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オープンコンテンツを活用した 教育イノベーションへの取組み

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オープンコンテンツを活用した 教育イノベーションへの取組み
オープンコンテンツを活用した
教育イノベーションへの取組み
Approach to Education Innovation Making Use of Open Content
● 内野寛治 ● 大久保祐子 ● 渡辺拓郎
あらまし
現在,北米を中心にオープンエデュケーションと呼ばれる教育のイノベーションが広
がりを見せている。Webの特徴を生かして,教育者中心から学習者中心へ学びのスタイ
ルが大きく変わる状況の中,米国富士通研究所
(FLA:Fujitsu Laboratories of America,
Inc.)は,Web上のコンテンツやサービスを組み合わせて,他者と協力しながら組織的に
学ぶ新しい学習手法
「キュレーションラーニング」とそれを実現するプラットフォームの
研究開発を2011年より進めてきた。本手法は,単に知識の獲得だけを目指すのではなく,
能動的に
「さがす」
「まとめる」
「ひろげる」といったサイクルを回しながら学習し,批判的
思考力,コミュニケーション&コラボレーション能力,情報リテラシーといった
「21世紀
型スキル」
も同時に養うことを目的としている。
本稿では,キュレーションラーニングによる学習手法とそのプラットフォームを活用
した北米の大学における実践事例について紹介し,今後の展望について述べる。
Abstract
Currently, education innovation called open education, which originated in the United
States, is becoming widespread all over the world. The style of learning is making
a sea change from educator-centric to learner-centric learning through utilization of
features of the Web. Therefore, we have been working since 2011 on research and
development of curation learning, a new method in which content and services on the
Web are combined for social learning through cooperation with others, and a platform
for realizing the method. With this method, people learn through repeating a cycle
of actively searching, creating and engaging, with the aim of not only acquiring
information but also cultivating 21st-century skills including critical thinking,
communication/collaboration ability and information literacy. This paper describes
case studies at North American universities using the curation learning method and
the platform, and presents a future outlook.
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FUJITSU. 65, 3, p. 68-74(05, 2014)
オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
加えて,「課題発見」→「Web検索」→「情報の選
ま え が き
択」→「獲得した情報の知織化」→「情報発信/他
現在,北米を中心にオープンエデュケーション
者との共有」といったサイクルを回しながら理解
と呼ばれる教育のイノベーションが広がりを見せ
を深める学習スタイルを確立することが求められ
ている。この流れは,2001年のMITオープンコー
て い る。FLA(Fujitsu Laboratories of America,
(1)
スウェア
の公開に端を発し,その後2006年のカー
(2)
ン・アカデミー
のサービス開始を経て,2012年
の Coursera, Udacity, edX
Inc.)ではこれを「さがす」→「まとめる」→「ひ
ろげる」といったサイクルを回しながら学習を進
な ど の MOOCs
める手法「キュレーションラーニング」として再
(Massive Open Online Courses) の 勃 興 と 続 い
