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結婚行動における新しい流れ
補論 1 結婚行動における新しい流れ 本章第2節では、結婚の選択に関わる状況について見た。若年層全体の非婚や晩婚化が進ん でいる中で、近年、結婚に対する意識の中に伝統的なあり方である法律婚へのこだわりが依然 として見られる面や法律婚とは別の形で「結婚」をとらえられている面など、結婚行動や意識 に変化が見られる。ここでは、そうしたいくつかの変化を見ていくこととする。 z 法律婚へのこだわり−「できちゃった婚」 (20代前半までの結婚は「できちゃった婚」が主流) 最近の出生動向を見ると、20代での出生が低下している一方で、10代での出生件数はごくわ ずかずつではあるが増加し、 出生している人全体に占める割合が微増している (付表1−補1) 。 これまで見たように全体として晩産化が進んでいる中でこうしたことが起きているのは、妊娠 が結婚に先行する、いわゆる「できちゃった婚」が増えていることによる。 「できちゃった婚」 で生まれた子ども1が嫡出第一子に占める割合の推移を見ると、1980年の12.6%から2000年に は26.3%と、20年間でほぼ2倍となっており、特に、15∼19歳では嫡出第一子のうちの8割以 上、20∼24歳では約6割が「できちゃった婚」により生まれている(第1−補1−1図) 。 第1−補1−1図 「できちゃった婚」での出産は15∼24歳で大きく増加 第一子の出生数のうち結婚期間が妊娠期間より短い出生割合 (%) 80 73.9 74.6 77.0 78.3 79.8 81.7 67.0 61.5 60 52.3 55.1 47.0 47.3 48.7 21.0 22.5 22.2 22.6 23.9 25.0 90 95 96 97 98 99 47.4 58.3 (全体平均) 15∼19歳 20∼24歳 25∼29歳 30∼34歳 35歳以上 41.5 40 31.2 20.1 20 17.3 26.3 12.6 0 1980 85 2000 (年) (備考) 1.厚生労働省「人口動態調査特殊報告」(2002年)により作成。 2.嫡出第一子の出生について、「結婚週数<妊娠週数−3週」(=「妊娠週数≧結婚週数+4週」)となる結婚期間が 妊娠期間より短い出生数が嫡出第一子の出生数(結婚期間不詳は除く)に占める割合。 1 54 厚生労働省「人口動態調査特殊報告」では、嫡出第一子の妊娠期間が結婚期間よりも短い出生について、妊娠週 数の考え方から発生する妊娠期間のずれと、婚姻の届出や同居の開始が新婚旅行などの後に行われることがある ことも考慮し、「結婚週数<妊娠週数−3週」(=「妊娠週数≧結婚週数+4週」)で出生した場合を、結婚期間 が妊娠期間より短い出生と考えることとして、この集計を行っている。 (法律婚を重視する伝統的な意識が「できちゃった婚」に反映されている) なぜこうした「できちゃった婚」が増えているのだろうか。「結婚前でも愛情があるなら性 交渉を持って構わない」とする人の割合は、できちゃった婚が多い24歳以下で8割以上となっ ている(第1−補1−2図)。このように若年層において結婚前の性交渉を許容する意識は、 既に一般化していると言える。 それでは、結婚前の性交渉による意図せざる妊娠が分かったとき、現在の若年層はどう対応 するのだろうか。「独身の時に子どもができたら結婚した方が良い」と考える人の割合は、男 性では6割程度以上、また30歳未満の女性では過半数となっている(第1−補1−3図)。こ うした意識により、子どもができても必ずしもすぐに法律婚に移行せず同棲2や「お試し婚」 を継続する海外の事例と異なり3、「できちゃった婚」という形態が結婚の多数を占めるように なってきたと考えられる。我が国では生まれてくる子どもの98%が嫡出子となっている背景に は、このような形も含めて法律婚に進んでいくこともその一つとなっていると言えよう。結婚 を選択しない人が増加している一方で、若年層において、法律婚の基盤の上で子育てをしよう とする意識から「できちゃった婚」が増加している状況は注目に値する。 第1−補1−2図 「愛情があれば結婚前に性交渉を持つことは構わない」と考える若者は既に8割を超えている (%) 100 結婚前でも愛情があるなら性交渉を持って構わないか 11.1 12.9 11.9 87.6 88.9 87.1 88.1 1997年 2002年 1997年 2002年 12.4 反対 80 60 賛成 40 20 0 18∼24歳男性 18∼24歳女性 (備考) 1.