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NIRS-based Brain-Computer Interfaceの研究開発
修士論文 修士論文 NIRS-based Brain-Computer Interface の研究開発 高知工科大学大学院 高知工科大学大学院 基盤工学専攻 工学研究科知能機械 知能機械システム システム工学 工学コース 工学研究科 知能機械 システム 工学 コース 知能ロボティクス ロボティクス研究室 知能 ロボティクス 研究室 1125038 雜賀 広記 目次 目次 第1章 第2章 第3章 第4章 緒言・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・1 1. 1 研究背景 1. 2 研究目的 fNIRS 測 定 装 置 に つ い て ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 3 2. 1 近赤外光分光法とは 2. 2 fNIRS 測 定 装 置 の 概 要 2. 3 3 次元位置測定ユニットについて 脳 機 能 と NIRS-based BCI に 用 い る 脳 活 動 に つ い ・ ・ ・ ・ ・ 7 3. 1 大脳皮質について 3. 2 脳機能局在論について 3. 3 前頭葉 3. 4 側頭葉 3. 5 国 際 1 0 -2 0 法 に つ い て 3. 6 N I R S - ba s e d B C I に 用 い る 認 知 活 動 に つ い て 3 . 6 -1 黙読とは 3 . 6 -2 聴覚刺激に対する選択的注意とは NIRS-based BCI 制 御 実 験 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 12 4 . 1 -1 黙読実験概要 4 . 1 -2 黙読実験測定位置 4 . 1 -3 黙読実験内容 4 . 1 -4 NIRS 信 号 解 析 1 4 . 2 -1 聴覚刺激に対する選択的注意を用いた実験概要 4 . 2 -2 聴覚刺激に対する選択的注意を用いた実験測定位置 4 . 2 -3 聴覚刺激に対する選択的注意実験内容 1 4 . 2 -4 聴覚刺激に対する選択的注意実験内容 2 4 . 2 -5 NIRS 信 号 解 析 2 目次 第5章 第6章 実 験 結 果 と 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 18 5 . 1 -1 黙読実験結果 5 . 1 -2 黙読実験識別精度結果 5 . 1 -3 黙読実験考察 5 . 2 -1 聴覚刺激に対する選択的注意実験結果 1 5 . 2 -2 聴覚刺激に対する選択的注意実験結果 2 5 . 2 -3 聴覚刺激に対する選択的注意実験考察 1 5 . 2 -4 聴覚刺激に対する選択的注意実験考察 2 NI RS - b a s e d B C I の た め の 信 号 認 識 手 法 の 開 発 ・ ・ ・ ・ 2 7 6. 1 従来のファジィ推論法と欠点について 6. 2 距離型ファジィ推論法について 6. 3 距離型ファジィ推論法による信号認識手法の開発 6 . 4. 1 ファジィルールの作成 6 . 4. 2 言語ルールによる知識の抽出 6 . 4. 3 知識の定式化 6 . 4. 4 言語変数の定量化 6. 5 第7章 第8章 N I R S - ba s e d B C I 信 号 認 識 ア ル ゴ リ ズ ム 信 号 認 識 手 法 検 証 実 験 と 結 果 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 42 7. 1 検証用データについて 7. 2 実験結果 7. 3 実験考察 終 章 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 48 8. 1 まとめ 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 49 謝 辞 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 51 第1章 第 1章 1. 1 1 緒言 緒言 研究背景 表 . 1 - 1 に 示 さ れ る よ う に 高 齢 化 社 会 が 進 展 す る 中 ,脳 梗 塞 ・ 脳 卒 中 や 身 体 障 害 等 に よ る 肢 体 不 自 由 者 等 の 被 介 護 者 が 増 加 し ,被 介 護 者 に 対 し て介護福祉士等の生活行動をサポートする介助者の不足が問題として 挙 げ ら れ て い る [1]. 肢 体 不 自 由 者 等 の 介 護 は 被 介 護 者 , 介 護 者 共 に 多 く の 身 体 的 ・ 精 神 的 負 担 を 伴 う .対 応 策 の 1 つ と し て ,電 動 車 い す ,歩 行 補 助 機 等 を 用 い て 自 主 的 な 生 活 を 行 う こ と が 挙 げ ら れ ,こ れ ま で に 被 介 護 者 ,介 護 者 を 補 助 す る た め の 福 祉 機 器 も 開 発 さ れ て い る が ,被 介 助 者 が 直 接 操 作 す る こ と が 多 く ,肢 体 不 自 由 者 な ど が 機 器 を 使 用 す る 際 に 操 作 が 困 難 で あ り ,自 主 的 な 生 活 行 動 を 補 助 す る に は 十 分 で は な い と 言 える. Ta b l e .1 - 1 日 本 の 将 来 推 計 人 口 (国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」より) 第1章 2 緒言 こ れ ら の 問 題 解 決 策 と し て ,認 知 活 動 や 運 動 イ メ ー ジ の 想 起 等 の 脳 活 動 状 態 を 侵 襲 ・ 非 侵 襲 的 に 計 測 し ,測 定 さ れ た 信 号 変 化 を 利 用 し て コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル や 機 器 の 操 作 を 行 う 技 術 , Brain-Machine I nt e r f a c e ( B M I ) , B r a i n - C o m p u t e r I n t e r f a c e ( B C I ) の 開 発 が 進 め ら れ て い る ( こ こ で ,B M I は 侵 襲 的 ,B C I は 非 侵 襲 的 と し て 扱 う ) .B M I は 脳 か ら の 電 気 信 号 を 取 り 出 し 機 器 の 操 作 や 失 わ れ た 触 感 覚 の 補 間 ,B C I で は 全 身 麻 痺 患 者 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 等 ,ス イ ッ チ や レ バ ー 等 の 直 接 的 な 動 作 が 不 要 と な る 事 か ら ,被 介 護 者 が 自 身 で 機 器 を 使 い 自 主 的 な 生 活 が 生 活 を 行 う 事 が 可 能 に な る と 予 測 で き ,介 護 福 祉 に 止 ま ら ず 様 々 な 分 野 へ の 応 用 が 期 待 さ れ て い る .し か し な が ら ,現 状 の B M I ,B C I に お い て は ,計 測 デ バ イ ス の 小 型 化 や 入 力 信 号 と な る 脳 機 能 の 解 析 ,認 識 率 の 向 上 な ど の 課 題 が 指 摘 さ れ て い る . 著 者 ら は 使 用 者 の 負 担 が 少 な い BCI に 着 目 し ,B C I の 課 題 実 現 に 向 け て 上 記 に あ る よ う な 課 題 に 取 り 組 ん で い る . ま た , 脳 活 動 の 計 測 に は 脳 波 ( E l e c t r o e n c e p h a l o g ra m : E E G ) を 用 い た 研 究 が 主 流 で あ っ た が [2][3], ノ イ ズ 源 と な り う る 電 子 機 器 が 生 活 に浸透した今日では脳活動計測機器は電磁波に影響されない事が重要 で あ る .そ こ で 本 研 究 で は 脳 波 計 に 比 べ 電 磁 波 に 影 響 さ れ ず ,高 空 間 分 解 能 , 小 拘 束 で 計 測 可 能 な 近 赤 外 線 分 光 法 ( N e a r- I n f r a r e d Spectroscopy: N I R S ) 装 置 を 用 い た N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム の 研 究 開 発 を 行 っ て い る [4][5]. 1. 2 研究目的 本 研 究 で は , N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム の 実 現 化 に 向 け て 課 題 に 取 り 組 ん で い る .特 に ,脳 活 動 は 個 人 差 の 大 き い た め ,入 力 信 号 と な る 脳 活 動 の 特 定 ,機 器 操 作 の た め の 認 知 活 動 信 号 抽 出 は 重 要 な 課 題 で あ る .そ のため,本報告では 1 . N I R S - ba s e d B C I の た め の 脳 活 動 の 特 定 2 . N I R S - ba s e d B C I の た め の 信 号 認 識 手 法 の 開 発 ・ 検 証 を 目 的 と し て N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム の 開 発 を 目 指 す .脳 活 動 の 特 定 に 関 し て は , こ れ ま で に 運 動 イ メ ー ジ [6], 視 覚 誘 電 位 [7]な ど の 認 知 活 動 を 入 力 信 号 と し て 提 案 さ れ て き た が ,本 研 究 で は 寝 た き り の 方 や 筋 委 縮 性 側 索 硬 化 症 (ALS)患 者 等 の 使 用 を 視 野 に 入 れ , 身 体 的 な 動 作 を 必 要 と し な い 内 的 発 話 ,聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 に 注 目 し た .信 号 認 識 手 法 と し て は ,脳 活 動 増 減 の 基 準 と な る ベ ー ス ラ イ ン の 変 動 や 時 間 経 過 に よ る 信 号 変 化 量 の 減 衰 と い っ た NIRS 信 号 の 時 変 特 性 を 考 慮 す る た め , 距離型ファジィ推論法を用いた信号認識手法を提案し,検証を行った. 第2章 fNIRS 測定装置について 第 2章 3 fNIRS 測 定 装 置 に つ い て 本 章 で は N I R S - ba s e d B C I の 測 定 装 置 で あ る f N I R S 測 定 装 置 に つ い て 説 明 を 行 う .