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医療費の 分析と その活用 - 東京都国民健康保険団体連合会

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医療費の 分析と その活用 - 東京都国民健康保険団体連合会
医療費の
分析と
その活用
−医療費適正化に向けて−
東京都保険者協議会
医療費分析部会
はじめに
平素より、医療保険者の皆様には本協議会の事業運営に格別のご支援ご協力を賜り、心から厚くお礼申し上げ
ます。
さて、今日までの制度改正や関係者の努力にもかかわらず、医療制度を取り巻く状況は大変厳しく、医療技術
の高度化と被保険者の高齢化に伴い増嵩する医療費への対策が喫緊の課題となっています。
このような中で、平成20年4月より40歳から74歳の被保険者を対象とする、生活習慣病予防のための特定健
診・特定保健指導が医療保険者に義務付けられ、特定健診・特定保健指導の実施により、医療費全体の約3割を
占める生活習慣病の改善及び罹患予防が図られるとしています。
一方、医療費の増加の要因については、現状及びその原因対策の可能性を関係者間で共有することを目的とし
た医療費分析の必要性が高まっています。また、医療保険者が医療費を分析することにより、被保険者の罹患状
況を把握し、それらの疾病に対する罹患や重症化策を講じることが、保険財政を安定化させるひとつの手段とし
て考えられています。
本冊子では、医療保険者の医療費実態の把握や事業評価に活用していただくため、レセプトデータを分析・活
用する手法についてまとめました。健康保険組合(以下「健保組合」)、全国健康保険協会、市区町村国民健康保
険、国民健康保険組合(「市区町村国民健康保険」、
「国民健康保険組合」併せて以下「国保保険者」)、共済組
合、後期高齢者医療広域連合といった種別や個別の医療保険者によって分析できる内容、想定される対策が異
なってくることから、比較的共通すると考えられる分析の一例をお示ししています。医療保険者におかれまして
は、安定した保険運営と被保険者の健康保持・増進等の参考としていただけると幸いです。
なお、本冊子の作成にあたり、東京大学医学部附属病院22世紀医療センター助教・古井祐司氏には多大なる
ご協力を頂きましたことをこの場をお借りして厚くお礼申し上げます。
平成24年3月
東京都保険者協議会 医療費分析部会
部会長 星 常 夫
目 次
Ⅰ 医療費分析の概要
1 医療費対策の背景…………………………………………………………… 7
2 医療費分析の目的…………………………………………………………… 11
3 医療費分析の流れ……………………………………………………………12
(1)全体の把握(現状を正しく把握する)… ………………………………12
(2)課題の明確化………………………………………………………………12
(3)各課題の詳細(原因・対策のヒント)の確認……………………………13
(4)医療費以外の観点…………………………………………………………13
4 分析を行う上での留意点… …………………………………………………15
Ⅱ 分析事例
1 医療費総額……………………………………………………………………16
2 被保険者1人当たり医療費… ………………………………………………18
3 疾病別医療費(被保険者1人当たり)…………………………………… 20
4 疾病別医療費の経年推移……………………………………………………22
5 健康増進事業等に取り組む対象疾病の優先順位を考える… ……………25
Ⅲ 巻末資料
社会保険表章用121項目疾病分類表… …………………………………………27
Ⅰ 医療費分析の概要
1 医療費対策の背景
生活習慣病の現状
我が国の疾病構造は感染症から生活習慣病へと変化しています。死因別死亡割合からみても生活習慣病は死亡割合の
約6割を占めています。
また、生活習慣病に係る国民医療費(平成21年)は、全医療費(約25.6兆円)の約3分の1(約8.2兆円)を占めている
ことがわかります。
我が国における死因別死亡割合の経年変化
国民医療費(平成21年) 生活習慣病…約8.2兆円
(死亡割合1947−1989)
糖尿病(糖尿病の合併症含む)
1.1
不明
脳血管
疾患
1.8
老衰
その他
脳卒中
肺結核
心疾患
悪性新生物
5
19
0
5
19
3
5
19
6
5
19
9
6
19
2
6
19
5
6
19
8
71 974 97 7 9 8 0 9 8 3 9 8 6 9 8 9
1
1
1
1
1
1
19
生活習慣病に含まれるもの︵約6割︶
感染症
虚血性心疾患
0.7
高血圧性疾患
1.9
悪性新生物 2.7
その他 17.4
単位:兆円
(注)人口動態統計(平成21年)より作成
生活習慣病の重症化による医療費と入院日数
1人当たり年間医療費
(万円)
入院日数
(日)
罹患後(可能性含む)の負担
心筋梗塞
195
17.9
再発
脳梗塞
112
35.5
片麻痺、言語障害、記憶障害といった後遺症
脳出血
178
46.2
片麻痺、言語障害、記憶障害といった後遺症
糖尿病合併症 *
(腎不全の場合)
540
156
(通院日数)
透析による定期通院(週3回程度)
出典:糖尿病合併症以外は、全日本病院協会 診療アウトカム評価分析結果より引用
*糖尿病合併症は、腎不全による人工透析の場合を想定し、月額45万円として年間医療費を試算。
通院日数については週3回の通院×52週として試算。
生活習慣病の内訳の中で上位を占める疾患の年齢階級別男女比
虚血性心疾患患者の年齢階級別男女比
虚血性心疾患患者は男女比でみると約7割が男性患者であり、年齢階級別に患者数をみると64歳以下の男性患者は女
性患者の約4倍の患者数となっています。
(年齢)
65-69
60-64
55-59
50-54
男
女
45-49
40-44
35-39
30-34
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
厚生労働省 人口動態統計を基に作成
7,000
(人数)
脳血管疾患患者の年齢階級別男女比
64歳以下は男性患者数が女性患者数よりも約2倍近く多いことがわかります。
