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社会保障費抑制の問題点と日本医師会の主張 2007年6月13日 社団

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社会保障費抑制の問題点と日本医師会の主張 2007年6月13日 社団
社会保障費抑制の問題点と日本医師会の主張
-財政制度等審議会「平成20年度予算編成の基本的考え方について」に対応して-
2007年6月13日
社団法人 日本医師会
1.基本的な考え方の違い
社会保障にかかわる財政審建議(2007年6月6日)の主張(12頁)
・将来の国民負担の上昇を極力抑えていくために、医療・介護等のサービスコス
トを抑制
・公的分野が関わるべき内容・範囲を、個人で対応することが困難なものなど真
に必要なものに重点化
・高齢者を一律に弱者と捉えるのではなく、年齢を問わず負担能力に応じて公
平に負担をしていく仕組みに見直し
日本医師会の主張
「骨太の方針2006」では、社会保障費について過去5年間の改革(国▲1.1兆円
(国・地方合わせて▲1.6兆円に相当)の伸びの抑制)を継続するとされた。
現在、すでに決定している医療制度改革だけでも、2011年度単年度で国・地方
▲1.0兆円、今後5年間(2007年度~2011年度)では▲約4兆円の削減が見込まれ
る。社会保障、特に医療は行き過ぎた改革から引き返すべきである。
((社)日本医師会「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」2007年6月)
高齢者は、疾病の発症率、受療率、医療費(特に入院)が急速に高まり、保険原
理は機能しにくい。したがって保障原理で運営し、公費負担を中心にまかなうべきで
ある。((社)日本医師会「グランドデザイン2007-国民が安心できる最善の医療を目指して-」(2007年3月)から要約)
社団法人 日本医師会
1
2.データについての認識の違い
(1)日本の医療費
財政審建議は、日本の医療が高コストであるという前提に立っているが、日本
はOECD加盟国中にあって、総医療費は平均以下の水準を脱することができ
ていない。
対GDP比総医療費 (2003年)
1アメリカ
1人当たり総医療費 (2003年)
15.2
2スイス
5,711
1アメリカ
11.5
4,611
2ルクセンブルク
3ドイツ
10.8
3スイス
3,847
4ギリシャ
10.5
4ノルウェー
3,769
4アイスランド
10.5
5アイスランド
3,159
6フランス
10.4
6フランス
3,048
平均 8.8%
17イタリア
2,314
18日本
2,249
8.0
19ギリシャ
2,141
20スペイン
7.9
20フィンランド
2,104
21イギリス
7.8
21スペイン
17ハンガリー
8.3
18日本
8.0
18ニュージーランド
30か国中18位
5.9
29メキシコ
608
30韓国
5.5
30トルコ
512
5.0
10.0 15.0 20.0
対GDP比総医療費(%)
社団法人 日本医師会
30か国中18位
1,952
29スロバキア
0.0
平均
2,427米ドル
0
2,000
4,000
6,000
1人当たり総医療費(米ドル)
2
(2)諸外国の自己負担
「日本では、高齢者の一部負担を若者に比べ軽減」「フランスやドイツでは、年齢
に関わりなく同一の自己負担」(財政審建議資料Ⅱ-2)と示し、高齢者の負担増や保険
免責制を図ろうといているが、諸外国の患者負担割合はそもそも低い。
財政審資料
イギリス
ドイツ
フランス
実 態
患者負担原則無料
(薬剤、歯科を中心に全体の2~4%)
(記載なし)
ドイツでは、年齢に関わりなく、同一 従来、外来診察料の自己負担なし。
の自己負担。
2004年1月から、外来診察料に対し、四半
期ごとに10ユーロの定額払いを導入。
外来医療費について、3割負担に
加えて、診療1回当たり1ユーロを
負担。
薬剤(外来)の内容によって負担割
合を変更。
償還払いが基本で、外来償還率(償還払い
制)は70%(3割負担)。ただし、多くの場合、
共済組合や相互補助組合等によりカバーさ
れる。