国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」により作成。 2.「次のような考え方に対して、あなたはどのようにお考えでしょうか。下のa∼iのそれぞれについて、あてはま る番号に○をつけてください。 c結婚前の男女でも愛情があるなら性交渉をもってかまわない」と尋ねた問に対 して回答した人の割合。 3.「賛成」は「まったく賛成」及び「どちらかというと賛成」、「反対」は「まったく反対」及び「どちらかといえば 反対」を回答した人の数をそれぞれ合計。 4.回答した人は、全国の18歳以上50歳未満の未婚男女であるが、ここでは18歳以上24歳未満のみを集計。1997年は 男性2,162人、女性2,244人、2002年は男性1,963人、女性1,858人(不詳は除く)。 2 3 一般的に、同居していても結婚する意思のない場合をいう。 海外の多様な結婚のあり方については、本章補論2を参照。 55 第 1 章 結 婚 ・ 出 生 行 動 の 変 化 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 補 論 1 ● 結 婚 行 動 に お け る 新 し い 流 れ 第1−補1−3図 「子どもができたら結婚した方が良い」は多数派 独身の時に子どもができたら結婚した方が良いか そう思う どちらともいえない そう思わない (1)男性 66.3 15∼19歳 30.8 57.3 20∼24歳 34.4 63.6 25∼29歳 29.6 63.1 40∼44歳 28.4 66.9 45∼49歳 0 20 6.5 4.2 34.5 64.8 35∼39歳 8.3 29.9 61.3 30∼34歳 2.9 26.0 40 60 5.6 8.5 7.1 100(%) 80 (2)女性 15∼19歳 52.6 37.9 9.5 20∼24歳 52.5 36.9 10.7 57.8 25∼29歳 44.8 30∼34歳 40∼44歳 48.4 45∼49歳 49.3 0 20 5.7 49.4 50.0 35∼39歳 6.7 35.6 8.4 41.6 43.2 8.4 11.8 39.0 40 60 80 100(%) (備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」(2005年)により作成。 2.「結婚に関する次のような考え方について、あなたはどのように思いますか。(ア)から(カ)までのそれぞれにつ いて、あてはまるものに○をお付け下さい。(○はそれぞれ1つずつ)(カ)独身の時に子どもができたら結婚した 方がよい」と尋ねた問に対して回答した人の割合。 3.「そう思う」は「全くそう思う」及び「どちらかといえばそう思う」、「そう思わない」は「どちらかといえばそう 思わない」及び 「全くそう思わない」の回答をした人の数をそれぞれ合計。 4.回答した人は、全国の15歳以上80歳未満の男女であるが、ここでは15歳以上50歳未満のみを集計。男性842人、女 性995人(無回答を除く)。 x 離婚と再婚 (女性の離婚に対する抵抗感は薄れている) 伝統的な結婚観においては、法律婚をすることは、子育てを始めとした「人生の長期プロジ ェクト」を支える基盤を作り出すものとみなされ、継続的な関係が前提とされてきた。法律婚 を重視する意識はいまだ高いと見られるが、その法律婚の関係を解消すること、すなわち離婚 の状況とその意識はどのようになっているのだろうか。 まず、離婚件数の推移を見ると、80年の14万2千件から2002年に29万件、2004年には減少し たものの27万1千件で、大きく増加している(厚生労働省「人口動態統計」 ) 。有配偶離婚率を 見ると、男女ともに年齢層が低くなるほど高い傾向にある(第1−補1−4図)。