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Vol.3 No.2
environment Update
−海外環境関連情報誌−
第 14 号
Vol.3
No.2
(2001.7)
CONTENTS
WEEE& RoHS の最新動向
WEEE
&
RoHS
指令案の動向
2
EUの環境政策
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパー関する意見書
10
欧州グリーン調達ガイドライン
16
モニタリング
欧州
米国
・連載 欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報
⑮
・連載 米国における環境関連動向
∼在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報
18
⑩
42
インタビュー
有機野菜のような電気製品づくりを目指して∼環境配慮型企業経営の考え方∼
松下電器産業株式会社
森 和弘 代表取締役
常務
調査団報告
1.中国・韓国・台湾製品安全関連基準・認証現地調査報告
ソニー株式会社
カスタマーサティスファクションセンター
CS 技術部
2.中国の環境関連現地調査報告
主査
岡崎 憲二
54
58
環境・安全グループニュース
環境・安全グループ担当委員会活動状況
事務局便り
60
62
50
WEEE & RoHS
指令案の動向
∼ 理事会、政治的合意に達する ∼
環境・安全グループ
1.環境相理事会
環境相理事会
(第一読会)
は、
去る 6 月 7 日に WEEE と RoHS 指令案に関し、
「共通の立場
(common
position)
」の採択を見込んだ政治的合意(political agreement)に達したが、正式な「共通の立場」
の採択は今後に持ち越された。
組合ブラッセル事務所などいくつかの情報源によれば、両指令の一本化は反対意見が多く否決さ
れた。一本化を主張するスウェーデンとデンマークに対して、現行の両国の物質禁止に関するより
厳しい法規の継続を認めることで指令の統合を撤回させるという妥協が図られた模様である。この
ことが後述する RoHS 指令案中の物質禁止時期を、理事会は 遅くとも 2007 年(by 1 January 2007
at the latest)という表現に至ったという情報もある。
暫定テキストではあるが、理事会で合意に達した主な項目は次の 2.のとおりである。また、欧州
委員会の原案
(2000.6.13 採択→2000.12.19EU 官報掲載のテキスト)
、
欧州議会修正意見
(2001.5.15)
、
理事会の合意(2001.6.7)を比較すると後述の 3.の表 1.と表 2.のとおりである。
なお、当グループでは上記の 3 つのテキストに欧州議会意見に対する欧州委員会の修正意見
(2001.6.6)を加えた 4 つのテキストのすべての内容の仮訳について、項目毎に 4 つを横軸に対比
した編集による「environment Update 増刊号」を近日(8 月上旬)刊行予定です。印刷費実費の有
料となりますがご利用ください。お申込は当組合のホームページ(http://www.jmcti.org)よりお願
い申し上げます。
2.環境相理事会で合意に達した主な項目
◇RoHS
・遅くとも 2007 年 1 月 1 日までに、加盟国は上市する新しい電気電子機器に鉛、水銀、カドミ
ウム、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール(PBB)および/またはポリ臭化ジフェニール(PBDE)
が含有されないようにしなければならない
(ブラッセルの情報源によれば、「遅くとも」という文言が挿入された背景には、一部加盟国
が RoHS と WEEE 指令についてアムステルダム条約第 175 条を根拠法規に一本化すべきと主張
したため(この場合国内法制化の際指令より厳しい内容の規制を制定できる)、妥協の結果と
してこのような表現になった。これが意味するところは、現在すでに一部の物質禁止措置を実
施しているスウェーデン、デンマーク、オランダなどは 2007 年以前に現行規制措置を継続し
て実施しうるとのことであるが、本稿は極めて専門的な解釈が必要なため、今後の追加情報を
もって確認したい。
)
・適用除外品目については、後述の表 1.および欧州委員会の提案と比較した別掲の表 3.も参照さ
れたい。特に、高融点ハンダの中の鉛を除外対象としつつも、ハンダ合金中の鉛含有率を 85%
以上と例示していることが注目される。また、サーバー等に含まれる鉛については 2010 年ま
で除外としている。
JMC environment Update
2
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
◇WEEE
・分別回収システムは指令発効後 30 ヶ月までに構築しなければならない。最終所有者およびデ
ィストリビューターには少なくとも無償で WEEE の返却ができるようにしなければならない。
・ディストリビューターは新製品を供給する際、廃棄物が同種のタイプの機器であって、供給す
る機器と同様の機能を備えた機器に限り、1 対 1 ベースにより少なくとも無償で返却できるよ
うにしなければならない。ディストリビューターは代わりの取り決めも構築できる。しかし、
加盟国は本指令発効から 5 年以内に代わりの無償引取りシステムを構築もしくは促進すること
ができる。両方のケースにおいて、最終所有者にとって WEEE の返却がさらに困難なものにな
ってはいけない。
・加盟国は、生産者が個別および/または共同による引取りシステムを構築、運営することを認
