。
「調達」の部分に焦点を当ててのサービスに特化し、日本
米国では「コミュニティ型ネットワーク」と呼ばれるよう
の独自性が強い発注・決済の部分は、ユーザが増加した
に、バイヤー(例:自動車メーカー)とサプライヤー(例:
時点でカスタマイズを検討する方針である。現在、各業
部品メーカー)の関係は対等に近いため、むしろサプラ
界のトップ企業に絞って参加を呼びかけている。
イヤーの意向を反映させてANXが構築される面があっ
TPNの特徴は、調達コストの低減を図るだけでなく、
た。日本では「ハブ・スポーク型ネットワーク」と呼ばれ
調達に伴うネゴシエーションという「企業戦略」に関わる
るように、相変わらずバイヤーの方が圧倒的に強い関係
部分をエクストラネットで実現しようとしている点にあ
にあるため、業界で影響力の強いバイヤーが参加すれば
る。要求仕様作成機能、コミュニケーション機能、提案
サプライヤーも一気に加入する可能性がある。
第2に、業界エクストラネットに移行するための強力
な推進役が必要だと考えられる。日本のビジネスにおい
は、今後の日本におけるBTBビジネスにとって大きな
影響を与えることが予測される。
ては、企業間取引には双方に信用が存在することが前提
になっている。この意味で、商社の役割が注目される。
長年にわたり培ってきたバイヤーおよびサプライヤーか
最新のビジネス事例:BTC+BTB
らの信用、物流ビジネスでのノウハウは大きな強みだか
次にECによって、顧客との間ではロイヤルティの強
らである。また、業界標準、世界標準に移行していくコ
化、製造プロセスにおいてはBPRを実現している企業
ンセンサスの形成、コンセプトの定着といったネゴシエ
を見てみる。1853年に米国で生まれたLevi Strausであ
ーション能力も期待されている。
る。日本でもジーンズ・ブランドとしては若者に高い人
JNXもTPNも、コミュニティ構築によるビジネス機
気を誇っているが、米国ではさらにカスタムメイド・ジ
会の創出・拡大、商談プロセスの効率化という意味で、
ーンズ(Levi's® Original SpinTM)で成功を収めている。
バイヤー、サプライヤーの両方にメリットを与えること
このプロジェクトの成功の要因は、BTCとBTBの両面
が期待できる。あらゆるビジネス・パートナーと、あら
の仕組みを巧妙に組み合わせた新しいビジネス・モデル
ゆるビジネス・ドキュメントを自由に交換することで、
にある。
日本においてもオープン化、グローバル化は一層進展し
まず、Web上のMallではモデル、素材、色、サイズ
ていくだろう。反面、既存の日本固有の商習慣、閉じた
など多くの選択肢からショッピングができ、またトレン
規格での企業間EDIを破棄してまで移行するメリット
ディな音楽を集めた独自サイトも併設しており、ターゲ
をどう説得するかで参加企業数が拡大するかどうかは決
ット層に対するアピールを強化している。このMallの
まってくる。
中でも紹介されているのが、Original SpinTMというプ
自動車産業は、多くの素材産業と関わっていることか
ログラムである。特に女性の顧客が、ヒップや太ももの
ら、ANXの成功のノウハウは、他業種にも拡大する可
部分で既製サイズのジーンズではぴったりフィットしな
能性が大きい。また、TPNはネットワークと企業戦略
いことが多いという事実から、カスタマイズした自分に
の連携を実現するもので、業務効率化に大きく貢献する。
合うジーンズのオーダーを可能にするプログラムを提供
立ち上がったばかりのJNXやTPNが成功するかどうか
するに至った。
図4 CCTC Inter-Enterprise Workflow
LEVI STORE
CUTTING
(New Hampshire)
sell
● measure
●
measurements
order
status
CCTC Hub Server
WASHING
(N Carolina)
STITCHING
(Tennessee)
実際にこのオーダーを希望する顧客は、全店舗の中で
$20のコストでそれが可能になるのだろうか。これを可
プログラムに対応している数十の店舗の内の1つに出向
能にしているのは、衣料品製造の工程を受け持つ
き、約20分間の採寸を受ける。この個人のサイズに関
「CCTC(Custom Clothing Technology Corporation)」
する細かなデータは、モデル、カットの形、素材、留め
である。しかし、この企業は実際には一切製造したり取
金の種類などのチョイスとともに製造工程へと送られ、
り扱ったりはしないネットワークが可能にした仮想企業
2∼3週間の内に完成する。日本での通信販売のデリバ
である。
リーが、へたをすると2∼3週間かかることと比較する
(図4)
データと情報を仲介し、全米に広がる製造の各工程を
と、カスタムメードでこの所要日数は驚異的といえる。
受け持つ企業をつないでいく。例えば、裁断は「New
完成品は、店舗で受け取ることもできるし、送付しても
Hampshire」、縫製は「Tennessee」といった形でバリュ
らうこともできる。一度採寸すると、次回からは電話だ
ー・チェーンを最適化しているのである。このコンセプ
けでオーダーすることが可能になる。もちろん、どの店
トは本来の意味でのBPRと捉えることができ、まさに
舗で取ったデータでも一括管理されている。この電話に
テクノロジーによって、あたかも一人のテーラーが「裁
よる2回目以降のオーダーについては、今後はWebから
断から仕上げまで、自分だけのジーンズを丁寧に作って
行えるように考慮中である。
くれる」のと同じことを、コスト面と所要時間の両面で
通常Levi'sの既製のジーンズは、US$35前後∼$45が
解決してしまうのである。CCTCは98年末時点では、
中心的な価格帯であるが、Original SpinTMは驚くこと
独立した企業であったが、現在はLevi's社が買収してい
に$55前後で買うことができ、既製品との差はおよそ
る。同社がこのテクノロジーを他社との差別化要因とし
$20のみである。個人のサイズデータによって、10,000
て重視していると言えるだろう。
以上のパターンの中から最適なものが選択され、しかも
さて、再度全体のフローを分析してみると、「カスタ
短期間で完成する、ということから考えても、たった
ムメイド」という要素が、顧客との間の距離感を短縮し、
顧客満足度は高まり、一種の双方向ロイヤルティが生ま
下のように考える。
れる。蓄積された個人データは、既製品デザインへのフ
*Time-to-Marketの迅速な意思決定、企業としての行
ィードバックにも再利用され、新商品の開発にもつなが
動のスピードは不可欠である。
る。このようにして、リレーションシップのスパイラル
*100%の成功方程式は存在しない。企業理念を明確に
効果が生まれ、企業にとっては価値の高い上客を多数保
し社員やその他のスタッフ全員に浸透させてこそ、コ
有するという高収益ビジネスへの展開が期待できるので
ンセプトが生きてくる。
ある。
*BPRなどに代表される「合理化」「効率化」は、それ自体
また、このサービス全体を支えているのは、データと
が最終目標ではない。EBCを利用することで、企業
情報をオンネットで活用していくCCTC Hub Server
として市場に提供したい「何か(バリュー)」を明確に位
の存在である。従来型の垂直統合型の製造工程では、作
置付けた上で、取り組む必要がある。
業に一貫性を持たせることは可能だが、物理的、時間的
*未整備な環境下では、失敗する確率が高い。企業間、
な制約があり、これら全工程を保有するコストも大きい。
企業内他部門、対顧客などの各インタフェースでは、
このチェーンを分解し、ネット技術によって最適化する
コンセプトを共有できる十分な理解、コンセンサスが
こと、すなわちプロセスの再構築を取り入れることによ
必要である。
り、Levi's社は競争力を強化することができるのである。
*オンネット・ビジネスでは「ほどほどな成功」はありえ
このようなビジネス・モデルへのシフトの中では、コス
ない。綿密なビジネス計画とそれをすばやく実行する
ト効率の悪い部分は排除され、テクノロジーが物理的地
双方の能力、そして市場におけるオリジナリティ、ユ
理と時間の制約を解決し、結果として顧客、企業双方に
ニーク性が成功の要素の1つである。
とってメリットの高い形のビジネスが実現される。
*企業として何をコアコンピタンスとしてビジネスを展
このような方式を、例えば日本で取り入れるには、さ
開するかを明確にする。その実現方法としてEBC(オ
まざまな阻害要因が考えられる。しかし、逆に日本の持
ンネット・ビジネス)を最大限に活用する。企業理念(マ
つ市場特性の中でも、有利に働く要因も存在すると思わ
インド)とテクノロジーの融合によって、企業として
れる。若者達の好む「選択方式のカスタム感覚」や、店舗
の新しいビジネス・モデルを切り開いていくことが、
での購買を比較的好む傾向、サイズの多様化などといっ
今後のメガコンペティション時代における優位性を強
た、潜在的なニーズにフィットするサービスとして戦略
化するだろう。
的に展開することは可能であろう。製造工程にしても、
技術力があり、丁寧な対応が可能な中小規模工場を、オ
ンネットのテクノロジーにうまく取りこんでいければ、
不可能なことではないだろう。ただし、それがスムーズ
に稼働できるような環境が整うまでには、いまだインフ
ラレベルの整備と、EBCのさらなる普及が必要となる
と思われる。
まとめ:成功の条件
このような状況を分析した結果、ガートナーコンサル
ティングはオンネット時代におけるEC成功の条件を以
経営戦略としての
サプライチェーン・
マネジメント
野村総合研究所
ECソリューション部 上級コンサルタント
藤野 直明氏
サプライチェーン・マネジメントとは
サプライチェーンとは、顧客∼小売∼卸∼製造業∼部
品や資材サプライヤーなどを結ぶ供給活動の連鎖構造の
ことである。サプライチェーン・マネジメント(SCM)と
は、「不確実性の高い市場の状況変化に対し、サプライ
チェーン全体を機敏(アジル)に対応させ、ダイナミック
な最適化を図ること」である。
●重要な経済連鎖全体のマネジメント
ドラッカーは著書「明日を支配するもの」の中で、経済
連鎖全体のコスト管理の重要性を説いている。「70年前
にGMが開発した今日の原価計算は、個々の作業コスト
である。80年代の後半からこれまでに、SIS、B P R、
QR(クイック・レスポンス)、ECR(エフィシエント・コン
シューマー・レスポンス)、EC(エレクトロニック・コマー
ス)、CALS、アジル経営といった経営のプロセス管理に
かかわるキーワードが紹介されてきた。“サプライチェ
ーン・マネジメント”は、これら多数のプロセス管理に
かかわるキーワードの経営全体の視点から見た最終的な
目標を表現していると考えると理解しやすい。
●SCMブームとその背景
(1)SCMブーム
一昨年より、「サプライチェーン・マネジメント
(SCM)」がブームの様相を呈している。
特に、日本におけるSCMの紹介のされ方は、ともす
ると「生産管理におけるTOC(制約理論)」や制約理論を背
景にしたプランニング・システムのAPS、さらにERPな
どが“サプライチェーン・マネジメントそのもの”とす
るものも多く見受けられる。
確かにこれらはSCMに関連したイノベーションの重
要な構成要素ではあるが、それはSCMの一面を紹介し
ているに過ぎない。
(2)SCMブームの背景
の和をもって総コストとした。だが、競争上および収益
では、あらためて、なぜ今、SCMが大きな話題にな
上意味を持つコストは、プロセス全体のコストである。
っているのだろうか。筆者は、大きく3つの背景がある
(略)自社の活動のコストについての情報を得ただけでは
と考えている。
不十分である。ますます進化する市場にあって競争に勝
①市場の不確実性の拡大
つためには、経済活動の連鎖全体のコストを管理し、成
製造・流通業を取り巻く近年の環境変化として最も重
果を最大化しなければならない。(略)法人としての企業
要な点の1つは、製品ライフサイクルの短縮化や多品種
は、株主や債権者、従業員や税務当局にとっては現実の
化が進展してきた結果、市場変化が激しく、不確実性が
存在である。しかし、経済的には虚構にすぎない。市場