定義した。元々キュレーター(Curator)とは一般
ている。このようにオープンかつ多くの利用者が
的には学芸員を指し,キュレーション(Curation)
参加できるといったWebの特徴を生かした「Web
とは,
「人力で情報を収集,整理,要約,公開(共有)
(3)
(4)
(5)
(6)
で学ぶ」 ためのソリューションが次々と開発さ
すること(ALC英辞郎Web)
」を意味する。つまり,
れてきている。これらの学習ソリューションは個
現実世界のキュレーションのサイクルを,非定型
人が「PCで学ぶ」ことを目的としていた旧来型の
の学習(インフォーマルラーニング)に当てはめ
e-learningからは,明らかに一線を画す大きな進化
たのがキュレーションラーニングである。
となっている。
本稿では,Webの特徴を積極的に活用した新し
い学習手法である「キュレーションラーニング」と,
オープンエデュケーションプラットフォーム(OEP)
北 米 で は 既 存 のWebサ ー ビ ス や ソ ー シ ャ ル メ
それを北米の大学を中心に適用した実証実験につ
ディアを組み合わせて,授業でキュレーションラー
いて述べる。
(9)
ニングを実践する例がいくつか報告されている。
「さがす」:Googleなどの検索エンジン
検索から学習へ
-キュレーションラーニング-
「まとめる」
:Pinterest,Storifyなどの画像メディ
Googleのような検索エンジンが知識流通のため
の社会インフラとなった現在,知識や情報獲得の
ア対象のキュレーションサービス
「ひろげる」:Twitter,FacebookなどのSNS
ために検索という行為が一般化している。現実的
SNSの活用に関しては,メディアリテラシーが
な課題に対して,「課題発見」→「Web検索」→
比較的に低い小中学生の利用は,極度の依存によっ
「情報の選択」→「獲得した情報の知織化」といっ
て学業に専念できなくなるなど不安視する向きも
たサイクルを経て問題解決を図る場合が多い。米
あるが,使い方や指導方法を工夫することで協働
国では,高校生が肉親のがん罹 患を契機にがん診
問題解決などのスキル養成の効果が期待されてい
断に興味を持ち,Web検索を駆使して論文などの
(10)
また,米国においてStorifyなどのキュレーショ
る。
情報を調べ上げて独学で学習し,すい臓がんの早
ンサービスを批判的思考力やメディアリテラシー
期発見を可能にする有望な技術を開発した例など
を養うツールとして授業の中で導入する例も出て
も出てきている。 このように検索は問題解決のた
(11)
FLAでは,以下のような特長を備え,
きている。
めの重要な手段であり,探し出した情報をいかに
キュレーションラーニングをワンストップのサー
学習して知識化するかが鍵となる。その知識化の
ビスで実現するオープンエデュケーションプラッ
有効な手段としては,獲得した情報や習得した知
トフォーム(OEP)を開発した(図-1)。OEPは,
識を他者と共有/フィードバックを得ることで,理
Web上に散在するオープンコンテンツを収集・整
解を深める方法がある。実際に米国では,Twitter
理し,ユーザーがまとめて学習する環境や,コン
に似たユーザーインターフェースで学習者同志が
テンツや学習における気づきをユーザー間で共有
(7)
(8)
協調しながら学び教え合うOpenStudy
のような
し,互いに学び合う環境を提供する。具体的には,
学習に特化したSNSが学生の学習課題解決に積極
OEPでは,「さがす」「まとめる」「ひろげる」と
的に活用されている。すなわち,前述の問題解決
いったキュレーションラーニングに必要な機能を
のサイクルの最後に「情報発信/他者との共有」を
一つのプラットフォーム上で実現することにより,
FUJITSU. 65, 3(05, 2014)
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オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
Web上に散在するコンテンツ
目的に合わせてコンテンツをまとめて学習
(キュレーションリスト)
本論
序論
②まとめる
インテリジェントクローリング
メタ情報抽出,整理
関連1
結論
関連2
③ひろげる
①さがす
ほかの学習者からのフィードバック
学習者の記録
整理した
コンテンツ
学習記録の分析
オープンエデュケーションプラットフォーム (OEP)
図-1 オープンエデュケーションプラットフォーム(OEP)の概要
学習者の様々な行動のログ(検索行動,サイトや
ビデオコンテンツのアクセス,他者とのコミュニ
21世紀型スキルとキュレーションラーニング
ケーション)が把握可能となっている。また,そ
21世 紀 型 ス キ ル と は,Microsoft,Intel,Cisco
れらのデータを分析することで,一般的な検索や
が主導して作成した,21世 紀の新たな ニーズに
SNSなどのWebサービスの組合せだけでは把握で
応えるために定義したスキルセットであり,日本
きない学習行動を明らかにし,以下のような学習
でも文部科学省が制定した「新学習指導要領・生
