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土壌高pH処理技術 (PDFファイル)
新技術セミナー 水田転換畑のキャベツ安定生産 を図る土壌高pH処理技術 農業技術センター生産環境研究部 竹中賢司・伊藤純樹 キャベツの適正土壌pH •水田の土壌pHは4.5~5.5であり,転換畑で栽培 する場合は適正pHの6.0~6.5にする必要がある 作物の適性土壌pHの一例 作物名 土壌pH 5.0~6.0 イチゴ ニンニク ジャガイモ サツマイモ 6.0~6.5 キャベツ キュウリ ダイコン コムギ 6.5~7.0 トマト ナス ホウレンソウ オオムギ 現地キャベツ圃場の土壌pH •現地圃場の土壌pHは,pH4.6~5.2であり土壌 改良資材の施用量が不足している H19年度調査 地域 土壌改良資材 土壌pH 施用量 (kg/10a) (H2O) 北広島町 苦土石灰 BMようりん 40 60 4.8 東広島市 1 BMようりん 118 4.6 東広島市 2 ミネラルG 100 5.2 東広島市 3 ミネラルG 100 4.9 三原市 ミネラルG 137 4.8 根こぶ病の発病 •平成20年に根こぶ病発病圃場が激 発した (農業技術指導所聞取り) •今後,発病圃場の拡大が懸念される 根こぶ病とは? •根こぶ病菌がアブラナ科作物 の根に侵入して「こぶ」をつ くり,地上部への養分供給を 遮断し枯死させる土壌病害 •発病が激しい場合は収穫が皆 無となる •水田に戻しても休眠胞子が死 滅しないため水系で根こぶ病 が広がる 根こぶ病対策 ○感染を抑制する技術 農薬,抵抗性品種 ○菌密度を低減させる技術 農薬(土壌消毒),おとり作物 土壌のアルカリ処理 土壌のアルカリ処理による 根こぶ病発病抑制 •アルカリ土壌(pH7.2以上)だと一次 感染はするが二次感染はできない 休眠胞子⇒ 発芽 ⇒ 一次感染(根毛に感染) × 二次感染(こぶができる) •他県ではアブラナ科作物での実証事例 が報告されている 土壌のアルカリ処理による障害の可能性 • アルカリ土壌になるとマンガンや鉄などの 微量要素欠乏症が発生しやすい マンガン欠乏症 新葉の展開抑制 下葉の葉脈間の黄化 •生育の抑制 鉄欠乏症 上位葉から発生 葉脈間の黄化 調査内容 1.アルカリ土壌(pH7.2)にお けるキャベツの生育・収量 2.アルカリ土壌(pH7.2)に調 整する石灰施用量 試験場所・耕種概要 ①北広島町(供試品種:いろどり) 定植日: 8月16日 収穫日:10月21日 ②東広島市(供試品種:いろどり) 定植日: 8月19日 収穫日:10月29日 ※栽培管理:アルカリ処理以外の施肥,防除 などの管理は法人に委託 処 理 処理区 ①pH6.5区(標準区) ②pH7.2区 ③pH7.2+FTE区 ※FTE(熔性微量要素複合肥料) く溶性マンガン 19% く溶性ホウ素 9% 鉄,亜鉛,銅なども含まれる 炭カル・消石灰・FTEの施用量 北広島町 処理区 pH6.5 pH7.2 pH7.2+FTE 東広島市 処理区 pH6.5 pH7.2 pH7.2+FTE (kg/10a) 炭酸カルシウム 640 640 640 消石灰 - 960 960 FTE1号 - - 10 (kg/10a) 炭酸カルシウム 640 640 640 消石灰 - 600 600 FTE1号 - - 10 キャベツの生育(北広島町) ●pH7.2区でも微量要素欠乏症状はみられなかった 試験圃場 pH6.5 pH7.2 pH7.2 +FTE キャベツの収量(北広島町) ●pH7.2+FTE区がやや大きい傾向 2.0 20 横径 1.6 18 1.2 16 0.8 14 0.4 12 0.0 10 pH6.5区 pH7.2区 pH7.2+FTE区 横径(cm) 結球重(kg) 結球重 栽培跡地の交換性マンガン含有量 ●pH6.5区と比べてpH7.2区の交換性Mn含有量は 低下したがFTEの混和でやや上昇した 8.0 交換性Mn(mg/kg) 北広島町 東広島市 6.0 4.0 2.0 0.0 無施用 (pH5.8) pH6.5 pH7.2 pH7.2+FTE 無施用 (pH5.8) pH6.5 pH7.2 pH7.2+FTE キャベツの無機成分含有率(北広島町) ●窒素,リンなど主要要素の含有率に差はなかった 処理区 部位 N P K Ca Mg (%) 3.2 0.5 2.2 1.5 0.8 3.4 0.5 2.7 1.7 0.8 pH7.2+FTE 3.3 0.5 2.4 1.6 0.8 pH6.5 3.4 0.4 2.3 5.4 1.6 3.6 0.5 2.4 5.3 1.3 3.5 0.5 2.4 6.1 1.4 pH6.5 pH7.2 pH7.2 pH7.2+FTE 結球 外葉 キャベツのマンガン含有率(北広島町) ●pH6.5と比べてpH7.2区およびpH7.2+FTE区のMnの 含有率が低下した 300 外葉 結球 Mn(mg/kg) 250 200 150 100 × 50 0 無施用 (pH5.8) pH6.5 pH7.2 pH7.2+FTE 調査1のまとめ • pH7.2区およびpH7.2+FTE区の収量はpH6.5区 (標準区)と同等であった。 • pH6.5区と比べてpH7.2区の栽培跡地の交換性 マンガンの含有量が低下したが,pH7.2にFTE を混和することでやや上昇した。 • pH6.5区と比べてpH7.2区で窒素,リン等の主 要要素は低下しなかったが,マンガン含有率 は低下した。pH7.2にFTEを10kg/10a加えても マンガン含有率は高くならなかった。 調査内容 1.アルカリ土壌(pH7.2)にお けるキャベツの生育・収量 2.アルカリ土壌(pH7.2)に調 整する石灰施用量 調査圃場 北広島町 4 東広島市 3 世羅町 8 pH上昇のためのアルカリ資材量 pH6.5までは炭酸カルシウム pH6.5からpH7.2までは消石灰 土壌20g 7.5 pH7.2 7.0 pH6.5 pH 6.5 6.0 5.5 土壌 pH5.0 の 炭カル量 5.0 土壌 pH5.0 の 消石灰量 4.5 0 10 20 30 40 50 添加量(mg) 60 70 80 pH調整に必要な炭カルおよび消石灰施用量 地域 北広島町 東広島市 世羅町 (kg/10a) 炭カル量 消石灰量 (pH5.0→pH6.5) (pH6.5→pH7.2) 土壌分類 土性 灰色低地土 壌質 510 520 灰色低地土 粘質 1070 1310 灰色低地土 壌質 280 230 グライ土 粘質 900 960 灰色低地土 壌質 470 400 注1)深さ10cmの土壌を調整する場合 調査2のまとめ •地域別・土性別にpH5.0から pH6.5にする 炭カル量および pH6.5からpH7.2にする 消石灰量を算出し,アルカリ資材施用 量を決定した。 まとめ •pH7.2でキャベツの収量や窒素などの主 要養分は減少しないが,マンガンの含有 率は減少した。 •FTE添加量10kg/10aではマンガンの含有 率の低下を防止できないため,施用量を 増やす必要があると考えられた。 •各地域のpH6.5およびpH7.2の調整に必要 なアルカリ資材施用量を明らかにした。