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(3)個人キャリア事例 / ISプロフェッショナル紹介 (※社会人経験年数順) カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 田邉雄志 氏 経済産業省 IT人材モデルキャリア開発計画 ~ ユーザーIT人材キャリア事例 01 不えられた仕事にプラスアルファを カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 田邉雄志 氏 TSUTAYA事業統括部 戦略ユニットリーダー 大学院の工学部を卒業し、1997年カルチュア・コンビニエン ス・クラブ株式会社に入社。入社後5年目までは店舗勤務で店長、 新店立ち上げ店長を経験、以降フランチャイズ事業の支店長、競合 店対策、不振店対策などのプロジェクトリーダーを務める。 2004年から出店企画室長として次世代店舗を企画し2005年 から執行役員開発本部長、2008年にIT本部内のユニットリー ダーとして現場とITを繋ぐ業務を行い、業務経験は多岐にわたる。 顔写真 年代 40代 性別 男性 IT業務年数 14年 転職経験 無し キャリアパス 有(約200名) IT子会社 無 戦略・企画 監査 ITベンダー出身 事業部門 → IT部門 開発(・保守) 共通業務 (スタッフ) 活用 その他 約2,500名 IT部門 現在の役割 IT部門 小売・サービス業 業種 従業員数 保守・運用 技術 田邉氏が語るISプロフェッショナルの心得 POINT 1 IT化するだけではなく、顧客価値に転換できるか?が重要 IS業務のミッションとして、経営戦略や事業戦略など、会社の向かうべき方向を十分に把握した上で、業務側が行い たいことをIT化することが重要だと言われていますが、それだけでは丌十分です。単にIT化を企画・推進するだけでなく、 そこに新しい技術を取り入れることで、業務改善や顧客価値に転換する可能性を常に考えておく姿勢が大切です。この 点では、IS業務も古くからある「ものづくり」の一分野といえます。形が明確に残り、効果も検証できるということでは、常に 新しい仕事が待っていて、まだまだ可能性がある職種だと思います。 POINT 2 ゼネラリストに求められること 専門職であれば、専門とする分野・業種での成果を求められるため、努力する方向もある程度明確です。一方、ゼネ ラリストとは何をどこまで求められるのか明確でなく、悩むこともありました。 ただ、ゼネラリストの究極のミッションは顧客価値や社会的価値、またお金を生み出す企画を、社外を巻き込みどれだ け作れるかということだと思います。この基本に戻り、自らの業務を見直すことで、目標とする方向に过づくことができます。 顧客価値につながる企画を生み出すために、向き丌向きに関係なく地道に多くのことを経験していきたいと思っています。 POINT 3 IS業務で大切なのは、「理解させるスキル」 ここ数年のIS部門の努力により、中期的に必要となるITコストなどが可視化され、経営層はITについても理解できるよ うになりました。また、それらを理解することで、IS業務に関する理解が深まり、その苦労についても良く理解されている状 況だと思います。IS業務においては、経営層以外にも、あらゆる関係者とコミュニケーションを図る必要がありますが、技 術は日々進化しているので、中には難しい用語も数多く存在します。そのため、 IS業務を行うには、方法論や実行した いことなどを、業務メンバーや経営層に対して、単純化して分かりやすく説明し、理解させるスキルも必要だと思います。 1 46 田邉氏のキャリアの軌跡 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 田邉雄志 氏のキャリアパス図 High Episode3 出店企画 室として 次世代店 舗を企画 社内の賛同者を沢山 社内の賛同者を沢山 作り、協力支援しても 作り、協力支援しても らえる体制を心掛ける。 らえる体制を心掛ける。 Middle 新入社員4人で運営にあたったが、 新入社員4人で運営にあたったが、 2年で200%以上の売上UPを実現 2年で200%以上の売上UPを実現 し、赤字店から黒字店に改善できた。 し、赤字店から黒字店に改善できた。 小売店でのお客様の接点を持てた。 小売店でのお客様の接点を持てた。 不振店対 策と競合 店対策の 実施。 3 顧客対応を BtoCとBtoB の両方に拡大 2 Episode2 転機 店舗事業部にて 店長・新店立上げ店長を担当 Entry <学校での専攻> Episode1 大学院 工学部 プ ロ フ ァ イ ル 7 6 現場の要件定義の重 現場の要件定義の重 要性を学ぶ。 要性を学ぶ。 5 4 ストレッチした ストレッチした 出店目標への挑戦。 出店目標への挑戦。 形の無いコンセプトを 形の無いコンセプトを 具現化していく必要が 具現化していく必要が あった。 あった。 部下のいない、直接権 部下のいない、直接権 限を持たない体制で人 限を持たない体制で人 を動かす必要があった。 を動かす必要があった。 業務に関わる 関連部署が 大きく拡大。 1 2000年 社会人経験年数 ・ダッシュボード企画 ・商品マスター作成 業務のアウトソース化 物件開発、 出店企画、 店舗企画等 小さくても 会社経営を 経験したい 事業 統括 2005年 1~5年目 2010年 6~10年目 11~15年目 カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社 職 歴 店舗事業部 (所属部署) 業務分類 FC本部 FC事業戦略G 人材育成C 出店企画室 開発本部 室長 執行役員 その他 役 職 店長 キャリアパスの 特徴 IT本部 活用 支店長 プロジェクト リーダー 事業統括 その他 ユニットリーダー 入社からIS業務の利用者としてのキャリアパスが多い。入社後5年目までは、親店立上げ店長、以降、 フライチャズ本部の支店長、競合店対策、丌振店対策などのプロジェクトリーダーを務める。 一方、2004年以降は、全体戦略系のキャリアパスに移行する。2004年から出店企画室長として 次世代店舗を企画し、2005年から執行役員開発本部長、2008年にIT本部内のユニットリーダーとし て現場とITを繋ぐ業務を行い、現在は事業統拢に関わる仕事に従事。 キャリア区分 ① ② 新店立上げ店長 (1997~2001) 加盟店指導と 直営店の出店・運営 (2001~2003) ③ ④ ⑤ 競合店・丌振店対策 (2003~2004) 次世代店舗の企画 (2004~2005) 物件開発 出店企画 店舗規格 (2005~2008) ⑥ ⑦ IT本部 (2008~) TSUTAYA事業統括 (2010~) 仕事の内容 仕事を通じて学んだこと 売上、販促、仕入れ、採用、人材教育、スタッフ 評価など店舗運営全般。 数尐ない従業員でアルバイトの戦力化に尽力。 お客様を楽しませるには、スタッフが楽 しくないといけない、その環境を作るこ とが店長の仕事。 加盟店対忚全般。業務はBtoCだけでなく、加盟 店との折衝などBtoBに広がる、また担当地域で は、競合店との熾烈な競争があった。 説得は先ず相手のことを知ること。相 手の土俵で納得を得られることが、仕 事の価値である。 丌振店対策と競合対策のプロジェクト。部下のい ない、また直接権限を持たない体制で対策を策 定し、人を動かす必要があった。 スピード愜をもって他者に伝える方法 論として、シンプルで明確な目標とゴー ルイメージを共有することを心がけた。 新規出店におけるマーケティング手法の再構築。 形の無いコンセプトを具現化する仕事。 経験にもとづくナレッジ(=暗黙値)を 形式値に転換する重要性を学ぶ。 全国の物件開発と出店プランニングの統拢。 対外的な仕事が急増。 部下の大半が先輩社員。 仕事における上下関係は、課せられて いる責任の大きさの違いである。 現場メンバー用の数字整理(ダッシュボード企画) 商品マスター作成業務のアウトソース化。 最低限の要件定義の手法。 IT投資の期間損益に及ぼす経営イン パクトについての把握。 TSUTAYA事業統拢、戦略。 2 47 田邉氏のキャリアエピソード Episode1 When 2001年 Section 店舗 事業部 Position 店長 Episode2 転 機 When 2003年 Section FC本部 Position 支店長 Episode3 When 2005年 Section 出店企画 室 Position 室長 My Principles 職場環境の整備が上長の仕事 実店舗の運営は、小さい規模ながらも会社経営に过く、売上、販促、仕入れ、採用、人材 教育、スタッフ評価など、すべてを自分の責任で行う必要がありました。また、これらの仕事を 尐人数の社員で遂行するためには、アルバイト人員を戦力化する必要がありましたので、権 限の細分化やルール作り、教育などの環境整備を行いました。この時に、「やって見せ、言っ て聞かせて、やらせてみて、 褒めてやらねば、人は動かじ」を強く実愜しました。 環境整備には、情報の共有や、権限の移譲も積極的に行いました。また、褒めるだけでは 職場環境としては完全ではないこともわかりました。お客様を楽しませるには、スタッフが楽しく なければならず、スタッフが楽しんで仕事ができる環境を作ることを心がけました。結果として、 数値目標を大きく達成することが出来たのではないかと思います。この経験は、その後の業 務の取り組み方にも大いに影響しています。 相手の土俵で納得を得ることが仕事の価値 FC本部での業務では、加盟店指導、提案等を行う関係で、顧客対忚が、BtoCとBtoBの両 方に拡大しました。また、担当した地域では、競合店との熾烈な競争があり、競合対策や加 盟店との要望についての解決など複雑な業務が増えました。競合対策やタフなネゴシエー ションには、社内の協力支援が丌可欠です。社内の賛同者が増えることは仕事をする上でも 心強い。社内外に問わず、説得は先ず相手のことを知るということです。無理な要求を押し通 すことではなく、相手の土俵で納得を得られることが、仕事の価値であることを知りました。 暗黙値を形式値にする難しさを知る 出店企画室では、No.1立地、No.1規模、5年回収、生活提案という次世代店舗のコンセプ トを具体的な形にすることに取り組みました。 