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クリーンルームに おける湿度計測

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クリーンルームに おける湿度計測
これは、VaisalaNews180/2009英語版で紹介された記事の翻訳です。
Daisuke Fujisawa / Regional Market Manager / Vaisala / Tokyo, Japan
クリーンルームに
おける湿度計測
クリーンルームが使用されて
いる産業は製薬、半導体関
連など多岐にわたり、湿度、
温度、気圧(差圧)、パーテ
ィクルの管理がその品質お
上昇とともに大きくなります、
ヒータ等で部
屋の温度が上がると乾いたように感じる
のは分母の部分の飽和水蒸気圧があがっ
たのに、空気中の水蒸気圧がそのままであ
るためです。
このように湿度は人間の体感
に大きく影響を与えます、生産現場では、
物質の伸縮、硬化・軟化、液体の粘性の変
化、微生物の発生、静電気の増加、腐食や
錆などの問題に影響を及ぼします。
よび生産性に大きな影響を
露点とは
与えています。
露点とは、気体中に含まれる水蒸気が冷
やされて凝縮し始める温度です。
この状態
では凝縮と蒸発が平衡で、同時に起きて
います。露点は非常に少ない水分量をあ
らわすのに適したパラメータです。水分量
が少なくなると相対湿度で表す際に非常
に小さな値まで計測しなければならなくな
り、センサの精度上、正確に計測できなく
なります。
しかし露点を使用すると低露点
の計測は、精度よく表すことが出来、半導
体などの微細加工が必要な場合、水分子
が不純物としてみなされるような環境で活
躍するパラメータです。
クリーンルームの湿度管理において目的
用途に応じて最適な計測器を選ぶことは、
湿度計測器導入の際に非常に重要です。
また、定期的にトレーサブルな校正を行う
ことも忘れてはならない重要項目です。
で
は、その湿度センサとはどういうものなの
かについて説明します。
相対湿度とは
まず、相対湿度と露点温度について、簡単
に定義とその影響を説明します。本文内
では、相対湿度(%RH)
を湿度、露点温度
(℃Td)
を露点と記述しています。湿度と
はある雰囲気の水蒸気圧を同圧同温の飽
和水蒸気圧と比較したときの相対的な水
蒸気量を示します。
相対湿度(%RH)= 雰囲気の水蒸気圧
(Pa)/飽和水蒸気圧(Pa)×100
つまり、湿度100 %とはその雰囲気の
水蒸気圧が飽和水蒸気圧と等しい状態で
あり、それ以上の水蒸気は気体中には溶
けない状態ということになります。飽和水
蒸気圧は温度にのみ依存する値で温度の
12 180/2009
各産業のクリーンルームにお
ける湿度コントロールの現状
製薬工場は大小からなる数多くのクリー
ンルームを工場内に持っている場合が多
くあります、それぞれの部屋での温湿度の
管理、記録がGMP(Good manufacturing
practice)規制等により厳しく指定されてお
り、
コントロールだけでなく、モニタリング、
記録も必要となります。数多くのクリーンル
ームがある場合、湿度センサを各クリーン
ルーム内に設置するためバラつきが少な
いことが求められます。
また、長期間にわた
る品質管理が求められるので、長期にわた
ってセンサがずれないことも大切な事柄と
なってきます。長期にわたってセンサがず
れない事を確認するために校正がきっち
り出来ることも、大事な項目として挙げら
れます。
スペック上の精度のみではなく、製
薬業界で実績のある信頼できる湿度セン
サを使用することが大切となってきます。
食品工場では、一般的には製造現場
をある湿度以下に押さえることが必要とな
り、その中でも40 %以下などが多いと思
われます。その理由としては、食中毒の原
因となる菌の発生を抑えることが一番の
理由のようです。
半導体、エレクトロニクス製品工場に
おいては、製品の世代がどんどん交代して
いくにしたがい、製造工程での湿度及び露
点コントロールは非常に厳しくなってきて
います。局所清浄環境(ミニエンバイロメン
ト)内においては、精度+/-1 %RH程度の
最高度のコントロールを求める場合がし
ばしば見受けれます。
液晶工場、ペイント工場等でも、湿度
の管理は重要となってきます。
これらの工
場では様々なガスが充満しており、センサ
素子へ影響を与える可能性があるので、
精度以外にも、湿度センサの耐久性がとて
も重要な項目となります。
湿度/露点センサ
ここで、湿度センサを計測原理別に紹介し
ます。湿度センサは空気中の水分量をは