者が中心となる学習環境の構築に役立てることが
(12)
の中で同様のスキルセットの重要性が
きる力」
できる。
謳 われている。具体的には,協働問題解決力やメ
(1)検索先のカスタマイズ
ディアリテラシーは,これからの知識経済社会に
GoogleではWeb上の全てが検索できてしまうた
お い て 必 須 で あ る{ATC21s(Assessment and
め,授業目的に沿ったコンテンツのみ,学習者が
(13)
と あ り, デ
Teaching of 21st Century Skills)
}
検索できるようにする。
ジタルネイティブと呼ばれるこれからの世代には
(2)キュレーション結果の検索
欠かせないスキルセットとなっている。その中で
学習者がまとめた結果を検索できるようにする
求められているスキル要素をキュレーションラー
ことで,キュレーションラーニングのサイクルを
ニングの各プロセスに対応させると以下のように
容易に回せるようにする。
なる。
(3)獲得した知識の可視化
(1)さがす(Find,Select)
学習者がまとめた結果を分析してキーワードレ
データの価値・意義を見出す力,複数の領域か
ベルで可視化することで,獲得した知識を容易に
ら概念を理解する力,データの選別・概念化(テー
把握できるようにする。
マ,トピック探し),分析,批判的思考,デザイン
(4)学習者のコミュニティ
学習者がまとめた結果を分析して興味や嗜好の
近い学習者を推薦し,コミュニティ形成をサポー
トする。
(5)グループによる協同作業
一つの課題に対して複数の学習者が協力してま
とめを作成できるようにする。
70
思考・問題解決力の育成など。
(2)まとめる(Editorialize,Arrange,Create)
上記(1)および異文化理解,学習能力,創造力
など。
(3)ひろげる/きづく(Share,Engage,Track)
コミュニケーション,コラボレーションによる
問題解決,データの価値・意義の再発見など。
FUJITSU. 65, 3(05, 2014)
オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
OEPを使ったキュレーションラーニングの実践:
チュートリアルプログラムにおける適用実験
度の頻度で増加するかとその効果について検証し
本章では,カリフォルニア大学バークレー校で
のコンセプトや方法論をコーディネーターおよび
スポーツ特待生に対する学習サポートを行うアス
チューターに説明し,希望者に限定してOEPを用
レチックスチューデントセンター(以下,ASC)
いて教材を作成して,作成した教材を共有しても
のチュートリアルプログラムにおける適用実験に
らった。第二フェーズについては,現在実験中で
ついて紹介する。
あるが,実際に学生に「さがす」「まとめる」「ひ
た。そのため,まず,キュレーションラーニング
カリフォルニア大学は10の大学からなり,なか
ろげる」のキュレーションラーニングの方法論に
でも,カリフォルニア大学バークレー校は,最も
従った学習を行ってもらい,その学習効果を検証
古い大学で,ノーベル賞受賞者を多数輩出する全
する予定である(図-2)。
米でも屈指の大学である。また,ほかのアメリカ
の大学と同様,スポーツに非常に力を入れており,
毎年,積極的にスポーツ特待生を受け入れている。
このスポーツ特待生は,通常の学生と比較して,
以下,第一フェーズの実験結果および考察を記
述する。
(1)コーディネーターおよびチューター間でオー
プンな教材を組み合わせたまとめ教材を共有す
学力だけでなく,学習意欲も低いという傾向があ
ることができた。この教材の共有を通じ,チュー
り,カリフォルニア大学バークレー校だけでなく,
ター間でのディスカッションが以前より活発に
多くの大学がスポーツ特待生に対する学業面のサ
なったり,オンライン上で教材を協力して作成す
ポートを行う機能を設置している。カリフォルニ
るようになったりするなどの変化も見られた。
ア大学バークレー校のASCでは,チュートリアル
(2)学生のニーズにきめ細かく対応するためのカ
プログラムを通じて,スポーツ特待生のキャンパ
スタム教材を用意できた。これは,チュートリ
ス生活への適応,自立的に学習するための基礎学
アルプログラムで教える基礎学習スキル(ライ
力の向上を支援している。
ティング,リーディング,タイムマネジメントな
ASCのチュートリアルプログラムは,1名のプロ
ど)や学習科目(数学,物理学,哲学など)ご
グラムコーディネーターと文学,数学,科学,物
とに学習トピックを細分化し,対象となる学生
理学など,各科目を専門に持つ約60名のチューター
の学力に合わせた教材を作成したことによるも
によって運営され,約900名のスポーツ特待生に対
のである。結果,LMS(Learning Management
して提供されている。
System)上の扱うトピック数が多く,細分化さ
本チュートリアルプログラムには,大きく二つ
れていない既存の教材と比較して,今回作成した
の課題がある。一つは,チュートリアルプログラ
まとめ教材はより多くの閲覧数を得ることがで
ムを実施するコーディネーター,チューター側で
