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商品技術解説
DocuPrint C2100
DocuPrint C2100
要
旨
DocuPrint C2100 は、新開発「縦型 4 連マイクロタ
ンデム+ベルト用紙搬送・直接転写」のカラーエンジ
ンおよび、新開発高速コントローラーを採用し、毎分
カラー17 枚の高速出力と高画質を実現した小型、軽量、
低価格の A4 プリンターである。本稿では、従来使用
していた中間転写ベルトに替わり、用紙をベルトで搬
送しながらその用紙上にダイレクトに 4 色のトナー画
像を重ね合わせてフルカラー画像を得る、本カラーエ
ンジンの特徴的な転写技術を中心に、商品の概要およ
び採用技術や機能について述べる。
Abstract
DocuPrint C2100 achieves high quality print output as
a small, lightweight, and low cost A4-size printer based on
a newly developed “four color micro-tandem engine”,
“direct transfer and transportation belt system” and a “high
performance controller”.
This engine adopts a direct transfer belt, which replaces
執筆者
須藤
福田
大江
杉山
真樹 (Masaki Suto)*
茂 (Shigeru Fukuda)**
修一 (Shuichi Oe)***
史暁 (Fumiaki Sugiyama)***
the conventional polyimide intermediate belt, and makes
a full-color toner image direct on the paper, which is
transported by the belt.
This report gives an outline of the typical technologies
and functions of the product.
*
富士ゼロックスプリンティングシステムズ 商品開発統括部
マーキングプラットフォーム開発部
(Marking Platform Development, Product Development
Unit, Fuji Xerox Printing Systems Co., Ltd.)
** 技術開発本部 機能部材開発部
(Essential Components & Materials Development,
Technology & Development, Development &
Manufacturing Group)
*** 富士ゼロックスプリンティングシステムズ 商品開発統括部
コントローラープラットフォーム開発部
(Controller Platform Development, Product Development
Unit, Fuji Xerox Printing Systems Co., Ltd.)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
99
商品技術解説
DocuPrint C2100
表 1.
1. 緒言
DocuPrint C2100 の主な製品仕様
DocuPrint C2100 main specification
DocuPrint C2100 main specification
モノクロレーザープリンターや複写機による
出力が主流であったオフィスのドキュメント環
境は、近年のパーソナルコンピューターの高性
能化やデジタルカメラの普及によるカラーコン
テンツの増加や、表計算・プレゼンテーション
ソフトのカラーグラフィック化の浸透によるカ
ラードキュメントの一般化により、フルカラー
での出力の必要性が非常に高まっている。益々
高まるカラードキュメントの出力要求に対して、
ビジネスユースに耐えうる印刷速度と画像品質、
更には小型・低価格で信頼性を兼ね備えたカ
ラーレーザープリンターが望まれている。
2. 商品概要とその特徴
DocuPrint C2100 はこのようなニーズに応え
るべく開発された、タンデム方式を採用したカ
ラーレーザープリンターである。図 1 に装置の
外観を、表 1 に主な仕様を示す。
本機は、カラー毎分 17 枚、モノクロ毎分 25
枚の最高印刷速度を有し、約 500mm 四方の卓
上スペースに設置可能な、小型かつ軽量の A4
カラーレーザープリンターである。
サイズとしては、エントリークラスの分類で
あるが、当社の上位カラーレーザー複合機でも
採用している EA-HG トナーやクイックオイル
レス定着技術をはじめとする高画質化技術の投
入により、オフィスに求められる白黒印刷から
グラフや図、デジタル写真等が混在するフルカ
方式
半導体レーザー+乾式2成分トナー電子写真
600×600dpi (半速 1200×1200dpi)
Print speed
FPOT
Warm up time
最大用紙サイズ
用紙サイズ 最小用紙サイズ
/給紙仕様 手差しトレイ
標準トレイ
オプショントレイ
両面印刷
Print-cartridge
消耗品
転写 unit
Fuser unit
給紙/消耗品アクセス
操作性
Jam除去アクセス
定格/最大消費電力
消費電力
寸 法
サイズ(W*D*H)
本体重量
重 量
生産性
Color/BW 17/25ppm
≦8.5 sec
≦30 sec
(W*D) 220×355mm
(W*D) 76×98mm
150 sheets
250 sheets
550 sheets
Option duplex
4 個 (Y/M/C/K)
1 個 (10万枚)
1 個 (10万枚)
Front
Front
600 /max.1100 (W)
400×485×473 mm
22kg
ラードキュメントまで、常に安定した高い印刷
品質を実現している。
さらに、オプションとして用意している自動
両面プリント機能ユニットや、最大 950 枚まで
拡張することのできる給紙トレイ等による高い
拡張性を有している。
また、各色のトナー・現像ユニットと感光体
を一体化したプリントカートリッジの新開発に
より、通常交換の必要な消耗品数を 4 つに抑え
るとともに、ユーザーが行なう全ての操作を、
装置正面(前方カバー面)からできるように構
成した。このため、メンテナンスの必要回数も
少なく、作業も容易に行なうことができる。
図 2.