(年齢)
65-69
60-64
55-59
50-54
男
女
45-49
40-44
35-39
30-34
0
500
1,000
1,500
厚生労働省 人口動態統計を基に作成
2,000
2,500
3,000
3,500
4,000
4,500
5,000
(人数)
悪性新生物患者の年齢階級別男女比
50歳未満では女性患者数が多く、50歳以降は男性が女性を上まわり、60歳以上になると患者数のおよそ3分の2以上
を男性患者が占めています。
(年齢)
65-69
60-64
55-59
男
50-54
女
45-49
40-44
35-39
30-34
0
5,000
10,000
15,000
20,000
25,000
30,000(人数)
厚生労働省 人口動態統計を基に作成
糖尿病に関する人数の推移
糖尿病予備群の増加は著しく、高齢化だけでなく社会環境及び生活習慣の影響が指摘されています。
人数:(万人)
2,500
2,210
2,000
平成9年
平成14年
1,620
1,500
1,320
1,000
690
740
890
平成19年
1,370
880
680
500
0
糖尿病が強く疑われる人
糖尿病の可能性が否定できない人
両者の合計
厚生労働省 国民健康・栄養調査を基に作成
現状把握からPDCAに基づく保健事業へ
高齢化と生活習慣の変化により国民医療費が多くなっています。その中でまず保険者ごとに、被保険者の健康状態や医
療費のかかり方を把握することが重要となります。
レセプト
現状把握①∼コスト状況の把握
レセプトデータ:疾病大分類、疾病中分類
健診データ
現状把握②∼リスク状況の把握
+健診データ:未病者/潜在患者/患者の3群に分けて整理
一次予防/二次予防/三次予防
現状に応じた形で立案する
効果指標設定
保健事業の実施・評価・改善へ
10
PDCA
計画
現状把握
疾病群再構成・優先順位設定:予防可能性を考慮(先天性疾患等は除く)
2 医療費分析の目的
医療費分析を行う目的として、本冊子では「施策の立案」と「関係者への説明」の2点を挙げて整理しています。
「施策の立案」とは、保健事業の事業計画の作成などです。そのためには、重点的に取り組む事項の絞り込みを行うこと
が重要です。医療費分析から導くことのできる具体例としては以下のようなものがあります。
施策の立案
-例-
・「優先して取り組むべき疾病は『循環器系の疾患』と『新生物』です」
・「糖尿病の合併症が増えている可能性があり、若年者の健診結果の推移を把握するとともに糖尿病の予防施
策を見直す必要があります」
・「うつ病の罹患者の増加傾向に歯止めがかかっていません。メンタルヘルス対策を強化する必要があります」
「関係者への説明」の「関係者」とは、上司や関係部署、理事会、事業主、議会などを想定しています。医療費分析の結
果は、保健事業推進の協力・理解を求める際に活用します。具体例としては以下のようなものがあります。
関係者への説明
-例-
・「医療費の現状はこうなっています」
・「生活習慣病の中でも糖尿病の医療費が多いようです。糖尿病は予防しうる疾病なので、保健事業の推進に
協力をお願いします」
・「メタボ対策を含む糖尿病対策に注力する必要があります」
・「精神疾患による療養が長期化する傾向にあり、傷病手当金の給付額が増加しています」
医療費分析を行う際に、単なる医療費の集計にとらわれすぎると本来の目的が曖昧になってしまいます。医療費分析は
ゴールではなく、目的を達成するための手段であることを念頭に置く必要があります。
つまり、保険者の立場で施策を立案し実施するためには、ある程度の仮説(ストーリー)を立て、施策の実施を前提に
対象となる疾病や被保険者層の抽出を行い、地域や職域の特性などの背景を鑑みた上で実施可能な施策を洗い出し、優
先順位を明確にしていくことが必要となります。 さらに、医療費分析の結果を簡潔にまとめ、解釈を付け、医療費における実態や課題を提示するなどの活用は、関係者
に対する説得力のある説明になるとともに、加入者への意識付けの資料ともなり、それが医療費適正化を実行する牽引力
となります。
11
3 医療費分析の流れ
保険者種別や保険者ごとに可能な分析手法又は想定される対策は異なってきます。ここでは、どの保険者にも共通する
分析の考え方の一例をお示しします。
医療費分析は結果がわかりやすく対策の検討に活用できるように、
「全体の把握」から始め「課題を明確化」したうえ
で「各課題の詳細(原因・対策のヒント)の確認」という構成で進めます。具体的な内容は下記のとおりとなっています。
(1)全体の把握(現状を正しく把握する)
①医療費総額と近年の推移を確認します。
②医療費の高低を確認するために、自保険者と他保険者との比較を被保険者1人当たり医療費で行います。
③医療費の把握をするとき、自保険者の医療費情報だけでは限界があります。国や東京都等の平均と比較をすると、自
保険者の医療費の高低を確認することができます。
以下のように様々な組み合わせで比較を行うことで、自保険者の医療費の背景や他保険者との相違点や類似点等を確
認することができ、保健事業の施策のヒントが得られます。
-比較例-
・性別、疾病分類別、年齢階層(年代)別、同等の被保険者(組合員)数規模での比較。
・全国組織の保険者(健保組合、共済組合、国保組合等)については、地域特性が影響していることもあるの
で、保険者の支部単位での統計や分析比較。
・同業種保険者(健保組合の場合)での比較。
以上の作業により、自保険者の健康保持・増進策等の必要性について把握することができます。
(2)課題の明確化
医療費の全体像について、被保険者1人当たり医療費で確認した後は、医療費の高低の背景にある原因を把握するため
に、疾病大分類別の医療費を確認します。
医療費の大部分を占める疾病や他保険者と比較して被保険者1人当たり医療費が高い疾病が課題であると言えます。
次に、今後の増減の傾向や分析対象の年度だけに特殊な要因の可能性を考慮し、医療費について単年度だけではなく
複数年度に渡り確認を行います。
ここまでの分析から、疾病大分類ごとの医療費の絶対的/相対的な高低、今後の増加見込みが明確になります。
一方、保険者の立場からの対策の可能性について、疾病別に確認を行います。この作業を行うことで、対策の難易度を