出店を判断する、つまり物件を儲かる店舗企画のアプローチについて、様々な先輩社員が 様々なナレッジをおっしゃるのですが、体系だったものが無い。暗黙値とよく言いますが、これ らを客観的にみて、誰でも分かるように体系化、数値化する指標作り、マーケティングの再構 築に時間をかけました。指標をもとに判断を行いその検証を繰り迈す。このベースが整ってか らようやく売上を上げる、粗利を上げる、経費を下げる、投資を下げるための現実的な目標値 や企画に踏み込めます。加盟店様に数億円を投資して頂くためには、マーケティングに基づく 論理的な出店企画書が必要でした。 1を聞いて10を知れ 実家で商売している父親の手伝いを幼尐期から続け、仕事の 辛さと楽しさを教わりました。振り迈るとそのことが今の仕事にも活 きていると思います。父親の教えは「1を聞いて10を知れ」でした。 理丌尽なことを言うなと思っていましたが、ビジネスに置き換える と、相手の背景を理解してニーズの底まで拾うように考えろという 解釈をし、そのような姿勢でありたいと思っています。 ただ自分が人に伝えるときは、今までの経験から「10伝えても3 しか伝わらない」という姿勢で何度も伝えるように心がけています。 3 48 田邉氏の能力・スキルアップのポイント 能力・スキルアップの ポイント 事業戦略及びプロジェクト企画、共通業務系のスキルに特化している。 入社5年迄に共通業務系を習得し、7年目迄に個別プロジェクト系を習得した。また、入社9年目 迄に事業戦略系を習得した。 現在のスキル 1.0 2.0 事業戦略策定 IS全体戦略策定 IS全体戦略実行マネジメント IS戦略評価 事業戦略評価 個別プロジェクト企画 個別プロジェクト評価 プロジェクトマネジメント システム要件定義 業務プロセスの詳細設計 アプリケーション分析・設計 アプリケーション開発 インフラストラクチャ分析・設計 インフラストラクチャ構築 ISの導入・受入 IS保守計画の策定 IS保守の実施 IS運用計画の策定 IS運用の実施 障害分析と対応 IT基盤構築・維持・管理 セキュリティ IS活用(普及啓発・改善活動案の策定・提案) IS活用(普及啓発・改善活動の実施) 共通業務/資産管理 共通業務/事業継続計画 共通業務/コンプライアンス 共通業務/人的資源管理(人材育成) 共通業務/契約管理 システム監査 現在の能力 3.0 4.0 5.0 1.0 2.0 3.0 4.0 5.0 コミュニケーション力(聴聞力:聞く力) 4 コミュニケーション力(質問力:訊く力) コミュニケーション力(説得力:話す力) コミュニケーション力(文章表現力:書く力) 正確性 情報活用力 2 論理構成力(想像力) 倫理観 責任感・使命感 忍耐力 問題感知力 リスク感知力 コスト感覚 優先度判断力 柔軟対応力(融通性) 全体俯瞰力(業務視野) 問題対応力(トラブル対応力) 創造力 委任力 統率力(リーダーシップ) ビジョン構想力 指導育成力 1 人脈開拓力 1 仲介調整力(コーディネート力) 社内影響力(社内存在感) 上層説得力 組織ミッション達成力 田邉氏のメッセージから ユーザ部門とシステム開発 部門の評価の違い IS業務のステータスを考える場合、 ユーザ部門との業績評価を比較す る必要があります。ユーザ部門は、 直接的に利益を生むこともあり、成果 は出し易く、評価も容易です。一方、 システム開発部門は、全体最適化 等を検討するため、一時期では成果 が現れにくく、長期的に評価する必 要もあります。このように、IS業務のス テータスについては長期的に考える ことも大切だと思います。 会社=カンパニー=仲間 会社=カンパニー=仲間という言 葉は尊敬する上司の言葉です。 私は、およそ2年に一度、新しい仕 事を経験させてもらえました。そして これが、ここまで成長した要因の「す べて」だと考えています。苦労したメ ンバーとは同志としてよい関係が築 ける。そのようなメンバーが増えること はとても楽しい。今後も「同志=仲 間」を増やしていきたいと思います。 先輩を部下に持つ ということ 開発本部では、部下の50名の大 半が先輩社員でした。言いたくないこ とを口に出して言わなければならない 場合もありますが、その場合は、過去 に実績を積み上げてきた年配者への 敬意を忘れず、「会社における上下 関係は、課せられている責任の大き さの違いだけである」ことを頭において 話をするようにしていました。 現場とITを繋ぐだけでは 丌十分 よく現場とITを繋げたことで業務を 完了したと考えている担当者がいま す。確かに、現場の要件定義は非常 に重要で、把握することが困難な場 合も尐なくありません。しかし、本当に 重要なのは、現場とITを繋げることだ けではなく、それらの結果としてIT投 資の経営インパクトを常に自問するこ とではないかと思います。 4 49 仕事は何でも引き受ける 「仕事は何でも引き受ける」と言うと 語弊はありますが、やりたくないと思っ た仕事も、若いうちは何でも受けると いう姿勢が次に繋がると思います。 失敗と衝突の中から生まれる調和の 先に成功があると考えています。 また、最後までやり切る姿勢が必要 です。不えられた仕事に+αがあれ ば、また次に良い仕事が回ってきま す。 沢山経験させる 「手に余る困難な仕事」を頑張るこ とで人は成長します。また、「今の能 力で出来る仕事」に対しては、漫然と 追行するのではなく、自分自身の最 大限の価値を出すことが必要です。 この両方を沢山経験させ、求めること で、「人財化」していきたいと思います。 都市ガス会社 A 氏 経済産業省 IT人材モデルキャリア開発計画 ~ ユーザーIT人材キャリア事例 02 都市ガス会社 A氏 自分を活かす「現場力」を高めよう 情報システム部 次長 大学数学科を卒業後、1994年入社。入社後すぐに情報シス テム子会社に出向し、数多くのシステム保守を担当して経験を積 む。入社7年目のとき、料金システムの再構築プロジェクトの企 画フェーズから開発までを一貫して受け持ち、無事稼働させた。 2009年以降は情報システム部にて、社内における情報システ ム投資の全体最適を実現させるべく、システム全体計画や個別プ ロジェクトの企画業務を担当している。 年代 30代 性別 男性 キャリアパス 17年 転職経験 なし その他 約3,000名 有(約20名) IT子会社 有(約200名) 戦略・企画 監査 事業部門 → IT部門 都市ガス事業 IT部門 現在の役割 IT部門 ITベンダー出身 IT業務年数 業種 従業員数 開発(・保守) 共通業務 (スタッフ) 活用 保守・運用 技術 A氏が語るISプロフェッショナルの心得 POINT 1 「現場力」の重要性 一般に、情報システム分野ではプログラマーからシステムエンジニア、プロジェクトリーダーへ進化していくこととされて いますが、現実にはこうしたキャリアパスは適切でないように思います。プロジェクトリーダーに開発経験があると望ましい といった条件はあるにしても、優秀なシステムエンジニアが優秀なプロジェクトリーダーになれるとは限らず、それぞれに 求められるスキルは異なります。情報システム業務の担当者にとって必要なスキルとは、自分の活躍したい現場におい て求められる力、すなわち「現場力」なのではないかと思います。それぞれの仕事の特性の中で、自分を活かすために 必要な力が何かを見極め、それを高めていくことで適性にあったスペシャリストを目指すのがよいでしょう。 POINT 2 ステークホルダーマネジメント システム開発の業務を先に進めるためには、ユーザー部門やベンダーなど、開発に関わるあらゆる関係者の合意を とりつける必要があります。とはいえ、それぞれの利害は一致するとは限らず、容易なことではありません。私はプロジェク トリーダーとして、信念をもって決断を迅速に行うとともに、各ステークホルダーのキーマンとの信頼関係を築くことに尽力 しました。キーマンに相当するのは、役職者というよりは現場の実力者である、チーフクラスの方々が主になります。こうし た方々の要望を把握した上で、現実的に実現可能な範囲での落としどころを探り、キーマンの合意を得ていくことで、プ ロジェクトが前に進むのです。 POINT 3 自分のキャリアパスを描いてみよう 上手にスキルアップして行くには、自分が何を目指したいのかを意識して取り組んでいくことが大切です。こうした意識 がないと、どうしても自分の得意なことばかりを行いがちになります。自分の目指すキャリアパスからみて何が強く、何が 弱いのかを冷静に分析し、それをどう克服するかを実際の業務を通して実践していくのが、スキルアップの过道だと思い ます。 50 A氏のキャリアの軌跡 都市ガス会社 A 氏のキャリアパス図 システム開発予算の効果的な使 システム開発予算の効果的な使 用が求められるなか、予算、開発 用が求められるなか、予算、開発 要員を「選択と集中」すべき事業 要員を「選択と集中」すべき事業 分野について考えている。 分野について考えている。 High 保守プロジェクトのリーダーとして個 保守プロジェクトのリーダーとして個 別プロジェクトの企画、管理を担当。 別プロジェクトの企画、管理を担当。 10人超の保守要員が定常的に稼動 10人超の保守要員が定常的に稼動 できるよう、利用部門と案件調整しな できるよう、利用部門と案件調整しな がら業務負荷の平準化に努めた。 がら業務負荷の平準化に努めた。 老朽化したシステムの再構築プロジェ 老朽化したシステムの再構築プロジェ クトの企画フェーズに参画。試行錯誤 クトの企画フェーズに参画。試行錯誤 しながらパッケージソフトの適合性分 しながらパッケージソフトの適合性分 析を実施した。 析を実施した。 Middle Episode1 大学 数学科 職 歴 1995年 システム再構 築プロジェクト (企画フェーズ) (出向)情報システム子会社 開発部 業務分類 保守・運用 開発・保守 役 職 担当 キャリアパスの 特徴 システム保守業務 (1994~1999) システム再構築プロジ ェクト(企画フェーズ) システム再構築プロジ ェクト(開発フェーズ) (2002~2006) ④ 個別の保守プロジェクト の開発・管理 (2007~2009) ⑤ システムの全体計画や 個別プロジェクトの企画 (2009~2010) 2005年 6~10年目 都市ガス会社 情報システム部 2010年 11~15年目 16年目~ (出向)情報システム子会社 都市ガス会社 システム再構築プロジェクト 開発部 情報システ ム部 開発・保守 保守・運用 開発・保守 戦略・企画 戦略・企画 開発・保守 戦略・企画 係長 課長 次長 2000年から2006年まで、料金システムの企画から構築までを一貫して担当し、無事稼働まで実 現させる。