...

目標の設定 - World Bank

by user

on
Category: Documents
2

views

Report

Comments

Transcript

目標の設定 - World Bank
Public Disclosure Authorized
国
際開
発
目
Public Disclosure Authorized
Public Disclosure Authorized
Public Disclosure Authorized
30984
2000
標
に
向
けた
歩み
誰もが幸せに暮らせる世界をめざして
goals
目 次
2
まえがき
4
目標の設定
6
貧困
8
教育
10
男女平等
12
乳幼児死亡率
14
妊産婦死亡率
16
性と生殖に関する医療保健
18
環境
20
目標達成に必要な対策
24
注記・出典
25
国際開発目標の指標
www.paris21.org/betterworld
Copyright © 2000
International Monetary Fund
700 19th Street NW
Washington DC 20431 USA
Organisation for Economic
Co-operation and Development
2 rue Andre-Pascal 75775
Paris Cedex 16 FRANCE
United Nations
I UN Plaza
New York NY 10017 USA
World Bank Group
1818 H Street NW
Washington DC 20433 USA
All rights reserved
Manufactured in the United States
of America
goals
Photo credits: page 2 and cover:
© Photodisc; pages 5, 6 and cover:
© Julio Etchart/Reportage/Still
Pictures; pages 5, 8 and cover:
© Curt Carnemark/World Bank;
pages 5, 10, 12, 14 and cover:
掲載内容は、非営利目的の場合に限り、 © World Bank; pages 5, 16 and
cover: © Tony Stone; pages 5, 18
著作権所持者表示が付されることを条
件に、自由に複製することができます。 and cover: © Shehzad Noorani/
Still Pictures.
Designed, edited and produced by
Communications Development,
‘Originally published by the OECD in English and in French under the titles:
Washington DC, with its UK partner,
A Better World for All: Progress Towards the International Development
Grundy & Northedge, London
Goals/Un monde meilleur pour tous: poursuite des objectifs internationaux
de développement. Copyright OECD,2000.
First printing June 2000
本報告書は、左記4機関のスタッフが
作成したものであり、必ずしも各機関
の加盟国の見解を表すものではありま
せん。
「誰もが幸せに暮らせる世界をめざして」 Japanese language edition,
Copyright Ministry of Foreign Affairs,2000.
The OECD is not responsible for the quality of the japanese translation
and its coherence with the original text.
国際開発目標に向けた歩み
2000
誰もが幸せに暮らせる
世界をめざして
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
困――。それはどのような形であれ、国際社会が抱え
る最大の課題にほかなりません。現に、1日の生活費
が1ドルにも満たない人々が世界には12億人もおり、
さらに1ドル以上2ドル未満の人々は16億人に及ぶ現実は、決
して無視できません。
問題解決への一歩を踏み出すには、貧困削減に向けた目標の
設定が欠かせません。この報告書に取り上げられている開発目
標は、1990年代に国連が中心となって開催した世界的な会議や
サミットで策定されたもので、いずれも世界全域を対象に多岐
にわたる目標が盛り込まれています。どの目標も、さまざまな
形の貧困を解消し、貧困が人々の暮らしに及ぼす影響を食い止
めることをめざしています。国際社会は、こうした目標に取り
組むことにより、世界でも特に貧しい人々や弱い立場にある
人々に貢献するとともに、国際社会そのものにも貢献している
のです。
目標は、明確な条件の下で設定されています。つまり、数値
で測ることができる条件を決めることにより、責任の所在をは
っきりさせようというわけです。このように数値で測定し、透
明性を確保して広く公開すれば、目標を達成したり経過を調べ
たりするうえで方針を立てやすくなります。しかし、人間は数
字ではありません。統計に表れた数字で幸福を語ることはでき
ません。とはいえ、こうした目標は、人々の生活の質を向上さ
せるという意味では価値があります。現在、世界の人口は60億
人。2015年には70億人に達すると予測されています。その一人
一人が幸せに安全に暮らすことのできる世界が待ち望まれてい
ます。
目標は押しつけるものではありません。受け入れてもらうこ
とが大前提となります。各国がそれぞれの目標や開発の進め方
を明らかにしたうえで、国民との話し合いを重ねながら、それ
ぞれに合った方法で取り組まなければなりません。その際、国
際社会による支援が欠かせません。資源に恵まれている裕福な
国ほど、大きな貢献ができます。
こうした開発活動では、貧しい人々のためになることを考え、
迅速で持続可能な成長戦略を推し進めることが大切です。第1
に「資金を効率的に使うこと」が挙げられます。ムダをなくし、
責任の所在を常にはっきりさせておく必要があります。第2に、
「資金を効果的に使うこと」が挙げられます。資金の使い道とし
ては、人間や社会、経済の開発を目的とする活動を対象とすべ
きであり、過剰な軍事力の整備や環境破壊につながるプロジェ
クトを対象とすべきではありません。第3に、
「資金を上手に使
うこと」が重要です。民間部門が最も得意とする活動に、わざ
貧
2
わざ公共の資源を投じるべきではありません。
今、私たちの前には、貧弱な国家統治力や問題のある政策、人
権侵害をはじめ、紛争や自然災害など外から降りかかってくる
危機、HIV/エイズの蔓延、さらには、依然として解消されない
所得・教育・医療利用の不公正や男女間の不平等など、さまざ
まな課題が待ち受けています。
それだけではありません。開発途上国は世界市場を利用する
機会に恵まれていないことに加えて、債務の負担、開発援助の
減少、時として一貫性に欠ける援助国側の政策といった問題も
進展を遅らせる原因となっています。
このような障害を克服するうえで、何が求められているので
しょうか。それは、真のパートナーシップであり、さまざまな
角度から貧困解消をめざす継続的な取り組みにほかなりません。
私たちは、政策・プログラムの指針づくり、有効性の評価尺度
に、この開発目標を4機関共通の枠組みとして積極的に活用し
ています。貧困との戦いに敗北するわけにはいきません。すべ
ての人々のためにも、この戦いでの勝利を願う私たち共通の思
いが揺らぐことはあってはなりません。
国際連合事務総長
コフィー・アナン
経済協力開発機構事務総長
ドナルド・ジョンストン
国際通貨基金専務理事
ホルスト・ケーラー
世界銀行グループ総裁
ジェームズ・ウォルフェンソン
3
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標の設定
国際開発の目標で取り上げられているテーマは、人々の願いの
中でも特に必要に迫られているものと言えます。それは、貧困
のない世界であり、貧困がもたらす不幸のない世界です。目標
は具体的に計測可能な条件で設定されているため、部分的には
言葉や絵による説明もありますが、大部分は数字とグラフで示
すことができます。
どの目標も、1990年代前半に国連が開催した世界規模の会議
での合意事項や決議に基づいて生まれたものです。国際社会で
は、貧困の解消や持続可能な開発に必要な措置に関して、こう
した一連の会議が合意の場となりました。
この報告書が掲げる目標は全部で7つあり、それぞれ異なる
角度から貧困問題に取り組んでいます。各目標は相互に補完し
合う関係にあるため、7つの目標全部を総合的に理解する必要
があります。特に女子の高等教育就学率が向上すれば、貧困や
死亡率の低下につながります。基本的な医療が充実すれば、就
