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タイ・ベトナム素形材業界の 技術水準評価(2)

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タイ・ベトナム素形材業界の 技術水準評価(2)
タイ・ベトナム素形材業界の
技術水準評価(2)
―ベトナム素形材産業の技術水準とまとめ―
NPO 法人 熟年ものづくり国際協力センター(JMIC)
田 村 啓 治
1.ベトナム ローカル企業の技術水準
級別で見れば日系がⅢ、Ⅳ、Ⅴに対しローカルはⅠ、
1.1 業種別評価
Ⅱ、Ⅲ級で技術は非常に劣っていることが分かる。
図 1 は業種ごとの技術レベルを示しているが鋳造・
今回ベトナムにおいて日系企業 8 社、ローカル企業
プレス金型は低く他の業種も最高・最低の範囲が広く
17 社を訪問調査し前号に示した技術水準評価基準を
最低レベルは著しく低い。
用いて、タイ国同様にその技術評価を行った。結果を
この調査結果をもとに業種別にその業種の概要と特
表 1 に示す。
に専門技術・設備面の特長について説明する。
表 1 ベトナム素形材の技術水準
評価点
業種
範囲
① 鋳造
級別
平均
ベトナム
日系
ベトナム
日系
鋳造では自動車用鋳物の量産企業はなく、日本で主
流である自動造型ラインは見当たらず、北部に初期的
鋳造
55 − 91
65
81
Ⅰ Ⅱ
Ⅲ
な段階の機械化ラインが存在する程度である。一般鋳
ダイカスト
68 −107
82
129
Ⅱ Ⅲ
Ⅳ
鍛造
67 − 97
82
−
Ⅱ Ⅲ
−
物の生型小物は土間置き(写真 1)という日本ではも
プレス
79 −107
91
107
Ⅱ Ⅲ
Ⅲ
プレス金型
71 − 78
75
−
Ⅱ
−
プラスチック金型
64 −155
96
128
Ⅱ Ⅲ
Ⅲ Ⅴ
※ 満点=180 点
う見かけられない作業形態(1970 年以前)の企業が多
い。
中物はフラン樹脂鋳型の時代であるがローカル企業
ではフラン樹脂鋳型技術はまだ一般化されていない。
唯一の日系企業も量産体制ではなく、日本向けの鋳物
これでわかるように日系とローカルの差は大きくそ
で市場競争ではない。ローカル全体としてはクラスⅡ
れぞれの平均は日系平均 119 に対しローカルは 88.1 点
の段階で設備もⅠ、Ⅱの段階であり不良率も高く生産
と大きな違いがある。
性も低い。各種プロセスの知識に乏しく模型の品質も
悪い。溶解設備は電気誘導炉が主流となり、やっとダ
クタイル鋳鉄が可能になってきた段階である。以前こ
1. 00=180 点満点
図 1 ベトナムの素形材技術評価
写真 1 一般の生型鋳造企業
43
砂
の輸出用製品および国内向家電用品・
100
80
製品
造型
60
40
Japan Standard
日用雑貨を多く生産している。企業
Furan Mold 1
数は北部より南部の方が多いが、全
Furan Mold 2
体的にプレス機械は殆ど自動化され
Green Sand 1
20
Green Sand 2
0
品管
ず、日常点検も不十分で、金型の打
ち傷・汚れも目立ち、締め付けも悪く、
プレートの変形が目立つなど多くの
溶解
問題が見られた。日系企業の指導を
受けているローカル企業でも技術レ
ベルが低く重要部品は取り扱ってい
中子
ない。この中で TS 16949 を取得して
方案
いる企業もある。工場内部の写真を
図 2 ベトナムの鋳造技術評価
写真 2、写真 3 に示す。
の地区の鋳造企業を数多く調査したメンバーの一人は
鋳造の技術力を図 2 のように報告している。
生型造型とフラン樹脂鋳型のそれぞれ 2 工場のレベ
ルを報告しているが、生型(Green Sand)では量産の
自動造型ラインがなく、小物手込めの最も古いスタイ
ルであり日本との技術格差が最も大きい。フラン樹脂
鋳型は一品ものに向いているので生型ほどではないが