めることができる。
・一般家庭からの回収目標は平均して住民 1 人あたり年間最低 4kg を設定すべきである。この目
標は指令発効後 36 ヶ月以内に達成されるべきである。
・再生およびリサイクル目標はそれぞれのカテゴリーに従って設定される。それらは指令発効後
46 ヶ月以内に達成されるべきである。
カテゴリー1(大型家電)
:再生率 80%、再使用・リサイクル率 75%
カテゴリー3(IT)
、4(民生用機器)
:再生率 75%、再使用・リサイクル 65%
カテゴリー2(小型家電)
、5(照明機器)
、6(電動工具)
、7(玩具)
、9(監視機器)
、10(自販
機)
:再生率 70%、再使用・リサイクル 50%
∼ギリシアおよびアイルランドはリサイクル・インフラの不足、地理的状況、低人口密度、電
気電子機器の低消費のため、回収および再生目標の期限は、24 ヶ月の猶予が与えられる。
・本指令に従い、生産者は一般家庭からの WEEE の回収、処理、再生、環境に健全な処分に対し
て最低限の負担をする。
・費用負担(financing)は共同および/または個別システムの方法で提供されなければならない。
・指令発効前に上市された製品の WEEE(historical waste)の管理コストに関する費用負担責任
は、それぞれのコストが発生した時の市場に存在する全ての生産者が均衡のとれた形で
(proportionally)一つまたはそれ以上のシステムで提供されなければらない。
・ファイナンシングシステムの構築は指令発効から 30 ヶ月以内に達成されなければならない。
・一般家庭以外(業務用)の WEEE の回収、処理、再生、処分の費用は、指令発効から 30 ヶ月
以降生産者により負担される。historical waste のコストも生産者が負担。ただし、加盟国はユ
ーザーにも一部ないしは全部の費用責任を負わせる旨規定することができる。また、生産者と
ユーザーは別のファイナンシング形式を定める協定を締結できる。
・費用負担の要求事項からの例外として、従業員 10 人未満および売上高が 200 万ユーロ以下の
独立小企業に対し、指令発効後 5 年間の移行期間が与えられた。
JMC environment Update
3
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
3.主要事項に関する欧州委員会提案、欧州議会修正意見、理事会合意の比較
(表 1) RoHS
欧州委員会の原案
欧州議会第一読会修正意見
WEEE 対象製品
WEEE 対象+電球、生活空間
の照明、小型蛍光灯
対 象 範 囲 の ・cat.8,9,10 は適用除外 ・cat.8,9 は適用除外
・2006.1.1 以前に上市のスペ
適用除外
アパーツ、消耗品は除外(追
加)
特 定 物 質 の 鉛/水銀/カドミウム/六価クロム :2006.1.1
使 用 禁 止 時 /PBB/PBDE: 2008.1.1
期
適用除外の変 …
(追加)
更、追加
・ 高融点ハンダ
・ 電子部品のガラスの中の鉛
・ ピエゾエレクトリックの中の鉛
・ サーバー等の中の鉛
・ 指令対象外の cat.8,9 関連
機器をリストから削除
対象範囲
見直し
・2003.12.31 まで
理事会政治的合意(暫定)
WEEE 対象+電球、家庭用照明
器具
・cat.8,9 は適用除外
(スペアパーツ、消耗品の除外規
定なし)
:遅くとも 2007.1.1
(追加/変更)
・ 高融点ハンダ(鉛 85%以上の錫
/鉛ハンダ合金)
・合 金 成 分 の 鋼 材 の 中 の
0.35wt%までの鉛
・ サーバー等の中の鉛は 2010 まで
・ スィッチ等中の鉛
・ 電子セラミック部品の中の鉛(例;
ピエゾエレクトリック
・ 2003.12.31 まで
・ 指令発効から 2 年以内
・ 特に HFC、PVC ハロゲン系難燃 ・ cat.8,9 も対象化の提案
剤に注意
・ 使用禁止物質の研究
加盟国は罰則を規定
加盟国は罰則を規定規定
罰則
規定なし
(注)cat.1=大型家電、cat.2=小型家電、cat.3=IT、cat.4= 民生電子機器、cat.5=照明器具
cat.6=工具、cat.7=玩具、cat.8=医療機、cat. 9=監視制御機、cat.10=自販機
(表 2) WEEE
対 象 範 囲 の ・cat.8,9,10 はの適用除 ・cat.8,9,10 の分別回収、費 ・cat.8,9,10 の分別回収、費用
除外、追加
外
用負担等の適用除外規定 負担等の適用除外規定を削
除
を削除
・ケーブル、スペアパーツ、補修用 ・ケーブル、スペアパーツ、補修用パ
ーツの追加規定なし
パーツを追加
・cat.7 玩具+レジャー,スポーツ機 ・付属書ⅠB のリストをカテゴリー毎
により詳細な品目を明示、カ
器,
テゴリー中で製品をグループ分け
・組込まれたエアコンを除外
し最後に other を加え、ほぼ
・廃棄物であるすべての構 網羅的に拡大
・WEEE+ 廃 棄 時 に 製 品
成部品、サブアセンブリー、消耗 ・エアコンを除外規定削除
の部分である構成部
品を含む WEEE
・WEEE+廃棄時に製品の部分
品、サブアセンブリー、消耗
である構成部品、サブアセンブリ
品を対象
ー、消耗品を対象
回収システム
無償返却可能な回収システ 指令発効後 30 ヶ月まで無 指令発効後 30 ヶ月まで無償
ム構築
償返却可能な回収システム構築 返却可能な回収システム構築(ギ
リシャ、アイルランドは 24 ヶ月猶予)
家 庭 か ら の 2005.12.31 までに 4kg/ 2005.12.31 までに 6kg/
回収目標
一人/年
一人/年
JMC environment Update
4
36 ヶ月以内に 4kg/一人/年