学率が高まると同時に貧困も削減されます。貧しい人々の多く
は、自然環境から生活の糧を得ています。このため、7つの目
標すべてに関して前進が求められているのです。
どの目標も簡単には達成できないものばかりですが、一部の
国や地域の達成状況を見れば、どのようなことが実現可能なの
かわかります。たとえば中国では、貧困状態にある人々は1990
年に3億6000万人だったのが、1998年には約2億1000万人に減
少しています。モーリシャスでは、軍事予算が削減され、健康・
教育に重点的に投資されました。現在、モーリシャスの国民全
員が下水道を利用できるようになったほか、国民の98%が安全
な水を利用できるようになり、出産の97%に一定の技能を持つ
保健スタッフが立ち会いました。さらに、中南米の多くの国々
は、教育における男女格差の解消に大きく近づきました。
メッセージ:さまざまな形の貧困の解消に向けて大きな進歩
を遂げる国が存在する以上、ほかの国々にも可能なはずです。と
ころが、サハラ砂漠以南のアフリカでは、社会開発の進展が利
害衝突のために帳消しになってしまう国が少なくありません。
HIV/エイズの蔓延によって、世界中で個人や家庭、社会が貧困
に追い込まれています。長期的な貧困解消に不可欠とされる持
続的な経済成長も、世界の半数の国々にとってはいまだに無縁
の話です。過去35年もの間、国民1人当たり実質所得が減少の
一途をたどっている国は、実に30カ国以上に及びます。経済成
長があれば、その恩恵はもっと平等に広まっていいはずです。
ですから、私たちの目標も達成可能なのです。ただし、一筋
縄ではいきません。成功をつかむには、何よりもまず、貧しい
人々に代わって発言する力のある代弁者や貧しい人々のために
なる経済の安定・成長、万人が享受できる基本的な社会福祉、貿
易・技術のための市場開放、開発の十分な資源が欠かせません。
4
1
2015年までに、極度
の貧困状態にある人々の
数を1990年の半分の
水準まで減少させる。
1990年代半ばに世界規模で経済成
長が進んだのを受け、貧困率は低
下しました。実際、アジアでは激
減したものの、アフリカでは微減
もしくは横ばいにとどまりました。
中南米では、所得の不平等が事態
の改善を阻む障害となっています。
1日の生活費が
1ドル未満の人口の割合
20
目標値への平均的な道のり
2015年までに小学校就
学率を100%にする。
就学率は増加傾向にありますが、
十分に速いペースで進んでいると
は言えません。現在のペースでは、
2015年の時点で就学年齢の児童の
うち、1億人以上が未就学になり
ます。
10
0
1990
2
30
1990∼98年の実績
2015
小学校の純就学率(%)
100
目標値への平均的な道のり
1990∼98年の実績
75
50
1990
3
2005年までに初等・
中等教育での男女平等
や女性の地位向上を推
進する。
女子の教育機会を充実させること
は不可欠ですが、まだ十分な水準
とは言えません。男女格差は縮小
傾向にありますが、依然として女
子は男子よりも就学率が低水準に
とどまっています。
2015
初等・中等教育における男子就学者を
100とした場合の女子就学者の比率(%)
100
目標値への平均的な道のり
1990∼98年の実績
75
50
1990
4
5
2015年までに、乳児
と5歳未満の幼児の死亡
率を1990年の水準の
3分の1に削減する。
1990年から2015年
までの間に、妊産婦死
亡率を4分の1に削減
する。
5歳未満の乳幼児死亡率に関して、
目標達成が十分に見込める水準に
まで低下させた国の数を1とする
と、ペースが遅れ気味の国は10、
逆に悪化している国は1となりま
す。ほとんどの場合HIV/エイズ
が死亡率上昇の原因になっていま
す。
妊娠中や出産時に一定の技能を持
つ者の介護があれば、年間50万人
以上もの妊産婦の死亡を防ぐこと
ができます。しかし、技能のある
保健従事者が介護する出産の割合
は、1990年代にわずかに増加す
るにとどまりました。
2005
5歳未満の死亡率
(生児出生1000人中)
50
目標値への平均的な道のり
0
1990
2015
技能のある保健従事者が
介護する出産の割合(%)
誰もが必要に応じて性
と生殖に関する医療保
健サービスが受けられ
る体制を2015年まで
に整える。
性と生殖に関する医療保健の普及
度を示す指標の1つとして、避妊
具の使用状況が挙げられます。性
と生殖に関する医療保健サービス
の利用増を受け、世界各地で避妊
具の使用率が上昇しています。
100
目標値への平均的な道のり
50
1988∼98年の実績
0
2015
1988
6
100
1990∼98年の実績
避妊具の普及率(%)
80
1993∼98年の実績
70
60
50
1993
7
各国が持続可能な開発
戦略を2005年までに
実施し、環境破壊に向
か っ て い る 傾 向 を
2015年までに逆転さ
せる。
1992年にリオデジャネイロで開催
された地球サミットで合意があっ
たにもかかわらず、実際に戦略を
採択した国は半数にも満たないう
え、実施している国となるとほと
んどありません。
1998
環境戦略導入国の割合(%)
50
1984∼97年の実績
25
0
1984
1997
5
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:2015年までに極度の貧困状態にある人々
の数を半減させる。
地球上では、5人に1人が1日
当たり1ドル未満の生活費で暮
らしており、7人に1人が慢性
的な飢えに苦しんでいます。
貧 困
多くの開発途上国では、貧困にあえぐ人々が社会の片隅に追い
やられて苦しんでいます。政治的な影響力がないのははもちろ
ん、教育や医療、最低限の住居、生命身体の安全、一定の収入、
十分な食糧も欠いているのです。
一部の地域で進展が見られたものの、他の地域では遅れや悪化も
1日の生活費が1ドル未満の人々の割合(%)
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
1990年
50
40
1998年
2015年の目標値
44
現在までの実績
目標達成に必要な
進展のペース
46
40
40
30
30
20
20
24
22 10
0
1990
2015
2
2
1990
「貧困はつらい。ま
るで病気にかかっ
たようです。物の
面だけでなく心に
も襲いかかってき
ます。貧困という
ものは、人間の尊
厳を踏みにじって、
絶望に追い込むの
です」
1
2015
50
40
28
30
20
10
10
15
0
1990
中東・北アフリカ
6
48
東アジア・太平洋
50
2015
14
1990
欧州・中央アジア
0
2015
中南米・カリブ海
50
50
50
40
40
40
30
30
20
20
10
10
0
5
2
1990
1
2015
30
17
20
16
8 10
0
0
1990
2015
全世界で極度の貧困状態にある人々は、1990年代半ば
までに数も割合もわずかながら減少に向かいました。
最も減少したのは東アジアで、特に中国での減少が顕
著でした。しかし、1990年代後半になって一部のアジ
ア諸国で一時的に減少のペースが鈍ったほか、急ブレ
ーキがかかってしまった国や逆に悪化してしまった国
もありました。その他の地域では、貧困状態にある
人々の割合は減少したものの、全体の人口増加に伴っ
て貧困状態にある人々の数自体は増加しました。ま
た、経済や社会の移行期にある旧ソ連諸国では、貧困
者の割合が3倍以上に膨らみました。
開発の方向を見直したタイ
タイは、1988年から1996年にか
けて年率7%の経済成長を遂げ、
貧困者の割合は22%から11%に
低下しました。しかし、同国の
金融危機の影響で、1998年に貧
困層の割合は13%に拡大しまし
た。これを受け、タイは開発戦
略を見直し、経済成長の陰で依
然として深刻な状態が続いてい
た不平等の是正に乗り出しました。
同国の開発計画は、以前より
も人間を主役に置くようになり、
特に貧困率の高い北部・北東部
地域に資源を多く振り向けるよ
うになりました。同国が新たな
目標として掲げているのは、
2001年までに貧困率を10%未満
に引き下げることです。新しく
確保した社会投資資金は、貧困
者を対象とする雇用創出や社会
福祉に役立っています。この新
戦略の一環として、責任の所在
の明確化や地区評議会に対する
権限移譲を柱とする国家統治改
革が進められた結果、地区評議
会にとっては、独自に役員を選
出できるようになったほか、従
来よりも多くの資源を自由に利
用できるようになりました。
欧州・
中央アジア
12億人が極度の貧困状態に
1日の生活費が1ドル未満の生活者数(単位:百万人)――1998年
24
南
アジア
東アジア
・太平洋
278
サハラ砂
漠以南の
アフリカ
中南米・
カリブ海
6
栄養不良――姿を変えた貧困
目標の達成――大胆であっても不可能ではない
平均体重を下回る5歳未満の子供の割合(%)
0
10
20
522
78
291
中東・
北アフリカ
貧困者数が最も多いのは南ア
ジアですが、全人口に占める
貧困者の割合が最も大きいの
はサハラ砂漠以南のアフリカ
です。貧困者の大部分は農村
地域に住んでいますが、都市
部に住む貧困者のほうが速い
ペースで増加しています。性