一体型プリントカートリッジ
A front view of all-in-one print cartridge
以下、代表的な商品の特徴について詳述する。
2.1 高画質フルカラープリント
図 1.
100
DocuPrint C2100 装置外観
A front view of DocuPrint C2100
常に安定した高画質プリントを実現するため
に、当社で長年培われた高速印刷や階調画像の
再現性に優れるキャリアとトナーを組み合わせ
て使用する 2 成分現像方式を採用し、従来、複
雑で大型化しやすかった本現像方式のハードを、
当社初の小型一体化カートリッジに凝縮して実
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
商品技術解説
DocuPrint C2100
現した。
また、EA-HG トナーの採用により、画像の
粒状性・線再現性・色再現性等の大幅な高画質
化を達成している。EA トナーとは乳化凝集法
(EA 法)を用いて製造する当社主力のトナー
であるが、EA-HG トナーは、従来の EA トナー
から色材やワックスの変更、小粒子化を施すこ
とにより、更なる色再現性の拡大や、従来は難
しかった高グロス化の改善を行ないツヤと深み
のある鮮やかな発色による高画質化を実現した
ものである。
さらに、4 色のトナー画像を各色の感光体か
ら用紙上に直接転写して順次重ねるダイレクト
転写方式の採用により、画像トナーを転写する
ときに発生する飛び散りや、かすれ等の画質劣
化を最小限に抑えている。
2.2 高速フルカラープリント
本機は、4 連マイクロタンデム技術の採用に
より、小型軽量なカラープリンターながらフル
カラー毎分 17 枚、モノクロ毎分 25 枚の高速印
刷を実現した。
カラープリンターの高速性は、特にオフィス
等におけるビジネスユースでは非常に重要な特
性であり、インクジェット方式との差別化を含
め、レーザー方式のプリンターに最も強く求め
られる特性でもある。
また、待機時から印刷を開始可能となるまで
のウォームアップタイムや、1 枚目のプリント
が排出されるまでの所要時間(ファーストプリ
ントアウトプットタイム、以後 FPOT と略記)
も、連続印刷時の分当たり印刷枚数と並び、高
速性の指標として重要視されている。
本機のウォームアップタイムは、当社の独自
技術であるフリーベルトニップ定着技術を用い
た省エネ定着装置の採用により、30 秒以下とい
う高速復帰性能を達成している。
FPOT についても、前述した一体化カート
リッジの高さを可能な限り抑制し、各々のプリ
ントカートリッジが並ぶ間隔を 57mm まで近
接させることで、給紙トレイから定着後の排出
トレイに至る、用紙が印刷時に搬送される経路
全長を 456mm まで短縮したことにより、フル
カラー印刷時も FPOT 9 秒以下という高速出力
を実現した。
2.3 イージーメンテナンス
•
•
•
•
•
底面に備えた給紙カセットへの給紙
前面カバー内のマルチトレイへの給紙
4 色のプリントカートリッジの交換
両面印刷機能ユニットの装着・脱着
紙詰まり発生時の用紙除去 など
ユーザーが行なう日常のメンテナンスやオプ
ションの装着、消耗品の交換作業に関する操作
は、全て本機前方のフロントカバー面側から行
なえるように構成し、1 ボタンで用紙の搬送路
を全開口することにより、簡単且つ容易な取り
扱いを実現した。
また、10 万枚以上の大量印刷用途においても、
高画質プリントの維持のために交換が必要な、
転写ベルトユニットと定着ユニットの 2 つの消
耗部品を、工具無しにユーザーがワンタッチで
交換可能なユニットとしている。このため、特
別な保守ツールや、保守サービス無しに、高い
耐久性と信頼性を維持可能である。
2.4 軽量・省スペース
図 3.