かるものですが、一般には湿度で測定する
ものと露点で測定するものに大きく2つに
分かれます。一般環境の湿度レベルの雰
囲気(10 %RH以上)
では、
よく湿度が利用
され、それ以下の低湿(低露点とよく表現
される)下では、露点での表示が一般的に
これは、VaisalaNews180/2009英語版で紹介された記事の翻訳です。
は利用されます。
ただし、場合によっては高
湿の雰囲気でも露点を使用したほうが都
合の良い場合もあります。
一般的な湿度・露点センサ原理の
紹介
一般的には下記の原理が
湿度・露点センサの原理と
して広く知られています。
1. 乾湿球湿度計
2. 伸縮式湿度計
3. 塩化リチウム式露点計
4. 電子式湿度計/抵抗式湿度計、
5. 電子式湿度計/静電容量式湿度計(露点計)
6. 鏡面式露点計
1-6とも一般環境の湿度レベルの計測は
可能ですが、低露点の計測に使用される
のは5,6の方式のみです。下記に、それぞ
れの計測原理を簡単に説明します。
1. 乾湿球湿度計とは、水の蒸発がそれに
接している空気の相対湿度に依存する
性質を利用した湿度計です。温度計の
感温部にガーゼを巻きつけ、それをき
れいな水につけておくと、相対湿度によ
って水の蒸発量が異なります。水は蒸
発する際に気化熱をうばい、温度を下
げます。その下がった温度とその横にあ
る温度計との差を測り、それを公式で
雰囲気の水蒸気圧を求める方法または
表により湿度が得られるものです。研究
室、恒温恒湿試験槽などでよく使用され
る方法です。
2. 伸縮式湿度計とは、毛髪などが湿度の
変化によって伸縮する性質を利用して、
湿度を計測、記録するものです。温度に
よる伸縮の影響が割合に小さく、昔から
よく使われていますが、使っているうち
に伸縮が戻らなくなったり、毛髪部分に
汚れが付着したりするので、精度はあま
りよくありません。
3. 塩化リチウム式露点計とは、塩化リチウ
ムの吸水性を利用して露点を計測する
ものです。吸水性の材料の芯に1対の絶
縁された加熱用不活性電熱線を渦巻状
に平衡に巻き、芯に塩化リチウム水溶液
を塗布しておきます。水分が十分にある
ときはイオンによって交流電流が流れ、
抵抗による発熱で温度が上昇します。温
度があがると水分が蒸発し、それに伴い
塩化リチウムが結晶化し、電流がほとん
ど流れなくなります。電流が流れない状
態では、温度が下がり、塩化リチウムが
再び空気中の水分を吸湿し始めます。
こ
のように加熱と冷却の平衡状態を作り出
して、その際の温度を計測します。
その
温度が露点に比例の関係があります。低
湿環境の測定には制限があります。
4. 抵抗式湿度計とは、電極間に水蒸気を
吸脱着する素材を用い、その電気抵抗
が水蒸気の吸脱着によって変化する事
を利用したセンサです。雰囲気の水蒸
気量に応じて高分子材料の水分含有率
が変わり、その量に応じて電気抵抗が
変化する現象を湿度へ換算するもので
す。大量生産に適しているセンサで、家
電や民生用で最も使われているセンサ
です。
ただし、低湿環境、高湿環境でうま
く測れない場合があります。
5. 静電容量式湿度計とは、上部、下部電極
構造から成る電極間に水蒸気を吸脱着
する素材を入れておき、乾湿素子の静
電容量が水蒸気の吸脱着により変化す
る事を利用したセンサです。実用上十
分な精度を出しやすく、産業用として、
最も使用されているセンサです。
ヴァイ
サラが製造するHUMICAPアール湿度
センサーはこの原理で計測しています。
6. 鏡面式露点計とは、水蒸気を含む空気
を冷やしていくと露点温度にて結露が
発生することを利用したセンサです。鏡
面を冷却していくと、結露が発生し、そ
の際に光電素子の光が鏡面にて拡散
されます。鏡面温度を水分子の結露と
拡散が同時に起こる平衡状態にコント
ロールし、その際の温度を露点として
計測します。研究機関等でよく使われ
ています。
おそらく、みなさんがクリーンルームで
目にする機会が多いのは、抵抗式湿度計、
静電容量式湿度計(露点計)、鏡面式露点
計の3つではないかと思われます。湿度・
露点センサを選定するにあたっては、
カタ
ログ上のスペック、値段だけではなく、
アプ
リケーション実績、そのメーカの湿度・露
点計測へのノウハウ、サービス体制まで考
えた上で選定することが、後々のトータル
コストを抑えるために必要です。。
定期的なトレーサブルな校正の必要
性について
定期的なトレーサブルな
校正の重要性について
計測機器から得られるデータが信頼でき
る正確なものであることを常に確認する必
要があります。
したがって、定期的な機器
の校正は不可欠です。標準的な校正のイ
ンターバルを表1に示します。
