...

pdf

by user

on
Category: Documents
15

views

Report

Comments

Description

Transcript

pdf
計測技術
(基本編)
1, はじめに
世の中にはさまざまな計測対象があります。
時間、流量、長さ、質量。その中でもわれわれがもっともよく使用するものに「電圧」
「電流」があります。
その電圧、電流を測定するための機器としてデジタルマルチメータや電流計、デジタルオシロスコープがあり
日々の機能確認やデバック作業、出荷前の確認試験で頻繁に使用します。
今回、初回ということで基本的な測定のメカニズム、使用方法などをまとめていきます。
さて前述でも「計測」と「測定」という2種類の言葉が出てきました。
違いがわかりますでしょうか?
JIS の計測用語 「JIS Z8103」によると以下のように記載されています。
「測定」というのはものの大きさや量を単位量の何倍になるかを求める行為であり、
「計測」は広い意味あいで
使用され、測定した結果を情報として利用できるようにすることであると解釈できます。
計測:特定の目的をもって、事物を量的にとらえるための方法・手段を考究し、実施し、その結果を用い
所期の目的を達成させること。
測定:ある量を基準として用いる量と比較し数値または符号を用いて表すこと。
以降では、実際に電圧などを測る行為として「測定」という言葉で統一します。
2,測定の方法
2−1,マルチメータによる測定
電圧・抵抗値の測定に使用する機器として一般的なものは何でしょうか?
簡易版のものであればテスター、電圧計があります。一般的なものとしてはやはりデジタルマルチメータ
(以後 DMM とする。
)でしょう。
横河、岩津、アジレント さまざまなメーカからカタログ品として出回っていますが、サンテクノ本社で
はアジレント製:34401を使用し、デバック作業や機能試験を実施しています。
また、DMM は条件つきですが電流測定も行うことができます。
2−1−1,DMMとは
DMM は電圧、電流(条件付)
、抵抗などの基本的な測定機能を1台にまとめた汎用計測器で、あらゆ
る場面に使用されています。本社においても試験時に使用するだけでなく、試験装置として設計・製
作する際にもラックに DMM を実装し試験装置の一部として納品することもあります。
DMM の他に電圧・電流を測定する器材として指示計器やテスタなどもありますが、以下の点で優れ
ています。
(指示計器やテスタは簡易版と認識し、取得データは正規データ(誤差の少ないデータ)には
なり得ない)
① A-D 変換技術の進歩により高精度で高分解能
② A-D コンバータを用いてデジタル値で表示され、読み取り誤差が少ない(各メーカ型式により違う)
③ 入力抵抗が直流電圧で 10MΩ以上、交流電圧で 1MΩ以上と高く、測定対象に影響を与えず多く
の測定においては∞とみなすことができる
④ 入力端子は電源やインターフェースと絶縁されているため、被測定デバイスに対して安全であり、
精度の良い測定が可能
DMM には大きく「ハンドヘルドタイプ」
「ベンチトップタイプ」の2つにわけることが出来ます。
ハンドヘルドタイプは、小型軽量で持ち運びに便利で、実験時や簡単な電圧測定、試験開始前の電圧
確認(電圧測定ではなく、電圧が出ていることの確認)などに使用します。もちろん抵抗値測定も可
能で、導通確認にも使用できます。表示は電池駆動のため液晶タイプが多く、その桁数は3 1/2 桁∼
4 1/2 桁のものが多いようです。
ここで3 1/2 桁とは最大表示が 1999 のように 3 桁(0∼999)から 4 桁(0∼9999)の間である
ことを意味しています。
ハンドヘルドタイプは、電池で駆動するため AC コードがなくどこでも気軽に持ち運びが出来ます。
そのため電源ラインの確認行為に用いられることが多いためか、安全性を重視して感電防止や短絡事
