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アジア太平洋の明日を創る JOINT VENTURE

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アジア太平洋の明日を創る JOINT VENTURE
近藤鉄雄の政策提言
アジア太平洋の明日を創る
JOINT VENTURE PROGRAM を
-カリフォルニア大学バークレイ校(UCB)と INES-
新時代戦略研究所(INES)代表取締役
近藤 鉄雄
★UC Berkeley Symposium in Tokyo
“The 21st Century Economy : Technology and Entrepreneurship”
今年の6月1日ウエステン・ホテル東京のギャラクシルールームで午前9時から午後5時半まで UC
Berkeley Symposium in Tokyo “ The 21st
Century
Economy : Technology and
Entrepreneurship”が開催された。これはカリフォルニア大学バークレー校(UCB)の経営学大
学院(ハース・スクール・オブ・ビジネス)と工学部の両大学院が共催で行ったもので、 UCBから
Donald A. Mcquade 副総長(国際関係担当)、ビジネス・スクール学部長の Laura Tyson 教授、
工学部長の A. Richard Newton 教授らが揃って来日した。
UCBはスタンフォード大学と並んでシリコンバーレを中核とする米国の最先端IT技術の研究開
発を支えてきた。ここでの最近の新しい教育プログラムはUCBの伝統あるビジネス・スクールと国
際的にもトップ水準を誇る工学部の共同による教育研究開発のプログラムである。これまで経営
学部は企業経営や財務管理、マーケディングなどの専門家を養成し、一方工学部は優れた技術
者のための教育や研究を主目的としてきた。このようにそれぞれの領域に分けてきたコースに両
学部から選ばれた大学院生を一緒にして新しいマーケトニーズをどう開拓するか、そのためにどう
のような商品開発を行い、それをどう具体的に製造し販売していくか。マーケットニーズと技術開
発、生産性の向上、マネジメントの効率化、資金調達といった全プロセスについて学生たちの真
剣な議論が進められていく。このコースを修学した学生たちは優秀な企業家としてシリコンバレー
をはじめアメリカ産業の広い分野においてめざましい活躍をしはじめている。今回のシンポジウム
はこのようなUCBの新しい学際教育研究プログラムをわが国に紹介することを大きな目的として
開催された。
同日は午前9時冒頭にハース・ビジネス・スクールの Tyson 学部長から「アメリカ経済―大変革時
代の政策展望」というオープンニーグスピーチがあった。Tyson 教授はクリントン大統領の初代大
統領経済諮問委員長としてUCBの経済学教授からワシントンに赴任した。女性でこの要職につ
いたのは彼女がはじめてであった。(彼女のあとも女性で同じUCBの経済学部教授であった
Janet Yellen 博士が委員長に就任した。彼女のご主人は今年経済学のノーベル賞を受賞した
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同じ UCB の経済学部教授 George A.Akerlof 博士である。)Tyson 学部長は今アメリカ経済はか
っての勢いを失っているかのようにみえるものの米国経済の基本は依然としてダイナミックで健全
あり、連邦政府の財政状況、またFRBの金利政策の操作可能の巾からいっても充分に景気に対
応できる。従ってアメリカ景気はV型でないにしてもU型の回復が見込まれるというものであった。
その後につづいた午前の基調講演は(株)NTTドコモの立川敬二氏による「モバイルフロンティア
への挑戦」。その後はパネルディスカション「21 世紀におけるアントレプレナーシップの最新モデ
ル群」。パネリストがイ・アクセス(株)の千本倖生社長、モバイル・インターネットキャピタル(株)の
西岡郁夫社長、楽天(株)の三木谷浩史社長の3人で、モデレーターがハースビジネス・スクール
の Jerome Engel 教授であった。昼食前に「IT先進県をめざして」という北川正恭三重県知事の記
念講演があった。
午後の基調演説は Newton 工学部長の「次世代デジタル革命の基盤づくりーUCB工学大学院の
革新」。同教授は電子工学回路とシステムデザインの領域における研究で数多くの受賞があり、
