...

本編 (PDF形式, 12.52MB)

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

本編 (PDF形式, 12.52MB)
はじめに
昨年、本市において生物多様性条約第 10 回締約国会議(COP10)が開催され
ました。人間社会は生態系の恵みによって支えられており、持続可能な社会とする
ためには、人と生物が調和を保ちながら共に生きていくための工夫が必要です。
本市では、COP10 での議論を踏まえ、市民の皆さまと一緒になって名古屋が
「緑と水の豊かな自然共生都市」となるよう行動していきたいと思っています。
「なごや緑の基本計画 2020」は、この行動の土台として策定したものであり、
名古屋に残された貴重な緑を守りながら、一方で市街地を緑化し、人や生物が暮ら
しやすい都市環境をつくることを目的とした 10 年間の計画です。
昨今、ヒートアイランド現象という言葉が市民の皆さまの目に触れる機会も増え
てきていることと思います。大都市で問題となっているヒートアイランド現象の
緩和には、緑が有効な役割を果たしていると言われています。都市の緑は快適で
過ごしやすく、様々な生物が暮らせる環境を生み出すとともに、美しい都市景観を
つくり出します。さらに、都市で生活する人々の心に安らぎや豊かさを与えるなど
の効能もあり、都市の緑は様々な面で重要な役割を果たしています。
市内には原生林のような手つかずの自然はありませんが、市民の皆さまに守られ
育まれてきた雑木林などの緑が残されています。本市ではこうした緑を拠点とし、
今後、市街地に新たにつくりだす緑と水の回廊でつないで「なごやの緑」を創造し、
市民の皆さまが快適に生活できるまちづくりを進めていきます。
市民の皆さまと一緒に「なごやの緑」を守り育てていきたいと思っておりますの
で、皆さまのご理解とご協力をお願いいたします。
平成 23 年 3 月
名古屋市長
河
村
た か し
目
第1章
次
なごや 緑の基本計画 2020
------------------- 1
(1)緑の基本計画とは何か -----------------------------------------1
(2)これまでの緑の計画 -------------------------------------------2
(3)緑の基本計画の位置づけ ---------------------------------------5
(4)2020 年を目標として -------------------------------------------7
(5)計画の全体構成 -----------------------------------------------8
(6)対象とする緑 -------------------------------------------------9
第2章
なごやの緑を知る ---------------------------- 15
1.緑の施策のあゆみ -------------------------------------------------15
(1)緑の骨格の形成
~戦前~ -------------------------------------15
(2)市街地の復興と緑の育成
~戦後~ -----------------------------18
(3)ゆとりとうるおいのあるまちへ
~近年の取り組み~ -------------19
(4)21 世紀の緑のまちづくり ---------------------------------------20
2.緑の現況 ---------------------------------------------------------21
(1)3つの地形と結びついた緑の地域特性 ---------------------------21
(2)緑被地の分布状況 ---------------------------------------------23
(3)緑の質の変化 -------------------------------------------------28
3.緑を育む取り組み -------------------------------------------------35
(1)市民による緑のまちづくり -------------------------------------35
(2)緑の保全・創出の取り組み -------------------------------------37
(3)公園緑地の取り組み -------------------------------------------42
(4)緑に関する市民意識 -------------------------------------------45
第3章
緑のまちづくりの将来を描く ------------------ 49
1.緑を取り巻く動き -------------------------------------------------49
2.名古屋市のめざす緑の都市像 ---------------------------------------51
3.施策展開の基本方針 -----------------------------------------------56
第4章
リーディングプロジェクト -------------------- 61
Project1 緑に関わる市民を増やす --------------------------------------64
(1)プロジェクトの概要 -------------------------------------------64
(2)重点的に進める取り組み ---------------------------------------65
Project2 緑と水の回廊をつくる ----------------------------------------68
(1)プロジェクトの概要 -------------------------------------------68
(2)重点的に進める取り組み ---------------------------------------70
(3)「緑と水の回廊形成区域」の設定の考え方 ------------------------74
(4)3つの地形と地域特性に応じた区域設定 -------------------------77
Project3 今ある緑を可能な限り保全する --------------------------------81
(1)プロジェクトの概要 -------------------------------------------81
(2)重点的に進める取り組み ---------------------------------------82
(3)「保全配慮地区」の設定と取り組みの方針 ------------------------85
第5章
緑のまちづくり推進に向けて ------------------ 89
(1)計画の推進体制 -----------------------------------------------89
(2)計画の評価と見直し -------------------------------------------92
資料編
1.改定の経緯 ------------------------------------------------------- 資-1
2.名古屋市緑の審議会等の委員 ---------------------------------------資-2
3.用語集 ----------------------------------------------------------- 資-4
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
第1章
なごや 緑の基本計画 2020
(1)緑の基本計画とは何か
緑の基本計画は、都市緑地法第 4 条に基づいて市町村が定めることができる「都市にお
ける緑地の適正な保全や緑化の推進に関する基本計画」です。
≪計画の特徴≫
・法律に根拠をおく計画制度であること
・市町村の緑とオープンスペースの全てに関する総合的な計画であること
・市町村がその自治事務として策定する計画であること
・計画の策定に際して住民意見の反映が義務づけられていること
・計画内容の公表が義務づけられていること
・都市緑地法担当部局が、都市の緑に関する総合的な調整役となり策定するマスタープラ
ンであること
≪計画策定の意義≫
・緑の配置に関する計画:緑の多様な機能に応じて、骨格となる緑、特徴ある緑を、空間
的な整合性をとりながら適切に配置するための方針を定める。
・緑化施策に関する共通認識の形成:市民・事業者・行政が一体となって、また行政内部
の各部局が協力して、緑化施策を推進するための共通の考え方を定める。
・施策間の総合性、一貫性の確保:緑の保全・創出に関する様々な施策を、相互に関連さ
せながら優先度に応じて実施し、また長期的にみて一貫性のある取り組みを実施するた
めに必要な事項を定める。
1
なごや緑の基本計画
(2)これまでの緑の計画
●緑の 計画 の変 遷
名古屋市では、昭和 53 年に「緑化都市宣言」を名古屋市会で決議し、
「みどりあふれる
緑化都市」の実現に努めてきました。
これまでの緑に関する総合的な計画としては、昭和 48 年「緑のまちづくり構想」、昭和
55 年「名古屋市緑の総合計画」、平成 2 年「名古屋市都市緑化推進計画(緑のグランドデ
ザイン 21)」、平成 13 年「名古屋市みどりの基本計画(花・水・緑
なごやプラン)」と
続いており、これらに沿って各種の緑化関連施策を実施してきました。
また、都市計画に関連する事項については、愛知県により昭和 59 年の「市街化区域及
び市街化調整区域の整備、開発又は保全の方針」において、名古屋都市計画区域に関する
「緑のマスタープランの基本的事項」が位置づけられており、この方針と整合を図りなが
ら推進してきました。
●「花 ・水 ・緑 な ご やプラ ン」 の評 価
平成 13 年の「名古屋市みどりの基本計画(花・水・緑
なごやプラン)」では、以下の
3 つの「みどりの将来目標」を定めて計画の推進を図ってきました。
「名古屋市みどりの基本計画(花・水・緑
なごやプラン)」より
目標①:市民生活の視点を大切にし、市民・企業・行政の「協働」によって、「快適空間
都市~花・水・緑
なごや~」をつくります。
目標②:将来の望ましい姿として、身近なみどりと都市の骨格となるみどりを育て、市域
面積の 30%をみどりにします。
目標③:将来の望ましい姿として、みどりの拠点となる都市公園等の面積を 1 人当たり
15 ㎡とします。当面平成 22 年度までに、1 人当たり 10 ㎡を目標とします。
2
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
≪目標①について≫
森づくり活動団体への支援や緑のパートナー制度の創設など、市民・事業者との協働の
取り組みについては、多くの市民に参加をいただき、一定の成果を上げることができまし
た。しかし近年、まちづくりに対する市民や事業者との協働の重要性がますます高まって
います。また、いわゆる団塊の世代の大量退職などに伴い、市民の生き甲斐づくり、健康
づくりといった要請も高まると考えられます。
都市の緑は市民の暮らしに身近な存在であり、市民主導のまちづくりを進める上でも基
本的なテーマとなることから、市民や事業者等との協働のあるべき姿を模索しながら、さ
らに緑の保全等の取り組みを推進していくことが重要です。このため、市職員のパートナ
ーシップへの理解を高めながら、緑に興味のある市民の参画を一層進めていくとともに、
より多くの市民に緑への関心を持っていただき、協働の裾野を広げていくことが必要です。
協働により実施した主な取り組み
・「東山グリーンウェイ」や新海池公園などにおける市民・事業者・行政の協働による
花づくり活動の展開
・市民・行政の協働により樹林地を保全・活用する「オアシスの森づくり事業」や、
「な
ごや西の森づくり」「なごや東山の森づくり」の展開
・森づくり活動の指導者となる森づくりリーダーの育成、認定
・活動承認団体・緑のパートナーの制度の創設
・森づくりパートナーシップ連絡会の設立
≪目標②について≫
農地や民有樹林地を中心に緑被地は減少傾向となっており、平成 17 年には市域の 25%
を割り込む状況となっています。これを食い止めるため、公園緑地や街路樹などの公有地
での緑の確保を進めるとともに、市域の 3 分の2を占める民有地の緑化推進を図るため、
緑化地域制度など新たな制度も創設しました。緑化地域制度では、最近 5 年間の緑の減少
ペースを上回る年間 50ha 程度の緑の確保が見込まれ、市全体の緑被率の維持・向上の効
果が期待されますが、緑被率 30%の達成は現状では困難な状況にあります。
今後は、既存の緑を可能な限り保全し、公共施設や民有地の緑化を一層推進することに
より、緑被率の改善を図る必要があります。
■緑被地の推移
市全域の緑被地面積(ha)
市全域の緑被率(%)
平成 2 年
平成 7 年
平成 12 年
平成 17 年
9,730.5
8,956.6
8,271.2
8,088.0
29.8
27.4
25.3
24.8
3
なごや緑の基本計画
≪目標③について≫
都市公園等の面積は平成 22 年度において市民 1 人当たり 9.4 ㎡となっており、目標の
10.0 ㎡に近い水準(達成度)にあります。しかし、都市公園等の整備が計画通りには進
まなかったため、平成 12 年度から 10 年間の面積の伸び(進捗度)は 77.8%とやや低
く、また、全ての都市計画公園緑地を整備するための用地取得には、さらに 50 年以上要
すると見込まれています。
今後は、名古屋市独自の制度である「オアシスの森づくり事業」を発展的に展開してい
くとともに、通常の公園整備の手法にとらわれることなく、公園緑地を確保していく必要
があります。
■都市公園等の確保状況
平成 22 年度
平成 12 年度
都市公園等面積
1 人当たりの
都市公園等面積
うち都市公園面積
1 人当たりの
都市公園面積
人口
平成 22 年度目標
達成度※
進捗度※
(人口は計画策定
時点の想定)
1,813 ha
2,114 ha
96.1%
77.8%
約 2,200 ha
8.4 ㎡
9.4 ㎡
93.4%
-
10.0 ㎡
1,450 ha
1,550 ha
-
-
-
6.7 ㎡
6.9 ㎡
-
-
-
216 万 3 千人
225 万 3 千人
-
-
216 万 4 千人
※達成度=(平成 22 年度の実績値/平成 22 年度目標)×100(%)
※進捗度=(実際の増減面積/目標達成に必要な増加面積)×100(%)
※都市公園等とは、街区公園、近隣公園、総合公園などの都市公園と、農業公園、公共空地、市民緑地、港湾
緑地などの都市公園に類する施設を対象とする。
※平成 22 年度の都市公園等の数値は、都市公園に類するもの(都市公園以外の施設)について、既に市民に
開放されている施設などより実態に近い施設を加えたものであるため、平成 12 年度当時よりも幅広い施設
を計上している。
※各数値は 4 月 1 日時点
4
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
(3)緑の基本計画の位置づけ
本計画は、都市緑地法第 4 条の「緑地の保全及び緑化の推進に関する基本計画」であり、
緑地の保全から公園緑地の整備、民有地の緑化推進まで、なごやの緑全般について、将来
のあるべき姿とそれを実現するための施策を明らかにするものです。
●名古 屋市 の緑 に関 する総 合計 画
本計画は、平成 13 年 3 月策定の「名古屋市みどりの基本計画
花・水・緑
なごやプ
ラン」を改定したものです。長期的な施策の一貫性の観点から、同計画を部分的に引き継
ぎつつ、近年の社会動向や都市の緑を取り巻く制度改正等を踏まえて見直しを行っていま
す。
名古屋市は、
「名古屋市基本構想」のもとで「名古屋市中期戦略ビジョン」に沿ってまち
づくりを進めているところです。本計画は、名古屋市基本構想を受けた名古屋市の緑に関
する総合的な計画となります。
また、
「都市計画マスタープラン」
「環境基本計画」
「景観計画」などの関連計画と連携す
るとともに、広域的な視点から、愛知県が策定している「愛知県広域緑地計画」との調整
を図りながら定めるものです。
名古屋市基本構想
愛知県広域
緑地計画
名古屋市中期戦略ビジョン
整合
個別計画
連絡調整
なごや緑の
基本計画
(本計画)
改定
花・水・緑
関連計画
との
調和・適合
都市計画
マスタープラン
環境基本
計画
景観計画
なごやプラン
■なごや緑の基本計画と既存計画との関係
5
なごや緑の基本計画
●3 つ の環境 戦略 と緑 の基本 計画
名古屋市では、
「低炭素都市 2050 なごや戦略」
「生物多様性 2050 なごや戦略」
「水の
環復活 2050 なごや戦略」といった環境に関わる3つの戦略を策定しています。これらは、
低炭素社会、自然共生社会、循環型社会の構築に向けて、持続可能な都市なごやを実現す
るための長期的なビジョンを示したものです。
本計画は、これらの戦略と連携して緑の保全と創出に関する分野における具体的な施策
を示すものです。
■なごや緑の基本計画と3つの環境戦略との関係
6
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
( 4 ) 2020 年 を 目 標 と し て
●計画 の目 標年 次
「第3章
緑のまちづくりの将来を描く」では、長期的にめざしていくべき望ましい都
市の姿を描いています。
また、「第4章
リーディングプロジェクト」は、平成 32 年度(2020 年度)を当面
の目標年次とします。
●計画 の対 象区 域
本計画の対象区域は、原則として名古屋市全域としています。ただし、個々の施策等に
ついては、近隣市町との緑の連続性や広域的な取り組みの連携に配慮して示しています。
●将来 人口 の想 定
名古屋市の平成 32 年における人口は、233.7 万人程度を想定します。
10 年前
現況
目標年次
(平成 12 年) (平成 22 年) (平成 32 年)
人口(万人)
217.2
226.4
233.7
※平成 12 年及び平成 22 年の数値は国勢調査時(10 月 1 日現在)のもの
●将来 の都 市計 画区 域等の 想定
名古屋市は全域が都市計画区域であり、市街化区域は現況の範囲を将来にわたって維持
するものと想定します。
現況
目標年次
(平成 22 年) (平成 32 年)
都市計画区域面積(ha)
32,643
32,643
市街化区域(ha)
30,258
30,258
2,385
2,385
市街化調整区域(ha)
7
なごや緑の基本計画
(5)計画の全体構成
本計画では、市民や事業者が主役となった緑のまちづくりを進めるため、ソフト・ハー
ド両面から多彩な緑地保全及び緑化推進施策等を、「緑の基本計画」と「施策編」の 2 部
構成で示しています。
「緑の基本計画」では、はじめになごやの緑の現況を整理した上で、
「緑の都市像」を描