考慮して取り組みの優先順位を検討することができます。
このように、医療費の観点から重要な疾病と対策の難易度を考慮することで、重要かつ対策が可能な疾病、つまり優先
的に取り組むべき疾病が明らかになります。
12
(3)各課題の詳細(原因・対策のヒント)の確認
優先的に取り組むべき疾病について、疾病ごとにその詳細(年齢階級別医療費、療養区分別医療費等)を確認し、医療
費の背景にある原因を明らかにします。
原因を明らかにすることで対策のヒントが得られ、保健事業の施策を立案することが可能となります。
<分析の構成例>
医療費の全体像を理解し、
取り組むべき課題を特定する
分析例
「医療費総額はどうなっているか」
「医療費は高いのか低いのか」
「どの疾病に医療費がかかっているのか」
「保険者としてこのあたりから取り組むべき」
医療費の構造
(1) 医療費全体
(2) 被保険者1人当たり医療費
(3) 疾病別医療費
(被保険者1人当たり)
(4) 疾病別医療費の経年変化
(5) 対策の可能性
課題の詳細を理解する
分析例
「生活習慣病の中でも何が特に問題なのか」
「循環器系の医療費が高いのはどの年齢層なのか」
「外来と比較して入院の費用額が伸びていないか」
「前期高齢者(65歳∼74歳)医療費のうち、どの疾
病に多くの医療費がかかっているか」
(4)医療費以外の観点
医療費分析のみでは医療機関受診者(患者)の状況しか把握することができません。未受診者も含めて予防の観点から
分析を行うためには、被保険者(被扶養者)の健康状態がわかる特定健診データ等の分析が必要となります。次頁に特定
健診データの分析例として「健康分布」を紹介します。
医療費分析はそれのみに留まらず、あらゆる角度、医療を取り巻く状況を加味することで、より正しく実態を把握するこ
とができると言えます。
13
<特定健診データ分析の例(健康分布)>
健康分布の図は、加入者を肥満状況及び生活習慣病リスクの保有状況にて分類し、それぞれの人数比を面積で示して
います。
この図により、特定健診・保健指導制度の対象者の割合を視覚的に確認できるだけでなく、全体の健康状況が把握で
き、対策が考えやすくなるという利点があります。
詳細な分析
健康分布
非肥満
対策
肥満
リスクなし
改善者
メタボ突入者は多いか?
メタボ脱出者は少ないか?
メタボ対策
(一次予防)
階層化
リスクあり
受診勧奨
服薬
悪化者
受診勧奨の人は受診して
いるのだろうか?
服薬者の健診結果は
良好だろうか?
医療費分析では主にこの部分の状況を確認している
14
受診勧奨の実施
継続受診に向けた
初診のサポート
(二次予防)
重症化防止
(三次予防)
4 分析を行う上での留意点
◆年齢調整(年齢補正)
・同一保険者内での過去と現在の比較、また他保険者との比較では、被保険者数規模が異なるため、医療費総額ではなく
被保険者1人当たり医療費による比較をする必要があります。また、その際には、他保険者と被保険者の年齢構成の相違
を留意することも必要です。
年齢調整は年齢の構成が著しく異なる保険者と比較するときに行いますが、年齢の構成にあまり差がない場合、調整は
不要で実データ上で状況を把握します。
◆電子レセプトにおける留意点
・医科レセプトの場合、旧総合病院の請求が診療科ごとではなくなったことで、複数診療科の病名が混在しているレセプ
トが発生します。循環器系疾患で受診している医療機関に、整形外科疾患でかかった場合の主病は循環器系の疾患と
なり整合性がとれない場合があります。
・過去(初診で)受診した際の病名が主傷病となります。その後付加された病名は後ろに随時追加されますが、レセプト
の記載要領では最上位に記載のある病名を主傷病とすることから、留意が必要となります。
・傷病名が未コード化のものが多いので、傷病名を拾えないデータが存在する場合もあります。
◆被保険者1人当たり医療費の算出
・被用者保険の場合、本人を被保険者、家族を被扶養者と分け、被扶養者については被保険者と異なり保険料を徴収する
概念がありません。一方国民健康保険は本人・家族に関わらず保険(税)料を徴収していることから加入者全てが被保険
者となっています。
また、被用者保険の被保険者は従業員等であることから年齢階層が限定された年齢構成になっているのに対し、被扶
養者の年齢階層は幅広く国民健康保険被保険者の年齢構成に近くなっています。
被用者保険
国民健康保険
本人
家族
年齢構成
被保険者
○
−
限定
被扶養者
−
○
幅広い
被保険者
○
○
幅広い
そのため、被保険者1人当たり医療費や年齢構成別医療費を考えるとき、分析の目的など場合によっては被保険者と被
扶養者を分けて分析を行う必要があります。
・本冊子にてお示ししている例示は、被用者保険・国民健康保険ともに「被保険者」データを使用して分析を行っていま
す。医療費に大きく影響を及ぼしたり、医療費の大部分を占めているのは被扶養者となるので、被用者保険の保険者が
分析を行う際は被扶養者データも加味するとよいでしょう。
15
Ⅱ 分析事例
都内の健保組合と国保保険者の医科のデータを基に作成しました。
1 医療費総額
◆医療費総額=(レセプト発生者の合計)決定点数×10
医療費総額の推移を確認し、医療費総額の規模と傾向を把握します。
ポイント
◇A健保組合
年度別医療費総額
(医科入院・外来)
平成18年度
医療費総額
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
8,291,532,699円 8,620,995,596円 9,554,884,766円 9,467,698,774円 10,056,486,329円
前年比
103.0%
104.0%
110.8%
106.2%
年度別医療費総額
医療費総額
(億円)
120
99.1%
前年比
(%)
120
110
100
100
90
80
80
70
60
60
50
40
40
30
20
20
10
0
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
0
【解説例】
制度改正(後期高齢者医療制度導入)等により被保険者数が減少したものの5年間の経年で比較すると増加傾向にあ
ることが確認できます。