拡大し、市場動向の予測が容易ではなくなってきている
で意味があるのは、経済的な現実であってプロセス全体
ことである。このため、欠品率などの販売機会損失の増
のコストである。誰が所有しているかは関係ない。」
加と同時にマークダウンやデッドストックなどの問題が
(「明日を支配するもの」:P・Fドラッカー)
増加してきている。
サプライチェーン・マネジメントとは、ここでドラッ
カーが指摘している経済連鎖全体のマネジメントのこと
②キャッシュ・フロー経営への転換を具体化する指導原
理としての期待
さらに、日本企業にとって極めて重要な環境変化は、
これまでの右肩上がり経済における含み資産経営を支え
てきた、土地本位制、間接金融による事業拡大戦略が、
う、未来に関する予測可能性に基づいた大量生産システ
ムのパラダイムから脱却できていないことなのである。
以下では、経営システムの設計思想として、サプライ
成熟経済に突入し、バブル崩壊、金融ビッグバン、国際
チェーン・マネジメントがなぜ重要か、いくつかの側面
標準の会計基準の導入などにより、完全に行き詰まり、
から明らかにする。
株主を意識し資本効率を重視した、キャッシュ・フロー
経営へ転換せざるを得ない状況になってきたことである。
(1)機能別組織における部分最適の目標設定の限界
SCMは、具体的な業務のレベルでキャッシュ・フロー
一般的に、大量生産システムにおいては、計画的な生
経営を実現する指導原理であるため関心を呼んでいるわ
産供給体制を前提として、それぞれの機能別に縦割りの
けである。
組織がつくられている。機能別組織がそれぞれに部分最
③情報技術の進歩(インターネット/ERP/EC・EDI/APS/
適を目指して目標設定を行っているわけである。
データマイニング技術/イントラネット)
例えば、生産部門では設備稼働率を高く維持し、製造
近年の情報技術の進歩は著しい。メインフレームから
原価を下げることを目的として大きなロットで生産する
クライアント/サーバへの転換、ERPやAPSなどの企業
傾向にある。一度にたくさんつくれば、段取り替えによ
活動全体を範囲とした業務アプリケーションの実用化、
る停止時間を最小にでき、その分製品1つ当たりにかか
インターネット利用を含むEC/EDIなどの企業間情報交
る設備などの固定費の割合が下がるからである。このた
換の仕組みの実用化、データマイニングやデータ・ウェ
め、仕掛かり在庫が発生してしまう傾向にある。
アハウスなどを利用した大量のデータからの需要構造の
また、物流部門では、製品当たりの輸送コストを最小
解析技術の高度化等々、これまで概念的、理論的には可
化することを目的としているため、やはり大量輸送の方
能であっても、企業が実際に利用するには、コスト・ベ
が効率が良く、前後にロットまとめのための在庫が発生
ネフィットの点でやはり難しかったことが、経済性を考
する傾向にある。販売部門では、売上最大が目標である。
慮しても、十分引き合う投資になってきたことが大きな
このため、欠品率を最小化して販売機会の損失を減らす
変化である。
ため、やはりできるだけ在庫を保有しておこうとする傾
向にあるのである。
つまり、それぞれの部門で在庫がバッファとして利用
SCMの本質−不確実性をマネジメントする
経営システムの設計思想
された結果、市場環境が変化すれば、それらの在庫が一
SCM改革は、大量生産システムの時代から多品種少
生産されたものは確実に販売されるという大量生産シ
量生産システムの時代へのパラダイム・シフトという大
ステムを前提として考えられた機能別の組織構成、部分
きな構造変化に根差している。このため、たとえ前述し
最適の目標設定そのものが、実は市場変化への対応能力
たように新しい情報技術の活用を図ったとしても、ただ
を阻害しているのである。
度に不良在庫となってしまう危険性を拡大している。
それだけで容易に解決するほど、改革は単純ではない。
90年代初めに「リエンジニアリング」「BPR(Business
問題の本質は、製品ライフサイクルが短縮化、多品種
Process Reengineering)」の考え方がブームになった。これ
化により、市場の「不確実性」が拡大したにもかかわらず、
は非効率になった業務の流れ(ビジネス・プロセス)を根
生産・供給システムは、生産した製品は必ず売れるとい
本的に組み立て直すこと(リエンジニアリング)に力点を
おく考え方で、コストの削減や工期短縮など大胆な目標
を最終的に大きくすることが目標であった。ところが、
を立てるという触れ込みで紹介された。
市場の不確実性が拡大した場合には、利益だけでは有効
しかし、日本ではBPRで大きな成果を上げることがで
な指標とはならない。キャッシュ・フローを見てみない
きた企業はまだ少ないと考えられる。これは、BPRが、最
限りは信用できない、という大きなパラダイム変化が起
終的な目標設定、管理すべき対象範囲という点で自由度
こっているのである。
がありすぎたため、「営業活動のBPR」「物流管理のBPR」
などといった狭い視野での問題設定がなされ、これまで
と同様、部分最適が追求された結果、全体としての最適
化という目標が達成できなかったためと考えられる。
なぜ利益ではないのか。利益というのは財務計算上、
便宜的につくり出された利益にすぎないからである。
例えば、売れなくても在庫をつくればつくるほど、見
かけ上の利益は大きくなるという現象が生じる。在庫を
極端な場合では、機能別組織の部分最適を目的とした
どんどんつくると、固定費が在庫に配賦されるため、販
BPRは、正しく行えば行うほどサプライチェーン全体か
売されている商品の一個当たりの売り上げ原価が下が
ら見ると、間違ってしまう危険性があるのである。
る。そのため、見かけ上の利益が発生するのである。よ
逆に、製造原価が上がっても、サプライチェーン全体
くある黒字倒産というのはこうして起こる。黒字なのに
から見てキャッシュ・フローが増加するのであれば、小
在庫に埋もれてしまって倒産する。キャッシュが足りな
ロット生産を行う、輸送コストが高くとも高速輸送を行
くなってしまうのである。
う、仕掛かり品の生産を中止し、売れる商品へ貴重な生
こうした流れの中、企業のパフォーマンスを評価する
産能力を振り返る、といった対応を行うことが正しい場
指標として、キャッシュ・フローの重要性が指摘されて
合も多いのである。
いる。日本でも貸借対照表、損益計算書に加え、キャッ
不確実性の高い市場変化に対しては、比較的長い期間
シュ・フロー計算書の提出が義務づけられるようになる
を対象とした機能別組織の部分最適計画による供給体制
のもこうした理由からである。キャッシュ・フローが判
は通用しない。「市場変化にアジル(機敏)に対応し、サ
断業務を含まない客観的な数字であり、不確実性の時代
プライチェーン全体の最適状態の維持を図る」という
に企業の実力を最もよく示してくれるものだからである。
SCMの考え方が必要となるのである。
(3)TOCとスループット会計
(2)キャッシュ・フロー会計の重要性
大量生産・大量消費の時代には、損益計算書の「利益」
キャッシュ・フローの最大化に対し、業務レベルで応
えてくれるのがTOC(Theory of Constraints)とスループッ
ト会計である。TOCとは、制約条件管理のことで、米国
り方を探索するという点にあるのではないかと考えられ
では十年前ぐらいから流行ってきた考え方である。TOC
る。さらに、生産されただけではキャッシュには変換さ
の考え方は、以下のようなものである。
れないため、スループットの計算には厳密にいうと、実
「サプライチェーンには、サプライチェーン全体のス
ループット(産出量)を決めているボトルネック、すなわ
際に販売されてキャッシュに変換される確率を乗じた期
待値を採用することが適当であると考えられる。
ち制約工程が存在する。このため、サプライチェーンの
ここで興味深いのは、キャッシュ・フローと密接にリ
スループットを最大にするためには、この制約工程を見
ンクしたスループット会計と、これまでの原価計算シス
つけ、制約工程のスループットを最大にすることが目標
テムの考え方では、プロダクト・ミックスや価格設定の
となる。その他の非制約工程のスケジューリングは、サ
あり方などにおいて、一見対立する逆説的な答えが出て
プライチェーン全体のスループットにはそれほど影響は
くることがあるということである。
ない。むしろ、制約工程のスループットを最大にするこ
スループット会計は、直接原価計算法と考え方は似て
とを条件として、他工程の稼働率を下げ、仕掛かり在庫
いるのであるが、制約工程に焦点を当て、さらに単位時
を極小とすることで、市場の不確実性に備えることが重
間当たりスループットという考え方を採用した議論にな
要」ということである。
っており、TOCと直接結びついているところが重要なポ
キャッシュ・フローを最大にするためには、当然、サ
イントである。
プライチェーン全体におけるスループットを最大にしな
ければならない。サプライチェーン全体のスループット
(4)経営システムのパラダイム・シフトとSCM
を最大にするには、制約工程の時間当たりスループット
大量生産システムにおけるパラダイムは、未来に関す
を最大にする選択肢(例えば製品構成)を選択することが
る予測可能性を基本としている。しかし、多品種化や製
重要になるわけである。
品ライフサイクルの短縮化が進む現在、未来は予測不可
ただし、実際は制約工程が、プロダクト・ミックスの
能ということを基本とした「不確実性のパラダイム」を経
あり方により変化することが多く、TOCの現場での価値
営システム・デザインの前提として採用することが必要
は、生産工程のリスケジューリングに際し、スループッ
となってきている。これは、具体的には観測された市場
トをできるだけ阻害しないようなスケジューリングのあ
動向にいかにアジル(機敏に)に対応するかを基本に考え
表 経済構造のパラダイム・シフトとSCM
経済構造のパラダイム・シフト
大量生産システム
アジリティ(俊敏性)
パラダイム
経営システム設計の前提条件
予測可能性
不確実性
経営システムの設計思想
機能別組織の部分最適化
業績管理システム
財務会計システム
サプライチェーン
マネジメント
(サプライチェーン全体の ダイナミックな最適化)
キャッシュフロー会計
スループット会計
これまでの業績評価尺度は基本的に部門ごとの最適を
た「アジリティ・パラダイム」へのシフトである。
パラダイム・シフトに対応し、「経営システムの設計思
考慮した業績評価尺度である。
また取引形態についても、
想」は、
予測可能性を前提とする機能別組織の部分最適化
基本的にそれぞれの業種別の最適化を前提としたもので
を目標とするものから、市場の不確実性を前提とし、変
ある。このため、それぞれの主体にサプライチェーンの
化に対してサプライチェーン全体の最適化を図ることを
全体最適化へ向けたインセンティブを与えるためには、
目標とするSCMへできるだけ早く転換すべきなのである。
既存の業績評価尺度や取引メカニズムを見直すことが不
この結果、組織管理方式も現場ヒューマンウェア主義
可欠となる。
から先端ITを利用したホリスティックな視点からのマネ
ジメントへ、業績管理システムも財務会計システムから
キャッシュ・フロー会計システム、スループット会計へ
(1)全社レベルでのSCMの位置づけの明確化
実は、すでに一部の先進的な日本企業では、経営戦略
のプライオリティ(優先順位)付けの抜本的変革が起きつ
と移行することが必要となる。
SCMは、大量生産システムからの転換という、大き
つある。つまり「経営課題としては、製品企画・開発力そ
なパラダイム・シフトをガイドする経営システムの設計
のものよりも、SCM力の方が、プライオリティが高
思想として、重要なのである。
い!」と考える経営者が現れてきた。
(表)
たとえ優れた製品企画・開発力があっても、SCMの能
SCM改革の課題
力が低いと流通在庫の値崩れを恐れるあまり、新製品投
入までに時間がかかってしまったり、不良在庫の処理費
SCMの実現には、IT導入と併せて、組織のあり方、業
用がかさみ、キャッシュ・フローが悪化したり、納期回
績評価システムや取引形態などの見直しなど経営システ
答ができなくて販売機会損失を招いたりして競争力が低