ま た 脳 機 能 の 測 定 の 際 の 装 備 ,付 随 の シ ス テ ム に つ い て も説明する. 2. 1 近赤外線分光法とは 近 赤 外 線 分 光 法 は ,吸 光 物 質 を 含 む 液 体 に 光 を 照 射 し た と き の 光 の 減 衰 と 吸 光 物 質 の 濃 度 変 化 を 示 し た B e e r- La mb e r t の 法 則 [ 8 ] に 基 づ き ,大 脳 表 面 (大 脳 皮 質 )の 測 定 領 域 に お け る 局 所 血 流 量 を 計 測 す る 方 法 で あ る . 脳 の 神 経 活 動 に 伴 い 脳 血 流 が 局 所 的 に 変 化 す る Bold 効 果 (Blood Ox yg e n at i o n L e v e l D e p e n d e n t ) か ら ,近 赤 外 線 分 光 法 に よ っ て 脳 活 動 が 行 わ れ た 部 位 の ヘ モ グ ロ ビ ン (Hb)濃 度 変 化 を 知 る 事 が 可 能 と な る [9]. 2. 2 fNIRS 測 定 装 置 の 概 要 本 研 究 で 使 用 し た 機 能 的 近 赤 外 分 光 法 (functional NIRS)測 定 装 置 光 ト ポ グ ラ フ ィ E T G - 71 00 [ 1 0 ] の 写 真 を F i g .2 -1 に ,仕 様 を Tab l e . 2 -1 示 す . F i g. 2 -1 光 ト ポ グ ラ フ ィ E T G - 7 10 0 (日 立 メ デ ィ コ (株 )) 第2章 fNIRS 測定装置について Ta b l e .2 - 1 計測項目 4 E T G -7 10 0 仕 様 酸素化ヘモグロビン濃度変化 還元ヘモグロビン濃度変化 総ヘモグロビン濃度変化 光源 半 導 体 レ ー ザ 2 波 長 ( 6 9 5 nm ,8 3 0 nm ) レ ー ザ ク ラ ス 1 M ( I E C 608 25 - 1 ) 各 24 個 光検出器 24 個 同時測定点数 最 大 72 点 プローブ 光ファイバー 送 信 用 24 本 , 受 信 用 24 本 ホ ル ダ : 4 × 4 (3 個 ) , 3 × 5 (3 個 ) データ出力 ヘモグロビンタイムコースグラフ (テ キ ス ト 形 式 , 静 止 画 :bmp 形 式 ) トボグラフィ画像データ ( 静 止 画 : bm p 形 式 , 動 画 : a v i 形 式 ) サンプリングタイム 質量 0. 1 ~ 10 s e c 約 2 20 k g この装置は株式会社日立メディコが開発した機能的近赤外線分光法 ( f u n c t i o n a l N I R S ) 測 定 装 置 で あ る .頭 皮 上 か ら 頭 蓋 内 に 向 け て 射 光 部 か ら 2 波 長 ( 6 95 n m ,83 0 nm ) の 近 赤 外 光 を 照 射 し ,照 射 位 置 か ら 2 5 ~3 0 mm の 大 脳 皮 質 を 通 っ て く る た め ,こ の 部 分 の 組 織 内 の 脳 血 流 量 変 化 に 影 響 を 酸 化 型 H b ( O xy - H b ) , 還 元 型 H b ( D e o xy - H b ) , そ れ ら を 合 わ せ た 総 H b (To ta l - H b ) を 計 測 す る 事 が 出 来 る ( F i g . 2 -2 ) . 測 定 時 に は ,キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン を 行 い ,キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン 時 の 状 態 を 基 準 と し た 相 対 Hb 濃 度 か ら 脳 活 動 変 化 の 時 間 ・ 空 間 変 化 を 可 視 化 す る こ と が で き る .サ ン プ リ ン グ タ イ ム は 0 .1 ~ 1 0 秒 間 で 任 意 設 定 が 可 能 で あ り ,本 論 文 で は デ ー タ を よ り 詳 細 に 検 証 す る た め サ ン プ リ ン グ タ イ ム は 0.1 秒 で 行 っ た . 第2章 fNIRS 測定装置について F i g. 2 -2 5 測定断面 実 験 時 に 使 用 す る プ ロ ー ブ と 呼 ば れ る 固 定 具 と ,プ ロ ー ブ に 装 着 す る 受 光 部 , 射 光 部 ( オ プ ト ー ド ) の 写 真 を F i g. 2 -3 に 示 す . F i g. 2 -3 F i g. 2 -4 プローブ オプトード 第2章 fNIRS 測定装置について 6 プ ロ ー ブ は 3 ×5 ホ ル ダ ( 2 2 c h ) , 4 ×4 ホ ル ダ ( 24 c h ) の 2 タ イ プ の ホ ル ダ を 任 意 に 組 み 合 わ せ る こ と が で き , F i g. 2 -3 の よ う な 帽 子 型 や そ れ 単 体 で も 頭 部 に 装 着 で き る .プ ロ ー ブ 自 体 は 軽 量 で ,様 々 な 運 動 を 行 っ た ま ま 測 定 す る こ と が で き る . 本 報 告 で は 3×5 ホ ル ダ を 使 っ て 実 験 を 行 っ て ゆ く .射 光 部 ,受 光 部 間 と 検 出 チ ャ ン ネ ル の 位 置 を F i g . 2 - 4 に 示 す . F i g. 2 -5 2. 3 検出チャンネル位置 2 次 元 位 置 計 測 ユ ニ ッ ト (EZT-DM101) に つ い て E T G - 71 00 に は プ ロ ー ブ 装 着 位 置 測 定 に E Z T- D M 10 1 ( F i g. 2 -5 ) を 用 い て い る .こ れ は 光 ト ポ グ ラ フ ィ 用 3 次 元 位 置 測 定 シ ス テ ム の 磁 気 セ ン サ ー 装 置 を 用 い て 実 際 に プ ロ ー ブ を 装 着 し た 位 置 を 3D 表 示 で き , ま た そ の 3D と fMRI で 測 定 し た 脳 と の 位 置 関 係 を 重 ね 合 わ せ る こ と に よ り , よ り 厳 密 に 脳 と Hb 濃 度 変 化 位 置 を 関 係 付 け る こ と が 可 能 と な る . た だ し ,本 報 告 で は fMRI を 用 い た 脳 測 定 は 行 っ て お ら ず , 第 3 章 に 示す頭部形状からの脳部位の特定で計測位置を選んだ. F i g. 2 -6 E Z T- D M 10 1 第3章 脳機能と NIRS-based BCI に用いる認知活動について 第 3章 7 脳 機 能 と NIRS-based BCI に 用 い る 脳活動について こ の 章 で は fNIRS 測 定 装 置 の 測 定 対 象 と な る 大 脳 皮 質 の 機 能 と N I R S - ba s e d B C I の 入 力 と な る 認 知 活 動 , そ れ に 関 わ る 前 頭 葉 と 側 頭 葉 の 機 能 に つ い て 説 明 す る .ま た 脳 機 能 を 計 測 す る 際 に ,測 定 部 位 の 決 定 に 用 い た 国 際 10 - 20 法 に つ い て も 説 明 す る . 3. 1 大 脳 に つ い て 大 脳 ( F i g .3 - 1 ) と は 脳 全 体 の 約 8 割 を 占 め る 重 要 な 部 分 で , 主 に 前 頭 葉 ・ 頭 頂 葉 ・ 後 頭 葉 ・ 側 頭 葉 に 分 か れ , 左 脳 ・右 脳 に も 分 か れ て い る . 表 面 は 大 脳 皮 質 に 覆 わ れ て い て ,大 脳 皮 質 は 運 動 や 知 能 ,感 情 な ど の 高 次機能を司っている. F i g. 3 -1 大脳概略図 3. 2 脳 機 能 局 在 論 に つ い て 脳 機 能 局 在 論 と は 認 知 活 動 な ど の 脳 活 動 が ,大 脳 皮 質 の 部 位 ご と に 違 う と 言 う 説 で あ る .運 動 や 感 覚 に 関 し て は 一 次 運 動 野 に お け る ペ ン フ ィ ー ル ド の 地 図 ( F i g .3 - 2 ) や 脳 機 能 マ ッ ピ ン グ の 根 拠 と し て 用 い ら れ る . 後に挙げる前頭葉や側頭葉にある機能の区分を指す際にはブロード マンの脳地図を用いて行われる. 第3章 脳機能と NIRS-based BCI に用いる認知活動について F i g. 3 -2 8 運動野のホムンクルス ( L o v e , R . J . & W. G . We b b : N e u r o l o g y f o r t h e S p e e c h - L a n g u a g e P a t h o l o g i s t . Butterworth-Heinemann. 1992. p. 19.) 3. 3 前 頭 葉 前 頭 葉 は 感 情 ,思 考 ,知 性 な ど 人 間 の 高 次 機 能 を 司 る 前 頭 前 野 ,手 足 や 体 の 運 動 を 司 る 1 次 運 動 野 ,運 動 前 野 ,体 性 感 覚 連 合 野 な ど に 分 け ら れ る .前 頭 前 野 は 人 の 思 考 ,理 性 ,感 情 に 大 き く 影 響 し て お り 大 脳 の 中 でも重要な部分となっている. ま た N I R S - b a s e d B CI に 用 い る 内 的 発 話 に 大 き く 関 わ る 言 語 野 も 存 在 し て お り ,一 般 的 に ブ ロ ー カ 野 ( 運 動 性 言 語 野 ) ,ウ ェ ル ニ ッ ケ 野 ( 感 覚 性 言 語 野 ) と し て 知 ら れ る ( F i g . 3 -3 ) [ 11 ] . 3. 4 側 頭 葉 側頭葉は,記憶や嗅覚,感性言語等をコントロールする領域である. ま た 聴 覚 処 理 に 関 わ り , 一 次 聴 覚 野 が 存 在 す る ( F i g .3 - 3 ) . N I R S - ba s e d BCI に 用 い る 聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 に 関 し て も 一 次 聴 覚 野 を 計 測対象とする. 第3章 脳機能と NIRS-based BCI に用いる認知活動について 9 F i g. 3 -3 言 語 野 及 び 一 次 聴 覚 野 概 略 図 ( N a t i on a l I n s t i t u te o n D e a f ne s s a n d O t h er C o mm u n ic a t i o n Di s o r d er s ) 3. 5 国 際 10-20 法 に つ い て 国 際 1 0 - 20 法 と は ,頭 部 形 状 か ら 脳 波 電 極 の 位 置 の 決 定 に よ く 用 い ら れ る 手 法 で あ る [ 12 ] . 