DocuPrint C2100 概要断面
DocuPrint C2100 Cross section
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
オフィスで求められる高い印刷速度に対応可
能なタンデム方式であるが、4 色のプリント
カートリッジを直列に並べる必要性から、装置
本体が大型化しやすい欠点も併せ持っている。
本機では、設置に必要な床面積の最小化に
フォーカスし、4 色のプリントカートリッジを
縦方向に積み上げて並べる縦型タンデム構成を
採用した。これにより、底面の占有面積は幅
400mm×奥行き 485mm に抑えられ、カラー
レーザータンデムプリンターとしては非常にコ
ンパクトなサイズを実現した。また、高さにつ
101
商品技術解説
DocuPrint C2100
いても前述したプリントカートリッジの薄型化
の工夫によって、480m 以下に抑制している。
本体サイズの小型化は、装置重量の軽量化に
も貢献しており、プリントカートリッジをはじ
めとする主要な部品を全て 1 体で支える樹脂製
の軽量モノコックフレームの採用と相まって、
22kg という、同一印刷速度クラスのプリンター
では最軽量の本体重量を実現している。
3. 商品性を支える直接転写技術
本機構成においては、印刷される転写用紙は
最下部にある給紙トレイから、垂直に張架され
た直接転写ベルト(Direct Transfer Belt、以下
DTB と略記)へ送り込まれ、DTB 表面に静電
気力で密着しながら上方へ向けて搬送される。
プリントカートリッジは下方よりイエロー、マ
ゼンタ、シアン、ブラックの順に配列されてお
り、搬送されている転写用紙上に直接各色のト
ナー画像を順次重ねて、フルカラー画像の印刷
を行なう。用紙を搬送し、4 色の画像をまとめ
て転写し、定着装置へ送り込む機能を担う転写
ユニットは、本機のキーとなるユニットである。
ゴムロールを備えたシンプルな薄型構成をとっ
ている。
ベルトを張架する 2 本の金属ロールのうち、
上方へ配置しているロールを駆動しベルトを回
転する。下方へ配置したロールは、ベルトの動
きに応じて負荷なく回転するように両軸端部を
ベアリングにより保持し、そのベアリングを介
してバネ荷重をかけることでベルトへ張力を与
え、4 色のプリントカートリッジに対向するベ
ルト面を均一に平面化している。
用紙直接転写方式ではあるが、ベルト表面上
に、濃度補正用およびカラーレジ調整用のト
ナー画像を作成するため、クリーニング部材と
トナー回収部が必要であり、前述のベルト張架
ユニットと回収ボックスユニットを一体化して
DTB 転写ユニットを構成している。このため、
廃棄トナーの回収ボックスを別に備える必要も
なく、定期的に本機本体から着脱可能な DTB
転写ユニットのみを交換するだけの簡素なメン
テナンスを実現した。
3.2 転写搬送ベルト(DTB)
従来のプリンターではゴム材料をベースとし
た転写搬送ベルトを用いていたが、耐久性が低
く目標ライフを達成することが困難であった。
また、カラープリンターの中間転写ベルトに
用いられているポリイミドベルトは高耐久かつ
高精度と優れたベルトではあるが、材料単価が
高く複雑な製造工法のためコストが高いという
問題があった。そこで、低コストかつ生産性に
優れた新規ポリイミド系材料を開発し、本転写
搬送ベルトに採用した。
3.3 カラーレジ制御技術
図 4.
