...

Page 1 兵医発第721 号 平成28年9月2日 郡市区医師会長 様 兵庫県

by user

on
Category: Documents
13

views

Report

Comments

Transcript

Page 1 兵医発第721 号 平成28年9月2日 郡市区医師会長 様 兵庫県
兵医発第 721 号
平成28年9月2日
郡市区医師会長
様
,,ゞ
冨庫畠
心包競
■冒
',ー
空地
冒.
会長
顕
兵庫県医 師会
'U
ジカウイルス感染症に関する情報提供について
今般、国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」並びに
厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症に関するQ&A」が更新されたこ
と、また国立感染症研究所において、国内のジカウイルス感染症の診療に携わる
医師の支援を目的とした「ジカウイルス感染症診療Q&A」が新たに作成された
ことで、厚生労働省より日本医師会に情報提供があり、本会宛別紙のとおり通知
がありました。
貴会におかれましても本件についてご了知の上、周知方ご高配のほどよろし
くお願い申し上げます。
・国内感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクアセスメント」
http://WWW.nih.go.ル/niid/ja/diseases/sa/zika/6681・zikara・8-160810.html
・厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症に関するQ&A」
http://WWW.mhlw.雪0.jp/stgseisakunitsuite小Unya/0000109899.html
・国内感染症研究所「ジカウイルス感染症診療Q&A」
http://W'WW.nih.宮0.jp/niid/images/epvzika/zika・qa20160822.pdf
け也Ⅲ10IF)
平成28年8月12日
都道府県医師会
感染症危機管理担当理事
殿
日本医師会感染症危機管理対策室長
釜 1包敏
ジカウイルス感染症に関する情穀提供について
今般、国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」ならびに厚
生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症に関するQ&A」が更新され、厚生労働
省より本会に対し周知方依頼がありました。
つきましては、貴会におかれましても本件についてご了知のうえ、郡市区医師会等
に対する周知方にっいて、ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」
htt ://洲W. nih.0.'/niid/'a/d isBases sa/zika/6681-z i胎ra-8-160810
厚生労働省ホームページ「ジカウイルス感染症に関するQ&A」
h杜://削W. mhlw
0
/S廿/seisakunitsu ite b帥 a ooo0109899. htm l
htm l
事務連
絡
平成28年8月 10日
公益社団法人日本医師会御中
厚生労働省健康局結核感染症課
ジカウイルス感染症に関する情報提供について
今般、ジカウイルス感染症に関して、Ξ1俳氏1のとおり、国立感染症研究所「ジカウイル
ス感染症のりスクァセスメント」を、号1俳氏2のとおり、厚生労働省ホームページ「ジカウ
イルス感染症に関するQ&A」を更新し、別添のとおり、都道府県等及び検疫所に対レ清
報提供いたしましたのでお知らせいたします。
貴会会員への周知につきまして御配慮の程お願いします。
別紙1
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」
別紙2
厚生労働省「ジカウイルス感染症に関するQ&A」
別添
平成28年8月10日付け自治体恂け事務連絡「ジカウイルス感染症に関する情穀提
供について」
平成28年8月10日付け検疫所向け事務連絡「ジカウイルス感染症に関する情報提
供について」
事務連
絡
平成28年8月 10日
心W
衛生主管部(局)
御中
厚生労働省健康局結核感染症課
ジカウイルス感染症に関する情報提供について
標記にっいては、平成28年6月16日付け事務連絡で情報提供等を行ったところです。
今般、ジカウィルス感染症に関して、呂1俳氏1のとおり、国立感染症研究所「ジカウィル
ス感染症のりスクァセスメント」を、呂1俳氏2のとおり、厚生労働省ホームページ「ジカウ
イルス感染症に関するQ&A」を更新しましたのでお知らせします。
別紙1
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」
別紙2
厚生労働省「ジカウイルス感染症に関するQ&A」
事務連
絡
平成 28年8月 10日
各検疫所御中
健康局結核感染症課
医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部
企画情報課検疫所業務管理室
ジカウイルス感染症に関する情報提供について
標記にっいては、平成28年6月16日付け事務連絡で情報提供等を行ったところです。
今般、ジカウィルス感染症に関して、呂1俳氏1のとおり、国立感染症研究所「ジカウィル
ス感染症のりスクァセスメント」を、呂1俳氏2のとおり、厚生労働省ホームページ「ジカウ
イルス感染症に関するQ&A」を更新しましたのでお知らせします。
別紙1
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」
別紙2
厚生労働省「ジカウイルス感染症に関するQ&A」
ジカウイルス感染症のりスクアセスメント
2016年8月10日更新
国立感染症研究所
●概要
.2007年のミクロネシア連邦ヤップ島での流行以降、 2016年6月9日時点で、ジカウ
イルス病は、中南米やカリブ海領域で流行が持続し、アジア.や南太平洋地域への地理
的拡大も見せている。日本でも10例のジカウイルス病の症伊肋ミ確認されており、いず
れも流行地への渡航歴がある輸入症例である。
.流行地における研究のレビューにより、妊婦のジカウイルス感染が母子感染による小
頭症等の先天異常の原因になると結論付けられた。また、疫学研究によりジカウィル
ス感染とギラン・バレー症候群との関連も明らかにされた。
゛日本では、ジカウイルス感染症は、感染症法上の 4 類感染症と検疫感染症に追加され
ている。また、「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」(第 3 版)が公表され、診療体制
の整備が進められている。
.妊婦及ぴ妊娠の可能性がある人の流行地への渡航は控えるとともに、流行地への渡航
者に対しては、ジカウイルス感染症の情報提供及び防蚊対策の徹底を、より一層周知
することが重要である。
性行為感染及び母子感染のりスクを考慮し、1)流行地に滞在中は、症状の有無に関
わらず、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、2)流行地から入
Uヨ国をむ)した男女は、ジカウイルス病の発症の有無に関わらず、最低 8 週間
(パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中)は性行為を行う場合にはコンドームを使用
するか性行為を控えることが推奨される。
.米国本士(フロリダ艸1マイアミ・デイド郡及ぴブロワード郡)で、初めて蚊媒介経路
が疑われる症例が報告された。米国CDCは、マイアミ・デイド郡の一部の地区の住人
と旅行者に対して予防措置に関する勧告を発表した。現在、米国CDCとフロリダ保健
局による疫学調査が進められている。
●背景
ジカウイルス感染症は、フラビウイルス科フラビウイルス属のジカウイルスによる感
染症で,流行地で蚊に刺される二とによって感染する。ジカウイルスは、 1947年にウガ
ンダのZikafoTest(ジカ森林)のアカゲザルから初めて分雜された。ジカウイルス感染
症は、2月5日に感染症法上の4類感染症に指定され、ジカウイルス病と先天性ジカウィ
ルス感染症に病型分類されている。
ジカウイルス病は、1950年代からアフり力と一部の東南アジア地域でヒトにおける流
行が確認されていた[1]。2007年にはそれまで流行が確認されたことのなかったミクロネ
シア連邦のヤップ島で流行し、2013年には仏領ポリネシアで約3万人の感染が綴告され
た。2014年にはチリのイースター島、2015年にはブラジル及びコロンビアを含む南アメ
り力大陸で流行が確認され、流行地が急速に拡大している。一方、本邦においては、現
在までのところ、2013年12月に仏領ポリネシア、ボラボラ島での滞在歴のある男性(27
歳)、女性(33歳)の 2症伊Ⅱ2]、2014年7月にタイのサムイ島での滞在歴のある男性(41
歳)の 1症伊」[3]、 2016年2 6月に中南米及びオセアニア太平洋諸島での渡航歴のある
7症例、計10例が確認されている。
2016年8月現在、ブラジルのりオデジャネイロでオリンピックが開催中であり、また
9月にはパラリンビックが開催され、これらの期問、多くの邦人が渡航することが予測さ
れる。また、妊婦のジカウイルス感染が小頭症等の先天異常の原因となることもあり、
流行地への渡航等に関するりスクを評価した。
.
疫学的所見
米国 CDC、欧州 CDC (ECDC)によると、 2015年以降2016年8月5日までに、中
央及び南アメリカ大陸、カリブ海地域では45の国や地域(アンギラ、アンティグァ・バ
ーブーダ、アノレゼンチン(トゥクマン州)、アノレバ、バノレバドス、ベリーズ、ボリビア、
ボネーノレ、ブラジル、コロンビア、プエノレトリコ、コスタリカ、キニーバ、キュラソー
島、ドミニカ国、ドミニカ共和国、エクァドノレ、エノレサノレバドノレ、仏領ギアナ、グレナ
ダ、グァドノレープ、グァテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、ジャマイカ、マノレ
ティニーク、メキシコ、ニカラグァ、パナマ、パラグァイ、ペノレー、サバ島、仏領サン・
バノレテノレミー島、セントノレシア、セント・マーティン島(仏領サン・マノレタン及び蘭領
シント・マーノレテン)、セントビンセント及びグレナディーン諸島、シント・コ・ースタテ
イウス島、スリナム、トリニダード・トバゴ、タークス・カイコス諸島、米領バージン
諸島、ベネズエラ、アメリカ合衆国(マイアミ・デイド郡及びブローワード郡))、アジ
ア・西太平洋地域では14の国や地域(米領サモア、フィジー、ミクロネシア連邦コスラ
工州、マーシャノレ諸島、ニューカレドニア、パプアニューギニア、フィリピン、サモア、
ソロモン諸島、タイ、トンガ、バヌアツ、ベトナム、インドネシア)、インド洋地域では
モルジブ、アフり力では力ーボベルデ、ギニア・ビサウ共和国から症例が報告されてい
る。
2013 2014年の仏領ポリネシアでのジカウイルス病の流行時、ギラン・バレー症候群
の症例数の増加が報告された[4]。2015年7月にはブラジル、12月にはエルサルバドル、
2016年以降にはコロンビア、スリナム、ベネズエラ、ホンジュラス、ドミニカ共和国で
も伺様にギラン・バレー症候群の症例数の増加が報告されている[5]。仏領ポリネシアに
おけるジカウイノレス病とギラン・バレー症候群の症例対照研究では、ギラン・バレー症
候群を発症した42例中 41例(98%)が血清学的に発症前にジカウイルスに感染してい
たことが確認され、ジカウイルス感染とギラン・バレー症候群との関連性が明らかにさ
れた[6]。また、カリブ海のグァドループからは急性脊髄炎、フランスからは髄膜脳炎を
合併したジカウィルス病の症伊1(いずれも脳脊髄液からジカウィルスRNAが検出されて
いる)が報告された[7β]。
胎児が小頭症と確認された妊婦の羊水からジカウィルスRNAが検出され、出産後まも
なく死亡した小頭症を呈していた出生児の血液及び脳組織からジカウィルス RNA が検
出された[9]。プラジル保健省(M血ist'riodasaode)はジカウィルス感染と小頭症の流
行に関連があると発表し、また同時にジカウィルス病に関連した死亡例が報告されたこ
とも発表した[10,11]。 2015年10月から 2016年7月30日までの間に8,801人の小頭症
が疑われる胎児又は出生児が報告されている[1幻。ハワイとスロベニアにおいて、妊娠中
にブラジルに居住歴があり、発熱、発疹等ジカウィルス病に矛盾しない症状の既往があ
る母親から、小頭症の出生児と胎児が報告された[13,14]。米国本土でも同様の報告があ
る[15]。ブラジルにおけるコホート研究117]では、発熱、発疹を呈した妊婦 88 人中、 72
人(82%)からジカウィルスRNAが検出された。これらの妊婦72人のうち42人が胎児
超音波検査にようて経過観察され、12人(29%)に小頭症を含む胎児異常が認められた。
一方、ウィルスが検出されなかった16人では胎児超音波検査による経過観察が行われた
が、胎児異常は認めなかった。 2013・2014年の仏領ポリネシアでのジカウィルス病の流
行時には8例の小頭症児を認めており、妊娠初期(第 1三半期)に妊婦がジカウイルス
に感染すると小頭症児発生のりスクが高くなる可能性が指摘されている117]。さらに、ブ
ラジル、バイアでの疫学調査においても妊娠初期のジカウイルス感染が小頭症発生りス
クと強い相関があることが報告されているが[1剖、妊娠中期(第 2 三半期)、後期(第3
三半期)のジカウイルス感染により小頭症の発症りスクが高まる可能性は否定できない
117]。こうした疫学的な研究や、妊娠期間中の感染との関連性、次項に示す臨床的特徴、
ウィルス学的に神経親和性がありⅡ9]、小頭症児の脳組織からジカウィルス存在の証拠が
得られた二と等から、米国CDCは、妊婦のジカウイルス感染が小頭症等の先天異常の原
因になると結論付けた[20,21]。2016年3月31日以降、WH0 もジカウイルスがギラン・
バレー症候群と小頭症の原因とする科学的コンセンサスが得られたとしている匡2]。
2016年7月29日米国本土(フロリダ州マイアミ・ディド郡及びプロワード郡)で、
初めて蚊媒介経路が疑われる症例が報告された[231。現在、米国CDCとフロリダ保健局
による疫学調査が行われている。
.