いています。そして、緑地保全・緑化推進を進めていくための「施策展開の基本方針」と、
特に重要な施策課題に対応し、緑の都市像を実現するための「リーディングプロジェクト」
を設定しています。
また、「施策編」では緑に関する各種施策についての具体的内容を定めています。
緑の基本計画
実現のための計画
姿を描く
の進め方を考える
◆数値目標を設定
◆緑の取り組みの
基本的な考え方・
方針を設定
◆緑の都市像
実 現の た め
に 特に 重 要
な 施策 課 題
と 対応 方 針
を提示
緑のまちづくり推進 (5 章)
◆めざすべき緑の
都市像を設定
◆計画の実効性
確保、進捗管理
・推進体制
・評価と見直し
■なごや緑の基本計画の構成
8
施策編
(別冊)
リーディングプロジェクト (4章)
施策展開の基本方針 (3 章3)
緑の都市像 (3 章2)
◆緑の現況
・緑施策のあゆみ
・緑の現況
・緑の取り組み
緑を取り巻く動き( 3章1)
緑の基本計画とは・緑を知る (1章・2章)
◆緑の基本計画とは
・改定の趣旨
・計画の位置づけ
・緑の働き
めざすべき緑の
◆計画推進のため
の具体的施策
・緑の保全
・緑の創出
・公園等の整備・
運営
・市民等との協働
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
(6)対象とする緑
①本計画で対象とする『緑』
本計画の“緑”とは、
「樹木や草花などの植物」、
「樹林地や農地、河川等、ため池などの
土地や空間」、また生態系を支える基盤である「土壌や水等の自然要素」を含みます。
緑のまちづくり条例(抄)
(定義)
第 2 条
この条例において「緑」とは、樹木、草花等の植物、樹林地、水辺地、農地等
の自然的環境を有する土地及び空間並びに動植物の生育基盤である土、水等の自然の要
素をいう。
≪様々な「緑」≫
植
物
土地・空間
土・水等の自然要素
9
なごや緑の基本計画
②都市の緑の様々な働き
都市の緑には、様々な働きがあります。都市の環境を守り、暮らしの質を高める自然資
本として緑を認識し、市民の身近な存在として守り育てていくことが必要です。
公園緑地や街路樹、河川等、民有の樹林地や農地、敷地内の緑などをネットワークする
ことにより、緑の働きを最大限に発揮することができます。
● 人と自然が共生する都市環境を形成します
● 市民の健康で活力ある生活の場を提供します
● 美しい都市景観を形成します
● 都市の安全性・防災性を高めます
■都市の緑の働き
10
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
●人 と 自 然 が 共 生 す る 都 市 環 境 を 形 成 し ま す
【生物 多様 性の 保全 】
私たち人間の暮らしは生態系から受ける様々なサービスを基礎として成り立っており、
自然と共生する持続可能な社会をめざしていくためには、都市においても生物多様性を保
全し、生態系を守っていかなければなりません。そのためには緑豊かな都市を構築し、豊
かな生物相の供給源となっている都市近郊の樹林地や農地などと都市内の緑のつながりを
持たせる緑のネットワークの形成が必要となります。
【快適 な都 市空 間の 形成】
水面や植物の葉からの水の蒸散は、都市の気温を低減し、ヒートアイランド現象を和ら
げる機能を有しています。また、都市におけるまとまった緑は輻射熱を低減し、緑陰の提
供や冷気のにじみ出し効果(クールアイランド効果)などの機能を持っており、街路樹や
河川等の水辺空間、公園緑地などの緑が有機的につながることで、快適な都市空間が形成
されます。
さらに、緑には汚染物質等を吸収・吸着する効果もあり、大気浄化や水質浄化、騒音・
振動の防止に寄与しているほか、地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収・固定する働
きがあります。
■都市環境の改善
11
なごや緑の基本計画
●市 萎 の 健 康 で 活 力 あ る 生 活 の 場 を 提 供 し ま す
【健康 づく り・ レク リエー ショ ンの 場の 提供】
都市の緑は、見たり触れたりすることで人々を癒し、心身の健康の増進に寄与します。
また、休息、散策、スポーツ、遊びといった健康づくり活動や野外レクリエーションの場
を提供しています。人々の健康でいきいきとした生活をおくろうという意識が高まってい
る中で、緑の役割はますます大きくなってきています。
【交流 の機 会や 場の 提供】
充実した生活と環境を志向するライフスタイルに転換されつつある今日、市民の魅力あ
るまちづくりに向けた活動や身近な緑に親しむ活動を通じて、市民の中に「楽しむ」
「集う」
といった共通の認識が芽生え、新たな地域コミュニティの形成にもつながることが期待さ
れます。
将来を担う子どもたちにとっては、幼い時から自然とふれあうことで感性が培われ、情
操教育や環境教育の場となります。経験豊かな高齢者には、都市公園などの空間は世代を
超えた交流の場となります。
12
休息・癒し
レクリエーション
情操・環境教育
地域コミュニティの形成
第 1 章 なごや緑の基本計画 2020
●美 し い 都 市 景 観 を 形 成 し ま す
【暮ら しを 彩る 緑】
街路樹や都市公園の緑、河川等の水辺空間などは、人工的で硬いイメージになりがちな
都市にうるおいと美しさをもたらします。また、新緑や紅葉、草花などは都市に季節感を
与えてくれるものであり、私たちの暮らしを彩る身近な自然となります。
【地域 固有 の風 景の 形成】
緑に包まれた空間は地域固有の風土を活かした魅力ある都市を形成します。特に、
地域の歴史・文化と緑が一体となって存在することで、付加価値の高い個性的な景観が
生み出されます。名古屋城や堀川に代表される近世・近代の名古屋の遺産のほか、街道、
一里塚、雑木林や社寺林など、なごやの長い歴史の中で蓄積された文化的・歴史的資産を
活かしていくことが重要です。
身近な自然
魅力ある景観の形成
季節感の提供
地域固有の景観の形成
13
なごや緑の基本計画
●都 市 の 安 全 性 ・ 防 災 性 を 高 め ま す
【防災 機能 の向 上】
公園緑地などのオープンスペースは災害時の避
延焼した市街地
難場所として機能し、災害時の救援活動、復旧活
動等の拠点となります。また、都市公園や街路樹、
水辺空間などは火災に対する延焼防止の効果を発
公園
揮します。つまり、緑の空間をつなげていくこと
で、都市の防災性を様々な側面から高めることが
できます。
出典:防災公園計画・設計ガイドライン
(財)都市緑化技術開発機構
■焼け止まりになった公園 (阪神淡路大震災)
【健全 な水 循環 の確 保】
緑でおおわれた土地は、雨水を地下に浸透させます。そして地下水を涵養し、地表面か
らは水が蒸発するなど、都市内における健全な水循環を確保します。その結果、集中豪雨
による都市型水害の危険を低減することにもつながります。
延焼防止
災害時の復旧活動拠点
健全な水循環の確保
コラム …ヒートアイランド現象の緩和
都市部の気温がその周辺の郊外
部に比べて異常な高温を示す現象
を「ヒートアイランド現象」とい
います。
芝生表面や植栽下の日陰部分
は、直射日光の当たるタイル表面
などよりも温度が低いことがわか
っています。都市の緑を十分に確
保することは、ヒートアイランド
現象を和らげ、過ごしやすい環境
の形成につながります。
14
出典:「環境の世紀」における公園緑地の取り組み(国土交通省)
第 2 章 なごやの緑を知る
第2 章
なごやの緑を知る
1. 緑の施策 のあゆみ
ここでは、なごやの緑がどのように守られ、生み出されてきたのか、都市化のあゆみと
緑の施策の変遷をたどっていきます。
(1)緑の骨格の形成
э戦前э
●城下 町か ら広 がる 市街地
なごやの市街地形成は、400 年前に徳川家康が名古屋城を築くことによって始まりまし
た。その後、市街地は熱田の宮と名古屋城を結ぶ南北軸と碁盤割の旧城下町を中心に、外
側に向けて拡大してきました。また、名古屋城築城とともに切り開かれた堀川は、城下町
に住む人々の生活を支えてきました。
明治維新後は、産業都市・政治都市としての大名古屋建設の理想のもとに都市整備が進
められました。大正期までに、名古屋台地や熱田台地を中心とした一帯がほぼ市街化し、
昭和 13 年頃には名古屋城の北側や名古屋駅西側の沖積平野、御器所台地、笠寺台地がほ
ぼ市街化しました。昭和 20 年代以降は、これらの既成市街地の外周部に市街地が形成さ
れていきました。
●公園 緑地 行政 の進 展
明治 12 年、なごやにおける最初の公園
として浪越公園(現在の那古野山公園)が
開園、明治 20 年には笹島街道(現在の広
小路通)において初めて街路樹が植栽され
ました。明治 22 年に市制が施行されてか
らは、名古屋市設置の第一号公園として、
鶴舞公園を明治 42 年に開園しました。
■現在の鶴舞公園
15
なごや緑の基本計画
大正 8 年には(旧)都市計画法が制定され、本格的な都市整備が進められていく時代に
なりました。大正 15 年に東山公園や志賀公園など 24 か所、550ha の都市計画公園を
初めて決定しました。昭和 8 年には「土地区画整理設計標準」が定められ、土地区画整理
の実施に際し公園が確保される仕組みがほぼ整い、昭和 10 年代にかけて旧市街地内の主
要な公園が次々と開園しました。また、昭和 12 年には皇太子御降誕記念公園として 10
公園の建設を決定し、都市計画公園とあいまって、初期の公園系統を形成しました。さら
に、昭和 12 年には東山植物園、東山動物園を開園しました。
昭和 14 年には、都市における自然風致の維持を図るため、地形、樹林地、水辺など周
辺自然環境の優れた住宅地を中心に、名古屋城や東山など 23 地区、2,500ha の風致地
区を指定しました。
昭和 15 年には、空襲による延焼拡大を防ぐため、防空緑地(都市緑地)として小幡緑
地、相生山緑地など 5 か所 826ha の都市計画決定を行いました。これは、市街地を環状
に囲む形で緑地帯を設ける計画で、庄内川沿いや丘陵地一帯の大規模緑地が決定されまし
た。現在、この計画に基づく緑地が、なごやの緑のネットワークの拠点となっています。
16
第 2 章 なごやの緑を知る
庄内緑地
水分橋緑地
小幡緑地
志賀公園
名古屋城風致地区
城山風致地区
東山風致地区
横井山緑地
東山公園
鶴舞公園
小碓公園
相生山緑地
稲永公園
大高緑地
注)戦前における最終の都市計画公園、風致地区及び都市計画緑地の配置図
■緑地位置図(昭和 20 年)
17
なごや緑の基本計画
(2)市街地の復興と緑の育成
э戦後э
第二次世界大戦により当時の市域の 25%、中心市街地の 60%を焼失した結果、街路樹
はそれまでの半分の 12,400 本に減少し、社寺の緑の多くを失いました。また東部丘陵の
樹林地は、戦中、戦後の燃料不足時代に薪炭材として多くの樹木が切り出され、荒廃して
しまいました。
戦後、名古屋市ではいち早く市街地の復興に取り組みました。昭和 21 年から復興土地
区画整理事業を開始させ、市街地内に公園を計画的に配置するとともに、全国でも有数の
墓地公園である平和公園などを整備しました。また、戦災復興計画は、幅員 100mの道路
2 本、幅員 50mの道路 9 本をはじめ、将来の発展を見越して都心部に広大な空間を確保
するものであり、これによって都心部に豊かな緑を有する道路空間を形成することが可能
となりました。
戦災からの復興が進む中、昭和 34 年秋の伊勢湾台風によって、街路樹は市全体で半数
近くが被害を被るなど、なごやの緑は大きな打撃を受けました。
■昭和 30 年代後半の平和公園南部
昭和 40 年代には、庄内川水系における河川敷緑地整備など、河川敷を積極的に利用し
て都市の公園緑地の不足の解消を図ったほか、興正寺公園、吹上公園、千種公園など主要
な公園を整備しています。また、昭和 45 年には、公園愛護会制度を発足させ、市民と行
政が手を携えて身近な公園を育てていく仕組みがスタートしました。昭和 55 年には、街
路樹愛護会も制度化され、今日まで、市民参加による緑の愛護活動の輪が広がっています。
18
第 2 章 なごやの緑を知る
(3)ゆとりとうるおいのあるまちへ
э近年の取り組みэ
●緑に 関す る法 制度 ・計画 制度 の充 実
昭和 47 年、都市公園等整備緊急措置法
が制定され、国の重点事業として都市公園
整備を計画的に進めることが打ち出されま
した。これに基づき第 1 次都市公園等整備
五箇年(第 6 次は七箇年)計画がスタート
し、名古屋市においても、国の補助を受け
ながら庄内緑地をはじめとする大規模公園
緑地の整備を進めていきました。また、都
市緑地保全法、生産緑地法など、緑化推進
や関連施策についての法制度が、国におい
て順次整備されていきました。
■庄内川の遊水地を活用した庄内緑地
昭和 53 年には「緑化都市宣言」を市会で決議し、同年の緑化推進条例の制定、昭和 55
年の「緑の総合計画」、平成 2 年の「都市緑化推進計画(緑のグランドデザイン 21)」の
策定と計画の推進により、積極的に緑の量的拡大と質的向上に努めてきました。平成 22
年 4 月 1 日現在、市内の都市公園は 1,404 か所 1,550ha となり、街路樹は高木で 10
万 5 千本に達するまでになっています。
水環境に関しては、1時間に 50mm の降雨に対応できる治水機能の確保を目標とする
「名古屋市総合排水計画」を昭和 54 年に策定し、治水事業を進めてきました。また、
河川などの環境保全・整備を総合的かつ計画的に進めるため、平成元年に「名古屋市河川
等環境整備基本計画」を策定し、多自然型川づくりや堀川をはじめとする水質浄化など、
水辺環境の改善を進めてきました。
●緑豊 かな まち づく りの推 進
昭和 63 年秋に開催された第 6 回全国都市緑化
なごやフェア(緑・花・祭なごや'88)は、人々に
緑とのふれあいの場を提供し、緑の持つ機能や魅力
への理解を深めてもらう絶好の機会となりました。
昭和 55 年には名古屋市で最初の特別緑地保全地
区を指定(平成 22 年 4 月現在 72 か所、約 184ha)
するなど既存の緑の保全を図るとともに、新たな緑
■名古屋城外堀に架けられた
花の浮き橋(緑・花・祭なごや'88)
19
なごや緑の基本計画
の空間を地域に広げるため、
「緑化地区制度」や「緑地協定・緑と花の協定」など地域ぐる
みの緑化活動を推進してきました。
平成に入ると、環境保全活動を行う市民ボランティアの増加やガーデニングのブームな
ど、人々の身近な自然環境への関心が高まり、日常生活の質の向上への意識が一層高まっ
てきました。
(4) 21 世 紀 の緑の まち づく り
平成 16 年に都市緑地法と都市公園法が改正され、緑地保全地域制度、緑化地域制度、
立体都市公園制度といった新しい制度が創設されました。これを受けて、名古屋市では平
成 20 年に全国で初めて市街化区域全域で緑化地域の都市計画決定を行い、建築物に対す
る緑化を義務づけました。あわせて緑のまちづくり条例を改正することにより、市の中心
部や市街化調整区域を含む市全域で緑化規制を強化しました。
また、都市計画公園緑地については、住宅密集型の川名公園の整備に着手するとともに、
借地手法により市民に開放する名古屋市独自の取り組みである「オアシスの森づくり事業」
を展開してきました。平成 20 年には「長期未整備公園緑地の都市計画の見直しの方針と
整備プログラム」を策定し、今後の都市計画公園緑地の整備方針等を示したところです。
さらに、市民とのパートナーシップによる森づくり活動や、森づくり活動団体からなる
ネットワーク組織「なごやの森づくりパートナーシップ連絡会」のサポートなど、市民協働
の取り組みも推進しており、市民や事業者が主役となった緑のまちづくりを進めています。
■川名公園
20
■オアシスの森づくり(相生山緑地)
第 2 章 なごやの緑を知る
2.緑の現況
(1)3つの地形と結びついた緑の地域特性
なごやの地形は、主に東部の丘陵地、中央部の洪積台地、西部の沖積平野に分けること
ができます。そして、歴史的に市街地がこれらの地形特性に応じて発展し続けてきた結果、
緑が市街地の隙間に残されて存在するという特徴がみられます。
■なごやの緑の構造
21
なごや緑の基本計画
東部( 丘陵 地)
э 雑木林 とた め池 が点 在する 里山 の風 景э
かつては大部分が樹林地と農地で占められていました。市街地が拡大する中で、風致地
区や都市計画公園緑地などとして土地利用の制限を行ってきた結果、現在でも樹林地や農
地、ため池が多く残る里山の風景を見ることができます。また、風致地区内につくられた
住宅地などは、緑豊かな市街地となっています。
しかし、都市計画制度などによる規制がかかっていない緑については市内でも特に開発
されやすい状況であり、都市計画公園緑地内に残る緑も用地取得の遅れにより保全が危ぶ
まれる状況にあります。また、この地域の農地はほとんどが市街化区域内に存在し、宅地
化等により著しい減少傾向を示しています。
中央部 (洪 積台 地)
э城 と宮 を結 ぶ歴 史的な 緑э
江戸時代から城下町として発展してきた地域ですが、市街地の大部分が第二次世界大戦
で焼失し、戦後の戦災復興事業により新たな市街地が形成されました。名古屋城や熱田神
宮、数多くの社寺などに古くから存在する歴史的な緑、また鶴舞公園や白川公園などの都
市公園がこの地域の主要な緑を構成しています。そして、久屋大通などのボリューム感の
ある街路樹や堀川・中川運河などの水辺が、緑の軸を形成しています。また、民家や事業
所の敷地にある大きな樹木は、地域をうるおすシンボル的な緑として大切な役割を果たし
ています。
禄部( 沖積 平野 )
э広大 な田 園風 景や 水辺э
庄内川が南北に貫いており、広大な水面や河川敷の緑が緑の軸を形成しています。また、
庄内川下流の西側には、干拓によってつくられた水田が広がっています。しかし、農業の
経営不振や後継者不足により農地の転用が続いています。社寺林などを除くとまとまりの
ある樹林地はきわめて少なく、市街地の緑としては街路樹や都市公園、住宅地などが中心
となっています。
22
第 2 章 なごやの緑を知る
(2)緑被地の分布状況
①緑の変遷
なごやの市街地は、明治末期まではほぼ城下町の形態を受け継いできましたが、大正期
以降、耕地整理や土地区画整理事業によって大きくその規模を拡大してきました。
戦後のなごやの緑の変遷をみると、市街地の拡大とともに沖積平野や丘陵地の緑の大部
分が消失し、細分化が進んでいることがわかります。
この中で、名古屋市は緑の骨格となる公園緑地の重要性を認識し、戦前から都市計画公
園緑地を指定してきました。この結果、現在残されているまとまりのある緑の多くは都市
計画公園緑地の中にあり、名古屋市の重要な環境インフラとなっています。
【土地区画整理と都市計画公園・緑地・墓園等】
市街地が
拡大
凡例
昭和 30 年
昭和 45 年
昭和 60 年
平成 17 年
【緑被地】
緑の消失
凡例
緑被地(樹林地、芝・草地、農地、水面)
※当時の名古屋市域
昭和 22 年
昭和 42 年
昭和 58 年
平成 17 年
■戦後のなごやの土地区画整理と緑の変遷
23
なごや緑の基本計画
②減少を続けるなごやの緑
名古屋市では、平成 2 年以降 5 年ごとに緑被地の調査(緑の現況調査)を行ってきまし
た。