ム全体の再構築を図ることが必要となる。
下する危険性がある。逆に、ピークを過ぎたと分かった
商品は即撤退できる。ヒット商品と判断されれば、即増
である。そして、その設計に当たっては「不確実性の考
産するといった機敏さが、商品企画開発力をキャッシュ
慮」が不可欠のポイントとなる。
に変換するために不可欠となってきている。
こうした経営トップ自らの意識改革が、SCM実現の
鍵であることは確かである。
(3)部門を超えたSCM推進体制の確立
SCMが抜本的な経営システムの設計を迫るという意
味で、SCMの関連テーマは、情報システム、商品設計、
(2)業績評価尺度や取引メカニズムの見直しの必要性
これまでの大量生産システム、つまり生産したものは
業績管理手法、アウトソーシング戦略、企業間でのコラ
ボレーション、取引構造の再設計と多彩である。当然、
必ず売れるということを前提とした取引形態、業績評価
SCMへ取り組むべき部門も、経営管理部門だけではな
システムのままでは、通常不確実性を前提としたSCM
く、マーケティング、セールス、物流、生産、調達、計
改革へのインセンティブが湧かない。その理由は、不確
画、商品企画、財務部門、情報システム部門とほとんど
実性の取り扱いにある。
全社に及ぶ。さらには企業の壁を越えて、顧客やサプラ
例えば、以下のような問題が発生することとなり、改
革は形骸化する危険性がある。
イヤーと取り組むことが重要な鍵となる。
このため、SCMの実現には、経営としてのプライオ
*例1:販売会社と生産会社との間では販売・生産計画
リティを明確にしたうえで、部門を超えた戦略的な組織
と実績を共有している。このため特急オーダーはかなり
の設立が必要となる。いわば「サプライチェーン・マネジ
少なくなった。ところが、両者で確認した最短リードタ
ャー」を組織的に明確に位置づけることが必要である。
イムの期限を過ぎた販売会社からの特急オーダーが発生
サプライチェーン・マネジャーは、部門や拠点を超えた、
した。これに対して、生産会社は夜を徹して段取り替え
サプライチェーン全体の最適化に関するリーダーシップ
をしながら対応したが、通常納品と同じ価格でしか支払
を発揮する役割を担っている。当然ながら「サプライチ
われなかった。これでは、生産会社から「次の特急オー
ェーン・マネジャー」は、関連する事業所と緊密な連絡・
ダーは、受けてはいけない」という判断が下されても仕
情報収集を行い、常にSCMに関する意思決定が可能な
方が無いわけである。
状態を形成しておく必要がある。先進的な企業では、す
*例2:販売店のAさんもBさんも同額の売上目標を達成
でにこうした組織体制が構築され始めている。
した。Aさんは計画した商品(生産会社と共有している計
もちろん、すべての企業がすぐに意識改革に踏み切れ
画)とは、まったくチグハグな商品を販売し、結果、大
るわけではない。そのためには、「自社のサプライチェ
量に返品したが売上目標は達成した。Bさんは、販売計
ーンの改善余地が一体どの程度存在するのか?」「情報シ
画通りの商品内容で、販売努力し、結果、返品数を削減
ステム投資により、サプライチェーンの効率が、どの程
した。こうした場合でも売り上げだけでしか評価されな
度改善されるのか?」、また需要構造分析や、生産プラ
いとすれば、Bさんの“計画通り販売しようとするイン
イオリティを加味したスケジューリング、取引形態の設
センティブ”の維持は難しいことになる
計などの分野において、問題構造を定量的に分析、把握
つまり、SCMの新しい業務プロセスを機能させるた
し、問題の重要性・優先度合いを部門を越えて共通に認
めには、新しい業務プロセス改革へ関連する各主体が、
識するステップが必要になる。SCMの成功の鍵は、こ
全体最適化へ向けて取り組むインセンティブが湧くよう
うした、いわば流通クオンツ(Quantative Analyst)と呼ぶ
な取引形態、業績評価システムの設計が必要となるわけ
べき定量分析ノウハウを持った人材の登用・活用である
と考えられる。
米国のあるコンピュータ企業では、サプライチェー
ン・マネジャーを支援する組織として、本社部門に
「SPaM(Strategic Planning and Modeling)」という部隊があ
り、サプライチェーンの流れを組み替えるうえで、事実
上の司令塔の役割を担っている。ある事業部門が生産・
販売体制を再構築する場合も、実際にはSPaMがキャッ
シュ・フロー効率やROA向上につながるいくつかの案を
提示し、その中から事業部門が選ぶということである。
先進的な日本の企業でも同様の動きが起こりつつある。
オンネット時代の
企業情報システム
構築に向けて
日本ユニシスからの提言
日本ユニシス株式会社
商品企画部 オンネット・ソリューション室
担当部長 ソフトウェア・アーキテクト
水丸 晴雄
ネットワークを含めた情報技術による全世界の社会変
革の中で、企業と情報システムのあり方も変化を迫られ
ている。本論文では今後予想される変化を概観し、オン
ネット時代の新しいビジネスの創造を支える企業情報シ
ステムを構築するための方策を提言する。
地球規模のデジタル経済の台頭
1990年代を振り返ると、ネットワークを含めた情報
技術による全世界の社会変革が始まった時期だったとい
える。特に1995年以降のインターネットは、ビジネス
の世界から日常生活まで巨大な変化をもたらした。
ターネットなどの情報技術の発達もあいまって、地球規
98年度のインターネット利用者は1,700万人に達し、
また企業普及率は80%に達した*1。また、携帯電話と
模のデジタル経済が台頭してきた。これらの変化に対応
PHSの加入台数は99年7月末で5,000万台を突破した*2。
してビジネスの世界では、リストラクチャリング、リエ
今や電子メールは電話と並ぶ通信手段となり、またイン
ンジニアリング、リアルタイム経営、さらにエレクトロ
ターネットは消費者にも情報発信と収集の強力な手段を
ニック・コマースやエレクトロニック・ビジネスなど、多
提供している。インターネット利用者の裾野は、高齢者
彩な取り組みが展開されてきた。
から小学生まで広がり、ボランティア活動、芸能アイド
下側にはビジネスと情報技術の関わりの変化を示して
ル、子供向けキャラクターなど、関心・嗜好に応じた多
いる。出発点は既存業務処理のコンピュータ化だったが、
様なWebサイトが開設されている。
インターネット、Web、PC、電子メールに代表される
情報技術の進歩により、情報技術によるビジネスの変革
図1は、このような状況を踏まえて21世紀初頭に向か
が注目されるようになってきた。
って社会、ビジネス、情報技術、そして情報システムが、
このように21世紀初頭の社会、ビジネス、情報シス
どのように変化しつつあるかを概観したものである。
上側には、経済社会とビジネスのあり方の変化を示し
テムの姿は地球規模のデジタル経済の台頭と捉えること
ている。国境に守られた国別の経済と業種・業態のすみ
ができる。その特徴は「ネットワーク化された知性の活
分けは、規制緩和、貿易や資本の自由化により徐々に崩
用」と「大量生産・マスマーケティングからマスカスタマ
れ、メガコンペティションとグローバル化の中で、イン
イゼーションへ」である*3。
図1 地球規模のデジタル経済の台頭
国別の
経済
・メガコンペティション
・グローバル化
・リアルタイム経営
地球規模の
デジタル経済
・規制緩和
・リストラクチャリング
・リエンジニアリング
情報技術による
ビジネスの変革
既存業務処理の
コンピュータ化
情報技術(IT)
の進歩
・インターネット/Web技術
・PC/電子メール
・ネットワーク化さ
れた知性の活用
・大量生産/マスマ
ーケティングから
マスカスタマイゼ
ーションへ
21世紀初頭の社会=オンネット・ワールド
次に、21世紀初頭の社会、ビジネス、情報システム
などのビジネス・パートナーとは、エクストラネットで
商取引を行う。
一方、図2 の右上のコミュニティ・オンネットには、
の姿を、情報技術の視点から描いてみると図2のように
現実コミュニティのオンネット化とバーチャル・コミュ
なる。日本ユニシスは、このように表現した21世紀初
ニティの2つがある。現実コミュニティのオンネット化
頭の社会をオンネット・ワールドと呼んでいる。このよ
は、住民への情報提供や意見収集をネットワ−ク経由で
うな世界は現在すでに一部先進企業などで存在している
行うといった形である。一方、バーチャル・コミュニテ
が、21世紀初頭には広範囲に普及し、質の変革をもた
ィは、チャットやニュース・グループが代表的な形であ
らすだろうと予想している。
る。米国CISCO社のWebサイト*4のようにユーザ同士
図2 の下半分を占めるビジネス・オンネットでは、社
で情報交換し互いに助け合う例もある。
員あるいは従業員は社内のイントラネットを通じて作業
最後に図2 の左上のピープル・オンネットでは、普通
チーム、部門、そして企業全体の各種システムを活用し
の人が、ある時は市民としてコミュニティ・オンネット
て仕事を進める。またインターネット経由で外部とEメ
にアクセスし、別の時は消費者として企業のWebサイ
ールを交換したり、競合他社やパートナーの動向などを
トにアクセスする。
入手したりする。さらに取引先やサービス・プロバイダ
図2 21世紀初頭の社会=オンネット・ワールド
ピープル・オンネット
コミュニティ・オンネット
バーチャル
コミュニティ
現実コミュニティ
のオンネット化
インターネット
企業システム
部門システム
エクストラネット
チーム
イントラネット
ビジネス・オンネット
ビジネス
パートナー
ない。
オンネット時代の企業連鎖モデル
*企業間の取引関係は固定的で、EDIなども系列の範囲
内に限定して実現される。
家電製品などの工業製品は、原材料メーカー、部品製
造業、加工・組立製造業、流通業、さらに販売業(小売業
*新しい企業間取引関係を作ることは困難で時間がかか
など)の複数の企業群の連鎖を通じて最終顧客(消費者な
る。
ど)の手元に届けられる。一方、製品の対価は、金融業
*人間が介在して、見積もり、在庫・納期問合せ、発注
などを書類、電話、FAXなどで行う。
が関与して決済される。
このような企業連鎖モデルにおいて、従来は以下のこ
図3のオンネット時代の企業連鎖モデルは、一見従来
とが常識であった。
とほとんど変わらないように見える。しかし従来の常識
*各企業の事業定義と企業間の分業・役割分担は変化し
は打破され、大きな変化が生じる。
図3 オンネット時代の企業連鎖モデル
原
材
料
メ
ー
カ
ー
製造業
製造業
(部品)
(加工・組立)
流通業
販売業
情報
物流
商流
金融業
複数企業がネットワークを通じて分業
(例)
●グローバル・スタンダードに基づく大規模なサプライチェーン
●国際間企業連携システムなど
〈従来との違い〉スピード、動的、柔軟
最
終
顧
客
一部の先進企業や新興企業を例外として、一挙に実現
*複数企業がネットワークを通じて分業する際に、各企
する可能性は低いと考えている。図4に示すように中間
業の事業定義の見直しが大前提となる。
*企業間の取引関係はオープン、動的、柔軟なものとな
ステップとして多くの企業で、従来の事業定義のまま、
る。新しい企業間取引関係を作ることは、迅速・容易
インターネットなどを活用して、新しい販売チャネルを
となる。
開発したり、調達業務のコスト低減を図ったりするもの
と予想する。最近の情報システム利用実態調査*7は、
*見積もり、在庫・納期問い合わせ、発注などは電子化・
自動化が進んでスピードアップする。人間の介在は減
上記の予想を裏付けている。なお図4では、中間ステッ
少する。
プを「オンネット萌芽モデル」と呼び、「オンネット時代
オンネット時代の企業連鎖モデルの例としてはグロー
の企業連鎖モデル」=「オンネット開花モデル」と対比し
バル・スタンダードに基づく大規模なサプライチェーン
ている。これらはいずれも情報技術によるビジネスの変
や国際間企業連携システムなどがある。また各企業の事
革の結果である。
業定義の見直しにより、サードパーティ・ロジスティク
ス*5やアプリケーション・サービス・プロバイダ*6など
オンネット時代と企業情報システム
が脚光を浴びている。
それでは各企業は一斉に事業定義を見直し、オンネッ
上記のような社会とビジネスの変化は、企業にとって