別で見ると、男性よりも女性
のほうが土地などの資産に対
する権利を持っていない傾向
が強くなります。また、女性
は社会的な信用を得ることが
難しい状況もあります。さら
に、高齢になると職も少なく、
経済的な保障も欠くことにな
ります。
世界の全人口に占める極貧者数(単位:10億人)
30
40
1990年
1990年
1998年
5.3
1.3
5.9
1.2
2000年
2015年
アフリカ
アジア
中南米
現在、開発途上国に暮らす子供のうち、1億5000万人が平均体
重を下回っています。しかし、栄養不良児の占める割合は、ア
フリカを除いて世界的に減少傾向にあります。体重が不足する
と、死亡の危険性が高まるうえ、精神的にも身体的にも健全な
成長の妨げとなります。また、栄養不良の女性の場合、体重不
足の子供が生まれる可能性が高くなります。2015年までに栄養
不足人口の半減を掲げた世界食糧サミットの目標を達成するに
は、これまでの進展に加えて、特別な活動が必要です。
世界の国々が社会や男女間の不平等の解消に向けた政策を打ち
7.1
0.9
極貧者数
世界の総人口
出し、貧困者が収入を得る機会が生まれれば、2015年までに貧
困率を半減させることができます。しかし、この目標の達成は、
初めの一歩にすぎません。貧困率が半減しても、世界には極度
の貧困状態にあえぐ人々がまだ9億人も残る計算になります。だ
からこそ、貧困解消への取り組み強化が求められているのです。
7
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:2015年までに小学校就学率を100%に引
き上げる。
開発途上国では、3人に1人
の子供が5年間の学校教育を
修了していません。
教 育
すべての人々への初等教育の普及は、依然として大きな課題ですが、同時に、そこに
は大きな可能性も秘められています。成功すれば、何百万人もの人々が貧困から脱却
する技能を身に着けることができるのです。しかし、失敗すれば、教育の危機はもち
ろん、子供たちが大人になる10年後には社会の危機までもたらすことになります。
就学率は増加傾向――しかし、依然として多くの子供が未就学
小学校の純就学率(%)
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
1990年
100
80
80
73
1998年
2015年の目標値
66
目標達成に必要な
進展のペース
82
1990
60
2015
20
20
0
0
1990
94
60
97
80
84
2015
高所得国
100
80
86
0
1990
2015
中南米・カリブ海
100
80
86
40
20
2015
93
80
60
60
欧州・中央アジア
100
100
97
40
60
40
1990
中東・北アフリカ
54
96
60
60
現在までの実績
東アジア・太平洋
100
100
98
80
60
60
40
40
40
40
20
20
20
20
0
0
0
1990
2015
1990
2015
0
1990
2015
ほとんどの地域で就学率は上昇していますが、教育の質には改
善が見られず、いまだに就学していない子供がたくさんいます。
就学率と教育の質を高めるには、教育制度全体として教員の養
成や教育施設の改善に取り組む必要があります。また、家庭ぐ
るみ、地域ぐるみの取り組みを促進し、女子教育の需要に歯止
めをかけるような性差別に基づく偏見をなくさなければなりま
せん。
「読み書きを身に付けて、いい仕事ができ
るようになれば、子供たちをいい学校に
通わせてあげられます。そうすれば、子
供たちもいい仕事に就けるはずです」
8
1994年、マラウイは初等教育を
最優先課題と位置づけました。
乏しい教育利用機会、不平等、
高い留年率・中途退学率、粗末
な設備・施設など、学校制度に
まつわる問題の解消を掲げたの
です。政府が教育予算を増やし
ほとんどの国々では、依然と
して就学率に貧富の格差が見
られます。事実上、初等教育
が全国民に広く提供されてい
る国がある一方で、惨憺たる
状態の国もあります。学業継
続率の低さは、学校側に問題
があったり、教育利用機会に
恵まれていなかったり、貧困
家庭が子供に学業を続けさせ
るには費用負担が大きかった
りするためです。
て授業料徴収を廃止したところ、
就学率が50%も増加し、貧困者
に救いの手をさしのべる教育制
度になりました。1990∼91年度
には、全人口の5分の1を占め
る最貧層の人々に対して、政府
の教育支出総額のわずか10%が
分配されていましたが、1994∼
95年度にはこれが16%に増加し
ました。この影響で、同じく全
人口の5分の1を占める最も裕
福な層に分配された教育支出の
割合は、38%から25%に減少し
ました。
学校に行けない子供は1億1300万人
小学校就学年齢の児童数(単位:百万人)――1998年
就学
未就学
35
欧州・
中央アジア
3
東アジア
・太平洋
ニーズに応えられるのか
小学校就学年齢にある人口の推移(単位:百万人)――2000年∼2015年
34.4
6
198
5
中東・
北アフリカ
南
アジア
124
46
サハラ砂
漠以南の
アフリカ
36
2
中南米・
カリブ海
68
46
60
高所得国
71
マラウイの教育改革
6
出生率の低下を受け、就学年齢にある児童数は、全世界で見る
と、今後15年間で900万人の増加にとどまります。しかし、地
域別に見ると、大きな差があります。出生率が低下した東アジ
アでは、就学年齢の人口が2200万人減少します。ところが、サ
ハラ砂漠以南のアフリカでは、3400万人の増加となります。ち
なみに、同地域では1998年現在、すでに4600万人の学齢児童が
学校に通えない状態にあります。ということは、今後15年間に、
さらに児童8000万人を受け入れられるだけの学校建設や教員養
成、教科書配布が必要になるのです。南アジアや中東・北アフ
リカも同様の問題を抱えています。
6.1
0.4
—3.4
—0.3
—5.6
—22.5
東アジア・ 欧州・
中南米・
中東・
南アジア サハラ砂漠 高所得国
太平洋 中央アジア カリブ海 北アフリカ
以南の
アフリカ
9
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:女性の地位向上をめざし、2005年までに
初等・中等教育の男女格差を撤廃する。
教育での男女格差を解消すれば、
国民1人当たりGNPの年間成長
率は0.5ポイント上昇
男女平等
教育を受けた女性は、結婚や出産、仕事、生活で選択肢の幅が
広がります。経済的にチャンスをつかむ可能性も高まります。ま
た、自分を取り巻く政治・社会・経済・環境の行方について、自
らの意見を強く反映できるようになります。
男女間の就学率格差――すべての地域で縮小傾向
初等・中等教育における男子就学者を100とした場合の女子就学者の比率(%)
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
1990年
1998年
100
80
80
65
60
77
2005年の目標値
現在までの実績
目標達成に必要な
進展のペース
1990
中東・北アフリカ
90
1990
60
40
20
20
0
0
1990
102
80
0
1990
2005
中南米・カリブ海
94
80
85
2005
高所得国
97
100
99
80
100
80
94
60
60
60
40
40
40
40
20
20
20
20
0
0
0
60
2005
60
20
100
80
79
83
100
40
欧州・中央アジア
96
80
93
40
2005
100
東アジア・太平洋
100
1990
2005
1990
2005
0
1990
2005
女子の就学者数は男子を上回る勢いで増加しています。アルメ
ニアやモンゴル、南アフリカ、スリランカ、ベネズエラなどの
国々では、就学率も女子が男子を上回っています。世界的に見
ると、初等・中等教育の就学状況の男女格差は、縮小傾向にあ
ります。しかし、2005年までに教育の男女格差を解消するため
には、現行のペースでは間に合いません。
10
「ここに来たばかりのときは、みんな読み書
きがまったくできませんでした。まるで石
のようにじっと黙り込んで、ただ輪になっ
て座っているだけで、返事さえまともにで
きない状態でした。今こうやって文字の読
み方や書き方が身に付いて、ようやく自分
たちの権利や自分たちに必要なものがわか
るようになりました」
女子就学者数−−ギニアでは男子
を上回るペースで増加中
ギニアでは、1991年に20%に満
たなかった女子の小学校就学率
が1998年には約40%に増加しま
した。これは、現実路線を打ち
出した政府による一連の措置が
功を奏した結果と言えます。政
府は各校に女子トイレを設置し
ました。また、妊娠中の女子に
ついては、出産後の再入学を認
めました。教科書は無償配布に
切り替えたうえ、教科書自体も
改訂して性差別と見られる記述
を一掃しました。さらに、女性
教員の採用に力を入れました。
欧州・
中央アジア
就学者数では女子は男子に及ばず
41
40
初等・中等教育の就学者数(単位:百万人)――1998年
男
女
南アジア
富裕階級の家庭の子供の場合、
高所得国並みの水準で学校教
育を終える傾向が多くの地域
で見られます。このような家