この結果、平成 2 年からの 15 年間において、街路樹の緑は約 60ha、公園緑地の緑は
約 75ha 増加したものの、市全域では緑被率は 5 ポイント、中村区の面積に相当する
1,643ha が減少しました。
ただし、緑被地の減少速度は、平成 2 年からの 5 年間では年間 155ha であったのに対
し、平成 12 年から 17 年までの 5 年間では年間 37ha にとどまっており、緑の減少は緩
やかになりつつあります。
■緑被地の変化(平成 2 年~17 年)
24
第 2 章 なごやの緑を知る
緑被面積減少量
155ha/年
緑被面積減少量
37ha/年
緑被地面積:ha
14,000
12,000
10,000
8,000
6,000
緑被率:%
35.0
29.8
1,005
2,232
2,409
27.4
963
4,084
25.3
24.8
1,785
960
1,434
971
1,320
2,324
2,126
2,111
3,752
3,686
4,000
2,000
30.0
3,865
0
25.0
20.0
水面
15.0
農地
10.0
芝・草地
5.0
樹林地
緑被率
0.0
平成2年
平成7年
平成12年
平成17年
■緑被率の推移
<樹林 地>
・樹林地は、15 年間で約 400ha、10%程度減少しています。都市計画等による保全が
図られていない樹林地に対して、土地区画整理事業などに伴う開発が進んでいます。市
街化調整区域ではわずかに増加しており、戸田川緑地における西の森づくりや河川区域
内の樹林地の拡大による成果が表れています。
・竹林は、市域全体では顕著に減少していますが、一方で管理放棄された竹林が周囲の雑
木林を侵食して拡大している地域も多く、生物多様性の面からもその対応が課題となっ
ています。
・街路樹は、生長や新たな植栽により、高木・低木ともに緑被地面積が増加しています。
<芝・ 草地 >
・芝・草地は、土地区画整理事業などにより一時的に拡大し、その後住宅建築などにより
消失するところが多く、変動が大きくなっています。
・芝地は、庄内川や矢田川の河川敷を中心として拡大しています。
・草地は、宅地分譲地における住宅建築などが進んだ結果、大幅に減少しています。
<農地 >
・なごやの農地は、約 7 割が市街化区域内にあります。そのうちの約 7 割は生産緑地地区
に指定されておらず、土地の高度利用を目的とした開発圧力にさらされています。実際
に、市街化調整区域内の農地は 13%の減少にとどまっているのに対して、市街化区域
25
なごや緑の基本計画
内の減少は 52%に達しています。これは、主に土地区画整理事業の進行や宅地化など
の土地利用によるものと考えられます。
・田・畑・果樹園いずれも 15 年間で 30~50%と大幅な減少を示しています。しかし、
港区の南陽地区には、約 300ha という政令指定都市としては有数の規模を誇る水田が
広がっています。
市街化区域 市街化調整区域
生産緑地地区:
344 ha
その他の農地:
639 ha
市街化調整
区域内農地:
486 ha
出典:平成 19 年度 都市計画基礎調査
■農地の現況
<水面 >
・丘陵地を中心に数多くのため池が存在し、なごやの緑の大きな特徴となっています。
・ため池の水面の面積は市街化による埋め立ての影響などによって 15 年間で 13%の減
少となっています。ため池の数は、昭和 40 年には 360 か所ありましたが、昭和 57
年には 171 か所、平成 4 年に 133 か所、平成 19 年には 111 か所と減少傾向が続い
ています。
400
国・県・市有
民有
300
減少
278
200
178
112
92
100
65
46
23
21
82
83
81
79
81
87
93
90
昭和40
46
52
57
62
平成4
17
19 (年度)
0
出典:名古屋市ため池環境保全協議会による調査資料
■ため池の数の推移
26
第 2 章 なごやの緑を知る
③土地利用と緑の分布の関係
土地利用別に緑被地の状況をみると、
「道路」の面積は市域の 18%を占めており、緑被
率は約7%です。また、市域の大部分を占める「住宅・商業・工業・公共施設等」の緑被
率も約 12%と比較的低く、緑が少ないことがわかります。緑被率を向上させるためには、
道路や公共施設の緑化と住宅等の民有地の緑化が特に有効となります。
公有地は市域の約1/3を占めていますが、街路樹の充実などにより平成 2 年から 17
年にかけて高木率がやや増加したものの、全体としての緑被率はやや低下しています。民
有地の緑被率については、樹木、その他の緑被地ともに大きな減少を示しています。
0
20
40
60
80
100
河川
120
140
160
(k㎡)
180
樹林地
草地
農地
水面
非緑被地
公園・緑地等
道路
民有のオープンスペース
農地
住宅・商業・工業・公共施設等
■土地利用別の緑被地の状況(平成 17 年)
0%
公有地
20%
40%
60%
80%
100%
平成2年
平成17年
民有地
平成2年
平成17年
高木
その他の緑被地
非緑被地
■公有地・民有地別の緑被率の変化
27
なごや緑の基本計画
(3)緑の質の変化
①緑の分断化・孤立化
樹林地などの緑は、面積が大きくまとまりがあるほど、また複数の緑がネットワーク化
されているほど、緑の機能が高まります。例えば、生き物の生息空間としての質が向上し、
また、ヒートアイランド現象対策として都市の気候を和らげたり、市民の自然とのふれあ
いの場の確保、緑豊かな景観形成など様々な面で、より大きな機能を発揮するようになり
ます。
しかし、都市化の進展によって、なごやの緑は次ページの図のように大きなまとまりの
緑が分断され、細分化される傾向にあります。緑被地の規模別面積累計をみると、1ha 以
上のまとまりのある緑被地の面積の減少が目立ちます。また、緑被地 1 か所当たり面積で
は、1ha 未満から 50ha 以上まであらゆる規模の緑被地において、1 か所当たりの面積
が減少する傾向がみられ、緑地の細分化が進むばかりか、緑そのものが失われつつあるこ
とが伺われます。
0
500
1,000
1,500
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
平成2年
平成17年
1ha以上2ha未満
40ha以上50ha未満
2ha以上4ha未満
50ha以上100ha未満
4ha以上10ha未満
100ha以上
■緑被地の規模別面積累計(1ha 以上の緑被地)
(㎡)
10,000,000
1,000,000
100,000
10,000
1,000
100
10
1
1ha未満 1~10ha 10~50ha50ha以上
平成2年
平成17年
■緑被地の規模別 1 か所当たり面積
28
10ha以上40ha未満
(ha)
5,000
第 2 章 なごやの緑を知る
平成2年
平成17年
大高緑地
名古屋環状 2 号線
■緑の分断化・孤立化(大高緑地付近、平成 2 年と 17 年の比較)
29
なごや緑の基本計画
②生物多様性の低下
都市化の進展とそれに伴う緑の減少は、野生生物の生活の場を奪い、生物多様性の低下
につながります。また、緑の質の変化による生物多様性への影響も懸念されます。
丘陵地の雑木林では、ナラ枯れと呼ばれるコナラなどカシ類の枯死や、雑木林への竹の
侵入が目立ち、人々の生活との関わりの中で育まれてきた里山の生態系は危機に瀕してい
ます。また、ため池や河川等の護岸整備や農地の土地改良などは、都市の安全性向上や生
産性向上などに役立つ一方で、水際のコンクリート化等によって生物のすみにくい環境と
なっています。さらに、アライグマやヌートリアをはじめとした外来生物が各地で確認さ
れています。
■カシノナガキクイムシによるコナラ等の枯死
■雑木林への竹林の侵入
■外来生物による生態系への影響の懸念(左はブルーギル、右はスイレン)
30
第 2 章 なごやの緑を知る
コラム
…「生物多様性 2050 なごや戦略」にみる生物多様性の変化
なごやの地形の特性ごとに、生物多様性を支える生息地の状況をみると、西部の沖積平
野では、干潟や水田が減少し、河川等や海岸は護岸化されてきました。造成地も拡大し、
生き物のすみかが減少しました。
中央部の洪積台地では、都市化が進み、生き物のすみかは社寺林や都市公園、街路樹な
どのわずかな緑となりました。
また、東部の丘陵地では、宅地開発が進み、生き物のすみかとなる雑木林やため池、湿
地などが少なくなってきました。
外来生物の侵入
沖積平野
耕地整理による水田の乾田化
河川・水路の人口河道化
鳥類:カワウ
造成の進行
土壌生物の減少
生物全般の減少
わずかな干潟
鳥類:ハマシギ、ダイゼン
魚類:スズキ、ボラ、マハゼ
甲殻類:アナジャコ
貝類:バイガイ、アメリカフジツボ
その他底生生物:ゴカイ類
雑草地・ 緑地・水田の減少
護岸された海岸、干拓地の拡大
植物:オオブタクサ、クズ、セイタカアワダチソウ
洪積台地
植物;オオアレチノギク、クズ、セイタカアワダチソウ
哺乳類:ヌートリア、チョウセンイタチ、タヌキ
鳥類:オオタカ、ハクセキレイ
両生類:ウシガエル
昆虫類:キチョウ
魚類:オオクチバス、フナ
甲殻類:アメリカザリガニ
河川の人口河道化
魚類:カダヤシ、コイ、フナ
公園、社寺林、街路樹に残された緑
植物;クスノキ、クロガネモチ、ケヤキ、ムクノキ
哺乳類:アブラコウモリ
鳥類:アオバズク、ムクドリ、キジバト
昆虫類:アブラゼミ、アオマツムシ
都市化の進行
植物;セイヨウタンポポ
哺乳類:ドブネズミ、クマネズミ
鳥類:カラス類
昆虫類:クマゼミ
丘陵地
里山林、湿地、ため池の減少
植物;コナラ、シイ類、アカマツ
哺乳類:タヌキ、アライグマ、ハクビシン、
アカネズミ
鳥類:オオタカ
爬虫類:ニホンイシガメ、ミシシッピアカガメ
魚類:カダヤシ、オオクチバス
昆虫類:ヒメタイコウチ
宅地造成の進行
※赤字:外来生物
■現在のなごやの生物多様性
植物;セイヨウタンポポ、セイタカアワダチソウ
哺乳類:ドブネズミ、クマネズミ
鳥類:カラス類、スズメ、ツバメ
昆虫類:クマゼミ、アオマツムシ
出典:生物多様性 2050 なごや戦略
31
なごや緑の基本計画
③ヒートアイランド現象の顕在化
衛星画像(平成 17 年 5 月 25 日撮影)による地表面温度分布をみると、東部の樹林地
が多く存在する地域や、西部のまとまりのある水田が広がっている地域と比べて、都心を
中心とした地域では温度が高い傾向がみられます。また、平成 17 年 8 月 7 日に約 400 名
の市民によって実施された気温測定調査では、都心域と東部の丘陵地で、最大で 4℃以上
の気温差が観測されました。
このように、緑の減少は、ヒートアイランド現象の顕在化につながっているものと考え
られます。
緑の少ない
地域は温度
が高い
緑の多い地域
は温度が低い
地面の温度
H17.5.25
10:45am
20℃
20
℃
10 ℃
■地表面温度分布(平成 17 年 5 月 25 日)
4℃以上
出典:名古屋気温測定調査 2005 報告書(平成 18 年 2 月
名古屋気温測定調査実行委員会)
■主な観測点における気温経時変化(平成 17 年 8 月 7 日)
32
第 2 章 なごやの緑を知る
④水循環の変化
緑地に降り注いだ雨のうち、直接河川等へ流れ出す水はわずかであり、大部分が地下に
浸透したり、地表面や植物から蒸発・蒸散します。
丘陵地や沖積平野に多くの緑が残されていた昭和 40 年には、雨水の 41%が地下に浸
透し、32%が蒸発・蒸散していたとみられ、河川等への流出は 27%にとどまっていまし
た。この頃までは、比較的健全な水循環が維持されていたといえます。
しかし、緑が減少し、舗装面が拡大した結果、平成 17 年には河川等への流出が 62%
と大部分を占めるようになり、本来の水循環が失われてしまいました。
■なごやの水循環の変化
また、温暖化の影響により渇水と洪水のリスクが大きくなるともいわれます。既に、年
降水量の変動の幅の拡大傾向が確認されており、また 1 時間降水量 50mm 以上の短時間
の強い雨が増加する傾向が観測されています。集中豪雨の激化による水害を防止するため
には、河川等の改修や洪水調節施設整備、雨水幹線等の下水道施設に加えて、雨水を地下
に浸透させて蓄え、土砂流出を防止するなど多様な働きのある樹林地などの緑を確保して
いくことが重要となります。
㎜
2,200
年降水量(名古屋)
5 年間降水量移動平均(名古屋)
2,000
1,800
1,600
変
動
幅
の
拡
大
1,400
1,200
■名古屋における年降水量の経年変化
1,000
(1900 年~2009 年)
800
1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000
年
出典:気象庁統計データ
33
なごや緑の基本計画
コラム
…地球温暖化による生態系への影響
地球温暖化による気温の上昇は、水、食料、沿岸域の安全、健康など幅広い分野で影響
を及ぼすことが指摘されています。
生態系への影響は、例えばわずかな平均気温の上昇でもサンゴの白化が増加するといわ
れ、なごやを含む東海地方においては、温暖化が進むと次第に南方系の動植物が侵入して
くる可能性があります。その兆候はすでに現れており、例えば 1950 年代には、九州・四
国地方を中心に生息していたチョウの一種「ナガサキアゲハ」が、近年はなごやでもよく見
かけられるようになりました。さらに、南方系の動植物が侵入する過程で、東海丘陵要素
植物群をはじめ、この地域に見られる多くの動植物や生態系への影響が懸念されます。
分布が確認された時期
分布が確認された時期
●~1992年
●2009年
●1993年~1998年
名古屋市付近
名古屋市付近
■ナガサキアゲハ分布の北上
出典:環境省「いきものみっけ」調査結果レポート
18℃
17
2℃
日平均気温(名古屋)
日本の年平均気温平年差
1
16
平均気温の上昇(2℃以上)
15
0
14
-1
13
■市内でも見られるようになった
南方種のナガサキアゲハ
(撮影:眞弓浩二氏、
ため池の生き物調査にて)
12
-2
1900 1910 1920 1930 1940 1950 1960 1970 1980 1990 2000 年
■名古屋における日平均気温の経年変化
(1900 年~2009 年)
出典:気象庁統計データ
34
第 2 章 なごやの緑を知る
3.緑を育む取り組み
(1)市萎による緑のまちづくり
①都市公園の管理や森づくりなどにおける市萎との協働
緑のまちづくりを多面的に展開していくためには、市民・事業者・行政が都市緑化に対
する意識を高め、互いの立場を尊重しながら、ともに緑の保全・創出・活用の取り組みを
行っていくことが重要です。
これまで、公園愛護会・街路樹愛護会、東山グリーンウェイなど、地域住民と協力しな
がら都市公園や街路樹の管理、街路の緑化などを進めてきました。また、緑に対する市民
意識の向上や市民活動の活発化を踏まえ、平成 17 年 3 月に緑のまちづくり条例を改正し、
従来の愛護会に加えて、緑のまちづくり活動に関わる任意団体を活動承認団体、緑のパー
トナーとして位置づけ、育成・支援を行っています。
樹林地の維持管理に関しては、オアシスの森づくりや市民緑地制度、森づくりリーダー
養成講座等を活用して市民による森づくり活動を支援してきました。また、平成 13 年に
は「なごやの森づくりパートナーシップ連絡会」が結成され、各地での活動の情報交換の
場となっています。
■緑に関する市民団体等
・緑のまちづくり条例に基づく団体
種別
活動内容
公園愛護会
除草、清掃、施設の点検連絡
街路樹愛護会
除草、落ち葉の清掃等、樹木の愛護と街の美化活動
活動承認団体
公園、街路樹等における自主的な企画立案による緑地
団体数
1,082
486
8
保全、緑化活動
緑のパートナー
自主的な企画立案と一定の責任分担による、公園、街
14
路樹等の総合的な管理運営
(活動承認団体等の中から認定された団体が、市と協
定を締結)
・ネットワーク組織
種別
活動内容
なごやの森づくり
市内の公園緑地における自然環境の保全や再生に取り
パートナーシップ
組む市民活動団体と市が連携し、情報交換や交流、対
連絡会
外的な情報発信を行っている
団体数
30
平成 22 年 4 月 1 日現在(公園・街路樹愛護会は平成 22 年 3 月 31 日現在)
35
なごや緑の基本計画
②緑とふれあう機会の創出
名古屋市では、植樹祭などのイベントや花いっぱい運動の展開、学校花壇のコンクール
をはじめ、様々な事業を通じて市民が緑にふれあう機会、緑化に取り組む機会を提供して
います。
また、平成 17 年に行われた市民による気温測定調査を皮切りに、平成 18 年から毎年
継続している緑地の生息生物調査、平成 20 年から始まったため池の生き物調査など、市
民が中心となってなごやの緑を調べ、考える機運が高まりをみせるとともに、公園等で花
の植え替えなどを行うボランティア活動(花ボランティア)など、市民による緑化への取
り組みが活発化しています。
■なごや西の森づくり(植樹祭)
■植樹後 10 年経過した「なごや西の森」
■市民によるため池の生物調査
■市民による「花ボランティア」活動
36
第 2 章 なごやの緑を知る
(2)緑の保全・創出の取り組み
①樹林地や農地の保全
なごやの緑被地のうち約1/3は公有地内にある緑であり、その多くが都市計画公園・
緑地・墓園となっています。また街路樹の面積は 175ha と、公有地の緑の 6%を占めて
います。
緑被地の約2/3を占める民有地の緑については、特別緑地保全地区、生産緑地地区と
いった土地利用の規制・誘導を行う様々な地域制緑地制度を活用し、保全を図っています。
また、民有地の樹林地などを市民緑地として市民に開放したり、地域の美しい景観を形成
する樹木を保存樹に指定するなどにより、身近な緑を守りながら市民に提供する取り組み
も行っています。
近年は緑の減少傾向が緩やかになってきたとはいうものの、宅地等の土地利用の需要は
依然として高い状況にあります。民有の樹林地や市街化区域内の農地などのうち、こうし
た保全制度が適用されていない緑は高い開発圧力にさらされています。したがって、今後
は、さらに充実した保全施策を講じていく必要があります。
注:緑被地の面積は平成 17 年、その他の面積は平成 22 年のデータによる。
■緑被地の保全措置の状況
37
なごや緑の基本計画
■地域制緑地等の制度の概要
区分
法 によ る 制 度
市 独自 の 制 度
38
制度
根拠法令
目的
規制の概要
主な優遇制度
風致地区
都市計画法
自然的景観を保全し、緑
と調和し た低層住 宅地
を形成
土地利用におい
て一定の緑地確
保が必要
・固定資産税、
都市 計 画税 の
評価減
特別緑地保全
地区
都市緑地法
都市の歴史的・文化的価
値を有する緑や、生態系
に配慮し たまちづ くり
のための動植物の生息、
生育地と なる緑等 を保
全
現状凍結的に制
限のため、木竹
の伐採,建築、
造成、埋め立て
等は不可
・固定資産税、
都市 計 画税 の
評価 減 及び 減
免
・報償金の交付
・相続税の 8 割
評価減
緑地保全地域
都市緑地法
地域住民 の健全な 生活
環境の確 保等の視 点か
ら比較的 大規模な 緑を
適正に保全
緑地の保全と調
和を図りつつ、
部分的な土地利
用可能
-
市民緑地
都市緑地法
良好な状 態に保存 され