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
再生率(熱回
収を含む)/
再使用リサイクル
率
分離処理
2005.12.31 まで
・cat.1 --------- 80/75%
・cat.2,4,6,7 -- 60/50%
・cat.3(IT) -- 75/65%
・ガス放電ランプ XX/80%
・CRT 内蔵 -- 75/70%
PCB、難燃剤入りプラスチッ
ク、LCD 等を分離処理義
務
2005.12.31 まで
・cat.1,10 ---------- 90/85%
・cat.2,5,6,7,9 ---- 70/60%
・cat.3,4 ----------- 85/70%
・ガス放電ランプ------ XX/85%
・CRT 内蔵 -------- 80/75%
指令発効から 46 ヶ月以内
(GR、IRL24 ヶ月猶予)
・ cat.1 --------------- 80/75%
・ cat.3,4 ------------- 75/65%
・ cat.2,5,6,7,9,10 -- 70/50%
ガス放電ランプ ---------XX/80%
・分離処理以外に付属書の ・分離処理以外に人/環境保護
分離処理方法より環境へ が少なくとも同じ基準を確
の影響が少ない方法での 保 す る 他 の 処 理 技 術 も 可
処理を追加
能。分離処理は環境上健全
・5%のプラスチックをリサイクル
な再使用/リサイクルを妨げない
方法で適用
・プラスチック規定なし
・指令発効から 30 ヶ月
・指令発効から 30 ヶ月
費 用 負 担 時 ・指令発効から 5 年
期と範囲
・回収拠点から回収/処 ・回収拠点から回収/処理/ ・生産者は、最低限、回収拠点
理/再生/処分の費用を 再生/処分の費用を負担
に置かれた家庭からの
負担
・家庭から回収拠点までの WEEE の回収/処理/再生/処
全部 or 一部の費用負担を 分の費用を負担
生産者に要求可
・中小企業は費用負担義務が
最大 5 年延期
費 用 負 担 方 共同または個別システム
原則個別システム(回収、処理、 共同体法規に従い個別および
式
廃棄コストは内部化)
/または共同システム
既存ファイナンシン 規定なし
グ制度
historical
waste
(= HW)
指令発効から 10 年まで存 規定なし
続可能
指令発効から 5 年後以 指令発効から 30 ヶ月後以 指令発効前に上市された製品
前に上市された製品
前に上市のされた製品
HW の費用負 現存する全生産者が分 コスト発生時に現存する全生 コスト発生時に存在する全生産
担責任
担
産者が市場シェアに応じて共 者が均衡のとれた形で一つ
同で分担
or それ以上のシステムにより分
担
Visible fee
規定なし
10 年まで HW の費用を製品 規定なし
寿命に応じて新製品販売時
点で上乗せ、徴収可能
Orphan
product
規定なし
規定なし
生産者が存在しない or 特定
できない製品は現生産者が負
担
業 務 用 ・ 生産者とユーザーが購入 ・生産者とユーザーが購入時点 ・生産者が負担
WEEE 費 用
時点で取り決め
で取り決め
・HW の費用も生産者が負担
負担
(加盟国はユーザー負担の選択
肢も提供可能、
生産者とユーザ
ーが取り決めることも可能)
罰則
規定なし
規定
規定
JMC environment Update
5
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
4. 今後の主な論点
理事会終了後の現地メーカー団体の関心事項は、
「費用負担責任(financial responsibility)と「家
庭からの回収」にあるようです。
費用負担責任に関しては、historical waste に対する企業の費用負担責任がどこまで問えるかとい
う問題と併せて、使用済み自動車(ELV)のように遡及が有効であるという判断があったとしても、
historical waste の中で倒産などにより市場に生産者がもはや存在しない製品(Orphan product)に対
する費用負担責任、ないしは将来の Orphan product に対する費用負担責任について懸念が抱かれて
います。historical waste に対して個別責任システムをとるか共同責任システムをとるかということ
や visible fee との関連などを踏まえ、現地では活発な論議が行われています。
また、家庭からの回収に関しては、メーカーの回収責任が委員会案では回収拠点以降であるのに
対し、議会案では家庭からの回収費用の全部または一部を加盟国はメーカーに負担を求めることが
できるとしているためほか、理事会案では「最低限」
「回収地点以降の WEEE」として家庭から回収
拠点までの回収費用も対象とする余地を残しているため、企業負担に重大な影響を与えるものと懸
念する声が高まっています。
なお、欧州最大の環境 NGO である EEB(The European Environmental Bureau)は、理事会が議会の
修正意見をそのまま受入れなかったことを遺憾であると表明した。具体的には、自己ブランドにつ
いての個別の費用負担責任を要求していないこと、Orphan product について共同責任方式でもいい
とすると free rider(只乗り)を助長させる、中小企業やアイルランド/ギリシアの例外措置を認め
たことなどをあげています。
JMC environment Update
6
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
(表 3) EXEMPTION LIST OF ROHS