2005年1月から診療ごとに1ユーロを自己
負担。
*資料:厚生労働省「2005~2006年海外情勢報告」
日医総研「イギリスの医療制度(NHS)改革-サッチャー政権からブレア政権および現在-」2007年1月
日医総研「フランスにおける医療保険負担」2005年12月
**2007年6月12日時点で1ユーロ162~163円
社団法人 日本医師会
3
(3)先発医薬品と後発医薬品の差を自己負担に
財政審
-後発品が存在する先発品について、公的医療保険給付は後発
医薬品の薬価の水準までとし、後発品との差額は自己負担とす
る仕組みの導入(財政審建議52頁)
-フランスでは、一部の医薬品(外来)の償還額はジェネリック薬
を基に設定され、それを上回る部分については患者負担(2004
年~)(財政審建議53頁)
実態
「フランスでは、新薬とジェネリック薬の価格差は20%前後であるが、
この価格差は他国のそれに比べて比較的少ない。」
「世界の医薬品産業」(吉森賢編、2007年)より
社団法人 日本医師会
4
3.医療費抑制策等の問題点
(1)後発医薬品①
後発品を使用しないことで、国民の負担が1.3兆円重くなっている(財政審建議15頁
要約)。
財政審の前提
「平成18年度診療報酬改定結果検証に係る調査
後発医薬品使用状況調査」(2007年4月中医協資料)
取り扱い処
方せん枚数
金額シェア
先発品
シェア
後発品なし
49%
①全ての取り扱い処方せん枚数
969,365 100.0%
後発品あり
36%
②「後発医薬品への変更可」欄
に処方医の署名等がある処方せ
ん枚数(②÷①)
165,402
17.1%
③実際に後発医薬品に変更した
処方せん枚数(③÷①)
9,452
1.0%
後発品
6%
その他の品目
9%
*「薬価調査」(公表されていない)から厚生労働省が推計したもの
現場の実態
すべて振り返られるという
大胆な仮定
社団法人 日本医師会
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(1)後発医薬品②
医療現場での後発品に対する不安は大きい。安全性と品質(効果、副作用、
適応症、データ)、安定供給の確保が先決である。
後発医薬品に対する臨床医師の信頼度
問題あり
品質に関する問題
効果に関する問題
副作用に関する問題
安定供給に関する問題
医薬品情報提供に関する問題
0.0%
薬局における後発医薬品の採用基準
問題なし
安定供給
適応症
63.5%
入手、納品に要する時間
61.1%
46.2%
53.8%
68.8%
44.8%
31.2%
55.2%
68.5%
31.5%
81.9%
50.0%
取引医薬品卸での取扱の有無
溶出性以外の科学的データの
揃っている医薬品
小包装品の有無
18.1%
0.0%
57.1%
54.8%
50.8%
50.0%
100.0%
100.0%
*(社)日本医師会「ジェネリック医薬品に関わる緊急調査」より
調査の概要
1.調査期間:2006年5月26日~7月31日
2.対象
:臨床医師
3.調査方法:日本医師会ホームページによる調査
4.回答者 :577人
76.2%
*(社)日本薬剤師会「平成18年度診療報酬改定に伴う後発医薬
品の使用状況等に関するアンケート調査(速報値)」より
調査の概要
1.調査期間:2006年7月14日~8月6日
2.対象
:日本薬剤師会の委員が属する保険薬局等
3.調査方法:日薬ホームページによる調査
4.回答者 :126薬局
※「後発医薬品への変更可」等の処方せん18.6%
実際に後発品に変更した医薬品1.8%(2006年5月)
社団法人 日本医師会
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(2)保険免責制
「一定金額までの保険免責制の導入」(財政審建議52頁)
日本医師会の見解:
格差を助長し、若年層の公的保険離れ(保険料未払い)にもつながる
一度導入されると限度額は
なし崩し的に上がる
(自己負担の歴史を見れば明らか)
一般
1人1日当たり入
院外医療費(円)
①免責(円)
老人
6,570
7,266
1,000
1,000
保険のきかない医療が出てくる
②一部負担(円)
1,671
627
2,671
1,627
受診抑制(格差助長)