ト時代の企業連鎖モデルが一挙に実現するのだろうか。
新たなビジネス創造・ビジネス戦略展開の機会であると
図4 企業連鎖モデルの進化
従来型
モデル
オンネット
萌芽モデル
オンネット
開花モデル
各企業の
事業定義
従来通り
見直し
企業間の
相互関係
閉鎖的、固定的
オープン、動的
企業間の
通信
人間が介在
従来型情報
システム
電子化・自動化が進展
全社連携型
情報システム
オンネット社会型
情報システム
同時に、新たなビジネス課題の発生を意味する。一方、
*システム間連携は実現されていても個別対応である。
情報技術と情報システムの助力無しでは新ビジネス創
これらの結果、経営者から見るとビジネス・プロセス
造・戦略の実行と新ビジネス課題の解決は非常に困難で
全体の進捗状況やボトルネックの有無が見え難い、合
ある。
併・買収や提携のシナジー効果の発揮が難しい、キャッ
シュフロー管理・連結会計・時価会計などの実現が難し
以降では、以下の論点を解明していきたい。
*新ビジネス創造・戦略の実行と新ビジネス課題の解決
い、金融業での総合リスク管理が難しい、といった問題
を支援する情報システムとは何か。
を生じることが多かった。またエンドユーザから見ると
*それは如何にして構築できるのか。
1回の受注に対し、同一データを会計システムと物流シ
ステムに別々に入力しなければならない、といった不便
さと入力データのミス・不整合が数多く発生していた。
従来型情報システムの直面する課題
その一方、情報技術の進歩により以下の点でビジネス
図5 に示すように多くの企業の既存情報システム群
の変革が可能となり、競合力維持のためには以下のビジ
は、以下の状況にあることが多い。
ネス課題を解決する必要が生じている。
*個別に構築した独自仕様システムの寄せ集めである。
*新規販売チャネル開拓や営業力強化
*各システムは各部署の要求に答えたもので、ビジネ
*調達業務の効率化
*迅速・正確な実態把握と対策実施
ス・プロセスを断片的に支援している。
*個々のシステムごとに異種のプラットフォームやミド
*ビジネス・プロセスのスピードアップ
*これらを通じたリアルタイム経営の実現
ルウェアを使って構築されている。
図5 従来型情報システム
購買管理
生産管理
財
務
会
計
販
売
管
顧客管理
理
財務
会計
購買
管理
ミドル
ウェア
生産
管理
プラット
フォーム
ミドル
ウェア
プラット
フォーム
ミドル
ウェア
顧客
管理
販売
管理
プラット
フォーム
ミドル
ウェア
ミドル
ウェア
プラット
フォーム
プラット
フォーム
また、これらのビジネス課題を解決し、情報システム
として具現化するためには、以下の情報技術適用上の課
全社連携型情報システム
題を解決する必要が生じている。
上記の直面する課題を解決することにより、図6に示
*パッケージ・アプリケーションの活用
すような全社連携型情報システムが実現される。その特
*ビジネス・プロセスに即したシステム間連携
徴は以下のとおりである。
*新規事業機会を逃がさないシステム短期開発
*ビジネス・プロセスに即して連携した既存システム群
これらの情報技術適用上の課題の解決策については以
*顧客対応支援、経営・意思決定支援、取引先対応支援
下で提言する。
などのためのパッケージ・アプリケーションの導入と
既存システム群との連携
図7は全社連携型情報システムの例を示している。従
来型情報システムは、販売、物流、購買、会計の業務ご
図6 全社連携型情報システム
経営・意思
決定支援
購買管理
取引先
対応
支援
顧客管理
生産管理
財務会計
購買
管理
販売管理
顧客
対応
支援
取引先 ミドル
対応支援 ウェア
ミドル
ウェア
財務
会計
プラット
フォーム ミドル
ウェア
プラット
フォーム
経営・意思
決定支援
ミドル
ウェア
プラット
生産
管理
ミドル
ウェア
プラット
フォーム
顧客
管理
ミドル
ウェア
販売
管理
ミドル
ウェア
プラット
フォーム
顧客
対応支援
ミドル
ウェア
プラット
とに別々のシステムで構成されていた。そしてシステム
●
間の情報流通・交換は円滑でなく、多くの場合、データ
企業間の取引関係をオープン、動的、柔軟なものとす
るための社会的な規約整備
*ビジネス課題解決のための情報技術適用上の課題
再入力など人間の介入が必要だった。図7の全社連携型
情報システムの例ではシステム群の顧客、取引先、社員
●
社会的情報流通を可能とする情報技術基盤の確立
への統合窓口としてWebを設置した。また入力データ
社会とビジネス全体に関わる上記の課題の解決を前提
を関連システムに振り分け、結果をまとめて出力するな
に、企業は全社連携型情報システムを出発点に、以下の
どの工夫により、データ再入力が不要になった。さらに
21世紀初頭の課題に取り組むことが必須になる。先進
システム間の情報交換の束ね役としてメッセージ・ブロ
企業ではすでにこのような取り組みを開始している*8。
ーカを設置した。これによりビジネス・プロセス全体の
*ビジネス課題
進捗状況やボトルネックの有無が見えやすくなった。
●
事業定義の見直しと、新たなビジネス創造・ビジネス
戦略展開
21世紀初頭の課題
21世紀初頭の課題としては、社会とビジネス全体に
●
ビジネス・パートナーの動的・柔軟な選択
●
企業間にまたがるビジネス・プロセスの支援
●
環境変化への迅速・柔軟な対応
*ビジネス課題解決のための情報技術適用上の課題
関わる以下の課題の解決が急がれる。
*ビジネス課題
●
社会的情報流通基盤と整合した、全社情報技術基盤の
図7 全社連携型情報システムの例
取引先
顧客
Web
購買
管理
社員
経営・意思
決定支援
顧客
管理
取引先
対応支援
顧客
対応支援
財務
会計
生産
管理
メッセージ
ブローカ
販売
管理
連携
構築
●
●
個別情報システムの外部インタフェースの安定化・明
*情報技術基盤へのプラグイン型情報システム
確化と公開
*情報システムの柔構造化
環境変化への迅速・柔軟な対応を可能にする情報シス
テムの内部構造の改革
オンネット時代の企業情報システム
構築に向けた日本ユニシスの取り組み
これらの情報技術適用上の課題の解決策については以
下で提言する。
これまで述べてきたように全社連携型情報システムと
オンネット社会型情報システムを実現するには情報技術
オンネット社会型情報システム
適用上の課題の解決策が必要である。これらに対する日
本ユニシスの取り組みを図9に示している*9。
上記の課題を解決することにより、図8に示すような
*情報システム・イネーブラ
オンネット社会型情報システムが実現される。その特徴
は以下のとおりである。
パッケージ・アプリケーションの短期導入、ビジネス・
*企業内外にまたがる情報システム群の広域自律分散型
プロセスに即したシステム間連携の短期開発、新規事業
図8 オンネット社会型情報システム
製造業
販売業
企業間にまたがる
ビジネス・プロセス
顧客
流通業
金融業
ビジネス
プロセス
を支える
情報システム
製造業システム(例)
取引先
対応支援
購買
管理
財務
会計
生産
管理
経営・意思
決定支援
販売
管理
顧客
管理
顧客
対応支援
情報技術基盤
流通業
システム
金融業
システム
社会的情報流通基盤
販売業
システム
顧客
システム
機会を逃がさないシステム短期開発を可能とするため
ステムや、オンネット社会型情報システムを実現してい
に、情報システム・イネーブラを開発・提供する。これは、
くために必要な製品・技術を開発・調達・提供する。Web、
情報システム間の連携や構築を支援するソフトウェア製
メッセージ・ブローカ、Webアプリケーション・サーバ
品群であり、基盤ソフトウェア製品群とアプリケーショ
などの製品・技術により全社連携型情報システムの構築
ン群の隙間を埋める製品組み合わせ技術やシステム構築
とリアルタイム経営の実現を支援する。分散オブジェク
技術の内、標準化・共通化可能な部分を抽出し、最大限
ト、XML、エージェントなどの製品・技術により、オン
にソフトウェア製品化を追求したものである。
ネット社会型情報システムの構築と企業間にまたがるビ
*情報システム群の連鎖・連動
ジネス・プロセス、さらに新たなビジネスの創造を支援
情報システム群を連鎖・連動させて全社連携型情報シ
する。
図9 日本ユニシスの取り組み
全社連携型情報システム構築の課題
●
パッケージ・アプリケーションの活用
●
新規事業機会を逃さないシステム短期開発
●
ビジネス・プロセスに即したシステム間連携
日本ユニシスの
取り組み
●
オンネット社会型情報システム構築の課題
●
●
●
情報システム群の
連鎖・連動
社会的情報流通基盤と整合した
全社情報技術基盤の構築
個別情報システムの外部インタフェースの
安定化・明確化と公開
環境変化への迅速・柔軟な対応を可能にする
情報システムの内部構造の改革
●
情報システム・
イネーブラ
●
アプリケーションの
柔構造化
*アプリケーションの柔構造化
*最初に現行システム群をビジネス/技術両面から評価
アプリケーションを柔構造化して、環境変化への迅
する。コアコンピタンスを支えるシステムや新規事業
速・柔軟な対応を可能にするために必要な製品・技術を開
機会に対応するシステムに重点を置く。それ以外のシ
発・調達・提供する。ビジネス・オブジェクト、コンポー
ステムはパッケージ・ソリューションやアウトソーシ
ネント・ベース開発、Enterprise JavaBeansなどの技
ングによる置換の候補とする。これは現行情報システ
術を用いて、アプリケーションを部品組立型で開発し、
ムの全面リプレースも完全維持も現実的な方策とは考
業務処理を可変部分と不変部分とに分離することでアプ
えていないからである。
*次に全社的な情報技術アーキテクチャを策定する。そ
リケーションの柔構造化の実現を支援する。
の際、社会的情報流通基盤の要となる技術の動向の読
みと見極めが重要である。なお、全社連携型情報シス
オンネット時代の
企業情報システム構築に向けて
−進化のシナリオの提言
テムは、情報技術アーキテクチャ策定と平行して構築
してよい。
*策定した情報技術アーキテクチャに基づいて情報技術
個々の企業の従来型情報システムを進化させて全社連
基盤を構築する。これにより、事業環境やビジネス戦
携型情報システム、さらにオンネット社会型情報システ
略の変化が激しい昨今の状況のもとで、変化に即応し
ムを実現していく方策について、図10 を参照しながら
た情報システム群のラセン的進化を実現する土台が完
提言したい。
成する。
図10 情報システム進化のシナリオ
方針・計画
構築・運用
構築・運用
現状評価
変化
方針・計画
変化
要件定義
構築・運用
要件定義
変化
変化
要件定義
基
構築・運用
要件定義
築
構
盤
方針・計画
術
報技
方針・計画
情
現状評価
情報技術アーキテクチャ策定
*この土台の上で、変化に即応して情報システム進化の
参考文献ほか
要件定義、方針決定、計画立案、構築、運用とラセン
*1 郵政省:平成11年度通信白書(1999)
的に繰り返し、オンネット社会型情報システムを構築
*2 郵政省:速報(1999年8月6日発表)
することができる。
*3 Tapscott, D:The Digital Economy:Promise and
このような方策により、従来の3年から5年に一度じ
Peril in the Age of Networked Intelligence(1995)
っくりと取り組む形態から脱却し、走りながら考え、走
(邦訳)タプスコット:デジタル・エコノミー、野村総
りながら変身し続ける形で、情報システムの進化に取り
合研究所(1996)
組むことが可能になる。
*4 http://www.cisco.com/
*5 事例で答える最新キーワード30の疑問、日経情報ス
OnNet Solution:日本ユニシスの
取り組みと進化のシナリオの具体化
以上で述べてきた日本ユニシスの取り組みと進化のシ
トラテジー、1999年6月 P34
*6 ネット経由でアプリを“時間貸し”米国で注目集め
るASPサービス、日経コンピュータ、1999.6.21
P18
ナリオを、ソリューション、アプリケーション、サービ
*7 第3回情報システム利用実態調査 「選択と集中」に挑
ス、情報技術の視点から具体化したのが O n N e t