Commission Proposal
Council Common Position (Unofficial)
Mercury in compact fluorescent lamps not 1.
exceeding 5 mg per lamp
Mercury in compact fluorescent lamps not
exceeding 5 mg per lamp
Mercury in straight fluorescent lamps not 2.
exceeding 10 mg per lamp
Mercury in straight fluorescent lamps for
general purposes not exceeding
− halophosphate
10 mg
− triphosphate with normal lifetime5 mg
− triphosphate with long lifetime 8 mg
2a. Mercury in straight fluorescent lamps for
special purposes
Mercury in lamps not
mentioned in this Annex
specifically 3.
Mercury in other lamps not specifically
mentioned in this Annex
Mercury in laboratory equipment
4.
[...]
Lead as radiation protection
5.
[...]
Lead in glass of cathode ray tubes, light 6.
bulbs and fluorescent tubes
Lead in glass of cathode ray tubes, [...],
electronic components and fluorescent tubes
Lead as an alloying element in steel 7.
containing up to 0,3 %lead by weight,
aluminium containing up to 0,4 % lead by
weight and as a copper alloy containing
up to 4 % lead by weight
8.
Lead as an alloying element in steel
containing up to 0.35% lead by weight,
aluminium containing up to 0.4% lead by
weight and as a copper alloy containing up
to 4% lead by weight
− Lead in high melting temperature type
solders (i.e. tin-lead solder alloys
containing more than 85% lead),
− Lead in solders for servers, storage and
storage array systems (exemption granted
until 2010),
− Lead in solders for network infrastructure
equipment for switching, signalling,
transmission as well as network
management for telecommunication,
− Lead in electronic ceramic parts (e.g.
piezoelectronic devices).
[...]
Lead in electronic ceramic parts
Cadmium oxide on the surface of 9.
selenium photocells
Cadmium passivation as an anti-corrosion
in specific applications
10. Cadmium plating except for applications
banned
under
Directive
91/338/EEC
amending Directive 76/769/EEC relating to
restrictions on the marketing and use of
certain
dangerous
substances
and
preparations
JMC environment Update
7
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
Commission Proposal
Council Common Position (Unofficial)
Cadmium, mercury and lead in hollow 11. [...]
cathode lamps for atomic absorption
spectroscopy and other instruments to
measure heavy metals
Hexavalent chromium as an anti-corrosion 12. Hexavalent chromium as an anti-corrosion of
the carbon steel cooling system in
of the carbon steel cooling system in
absorption refrigerators.
absorption refrigerators.