臨床所見
ジカウイルス病の潜伏期は2 12日(多くは2 7 田とされているⅡ,24,25]。発症者
は主として軽度の発熱(く謁.5゜C)、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、結膜炎、疲労感、
倦怠感などを呈し、血小板減少などが認められることもある。斑丘疹は掻庠感を伴うこ
とが多く、90%以上に認められるのに対して、発熱の頻度は36-65%とされている[26,27]。
一般的に他の蚊媒介感染症であるデング熱、チクングニア熱より軽症といわれている。
また、不顕性感染が感染者の約8割を占めるとされている【24,27,2釘。米国CDCが流行
地からの入国者に対して行ったジカウィルスの不顕性感染に関する検査結果によると、
無症候で検査を受けた2,5釘人中ジカウィルス病と確定されたのは7人(0.3%)であっ
た[29]。
仏領ポリネシア等では、上述のようにジカウィルス病流行時にギラン・バレー症候群
の症例数が増加したことが報告されている。また、ギラン・バレー症候群だけでなく、
急性脊髄炎や髄膜脳炎を合併した症例も報告されている130β1]。
2015年8 10月にブラジルで認めた小頭症症例 35 例の臨床的特徴によると、25 例
(71%)は頭囲が性別・出生時週数に応じた頭囲の平均値の3SD (標準偏差)未満の重
症例であった。同時に、 5例(14%)で先天性内反足、 4例(11%)で先天性関節拘縮、
2 例(18%)で網膜異常等を認め、検査においては、 17 例(49%)に神経学的検査異常
(筋緊張や腔反射の亢進など)、全例に何らかの神経画像検査異常(頭蓋石灰化や脳室拡
大など)を認めた[32]。また、ジカウィルス感染に関連する小頭症児における眼所見に異
常所見が認められることも報告されている[33]。 2013 20H年の仏領ポリネシアでの流
行に関連した先天性ジカウィルス感染症の症例が 19例報告された[34]。小頭症の症例だ
けではなく、小頭症は認めないが脳に器質的異常が認められた症例や、脳幹機能に異常
が認められた症例が報告されている。
.
感染経路
主たる感染経路は蚊に刺されることによって感染する蚊媒介性経路であり、ヤブカ
(Aedes)属の且e. ae幻アti (ネッタイシマカ)、 Ae. hensimx Ae. P0ιyneS1ぞh田谷、 ae
a乃QP血tuS 化トスジシマカ)などが媒介蚊として確認されている。ヤツプ島での流行で
はAe.ιenS辺iが、仏領ポリネシアでの流行では厶e.P0ケneS血n釘谷とネッタイシマカが
それぞれ媒介蚊と考えられている[35]。また、シンガポール及びガボンにおける研究報告
によると、ヒトスジシマカがジカウィルスの媒介蚊としての役割を果たす可能性が推定
されており[36,371、メキシコの媒介蚊のサーベイランスに謁いても、ヒトスジシマカか
らジカウィルス遺伝子が検出された[38]。日本国内に広く分布するヒトスジシマカはデン
グウイルスと同様にジカウイルスにも感受性がある。
その他の感染経路として、母子感染朗台内感染)、輸血、性行為による感染経路等があ
る[1]。
流行地から帰国した男性から、発症前に渡航歴のないパートナーへ性行為によって感
染したと考えられる事例が報告されている[39,40]。米国ではアフり力、中南米、カリブ
海地域から帰国した男性から感染した事例が 10例(2016年6月2日現在)報告され、
うち 1例は男性から男性に感染した事例である[41-4田。ブラジル渡航中にジカウィルス
病を発症した男性から女性への性行為による感染事例では、発症24日後に男性の精液検
体から感染能を有するウィルスが分雜されたと報告されている[44]。本事例では同日に尿
中と精液中のウィルス定量も施行した。男性のウィルス RNA 濃度は尿中では 2.1×104
コピーノm1であったのに対し、精液中では 3.5×10フコピー/m1と明らかに高値であった。
さらに、本事例の男性と女性から得られたサンプルを用いた全遺伝子シークエンス解析
結果から、男女間の性行為によるジカウィルス感染経路が明らかになった。
これまでに報告された性行為による感染事例の中では、ジカウィルスの感染性がジカ
ウィルス病の発症後41日閻程度維持されている可能性が示されている[45]。また、発症
船日後にPCR法によりウィルスRNAが検出されたとの報告があるが、これは必ずしも
感染性があることを示,・ものではない[46.1。さらに、流行地域から帰国した無症候の男
性からパートナーへの性行為感染も報告されている[47]。女性から男性への感染事例にっ
いては、流行国から帰国した女性から、発症前に渡航歴のないパートナーへの性行為に
よる感染を示唆する報告がある[4田。また、生殖医療に際して行われた検査により、発症
3日後の頸管粘液、子宮頸管スワブ及ぴ生殖器スワブから、発症Ⅱ日後の頸管粘液から
PCR法によりウィルスRNAが検出されたごとが報告されている[49]。
また、ジカウィルス病のウィルス血症の持続期間に関して、妊婦以外では、最長で発
症Ⅱ日後に血液からPCR法でジカウィルスRNAが検出された報告が見られる佑0]
方、妊婦がジカウィルス病を発症した場合のウィルス血症の持続時問の知見は少ない。
最近の報告では、胎児がジカウィルスに感染した妊婦において、感染後10週経過後も血
中からジカウィルスRNAがPCR法で検出されている[5"。
母乳から出産8日後にジカウイルスRNAが検出されたという報告があるが、ウイルス
は分酢されなかった15幻。現時点では唾液、尿、母乳を介して感染した事例の報告は見ら
れず、 WH0は母乳栄養を推奨している15釘。
●診断方法
特異的な臨床症状・検査所見に乏しいことから、実験室内診断が重要七なる。ジカウ
イルス病の主要な検査方法は遺伝子検査法によるウイルスRNAの検出(血液、尿)であ
る。ジカウィルス特異的1宮M旺宮G の ELISA による検出法も報告されているが、デング
ウィルス1牙M との交差反応が認められる症例もあるため、結果の解釈には注意が必要で
ある。また、中和抗体価を測定すれぱデングウィルス感染とジカウィルス感染は血清学
的に鑑別できる。また、急性期と回復期のぺア血清での測定が重要である。
● W亘0及ぴ諸外国の対応
2016年8月4日現在、米国CDCは、より詳細な調査結果が得られるまでは現在流行
してぃる 53の国や地域(アンギラ、アンティグァ・バーブーダ、アノレゼンチン、アノレバ、
バノレバドス、ベリーズ、ボリビア、ボネール、ブラジノレ、コロンビア、コスタリカ、キ
ユーバ、キュラソー島、ドミニカ国、ドミニカ共和国、エクァドノレ、エノレサノレバドノレ、
仏領ギアナ、グレナダ、グァドノレープ、グァテマラ、ガイアナ、ハイチ、ホンジュラス、
ジャマイカ、マノレティニーク、メキシコ、ニカラグァ、パナマ、パラグァイ、プエノレト
り=、サバ島、仏領サン・バノレテルミー島、セントノレシア、セント・マーティン島(仏
領サン・マノレタン及ぴ蘭領シント・マーノレテン)、セントビンセント及ぴグレナディーン
諸島、シント・ユースタティウス島、スリナム、トリニダード・トバゴ、タークス・カ
イコス諸島、米領バージン諸島、ベネズ=ラ、米領サモア、フィジー、ペノレー、ミクロ
ネシア連邦コスラエ州、マーシャノレ諸島、ニューカレドニア、パプアニューギニア、サ
モア、トンガ、カーボベルデ)の標高20oom以下の地域への妊婦の渡航を控えるように
勧告している仏4,55]。妊娠予定の女性に対しては、男性パートナーを含め、渡航する場
合には防蚊対策を厳重に行うことが推奨されている。 2016年8月 lecDCは、米国本
士の蚊媒介性経路による症例の発生に関して、フロリダ州マイアミ・ディド郡の一部の
地区の住人或いは、旅行者に対して勧告を発表した。妊婦は当該地区を旅行すべきでは
ないこと、当該地区に在住或いは、旅行中の妊婦やパートナーは、防蚊対策を厳重に行
ノ
0、
うこと、当該地区の住人或いは、旅行者で妊娠しているパートナーを持つ男女は、
トナーの妊娠期問中、コンドームなどの感染予防をとるか、性行為を控えること等を推
奨している[561。
また、翻CDC は妊婦及び妊娠予定の女性に対してジカウィルス病の流行地への渡航を
控えることを推奨している。過去 3 か月以内に感染事例が報告された国や地域として、
2016年8月5日現在、米国 CDC が挙げているものに加え、インドネシア、フィリピン、
タイ、ベトナムを挙げている仏7]。また、免疫不全や重度の慢性疾患を有する渡航者は、
渡航前に主治医に相談し、防蚊対策のアドバイスを受けるべきであるとしている仏剖。
WH0は、ジカウィルス感染症を理由とする流行地への渡航や貿易を制限することは推
奨していない。しかし、妊婦は流行地へ渡航すべきではないと発表した(2016年3月8
助[59]。同時に流行地への全ての渡航者に防蚊対策を徹底すべきであるとしている。
また、2016年5月30日にWH0は、 D 流行地に居住もしくは流行地から帰国した妊
婦のパートナーは、少なくとも妊娠期間中はコンドームを使用するか性行為を控えるこ
と、2)流行地に居住もしくは流行地から帰国した妊娠を希望するカップルや女性は、帰
国後最低 8 週問(男性に発疹、発熱、関節痛、筋肉痛又は結膜炎のジカウィルス病の症
状が見られた場合は6か月問)は妊娠を延期すること、3)流行地から帰国した男女は、
帰国後最低8週問(男性に上記のようなジカウィルス病の症状が見られた場合は6か月
間)はコンドームを使用するか性行為を控えることを推奨した【60]。 2016年8月4日、
WH0は蚊媒介性経路によるジカウィルス感染の報告がある国・領士に米国を加えたf61]。
米国 CDC も、流行地に渡航歴のある男性について、パートナーカ畝壬娠している場合、
妊娠期問中は性行為を控えるかコンドームを使用することを勧めている[42]。パートナー
が妊娠してぃない場合でも、ジカウィルス病を発症した男性は少なくとも 6 か月、発症
しない場合でも男性は帰国後少なくとも 8 週問は性交渉を控えるかコンドームを使用す
ることを推奨している。現時点では、性行為感染のりスク評価のために男性の血清や精
液の検査を行うことを推奨していない。また、流行地に渡航歴のある挙児希望のある女
性は、症状の有無に関わらず流行地を雛れてから8 週間の避妊、ジカウィルス病と診断
された女性は診断後8週間の避妊を推奨している佑5]。
米国CDCは、ジカウィルス感染症が、妊娠と先天異常に与える影響をより正硫に把握
するために、新しい二つのサーベイランスシステムを構築した。 The us. zika
PNgnancyRe部Stw(USZPR)は、米国州及び、プエルトリコを除いた米国領を対象とし、
The zikaActive pre宮nancy sU1刃eiⅡance system (ZAPSS)1ネ、プエノレトリコを対象とし
て、無症候かっ妊娠期の異常が見られないが、ジカウィルス病と診断された妊婦も含め
て登録をして、前向きに観察している[621。
イギリス公衆衛生庁(PHE)は、流行地に渡航歴のある男性は、パートナーが妊娠してい
る場合は妊娠期間中、妊娠の可能性がある場合は、ジカウィルス病の症状がない場合でも
流行地から帰国後28日間、ジカウィルス病の症状を認めたか確定診断された場合には6
か月間のコンドームを使用することを勧めている[63]。また、流行地から帰国した女性は
帰国後8週問妊娠を控えることを推奨している。
また、 WH0はギラン・バレー症候群を含む神経症状に対して注意喚起を行い、ジカウ
イルス感染症患者における神経症状のモニタリングを推奨している[9]。このような事態
を鑑み、 WH0は、2016年2月1日に緊急委員会を開催し、小頭症及びその他の神経障
害の集団発生に関して「国際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態(P1珪IC)」を宣言
してぃる。 6月14日には第3回緊急委員会を開催し、ブラジル・りオデジャネイロオリ
ンピックの開催による、ジカウィルス感染拡大のりスクについて評価した。その結果、
開催時期がブラジルの冬季であるため蚊の数は減少すること、蚊の対策を強化している
ことから、オリンビック開催によって、国際的にジカウィルスが拡大するりスクは極め
て低い、と結論付けた。
●日本の対応
日本では、 2016年2月15日にジカウィルス感染症(ジカウイルス病又は先天性ジカ
ウィルス感染症)が感染症法上の 4 類感染症にi助Uされ、全数報告によるサーベイラン
スを開始し、検査体制が整備された。同時に検疫感染症にも追加され、検疫における監
視体制が開始された。2016年7月14日には「蚊媒介感染症の診療ガイドライン」の第3
版が発出され、また、診療体制の整備も進められ、日本感染症学会からもジカウィルス
感染症協力医療機関のりストが公表されている。 2016年3月30日に、媒介蚊の対策と
して、「蚊媒介感染症に関する特定感染症予防指針」が改訂された。
●りスクアセスメント
中央及び南アメリカ、カリブ海地域では今後もジカウィルス病の発生が続く。また地
理的に流行地が拡大することも懸念される。日本では、感染症法上の4類感染症追加後、
7例のジカウィルス病が報告された。中南米やオセアニア太平洋諸島から帰国後の渡航者
であるが、今後も、東南アジア・アフり力を含む流行地からの入国者 U吊国者を含む)