故防止のため樹脂バーの付いた入力プラグや測定リードの先端にカバーのついたものが採用されて
います。また屋外使用用に防塵・防滴処理が施されているものもあります。
ベンチトップタイプは試験や試験装置などでよく使用されるもので 4 1/2 桁∼8 1/2 桁のものまで種類
はさまざまです。ベンチトップタイプはアベレージングやスケーリング、データメモリなどの付加機
能が充実しており、GPIB や RS232、最近では LAN が用意され、PC からのリモート操作が可能と
なっています。
成績書作成時の社内試験データの取得などにはこちらを使用することをお勧めします。
←
ハンドヘルドタイプ
Agilent 製
←
ベンチトップタイプ
Agilent 製
2−1−2,DMM の基本構成
DMM の内部基本構成について簡単に説明します。
以下に DMM のブロック図を示します。
・ 入力部
DMM の入力部はケースや電源と絶縁されており、フローティング入力になっています。
直流の高電圧測定時には入力電圧を内部の抵抗にて分圧し、電圧を下げて A-D 変換を行います。
抵抗測定時には、被測定抵抗に決められた電流を流し、そこに発生する電圧から抵抗を求めてい
ます。直流電流測定では、内部にシャント抵抗をもち、そこに被測定電流を流して、そこに発生
する電圧から電流値を求めています。
交流電圧測定時には AC 用のプリアンプを介し AC-DC 変換し直流電圧に変換して A-D 変換を行
います。交流の電流測定では、直流同様シャント抵抗で電圧に変換した後に交流電圧測定時と同
様に求めます。
・ A-D 変換部
多くの DMM ではノイズ除去効果に優れた積分型 A-D 変換方式を採用しています。
この A-D 変換器により計測器の分解能が決定します。
・ 基準電圧及び基準抵抗
DMM の確度を決めるもっとも重要な構成要素は基準電圧と基準抵抗です。
(確度については後ほど詳しく説明します。今は「DMM の測定不確実さ(誤差)」と理解してく
ださい)
基準電圧には通常、基準電圧用 IC が使用されますが、これには高い長期安定度と低い温度係数が
要求されます。高精度の DMM ではエージングして経年変化を確認したものを使用しています。
基準抵抗の中でも抵抗比を必要とする部分には、これも長期安定度が高く相対温度係数の低い薄
膜モジュール抵抗などが使用されています。
・ デジタル部
デジタル部はマイクロプロセッサやゲートアレイなどのロジック回路で構成され、表示の制御、
測定タイミングの制御、インターフェース(GPIB、RS232C、LAN など)の制御を行っていま
す。ベンチトップタイプの DMM ではデジタル部はケース電位であるため、入力部や A-D 変換部
などからはフォトカプラなどにより絶縁されています。
一方、ハンドヘルドタイプのものは電池駆動であるため、絶縁が不要となりアナログ部やロジッ
ク部を LSI に集積し小型化、低消費電力化を図っています。
2−1−3,DMM の仕様の見方(確度)
DMM の分解能
積分型の A-D 変換方式では入力電圧をそれに比例したパルス幅に変換し、その幅を基準クロック
で測ることによりデジタル値を得ています。したがって、基準クロックが一定であれば積分時間が長
いほど分解能は高くなります。高分解能の DMM では測定分解能(表示桁数)を任意に変えることが
できるものもあり、高分解能で測定したい場合には積分時間を長くすればよいわけです。しかし、積
分時間を長くすることで当然のことながら、測定時間が余計にかかることになります。
逆に積分時間を短くすれば高速で測定することが出来ます。ただし、通常の社内試験時には、高速を
要求されることはまずなく、分解能を高くしての測定をお勧めします。
安定度及び確度
計測器として測定する際の正確さは非常に重要になってきます。精度のよいもので測定してはじめて