た樹林地、湧水池等を市
が無償で 借り受け 保全
するとともに、市民の憩
いの場として公開
使用貸借中は木
竹の伐採は不可
(管理行為除く)
・固定資産税、
都市 計 画税 非
課税
・相続税の 2 割
評価 減 (契 約
期間 20 年以
上の場合)
生産緑地地区
生産緑地法
市街化区 域内にあ る農
地等が持 っている 緑の
機能に着目して、公害ま
たは災害の防止、農林漁
業と調和 した都市 環境
の保全な どに役立 つ農
地等を計画的に保全
農地としての管
理義務が生じ、
建築等は制限
・固定資産税、
都市 計 画税 の
宅地 並 み課 税
の適用除外
・相続税の納税
猶予、免除
保安林
森林法
土砂の流出の防備、公衆
の保健、名所または旧跡
の風致の保存等
木竹の伐採等の
行為は現状凍結
的に制限
・固定資産税、
都市 計 画税 非
課税
・相続税、贈与
税の評価減
オアシスの森
オアシスの
森づくり実
施要綱
都市計画 公園緑地 内の
樹林地等 を市が無 償で
借り受け、早期に市民の
憩いの場として公開
使用貸借中は木
竹の伐採は不可
(管理行為除く)
・固定資産税、
都市 計 画税 が
非課税
・緑の保全奨励
金交付
第 2 章 なごやの緑を知る
風致地区は、丘陵地を中心に、樹林地や公園緑地、低層住宅地等において指定していま
す。また、特別緑地保全地区は、社寺林を中心に指定しています。
■風致地区及び特別緑地保全地区の位置
39
なごや緑の基本計画
②道路や公共施設の緑化
街路樹の本数や歩道植栽延長は、道路事業に伴う新規植栽等によってこれまで着実に伸
び続けてきており、街路樹による緑被地の面積は、既存街路樹の生長や新たな植栽によっ
て平成 2 年からの 15 年間で約 60ha 増加しました。道路が市域面積に占める割合は約
18%と、政令指定都市の中でも有数の規模を誇っていますが、道路の緑被率は約 7%とな
っています。今後、さらに道路空間の緑化をめざします。
一方、主要な都市公園や公共施設等を結ぶ緑道を整備しており、地域住民の安全で快適
な散策・休養の場を提供しています。
庁舎や学校、病院などの公共施設は、多くの市民が利用し地域の顔となる施設でもあり、
緑化率の目標を定めて緑化を推進しています。
■街路樹並木
■公共施設の緑化(千種文化小劇場)
(高木本数:本)
150,000
(延長:km)
600.0
125,000
500.0
100,000
400.0
注
75,000
300.0
50,000
200.0
25,000
高木
本数(本)
歩道
植栽延長(km)
中央分離帯
緑化延長(km)
0
S58
S61
H元
H4
H7
H10
H13
H16
H19
100.0
0.0
(年)
毎年 4 月 1 日現在
注:平成 15 年~16 年にかけ、枯死分を除いて高木のデータを修正し、約 1 万本の減少となった。
■街路樹の整備状況の推移
40
第 2 章 なごやの緑を知る
③住宅地・商業地・工業地など萎有地の緑化
緑豊かで美しい街並みを形成していくために
は、住宅地や商業地、工業地の敷地内など、市域
のおよそ3分の2を占める民有地の緑を充実さ
せていく必要があります。
平成 20 年には、一定規模以上の建築物に対し
て緑化を義務づける緑化地域制度を導入しまし
た。これにより最近の緑被地の減少ペース(約
37ha/年)を上回る緑化面積(年間約 46ha)
を確保できました。
また、あいち森と緑づくり事業を活用した助成
や名古屋市独自の認定制度「NICE GREEN なご
や」などにより、質の高い緑化や意欲的な緑化の
■緑豊かな住宅地
取り組みを支援しています。
■緑化地域申請件数等
項
目
申請件数
件数等
備
2,681 件
敷地面積計
6,124,097 ㎡
緑化面積計
928,748 ㎡
考
-
適用除外申請面積は除く
園路・土留面積含む
平均緑化面積
346 ㎡
(緑化面積計/件数)
全体緑化率
15.2%
(緑化面積計/敷地面積計)
注)平成 22 年 10 月 31 日までの 2 か年分の累計
■事業所の敷地を緑化して開放している例
■ショッピングモールの壁面緑化の例
41
なごや緑の基本計画
(3)公園緑地の取り組み
①都市公園の整備
なごやに残されている大規模な樹林地の多くは、戦前より都市計画公園緑地として都市
計画決定され、守られてきたものです。都市公園の緑被地は 918ha、緑被率は 62%とな
っており、都市公園はなごやの重要な環境インフラといえます。現在も都市計画公園緑地
事業や街区公園適正配置促進事業、土地区画整理事業により、新たな公園の整備を進めて
います。
都市計画決定した公園緑地については、名古屋市緑の審議会の答申「これからの公園緑
地のあり方~長期未整備公園緑地について~」を踏まえ、長期未整備公園緑地の都市計画
の見直しの方針と整備プログラムを策定し事業を進めることとしていますが、全ての長期
未整備公園緑地の整備が完了するまでには今後膨大な事業費と、数十年にわたる期間を要
する見込みです。
また、まちの中に点在する市民にとって身近な都市公園(住区基幹公園)は、主に土地
区画整理事業によるまちづくりなどを通じて整備していますが、法制度が整備される以前
に市街化が進んだ地域では整備水準が低くなっています。
■長期未整備公園緑地の分布
42
第 2 章 なごやの緑を知る
(ha)
1,600
(㎡/人)
8
1,400
7
1,200
6
1,000
5
800
4
600
3
400
都市公園面積計(ha)
2
200
市民一人当たり面積(㎡/人)
1
0
S40
S45
S50
S55
S60
H2
H7
H12
H17
0
H22
(年)
毎年 4 月 1 日現在
■都市公園整備水準の推移
②多様な公園緑地の整備
公園緑地には様々な役割があり、市民の
レクリエーションの場や災害時の避難地な
どの観点から公園緑地の整備を進めていま
す。また、名古屋城や徳川園など歴史文化
的資産を活かした公園づくりも進めてきま
した。
■徳川園
③都市公園の維持管理等
名古屋市と都市公園周辺の地域住民が協力し、公園愛護会や緑のパートナーとして、市
民が主体となる公園の維持管理を進めてい
ます。今後も安全で快適な公園の環境を保
つためには、市との協働のもとに、市民が
地域の中で公園を維持管理していく意識の
啓発や、維持管理を担う人材の育成が求め
られています。
また、公園施設の老朽化が進む中で、公
園施設の長寿命化や公園経営による民間活
力の導入など、時代の要請に応じた維持管
理を行う必要があります。
■公園愛護会による清掃活動や手入れ
43
なごや緑の基本計画
④都市公園に類する施設の活用
都市公園に準じる機能を持つ施設として、農業センター、東谷山フルーツパークなどの
農業公園、愛知県森林公園、名古屋港一帯の港湾緑地などがあります。
このほか、市民に農とのふれあいを提供する市民農園、児童遊園地など、目的に合わせ
た様々なタイプのオープンスペースが存在し、多くの市民に利用されています。
■名古屋市農業センター
■東谷山フルーツパーク
■公園関連用語の定義
用語
公園緑地
都市計画公園緑地
都市公園
44
定義
・街区公園、近隣公園、総合公園などの都市公園と、農業公園、
公共空地、市民緑地、港湾緑地などの都市公園に類する施設
・都市計画法に基づき、都市計画でその区域が定められている公
園緑地のこと
・都市公園法に基づく「都市公園」であり、本計画では、下記の
いずれかに該当するもの
①名古屋市または愛知県が設置する都市計画施設である公園ま
たは緑地
②名古屋市または愛知県が都市計画区域内において設置する公
園または緑地
第 2 章 なごやの緑を知る
(4)緑に関する市萎意識
ここでは、市民を対象としたアンケート調査の結果に基づいて、市民の緑に関する意識
をみていきます。
●緑に 関す る市 萎の 認識、 満足 度等
≪調査概要≫
調査期間
平成 20 年 7 月~
(8 月 5 日回収期限)
調査対象
名古屋市内居住の満 20 歳以上の方(約 183 万人)の中から、住民基本台帳
をもとに無作為抽出した 2,000 人の市民
(有効回収率:49.8%)
地域区分
地形などの自然環境や土地利用などの状況から、行政区単位で 3 つの地域区分
に分けて集計
東部地域
:千種区、守山区、緑区、名東区、天白区
中央部地域:東区、中区、昭和区、瑞穂区、熱田区、南区
西部地域
:北区、西区、中村区、中川区、港区
①住まい近くの緑の量
●あなたは、お住まいの近くの「緑」が多いと思いますか。
(択一式、なお無回答除く)
<市全域>
0%
20%
40%
60%
80%
100%
回答が概ね均等に分かれました。平成
10 年度の同様の調査の結果と比べると、
「多い」が増加し(25%→32%)、「少
ない」も増加(30%→36%)しました。
全体
31.8%
東部地域
32.7%
44.4%
中央部地域
35.5%
34.7%
28.9%
20.9%
26.0%
45.1%
<地域別>
東部地域では「多い」の回答割合が高
西部地域
20.1%
35.0%
44.9%
く(44%)、中央部や西部地域では、
「少
ない」の回答割合が高くなっていました
多い
どちらともいえない
少ない
(ともに 45%)。
②住まい近くの緑に関する満足度
●あなたは、お住まいの近くの「緑」に満足していますか。
(択一式、なお無回答除く)
<市全域>
「満足」
「どちらかといえば満足」の回
0%
全体
20%
9.0%
40%
29.1%
60%
80%
25.5%
100%
25.2%
11.1%
答割合が4割弱と半数を切り、平成 10
年の調査よりも 18 ポイント減少(56%
→38%)しました。
東部地域
中央部地域
14.1%
7.2%
34.9%
28.0%
25.8%
21.6%
20.1%
25.4%
5.2%
17.8%
前問と併せて考えると、市民の緑に対
するニーズが増大してきているとみられ
西部地域
4.8%
23.7%
27.9%
30.7%
13.0%
ます。
満足
どちらかといえば不満
どちらかといえば満足
不満
どちらともいえない
45
なごや緑の基本計画
<地域別>
平成 10 年調査と比べ、いずれの地域でも「満足」「どちらかといえば満足」が減少し、「ど
ちらかといえば不満」
「不満」が増加しています。特に中央部地域での満足度の低下傾向が大き
くなっています。また、東部地域は平成 10 年調査と同様、満足度が相対的に高くなっていま
す。
③緑の増減に対する意識
●名古屋の「緑」が減少していることについてどう思いますか。
(択一式、なお無回答除く)
<市全域>
約7割の人が「減少を食い止め、増や
0%
していくべき」と考え、3割の人が「減
20%
40%
60%
80%
100%
全体
67.6%
29.2%
3.2%
東部地域
65.5%
31.3%
3.1%
少を食い止め、現状を維持していくべき」
と考えており、
「減少するのもやむを得な
い」と考えている人はほとんどいません
71.2%
中央部地域
25.8%
3.0%
でした。
西部地域
<地域別>
67.5%
地域別の相違は、ほとんどありません。
29.1%
3.4%
減少を食い止め、増やしていくべき
減少を食い止め、現状を維持していくべき
減少するのもやむをえない
④増やしていくべき緑
「公園の緑(74%)」「街路樹の緑(71%)」「学校・病院の敷地内の緑(60%)」の順で高
くなっています。平成 10 年度調査と比べると、「公園の緑」「街路樹の緑」の回答割合が特に
高くなっています。
●緑を守ったり増やした方が良いと思う方におたずねします。あなたが守ったり増やしたほうがよいと思う緑はどれですか。
(複数回答:任意、なお無回答除く)
74%
71%
公園の緑
街路樹の緑
60%
学校や病院の敷地内にある緑
川辺の緑
44%
39%
37%
35%
32%
29%
27%
26%
神社や寺の境内などにある緑
オフィスビルの敷地内にある緑
住宅の庭や窓辺の緑
田や畑の緑
雑木林の緑
商店街の中にある緑
工場の敷地内にある緑
17%
16%
空き地にある緑
港にある緑
その他
特にない
2%
0%
0%
46
10%
20%
30%
40%
50%
60%
70%
80%
第 2 章 なごやの緑を知る
⑤緑化活動への参加意識
過半数(57%)が「公園・街路の樹木・花壇の水やり・除草」を回答していました。また、
募金への寄付についても、3~4割の人が回答しています。
●地域の緑を守ったり増やしたりするために、あなたが行うことができると思う活動はどのようなことですか。
(複数回答:任意、なお無回答除く)
57%
公園や街路での樹木や花壇への水やりや除草などの手入れ
植樹など緑を増やすことを目的とした募金への寄付
42%
32%
今ある緑を守ることを目的とした募金への寄付
16%
公園の建設、利用、維持管理に関する計画づくりへの参加
公園などでのホタルの生息調査など動植物の市民調査への参加
16%
12%
雑木林や水辺、湿地の手入れ
9%
わからない
何もしたくない
2%
その他
2%
0%
10%
20%
30%
40%
50%
60%
⑥行政への期待
約半数(5 割弱)が「身近で小規模な公園整備(47%)」
「都心部の緑化(46%)」を回答し、
「街路樹植栽(39%)」も4割程度の人が回答していました。
●緑を守ったり増やしたりするために、行政にどのようなことを期待しますか。
(複数回答:3つまで、なお無回答除く)
47%
身近で小規模な公園の整備
46%
都心部の緑化
街路樹の植栽
39%
26%
学校など公共施設の緑化
23%
緑の保全・緑化に関する規制や計画の策定と公表
22%
雑木林の保全(民有地含む)
市民の緑化、緑の保全活動に対する助成
22%
19%
農地の保全
13%
大規模な公園の整備
7%
自然観察会や講習会、イベントなどによる情報提供
3%
シンポジウムなどによる市民と行政の意見交換
2%
その他
わからない
0%
0%
5% 10% 15% 20% 25% 30% 35% 40% 45% 50%
47
なごや緑の基本計画
●市政 の「 緑・ 水環 境」分 野へ の要 望
≪調査概要≫
調査時期
毎年度 1 回実施(市政世論調査)
調査対象
名古屋市内居住の満 20 歳以上の方の中から、住民基本台帳及び外国人登録原
票をフレームとする無作為抽出された 2,500 人の市民
(有効回収率:60~80%程度)
○名古屋市に特に力を入れて進めてほしいこと
「緑・水環境」分野に特に力を入れてほしいという市民の声が徐々に高まってきています。
平成 13 年度には「緑・水環境」分野は 13 位であったのに対し、平成 21 年度には第 3 位、
回答率は 28.5%となっており、近年の環境問題への意識の高まりなどを反映して、
「緑・水環
境」分野への施策ニーズが高まっているものと考えられます。
(回答率:%)
-平成 13 年第1位
高齢者福祉
第2位
災害の防止
第3位
健康・医療
(順位)
30
26.5%
23.3%
25
15
10
11位
10位
10位
28.5%
12位
10位
11
16.9%
13位
8.7%
6
9位
8位
20
1
3位
16
9.4%
10.2%
-平成 21 年第1位
高齢者福祉
第2位
健康・医療
第3位
緑・水環境
10.7%
8.9%
21
回答率
5
順位
0
H13
H14
H15
H16
H17
H18
H19
H20
26
31
H21 (年度)
注:本データは、市政に関する 30 分野の中から、
「名古屋市に特に力を入れて進めてほしいこと」として「緑・
水環境」の回答率と順位を示したものである。
48
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
第3章
緑のまちづくりの将来を描く
1.緑を取り巻く動き
都市の緑に関連する近年の社会動向等として、次のような事項をあげることができます。
緑の保全・創出に関する取り組みは、こうした緑を取り巻く潮流を踏まえて設定していき
ます。
●社会の動き
高齢化社会はこれからも一層進みますが、高齢者に配慮した社会資本整備やサービスの
提供といった社会的要請への対応とともに、市民の健康な暮らしを支えるために、公園緑
地の活用促進が求められます。
また、いわゆる団塊世代の大量退職により元気な高齢者が急増しており、新たな生き甲
斐や健康づくりの場として緑の活用が考えられます。市民や事業者のまちづくり等への参
加意欲も高まりをみせており、都市緑化の分野でも市民や事業者の主体的な取り組みをさ
らに広げていく必要があります。
一方、急速に進む少子化の中で、次世代を担う子どもたちが自然とふれあう場として緑
の活用が考えられます。子どもの頃から自然に親しむことで感性が培われ、情操教育や環
境教育に寄与するととともに、緑を介して地域コミュニティとの交流が図られることも考
えられます。
長期的には、名古屋市の人口も将来は減少に転ずることが予想され、その結果として土
地需要の低下が予見されます。その際、計画的に鉄道駅等を中心に多様な都市機能の集積
を図り、郊外部では積極的に緑を再生していくことも考えられます。さらに、気候変動に
伴う影響として局地的な豪雨の増加や海水面の上昇などが懸念されますが、長期的な視野
に立ち、こうした影響に適応できるような土地利用や健全な水循環を、緑の保全・創出を
通じて構築していく必要があります。
●都市の緑を取り巻く動き
都市の緑の様々な働きに期待する声が高まっています。なごやの生物多様性は、生息地
の減少、樹林地の荒廃、外来生物による影響などによる損失が続いていますが、私たちの
暮らしは生態系から受ける様々なサービスを基礎として成り立っていることを認識し、都
市においても生物多様性などの観点から自然環境の保全を進めていくことが重要です。そ
れが、長い目で見れば都市住民にとっても、安全・安心で快適な都市生活につながります。
49
なごや緑の基本計画
また、建築物や舗装面の増加、都市活動の活発化、緑被地の減少などが要因となって、
都市の気温が郊外よりも高くなるヒートアイランド現象が顕在化していますが、快適な都
市環境を維持し、回復するためには、緑をできるだけ確保するとともに、緑地をネットワ
ーク化していくことが前提となります。
こうした緑の働きを的確に評価し、緑を保全・創出していくための土地利用のあり方も
含めた議論が求められています。
●緑に関する制度等
緑の保全・創出を効果的に進めていくためには、関連する法令等にのっとって具体的な
施策を講じていく必要があります。平成 16 年には、いわゆる景観緑三法の制定により、
都市緑地保全法や都市公園法の改正等が行われ、都市緑化のための制度等の大幅な充実が
図られており、緑地保全地域制度など新たに創設された制度の活用を検討していく必要が
あります。
防災に関しては、名古屋市は東海地震の地震防災対策強化地域及び東南海・南海地震防
災対策推進地域に指定されています。震災に備えて避難地等として機能する公園緑地を確
保していく必要があります。
また、なごやはまちづくりの長い歴史があり、多くの歴史的文化的資産が存在していま
す。こうした資産と豊かな緑が一体となって存在する、風格のある都市に向けたまちづく
りを進めていくことが重要です。
■緑を取り巻く動き
50
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
2. 名古 屋市 のめざす緑の都市 像
●名古屋市のめざす緑の都市像
やろまい! つなごまい! まもろまい!
