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5.5.5 2004/2005年鯨類目視調査

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5.5.5 2004/2005年鯨類目視調査
5.5.5
2004/2005 年
東京海洋大学
海鷹丸
鯨類目視調査
大村有佳
Report on visual observation of Wales
Yuuka ohmura
1.はじめに
近年、海洋哺乳類への関心が高まっている。
鯨類の生態系は過去の捕鯨業の発展とともに
大きく変動した。乱獲により絶滅の危機に瀕し
ている鯨類もいる一方で、激減した鯨類の保護
のために増えすぎたといわれる鯨類もいる。し
かし、海洋哺乳類は無秩序に世界中に分布して
いるわけではない。種によっては、深さ、温度
域、海洋学的構造が特定の条件を満たしている
海域のみで見られるといわれている。本研究で
は、海鷹丸第 15 次航海において鯨類の目視調
査をしたので、その分布について報告する。
最後に密度と資源量を以下の計算式より、推定
する。
密度
d=n/2μL
資源量
N=nA/2μL
(L は発見関数)
鯨類の資源量の推定のために、本航海では目
視調査記録のほかに、天候観察記録としてログ
ブックのデータを用いた。また、目視は航行中、
漁業中、観測中など学生の実習内容によって、
努力量に変化が出るので努力量記録を同時に
行った。努力量調査記録は、日出 1 時間後から
日没 1 時間前までの目視調査時間において、ど
れくらいの時間、鯨の目視を行ったかを把握す
る。特に、漂流物の目視観察のために集中見張
りの時間とマグロ延縄実習中、南極観測中の時
2.方法
2004 年 11 月 17 日に東京を出港し、2005
間を考慮して、ライントランセクト法による解
年 3 月 11 日に東京に入港するまでの間に、目
析を行った。
視されたすべての個体について目視調査記録
に記入した。目視観測は、航海ワッチ時に、1
日 24 時間船橋より行った。航海ワッチは、当
直士官 1 名、当直操舵手 1 名、当直学生 5 名
により 4 時間交代で行った。目視観測の記録は、
ワッチ中に観測された鯨類について、目視観測
日時、発見場所、船位、種名、発見角度、発見
距離、群れ内の個体位置関係のスケッチ等を記
録した。ただし距離は、目視によるものでおよ
その距離として記録したものである。(この記
録用紙は日本鯨類研究所に準じて作成した。)
特に南極海は、世界の海洋の中で最も生産力
が高く、この海域に生息するナンキョクオキア
ミはヒゲクジラ類にとって絶好の餌場となっ
ている。本研究では南極海の鯨類の資源量を推
定した。推定方法は、目視から得られたデータ
を用いて、ライントランセクト法によった。資
源量推定の流れとしては、まず目視観測により、
発見個体数nとそれらの発見横距離を得る。得
られたデータから、ヒストグラムを作成し、横
距離データの性質を確認する。次に横距離デー
タから発見関数のパラメータを推定する。推定
された発見関数から半有効探索幅μを求める。
89
3.結果
●Tokyo-Benoa
2004 年 11 月 17 日に東京を出港し、11 月
26 日べノアに入港するまでの結果である。
東京-べノア間では鯨類は全部で 424 頭目
視された。(Table 1.)