16
◇B国保保険者
年度別医療費総額
(医科入院・外来)
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
医療費総額
316,953,460円
329,047,390円
362,872,630円
332,362,550円
339,553,330円
前年比
−
103.8%
110.3%
91.6%
97.8%
年度別医療費総額
医療費総額
(百万円)
400
前年比
(%)
120
110
350
100
300
90
80
250
70
200
60
50
150
40
100
30
20
50
0
10
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
0
【解説例】
制度改正(後期高齢者医療制度導入)等により被保険者数は減少したものの平成20年度に医療費が突出しています。
5年間で医療費が増加傾向にあることが確認できます。
(突出した部分については、近隣の国保保険者等の傾向を確認し地域特性等を考慮する必要があります。)
17
2 被保険者1人当たり医療費
◆被保険者1人当たり医療費=医療費総額÷被保険者数
自保険者の医療費の高低を確認するために、他保険者の医療費と比較します。その際、被保険者
数が異なるため、医療費総額でみても高低を判断することができません。そこで、被保険者1人当
たり医療費により比較を行います。
ポイント
(被保険者1人当たり医療費の詳細については、P15を参照ください)
◇A健保組合
(医科入院・外来)
平成18年度
医療費総額
平成19年度
平成20年度
8,291,532,699円 8,620,995,596円 9,554,884,766円
平成21年度
平成22年度
9,467,698,774円 10,056,486,329円
男
62,119人
66,745人
67,070人
67,853人
67,720人
被保険者数
女
19,021人
20,674人
20,706人
20,709人
21,056人
合計
81,140人
87,419人
87,776人
88,562人
88,776人
1人当たり医療費
102,188円
98,617円
108,855円
106,905円
113,279円
(各年2月末時点)
被保険者1人当たり医療費
(円)
115,000
110,000
105,000
100,000
95,000
90,000
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
【解説例】
A健保組合の被保険者1人当たり医療についても、5年間でおよそ10,000円程増加していることが確認できます。
18
◇B国保保険者
(医科入院・外来)
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
医療費総額
316,953,460円
329,047,390円
362,872,630円
332,362,550円
339,553,330円
被保険者数
23,261人
23,326人
22,799人
22,550人
22,481人
1人当たり医療費
13,626円
14,106円
15,916円
14,739円
15,104円
被保険者1人当たり医療費
(円)
18,000
15,000
12,000
9,000
6,000
3,000
0
平成18年度
平成19年度
平成20年度
平成21年度
平成22年度
【解説例】
B国保保険者の被保険者1人当たり医療費についても、平成20年度がピークとなっていますが全体を通してみると増加
傾向にあります。制度改正等により被保険者数は減少していますが医療費総額が増加していることから被保険者1人当た
り医療費が増加しています
19
3 疾病別医療費(被保険者1人当たり)
◆疾病別医療費=疾病ごとの医療費総額÷疾病ごとの被保険者数
(被保険者1人当たり)
高医療費の要因を探りどの疾病に取り組む必要があるか検討するために、疾病別医療費(被保
険者1人当たり)を確認します。大きな割合を占めている疾病や他保険者と比較して医療費の高
い疾病に注目します。
ポイント
◇A健保組合
平成22年度疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
被保険者1人当たり医療費
5,663円
9,239円
1,228円
8,856円
5,784円
3,424円
6,019円
1,904円
11,131円
19,756円
6,999円
6,159円
7,173円
8,431円
1,673円
1,239円
1,365円
2,363円
4,875円
113,279円
疾病
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分娩及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
合計
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分
及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
0
20
2,000
4,000
6,000
8,000
円
10,000 12,000 14,000 16,000 18,000 20,000
【解説例】
A健保組合の被保険者1人当たり医療費の多くを占めているのは「呼吸器系の疾患」、
「循環器系の疾患」となっている
ことがわかります。
◇B国保保険者
平成22年度疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)
(B国保保険者)
(保険者属性)
被保険者1人
当たり医療費
疾病
被保険者1人
当たり医療費
疾病
01 感染症及び寄生虫症
303円
02 新生物
2,176円
03 血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
122円
04 内分泌、栄養及び代謝疾患
1,474円
05 精神及び行動の障害
1,029円
06 神経系の疾患
841円
07 眼及び付属器の疾患
568円
08 耳及び乳様突起の疾患