緑と 水の 豊 かな 自然 共 生都 市
なごやの緑は、その多くが戦前から受け継いで守られてきた都市計画公園緑地や風致地
区の中に存在しています。一方で、樹林地や農地の大部分は、土地区画整理事業などによ
って住宅地や商業地となり、街路樹や身近な都市公園のある街並みへと姿を変えていきま
した。
近年、日本全体が少子高齢化の時代を迎え、本格的な人口減少社会になろうとしていま
す。名古屋市においても長期的な人口構成の変化や人口減少を見据えて、市民が主役とな
った成熟したまちづくりを考えていく必要に迫られています。市民の豊かな生活を支え、
いきいきとした暮らしを実現するために、都市の環境インフラを充実させていくことが重
要となります。
緑に関しては、今ある既存の緑をできる限り守り、まちの中に新しい緑を育て増やして
いくことによって、市民が日常生活の中で緑を目にし、緑に包まれた健康で快適な暮らし
を維持し、緑豊かな地域の環境に誇りと愛着を持つことのできるようなまちをめざします。
また、道路や河川等は、それぞれに課せられた安全な交通や通水などの機能を保ちつつ、
まちの中の緑と豊かな自然が残っているなごや近郊の樹林地や農地、公園緑地など「緑の
拠点」を結びつける「緑の都市軸」と位置づけます。そして、多様な生き物を都市の中に
呼び込み、すべての市民が自然を身近に感じる、自然と共生する持続可能な都市(自然共
生都市)をめざします。
もちろん、ただ緑を豊かにするだけでは、必ずしも市民の暮らしが好ましいものになる
とは限らず、たとえば落ち葉や害虫が増えるなどの影響も想定されます。豊かな緑を良好
に、また、市民の暮らしにとって安全で快適に保つためには、日々の細やかな維持管理な
どを合わせて進めていくことが必要です。緑が持つこうした側面も受け止め、自然ととも
にある緑のまちづくりに向けて取り組んでいきます。
なお、緑のまちづくりは、市民・事業者・行政が共に協力しあって取り組んでいくこと
を基本とします。緑を守り、身近な緑とふれあい、充実した市民生活や事業活動を行うこ
とのできるまちをめざします。
51
なごや緑の基本計画
●将来像のイメージ
東部の丘陵地
・緑の拠点となる
樹林地(里山)
・緑豊かな住宅地
・樹林地と川を効
果的につなぎ
ネットワークを
形成
・安らぎとうるお
いが感じられる
生活環境
中央部の洪積台地
・緑あふれる街路
・堀川や中川運河
など歴史が感じ
られる水辺
・屋上緑化などに
よる民有地の緑
・なごやの顔とな
る緑豊かで賑わ
いのある市街地
西部の沖積平野
・広大な田園風景
・公園や道路など
の豊かな木々
・庄内川や戸田川
などの水辺
・農や水辺を身近
に感じられる生
活環境
52
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
●将来的な緑の構造の考え方
都市の緑には、生物多様性の保全やヒートアイランド現象の緩和、うるおいのある景観
形成、防災性の向上など様々な役割があります。このような緑の機能を効果的に発揮する
ためには、道路や河川等、公園緑地などの緑を「緑と水の回廊」として結びつけることが
有効です。そこで「東部の丘陵地」「中央部の洪積台地」「西部の沖積平野」といった、な
ごやを構成する3つの地形と地域特性に応じた緑のあり方を実現していくために、東部丘
陵地一帯、堀川や中川運河に沿って伊勢湾と庄内川を結ぶ地域、及び庄内川や戸田川に沿
った地域を「緑と水の回廊」を形成するゾーンと想定し、広域的な緑のネットワーク形成
を図るとともに、伊勢湾から運ばれる涼しい海風を市街地へ導きます。
また、まとまりのある樹林地や農地、干潟、大きな公園緑地などは、なごやの自然環境
を確保する上で中核的な役割を担うものであることから「緑の拠点」とします。これらは
緑と水のネットワークを形づくる上で核となる貴重な場所であるため、可能な限り緑を保
全していきます。
さらに「緑の拠点」を結ぶ、路上空間に比較的ゆとりのある道路や主要な河川等は連続
した緑地帯を形成する潜在性があることから、「緑の都市軸」とします。このような場所
は、緑と水のネットワークの形成を図るために、豊かな街路樹などによって緑陰街路を形
成し、河川等では周辺地域に残された樹林地など自然環境への配慮、緑化などを重視すべ
きものと考えます。
■東部の丘陵地
■中央部の洪積台地
■西部の沖積平野
53
なごや緑の基本計画
54
東部(丘陵地)
中央部(洪積台地)
西部(沖積平野)
■将来的な緑の構造のイメージ
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
●広域的な緑のネットワーク
緑のまちづくりのためには、名古屋市の周辺も含めた広域的な視点からの緑のネットワーク
形成が必要です。
名古屋市の東部の丘陵地は、愛知県広域緑地計画によって「東部丘陵里山ゾーン」に
位置づけられており、知多半島へと続く里山のネットワークの一部を担います。沖積平野
は、木曽三川まで広がる農地の縁辺部にあたり、木曽三川を中心とした緑と水のネット
ワークの一部を担います。
出典:「愛知県広域緑地計画」掲載図を一部改変
■名古屋市の広域的な位置づけ
55
なごや緑の基本計画
3.施策展開の基本方針
名古屋市では、これまで緑の保全・創出に向けて多様な施策を実施してきました。
今後は次の 3 つの基本方針に基づいて、緑の都市像の実現に向けた取り組みを展開して
いきます。
また、緑のまちづくりの進捗状況を表す指標として、本計画の目標年次である平成 32
年(2020 年)の「緑の将来目標」を、3 つの基本方針に対応して設定します。
やろまい!
みんなで取り組む緑のまちづくり
市民・事業者と協働で、緑豊かな街並み形成を進め、
緑の資産を活かし楽しむための施策を展開します
つなごまい!
人と生き物が快適に暮らすまちづくり
緑の質の向上と緑のネットワークの形成を図るため
の施策を展開します
まもろまい!
既存の緑を大切にするまちづくり
快適な暮らしを支える良好な都市環境の形成に向け
て、緑を保全・活用する施策を展開します
■施策展開の基本方針
56
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
方 針 1 みん なで取り組む緑の まちづくり
健康で快適に日常生活をおくることのできる緑豊かな街並みを形成するため、市民や事
業者と行政がそれぞれの立場から緑化と緑の保全に取り組み、また協働しながら緑のまち
づくりを進めます。
錾乎福劫萝á萎溪盘ò型春SbЯ型酮Gf刀炭{ò`KèzU
②都市公園の管理г臣沉gЯ窖萎H蒋村SáU@铰门{ò`KèzU
鏊萎溪盘j型j腾帽d锰客靛拳g窖萎á襟概狙泅d弗痊c惧è门{zU
④緑を活かして楽しむための施策を展開します
●目標
市民や事業者が主役となった緑のまちづくりを広げていくため、自然環境保全や公園
緑地の管理、さらには森づくりや花づくりなど、様々な場面での市民等の取り組みを活発
にしていきます。
参
項
目
説
明
主な緑のまちづく
緑のパートナーの活動をはじめとする
り活動に携わった
主な緑のまちづくり活動に携わった市民の人数
市民の延べ人数
(平成 23 年度~32 年度の延べ人数)
目
標
考
(H20 年度
実績)
延べ
11,500
25 万人
人/年
57
なごや緑の基本計画
方針 2 人と 生き物が快適に暮 らすまちづくり
地域の植生に応じた多様な動植物が暮らせる都市環境をつくり、日常生活の中で身近に
豊かな自然を感じることができるまちを実現するため、既存の樹林地や水辺の環境を保全
するとともに、これらの緑をつないでいきます。
①緑のネットワーク化により、緑と水の回廊ゾーンの形成をめざします
②緑の量と質を向上させ、多様な生き物と共生できる都市環境をつくります
③公園緑地や樹林地等では、生態系を維持できるよう保全・再生します
●目標
緑のまとまり度やボリューム感、多様性など、緑の質についても適正に評価し、極力保
全するほか、緑化地域制度による市街地緑化など、新たな緑の創出に向けた施策により
2020 年には現状よりも緑が多くなる状況をめざします。
項
目
緑被率(市全域)
説
明
緑の現況調査結果に基づく緑被率
都市公園等とは、街区公園、近隣公園、
10 年前
現 況
(H12 年度) (H22 年度)
25.3 %
8.4 ㎡
市民 1 人当たりの
総合公園などの都市公園と、農業公園、
都市公園等の面積
公共空地、市民緑地、港湾緑地などの (人口
都市公園に類する施設
24.8 %
(H17 年度)
9.4 ㎡
(人口
目 標
(H32 年度)
27 %
10 ㎡
(人口
216.3 万人) 225.3 万人) 233.7 万人)
緑被率は市域の 3 割確保することを当面の目標としますが、長期的には鉄道駅を中心に都市機能の集積を図り
つつ、郊外部の空地整理などによって 40%をめざす考えがあります。
都市公園等の面積は、長期的には市民一人あたり 15 ㎡となることをめざします。
58
第 3 章 緑のまちづくりの将来を描く
方針 3 既存 の緑を大切にする まちづくり
まとまりのある民有の樹林地や農地を守り、環境保全やレクリエーションなどの拠点と
しての活用を進めます。また、市民が日常的に緑とふれあうことのできる環境を確保する
ため、公園緑地や古くから人々に親しまれてきた社寺にみられる公的な緑など、既存の緑
のストックを保全します。
錾fPáj型j凤墙df_b@ī茄窖乖村乎齿型盘冗g>ī萎溪决行盘ò募鲜f剧厅c
保全します
鍪而牡j萎溪决行盘г山盘fej腾帽ò鳞èzU
③都市公園を資産としてとらえ、効果的な利活用を図ります
●目標
都市公園の整備を推進するとともに、地域制緑地制度等を活用することによって、民有
の樹林地や農地の減少を食い止め、市民が利用することのできる緑を増やします。
項
目
まとまりのある緑の
箇所、面積
説
明
10 年前
現 況
目 標
(H12 年度) (H17 年度) (H32 年度)
緑の現況調査の解析により把握され
た 1ha 以上の民有樹林地の箇所数
-
と面積
55 か所
約 300 ha 減 少 ペ ー ス
を抑制し、
可能な限り
緑の現況調査により把握された農地
農地の面積
の面積
1,434 ha
1,320 ha
維持します
59
なごや緑の基本計画
コラム
…C O P 1 0 と名古屋議定書
平成 22 年 10 月、名古屋国際会議場で生物多様性条約第 10 回
締約国会議が開催され、名古屋議定書と愛知ターゲットが採択され
ました。
生物多様性は、私たちの暮らしに様々な恵みをもたらすものであ
り、世界全体で保全と持続可能な利用に向けた取り組みを行うこと
が重要です。生物多様性条約は、1992 年(平成 4 年)に気候変動枠組み条約とともに生
まれた条約で、平成 22 年 10 月末現在、193 の国と地域が締結しています。
生物多様性条約は、
1.地球上の多様な生物を、その生息環境とともに保全すること
2.生物資源を持続可能であるように利用すること
3.遺伝資源の利用から生ずる利益を公平かつ衡平に配分すること
を目的としています。平成8年以降は概ね 2 年ごとに締約国会議が開催されており、条約
の 3 つめの目的である「遺伝資源の利用から生ずる利益の配分」については、その国際的
なルールの確立が締約国会議の積年の課題となっていました。
COP10 で採択された名古屋議定書は、その生物資源の利用と利益配分等に関する国際
的なルールです。遺伝資源の入手には資源提供国の同意が必要であることや、多国間での利
益配分の仕組みを検討していくことなどが盛り込まれました。先進国が発展途上国の生物資
源を利用する代わりに、生物資源を用いた商品開発などによる利益を途上国に還元し、自然
環境の保全に活用することになります。
また、愛知ターゲットは 2050 年までの
長期目標として「人が自然と共生する世界」
の実現を掲げ、2020 年までの短期目標と
して、生物多様性の損失を食い止めるための
効果的、緊急な行動の実施と 20 の個別目標
を定めています。
■生物多様性交流フェア
60
第4章 リーディングプロジェクト
第4章
リーディングプロジェクト
緑の都市像を実現するために特に重点的な取り組みが必要となるテーマを「リーディン
グプロジェクト」として位置づけます。リーディングプロジェクトはいくつかの施策から
構成され、それらの施策間の連携をとりながら推進していくものとします。
●名古屋市のめざす緑の都市像
やろまい! つなごまい! まもろまい!