学生の目視の経験が浅く、鯨種不明イルカ類
が多いのでライントランセクト法による解析
は行わなかった。
Table.1
↑Fig.1 visual number.11
番号 年
月 日
1 2004 11 22
2 2004 11 22
3 2004 11 22
4 2004 11 23
5 2004 11 23
6 2004 11 23
7 2004 11 23
8 2004 11 23
9 2004 11 24
10 2004 11 24
11 2004 11 25
12 2004 11 25
13 2004 11 25
14 2004 11 25
15 2004 11 26
16 2004 11 26
●Benoa-Toamasina
時間
8:12
11:46
15:40
7:02
8:20
9:30
9:30
10:45
10:35
10:40
10:47
13:37
18:03
18:16
6:35
8:05
種名
経度
群サイズ 緯度
鯨種不明イルカ類
2 10 41.2 N 129 0.4 E
鯨種不明イルカ類
30
9 59.0 N 128 32.0 E
鯨種不明イルカ類 多
9 14.1 N 128 35.0 E
鯨種不明イルカ類
10
5 26.6 N 127 25.4 E
鯨種不明イルカ類
10
5 11.5 N 127 7.5 E
鯨種不明イルカ類
5 1.4 N 126 45.1 E
鯨種不明イルカ類
100
5 1.4 N 126 45.1 E
カマイルカらしい
20
4 6.4 N 125 17.7 E
鯨種不明イルカ類
50
1 49.1 N 120 50.2 E
鯨種不明イルカ類
6
1 49.1 N 120 50.2 E
マッコウクジラ
1
3 49.1 S 118 8.1 E
ハンドウイルカ
50
4 25.0 S 117 46.0 E
鯨種不明イルカ類
10
5 25.3 S 117 8.8 E
マダライルカらしい
15
5 28.4 S 117 7.0 E
鯨種不明イルカ類
20
8 40.4 S 115 42.1 E
マダライルカらしい
100
8 45.2 S 115 20.5 E
海鷹丸は 11 月 30 日にべノアを出港し、12
月 4 日から 12 月 10 日までマグロ操業を行い、
12 月 16 日にトアマシナに入港した。
この海域では全部で 59 頭が発見されただけ
だった。(Table 2.)鯨種もさまざまで、あまり
関連性がみられない。鯨類は夏の間、南極海で
オキアミなどの餌生物を採っているため、この
時期はちょうど回遊していたと考えられる。イ
ルカ類が少ないのは餌や海流が原因ではない
だろうか。
↑Fig.2
visual number.21
Table.2
番号
17
18
19
20
21
22
年
2004
2004
2004
2004
2004
2004
月
11
11
12
12
12
12
日
30
30
3
3
8
15
時間
13:16
15:05
12:10
12:15
15:05
16:40
種名
ハンドウイルカ
マッコウクジラ
ザトウクジラ
鯨種不明イルカ類
ハナゴンドウ
鯨種不明イルカ類
90
群サイズ
10
1
6
20
2
20
緯度
9
9
9
9
10
17
19.0
32.0
11.0
10.9
30.2
43.3
S
S
S
S
S
S
経度
114
114
95
95
85
52
30.0
6.0
13.8
13.1
26.3
57.3
E
E
E
E
E
E
●Toamasina-Capetown
海鷹丸は 12 月 20 日にトアマシナを出港し、
この海域では、サメや他の魚も多く観察され
12 月 26 日にケープタウンに入港した。以下に
ている。また、ケープタウン港内は、ミナミア
結果を示す。
フリカオットセイやペンギン、マンボウなども
Table.3
泳いでおり、生物の多く観察された海域であっ
た。
番号 年
月 日 時間 種名
経度
群サイズ 緯度
23 2004 12 21 16:54 ハシナガイルカ
10 25 45.0 S
46 1.0 E
24 2004 12 22
6:20 ハンドウイルカらしい
20 27 28.9 S
42 24.2 E
25 2004 12 23
6:23 ヒゲクジラ類
4 30 20.9 S
36 27.2 E
26 2004 12 25 19:11 鯨種不明イルカ類
13 35 19.2 S
20 51.5 E
●Capetown-Fremantle
12 月 31 日にケープタウンを出港し、南極の
リュッツォホルム湾で海洋観測をしたあと、1
月 25 日にフリーマントルに入港した。この間
の航走距離は 6201.1 マイルであった。