庭に限って言えば、就学率の
男女格差はほとんどありませ
ん。一方、貧困家庭の場合、
就学者数自体が少ないうえに、
女子は男子よりもはるかに少
なくなります。多くの貧困家
庭では、女子に教育を受けさ
せた場合に期待できる見返り
よりも、労働力としての価値
のほうが高いのです。女子の
就学率が向上しないのは、こ
のような理由によります。
サハラ砂
漠以南の
アフリカ
東アジア
・太平洋
156
146
40
36
148
114
中東・
北アフリカ
52
44
中南米・
カリブ海
56
57
高所得国
73
71
近年、中等教育就学率の男女
格差は縮小しています。その
背景としては、女子の就学率
が高まっていること、男子の
ほうが中退率がはるかに高い
ことが挙げられます。しかし、
教育では男女格差が縮まって
はいるものの、政治や経済の
分野では依然として男女格差
が根強く残っています。
貧困層ほど広がる男女格差
15歳∼19歳の人口のうち、9年間の
学習課程修了者の割合(%)
コート
ジボワール
1994
エジプト
1995—96
男
女
パキスタン
1990—91
ペルー
1996
100
81
80
79
60 61
61
60
49
47
40
36
31
20
20
19
0
16
11
7
2
1
富裕層 貧困層
富裕層 貧困層
富裕層 貧困層
富裕層 貧困層
11
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:2015年までに乳幼児死亡率を3分の1に
削減する。
1998年に死亡した5歳未満
の子供は1100万人。その原
因のほとんどは予防可能なも
のでした。
乳幼児死亡率
乳児と5歳未満の幼児の死亡率は、1960年から1990年までの間
に半分以下に低下しています。特に中国、スリランカ、ベトナ
ムでは、乳児死亡率が4分の1に減少しました。このことから、
他の貧困国でも同様の成果が得られるものと大きな期待が生ま
れたのです。ところが、1990年代に入ってからペースが鈍りま
した。2015年までに3分の1に削減する目標を達成するには、
ほとんどの地域で大規模な取り組みが必要です。
子供たちを取り巻く状況の見通し――改善に向かっているものの、ペースは遅すぎる
5歳未満の死亡率(出生児1000人当たりの死亡数)
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
1990年
150
150
150
125
125
100
100
100
75
75
40 50
50
25
52 25
121
1998年
2015年の目標値
89
目標達成に必要な
進展のペース
0
1990
55
2015
18 25
2015
0
1990
2015
高所得国
中南米・カリブ海
150
150
150
125
125
125
125
100
100
100
100
75
75
75
75
50
50
50
50
24 25
2015
50
55
150
34
26
1990
49
37
11 25
16 25
0
0
0
1990
75
43
0
1990
欧州・中央アジア
中東・北アフリカ
71
151
125
現在までの実績
東アジア・太平洋
155
2015
1990
2015
25
9
1990
6
3
0
2015
安全性の低い水、不十分な予防接種、戦争や内乱、深刻な貧困
や栄養不良、特に女子を対象とする基礎教育機会の不足、HIV/
エイズの流行、マラリアや結核の再発生――。行く手には数々
の困難が待ち受けています。
「その男の子の死因は、はしかでした。病
院に行けば治ることは常識です。でも、
その子の両親は治療費が払えなかったた
めに、男の子はじわじわと体を蝕む病魔
に苦しみながら息を引き取ったのです」
12
バングラデシュでは子供の生存
率が向上
バングラデシュでは、1998年に
乳児と5歳未満の幼児の死亡率
が1990年の水準に比べて25%も
減少しました。2015年までに目
標を達成できるほどのペースに
はなっていないものの、特筆す
べき成果と言えます。いったい、
何があったのでしょうか。予防
乳児の死亡は、多くの場合、
出産時の不衛生な環境が原因
です。肺炎や下痢、マラリア、
はしかのために、幼い子供た
ちが命を落とすことが少なく
ありません。特に慢性的な栄
養不良に苦しんでいる子供た
ちが犠牲になっています。
極的な参加、女子を対象とする
特別奨学制度、女性を対象とす
るマイクロクレジット(小規模
金融、少額の資金貸し付け)の
対象範囲を広げたことなども重
要な役割を果たしました。
接種の強化、下痢の治療を呼び
かける全国的な意識向上キャン
ペーン、肺炎による死亡を減ら
す特別プログラムの実施、保健
衛生の改善、安全な水の供給体
制の整備などが功を奏したので
す。さらに、基礎的な社会サー
ビス提供に対する地域社会の積
子供たちの死
乳児死亡数(単位:百万人)――1998年
欧州・
中央アジア
0.1
高所得国
中南米・
カリブ海
サハラ砂漠
以南の
アフリカ
南
アジア
中東・
北アフリカ
東アジア
・太平洋
2.7
2.3
1.2
0.3
0.4
0.1
女子教育が命を救う
貧困層ほど高くなる子供の死亡率
家庭の資産別に見た5歳未満の死亡率(出生児1000人当たりの死亡数)
0
100
ハイチ
1994年
∼95年
200
163
106
インド
1992年
∼93年
120
54
200
41
29
25
ヨルダン
1990年
62
41
ナイジェリア
1990年
70
211
190
138
113
168
97
中間層
100
74
31
109
29
0
コロンビア
1995年
24
トーゴ
1988年
最貧層
137
155
インドネシア
1994年
母親の教育水準別に見た5歳未満の死亡率
(出生児1000人当たりの死亡数)
154
最富裕層
5歳未満の死亡率が最も高いのは最貧層ですが、比較的裕福な
層でもかなり高い率になっています。乳幼児の死亡を削減する
ためには、基礎的な社会サービスへの投資を拡大することに加
え、特に貧困層を対象にした親の教育、栄養摂取の改善が必要
です。
フィリピン
1993年
152
95
70
42
教育なし
初等教育
中途退学
初等教育
卒業
中等・高等教育
女性が教育を受けることにより、小さな家庭を築いて、きめ細
かく子供の世話ができるようになり、子供の生活向上につなが
る知識を授けることもできます。
13
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:2015年までに妊産婦死亡率を現在の4分
の1まで削減する。
1995年に妊娠中または出産
時に死亡した女性は50万人以
上に及びました。さらに何百
万人もの女性が適切な手当て
も受けられずに苦しんでいま
す。
妊産婦死亡率
妊産婦死亡数の99%は、開発途上国に集中しています。そして、
そのほとんどが、本来ならば防ぐことのできる死なのです。感
染症、失血、危険な妊娠中絶が死亡数の半数以上を占めていま
す。妊産婦死亡率を削減するためには、助産制度の質の向上や
範囲の拡大、貧困者の産前産後の介護に関する予算を増やす必
要があります。
多くの地域で出産時のきめ細かい介護が不足
医師・助産婦の立ち会いによる出産の割合(%)
アジア
(中国・インドを除く)
1988年
90
1998年
2015年の
目標値
現在までの
実績
目標達成に
必要な進展の
ペース
サハラ砂漠以南のアフリカ
100
100
90
80
60
80
60
50
40
40
46
20
29
32
1988
20
0
0
1988
2015
中南米・カリブ海
2015
中東・北アフリカ
90 100
100
90
80
77
60
70
48
60
61
40
40
20
20
0
1988
2015
80
0
1988
2015
妊産婦の死亡率の計算は簡単ではありません。医師・助産婦な
どの立ち会いによる出産の割合を参考にしながら、妊産婦死亡
率の削減の進み具合を追うことになります。医師・助産婦の立
ち会いが日常的に得られない地域では、2015年までに立ち会い
の出産の割合を90%に引き上げることが目標とされています。
14
「もうすぐ海へ行っ
て出産します。で
も、そこまでの道
のりが長くて危険
も多いので、二度
と戻ってこられな
いかもしれません」
大切なのは約束すること
妊産婦の死亡率を削減するため
に必要な対策は明らかです。家
族計画や妊産婦の基礎的な介
護、医師・助産婦の立ち会い、
新生児の世話、危険な妊娠中絶
や妊娠・出産に伴う合併症の予
防・処置などのサービスが求め
られているのです。必要な費用
もわかっています。低所得国の
場合、1人当たり年間約3ドル
です。たとえ低所得であっても
中国やキューバ、スリランカで
は、妊産婦の死亡数が減少して
います。その背景には、基礎保
健医療の利用機会を広げたこ
と、保健制度の強化、保健医療
の質の改善などの取り組みがあ
りました。
欧州・
中央アジア
妊産婦死亡率は、地域によっ
て大きな差があります。中南
米では低く、アフリカでは非
常に高くなっています。多く
のアフリカの貧困国では、出
生児100人に対して、妊娠・出
産の合併症で死亡する妊産婦
が1人いる計算になります。
妊産婦死亡数は51万4000人
妊産婦死亡数(単位:千人)――1995年
3
東アジア
・太平洋
南