図 3 - 4 に 示 す よ う に , 鼻 根 部 か ら 後 頭 結 節 , お よ び 左 右 両 耳 介 前 点 の 長 さ を そ れ ぞ れ 1 0 % ,2 0 % で 均 等 に 分 割 し 領 域 を 作 成 す る こ と で ,電 極 配 置 位 置 の 再 現 性 の あ る 導 出 結 果 を 得 る .本 手 法 で も 国 際 1 0 - 20 を 用 い る こ と で 前 頭 前 野 の 言 語 領 域 ,側 頭 葉 の 一 次 聴 覚 野 と思われる部位の導出を行う. 第3章 脳機能と NIRS-based BCI に用いる認知活動について F i g. 3 -4 国 際 1 0 -2 0 法 領 域 分 布 図 (臨 床 検 査 技 術 学 7 臨床生理学 医学書院 10 1995) 3 . 6 NIRS-based BCI に 用 い る 認 知 活 動 に つ い て こ こ で は , NIRS-based BCI に 用 い る 認 知 活 動 に つ い て 説 明 す る . 認 知 活 動 に 対 す る 脳 活 動 に は 個 人 差 が 生 じ る た め ,B C I の 制 御 用 と し て 用 い る に は 様 々 な 認 知 活 動 の 利 用 可 能 性 を 考 慮 す る 必 要 が あ る .本 研 究 で は N I R S - b a s e d B C I 用 の 認 知 活 動 と し て ,新 た に 内 的 発 話 を 用 い た 黙 読 と ,聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 を そ れ ぞ れ N I R S - ba s e d B C I 制 御 用 信 号 と し て 利 用 可 能 で あ る か を 検 討 し た .次 に 黙 読 ,聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択的注意について解説する. 3 . 6-1 黙読とは 黙 読 は 内 的 発 話 の 一 種 で ,頭 の 中 の 音 読 と 呼 ば れ る 具 体 的 発 話 を 伴 わ な い 言 語 的 な 活 動 で あ る .文 章 を 黙 読 し た 際 に ,頭 の 中 で 復 唱 及 び 意 味 の 理 解 が 行 わ れ る .こ れ は 日 常 的 に 特 に 意 識 す る 事 も な く 行 わ れ て い る 認 知 活 動 で あ る 事 か ら 使 用 者 イ メ ー ジ を し 易 く ,ま た 黙 読 を す る 際 語 句 の制御や選択が行える事から高齢者や母語が異なる使用者でも利用が 可能であると考え入力信号として検証を行った. 黙 読 は 言 語 的 な 認 知 活 動 で あ り ,大 脳 皮 質 の ブ ロ ー カ 野 に 関 係 す る 事 が 報 告 さ れ て い る . こ こ で は 測 定 領 域 に 3. 3 節 で 説 明 し た , 言 語 野 を 含む左側前頭前野を測定対象として実験を行った. 第3章 脳機能と NIRS-based BCI に用いる認知活動について 3 . 6-2 11 聴覚刺激に対する選択的注意とは 人は聴覚刺激に対して選択的に注意を向けることにより,様々な聴覚 刺激の中から注目する情報を識別して認知することが出来るとされて い る . こ れ は 超 下 記 刺 激 に 対 す る 周 波 数 選 択 性 [ 13 ] や カ ク テ ル パ ー テ ィ ー 効 果 [ 14 ] 等 の 認 知 機 能 に よ っ て 実 現 さ れ て お り , こ れ ら の 能 力 は 聴 覚 に 関 わ る 一 次 お よ び 高 次 聴 覚 野 ,ま た は 言 語 理 解 に 関 わ る 感 覚 性 言 語 野 が 関 係 し て い る と 示 唆 さ れ て い る [ 15 ] [ 1 6 ] . ま た 右 側 聴 覚 野 は 調 性 音 楽 に 対 す る 反 応 性 が ,左 側 聴 覚 野 は 音 声 言 語 に 対 す る 反 応 性 が 高 い 事 が 報 告 さ れ て い る [17]. 従 っ て , 歌 を 聴 い て い る 時 に そ の 歌 詞 も し く は 旋 律 に 対 し て 選 択 的 注 意 を 向 け た 際 , 3. 4 節 で 説 明 し た 左 右 側 聴 覚 野 の 脳 活 動 に 差 が 生 じ る 事 が 予 測 さ れ , N I R S - ba s e d B C I 入 力 信 号 と し て 利 用 可能であると考えた. 加 え て ,本 報 告 で は 歌 の 趣 向 に 個 人 差 が あ る 事 を 考 慮 し ,聴 覚 刺 激 に 用 い る 歌 に 選 択 性 を 持 た せ ,能 動 選 曲 と 受 動 選 曲 の 歌 を 用 い た 比 較 実 験 を 行 い ,選 択 し た 曲 が 左 右 聴 覚 野 に 与 え る 影 響 を 調 べ る こ と で 実 用 的 な N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム の 構 築 に つ い て 考 慮 し た . 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 第 4章 12 NIRS-based BCI 制 御 実 験 本 章 で は , NIRS-based BCI シ ス テ ム の 入 力 信 号 と し て 選 定 し た 認 知 活 動 が 利 用 可 能 で あ る 事 を 検 証 す る た め の 実 験 を 行 う .前 章 で 挙 げ た 黙 読 行 為 ,聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 に 対 す る 認 知 活 動 を 第 2 章 で 説 明 し た N I R S 測 定 装 置 で 計 測 し ,リ ア ル タ イ ム で 出 力 さ れ る デ ー タ を 用 い て ロ ボ ッ ト ( L E GO M i n d s t o r m s E d u c a t i o n N X T ) の 動 作 を 規 定 以 上 の H b 濃 度 の 上 昇 が 見 ら れ た 場 合 O N ( 歩 行 ) に し ,規 定 以 下 な ら O F F ( 停 止 ) に す る .実 験 結 果 よ り N I R S - b a s e d B C I シ ス テ ム へ の 利 用 可 能 性 ,応 答 性,操作性,再現性を確認する. 4 . 1-1 黙読実験概要 本実験は前章で説明した黙読行為の認知活動における脳活動をもっ て , 実 際 に ロ ボ ッ ト の 歩 行 の O N / OF F を 行 え る か 確 認 す る . 被 験 者 は 健常な右利きの大学生 3 名であった. 4 . 1-2 黙読実験計測位置 測 定 位 置 は 3 .5 節 で 挙 げ た 国 際 1 0 - 20 法 を 用 い て 行 う .ブ ロ ー カ 野 の 成 分 を 含 む と さ れ る F7 周 辺 に 測 定 用 プ ロ ー ブ が 位 置 す る よ う に 装 着 し 測 定 を 行 う .信 号 を 抽 出 す る 位 置 は 事 前 に 予 備 実 験 と し て 数 人 の 被 験 者 に 行 っ た 文 章 を 音 読 し た 際 の N I R S 計 測 で 上 昇 が 見 ら れ た C H 11 と C H 16 が 適 切 で あ る と 判 断 し ,こ の 2 チ ャ ン ネ ル の 計 測 デ ー タ を 平 均 し , 入力信号として用いる事とした. プ ロ ー ブ 装 着 場 所 お よ び 測 定 点 を F i g . 4 -1 に 示 す . F i g. 4 -1 プ ロ ー ブ 装 着 図 お よ び チ ャ ン ネ ル 位 置 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 4 . 1-3 13 黙読実験内容 実 験 で は , 安 静 状 態 ( R E S T ) を 6 0 秒 , 本 の 黙 読 を 行 う 課 題 ( TA S K ) を 30 秒 と 設 定 し , そ れ ぞ れ 3 回 繰 り 返 し 行 い 最 後 に R E S T 60 秒 を 加 え た 実 験 間 の 脳 活 動 を 計 測 し た .そ れ ぞ れ 順 番 に R E S T0 ~ 3 ,TA S K 1~ 3 と す る .REST の 条 件 に は , 視 覚 情 報 統 制 の た め 眼 前 に 提 示 し た 固 視 点 を 注 視 し な が ら 何 も 考 え な い 様 に 示 唆 し た . TA SK の 条 件 に は , 被 験 者 に 文 字 の み で 内 容 が 構 成 さ れ て い る 本 を 手 渡 し ,TA S K 毎 に 被 験 者 が ラ ン ダ ム に 開 い た ペ ー ジ の 初 め の 文 章 か ら 黙 読 を 行 う よ う に ,教 唆 を し た .実 験 風 景 を F i g . 4 -2 に 示 す . F i g. 4 -2 黙 読 実 験 環 境 4 . 1-4 NIRS 信 号 解 析 手 順 1 NIRS で は 計 測 信 号 が キ ャ リ ブ レ ー シ ョ ン 時 を 基 準 と し た 相 対 値 と し て 計 測 さ れ る た め ,そ の 信 号 変 化 の 大 き さ に は 個 人 差 が 存 在 す る .異 な る ス ケ ー ル の 計 測 結 果 が 予 測 さ れ る こ と か ら , 共 通 し た BCI 入 力 信 号 と す る た め に は 信 号 の 正 規 化 が 必 要 と な る .そ こ で 本 研 究 で は ,式 1 に 示 す 標 準 得 点 に よ っ て 信 号 の 正 規 化 を 行 っ た . 式 (1)に お け る 平 均 値 及 び 標 準 偏 差 は , 最 初 の 課 題 (TASK1)が 始 ま る 前 30 秒 間 の 素 得 点 を 用 い て 算 出 し た ( F i g . 4 -3 ) .そ し て 正 規 化 を 行 っ た C H 1 1 と C H 16 の 信 号 を 平 均 し , 標 準 得 点 と し て 扱 い , 標 準 得 点 5 を 閾 値 に 設 定 し BCI 制 御 信 号 と し て 利 用 す る こ と と し た .閾 値 以 上 で ロ ボ ッ ト が 動 作 し ,以 下 な ら 停 止するよう環境を設けた. 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 14 F i g. 4 -3 正 規 化 に お け る 平 均 及 び 標 準 偏 差 選 択 領 域 1 標準得点(z) = 4 . 