南極海は世界の海洋の中でも最も生産力が
高いといわれ、生産者である大型の植物プラン
クトンと第一次消費者のオキアミ、それをヒゲ
クジラが食べるという、非常に単純な生態系と
いわれている。
南極海の春もスプリングブルームが起こり、
大量の植物プランクトンが大増殖し、それを餌
とするナンキョクオキアミも増殖する。ヒゲク
ジラ類は暖かい海で繁殖を終え、次の繁殖に備
えて、夏の間はこのナンキョクオキアミを捕食
するために南極海にやってくるのである。
海鷹丸は南極海域において、Table.4 の鯨類
155 頭を目視観察することができた。
↓Fig.3
visual number
33
・
34
・
36
54 ・
63
・
74
Photo.1
Table.4
91
Humpback whale
番号
27
28
29
30
31
32
33
34
35
36
37
38
39
40
41
42
43
44
45
46
47
48
49
50
51
52
53
54
55
56
57
58
59
60
61
62
62
63
64
65
66
67
68
69
70
71
72
73
74
75
76
76
77
78
79
年
月
2004 12
2004 12
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
日
31
31
3
4
4
4
5
5
8
8
8
8
9
9
9
9
11
11
11
11
11
11
11
11
11
11
12
12
12
13
13
13
13
13
13
13
13
13
14
14
14
14
14
14
14
14
14
14
15
16
16
16
17
17
17
時間
10:15
13:16
5:34
10:30
15:29
16:02
19:35
19:38
0:17
2:18
17:25
18:45
4:20
7:20
8:20
9:16
4:44
19:10
19:43
20:05
20:58
9:00
21:30
21:40
22:47
22:55
6:18
7:15
8:40
3:15
14:50
15:58
17:30
18:36
18:50
19:35
19:35
20:50
0:30
3:43
3:50
4:20
6:00
10:35
12:22
12:40
16:08
19:05
18:05
7:02
18:15
18:15
5:30
6:34
7:00
種名
マイルカ
ミナミアフリカオットセイ
ダンダラカマイルカ
イワシクジラ
ナガスクジラ類
ナガスクジラ
ミンククジラらしい
ナガスクジラ
鯨種不明クジラ類
ミンククジラ
ニタリクジラ
ナガスクジラ類
イワシクジラ
ミンククジラ
イワシクジラ
マッコウクジラ
ナガスクジラ
ナガスクジラ
鯨種不明クジラ類
鯨種不明クジラ類
マッコウクジラ
鯨種不明クジラ類
マッコウクジラ
マッコウクジラ
マッコウクジラ
マッコウクジラ
マッコウクジラ
マッコウクジラ
マッコウクジラ
ナガスクジラ
ミンククジラ
ミナミトックリクジラ
クロミンククジラ
ザトウクジラ
ザトウクジラ
ミンククジラ
ザトウクジラ
ザトウクジラ
ザトウクジラ
鯨種不明クジラ類
ザトウクジラ
ザトウクジラ
ミンククジラ
ザトウクジラ
ミンククジラ
イワシクジラ
ザトウクジラ
ミンククジラ
ザトウクジラ
ナガスクジラ
ヒレナガゴンドウ
ヒレナガゴンドウ
ミンククジラ
鯨種不明クジラ類
ミンククジラ
92
群サイズ
5
3
8
2
1
2
2
2
1
2
1
1
2
3
1
1
1
1
1
1
1
1
1
1
2
2
2
2
1
1
3
7
1
2
2
2
5
2
4
1
1
2
2
3
1
3
2
30
20
5
2
緯度
33
34
49
55
56
56
62
62
67
67
67
68
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
67
66
66
66
66
66
67
66
66
66
65
65
65
65
65
65
65
65
65
64
62
61
59
59
57
57
57
経度
54.0 S
18
23.3 S
18
8.7 S
24
15.1 S
27
1.7 S
28
11.2 S
28
45.2 S
32
45.2 S
32
44.9 S
35
44.2 S
34
44.2 S
34
54.5 S
31
43.5 S
33
38.9 S
35
54.5 S
36
34.4 S
36
28.7 S
38
29.1 S
39
27.5 S
39
25.1 S
40
25.9 S
40
25.9 S
40
25.8 S
40
25.0 S
40
25.1 S
40
25.0 S
40
20.4 S