女性の30歳 未満で有配偶離婚率が目立って高くなってきており、特に19歳以下で58.4‰、20∼24歳で42.5 56 第1−補1−4図 若い年齢層ほど離婚率は高い 第 1 章 年齢層別有配偶人口に対する離婚率 (1)男性 (‰) 60 結 婚 ・ 出 生 行 動 の 変 化 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 19歳以下 20∼24歳 25∼29歳 30∼34歳 35∼39歳 40∼44歳 45∼49歳 50∼54歳 55∼59歳 60歳以上 40 20 補 論 1 ● 結 婚 行 動 に お け る 新 し い 流 れ 0 1960 70 80 90 2000 (年) (2)女性 (‰) 60 19歳以下 20∼24歳 25∼29歳 30∼34歳 35∼39歳 40∼44歳 45∼49歳 50∼54歳 55∼59歳 60歳以上 40 20 0 1960 70 80 90 2000 (年) (備考) 1.国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」(2005年)により作成。 2.19歳以下については、15∼19歳有配偶人口に対する率。 ‰と高い。 離婚に対する考え方について尋ねた調査結果を見ると、女性においては離婚を肯定する考え 方の割合が否定する考え方の割合を大きく上回っている(第1−補1−5図)。逆に、男性に おいては否定する考え方の割合が肯定する考え方の割合を上回っており、特に40歳以上におい て、男女間での考え方に大きな差が見られる。こうした結果から、離婚に対して、特に女性の 抵抗感は薄れてきていると考えられ、それが離婚の実態にも現れてきている。 なお、子どものいる夫婦4の離婚件数は、80年の約9万6千件から2003年には17万件へと増 加し、離婚件数のうちの6割を占めている(厚生労働省「人口動態統計」 ) 。さらに、その際に 妻が全部の子どもの親権を持つ場合は8割に達しており、こうしたことは母子世帯の増加にも 4 ここでは、離婚した夫婦のうち、20歳未満の未婚の子(=親権を行わなければならない子)を持つ夫婦を示す。 57 第1−補1−5図 離婚を肯定する考えに対して女性の賛同する割合は高い 離婚肯定割合から否定割合を引いた差 (%ポイント) 40 20 女性 39.9 39.5 30.3 31.1 -6.2 -6.2 31.5 24.8 0 -4.4 -14.2 男性 -18.6 -18.0 -20 20∼24歳 25∼29歳 30∼34歳 35∼39歳 40∼44歳 45∼49歳 (備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」(2005年)により作成。 2.「離婚についてお尋ねします。近年、離婚が増加してきましたが、あなたはそれについてどうお考えになりますか。 あなたの考えに一番近いものをお選びください。(○は1つ)」と尋ねた問に対して回答した人について、「問題の ある結婚生活なら早く解消した方がよい」又は「自分の生き方を大切にするようになった反映である」を「肯定」、 「家庭のきずなが希薄になったことであり望ましくない」 、 「子どもが犠牲になる可能性があり望ましくない」又は「い ったん結婚したら最後まで努力して添い遂げるべきである」を「否定」として、「その他」、「わからない」及び無 回答を除き、それぞれの割合を算出。その上で、「肯定」割合から「否定」割合を引いた差を示した。 3.選択肢はほかに、「社会における離婚への抵抗感が薄れておりやむを得ない」。 4.回答した人は、全国の15歳以上80歳未満の男女であるが、ここでは20歳以上50歳未満のみを集計。男性672人、女 性819人(「その他」、「わからない」及び無回答を除く)。 結び付いていると考えられる。母子世帯数の推移を見ると、離婚を理由とするものは93年には 50万7,600世帯(64.3%)、2003年には97万8,500世帯に増えており、母子世帯のうちの79.9%を 占めるに至っている(厚生労働省「母子世帯等調査」 ) 。 (子どもを伴った再婚が増加している) 離婚をした人が再び結婚を選択している場合、これが法律婚である場合には、再婚件数とし てその動向を見ることができる。夫婦のいずれかが再婚又は両方が再婚による婚姻件数の推移 を見ると、80年の11万7千件から2003年には17万7千件へと増加している (第1−補1−6図) 。 全体の婚姻件数に占める割合の推移を見ると、70年以降上昇を続け2003年には23.9%に至って おり、再婚が今や珍しくない状況となっている。先に述べたように、子どものいる離婚者は増 加しており、一方で再婚件数が増加していることを踏まえると、つまりは子どもを伴った再婚 が増加していることがうかがわれる。 