82円
09 循環器系の疾患
2,137円
10 呼吸器系の疾患
852円
11 消化器系の疾患
1,330円
12 皮膚及び皮下組織の疾患
244円
13 筋骨格系及び結合組織の疾患
1,419円
14 腎泌尿生殖器系の疾患
760円
15 妊娠、分娩及び産じょく
91円
16 周産期に発生した病態
1円
17 先天奇形、変形及び染色体異常
72円
18 症状、徴候等で他に分類されないもの
819円
19 損傷、中毒及びその他の外因の影響
785円
合計
15,104円
01 感染症及び寄生虫症
397円
02 新生物
2,029円
03 血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
159円
04 内分泌、栄養及び代謝疾患
1,344円
05 精神及び行動の障害
1,095円
06 神経系の疾患
1,048円
07 眼及び付属器の疾患
628円
08 耳及び乳様突起の疾患
95円
09 循環器系の疾患
2,702円
10 呼吸器系の疾患
833円
11 消化器系の疾患
1,206円
12 皮膚及び皮下組織の疾患
261円
13 筋骨格系及び結合組織の疾患
1,122円
14 腎泌尿生殖器系の疾患
923円
15 妊娠、分娩及び産じょく
78円
16 周産期に発生した病態
70円
17 先天奇形、変形及び染色体異常
59円
18 症状、徴候等で他に分類されないもの
1,008円
19 損傷、中毒及びその他の外因の影響
513円
合計
15,567円
保険者属性
B国保保険者
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分
及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
0円
500円
1,000円
1,500円
2,000円
2,500円
3,000円
※B国保保険者の場合、特別区計、多摩計、島しょ計、国保組合計に分類した保険者属性と当該保険者を比較しました。
【解説例】
B国保保険者の被保険者1人当たり医療費の上位を占めているのは、
「新生物」
「循環器系の疾患」
「内分泌、栄養及び
代謝疾患」であることが確認できました。さらに「新生物」と「内分泌、栄養及び代謝疾患」については、比較対象である
保険者属性よりも上回っていることが確認できました。
21
4 疾病別医療費の経年推移
◆前年比=(【対象となる(年の)数値】÷【基準となる(年の)数値】−1)×100
疾病別の医療費の高低はその年度により特異なものであることもあります。
また、近年の増減傾向を今後考える上で重要ですので、疾病別医療費を複数年分確認し、特異
性の有無や増減傾向を確認します。
ポイント
◇A健保組合
疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)前年比
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
平成21年度
4,672円
8,444円
1,687円
8,394円
5,262円
3,229円
5,896円
1,730円
10,162円
20,730円
6,463円
5,348円
6,504円
7,918円
1,514円
1,157円
1,289円
2,087円
4,419円
106,905円
疾病
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分娩及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
合計
平成22年度
5,663円
9,239円
1,228円
8,856円
5,784円
3,424円
6,019円
1,904円
11,131円
19,756円
6,999円
6,159円
7,173円
8,431円
1,673円
1,239円
1,365円
2,363円
4,875円
113,279円
前年比
121.2%
109.4%
72.8%
105.5%
109.9%
106.0%
102.1%
110.0%
109.5%
95.3%
108.3%
115.2%
110.3%
106.5%
110.5%
107.1%
105.9%
113.2%
110.3%
106.0%
※後期高齢者医療制度が導入された前後で、被保険者対象者が異なることから比較する際はご留意ください。
疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)伸び率
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分
及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
-30.0
22
-25.0
-20.0
-15.0
-10.0
-5.0
0.0
5.0
10.0
15.0
20.0
25.0
【解説例】
A健保組合の場合、平成21年度と平成22年度で比較を行ってみると前年比の平均が106.0%と医療費が増加していま
す。さらに前年より増加している疾病は、
「感染症及び寄生虫症」及び「皮膚及び皮下組織の疾患」であることがわかりま
す。逆に減少している疾病は「呼吸器系の疾患」
「血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害」であることがわかりま
す。医療費が増加している疾患はさらに年齢階層別や性別などの詳細な分析を行うことによって対策を立てるヒントを得
ることができます。さらに、
「感染症及び寄生虫症」では予防しうる疾病か否か検討する必要があります。医療費が減少し
た疾患については、以下の理由が考えられます。
~A健保組合による取組み~
「呼吸器系の疾患」
・新型インフルエンザ対策として予防接種、広報での周知。
・対象者(前年度花粉症及び生活習慣病患者)に年2回程度ジェネリック通知の送付。
~社会的背景~
「呼吸器系の疾患」
・平成22年度については平成21年度と比較して全国的にインフルエンザが沈静化したことが影響していると考えら
れます。