緑と水 の豊 か な自然 共生 都 市
施策展開の基本方針
みんなで取り組む緑の
まちづくり
人と生き物が快適に暮らす
既存の緑を大切にする
まちづくり
まちづくり
Project 1
Project 2
Project 3
緑に関 わる市民を増やす
緑 と水の 回廊を つくる
今 ある緑 を可能 な限り
保 全する
リーディングプロジェクト
■リーディングプロジェクトの位置づけ
61
なごや緑の基本計画
●リーディングプロジェクトの内容
緑の都市像の実現に向けて
人と生き物が快適に暮らせる豊かな都市環境を実現するため、緑と水のネットワーク
づくりの観点から、既存の緑を保全するとともに、公共施設や民有地の緑化、多自然
川づくり、緑陰街路の形成などを重点的に進めます。
これらの取り組みは、市民の理解と協力を得ながら進めるものであり、行政と市民
や事業者が協力して進める取り組みや、市民や事業者に主体的な役割を期待するもの
を含んでいます。
Project 1
型g墩ōī窖萎ò铭áU
市民や事業者が主役となり、緑のまちづくりに関わる人々の輪を広げていくための
取り組みを行政と市民等が協働で進めます
Project 2
緑と水の回廊をつくる
「緑と水の回廊形成区域」を設定し、既存の緑を保全しながら新たな緑を創出する
ことによって、緑と緑をつないでいきます
Project 3
今ある緑を可能な限り保全する
民有の樹林地や農地の減少を食い止めるため、「保全配慮地区」の設定など、緑の
保全のための施策を進めます
62
第4章 リーディングプロジェクト
●リーディングプロジェクトの主な取り組み一覧
Project 1
緑に関わる市民を増やす ~やろまい! 市民総みどり人間~
①市民参加の裾野の拡大
★オープンガーデン事業の展開
●オアシスの森づくり事業
●市民による緑の管理
●市民緑地の指定・継続
●多様な市民農園の展開
②市民団体等との協働の強化
★緑の質の評価と市民調査の拡充
★緑の市民運動の展開
Project 2
緑と水の回廊をつくる ~つなごまい! 緑と緑そして水~
①都市軸(道路・河川等)の緑化と
緑の拠点づくり
★緑陰街路の形成
●多自然川づくり
●長期未整備公園緑地の事業推進
②街なかの緑の形成促進
★公園緑地のエコアップ
●公共施設の緑化
●緑豊かな教育環境づくり
●緑化地域制度等の推進
③人と生物がすみやすい環境づくり
★郷土種子を活用した緑化
●環境保全型農業の推進
●ため池の環境保全
Project 3
今ある緑を可能な限り保全する ~まもろまい! なごやの緑~
①新たな発想による樹林地や
農地の保全
★緑地保全地域の指定
●都市再生特別地区の運用
●なごや里山構想の推進
★里山保全基金の設立
②緑の保全・維持管理の仕組み
★管理協定制度の活用
★樹林地維持管理の仕組みづくり
③都市公園の利活用の推進
★公園経営基本計画(仮称)の策定
★:新規施策、●:既存施策
63
なごや緑の基本計画
Project 1
緑 に関わる市萎 を増やす
эáǐz@ж 窖萎藐{eè潦队э
(1)プロジェクトの概要
身近にある緑は、街にうるおいのある景観を形成し、市民にレクリエーションの場を提
供してくれるなど、市民の暮らしに欠かせない存在となっています。そして、このような
緑の多くは、街路樹や都市公園の整備といった行政の取り組みだけではなく、個人の住ま
いや事業所などにおける緑化の取り組みによって形づくられているものです。つまり、市
民や事業者は緑のまちづくりの受益者であると同時に、緑のまちづくりを担う主体ともい
えます。
これからも名古屋市と市民・市民団体、事業者が互いに協力しあいながら、また専門家
の支援や協力を得ながら、緑のまちづくりを行うことがさらに重要になってきます。そこ
で本プロジェクトでは、各主体の協働・協力によって、緑の保全・維持管理・活用など
実践的な取り組みや、情報・教育・資金確保など緑の保全・創出を支える取り組みを展開
します。緑を取り巻く様々な局面で、市は市民や事業者等と協働し、共に問題の解決を図
って、公園緑地や樹林地、農地等での取り組みを進めます。
①市民参加の裾野の拡大
市街地
公園緑地
民有樹林地
農地
緑の保全・維持管理・
活用など実践的な
取り組みの推進
協働・協力
市民
市民団体
事業者
専門家
市
緑の市民調査
②市民団体等との協働の強化
64
情報・教育・資金確保
など緑の保全・創出を
支える取り組みの
推進
緑の市民運動
第4章 リーディングプロジェクト
(2)重点的に進める取り組み
錾窖萎蒋蠢j聋坞j蹬匿
市内の各所で気軽に緑とふれあい、緑を豊かにする活動を行う「緑の応援団」を育てます。
より多くの市民が緑に関われる機会を創出し、市民参加の裾野を広げていきます。
オープンガーデン事業の展開
個人宅や事業所、公共施設の庭を広く市民に公開する「オープンガーデン」の取り組み
を園芸愛好家や市が協働で立ち上げ、なごやの園芸文化を高めるとともに、多くの市民に
園芸を通じた緑のまちづくりへの参加の輪を広げていきます。
オアシスの森づくり事業
公園緑地として都市計画決定後、長期間を
経過しているにもかかわらず事業に着手して
いない長期未整備公園緑地では、区域内の民
有樹林地を土地所有者から借地することによ
り「オアシスの森」として市民開放し、自然
との身近なふれあいの場を提供しています。
オアシスの森では、市民と名古屋市が一体と
なって、専門家や土地所有者等の助言や協力
を得ながら、良好な里山を育てていきます。
■雑木林を守るための竹の伐採活動
市民による緑の管理
身近な公園緑地は、近隣住民の健康づくり
やレクリエーションの場であり、利用者の
ニーズに合った整備や維持管理が重要となり
ます。名古屋市と協働して都市公園や街路樹
の管理に取り組む地域住民による団体を、
公園愛護会、街路樹愛護会、活動承認団体、
緑のパートナーとして認定し、活動に対する
支援を行っています。今後も継続的に新たな
団体や参加者を募るとともに、花ボランティ
アなどの活動を支援して、市民主体の公園・
■「花ボランティア」活動
街路樹管理を進めていきます。
65
なごや緑の基本計画
市民緑地の指定・継続
民有地の樹林地では、土地所有者と市民や事業者が協力して維持管理を行い、樹林地を
活用した自然とのふれあい活動や自然環境学習などを推進します。土地所有者等と市が
契約を結び市民緑地として市民に開放していますが、今後も新たな市民緑地の設置を進める
とともに、維持管理には市民の参加を得て、地域の貴重な緑を良好に保全・育成していき
ます。
多様な市民農園の展開
都市の農地は、環境保全や防災などの役割
を果たしており、計画的に保全する必要があ
ります。そこで、環境保全型農業の推進に加
えて、「農」のある暮らしの推進を図るため、
市や農協、農家が設置する多様な市民農園を
確保し、多くの市民が身近に「農」とふれあ
うことができるようにします。
また、市内の水田地帯を「水の里山」と捉
え、農家開設型の体験水田の設置等を推進し、
市民が協働して水田を守り、農を支える仕組
■市民農園
みをつくります。
鍪窖萎帕乃泅dj弗痊j脯春
まち全体の緑を充実させていくためには、住宅地等の民有地の緑の保全と緑化推進が重
要であることから、市民の緑の保全や緑化への関心を高め、取り組みを促していく必要が
あります。このため、緑に関連する市民団体等と連携して、緑の保全や緑化に関する情報
提供、イベント、学習講座などを推進します。
また、緑の保全・創出に関する施策を検討するための基礎資料として、生き物を含む緑
の調査等においても市民団体等の有する情報や活動力の提供を受けるなど、市民団体等と
の連携を強化することにより、自然と共生する緑のまちづくりを進めていきます。
緑の質の評価と市民調査の拡充
なごやの緑や生物分布に関して、
「名古屋ため池生き物いきいき計画事業」など市民調査
活動の成果を発展させ、なごやの生物多様性保全に関する協議会を設置します。研究機関・
教育機関や市民専門家、あるいは市民団体、行政機関・地域等の参画を得て、緑や生物多
様性保全に資する情報の調査分析を行い、緑の質の評価を進めます。
66
第4章 リーディングプロジェクト
緑の市民運動の展開
緑のまちづくりに対する市民活動の裾野を広げ、まちじゅうに緑を広げていくためには、
市民一人ひとりが緑を愛し、ガーデニングなどを通じて身近な緑を育てていく文化を創る
ことが重要です。また、生物多様性の保全・向上の意識を啓発し、自然からの恵みにより
人間社会が支えられていることを学んでいくことが重要です。このため、市民・市民団体、
小中学校や大学、事業者など、あらゆる立場の人々が関わりを持つ緑のまちづくり運動を
展開していきます。
67
なごや緑の基本計画
Project 2
緑 と水の回廊をつくる
э`fPz@ж 型d型YSb菱э
(1)プロジェクトの概要
まとまりのある樹林地や大規模な公園緑地は、市民の自然とのふれあいの拠点となり、
多様な生き物のすみかとしても重要な役割があります。また、周辺の市街地よりも気温が
低いクールアイランドとして、ヒートアイランド現象を緩和し、快適な都市環境をもたら
します。そして、複数の緑地をつなげることでさらにこれらの効果を高めることができま
す。したがって、なごやにおいては既存の公園緑地や樹林地、農地、河川等やため池など
のネットワーク形成を進めていくことが重要です。
本プロジェクトでは、既存の緑地をつないでいくことに主眼をおいて緑の保全・創出の
取り組みを進めます。効果的、効率的にプロジェクトの成果を上げるため、本計画の期間
内においては、既存の河川等や路上空間に比較的ゆとりのある道路を軸とした一定の区域
において、優先的に取り組みを推進していきます。
●緑と水の回廊の効果
緑と水の回廊には、以下のような様々な効果が期待されます。
・多様な生き物と共生する都市をつくります
・涼しい風を都市の中に呼び込み、ヒートアイランド現象を和らげます
・緑豊かなうるおいのある都市景観を形成します
・市民の健康づくりやコミュニケーションに活用できる連続的な緑の空間を提供します
・災害時の避難路や避難場所を確保します
●緑と水の回廊のイメージ
例えば、堀川や中川運河などの風の道を通じて呼び込んだ伊勢湾の涼しい風や、熱田神
宮などのクールスポットから供給される冷気を、市街地の緑化や緑陰街路によって市街地
内に取り込むことにより、過ごしやすい都市環境をつくります。
また、多様な生き物との共生に向けては、まとまりのある樹林地を有する公園緑地など
生物多様性の拠点となる緑を、河川等の連続した水辺や街路樹の育成により相互につなげ
て、緑の多い市街地を形成し生き物に優しい都市環境をつくります。
68
第4章 リーディングプロジェクト
*クールスポット:大きな緑のまとまりで、周辺より気温が低い傾向を示す場所
■プロジェクトのイメージ(例示)
69
なごや緑の基本計画
(2)重点的に進める取り組み
①都市軸(道路・河川等)の緑化と緑の拠点づくり
河川等は都市における貴重な水辺空間です。また、道路は市域全体に網目のように張り
巡らされ、緑のネットワークを形成する上で重要な空間となります。そこで、水辺や道路
の街路樹により、まとまりある樹林地や農地を結び、自然環境の連続性を確保します。
また、都市軸の緑化と合わせて、計画的かつ効率的に緑の拠点を創出していくため、長
期未整備公園緑地の事業推進を図るとともに、都市計画の見直しについて検討を進めます。
緑陰街路の形成
緑の都市軸となる路上空間に比較的ゆとりのある道路を中心として、街路樹の効果的な
植栽や育成、更新によって道路空間を広がりのある街路樹の樹冠で被い、美しい都市景観
づくりや、涼しい風が通り抜け、夏でも快適に歩くことができる街路を形成します。この
ため、可能な範囲で中央分離帯への高木植栽を検討するほか、空いている空間への補植を
行い、自然の樹形に仕立てる剪定によって樹冠を大きく広げるなど、街路樹の育成に努め
ます。
多自然川づくり
香流川、長戸川、野添川などにおいて、治水安全度を高める改修をしていく中で、河川
等が本来有している生物の生息・生育・繁殖環境や多様な河川景観を保全・創出する多自
然川づくりを進めます。自然の材料を用いて、生物がすみやすい水際にしたり、コンクリ
ートブロックに土を被せて植物が生えやすい護岸にするなど、多様な生物が息づく水辺環
境を創出していきます。
長期未整備公園緑地の事業推進
市が事業を行う公園緑地では、都市計画決定後に長期間が経過しながらも、区域内での
用地取得などが十分に進んでいない公園緑地があります。緑の拠点づくりを進めていくた
め、こうした長期未整備公園緑地においては整備プログラムに基づいて計画的な事業推進
を図ります。
また、近年の社会経済情勢を踏まえた上で、都市計画の見直しについても必要に応じて
検討していきます。
70
第4章 リーディングプロジェクト
■「緑陰街路の形成」のイメージ
路上空間に比較的ゆとりのある道路において、交通機能の確保を前提とした上で街路樹
の連続した緑を創出するなど、緑陰街路の形成を図ります。緑の量の増加により、良好な
都市景観の形成や都市のヒートアイランド現象の緩和など、人や生き物に優しいまちづく
りが期待されます。
■緑陰街路のイメージ
■中央分離帯への高木植栽
■沿道と道路の一体的な緑化
■歩道を覆う樹冠の天蓋
■車道を覆う樹冠の天蓋
71
なごや緑の基本計画
②街なかの緑の形成促進
市街地内の公共施設や民間の事業所・宅地などにおける緑は、それぞれの規模は小さく
ても、緑豊かな都市景観の形成を通じ、人々の心にうるおいを与え、多様な生き物のすみ
かとなるなど、都市には欠かすことのできない存在といえます。そこで、公共施設や民有
地において緑を増やす取り組みを進めます。
公園緑地のエコアップ
公園緑地は、市街地における生物の多様性の場、水や落ち葉など自然物質の循環の拠点
となります。豊かな生態系を育むとともに、市民の環境保全への意識啓発や行動喚起を
図るため、公園整備において動植物の多様な生息場所となるビオトープの保全・設置など
を行います。また、都市公園内にある既存の樹林地や湿地、水辺などは、生態系に配慮し
て維持管理を行います。
公共施設の緑化
多くの市民が利用する公共施設の緑化は、市民生活にうるおいを与えるとともに、民有
地緑化の推進モデルとして先導的役割を果たします。そこで、施設の特性に応じて、敷地
周囲の生垣化、建築物の屋上・壁面や駐車場の緑化などの緑化に取り組みます。
緑豊かな教育環境づくり
教育の場では、ビオトープ、花壇、野菜栽培園の整備などといった自然体験ができる場
づくりや、教室の窓の外側でアサガオなどを育てる「緑のカーテン」事業など、緑豊かな
教育環境づくりを進めます。
緑化地域制度等の推進
都市緑地法に基づく緑化地域制度や緑のまちづくり条例に基づく規定によって、建築物
の新築・増築の際に一定割合以上の緑化を義務づけています。緑と水の回廊形成区域を中
心として、緑豊かで快適なまちづくりを行うため、緑陰街区の形成を進めます。街区内の
公共施設では、緑陰を提供する樹木を積極的に植栽します。民有地においても、緑化地域
制度や地区計画の活用により、緑陰の形成を図る質の高い緑化を誘導します。
72
第4章 リーディングプロジェクト
③人と生き物がすみやすい環境づくり
樹林地や農地、水辺などの緑の保全・創出に際しては、生物多様性保全の観点も含めて
検討し、質の高い緑地の創出に努めます。
郷土種子を活用した緑化
近年、外来生物の侵入、移入種の持ち込みなどによる生態系の撹乱が、生物多様性の危
機の原因の 1 つといわれています。このような状況を踏まえ、市民協働により郷土種子か
ら苗木を育成し、市内の公園緑地へ植樹することにより、緑の保全・創出を図るとともに、
生物多様性を考えるきっかけとします。
環境保全型農業の推進
農地は、生態系を支え、自然環境を守る機能も有しています。生物多様性の観点からも
減農薬栽培、減化学肥料栽培、有機栽培の普及を図り、環境保全型の農業を推進します。
ため池の環境保全
ため池の生物多様性の向上を図るため、市民と連携して池干しや外来生物の除去などの
取り組みを行います。また、生物多様性に関する体験学習プログラムなどを通じて、市民
を対象とした普及啓発活動を行います。
コラム
…真夏日の接地面温度
真夏日のアスファルト上では、日陰でも 40℃を超える温度となりますが、緑がある場所は
陽があたっていても 40℃以下です。
緑がヒートアイランド現象を緩和し、快適な都市環境をもたらしていることがわかります。
木の葉の温度は… 葉の表
28
℃
27
℃
日陰の路面温度
38
29
℃
℃
芝生
葉の裏
日向の路面温度
44
57
℃
℃
歩道
アスファルト道路
出典:大和田道雄氏(愛知教育大学名誉教授)の講演スライドから一部加筆して作成
73
なごや緑の基本計画
( 3 )「 緑 と 水 の 回 廊 形 成 区 域 」 の 設 定 の 考 え 方
①緑と水の回廊ゾーンの設定
本市の地形を特徴づける「東部の丘陵地」「中央部の洪積台地」「西部の沖積平野」の各
区域において、緑の拠点や主要な河川等を包含するゾーンを抽出し「緑と水の回廊ゾーン」
と位置づけます。なお、ゾーンに含まれていない山崎川などの河川等や名古屋環状線など
の路上空間に比較的ゆとりのある道路においても、
「緑の都市軸」と位置づけ重点的な緑化
施策を展開していきます。
【緑と水の回廊ゾーン】
ゾーン
内容
このゾーンは、小幡緑地や東山公園、牧野ヶ池緑地、相生山緑地、
天白公園といった大規模な公園緑地に囲まれており、緑と水のネット
ワークを形成していく上で重要な位置にあたります。
東 部 の
丘 陵 地
天白川・植田川を中心とした一帯であり、路上空間に比較的ゆとり
のある道路にも着目し、公園緑地を結びつける緑の軸として活用する
ことが考えられます。また、ゾーン内には農地が比較的多く残ってい
るところもあり、緑の多い住宅地もみられるなど、街区内の緑の保全、
緑化推進による効果も期待できます。
このゾーンは、名古屋城や熱田神宮を含み、堀川や中川運河を中心
とした名古屋市の中心部にあたります。
中央部の
緑化地域制度などによって緑化を推進するとともに、河川等に沿っ
洪積台地
たオープンスペースを確保するなど、川と都市の結びつきに着目した
多様な取り組みが考えられる地域です。
このゾーンは、大規模な水田地帯が広がる市街化調整区域を多く含
んでおり、庄内川、戸田川、日光川といった河川が流れています。
西 部 の
環境保全型農業を通じた水田の生物多様性保全を進めて、住宅地と
沖積平野
農地や川との結びつきを強化するなど、緑と水を活用した多様な取り
組みが考えられる地域です。
74
第4章 リーディングプロジェクト
②緑と水の回廊形成区域の設定
緑と水のネットワークの形成は、路上空間に比較的ゆとりのある道路における緑化の増
進や河川等の自然に配慮した環境づくりを中心として、周辺の緑の拠点や市街地内の緑を
つないでいくことにより進めます。具体的には緑陰街路づくり、多自然川づくり、民有地
の緑化などの取り組みを重点的に実施する区域として、
「緑と水の回廊ゾーン」の中に「緑
と水の回廊形成区域」を定めることを検討します。
【区域設定の考え方】
・河川等や路上空間に比較的ゆとりのある道路を緑の都市軸とします。
(庄内川、堀川・
中川運河、天白川などの河川等や、久屋大通、若宮大通、名古屋環状線、その他の路
上空間に比較的ゆとりのある道路)
・緑の都市軸から両側 500m程度の範囲 * を目安として、「緑と水の回廊形成区域」の
設定を検討します。また、大規模な公園緑地など、緑の拠点同士を結ぶ地域も検討の
対象となります。なお、区域設定は道路等の地形・地物で囲まれた範囲とします。