40
20.4 S
40
19.6 S
40
45.2 S
41
26.0 S
41
21.6 S
42
13.7 S
43
8.1 S
44
4.5 S
44
2.5 S
44
2.5 S
44
1.1 S
45
58.1 S
45
52.6 S
46
52.3 S
46
50.0 S
46
45.6 S
47
24.2 S
50
13.4 S
51
10.8 S
51
1.6 S
53
56.9 S
54
43.2 S
66
10.4 S
72
43.6 S
77
43.6 S
77
50.9 S
80
39.4 S
80
34.6 S
80
25.0
19.7
30.2
56.2
21.2
27.5
53.7
53.7
35.9
39.9
39.9
31.8
49.4
22.8
6.0
40.1
33.8
15.8
36.3
0.9
0.0
0.9
3.3
4.1
9.0
9.7
56.9
56.6
49.9
0.1
52.9
27.6
30.1
13.4
39.6
52.6
52.6
0.1
16.7
14.6
18.9
35.3
44.8
41.3
42.5
50.4
42.1
34.7
19.1
54.3
1.5
1.5
25.9
48.8
58.9
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
発見距離
5
20
20
20
10
200
7408
5556
100
40
1852
600
3704
1111
100
3704
12964
200
2778
18520
14816
9260
9260
9260
18520
9260
1300
1852
1852
100
3704
3704
200
5556
18520
9260
9260
9260
1852
20
50
20
18520
2778
300
50
100
2778
12964
500
700
700
4630
3704
3704
ケープタウンからフリーマントルの間に目
また、鯨類は氷山の近くや、大陸に近くなる
視された個体を、ライントランセクト法により
ほど目視される頻度が高くなった。大陸近くに
解析した結果 Fig.4 のようなヒストグラムが
餌生物であるオキアミが生息するのからであ
得られた。また、μ、dは以下のような結果と
ろう。
ライントランセクト法で解析するに当たっ
なった。
て、天候と努力量に着目しなければならない。
ヒストグラム
Fig.4
頻度
60
天候が悪いため、視程が悪く波が高いと必然的
に目視発見頭数は減ってしまう。また努力量は、
学生が他の海洋観測中である場合、目視観察に
50
対する努力量が減ってしまうと考えられる。そ
のためライントランセクト法による解析は非
頻度
40
常に難しいと考えた。
以下の Table.5 は財団法人日本鯨類研究所
30
が作成した南極海鯨類捕獲調査から抜粋した
20
「1987/88 年から 2001/02 年までに JARPA の
調査航海で目視された各海区の鯨種別頭数お
10
よび群数」の表である。これを参照すると、海
鷹丸で目視された頭数はとても少ないという
500
450
400
350
300
250
200
150
100
0
50
0
ことが分かる。それは、海鷹丸の調査方法と鯨
データ区間
類研究所の調査方法には大きく異なる点があ
μ(半有効探索幅) d(密度)
4.031292657 0.005324
るからだろう。鯨類研究所では 1 隻の目視専門
船、3 隻の目視採集船と 1 隻の調査母船の 5 隻
で調査船団を構成しており、鯨類が発見され次
目視観測される発見距離は多くの個体が
第、変針して接近していくが、海鷹丸はコース
50m 以内であるが、500m 以上のデータ区間で
ライン上で鯨類を発見しても変針して鯨類に
目視確認されているのは、視程が良好なときは
接近することはない。この点において鯨類の発
10 マイル先の噴気を確認したからである。
見の頻度が大きく違うのだと考えられる。その
ため遠くからの同定を試みているので、鯨種不
Table.5
明のことが多くなってしまった。
1987/88年から2001/02年までにJARPAの調査航海で目視された各海区ごとの鯨種別頭数及び群数
調査海域
Ⅲ区東
Ⅳ区全体
Ⅴ区全体
Ⅵ区西
合計
調査距離
27,115
113,762
85,099
13,110
239,086
群数 頭数 群数 頭数 群数 頭数 群数 頭数 群数 頭数
鯨種
1,243 3,003 8,479 24,951 7,903 22,245
840 1,959 18,465 52,158
ヒゲクジラ クロミンククジラ
ドワーフミンククジラ
0
0
14
15
60
60