アジア
中南米・
カリブ海
中東・
北アフリカ
20
265
22
1
155
高所得国
48
サハラ砂
漠以南の
アフリカ
妊産婦の死亡率を削減するに
は、助産術を身に付けた助産
婦などの専門家が重要な役割
を担います。こうした専門家
は、出産に立ち会うだけでな
く、産前・産後の母子双方の
介護に関する基礎知識を妊産
婦に提供します。この目標を
達成するためには、女性の社
会的地位を向上させるととも
に、保健医療での男女平等を
実現することが大切なのです。
医師・助産婦の支援があれば妊産婦死亡率は低下
出生児10万人当たりの妊産婦死亡数(対数目盛)――1995年
10000
1000
100
10
1
0
20
40
60
80
100
医師・助産婦立ち会いによる出産の割合(%)――1992年以降の最新データ
15
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:誰でも性と生殖に関する医療保健サービ
スが受けられる体制を2015年までに整える。
「出産まで一定期間を置きた
い」あるいは「これ以上子供
は欲しくない」と考えている
夫婦やカップルのうち、避妊
をしていないカップルは1億
2000万組にも上ります。
性と生殖に
関する医療保健
性と生殖に関する医療保健サービスは、自分自身の健康や家族の
健康を守るうえで必要な知識を男女に提供するものです。この中
には、家族計画の方法、HIV/エイズなどの性感染症の予防・処
置方法、女性に対する悪習の防止方法も含まれます。
避妊の実行率は、特に性と生殖に関する質の高い医療保健サービ
スが低料金で利用できるかどうか、サービスに関する情報が提供
されているかどうかなど、さまざまな要素の影響を受けます。性
と生殖に関する医療保健は、性別による社会的役割のあり方によ
って左右されるため、男性は自らの性行動について大きな責任が
求められると同時に、パートナーの権利や健康を尊重・支援する
必要があります。
避妊の普及率は各地で上昇
既婚女性に占める避妊実行者の割合(%)
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
東アジア・太平洋
1993年
80
80
2000年(推定)
51 60
60
60
40
40
20
20
40
41
20
15
26
0
1993
1993
76 80
0
2000
0
1993
2000
高所得国
中南米・カリブ海
欧州・中央アジア
中東・北アフリカ
北アフリカ
42
1993
2000
73
80
80
70 80
60
55 60
60
60
40
40
20
50
66
40
40
20
20
20
0
0
0
70
72 80
51
2000
1993
2000
1993
2000
0
1993
2000
1990年代に世界各地で避妊実行率が上昇しましたが、アフリカ
は大幅に後れをとっています。貧困国で妊娠可能年齢の人口が
増加しているだけに、10年先まで避妊実行率の上昇を維持でき
るかどうかが課題となります。これが成功すれば、貧困の解消
も早く進みます。
16
性と生殖に関する医療保健サー
ビスの改善が進むイラン・イス
ラム共和国
毎年、1400万人を超える十代
の少女が妊娠・出産を経験し
ています。こうした妊娠の大
部分は「望まない妊娠」であ
り、十代の少女たちが求める
妊娠中絶件数は年間推定440万
件にも上ります。また、多く
の若者たちは、HIV/エイズな
どの性感染症にかかる深刻な
危険にさらされています。
1980年代後半、人口の急激な増
加が進んでいたイランでは、国
民の社会福祉ニーズへの対応に
ついて政府が強い関心を持つよ
うになりました。1989年には、
広範な基礎保健医療制度に全国
家族計画プログラムが組み込ま
れました。このプログラムのお
かげで、避妊実行率が増加し、
避妊が広く普及しました。1994
年のカイロ会議(
「人口と開発に
関する国際会議」
)を受けて、同
プログラムの対象範囲が広がり、
性と生殖に関する医療保健の中
十代の若者には、性と生殖に関する医療保健の情報や若者が親しみやすいサービスが必要
15∼19歳の少女1000人当たりの出産件数――1998年
26
東アジア・太平洋
39
欧州・中央アジア
74
中南米・カリブ海
中東・北アフリカ
51
南アジア
116
132
サハラ砂漠以南のアフリカ
高所得国
1999年のHIV/エイズ感染者・患者数
1999年のHIV新規感染者数
25
1999年のエイズによる死亡者数
単位:百万人
単位:百万人
単位:百万人
40
6
6
5.6
35
33.6
5
5
4
4
30
25
20
3
17.6
15
の他のテーマも扱われるように
なりました。1989年に49%だっ
た避妊普及率は、1997年に73%
にまで増加しました。
3
2.7
2.6
2.3
14.8
2
2
1
1
10
1.0
1999年末現在、HIV/エイズ感
染者・患者は、成人男女、子
供を含めて3360万人でした。
このうち95%が開発途上国に
暮らしています。汎流行病に
よる死亡者は1600万人で、こ
のうち実に1300万人以上がア
フリカに集中していました。
その結果、家庭はバラバラに
なり、開発の可能性も摘み取
られてしまうのです。効果的
な国家プログラムや大規模な
国際支援がなければ、汎流行
病は開発途上諸国全域で広が
り続け、富裕国と貧困国の格
差が大きくなります。
1.1
5
0.5
0.6
1.2
0
合計
成人男性
0
成人女性
0
15歳未満の子供
「今以上に人があふれる世界はいらない。
これ以上、貧しい暮らしはもうたくさん」
17
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標:各国が持続的な開発に向けた戦略を2005
年までに実施し、環境破壊に向かっている傾向
を2015年までに逆転させる。
1990年代前半には、年間約1700万
ヘクタール(スイスの4倍の面積に相
当)の熱帯林が失われました。このペ
ースが続けば、今後30年間に熱帯林の
種全体の5∼10%が絶滅の危機にさら
されることになります。
環 境
世界の貧困者の多くは、農業や林業、漁業といった形で、文字
どおり自然環境に生活の糧を頼っています。また、貧困者は、大
気汚染や水質汚濁、持続可能でない食糧生産慣行によって最も
打撃を受けやすい立場にあります。環境管理が向上すれば、貧
困者の生活改善だけでなく、生産性の向上や持続可能な開発に
はずみをつけることにもつながります。
遅々として進まない水道整備
管理の行き届いた水源が利用できる人口の割合(%)
アフリカ都市部
アジア都市部
100
85
1990
85
94
中南米都市部
93
80
60
40
40
40
20
20
20
0
0
1990
1999
60
0
1990
アジア農村部
1999
中南米農村部
100
74
80
66
100
80
60
80
56
58
60
40
40
40
20
20
20
0
1999
100
60
100
1990
90
60
1999
46
90
80
アフリカ農村部
37
100
80
0
1990
1999
0
1990
1999
世界の人口のほぼ20%は、浄化されていない水を生活用水とし
て利用しています。都市部の給水事情は農村部に比べて恵まれ
ていますが、都市用水から水道管で供給される水でさえ、病原
体や工業汚染物質に汚染されている可能性があります。安全な
水が利用できない人々は、毎日、必要な水のやりくりに苦労し
ながら、飲料水を媒介に伝染する水系伝染病の危険に常にさら
されざるを得ないのです。
「好きで選んだわけじゃないけれど、この
地球に暮らすしかないんです」
18
1992年にリオデジャネイロで開
催された地球サミット以降、フ
ィリピンは世界で初めて持続可
能な開発のための諮問委員会を
設置しました。メンバーは政府、
市民団体、民間企業などのパー
トナーで構成されています。盛
を防止すること、労働組合との
団体交渉に環境規定を盛り込む
ことを柱とする持続可能な生産
構想を実施しています。
欧州・
中央アジア
森林――消えゆく資源
単位:千平方キロメートル(1997年)
現行の森林面積
14,400
8,800
潜在的森林面積
中南米・
カリブ海
サハラ砂
漠以南の
アフリカ
通常、エネルギー利用効率は経済成長に比例して向上…
南アジア
中東・
北アフリカ
3,000
700
600 80
10,000
高所得国
13,300
4,900
東アジア
・太平洋
14,300
8,700
人間が手をつけていなければ、
世界の大部分は森林に覆われ
ていたはずです。持続可能で
ない収穫や環境破壊により、
地球上では何百万エーカーも
の森林が消失し、これに伴っ
て経済的に重要な林産品や非
林産品も失いました。森林が
消失してしまうと、土壌や水
資源の保護、生物多様性の維
持、気候変動の緩和、自然遺
産・文化遺産の保護などが不
可能になります。
り上がりの契機となったのは、
2000年4月の加鉛ガソリンの段
階的廃止でした。同国では、持
続可能な開発の青写真として
「フィリピン・アジェンダ21」を
掲げています。主要企業は、副
生成物を再利用すること、公害
11,400
7,300
持続可能な開発に向けてパート
ナーシップづくりが活発なフィ
リピン
3,200
…ところが温室効果ガスも一緒に増加