2-1 測定信号 − 平均値 L (1) 標準偏差 聴覚刺激に対する選択的注意を用いた実験概要 本実験は前章で説明した聴覚刺激に対する選択的注意における一次 聴 覚 野 の 認 知 活 動 の H b 濃 度 変 化 が N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム に 利 用 可 能かを検討する.また得られた結果より実際にロボットの歩行の O N /O FF を 行 え る か 確 認 す る .加 え て 行 っ た 受 動 選 曲 ,能 動 選 曲 を 考 慮 し た Hb 濃 度 変 化 を 検 証 す る 実 験 を 行 っ た .被 験 者 は 健 常 な 右 利 き の 大 学生 3 名であった. 4 . 2-2 聴覚刺激に対する選択的注意の実験計測位置 測 定 部 位 は 3 .5 節 で 挙 げ た 国 際 1 0 - 20 法 を 用 い て ,右 側 聴 覚 野 に あ た る T 3 に プ ロ ー ブ 1 の L 2 1 ,左 側 聴 覚 野 に あ た る T 4 に プ ロ ー ブ 2 の R 3 が 位 置 す る よ う に 装 着 し た . 装 着 場 所 お よ び 測 定 点 を F i g .4 - 4 に , 測 定 チ ャ ン ネ ル と の 相 関 図 を Fig.4-5 に 示 す . 本 研 究 で は 左 右 側 聴 覚 野 の 脳 血 流 動 態 反 応 に 着 目 し て い る 事 か ら , F i g.4 に 示 す 計 測 チ ャ ン ネ ル の う ち 左 右 側 と も に 5 チ ャ ン ネ ル( 左 側:L 16 〜 L 18 , L 21 , L 22;右 側:R 3 , R 4, R7〜 R9) に つ い て 計 測 を 行 っ た . 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 15 F i g. 4 -4 p r o b e s et t i n g F i g4 - 5 c h a n n e l p o s i t i o n 4 . 2-3 聴覚刺激に対する選択的注意実験内容 1 実 験 で は 被 験 者 に イ ヤ ホ ン を 装 着 さ せ ,聴 覚 刺 激 を 提 示 し た .聴 覚 刺 激 に は 被 験 者 が 既 知 の 歌 詞 を 持 つ 曲 を 用 い た .実 験 前 に ホ ワ イ ト ノ イ ズ を 試 聴 さ せ 被 験 者 が 違 和 感 を 覚 え な い 音 量 に 調 整 し た .実 験 課 題 と し て 曲 中 の 歌 詞 に 注 意 す る 歌 詞 注 意 課 題 ,曲 中 の 旋 律 に 注 意 す る 旋 律 注 意 課 題 を 設 定 し ,被 験 者 に は 各 課 題 開 始 時 に 指 定 さ れ る 実 験 者 か ら 指 示 に 従 い ,イ ヤ ホ ン か ら 聞 こ え る 曲 の 歌 詞 も し く は 旋 律 に 注 意 し て 聴 取 す る よ う教示を行った.また視覚情報を統制するために,被験者の眼前に F i g. 4 -6 に 示 す 固 視 点 を 提 示 し , 実 験 中 は 常 に 固 視 点 を 注 視 す る 様 教 示 を 行 っ た . 各 T A S K の 長 さ は 3 0 秒 に 設 定 し , 各 T A S K の 間 に は 60 秒 間 の R E S T と な る 条 件 を 挿 入 し た .R E S T 条 件 に お い て は ,被 験 者 に ホ ワ イ ト ノ イ ズ を 提 示 し ,ホ ワ イ ト ノ イ ズ が 聞 こ え て い る 間 は 何 も 考 え ず 固 視 点 を 注 視 す る よ う 教 示 を 行 っ た .一 回 の 計 測 で 歌 詞 注 意 及 び 旋 律 注 意 の 課 題 を 各 1 回 行 う 事 と し ,行 う 順 番 は 被 験 者 毎 に ラ ン ダ ム と し 順 序 効 果 の 統 制 を 行 っ た .ま た ,実 験 結 果 よ り 得 ら れ た 計 測 デ ー タ を 利 用 し て第4章の始めに記載したロボットを用いて動作を行う.実験風景を 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 16 F i g. 4 -7 に 示 す . 4 . 2-4 聴覚刺激に対する選択的注意実験内容 2 動 的 に 選 択 し た 歌 と 受 動 的 に 選 択 さ れ た 歌 を 用 い て ,歌 の 歌 詞 に 注 意 す る 歌 詞 注 意 課 題 と ,歌 の 旋 律 に 注 意 す る 旋 律 注 意 課 題 を 設 定 し ,被 験 者にはイヤホンから歌の歌詞もしくは旋律に注意して聴取するよう教 示 を 行 っ た .歌 の 選 択 は 被 験 者 の 好 み で 行 い ,自 身 が 所 有 す る 局 長 が 早 いと思われる歌と遅いと思われる歌を用いて実験を行った. 実 験 手 順 は T A S K A ( 能 動 選 曲 - 高 速 ) , T A SK B ( 能 動 選 曲 - 低 速 ) を 2 回 ず つ ラ ン ダ ム で 提 示 し た , 各 TASK は 30 秒 間 で あ る . TASK 間 に は 60 秒 の REST を 挟 ん だ . そ の 他 の 実 験 環 境 は 4. 2-3 と ほ ぼ 同 様 で あ る . F i g4 - 6 固 視 点 及 び 注 意 教 唆 画 面 F i g4 - 7 聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 実 験 環 境 第4章 NIRS-based BCI 制御実験 4 . 2-5 17 NIRS 信 号 解 析 手 順 2 4 . 1 -4 節 に あ る 解 析 手 順 と ほ ぼ 同 意 の 算 出 方 法 , 標 準 得 点 を 用 い て 解 析を行う.異なる点は,聴覚刺激に対する選択的注意実験においては 1 度の実験過程において 2 種類の課題,2 回の繰り返しが存在するため, 平 均 及 び 標 準 偏 差 を 取 る 領 域 を R E S T の 60 秒 間 で は 前 の T A S K の 影 響 が 存 在 す る 可 能 性 が 考 え ら れ る .よ っ て 聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 実 験 の 解 析 で は Fig.4-7 に 示 す TASK 開 始 前 の REST10 秒 間 を 指 標 と し た . ロ ボ ッ ト の 動 作 は 4 .1 - 4 節 と ほ ぼ 同 様 に 行 っ た . 変 更 点 と し て 閾 値 は 3 に設定を行った. F i g. 4 -7 正 規 化 に お け る 平 均 及 び 標 準 偏 差 選 択 領 域 2 第5章 18 実験結果と考察 第 5章 実験結果と考察 本章では第 4 章で行った黙読実験と聴覚刺激に対する選択的注意実 験 の 結 果 を 示 し 考 察 す る . ま た , TASK 識 別 精 度 , REST 認 識 精 度 の 算 出を行い考察する. 5 . 1-1 黙読実験結果 黙 読 実 験 に お い て 得 ら れ た 実 験 結 果 を 示 す .実 験 結 果 は 正 規 化 を 行 っ た 領 域 で あ る T A S K1 の 30 秒 前 か ら 表 示 し て あ る . 時 系 列 デ ー タ で は 横 軸 を sec, 縦 軸 に 標 準 得 点 z を 表 記 す る . F i g. 5 -1 被験者 A 黙読実験結果 F i g. 5 -2 被験者 B 黙読実験結果 第5章 19 実験結果と考察 F i g. 5 -3 5 . 1-2 被験者 C 黙読実験結果 黙読実験識別精度結果 実 験 結 果 よ り そ れ ぞ れ 算 出・評 価 し た 認 識 精 度 表 を 示 す ( T a b l e1 ~ 3 ) . 計 測 さ れ た 信 号 を 用 い た O N / O FF 判 断 を 行 う た め に , 本 シ ス テ ム に お い て は 閾 値 処 理 に よ っ て 信 号 識 別 を 行 う と 事 と し た .閾 値 は 標 準 偏 差 単 位 で あ る 標 準 得 点 の 値 を 用 い て ,R E S T 群 か ら 十 分 な 区 別 が 可 能 で あ る 標 準 得 点 5 を 基 準 と し ,信 号 処 理 で 得 ら れ た 制 御 信 号 値 が 5 以 上 と な る 場 合 ス イ ッ チ を O N ,5 未 満 の 場 合 ス イ ッ チ を O F F と し た .本 論 文 で 提 案 し た BCI シ ス テ ム の 信 号 識 別 精 度 を 評 価 す る た め に , 計 測 デ ー タ か ら 式 (2), 式 (3)に 示 す 条 件 毎 の 認 識 精 度 を 算 出 し た . TASK 認識精度= 閾値以上の標準得点時 間 L ( 2) TASK 時間 REST 認識精度= 閾値以下の標準得点時 間 L (3) TASK 時間 第5章 20 実験結果と考察 Tab l e . 5 - 1 被験者 A 認識率表 Tab l e . 5 - 2 被験者 B 認識率表 Tab l e . 5 - 3 被験者 C 認識率表 第5章 21 実験結果と考察 5 . 1-3 黙読実験考察 黙 読 実 験 で は ,入 力 信 号 に 個 人 差 が 現 れ た も の の ,被 験 者 A ,B ,C 共 に TASK1 に 対 し て 閾 値 判 別 が 可 能 な 入 力 信 号 が 得 ら れ た こ と か ら , B C I 入 力 信 号 へ の 利 用 可 能 性 が 示 さ れ た .被 験 者 A は ,単 純 な 閾 値 設 定 に よ り T A S K2 , 3 で も 十 分 信 号 識 別 が 可 能 だ と 思 わ れ る が , 被 験 者 B , C で は 時 間 の 経 過 に つ れ て 脳 活 動 が 小 さ く な る 傾 向 が 見 ら れ る .こ れ は 実 験 に 対 す る 注 意 力 ・ 集 中 力 の 散 漫 ,刺 激 に 対 す る 慣 れ な ど の 生 理 現 象 や 認 知 状 態 の 特 性 で あ る と 思 わ れ ,こ の 問 題 に 対 応 す る た め に は 閾 値 判 断を個人ごとに最適化するアルゴリズムや必要な信号だけを抽出する フィルダリングが必要である. ま た 脳 波 を 利 用 し た B C I で は ,視 覚 的 フ ィ ー ド バ ッ ク を 用 い た 繰 り 返 し課題を行う訓練により信号の増幅および認識率が上昇することが報 告 さ れ て い る [14]こ と か ら , 訓 練 効 果 に 対 し て も 考 慮 し な け れ ば な ら な い. 5 . 2-1 聴覚刺激に対する選択的注意実験結果 1 本実験では時系列データとして有意な活動が得られなかったため, F i g. 5 -4 ~ 6 に 示 す よ う に 被 験 者 毎 の 左 右 側 聴 覚 野 に 相 当 す る 各 計 測 チ ャ ンネルの課題ごとの標準得点の加算平均を行った. 