が国内でジカウィルス病と診断される場合があると考えられる。
ジカウィルス病は予後良好の熱性疾患であるが、妊婦がジカウィルスに感染すると胎
内感染により出生児や胎児に小頭症等の先天異常を引き起こす二とがある。そのため、
可能な限り妊婦及び妊娠の可能性がある人の流行地への渡航は控えた方が良いと考える。
国内に生息、するヒトスジシマカがジカウィルスの媒介蚊となり、 2014年のデング熱の
国内流行のように、蚊の活動期には輸入例を発端としたジカウィルス病の国内流行が発
生する可能性は否定できない。ただし、2015年4月に告示された「蚊媒介感染症に関す
る特定感染症予防指針」に則り、平常時から媒介蚊の対策が進められておりジカウィル
スの伝播防止にも効果が期待される。現在、国内ではヒトスジシマカの活動期であり、
ジカウィルス病流行地からの入国者(帰国者を含む)は症状の有無に関わらず、潜伏期
を考慮して少なくとも帰国日から2 週間程度は特に注意を払って忌避剤の使用など蚊に
刺されないための対策を行うことが推奨される。
性行為による感染に関する知見が集積されつつぁる。流行地から入国 U吊国を含む)し
た男女は、ジカウイルス病の症状の有無に関わらず、少なくとも入国後8週間はコンドー
ムを使用するか、性行為を控えることが望ましい。また、パートナーが妊娠している場合
は、妊娠期間中は、コンドームを使用するか、性行為を控えることが望ましい。なお、現
時点では性行為による感染のりスク評価を目的とした精液中のジカウイルスのRNA検査
は推奨しない。
今後の対応として、まずは、流行地への渡航者にジカウィルス感染症の情報提供及び
防蚊対策の徹底をより一層周知することが重要である。具体的な防蚊対策は、蚊媒介感
染症の診療ガイドライン(第 3 版)に記載があるが、皮膚が露出しないように、長袖シ
ヤッ、長ズボンを着用し、裸足でのサンダル履きを避ける、必要医薬品又は医薬部外品
として承認された忌避剤を、年齢に応じた用法・用量や使用上の注意を守って適正に使
用する等である。
また、諸外国と連携し、ジカウィルス感染症の臨床症状・検査所見、小頭症等の先天
異常やギラン・バレー症候群等の神経合併症に関する新たな知見を収集していく必要が
ある。また、妊婦がジカウィルス病を疑われた場合は、蚊媒介感染症の診療ガイドライ
ン(第 3 版)に基づいて適切に対応する。ジカウィルス感染症の検査対象となる妊婦に
つぃては、ジカウィルス感染症協力医療機関等の専門医療機関に紹介し、母子感染症を
専門とし、適切なマネジメントが可能な医療機関における評価を経て、必要なジカウィ
ルス検査を国立感染症研究所で実施する。
なお、輸血による感染伝播を予防するため、海外からの帰国日から 4 週間以内の献血
を控えることを遵守する。
以上のりスクァセスメントは、現時点で得られている情報に基づいている。事態の展
開と得られる新たな知見に基づき、りスクァセスメントを更新していく予定である。
参考文献
1. MUSSO D, Gubler DJ. zika virus. clin MicrobiolRev.2016;29:487-524.
2.1ASR (2014年2月号).フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後にZika fever と診
断された日本人旅行者の2例.
h此://WWW.nih.0.'/niid/'a/iasr'V0135n774"i11fectious'diseases/source/vector/idsc/ia
Sr・ilV4401' r4083.ht血1
1くUtsuna s,1くato Y, TakasaM T, et al; 1、uo cases ofzika fever imported 丑om French
Polynesia to Japan, December 2013 to January 2014. Euro suNeiⅡ.
2014江9(4):pii=206鉛.
3.1ASR(2014年10月号).タイ・サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された羽本人旅行
者の 1例.
htt ://訊IWW.nih.0
/niid/'ah,oute允rans orν1715・idsc/iasr'i1ゾ5033・k'4161.html
ShinohaTa K, Kutsuna s, TakasaM T et al; zika fever imported 丘0血 Thailand to
Japan, and dia留nosed by pcR in the urines. J IYavelMed.2016;23(D. pii: tav011,
4. oehler E, W'atTin L, Larre p, et al; zika Ⅵrus infection complicated by
Gui11ain・Barre syndrome-cese report, French polynesia, Dece皿ber 2013. Euro
SUNei11.2014;19(9): pii=20720.
5. WHO. zika situation Report - zika virus, Microcephaly and GUⅡlain'Barr6
Syndj!ome.12 May 2016.
h此:ガa
S.who.int/h・i$A)itstreamn0665/20631ννZikasih'e
12Ma 2016 en
df?U
a=1
6. cao・Lormeau V入1, Blake A, Mons s, et al; Gui11ain・Ban" syndrome outbreak
associated 叩V北h zika virus infection in French polynesia; a case'control study
Lancet.2016 Feb 29. doi:10.1016/S0140'6736(16)00562'6.
フ. M'charles s, Herl!ma1皿 C, POU11ain R et al; Acute myelitis due to zi1ζa virus
idection. Lancet.2016 Mar 3. doi:10.1016/S0140'6736(16)006449
8. carteaux G, Mequart M, Bedet A, et al; zika virus AS$ociated with
Me11in宮oencephelitis. N En宮IJ Med.2016 Mar 9. doi:10.1056n、1EJMC1602964
9. PA110爪rHO. Epidemi010留icalAlert'Neur010客icalsyndrome, con牙enitalanomalies,
and zika virus infection.1 Decem_ber 2015.
h枇://WWW. aho.or nl/index. h ?o tion=C0皿 docman&task=doC Ⅵ.ew&1temid=27
0& id=32405&1an
=en
10.ブラジル保健省(Mi,1ist6rio da saade) 2015年11月19日.
htt :// ortalsaude.saude. OV.br/index. h /0'ministerio/ rinci avsem'etarias/SVS/noti
Clas
SVS/20807・saude・divul a・dados、sobre'microcefalia
11.ブラジル保健省(弧血St'rioda saode) 2015年12月1日.
ht :// ortalsaude.saude. OV.br/index. h /cidadao/ rinci ava encia、saude/21014'm
inisterio,da・saude'con".rma"relacao'entre'Ⅵrus'zika、e'micTocefalia
12.ブラジル保健省
ht如://POTtalsaude.saude,套OV.br/im日宮es/pdg2016/a套Osto/04Πnforme、Epidemi01-gico'
n・-37-SE・30・2016-02a宮02016-19h14m.pdf
13. DepartmentofHealth (Hawaii, US). MEDIC紅ADⅥSORY CONGENIT紅Z11【A
ⅥRUS INFECTION CONFIRMED IN NEONATE WITH MICROCEP壬王ALY.15
Jan 2016 丘nternet】.
htt :/たlealth.hawaii. OV/docd/丘les/2016川1爪ledAdvis01
Zika 15Jan2016. df
14. MlakarJ, KorvaM, TUIN, et al; zika virusAssociated with Microcephaly NEn宮IJ
Med.2016; 374aの:951-8.
15. Meeney・Delman D, Hi11S SL, wi1Ⅱ且ms c, et al; zika virus ln企Ction Amon宮 U.S.
Pre牙nant lYavelers ・ August 2015'FobNary 2016.入NWR.2016; 65(8):211'4.
16. Brasil p, pereira JP Jr, Raja Gaba牙lia c, et al; zike vh'us lnfection in pl'e牙nant
Women in Rio de Janeiro ・ preliminaTy Report. N EnglJ Med.2016 Mar 4. doi:
10,1056n、JEJMoa1602412
17. cauchemez s, Besnard M, Bompard p, et al; Association between zika virus and
microceph31y in French polynesia,2013-15: a retrospective study Lancet 2016Mar
15.
18. Johansson 八IA, Mier・y・Teran・Rometo L, Reefhuis J, et el; zika and the Risk of
Microcephaly, NEn曾J Med.2016May 27. doi:10.1056n、1EJMP1605367
19. CU宮ola FR, Fernandes lR, RUSSO FB et al. The Brazilian zika Ⅵrus strain causes
birth defects in e1中erimental models. Nature 2016
20. Rasmussen sA, Jemieson DJ, Honein 八仏, et al; zika virus and Birth Defects
Reviewin宮 the Evidence for causality N En牙IJ Med.2016Apr 13,[Epub ahead of
Print] D01:10.1056n、1EJMsr1604338
21. CDC. CDc concludes zika causes Microcephaly and other Bil'th Defects.13 April
2016 [1nternet].
htt ://WWW.cdc. OV/media/releases/2016/S0413'zika'mi仇'oce hal.html
22.WHO. zika. situation Rep0此
Zil{a 村.rus,入質Crocephaly and GUⅡlain'Barr'
Syndr0皿e.31March 2016.
htt ;//WWW.who.invemer encies/zike'Ⅵrus/situation、re oTt/31、血arch'2016/en/
23.CDC Newsroom FIOTida investigation links four recent zika cases t0 10cal
mosquito'borne
Vlrus
translni$$ion.
http://WWW.cdc.牙OV/media/releases/2016/P0729・丑orida'zika'cases.html
24.米国 CDC. zikaⅥ.rus Disease Q &A.
htt ://WWW.cdc. OV/zika/disease・ a.html
26.10OS S, MaⅡet l・足,工巳Parc G0丘art l, et al; current zika Ⅶrus epidemi010幻 and
recent epidemics. Med Ma11nfect.2014;44(フ):302'フ.
26. Brasil p, calvet GA, siqueira AM, et al; zi1ζa virus outbreak in Rio de Janeiro,
BraZⅡ: cli11ical characterization, Epidemi010客ical and vir010宮icalAspects. PLOS
Ne套1乳・OP Dis.2016Apr 12 [Epub ahead ofpritlt]. D01:10.1056NEJMsr1604338
27, DU錨I MR, chen TH, Hancock wT, et al; zika virus outbreak on Yap lsland,
Federated states ofMicronesia. N En套IJ Med.2009;360(24):2536'43.
28. MUSSO D, Nhan T, Robin E, et al; potential for zike viruS 仇'ansmission thl'OU音h
blood 仇,enS丑Ision demonstrated durin客 an outbreak in French polyne$ia,
November 2013 加 Febl,ua"y 2014. Euro suNei11.2014;19(14); pii=20761.
29. DasgLlpta s, Rea目an・steiner s, GoodenoU牙h D, et al; patternsin zikavirus Testin客
and lnfection, by Report of symptoms and pre牙nancy status - united states,
JenuaW 3-March 5,2016.八nlwR.Apri115,2016 [Epub ahead ofprinu.
h仇://WWW.cdc. OV/mmwr/volumes/65/wr/mm6515el.htm?s cid=m血6515el w
30. M6Charles s, Herrmann c, POU11ain p, et al; Acute myelitis due to zika virus
idection. Lancet.2016Mar 3. doi:10.1016/S0140,6736a6)00644-9
31.carteaux G, Maquert M, Bedet A, et al; zika virus Associeted with
Me11in客oencephalitis. N En目IJ Med.2016 MaT 9. doi:10.1056n、JEJMC1602964
32. schuler・Faccini L, Ribeiro EM, Fe北Osa lM, et al; possible Association Between
Zika virus lnfection and Microcephaly ・ Brazil,2015.入NWR.2016; 65(3):59'62,
33. de paula Fr巳北as B, de oliveira Dias JR, prazeres J, eも al; ocular Findh1冨S in
Infant$ with Microcepbaly Associated with presumed zika virus con芸en北al
Infection in salvador, Brazil. JA八仏 Ophthalm01.2016 Feb 9.
doi:10.10ovjamaophthalnl01.2016.0267.25.
34. Besnard M, Eyr011e・Gui容not D, Gui11emette・AI.tur p, et al; congenital cerebral
malformations and dyS6,1nction in fetuses and newbornS 血110win宮 the 2013 t02014
Zika Ⅵ_rus epidemiC 血 French polynesia. Euro sU1气le辺.2016 Mar 31; 21(13).
doi:10.2807n560・7917.ES.201621.1330181.
35. ECDC. Rapid Risk AssesS血ent'zika virus infection outbreak, Brazil and the
Paci5.c region.25 May 2015.
h此://ecdc.eur0 且.eu/e1ゾ UblicationS炉Ublications/ra id'risk'assessment、zika%20V
irus・south・america'Brazil'2015. df
36.won宮 PS, Li MZ, chong cs, et al; Aedes (ste部myia) albopictus (skuse): a
Potentialvectorofzika 柄.rusin S血gapm,e. PRS Ne客IDOP Dis.2013;フ(8):e2348.