こうした子連れ再婚により、 夫婦関係ばかりではなく、 血縁を前提としない親子関係あるいは 兄弟姉妹の関係もまた誕生することとなり、こうした家族関係は「ステップ・ファミリー」と 呼ばれている。ただし、 ステップ・ファミリーの生活が軌道に乗るためには、 それなりの苦労が あると言われる。例えば、これまで築いてきた生活や習慣を改め、まったく新しい家庭内の関 係を作り育んでいく必要があることや、外見上からはステップ・ファミリーであることがわか りにくいことから、 家族関係に問題が発生した場合にも周囲が気付きにくいといった面もある。 58 第1−補1−6図 結婚件数が減少する中で、 「夫婦いずれかが再婚」の割合は高まる 第 1 章 結婚件数と初婚・再婚の件数及び割合 (万件) 120 (%) 100 11.1 12.7 15.1 16.6 18.3 102.9 80 18.4 21.0 23.9 94.2 77.5 60 79.8 79.2 73.6 72.2 74.0 結 婚 ・ 出 生 行 動 の 変 化 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 100 80 60 40 20 88.9 87.3 11.5 11.9 84.9 83.4 11.7 81.7 13.2 12.2 81.6 79.0 16.8 14.5 0 1970 75 80 85 90 95 2000 夫妻とも初婚(左目盛) 夫婦いずれか又は両方が再婚(左目盛) 結婚件数(総数)(右目盛) 夫婦いずれか又は両方が再婚の件数(右目盛) 76.1 17.7 40 補 論 1 ● 結 婚 行 動 に お け る 新 し い 流 れ 20 0 2003(年) (備考) 厚生労働省「人口動態統計」により作成。 c 法律には基づかない「結婚」−同棲と事実婚 (同棲への抵抗感は低下しているが実際にはそれほど増加していない) 前項で見た「できちゃった婚」の増加から、その前過程として同棲を経験する人も多いと考 えられるが、実態はどうなっているのだろうか。 「結婚前に同棲しても良い」と考える人の割合は、15∼19歳を除き、年齢層が若いほど高く なる傾向が見られる(第1−補1−7図)。また、30代までは過半数が「同棲しても良い」に 対して「そう思う」と回答しており、40歳以上では割合は大きく下がるものの「そう思わない」 が「そう思う」を逆転するまでには至っていない。このように、先の結婚前の性交渉に対する 意識ほどではないものの、同棲への抵抗感は若い年齢層ほど小さい。 また、実際に現在同棲をしている人の割合は増加しており、同棲をしたことがある人の割合 も、男女ともに増加する傾向にある(第1−補1−8図) 。ただし、増加していると言っても、 現在同棲をしている人の割合は最も多い25∼29歳でも男女ともに3%程度にすぎず、同じ年齢 の女性の同棲の割合が、例えばスウェーデンでは43%、フランスやオランダで33%などとなっ ていることと比べると非常に低い(国際連合「世界の女性」(2001年))。意識の上で、結婚の 前に同棲することへの抵抗感は小さくなっているものの、実際にはそれほど同棲をしているわ けではなく、若年層の結婚の前過程となっているとも言えないようである。 59 第1−補1−7図 若い年齢層ほど「結婚前に同棲しても良い」と考えている傾向が強い 結婚前に同棲しても良いか そう思う (1)男性 どちらともいえない 61.5 15∼19歳 34.6 67.7 20∼24歳 25∼29歳 57.9 30∼34歳 59.2 0 7.5 11.3 29.6 8.8 40.0 16.3 45.4 29.9 45∼49歳 5.2 34.6 38.3 40∼44歳 3.8 27.1 51.2 35∼39歳 そう思わない 44.1 20 40 26.0 60 80 100(%) (2)女性 62.1 15∼19歳 33.7 71.3 20∼24歳 42.6 31.4 45∼49歳 0 14.6 33.1 43.2 40∼44歳 19.0 22.4 52.2 35∼39歳 14.2 46.7 20 11.2 23.9 58.6 30∼34歳 10.7 18.0 64.9 25∼29歳 4.2 40 21.9 60 80 100(%) (備考) 1.内閣府「国民生活選好度調査」(2005年)により作成。 2.「結婚に関する次のような考え方について、あなたはどのように思いますか。