標 準 得 点 14 12 10 8 6 4 2 0 -2 -4 L16 L17 L18 L21 L22 歌詞注意 R3 R4 旋律注意 F i g. 5 -4 r e s u l t f r o m S ub j e c t A R7 R8 R9 第5章 22 実験結果と考察 F i g. 5 -5 r e s u l t f r o m S ub j e c t B 40 35 30 25 標 20 準 15 得 10 点 5 0 -5 -10 L16 L17 L18 L21 L22 歌詞注意 R3 R4 R7 R8 R9 旋律注意 F i g. 5 -6 r e s u l t f r o m S ub j e c t C ま た , 時 系 列 デ ー タ で 顕 著 な Hb 濃 度 変 化 が 見 ら れ た 被 験 者 C に お い て 行 っ た ロ ボ ッ ト 動 作 実 験 を F i g . 5 -7 を 示 す . 使 用 チ ャ ン ネ ル は , 左 側 聴 覚 野 で 顕 著 な 反 応 が 確 認 さ れ た L 2 0 ,L21 の 標 準 得 点 の 平 均 を .右 側 聴 覚 野 で 顕 著 な 反 応 が 確 認 さ れ た R3, R8 の 標 準 得 点 の 平 均 を 用 い た . ま た 敷 居 の 設 定 は ,黙 読 行 為 に 比 べ て 傾 聴 の 最 大 標 準 得 点 が 低 か っ た た め 3 に 設 定 を し ,実 験 を 行 っ た .左 側 聴 覚 野 の 標 準 得 点 が 閾 値 以 上 な ら ロ ボ ッ ト が 歩 行 を ,右 側 聴 覚 野 の 標 準 得 点 が 閾 値 以 上 な ら ロ ボ ッ ト が 腕 を振るように実験を行った. 第5章 実験結果と考察 23 F i g. 5 -7 r e s u l t f r o m S ub j e c t C t i m e l i n e 5 . 2-2 聴覚刺激に対する選択的注意実験結果 2 F i g. 5 -8 ~ 7 に 受 動 選 曲 の 速 さ ご と の 実 験 結 果 を 各 計 測 チ ャ ン ネ ル の 課 題ごとに加算平均を行った標準得点を示す. F i g. 5 -8 r e s u l t f r o m S ub j e c t A s p e e d i l y s o n g 第5章 実験結果と考察 F i g. 5 -9 r e s u l t f r o m S ub j e c t A s l o w l y s o n g F i g. 5 -1 0 r e s u l t f r o m S u bj e c t B s p e e d i l y s o ng F i g. 5 - 11 r e s u l t f r o m S ub j e c t B s l o w l y s o ng 24 第5章 実験結果と考察 25 F i g. 5 -1 2 r e s u l t f r o m S u bj e c t C s p e e d i l y s o ng F i g. 5 -1 3 r e s u l t f r o m S u bj e c t C s l o w l y s o ng 5 . 2-3 聴覚刺激に対する選択的注意実験考察 1 実験結果より,各被験者において課題毎に異なるパターンの脳血流動 態 反 応 が 観 察 さ れ た .従 っ て ,歌 詞 注 意 課 題 と 旋 律 注 意 課 題 で は 脳 活 動 パ タ ー ン が 異 な る こ と が 確 認 さ れ ,聴 覚 刺 激 に 対 す る 選 択 的 注 意 に 関 す る 脳 活 動 が BCI シ ス テ ム の 入 力 信 号 と し て の 利 用 可 能 で あ る 事 が 示 さ れ た と 考 え ら れ る .一 方 で 被 験 者 に よ っ て 脳 血 流 動 態 反 応 の 変 化 パ タ ー ン が 異 な る 事 が 認 め ら れ た .こ れ は 被 験 者 に よ っ て 各 課 題 に お け る 聞 き 取り方や特に意識せず聴取している状態の聞き取り特性に個人差があ っ た た め だ と 考 え ら れ , 実 際 に BCI を 構 築 し て い く 上 で は , よ り 被 験 者 の 聴 取 に 対 す る 意 識 の 向 け 方 を 統 一 す る 教 示 方 法 の 確 立 ,被 験 者 が 脳 活 動 を 誘 発 し や す い 聴 覚 刺 激 の 評 価 ,お よ び 個 人 の 特 性 に 併 せ た 信 号 解 析アルゴリズムの作成が必要になると考えられる. また今回は各被験者に対して各課題 1 回のみ行わせたが,今後は繰り 返し実験を行いさらに課題時の脳活動を被験者にフィードバックする 事 で , BCI 操 作 の 熟 練 に 応 じ た 脳 活 動 の 変 化 に つ い て も 評 価 し て い く 必要がある. 第5章 実験結果と考察 5 . 2-4 26 聴覚刺激に対する選択的注意実験考察 2 能動的な歌を用いた場合でも左右聴覚野の活動が安静状態よりも上 昇 す る 結 果 が 得 ら れ た . こ れ に よ り BCI の シ ス テ ム に 被 験 者 自 身 が 選 択 し た 歌 を 使 用 す る こ と が 可 能 で あ る と 考 え ら れ る .ま た 能 動 的 な 選 択 した歌を使用した場合の脳活動が増加するチャンネルが存在すること か ら , 能 動 的 に 選 択 し た 歌 を 用 い る こ と に よ っ て BCI 信 号 識 別 率 の 向 上が期待できる. 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 第 6章 27 NIRS-based BCI の た め の 信号認識手法の開発 NIRS-based BCI シ ス テ ム の 実 用 化 へ の 課 題 と し て , 脳 活 動 増 減 の 基 準となるベースラインの変動や繰り返しの認知活動による信号変化量 の 減 衰 と い っ た N I R S 信 号 特 有 の 時 変 特 性 が 存 在 す る .加 え て N I R S 計 測 信 号 は 人 間 の 主 観 的 な 感 覚 に よ っ て 信 号 認 識 が 行 え る 事 か ら ,こ れ ら を 考 慮 し 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 [ 18 ] [ 1 9 ] を 用 い た 信 号 認 識 手 法 を 提 案 す る .始 め に 往 来 の フ ァ ジ ィ 推 論 法 に つ い て 述 べ た 後 ,本 手 法 で 用 い た 距 離型ファジィ推論について説明を行う. 6. 1 従来のファジィ推論法と欠点について フ ァ ジ ィ 推 論 と は ,フ ァ ジ ィ 集 合 に よ っ て 定 量 化 さ れ る あ い ま い な 概 念 を 扱 え る 推 論 で あ る .入 力 情 報 と フ ァ ジ ィ 集 合 を 突 き 合 わ せ て 必 要 な 制 御 操 作 量 を 決 定 す る こ と で あ り ,一 般 的 に フ ァ ジ ィ 制 御 で 用 い ら れ る フ ァ ジ ィ 推 論 は ,フ ァ ジ ィ 論 理 に 基 づ く フ ァ ジ ィ 推 論 法 よ り も 簡 略 化 さ れた推論法を用いる.これは以下のような理由が挙げられる. 1. フ ァ ジ ィ 推 論 の た め の 入 力 情 報 が 一 般 に フ ァ ジ ィ 集 合 で は な く 実 数 値である. 2. フ ァ ジ ィ 制 御 で は フ ァ ジ ィ 推 論 の 計 算 速 度 を 速 め る 必 要 性 が あ る このためファジィ制御のための推論法としては様々な方法が提案さ れている. フ ァ ジ ィ 推 論 法 に は 一 般 的 に 直 接 法 と 間 接 法 が あ る .直 接 法 は フ ァ ジ ィ 命 題 の 真 理 値 と し て ,メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 の 値 を 直 接 用 い て 推 論 す る 方 法 で あ る .こ の 推 論 法 は 非 常 に 理 解 し や す く ,従 来 の フ ァ ジ ィ 制 御 に お い て 最 も 扱 わ れ て き た .直 接 法 の 代 表 的 な フ ァ ジ ィ 推 論 法 に は 以 下 の 推論法が挙げられる. ( 1 ) m i n - ma x 重 心 法 (2)product-sum 重 心 法 (3)簡 略 推 論 法 (4)関 数 型 推 論 法 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 28 し か し な が ら こ れ ら の 直 接 推 論 法 は ,制 御 対 象 の 状 態 変 数 で あ り ,フ ァ ジ ィ 制 御 に お け る 入 力 変 数 で あ る 前 件 部 と ,与 え ら れ た 事 実 と の 共 通 集合の高さがどの程度一致しているかを示す適合度をファジィ推論の 根拠として用いているが,以下のような欠点が挙げられる. i. 複数個の推論規則における前件部が疎である場合,つまり,前件部 集合が互いに空の共通部分を持つ場合,事実がこの空集合に入力さ れ る と 直 接 推 論 法 で は 推 論 の 結 果 を 求 め る 事 が 出 来 な い .F i g . 6 -1 に 簡単な例を示す. F i g6 - 1 直接ファジィ推論法の欠点 1 第6章 ii. NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 29 推論規則の前件部,後件部と事実が凸なファジィ集合である場合に は推論結果も凸である事が望まれるが,直接推論法では必ずしも推 論 結 果 が 望 ま れ る 結 果 に な る と は 限 ら な い . Fig6-2 に 簡 単 な 例 を 示 す. F i g6 - 2 直接ファジィ推論法の欠点 2 第6章 iii. NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 30 前件部と事実が一致した場合,推論規則において前件部に対応した 後件部が推論結果として望まれるが,この場合においても必ずしも 望まれる推論結果になるとは限らない.これは分離規則が満たされ て い な い 事 に な る . F i g 6 -3 に 簡 単 な 例 を 示 す . F i g6 - 3 6. 2 直接ファジィ推論法の欠点 3 距離型ファジィ推論法について 前 項 に 挙 げ た 直 接 推 論 法 の 欠 点 を 克 服 す る た め に は ,往 来 の フ ァ ジ ィ 推 論 の 仕 組 み と は 異 な る 出 発 点 か ら 議 論 す る こ と が 必 要 で あ る .