試験データとなりえます。
確度はよく ±(% of reading + digits)で記されています。仕様書上には「reading」は「rdg」と
記載されていることが多い。「% of reading」は読み値に対する誤差で入力の大きさに比例します。
次に続く値は、入力に起因しない一定の値の誤差で表示のディジット数(下一桁)で表されます。
安定度とはある期間内の相対的な変動を示し、確度とは国家基準に対する絶対的な誤差を示します。
DMM を使用する環境が仕様に記されている温度範囲を超える場合には、その温度差に比例して温度
係数が確度に加算されます。通常、確度は 23℃±5℃の温度範囲で指定され、DMM をその温度範囲
外で使用する場合は該当する温度係数誤差を確度仕様に追加します。
確度の計算例を以下に示します。
例1)表示値に含まれる誤差
直流電圧
2000mV レンジ
90 日確度±(0.005% of reading + 3digits)
周囲温度
23℃
表示例
0.00mV
1000.00mV
0.005% of reading
+ 3digits
誤差
1900.00mV
例2)誤差の周囲温度の影響
直流電圧
2000mV レンジ
90 日確度±(0.005% of reading + 3digits)
温度係数±(0.0007% of reading + 0.5digits)/℃
表示
1000mV
周囲温度
23±5℃
15℃
0.005% of reading
+ 3digits
(0.0007% of reading)
(0.5digits)/℃
誤差
40℃
例3)誤差のレンジによる違い
直流電圧
2000mV レンジ :±(0.005% of reading + 3digits)
20V レンジ
:±(0.012% of reading + 4digits)
200V レンジ
:±(0.011% of reading + 3digits)
周囲温度
23℃ 90 日確度
レンジ
2000mV レンジ
20V レンジ
200V レンジ
表示値
1000.00mV
1000.00mV
1000.00mV
% of reading
+digits
誤差
資料1:Agilent34401
仕様抜粋(1)
資料1:Agilent34401
仕様抜粋(2)
資料1:Agilent34401
仕様抜粋(3)
資料1:Agilent34401
仕様抜粋(4)
資料1:Agilent34401
仕様抜粋(5)
2−1−4,測定方法と使用上の注意
・電圧測定
以下は直流電圧測定の入力部の一例です。
【入力抵抗】
低電圧レンジの場合は、直接バッファ
アンプで受けるため、入力抵抗は 1GΩ以
上ありますが、入力電圧範囲を超えるよ
うな高い電圧を入力した場合は内部の保
護回路が働き、入力インピーダンスが低
く(100KΩ程度)なってしまいます。
一方、高電圧レンジの入力抵抗は分圧抵
抗により決まり、10MΩ程度です。
(DMM によっては入力抵抗を選択でき
るものもあります。
)
こちらは入力する電圧によって入力インピーダンスは大きく変化はしません。入力抵抗の値は多
くの場合∞とみなされますが、実際には信号源の出力インピーダンス Rs により誤差を生じます。
計算すればわかりますが、出力インピーダンスが大きい場合、この誤差は大きくなります。
実際に社内試験において検査要領書や検査規格を決定する際には、この誤差も考慮しなければ試
験の結果が規格範囲外となってしまうことも多々あります。
Vs = 被測定電圧
Rs = 信号源出力インピーダンス
Ri = DMM 入力インピーダンス
誤差 = Rs/(Rs+Ri) × 100%
例)電源出力電圧は 10V,出力インピーダンス 100K,DMM 入力インピーダンスを 10MΩに
した場合の測定電圧は?また、DMM 入力インピーダンスを 1MΩした場合の測定電圧は?