(ア)から(カ)までのそれぞれに ついて、あてはまるものに○をお付け下さい。(○はそれぞれ1つずつ)(オ)結婚前に同棲してもよい」と尋ねた 問に対して回答した人の割合。 3.「そう思う」は「全くそう思う」及び「どちらかといえばそう思う」、「そう思わない」は「どちらかといえばそう 思わない」及び 「全くそう思わない」の回答をした人の数をそれぞれ合計。 4.回答した人は、全国の15歳以上80歳未満の男女であるが、ここでは15歳以上50歳未満のみを集計。男性842人、 女性995人(無回答を除く)。 60 第1−補1−8図 同棲は20代後半で男女ともに大きく増えている 第 1 章 同棲の経験の有無 以前はあるが 現在はしていない 結 婚 ・ 出 生 行 動 の 変 化 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ (1)男性 (%) 10 2.9 現在している 8 1.3 6 1.7 1.8 4 0.8 2 0.5 0.2 0 0.7 1987 0.7 92 2.6 0.5 0.2 97 1.0 1.3 2.9 2.3 92 97 1.0 2002 1987 18∼19歳 0.7 2.1 7.5 5.5 3.2 1.8 1.9 2.9 5.6 5.4 3.6 2.7 2002 1987 20∼24歳 1.5 92 97 2002 1987 25∼29歳 92 4.2 97 5.1 補 論 1 ● 結 婚 行 動 に お け る 新 し い 流 れ 2002 (年) 30∼34歳 (2)女性 (%) 10 3.0 8 1.5 2.7 6 0.0 4 2 0 0.8 1.1 1987 0.8 0.8 1.0 1.7 0.5 92 97 18∼19歳 1.7 1.4 1.9 2002 1987 1.1 2.3 4.8 2.0 2.1 92 97 20∼24歳 4.1 2002 1987 0.7 1.0 1.4 3.2 92 1.7 7.0 4.3 97 25∼29歳 6.2 4.0 2002 1987 1.4 6.9 4.6 92 97 2002 (年) 30∼34歳 (備考) 1.国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」(2002年)により作成。 2.「あなたはこれまでに同棲の経験(特定の異性と結婚の届け出なしで一緒に生活したこと)がありますか。」と 尋ねた問に対して回答した人の割合。 3.選択肢はほかに、「ない」。 4.回答した人は、全国の18歳以上50歳未満の未婚の男女であるが、ここでは、18歳以上35歳未満のみを集計(不詳は 除く)。 (事実婚の背後には結婚制度に対する価値観の多様化がある) 一方、法律に基づく婚姻届は出さず、事実上の結婚生活を送ることを選択している人たちも 多くなっていると言われている。こうした「結婚」は「事実婚」と呼ばれ、社会的な認知が進 むにつれて一部の法律においては法律婚とほぼ同じ権利・義務がおかれるようになってきてい る。 なぜこうした事実婚を選択するカップルが増えているのだろうか。事実婚カップルに対する 調査において「婚姻届を出さないでカップルで生活するようになった理由」を尋ねたところ、 女性では「夫婦別姓を通すため」を回答した人の割合が最も多く、「戸籍制度に反対」、「性関 係はプライベートなことなので、国に届ける必要を感じない」 、 「夫は仕事、妻は家事という性 61 別役割分担から解放されやすい」が続く(第1−補1−9図)。男性においても女性と同様の 傾向が見られるが、特徴的なのは「相手の非婚の生き方の尊重」を回答した割合が高い点であ る。事実婚カップルにおいては、現状の結婚や戸籍制度などの社会制度についての価値観の多 様化を反映して事実婚を選択しているとともに、男性にはむしろパートナーである女性の意志 に配慮して事実婚を選択している場合もあることが分かる。また、同じ調査によると、家庭内 での生活費については、男女同じくらいに負担すると回答している割合が最も高いことから、 事実婚の女性には経済力があることが特徴であるとも分析されている。 こうした事実婚を選択している特に女性たちの意識の変化は、従来の世帯単位から個人単位 を重視する社会の流れへも反映されており、我が国においても次第に事実婚を婚姻に準ずるも のとする考え方が採り入れられ始めている。 