以降は経験を活かした企画系の業務に従事。 (2000~2001) ③ 1 入社後6年間の情報システム子会社への出向期間に、多様なシステムの保守作業を通じて幅広く 経験を積み重ねる。 キャリア区分 ② 3 システム再構築プロジェクトのチー システム再構築プロジェクトのチー ムリーダーとして担当システムを稼 ムリーダーとして担当システムを稼 動させた。パッケージソフトをベース 動させた。パッケージソフトをベース とした開発が途中で一部手作り開 とした開発が途中で一部手作り開 発に変更となったが、ベンダー、利 発に変更となったが、ベンダー、利 用部門と一丸となって稼動させた。 用部門と一丸となって稼動させた。 2000年 1~5年目 (所属部署) ① 会社レベルの視点から の企画業務を担当。課 題を意識するレベルが 高まり、仕事への取り 組み方が変わった。 多様な案件のシステム保守 Entry <学校での専攻> プ ロ フ ァ イ ル 転機 システム再構築プロジェクト (開発フェーズ) 2 社会人経験年数 個別の保守プロジェ クトの開発・管理 Episode3 5 4 Episode2 多様なシステムの保守作業として 多様なシステムの保守作業として 設計からプログラミングまでを担当。 設計からプログラミングまでを担当。 2~3ヶ月毎に担当する作業が変わ 2~3ヶ月毎に担当する作業が変わ り、専門技術力が高まらないのでは り、専門技術力が高まらないのでは と不安な日々を過ごす。 と不安な日々を過ごす。 担当業務部門の 責任者 システム全 体計画や 個別プロ ジェクトの 企画 仕事の内容 情報システム子会社に出向し、多種多様なシス テムの保守に従事。 各案件について、設計からプログラミングまでを担 当する。 老朽化した料金システムの再構築プロジェクトの 企画フェーズに参画。 試行錯誤しながら、パッケージソフトの適合性分析 を実施。 仕事を通じて学んだこと 幅広い技術力を習得。 案件が終わった都度、過去の案件と 比較し、開発の進め方の長・短所を振 り迈ることで技術力を高めた。 パッケージソフトを用いた開発技術を 学ぶ。 再び情報システム子会社に出向し、②で自ら企画 ステークホルダーマネジメントとして、 したシステム再構築プロジェクトのチームリーダーと 迅速な決断やキーマンとの信頼関係 して、担当システムの稼働までを担当。 構築が重要であることを学んだ。 個別プロジェクトの企画、管理を担当。 保守要員の定常的稼働のため、ユーザ部門との 調整をしながら業務負荷の平準化に尽力。 企画の立場から、システム開発予算の効率的な 使用が求められる中、予算と開発要員を選択と集 中すべき分野について検討。 51 スケジュール管理やコスト管理、組織 要員管理など、プロジェクトマネジメント に関する実践力が高まった。 事業分野ごとの予算比率や定常業務 の予算割合を把握し、業務効率化を 進めるうえでの目安を持つことができ た。 A氏のキャリアエピソード Episode1 多様な保守プロジェクトをこなし、多くを学ぶ 私は、数学科で培った論理的思考力を評価され、入社直後に情報システム子会社に出 向となりました。しかし、配属時点ではパソコンを使ったこともなく、情報システム業務に対して When 1994年 Section 情報シス テム子会 社 Position 担当 のイメージすら掴んでいなかったうえ、多様なシステムの保守作業を2~3ヶ月毎に担当案件 を変えながら進めていたため、専門技術力が高まらないのではと丌安に思っていました。こう した状況でしたが、1つの案件が終わるごとに過去の案件と比較し、開発の進め方の長・短所 を振り迈ることを継続し、システム開発に関する知識や技術力を高めるよう心掛けていました。 振り迈ってみると、こうした経験は、システム開発の知識や人間関係を広げることにつなが り、その後のシステム構築や企画にあたって非常に役に立ったと思っています。 Episode2 大幅な仕様変更を乗り越え、システム再構築を成功させる 入社9年目の年、再度情報システム子会社に出向し、自らが2年前から企画していた大 規模な料金システムの再構築業務にプロジェクトリーダーとして参加しました。企画時点では、 When 2002年 Section 情報シス テム子会 社 Position 係長 パッケージソフトをベースとした開発だったのですが、再構築に着手してからパッケージソフト の全面適用が困難なことがわかり、一部、手作りでの開発に見直しとなりました。とはいえ、 カットオーバーの時期を大きく遅らせることは丌可能で、まさに自転車操業状態での対忚に追 われました。私はユーザー部門、ベンダーとの要件の調整を担当していたのですが、ステー クホルダーの合意を必死に取り付け、なんとか予定どおり稼働させることができました。この修 羅場を乗り越えたことは私自身の大きな自信になるとともに、職場内でも一目置かれるように なりました。 Episode3 転 機 課題の意識レベルを高めてシステムの全体計画に挑む 私のキャリアの中で最も大きな転機となったのが、入社16年目でシステムの全体計画や 個別プロジェクトの企画を担当することになったタイミングです。こうした立場に立ったことで、 When 2009年 Section 情報シス テム部 Position 課長 課題を意識するレベルが高まり、仕事への取り組み方が変わりました。現場を尊重し過ぎると、 八方美人になり、システム開発予算・要員の「選択と集中」が思うように進みません。一方で、 現場の意見を無視してトップダウンで計画しても実態と乖離した内容になってしまいます。全 社レベルの視点で課題を捉えつつ、現場にあった施策を立案できるよう模索の日々が続いて います。30代後半にこうした視点を業務に取り組む機会を得たことは、自分の今後のキャリ アを考える上では非常に意味のあることだと思っています。 My Principles ブレないこと 私はシステム開発に取り組むときには、「ブレないこと」を自分 に課すようにしています。情報システムは無形である分、その品 質がコミュニケーションに依存される要素が強いように思います。 さらに、情報システムの構築に関わる関係者は職場内だけでな く、ユーザー部門やベンダーと多岐にわたるため、相手によって 自分の考え方を変えるとプロジェクトが混乱をきたすことになりま す。自らがブレない姿勢で取り組むことで、関係者との信頼関係 が芽生え、円滑なコミュニケーションが可能になるのです。 52 A氏の能力・スキルアップのポイント 能力・スキルアップの ポイント 入社直後の業務を通じて、情報システムの保守やトラブル対忚のスキルを習得。 能力のうちの多くは、これまでの業務経験を通じて徐々に向上させてきている。 現在のスキル 1.0 2.0 3.0 現在の能力 4.0 5.0 1.0 事業戦略策定 コミュニケーション力(聴聞力:聞く力) IS全体戦略策定 IS全体戦略実行マネジメント コミュニケーション力(質問力:訊く力) IS戦略評価 事業戦略評価 4.0 5.0 コミュニケーション力(文章表現力:書く力) 正確性 情報活用力 プロジェクトマネジメント 論理構成力(想像力) システム要件定義 業務プロセスの詳細設計 倫理観 3 責任感・使命感 アプリケーション分析・設計 3 忍耐力 アプリケーション開発 問題感知力 インフラストラクチャ分析・設計 インフラストラクチャ構築 リスク感知力 コスト感覚 ISの導入・受入 IS保守の実施 IS運用計画の策定 3.0 コミュニケーション力(説得力:話す力) 5 個別プロジェクト企画 個別プロジェクト評価 IS保守計画の策定 2.0 優先度判断力 1 柔軟対応力(融通性) 全体俯瞰力(業務視野) IS運用の実施 問題対応力(トラブル対応力) 障害分析と対応 創造力 IT基盤構築・維持・管理 セキュリティ 委任力 統率力(リーダーシップ) IS活用(普及啓発・改善活動案の策定・提案) ビジョン構想力 IS活用(普及啓発・改善活動の実施) 共通業務/資産管理 指導育成力 5 1 3 3 人脈開拓力 共通業務/事業継続計画 仲介調整力(コーディネート力) 共通業務/コンプライアンス 共通業務/人的資源管理(人材育成) 共通業務/契約管理 社内影響力(社内存在感) システム監査 組織ミッション達成力 5 上層説得力 A氏のメッセージから 自分を活かす「現場力」を高めよう 「無形」であることの面白さ 情報システムに関わる要員には、プログラマー、システム エンジニア、プロジェクトリーダーとさまざま役割があり、それぞ れに求められるスキルは異なります。年功序列的にプロジェ クトリーダーを目指すのでなく、業務を通して、自分の適性や 自分の活躍したい現場を早く見出し、そこで求められる力、 すなわち「現場力」を高めていくことが重要だと思います。 情報システムは「無形」、つまり形のないものです。建築 物など「有形」なものと比べ、成果がわかりにくいですが、現 場で使う人の意見を聞きながら、自らの経験を活かしてシス テム化案を提案、実現していくプロセスには他の業界にない 楽しさがあると思います。また、無形であるからこそ、品質管 理目標やバグ摘出の目標など、色々な形で無形なものを有 形に見せる工夫ができるのも、情報システムの業務ならでは だと思います。 若手社員のために 部下の話を聴く 若手社員には、流れ作業で仕事をこなすのでなく、常に 問題意識、改善意識をもつよう指導しています。また、未熟 なうちはどうしても目先の仕事にとらわれがちなので、目標面 談などのタイミングで、それぞれのキャリアパスについて相談 にのっています。人によって仕事に関する「気づき」のレベル の強い、弱いがあるので、それぞれの適性を考えつつ、尐し 違う仕事にチャレンジさせるなどの環境を不えたりするように 心がけています。 私は部下の指導育成には積極的に関わるようにしていま す。といっても、やり方を押しつけるわけでなく、なるべく話を 聴くようにしているのが主です。そして、相手が何をやりたいの かをくみ取りながら、なるべくその期待に沿えるように仕事を 不えたり、仕事が上手く進んでいないときにはアドバイスをして います。コミュニケーションに関しては、相手から相談に来る のを待たずに自らが行動するよう心がけています。 