む、日経コンピュータ、1999.8.2 P136∼P169
Solutionである。お客様の新たなビジネスの創造とビジ
*8 トップ対談 持たざる者に勝機、シンプルな戦略で
ネス課題の解決に貢献できるSolution Creatorsを目指
闘う、日経情報ストラテジー、1999年9月 P16
して、OnNet Solutionを核とした取り組みを今後とも
推進していく所存である。
*9 今江 泰、オンネット時代のソリューション体系
−OnNet Solution、えすぷり 79号
■解説
オンネット時代のソリューション・コンセプト
−「OnNet Solution」
日本ユニシス株式会社
マーケティング部 プログラムマーケティング室
担当部長
今江 泰
インターネットにより
実現する21世紀の
シームレスな社会
SCM *4 による納期短縮と在庫削減、企
情報技術(IT)を活用した
ビジネス課題の解決と
新たなビジネスの創造
業活動のグローバル化に対応するための国
際会計基準対応やISO9000/14000対応も
大きな課題である。
国別の経済や業種・業態による企業のす
現在、各企業はグローバル化、規制緩和
み分けは、規制緩和、貿易や資本の自由化
そして市場経済の進展によって競争が激化
により徐々に崩れ、メガコンペティション
する中で、勝ち残りをかけて、多くの課題
多くの場合、業務/部門別に構築された縦
とグローバル化の中で、インターネットな
の解決と同時に、新たなビジネスの創造を
割り型のシステムであり、情報が停滞する
どの情報技術の発達や普及とともに、地球
迫られている。経済発展を続ける米国の原
弊害を招いている。さらに、新たなビジネ
規模のデジタル経済が台頭してきた。
動力が情報技術(IT)の活用にあることは良
スを素早く立ち上げるために、新規情報シ
また、これまでの企業情報システムは、
これから迎える21世紀初頭の社会、ビ
く知られている。日本企業にとっても新た
ステムの短期開発や既存情報システムの有
ジネス、情報システムの姿は、この地球規
な発展のためにはITの活用がキーポイン
効活用もますます必要になってきている。
模のデジタル経済が定着する時代と捉える
トとなっている。
ことができる。そこでは、数多くの「情報
インターネットの普及に伴う、デジタル
システム」が相互に接続され、大きな社会
経済の進展を見据えたEC*1の実現や新規
情報ネットワーク・システムとして利用さ
事業の展開、顧客関係管理(CRM*2)、ワン
れ、「人」「物」「金」「情報」がこのネットワー
ストップ・サービス、SFA*3などのコンセ
ク・システムを活動の場とする、
まさに“オ
プトに基づく顧客対応力の強化は、どの企
ンネット”の時代になる。
(図1)
[注]
*1 EC(Electronic Commerce)
*2 CRM(Customer Relationship
Management)
*3 SFA(Sales Force Automation)
*4 SCM(Supply Chain Management)
業においても大きな命題となっている。
図1 21世紀のシームレスな情報ネットワーク社会
旅客/運輸業
SCM(サプライチェーン管理)
CALS
(光速による商取引)
製造業
PDM(製品データ管理)
インターネット
予約
構内LAN
金融機関
ホテル
インターネット
予約
セットトップ
ボックス
ISP
CRM(顧客関係管理)
電子決済
市況情報
リスク管理
企業内
・購買部門
・顧客対応部門
EC(電子商取引)
CRM(顧客関係管理)
コールセンター
情報提供
学校・図書館
ISP
生協・コンビニ
セットトップ
ボックス
公共事業体
住民情報サービス
顧客管理/電子マネー
低コスト物流計画
家庭
病院・保健所
画像情報
遠隔治療情報
ホームショッピング
ホームバンキング
セキュリティ
輸送/倉庫業
EC(電子商取引)
次世代物流システム
I S P = Internet Servi ce P rovi der
中で、グローバル化するビジネスを支援
「OnNet Solution」とは
②インターネット・ビジネスへの対応
「OnNet Solution」による
お客様のメリット
日本ユニシスは、ビジネスの変革を的確
インターネット技術をベースとする企業
OnNet Solutionに基づいたビジネス・ソ
に理解し、最新のITによるビジネス・イン
内、企業間、企業−消費者間のネットワー
リューションによって、お客様は次のよう
フラの整備と創造性のあるソリューション
クで展開されるビジネスを支援
なことが可能になる。
を提案する「Solution Creators(ソリュー
③柔軟かつ容易なシステム間連携
*急激に変化する市場環境への素早い対応
ション・クリエータ)」を目指している。
OnNet Solutionは、Solution Creators
オンネット時代の業務プロセスの変革に
着目して業務間連携と企業間連携の容易な
*経営と業務プロセスの視点から体系化し
たソリューションの利用
を目指す、日本ユニシスが提唱するソリュ
実現を支援
*企業間連携や業務間連携の容易な構築
ーション・コンセプトであり、オンネット
④最適でトータルなビジネス・ソリューシ
*最適でトータルなビジネス・ソリューシ
時代に企業が直面する経営課題、典型的に
ョンを短期間で構築
はネットワーク上でのビジネスの実現に対
さまざまな業種の数多くのお客様のシス
応するソリューションのための日本ユニシ
テム構築に携ってきた経験と実績をもと
スの取り組みと考え方である。
に、最適な製品やサービスを組み合わせた
ョンを短期間で構築
*オープン環境で信頼性の高い安定したソ
リューションの利用
*異機種環境での情報システム間の相互運
OnNet Solutionが目指していることを
パッケージ型のソリューション商品、お客
一言で表現すると、
“21世紀に安心して使
様のアプリケーション開発を容易にするイ
*最適なプラットフォームの選択
えるビジネス・ソリューションの実現”で
ネーブラ、精選した基盤ソフトウェアをま
*統合的なセキュリティ環境の構築
ある。具体的には、次のようなことを目指
とめたプロダクトセットなどを提供
(図2)
している。
①グローバル化するビジネスへの対応
貿易、資本の自由化や規制緩和、インタ
図3にOnNet Solutionを具現化するソ
リューション・モデルを示す(図の説明は後
述)。
用
ソリューション・
フレームワーク
OnNet Solutionでは、図4のようなオ
ーネットによるボーダーレス化が進展する
ンネット時代の企業の業務モデルを設定
図2 OnNet Solutionのねらい
し、これに基づいて業務プロセスの視点か
らソリューションを図5のように分類・整
21世紀に安心して使えるビジネス・ソリューションを実現
理し、これをソリューション・フレームワ
ークと呼んでいる。
グローバル化するビジネスへの対応を支援
【業種別業務ソリューション】
業種別業務ソリューションは、各々の企
金融ビッグバン対応、国際会計基準対応
業の本業に関わるソリューションで、金融、
製造、流通、航空、医療、自治体など、さ
インターネット・ビジネスの支援
Web インタフェース、オープンEDI、仮想モール
システム間連携の容易な実現
業務間連携、企業間連携機能
最適でトータルなソリューションの短期構築
パッケージ、イネーブラ、プロダクト・セット
まざまな業種・業態に対応するソリューシ
ョンがある。
図3 OnNet Solutionを具現化するソリューション・モデル
お 客 様
顧客サー
ビス向上
意思決定
の迅速化
外部企業
との連携
営業活動
の改善
お客様の課題の解決
新たなるビジネスの創造
TEAMmethod
ソリューション・モデル
Application
本業強化
Service
コンサルテーション
システム構築
Technology
Framework
要件定義
設計
サ
ポ
ー
ト
・
セ
ン
タ
ー
開
発
セ
ン
タ
ー
実
証
・
実
験
セ
ン
タ
ー
開発
Enabler
導入
運用・保守
Baseline
教育
プラットフォーム
ネットワーク
図4 オンネット時代の業務モデル
経営支援
企画業務
EC
取引先
対取引先業務
中核業務
(業種依存)
金融市場
顧客対応業務
マーケット業務
基礎業務(人事・会計等)
単一企業→企業間連携→バーチャル・カンパニー
顧客
図5 ソリューション・フレームワーク
(開発環境、実行環境、運用環境、セキュリティ、プラットフォーム、ネットワーク)
情報インフラ・ソリューション
業種共通
業種別
(中核業務)
金融ソリューション
顧客対応業務ソリューション
対取引先業務ソリューション
製造ソリューション
業務間連携
イネーブリング
流通ソリューション
経営支援企画業務
ソリューション
航空ソリューション
基礎業務ソリューション
医療ソリューション
等
企業間連携イネーブリング
【業種共通ソリューション】
業種共通ソリューションは、業種・業態
に関わらず多くの企業で共通的に行われる
業務のためのソリューションである。
*顧客対応業務は、販売業務、サービス業
務など、顧客とのやりとりに関する業務
のことである。
*対取引先業務は、製造業における部品・
︵
コ
ン
サ
ル
テ
ー
シ
ョ
ン
/
シ
サス
ーテ
ビム
ス構
築
/
保
守
・
運
用
/
教
育
︶
ションと業種別業務ソリューション、ある
いは業種共通ソリューション間の連携を可
能にする。
企業間連携イネーブリングは複数の企業
にまたがった各種のソリューション間の連
携を可能にする。
図6にOnNet Solutionが目指すビジネ
ス・ソリューションの全体像を示す。
部材メーカー対応、小売業におけるメー
カーや卸対応など、一般的に仕入部門が
行う業務のことである。また、金融業の
場合は金融市場対応業務のことである。
*経営支援企画業務とは、経営判断の裏付
OnNet Solution体系を
具現化する
ユニシス・トータル・
ソリューション・シリーズ
けとなるデータなどを収集・加工し、経
日本ユニシスでは、ソリューション・フ
営者を支援する業務や企画・計画業務の
レームワークに基づいて、お客様のビジネ
意思決定を支援する業務のことである。
ス課題を解決するソリューション商品をユ
*基礎業務とは、会計業務や人事関連業務
ニシス・トータル・ソリューション・シリー
のような基本的な経営資源に関する業務
である。
ズとして順次、提供している。
ユニシス・トータル・ソリューション・シ
図5の「業務間連携イネーブリング」と
リーズは、オンネット時代の企業の業務活
「企業間連携イネーブリング」は、連携を実
動全体を支援するビジネス・ソリューショ
現する仕掛けである。業務間連携イネーブ
ンを業種・業務ごとに体系化したトータル・
リングは1つの企業内で業種共通ソリュー
ソリューションである。お客様のビジネス
図6 ビジネス・ソリューションの全体像
経営支援企画業務
ソリューション
・データ・ウェアハウス
・データマート
・ナレッジ・マネジメント
取引先
顧客対応業務
ソリューション
対取引先業務
ソリューション
業種別業務
ソリューション
・オープンEDI
・EDI
・Webインタフェース
・コールセンター
・仮想モール
・Webインタフェース
・SFA
顧客
金融市場
基礎業務ソリューション
連携基盤
・人事業務 ・会計業務
イントラネット
エクストラネット
モバイル
インターネット
課題解決や新たなビジネス開拓を業務プロ
計などの経営資源管理ソリューションなど
セスの視点から連携させたビジネス・ソリ
を、順次提供している。
ューションとして、素早く安全に実現する
ために、後述のソリューション・モデルの
Application、Service、Enablerなどを組
み合わせて提供する。
OnNet Solutionを
具現化する
ソリューション・モデル
業種別業務ソリューションでは、金融ビ
OnNet Solutionを具現化するソリュー
ッグバン対応の金融ソリューションを提供
ション・モデルは、図3 ( 41ページ ) のとお
している。流通、製造をはじめ、他業種向
りであり、主要な構成要素は、Application、
けのソリューション・シリーズの提供を予
Service、Technology Frameworkの3つ