Vaisalaのクリーンルームでは、湿度、気
圧、CO2計測機器やラジオゾンデのセンサ
を生産しています。
表2には、現場に設置されている温湿
度計に関するトレーサビリティ体系を示
します。国際的な取り決めにより、全ての
計測は国際単位系(SI)
を基準としていま
す。
これにより同じ単位を使用しているこ
と、世界各地で様々な装置を使用して行
われた測定に互換性があることが保証さ
れます。
各国の国家計量標準は、
トレーサビリ
ティの管理および展開と、高精度の校正の
実施に対する責任を負います。国家計量
標準機関の校正サービスは、ある限られた
認定校正機関の特定二次標準器のみの校
正に限定される場合があります。
それに対し、民間の校正サービスでは
低位の標準器と計測機器の校正を行いま
す。
このような例として、自社製品に対する
校正サービスを提供するメーカーサービ
ス部門や、あらゆる計測機器に対する校
正サービスを提供する校正試験所などが
あります。校正サービス業者の大多数は非
認定機関であり、計測機器メーカーの校
正サービスや民間の校正サービス機関の
ほとんどがこれに該当します。非認定であ
るため、提供されるサービスのレベルは実
証されていません。依頼する前に、サービ
スのレベルにチェックし確認する必要が
あります。
180/2009 13
これは、VaisalaNews180/2009英語版で紹介された記事の翻訳です。
各校正サービス業者は、有効なトレー
サビリティ体系を維持しなければなりませ
ん。少なくとも、外部校正機関において社
内の一次標準器の校正を行ってから、校
正に使用する必要があります。一部の民間
校正サービスには、別途要求しない限り、
校正に不確かさの評価が含まれていませ
ん。
また、不確かさを算出できない校正サ
ービスもあります。
この不確かさも校正証明書には記載
されていることがのぞましいです。
社内の校正システムを保持することが
実用に適している場合もあります。例えば、
計測機器の搬送が難しい場合(現場での
校正)や、校正対象機器の数が多い場合な
どが挙げられます。社内校正システムを構
築するには、適切な組織を設立する必要
があります。組織を構成するのは、たった
一人の要員でも、管理および校正スタッフ
のそろった部署全体でもかまいません。
現地での校正よりも校正機関での校
正が推奨されます。校正事業者では、環境
の影響を最小限に抑えることができ、校正
に影響を与える多くの因子を大幅に低減
することができます。
一方、現地での校正は、計測機器をプ
ロセスまたは作業場所から移動することな
く簡単迅速にチェックできる方法です。現
地校正では、参照標準として実用標準器
が必要です。
この実用標準器には、ポータ
ブルのものや、装置の校正のために工程
内に取り付けられた機器などがあります。
実用標準器は、上位の校正機関で校正さ
れたものです。
ヴァイサラ社では、圧力、温度、露点、
および湿度計測の校正事業における審査
登録機関より認定を受けた校正サービス
部門があります。
このサービスは地域のサ
ービスセンターから利用することができ、
既に購入された計測器にも新たに購入す
る際にも利用できます。
www.vaisala.com/calibrationbook
にアクセスすると、Vaisala Calibration
Book(ヴァイサラ校正ブック
(英語))
を無
料で注文できます。
このテキストには、校正
について知っておくべき全ての有用な情
報が記載されています。
Further information:
www.vaisala.com/humidity
www.vaisala.com/dewpoint
References:
Arun S. Mujumdar; Handbook of
Industrial Drying (2006)
Vaisala Calibration Book (2007)
14 180/2009
表1 計測機器の標準的な校正インターバル
月数
測定機器
6
9
12
24
36
機械式圧力計
精密気圧計
気圧計
ガラス製温度計
抵抗式温度センサと熱電対/温度計
露点計
湿度計
能動電気計器
受動電気計器
測長器
電気表示付き測長器
適切な校正インターバル
表2 現場に設置されている湿度および温度測定器に関するトレーサビリティ体系
国際レベル
国家計量標準機関
社内試験所
SI単位 圧力
SI単位 温度
国家標準
国家標準
一次標準器
一次標準器
一次湿度発生装置
実用標準器
お客様
実用標準器
湿度および温度計器の校正
60
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