きた(図-3)。
抱えていた課題である。チュートリアルプログラ
第一フェーズを終えた現在,ASCのLMS上には
ムで用いる教材はチューターが各自で用意してお
約70のまとめ教材が配置され,学生に対するチュー
り,組織内で共有されていないため,チューター
の任期が終了する学期ごとに,そのノウハウが失
われてしまっていた。もう一つは,学生の学習に
コーディネーター
関するものである。学力,学習意欲の低い学生に
対し,いかに基礎的な学習スキルを習得させ,また,
学習意欲を向上させるか,という課題である。
チューター
こ の よ う な 課 題 に 対 し,FLAで は 大 き く
二つのフェーズに分けて実証実験を行っている。
第一フェーズでは,コーディネーターとチュー
オープンな
教育コンテンツの
「まとめ」の共有
オープンコンテンツの
「まとめ」を使った
学習指導
学生
(スポーツ 特待生)
ター間のノウハウ共有が,キュレーションラーニ
ングのフレームワークを導入することで,どの程
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図-2 ASCのチュートリアルプログラム
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オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
④旅行の趣旨や経験を
踏まえて結論
LMSとの連携
① 旅程の概略
②イメージと文章を組み合わせて
魅力的に解説
図-3 学生ニーズに合わせたカスタム教材の提供
③ホテルや交通の
チケット代などを
Webで検索して
概算を見積り
図-4 キュレーションラーニング課題1̶文化人類学
コース(日本を旅するときの旅程)
トリアルプログラムの中での利用が始まっている。
今後は,第一フェーズでチューターが作成したま
(2)グループワークと発表(コース全体の5%を占
とめ教材を用いながら,第二フェーズの中で,実
める)
際に学生にキュレーションラーニングの方法論に
学生は4 ∼ 5人のグループごとに分かれ,若者,
従った学習を行ってもらい,学力および学習意欲
ジェンダー,民族性,社会階層を扱った教材から
の向上に対する効果を検証する予定である。
導かれるテーマや疑問点を取り上げ,こちらが用
OEPを使ったキュレーションラーニングの実践:
意した考察点をグループで検討し,15分ほどの発
人類学ハイブリッドコースにおける実践
表内容を準備して発表する活動である。二つの読
本章では,2013年1月から3月に行った,ベイエ
み物を熟読し,グループで協力しながら関連情報
リアにある公立大学の人類学ハイブリッドコース
を検索し,議論を通じて各テーマに対する理解を
におけるキュレーションラーニングの実践を紹介
深め,学習成果をキュレートすることが目標とさ
する。この実践は,教室内実践とオンライン学習
れた。発表にはキュレーションが用いられた。発
を組み合わせたブレンデッドラーニングの適用実
表は動画をうまく駆使したものであった。スクリー
験として実施された。オンライン学習にはLMSで
ン上での多様なリソースへの容易な切替えがキュ
あるMoodleとOEPが使用され,実施において,以
レーションを用いた発表の利点と言える。
下の三つの活動への適用を図った。
(1)日本への旅行プロジェクト(配点はコース全
(3)コースで扱ったテーマから自分の関心を発見
し,キュレートする学習(コース全体の15%を
体の10%を占める)
占める)
1週間日本に滞在し,その間に2都市を訪問する
コースで扱ったテーマから自分の興味・関心に
旅行プランを立てる活動である。学習目標として
沿ったキュレーションを三つ作成してテーマへ
は,インターネット検索などを通じて日本の地理
の 理 解 を 深 め, 自 分 の 視 点 を 見 つ け, ほ か の 学
や観光地,各地の名物に親しむこと,旅行プラン
生のキュレーションにもコメントする活動であ
を立てるための情報収集を通じて日本の交通機関,
る(図-5)。学習目標としては,教材をよく理解
宿泊や食事について知ること,日本旅行をバーチャ
し,自分が選んだテーマに関連した情報を収集し,
ルに体験することによって日本に対する新たな視
その中から重要な情報を吟味・選択し,テーマに
点を得ること,多様なメディアを組み合わせて旅
関する自分の意見を見つけ,ほかの学習者に自分
行プランを立て,ほかの学生に効果的に伝えるス
の視点が分かるようにコンテキストを足しながら
キルを学ぶことである(図-4)。新たな視点の獲
キュレートすること,また,ほかの学習者のキュ
得,メディアリテラシー,コミュニケーション力
レーションからも学ぶこと,が挙げられる。自分
は近年,高次の学習スキルとして注目されるもの
の興味・関心からスタートでき,コース開講中に
である。
いつでも提出でき,気負わずに取り掛かれる課題
72
FUJITSU. 65, 3(05, 2014)
オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
①コンビニに関する画像や動画,
テキストを効果的に組み合わせ
.