シリコンバレーを代表する最も創造的な研究者といわれている。彼は最近UCBの工学部の研究
が産業技術にとどまらず福祉や医療、生命科学の領域においても活発な研究業績を上げている
という話をした。
午後のパネルディスカションは「テクノロジーとアントレプレナーシップービジネス成功の基本スキ
ル」と題して Andrew Isaac 教授の司会で行われた。パネリストは一橋大学大学院国際企業戦略
研究科長の竹内弘高教授、(株)ネオテニーの伊藤穣一社長とアイベックコーポレションの手嶋雅
夫会長。Andrew Isaac 博士はハース・スクールと工学部との共同プログラムのエグゼクティブ・デ
ィレクターでUCBで最も学生に人気のある教授だ。最後に日本におけるUCB同窓会の代表の1
人であるNECの前会長、現相談役の金子尚志氏による「起業家精神により企業に新しい活力を」
というクロージングスピーチがあった。
このシンポジウムはUCBがわが国において一般に公開して行ったはじめての試みであった。30
社を超える企業の方々からご協力をいただき、400 名近い参加者があり大盛会で、非常に有益な
ものであったと皆さんから喜ばれた。このようなシンポジウムによってわが国の産業界とUCBとの
交流がこれから極めて親密なものになれば、それはお互に大変有意義なものになるであろう。
アメリカにはハーバードやMIT、プリンストン、エールのようにそれこそ世界トップの大学研究機関
が数多くある。それらは全て素晴らしいものであるが、UCBはその中でも学問分野の広さ、多様さ、
教授および研究者の数、そして研究教育施設の充実において群を抜いている。ノーベル賞を受
賞した教授の数も 15 名を超える文字通り、世界最高級の研究教育の場である。そして彼等は勿
論世界中の研究者と密接な交流があり、とりわけアジア太平洋の各地域から数多くの学者、研究
者、学生達がここに集り、真剣に研究し相互に深く交流をしている。私はこれからわが国がアジア
太平洋地域とこれまで以上に親密な交流と相互協力を進めて行こうとするのであれば、UCBは
戦略的に極めて重要な役割を果たすものと確信する。
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わが国の大学研究教育機関にアジア太平洋地域から優れた人材を数多く招いて教育研究の交
流を進めることは勿論大事である。昨年、世界のIT化推進のために 150 億ドルの資金を提供する
と沖縄サッミトで森前総理が発言された。このことに関して私は資金を各地にただ配分するのでは
なくて、その金を纏めて Okinawa Institute of ITを大学院レベルの教育研究機関として沖縄に
設立する。そして世界中から、IT に関する最高の学者研究者を教授陣に招く、そこに海外からと
りわけアジア太平洋地域の各地から優秀な学生を呼び集めたらいいと提言した(INES
Strategic Report 6ー近藤鉄雄「巻頭提言・21 世紀を創る発想の転換」平成 12 年 11 月)今日
私のこの考え方に極めて近い発想をもって科学技術政策担当兼沖縄担当大臣の尾身幸次氏が
いろいろ努力されていることは嬉しい限りである。
そうはいっても言葉の問題もあり、また日本の大学における学位が、MAでも Ph.D.でも、国際的
に通用するものとして広く認められていないという実情から見ても、アジア太平洋地域の優秀な青
年たちは第一にアメリカの一流大学に彼等の留学先を選ぶということである。そういう流れの中で、
UCBにアジア太平洋各地から数多くの優秀な学生、研究生が集るということであるなら、(現にU
CBでは大学院以上の研究者、学生の半分が中南米およびアジア太平洋地域から学生である)
むしろわが国はUCBに日本の優秀な研究者、学生を多数留学させて彼らと一緒に学び研究させ
ることで人的交流を深めてもらう。それをベースに日本はアジア太平洋地域、さらに中南米にまで
伸びる環太平洋の人的ネットワクを広げて行くべきではないか。こういう意味からわが国とUCBの
関係をもっと深め親密なものにすることは、21 世紀にわが国のアジア太平洋との関係を積極的に
展開するためにきわめて重要なことである。
★UC Berkeley 5th Asian Leadership Conference in Shanghai
“Global Opportunities and Innovations in the New Century”
UCB は 2 年に 1 度アジア太平洋地域で同窓生を中心に Asian Leadership Conference を開催