1
1
75
76
ザトウクジラ
564 1,098 3,191 6,054
629 1,138
161
297 4,545 8,587
ナガスクジラ
175
747
219 1,268
332 1,101
50
122
776 3,238
シロナガスクジラ
55
107
55
96
60
99
9
13
179
315
ミナミセミクジラ
2
2
122
145
6
7
0
0
130
154
イワシクジラ
0
0
4
5
11
22
1
1
16
28
種不明の大型ヒゲクジラ
243
484
352
644
368
719
110
185 1,073 2,032
56
601
669 8,784
384 5,549
20
228 1,129 15,162
ハクジラ シャチ
ヒレンガゴンドウ
0
0
62 3,111
22 1,115
1
100
85 4,326
マッコウクジラ
367
379 1,884 1,964
816
865
80
83 3,147 3,291
ミナミトックリクジラ
217
407
711 1,297
239
451
53
85 1,220 2,240
ミナミツチクジラ
6
57
13
127
22
166
0
0
41
350
ミナミオオギハクジラ
1
5
0
0
10
34
1
2
12
41
ヒモハクジラ
2
7
0
0
1
1
0
0
3
8
ダンダラカマイルカ
22
146
99
628
211 1,561
1
5
333 2,340
シロハラセミイルカ
0
0
1
15
1
15
0
0
2
30
メガネイルカ
0
0
0
0
2
3
0
0
2
3
アカボウクジラ科鯨類
260
415 1,294 2,300
939 1,670
91
143 2,584 4,528
ゴンドウクジラ類
2
7
41 2,012
22
616
0
0
65 2,635
93
オオギハクジラ類
11
19
9
21
17
60
2
5
39
105
●Fremantle-Melbourne
1 月 30 日にフリーマントルを出港し、南極
のドゥモンドゥルヴィルで海洋観測をしたあ
と、2 月 20 日にメルボルンに入港した。この
海域では全部で 148 頭、目視観察されただけ
だった。(Table 6 )
この海域は Table.7 に示すように非常に天
候に恵まれなかった。知見によるとこの海域に
は鯨類は大量に餌を求めに回遊してくるとさ
れている。海鷹丸もフランス基地を望める点ま
で南下する予定だったが天候のため断念せざ
るを得なかった。大陸近くのほうが多くの鯨類
がいると考えられるので、非常に残念である。
Table.6
番号
80
81
82
83
84
85
86
87
88
89
90
91
92
93
94
95
年
月
2005 1
2005 1
2005 1
2005 1
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
日
30
30
30
30
1
4
5
6
6
8
9
9
12
18
18
19
時間
8:52
11:05
18:40
19:03
9:46
15:37
22:21
15:43
18:26
20:05
10:07
5:55
13:00
12:05
12:07
16:40
種名
ハンドウイルカ
ハンドウイルカ
ハンドウイルカ
鯨種不明クジラ類
鯨種不明クジラ類
ヒレナガゴンドウ
鯨種不明クジラ類
マッコウクジラ
鯨種不明クジラ類
鯨種不明クジラ類
ヒレナガゴンドウ
ナガスクジラ
ザトウクジラ
オキゴンドウ
オキゴンドウ
ナガスクジラ
↑Fig.4
群サイズ
2
6
2
2
1
20
1
1
1
15
30
1
10
30
25
1
緯度
32
32
33
33
42
61
65
64
64
64
64
64
65
46
46
40
visual number.87
3.0
4.7
51.7
57.1
31.0
50.6
5.2
0.2
0.1
54.2
0.3
30.4
40.1
50.7
50.7
38.9
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
S
経度
115
115
114
114
113
111
109
114
116
130
132
137
139
141
141
143
44.7
22.4
35.9
35.2
37.0
56.3
0.8
31.6
9.2
19.6
9.0
15.4
59.4
2.1
2.6
53.9
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
発見距離
100
250
100
200
50
600
30
500
900
5556