単位GDP(1995年実績)当たりのエネルギー使用量
(石油に換算した場合のキログラム量)――1998年
事業系CO2排出量(人口1人当たりメートルトン)――1998年
30
3.0
中東・北アフリカ
2.5
2.0
サハラ砂漠以南の
アフリカ
低所得
サハラ砂漠以南の
アフリカ
中東・北アフリカ
0.5
中南米・
カリブ海
20
欧州・中央アジア
東アジア・
太平洋
1.0 南アジア
0
南アジア
欧州・中央アジア
1.5
25
東アジア・
太平洋
15
高所得国
10
5
高所得国
中南米・カリブ海
高所得
所得の多い国ほどエネルギー利用が効率的になりますが、総排
出量は大きくなります。貧困国も開発が進めば、エネルギー利
用効率が高まります。使用するエネルギー量が同じであれば、貧
困国のほうが多くの製品やサービスを生み出せます。しかし、効
率的な利用によるエネルギーの総節減量は、総消費量の増加で
相殺されるばかりか、むしろ消費量のほうが上回ってしまいま
す。仮に貧困国が現在の高所得国と同じ行動様式をとった場合、
低所得
0
高所得
総エネルギー使用量が増加の一途をたどり、それに伴って温室
効果ガス排出量も増加します。幸いなことに、地球規模で温室
効果ガスを削減する政策と、国ごとの公害抑制やエネルギー利
用効率の向上をめざす政策には共通性があります。これは、二
酸化炭素を最も大量に放出している富裕国であろうと、開発途
上国であろうと、どちらにも当てはまります。
19
2000
貧しい人々の発言力強化、貧しい
人々のためになる経済の安定・成長、
万人が享受できる基礎的な社会サー
ビス、貿易・技術のための市場開放、
開発の十分な資源が求められていま
す。
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
目標達成に
必要な対策
韓国、マレーシア、モロッコは、世代交代を待つことなく、貧
困層の人口を半減させた特別な国々です。また、インドのハリ
ヤナ州、ケララ州、パンジャブ州も貧困層半減に成功しました。
さらにボツワナやモーリシャスを含む十数カ国では、世代交代
せずに貧困者が4分の3以下に減少しました。こういった成功
事例は詳細な記録が残されているため、他の国々にとってさま
ざまな教訓が得られるはずです。すでに成功事例がある以上、新
たな成功事例が生まれる可能性があるのです。
貧困者に発言力と選択肢を
貧困者に力を与えることがすべての第一歩となります。女性
に機会を与え、貧しい人々が団結して政治に参加する機会を与
えることが大切です。民主化は、多数派による統治ではなく、閣
多くの国々が民主化へ
人権を守る条約の批准国が増加
民主的な政治体制を持つ国の割合(%)
条約批准国数
1990年
1974年
1999年
人種差別撤廃国際条約
(1965年)
28
127
155
経済的、社会的及び文化的権
利に関する国際規約
(1966年)
1988年
96
142
40
91
市民的及び政治的権利に関す
る国際規約
(1966年)
女子差別撤廃条約
(1979年)
58
1993年
144
102
165
53
拷問等禁止条約
(1984年)
61
1998年
0
10
20
30
40
50
60
児童の権利条約
(子どもの権利条約、1989年)
70
公正さを大切にする良い政府は、健全な法制度・経済制度を生み出して
育みます。司法の腐敗、ずさんな銀行規制、無計画な公共サービス、乏
しい地域参加などによって、開発の資源は消耗していきます。行政の能
力が十分にあれば、社会サービスの管理に対する地域参加が高まり、有
効性の大幅な向上につながります。また、事務上の決まりごとを簡素化
することにより、腐敗の芽をつみ取り、早期成長と貧困削減を推進でき
ます。
20
118
62
191
0
50
100
150
200
基本的人権の尊重と法の支配を守ることは、持続可能な開発になくては
ならない前提条件となります。世界の国々のうち、6つの人権条約すべ
てを批准している国は半数に上ります。ほんの10年前には、批准国数は
全体の1割にとどまっていました。こうした傾向は非常に重要です。条
約を批准するという行為は、自らの行動に責任を持つ姿勢をはっきりと
打ち出すことにほかならないからです。
僚や議会、行政、地方自治体など、政治参加のあらゆる面で少
数派を含めることではじめて本物になります。このような民主
主義の下では、司法の独立、開かれた市民社会、自由な報道が
促進されます。いずれも人権の尊重の確立につながるものであ
り、政府による公約や行動に対する責任の所在を明らかにしま
す。
貧困者に配慮した成長
経済が成長したからといって、貧困削減が保証されるわけで
はありません。しかし、長期的な視野に立って貧困削減を持続
させるためには、経済成長が絶対に不可欠なのです。しかも、貧
困者に配慮した経済成長が必要です。そのような経済成長を実
現するには、収入を得る機会を増やし、貧困者が高賃金の生産
的な仕事に就ける環境を整える必要があります。さまざまな資
産の利用機会を貧困者に提供することにより、貧困者が自らの
生産能力を発揮して自給自足できるよう後押しすることが大切
です。また、貧困にあえぐ女性には、公正さの観点から、これ
まで以上に充実した機会を提供しなければなりません。そのた
めには、女性による土地所有の権利を強化し、交渉力をつける
対策、社会的信用を得るための職業訓練や、新技術の訓練を受
ける機会を広げる対策が欠かせません。
現在、貧困者に配慮した成長のペースを大幅に上げなければ
ならない国が少なくありません。この中には、1人当たりの実
質所得が35年前の水準を下回っている開発途上国が30カ国もあ
ります。貧困者に配慮した成長は、貧困者自身の生産性向上が
土台となります。つまり、小規模農家の生産性向上であり、農
基礎的な社会サービスの予算増が必要な国々――1994∼97年
高まる貿易の重要性
政府予算に占める基礎社会サービス予算の割合(%)
商品の輸出入額(単位:十億ドル)
基礎教育
基礎保健・栄養摂取
低料金の水道・保健衛生
高所得国
中南米・カリブ海
欧州・中央アジア
中東・北アフリカ
東アジア・太平洋
サハラ砂漠以南の
アフリカ
南アジア
中南米・
カリブ海
14
12,000
10,000
8,000
サハラ砂漠
以南のアフリカ
14
6,000
4,000
アジア
12
2,000
0
0
3
6
9
12
15
基礎保健・教育への予算配分状況を見れば、その国の長期的な開発への
取り組み姿勢が浮かび上がってきます。1995年にコペンハーゲンで開催
された社会開発サミットでは、世界の首脳が一堂に会し、国家予算の
20%と政府開発援助の20%を基礎的な社会サービスに充てることを柱と
する大まかな指針を提唱しました。この目標は、各国が健康で教育水準
の高い労働力を確保するとともに、世界経済に対応できる競争力を獲得
することにありました。最近、ドミニカ共和国やグアテマラ、マラウイ、
ナミビアをはじめ、多くの国々で基礎的な社会サービスの予算が増加し
ていますが、サミットで提唱された指針を満たしている国となると、開
発途上国か援助国かを問わず、ほとんどないのが実情です。
1980
1984
1988
1992
1996
1998
過去40年間に貿易は全世界の生産を上回る勢いで伸びています。しかし、
手厚い保護政策に守られた国や商品輸出に依存する国は、物価変動に対
応しきれなかったり、損害を被ったりしています。現在、対外輸出を後
押しするとともに輸入能力の強化につながる開放的な貿易のメリットを
重視する国が増えています。
21
村部・都市部の小規模企業による生産性向上であり、小規模サ
ービス業を営む多くの男性・女性による生産性向上にほかなり
ません。
また、経済政策も堅実さとバランス感覚にあふれた持続可能
なものでなければなりません。そのためには、各種国家機関の
強化を図り、適切な経済・社会政策が実施できる体制を築く必
要があります。
これは、公平性の問題に行き着きます。言い換えれば、社会
のあらゆる人々が進歩するということです。しかし、公平性の
問題は、将来を担う世代にも関わってきます。つまり、経済成
長は持続可能であることが絶対条件なのです。そうすれば、現
在の環境保護活動によって、将来の世代にこの地球上で暮らし
ていくための自然資源を残すことができるのです。
すべての人々のための基礎的な社会サービス
政策は経済性だけを考慮するのではなく、貧困者のニーズに
目を向けることが大切です。つまり、社会生活の最低水準を明
らかにし、基礎的な社会サービスをすべての人々が利用できる
体制を築くのです。そのためには、どの国も教育、特に女子教
育に投資することが大切です。やがて、開発を進めていくうえ
で最も大きな見返りを生むはずです。また、貧困者には、保健
医療、水、保健衛生などの基礎サービスを中心に、質と費用効
果の高いサービスを提供すべきです。その一環として、特に妊
情報格差(デジタルディバイド)解消は競争力確保の条件
人口千人当たりのパソコン保有台数
南アジア
中東・北アフリカ
サハラ砂漠以南の
アフリカ
欧州・中央アジア
東アジア・
太平洋
中南米・
カリブ海
高所得国
娠・出産年齢の女性や幼い子供たちの栄養不良の改善に向けた
対策が挙げられます。さらに、政府は、危機的状況にある弱者
を救済する安全策も用意しなければなりません。
貿易・技術・知識のための市場開放