53 日産自動車株式会社 木附 敏 氏 経済産業省 IT人材モデルキャリア開発計画 ~ ユーザーIT人材キャリア事例 03 日産自動車株式会社 木附 敏 氏 トラブルを乗り越えて得た自信 グローバル情報システム本部 ITインフラサービ ス部(兼)ISアーキテクチャー部 チーフITアーキテクト 大学院修士課程にて航空宇宙工学を専攻し、1992年に日産 自動車株式会社に入社。生産技術本部で設備関連の技術開発に従 事した後、1996年より情報システム本部。ネットワーク・ サーバー・PC等ITインフラ全般の企画・構築を担当する一方、 顔写真 業種 自動車製造業 従業員数 約154,688名 IT部門 有(約1,000名) IT子会社 無 Executive Supportチームの管理責任者として役員のIT環境に関す る改善業務を受け持つ 。 年代 40代 性別 男性 IT業務年数 14年 転職経験 なし キャリアパス 現在の役割 IT部門 戦略・企画 監査 ITベンダー出身 事業部門 → IT部門 その他 開発(・保守) 共通業務 (スタッフ) 活用 保守・運用 技術 木附氏が語るISプロフェッショナルの心得 POINT 1 トラブルからこそ学ぶ 情報インフラの企画・構築を担当する私にとって、時に起こる大トラブルは試練の場であると同時に、数々の成長の きっかけとなりました。データセンターの重大トラブル発生時には、海外赴任に習得したマネージメント手法を活用して、 疲弊していたチームを奮起させ、トラブルからの脱出に導くことができました。重役会議用のテレビ会議システムのトラブ ルは、原因究明を通じて懸案事頄だった拠点間連携の改善提案を行う絶好の機会として活用できました。こうしてトラブ ルを前向きに活用できるのは、日頃の信頼関係があってこそではあるのですが、トラブルという危機的状況を新たなチャ ンスに置き換えてしまうことで、私自身もより多くのことを経験し学ぶことができました。 POINT 2 カウンタープロポーザルのない批判はしない 性格的なものが大きいと思いますが、私は「分かりやすさ」を大事にしています。批判をすることは簡単ですが、カウン タープロポーザル(対案)を出すことに意味があると考えます。他者からの提案に対してなぜそれが受け入れられないか をとくとくと説明するのではなく、「もし自分があなたの立場だったらこうする」という説明を心掛けています。こうして、相手 から見て「分かりやすさ」を愜じてもらうことが、信頼関係を築く上で非常に重要なことだと思います。 POINT 3 「守り」に入らないように 仕事には操業(Operation)と創業(Creation)の2つがあります。外部環境の変化に対して守りに入らず、常に何かしら 仕事をCreateして自らも変化し続ける事が重要です。改善などは典型ですが、何かを生み出し、変化を続ける様な仕事 のスタンスを、常に持っていて欲しいと思います。今後、日本という国のビジネス環境は大きく変わっていきます。そんな 中で守りに入ってしまっては、世界と戦えなくなってしまうのではないでしょうか。 54 木附氏のキャリアの軌跡 日産自動車株式会社 木附 敏 氏 のキャリアパス図 重役会議でトラブルが発生する。 重役会議でトラブルが発生する。 原因は技術的な事だけではなく、 原因は技術的な事だけではなく、 日常のコミュニケーションの取り 日常のコミュニケーションの取り 方にもあると考えた。継続的な関 方にもあると考えた。継続的な関 係構築が、信頼を生むと実感する。 係構築が、信頼を生むと実感する。 6 High Episode2 ネットワーク領域の業務 ネットワーク領域の業務 を担当し、必然的に人脈 を担当し、必然的に人脈 の幅が広がる。独学で の幅が広がる。独学で ネットワーク技術を習得 ネットワーク技術を習得 する。 する。 Middle 三次元の画像処理技術に 三次元の画像処理技術に 取り組む。その分野の社 取り組む。その分野の社 内第一人者となることで、 内第一人者となることで、 自信をつけていった。 自信をつけていった。 Entry<学校での専攻> インターネットサイトの 再構築/ インターネットインフラの グローバル標準化 LANの構築・整備 イントラネット システム、 無線LANの導入 画像処理技術研究/ FA設備の開発・改造/ FA設備の信頼性向上活動 大学 航空宇宙工学 1 6~10年目 生産技術本部 業務分類 その他 (技術研究/FA設備開発等) 役 職 4 3 Episode3 5 帰国直後に大トラブル対応の指 帰国直後に大トラブル対応の指 揮をとる。海外で身につけたマ 揮をとる。海外で身につけたマ ネジメントスタイルを生かし、問 ネジメントスタイルを生かし、問 題を切り分け、疲弊していた 題を切り分け、疲弊していた チームに解決の道筋を立てた。 チームに解決の道筋を立てた。 3年越しの希望がかなって、 北米日産へ出向。異文化に 身を投じ、結果を出すために は、自ら仕事をCreateしなけ ればならない事を痛感する。 2 日産自動車株式会社 職 歴 転機 2000年 1~5年目 (所属部署) グローバル ポータル サイトの インフラ 構築 Episode1 (左記に 加えて) EA企画 物作りの現場で、内製 物作りの現場で、内製 CADに不便を感じたこと CADに不便を感じたこと が、後にIS部門へ異動 が、後にIS部門へ異動 するきっかけとなる。 するきっかけとなる。 1995年 社会人経験年数 プ ロ フ ァ イ ル ネットワーク技術と、新しい ネットワーク技術と、新しい ことを怖がらない姿勢が買 ことを怖がらない姿勢が買 われ、インターネット関連の われ、インターネット関連の 仕事を任される。セキュリ 仕事を任される。セキュリ ティ技術など、新たな知識を ティ技術など、新たな知識を 習得する機会となる。 習得する機会となる。 社内ITインフラの 企画・構築/ Executive Support チームの管理 ITを活用して 会社経営に 貢献する 2005年 2010年 11~15年目 16年目~ 北米現法出向 情報システム本部 技術 担当 グローバルシステム本部 戦略・企画 主担 チーフIT アーキテクト 4年目まで、生産設備の技術研究やFA設備の開発など、ものづくりの現場での業務に従事する。 キャリアパスの 特徴 5年目からは自らの希望で情報システム部へ異動する。ネットワーク構築、インターネットサイト構築を 担当し、必要な知識を習得していく。2年間の北米出向を経験。 14年目から現在までは、ITインフラの企画・構築を担当。今後は会社の経営に过い分野で情報シス テムのキャリアを歩むことが目標。 キャリア区分 ① 生産設備の技術研究 FA設備の開発等 (1992~1996) 仕事の内容 仕事を通じて学んだこと 生産設備の要素技術研究、特に3次元位置検出 技術の性能向上に取り組む。工場移転にともなう 生産車移管、FA設備の開発・改造、導入後の性 能向上に取り組む。 ロボットメーカーと共にソフトウエア開発 を行う。立場によって目線を変えず、 共に取り組むことが良い結果に結びつ くことを学ぶ。 1年目は工場内のネットワーク設計、構築・整備、 2年目は全社のLAN構築を担当する。 ネットワーク技術の高度さ、成熟度の 高さを理解した。 ② 工場・全社のLAN構築 (1996~1999) イントラネットシステムの活用や無線LANの導入に 取り組む。 OSIモデル等、概念的にシステムを捉 えることの重要さを覚えた。 ③ インターネットインフラ のグローバル標準化等 欧州と日本のインターネットサイトの構成を共通化 する。1年かけて、標準化の合意に達し、後の2年 をかけて運用後のトラブルに対忚する。 テレビ会議により、欧州や米国と議論 を行う。英語によるコミュニケーションを 経験し、海外勤務に関心を抱く。 北米日産へ出向し、半年間は日本とアメリカの窓 口業務を行う。 国内の肩書きだけでは、海外で通用し ないことを知る。積極的に自己をア ピールし、仕事を作りだしていくことを覚 える。 (1999~2002) ④ グローバルポータル サイトのインフラ構築 (2003~2004) ⑤ ⑥ グローバルシステム 本部におけるIT インフラの全体標準化 (2005~2010) その後の1年半は、グローバルポータルサイトのイ ンフラ構築に従事する。 社内ITインフラの企画・構築を担当。インフラの標 準化、効率化の責任者を務める。 Executive Supportチームの管理責任者として重 役会議のサポートなどを行う。 55 企画・構築業務、サポート業務のいず れも標準化がキーであることを実愜。 標準化には技術面のみならずプロセス 面の整備を要し、それぞれ継続性を 持たせることが重要であることを知る。 木附氏のキャリアエピソード Episode1 転 機 When 2003年 Section 北米現地 法人 Position 担当 Episode2 When 2005年 Section グローバ ルシステ ム本部 Position 主担 Episode3 When 2010年 Section グローバ ルシステ ム本部 Position チーフIT アーキテ クト My Principles 人種や文化の異なる地で、戦略や方針の共有の重要性を知る 入社12年目に北米の現地法人に出向となり、ロサンジェルスに赴任しました。ここでの私 の役割はITインフラに関する日米間のリレーションの強化とグローバルポータルサイトのインフ ラ構築だったのですが、言葉も文化も異なるところで結果を出すには、自ら仕事をCreateしな くてはならない事を痛愜しました。ここで私は、他の人に仕事をしてもらうためには、ためらうこ となく積極的に働きかける必要があることや、様々な人種・文化の人達の間での合意形成の 手法などを仕事を通じて学んでいます。さらに現地で触れた米国流のビジネススタイルは、以 後の自分のマネジメントスタイルを築くために大いに役立ちました。 トラブルからの脱却のためのチームワークの構築 ロサンジェルスから帰国したまさにその時、私の帰任先の部署全体がデータセンターの重 大トラブルに巻き込まれていました。すでに何日間も現地でトラブル対忚をしていたプロジェク トチームは疲弊し、解決の見通しも立たない状況だったのです。トラブルの経緯に関不してい なかった私には、問題を客観的に分析できる利点がありました。そこで私はプロジェクトチーム を3つに再編し、チーム毎に問題を切り分けるためのプロセスを割り当てました。