一般的な日本の鋳造企業の約半分程度のレベルであ
る。鋳造の固有技術を見れば溶解は電気炉の普及でレ
ベルが上がってきたが、造型は砂管理、設備とも遅れ
ており結果として不良が多く品質が低い。専門技術及
び品質管理の分野で、最も技術的支援を必要としてい
る分野である。
写真 2 プレス工場 1
② ダイカスト
訪問した日系企業は四輪車用の日本向け量産企業で
技術・設備・管理とも優れているが、ローカル企業は
鋳造同様技術レベルが低く新しい技術は見られず、製
品はバイク部品程度と限定的であり、発展途上(1980
年代)である。この中で韓国系の 1 社が技術・設備と
もクラスⅢ以上であり管理もしっかりして日系に近づ
いている。経営者の積極的な姿勢が見られた。
③ 鍛造
2 社を訪問したがバイク部品を中心の企業でいずれ
もクラスⅡであり技術レベルも低い。この分野は設備
写真 3 プレス工場 2
と金型に左右されるが、順送金型などは未使用、1980
年代。
⑤ プレス金型
44
④ プレス加工
プレス加工メーカーは殆どが金型を内製している。
有力企業が 1、2 社あると聞いていたがいずれもホ
南部のローカル企業では精密金型を製造している事例
ンダの系列で今回訪問できなかった。プレス加工は設
もあるが、高級精密金型は輸入であり、NC 導入が進
備・技術ともに低く、不良も多い。クラスⅡ−Ⅲ程度
んでいるがレベルとしてはⅢ程度である。一般に新し
である。南部は二輪車を中心にしているが一部に安物
い機械設備を導入し CAD/CAM を使用してはいるが
十分に活用されていない。加工データーの記録はなく、
必要か更に調査が必要である。
金型精度、面祖度の測定もできない。材料知識はソ連
の時代で材質の使い分けができない。などが中小のレ
⑧ 粉末冶金
ベルでありもちろん順送金型や精密金型はまだその段
今回の調査では不明であった。
階には至っていない。
1.2 項目別評価結果
⑥ プラスチック金型
さらにこの調査結果を、類似業種である鋳造・ダイ
ベトナムには日用雑貨品等の射出成型企業が多く、
カスト・鍛造のグループ(ローカル(台湾系、韓国系
その金型製作も盛んである。南部にある日系企業が
含む)8 社、日系 2 社)と、プレス・金型ほか(ローカ
トップでそれを日系 3 社と民営 3 社が追う形でベトナ
ル 9 社、日系 6 社)のグループに分けて、項目別に検
ムの工業としては最もレベルが高い分野と見られ、二
討をした。
輪・家電の部品では技術的に問題はない。クラスⅢ−
表 2 はローカル企業と日系企業の対比ができるよう
Ⅳのレベルである。高い技術を要する分野では日系企
にして示したもので、その細目は各業種により異なる
業での経験を持つ技術者が経営者となって日系企業向
のでそれぞれの実情に合わせて設定している。
けの金型も製造している。それらの企業では CAD/
この評価表の集計はその業界における各企業の技術
CAM/CAE の活用や新鋭工作機械の導入にも積極的
レベルとそのばらつきを示すもので、例えば鋳造グ
であり日本的管理も進んでいる。日系企業は品質レベ
ループでは基盤・専門技術・設備・管理ともにクラス
ルの高いものは輸入するか、または南部の一部の金型
Ⅰが中心で日系と著しい違いがあるのがわかる。全体
メーカーより調達している。
の評価点も 119 と 88 と大きく離れ現地日系企業との対
比では 10 ∼ 20 年の遅れがあり、機械産業では技術レ
⑦ 熱処理
ベルが著しく違っていることがわかる。現地には必要
一般機械部品はそれほどの需要がなく、日系企業は
な需要が少なく、日系素形材企業は日本向けの生産を
部品輸入か内製で済ましているが、金型の表面硬化は
中心にしている。
難しく充実の要望が多い。調査事例が少ないが訪問し
特に目に付くのは基盤についての評価が日系・ロー
た企業は浸炭焼き入れのレベルでクラスⅡである。今
カルいずれもⅠ(1970 年代以前)であることである。
後の需要産業の動向からどのくらいのレベルと内容が