定している。
である。
業種共通ソリューションでは、顧客対応
業務の強化を図る顧客関係管理のためのソ
リューション、インターネット技術を駆使
した対取引先業務や企業と消費者間の電子
商取引のためのソリューション、意思決定
支援や企画業務のために企業内情報の効果
的な活用を図るソリューション、人事・会
ビジネス・ソリューションの
核となる
「ソリューション・モデル
−Application」
−会計・人事
:System21会計情報/
人事情報システム
−連結会計 :DivaSystem
業種別ソリューションを実現する既存の
Applicationは、業務処理を実行するソ
アプリケーションは多数あるが、金融業界
フトウェアで、日本ユニシスが汎用的なパ
向けのアプリケーションから徐々に
ッケージとして提供するものと、お客様独
OnNet Solutionの狙いに沿った整備を図
自の仕様で開発するものとがある。また、
っている。
業種に対応したものと、業種共通的業務に
対応したものに分類できる。
Applicationは次のような特長を持って
いる。
*システム構築期間の短縮が可能
ビジネス・ソリューションの
構築と運営を支援する
「ソリューション・モデル−Service」
企業情報システムの構築と運営には個別
日本ユニシスの持つ豊富なノウハウを活
の業務知識や情報技術だけではなく、統合
用したパッケージ・アプリケーションの提供
的なシステム構築力と維持運営力が必須で
*変化への即応が可能
ある。Serviceでは、日本ユニシスの豊富
−アプリケーションの内部を部品組立型と
な経験と実績を集大成し、さらに最新ITを
して柔構造化を図る
−さまざまな変化に即応するために情報シ
ステム群の連動の容易化を図る
業種共通ソリューションを実現するため
のApplication商品例は次のとおり。
*顧客対応業務アプリケーション
−電子モール
:モールサーバ
−コールセンター :Tiny Call Center
−顧客関係管理
:Vantive
−電子認証
:VeriSign OnSite
*対取引先アプリケーション
−オープンEDI
:日立トレーディング
サーバ
−電子認証
:VeriSign OnSite
*経営支援企画業務アプリケーション
−売上データ多次元分析
:売上分析Pro
*基礎業務アプリケーション
−基幹業務向け統合パッケージ
−教育支援
活用して、インターネット時代に対応した
サービスの提供を目指している。
Serviceの特長は次のとおりである。
*ミッション・クリティカルなビジネス・ソ
リューションの実現(システム構築)を支援
*コンサルテーションから保守に至るま
で、システム・ライフ・サイクル全体をカ
バーするサービスを提供
*PCクライアントからNTサーバ、UNIX
サーバ、汎用機まで広範なシステムをカ
バーするサービスを提供
*豊富な実績と経験に基づく、LAN/WAN
を統合したトータル・ネットワークの設
計、構築、保守サービスを提供
*インターネット時代に要求される情報/
ネットワークを保証する統合的なセキュ
リティ・サービスを提供
図7にServiceを適用した情報システム
の構築プロセスを示す。Serviceのメニュ
:Oracle APPS
ーは日本ユニシス総合サービス体系
:Virtual Campus
「USEFUL/SV」に基づいて設定されてい
−ISO9000取得維持支援
:ISOLaw
る。また、サービスの方法論は日本ユニシ
スのシステム開発方法論である
図7 お客様の情報システム構築プロセス
T EA M m etho d
ビジネス・プロセス再設計/
情報システム化計画
ビジネス課題
IT要求
システム構築
要件定義
設計
開発
運用・保守
導入
解決策
パッケージ
アプリケーション
コンサルティング
サービス
アプリケーション開発
検証サービス
お客様の
情報システム
Enabler
力
技術
インフラ構築
Baseline
I T 製品群
保守サポート・サービス
運用管理サービス
システム構築サービス
教育センター
Oracle Solution Center
デスクトップ・サービス
Javaセンター
eNTEC
UNIXミッション・クリティカル・サポート・センター
eNT開発センター
EC/CALS実践ラボ
eNTサポート・センター
図8 Technology Framework
Application
Enabler
メリット
(斜線部分:
サービスとともに提供)
情報システムの
短期開発
品質向上
継続的使用
製品組合せ技術や
システム構築技術を
ソフトウェア製品化
部品化
Baseline
評価し、安心して使え
生産性などもよい
製品を精選
開発
運用管理
実行
セキュリティ
自社製および市販の多くのソフトウェア群
メリット
情報システム基盤
の早期構築と
安定性確保
OnNet Solutionの狙いである「柔軟かつ
TEAMmethodを採用している。
情報システム構築に関わる主なメニュー
容易なシステム間連携」と、「最適でトータ
は、コンサルテーション、システム構築
ルなビジネス・ソリューションの短期間で
(要求定義、設計、開発、導入)、運用、保
の構築」を実現するため、Technology
守、教育である。システム構築から維持運
Frameworkは、次のような目標に基づき
営まで、すべてのプロセスを日本ユニシス
設計された。
の定評ある技術力をベースに提供する。
①オープン環境で、アプリケーションに対
さらに、Serviceの一層の充実を図るた
めに次のようなサポート体制を整えてい
して信頼性の高い安定した基盤を提供
②最適なプラットフォーム( NTサーバ、
る。
UNIXサーバ、汎用機、クライアント)の
*コンサルティング
選択
③異種のミドルウェア・アーキテクチャが
−アドバンスト・コンサルティング・
混在する環境での情報システム間連携の
グループ
実現
*検証・アプリケーション開発
−eNT(エンタープライズNT)開発センター
④インターネット技術の活用と統合的なセ
キュリティの実現
−UNIX開発センター
−JAVAセンター
−eNTEC(エンタープライズNTテクノロ
ジーセンター)
−Oracle Solution Center
−EC/CALS実践ラボ
情報システム間の連携や構築を
支援するソフトウェア製品群
「Enabler」
Enablerは、情報システム間の連携や構
−BOCC(Back Office Competency Center)
築を支援するソフトウェア製品群である。
*システム運用・保守
これにより情報システム間連携の短期開
−UNIX/ミッション・クリティカル・サポー
発、情報システムの短期開発、さらに開発
トセンター
成果の継続的な使用が可能になる。
−eNTサポート・センター(計画中)
Enablerは、基盤ソフトウェア製品群と
−ヘルプデスク
アプリケーション群の隙間を埋める製品組
−保守拠点全国260カ所
み合わせ技術やシステム構築技術のうち、
*教育
標準化・共通化可能な部分を抽出し、最大
−マイクロソフト・ユニバーシティ
限にソフトウェア製品化を追求したもので
−オーソライズドJavaセンター
あり、Serviceとともに提供する。
−教育センター
E n a b l e r は、対象業務分野の特定と
Baselineプロダクトセットの使用を前提
オンネット時代の情報技術基盤
「ソリューション・モデル
−Technology Framework」
とし、ビジネス・ニーズが高い分野を優先
して開発・提供する。当面は情報システム
間連携と業種共通ソリューションを中心と
Technology Frameworkは、お客様の
し、中期的には業種別業務ソリューション
業務を実行するApplicationを支える情報
や複数情報システムにまたがるエンタープ
技術基盤であり、BaselineとEnablerで構
ライズ情報技術基盤に拡大する。さらに情
(図8)
報技術の変化・進化を吸収して、開発した
成されている。
アプリケーションの長期継続使用を可能に
するよう拡張していく。
Enablerの例としては以下の製品があ
る。
−FaSet FinancialとFaSet HR (提供済
み):Oracle Applicationsの短期導入を
実現
−ネットワーク・データ統合システム(提供
済み):異なるプラットフォームおよび
メディア間でのデータ連携を容易に構築
UNISYSメインフレーム上の既存情報
システムやデータと、電子メール、
図9 Baseline技術体系の概要
FAX、Webなどを容易に連携可能。
情報システム基盤の技術体系と
基盤ソフトウェア製品群
「Baseline」
エージェント
Baselineは、情報システム基盤の技術
体系と、それに基づいて自社製品および市
販(ISV)製品から精選した基盤ソフトウェ
セキュリティ
XML
Java
開
発
環
境
ビジネス
オブジェクト
運用
管理
環境
部品化
再利用
ア製品群である。Baselineプロダクトセ
ット(後述)の使用により、情報システム基
盤の早期構築と安定性の確保が可能にな
る。
図9は、Baselineの技術体系の概要を示
している。異種・複数のプラットフォーム
がネットワークで接続され、さらに外部ネ
ットワークと繋がっていることを前提とし
ている。①全体をカバーするセキュリティ
と②異種ミドルウェア・アーキテクチャを
またがる情報システム間連携を特に重視し
ている。
今後、重要になるソフトウェアの部品
化・再利用に留意し、XML、エージェント、
Java、ビジネス・オブジェクト、CORBA
そしてWindowsDNAを重点技術と位置付
けている。
*実行環境では、各プラットフォームや各
ミドルウェア・アーキテクチャの固有部
分と、それらを連携させる分散処理基盤、
実行環境
プラットフォーム
・エンタープライズ・サーバ/部門サーバ/クライアント
ネットワーク
CORBA
WindowsDNA
外
部
ネ
ッ
ト
ワ
ー
ク
XML=eXtensible Markup Language CORBA=Common Object Request Broker Architecture
WindowsDNA=Windows Distributed interNet Application architecture
アーキテクチャ連携、システム間の情報
交換を規定する。
*開発環境では、各プラットフォームや各
開発手法の固有部分と、それらを連携さ
せるライフサイクル管理と外部システム
とのインタフェース定義を規定する。
*運用管理環境では、各プラットフォーム
や各管理基盤の固有部分と、それらを連
携させる統合監視ビューと管理情報交換
を規定する。
*セキュリティは、各プラットフォーム固
有のユーザ認証と資源アクセス制御を前
提に、ネットワーク・セキュリティと分
散セキュリティ機能を重視している。
また、開発環境と実行環境に関連するソ
フトウェアの部品化・再利用については、
Enterprise JavaBeansやCOM+に加え
て、既存システムの取り込み(ラッピング)
や機能を分析・分解して部品化し、再利用
を可能にする機能分解も重視している。
基盤ソフトウェア製品群では、機能・品
質・生産性・ベンダの信頼性などを総合的に
評価して精選している。重点製品は、適用
分野ごとのBaselineプロダクトセットと
して、製品間の整合性を検証した組み合わ
せで提供していく。
以下のプロダクトセットを策定・整備中
である。
*開発環境:COBOL開発セット(ERwin、
SEWB+、COBOL85など)、Java開発
セット、ビジュアル・プログラミングセ
ット、Oracle開発セット、IntegratePlus
(計画中)、UREP
*実行環境:分散オブジェクト・システム
セット( SYSTEMν、Oracleデータベ
ースなど)、手続き型分散システムセッ
ト、Webアプリケーション・サーバセッ
ト、マイクロソフトセット、分析・計画・
シミュレーションセット、コラボレーシ
ョンセット、システム間連携セット
*運用管理環境:オープン運用セット
(DSAdminなど)
*セキュリティ:iSECURE
◇
日本ユニシスは、Solution Creatorsと
して、これからも情報技術基盤の一層充実
や高品質なサービス体制の確立を図りなが