王 ,土 谷 ,水 本 ら は 推 論 の 根 拠 と し て フ ァ ジ ィ 集 合 間 の 距 離 に 基 づ く 距 離 型 フ ァジィ推論法を提案しており,先ほどの直接法の欠点を克服している. 距離型ファジィ推論法の特徴を挙げる. 第6章 I. NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 31 前件部と事実とが相容れない場合でも推論が可能である. II . 後 件 部 が 凸 な フ ァ ジ ィ 集 合 で あ れ ば , 推 論 結 果 も 凸 な フ ァ ジ ィ 集 合 II I . となる. 分離規則を厳密に満たしている. 次 に フ ァ ジ ィ 集 合 間 の 距 離 の 公 理 に つ い て 述 べ る .実 数 の 全 体 R を 全 体 集 合 と し て ,F ( R ) で R に お け る フ ァ ジ ィ 集 合 の 全 体 を 表 す .ま た 異 な る概念を区別して表すときには,R の右下に添え字を付けて区別する. 定 義 1 : フ ァ ジ ィ 集 合 A ∈ F ( R ) が 有 界 で あ る と は , ∀ ∈ ( 0 ,1 ] α に 対 し て , A の α -レ ベ ル 集 合 Aα = {x ∈ R µ A ( x ) ≥ α ) } L ( 4) が有界である時である. 定 義 2: フ ァ ジ ィ 集 合 A∈ F(R)の 高 さ MA は 次 の よ う に 定 義 さ れ る . M A = sup µ A ( x ) L ( 5) 定 義 3: 高 さ MA が 1 で あ る フ ァ ジ ィ 集 合 A は 正 規 な フ ァ ジ ィ 集 合 と 呼ばれる. 定 義 4: ∀ x 1 x 2 ∈ R , に 対 し て , フ ァ ジ ィ 集 合 A ∈ F ( R ) の メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 μ A ( x ) が 次 式 を 満 た し て い れ ば ,フ ァ ジ ィ 集 合 A は 凸 な フ ァ ジ ィ 集 合 で あ る . た だ し , ∀ x 0 ∈ [ m i n ( x 1 ,x 2 ) , m ax ( x 1 ,x 2 ) ] . µ A ( x 0 ) ≥ min [µ A ( x1 ), µ A ( x 2 ) ] L (5) 以 下 で は 有 界 凸 な フ ァ ジ ィ 集 合 の 全 体 を F(R)で 表 す . ま た , Fn(R)で F(R)に お け る 正 規 な フ ァ ジ ィ 集 合 の 全 体 を 表 す . つ ま り , Fn(R)は 有 界 か つ 正 規 な 凸 フ ァ ジ ィ 集 合 の 全 体 を 表 す . 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 32 定 義 5 : 任 意 の 有 界 な フ ァ ジ ィ 集 合 A の メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 μ A (x) と し て , A の α -レ ベ ル 集 合 を Aα と 表 し て , Aα の 上 限 sup Aα と Aα の 下 限 inf Aα を 次 の よ う に 定 義 す る . α≠0 のとき sup Aα = sup {x ∈ R µ A ( x ) ≥ α ) inf Aα = inf {x ∈ R µ A ( x ) ≥ α ) } } inf A0 = inf {x ∈ R µ A ( x ) > 0) } } α≠0 のとき sup A0 = sup {x ∈ R µ A ( x ) > 0 ) L (6) L (7 ) L (8) L (9 ) 以 下 で は 混 乱 を 起 こ さ な い 限 り sup A α を A α , inf A α を Aα と 書 く こ と が あ る . A が 有 界 凸 な フ ァ ジ ィ 集 合 で あ る 場 合 , A の α -レ ベ ル 集 合 Aα は 閉 区 間 に な り 次 の よ う に 表 せ る . Aα = [inf Aα , sup Aα ] = [ Aα , Aα ] L (10 ) 定 義 6: 高 さ MA の フ ァ ジ ィ 集 合 A を 正 規 化 し た フ ァ ジ ィ 集 合 AM の メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 μ AM (x)は 次 の よ う に 定 義 す る . µ A M ( x) = 1 µ A ( x ), ∀ x ∈ R MA L (11) も し , A が F(R) に お け る フ ァ ジ ィ 集 合 で あ れ ば , 正 規 化 し た フ ァ ジ ィ 集 合 AM は Fn(R)中 の 要 素 と な り , 定 義 5 に よ り A M { = inf {x ∈ R µ の上限と下限は次の式で表される. sup AM α = sup x ∈ R µ M α ( x ) ≥ α ⋅ M α ) }L (12 ) inf AM α た だ し , α ∈ (0, 1) Mα (x ) ≥ α ⋅ M α ) }L (13) 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 33 定 義 7: あ る 台 集 合 上 で 定 義 さ れ た 任 意 の 2 つ の フ ァ ジ ィ 集 合 A, B に 実 数 d(A,B)が 対 応 し , 次 の 3 つ の 条 件 を 満 足 す る と き , d(A, B)を こ の 台 集 合 上 の 距 離 関 数 と い う . た だ し , C は 台 集 合 上 に おける任意のファジィ集合である. d ( A, B) ≥ 0; d ( A, B) = 0 ⇔ A = B .d ( A, B) = d ( A, B) d ( A, B) ≤ d ( A, C ) + d (C , B) L (14) L (15) L (16). 定 義 8: 連 続 メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 を も つ フ ァ ジ ィ 集 合 A, B∈ F(R)に 対 し て , 次 式 で 定 義 さ れ る 実 数 関 数 d(A,B)を F(R)上 の 距 離 関 数 と いう.ただし,1 ≤ p < ∞,⋅ は絶対値で表す. p d ( A, B) = ∫ inf AMα − inf BMα dα 0 1 1 p p + ∫ sup AMα − sup BMα dα 0 1 1 p L (17) ∞ 1 1 + ∫ − 1 µ A (x ) − − 1 µ B ( x ) dx −∞ M A MB p 1 p この式は定義 7 で述べた 3 つの条件を満たしている. 以上で距離型ファジィ推論におけるファジィ集合間の距離の行李に つ いて 述 べ た .こ こ で ,距 離関 数 の 式に お いて ,p の 値 を 2 と し て最 も よく使われる典型的なファジィ集合間の簡略化距離計算公式を与える. 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 34 次に本手法で用いたシングルトンの基本形の距離の計算を示す. ・シングルトンの場合 F i g 6 -4 の よ う な シ ン グ ル ト ン A と シ ン グ ル ト ン B を 与 え る . F i g. 6 -4 シングルトン シ ン グ ル ト ン の 場 合 , メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 の 最 大 値 が 1 で , α -レ ベ ル 集 合 の 上 限 と 下 限 が 等 し い の で , 距 離 計 算 式 は 式 (18)と な る . d ( A, B ) = a − b L (18) 次にファジィ集合間の距離を利用した距離型ファジィ推論法につい て 述 べ る . ま ず Ta b l e .6 - 1 の よ う な 論 理 規 則 を 与 え る . Ta b l e .6 - 1 推論規則 R 1 : x1 = A11 , L , x m = A1m ⇒ y = B 1 R 2 : x1 = A 21 ,L , x m = A 2 m ⇒ y = B 2 M M M M M R i : x1 = A i1 ,L , x m = A im ⇒ y = B i M M M M M R n : x1 = A n1 ,L , x m = A nm ⇒ y = B n 事実 : x1 = A1 ,L , x m = A m 推論結果 : y = B 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 35 た だ し , i = 1 , 2 … , n , j =1 , 2 … , m . A i j , B i , A j , B は そ れ ぞ れ 前 件 部 , 後 件 部 , 与 え ら れ た 事 実 及 び 推 論 結 果 を 表 し , Aij, Aj ∈ F(RAj), Bi∈ F(RB)と す る . ま た , 次 の 2 つ の 仮 定 の も と で 推 論 を 行 う . 1) 前 件 部 フ ァ ジ ィ 集 合 Aij と 事 実 フ ァ ジ ィ 集 合 Aj の 種 類 に つ い て 特 に 制 限 が な い が , 推 論 規 則 R1 ~ Rn に お い て , 前 件 部 が ま っ た く 同 一 で あ る 推 論 規 則 は 存 在 し な い と す る .す な わ ち ,∀ q 1 , q1 ≠ q2 に 対 し て , ∑ d (A m q1 l ) q2∈ { 1 , 2, … n } , , Aq 2 ≠ 0 と す る . こ の 仮 定 は 互 い に 矛 盾 i =1 l する推論規則を排除するためである. 2) 後 件 部 に つ い て , k ∈ { 1, ・ ・ ・ , n } が 1 つ 以 上 存 在 し て , B k ∈ F n ( R B ) を満たす.この仮定は推論結果に正規性を持たせるためである.つ ま り , B∈ Fn(RB)を 満 た す た め で あ る . も し 推 論 結 果 が こ の 性 質 を 必要としない場合,この仮定を外しても問題ない. 本手法で用いたファジィ集合距離に基づく簡略推論法について述べ る . Tab l e . 