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細菌汚染チタンインプラントに対する炭 酸ガスレーザー

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細菌汚染チタンインプラントに対する炭 酸ガスレーザー
学
学
位 研 究 紹
位
研
究
介
53
紹 介
微鏡および SEM にて表面構造の変化を観察。2.St
r
e
p-
細菌汚染チタンインプラントに対する炭
酸ガスレーザーの殺菌効果と照射領域へ
の細胞付着
Bact
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1の1×10個の洗菌を純チタンディスク表面に
gi
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塗布し,CO レーザーをスポットサイズ直径3
.9
5
mm,エ
ネルギー1
5
∼4
0J
,フルエンス12
2
∼3
2
7J
/
㎠で照射後,細
菌を回収し CFU を算定。またその際のディスクの温度
上昇を照射終了直後から4
0秒後までサーモグラフィーに
て測定。3.P.gi
×1
0個の洗菌をチタンディ
ngi
val
i
s1
スクに塗布後,2と同条件にてレーザーを照射した後,
マウス線維芽細胞様細胞(L9
29
)およびマウス骨芽細胞
様細胞(MC3T3
8時間培養後の照射領域での生
E1)の 4
細 胞 率 を,ま た MC3T3
E1に つ い て は ALP活 性 を
Lowr
y法および共焦点レーザー顕微鏡(CLSM)にて測
定。4.ディスク上の培養細胞に2と同条件で照射を行
新潟大学歯学部歯科補綴学第二講座
口腔細菌学講座
加藤
拓 ,草刈 玄 ,星野悦郎
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い,
照射スポット外側の細胞を対象として生存率を測定,
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n-AM 染 色 後,
CLSM にて観察。
TakuKat
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no
結 果 と
歯科用インプラントは歯牙欠損の補綴治療の一つとし
察
て広く臨床に応用され,良好な咬合機能の回復が享受さ
チタン表面は本実験条件における高フルエンスの
れ,多くの成功例を見る。しかしインプラントが細菌の
存在する口腔と顎骨とを連絡させる構造である宿命とし
CO レーザー照射によって変色や構造変化を起こさず,
CO レーザーのエネルギーはチタンには吸収されにくい
て,インプラント周辺の細菌感染が 慮される必要があ
と
り,その良好な長期的成果により現在のインプラント治
えられた。S.s
angui
sに対する殺菌率はフルエンス
16
3
㎠で9
0%,2
86
/㎠では10
0
%,P.gi
J/
J
ngi
val
i
s殺菌率
療の主流となっているオッセオインテグレーテッドチタ
は1
63
/㎠でほぼ1
00
%であり,より少ないエネルギーで
J
ンインプラントにおいても細菌感染により炎症を起こす
殺菌された。またチタンの表面構造の違いにより殺菌率
症例が見られる。インプラント周囲炎は臨床的,細菌学
に差はなく,レーザー光は微細構造間での反射により凹
的,組織学的に歯周炎に極めて類似した状態を示すこと
凸微細構造内へ入り込んだ細菌に対しても到達している
から歯周治療に準じ治療が行われているが,インプラン
ものと えられた(Tabl
)
.チタンディスク表面の温
e1
ト表面には骨接触面積を増大させる目的で複雑な凹凸微
細構造が付与されているものも多く,感染がその部位ま
度上昇は3
5
℃
J照射において最高でも照射中心部で約14
であり,4
0
秒後には照射前の温度に低下したことから,
で進行すると付着した細菌等の起炎物質の完全な除去が
レーザーの殺菌効果は光熱効果による菌体内の瞬間的な
行いにくい。そこで本研究ではインプラント周囲炎治療
水分の蒸発と細胞膜の変性によると えられた。チタン
の臨床的手法確立の基礎的研究として,CO レーザーを
利用したチタンインプラント表面の殺菌とその際のチタ
ディスクのスポット外部での温度上昇はスポット内部の
ン表面構造の変化,温度上昇,周囲細胞への傷害性およ
熱傷害は及ぼさないと思われた。実際に2
0
Jの照射にお
ける照射スポット外の培養細胞の生存率は約8
5
-9
0
%で
び照射領域への歯周組織性細胞の付着について検討し
た。
1/
3
程度であり,熱伝導によって照射領域外の周囲組織に
あり,CLSM では細胞の生死がスポット内外で明確に分
かれている像が観察され(Fi
)
,レーザーの側方散乱
g.2
材 料 と 方 法
による影響も少ないものと えられた。レーザーにより
殺菌された細菌あるいは菌体成分の残留している領域へ
1.純チタンディスク(表面サンドブラスト処理,削
の L9
2
9,MC3
-E1
の付着,増殖,ALP活性は低エネ
T3
りだし表面の2種)に CO レーザーをスポットサイズ
ルギーの照射でやや低下したもののコントロール群とほ
1.
1
フルエンス 2
63
∼26
3
2J
/
㎠で照射後,落射型顕
mmφ,
ぼ同様であった。これらの結果から,CO レーザーをチタ
5
3
新潟歯学会誌
5
4
2
9
(
1
):
1
9
9
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e1.Bact
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2
5
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2
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±2.
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9
9
.
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3
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0
.
2
±7
.
8
8
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.
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.
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6
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.
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2
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1
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1
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±0
(%)
Me
anki
l
l± S.D.
(n=5;S.s
)
angui
sor3;P.gi
ngi
val
i
s
ンインプラント体にスポットを広げて直接照射した場
合,照射範囲外の付着組織に及ぼす影響は比較的少なく
効率良く殺菌ができ,またその後の細胞付着にも影響が
少ないと思われた。このことからインプラント周囲炎治
療への CO レーザーの応用の可能性が示唆された。
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/㎠,b:2
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/
㎠.
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