「血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害」
・被保険者数や高額医療受給者の増減が医療費の動向を左右することがあるため、留意する必要があります。
23
◇B国保保険者
疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)前年比
疾病
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分娩及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
合計
01
02
03
04
05
06
07
08
09
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
平成21年度
324円
1,464円
339円
1,097円
1,053円
787円
572円
103円
2,267円
646円
1,634円
201円
1,754円
1,015円
36円
18円
92円
953円
385円
14,739円
平成22年度
303円
2,176円
122円
997円
1,029円
841円
568円
82円
2,137円
852円
1,330円
244円
1,419円
760円
91円
1円
72円
819円
785円
15,104円
前年比
94%
149%
36%
91%
98%
107%
99%
80%
94%
132%
81%
122%
81%
75%
255%
6%
78%
86%
204%
102%
疾病大分類別医療費(被保険者1人当たり)伸び率
感染症及び寄生虫症
新生物
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害
内分泌、栄養及び代謝疾患
精神及び行動の障害
神経系の疾患
眼及び付属器の疾患
耳及び乳様突起の疾患
循環器系の疾患
呼吸器系の疾患
消化器系の疾患
皮膚及び皮下組織の疾患
筋骨格系及び結合組織の疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
妊娠、分
及び産じょく
周産期に発生した病態
先天奇形、変形及び染色体異常
症状、徴候等で他に分類されないもの
損傷、中毒及びその他の外因の影響
-150.0%
-100.0%
-50.0%
0.0%
50.0%
100.0%
150.0%
200.0%
【解説例】
「妊娠、分娩及び産じょく」については、もともとの医療費が低く伸びているように見受けられますが、1人当たり医療費
は低いことが確認でき、医療費全体への影響は問題ないと考えられます。医療費が増加した「損傷、中毒及びその他の外
因の影響」については、被保険者数や高額医療受給者の増減が医療費の動向を左右することがあるため留意する必要が
あります。
これまでの分析で高医療費の上位3位を占めていることがわかった「新生物」
「循環器系の疾患」
「内分泌、栄養及び代
謝疾患」のうち、
「新生物」については増加傾向にあることも確認できます。
24
5 健康増進事業等に取り組む対象疾病の優先順位を考える
ここまで見てきた医療費全体、疾病別医療費(被保険者1人当たり)の経年変化から以下のようなことがわかりました。
◇A健保組合
①医療費の疾病構造として大きな割合を占めているのは、
「呼吸器系の疾患」
「循環器系の疾患」
「新生物」
(参考:3 疾病別医療費(被保険者1人当たり))
②医療費の伸びが大きい疾病は「感染症及び寄生虫症」
「皮膚及び皮下組織の疾患」
(参考:4 疾病別医療費の経年推移)
この他にも、他保険者と比較した医療費を確認すると、課題がより明らかになります。
疾病別の状況について、医療費の観点から分かったことを次の表に当てはめていきます。分析結果一覧より「○」の多
い疾患が大きな課題だということが分かります。
分析結果一覧:A健保組合
大分類(※1)
疾病別医療費
(被保険者1人当たり)
呼吸器系の疾患
○
循環器系の疾患
○
新生物
○
被保険者1人当たり
医療費の比較(※2)
医療費の増加(※3)
○
内分泌、栄養及び代謝疾患
腎泌尿生殖器系の疾患
○
※1 ここに記入する疾病は「3 疾病別医療費(被保険者1人当たり)」にて確認できる上位5疾病を記入しています。
※2 「被保険者1人当たり医療費」の比較については、医療保険者にて分析をする際に他保険者と比較し、比較対象保険者より自
保険者の方が医療費に関する課題があると確認できた場合に○印を記入します。A健保組合では同一保険者内での比較と
なるため、割愛いたします。
※3 「医療費の増加」について、医療費全体の伸び率以上に伸びている疾病に着目するといいでしょう。A健保組合の場合、P
22の「4 疾病別医療費の経年推移」の表から、医療費全体(合計)の前年比は106.0%となっています。疾病ごとに前年比
を確認し6%以上の伸び率を示している疾病が着目すべき疾病と言えるでしょう。B国保保険者についても基本的に考え方
は同様となります。
対策が可能な疾病
「循環器系の疾患」
「内分泌、栄養及び代謝疾患」の多くは生活習慣病の発症、重症化については生活習慣が原因であ
り、生活習慣改善という対策が存在します。また、
「悪性新生物(がん)」はがん検診等の促進などの対策の可能性がある
と考えられます。
一方、全体的に近年増加が見られる疾病として「精神及び行動の障害」、他に「神経系の疾患」などを挙げることができ
ます。これらの中でも、統合失調症やアルツハイマー病などの疾病については、保険者の立場から発症自体を予防するこ
と、あるいは重症化を防ぐことが困難であり、医療機関の対応(及び受診の適正化支援)が主となると考えられます。
25
◇B国保保険者
①医療費の疾病構造として大きな割合を占めているのは、
「新生物」
「循環器系の疾患」
「内分泌、栄養及び代謝疾患」
(参考:3 疾病別医療費(被保険者1人当たり))
②医療費の伸びが大きい疾病は「妊娠、分娩及び産じょく」
「損傷、中毒及びその他の外因の影響」
「新生物」
「呼吸器
系の疾患」
(参考:4 疾病別医療費の経年推移)
以下同様に疾病別の状況について、医療費の観点から分かったことを次の表に当てはめていきます。
ただし、
「妊娠、分娩及び産じょく」