自己負担計①+②
医療費に占める自
己負担割合(割)
4.1
2.2
*厚生労働省「社会医療診療行為別調査-平成17年
6月審査分-」から作成
重症化による医療費の高騰
社団法人 日本医師会
7
(3)開業医の役割
「開業医が期待されている役割を担っているか再評価する」(財政審建議16頁)
日本医師会の見解:
開業医(医師会員)は、診療時間外にも、それぞれ分担して地域の保健・医
療・福祉活動を担っている。開業医の適正な評価のため、財政中立を脱却
した新たな財源が求められる。
-救急対策(急患センター出務、休日診療、夜間診療)、電話相談
-学校医、産業医、警察医
-予防接種、乳幼児検診、がん・成人病検診、健康相談
-感染症対策、安全・災害対策委員
-保健・福祉計画等の策定委員
-地域の行事における救護所等への出務
-介護保険対応(主治医意見書、介護保険認定審査会、ケアマネジメ
ント評価委員会 等)
-公的医療保険維持のための保険診療に関する研修会等
*(社)日本医師会「「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」(2007年6月7日)より
社団法人 日本医師会
8
(4)医療従事者の役割分担の見直し
「病院における医師、看護師などの医療従事者等の役割分担の見直し等
も行う」(財政審建議16頁)
日本医師会の見解:
医師や看護師が行う事務的作業の軽減には異論はない。
しかし、それぞれの身分法で規定する業務範囲の見直しは、責任の所
在も含めて慎重に検討すべきである。
また、医療の質・安全の確保のためにも、医師の指示の下で役割分担
を行うことを徹底すべきである。
*(社)日本医師会「「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」(2007年6月7日)より
社団法人 日本医師会
9
(5)医療のIT化-特にレセプトオンライン化に関して-
「現在、レセプト・カルテの電子化等医療のIT化が進められているところで
あるが、(中略)医療の標準化等に向けたデータ整備などに結びつけてい
く(後略)」(財政審建議15-16頁)
強制的なレセプトのオンライン化は、医療の個別性や良質な医療の提供を
損なうおそれがある。
-レセプトオンライン化による弊害
・いわゆる機械審査は、医療の平均化を生み、個々の患者特性に応じた「最善
の医療」の提供が阻害されるおそれが大きい。
・オンライン化が画一的機械審査につながってはならない。
・医学的根拠に基づく診療行為は、どのような審査体制においても容認されな
ければならない。
-オンライン化できない医療機関への対応
・全ての医療機関に義務化することは不可能であり、対応できない医療機関
への十分な配慮が必要である。
社団法人 日本医師会
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4.今後の歳出改革について
財政審:「今後の国費削減についても、制度改革により確実に達成する必要
がある」(財政審13頁)
日本医師会の見解:
すでに決定している医療制度改革だけでも、2011年度単年度で国・地方
▲1.0兆円、今後5年間(2007年度~2011年度)では▲約4兆円の削減が見込
まれる。社会保障、特に医療は行き過ぎた改革から引き返すべきである。
2007年度~2011年度
累計約▲4兆円
医療制度改革効果の見通し-公費(国・地方)-
(兆円)
14.0
改革前
点線は変化率を一定として仮置。
実際には、制度の施行時期が異
なるので、一定ではない。
▲0.6兆円
13.0
12.1
12.0
11.7
▲1.0兆円
改革後
▲0.9兆円
▲0.8兆円
▲0.7兆円
14.0
13.5
13.0
13.0
12.6
12.6
12.2
11.9
11.5
11.2
11.0
2006年度
2007年度
2008年度
2009年度
2010年度
2011年度
*2006年度と2011年度は、厚生労働省「社会保障の給付と負担の見通し-平成18年5月推計-」より
*(社)日本医師会「「あるべき医療の確保に向けた緊急提言」(2007年6月7日)より
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