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4.完全民営化の早期実現に向け体制整備

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4.完全民営化の早期実現に向け体制整備
第
3章
成田空港の管理・運営
業の取り扱いを推進している。
トについて幅広いコンサルティングサービスを提供し
NAAの強みは、1978年の成田空港開港以来、“Total
ている。これに加え、支援先の空港などから研修生の
Airport Management Operator”として38年 間 に わ
受け入れも実施している。
たって培ってきた空港運営ノウハウである。この強み
NAAは、海外空港支援を通じて得られるノウハウの
を ベースに、NAAおよびNAAグル ープ一 体となって、
成田空港の運営へのフィードバックによる旅客サービ
1997年の第2バンコク国際空港建設事業より、空港運
ス向上をはじめとした、成田空港の効率的な管理、運
営支援、供用準備支援、スタッフトレーニングの各分
営への寄与、国によるインフラ輸出展開の推進への貢
野において、エジプト・ベトナム・モンゴルなどへ経験
献、事業範囲の拡大による収益向上を目的として、今
豊かな空港専門家を派遣し、包括的な空港マネジメン
後も本事業を推進していく。
(表3-5、図3-6参照)
表3-5 海外空港支援業務実績(過去5年間)
業務概要
国
モンゴル
ベトナム
ベトナム
エジプト
新ウランバートル国際空港供用準備支援
(2014年6月~実施中)
ロンタイン新国際空港開発・旅客ターミナル
運営事業準備調査
(2011年2月~ 2015年12月)
ノイバイ国際空港第2旅客ターミナルビル
供用準備支援
(2011年1月~ 2014年2月)
ボルグ・エル・アラブ国際空港管理運営支援
(2009年5月~ 2013年12月)
・供用準備支援
・スタッフトレーニング
・調査
・供用準備支援
・スタッフトレーニング
・空港運営支援
・供用準備支援
・スタッフトレーニング
図3-6 Total Airport Management Operator
4 完全民営化の早期実現に向け体制整備
❶ 株式上場に向けて
126
2)NAAの株式上場および完全民営化に向けた
1)株式上場に向けたプロセス
政府の動き
NAAは、早期の株式上場および完全民営化を目指
2008年8月、NAAの完全民営化に必要な措置として、
し、2006年10月に上場準備室を設置し、社外の専門
空港インフラへの規制のあり方に関する基本的な方
アドバイザーも加え、準備を開始した。
策を検討するため、内閣官房長官および国土交通大臣
株式上場に向けたプロセスとしては、法制整備やこれ
のもとに「空港インフラへの規制のあり方に関する研
に引き続き行われる諸手続きを経て上場することになる
究会」が設置された。同年12月の最終報告書を受けて、
が、株式上場については、首都圏空港機能強化や全国
国土交通省は2009年3月、資本規制の導入を盛り込
の空港経営のあり方に関する議論を踏まえ検討される。
んだ「成田国際空港株式会社法の一部を改正する法
3. 世界の空港の一員として 4. 完全民営化の早期実現に向け体制整備
NARITA AIRPORT
2016
律案」を第171回通常国会に提出したが、同年7月、衆
債務の支払い能力に対する長期債務格付け、コマー
議院解散による審議未了により廃案となった。
シャル・ペーパーなどの短期金融債務の支払い能力に
その後、NAAの株式上場および完全民営化について
対する短期債務格付けがある。
は、国土交通省が同年10月に設置した「国土交通省成
NAAの発行体格付けは、R&Iが「AA」
、S&Pが「A+」
、
長戦略会議」において議論され、2010年5月に最終報
JCRが「AA+」となっている。R&IおよびJCRから取得し
告「国土交通省成長戦略」が取りまとめられた。
た「AA」格は最上位の「AAA」格に次ぐカテゴリーで、
「信用力は極めて高く優れた要素がある(R&I)
」
、
「債
が閣議決定され、