グローバル化は、開発途上国に多くの機会をもたらします。た
とえば、世界中の知識を活用しやすくなり、製品・サービスを
提供するための優れた技術が手に入るようになり、世界中の市
場に参入しやすくなります。しかし、その機会をうまく生かす
には、行動が欠かせません。どの国も関税など貿易障壁を削減
し、各種制度を合理化することにより、輸出入や資金が円滑に
流れるようにする必要があります。また、ビジネスの場にふさ
わしい国として印象づけるためにも、インフレや公定歩合、為
替レートの管理が大切です。さらに、一貫性のある政策を維持
することが必要です。これは、国内外の投資家からの信頼獲得
につながります。もちろん、高所得国にも果たすべき役割があ
ります。開発途上国からの輸入に対する関税などの貿易障壁を
削減することや、貿易を効率よく進める能力を身に付けてもら
うための援助を提供することなどが挙げられます。
しかし、必ずしもすべての国々がこうした恩恵を受けること
ができるわけではありません。実際、不適切な政策や実行力の
欠如の後遺症を抱える国は決して少なくなく、貿易、金融、技
術、知識の面で取り残されようとしています。実はこの貿易、金
保有資源の流通促進に関しては多くの国々が努力不足
GDPに占める税の割合(%)――1994∼1998年
高所得国
26
300
200
100
中所得国
19
50
40
30
20
低所得国
9
10
0
1994
1995
1996
1997
1998
過去20年間に通信料金は大幅に下がり、たとえばガーナのカカオ商人が
携帯電話で世界各地の取引価格を把握できるようになったほどに、携帯
電話の利用が広まりました。また、現在ではインターネットのおかげで、
電子メール、オンラインの各種研修、ウェブ上にある無限の情報なども
利用できます。こうした情報資源は一部の人々にとっては現実のものと
なっていますが、ほとんどの人々にとってはまったく手の届かないもの
なのです。そこで、あらゆる市民社会、あらゆる開発途上国の企業を、
可能性あふれるネットワークで結ぶ取り組みが必要です。この機会を生
かすには、通信分野での大規模な投資が欠かせません。
22
0
5
10
15
20
25
30
開発資金を増やす方法としては、公平な課税を総合的に実施することに
より、徴税能力を高めることが挙げられます。関税や許認可を資金源に
するのは簡単ですが、資源の配分が効率的でなくなるため良い方法とは
いえません。また、腐敗や汚職を招くことのない税制を作ることが大切
です。
融、技術、知識とは、正確に言えば、経済成長や貧困削減を後
押ししてくれそうな大切な存在なのです。
開発のための公平・有効な資源利用
開発には資金が必要です。人々からの投資や、政府による投
資が大部分をしめます。東アジアの多くの国々では、国民総生
産の30%以上に及ぶことも珍しくない貯蓄率の高さが経済成長
に拍車をかけてきました。だからこそ、インフラや社会サービ
スへの投資が可能だったのです。これに対して、アフリカの多
くの国々では、国民所得に占める貯蓄率の割合はわずか10∼
15%。これでは、人々を貧困から救い出せるだけのペースで経
済成長を続けることは不可能です。
重要なのは資金を上手に使うことです。富裕者のために助成
金を出すのではなく、貧困者のための基礎サービスや、将来の
開発のための健全な投資に使うことが大切です。資金をどのよ
うに使っていくのかと同様に、何に対して使うのかということ
も大切な問題です。政府支出が不安定だったり不確実だったり
すると、貧困削減の進展は非常に難しくなります。政府が採用
する人材の質も重要です。公務員の採用・昇進に実力主義を打
ち出している政府のほうが、コネのある人や政治的な考え方が
同じ人にいい仕事を回す政府よりも、大きな成果を残すことが
できます。
対外援助は、特に貧困国の開発支援に重要な役割を果たして
1990年代は援助が減少、
特に最貧国向け援助は大幅な増加が必要
一層の外資誘致が必要、現状は一握りの国々に集中
地域別の援助受取額(単位:十億ドル、1997年)
二国間
います。その際、被援助国自身が開発政策を考え、被援助国が
中心になって開発プログラムを進めることが成功の条件であり、
同時に援助国の手続や報告を連係・調整することによって管理
運営上の負担を削減すべきだとする考え方が支持を集めていま
す。現在、援助国や国際金融機関は開発途上国と緊密に協力し
ながら、各国が参加型の手順で策定した貧困削減戦略に取り組
んでいます。また、国別援助を慎重に検討する傾向が強まって
おり、国ごとの優先課題や現地のニーズに合わせて援助内容が
きめ細かく調整されるようになっています。
援助国は、戦略に基づくパートナーシップづくりを通してパ
ートナー相互の強みを生かし、共通の目標・目的を掲げ、過去
の実績を生かすことの大切さを認識しています。高所得国が開
発途上国とパートナーシップを築く場合、援助を増やす必要が
あります。また、債務救済措置の拡充や早めの実施も必要です。
高所得国は、免税・数量割り当て撤廃など、自国の市場を貧困
国が利用しやすい環境づくりに取り組む必要もあります。また、
熱帯病のワクチン研究など、多くの国々に利益をもたらすプロ
グラムに資金を供給することも大切です。このような行動は、最
貧国や後発開発途上国の成長促進と貧困削減に不可欠な要素で
す。さらに、人間の苦悩や武力衝突を軽減し、環境を守り、
HIV/エイズなど地球規模の脅威の蔓延を食い止めるうえでも、
こうした行動が欠かせません。
平均年間援助額と民間資金の流れ(単位:十億ドル)――1996∼98年
国際機関等
公的開発資金
直接投資
国際間の銀行貸し付け
債券貸し付け
その他の民間資金の流れ
7
1990
南アジア
1998
5
南アジア
9
19
サハラ砂漠以南の 1990
アフリカ 1998
サハラ砂漠以南の
アフリカ
13
9
9
東アジア・太平洋 1990
1998
21
東アジア・太平洋
39
7
中東・北アフリカ 1990
1998
中東・北アフリカ
5
15
4
欧州・中央アジア 1990
1998
欧州・中央アジア
7
5
中南米・カリブ海 1990
1998
中南米・カリブ海
4
0
5
47
10
15
20
ほとんどのOECD加盟国は、GNPの0.7%を援助とする目標値を採択し
ていますが、この目標値を達成しているのはデンマーク、オランダ、ノ
ルウェー、スウェーデンの4カ国にとどまっています。さらに、1990年
代には開発途上国支援の勢いが鈍ってしまいました。1992年にはGNP
の0.33%だったOECDの援助は、わずか5年後の1997年に0.22%にまで
落ち込みましたが、1998年と1999年は下落傾向が止まり、横ばいで推
移しています。貧困国、特に援助を有効に活用する貧困国への援助拡大
が援助国に求められているのです。重債務貧困国を対象とする債務救済
の拡大は、各国の貧困削減戦略にプラスに働きます。
–10 0
101
20
40
60
80
100
120
一部の地域は、外国からの資金調達をほぼ全面的に援助に頼っています。
各国の開発活動では、民間資金の流れが大きな役割を果たすことがあり
ます。ところが、こうした資金の流れは、20カ国弱の開発途上国に集中
しているうえ、債券や銀行融資など、民間資金の中には大きく変動しや
すい種類もあります。そこで、被援助国は、国内外からの長期的な投資
を誘致する条件を定める必要があります。モザンビークやウガンダは、
まさにこの条件づくりに着手しようとしています。
23
2000
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
注記・出典
世界の国々・地域(地域別)
東アジア・太平洋
米領サモア
カンボジア
中国
フィジー
インドネシア
キリバス
北朝鮮(朝鮮民主主
義人民共和国)
韓国
ラオス
マレーシア
マーシャル諸島
ミクロネシア連邦
モンゴル
ミャンマー
パラオ
パプアニューギニア
フィリピン
サモア
ソロモン諸島
タイ
トンガ
バヌアツ
ベトナム
欧州・中央アジア
アルバニア
アルメニア
アゼルバイジャン
ベラルーシ
ボスニア・
ヘルツェゴビナ
ブルガリア
クロアチア
チェコ
エストニア
グルジア
ハンガリー
マン島
カザフスタン
キルギス
ラトビア
リトアニア
マケドニア
モルドバ
ポーランド
ルーマニア
ロシア
スロバキア
タジキスタン
トルコ
トルクメニスタン
ウクライナ
ウズベキスタン
ユーゴスラビア
(セルビア/
モンテネグロ)
中南米・カリブ海
アンチグア
バーブーダ
アルゼンチン
バルバドス
ベリーズ
ボリビア
24
ブラジル
チリ
コロンビア
コスタリカ
キューバ
ドミニカ
ドミニカ共和国
エクアドル
エルサルバドル
グレナダ
グアテマラ
ガイアナ
ハイチ
ホンジュラス
ジャマイカ
メキシコ
ニカラグア
パナマ
パラグアイ
ペルー
プエルトリコ
セントクリストファー
ネイビス
セントルシア
セントビンセント・ グレナディーン
スリナム
トリニダードトバゴ
ウルグアイ
ベネズエラ
中東・北アフリカ
アルジェリア
バーレーン
ジブチ
エジプト
イラン
イラク
ヨルダン
レバノン
リビア
モロッコ
オマーン
サウジアラビア
シリア
チュニジア
西岸・ガザ地区
イエメン
南アジア
アフガニスタン
バングラデシュ
ブータン
インド
モルジブ
ネパール
パキスタン
スリランカ
サハラ砂漠以南の