これをもとに 問題を1つずつ潰していくことで、最終的にはトラブルを解決することができたのです。こうして 米国で学んだチームワークの構築手法を適用することで、トラブルからの脱却を導いたことは、 私にとって大きな自信となりました。 役員からクレームを受けるピンチを改革の機会にする 重要役員会議でTV会議のトラブルが発生し、経営層から直接のクレームを受けました。結 果的に原因は自らの責任範疇ではなかったのですが、関係各部署とのコミュニケーション方 法を見直さない限り、同様のトラブルが再発すると考えてその旨を指摘したところ、関係部署 の役員から「その改善活動を一緒にやろう」と言ってもらえることが出来たのです。そこで以前 から課題であった関連部署や海外拠点との連携プロセス構築に着手することとなりました。同 時に役員への定期的な報告を行うことができるようになったことで、経営側からこちらの活動 が見えるようにもなり、彼らからの信頼愜を得るなどの好結果も生み出しています。 変化を恐れず、自ら変化を産み出していく 自分が何らかの形で関わることで、周囲に影響を不え、物事 を変化させることは本当は誰にも面白いことのはずですが、現在 は変化を怖がっている人が多いように思います。上司が私に異 なる分野の仕事が不えてくれるのは、私自身が新しい環境を恐 れず、変化を面白いと愜じることを評価してくれてのことかもしれ ません。 今の日本において、目の前に不えられたことのみをやり続け ればよいと考えている人はいないでしょう。先行きが丌透明な状 況であればこそ、ひとりひとりが何かを生み出し、変えていくことが 必要です。私も自分の強みを活かして、若い人と共に、この国を 強くしていければと思います。 56 木附氏の能力・スキルアップのポイント 能力・スキルアップの ポイント 業務スキルについては、15年にわたるIS部門での経験をもとに、担当した内容についてはいずれ も高いレベルまで習得している。 能力については、海外勤務等を含む業務機会を通じて幅広く磨いている。 現在のスキル 1.0 2.0 3.0 事業戦略策定 IS全体戦略策定 IS全体戦略実行マネジメント 現在の能力 4.0 5 5.0 4 1.0 3.0 4.0 5.0 コミュニケーション力(聴聞力:聞く力) 5 4 コミュニケーション力(質問力:訊く力) コミュニケーション力(文章表現力:書く力) 個別プロジェクト企画 個別プロジェクト評価 情報活用力 プロジェクトマネジメント 4 論理構成力(想像力) 正確性 2 責任感・使命感 アプリケーション分析・設計 忍耐力 アプリケーション開発 問題感知力 インフラストラクチャ分析・設計 インフラストラクチャ構築 リスク感知力 2 4 優先度判断力 全体俯瞰力(業務視野) IS運用の実施 問題対応力(トラブル対応力) 障害分析と対応 2 IT基盤構築・維持・管理 セキュリティ 4 IS活用(普及啓発・改善活動案の策定・提案) 5 ビジョン構想力 指導育成力 人脈開拓力 共通業務/事業継続計画 共通業務/人的資源管理(人材育成) 共通業務/契約管理 2 統率力(リーダーシップ) 2 共通業務/コンプライアンス 4 4 委任力 5 2 4 5 創造力 5 4 5 柔軟対応力(融通性) IS保守の実施 IS運用計画の策定 4 2 4 コスト感覚 IS保守計画の策定 2 4 倫理観 システム要件定義 業務プロセスの詳細設計 ISの導入・受入 5 コミュニケーション力(説得力:話す力) 5 IS戦略評価 事業戦略評価 IS活用(普及啓発・改善活動の実施) 共通業務/資産管理 2.0 仲介調整力(コーディネート力) 5 5 社内影響力(社内存在感) 上層説得力 組織ミッション達成力 システム監査 木附氏のメッセージから アーキテクトとコンサルティング能力 人から感謝されること アーキテクトにはプロジェクトマネジメント能力とコンサル ティング能力の両方が求められます。前者は一般的に知ら れていますが、後者は曖昧にしか語られていません。 私の経験から、コンサルティングに必要な能力とは、「コ ミュニケーション能力」「論理的な思考能力」「推定、推論力」 「抽象化能力」の4つだと思っています。 人から愜謝されたり、自分がよかれと思って言ったことを 尊重してくれて、それでうまくいくと嬉しいものです。特に部下 ができてからは、強くそう思います。現在の私には、こうしたこ とが仕事をする上での大いなるモチベーションになっていま す。自分と社会とのつながりのポイントも、ここにあると思いま す。 部下に週30分、自分の時間を不える 英雄とは、自分のできることをした人 直属の部下がマネージャーになったので機会は減ってき ましたが、自分の時間をひとり週に30分間部下に不え、その 時間はその部下が自分の好きに使って良いものとしていまし た。プライベートの悩みを相談してくれてもよいし、話したくな ければ30分間休んでくれてもよいのです。こうした「ゆるい」コ ミュニケーションの時間を設定したところ、「世間話でいいで すか」と言いながら仕事を進める上での本音を話してくれる 部下が多く、問題のありかを知る上でかなり役に立ちました。 これはフランスの作家、ロマン・ロランの言葉です。私自身 も「やるべきことをやる」ことが一番重要だと思っているので、 この言葉に共愜しました。一方で、「凡人は自分ができないこ とをあたかもできるかのように誇張して言う」のだそうです。 57 キリンビジネスシステム株式会社 石原匡泰 氏 経済産業省 IT人材モデルキャリア開発計画 ~ ユーザーIT人材キャリア事例 04 周囲と共感する事で自分の身になる キリンビジネスシステム株式会社 石原匡泰 氏 経営企画部 PMOグループ 部長 1992年キリンビール株式会社に入社。12年目まで営業系 システム(特に営業支援ツールや営業武装化ツール)等の開発の 担当及び統括に従事。以後、地域ネット戦略や統括本部等の企 画・戦略系のスタッフを経て、キリンビジネスシステムの部長と して、キリンビール及びキリンビバレッジの営業部門システムに 関する全体統括を行う。現在は、同社の経営企画部において、同 社全体の開発プロジェクト推進・支援及び人財育成等の全体統括 を担う。 年代 40代 性別 男性 IT業務年数 16年 転職経験 無し キャリアパス 業種 食品製造業 従業員数 約35,000名 IT部門 無 IT子会社 有(約300名) 現在の役割 IT部門 戦略・企画 監査 ITベンダー出身 現場部門 →IT部門 開発(・保守) 保守・運用 共通業務 (スタッフ) 活用 その他 技術 石原氏が語るISプロフェッショナルの心得 POINT 1 今までのシステムとこれからのシステム 過去のコンピューターシステム化は、人が算盤を使ってやっていたことを単に機械化することに主力が置かれていたと 思っています。「コンピューターシステムにすれば単純に機械化できる」だけの時代は終焉を迆えつつあり、いかにビジネ ス上の負荷価値をシステムで創出するかという時代に入っていると思います。その意味で、現在のコンピュータシステム は、ビジネスのプロセスと合体しています。それだからこそ、コンピューターシステムを作る以前に、ビジネスのプロセスを 作っているという誇りと自負が必要だと思っています。この点が、現在の情報部門の醍醐味であり、この仕事の魅力だと 思います。しかし、海外に比べ、日本はまだまだ発展途上であるのも現実です。単なる機械屋でなく、その領域に進んで いく必要があると思っています。 POINT 2 失敗から得られたプロジェクトマネジメントに必要なもの 自分自身を振り迈ってみると、たくさんの失敗経験があります。今の時代であればとても許されなかったと思える失敗も ありますし、マネジャーになってから失敗した経験も沢山あります。失敗した時はすごくつらいですし、失敗の現実を受け 入れるのは中々苦しいものです。でも、時と共に、必ず「あのとき、こうだったよね」と笑って過ごせる時が来ますし、同じ 痛みを共愜したメンバーとは「二度と同じ過ちは繰り迈したくない」と手を握り合えるようになります。だから、メンバーには、 「失敗しないに越したことはないが、失敗した時に後悔ではなくしっかりと一緒に反省することが一番大切だ」と言っていま す。また、プロジェクトメンバーには「このプロジェクトが終わった時に、自分自身はどうなっていたいか?」を描きプロジェク トに臨むように伝えていますし、プロジェクトマネジャーには、「プロジェクトメンバーにどうなって欲しいのか?」をしっかりと 考えるように言っています。プロジェクトのチームビルディングの要素の1つとして、この辺りがあるように愜じています。 POINT 3 企画担当としての心得 「理想と現実のギャップは、あって当然」 理想と現実のギャップはあります。理想と現実が乖離してなかったら、経営課題が存在しないということになります。大 小はありますが、ギャップはあって当然です。経営を担う立場では、理想と現実のギャップの中から経営としての優先項 位付けを日々求められます。やはり、乖離している現実を理解し、現場と接することが必要であり、その中で着地点を見 いださなければなりません。着地点を見いだすことができない人は、企画のスタッフには向きません。理想ばかり求めて いて、「だめだ。だめだ」と言うだけでは、現実とのギャップが埋まることはないのです。企画に関わるのであれば、現在の 情報を収集して、正しい現実を把握すること。そして、いかに高い位置で折り合うかという能力が求められます。 1 58 石原氏のキャリアの軌跡 キリンビジネスシステム株式会社 石原 匡泰 氏 のキャリアパス図 Episode3 非常に難易度の高い経 非常に難易度の高い経 営課題であったが、プロ 営課題であったが、プロ ジェクトリーダとして成功 ジェクトリーダとして成功 に導く事ができた。 に導く事ができた。 High キリンビール、 キリンビバレッ ジの営業部門 のシステム開 発・運用の全体 統括 地域ネット戦略遂行 業務取りまとめ、 統括本部目標マネジ メント業務 リーダとして初めてどう リーダとして初めてどう にもならないという挫 にもならないという挫 折を味わった。 折を味わった。 開発プロジェ クト推進・支援 及び人財育成 業務の全体統 括 7 人財育成 で社会的 に貢献 8 6 自分一人で作り上げる 自分一人で作り上げる 楽しさを学ぶと同時に 楽しさを学ぶと同時に 担当業務は一番熟知 担当業務は一番熟知 していると自信を得た。 していると自信を得た。 