37. Grard G, caron M, Momb01, et a止 Zika V辻Usin Gabon (centralA丘'ica)-2007:且
new threat 丑,omAedes albopictus? PLOS Ne牙11YOP Dis.2014;8(2):e2681.
38. PA壬10爪IHO. zika・Epidemi010套icalupda加.21Apri12016.
h此://WWW. aho.or た1/index. h ?o tion=com docman&task=doc view&1temid=2
70&'d=34243&1an
-en
39.Foy BD, Kobylinski lくC, CMI$on Foy JL, et al; probable non、vector'borne
transmission ofzika virus, C010rado, USA. Emerg lnfect Dis.2011;17(5):880'2.
40. venturi G, zammarC11i L, Fortuna c et l; An autochthonous case of zika due to
Possib]e sexual transmission, Florence,1taly,2014. Euro suNe辺.2016 Feb 25;
21(8). doi:10.2807n560・7917.翻S.2016.21.8.30148.
41. Hi11S SL, Russe11 K, Hennessey M, eも al; 1Yansmission of zika virus ThroU套h
Sexual contact with navelers to Areas of on目oin牙 nansmission ' continental
Utlited states,2016.八NWR.2016; 65(8):215'6.
42. osterAM, Russe11K, strykerJE, et al; update:1nteTim Guidance for
Prevention of sexual nansmission of zika virus ' united states,2016.八nlwR.
2016:65(12); 323・5.
43. Deckard DT, chun耳 WM, Brooks JT, et al; Male'to、Male sexua11YanS加i$sion of
Zika vil、US -Texas, January 2016. MN則R.2016; 65(14):372'4.
44. D'ortenzio E, Matheron s, Lamba11eTie x, et al; Evidence ofsexua11YanS口lission
Ofzika virus,2016. N EnglJ Med.2016; 374:2195-2198 June 2. doi:
10.1056NEJMC1604449
45.11fme] JM, Ab套Uegaen p, Hubert B, et al; Late sexua1 仇'ansmission of zika virus
Telated to probable lon目 Persistence in the semen, Lancet 2016 June 7. doi:
http://dx.doi,or号/10.1016/S0140・6736(16)30775-9
46, Mansuy JM, pasquier c, Daudin M, et al; zika Ⅵrus in semen of a patient
retur11in套丑,om a non'epidemic area. Lancet lnfect Dis.2016;16(8):894-5.
47. Fr60ur T, Mira11i6 S, Hube北 B, et al; sexualtransmission of zika V辻Us in an
entirely asymptomatic couple returnin宮丘'0血 a zika epidemiC 3rea, France, April
2016. EUTO SUNei11, volume 21, 1Ssue 23,09 June 2016. doi;
ht如://dx.doi.org/10.2807/1560'7917.ES.20162123.30254
48. Davidson AI, slaⅥnski s,1くomoto K, et al; suspected Fema1巳、to'Male sexual
IYansmission ofzikavirus ・ NewYork C北y,2016.八瓜IWR.2016;65(28):716'フ.
49. prisant N, Bujan L, Benichou H, et al; zika 哘_rus in the female gen北al tract.
Lancetlnfect Dis.2016 JU111 [Epub ahead ofprint].
50. Lanciotti RS, Kosoy oL, Laven JJ, et al; Genetic and ser010gic properties of zika
Virus associated with en epidemic, Yap state, Micronesia,2007. Emer牙 lnfect Dis.
2008; 14(8):1232-9.
51. Dri宮套ers RW, HO CY, Korhonen EM, et al. zika virus lnfection witb pr010n套ed
Maternal viremia and Feta] Brain Abnor血且lities. N En目 J Med 2016; Mar 30
田PubaheadofprⅡIU. doi:10.1056n、JEJMoa1601824
52. Besnerd M, Lastere s, TeissierA, et al; Evidence ofperinetaltransmission ofzika
Virus, French polynesia, December 2013 and Febtuary 2014. Euro sul'vei11.2014
APτ 3; 19(13). doi:10.2807/1560,7917.ES2014.19.13.20751
53. WHO. Breastfeedin宮 in the context ofzika virus.1nterim 宮Uidance.25 Feb 2016.
h此:ノ/WWW.who.int/csr/resources/ ub]icetions/zika/breastfeedin /en/
54. CDC. zika travelhlformation.
htt ://wwwn6.cdc. OV允revev a e/zika、information
55. peter$en EE, polen loJ, Meaney・Delman D, et al; update:1nterim Guidance for
Health caN pr0Ⅵders C且τin宮 for women ofReproductive A客e possible zika viTUS
Exposure -U11ited states,2016.八心IWR. March 25,2016.
h桃ソ/WWW.cdc. OV/mmwr/VO]U血es/65/wr/血m6512e2er.htm?s cid=mm6512e2er w
56. AdⅥCe for people livin晉 in or traveling to w'ynwood, a nei客hborbood in Miami, FL
http://WWW.cdc,牙OV/zika/intheus/aorida、update.html
57.ECDC. Epidemi010gical update: outbreaks of zika
Vlrus
and
ComplicationspotentiaⅡy linked to the zika viNs infection.3 June 2016.
htt ://ecdc.eufo a.eu/e11/ ress/news/]a outs/formsn、1ews Dis Form.as x?1D=1426
&List=8db7286C・fe2d・476C・9133・18任4Cblb568&S0山'ce=htt %3A%2F%2Fecdc%2E
euro
a%2Eeu%2Fen%2Fpa es%2Fhome%2Eas x
58. ECDC. Rapld Risk AssesS皿ent・zika virus disease epidemic: potential association
With microcephaly and GU辺ain'Barr' syndrome (丘丑h update).11Apri12016.
h此://ecdc.euTo a.eu/etv ublicationS炉Ublications/zike、virus'ra id'risk'assessment
11・a HI-2016.docx. df
59. WHO.111formation for travelers viS北in牙 Zika a丘'ected countries,8 March 2016.
htt ://WWW.who.int/csr/disease/zika/in血r血ation'for'travelers/e11/
60. WHO. prevention ofpotentialsexualtransmission ofzika Ⅵrus.30 May 2016.
htt リ/WWW,who.inucsrん・esouTces/ ublications/ziRa/sexual'h'ansmission、 reventi011/etl/
61. WHO. zika situation Re ort
Zike vilus Microce hal
and Gui11ain'Barr'
S ndrome.4Au ust 2016
62. possible
Zika viTus lnfection Amon牙 PTe宮nant women
United states and
Territories,八lnlwR. May 2016 May 27,2016.
63. public Health En宮land (PHE). zika Ⅵrus: updated travel advice for pre即且nt
Woman.1March 2016 [1nternet].
htt s:ノ/WWW. OV.UI【/ overnmenvnews/zika、virus、u dated'travel'advice'for
t'訊『olnen
re nan
ジカウイルス感染症に関するQ&A
作成 2016年1月21日
最終更新2016年8月10日
(問 10 修正)
【一般の方向け】
問1 ジカウィルス感染症とは、どのような病気ですか?
答ジカウィルス感染症は、ジカウィルス病と先天性ジカウィルス感染症をいいます。
ジカウイルス病は、後天的に、ジカウイルスが感染することにより起こる感染症で、軽度の発
熱、発疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、俗怠感、頭痛などが主な症状です。
ジカウィルスは母体から胎児への感染を起こすことがあり(先天性ジカウィルス感染症)、小
頭症などの先天性障害を起こす可能性があります。
問2 どのようにして感染するのですか?
答ジカウィルスを持った蚊がヒトを吸血することで感染します(蚊媒介性)。基本的に、感染
したヒトから他のヒトに直接感染するような病気ではありませんが、輸血や性行為によって感
染する場合もあります。また、感染しても全員が発症するわけではなく、症状がないか、症状
が軽いため気付かないこともあります。
妊娠中の女性が感染すると胎児に感染する可能性があります。
問3 世界のどの地域が流行地域ですか?
答アフり力、中南米、アジア太平洋地域で発生があります。特に、近年は中南米等で流行し
ています。
詳しくはジカウイルス感染症の流行地域を確認してください。
問4日本国内での発生はありますか?
答日本国内で感染した症例はありません。海外の流行地域で感染し、発症した症例が、
2013年以降、10仞1(うち、今回の中南米の流行後は7仰D国内で見つかっています。
IASR(2014年2月号)フランス領ポリネシア・ボラボラ島帰国後にZikaf.V田と診断された日本
人旅行者の2例
IASR(2014年10月号)タイ・サムイ島から帰国後にジカ熱と診断された日本人旅行者の1例
問5 感染を媒介する蚊は日本にもいますか?
答ヤブカ属のネッタイシマカやヒトスジシマカが、ウィルスを媒介する二とが確認されていま
す。ネッタイシマカは、日本には常在していませんが、ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地
域(秋田県および岩手県以南)でみられます。
問6 治療薬はありますか?
答ジカウィルスに対する特有の薬は見つかっておりません。対症療法となります。
問7'糧ると重い病気ですか?
答ジカウィルス病は、感染しても症状がないか、症状が軽いため気付きにくいこともありま
す。症状は軽く、2 7日続いた後に治り、予後は比較的良好な感染症です。
問8 妊婦や胎児にジカウィルス感染症はどのように影響しますか?
答ブラジル保健省は、妊娠中のジカウィルス感染と胎児の小頭症に関連がみられるとの発
表をしており、 2016年1月15日には、米国 CDC が、妊娠中のジカウィルス感染と小頭
症との関連にっいてより詳細な調査結果が得られるまでは、流行国地域(問 3 参照)への妊
婦の方の渡航を控えるよう警告し、妊娠予定の女性に対しても主治医と相談の上で、厳密
な防蚊対策を推奨しました。1月21日には、 ECDC (欧州疾病対策センター)は、流行地域
への妊婦及ぴ妊娠予定の方の渡航を控えることを推奨しました。世界保健機関(WHO)は、
2月1日に、緊急委員会を開催し、小頭症及ぴその他の神経障害の集団発生に関する「国
際的に懸念される公衆の保健上の緊急事態( PHEIC )」を宣言しました。また、3月8日に、
第2回目の緊急委員会を開催し、以下の渡航措置についての勧告等を発表しましナニ。
.ジカウィルスの伝播がある地域等への(からの)渡航や貿易についての一般的な制限はな
い。
.妊婦はジカウィルス感染症が発生している地域への渡航をしないよう勧告される。ジカウィ
ルス感染症が発生している地域に住んでいる又は渡航するパートナーのいる妊婦は、妊娠
期間中は、安全な性行為を確保するか性行為を控える。
.ジカウイルス感染症が発生している地域へ渡航する人は、可能性のあるりスクや蚊による
刺皎の可能性を低くするための適切な措置についての最新の勧告を入手し、帰国後は、伝
播のりスクを下げるため、安全な性行為を含めた適切な対策をとる。
.VVH0は、ジカウィルス感染に関するりスクの性質や期間にっいての情報とともに渡航にっ
いてのガイダンスを定期的に更新する。
WH0 は3月31日、米国CDC は4月13日、これまでの研究結果から、ジカウィルス感染が
小頭症等の原因となるとの科学的同意が得られたと結論づけました。
なお、現在、小頭症や他の神経障害とジカウィルスとの関連にっいての更なる調査が行われ
ています。
問9 流行地域へ渡航をする場合は、どのように予防すれぱよいですか?
答海外の流行地域にでかける際は、蚊に刺されないように注意しましょう。長袖、長ズボン
の着用が推奨されます。また蚊の忌避剤なども現地では利用されています。
妊娠中にジカウィルスに感染すると、胎児に小頭症等の先天性障害を来すことがある二とか
ら、妊婦及び妊娠の可能性がある方にっいては、流行地域への渡航を控えた方がよいとさ
れています。やむを得ず渡航する場合は、主治医と相談の上で、厳密に蚊に刺されないよう
にする対策を講じることが必要です。また、性行為感染のりスクを考慮し、流行地域に滞在
中は、症状の有無にかかわらず、性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること
を推奨します。
問10 性行為による感染はどのように予防すれぱよいですか?