6 -2 の よ う な 推 論 規 則 を 与 え る . Ta b l e .6 - 2 推論規則 R : x1 = A , L , xm = A1m ⇒ y = C1 1 11 R 2 : x1 = A21 , L , xm = A 2 m ⇒ y = C2 M M M M M R i : x1 = Ai1 , L , xm = Aim ⇒ y = Ci M M M M M R n : x1 = An1 , L , xm = A nm ⇒ y = Cn 事実 : x1 = A1 , L , xm = A m 推論結果 : y = y0 た だ し , i = 1 , 2 … , n , j = 1 ,2 … , m . A i j , C i , A j , y 0 は そ れ ぞ れ 前 件 部 , 後 件 部 ,与 え ら れ た 事 実 及 び 推 論 結 果 を 表 し ,A i j ,A j ,C i ∈ R と す る . ま た 先 ほ ど 述 べ た 2 つ の 仮 定 の う ち , 1)だ け を 推 論 条 件 と す る . 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 36 ファジィ集合距離に基づく簡略推論法は以下の手順によって行われる. S t e p1 : ま ず , 定 義 7 の 公 理 を 満 た す 計 算 法 を 用 い て , A i j と A j と の 距 離 dij(Aij, Aj)を 計 算 す る . 次 式 に よ り d1~ dn を 計 算 す る . ( d i = ∑ d ij Aij , A j m j =1 ) L (19) i = 1,2,L , n また,事実が実数である場合は距離関数において p の値を 1 として. d i = ∑ x ij , x j m L (20) j =1 i = 1,2,L , n となる. S t e p2 : 推 論 結 果 は 式 ( 2 1 ) で 求 め る . n C i ∏dj ∑ i =1 j =1, j ≠i y0 = n n ∑ ∏dj n L ( 22 ) i =1 j =1, j ≠i 以 上 で ,本 手 法 で 用 い た 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 の 簡 略 推 論 法 ア ル ゴ リ ズ ム に つ い て 述 べ た .通 常 の フ ァ ジ ィ 推 論 で は ,前 件 部 は フ ァ ジ ィ 集 合 で な け れ ば 推 論 で き な い .こ れ に 対 し て 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 は 推 論 の 根 拠 が 距 離 に 基 づ い て い る の で ,前 件 部 が シ ン グ ル ト ン で あ る 場 合 に お い て も 適 切 な 推 論 結 果 を 得 る こ と が で き る .B C I 制 御 に 用 い る 入 出 力 情 報 は 通 常 , 実 数 値 で あ る た め , こ れ ら の 推 論 法 は BCI 制 御 に は 非 常 に 有 利である. 第6章 6. 3 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 37 距離型ファジィ推論法による信号認識手法の開発 本報告で用いる距離型ファジィ推論法は,自然言語で表現された前 件部と後件部をメンバーシップ関数によってファジィルールの集合に 変 換 し ,入 力 さ れ る 事 実 と 各 ル ー ル と の 距 離 情 報 に 基 づ き 推 論 を 行 う 方 法 で あ る . NIRS-based BCI で 用 い ら れ る 計 測 デ ー タ の 総 Hb 濃 度 変 化 が 認 知 活 動 の 開 始 時 に 相 対 信 号 が 上 昇 し ,終 了 時 に ベ ー ス ラ イ ン に 戻 る 事 か ら ,そ の 信 号 の 増 減 量 を 基 に 信 号 特 性 の 知 識 を 蓄 積 し ,フ ァ ジ ィ ル ー ル の 設 定 を 行 う .本 手 法 で は ,計 測 時 間 毎 に 推 論 を 行 い そ の 推 論 結 果 を N I R S - ba s e d B C I に お け る ス イ ッ チ の 切 り 替 え の 制 御 信 号 と し て 用 い る. 6. 4. 1 ファジィルールの作成 信号認識を行うにあたって基準となるファジィルールを定める必要が あ り ,そ の 基 準 ル ー ル を 基 に 計 測 デ ー タ の 推 論 を 行 う .本 手 法 で の フ ァ ジィルールとはファジィ集合による前件部と入力信号を比較して目的 と す る Hb 濃 度 変 化 の 特 徴 を 抽 出 す る ル ー ル と す る .そ こ で ル ー ル の 前 件 部 は 測 定 点 と そ の 時 刻 の 間 隔 , 後 件 部 で は ス イ ッ チ と し て 1, 0, -1 を 用 い る 事 と す る .ま た ,黙 読 行 為 を 行 っ た 際 の N I R S 計 測 信 号 が 正 の 値 に な る 事 ,認 知 活 動 終 了 時 に は 0 ま た は 負 の 値 に 推 移 す る 知 識 に 対 し てもルールを作成し信号認識に用いた. 6. 4. 2 言語ルールによる知識の抽出 N I R S - ba s e d B C I の 制 御 を 目 的 に , 言 語 ル ー ル の 設 定 を 行 う . N I R S 信 号 の 微 細 な 変 動 を 考 慮 し た 推 論 を 行 う た め ,前 件 部 で は 測 定 点 と 計 測 デ ー タ の 比 較 を 行 い ,増 減 量 の 度 合 い に よ り 設 定 す る .後 件 部 で は 推 論 を行う測定点とそれぞれの時刻での信号とを比較して上昇傾向であれ ば 出 力 信 号 ス イ ッ チ を ON に , 変 化 が な け れ ば ス イ ッ チ の 現 状 を 維 持 , 下 降 傾 向 な ら ば O F F に す る .こ れ を フ ァ ジ ィ ル ー ル α と す る .Tab l e . 6 -3 にファジィルールαの言語ルールを示す. 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 Ta b l e .6 - 3 38 言語ルールα R1: も し 計 測 信 号 が 増 加 傾 向 な ら , ス イ ッ チ を ON に せ よ . R2: も し 計 測 信 号 が 少 し の 変 化 な ら , ス イ ッ チ の 状 態 を 維 持 せ よ . R3: も し 計 測 信 号 が 変 化 し な い な ら , ス イ ッ チ の 状 態 を 維 持 せ よ . R4: も し 計 測 信 号 が 減 少 傾 向 な ら , ス イ ッ チ を OFF に せ よ . 同 様 に , 認 知 活 動 に お い て NIRS 計 測 信 号 が 正 の 値 に , 安 静 時 に は 零 付 近 お よ び 負 の 値 に な る 知 識 を ル ー ル に 用 い た .前 件 部 で は デ ー タ の 比 較 に 加 え て ,正 の 値 で あ る か ,負 の 値 で あ る か を 認 識 す る .後 件 部 で は ファジィルールαより推論された結果に信号増減を設けるようルール を 設 定 し た . こ れ を フ ァ ジ ィ ル ー ル β と す る . Ta b l e .6 - 4 に フ ァ ジ ィ ル ールαの言語ルールを示す. R1: Ta b l e .6 - 3 言語ルールβ もし計測信号が正の値かつ増加傾向なら,増加傾向を強調せよ. R2: も し 計 測 信 号 が 負 の 値 か つ 減 少 傾 向 な ら , 減 少 傾 向 を 強 調 せ よ . 6. 4. 3 知識の定式化 Ta b l e .6 - 2 , Tab l e . 6 -3 の 言 語 ル ー ル に お け る 前 件 部 と 後 件 部 を 定 式 化 す る .言 語 ル ー ル α の 前 件 部 で は 測 定 点 の 0 .5 秒 前 ,1 秒 前 ,1 . 5 秒 前 , 2.0 秒 前 の 0 .5 秒 間 隔 で 計 測 デ ー タ の 比 較 を 行 い , 増 減 量 の 度 合 い に よ り 設 定 す る .後 件 部 で は 推 論 を 行 う 測 定 点 と そ れ ぞ れ の 時 刻 で の 信 号 と を 比 較 し て 上 昇 傾 向 で あ れ ば 出 力 信 号 を 1 と し て ス イ ッ チ を O N に ,変 化 が な け れ ば 出 力 信 号 を 0 と し て 現 状 を 維 持 ,下 降 傾 向 な ら ば - 1 で O FF に す る .ま た 後 見 部 ル ー ル は 計 算 上 1 ,0 ,0 ,-1 の 4 つ で 設 定 を 行 っ た . 同 様 に , 認 知 活 動 に お い て NIRS 計 測 信 号 が 正 の 値 に , 安 静 時 に は 零 付 近 お よ び 負 の 値 に な る 知 識 を ル ー ル に 用 い た . 前 件 部 で は 0 . 5 ~ 1 .5 秒 の 0.5 秒 間 隔 で の デ ー タ の 比 較 に 加 え て ,正 の 値 で あ る か ,負 の 値 で あ る か を 認 識 す る .後 件 部 で は フ ァ ジ ィ ル ー ル α よ り 推 論 さ れ た 結 果 に 信 号 増 減 を 設 け る よ う ル ー ル を 設 定 し た .こ れ を フ ァ ジ ィ ル ー ル β と す る . こ れ ら の ル ー ル を 表 わ す , Aij, Bi は そ れ ぞ れ 前 件 部 , 後 件 部 で あ る. 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 Ta b l e .6 - 4 39 ファジシルールα R1 : xN (kT ) = A11 , xN ((k − 1)T ) = A12 , R 2 : xN (kT ) = A21 , xN ((k − 1)T ) = A22 , R 3 : xN (kT ) = A31 , xN ((k − 1)T ) = A32 , R 4 : xN (kT ) = A41 , xN ((k − 1)T ) = A42 , xN ((k − 2)T ) = A13 , xN ((k − 3)T ) = A14 ⇒ y1 (kT ) = B1 xN ((k − 2)T ) = A23 , xN ((k − 3)T ) = A24 ⇒ y2 (kT ) = B2 xN ((k − 2)T ) = A33 , xN ((k − 3)T ) = A34 ⇒ y3 (kT ) = B3 xN ((k − 2)T ) = A43 , xN ((k − 3)T ) = A44 ⇒ y4 (kT ) = B4 x N (kT ) = {X N (kT ) − X N ((k − 1)T )}/ T x N ((k − 1)T ) = {X N (kT ) − X N ((k − 2)T )}/ T x N ((k − 2)T ) = {X N (kT ) − X N ((k − 3)T )}/ T (T = 0.5) x N ((k − 3)T ) = {X N (kT ) − X N ((k − 4)T )}/ T Ta b l e .6 - 5 ファジィルールβ R1 : x N (kT ) = C11 , x N ((k − 1)T ) = C12 , R 2 : x N (kT ) = C 21 , x N ((k − 1)T ) = C 22 , R 3 : x N (kT ) = C31 , x N ((k − 1)T ) = C32 , x N ((k − 2)T ) = C13 x N ((k − 2)T ) = C 23 x N ((k − 2)T ) = C33 (k = 0,1,...) ⇒ y1 (kT ) = D1 ⇒ y 2 (kT ) = D2 ⇒ y3 (kT ) = D3 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 6. 