*:「500m程度の範囲」について
学術文献等を参考にして、熱環境の改善や生物多様性の保全の観点から設定しました
【主な知見】
a. 幅員 100m以上の河川緑地では、河川から約 200mの範囲まで低温域が及ぶ
b. 皇居から風下への冷気のにじみ出しは約 350mに及ぶ
c. タヌキが往来可能な緑地間の距離は 100mである
d. シジュウカラの行動範囲は約 250mである
【文献】
a. 「ランドサット TM データ解析による市の気象緩和に効果的な緑地形態と規模に関する研究」入江ほか、
第 34 回日本都市計画学会学術研究論文集(1999)
b. 「皇居におけるクールアイランド効果の観測結果について」環境省発表(2007/10)
c. 「自然環境副便の技術」小河原孝生、朝倉書店(1992)
d. 「郊外の都市開発における緑地の生態ネットワーク特性の評価システムに関する研究」後藤ほか、環境シ
ステム研究(1998)
75
なごや緑の基本計画
■緑と水の回廊形成区域の設定例
76
第4章 リーディングプロジェクト
(4)3つの地形と地域特性に応じた区域設定
①取り組みの方針案「東部の丘陵地」
【現況】面積:約 1,000ha
天白川と植田川の沿川一帯であり、相生山緑地、東山公園、牧野ヶ池緑地、天白公園な
どの緑の拠点を結ぶ区域です。
【回廊形成の方針】
里山を結ぶ緑と水のネットワークの形成
丘陵地の樹林地の緑や変化に富んだ地形は、多様な植生を形成し、昆虫や小動物などの
生息場所となって、豊かな生態系を維持しています。またこの区域に降った雨は、植田川、
天白川から海へと注ぎます。この区域では、豊かな生態系を形成する緑の拠点を連携させ
ることで、多くの生き物を往来させ、人々に安らぎとうるおいが感じられる地域を創出し
ていきます。そのため、地域特性に応じて公有地の緑化を重点的に取り組むほか、民間緑
化の支援事業の充実などにより、質の高い緑化をめざします。
■東部の丘陵地における施策展開例
77
なごや緑の基本計画
②取り組みの方針案「中央部の洪積台地」
【現況】面積:約 3,800ha
堀川、新堀川、中川運河を中心として、名古屋城一帯や熱田神宮周辺、笹島周辺などの
緑の拠点を含む、都心を南北に結ぶ区域です。
【回廊形成の方針】
緑豊かで賑わいのある市街地の形成
都心区域には、名古屋城築城とともに切り開かれた堀川や新堀川(旧精進川)を軸に、
名古屋城と名古屋港を結ぶネットワークがあります。堀川や新堀川は、かつては城下町に
住む人々の生活を支えるとともに舟運に活用され、なごやの産業を支えて街に賑わいを創
り出してきました。これらの水辺をうるおいある空間に改善していくとともに、街路樹等
の緑と水辺を結び、都心に涼しい風を送り込む「風の道」を形成します。
また、名古屋駅の南に広がる大規模再開発エリア「ささしまライブ 24」は、旧国鉄笹
島貨物駅跡地の約 12.4ha と中川運河船だまり周辺を含む地区で、今後、本格的な開発が
動き出します。土地区画整理事業や民間活力による土地利用を図りながら、積極的に緑の
創出と、中川運河を活用した水辺づくりを行います。
78
第4章 リーディングプロジェクト
■中央部の洪積台地における施策展開例
79
なごや緑の基本計画
鏊惧è门{j铁寥裁ǔ禄笋j椽挛碳坞ù
【現況】面積:約 1,700ha
中川区と港区の戸田川を中心とした一帯です。大部分が水田であり、戸田川緑地では、
なごや西の森づくりが行われています。
【回廊形成の方針】
水田と水路・河川等を結ぶビオトープネットワークの保全
庄内川の西側一帯に広がる田園地帯は、江戸時代以降の干拓によって形成され、農業
用水路が網の目のように整備され農耕が営まれてきました。政令指定都市ではまれな、ま
とまりのある水田や戸田川緑地は、農業用水路や戸田川などの河川等により結ばれて、豊
かな生態系を育む地域を形成しています。今後も、こうした豊かで自然的な環境を守り伝
えていきます。
■西部の沖積平野における施策展開例
80
第4章 リーディングプロジェクト
Project 3
今 ある緑を可能 な限り保全する
эz ̄ǐz@ж fPáj型э
(1)プロジェクトの概要
名古屋市はほぼ全域で市街化が進んでいます。環境保全や防災など緑の様々な働きを確
保し、健康で快適な市民生活を支えることのできる良好な都市環境を維持していくために
は、これまで残された緑を確実に保全していくことが重要です。特に市域東部の丘陵地に
存在する東山公園や相生山緑地など都市計画公園緑地内のまとまりある樹林地は名古屋市
の緑の骨格をなしていますが、事業未着手の民有地では、開発に対しての対抗措置が十分
であるとはいえません。また、都市計画公園緑地以外にも比較的規模の大きな樹林地や、
地域に点在する小規模な緑や景観的に重要な樹木もあり、これらの保全手法の確立が必要
です。
樹林地の減少を食い止めるためには、早急に保全措置を講じていく必要があります。こ
のため、都市緑地法で緑の基本計画に定めることとされている「保全配慮地区」を新たに
設定するとともに、新たな緑地保全のための仕組みを構築するなど、様々な手法を用いて、
可能な限り緑地保全に努めます。
保全配慮地区とは
都市緑地法第 4 条の 2 の中で緑の基本計画の策定項目として定める「緑地保全地域及
び特別緑地保全地区以外の区域であって重点的に緑地の保全に配慮を加えるべき地区」の
ことです。
■保全措置が必要な民有地の緑(イメージ)
81
なごや緑の基本計画
(2)重点的に進める取り組み
①新しい発想による樹林地や農地の保全
なごやに残された樹林地の多くは都市計画公園緑地内に存在します。都市計画公園緑地
内では建築の制限により一定の土地利用の規制がかかります。しかし、先行取得資金の減
少などにより、今後も長期間にわたって事業着手の見込みが立たない区域では、一時的な
土地利用などにより既存の緑が失われてしまう可能性があり、開発に対する対抗措置が十
分であるとはいえません。このような区域についても土地所有者の理解を得ながら保全し
ていくために、オアシスの森づくり事業の継続とともに、通常の公園整備の手法にとらわ
れることなく、新しい発想による樹林地の確保を図ります。
都市計画公園緑地以外に、保全策が講じられていない民有樹林地も少なからず残ってお
り、高い開発圧力にさらされています。また、都市内に貴重なオープンスペースを提供し
ている市街化区域内の農地も年々減少を続けています。このような民有樹林地や農地の保
全を重要な課題としてとらえ、都市計画による地域制緑地の指定などにより対策を講じる
とともに、都市再生特別地区制度を活用し、都心部での良好な都市開発の誘導とあわせて
市内に残された貴重な緑地や水辺空間の保全を図ります。
緑地保全地域の指定
都市緑地法に基づき、比較的規模の大きい民有樹林地を中心として、一定の土地利用を
許容しつつ、緑の保全措置を講じる制度です。これに該当する地域において、土地所有者
の理解を得ながら指定に向け検討を行います。条例及び緑地保全計画に行為の規模や措置
の基準を規定し、緑地の保全に関して必要となる施設整備や管理等の内容を定めます。
都市再生特別地区の運用
都市再生に貢献し、土地の合理的かつ健全な高度利用を図る都市開発に対して容積率の
緩和などを行う都市再生特別地区制度を活用し、都心部での良好な都市開発と合わせて市
内に残された貴重な緑地や水辺空間の保全を図ります。
なごや里山構想の推進
生物多様性に配慮し森の恵みを受けられるよう都市公園の整備やオアシスの森づくりを
進めて、市民の環境保全への意識啓発や行動喚起を図ります。東山公園・平和公園、相生
山緑地、猪高緑地、荒池緑地において、様々な整備手法を活用し、里山景観の保全・再生、
多様な生物の生息空間を確保するとともに、市民利用を図ります。
82
第4章 リーディングプロジェクト
②緑の保全・維持管理の仕組みづくり
なごやの樹林地は、かつては人々の暮らしの中で利用されて育まれてきた里山ですが、
人による管理が行われなくなってから長期間が経過し、今では人が立ち入ることができな
いようなうっそうとした樹林地が増えています。また、まちの中にある大木(地域樹木)
は、地域のシンボルにもなり、地域景観を構成する重要な資源ですが、落ち葉の片付けや
隣家への日照阻害などが問題となり、強剪定されたり、時には伐採されることもあります。
このような里山や地域樹木を保全し、所有者や市民が協力して健全な状態で維持管理し
ていくための取り組みを進めます。
里山保全基金の設立
民有の樹林地は、相続による所有権移転等を機に土地利用が変更される恐れを常に抱え
ています。恒久的に担保するためには、買い取ることが必要であり、そのための資金とし
て市費の投入を検討するほか、市民や事業者から広く調達するため、基金の設立を検討し
ます。
管理協定制度の活用
都市緑地法に基づき、特別緑地保全地区や緑地保全地域内の緑を対象に、土地所有者と
名古屋市または緑地管理機構が協定を締結し、緑の管理を行います。対象となる緑地では、
里山としての生物多様性に配慮した管理を行い、地域固有の動植物の保全に努めるものと
します。
樹林地維持管理の仕組みづくり
建築敷地の庭などで大きく育った樹木は、地域の景観に風格を与え、自然や季節の移ろ
いを身近に感じさせる大切な存在です。このような樹木に対する地域住民の愛着心を高め、
地域ぐるみで守り育てていく仕組みをつくります。
このほか、主な公園緑地や民有樹林地で、市民団体や事業者の参加による樹林地の管理
を推進するための仕組みを検討します。また、小規模な民有樹林地等についても良好な里
山の環境を形成するために、土地所有者と市民団体等が協力して管理を行うことができる
新たな仕組みを検討します。
83
なごや緑の基本計画
③都市公園の利活用の推進
なごやの公園は、鶴舞公園の誕生(明治42年)から100年以上の歴史を重ね、都市
の骨格と市民生活を支える重要な役割を果たしてきました。戦前から大規模な公園緑地を
配置してまとまりのある緑を確保してきたほか、都市計画公園事業や土地区画整理事業な
どを通じて市民に身近な公園を提供するなど、緑のまちづくりに努めてきました。その結
果、1,404 か所、1,550ha(平成 22 年 4 月 1 日現在)の都市公園が整備され、国内の
主要大都市の中でも市域面積に対する都市公園面積が上位となるなど、基盤整備が量的に
は進んできています。
しかし、近年、社会情勢の急激な変化や価値観の多様化、厳しい財政事情など、公園を
取り巻く状況が大きく変化しています。これまで整備、維持管理に努めてきた都市公園を
資産としてとらえ、顧客志向や経営的手法を取り入れた公園経営のあり方を整理し、市民
サービスのさらなる向上や地域の活性化に役立つように、都市公園の利活用の推進を図り
ます。
公園経営基本計画(仮称)の策定
「名古屋市緑の審議会」で、先進的見地から審議を通じて公園経営のあり方について整
理します。また、審議会の答申を踏まえ、公園経営の理念、方針、展開手法などを「公園
経営基本計画(仮称)」としてとりまとめ、その実施を図ります。
84
第4章 リーディングプロジェクト
( 3 )「 保 全 配 慮 地 区 」 の 設 定 と 取 り 組 み の 方 針
①地区設定の要件
「保全配慮地区」は、概ね 1ha 以上のまとまりのある民有の樹林地を含む区域に設定
します。
【設定要件の考え方】
・未買収の民有樹林地が残る都市計画公園緑地
または、
・市街化区域内において、上記以外で以下のいずれかの要件に該当する地域を含む道路
等の地形・地物で囲まれた区域
①保全を図るべき 1ha 以上の規模を有する樹林地
②生物多様性の保全の観点から重要な樹林地、湿地等を含む地域
③市民が自然とのふれあいの場として利用している樹林地、または今後の利用が
望ましいと考えられる樹林地
④小規模な樹林地が高密度に分布している地域
注)ここで示す「樹林地」とは、
「緑被地の調査」により、高木・低木・竹林として識別された場所です。
85
なごや緑の基本計画
②保全配慮地区の設定
要件にあてはまる樹林地を中心に「保全配慮地区」を設定します。候補となる樹林地の
位置及び範囲は、下図に示した通りです。これら樹林地について、生物の多様性にも着目
して緑の質を評価し、区域の設定を検討します。
■保全配慮地区の候補地
86
第4章 リーディングプロジェクト
③樹林地の評価の実施
「保全配慮地区」等の樹林地について、生物多様性や市民の利活用・保全活動等の状況
などをふまえて分類・評価を行い、保全の重要性や優先順位、保全方策などについて検討
します。
【調査フロー(案)】
緑の現況調査の分析
・平成 22 年度の緑の現況調査の結果に基づ
き、1ha 以上の規模を有する樹林地を抽出
・地域制緑地の指定状況等から、保全を検討
すべき樹林地を選定
既存データ収集・整理
・植生、動植物の分布、湧水や湿地の分布、
市民等による保全活動実施状況等を把握
現地調査
・既存データの整理結果の確認
・市民の自然とのふれあい活動の状況や、
景観特性等を把握
各地区の分類・評価
・樹林地の特性に応じた分類
・定量的かつ定性的な評価を行い、保全上の
優先性のランク付け
保全方策の検討
・分類やランクごとに、都市計画等の制度の
活用を含めた具体的な保全方策を検討
④保全配慮地区における施策
一定のまとまりを有する民有樹林地のうち保全措置が必要と考えられるものについては、
多様な手法の組み合わせにより、地区の自然的環境の保全に努めます。
具体的には、法令等による緑地保全制度の活用を軸として、緑の確保を進めます。また、
地区内に包含される樹林地や湿地、ため池など、多様な生き物がすむことのできるビオト
ープ環境の維持をめざします。
●緑地開発事前協議制度
樹林地等の緑地の開発計画時における事前の申し出、協議等の手続きについて、緑のま
ちづくり条例等に定めることを検討します。制度の適用区域は保全配慮地区とし、規則等
に定めることを想定しています。
87
なごや緑の基本計画
【制度概要(案)】
・木竹の伐採、土地の形質の変更等、一定の条件に該当する行為を行おうとする者に、
行為の許認可や確認申請等の前に、市長に申し出ることを義務づける
・開発計画に関する地域住民等への説明会の開催を求める
・市と事業者は、緑地保全に関する協定を締結する
・保全に配慮した開発計画とするよう条例に基づく指導を可能とする
・木竹の伐採、緑地率等について、協議や指導の際の基準を定める
●都市計画制度等による樹林地保全
樹林地の評価に基づき、必要に応じて特別緑地保全地区等、法令に基づく各種の制度を
活用することにより、保全配慮地区内の樹林地の保全を図ります。
制
度
特別緑地保全地区
緑地保全地域
地区計画による緑地保全
市民緑地
概
要
都市における良好な自然的環境となる樹林地等の緑地におい
て、建築行為など一定の行為の制限などにより現状凍結的に保
全する制度
里地・里山など都市近郊の比較的大規模な緑地において、比較
的緩やかな行為の規制により、一定の土地利用との調和を図り
ながら保全する制度
屋敷林や社寺林等、身近にある小規模な緑地について、地区計
画制度等を活用して現状凍結的に保全する制度
土地所有者や人工地盤・建築物などの所有者と地方公共団体等
が契約を締結し緑地や緑化施設を公開する制度で、公開された
緑地は地域の人々が利用できる
●樹林地と一体となって良好な自然環境を形成している農地の保全
生産緑地地区制度の弾力的運用による保全や市民農園としての活用を図ります。
●緑地の維持管理
薪炭の採取や落ち葉かきなど土地所有者が利用しなくなった樹林地は荒廃し、生物多様
性が低下していきます。こうした樹林地を開発から守るとともに、市民に親しまれ多様な
生き物を育む森にしていくため、土地所有者に対する課税の軽減等の優遇措置や市民によ
る維持管理活動を支援していきます。
●緑を保全する制度の活用検討
都市計画による地域制緑地の指定などを行った上で、樹林地等における管理協定制度な
どを導入することにより、緑を保全すると同時に市民の利用に供するとともに、樹林地等
の所有者の負担を軽減させることを検討します。
88
第5章 緑のまちづくり推進に向けて
緑のまちづくり推進に向けて
第5章
(1)計画の推進体制
●推進体制の確立
本計画の推進に関して、総合的な調整及び相互連携の強化を図るため、
「緑のまちづくり
推進本部」を設置します。
また、全庁をあげて目標の実現に取り組み、特にリーディングプロジェクトを推進して
いくために、公園緑地や都市計画、農政、環境など各分野を担当する関係各課が参加する
「緑の推進庁内連絡会議」を設置し、情報共有を行うなど、各課の連携・協力体制を構築
します。
なお、本計画の推進にあたり重要な施策課題等の検討については、緑のまちづくり条例
第 40 条に基づく「名古屋市緑の審議会」において審議を行い、適切な対応を行います。
事業者
市民・NPO
緑のまちづくり
国・県等の
関係機関
緑のまちづくり
推進本部
緑の推進
庁内連絡会議
名古屋市緑の審議会
行
政
■計画の推進体制
89
なごや緑の基本計画
●市萎・事業者等と連携した計画の推進
緑の保全・創出を進めていくためには、市民や事業者等がそれぞれ緑の大切さや役割を
理解し、主体的に緑のまちづくりに参画する必要があります。本計画の目標やリーディン
グプロジェクトなどを市民・事業者・行政が共有し、互いに連携しながら、計画を推進し
ていきます。
事業者
市民・NPO
緑のまちづくりへの参加
緑のまちづくりへの参加
連絡・調整
・緑に対する意識の向上
・身のまわりの緑化推進
・地域緑化活動への積極的参加
緑の基本計画
推進のための
市民・事業者・行政の
役割と連携
・企業市民としての自覚
・敷地内緑化の推進
・地域緑化活動への積極的参加
・事業者の持つ各種ノウハウの
都市緑化への活用
連絡・調整
連絡・調整
行
政
緑のまちづくりの支援・先導
・リーダーシップの発揮
・緑に関する各種制度の構築
・市民参加の支援
・市民・事業者の緑化活動の推進
・都市公園などの整備や公共空間の緑化推進
■各主体の役割と連携のイメージ
90
第5章 緑のまちづくり推進に向けて
●市萎・事業者の参加と協力
≪市民の役割≫
緑のまちづくりを行うためには、行政だけではなく市民の積極的な取り組みが不可欠で
す。例えば、庭の道路に面したところに木を植えたり生け垣を設けることで、街並みを緑
豊かな美しい景観とすることができます。
一方、まちの緑が豊かになるにつれて、たとえば街路樹の剪定や落ち葉の清掃の手間が
増えるほか、緑が生き物のすみかとなることで、害虫や鳥の糞害が増加するなど、日々の
暮らしに好ましくない影響を与える事態も想定されます。緑豊かで、快適な暮らしを享受
するためには、これまで以上に緑の維持管理をしっかりと行う必要があり、そこには市民
の日常的な参加が欠かせません。
これまでも市民が都市公園や街路樹の維持管理に関わる公園愛護会や街路樹愛護会など
の活動、主要な都市公園や樹林地では、NPO団体などによる森づくりや自然観察会など
が行われています。こうした活動は、市民の自発的な参加によって成り立っています。こ
れからも、市民が緑のまちづくりの主役として、地域の緑化や緑地保全活動へ積極的に参
加し、行動していただくことが必要です。
≪事業者の役割≫
緑のまちづくりの輪を広げていくためには、事業者の理解と協力が必要です。職場など
に草花や小さな樹木の植木鉢を置くことで、明るく落ち着いた環境をつくることができま
す。さらに、建物の接道部を緑化すれば企業のイメージアップにもつながります。名古屋
市では、良好な緑化施設を認定する「NICE GREEN なごや」などの緑化支援制度もあり
ます。
また、近年、盛んに行われるようになってきた CSR 活動として、環境への貢献は大き