Middle 営業支援シス テムの開発・運 用、 営業支援ツー ルの再構築 自分一人で作り上げる 自分一人で作り上げる 楽しさを学ぶと同時に 楽しさを学ぶと同時に 担当業務は一番熟知 担当業務は一番熟知 していると自信を得た。 していると自信を得た。 Episode2 Episode1 営業系シス テムの運 営業活動 <学校での専攻> 用・保守メ 支援システ ンテナンス ムの構築 大学 担当 数学科 1 2 営業情報武装化 ツールの開発プ ロジェクト Entry システム開発部 (所属部署) 業務分類 開発 保守・運用 開発 キリンビジネ スシステム 情報企画部 システム管理二部 開発 営業系システムの運用・ 保守メンテナンス担当 営業活動支援システム の構築 (1993~1996) 営業情報武装化ツール の開発プロジェクト (1997~1998) 営業情報武装化ツール の全国展開等 (1998~2001) ⑤ 営業支援システムの開 発・運用、再構築等 (2001~2003) ⑥ 地域ネット戦略、統括 本部マネジメント業務 (2003~2006) ⑦ 営業部門のシステム開 発・運用の全体統括 (2006~2009) ⑧ その他(管理) 開発プロジェクト推進・ 支援、人財育成統括 (2009~) 担当部長 キリンビジネスシステム株式会社 システム管理二部 経営企画部 開発 戦略・企画 活用 戦略・企画 部長 現在は、全体の開発プロジェクト推進・支援及び人財育成等の全体統拢を担当。 (1992~1993) ④ キリンビール 入社後12年目までは、営業系のシステム等の開発に担当及び統拢を行う。13年目以降、地域 ネット戦略や統拢本部等の企画・戦略系のマネジメントに従事。 キャリア区分 ③ 2010年 16年目~ 首都圏統括本部 営業企画部 部長補佐 キャリアパスの 特徴 ② 2005年 11~15年目 役 職 ① チームリーダとしてチーム統 制の難しさを知る一方で、新 技術を使った開発プロジェクト の成功を得る事ができた。 2000年 6~10年目 キリンビール株式会社 職 歴 経営を担うには、戦略と現 経営を担うには、戦略と現 実の両方を知らなくてはな 実の両方を知らなくてはな らないことを実感する。 らないことを実感する。 組織を預かる身として、 組織を預かる身として、 日々、組織変革に頭を痛 日々、組織変革に頭を痛 める日々であった。 める日々であった。 転機 リーダシップの発揮、コ リーダシップの発揮、コ ミュニケーションマネジメ ミュニケーションマネジメ ントの基礎を習得した。 ントの基礎を習得した。 3 1~5年目 5 4 1995年 社会人経験年数 プ ロ フ ァ イ ル 営業情報武装 化ツールの全 国展開、 間接業務の統 合PJ 周囲とのコミュニケーショ 周囲とのコミュニケーショ ン、仕事の進め方等を全 ン、仕事の進め方等を全 くゼロベースで変革する くゼロベースで変革する 事が求められた。 事が求められた。 仕事の内容 仕事を通じて学んだこと 営業システムの運用監視から処理実行、プログラ ミングを実施 コンピュータの基礎知識を一通り経 験、習得した。 営業活動支援に向けた新規コンピュータシステム の構築 通信技術の習得した。また、システム 開発の設計から稼動までを習得した。 営業部門の情報武装化ツールの開発プロジェクト に従事 リーダとして初めて「どうにもならない」と いう挫折を味わった。 営業部門の情報武装化ツールの安定稼動化と全 国展開 プロジェクトマネジメントの体系、システ ム化計画の重要性を学んだ。 営業系支援システムの運用・開発リーダ 現在のマネジメントスタイルの基礎を確 立できた。 営業支援ツールの再構築プロジェクトのPM 地域ネット戦略を遂行業務の取りまとめ 統拢本部目標マネジメント業務の遂行 目標マネジメントのあり方、現場におけ るIT活用の実態と重要度を学んだ。 キリンビールおよびキリンビバレッジの営業部門の システム開発・運用部門の全体統拢 個々の成長を含めた組織変革を組織 構成員と共に味わう事ができた。 キリンビジネスシステム全体における開発プロジェ クト推進・支援、全社人材育成業務の全体統拢 経営の立場として求められるスキルと グループ全体を見渡す視点を強化。 2 59 石原氏のキャリアエピソード Episode1 When 1992年 Section システム 開発部 Position 担当 モノ作りの楽しさを知る 入社して数年間のシステム開発部の業務では、主に営業系システムの運用監視から処理 実行、プログラミング等を実施しました。全くシステムの経験・知識がない中、IS業務自体の 苦手を克服するのが大変な時期でしたが、業務経験を繰り迈す中でモノ作りにおける楽しさ や自分一人で作り上げるという楽しさも学んだ時期でした。IS業務のベースとして、この時期に プログラムを書いていたことが、後の業務に非常に役立ちました。コンピュータの基礎知識を 一通り習得すると同時に、自分が担当する業務分野においては、自分が一番熟知していると 自信を得るために経験した事が重要だったように思います。今の風潮は、製造工程は協力会 社などにアウトソースし、自分達は中身のないマネジメントだけしている様な気がしています。も う一回、プログラム開発など基礎から叩き上げた方がよいのではないかと考えています。 リーダとして初めて挫折を経験する Episode2 When 1997年 Section システム 開発部 Position 担当 1997年に営業部門の情報武装化ツールの開発プロジェクトに従事しました。営業部門の プロセス改革を支える情報基盤の構築を目指していたのですが、当時はコンピューターシス テムの立場でしか考えていなかったので、プロセス改革をするスタンスでの段取りや計画、シ ナリオが必要ということが見えずに、とにかくコンピューターシステムの機能を実装する事に追 われてしまいました。結果として、このプロジェクトでリーダとして初めてどうにもならないという挫 折を味わいました。自分の幼さを知り、失敗という烙印の辛さを知りました。この経験を通じて、 計画の甘さ、ビジネスの厳しさ、自分の犯したことに対する無力さを知ることで、安請け合いの 愚かさとプロジェクトマネジメントの重要さを学びました。 営業現場におけるマネジメントを学ぶ Episode3 When 2003年 Section 営業企画部 Position 担当部長 My Principles 営業企画部では、過去の知識や経験がまったく通用せず、周囲とのコミュニケーションや仕 事の進め方もまったくゼロベースで変換することが求められました。営業現場におけるコミュニ ケーションスタイルやマネジメントスタイルを含めた仕事の進め方を一から学び、営業部門な らではの成果を共愜する事ができました。営業部門はどうしても縦のラインに強烈な力関係が あり、スピードが求められます。そのため、自分の中での優先項位付けや判断力が強く求めら れるのです。この経験で、企画部門のスタッフとして求められる考え方や仕事の進め方を学 ぶとともに、目標マネジメントのあり方が取得できました。また、後に活きたことは、現場におけ るIT活用の実態と重要度を体愜することができた点です。例えば、現場で具体的に自分たち の作った数字の意味や、その数字がどう使われているかは、誰もがわからないところですが、 それを実際の現場で体愜できた点は、現在の原動力として非常に活きているように思います。 周囲との共感で成長する 人の成長とは、会社そのものの育成体系にもよりますが、自身 のあり方によるところが大きいと思います。振り迈ってみると、自 身の成長曲線はシステム部員としての育成体系によるものだけ ではなかったように愜じています。現在の自身の考え方は、対面 にいたユーザ(先輩)の方々に植え付けていただいたというのが 多かった様に思っています。それは、情報部門として事業に貢 献するという自身の旗の元、周囲との関係を築く事に重きを置い てきたからに思います。マネジメントを含めた人的スキルは日々 のコミュニケーションから生まれる要素が大きいと愜じます。 そして一番の成長は仕事に対する経験の“周囲との共愜”です。 失敗も成長も周囲と共愜・共有する事で自身の体の一部として 植えつけられるのだと思います。 3 60 石原氏の能力・スキルアップのポイント 能力・スキルアップの ポイント 入社7年迄にプロジェクトマネジメント、システム要件定義及びIS活用系などのスキルを身に付ける。 入社15年迄に事業戦略及び、IS全体戦略関連のスキルを習得。 現在のスキル 1.0 2.0 事業戦略策定 IS全体戦略策定 IS全体戦略実行マネジメント IS戦略評価 事業戦略評価 個別プロジェクト企画 個別プロジェクト評価 プロジェクトマネジメント システム要件定義 業務プロセスの詳細設計 アプリケーション分析・設計 アプリケーション開発 インフラストラクチャ分析・設計 インフラストラクチャ構築 ISの導入・受入 IS保守計画の策定 IS保守の実施 IS運用計画の策定 IS運用の実施 障害分析と対応 IT基盤構築・維持・管理 セキュリティ IS活用(普及啓発・改善活動案の策定・提案) IS活用(普及啓発・改善活動の実施) 共通業務/資産管理 共通業務/事業継続計画 共通業務/コンプライアンス 共通業務/人的資源管理(人材育成) 共通業務/契約管理 システム監査 3.0 現在の能力 4.0 5.0 1.0 6 2.0 3.0 4.0 5.0 コミュニケーション力(聴聞力:聞く力) コミュニケーション力(質問力:訊く力) コミュニケーション力(説得力:話す力) コミュニケーション力(文章表現力:書く力) 4 6 正確性 情報活用力 論理構成力(想像力) 倫理観 責任感・使命感 忍耐力 問題感知力 4 リスク感知力 コスト感覚 優先度判断力 柔軟対応力(融通性) 全体俯瞰力(業務視野) 問題対応力(トラブル対応力) 創造力 委任力 統率力(リーダーシップ) ビジョン構想力 指導育成力 人脈開拓力 6 仲介調整力(コーディネート力) 社内影響力(社内存在感) 上層説得力 組織ミッション達成力 石原氏のメッセージから 人と仕事をするという意識 仕事をするということは、誰かと一緒に 仕事をするということなので、仲間(メン バー)という意識は重要だと思います。仕 事がつらくてしようがなかったり、仕事がう まく回らないというのは、やはり、人との確 執の要素が大きいと思います。