50
400
460
300
250
340
Table.7
Da te
Ti me
GP S pos i ti on
測定器
表層流
潮流計
天 視 雲
測定器
うねり( 目視)
波
( 有義波
高)
( 最大波
高)
気 水
湿
方
周
方
温 温
度
向
期 高さ 向 周期 高さ 周期 高さ 水深
時間
緯度
経度
風向 風速 流向 流速 候 程 量 気圧
hps
SMT N E deg m /s deg k not
℃ ℃
% deg s ec m deg sec m sec m
m
1月30日 12:00 32 17.2 S 115 15.5 E 188 6.2 354 0.6
b 8
1011.4 21.8 20.9 77.4 195 5 0.9 200 6.7 2.8 7.0 5.2
76
月日
1月31日 12:00 37 53 S 113 59.9 E 207 13.3
2月1日 12:00 43 4.8 S 113 27.5 E 308 10.3
2月2日 12:00 49 26.8 S 111 55.8 E 305 14.0
247
295
253
0.9
0.6
0.3
bc 6
c 7
bc 7
2月3日 12:00 55 6.09 S 111 54.5 E 264 15.5
2月4日 12:00 60 49.7 S 111 58.7 E 6 12.2
2月5日 12:00 65 12 S 108 56.6 E 87 10.6
325
345
337
0.7
0.5
0.9
o
r
s
7 9 990.2
6 10 984.8
3 10 984.4
4.9
3.2
0.3
4.9
2.4
0.2
2月6日
2月7日
2月8日
2月9日
E 320 5.0
E 123 10.1
E 24 4.4
E 46 13.0
213
192
319
291
1.0
0.8
0.6
0.1
f
s
f
o
2
6
3
5
988.4
995.1
989.5
991.6
1.3
1.2
1.1
2.4
2月10日 12:00 64 40.1 S 138 44.8 E 80 11.3
2月11日 12:00 65 27.5 S 139 38.1 E 117 22.1
2月12日 12:00 65 47.1 S 139 50.1 E 175 2.0
123
319
162
0.5
2.3
0.6
o
u
o
7 10 992.2
3 10 972.1
8 9 983.0
2月13日 12:00 65 24.4 S 139 36.1 E
2月14日 12:00 64 14 S 140 0.24 E 297
2月15日 12:00 62 58.7 S 140 4.23 E 316
3.7
4.6
215
177
101
0.9
0.1
0.2
s
o
s
223 10.0
296 12.9
315 13.3
244 7.7
107
142
35
202
0.5
0.9
1.4
0.8
o
r
r
o
3 10 977.8
7 10 970.9
7 10 970.9
6 8 988.9
2月16日
2月17日
2月18日
2月19日
12:00
12:00
12:00
12:00
12:00
12:00
12:00
12:00
64
64
65
64
57
51
46
41
1.03
0.27
7.87
0.01
17.4
32.4
52.6
50.5
S
S
S
S
S
S
S
S
112
126
129
132
140
140
141
143
24
4.55
50.4
29.3
25.2
54.7
2.49
18.3
E
E
E
E
7 1016.6 14.1 16.1 60.5
8 1021.2 12.5 12.9 68.5
3 994.3 9.4 8.1 83.9
200
230
340
9
8
9
4.0
2.5
3.0
210 7.2
310 6.6
265 11.0
7.0
6.0
3.1
7.5
6.5
9.5
82.0
99.9
99.9
266
350
110
10
7
6
9.0
3.5
2.5
247 9.9
0 10.9
110 7.1
7.7
2.6
3.4
9.0 12.5 4093
15.0 3.7 4282
6.5 5.3 709
1.5
2.3
0.2
2.4
95.2
86.7
99.9
90.3
100
120
40
355
5
10
7
7
1.0
2.0
1.5
1.5
180
50
25
60
8.0
8.1
7.7
7.7
2.5
2.8
2.5
2.8
7.5
13.0
8.0
7.0
4.0
4.6
4.4
4.3
2576
3869
338
3215
0.5
-3.4
-2.8
1.8
0.2
0.0
86.9
86.9
99.9
80