現地では産業基盤の整備がこれらの技術開発にとって
表 2 ベトナム素形材企業の評価表のまとめ(グループ別)
ベトナム
級別
基盤 大学・学会
業界
関連産業
人材教育
専門 鋳造方案
溶解技術
技術 造型技術
不良率
設備 生産方式
寸法精度
生産性
鋳・.ダ・鍛
プレス・金型
ローカル
日 系
ローカル
日 系
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅴ
管理 目で見る管理
改善活動
TQM
ISO/TS
情報 生産管理
I T
CAE
開発 開発
環境 公害
省エネ・資源
製品
QCDDM
45
ベト
ベトナム プレス・金型
ナム 鋳・ダ・ 鍛
ベト ナム 鋳・ダ・ 鍛
ローカル
基盤
1.00
製品
環境
0.80
製品
製品
専門技術
0.80
0.80
0.60
0.60
0.60
0.40
0.40
0.40
0.20
0.20
0.20
設備
開発
管理
基準
専門技術
専門技術
0.00
0.00
環境
環境
開発
開発
設備
設備
管理
管理
情報
情報
情報
図 3 鋳造グループの各項目の特性
日系
1.00
1.00
基準
0.00
1. 00=180 点満点
ローカル
基盤
基盤
日系
1. 00=180点満点
図 4 プレス・金型グループの各項目の特性
大きな課題となっていることがうかがわれる。
③ 設備
全体にローカルメーカーはⅡ、またはⅢの評価を受
設備関係も専門技術同様時代に遅れており、特に鋳
けている企業が中心であり、日系メーカーはⅢ以上の
造関係では日系との格差が大きく目立っていた。プレ
評価を受けているところがほとんどである。ISO 取得
ス・金型グループは一部では最新設備の企業もあるが、
に関する評価の高さはその意欲の強さを示しているが
やっと NC 段階に取り組んでいる企業も多かった。専
その基本である管理の状況が低いのは奇妙である。
門技術・設備とも基準レベルの半分程度である。
上の図でわかるように専門技術・設備・管理におい
ては日本企業との格差が大きく、したがって製品もレ
④ 管理
ベルが高い機能部品は扱っていない。また環境に対す
日本の管理は 1980 年代には現場指示が書類指示に
る認識も浅いが、産業基盤の低さは想像以上で特に日
なり、QC から TQM などの管理活動が盛んになり、
系企業の不満の多いことがわかる。
現場が一変した。ここでは QC 7 つ道具をまだ使いこ
なす段階でなく自動車や家電の量産管理から見ると全
① 基盤
くの初期段階で所謂管理とはいえない状況が多い。多
調査項目の中では最もレベルが低く産業発展の基本
くの日本の指導が行はれたと思うが成果は今一であ
がまだできていない状況がよくわかる。各業種とも大
る。メンバーの一人がベトナムの中小企業指導で日本
学、研究機関が少なく、業界団体もなく、関連産業も
能率協会の手法を参考に図 5 のように報告している
未発達で、人材教育も行われておらず、進出の各企業
が、管理国項目に対する企業の考えかたがよくわかる。
は日本に頼らざるを得ず、事業展開に非常に苦労して
生産・品質・資材に対しては進んでいるが、原価・安
いる。
全・人材教育には手が回らず生産性が低い。特に安全
産業人材教育の充実とともに産業基盤全体の早い発
管理の遅れは問題である。
展が望まれている。
① 生産計画・クレーム情報・インターネット活用
は優先的に行われている
② 専門技術
46
② 次いで初歩的な生産管理(QC 工程表)資材管理、
鋳造の専門技術は非常に遅れており、鋳造は日本の
5 S 取あげ、計測器、治工具などが行われている。
1970 年代、プレス・金型関係は金型の手直し回数が
③ QC 7 つ道具・目標管理・原価計算・多機能工
10 回以上で技術蓄積がなく 1980 年代前半の頃に似て
養成・改善、小集団活動・自動化・CAD、CAM
いる。新技術に対する関心は大きいが、それに対応す