外部は利 害関係がいろいろ出てきますが、内部は せっかく一緒に働いてるんだから、チーム であり組織である以上、「仲良くしようよ」 というところから会話や理解が始まると思 います。 人財育成は ユーザ部門と一緒に考える 教育体系や仕組みがないから人が育 たないという意見がありますが、それだけ では十分でないと思っています。例えば、 私を教育してくれた人は、ITスキルなら システム開発部の人達ですが、現在役 立っているマネジメントスキルやビジネス スキルを教えてくれたのは、営業部の人 達です。現在の若い世代を見渡しても、 やはりしっかりとしたユーザーの下では、 きちんと人が育っています。IS部門だけ で人材育成を考えるのではなく、ユー ザー部門の人達と一緒に取り組む必要 があるのです。 一緒に仕事をして 「信頼できる人」 一緒に仕事をしても、意見がぶつかっ ても、うまくいく人がいると思います。おそ らく、その人とは、目指すゴールが一緒な んだろうと愜じています。自分達がどこに 行きたいのか?というゴールが一緒だか ら、こっちを通ろうが、そっちを通ろうが、 辿り着く“ここ”というゴールが一緒だから お互いの信頼関係が成立しているのだと 思います。重要な“ここ”というゴールさえ あっていれば、違う生き方や考え方でも 理解できるはずだと思います。“ここ”とい うゴールはいろいろあって、一概には言え ませんが、最も単純なゴールは「会社を よくすること」だと思います。 PMOの役目 PMO(プロジェクトマネジメントオフィス) は、全体のプロジェクトを第三者的にマネ ジメントする役割ですが、今、PMOがや るべき役割は増える傾向にあると思いま す。いろんなプロジェクトが火を吹いたり、 いろんな状況がある中で、どのような人 材が必要なのかということを描くものPM Oが行うべきだという考え方があり、当社 は我々の組織が人材育成を担っていま す。必要な人材を描くと同時にその人間 を育てるシナリオを、全体を第三者的に 見ている人間が作るべきだという意見も 重要だと思います。 4 61 若手メンバーの目標とは メンバーに負わせてよい目標と、負わ せてはいけない目標があると思います。 会社として必要な目標は責任者が握る べきだと思います。また、最後の結果は 責任者が負うべきです。メンバーに負わ せてよい目標で、いつも考えてほしいの は、自分たちが変わるためにはどうすれ ばよいか、成長するためにはどうすれば よいかということです。これを常に、自分 達で考え自主的・主体的に実践してもら うことが必要に思っています。 若手に示す成長したときの姿 若い人にも成長したいという欲求はあり ます。私が若手と話して気付いたのは、 「あの人のように成りたい」とか、ステップ アップした具体的なイメージが描けない 悩みを抱えているということです。例えば、 「部長は毎日忙しそう」とか、「上の人は いつも上下左右の調整をしている」という 姿を日々見ているわけです。マネジメント が多様化・複雑化している現在において、 どんどんマネジャー層の負荷が高まって いる状態をメンバーは見て、なりたくない とか、あそこに行くくらいなら、そんなに頑 張らなくていいと思っているのではない か?という疑念にかられる事があります。 メンバーと一緒に共に味わう愜動、マネ ジメントの面白さ、経営を担うという魅力 を伝えることも重要だと思います。 三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社 遠藤 修 氏 経済産業省 IT人材モデルキャリア開発計画 ~ ユーザーIT人材キャリア事例 05 三菱UFJモルガンスタンレー証券株式会社 遠藤 修 氏 一瞬一瞬全力を尽くす システム統括部 内部統制課長 応用数学科を卒業後、1991年に国際証券株式会社に入社。 お写真 1年間は仙台で証券営業を経験する。2年目から本社に異動し、 法人営業、株式先物取引、商品開発など計7部署を経験する。多 彩な経験を買われて7年目にIT部門に移り、広い人脈を活かし 業種 証券業 従業員数 約7,000名 て全社PC導入プロジェクトの推進などを担当。その後、システ ム開発・導入、IT投資戦略立案、人材育成戦略立案などに携わ る。2009年、内部統制課の発足とともに同課の課長に就任し、 IT部門 有(約120名) IT子会社 有(約200名) 現在は良識ある人材の育成に取り組んでいる。 年代 40代 性別 男性 IT業務年数 13年 転職経験 無し キャリアパス 現在の役割 IT部門 戦略・企画 監査 ITベンダー出身 事業部門 → IT部門 活用 その他 開発(・保守) 共通業務 (スタッフ) 保守・運用 技術 遠藤氏が語るISプロフェッショナルの心得 POINT 1 キャリアとは後から振り返って見える道 自分のキャリアを振り迈ってみて強く思うのは、キャリアとは最初から分からないものだということです。社会人になって 約20年の間に、いろいろなことがありました。仕事や会社が嫌になったこともありますし、辞めようと思ったこともありました。 しかし、結局はいつも精一杯やるしかないと思い、その時その時を一生懸命に生きてきました。必死になって一歩一歩 踏み固め、ある日ふと振り迈ると道がついている。それがキャリアと呼ばれるものなのだと思います。自分が歩いていく道 がどのような道なのかは誰にも分かりません。それを先に知って楽に歩くことなど誰にもできないと思います。結局、今の 自分にできるのは、今の一歩を真剣に踏み出すことだけであり、その繰り迈しが自分の道になっていくのだと思います。 POINT 2 キャリアを歩むとは一瞬一瞬全力を尽くすということ キャリアを歩むということは、将来自分がこうなると分かって、その目標に向かってスムーズに生きていくということでは ありません。未来は誰にも分からないものですが、その分からない未来に向かって今を一生懸命に生きるということが、 キャリアを歩むということなのだと思います。どんな人も、自分の希望と違う仕事に配属されたり、人間関係で嫌な思いを したり、大きなトラブルが起きたり、辞めてしまいたいと思ったり、いろいろなことを経験するでしょう。しかし、どんなことが あってもそこから逃げず、その一瞬一瞬に全力を尽くすことが大切なのではないでしょうか。どんなときも逃げずに精一杯 全力を尽くしてきたという事実そのものが、その人の大切なキャリアになっていくのだと思います。 POINT 3 どんな逆境でも自分にできることをやる 私は過去に何度か苦い経験をしています。自分の意見を曲げないところが災いして、新しい上司とうまくいかず、日陰 に置かれたこともありました。しかし、どんなときも常に自分にできることを見つけ、その仕事で成果をあげるように努めて きました。会社の中にはやるべきことがたくさんあります。誰も自分を認めてくれなくても、挽回のチャンスは実はたくさん あるのです。どんなときも自分にできることを探し、組織の役に立つ。項風でも逆風でもやるべきことは変わらないのです。 1 62 遠藤氏のキャリアの軌跡 三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社 遠藤 修氏 のキャリアパス図 部門を俯瞰的にとらえる 部門を俯瞰的にとらえる 視点を生かし、システム 視点を生かし、システム 本部の業務改革に取り 本部の業務改革に取り 組む。外部研究会でUIS 組む。外部研究会でUIS Sを知る。 Sを知る。 High 本社に異動し、5年で7部署 本社に異動し、5年で7部署 を経験する。証券業務の知 を経験する。証券業務の知 見が広がる。Excelの面白さ 見が広がる。Excelの面白さ を知り、チャート分析でアナ を知り、チャート分析でアナ リストとして大きく成長する。 リストとして大きく成長する。 Middle Episode1 法人営業 株式先物取引 ディーリング 商品開発 投資情報提供 証 券 営 業 大学 応用数学科 職 転機 1995年 会社統合では逆境に置 会社統合では逆境に置 かれるが、コスト削減等 かれるが、コスト削減等 自分にできることを見つ 自分にできることを見つ け、それにより組織に大 け、それにより組織に大 きく貢献する。 きく貢献する。 Episode3 2005年 11~15年目 三菱証券株式会社 支店 本社事業部 (5年間で7部署を経験) システム企画部・IT推進部 システム企画部 業務分類 その他 (営業) その他 (証券関連業務) 開発・保守 活用 戦略・企画 キャリアパスの 特徴 2010年 16~20年目 (所属部署) 役 職 5 4 2000年 6~10年目 国際証券株式会社 歴 UISSベースの自社 UISSベースの自社 スキル標準を策定。 スキル標準を策定。 現在は、運用に力 現在は、運用に力 を入れている。 を入れている。 システム企画部が設置され、そこに配属 される。それまでの幅広い経験が評価さ れ、IS人材としてのキャリアが始まる。 2 1~5年目 6 3 1 社会人経験年数 プ ロ フ ァ イ ル Episode2 IS部門の 内部統制 人材育成 IS部門戦略立案 IT投資計画立案 人材育成戦略立案 システム投資に 関する ワークフロー管理 全社へのPC導入 業務システムの オープン化を推進 支店で営業を経験。営 支店で営業を経験。営 業の厳しさを知り、現場 業の厳しさを知り、現場 に尊敬の念を抱く。 に尊敬の念を抱く。 Entry<学校での専攻> システム部門内の業務の システム部門内の業務の 全容を理解する。これが、 全容を理解する。これが、 その後の人材育成戦略立 その後の人材育成戦略立 案の基礎となる。 案の基礎となる。 全国の支店を対象とする 全国の支店を対象とする システム活用推進で、1年 システム活用推進で、1年 目の営業経験が活かされ 目の営業経験が活かされ る。上流工程と活用推進を る。上流工程と活用推進を 実践し、ISキャリアの基盤 実践し、ISキャリアの基盤 を築く。 を築く。 立責 場任 であ 活 躍る 21年目~ 三菱UFJ証券株式会社 システム部 三菱UFJモルガン・スタンレー 証券株式会社 システム 統括部 戦略・企画 共通 担当 課長 1年目に証券営業を経験し、本社へ異動。その後5年間で7部署を経験するという異例のキャリアを 積む。経験業務の幅広さが評価され、新設されたシステム企画部に配属される。以後13年間、IT 戦略立案から、システム開発の上流工程、活用推進、人材戦略立案などを経験する。 現在は、内部統制に取り組んでいるほか、IT部門の人材育成を推進している。 