答性行為による男性から女性パートナーへの感染事例が報告されています。また、女性か
ら男性パートナーへの性行為による感染を示唆する報告もあります。性行為感染及ぴ母体か
ら胎児への感染のりスクを考慮し、流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず、性行為
の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、流行地域から帰国した男女は、症状の
有無にかかわらず、最低8週間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際に、コ
ンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。
(参考)
VVH0は、性行為による感染予防にっいて、暫定ガイダンス(2月18日作成)を6月7日に改
訂しました。その概要は、次のとおりです。
ジカウィルスが性行為により感染しうるという根拠に基づき、WH0は以下のとおり推奨する。
1.ジカウィルスに感染したすべての男女及ぴそのパートナー(特に妊婦)は、性行為による
感染のりスク、避妊対策、より安全な性行動についての情報を受けること、及ぴコンドームを
提供されること等。
2.流行地域に住んでいる又は流行地域から帰国後の、妊娠中のパートナーがいる男性は、
少なくともパートナーの妊娠期間中は、より安全な性行動をとるか、性行為を自粛する。
3.流行地域から帰国後の、妊娠を予定しているカップルや女性は、ジカウィルスに感染する
ことがないよう、最低8週間(男性に症状が見られた場合には6か月)、妊娠を控えることを強
く推奨される。
4.流行地域かみ帰国した人は、帰国後最低8週間、より安全な性行動をとるか、性行為の自
粛を検討する。
(1)渡航中又は帰国後8週以内に、ジカウィルスの症状(発疹、熱、関節痛、筋肉痛又は結
膜炎)がある場合には、男性は、最低6か月間、より安全な性行動をとるか、性行為の自粛を
検討すること。女性は、この推奨について正しい情報を知る二と。
(2)VVH0は、ジカウィルスを確認するための定期的な精液の検査を推奨しない。しかしなが
ら、国の政策に従い、症状があった男性は、帰国後8週後に、精液検査を実施することもでき
る。
4.ジカウィルスに関する検討に関わりなく、WH0は、HIVや他の性行為感染症を予防し、望
まない妊娠を避けるために、より安全な性行動(正しいコンドーム使用を含む)を推奨する。
なお、詳細については、以下のHPを確認してください。
htt ://a s.who.inviris/bitS廿eam/10665/204421/1/WHO_ZIKV_MOC_16.1_en
df?ua=1
問11日本で購入した忌避剤は、中南米においても効果がありますか?
答国内では、「ディート」や「イカリジン」を成分とした忌避剤が市販されています。中南米の
蚊にも効果があります。製品の用法・用量や使用上の注意を守って使用します。製品の忌避
効果は、蒸発、雨、発汗などにより持続性が低下するので、一定の効果を得るためには、定
期的に再塗布することが必要です。
問12 予防接種はありますか?
答ジカウイルス感染症に有効なワクチンはありません。
問13 海外旅行中に流行地域で蚊に刺された場合はどこに相談すれぱよいですか?
答すべての蚊がジカウィルスを保有している訳ではないので、蚊に刺されたことだけで過分
に心配する必要はありません。
心配な場合は、帰国された際に、空港等の検疫所でご相談ください。また、帰国後に心配な
二とがある場合は、最寄りの保健所等にご相談ください。なお、発熱などの症状がある場合に
は、医療機関を受診してください。
問14日本国内でフカウイルスに感染する可能性はあるのでしょうか?
答日本にはジカウィルスの媒介蚊であるヒトスジシマカが秋田県および岩手県以南のほと
んどの地域に生息しています。このことから、仮に流行地域でウィルスに感染した発症期の
人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊がたまたま他者を吸
血した場合に、感染する可能性は低いながらもあり得ます。ただし、仮にそのようなことが起
きたとしても、成虫は冬を越えて生息できず、限定された場所での一過性の感染と考えられ
ます。化トスジシマカは卵で越冬しますが、ウィルスがその卵の中で越冬するという穀告は
ありません。)
なお、ヒトスジシマカは、日中、野外での活動性が高く、活動範囲は50 100メートル程度で
す。国内の活動時期は概ね5月中旬 10月下旬頃までです。
【医療機関・検査機関の方向け】
問15 ジカウイルス病の病原体は何ですか?
答フラビウィルス科フラビウィルス属に属するジカウィルスです。
問16 潜伏期間はどのくらいですか?
答 2 12日(多くは2 7日)と言われています。
問ηどのような症状が出ますか?
答主として軽度の発熱、斑丘疹、結膜炎、関節痛、筋肉痛、疲労感、倦怠感、頭痛などを呈
します。これらの症状は軽く、 2 7日続いて治まります。血小板減少などが認められるこ
ともありますが、他の蚊媒介感染症であるデング熱やチクングニア熱より軽症と言われてい
ます。これまでの研究結果から、WH0 や米国 CDC は、ジカウィルス感染が小頭症の原因と
なること、また、VVH0 はジカウィルス感染がギラン・バレー症候群の原因となることについて
科学的同意が得られたと結論づけました。
問18 検査はどのように行うのですか?
答特異的な臨床症状・検査所見が乏しい二とから、診断のための検査は、血液または尿か
らのウィルス分離または PCR 法による病原体遺伝子の検出により行います。血清学的検
査による診断は、1三M 抗体または中和試験による抗体の検出により行います。なお、1gM抗
体を用いて診断を行う場合は、患者が感染したと考えられる地域で流行中のその他のフラビ
ウィルス属ウィルス(デング熱、黄熱、ウエストナイル熱、日本脳炎等)1こよる先行感染又は
共感染がないこと、半年以内の黄熱ワクチンの接種歴がないことを確認してください。その他
のフラピウィルス属ウィルスによる先行感染又は共感染を認める場合は、ペア血清による1呂
M抗体以外の方法による確認試験を実施してください。
問円鑑別を要する疾患は何ですか?
答同じ蚊媒介感染症であるデング熱及びチクングニア熱との鑑別が必要です。その他、チ
フス、マラリア、レプトスピラ症などとの鑑別も必要です。
問20 治療法はありますか?
答対症療法となります。通常は比較的症状が軽く、特別な治療を必要としません。
問21 患者の経過と予後はどうでしょうか?
答ジカウィルス病の予後は比較的良好です。症状が悪化した場合は医療機関を受診してく
ださい。死亡はまれです。
問22 感染症法上の取り扱いはどぅなっていますか?
答平成 28年2月5日に感染症法の四類感染症、検疫法の検疫感染症に追加され、同
年2月15日に施行されました。これにより医師による保健所への届出が義務となり、検疫
所での診察・検査、汚染場所の消毒等措置が可能となりましナニ。
問23 ヒトスジシマカについて教えてください。
答ヒトスジシマカは、日本のほとんどの地域(秋田県およぴ岩手県以南)に分布しています。
その活動時期は 5月中旬 10月下旬です(南西諸島や温暖な地域では二れよりも活動
期間は長い)。ヒトスジシマカの幼虫は、例えぱ、ベランダにある植木鉢の受け皿や空き缶・
ペットボトルに溜まった水、放置されたブルーシートや古タイヤに溜まった水などによく発生
します。人がよく刺されるのは、墓地、竹林の周辺、茂みのある公園や庭の木陰などとされて
います。
(参考)
国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ
ヒトスジシマカの写真
問24ヒトスジシマカの体内でジカウイルスは増えますか?
答ヒトスジシマカの体内でウィルスが増えることが確認されています。そのため、ヒトスジシ
マカの刺皎によりジカウィルスが伝播される可能性があると言えます。
問25 ヒトスジシマカは越冬しますか?
答ヒトスジシマカの成虫は、秋になって気温が下がると死んでしまい、卵の状態で冬を越し
ます(卵越冬)。
問26 ネッタイシマカについて教えてください。
答現在、ネッタイシマカは国内には生息、していません。かっては国内でも沖縄や小笠原諸
島に生息し、熊本県牛深町には 19" 1947年に一時的に生息していたこと力靖己録され
ていますが、 1955年以降は国内から消滅したとされています。ただ今日では、航空機によ
つて国内に運ぱれる例も確認されており、定着の可能性は皆無ではありません。
(参考)
国立感染症研究所昆虫医科学部ホームページ
ネッタイシマカの写真
間2フネッタイシマカは国内に定着できますか?
答ネッタイシマカの分布の北限は台湾の高雄市周辺とされています。従って、国内では沖
縄県の南方(石垣島・西表島など)以北の野外では定着できないと考えられます。しかし、空
港ターミナルなど、一定の温度が維持されているような特別な場所では定着できるかもしれま
せ人ノ。
問28 蚊に刺されないようにするにはどうしたらよいでしょうか?
答ヒトスジシマカは、早朝・日中・タ方(特に日没前後)に活動し、ヤブや木陰などでよく刺さ
れます。その時問帯に屋外で活動する場合は、長袖・長ズボンの着用に留意し、忌避剤の使
用も推奨します。ネッタイシマカは屋内で活動しますから、屋内での服装や対策に留意しな
けれぱなりません。
間29日本でジカウィルスに感染する可能性はありますか?
答現在日本での流行はありません。しかし、仮に流行地域でウィルスに感染した発症期の
人(日本人帰国者ないしは外国人旅行者)が国内で蚊にさされ、その蚊がたまたま他者を吸
血した場合に、感染する可能性は低いながらもあり得ます。
問30 不顕性感染の患者から感染の可能性はありますか?
答国立感染症研究所のりスクァセスメント1こよると、不顕性感染の患者が感染源となりうる
かどうか(刺皎した蚊がウィルスを伝播しうるほどウィルスが増えるか、どのくらいの期間ウィ
ルスが持続されるかなど)については、わかっていません。したがって、国内の蚊の活動期に
おいては、ジカウィルス感染症流行地域からの帰国者は症状の有無にかかわらず忌避剤の
使用など蚊に刺されないための対策を少なくとも 2週間程度は特に注意を払って行うことが
推奨されます。また、問10にもあるとおり、流行地域に滞在中は症状の有無にかかわらず
性行為の際にコンドームを使用するか性行為を控えること、流行地域から帰国した男女は症
状の有無にかかわらず最低8週間、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行為の際に、
コンドームを使用するか性行為を控えることを推奨します。
(地Ⅲ106F)
平成28年8月24日
都道府県医師会
感染症危機管理担当理事
殿
日本医師会感染症危機管理対策室長
釜萢敏
ジカウイルス感染症診療Q&Aについて
「蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)」については、平成28年7月15
日付仕也Ⅲ82F)をもって、さらに「ジカウイルス感染症のりスクァセスメント」、「ジ
カウイルス感染症に関するQ&A」の更新については、 8月12日付仕也Ⅲ10IF)を
もって貴会宛お送りいたしました。
今般、国立感染症研究所において、国内のジカウイルス感染症の診療に携わる医師
の支援を目的とした「ジカウイルス感染症診療Q&A」が新たに作成され、厚生労働
省より本会に対して周知方依頼がまいりました。
つきましては、貴会におかれましても本件についてご了知のうぇ、郡市区医師会等
に対する周知協力方について、ご高配のほどよろしくお願い申し上げます。
国立感染症研究所「ジカウイルス感染症診療Q&A」
htt :/削W. nih
0
niid ima es e i/z ika/z i胎一 a20160822. df
事務連
絡
平成 28年8月 23日
公益社団法人日本医師会御中
厚生労働省健康局結核感染症課
ジカウイルス感染症診療Q&Aについて
平成28年7月14日付け事務連絡において、「蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)」
を配布したところですが、今般、国立感染症研究所においてジカウイルス感染症の診療に
関するQ&Aが作成されましたので、お知らせします。
貴会会員への周知につきまして御配慮の程お願いします。
ジカウイルス感染症診療Q&A
最終更新:2016/8/22
はじめに
1.ジカウイルス感染症の疫学情報
1.1 ジカウイルス感染症の世界の疫学情報は?
1.2 ジカウイルス感染症の日本の疫学情報は?
2.ジカウイルス感染症の臨床像、伝播様式
2.1 伝播様式は?
2.2 ジカウイルス病の臨床像およぴ検査所見は?
2.3 先天性ジカウイルス感染症の臨床像および検査所見は?
3.ジカウイルス感染症の検査法
3.1 ジカウイルス感染の検査方法にはどのようなものがあるか?
3.2 ジカウイルス病の診断のための検査は?
3.3 先天性ジカウイルス感染症の診断のための検査は?
3.4 ジカウイノレスの検査はどの検体でいつ行うべきか?
3.5 ジカウイルス検査の解釈上の注意点は何か?
4.ジカウイルス感染症の治療法は?
5.ジカウイルス感染症の合併症は?
5.1 ギラン・バレー症候群
5.2 その他の神経症候群
6.予防策について
6.1 どのような予防策があるか?
6.2 昆虫忌避剤の使用方法は?