「成田国際空港株式会社について、
務履行の確実性は非常に高い(JCR)」企業に与えられ
2010年5月に取りまとめられた国土交通省成長戦略に
る。S&Pから取得した「A」格は「AAA」格、
「AA」格に
おける『これまで完全民営化の方向性が議論されてき
次ぐカテゴリーで、
「債務者がその金融債務を履行す
た、成田国際空港株式会社の経営のあり方については、
る能力は高いが、上位2つの格付けに比べ、事業環境
今後、首都圏空港における容量拡充の推移、全国の空
や経済状況の悪化の影響をやや受けやすい。
(S&P)
」
港経営のあり方に関する議論も踏まえ、成田空港のア
企業に与えられる。また、短期債務格付けとして「a−1
ジアにおけるハブ空港としての地位確立に向けて、民
+(R&I)
」
「A−1(S&P)
」が付与されている。
(プラス
営化戦略、手順が検討されるべきである』との方針を
記号またはマイナス記号は各カテゴリーのなかでの相
踏まえ、今後、所要の検討を行う。
」とされた。
対的な強さを表す)
第3章
また、2011年4月には「規制・制度改革に係る方針」
なお、R&Iは6月に、JCRは7月に、それぞれ日本国の
3)株式上場および完全民営化に向けた体制整備
ソブリン格付けの方向性(見通し)を変更したことに
NAAは、これまで有価証券報告書による開示や決
伴って政府系機関の方向性を「安定的」から「ネガティ
算説明会などによる外部適時開示のほか、グループ全
ブ」に変更したが、NAAをはじめとした一定の事業基
体の経営管理の強化を図るための組織変更や内部統
盤を持ち、スタンドアローンの評価のウエートが高い
制システムの構築、法令遵守や労務管理の強化を図る
政府系機関等については、
「政府の支援能力の低下の
ための体制などの整備を進めてきており、上場会社と
影響を受けにくいことから、今回は方向性変更の対象
して必要な社内体制を整え、維持しているところである。
外(R&I)」となった。
NAAとしては、国における検討を見守りつつ、株式
2016年8月には第20回社債(一般担保付/発行日
上場に向けた準備を着実に進めていくこととしている。
2016年8月23日、償還日2026年8月21日)および第21
回社債(一般担保付/発行日2016年8月23日、償還日
❷ NAAの「信用力」を裏付ける格付け
2036年8月22日)を発行し、それぞれ3社から発行体
格付けと同様の長期債務格付け(R&I「AA」
、S&P「A+」
、
会社の事業基盤や経営状況は投資家が注目する重
JCR「AA+」
)を取得している。この格付けの理由として
要な点である。
「格付け」は会社の信用力を判断するう
JCRは「法令上国との結びつきが強いこと、成田の機
えで欠かせない要素となっており、NAAは格付投資情
能強化に向けた国の政策的関与が明確であること、リ
報センター(R&I)、スタンダード&プアーズ(S&P)
、日
テール事業の強化を背景に安定したキャッシュフロー
本格付研究所(JCR)の日米大手格付会社3社から格
を維持していること、財務基盤が良好であること」を挙
付けを取得している。格付けには、債務者の総合的な
げている。
債務履行能力を表す発行体格付け、個別の長期金融
5 プロモーション強化に向けて
❶ エアライン営業部によるプロモーション強化
2013年7月に設置した。その後、さらにその機能を航
空会社に対する営業に特化させ、新規路線の就航や
1)エアライン営業部の発足
増便など就航便数の拡大に向け、航空会社に対するき
オープンスカイの時代を迎え、LCCを含む航空会社
め細やかな就航路線や新たな需要喚起策の提案など、
に対するマーケティングの強化および航空会社の新規
航空会社のニーズに合わせた営業戦略を策定し、効果
就航の受付窓口や手続きを一本化するため、当初航
的な誘致活動を積極的に行うため、2015年7月にエア
空会社対応の横断的組織としてエアライン事業部を
ライン営業部を設置した。
4. 完全民営化の早期実現に向け体制整備 5. プロモーション強化に向けて
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