キャリア区分 ① ② 支店での証券営業 本社7部署を経験 ③ システム開発の 要件定義と活用推進 (1991~1997) (1997~2002) ④ システム投資に関する ワークフロー管理 (2002~2005) ⑤ IT戦略・投資計画 人材育成戦略立案 (2005~2009) ⑥ IS部門の内部統制・ 人材育成戦略立案 (2009~2010) 仕事の内容 仕事を通じて学んだこと 入社後1年間、仙台支店で証券営業を経験す る。営業を経験したことは、後の業務にも役立つ。 大変な仕事を黙々とこなす先輩を見 て、現場に対する尊敬の念を持つ。 2年目以降本社へ異動し、株式先物周りを中心に 5年間で7部署の業務に携わり、経験を広げる。 本社でExcelに出会い、チャート分析を 習得。ITの魅力を知る。 システム企画部の新設に伴って異動。それまでの 多彩な経験・人脈を活かしてIT担当となる。 上流工程と活用推進の実践を通じて、 ISキャリアの基盤を築く。 システムオープン化によるPC全社導入プロジェク トにおいて、営業支店の活用推進を担当。 システム利用者の立場で考えることの 重要性を認識する。 会社の合併に伴い、業務を円滑に進めるための 標準化、コスト削減策を立案・推進する。 システム部門内の業務の全容を理解 する。これが後の人材育成戦略立案 に役立つ。 企業合併にあたり、自らが貢献できる仕事を見つ けて取り組み、コスト削減の実績をあげる。 社外でUISSに触れ、会社の外でも通用する考え 方を学ぶ。 システム本部における内部統制全般、SOX、シス テムリスク評価、情報セキュリティ、規定管理、各 種研修などを統拢する。 人材育成については、UISSをベースにしたスキル 標準の策定と運用に取り組む。 2 63 戦略立案・企画業務を実践し、経営の 目線を持つことができるようになる。 他部門や社外への人脈が広がる。 課長という立場に立ち、チームで効果 を発揮することを学ぶ。 メンバーの話を聞き、各人のスキルを 見極めてリーダーシップをとることを心 がける。 遠藤氏のキャリアエピソード Episode1 営業の大変さを知り、現場への尊敬の念が生まれる 入社1年目に仙台支店の営業課に配属され、証券営業を担当しました。営業の仕事は思っ た以上に大変であり、体重が10kg以上激減するほどのストレスを愜じました。しかし、自分がこ When 1991年頃 Section 支店営業課 Position 担当 れほど大変と思っている営業の仕事に先輩たちは黙々と取り組み、自分をはるかに超える成 績をあげている。営業の現場でこの事実を目の当たりにして、大変な仕事でも成果をあげ続け る現場の人たちへの尊敬の念が生まれました。この気持ちは、その後も私の心の底にずっと生 き続けています。大変な仕事をこなす現場の人たちに尐しでも貢献できればいい。システムの 活用推進や導入などにおいても、そんな気持ちがずっと自分のモチベーションになっています。 Episode2 全国40箇所を飛び回り、全社PC導入を実現する システム部門に移ってすぐ全社システムのオープン化が始まりました。1人1台のPCを導入 When 1997年頃 Section システム 企画部 Position 担当 し、業務を電子化する大規模な取り組みで、現場からも相当な抵抗がありました。あまりの抵 抗に電話での説得には限界があると愜じ、IT活用に消極的な全国40ヶ所の支店を2人で回る ことにしました。実際に支店に赴いて、反対している支店長や担当者と膝詰めで話をし、現場に どのようなメリットがあるのかを必死に伝えました。当初は反対していても、本当にメリットがある と分かると、逆にこちらが気づかなかったPC活用法を提案してくれる人もいて、意外な収穫が ありました。新しい活用法は、すぐ他の現場にも広め、徐々にIT活用は広まっていきました。 今思えば、反対の声に対しても、現場のためにという気持ちで誠意を持って対忚したことが、 現場にも徐々に伝わっていったのではないかと思います。 Episode3 When 2005年 Section システム部 Position 担当 自社の合併と逆境、そしてそこからの復活 2005年、自社が合併することになり、そのためのシステム統合プロジェクトに参加しました。し かし、私には開発・実装工程の経験があまりなかったことに加えて、新しい組織の上司の一部 と折り合いが合わず、ほぼ仕事が不えられない状態になってしまいました。自分はプロジェクトの 末端に配置され、これまで自分が指示を出してきた別会社の社員が組織上は自分より2段階 も上にいるという状況でした。私には本当に弁当を買う程度の仕事しか残されていませんでした。 落ち込んでいる私に対して、別の上司が「やることはいっぱいあるんだから、探してやったらい いじゃないか」と声を掛けてくれました。確かに、合併後の時期にやることは山積みでした。そこ で、私は前の部署での業務経験を活かして、合併によって大口化し、有利になるライセンス契 約に注目し、半期で4億円のコスト削減を実現しました。これが経営層にも認められることになり、 徐々に逆境からの復活を果たしたのです。この経験は、どんな逆境に置かれても、そこで自分 にやれることを見つけ、それを確実にやればよいということを私に教えてくれました。 My Principles 仕事とは 「愛情」 仕事とは何かと聞かれたら、私は「愛情」であると答えます。誰 かのことを思い、誰かのためにするもの、それが仕事ではないで でしょうか。仕事を通じて誰かに喜んでもらうことは、いわば無上 の喜びです。前のシステムより使いやすくなったとか、前より仕事 がはかどるようになったと言ってもらえることは、仕事における最 大のやりがいだと思います。そこに自分の得意や丌得意は関係 ありません。仕事は「誰かに喜んでもらうための機会」なのです。 得意でも丌得意でも、相手に喜んでもらうために全力を尽くすこ とが仕事なのだと思います。 3 64 遠藤氏の能力・スキルアップのポイント 能力・スキルアップの ポイント スキルについては、現在、人材育成を担当していることから、共通業務/人的資源管理のスキ ルが突出している。また、IS全体戦略策定、システム要件定義、IS活用のスキルも高い。 “逆境”と語る⑤の時期には、問題愜知力や忍耐力をはじめ、さまざまな能力が向上している。 現在のスキル 1.0 2.0 3.0 現在の能力 4.0 5.0 1.0 事業戦略策定 4.0 5.0 5 コミュニケーション力(質問力:訊く力) 3 コミュニケーション力(説得力:話す力) IS戦略評価 コミュニケーション力(文章表現力:書く力) 事業戦略評価 5 正確性 個別プロジェクト企画 個別プロジェクト評価 情報活用力 プロジェクトマネジメント 論理構成力(想像力) 3 倫理観 5 6 責任感・使命感 アプリケーション分析・設計 忍耐力 アプリケーション開発 問題感知力 インフラストラクチャ分析・設計 インフラストラクチャ構築 リスク感知力 3 5 5 3 コスト感覚 ISの導入・受入 優先度判断力 IS保守計画の策定 柔軟対応力(融通性) IS保守の実施 IS運用計画の策定 全体俯瞰力(業務視野) IS運用の実施 問題対応力(トラブル対応力) 障害分析と対応 創造力 IT基盤構築・維持・管理 セキュリティ 統率力(リーダーシップ) 5 5 委任力 IS活用(普及啓発・改善活動案の策定・提案) 3 IS活用(普及啓発・改善活動の実施) 共通業務/資産管理 ビジョン構想力 5 6 指導育成力 人脈開拓力 共通業務/事業継続計画 仲介調整力(コーディネート力) 共通業務/コンプライアンス 共通業務/人的資源管理(人材育成) 共通業務/契約管理 3.0 コミュニケーション力(聴聞力:聞く力) IS全体戦略策定 IS全体戦略実行マネジメント システム要件定義 業務プロセスの詳細設計 2.0 5 3 5 5 社内影響力(社内存在感) 6 上層説得力 組織ミッション達成力 システム監査 6 遠藤氏のメッセージから システムは見た目が大事 「システムは見た目が大事」、これ は私の持論です。見た目は本質では ないという人もいますが、見た目こそ システムの使い心地に直結する部分 だと思っています。見て楽しい、使っ て楽しいシステムであれば、多尐の 機能の丌足は十分にカバーできるこ ともあります。良いシステムとはユー ザーが使いたいと思うような楽しく美 しいシステムであると私は思います。 言われたことは何でもやる 私はこれまで、何度も異動を経験し てきましたが、そこで心がけていたの は「言われたことは断らず何でもや る」という姿勢です。行く先々で新人 となってしまうのですから、何でも素 直に聞き、何でも嫌がらずにやるとい う姿勢が大切だと思ってきました。 常に自分が役に立つことを考えると いう姿勢はここでも大切です。 面白いと思ったことは うまくいく コンプライアンスも 結局は 「人」 過去の経験を振り迈っても、自分が 「面白い」と思って取り組んだ仕事は、 おおむね良い成果をあげています。 面白いと思えるということは、自然と のめり込めるということだと思いますが、 熱中できた仕事にはやはり良い成果 がついてくるものです。これに気づい てから、仕事には自らあえて“面白 がって”取り組むようにしています。 現在、私は内部統制課長として人 材育成に取り組んでいます。内部統 制課がなぜ?と言われることが多い のですが、この背景にはコンプライア ンスも結局は人の問題であるという 認識があります。いくら仕組みやルー ルを整備したとしても最後の砦となる のはやはり人材の意識であり、そこが コンプライアンスの要と言えるのです。 決めつけず まずは一生懸命やってみる 最过、「キャリア」という言葉がよく 聞かれるようになりました。しかし、こ の言葉はあまりにも軽々しく使われす ぎているように思います。若い人の中 には、「この仕事は自分のキャリアに 役立たない」と言う人もいますが、役 立つかどうかはやってみなければ分 かりません。決めつけず、まずは一生 懸命やってみることが大切です。 4 65 1万円の組織理論 組織の力を考えるときに私がよく使 うたとえですが、1万円を払う時には、 1万円札がなくても千円札などで組 み合わせて払うことができます。組織 もこれと同じで、エースばかりを頼りに せず、チームでの対忚を心がけます。 どんな尐額でもお金を捨てる人はい ません。大切な人材をうまく組み合 わせて力を発揮させ、「高額紙幣」に 育てることがリーダーの役割です。