「損傷、中毒及びその他の外因の影響」についてはもともとの医療費が低いこと
や、他の要因が考えられるので、分析結果一覧から除きます。
分析結果一覧:B国保保険者
大分類
疾病別医療費
(被保険者1人当たり)
被保険者1人当たり
医療費の比較(※)
医療費の増加
新生物
○
○
○
循環器系の疾患
○
内分泌、栄養及び代謝疾患
○
筋骨格系及び結合組織の疾患
○
○
消化器系の疾患
※ B国保保険者の場合は比較対象が保険者属性となっておりますので、保険者属性と比較しB国保保険者の方が課題が
あると確認できた疾病について○印を記入しました。
職種や地域特性等によって保険者の立場で対策として取り組みやすい疾病、取り組みにくい疾病があります。
対策が可能な疾病
「循環器系の疾患」
「内分泌、栄養及び代謝疾患」の多くを占める生活習慣病の発症、重症化は生活習慣が原因であ
り、生活習慣改善という対策が存在します。また、
「悪性新生物(がん)」はがん検診等の促進などの対策、
「筋骨格系及
び結合組織の疾患(整形外科疾患等)」には介護予防などの対策の可能性があると考えられます。
◇A健保組合・B国保保険者共通
さらに詳細な分析
医療費の高い疾病を特定した上で、さらに対象の疾病を年齢階層別、性別、入院・入院外別などの集計を行うことに
よってより具体的に対策を立てるヒントを得ることができます。
26
Ⅲ 巻末資料
社会保険表章用121項目疾病分類に基づく「大分類」
「中分類」は下表のとおりです。
※「分類番号」の上2桁で大分類別にし、下2桁で中分類別にしています。
『社会保険表章用疾病分類表(121項目)』
生活習慣病関連及び対象疾患
大分類
Ⅰ 感染症及び寄生虫症
分類番号
中分類
傷病名例
0101 腸管感染症
コレラ 腸チフス 赤痢 食中毒(O157等)
0102 結核
肺結核 抗酸菌症
0103 主として性的伝播様式をとる感染症
梅毒 淋病 クラミジア感染症
0104 皮膚及び粘膜の病変を伴うウイルス疾患
単純ヘルペス 水痘症 麻疹(はしか) 帯状疱疹
0105 ウイルス肝炎
A型肝炎 B型肝炎
0106 その他のウイルス疾患
サイトメガロ ムンプス(おたふく) HIV ポリオ 日本脳炎
0107 真菌症
足白癬(水虫) カンジダ症 クリプトコッカス オウム病
0108 感染症及び寄生虫症の続発・後遺症
結核の続発・後遺症 ポリオの続発・後遺症 ハンセン氏病の続発・後遺症
0109 その他の感染症及び寄生虫症
ペスト ハンセン氏病
0201 胃の悪性新生物
胃がん
0202 結腸の悪性新生物
大腸がん
0203 直腸S状結腸移行部及び直腸の悪性新生物 S状結腸がん 直腸がん
Ⅱ 新生物
0204 肝及び肝内胆管の悪性新生物
肝がん
0205 気管、気管支及び肺の悪性新生物
肺がん
0206 乳房の悪性新生物
乳がん
0207 子宮の悪性新生物
子宮体がん 子宮頸がん 卵巣がん
0208 悪性リンパ腫
ホジキンリンパ腫
0209 白血病
白血病
0210 その他の悪性新生物
前立腺がん 膀胱がん 甲状腺がん 喉頭がん
0211 良性新生物及びその他の新生物
胃ポリープ
Ⅲ 血液及び造血器の疾患
0301 貧血
鉄欠乏性貧血 再生不良性貧血
並びに免疫機構の障害
0302 その他の血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害 播種性血管内凝固症候群 血小板減少性紫斑病 サルコイドーシス
Ⅳ 内分泌、栄養及び
代謝疾患
0401 甲状腺障害
バセドウ氏病 甲状腺機能亢進症
0402 糖尿病
境界型糖尿病 糖尿病性神経障害 糖尿病性網膜症
0403 その他の内分泌、栄養及び代謝疾患
卵巣機能障害 栄養失調症 高コレステロール血症 高脂血症 脂質異常症
0501 血管性及び詳細不明の認知症
アルツハイマー病の認知症 血管性認知症
0502 精神作用物質使用による精神及び行動の障害 アルコール依存症
0503 統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害 統合失調症
Ⅴ 精神及び行動の障害
0504 気分[感情]障害(躁うつ病を含む)
躁病 うつ病 躁うつ病
0505 神経症性障害、ストレス関連障害及び身体表現障害 不安神経症 適応障害 外傷後ストレス障害
Ⅵ 神経系の疾患
0506 知的障害(精神遅滞)
精神遅滞
0507 その他の精神及び行動の障害
摂食障害(拒食症) 人格障害 自閉症 多動性障害
0601 パーキンソン病
パーキンソン病
0602 アルツハイマー病
アルツハイマー病
0603 てんかん
症候性てんかん 点頭てんかん
0604 脳性麻痺及びその他の麻痺性症候群
脳性麻痺 片麻痺
0605 自律神経系の障害
自律神経失調症 ホルネル症候群
0606 その他の神経系の疾患
三
神経痛 重症筋無力症 筋ジストロフィー 水頭症
27
大分類
Ⅶ 眼及び付属器の疾患
分類番号
中分類
結膜炎
0702 白内障
老人性白内障 網膜剥離 緑内障
0703 屈折及び調節の障害
近視 遠視 老視 屈折異常
0704 その他の眼及び付属器の疾患
睫毛乱生 角膜炎 虹彩炎 網膜はく離 緑内障
0801 外耳炎
外耳炎
0802 その他の外耳疾患
耳垢塞栓 後天性外耳道狭窄
0803 中耳炎
滲出性中耳炎
Ⅷ 耳及び乳様突起の疾患 0804 その他の中耳及び乳様突起の疾患
Ⅸ 循環器系の疾患
Ⅸ 循環器系の疾患
Ⅹ 呼吸器系の疾患
ⅩⅠ 消化器系の疾患
28
傷病名例
0701 結膜炎
鼓室硬化症 中耳真珠腫
0805 メニエール病
メニエール病
0806 その他の内耳疾患
迷路炎
0807 その他の耳疾患
両側性伝音難聴 混合性難聴 特発性難聴
0901 高血圧性疾患
本態性[原発性]高血圧症 高血圧性腎症 腎硬化症
0902 虚血性心疾患
狭心症 心筋
0903 その他の心疾患
心膜炎 僧帽弁閉鎖不全症 拡張型心筋症 不整脈 心室細動 心不全 肺高血圧症
0904 くも膜下出血
くも膜下出血 脳動脈瘤出血
0905 脳内出血
脳内出血
0906 脳 塞
脳
0907 脳動脈硬化(症)
脳動脈硬化症
0908 その他の脳血管疾患
脳血栓症 脳卒中
0909 動脈硬化(症)
アテローム[粥状]硬化症(大動脈、腎動脈、四肢の動脈)