10MΩの場合
1MΩの場合
電源電圧 10V に対し
DMM 測定電圧は 9.901V
: 電源電圧 10V に対し
DMM 測定電圧は 9.091V
:
【バイアス電流】
入力をバッファアンプで受ける直流電圧レンジでは、Hi−Lo 端子間をショートしてからオープ
ンにすると表示はゼロからゆっくり増えていきます。これは、DMM の入力バイアス電流が入力
容量をチャージアップするために起こる現象です。高電圧レンジでは分圧抵抗が入っているため、
入力をオープンにしても表示はゼロになります。入力バイアス電流はバッファアンプの初段に使
用している素子によって発生するものであり、周囲温度が上がるとバイアス電流も大きくなる傾
向があります。バイアス電流は数十 pA∼数百 pA 程度なので多くの場合問題になることはあり
ませんが、信号源Rs に応じ誤差を生じます。
Vs = 被測定電圧
Rs = 信号源出力インピーダンス
Ri = DMM 入力インピーダンス
Ib = バイアス電流
Ci = 入力容量
誤差 ≒
Ib×Rs
・抵抗測定
【2線抵抗測定と4線抵抗測定】
DMM では抵抗測定において、2線式と4線式という測定方法があります。それぞれを簡単にま
とめます。
2線式抵抗測定は、Hi−Lo 端子間に接続された被測定抵抗に、Hi 端子から決められた電流を流
してそこに発生する電圧を測定するものです。しかし、測定リードの抵抗成分も含まれてしまう
ため、低抵抗の測定においては誤差が大きくなってしまいます。
但し、NULL 機能のついた DMM では、測定リードの先をショートしてその抵抗分をあらかじ
め測定し、影響を除くことができます。
4線式抵抗測定は、電流端子(INPUT Hi,Lo)から決められた電流を流し、電圧端子(SENSE
Hi,Lo)でそこに発生する電圧を測定するもので、ベンチトップタイプの DMM では多く採用
されています。電圧端子は直流電圧測定と同様に入力抵抗が非常に大きいため測定リードの影響
はほとんどでません。
2線式抵抗測定
4線式抵抗測定
【開放端子電圧】
抵抗測定において Hi−Lo 端子間に被測定抵抗を接続していないとき、そこには開放端子電圧が
発生します。これは測定電流を供給する定電流源の負荷が∞(開放状態)であるためです。
この開放電圧は定電流回路によってきまり、一般的には数 V∼十数 V 程度です。
・電流測定
いままで何度も記載したように条件付きとなりますが DMM にて電流測定もすることが出来ま
す。電流測定時の注意点をまとめます。
【誤接続】
DMM の入力端子において Lo 側は共通ですが Hi 側は電圧測定と電流測定とで分かれています。
電圧測定と電流測定とでは入力抵抗が極端に違うため、これを誤って接続すると DMM だけで
なく測定対象も破損する恐れがあります。
測定リードを電流測定端子に接続したままで、パネル設定だけで電圧測定にして電圧測定箇所に
接続してしまった場合はとくに問題です。電源やアンプの出力など電圧測定箇所は出力抵抗が小
さいため、入力抵抗が小さい電流測定端子に接続すると過大電流が流れてしまいます。また測定
対象が大容量電源のように過大電流を許容する場合には DMM の入力抵抗(シャント抵抗)が
破損します。通常、DMM にはこのような誤接続による火災や人身事故を防ぐため、電流端子の
入力ラインにヒューズが内臓されています。
また、DMM の電流測定においては、測定できる電流値はあまり大きくありません。(1A∼3A
程度)
以上のことから、電流測定時には最新の注意が必要となり、測定できる電流値もあまり大きくな
いため DMM の使用は推奨できません。
事項以降にて電流測定の他の方法についてまとめます。そちらの方法で測定を行うか、あるいは
測定電流範囲が固定されている場合は、もう1台 DMM を用意し、電流測定用として使用した
ほうが安全かと思います。
2−2,電流の測定
2−2−1,シャント抵抗による測定
電流が扱いにくい理由のひとつに計測器を回路に直列に接続しなければならないことが上げられます。
電圧を測定する場合は電圧計や DMM を回路に並列に接続すればよいため、回路を変更する必要は
ありません。しかし、これに対し、電流の測定においては電流計を回路に直列に接続する必要がある
ので、回路を一度切断しなければなりません。
さらに測定が終れば切断した箇所を接続し直す必要があり面倒です。
試験装置を設計する場合、最初から電流接続用の端子を用意しておき、未使用時にはジャンパー線な
どでショートしておく方法もよく用います。
しかし多くの場合は、回路にあらかじめ抵抗値の小さい抵抗を接続しておき、その抵抗両端の電圧降
下を測定することで、電流の測定を電圧の測定に置き換える方法が広く行われています。
この抵抗をシャント抵抗と呼び、前述の DMM の電流測定においても内部にシャント抵抗を持ち測定
していました。
シャント抵抗はその名の通り、普通の抵抗です。しかし、一般的な金属皮膜抵抗器や炭素皮膜抵抗器
などと大きく違うのは精度が良く(±0.1%∼±0.3%が一般的)、抵抗値が小さいことが特徴です。
(0.001Ωなど)精度の悪いシャント抵抗を使用した場合、シャント抵抗の誤差がそのまま電流の読み
値の誤差になります。もちろん、その際には電圧測定に使用した DMM などの計測器の誤差も足さな
ければなりません。
選定時に注意しなければならいない点をまとめます。
・ 定格電流
測定したい電流値は、カタログの定格電流内か?