DTB 転写ユニット
A front view of DTB transfer unit
3.1 DTB 転写ユニット構成
φ 18mm の 2 本 の 金 属 ロ ー ル に 周 長 約
500mm のエンドレスベルトを張架、ベルト内
側に各色トナー転写用の半導電弾性ゴム製の転
写ロールを 4 本内包するとともに、用紙が挿入
してくる下側の張架用金属ロール部位に、ベル
トと用紙の密着性を上げるための半導電性弾性
102
カラープリンターで高画質を達成するために
は、Y/M/C/K の 4 色を、色ずれなく重ね合わせ
るカラーレジ技術が非常に重要である。
特に位置の異なる個別のプリントエンジンを
用いるタンデム方式では、高精度なカラーレジ
を達成するために、4 色のプリントエンジンと
レーザー書き込み装置の相対位置について、高
い寸法精度が必要である。また、各プリントエ
ンジンへ送り込まれる用紙の速度についても、
変動がそのまま色ズレとなってしまうので、ベ
ルトの回転速度や、用紙のベルトへの密着度合
い等の安定性を高め、変動を抑える必要がある。
各色の画像を高精度に位置合わせするため、
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
商品技術解説
DocuPrint C2100
高い寸法精度が得られ、大量生産時も画一に製
造が可能な樹脂製の軽量モノコックフレームを
採用した。4 本のレーザービームを各色の感光
体に向けて走査する書き込み装置、4 色のプリ
ントカートリッジおよび、DTB 転写ユニットは、
全てこのモノコックフレームにより位置決めさ
れるので、バラツキ無く、高い相対位置精度を
実現することができる。
また、各部材の駆動速度の影響についても、
色ズレの観点から、
① 各色の感光体とベルトの相対スピード差
② 給紙装置や定着ユニットとの間で用紙を受
け渡す際の用紙スピード差
③ ベルト移動速度の変動
を極小化し、変動を抑える必要がある。
本機では、ベルト駆動ロール表面のスリップ
防止処理や各ユニット駆動伝達機構の最適同期
化、パーツレベルの高精度化によって、特別な
速度センサーや速度調整機構無しに、高い安定
性を確保した。
3.4 ベルト蛇行制御技術
蛇行(ウォーク)とは、ベルトを用いる機構
では常につきまとう、回転を繰り返すうちに、
ベルトが用紙の幅方向(主走査方向)に次第に
移動してしまう問題である。主走査方向の色ズ
レの原因となるばかりでなく、ベルトが規定の
位置から外れてしまったり、ベルトが破損する
場合もあるため、当社上位機種では、ベルト端
面の数μm の挙動を検出して蛇行方向を能動的
に修正する技術を投入している。
本機においては、ベルトの片側端部内面に設
けたゴム製のリブとベルト張架用ロール側でガ
イドするプーリーという最少構成を採りながら、
① 張架ロールの傾き量制御による蛇行方向の
安定化と蛇行量の低減
② リブがプーリーから受ける蛇行規制力に対
する、リブ弾性とプーリー圧接面の設計最適
化による応力集中の緩和
により、リブに作用する規制力を低減しながら
ベルトの蛇行を抑え、小型化・低コスト化を実
現した。
3.5 転写バイアス制御技術
DTB を用いた直接転写方式では、感光ドラム
から転写用紙上に直接転写を行なうため、中間
転写方式に比べて、用紙の影響を非常に受けや
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
すい。用紙の種類(厚さや抵抗値等)や周囲の
温湿度の状態差などにより、大きく転写性は左
右されてしまう。また、4 色のトナー画像が順
次重ね合わされるため、手前の色のトナー画像
による影響も考慮せねばならず、安定した画質
を得るには、常に最適な転写バイアスの調整制
御を行なう必要がある。
本機では、各々のプリントカートリッジに対
応する転写ロールに印加するバイアス電圧の自
動調整制御を実施している。具体的には、印刷
に先立ち本機が設置されている温湿度環境や、
転写ロールの抵抗値および、使用されている用
紙の抵抗値を測定・検出し、この測定値に従っ
て 4 つの転写ロールに印加するバイアス電圧を、
都度個別に設定する。この制御の実施により、
用紙種類や使用環境によらず、常に最適な転写
画像を得ることが出来る。
また、通常オフィスで使用される一般紙の範
疇から外れる、表面が樹脂コートされた紙や