アフリカ
アンゴラ
ベナン
ボツワナ
ブルキナファソ
ブルンジ
出 典
カメルーン
カーボベルデ
中央アフリカ
チャド
コモロ
コンゴ民主共和国
コンゴ共和国
コートジボワール
赤道ギニア
エリトリア
エチオピア
ガボン
ガンビア
ガーナ
ギニア
ギニアビサウ
ケニア
レソト
リベリア
マダガスカル
マラウイ
マリ
モーリタニア
モーリシャス
マヨット(マホレ)
モザンビーク
ナミビア
ニジェール
ナイジェリア
ルワンダ
サントメプリンシペ
セネガル
セーシェル
シエラレオネ
ソマリア
南アフリカ
スーダン
スワジランド
タンザニア
トーゴ
ウガンダ
ザンビア
ジンバブエ
高所得国
アンドラ
アルバ
オーストラリア
オーストリア
バハマ
ベルギー
バーミューダ
ブルネイ
カナダ
ケイマン諸島
チャネル諸島
キプロス
デンマーク
フェロー諸島
フィンランド
フランス
仏領ポリネシア
ドイツ
ギリシア
グリーンランド
グアム
香港(中国)
アイスランド
アイルランド
イスラエル
イタリア
日本
クウェート
リヒテンシュタイン
ルクセンブルク
マカオ(中国)
マルタ
モナコ
オランダ
オランダ領
アンティル
ニューカレドニア
ニュージーランド
北マリアナ諸島
ノルウェー
ポルトガル
カタール
シンガポール
スロベニア
スペイン
スウェーデン
スイス
アラブ首長国連邦
イギリス
米国
米領バージン諸島
(米国)
経済協力開発機構の
開発援助委員会の加
盟国は、イタリック
体で表記されていま
す。
地域の定義
この報告書の地域分類は、地域的・文化的類
似性と居住者の平均所得に基づいています。
開発途上国・地域は、6つの地域に分けられ
ます。この中には、ほぼ大陸の領域に相当す
る広い範囲を地域としているものもあります。
1998年現在で1人当たり国民総生産が9,360ド
ル以上の国・地域は高所得国とされており、
これだけで1つの区分として扱われます。
「国」
という語は、政治的独立性や正式承認を意味
するものではなく、当局が報告する社会統計
または経済統計の対象となる領土を指します。
データの出典
この報告書に使われている統計データは、各
国の関係当局からの報告に基づき、さまざま
な国際機関が編集・予測して作成したもので
す。現在、入手可能な統計データとしては最
も充実した内容です。ただし、データが不完
全な国、データの信頼性が低い国、データが
入手不可能な国などがあるため、こうした統
計データから浮かび上がる状況は完全に正確
とは言えません。このことを踏まえ、パート
ナー国、国際機関、援助国からなるコンソー
シ ア ム で あ る PARIS21が Partnerships In
Statistics for development in the 21st Century
(21世紀の開発に向けた統計のパートナーシッ
プ)の旗印の下に結成され、各国の統計作成
能力の向上に取り組んでいます。PARIS21プ
ログラムの詳細については、インターネット
のウェブサイト(www.paris21.org)をご覧く
ださい。
とUNICEFの暫定推定値。
性と生殖に関する医療保健
避妊具の普及率と15∼19歳の女性の妊娠率の
推定値は、国連人口部より。HIV感染とエイズ
による死亡に関するデータは、WHOと国連エ
イズ合同計画(UNAIDS)より。
環境
管理の行き届いた水源が利用できる人口の推
定値は、国連の持続可能な開発委員会の報告
書(2000年5月)より。現行の森林面積と潜
在的森林面積の推定値は、世界自然保護基金
より。単位GDP当たりのエネルギー使用量は、
国際エネルギー機関のデータを基に世界銀行
が推定。二酸化炭素排出量のデータは、二酸
化炭素情報分析センターより。
目標達成に必要な対策
民主的な政治体制を持つ国の推定数は、世界
銀行の世界開発報告1999/2000年版より。人権
条約批准国数のデータは、国際連合開発計画
(UNDP)のまとめ。政府予算に占める基礎社
会サービス予算の割合は、UNICEFとUNDPに
よる推定。商品貿易額は、世界貿易機関より。
1人当たりのパソコン保有台数は、国際電気
通信連合が作成したデータに基づく推定。税
収に関するデータは、国際通貨基金の政府金
融統計より。援助の流れと民間資金の流れに
関するデータは、OECDより。
その他の出典
報告書に登場する引用は、世界銀行発行の
以下の注記では、
「誰もが幸せに暮らせる世界 「Voices of the Poor」第1巻・第2巻と、世界
をめざして」の主な資料出典を紹介します。 中の国際協力職員による報告より。
定義、文献情報、補足データの出典について
貧困を削減して国際開発目標を達成したプロ
は 、 Better Worldの ウ ェ ブ サ イ ト ( www.
グラムの占める割合は、2000年3月にパリで
paris21.org/betterworld)をご覧ください。
開催された開発進ちょく状況に関するフォー
ラムの参加者による報告より。補足情報は、
貧困
世界銀行と各国連機関の報告書より。
極度の貧困状態にある推定人口は、世界銀行
より。5歳未満の子供の栄養不良データは、
国連行政調整委員会の栄養小委員会より。
教育
初等教育の就学率と学齢児童数の予測は、国
連教育科学文化機関(UNESCO)の統計研究
所より。
男女平等
男女別に見た初等・中等教育の就学率に関する
データは、UNESCO統計研究所より。家庭の資
産別に見た男女格差の推定は、世界銀行の資料
より。
乳幼児死亡率
死亡率は、国際連合人口部と国際連合児童基
金(UNICEF)より。家庭の資産別に見た5歳
未満の死亡率分布は、世界銀行とMacro
Internationalの人口動態健康調査の分析より。
母親の教育水準別に見た5歳未満の死亡率の
分析は、Macro Internationalの調査より。
妊産婦死亡率
医師・助産婦の立ち会いによる出産件数と妊
産婦死亡率のデータは、世界保健機構(WHO)
2000
goals
目 標
誰もが幸せに暮せる世界をめざして
国際開発目標の指標
指 標
経済の繁栄
極度の貧困の削減
2015年までに、極度の貧困状態にある人口を1990年
の水準の半数に減少させる。
極度の貧困の範囲:1日1ドル未満で生活する人々
貧困格差の比率:貧困度別の発生頻度
不平等:国内消費全体のうち、最も貧しい5分の1の人口が占める割合
子供の栄養不良:平均体重を下回る5歳未満の子供の割合
社会開発
初等教育の普遍化
2015年までにすべての国において初等教育を普及さ
せること。
初等教育の純就学率
初等教育4年生まで修了
15∼24歳の識字率
男女平等
初等・中等教育における男子就学者に対する女子就学者の比率
2005年までに初等・中等教育での男女格差を解消し、 男性に対する女性の識字率(15∼24歳)
それによって男女平等と女性の地位の強化(エンパ
ワーメント)に向けて大きな前進を図る。
環境の持続可能
性と再生
乳幼児死亡率の削減
2015年までに、乳児と5歳未満の幼児の死亡率を
1990年の水準の3分の1に削減する。
乳児死亡率
5歳未満の死亡率
妊産婦死亡率の削減
2015年までに、妊産婦死亡率を1990年の水準の4分
の1に削減する。
妊産婦死亡率
医師・助産婦の立ち会いによる出産
性と生殖に関する医療保健
基礎健康医療制度を通じて、対象年齢にあるすべて
の人々が性と生殖に関する医療保健サービスを受け
られる体制を2015年までに整える。
避妊具普及率
15∼24歳の妊婦に見られるHIVの感染
環境
各国が持続的な開発に向けた戦略を2005年までに実
施段階に移し、環境破壊に向かっている現在の傾向
を世界レベルと国家レベルの両面で2015年までに逆
転させる。
持続可能な開発に実効性のあるプロセスを持つ国々
浄化された水源が利用できる人口の割合
国土面積に占める森林面積の割合
生物の多様性:保護対象の面積
エネルギー利用効率:単位GDP当たりのエネルギー使用量
1人当たり二酸化炭素排出量
ここに挙げた目標や指標の詳細については、インターネットのウェブサイト(www.oecd.org/dac/indicators)をご覧ください。
国連が各国の統一評価に使用する広範な目標・指標については、インターネットのウェブサイト(www.cca-undaf.org)をご覧
ください。国際開発目標と関連指標に関するデータは、世界銀行のウェブサイト(www.worldbank.org/data)で提供されてい
ます。国際通貨基金は、Dissemination Standards Bulletin Board(dsbb.imf.org)でデータの質や基準に関する情報、各国デー
タの出典へのリンク情報を提供しています。
25
国際開発の目標で取り上げられているテー
マは、人々の願いの中でも特に難しいものと
言えます。それは、貧困のない世界であり、
貧困がもたらす不幸のない世界です。この報
告書では、7つの目標を中心に取り上げてい
ます。この7つの目標が今後15年間に達成
された場合、何百万人もの人々の暮らしが改
善されます。報告書では、目標の達成度、こ
れまでの実績、目標達成に必要な努力につい
て、数値・図表を交えながら文章や写真・絵
で解説しています。
国際通貨基金
経済協力開発機構
www.imf.org
www.oecd.org
国際連合
世界銀行グループ
www.un.org
www.worldbank.org
Fly UP