ら、「OnNet Solution」コンセプトを具現
化するビジネス・ソリューション商品−ユ
ニシス・トータル・ソリューション・シリー
ズ−の整備・充実を進め、お客様のビジネ
ス課題の解決と新たなビジネスの創造をお
手伝いしてまいります。
*記載の会社名、商品名は各社の商標また
は登録商標です。
事例紹介
青山学院大学における
サイバーキャンパスへの
取り組み
サイバーキャンパスの求められる背景
すでに世界のインターネット人口が1億6,000万人を超
え、急速な情報技術の進展と併せて本格的なネットワー
ク社会の時代に突入している。特に、産業界では、グロ
ーバルな電子商取引の実現による国際競争力の実現に必
死であり、グループや業界の枠組みを超えた効率的な相
互連携をベースにした合理的なビジネス・モデルの実現
を推進している。このような産業界の熾烈な競争社会の
構図は、大学にとっても、もはや対岸の問題ではなくな
青山学院大学
経営学部 教授
日本ユニシス株式会社
新事業企画開発部 市場開発室
玉木 欽也氏
塚田 勝之
っている。
この社会構造の変化に対応した教育要請の実現に合わ
せ、各国政府では迅速に社会や経済の変化に対応し、学
青山学院大学AMLプロジェクト
青山学院大学では日本ユニシスと共同で青山学院大学
AML(Aoyama Media Lab.)プロジェクトとして、いち早く
新しい教育方法論の構築を中心としたプロジェクトを推
進している。これは、1997年度からスタートさせた経
営学部ACC(Aoyama Cyber Campus)プロジェクトでの実験
をベースにし、1998年度から99年度にかけて通産省(情
報処理振興事業協会)の「教育の情報化推進事業」の一環
として、青山学院大学(経営、理工、文学部)、青山学院
初等部の各教員・アシスタント約50名(700人日)、システ
ム・ベンダ4社(日本ユニシス、SAPジャパン、オフィッ
クス、大日本印刷)約50名(3,500人日)の規模の産学官共
同プロジェクトとして、実証実験と部分的に本番の授
業・演習を実施中である。
さらに次年度より他大学および企業との連携を意識し
た、実現化を踏まえたプロジェクト・スキームの構築に
入り、国内外の教育・研究機関へ向けて次世代のバーチ
ャル・キャンパスのモデル創りのための展開方策を示し
ていく予定である。また、新しい教育提供モデルとして、
企業とのバリュー・チェーンを編成し、知識をいかに有
効化(Bytes of Knowledge化)し、さらに構成化し、受講者
に最適化して提供していくかというテーマをもとにした
ビジネス・モデルの検討に入っている。
生の職業的、総合的なスキルを高め、また生涯学習の機
会を進めるよう求めている。
大学では、環境に対応した教育の内容、手法、提供方
AMLプロジェクトの体制
法の実現に関してその再評価と変革を含めた教育戦略の
AMLプロジェクトでは、主に「教育方法開発グループ」
再構築が求められている。一方、受講者側ではこのよう
と「新教育基盤開発グループ」の体制で推進している。ま
な環境変化により、より選択肢が増え、生涯学習機会の
た、米国スタンフォード大学で協調教育方法を提唱し実
拡大に合わせて、産業界と同様によりコスト・パフォー
践しているPBL(Project Based Learning)研究所との提携強
マンスの高さを要求するようになってきた。その結果、
化を進め、その方法論を一部に採り入れている。各
求められる大学側の教育環境の変化のためには情報技術
WP(ワーキング・パッケージ)は以下のとおりである。
の応用が重要な役割を持つという考え方が再認識される
*WP1 新製品開発プロジェクト協調型演習グループ
ようになってきた。
*WP2 グローバル・コンカレント・エンジニアリング
図1 AMLプロジェクトの組織体制
サイバービジネス
WP6
マルチメディア型一貫教育
協調型演習の教育方法
WP1
新製品開
発プロジ
ェクト
WP2
グロー
バル
CE
オフィック スタンフ
ォード
ス
大学
WP3
製販物
統合情
報シス
テム
WP4
グロー
バル
SCM
図2 AMLプロジェクトの目標
WP5
集合教
育型遠
隔授業
システ
ム
総合学習:
初等部の「調べ学習」
新しい教育方法
教材
(テキスト、デジタル教材、
データ教材)
教育情報基盤
システム
教育用ソフトウェア(機能開発)
大日本印刷
SAP ジャパン
実験環境(教育環境:教室、ネットワーク、サーバ・クライアント)
WP7 新教育基盤開発[日本ユニシス]
実証実験(新教育方法の有効性検証のための模擬授業・演習)
(CE)協調型演習グループ
*WP3 生販物統合化情報システム協調型演習グループ
ステム)、各種教育支援アプリケーション、各業務の利
*WP4 グローバル・サプライチェーン・マネジメント
用プロダクト(ERPソフトウェア、シミュレータ、プロ
ジェクト・マネジメント・ツール、開発ツール)の適用お
(SCM)協調型演習グループ
*WP5 集合教育型遠隔授業システムによる教育方法開
将来、上記のような教育システムの開発に合わせてそ
発グループ
*WP6 一貫教育におけるマルチメディア型総合学習グ
れらの教育を円滑に実現するための、教員サポート・セ
ンター、新教育教材開発センター、教材提供センターの
ループ
*WP7 新教育基盤開発グループ
よび開発を実施する。
(図1)
運用が望まれる。
上記目的実現のためには、個別の大学のみで一貫した
システムをつくりあげるのは不可能である。実現に当た
AMLプロジェクトの目標と課題
ってはグローバル・レベルで各大学、研究機関、企業に
AMLプロジェクトの主な目標は、社会や経済の環境変
て実施中の各機能と連携することが現実的である。主に
化に適応可能な教育方法を実現し、学生の総合的なスキ
教材の相互利用、教員サポート・センターなどの機能に
ルを高めることにある。特に個別の学問領域を伝統的な
関しては大学間でのネットワーク化を進め、改めて次期
講義形式のみで学ぶ弊害を排除し、社会・経済はプロセ
プロジェクトの実行に移す必要がある。来年度よりこの
ス連携しているという当然の前提に立つことにより、解
プロジェクト成果の公開を含めた議論の場をコンソーシ
決手法を導き出す。
アムとして立ち上げる準備をしている。
それらのプロセスに対応した連携・問題解決方法を学
また、開発した成果の展開に関しては、TLOなどの機
習するための手段として、バーチャルな企業環境を学内
関を通し展開を図るとともに、企業からの受託研究体制
に構築し、現実の業務および業務プロセスを体得可能な
の早急な準備も併せて必要となる。
教育環境を整備し、併せて複数の教育提供方法を連携さ
せた総合的な学習環境を構築することにある。
(図2)
それらを実現するための教育システムとして、主に教
育・教材DB、各種教育アプリケーション(各教育提供シ
主な実施内容(WP1∼WP4)
教育方法の研究開発と実証に関しては、単にインター
図3 全体概要イメージ図
他の
サイト
メディア・ラボ(バーチャル・カンパニー) 他の
知識
DB/
業務プロセス
サイト
業務
業務
業務
業務
業務
業務
コンテンツDBセンター
収集
機能
配信
機能
配信
ビジネ
スとの
連携
XML文書管理基盤
開発環境
他の
サイト
演習講習センター
受講支援
協調演習
システム
運営支援
公開ホームページ
プロジェクト シナリオ
管理システ 作成シス
ム
テム
イントラ
(学生サービス)
イントラ
(教員サービス)
他の教育提供システムとの連携
集合教育
他の
学内
サイト
WWWサーバ室
自習教育
教務システム
図4 新教育基盤機能全体図
講師/受講者
管理者
クライアント
サイバー
ビジネス
協調型演習
機能/
一貫教育
機能
サーバ
WEBブラウザ
シナリオ作成機能
ネットワーク会議
HTTP
HTTP
WEBサーバ
IIOP
CORBA
新教育基盤システム
協調型演習教育機能
教育共通機能
XML
今後の教育機能
集合教育、自己学習、...
教育管理機能
文書管理機能
ネットを利用した遠隔教育環境と教材を提供する仕組み
●対象業務
を提供するものではなく、提供方法・教員・教員支援・受
対象業務としては、製品開発プロセス、その製品開発
講側のレベル・受講者支援・教材・支援システム・ITが総合
に関連したコンカレント・エンジニアリング、生産・物
的に連携した環境において実施する。
流・販売の統合化、サプライチェーン・マネジメントに関
●教育対象モデル
係した業務プロセスを想定する。対象とする仮想製品は、
学生に馴染みやすいノート型PCをケーススタディとし
教育対象モデルとしては、基本的に製造業のバーチャ
て取り上げている。
ル環境とリアル環境との連携を伴うマネジメント・モデ
ル(玉木 欽也版)をベースとしたバーチャル空間を構築す
る。
(図3・図4)
図5 物理配置図
理工学部
7階研究室
7階ACC企画室
集合教育LAN
・講師端末
・各種サーバ
・協調演習端末
②集合教育
①協調型演習
企業
インターネット
8号館
6階ACCスタッフルーム
ACCLAN
初等部
・各種サーバ
全学LAN
6階ACCコンピュータルーム
初等部LAN
・端末群
総研ビル
③一貫教育
ACCLAN
801研究室
理科室
・一貫教育端末群
Stanford Unv
サーバ室
・サーバ群
Georgia Tec Unv
UCB Unv
802研究室
・協調演習端末
・協調演習端末
習の進行であり、仮想プロジェクトチームを編成させ
●教育提供形態
このサイバービジネス協調型演習の教育方法
て一貫した演習テーマの中でそれぞれの学生は異なっ
(WP1.2.3)では、3タイプの授業・演習の提供形態を組み
た業務担当者の役割を果たし、個々の領域を学ぶとと
合わせる。
もに総合的なテーマに関しても同時に学ぶ。
②「集合教育型(On Demand)」:ITを利用した授業形式で
①「協調グループ型(Collaboration)」:プロジェクト型の演
図6 AML WP1、WP2の授業内容とアプリケーション機能
教
育
内
容
で
あ
る
新
商
品
開
発
フ
ロ
ー
カスタマ情報分析
カスタマ情報加工
2.1部品選択
以降は
製・販・物
SCM
の領域
3.2.1施策手段
3.2.2施策実施
1.7.1製品コンセプトの説明
1.7.2意匠の説明
1.7.3事業計画の説明
1.7.4製品コンセプトの承認
1.7.5意匠の承認
1.7.6事業計画の承認
2.2製品レイアウト
2.1.1形状
2.1.2デザイン
2.1.3外観色
2.1.4表示装置
2.1.5プロセッサ
2.1.6メモリ容量
2.1.7ディスク装置
2.1.8CD-ROM
2.1.9フロッピー
2.1.10モデム
1.5.6メモリ容量
1.5.7ディスク装置
1.5.8CD-ROM
1.5.9フロッピー
1.5.10モデム
3.2MR施策実施
3.1.1計画策定
3.1.2MR対象選定
3.1.3MR施策案
3.1.4対象アクイジション
1.7企画デザインレビュー
1.6.6経営指標分析
1.6.7プロジェクト投資評価
1.6.8開発日程の決定
1.6.9プロジェクト投資案決定
1.5意匠設計
1.5.1形状
1.5.2デザイン
1.5.3外観色
1.5.4表示装置
1.5.5プロセッサ
製品評価
1.6事業計画
1.6.1目標売上高の設定
1.6.2目標利益の決定
1.6.3原価見積
1.6.4目標原価検討
1.6.5予算編成
1.4製品戦略策定
1.4.1ビジョン決め
1.4.2製品コンセプトの決定
新製品開発フロー
対象品はノート型PC
2.2.1CPU配置
2.2.2メモリ配置
2.2.3Disk配置
2.2.4CD配置
2.2.5FD配置
2.2.6モデム配置
2.2.7干渉チェック
2.2.8基本仕様
の決定
2.4生産設計
2.3詳細設計
2.3.1仕様理解
2.3.2図面作成
2.4.1金型設計
2.4.2部品製作
方法の検討
2.4.3デジタル・
モックアップ
2.4.4試作準備
2.4.5試作
2.4.6試作評価
2.5最終デザインレビュー
2.5.1製品仕様承認
2.5.2最終事業計画承認
2.5.3品質承認
2.5.4市場投入日程承認
基本詳細設計
支
援
A
P
DTP
API
API
API
各APをキックするAPIを持つ
ビデオ
会議
Stanford
Univ.