130
40
5
8
4
2.0
3.0
1.0
105 7.3
135 10.0
175 7.1
2.8
3.5
1.9
8.0
11.0
7.0
4.1
6.3
2.5
2889
451
216
-4.9
1.1
1.5
0.4
1.8
2.7
90.1
94
130
300
7
8
9
1.0
2.0
2.5
131
350
-
7.7
7.1
8.2
1.4
4.4
3.7
8.0
7.0
8.0
2.3
6.5
5.7
2364
3429
3648
3.8 6.2 88.0
6 10 1000.5 8.5 8.5 89.0
5 10 990.0 12.9 11.4 97.0
7 10 1015.1 14.5 15.4 83.7
210
300
330
280
8
8
8
8
3.0
4.0
5.0
1.5
200 10.0
310 9.6
320 6.3
240 10.4
5.0
5.3
6.1
2.6
8.0 11.0 4370
10.5 9.1 3748
6.5 12.6 3142
17.5 3.2 4423
10
10
10
10
94
12.1 3298
9.1 4005
5.1 3530
●Melbourne-Tokyo
メルボルンから東京までは全部で 192 頭が
観察された。この海域で目視された個体を
Table.8 に示す。
この海域では、カズハゴンドウの群れを観察
したことに注目すべきであろう。べノアーマダ
ガスカル間と同様に、クジラ類よりイルカ類の
ほうが多いことも分かる。また、この海域では、
ジンベイザメやシーラ、ウミガメなど他の生物
も観察されている。
Photo.2 Bottlenose dolphin
Table.8
番号
96
97
98
99
100
101
102
103
104
105
年
月
2005 2
2005 2
2005 2
2005 2
2005 3
2005 3
2005 3
2005 3
2005 3
2005 3
日
25
25
27
27
2
4
5
8
8
9
時間
12:20
20:02
11:14
12:24
13:25
11:06
8:25
10:00
12:27
10:25
種名
ハンドウクジラ
鯨種不明クジラ類
ハンドウイルカ
マイルカ
カズハゴンドウ
カズハゴンドウ
ハシナガイルカ
ザトウクジラ
ザトウクジラ
鯨種不明クジラ類
4.考察
海鷹丸で本格的に観察野帳をつけて観測し
たのは初めての試みだった。そのため、最初は
戸惑うことも多く記録もうまくいかず、鯨種も
分からないことが多く見られたが、鯨種を覚え
るにつれ、最終的にはスケッチも特徴をとらえ
て描くことができるようになった。
本航海で目視された鯨類は全部で 342 頭で
あった。大陸の沿岸や太平洋ではイルカ類を観
察することが多く、南極海の方でクジラ類を観
察することが多かった。
海洋哺乳類の繁殖率に影響し、ひいては分布
にも間接的に影響を及ぼす大きな要因として
大洋の海流がある。地球の自転によって、北半
球では時計回りに、南半球では反時計回りに流
れる。海流による水温の分布や、餌の分布によ
って鯨類の分布は大きく変動する。
本航海では太平洋、インド洋、大西洋、南大
洋など様々な海域を調査することができた。1
頭のクジラに出会うこともあれば、100 頭を超
える群れに出会うこともあった。鯨類は見るた
びに私たちを興奮させてくれた。私たちの観測
はプロに比べたら、数も少なく、同定も不確か
群サイズ
1
2
10
1
150
15
2
5
1
5
緯度
38
39
30
30
10
0
6
24
25
30
19.3
14.1
48.2
28.3
42.9
40.3
36.8
50.4
30.7
33.6
S
S
S
S
S
N
N
N
N
N
経度
144
146
153
153
154
148
147
141
141
140
54.3
36.3
10.2
14.3
18.1
45.1
16.8
14.9
8.7
15.8
E
E
E
E
E
E
E
E
E
E
かもしれない。そのため、鯨類の資源量は増え
たとも、減ったとも、判断できないが、今後も
海鷹丸での目視観察を続けていくことのよっ
て、統計的に判断できるのではないだろうか。
5.謝辞
鯨類の目視調査をする上で、日本鯨類研究所
の西脇様にご指導いただきました。感謝いたし
ます。
6.参考文献
・財団法人 日本鯨類研究所:南極海鯨類捕獲
調査
・S・レザーウッド,R・リーブス:クジラ・
イルカハンドブック,平凡社
・国際連合環境プログラム:海の哺乳類 FAO
種同定ガイド,NTT 出版株式会社
95
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