なキーワードとなっています。CSR 活動による公園や街路樹の落ち葉の清掃や草刈りなど
地域を美しく保つための活動や、従業員による森づくりや農作業体験などの取り組みも増
えています。今後も引き続き緑豊かなまちづくりに対し、事業者の積極的な参加と行動が
求められています。
≪行政(名古屋市)の役割≫
市民や事業者に緑への理解をいっそう深めていただくため、緑の保全や創出について意
識啓発を行います。また、緑化活動への参加を促すなど市民や事業者による主体的な緑の
まちづくりを積極的に支援し、緑に関わる市民の裾野を広げるための講座開催や人材育成
に努めます。
公共施設や公園緑地などの既存の緑については、様々な手法を用いて緑の保全と活用に
努めるとともに、新たな緑の創出にも取り組みます。
91
なごや緑の基本計画
(2)計画の評価と見直し
緑のまちづくり推進本部を中心に、本計画の施策・事業の実施状況や緑被率、都市公園
の整備状況等を整理し、評価を行います。
評価は、概ね5年ごとに行うものとします。評価結果は公表し、市民や事業者の皆さん
からの意見等を収集するとともに、必要に応じて計画を見直します。
施策・事業の実施(D o )
・市の施策・事業の推進
・市民や事業者の参加
点検・評価(C h e c k )
・緑の将来目標の活用
・みどりの年報の作成・公表
・市民等からの意見募集
・緑の審議会からの専門的意見
計画(P la n )
・計画の評価と見直し
(平成 27 年度頃)
・計画の改定
(平成 32 年度頃)
見直し(A c t)
毎年度の計画の推進
・次年度の取り組みの検討
・予算案への反映
5 年ごとの評価・見直し
■PDCAサイクルによる計画推進
92
資 料 編
1.改定の経緯
検討事項・緑の基本計画改定委員会
名古屋市緑の審議会・
緑の基本計画検討部会等
平成 20 年度
基礎的な調査・解析
現行計画の評価
◆第 8 回 審議会 [11 月 13 日]
(諮問・部会設置)
基礎的な調査・解析
現行計画の評価
◆第 1 回 検討部会 [12 月 25 日]
めざすべき名古屋市の緑について検討
◆第 1 回 改定委員会 [1 月 6 日]
平成 21 年度
めざすべき名古屋市の緑について検討
◆第 2 回 改定委員会 [4 月 10 日]
◆第 2 回 検討部会 [4 月 17 日]
緑の現況、課題と対応の方向性、
リーディングプロジェクトについて検討
◆第 3 回 改定委員会 [11 月 6 日]
◆第 3 回 検討部会 [12 月 9 日]
公聴会 [12 月 19 日](市民意見の公述)
◆第 9 回 審議会 [1 月 25 日]
(検討状況報告)
施策の進め方について検討
◆第 4 回 改定委員会 [3 月 23 日]
◆第 4 回 検討部会 [3 月 30 日]
平成 22 年度
計画全体のとりまとめ
答申素案について検討
◆第 5 回 改定委員会 [7 月 12 日]
答申案について検討
◆第 5 回 検討部会 [7 月 21 日]
◆第 10 回 審議会 [9 月 2 日](答申)
◆第 6 回 改定委員会 [9 月 15 日]
計画案のとりまとめ
◆第 7 回 改定委員会 [11 月 11 日]
パブリックコメント
市民意見の募集 [12 月 14 日~1 月 31 日]
◆第 8 回 改定委員会 [3 月 11 日]
市民意見の内容及び市の考え方の公表
なごや緑の基本計画 2020 の策定
平成 23 年度
なごや緑の基本計画 2020 の実施
資-1
2.名古屋市緑の審議会等の委員
●名古 屋市 緑の 審議 会
氏
名
職
飯尾 歩
中日新聞社
○
石川 幹子
東京大学
○
大和田 道雄
愛知教育大学
奥野 信宏
学校法人梅村学園
中京大学
○
○
○
業
等
論説委員
工学系大学院
教授
名誉教授
理事
総合政策学部教授
尾田 榮章
特定非営利活動法人日本水フォーラム
相談役
亀山 章
東京農工大学
農学部
後藤 澄江
日本福祉大学
社会福祉学部
坂口 光
中部電力株式会社
佐々木 葉
早稲田大学
新海 洋子
特定非営利活動法人ボランタリーネイバーズ
名誉教授
教授
環境・立地本部環境部長
理工学部
教授
環境省中部環境パートナーシップオフィス
○
○
梛野 良明
国土交通省
半田 真理子
財団法人都市緑化技術開発機構
広田 奈津子
なごや生物多様性アドバイザー
堀田 守
なごやの森づくりパートナーシップ連絡会
丸山 宏
名城大学
向井 清史
名古屋市立大学
チーフプロデューサー
都市・地域整備局公園緑地・景観課
農学部
(敬称略、平成 22 年 9 月 2 日現在
緑地環境室長
都市緑化技術研究所長
代表
教授
大学院経済学研究科
教授
○印の委員は「緑の基本計画検討部会」に所属)
緑の基本計画の改定についての諮問時(平成 20 年 11 月 13 日開催の第 8 回審議会)に、委員であった
滝川正子氏(なごやの森づくりパートナーシップ連絡会代表)は、平成 22 年 3 月 31 日任期満了により、
退任されました。
資-2
●緑の 基本 計画 改定 委員会
局
緑政土木局
課
◎緑地部長
主幹(企画)
道路部 道路維持課長
道路部 道路建設課長
河川部 河川計画課長
河川部 堀川総合整備室長
緑地部 緑地管理課長
緑地部 緑化推進課長
緑地部 緑地施設課長
緑地部 主幹(事業推進)
農政課長
農業技術課長
総務局
企画部 企画課長
環境局
環境都市推進部 環境都市推進課長
環境都市推進部 生物多様性企画室長
環境都市推進部 地球温暖化対策室長
地域環境対策部 地域環境対策課長
健康福祉局
健康部 健康増進課長
子ども青少年局
子ども未来部 子ども未来課長
住宅都市局
都市計画部 都市計画課長
都市計画部 主幹(都市計画公園等)
都市計画部 都市景観室長
営繕部 営繕企画課長
教育委員会
総務部 学校整備課長
生涯学習部 生涯学習課長
生涯学習部 文化財保護室長
消防局
防災部 防災室長
◎:会長
資-3
3.用語集
あ
○
アライグマ
:主に北米に生息する動物で、ペットとして日本に輸入された
ものが遺棄・逃亡により野生化し、急速に国内に広がった。
農業や生態系への被害、またアライグマ回虫卵による人的被
害があり、特定外来生物に指定されている。
池干し
:ため池の水を抜き、底にたまった泥や砂を取り除くこと。ま
た、その際に池に生息・生育する外来生物を駆除することも
できる。
(かいぼり)
伊勢湾台風
:昭和 34 年に、紀伊半島から東海地方にかけて大きな被害を
もたらした台風。死者 4,697 人・行方不明者 401 人・負傷者
38,921 人にのぼり、名古屋市でも特に南区や港区は高潮によ
る大きな被害を被った。
オープンスペース
:建築物等によって占有されていない空地のうち、空き地のま
ま存続させることを想定している土地のこと。
か
○
街区公園適正配置促進
事業
:街区公園を市全域に均等に配置するために、公園の不足する
学区を対象に街区公園を整備する事業。
外来種・外来生物
:他の地域から人為的に持ち込まれた生物であり、特に、野生
化して世代交代を繰り返すようになり、在来の生態系に定着
した動植物を指す。地域の自然環境に大きな影響を与えるも
のや生態系への脅威となる外来生物を侵略的外来種と呼ぶ。
風の道
:郊外から都市内に吹き込む風の通り道を作ることで、都市中
心部で暑くなった大気を冷やすことができるという考え方に
基づくヒートアイランド現象への対策。
環境インフラ
:環境を支える社会資本のことで、主に都市環境や市民の生活
環境等を支える公園緑地や街路樹、下水道、ごみ処理施設な
どがあげられる。
気候変動問題
:地球上の気温、降水量、風などの気候が変化する問題であり、
主に人為的な要因による大気中の CO2 などの温室効果ガス
濃度の上昇による影響が考えられている。
郷土種子
:その土地に古くから生育してきた植物から採取した種子。郷
土種子から育てた植物を植栽に用いると、在来の植生への影
響が小さい。
クールアイランド
:都市内の樹林地や河川などは周囲よりも気温が低くなること
から、クールアイランドと呼ばれることがある。
資-4
公園経営
:従来の行政主導による維持管理中心の公園管理から脱却し、
利用者志向、規制緩和等による事業者・市民の参画拡大、多
様な資金調達とサービスの還元、経営改善手法の活用など、
公園の利活用重視の発想から、公園を資産としてとらえ、関
係する経営資源を最大限に活用していく新たな管理運営の考
え方。
公園施設
:都市公園の効用を全うするために、都市公園に設けられる施
設であり、園路や植栽、休憩所、遊具、運動場などがある。
洪積台地
:更新世(洪積世)に形成された平坦面が、その後隆起したこ
とで形成された台地のこと。水もちが悪く、水田に適さない
ため、畑作に利用されることが多い。
耕地整理
:在来の農地を区画整理して、用排水の利便性を向上させたり、
通路を整備して目的の水田等に他の水田等を通らずに作業で
きるようにすること。明治 32 年に耕地整理法として法制化
され、馬耕や農業機械を利用するために行われた。
さ
○
里山
:薪や堆肥を得るなど、地域の人々の持続的な利用を通じて育
まれてきた森林であり、なごや近辺では主にコナラやアベマ
キなどの二次林で構成される。
サンゴの白化
:サンゴが白く脱色したようになる現象のことで、サンゴ体内
の褐虫藻と呼ばれる藻類がサンゴから逃げ出すことが原因で
あるとされている。白化したサンゴは光合成ができなくなり、
長時間に及ぶと死滅してしまう。海水温の上昇が原因とも考
えられている。
CSR
:企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility)のこと。
企業は社会的存在として、市民や地域、社会の顕在的・潜在
的な要請に応え、より高次の社会貢献や配慮、情報公開や対
話を自主的に行うべきであるという考え方。
市街化区域
:都市計画区域において、すでに市街地を形成している区域及
びおおむね 10 年以内に優先的、計画的に市街化を図るべき
区域であり、都市計画で定められる。
市街化調整区域
:都市計画区域において、市街化を抑制すべき区域として都市
計画で定められる。開発行為は原則として抑制され、都市施
設の整備も原則として行われず、新たに建築物を建てたり、
増築することができない地域となる。
地震防災対策強化地域
:大規模地震対策特別措置法第 3 条の規定により、内閣総理大
臣が指定する地域。大規模な地震が発生するおそれが特に大
きいと認められる地殻内において、大規模な地震が発生した
場合に著しい地震災害が生ずるおそれがあるため、地震防災
に関する対策を強化する必要がある地域。
資-5
自然共生社会
:生物多様性が適切に保たれ、自然の循環に沿う形で農林水産
業を含む社会経済活動を自然に調和したものとし、また様々
な自然とのふれあいの場や機会を確保することにより、自然
の恵みを将来にわたって享受可能な社会のこと。
自然資本
:「未来にわたって価値のある商品やサービスのフローを生み
出すストック」としての自然を指す。山・森林・海・川・大
気・土壌など自然を形成する要素や生態系を構成する生物を
含み、広義の生物圏すべてを自然資本とみなすことができ
る。
持続可能な社会
:健全で恵み豊かな環境が地球規模から身近な地域まで保全さ
れるとともに、それらを通じて世界各国の人々が幸せを実感
できる生活を享受でき、将来世代にも継承することができる
社会のこと。
市民協働
:市民、自治会、NPO、事業者、市などの様々な主体が、お互
いの立場を理解し、公益に資する共通の目標に向かって対等
な立場で連携・協力して取り組むこと。
樹冠
:樹木の上部の枝と葉の集まりのこと。樹形に大きな影響を及
ぼし、樹木の輪郭を決める重要な要素となる。
循環型社会
:自然界から採取する資源をできるだけ少なくし、資源の有効
利用、再利用、再資源化等によって、廃棄物を最小限におさ
える社会のこと。
生産緑地地区
:市街化区域内の農地のうち、一定の要件を満たす土地を、関
係権利者からの申出を受けて都市計画により指定する制度。
永続的な営農が義務づけられる一方で、税制優遇などのメリ
ットがある。
生態系
:食物連鎖などの生物間の相互関係と、生物とそれを取り巻く
大気・水などの無機的環境の間の相互関係を総合的にとらえ
た生物社会のまとまりを示す概念。
生態系の攪乱
:外的な要因による生態系を破壊する作用のこと。地震や洪水
といった自然的要因と、開発や外来生物の持ち込み等の人為
的な要因がある。
生物多様性
:地球上には数百万種ともいわれる多様な生物が存在する。こ
のような種の多様性に加えて、種内の多様性(地域個体群な
ど遺伝子レベルの多様性)、生態系の多様性を含む概念。
戦災復興
:太平洋戦争による空襲によって破壊された都市において、戦
後実施された復興事業。名古屋市では全国に先駆けて昭和 21
年に戦災復興の基本方針がとりまとめられ、2 本の 100m 道
路に象徴される道路の整備、市内の墓地を平和公園へ移転す
る等を核とする戦災復興事業を実施し、現在のなごやの礎が
築かれた。
資-6
た
○
地域制緑地
:一定の区域を定め、土地利用の規制・誘導によって、自然環
境の保全や緑地機能の確保等を図る制度。名古屋市では、風
致地区、特別緑地保全地区、生産緑地地区、農用地区域、保
安林などが指定されている。
地球温暖化
:地表や海洋、大気の平均温度が長期的に上昇する現象。異常
気象、海面の上昇による海岸浸食、生態系への影響など様々
な影響が指摘されている。
地区計画
:地区レベルのきめ細かなまちづくりのため、建築物の用途や
高さ、容積率の制限などについて、地区住民の意向を反映し
つつ総合的、一体的に定め、その地区の特性にふさわしいま
ちづくりを進める制度。
沖積平野
:河川によって上流から運ばれてきた土砂が、長期間にわたり
堆積することによって形成される比較的平らな地形。災害に
対して脆弱な地形であるものの、日本においては人口の大部
分が集積している。
長期未整備公園緑地
:都市計画決定後長期間が経過している公園緑地のうち、区域
内に用地取得が必要な民有地が残存しており、長期にわたり
未整備の状態が続いているもの。
低炭素社会
:化石燃料の使用などによる二酸化炭素の排出が少ない社会の
こと。実現に向けて、エネルギー利用の削減、再生可能エネ
ルギーの開発等の対策が必要となる。
東海丘陵要素植物群
:愛知県、岐阜県、三重県の東海地方を中心に生育している植
物。旧東海湖があったところに堆積した痩せた地質の湿地な
どに多く、伊勢湾をとりまいているので周伊勢湾要素植物と
も呼ばれる。シラタマホシクサ、シデコブシ、マメナシ、ヒ
トツバタゴ、ハナノキ、モンゴリナラ、ヘビノボラズ、ナガ
ボナツハゼ、クロミノニシゴリ、ミカワバイケイソウ、ウン
ヌケ、トウカイコモウセンゴケ、ナガバノイシモチソウ、ミ
カワシオガマ、ヒメミミカキグサがある。
都市型水害
:大都市に発生する都市特有の水害。都市では地面の大半がコ
ンクリートやアスファルトで覆われているため、降雨が一気
に側溝へ流れ込む。集中豪雨時は排水が追いつかず、地下空
間などに流れ込み、浸水被害を受けることがある。
都市計画決定
:都市計画法に規定された各種の都市計画について、都道府県
または市町村が、決定権の分担に基づき、決定権のある都市
計画を都市計画法の手続に基づき決定を行うこと。
都市計画公園緑地
:都市計画法に基づき、都市計画でその区域が定められている
公園緑地のこと。
資-7
都市公園
:都市公園法により次のうちいずれかに該当するものとされて
いる。(1) 都市計画施設である公園または緑地で、地方公共
団体が設置するもの (2) 地方公共団体が都市計画区域内に
おいて設置する公園または緑地 (3) 国が設置するもので、
都府県の区域を超えるような広域の見地から設置する都市計
画施設である公園等
都市公園法
:都市公園について定めた法律で、都市公園の設置基準や管理
方法などについて定められている。
都市緑地法
:都市における緑地保全、緑化推進等を目的として、緑の基本
計画や各種制度が定められている。旧・都市緑地保全法は
2004 年の法改正により改称され、都市緑地法となった。
土地区画整理
:土地区画整理法に基づき、都市計画区域内の土地で、公共施
設の整備改善や宅地の利用増進を図るために、土地の区画形
質の変更と公共施設の新設または変更を行う事業。道路、公
園等の公共施設と宅地の総合的な整備を行うことが可能であ
ること、地域の特性に応じて多くの目的に対応したまちづく
りが可能であることなどが特徴。
な
○
ナラ枯れ
:コナラ等のナラ類が枯死してしまう病気。カシノナガキクイ
ムシが健全なナラ類の幹に孔をあけることで樹幹内にナラ菌
が大量に運ばれて繁殖し、形成層が壊死して通水疎害が起き
ることによる。なごやでも近年被害が広がっている。
ヌートリア
:草食性のほ乳類で、体長は 50~70cm、体重は 5~15kg。
1930 年頃から日本に輸入され、毛皮生産のために飼育された
が、その後野外に放逐され、野生化した。侵略的外来種とさ
れ、イネやオオムギなどの食害の原因となっている。
は
○
ヒートアイランド現象
:都市部の気温がその周辺の郊外部に比べて異常な高温を示す
現象。等温線を描くと都市部が島の形に似ることからヒート
アイランド現象と呼ばれている。
ビオトープ
:本来は生物が互いにつながりを持ちながら生息している空間
の概念を表す用語である。ただし、人工ビオトープとして、
開発事業などによって本来の自然環境が損なわれた土地や都
市内の空き地、校庭などに造成された生物の生息・生育環境
空間を指す場合もある。
防空緑地
:昭和 16 年 11 月 25 日改正の防空法により指定された緑地の
こと。都市に対する空襲被害が出た場合の避難場所、また延
焼防止目的で作られた。
資-8
ま
○
水循環
:地球上の水は気圏、陸圏、水圏に存在している。気圏では水
蒸気、陸圏では地表水(河川水、湖沼水)や土壌水分、地下
水、また水圏では海水や流氷などの形をとる。これらは孤立
的ではなく、連続的に相互に流入、流出しており、この循環
を「水循環」と呼ぶ。
民間活力
:民間企業の資金力や事業能力等のこと。従来、政府・自治体
の資金で行われていた事業を民間の資金・ノウハウで行うこ
とによって、より効率的な公共サービスの提供が期待される
場合もある。
ら
○
緑陰
:青葉の茂った木立の陰のこと。直射日光を遮ることにより、
快適な空間を作り出す。
緑陰街区
:緑化地域制度の運用に加え、地区計画等を定めた区域内にお
ける緑化率の最低限度を引き上げ、高木など質の高い植栽を
誘導することによって、街区全体に緑陰が形成された場所。
緑陰街路
:街路樹の効果的な配置や育成、更新によって道路空間を広が
りのある緑の樹冠で覆うことができる道路。緑陰街路の形成
により、美しい都市景観が形成され、夏でも涼しい風が通り
抜ける効果が期待できる。
緑被地、緑被率
:緑被地とは樹木や草で覆われた土地のことで、名古屋市では
農地や水面も緑被地としている。緑被率は、ある地域におけ
る緑被地の占める割合であり、平面的な緑の量を表す指標と
なる。
緑化施設
:樹木や地被植物などの植栽と、花壇、敷地内の保全された樹
木、自然的な水流や池、これらと一体となった園路、土留、
小規模な広場、散水設備、排水溝、ベンチ等のこと。
緑化地域制度
:市街地などにおいて効果的に緑を創出していくために、一定
規模以上の敷地面積を有する建築物の新築や増築を行う場合
に、定められた割合(緑化率の最低限度)以上の緑化を義務
付ける制度。
緑化率
:建築物の敷地面積に対する緑化施設の面積の割合。
資-9
Fly UP