活用・部品標準化・コスト情報などは遅れている。
る製品環境がなく、資本も不足で自己開発もできず、
などが報告されており、管理レベルは初期段階である。
人材教育も進んでいない。近代化には相当の努力が
この中で多くの企業が ISO 9000 を取得しているのは
必要である。今後の発展には事業環境の開発が必須
奇妙に感じられる。ISO 取得で得られた知識・経験を
である。
実際の工場管理に活かしたらどうかと感じる。
⑦ 製品
製品は日用品から一般機械・家
工場管理
45
35
25
15
5
‑5
技術革新
情報管理
ネットワーク管理
生産性
人的活性化
品質管理
15
13
11
9
7
5
3
1
‑1
原価管理
生産管理
人材育成
標準化
環境・安全
設備管理
職場活性化
資材・物流
生産間接支援
電部品が主体で僅かに二輪関係部
品が高度部品として扱われていた。
日系企業とローカル企業の部品レ
ベルの差は大きく日系企業が部品
を輸入している現状が頷けた。
このように各要素について技術
水準を検討したが、ローカル企業
は全体として大変レベルの遅れが
目だったが、一部には韓国系や台
湾系などの熱心に技術展開してい
る企業も見られ、調査企業が限ら
れているのでこの見解は調査の範
初期品質管理
コスト情報管理
QC工程表
5
クレーム情報管理
QC7つ道具
図面管理
目標原価
4
CAD・CAM.CAEの活用
VA/VE
インターネット活用
バーコードの活用(POP)
標準時間の活用
3
囲内のものですべてではないと考
えている。
原価計算・原価把握
生産管理システム
2
生産日程計画
能率管理
1
差し立て計画
自動化・省力化
0
作業訓練・教育システム
部品の標準化・共通化
フレキシブル組織
計測機器の校正
多能工化
作業標準書
治工具管理
職場安全基準
職場環境改善
設備保全管理
環境マネージメント
工場レイアウト
5Sの活用
物流管理
改善提案活動
在庫管理
小集団活動
資材管理
2.まとめ
2.1 タイ・ベトナム両国の技
術水準
今回の両国の調査の評価値をま
とめると表 3 のようになり、国と
業種により開きが大きい。
図 6、図 7 に両国のローカル企
業の各業種の技術レベル範囲を日
本と対比して示した。
これでわかるようにタイ・ベト
ナムとは技術レベルとその範囲に
大きな違いがある。
図 5 各管理項目の実施状況(JMIC 浜野昌弘氏提供)
タイの市場は四輪車と HDD な
どの電機部品が主体であり、ベト
ナムでは四輪が全くなく、二輪が
IT も導入準備の段階でまだ活用しているとは言え
ノックダウンから国内調達へ展開した段階であり、機
ない。
械産業の発達が遅れ日系企業は現地供給よりは日本向
けの仕事が多い。
⑤ 開発
タイはご承知のように自動車が発展し家電も旺盛
当然であるが開発段階ではなく図面関係では図面な
である。量産品の製造が盛んである。しかし自動車の
しの企業もあり、全部が客先支給であり、提案型のロー
鋳造部品は日系系列か輸入かでローカルは対応して
カル企業はなかった。日系企業も親企業からの支給図
いない。したがって鋳造・鍛造は近代化が遅れている
面が主体であった。
が、単品ものにはローカルに特殊性があり期待する点
が多い。
⑥ 環境
ダイカストは発展が早くローカルの中堅以上では
環境については論議する段階ではなく、公害発生企
自動車業界の要望にこたえられるようになってきた。
業といえる企業もあり少なくとも作業環境の改善に取
プレス加工はローカルの大企業が活発に活動して最
り組んでいただきたい企業が多かった。現地日系企業
新技術を取り入れてレベルが高いのが目立っている。
との差は大きい。
プラスチック業界では加工に走り専業金型メーカー
47
ベトナム ローカル 技術水準範囲
タイ ローカル 技術水準範囲
鋳造
日本
タイ
180
鋳造
180
150
150
120
熱処理
日本
ベトナム
120
プラスチック
金型
ダイカスト
90
60
90
60