0910 痔核
内痔核 外痔核
0911 低血圧(症)
起立性低血圧症 起立性調整障害
0912 その他の循環器系の疾患
リウマチ熱 食道静脈瘤 肺塞栓症 下肢の静脈瘤 解離性大動脈瘤
塞 アテローム(粥状)硬化性心疾患 心室瘤
塞
1001 急性鼻咽頭炎[かぜ]
急性鼻咽頭炎(かぜ) 鼻炎 鼻カタル
1002 急性咽頭炎及び急性 桃炎
急性咽頭炎 急性
桃炎
1003 その他の急性上気道感染症
急性副鼻腔炎 急性気管炎
1004 肺炎
細菌性肺炎(マイコプラズマ肺炎、インフルエンザ菌など) ウイルス肺炎
1005 急性気管支炎及び急性細気管支炎
急性気管支炎
1006 アレルギー性鼻炎
花粉症 アレルギー性鼻炎
1007 慢性副鼻腔炎
慢性副鼻腔炎
1008 急性又は慢性と明示されない気管支炎
急性又は慢性と明示されていない気管支炎
1009 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
肺気腫 びまん性細気管支炎 慢性閉塞性肺疾患
1010 喘息
アレルギー性喘息 気管支喘息
1011
その他の呼吸器系の疾患
気管支拡張症 石綿肺 肺水腫 インフルエンザウイルス性による肺炎
1101
う蝕
う蝕(虫歯)
1102 歯肉炎及び歯周疾患
歯肉炎 歯周症
1103 その他の歯及び歯の支持組織の障害
歯石 埋伏歯
1104 胃潰瘍及び十二指腸潰瘍
胃潰瘍 十二指腸潰瘍
1105 胃炎及び十二指腸炎
胃炎 アルコール性胃炎
1106 アルコール性肝疾患
アルコール性肝炎 アルコール性肝硬変
1107
慢性肝炎 慢性持続性肝炎
慢性肝炎(アルコール性のものを除く)
1108 肝硬変(アルコール性のものを除く)
肝硬変 原発性胆汁性肝硬変
1109 その他の肝疾患
脂肪肝 (急性・亜急性・慢性肝不全) 肝綿維症
1110
胆石症及び胆のう炎
胆石症 胆管結石 胆のう炎
1111
膵疾患
(急性・慢性)膵炎 膵のう胞
1112
その他の消化器系の疾患
虫垂炎 そけいヘルニア 潰瘍性大腸炎 イレウス※ 便秘 過敏性腸症候群 直腸ポリープ 腹膜炎 ※腸管の癒着・閉塞
大分類
ⅩⅡ 皮膚及び皮下組織の
疾患
中分類
結合組織の疾患
ⅩⅣ 腎尿路生殖器系の
疾患
及び
産じょく
傷病名例
1201 皮膚及び皮下組織の感染症
蜂巣炎 毛巣のう胞 膿か疹(とびひ) 爪周囲炎
1202 皮膚炎及び湿疹
アトピー性皮膚炎 オムツ被れ アレルギー性皮膚炎
1203 その他の皮膚及び皮下組織の疾患
ⅩⅢ 筋骨格系及び
ⅩⅤ 妊娠、分
分類番号
乾せん〈癬〉 蕁麻疹 日焼け 白斑 あせも うおのめ
エリテマトーデス〈紅斑性狼瘡〉
1301 炎症性多発性関節障害
関節リウマチ 痛風
1302 関節症
股関節症 変形性膝関節症 多発性関節炎
1303 脊椎障害(脊椎症を含む)
強直性脊椎症 脊柱管狭窄 椎骨骨髄炎
1304 椎間板障害
頸椎間板ヘルニア
1305 頸腕症候群
頸腕症候群
1306 腰痛症及び坐骨神経痛
坐骨神経痛 腰腹痛
1307 その他の脊柱障害
脊柱側わん症 斜頸
1308 肩の障害
肩関節周囲炎 四十肩
1309 骨の密度及び構造の障害
骨粗しょう症
1310 その他の筋骨格系及び結合組織の疾患
外反母趾 結節性多発動脈炎 全身性エリテマトーデス 変形性脊椎障害
1401 糸球体疾患及び腎尿細管間質性疾患
糸球体腎炎 ネフローゼ症候群 尿細管間質性腎炎
1402 腎不全
急性腎不全 慢性腎不全 尿毒症性心膜炎
1403 尿路結石症
尿路結石症 腎結石 尿管結石
1404 その他の腎尿路系の疾患
腎性尿崩症 膀胱炎 尿道炎
1405 前立腺肥大(症)
前立腺肥大症
1406 その他の男性生殖器の疾患
精巣捻転 精巣炎
1407 月経障害及び閉経周辺期障害
過多月経 無月経症 閉経期及び女性更年期状態
1408 乳房及びその他の女性生殖器の疾患
乳腺炎 卵管炎 卵巣炎 膣炎 子宮内膜症
1501 流産
子宮外妊娠 胞状奇胎
1502 妊娠高血圧症候群
妊娠高血圧症
1503 単胎自然分
単胎自然分
1504 その他の妊娠、分 及び産じょく
切迫流産 羊水多過症 前期破水 前置胎盤 帝王切開 産じょく性敗血症
ⅩⅥ 周産期に発生した
1601 妊娠及び胎児発育に関連する障害
低出産体重児 未熟児 巨大児
病態
1602 その他の周産期に発生した病態
新生児呼吸窮迫症候群 胎便吸引症候群 新生児低体温
ⅩⅦ 先天奇形、変形及び
1701 心臓の先天奇形
心室中隔欠損症 肺動脈弁閉鎖症 大動脈狭窄症 ファロー四徴症
染色体異常
1702 その他の先天奇形、変形及び染色体異常
口蓋裂 多指症 ダウン症候群
ⅩⅧ 症状、徴候及び異常臨床
所見・異常検査所見で
他に分類されないもの
ⅩⅨ 損傷、中毒及び
その他の外因の影響
ⅩⅩⅡ 特殊目的用コード
1800
症状、徴候及び異常臨床所見・異常検査
頻脈 呼吸困難 急性腹症 排尿困難 頭痛 熱発
所見で他に分類されないもの
食欲不振等の症状
1901 骨折
骨折 不全骨折(ひび)
1902 頭蓋内損傷及び内臓の損傷
頭蓋内損傷 外傷性硬膜外血腫
1903 熱傷及び腐食
熱傷(やけど) 腐食(壊死) 壊死を伴う凍傷
1904 中毒
薬物中毒 向精神薬による中毒
1905 その他の損傷及びその他の外因の影響
脱臼 開放創 擦過傷 挫滅創 断裂 四肢外傷性切断 熱射病
2210 重症急性呼吸症候群[SARS]
重症急性呼吸症候群[SARS] 2220 その他の特殊目的用コード
29
医療費の分析とその活用
―医療費適正化に向けて―
平成24年3月発行
東京都保険者協議会
医療費分析部会
【事務局】
東京都国民健康保険団体連合会
企画事業部 事業課 保健事業係
〒102-0072
東京都千代田区飯田橋3-5-1 東京区政会館11階
電話:03-6238-0150 FAX:03-6238-0033
【印 刷】
株式会社
社会保険研究所
「本会事務局の許可なく、本書の一部または全部の無断転載を禁じます」
〔本書は東京都国民健康保険団体連合会ホームページからダウンロードできます。〕
http://www.tokyo-kokuhoren.or.jp/
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