・ 定格電圧降下
電圧降下分の電圧は、問題ない範囲内か?計算しやすい値か?
・ 最高使用電圧
印加する電圧は、使用範囲内の電圧か?
2−2−2,その他の電流測定
・ 電流トランス
交流の電流を測定する場合は、トランスを用いることも可能です。これに使用するトランスを電
流トランスと呼びます。電流トランスは一次側と二次側の電流比率が特定の比率に保たれるよう
に設計された特殊なトランスです。
大きな電流を測定する場合に大変便利ですが、原理的に二次側(測定器やメータがつながる側)
をオープンにすると高い電圧が発生するので、接続には注意が必要です。
小さい回路基板に実装するタイプもあり、カレントトランスとも言います。
・ クランプ電流計
電流トランスを応用した測定器にクランプ電流計(クランプメータ/クランプテスタ)がありま
す。クランプ電流計は、本体のレバーを握ると先端部が開き、電流を測定する電線を挟み込みこ
とができるようになっており、電力関連の現場などでは重宝します。
また、オシロスコープを使用して電流を測定する際には、電流プローブと電流アンプを使用しま
すがこれも同様の原理です。
いずれも、回路を切断することなく測定できるため便利な計測器です。
CL255 クランプテスタ
口径
: φ55mm、実効値タイプ
測定レンジ : (直流)400/2000A、(交流)400/2000A
特長
: 交流/直流電圧測定、導通チェック
周波数測定、レコーダ出力付
2−2,オシロスコープによる測定
これまで電圧、電流、抵抗の測定器を紹介してきましたが、単発の信号や過渡特性を見たい場合には
オシロスコープを使用します。このオシロスコープも DMM 同様、試験時には非常に良く使用する計測器
です。オシロスコープは DMM に比べ、使用するのは少し難しいかもしれません。また各社メーカのオシ
ロスコープがあり、パネル面もそれぞれです。しかし、基本は同じですので慣れてしまえば比較的簡単に
使用することができます。
全ての機能を使いこなすには時間がかかりますが、基本的な機能(よく使用する機能)だけでも今回はぜ
ひ覚えてください。
2−2−1,オシロスコープとは
オシロスコープは波形を測定できる数少ない計測器です。電圧、電流を波形という目に見える形で測
定することができます。正弦波、矩形波、方形波などさまざまな波形を測定することができ、試験に
おいてパルスの確認(幅や電圧)や、周波数、タイミングを確認することが可能です。
参考資料
・ Tektronix オシロスコープのすべて−さらにくわしい入門書−
・ Tektronix 電流プローブの測定技術
オシロスコープを使用した測定でよく使用する語句についてまとめます。
・ 波形の測定
波の1サイクルは繰り返し発生する波の一部分で、波形は波を図形的に表したもの。
電圧波形は水平軸に時間をとり、垂直軸に電圧をとります。
・ 周波数
繰り返し発生する信号には周波数があり、単位はHz(ヘルツ)で表されます。
1秒間に信号が何回繰り返されるか(周期/秒)を示すものです。また、繰り返し発生する信号
には周期もあり、これは1サイクルに要する時間を表しています。周波数と周期は逆数の関係に
あり、1/周期は周波数に、1/周波数は周期になります。
・ 振幅
グランド(0V)からの最大電圧の値を示します。
以下の波形の場合、振幅が 1V でピーク間電圧が 2V となります。
・ 位相
位相は正弦はで説明すると良くわかります。正弦波の電圧は、1周期を 360 度として周期がどの
程度進んだのかを表すことができます。それを位相角といいます。