30
30
0
0
プラスチック
金型
プレス金型
鍛造
ダイカスト
鍛造
プレス
プレス
図 6 タイ ローカル企業技術水準評価範囲
図 7 ベトナム ローカル企業技術水準範囲
表 3 各業界の評価値 日系・タイ・ベトナム
日系 29
タイ 15
ベトナム 17
最高
最低
平均
最高
最低
平均
最高
鋳造
157
91
130
111
53
86
ダイカスト
146
129
140
125
123
鍛造
128
―
128
62
144
107
121
プラスチック金型
155
119
熱処理
138
粉末冶金
機械加工
プレス
プレス金型
最低
平均
71
55
65
124
109
68
82
―
62
97
67
82
144
112
130
108
79
90
78
71
75
131
101
96
99
119
64
96
―
138
122
―
121
64
―
64
152
110
131
―
―
―
―
―
―
109
―
109
132
124
126
―
―
―
労働力は優秀で安価でありワー
カー平均賃金 タイの 1/3
電力は問題があり、月数回の瞬間
停電があり、自家発電は必需設備
である
交通インフラは問題で、ハノイ、
ホ ー チ ミ ン 間 1,700 Km の 間 は 高
速道路はなく鉄道は単線、輸送に
2 日間かかり、路面状況も良好と
はいえない
ビズネス関する法規制はタイ・マ
レーシアとは格差があり、投資家
※ 満点=180 点
の保護と納税はアジアでは低位で
ある
が減り金型輸入が増え、技術が停滞している。この
ようにタイの一部のローカルには見るべきものがある
など多くの問題があり、今後の解決に待つ点が多い。
が大半のローカルは日系との格差が大きく、とくに量
両国の市場の違いは基本的に量産機械産業のあるなし
産小物では企業規模、技術力ともに確然とした格差が
によっており、機械産業の発達の違いが素形材市場の
ある。
違いとなり、素形材産業のレベルの差になっている。
ベトナムでは家電大手でも主要部品は輸入してロー
特にベトナムの産業基盤が低いことは問題で機械工
カルには依存していない。機械工業は家電の一般品と
業全般の活性化と、そのためにも産業人材育成を取り
日用品が主体であり、ユーザーの要求レベルが低いの
上げるべきと考える。専門技術でも OJT による初歩教
で全般的に技術力が伸びない。量産技術とはほど遠い。
育からはじめて次第に高度化する計画が必要と考えて
各業種に問題が見られるが特に鋳造・鍛造とプレス金
いる。
型の技術力が弱い。しかしこの状況の中でプラスチッ
48
ク金型は日用品などの軽工業の発展により南部を中心
2.2 両国の技術力の特長
に発達している。
現在の技術レベルを評価点で比較したものを図 8 に
ベトナムの投資環境を端的に見ると、
示す。
素形材ユーザーが少なく、日系素形材メーカーは少
図 8 は基準値(満点)に対し現地日系の最高評価値と
なく、日系同士の競争は少ないが、材料は殆ど輸入
それぞれのローカル企業の最高値を表示した。日本を
でコスト高であること
赤線であらはしタイを青線、ベトナムを緑線で示した。
表 4 ローカル素形材企業の技術力
ベトナム
素形材 技術水準 比較
日本
鋳造
120
熱処理
製品分野
家電・日用品・2 輪
自動車・家電
ベトナム
鋳造 量産
なし
四輪なし
基準
単品
30 年遅れ
一部に期待
タイ
180
ダイカスト
ダイカスト
60
鍛造
0
プラスチック
金型
鍛造
プレス加工
プレス金型
プラスチック金型
プレス金型
タイ
プレス
図 8 各国の素形材技術比較
一部 2 輪
四輪 日本同等
一般は 30 年遅れ
小企業は遅れ
二輪開始
四輪は未
レベル低
冷鍛に期待
二輪・家電・日用品
大手量産日本並み
上級品未
加工のみから脱皮
上級品未
高精度・大型未
日用品向け発達
専業減少・技術停滞
南部レベル高
熱処理
需要少
発展中・一般品
粉末冶金
不明(なし?)