6.3 状況別予防策と指導
フ.対象患者別の特記事項
フ.1 妊婦
フ.2 小児
8.ジカウイルス感染症協力医療機関と母子感染ネットワーク医療機関
8.1 ジカウイルス感染症協力医療機関について
8.2 母子感染ネットワーク医療機関について
9.参考文献なぞ
1
233344445555568999 0
ー0
ー0
ー1
ー2
ー2
ー6
ー1
2ー
2ー
22
2
目次
はじめに
2016年7月14日に国立感染症研究所は有識者の協力を得て、蚊媒介感染症の診療ガイ
ドライン(第3版)[打を発出しました。このガイドラインでは、デング熱、チクングニ
ア熱、ジカウイルス感染症に関する情報は最新の知見に基づいて更新されています。特に、
ジカウイルス感染症に関する新しい知見は日々蓄積されつつあります。診療対応に変更を
要する新たな知見が集積された場合、本ガイドラインは更新される可能性があります。ま
た、感染症法に規定されるその他の蚊媒介感染症旧本脳炎、ウエストナイル熱、黄熱、
りフトバレー熱、西部ウマ脳炎、東部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎、マラリア、野兎病)
については記載していません。
ジカウイルス感染症はフラビウイルス科フラビウイルス属のジカウィルスによって起
こる蚊媒介疾患です。ジカウイルス感染症の媒介蚊は海外では、主に才、ツタイシマカ
('edes aegyP力)とヒトスジシマカ(河ed郎 a/b卯ictus)などのヤブ蚊属med郎 S即.)が媒
介します。日本にはネッタイシマカは常在しませんが、ヒトスジシマカが生息しています。
健康な成人およぴ小児がジカウイルスに感染した場合、約 20%の感染者が、2 12日の
潜伏期間を経て症状を呈します。健康なヒトがジカウイルスに感染し発熱、発疹、結膜炎
などの症状を呈した場合は、「ジカウイルス病」と分類され、一方、母体から胎児へのジ
カウイルスの経胎盤感染により小頭症などの先天異常をきたした場合は「先天性ジカウイ
ルス感染症」と分類されます。
ジカウイルス感染症の患者は 1950年代以降に、アフり力とアジアで散発していました
が、2007年以降に南太平洋地域及び中南米を中心に急速に流行地域が拡大しています。ま
た、2013年以降のジカウイルスの関連が強く疑われる小頭症を含む先天異常、ギラン・バ
レー症候群を含む神経疾患の集団発生を受けて、WH0は、2016年2月1日に緊急委員会を
開催し、小頭症及ぴその他の神経障害の集団発生に関して「国際的に懸念される公衆の保
健上の緊急事態」を宜言しました。また、その後に性行為を介したジカウイルスの感染伝
播が確認されています。
本ジカウイルス感染症診療 Q&A は、国内において診に携わる医師を対象として、国
立国際医療研究センター、AM印成育疾患克服等総合研究事業「母子感染に対する母子保健
体制構築と医療開発技術のための研究(ジカウイルス班)」(研究代表者:藤井知行)の有
識者のご協力を得て国立感染症研究所が作成しました。
2
1.ジカウイルス感染症の疫学情報
1.1 ジカウイルス感染症の世界の疫学情報は?
ジカウイルス病については、最近までジカウイルス感染症の流行地として知られて
いたアフり力、アジアの熱帯・亜熱帯地域以外では、2007年にはミクロネシア連邦
のヤップ島での流行、2013年には仏領ポリネシアで約 1 万人の感染者が報告されて
います。2014年にはチリのイースター島、2015年には中央および南アメリカ大陸、
カリブ海地域、南太平洋地域等でも流行し、急速に流行地が拡大しています。米国本
土でも、国内感染の事伊1が報告されています。一方、ジカウイルス感染による小頭症
の多くは、流行国・地域で発生が報告されていますが、流行地でジカウイルスに感染
した妊婦から生まれた先天性ジカウイルス感染症の症例が、非流行地においても報告
されています。
2
ジカウイルス感染症の日本の疫学情報は?
ジカウイルス病については、2013年、2014年に仏領ボリネシア及びタイで感染し
て、日本に入国後発症した輸入症例が 3 例確認されています。2016年2月にジカ
ウイルス感染症が感染症法上の 4 類感染症に指定され、以後 2016年8月19日ま
でに 7 例のジカウイルス病の輸入症例が報告されています。国内では、先天性ジカ
ウイルス感染症の報告はありません。
3
之2
ジカウイルス感染症の臨床像、伝播様式
1 伝播様式は?
主たる伝播様式は、蚊媒介性であり、感染源となる蚊(ネッタイシマカ及びヒトス
ジシマカ)ほジカウイルスを保有している者の血液を吸血することでウイルスを保有
し、この蚊が非感染者を吸血する際にウイルスを感染させます。経胎盤及ぴ経産道感
染による事例、輸血や性行為を介した感染事例も海外において多数報告されています
[2]。
2.2
ジカウイルス病の臨床像および検査所見は?
主として軽度の発熱(<38.5゜C)、頭痛、関節痛、筋肉痛、斑丘疹、結膜炎、疲労感、
俗怠感などを呈し、血小板減少などが認められることもあります。斑状丘疹は掻庠感
を伴うことが多く、90%以上に認められるのに対して、発熱の頻度は36-6馴とされて
います[3,4]。また、不顕性感染が感染者の約8割を占めるとされています[4,5]。
2
3
先天性ジカウイルス感染症の臨床像およぴ検査所見は?
2015年8月 10月にブラジルで認めた小頭症症例 35 例の臨床的特徴のまとめ
によると、小頭症の程度は、 71%が頭囲・3 標準偏差(SD)以下の重症例であり、先天
性内反足(14%)、先天性関節拘縮m%)、網膜異常(18%)等を認めたほか、半数で神経
学的検査異常(49%)、全例で神経画像検査異常を認めました[釘。また、小頭症児にお
いて、眼病変を呈する報告がされていましたが、小頭症を認めない先天性ジカウイル
ス感染症の児において、眼底所見の異常を認めた例も報告されています[刀。
4
33
ジカウイルス感染症の検査法
1 ジカウイルス感染の検査方法にはどのようなものがあるか?
ジカウイルス感染症は,ジカウイルス病と先天性ジカウイルス感染症に分けられます。
ジカウイルス感染症の検査法には,1)ジカウイルスそのものを検出する方法と、2)ジ
カウイルスに感染したときに体内で誘導される免疫の程度の指標となる抗体を検出
する方法があります。
3.2
ジカウイルス病の診断のための検査は?
①ジカウィルスそのものを検出する方法には、発症初期の血液(全血,血清)や尿か
ら感染性のあるウィルスを分離同定する方法、ジカウィルス遺伝子を検出する方法が
あります。
②抗体検出検査には以下の方法があります。抗体には,ウィルスに感染して約 10日
後から出現し始める lgM抗体とそれから数日遅れで出現する lgG抗体があります。1gM
抗体は出現後、増加してから2-3 ケ月で消失します。一方、1gG抗体は出現後増加し
ますが、その後血液中に存在し続けます。ジカウイルスに反応する lgM抗体を検出し
たり、発熱等の症状がある時期(急姓期)と3-4週間後(回復期)におけるジカウィ
ルスに対する地G抗体の増加を確認する検査法があります。
3.3
先天性ジカウイルス感染症の診断のための検査は?
先天性ジカウイルス感染症の診断にはウイルス学的な検査が必要ですが、現時点で、
ーつの検査法の結果だけで診断を下すことは難しいと考えられます。ウイルス分離検
査,遺伝子検査,抗体検査等を総合的に行う必要があります。
3.
4 ジカウイルスの検査はどの検体でいつ行うべきか?
①ジカウイルス病の検査の場合
ジカウイルスを検出方法(ウイルス分離同定検査.遺伝子検査)1こは、血液、血清、
尿等が適した検体です。ただし.重要なことは発熱や発疹等の症状のある時期(急性
期)の血液・尿を採取して、検査に供する必要があります。ウィルス分離検査や遺伝
子検査には、血清が検体とされますが、血清よりも全血(末梢血液)が適していると
されています[釘。
抗体検査には、急性期および回復期の血清中のジカウィルスに対する lgG 抗体や
5
IgM抗体の増加(抗体価の有意な上昇といいます)を確認する必要があるので、急性
期および回復期に採取された血清(血液)が必要です。急性期の血液だけ、または,
回復期の血液だけについて抗体検査を実施しても、あまり意味はありません。
②先天性ジカウイルス感染症の検査の場合
先天性ジカウイルス感染症の診断には、血液中の抗体検査や遺伝子増幅検査が実施
されることが必要になります。しかし,検査を実施したからと行って、必ず診断に繋
がる検査成績が得られるとは限りません。今後の調査研究が待たれます。
3.
5 ジカウイルス検査の解釈上の注意点は何か?
①ジカウイルス病の検査の場合
ジカウイルスが血液や尿から分離同定されたり、遺伝子検査でウイルス遺伝子が検
出されたりした場合は、ジカウィルス病と診断されます。しかし,逆にこれらの検査
成績が陰性の場合にジカウイルス病ではないとは言えません。
また、抗体検査においては、次の解釈上の注意点があります。ジカウイルスに近縁
のフラビウイルスであるデングウイルスなどに対する lgG抗体や 1三M抗体は、ジカウ
イルスにも反応する(交差反応と言います)ことがあり、ジカウィルスに対する抗体
検査だけで正確にジカウイルス感染症と診断できない場合もあります。より正確に検
査するには,ジカウイルスに対する抗体検査に加えて患者が感染したと考えられる地
域で流行しているフラビウイルスに対する抗体も測定したり、より正確にジカウイル
スに特異的な抗体を測定するための中和抗体を測定したりする必要があります。
②先天性ジカウイルス感染症の検査の場合
現時点では、何らかの先天異常を呈する新生児からジカウイルス自体が検出された
場合(ウイルスゲノムやウイルス抗原の検出、ウイルス分離)には、先天性ジカウイ
ルス感染症と診断されます。しかし、先天性ジカウイルス感染症の臨床像の全容は明
らかになっておらず、先天異常の種類や頻度、程度も完全には分かっていません。さ
らに、一般的に感染症による先天異常は母体感染の時期により症状が変わってくるこ
とが知られており、無症候性の症例も存在し、ウイルス検出が必ずしも先天異常の存
在を意味する訳ではないことに注意する必要があります。また、先天性ジカウイルス
感染症で報告されている先天異常は、他の病原体の子宮内感染による先天異常(例え
ぱ先天性風疹症候群や先天性サイトメガロウイルス感染症)と似ており、これらの病
原体に対する検査を併せて実施する必要があります。
6
③ジカウイルス1EM陽性および陰性はそれぞれ何を意味するのか?
1三M抗体は感染後早期に出現し始め、約2-3 ケ月で陰性化します。そのためジカウ
イルスに反応する lgM抗体が検出された場合には、最近、ジカウィルスに感染したこ
とを示唆します。しかし,デングウイルスなどの他のフラビウイルスに対する lgM抗
体がジカウイルスにも反応する(交差反応)ことが知られているので、ジカウイルス
に反応する 1酬抗体が検出されたからと言って、ジカウイルス病と診断できません。
臨床症状、曝露歴、ワクチン接種歴、他の病原体検査、ペア血清を用いた lgG検査や
中和抗体検査などの情報を参考に総合的に判断する必要があります。
④ジカウイルスのRT-PCR陰性であれぱ、ジカウイルス感染を除外できるか?
血液や尿の検体が、RT-PCR法と呼ぱれる遺伝子増幅法で陰性を呈したからと言って、
ジカウイルス感染症(ジカウイルス病および先天性ジカウイルス感染症を含む)を否
定することはできません。
⑤ 1三G検査は実施可能か?
国立感染症研究所ウイルス第一部では実施可能です。ただし,ジカウイルス病疑い
患者の検査には、急性期と回復期の2点でジカウイルスに対する lgG抗体を測定する
こと必要です。一時点(急性期のみ、または、回復期のみ)の血液中のジカウイルス
に対する lgG抗体を調べることはあまり意味がありません。デングウィルス等の同じ
仲間のウイルスに対する 1三G抗体がジカウイルスにも反応する(交差反応)ことが知
られています。
7
4.ジカウイルス感染症の治療法は?
ジカウイルス感染症に対する有効な抗ウイルス薬は存在しません。よって飲水を励
行し、症状に応じた対症療法を適宜実施します。なお、急性期の解熱鎮痛薬の投与が
必要な場合には、デング熱が否定されるまではアセトアミノフェンを選択することが
望ましいと考えられます。これは、デング熱ではアスピリンやイブプロフェンなどの
非ステロイド性抗炎症薬は、胃炎や出血傾向を助長するためです。
8
55
ジカウイルス感染症の合併症は?
1 ギラン・バレー症候群
ギラン・バレー症候群(GBS)は、急性の多発根神経炎により主に運動神経が障害
され、四肢の脱力を呈する疾患です。GBSの約7割の症例で、発症前4週間以内に先
行する何らかの感染症状を呈します。2013年の仏領ポリネシアにおけるジカウィルス
感染症の流行時の調査結果から、ジカウイルス感染症がGBSの発症に関連することが
強く示唆されました[9]。WH0はジカウィルス感染がGBSの原因になりうると結論づけ
ていますΠ0]。
2013年から2014年にかけてジカウイルス感染症流行が起こった仏領ボリネシアでは
これまでに42人のジカウィルス感染症に関連したGBSの症例が報告されていますが、
ジカウイルス感染症の症状が出現してから約6日でGBSの症状が出現し、さらに約6
日で症状のピークに達したといいます。この42人のうち約3割の症例で一時的に人
工呼吸管理を要していました[田。
5.2
その他の神経症候群
ジカウイルス感染症に関連した神経症候群として、GBS以外にも、脊髄炎[11]や髄
膜脳炎[1幻を合併した事例が報告されています。これらは極めて稀な合併症と考えら
れます(※先天性ジカウイルス感染症による小頭症については別項を参照)。
9
66
予防策について
1 どのような予防策があるか?
流行地での防蚊対策が最も重要です。具体的には、1)蚊が多い時間・時期・場所を
避ける、2)長袖長ズボンの着用、3)就寝時に蚊帳の使用、4)昆虫忌避剤の使用などを
行います。
また、ジカウイルス感染症では性行為による感染が起こる場合もあります。性行為に
よる感染の予防策として、1)流行地域に滞在中は、症状の有無にかかわらず性行為の
際にコンドームを使用するか性行為を控えること、2)流行地域から帰国した男女は、
症状の有無にかかわらず、最低8週問、パートナーが妊婦の場合は妊娠期間中、性行
為の際に、コンドームを使用するか性行為を控えることが推奨されます。
なお、2016年7月時点で有効性が確立したワクチンはありません。
6
2
昆虫忌避剤の使用方法は?