また、位相ずれとは、2つの類似した信号の時間のずれを表し、以下の図の場合2つの波形はち
ょうど 1/4 周期(360°/4=90 度)ずれているため電流波形は電圧波形より 90 度遅れていること
になります。
・ トリガ
オシロスコープにはトリガ機能というものがあり、断続的な波形やワンパルスの波形を測定する
際に使用します。トリガはオシロスコープの画面上で入力信号の同じ部分を同じ位置で繰り返し
表示するため、波形は停止しているように見えます。
・ トリガモード
オートモード(AUTO)
約 100ms 内にトリガ条件が成立するとトリガ発生ごとに表示波形を更新します。
ノーマルモード(NORMAL)
トリガ条件が成立したときのみ波形の表示更新を実施します。
シングルモード(SINGLE)
トリガ条件が成立すると1回のみ表示波形を更新し、その後波形の更新をストップします。
トリガの設定
トリガの設定は簡単には以下の条件を設定して測定します。
トリガソース,トリガレベル,トリガスロープ(立上り or 立下り)
・ プローブ
オシロスコープだけ用意しても波形の測定はできません。プローブといわれる、オシロと被測定
器に直接接続するものが必要です。オシロスコープがいかに精度が良くてもプローブが故障して
いては正確な測定はできません。プローブにもいろいろな種類があります。
一般的なプローブを「受動プローブ」といい、広範囲な測定に対応できます。ほとんどの受動プ
ローブには減衰比が規定されており 1:1 や 10:1、100:1 のように表示されます。汎用で使用する
さいには 10:1 で十分です。また、プローブの減衰比をオシロ側に認識される必要があります。
最近のオシロスコープには自動で検出するものもありますが、そうでない場合は設定する必要が
あります。
その他に 差動プローブや高圧プローブ、電流プローブなどがあります。
測定をする前には、補正を実施してください。オシロには方形波基準信号の端子が出ています。
そこにプローブを接続し、電気的な整合をとる必要があります。
2−2−2,オシロスコープによる電流測定
オシロスコープを使用して電流の測定をすることができます。そのためには、電流プローブと電流ア
ンプが必要になります。そうすることで、電流を波形で見ることができます。
3, 校正について
DMM やオシロスコープなどすべての計測器は精度が命です。精度の確かなもので測定することで得られたデ
ータは信頼性のあるデータとなります。また、計測器は経年変化などにより数年使用する間にカタログに記載
されている精度を満足しないものが出てきます。あるいは見た目でわかるような故障であれば良いのですが、
内部のある一部が故障していることにより正確な測定ができなくなっていることも十分考えられます。そのと
き、被試験体(自分が設計製作した製品)が悪いのか、計測器が故障しているのかわからなくなってしまいま
す。そのため、試験で使用する計測器には定期的に「校正」することが必要になってきます。
通常年1回、サンテクノでも実施しています。また、シャント抵抗も抵抗と名前はついていますが立派な電流
を測定する計測器です。これも当然校正が必要になります。
気をつけなければならないことは、新品を購入してもそれは校正されたものではないということです。購入時
に校正証明書を添付してもらうことを付け加えなくてはなりません。
校正がされていない計測器で測定したデータは正式なデータと認められず、成績書としては不完全なものにな
ります。成績書には使用計測器の型式、メーカ、校正期限を記載するようにしましょう。
Fly UP