様々な台紙などの特殊紙への印刷時に、充分な
転写性が得られないケースを想定し、転写ロー
ルに印加するバイアス電圧を、ユーザーが強弱
調整可能な機能も備えた。
4. 高性能コントローラーハードウエア
技術
高速高画質での印刷を達成する為には、ホス
トコンピューターから送られた印刷データを印
刷イメージに変換するコントローラーの性能が
重要な役割を担う。本コントローラーでは高速
CPU を始め多くの機能を一体化した LSI を開
発するとともに、高速な DDR2 メモリをプリン
ターとしていち早く採用することにより、高い
処理性能、低コスト、拡張性、省エネルギー性
能を兼ね備えた。
4.1 コントローラーLSI
高性能と小型化、低コスト化を両立する為、
下記の機能を 1Chip に集積化したカラータンデ
ム SOC(システムオンチップ)を開発した。
• 高性能 RISC CPU(400MHz)
• 独自の高性能画像処理
• スケーラブルなボード構成を実現するメ
モリコントローラー(DDR2, NOR Flash
他)
103
商品技術解説
DocuPrint C2100
• USB2.0、
IEEE1284 などの各種ホストイ
ンターフェイス
• 省電力制御
図 5.
SOC と DDR2 メモリ
SOC and DDR2 Memory
標準搭載 DDR2メモリ
128MByte
IEEE1284
USB2.0
Net
拡張用DDR2 SO-DIMM 最大1GByte
最大 1Gbyte
Video出力
SOC
ROM
図 6.
コントローラーブロック図
Controller Block Diagram
4.2 DDR2 メモリ搭載技術
メインメモリとして、従来機種で使用してき
た SDRAM メモリの 4 倍のデータ転送速度であ
る DDR2 型 SDRAM を他社に先駆けて採用し
た。本メモリは、高速なだけでなく、一世代前
の DDR1 型 SDRAM に比べ、外付け部品の大
半がメモリチップ内部に取り込まれ、電力消費
が少ないという特徴を持ち、高速性・省電力性
が重要なプリンターに適したメモリである。ま
た DDR2 は現在パーソナルコンピューター用メ
インストリームメモリとして採用されており、
価格、入手性においても優れている。
DDR2 メモリは非常に小型・高速であるが、装
置搭載するにあたっては、実装設計および、タ
イミング設計が非常に難しいという課題に直面
した。
本 コ ン ト ロ ー ラ ー で は DDR2 メ モ リ を
400MHz で動作させるため、データの送受信を
非常に短い時間で行なわなければならない。そ
のため、LSI 内部の遅延、PCBA 配線の遅延や
分岐、クロストークなどによる信号の乱れ、部
104
品ばらつきなどの変動要因をすべて考慮して厳
しい動作タイミングを満足させる必要が有った。
パーソナルコンピューターでは既に DDR2 を採
用しているが、標準メモリと拡張メモリが共に
DIMM として搭載され、
大半の配線が DIMM 上
で 6 層基板により構成されている。これに比べ
本機においては、低価格を実現するため、標準
メモリは 4 層基板のメイン PCBA*上に直接実装
し、拡張メモリだけを DIMM として実装する形
態とした。このような直接実装と DIMM が混在
する実装形態は、配線が複雑となり信号品質を
確保する上での設計課題が多い。さらに、拡張
メモリに小型で入手性が良い 200PinSO-DIMM
を搭載可能とするため、DIMM の搭載有無や
DIMM 内メモリ構成の違いによる負荷の大幅な
変動にも対応できなければならなかった。
これらの課題は、従来のように LSI とメイン
PCBA*を個別に設計したのでは解決できない
ため、LSI 内部配線や構造、PCBA 配線方法を
含めたシステム全体として最適なタイミング、
構造、配線設計を検討する必要があった。
そこで、本コントローラーの開発では、LSI
の基本構想段階から、LSI 設計、PCBA*回路設
計、SI/EMC**設計、プリント配線板設計、テ
ストプログラム設計まで含めた各分野担当者で
編成したチームで検討を開始。伝送線路シミュ
レーションおよび SPICE シミュレーションを
繰り返し実施し、信号反射、クロストークや電
源グランドの揺れなどあらゆるアナログ要素を
加味して ps(10 億分の 1 秒)単位で遅延時間
を積み上げた。そして、