4. 4 40 言語変数の定量化 定式化された知識のファジィ集合によって言語変数の定量化を行う. 本 報 告 で は 前 件 部・後 件 部 共 に メ ン バ ー シ ッ プ 関 数 の 幅 を 零 に 収 束 さ せ た シ ン グ ル ト ン を 用 い る . そ れ ぞ れ の 前 件 部 ・ 後 件 部 を F i g .6 - 5 ~ 6 - 8 に示す. F i g. 6 -5 ファジィルールα F i g. 6 -6 F i g. 6 -7 前件部のメンバーシップ関数 ファジィルールα ファジィルールβ 後件部の実数値 前件部のメンバーシップ関数 第6章 NIRS-based BCI のための信号認識手法開発 F i g. 6 -8 6. 5 ファジィルールα 41 後件部の実数値 NIRS-based BCI 信 号 認 識 ア ル ゴ リ ズ ム 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 で は 距 離 関 数 に 基 づ き ,入 力 信 号 X n ( t ) と 前 件 部 と の 距 離 を 計 算 す る . 本 手 法 で の 距 離 計 算 式 を 式 ( 23 ) に 示 す . d (Aij , x N ({k − ( j − 1)}T )) = x N ({k − ( j − 1)}T ) − Aij L (23) また入力信号と入力信号から距離の近い前件部とを比較するルール (知 識 半 径 :こ こ で は ル ー ル 数 を と る ) に よ っ て 出 力 さ れ る 推 論 結 果 Y(t) を 式 ( 2 4 ) , 式 ( 2 5 ) , 式 ( 26 ) に よ り 算 出 す る . ∑ d (A ij , xN ({k − ( j − 1 )}T )) (i = 1 ~ 4; n = 4 ) L (24) ∑ d (C ij , xN ({k − ( j − 1 )}T )) ( i = 1 ~ 3; n = 3 ) L (25) n d ai = j =1 n d ci = j =1 ∑ Y (t ) = i=1 m ∑ i =1 ∏ ∑ m m D i d j =1, j ≠ i m ∏ d j =1, j ≠ i cj ⋅ cj i=1 n ∑ i =1 ∏ n n B i d j=1, j ≠ i n ∏ d j =1, j ≠ i aj L (26) aj (m = 3) (n = 4) 第7章 信号認識手法検証実験と結果考察 第 7章 42 信号認識手法検証実験と結果考察 本 章 で は ,第 6 章 で 提 案 し た 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 を 用 い た 信 号 認 識 手 法 が N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム へ 利 用 可 能 で あ る 事 を 検 討 す る . 7. 1 検証用データについて 信 号 認 識 手 法 の 検 証 の た め 行 う 実 験 は ,第 4 章 で 説 明 し た 黙 読 行 為 に お け る 実 験 手 順 と 同 様 で あ る .ま た N I R S - ba s e d B C I 使 用 の 際 の 再 現 性 , 汎 用 性 の 検 証 の た め 1 人 の 被 験 者 に は 2 回 実 験 を 施 し .合 計 で 3 人 の 健 常 な 右 利 き の 大 学 生 3 名 被 験 者 の 計 測 デ ー タ を 使 用 す る .加 え て ,検 証 用 デ ー タ に は 信 号 変 化 の 平 滑 化 の た め , 計 測 信 号 か ら 0 . 1 ~ 0 .4 秒 前 の 信号で単純移動平均を行っている. 7. 2 実験結果 入力を標準得点として,開発した認識手法に推論を行った結果を F i g. 7 -1 ~ 7 - 8 に 示 す . 実 験 結 果 は 正 規 化 を 行 っ た 領 域 で あ る T A S K 1 の 30 秒 前 か ら 表 示 し て あ る .入 力 デ ー タ で は 横 軸 を s e c ,縦 軸 に 標 準 得 点 z を表記する. 第7章 43 信号認識手法検証実験と結果考察 F i g. 7 -1 被 験 者 A F i g. 7 -2 被 験 者 A 1 回目 1 回目 入力データ 推論結果 第7章 44 信号認識手法検証実験と結果考察 F i g. 7 -3 被 験 者 A F i g. 7 -4 被 験 者 A 2 回目 2 回目 入力データ 推論結果 第7章 45 信号認識手法検証実験と結果考察 F i g. 7 -5 被 験 者 B F i g. 7 -6 被 験 者 B 入力データ 推論結果 第7章 46 信号認識手法検証実験と結果考察 F i g. 7 -7 被 験 者 C F i g. 7 -8 被 験 者 C 入力データ 推論結果 第7章 7. 3 信号認識手法検証実験と結果考察 47 実験考察 推 論 結 果 よ り , 入 力 デ ー タ か ら 各 TA S K 開 始 ・ 終 了 時 に 信 号 増 減 を 認 識 し て 出 力 信 号 を 変 化 さ せ る 事 が 確 認 で き た .ま た , REST 時 に お い て 多少の変動は見られるものの0へ収束する傾向があり検出したい認知 活 動 の 特 徴 を 抽 出 し て い る 事 が 確 認 で き た .従 っ て ,距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 を 用 い る 事 に よ っ て NIRS 信 号 か ら 特 徴 あ る 信 号 識 別 が 確 認 さ れ , 本 手 法 が N I R S - b a s e d B CI の 入 力 信 号 識 別 に 利 用 可 能 で あ る 事 が 示 さ れ たと考える. 再 現 性 , 汎 用 性 に 関 し て は ス イ ッ チ ON に 対 す る 信 号 認 識 が 確 認 さ れ た も の の ,一 方 で 入 力 デ ー タ に よ っ て ベ ー ス ラ イ ン 変 動 ・ 脳 活 動 に よ る 計 測 信 号 減 衰 の 影 響 に よ っ て OFF 信 号 が 小 さ い 推 論 結 果 も 得 ら れ た . これは信号の減少傾向におけるファジィルールが適切でない事が考え ら れ る . ま た 被 験 者 B の TA S K3 の よ う に 認 知 活 動 が 顕 著 で な い 場 合 に は 本 報 告 の フ ァ ジ ィ ル ー ル で は 対 応 で き て い な か っ た た め ,新 た な フ ァ ジィルールを作成する必要がある. 今後は前件部・後件部のファジィ集合をシングルトンから三角集合な ど に す る こ と や ,適 切 な フ ァ ジ ィ ル ー ル の 作 成 ・ 反 映 に よ っ て 信 号 検 出 の精度が向上すると思われる. 第8章 第 8章 8. 1 48 結章 終章 まとめ 本 研 究 で は 介 護 福 祉 機 器 に 適 用 す る N I R S -b a s e d B C I 実 現 の た め , N I R S - ba s e d B C I の 入 力 信 号 と な る 認 知 活 動 の 検 討 , 及 び 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 を 用 い た NIRS 測 定 信 号 認 識 手 法 の 開 発 を 行 っ た . 黙 読 実 験 で は ,一 部 の 被 験 者 に は 実 用 可 能 な 結 果 が 得 ら れ た た め ,今 後 も NIRS-based BCI シ ス テ ム の 入 力 信 号 と し て 用 い ら れ る 事 が 考 え ら れる. 左 右 聴 覚 野 を 用 い た BCI シ ス テ ム の 実 験 で は , BCI 入 力 信 号 を 誘 発 さ せ る 歌 を 能 動 的 に 選 択 す る こ と が 可 能 で あ る か 検 討 し た .本 実 験 で は 有 効 で あ る 結 果 は 得 ら れ な か っ た が , 聴 覚 刺 激 を 用 い た BCI シ ス テ ム の 実 用 化 の た め に ,実 験 結 果 の 蓄 積 ,信 号 の 再 現 性 ,信 号 判 断 の ア ル ゴ リズムの構成を行っていく. 信 号 認 識 手 法 と し て 距 離 型 フ ァ ジ ィ 推 論 法 を 用 い た N I R S - ba s e d B C I シ ス テ ム で は ,実 験 結 果 よ り N I R S 測 定 信 号 か ら 特 徴 の あ る 信 号 抽 出 が 可 能 で あ る と 考 え ら れ る .今 後 は こ れ ら の 実 験 結 果 を 踏 ま え て フ ァ ジ ィ ル ー ル の 決 定 ,フ ァ ジ ィ 集 合 の 構 成 ,ス イ ッ チ 信 号 判 断 の ア ル ゴ リ ズ ム の 構 成 を 課 題 と し て N I R S - b a s e d B CI の 開 発 を 行 う . 49 参考文献 参考文献 [1] 独 立 行 政 法 人 福 祉 医 療 機 構 情報システム部WAM NET事業課 統 計 調 査 資 料 h t t p : // w ww.w a m. g o. j p , [2] 山 崎 敏 正 ,坂 本 美 甫 : Single-trial EEGs を 利 用 麻 似 子 ,本 井 し た BCI の 実 現 に 向 け て --ICA、 ECDL、 数 量 化 分 析 2 類 、 BNM の 適 用 (ニ ュ ー ロ コ ン ピ ュ ー テ ィ ン グ ), IEICE technical report, Vo l .1 08 , N o. 26 4 , p p . 35 - 3 8 , 20 08 [3] 加 納 慎一郎,山岸 智久,宮本 浩一郎,吉信 達夫:聴覚刺激 の 音 脈 分 凝 を 利 用 し た B C I シ ス テ ム の 開 発 ,I E I C E t e c h n i c a l r e p o r t . 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