機能部品未
これでわかるようにローカル企業の実力はそれぞれ
今後は自動車の動向が鍵であるが他の機械分野もさ
特長があり、タイとベトナムで大差がある。
ることながら、先進技術を中心に環境・エネルギー関
タイのプレス加工やベトナムのプラスチック金型の
連市場への展開が期待されている。
分野は注目すべき分野であり、タイのダイカスト業界
一方ベトナムの素形材業界は鋳造は量産もなく一般
は今後の発展が注目される。
は 20 年以上の遅れであり、鍛造・ダイカストも遅れて
これらをまとめると表 4 のとおりである。
いる。プレス加工も鋳鍛ほどではないが遅れている。
これに対し樹脂金型は素形材業界の中では最も先行し
2.3 素形材企業の進出ニーズ
ている。熱処理、粉末冶金は今後に期待する分野である。
以上の状況から現地の進出ニーズをまとめると、素
ベトナムはユーザー産業の発展がキーであるが、産
形材の第一ユーザーである自動車産業の今後が鍵であ
業基盤の充実が急務である。産業人材の教育育成が必
ろう。タイは日系メーカーがアジア・アフリカ向けの
須で、現地企業の育成を計るべきと考えている。現状
生産基地とし、日産のようにある車種をまとめて移管
では日系素形材企業の進出は親企業の流れか、日本向
する動きもあり今後の生産はあまり悲観的ではない。
け加工貿易を目的としたものに可能性が高い。
ベトナムの国民所得は二輪の段階で四輪車の生産は急
アジアでは中国の実力が最も気になる。筆者の資料
には増えない。一般的には国民所得の増加に比例して
ではローカルの最高は日本を超すものもあり、最低は
自転車―二輪車―建設機械―農業機械―四輪車といわ
ランク⒈、ランクⅡも多くあり非常に幅がある。手持
れている。その点からしても今後農業機械が注目され
ちデーターから中国も加えて検討したかったが、中国
るし、省エネ機械として風力発電機・発電用ヂーゼル
は地域による特性が強く国を代表する評価がしにくい
エンジンが注目されている。
ので差し控えた。機会を見て地域別にその特長を評価
タイの鋳造業界は自動車用の量産鋳鉄の能力はある
検討してみたい。またインドについてはこのような情
が、金型素材は能力不足と見られ、ローカルの非量産
報が全く少ないので早い機会に調査したい。
鋳鉄企業は基盤があるのでその活用は考えたい。鍛造
この報告は経済産業省の 2008 年度事業の アジアサ
は自動車用では日系の能力が十分あり、ダイカストは
ポーティングインダストリー技術水準分析調査 の報
今後伸びが期待できローカルの発展が想定される。プ
告からまとめたものであり、調査を担当した熟年もの
レスはローカル大手が発展し、さらに製品への展開を
づくり国際協力センター 前田英三、浜野昌弘、竹田
期待されている。金型は大型・順送・精密は不足であ
貞雄、谷岡慶一、知地正紘、みずほ情報総研 大内邦彦、
り、樹脂用金型はローカル企業の発展に期待している。
各氏の協力によるものである。
熱処理は特殊熱処理への期待がある。
なお、調査報告書を参照されたい方は素形材セン
ターへお問い合わせください。
49
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