① 信号反射を最小とする配線分岐パタンの
採用。
② LSI チップから、メモリデバイスまでの
配線を最短化するレイアウトの採用。
③ LSI 内部と PCBA 上における遅延要素の
適正配分。
などの PCBA および LSI 内部の回路・配線工
夫を組み合わせて課題解決を図り、400MHz で
の動作を実現した。
試作コントローラーの評価においては、多く
の DIMM ベンダやメモリチップ構成に対し、温
度や電圧などの変化によっても常に安定して動
作する事を検証しなければならなかった。この
* PCBA(Printed Circuit Board Assembly プリント配線基板)
** SI/EMC 設計(信号波形品質、電磁環境適合設計)
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
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DocuPrint C2100
DDR2検討チーム
5. 結び
SI/EMC
設計者
LSI回路設計者
PCBA
回路設計者
リーダ
LSI Artwork*
AW設計者
PCBA Artwork*
AW設計者
ハードウエアテストプ
ログラム設計者
*Artwork(AWプリント回路基板のパターン原画)
図 7.
DDR2 検討チーム
DDR2 Design Term
ため、メモリバスの動作をビット単位で任意に
コントロールし信号波形が厳しくなるテストパ
ターンを作成すると共にタイミング余裕度の測
定を容易にする機能を有する専用メモリテスト
プログラムを多種整備し、動作確認を効率的に
進めることを可能にした。
以前は小型で低価格なカラーレーザープリン
ターと言えば、4 回の作像を繰り返しフルカ
ラーの画像を得る 4 サイクル方式が主流であっ
たが、ここ数年市場では 4 連タンデム方式プリ
ンターの小型・低価格な製品も増加してきてい
る。
DocuPrint C2100 はその中でも高速・高画質
と高い信頼性で市場に受け入れられるものと確
信している。
今後も、より高画質・高速化を求めながら、
更なる小型化・省エネルギー化・操作性の向上
を進め、安心・快適に使っていただける商品を
提供して、より多くのお客様に満足いただける
ように開発を進めていきたい。
以上述べた技術の採用により、本コントロー
ラーでは、高速処理の実現と共に、低コストと
高い拡張性を実現した。
4.3 省電力技術
印刷動作を行なっていないときにネットワー
クや USB などの外部インターフェイスを除く
殆どの回路を停止させ、印刷要求やネットワー
クからのステータス要求が発生した場合には瞬
時に復帰応答させる制御回路を搭載した。これ
により、利用者の利便性を保ちつつ省電力モー
ド時のコントローラー電力を大幅に低減するこ
とを可能とした。さらに、コントローラー上に
搭載した低電圧供給回路の効率を高くすること
で省電力モード時のコントローラー電力を前機
種比 25%低減し、当社小型カラーレーザー機用
コントローラーとして最小の電力を実現した。
須藤 真樹
富士ゼロックスプリンティングシステムズ 商品開発統括部 マーキ
ングプラットフォーム開発部に所属。
カラープリンター(主にマーキングエンジン)の商品設計に従事。
専門分野:ゼログラフィー技術
コントローラー
電力
福田 茂
25%低減
技術開発本部 機能部材開発部に所属。
複写機やプリンターの転写部材(主にベルト部材)の開発を担当
専門分野:コーティング技術
大江 修一
富士ゼロックスプリンティングシステムズ 商品開発統括部 コント
ローラープラットフォーム開発部に所属。
プリンターコントローラーのハードウエア開発を担当
専門分野:EMC/SI 技術
前機種
図 8.
筆者紹介
本機種
省電力モード時のコントローラー電力
Controller Power-Consumption in Sleep Mode.
富士ゼロックス テクニカルレポート No.16 2006
杉山 史暁
富士ゼロックスプリンティングシステムズ 商品開発統括部 コント
ローラープラットフォーム開発部に所属。
プリンターコントローラーのハードウエア開発を担当
専門分野:ASIC 設計技術
105
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