してきた。最初は香港、次ぎはバンコック、そしてバリ島、2 年前は台北で行った。昨年 11 月のは
じめには第 5 回目が“Global Opportunities and Innovations in the New Century”というテ
ーマで上海での 10 月の APEC 首脳会議に参加したブッシュ米大統領をはじめ各国首脳が揃って
宿泊したポートマン・リッツ・カルトン・ホテルで開催された。この上海 Conference には6月来日し
た Tyson、Newton の両学部長をはじめ UCB 側は Berdahl 総長以下著名な教授たち数名が参加し
た。
Conference 初日の 11 月 1 日(木)には冒頭総長と上海市長 XuKuangdi 氏の挨拶があってその
後会議に入り最初に Newton 工学部長が「現代社会の幅広い問題の解決に IT はどう挑戦するか」
というスピーチーをした。同教授は無線通信とか光ファイバーネットワークといった領域における高
度のインパックト技術によって 21 世紀人間生活の向上に必要な IT インフラストラクチャが創られて
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近藤鉄雄の政策提言
社会が全体として大きく変貌するという極めて洞察に富む話をした。
次に第2番目のスピーカーとして「未来のインタネットを展望する」というテーマで工学部コンピュ
ーター科学準教授 Eric A. Brewer 博士が自ら 1996 年に設立した会社 INKTOM の経験を踏まえ
ての講演があった。INKTOM は近年においてもっとも成功したインタネット・サーチ・テクノロジー企
業であり Brewer 博士の話は今後インタネットが世界の経済社会、そして人間生活を大きくどう変
えていくかについての興味深い内容のものであった。
第 3 番目は分子細胞生物学の Robert Tjian 教授による「人間の健康は将来どう改善されるか」
という講演であった。同教授は現在 UCB において生物技術、生物工学、生物医学、遺伝子ゲノム
生物学といった専門分野から選ばれた 400 人を超える UCB の学者研究者によって人間の健康と
いう問題を総合的に“解明しそれをどう改善するかという研究をしている”バークレー健康科学イニ
シアティブについて説明した。
4 番目は分子細胞学部長で免疫学教授の James Allison 博士の「病気の根源を解く」という話で
あった。博士は最近のガンに対する研究の一つの試みとして免疫機能によるガン細胞を攻撃する
ことなどのバークレーにおける先端的医学研究の可能性について説明をした。最後は生物工学・
機械工学教授である Boris Rubinski 博士の「大きな夢の実現・工学技術と生物科学の融合」と
いうスピーチであった。博士は学際的研究の急速な発展によって知識の境界が重なりあって数々
の発見がなされていること、例えば人体の組織の一部を取り出して冷凍し、後で移殖する技術や
バイオチップや人工組織の開発などに学際研究が大きな実績をあげつつあることを説明をされ
た。
2 日目の 11 月2日(土)は午前中元大統領経済諮問委員長でハース経営大学院の学部長である
Laura Tyson 博士を中心に「アジアの経済と貿易の 21 世紀展望」といテーマで参加者全員による
ディスカッションが行われた。中国政府を代表して外国貿易経済協力省の副大臣であり貿易交渉
首席代表の Long Yongtu が出席して中国経済の現状と WTO 加盟についての中国の立場を説明
された。ここで私は巻頭提言「21 世紀を展望する新しい戦略」の要旨をまとめて発言をした。
このように上海で開催された第5回 UCB Asian leadership Conference は極めて高い水準のか
つ密度の濃いものであり、またカバーするテーマも政治経済と企業経営からコンピューターサイエ
ンス、IT、インタネットさらに遺伝子生物学、免疫学、健康医学等々と大変広汎にわたり、中国から
は勿論アジア太平洋各地から集った参加者全員に大きな感銘を与えた。
このことからもいかにUCBがこのアジア太平洋地域に大変強い関心を持っているかが理解される。
フルブライト留学生としてUCBに学び、長い間日本同窓会の会長をしてきた私としては、これから
もUCBと日本との関係をより密接なものにするために大いに努力する決心です。皆様方の指導ご
協力ご鞭撻をお願いします。
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