防蚊対策として有効性が証明されている忌避剤の成分として「ディートΦEe)」
と「イカリジン(ピカリジン)」の二種類があります。日本で認可されているディー
ト含有量は 12%が最高濃度です。忌避剤の効果は、蒸発、雨、発汗、拭くことによっ
て失われるので、屋外で長時問活動する際は、定期的に再塗布する必要があります。
濃度によりディートの持続時間が異なりますが(10%.2時間毎、20%:4時問毎、
24%:5時問毎)、発汗の多少などは個人で大きく異なるので、再塗布の頻度は各人
で調整してください。小児へは、日本では(薬食安発第0824003号) 1) 6 ケ月未満
の乳児には使用しない、 2) 6 ケ月以上2歳未満は 1日 1回、 3) 2歳以上 12歳未満
は、1日1-3回とされていますが、米国や英国では生後2 ケ月以上に対して、成人と
同様の使用方法が承認されています。
2015年3月以降、日本国内でもイカリジンが販売され、使用が可能になりましナニ。
小児へのディート使用は制限されていますが、イカリジンの使用には年齢制限はあり
ません。現在発売されているイカリジン含有忌避剤の有効成分含有量は瑞、有効時間
は6時間とされています。これら忌避剤を使用する場合の注意点として、泳ぐ、発汗
が多い、雨に濡れるなど皮膚表面から忌避剤が失われやすい状況では早めに塗り直す
ことが必要です。ディートやイカリジンの上から日焼け止めを塗ると忌避剤の持続期
間が短くなるので、まず日焼け止めを塗って、その後に忌避剤を塗るなどの注意が必
要です。2016年9月までにディート30%(12歳未満への使用は禁止)、イカリジン 15%
までの高濃度製剤の登録が承認される予定です。
10
3①
6
状況別予防策と指導
幼虫対策は?
日本にもジカウイルスの媒介蚊となりうるヒトスジシマカが生息しています。ヒト
スジシマカの幼虫は雨水マスに最もよく発生します。定期的に IGR(昆虫成長制御郵D
を投与するなどの方法が効果的ですが、個人では対処できないので、保健所等の行政
機関に相談されて下さい。また、植木鉢の受け皿や空き缶・ペットボトルに溜まった
水などにもよく発生するため、発生防止のために定期的に水を捨てる、もしくはその
ような容器を撤去することは個人でも実施可能です。このような幼虫対策が周辺の成
虫密度を抑えることに繋がります。
②医療機関における対策と指導は?
患者血液への曝露によって感染する可能性があります。よって医療従事者は患者の
診療に用いた針の針刺しがないように注意して下さい。患者が出血を伴う場合、医
療従事者は不透過性のガウン及ぴ手袋を着用するなど、接触感染予防策を徹底して下
さい。体液や血液の眼への曝露りスクがある場合には、ゴーグルやフェイスシールド
などで眼を保護します。患者血液で環境が汚染された場合には、水拭きした後、0.1%
次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。患者の個室隔離は必要ありません。
③渡航の際の対策と指導は?
アメリカ合衆国(フロリダ州の一部の郡)、中央及び南アメリカ、カリブ海地域、
東南アジア、アフり力などの流行地域に渡航する場合は、忌避剤スプレー、防蚊ネッ
トの使用、肌の露出を極力避けるなどして、防蚊対策を厳重に行うように指導します。
特に妊娠女性が流行地に渡航する場合には、ジカウイルスに感染すると児が小頭症な
どの症状が伴う先天性ジカウイルス感染症を発症するりスクがあること、妊娠中の方
や妊娠を予定している方は出来る限りりスク地域への渡航は避けることが望ましい
ことを説明します。
流行地から帰国後も、最低2週問程度忌避剤等の防蚊対策を行うことを説明します。
発熱、結膜充血などの特徴的な症状が出た場合は速やかに保健所に相談するか医療機
関に受診するように指導します。
Π
ーー
対象患者別の特記事項
1 妊婦
①妊婦におけるジカウイルスの影響はどのようなものか?
妊婦自身のジカウイルス病が重症化することはありません。しかし、胎内感染が成
立した場合は胎児に小頭症、頭蓋内石灰化に代表される先天性ジカウイルス感染症を
発症するりスクがあります。
②パートナーがジカウイルスに感染している場合、どのような種類の性行為によって
感染のりスクがあるか?
ジカウイルス感染症患者の精液中にジカウイルスが存在することも証明されてお
り、男性から性的パートナーへの性行為による感染事例が報告されています。一方、
女性から性的パートナーへの性行為によると思われる感染事例も報告されています。
キスで感染した事例の報告はありません。
③初期感染からどの程度の期間ジカウイルスをパートナーに感染させうるか?
男性から女性への性行為感染事例の検討から、ジカウイルス病の発症後 41日間程度
は精液に感染性があるという可能性が示されています[13]。
④ジカウイルスは発症後どの程度精液中で検出されるか?
ジカウイルス病と考えられる症状を発症した 93日後に RT-P休法によつてウイルス
剛Aが検出されたとの報告があります[14]。ただし、二れは必ずしも感染性があるこ
とを示すものではありません。
⑤無症候のジカウイルス感染男性は、パートナーに感染させうるか?
流行地域から帰国した無症候の男性からパートナーへの性行為を介した感染も報告
されています[15]。
⑥ジカウイルス感染と小頭症
1.ジカウイルス感染と小頭症は関連があるのか?
ジカウイルスの胎内感染によって、児に小頭症をはじめとする器質的、機能的脳障
害を起こしうることが証明されています。小頭症は先天性ジカウイルス感染症で起こ
12
る先天異常のーつです。
2.胎児超音波が小頭症診断に推奨される理由は何か?
超音波診断法は、胎児や母体への影響が少なく、日常の妊婦健診でも行われる検査
であるため、小頭症の診断に推奨されます。胎内感染が成立しても、胎児が先天性ジ
カウイルス感染症を発症するとは限りません。母体がジカウイルスに曝露された可能
性がある場合は、母体の胎児超音波検査によって中枢神経系を中心とする器質的な胎
児異常について精査します。
3.胎児超音波検査でどのような所見が得られるか?
小頭症(頭周囲長が3パーセンタイル以下)、脳内石灰化、側脳室拡大、小脳低形
成、脳梁欠損、胎盤石灰化、胎児発育遅延、が報告されている所見ですが、いずれも
先天性ジカウイルス感染症に特異的な所見ではないので、胎児に脳障害を起こす他の
疾患を除外する必要があります。
4.胎児超音波検査で小頭症の診断はどのようにいつ頃、診断が可能か?
これまでの先天性ジカウイルス感染症症例の検討は、すべて海外症例であるため、
胎児超音波検査を行うタイミングは国内とは異なります。これまでの報告では、小頭
症と診断されたのは全例が妊娠27 週以降でした。超音波検査で先天性ジカウイルス
感染症に特異的な所見を検出することはできないことから、胎児超音波検査で先天性
ジカウイルス感染症を診断することはできません。また、妊娠初期の診断は困難です。
⑦妊婦の昆虫忌避剤使用に際して特に注意することはあるか?
虫よけスプレーΦE日含有)は原則的に妊婦に使用可能です。ただし、創がある体
表面への噴霧は勧められません。また粘膜面への噴霧は行わないでください。
⑧男性ぱパートナーへのジカウイルス感染を防ぐために、予防策をとるべきか?
ジカウイルス病と診断された、もしくはジカウイルス病に合致する症状を呈している
男性においては、発症した時期から少なくとも8週間はコンドーム使用もしくは性行
為を控えることが推奨されます。
13
⑨カウンセリング
1.性行為感染を介したジカウイルス感染に懸念する患者に何を伝えるべきか?
ジカウイルス流行地域に渡航した男性に、ジカウイルス病を疑う症状が無くても、
(不顕性感染からの)女性への性行為感染の可能性は否定できないこと。もし妊婦も
しくは妊娠している可能性がある女性に性行為を介して感染した場合は、胎児に小頭
症を含む先天異常を来す可能性があることを伝えます。また、少なくとも8週間のコ
ンドーム使用もしくは性行為を控えることを考慮して頂く二とを伝えます。
2.ジカウイルスに感染した男性パートナーをもつ場合に何を伝えるべきか?
妊娠中に女性がジカウイルス感染した場合は、胎児へ脳障害を来す可能性があるこ
と。女性への性行為感染を予防するため、男性がジカウイルス病を発症した時期から
少なくとも8週間はコンドーム使用もしくは性行為を控えるべきであることを伝えま
す。
3.ジカウイルス感染のりスクがある妊婦に対して何を伝えるべきか?
ジカウイルスは、胎内感染によって母子感染することがありうること。感染した胎
児の一部は小頭症等の脳障害を来すこと。妊娠中に胎児超音波検査で明らかな中枢神
経系の異常が認められない場合に、将来的に機能的な障害が残るかどうかはわかって
いないことを伝えます。
4.妊婦がジカウイルスの流行地域に渡航する場合に何を伝えるべきか?
ジカウイルスの流行地域に渡航することは控えるように勧告してください。どうし
ても渡航する必要があるという場合は、蚊に刺されないように防御することが必要で
あること、虫よけスプレーは、妊婦でも使用可能であること、ジカウイルス流行地域
に居住又は滞在している男性との性行為は控えるか、コンドーム使用が望ましいこと
を伝えます。
5.ジカウイルス流行地域に居住又は滞在した妊婦に対して何を伝えるべきか?
これまでの報告では、小頭症を発症する例の多くは妊娠初期(妊娠 1 3 か月)の
母体感染であったことから、特に妊娠初期は蚊に刺されると先天性ジカウイルス感染
症になるりスクが高くなること。また性行為を控えるかコンドームを使用するのが望
14
ましいことを伝えます。2016年8月時点で日本国内はジカウイルス流行地域では無い
ので、国内で蚊に刺されても先天性ジカウィルス感染症のりスクは無いことを伝えま
す。
6.ジカウイルス流行地域に居住している拳児希望のある男女に、何を伝えるべきか?
1)ジカウィルスは蚊媒介もしくは性行為によって感染しうること、蚊にさされない
ようにすること、 2)もしウイルス感染した時点で妊娠していると、胎児に小頭症を
含む先天異常を引き起こすりスクがあること、 3)コンドーム使用は、ジカウイルス
以外の性行為による感染のりスクを下げるというメリットもあること、 4)ジカウィ
ルス流行地域に居住している問は、性行為を控えるかコンドームを使用するのが望ま
しいことを伝えます。
フ.ジカウイルス流行地域に居住している拳児希望のある男女のうち、ジカウイルス病
に橿患した場合に何を伝えるべきか?
ジカウイルス病に櫂患した場合は、男女にかかわらず、発症時期から少なくとも 8
週間は性行為を控えるかコンドームを使用するのが望ましいことを伝えます。そうす
ることで先天性ジカウイルス感染症のりスクを低減させることが期待できます。
8.ジカウイルス流行地域に居住していないが、挙児希望のある男女に何を伝えるべき
カ、?
国内流行が起こらない限り、ジカウィルスに曝露される可能性は極めて稀であるこ
とから妊娠することは問題ないことを伝えます。
9.ジカウイルス流行地域に居住していないが、流行地に渡航してジカウイルスに曝露
した可能性がある男女に対して、「無症候」の際に何を伝えるべきか?
無症候性感染の妊婦においても、先天性ジカウイルス感染症を発症した例があるこ
とから、無症候性でも、ジカウイルスに曝露された時期から少なくとも8週間は性行
為に際しコンドーム使用もしくは性行為を控えることを伝えます。そうすることで先
天性ジカウイルス感染症のりスクを低減させることが期待できます。なお、検査の限
界もあることから、下記の条件を満たさない妊婦は、現時点で検査の対象となりませ
人ノ。
15
フ.
2 小児
①小児でジカウイルスに感染するりスクとなるのはいつか?
小児も成人と同様に、ジカウイルス感染症の流行地域へ渡航すると、蚊に刺されて
感染するりスクがあります。また、胎児期に母体が感染をした場合に、胎盤を介して
胎児がジカウイルスに感染して先天性ジカウイルス感染症を発症するりスクがありま
す。
②先天的な(con三enltaD 伝播と出生後の伝播の違いは何か?
胎児期に母体がジカウイルスに感染をした際に、胎盤を介して移行したウイルスに
胎児が感染する場合があります。一方、出生後にはジカウイルスを保有する蚊に刺さ
れてジカウイルスに感染する場合もあります。なお、分娩前2週間以内に、母体がジ
カウイルスに感染した際には、分娩時に児にウイルス感染しジカウイルス病を発症す
る可能性があります。
③妊娠中に母がジカウイルスに感染した場合、胎児がウイルスに感染し、小頭症を起
こしうるか?