第1−補1−9図 事実婚を選択する理由には結婚制度への違和感が見られる (%) 100 89.3 80 86.8 70.7 64.0 70.8 59.7 60 62.1 63.3 男性 女性 36.7 40 26.0 20 21.6 17.0 4.3 5.9 3.3 4.1 4.7 2.8 2.3 2.8 2.3 2.2 1.7 1.2 0 夫 婦 別 姓 を 通 す た め 戸 籍 制 度 に 反 対 国 に 届 け る 必 要 を 感 じ な い 性 関 係 は プ ラ イ ベ ー ト な こ と な の で 性 別 役 割 分 担 か ら 解 放 さ れ や す い 夫 は 仕 事 、 妻 は 家 事 と い う 相 手 の 非 婚 の 生 き 方 の 尊 重 関 係 を 解 消 で き る い つ で も 一 方 の 意 思 で 経 済 的 な 理 由 で き た 子 ど も の 立 場 を 考 慮 前 の パ ー ト ナ ー と の 間 に う ま く い く か ど う か 試 す 法 律 婚 を す る 前 に 結 婚 生 活 が 婚 姻 届 を 出 す と 重 婚 に な る 国 籍 の 問 題 親 が 結 婚 に 反 対 (備考) 1.善積京子「〈近代家族〉を超える」(1997年)により作成。 2.善積京子氏が行った「非婚カップル調査」において、「婚姻届を出さないでカップルで生活するようになった理由 として、それぞれの項目(A∼L)について、 『あてはまる』 『あてはまらない』のいずれかに、○をつけて下さい」 と尋ねた問に対して、「あてはまる」と回答した人の割合。 62 コラム 社会的認知が進む事実婚 注目されつつある事実婚だが、法的にはどうとらえられ、社会からはどのように受け止められ ているのであろうか。 事実婚に近いものとして内縁がある。内縁も事実婚と同様婚姻の届出をしていない共同生活で あり、内縁は事実婚に含まれるという見方もあるが、事実婚は主張として法律婚を否定し婚姻意 思がないものとして区別する場合もある。 内縁については様々な判例・学説が積み重ねられており、例えば最高裁判所の判例5によれば、 「内縁」について、婚姻の届出を欠くため法律上の婚姻とは言えないが、男女が相協力して夫婦 としての生活を営む結合であるという点においては婚姻関係と異なるものではなく、これを婚姻 に準ずる関係ということを妨げないという見解が示されている。「内縁」と「事実婚」では、そ の関係を築いている人たちの意識は異なるかもしれないが、いずれも法的には婚姻を届け出ずに 夫婦としての共同生活を営んでいるもので、「事実婚」にも「内縁」に対する見解を踏襲できると 考えられている。 さらに、様々な法律6の中で「婚姻」には「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様 の事情にある場合を含む」旨、あるいは「配偶者」について「婚姻の届出をしていないが事実上 婚姻関係と同様の事情にある者を含む」旨などの規定がされ、「事実婚」を婚姻に準ずるものと して、その権利と義務が認められている。また、通信料金や航空会社のマイレージなどの家族特 典といった民間サービスの中でも「事実婚」による家族も家族サービスなどの対象とする例も出 てきており、社会的な認知は次第に進んでいる。 もちろん、依然として法律婚をした夫婦のみに認められている権利もある。民法第739条にお いて「婚姻は、戸籍法の定めるところによりこれを届け出ることによって、その効力を生ずる。」 とされ、夫婦の同一姓、未婚者の婚姻の場合のみなし成年規定、夫婦間の契約の取消権、子が嫡 出であることの推定と嫡出子の父母と同一姓、税制上の優遇などについては、婚姻の届出によっ て生じる効力とされている。したがって、これらの事項については事実婚に対しては認められて いない。 5 6 昭和33年4月11日第二小法廷。 例えば、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」、「児童虐待の防止等に関する法律」、「介護 保険法」 、 「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」 、 「健康保険法」 、 「厚生年 金保険法」 、 「児童扶養手当法」など。 63 第 1 章 結 婚 ・ 出 生 行 動 の 変 化 ⋮ ⋮ ⋮ ⋮ 補 論 1 ● 結 婚 行 動 に お け る 新 し い 流 れ