て解説
「まとめ」,教材理解が深まることも判明した。更に,
各自の学習成果をほかの学習者に分かるように伝
え,理解や見解を共有することによって新たな知
見を獲得し,学びを更に「ひろげ」ていく可能性
があることも明らかになった。
む す び
②自分の視点や日本に関する発見を明記
③ほかの学生からのコメント
図-5 キュレーションラーニング課題2̶文化人類学
コース(日本のコンビニに関する考察)
本稿では,キュレーションラーニングとそのプ
ラットフォーム(OEP)を使った北米の大学にお
ける実践例を紹介した。今後は,実験から得られ
たフィードバックをベースにWebの学習プラット
フォームとしての改良を進めるとともに,実践先
を日本国内の大学にまで広げる。その中でMOOCs
であったと言える。この活動では59個のキュレー
の活用事例として実証実験が始められている反転
ションが作成された。
授業のように,OEPを使った教室での授業とオン
今回,以上の三つの活動へのキュレーションラー
ニングの適用によって,76個のキュレーションが
ライン授業をうまく組み合わせた学習手法のデザ
インについても,研究開発を進める予定である。
作成され,授業課題としてキュレーションラーニ
ングが実践し得る点が確認できた。通常,学期終
盤に脱落する者が数名出るが,今回は皆,最後ま
でキュレーションラーニングを用いた課題に取り
組み,コースを修了できた。また,最終日に実施
したアンケート結果より,20人中12人の学生がエッ
セー課題よりもキュレーションラーニングを好む
点が判明した。そのため,キュレーションラーニ
ングは,学生が楽しく学べる課題を提供できると
言えるだろう。しかし,学習効果の具体的な検証
は次回の課題として残されている。学生の思考力
を鍛え,理解を掘り下げるためには,授業全体の
中での活動の位置づけや課題のデザインに工夫が
求められる。また,キュレーションの評価方法も,
今後,検討していく必要がある。
上記,二つの適用実験の結果から,キュレーショ
参考文献
(1) MIT:OpenCourseWare.
http://ocw.mit.edu/
(2) Khan Academy.
https://www.khanacademy.org/
(3) Coursera.
https://www.coursera.org/
(4) Udacity.
https://www.udacity.com/
(5) edX.
https://www.edx.org/
(6) 飯吉 透ほか:ウェブで学ぶ̶オープンエデュケー
ションと知の革命.ちくま新書,2010.
(7) ジャック・アンドレイカ:有望な膵臓がん検査̶な
んとティーンエージャーが開発.
ンラーニングにより,学生のニーズに即した教材
http://www.ted.com/talks/lang/ja/jack_andraka_
を「さがし」,それをカスタム教材としてオンライ
a_promising_test_for_pancreatic_cancer_from_a_
ン上で協力しながら「まとめ」,「まとめ」た教材
teenager.html
を他者と共有して各自の学びを「ひろげ」,そのプ
ロセスから更に作成したまとめの理解を深め,学
習者間のコミュニケーションの活性化にもつなが
(8) OpenStudy.
http://openstudy.com/
(9) Students Becoming Curators of Information?.
ることが分かった。また,授業の課題にキュレー
http://langwitches.org/blog/2011/06/12/
ションラーニングを取り入れることにより,教材
students-becoming-curators-of-information/
に関連する情報を学生が気負わずに楽しみながら
(10)S. Krishnan et al.:Using a Social Media Platform
「さがし」,それに自分の視点を加えながら的確に
to Explore How Social Media Can Enhance Primary
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オープンコンテンツを活用した教育イノベーションへの取組み
and Secondary Learning. The Sixth Conference of
http://www-jime.open.ac.uk/jime/article/viewArticle/
MIT s Learning International Networks Consortium.
2013-02/html
(12)新学習指導要領・生きる力.
(2013).
(11)P. Mihailidis et al.:Exploring Curation as a
Core Competency in Digital and Media Literacy
Education. Journal of Interactive Media Education.
http://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/
(13)Assessment & Teaching of 21st Century Skills.
http://atc21s.org/
著者紹介
内野寛治(うちの かんじ)
渡辺拓郎(わたなべ たくろう)
Fujitsu Laboratories of America, Inc.
所属
現在,オープンエデュケーションを活
用した企業内教育,高等教育のソリュー
ション設計に従事。
Fujitsu Laboratories of America, Inc.
所属
現 在, 社 内 の 海 外 派 遣 制 度 に よ り 米
国 駐 在 中。OEPの 設 計・ 開 発 お よ び
EdTechスタートアップの研究に従事。
大久保祐子(おおくぼ ゆうこ)
Fujitsu Laboratories of America, Inc.
所属
現 在,Social Research Scientist と し
てオープンエデュケーションを活用し
た企業内教育,高等教育のソリューショ
ン設計に従事。
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FUJITSU. 65, 3(05, 2014)
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