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この人、 この研究 久保 朋恵さん5年生(左)、牧 寛子さん6年生(中央)、竹田 瑞季さん5年生(右) 「武藤先生はいつも何かと私たちを楽しませてくれます。それは、先生が学生との隔たりを なくそうとしているからだと思います。そのため、学生と先生のコミュニケーションはか なり良好です。私たちが企画するいろいろなイベントにも積極的に参加してくれています。 」 久保さんはリンパ球の反応の研究、牧さんはスーパー肝細胞の研究、竹田さんは細胞遊 走活性の研究をしています。 自分で道を切 り開 同じ薬でも効く人・効かない人 がいるのはなぜ? 武藤准教授の主な研究テーマはもう 一つある。それは 「薬効発現の個体差 に影響をおよぼす遺伝的因子の解析」 だ。薬の“効く・効かない”には個人差が あり、たとえば関節リウマチの治療に 最もよく使われているメトトレキサー トという薬は、 約3割の人にはあまり効 ●薬学部医療薬学教育センター 病態解析学研究室 かないそうだ。このような個人差の原 武藤 里志 准教授 因の一つとして、遺伝的要因が疑われ 薬に関する検査もできる そういう薬剤師を育てたい でいる時間が長ければ長いほど薬が効 東 け! 「求めよ、さ らば与えられ ん。 尋ねよ、さら ば見出さん。 門を叩け、さ らば開かれん 」 という言葉を 聞いたことが ありますか? 元々は新約聖 書「マタイ伝 」からの言葉 で す が、 私 は 宗 教とは関係な し に、 「自ら積 極的に行動を 起こせば、必 ず道は開ける 」 という意味で 、学生にエー ルを送るとき に 使っています 。また、未来 を担う若者た ち には、既成概 念に 捉 われ る ことなく、自 由 な 発 想 で、 自 らの意思で歩 んでほしいと 思っています 。 未来を拓く のは君たちで す! るのだが、具体的にどんな遺伝子が関 与しているのかを探る研究もしている。 「たとえば、薬を飲むと体内のリンパ 球にも薬が取り込まれます。取り込ん いていると考えられますが、効かない 人ではリンパ球が薬を取り込んでも、 すぐに薬を排泄してしまうのかもしれ ません。そこにどんな遺伝子が関与し ているのかを、さまざまな方法で調べ 邦大学薬学部の教育の基本は 検査の精度をもっと上げるとともに、 胞の性質と正常な肝臓の細胞が持つ薬 ています。」 「医療人としての薬剤師」を育 薬剤師が手軽に実施できるように、検 物代謝能力を併せ持った細胞 「スーパ 武藤准教授の話によると、この研究 てることである。医療人の一員として、 査方法をもっと簡便化する必要があり ー肝細胞」 を作りだそうというものだ。 が進めば、将来は薬剤師がまず患者さ 医療スタッフや患者に対しどのような ますね。 」 「まだ研究の段階で、 『 スーパー肝細 んの遺伝子のタイプを把握してから最 アプローチができるのか。現在のよう 武藤准教授の研究テーマの一つは 胞』は納得のいくでき上がりではあり 適な薬剤を医師に提案することができ に 「チーム医療」が求められる時代では、 「薬物アレルギーの簡便で信頼性の高 ません。フランスではすでに他の肝細 るようになるという。 薬剤師の役割も大きくなってきている。 いinvitro検査法の開発」 である。現在 胞で成功していますが、まだ薬物アレ 「これらの研究は、研究室設立当初に そこで、これから求められる人材であ 一般に行われている検査法は、患者さ ルギーの検査に気軽に使えるような状 当時の大学院生が中心となって、付属 の免疫関係の研究や、 「自己血清点眼液 看護師などの医療スタッフや患者さん る 「医療人としての薬剤師」に必要な技 んの血液からリンパ球を採取し、対象 況にはありません。現在、他の研究室 病院の医師・薬剤師との共同研究とし の生物学的品質評価」 「細胞遊走の簡便 と日々接する中で、医療人としてのコ 術、研究を重ねる武藤里志准教授に話 となる薬物を加えてリンパ球の反応を と共同でこの研究を進めていますので、 てスタートしたものです。私たちの研 な測定法の開発」などの生物学的活性 ミュニケーションの重要性と面白さも をうかがった。 見る、リンパ球刺激試験 (DLST)という 近い将来、 私たちのところでも『スーパ 究室では、医療現場と連携をとりなが 測定法の研究も手がけている。 感じたという。 「知識を持っていても、 方法だ。しかし、この方法では体の中 ー肝細胞』が完成するのではないかと ら、病態の把握と薬物治療の適正化に 薬物アレルギーの検査にも薬剤 師が責任を持つ 栃木県出身。千葉大学卒業。薬学博士。日本ファーマシューティカルコミュニケーション学 会 (理事) 、日本薬学会、日本医療薬学会、日本社会薬学会、日本アレルギー学会、日本炎症・再生医 療学会などに所属。2007 年から東邦大学薬学部薬学科准教授。 共同研究として、 「間葉系幹細胞の持つ が人になったとのこと。そのきっかけ 免疫抑制活性の評価法の確立」 「鳥飼病 は、今から 12 年ほど前の臨床研修の (鳥アレルギー)の検査法の開発」など 経験だったそうだが、同時に、医師・ より良い医療人となるためには コミュニケーション能力も必要 それを相手にちゃんと届けることがで で代謝された薬物がアレルギーの原因 期待しています。そして、薬物アレル 有効な検査手法の開発を行い、臨床へ になっていた場合には検出することが ギーの簡便で信頼性の高い検査法が確 の応用をめざすことを目標としていま 「これまで、薬物アレルギーの検査は できない。そこで、この検査法に薬物 立すれば、正確な検査データが多く集 す。そして学生には、卒業後は現場で ところで、武藤准教授の研究対象は 学生とともに続け、学生実習ではコミ 医師が行う場合がほとんどでした。し 代謝産物も加えることで、検出率の向 まることになり、将来的には薬物アレ 自ら率先して最適な薬物治療を医師に 年代とともに大きくなっているそうだ。 ュニケーション能力を養うための教育 かし、これからは薬物アレルギーの検 上を図ろうというのだ。そして、 薬物代 ルギーを起こしやすい人のタイプ分け 提案できるような薬剤師になってもら 学生の頃の対象は小さな微生物だった に力を注ぐなど、未来の薬剤師を育て 査にも薬剤師が積極的に関わっていく 謝産物を容易に得る方法として考えた やアレルギーを予測することも可能に いたいと思っています。」 そうだが、その後マウス、モルモット ることに生きがいを感じながら日々学 べきだと考えています。そのためには、 のが、いつまでも増殖を続けるがん細 なるかもしれません。 」 このほかにも他施設や医療現場との と徐々に大きくなり、今ではその対象 生と接しているという。 10 TOHONOW 2012.July きなければ何にもなりませんからね。 」 現在は、研究室内では上記の実験を July.2012 TOHONOW 11