Layer
コマ
科目
授
業
内
容
詳
細
3D CAD
MR分析
2D CAD
PDM
(コンフィグレーション管理)図面/文書/部品表他
基
盤
S
W
教
育
コ
ー
ス
カスタマ情報収集
新製品企画
1.3.1ポジショニング
1.3.2セグメンテーション
1.3.34P決定
1.3.4ポーターモデル
1.3.5マーケット総量・シェア
1.3.6価格ゾーン
3.1MR施策計画
マーケティング・リサーチ(MR)
マーケット・リサーチ(WP1)
,
新製品企画(WP1)
,
市場調査
基本詳細設計(WP2)
に絞って記述
1.3市場分析
Net
Show
ビデオ会議
API
API
基盤システム(UNISYS)
授業
シナリオ
Net Show
DB
DBサーバ
1W
1W
2W
3W
4W
5W
6W
7W
市場の理解
商品構造の
理解
市場分析
製品戦略
策定
意匠設計
事業計画
企画デザイン
レビュー
部品選択
・形状
(筺体)
・デザイン
・外観色
・表示装置
・プロセッサ
・メモリ容量
・ディスク装置
・CD-ROM
・フロッピー
・モデム
各種File保持
(XML)
授業
記録
WEBサーバ
電子
教材
他
HIGH FIVE PBL(Problem,Project,Product,Process,People Based LearningTM)
現Stanfordは4サーバ
・競合の理解
・製品全容図の ・ポジショニング ・ビジョン決め
(シェア、価格、 理解
・セグメンテー ・製品コンセプ
トの決定
性能)
・各部位の理解 ション
・市場動向
・4P決定
・用語の理解
・トップからの ・機能の理解
・ポーターモデル
メッセージ
・製品技術動向 ・マーケット総量・
の理解
シェア
・商品開発プロ ・価格ゾーン
セスの理解
(上代)
(リードタイム)
SWは一般的に言われているものを記述
具体的にどのSWで実装かはこれ以降
・目標売上高の設定 ・製品コンセプ
・目標利益の決定 トの説明
・意匠の説明
・原価見積
・目標原価検討 ・事業計画の
説明
・予算編成
・経営指標分析 ・製品コンセプ
・プロジェクト投資評価 トの承認
・開発日程の決定 ・意匠の承認
・プロジェクト投資案 ・事業計画の
承認
決定
8W
9W
9W
10W
製品
詳細設計 生産設計/ 最終デザイン
レイアウト (図面作成) 試作
レビュー
・形状
(筺体)
・デザイン
・外観色
・表示装置
・プロセッサ
・メモリ容量
・ディスク装置
・CD-ROM
・フロッピー
・モデム
・仕様理解
・CPU配置
・図面作成
・メモリ配置
・Disk配置
・CD配置
・FD配置
・モデム配置
・干渉チェック
・基本仕様の
決定
部品表(案)
基本仕様書、
3DCADモデル
・金型設計
・部品製作方法
の検討
・デジタル
モックアップ
・試作準備
・試作
・試作評価
・製品仕様承認
・最終事業計画
承認
・品質承認
・市場投入日程
承認
MR1W
MR2W
MR
施策計画
MR
施策実施
・計画策定
・施策手段
・MR対象選定 (媒体確保、
・MR施策計画案 各種インフラ構
(時期、方法
築、分析手法)
予定リサーチ数)・施策実施
・アクイジション (媒体出稿、
レスポンス、
分析
プログラム
データ集計)
教
材
出
力
シェア等の
情報はgiven
製品企画書案
(仕様)
事業計画書
部品表、
試作品、
2DCADデータ デジタルモデル
試作評価レポート
MR施策計画書
(案)
製品評価レポート
講義を受ける形態とともに、遠隔授業、自宅での自習
さらに企業側アドバイザーと学生間でのプロジェクト進
形態までを含む。
行に関わるさまざまな連携とコミュニケーションをはじ
③「折衷型」:集合型で授業を受けることと、自習、小グ
ループでの協調型の演習を併用する。
●演習
受講者は、企業の各部門に従事しているそれぞれの業
務担当者として、新規の製品開発プロジェクトの計画に
めとする業務調整能力、プレゼンテーション技術などが
必要となる。
(図5)
*ケース1:新製品開発プロジェクト
協調型演習(WP1)
小グループを構成して参加し、サイバービジネス環境で
製造業における企業活動の中の新製品開発業務に焦点
経営業務・プロジェクト・マネジメント業務・各部門の業
を当て、前述の仮想企業を用いて、学生にこの新製品開
務を学ばせる。これら演習では、学生間、教員と学生間、
発プロジェクトに参加させる。実践的企画・開発環境を
提供することにより、製品の企画からマーケティング・
議」「電子質問箱」「質問等管理」「双方向TV会議」「プロジ
リサーチ、事業計画に至る一連のビジネス・プロセスを
ェクト管理」などの情報技術を利用する。
授業は9つのテーマを基本として構成する。
体験させる。この演習では、新製品開発におけるプロセ
スの基本的な理解から、製品企画・事業計画立案に至る
①市場の理解
実践的な演習を通して、総合的な見地からの基礎および
②商品構造の理解
応用知識を学生に体得させるカリキュラムを提供し、求
③市場分析
められる教育効果・学習効果の測定を実施している。
④製品戦略
この演習に当たっては、各受講者の連携を効果的に図
⑤意匠設計
るために「新製品開発に関わる各種データベース」「各種
⑥事業計画
マルチメディア教材」「業務シミュレーション」「各種イン
⑦マーケティング・リサーチ施策計画
タラクティブ教材」「掲示板」「画像配信」「ネットワーク会
⑧マーケティング・リサーチ施策実施
(図6)
図7 AMLプロジェクト WP1、WP2のカリキュラムフロー
マーケティング・リサーチ
市場調査
カスタマ情報収集
カスタマ情報分析
カスタマ情報加工
営業評価
マーケティング マーケティング
リサーチ
リサーチ
施策計画 施策実施
新製品開発
教
育
内
容
で
あ
る
新
商
品
開
発
フ
ロ
ー
MR施策
製品評価
計画書(案) レポート
マーケット・リサーチ(WP1)
、
新製品企画(WP1)
、
基本詳細設計(WP2)
、
に絞って記述
市場
分析
新商品開発フロー
対象品はノート型PC
製品戦略
策定
DTP
企画
デザイン
レビュー
事業
計画
事業計画書
試作品
意匠
設計
製品企画書
(仕様)
支
援
A
P
以降は
ERP
SCM
の領域
部品
選択
基本詳細設計
3D
製品
詳細
設計
レイアウト
部品表
(案) 基本仕様書
MR分析
3D CAD
PDM
(コンフィグレーション管理)図面/文書/部品表他
最終
デザイン
レビュー
生産
設計
部品表
部品表
試作評価
レポート
2D CAD
SWは一般的に言われているものを記述
具体的にどのSWで実装かはこれ以降
担当する生産部門との連携、特に製品企画と設計部門は
*ケース2:グローバル・コンカレント・
エンジニアリング協調型演習(WP2)
重要である。
本実証実験ではスタンフォード大学、UCバークレー、
製造企業において効果的な製品設計プロセスを実施す
ジョージア工科大学との共同演習を実施し、特に新製品
ることは競争力向上の基本となる。中でもコンカレン
開発プロジェクト業務との情報共有やコラボレーション
ト・エンジニアリングの起点となる「開発期間の短縮」「品
環境で進めていくことを重要視する。学生各人がマルチ
質向上」は重要である。したがって、その目標を達成す
メディア教材・インタラクティブ教材を利用しながら、
るには設計部門だけの努力では不足であり、他部門との
サイバー環境上に構築された仮想企業の中で、製品設計
迅速かつ効果的な連携が要求される。特にグローバルな
業務を擬似的に体験することが前提となる。
市場からの部品調達を担う購買部門、実際にモノ作りを
その結果、講師側から要求される業務達成の目安とな
る成果物を、学生が能動的に作成することができるよう
にする。学生は仮想企業の一員として割り当てられた業
務を短期間に学習できるようになる。
*ケース3:グローバル・サプライチェーン・
マネジメント(SCM)協調型演習
これらは、新製品開発、生産工程の効率化を実施する
この演習では、前述の仮想企業の中でのPCの新製品
上で、現実的に企業内で起こり得る情況を仮想現実とし
計画をケーススタディの対象としている。テーマとして
て提示することにより、広範な視点から的確に問題点を
はグローバルSCMのビジネス・モデルを学習するもの
抽出し、解決できる人間を育成するための効果的な方法
で、演習を通して、ITを手段として的確に活用しながら
を検証するものである。
全社的なSCM戦略を立案できるビジネス・リーダーを養
(図7・図8)
成することが目的となる。
授業・演習内容としては次の3つが中心となる。この
演習においても前述のコラボレーション・システムを利
図8 画面イメージ(From Documents to Workspaces−Shared Project Web Workspace)
図9 WP4のイメージ
パソコン
部品表
モニター
キーボード
本体
マウス
インフォメーションフロー
部品在庫
仕入先
製品在庫
製造
キャッシュフロー
サプライチェーンの最適化
流通在庫
物流
顧客
用し、さらに仮想企業のベースとしてSAP R/3とSCMシ
プロジェクトの次期展開について
ミュレータを活用する。
このプロジェクトは2000年1月に実験を完了するが、
①新製品開発段階における部品調達戦略
・PC製品の部品構成表に含まれるキーコンポーネント
それ以降、本格展開のためのプロジェクトとして新しい
ごとの部品特性の問題分析
体制での研究を含め、継続を予定している。プロジェク
・新製品開発段階におけるPC製品の部品構成表の改良
トとしての主要なテーマは下記のとおりである。
案策定
①AOYAMAメディア・ラボ
企業業務のビジネス・プロセスおよびライフサイクル
②SCMの視点からみた販売管理業務プロセス
・販売管理業務プロセスのモデル化
に沿った業務機能(システム)を配置する。
・SCM思考販売業務プロセスのモデル化
システムとしては主に各プロダクト(SAP R/3システ
③SCMの視点からみた生販物
ム、プロジェクト・マネジメント・ツール、シミュレータ
・キーコンポーネントの最適化、地域、最適サプライヤ
などの企業の中の業務機能)を配置する。本ラボは新教
ーの選定シミュレーション
育システムの中核となるもので、将来は他の大学、企業
(図9)
図10 メディア・ラボのイメージ
教育内容
(マーケット・リサーチ、
新製品企画等)
支援AP
メディア・ラボ(バーチャル・カンパニー)
マーケティング・プロジェクト
市
分場
析調
査
・
商
品
企
画
流通プロジェクト
エコ・プロジェクト
物流
商
宣品
伝化
・
受販
注売
・
出庫
請
求
納品
入
金
保
守
廃
棄
生産プロジェクト
研
究
仮想市場
設
計
調
達
仮想メーカ・製品・部品
共通基盤
製
造
在
庫
ビジネスのライフサイクル・チェーンをベース
にした各ラボ機能による教材開発
仮想配送業者・ルート
……
ERP(SAP)
ナレッジ・教材DB
シミュレータ
との機能連携によるバーチャル・カンパニーを構成する
(販売)センターとして、ECに必要な各機能を装備させた
構想である。
上で、共同事業展開される。また、並行して知識DBお
また各業務機能は個々の研究所機能を果たし、次世代
の研究ラボとなりうる。
よび知識マネジメントの機能も整備される。
(図11)
(図10)
③総合演習センター
②教育教材データベース・センター
①の演習を実施する。本センターでは、プロジェク
教材を一元的に管理する。主にXML文書管理機能を中
ト・マネジメント機能をはじめとする教員側支援機能と
核にし、機能としては教材を配信・収集する機能を持つ。
協調演習システムをはじめとする受講者側機能が配置さ
DBへのアクセスやダウンロードの際に認証を行う。
れ、本センター以外(海外も含む)と連携した教育環境を
また教材を作成する際のツールの提供もここで行う。
提供する。(図12)
本センターは将来企業との連携によるコンテンツ提供
図11 Electronic Education Commerce : EECTM(Dr. Fruchter's TM under registration)概要図
Introduction
-Nihon Unisys
-Why I am Here
Business Structure for EEC
Internet
Commerce
-Trends
-Needs and
Issues
IC businesses
-Trials
-Business
-Approach
Bytes of
Knowledge
Store
Producer Tools
Content
Knowledge Producers
Outsourcing
Services
-Horizontal
-Vertical
Electronic
Education
Commerce
Education Portal
TM
Clearinghouse of
Knowledge Bytes
-Knowledge
delivery
-Business
Structure
Clearing
House service
for Public
Works
-Background
and plan
-Overview
-Business
Structute
Conclusion
-CIFE to me
and Nihon
Unisys
Global Knowledge Portal
Consumer
Tools
Global People Portal
Learning Aggregator
Dynamic Broker(ing)
Learners
Knowledge Consumers
From Dr.Fruchter's presentation June 1999
図12 Going NationWide
David Murray
Apprentice
Stanford
Kristy Kinsel
Apprentice
Stanford
Team
Pacific
Sergio Moya
Construction
Manager
Stanford
Keith Solomon
Architect
Georgia Tech
Andrew Sparks, Structural Engineer Cal Poly
Fly UP