ジカウイルスに胎内で感染した胎児が小頭症をはじめとする器質的、機能的脳障害
を伴うことがあることが証明されています。母体がジカウイルスに感染した際に、出
生児が小頭症を伴う頻度などに関する十分なデータはありませんが、母体にジカウイ
ルス感染が疑われる場合には、超音波検査等の検査を含めて経過観察することが必要
です。
④妊娠中に権患していた又は現在母が権息している場合、授乳はどうすべきか?
ジカウイルスは母乳からも検出されていますが、現時点(2016年8月)で、母乳を
介して子どもが感染した例はありません。 WH0や米国CDCは、りスクとメリットを総
合的に判断し、ジカウイルス感染症の母親においては授乳するメリットの方が高いと
考えられるとし、母乳噛育を推奨しています。
⑤先天性ジカウイルス感染症が疑われる場合ジカウイルスの検査はいつ実施すべき
カ、?
検査に用いる検体は躋帯血、血液、尿であり、可能な限り出生後2日以内に採取する
ことが推奨されます。また胎盤や躋帯組織を利用して追加的な検査を行うことができ
16
るので、躋帯血も合わせ分娩時に検体採取することが望まれます。
⑥先天性ジカウイルス感染症を疑う場合、どのように検査されるか?
血液、血清または血粲、尿からのジカウイルス遺伝子の検出を RT-PCR を用いて行
う他、血清からジカウイルス特異的 IEM抗体、1gG抗体の検出を行います。これらの
検査は最寄りの保健所を介して、地方衛生研究所または国立感染症研究所で実施され
ます。胎盤や躋帯組織を用いての病理組織学的評価やジカウイルス遺伝子の検出は、
国立感染症研究所で実施可能です。しかし、先天性ジカウイルス感染症患者であって
も、必ずしもジカウイルス遺伝子が検出されたり、病理学的にウイルス抗原が検出さ
れたりするわけではないので、診断が難しい場合があります。
⑦小児でジカウイルス病を疑う場合に、検査はいつ推奨されるか?
成人の場合と同様に、ジカウイルス病を疑う症候(発疹又は発熱、およぴ関節痛、
関節炎、結膜炎の中の少なくともーつ)およぴ曝露歴(流行地域への渡航歴)がある
場合にはジカウイルス病の可能性もあるので、急性期の血液およぴ尿を採取して検査
することが必要です。デング熱との鑑別も必要であることからデングウイルスNS1抗
原検出検査も合わせて行うことが重要です。
⑧小児のジカウイルス病でジカウイルス検査結果が陽性であった場合、他にどのよう
な評価を行うか?
小児であってもジカウイルス病が重症化することは稀です。ウイルス学的に診断さ
れれぱ、その後のウイルス学的な評価を行う必要はありません。
⑨小頭症や頭蓋内石灰化、神経学的具常所見が見られた場合にどのような追加フォロ
ーを行うか?
日本国内では、ジカウイルス感染症が流行している事実はありません。母親および
パートナーに海外渡航歴がない場合には、先天性ジカウイルス感染症を疑う必要はあ
りません。
先天性ジカウイルス感染症が疑われる場合には、蚊媒介感染症の診療ガイドライン
(第3版)にそって、ジカウイルス感染についてウイルス学的検査を実施することが
必要です。また、頭囲、身長、体重、妊娠週数の評価に加え、先天感染に伴うその他
の症状(肝腫大、胖腫大、皮疹、出血斑等)の有無、検査所見(CBO、 AST、 ALT、ビ
17
リルビン値等)を確認する。退院前あるいは出生1か月以内に、聴力検査と眼底検査
を実施します。
⑩先天性ジカウイルス感染症が疑われる児において、ジカウイルス検査結果が陽性又
は判定不能場合、どの程度長期のフォローが推奨されるか?
先天性サイトメガロウイルス感染症や先天性ジカウイルス感染症などの母子感染
の患者の長期的な予後は現時点ではよく判っていません。従って、陽性または判定不
能な場合には、無症候性先天性サイトメガロウイルス感染児と同様の発育、発達のフ
オロー、聴力障害の有無などを継時的に評価する必要があります。
⑪妊娠中に母がジカウイルス陽性であった場合、出生時に児がジカウイルス陰性であ
つた場合、どのように追加のフオローを行うか?
胎内感染あるいは周産期感染児の潜伏期問は定かではありませんが、現時点ではジ
カウイル病については2日 12日の潜伏期間が推定されている二とから、周産期感染
としての症状発現(発熱、皮疹、結膜炎、関節痛(四肢を動かさない等))に注意し
ながら生後2から3週間は注意深く経過観察を行います。診断確定のために血清中の
ウイルス遺伝子検査、1gG、1gM抗体測定を適宜実施し、最終的に感染の有無を判断す
ることが大切です。
⑫先天性ジカウイルス感染症の児の予後は?
正確な長期予後は不明ですが、出生時の頭囲は胎内での神経障害を反映していると
考えられます。よって他の先天感染症と同様、小頭症の程度が高度なほど児の予後(痩
墜、発達遅滞、聴力障害、視覚障害等)は不良になると予想されます。
⑬乳幼児、小児がジカウイルスに感染した場合に長期の合併症はあるか?
乳幼児、小児のジカウイルス感染症は、成人伺様発熱、皮疹、関節痛、結膜炎とい
つた軽度の症状のみで軽快すると考えられています。これまで2例の死亡例が報告さ
れていますが、一例は鎌状赤血球貧血を基礎疾患に持つ患児ですΠ6]。仏領ポリネシ
アの流行時に見られたギラン・バレー症候群、急性散在性脳脊髄炎も全例成人例です。
⑭小児でもジカウイルス感染によりギラン・バレー症候群を発症しますか?
18
海外でこれまでに報告されているジカウイルス感染によるギラン・バレー症候群は
主に成人ですが、ギラン・バレー症候群は小児にも認められることから、今後は小児
でも発症する例が報告される可能性があります。
⑮先天性ジカウイルス感染症に関連する事項について
1.ジカウイルス感染と小頭症の関連はあるか?
ジカウイルスの胎内感染によって、児に小頭症をはじめとする器質的、機能的脳障
害を起こしうることが証明されていますΠ刀。
2.先天性ジカウイルス感染症の児ではどのような具常が級借されているか?
臨床徴候として、小頭症、先天性内反足・関節拘縮、網膜異常が報告されています
[1釘。神経画像検査では、頭蓋内石灰化、脳室拡大、神経細胞移動障害(滑脳症、脳
回肥厚症)が報告されていますΠ9]。
3.小頭症の診断基準はどのようなものか?
新生児の小頭症の診断に必要な頭囲は、左右の眉直上、後方は後頭部の一番突出し
ているところを通る周径(前後径周囲長)のことです。出生時週数に応じた頭囲につ
いては、日本小児科学会の在胎期間別出生体重標準値に基づき、3パーセンタイル以
下であるものを小頭症と診断します。
4.先天性小頭症を起こす他の原因には何があるか?
先天性小頭症を起こす疾患として、鑑別すべき疾患として以下に示すTORCHと言わ
れる感染性疾患と非感染性疾患があります。
【感染性疾患(原因となる病原体)】
トキソプラズマ、風疹ウイルス、サイトメガロウイルス、単純へルペスウイルス、梅
毒トレポネーマ、水痘帯状癒疹ウイルス、りンパ球性網脈絡膜炎ウイルス等
【非感染性疾患】
頭蓋骨早期癒合症、染色体異常、先天性代謝異常、化学物質(薬物、アルコール等)
の影響等
19
5.小頭症を来した児でありうる後遺症は何か?
精神運動発達不全やてんかん等の神経学的後遺症をきたす可能性があります。
20
88
ジカウイルス感染症協力医療機関と母子感染ネットワーク医療機関
1 ジカウイルス感染症協力医療機関について
2016年7男 25日時点でジカウィルス感染症協力医療機関として、ご協力いただける施
設(109施設)は以下の URL (h此://WWW.kansensho.OT.'/mos uito/幻ka ⅡSt.htmD の
とおりです。
8.
2 母子感染ネットワーク医療機関について
今後、医療機関において「ジカウィルス感染症を疑う妊婦」が発生した場合に、妊婦に
対して問診や診察などを行い、必要に応じて妊婦の経過観察を行っていただく医療機関と
して、ビ協力いただける施設(12施設)は以下の主おりです。
【産婦人科】
東京大学医学部附属病院女性診療科・産科
富山大学附属病院産婦人科
浜松医科大学医学部附属病院産婦人科
神戸大学医学部附属病院産科婦人科
宮崎大学医学部附属病院産婦人科
長崎大学病院産婦人科
三重大学病院産科婦人科
日本大学医学部附属板橋病院産婦人科
【小児科】
東京大学医学部附属病院小児科
長崎大学病院小児科
藤田保健衛生大学小児科
神戸大学附属病院小児科
21
9.参考文献など
蚊媒介感染症の診療ガイドライン(第3版)
htt :/削W. nih
0
/niid/ima es/e i/den ue/Mos u ito Med iated 160713-3. df
2. MUSSO D, Gub ler DJ. zi胎 Virus. clin Miorob iol Rev.2016; 29:487-524
3. BrasH P, ca lvet GA, siqueira AM, et a l; zika virus outbreak in Rio de Jane iro,
Brazil: clinioal charaoterization. Epidemi010gical and vir010gical Aspeots
PLOS Negl Tr叩 Dis.2016; 10 (4):eoo04636.
4. Duffy MR. chen TH, Hancock wT, et a l; z ika virus outbreak on Yap l$1and, Federated
States of Mioronesia. N Engl ゛ Med.2009; 360(24):2536-43.
5. MUSSO D, Nhan T, Robin E, et a!; potentia l for zika virus transmiss ion through
blood transfusion demonS士rated during an outbreak in Frenoh polynesia, November
2013 to February 2014. Euro survei11.2014; 19 a4)
6. schu ler-Facoini L, Ribeiro EM, Fe itosa lM, et al; poss ib le Assoclation Between
Zika virus lnfection and MicrooeP胎 ly - Braz n ,2015.州WR.2016 ; 65 (3):59-62.
フ. ventura cv, Maia M, Dias N, et al; zika: neur010gical and ocular findin旦S in
infant W辻hout microcephaly. Lanoet.2016; 18 ;387 (10船刀:2502.
8. Lusti三 Y, Mende lson E, paran N, et a l; Deteotion 0十 Zika virus RNA in whole b lood
Of imported zlka virus disease oases up t0 2 months after symptom onset. Euro
Surve i11.2016 ; 30:21 (26).
9. cao-Lormeau vM, Blake A' Mons s, et al: Gui11ain-Barr6 Syndrolne outbreak
associated with zika virus infection in Frenoh polynesla: a case-control study.
Lancet,2016 ; 387 (1002刀:1531-9.
1 0. zi胎 V irus Faot sheet htt :/ W州. who.int med iacentre/fa0土Sheets/zi胎/en/
1 1. M6Char 1舶 S, Herrmam c, POU11ain p, et a l; Acute mye1 辻is due to zika virus
infeoti伽. Lanoet.2016; 387 (10促6):1481.
1 2. carteaux G. Maquart M, Bedet A, et al; zi胎 Virus Assooiated with
Meningoenoephalitis. N En号I J Med.2016 ; 374(16):1595-6
1 3. Turme l JM. Abgueguen p, Hubert B, et a l; Late sexual transmission of zika virus
re lated to probab le long pers istenoe in the semen. Lancet 2016 ;387 (10037):2501
1 4. Mansuy JM, pasq山 er c, Daud in M, et a l; zika virus in semen of a patient returnin"
from a non-ep idemic area. Lancet ln十ect Dis.2016;16 (8):894-5
1 5. Fr60ur l, Mirau i6 S, Hubert B, et al; se刈al transmiss ion of zika virus in an
entirely asymptomatic couple returning from e zika epidemic area, France, April
2016. Euro survein, volume 21, 1Ssue 23,09 June 2016.
1 6. Arzuza-ortega L, P010 A, perez-Tatis G, et a l. Fata l sickle ceH diseases and
22
Z ika v i rus infect ion in gi r ls from c010mb ia. Emerg lnfect D iS 2016 ; 22:925-927.
1 7. Rasmussen sA,゛amieson DJ, H0ηeiη MA, et al; zika virus and Blrth De十eots
Rev iewing the Evidenoe for causa lity. N Engl ゛ Med.2016:19 ;374 (2の:1981-フ.
1 8. de pau la Fre辻as B, de oliveira Dias JR, pr丑Zeres J, et a l; ocu lar Find ings ln
Infants W辻h Miorocephaly Associated with presumed zika virus congenital
Infection in salvador, Brazil. JAMA ophthalm01.2016 Feb 9. doi:
10.1001/jamaoph士halm01.2016.0267
1 9. sohu ler-Faccini L, Ribeiro EM, Fe辻Osa lM, et a l; possib le Association Between
Zika viru$1nfectlon and MioroceP胎 ly - Braz il,2015.棚松.2016;価(3):59-62
23
【編纂】
国立感染症研究所
【執筆】
国立感染症研究所
国立国際医療研究センター
AMED成育疾患克服等総合研究事業
「母子感染に対する母子保健体制構築と医療閉発技術のための研究(ジカウイルス班)」
24
Fly UP