[...]
Within the procedure referred to in Article 7(2),
the Commission shall evaluate the applications
for:
− Octa BDE, Deca BDE,
− mercury in straight fluorescent lamps for
special purposes,
− lead in solders for servers, storage and
storage array systems, network
infrastructure equipment for switching,
signalling, transmission as well as network
management for telecommunication (with
the view of fixing a specific time limit for this
exemption), and
− light bulbs,
as a matter of priority in order to establish as
soon as possible whether these items are to be
amended accordingly.
JMC environment Update
8
Vol.3 No.2 (2001.7)
WEEE & RoHS 指令案の動向
<参考>
WEEE & RoHS 指令制定の経緯
2 つの提案採択
欧州委員会
(2000.6.13)
<----官報告示は 2000.12.19>
↓
経済社会評議会
意見提示
(2000.11.29)
↓
地域委員会
意見提示
(2001.2.14)
↓
産業委員会
修正意見採択
(2001.2.27) 環境委員会に提出
↓
環境委員会
修正意見採択
欧州議会
(第一読会)
(2001.4.24)
↓
本会議
修正意見採択
(2001.5.15)
↓
欧州委員会、
欧州議会修正意見
に対する修正提案
(2001.6.6)
↓
政治的合意
理事会
(第一読会)
(2001.6.7)
↓
共通の立場採択へ
(2001.9.?)
↓
欧州議会、
(第二読会)
(理事会 共通の立場
採択から 3 ヶ月以内)
(2001 年内?)
↓
理事会、
(第二読会)
(欧州議会 共通の立
場に対する修正提案
から 3 ヶ月以内)
↓
調停手続き?
(???)
↓
成立へ
(2002 年央?)
□
JMC environment Update
9
Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
貿易と環境専門委員会
EU の IPP(包括的製品政策)グリーンぺーパー(Vol.2 No.3 P22∼P43 を参照)の目的は製品に関連する
環境政策の強化戦略を提案するものであり、その実施と手段において広くステークホルダーより公の議
論を引き出すことにあります。これを受けて、当組合「貿易と環境専門委員会」
(委員長:松藤 洋治 氏
キヤノン㈱環境技術センター主席)では同グリーンペーパーに対する意見書(以下和文と英文を参照)
をまとめ、去る 6 月 29 日に欧州委員会宛に意見書を提出しました。
意 見 書
2001 年 6 月 29 日
Mrs. Marianne Klingbeil,
Head of the Unit on Industry,
Internal Markets, Products, Voluntary approaches
EU COMMISSION
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
日本機械輸出組合(Japan Machinery Center for Trade and Investment) は、1952 年に輸出入取引法
に基づき設立された非営利団体である。構成メンバーは製造業(電子・電気機器、事務機械、産業機械
等)
、貿易業(商社、エンジニアリング企業等)等、幅広い機械製品の輸出や投資を行なっている大手企業、中
堅企業約 350 社によって構成されている。
当委員会は環境問題を貿易の視点で捉え、貿易と環境問題を巡る国際的議論をフォローし、貿易の歪
曲効果をもたらす可能性のある海外の法規制や制度の導入状況を把握し、事前に対応策の検討を行って
いる。
製品に関連する環境政策については、環境配慮に取組む我が国機械産業にとっても重要なテーマとし
て位置づけている。また、グローバル展開を行っている企業にとっても内外の製品に関連する環境政策
については、取扱い製品の貿易取引きに大きな影響を与えるものとして重大な関心をもっている。
今般、欧州連合(EU)がこれに関連する政策を総合的に統括すべく、欧州委員会が包括的な製品政策
に関するグリーンペーパーを作成し、内外関係者に意見を求めていることについて、次のとおり意見を
述べたい。
1.各種施策にグローバルな意見を反映すべきである
製品に関して、立法化、ガイドライン策定、パネルの設置等、様々な施策を考慮するときに、基本
的にその過程がオープンであることが望まれる。EU 域内で上市される製品には多くの域外企業(現地
で生産を行っていない企業)が生産した物が含まれており、立法化等これらの施策は域外企業に大き
な影響を与える。
従って、立法化等これら施策の検討プロセスにおける最初の段階から、関連する域外企業の参加が
可能であって、その意見が反映されるようなシステムが検討されるべきである。また、当該製品の生
産が途上国に集中していることにも鑑み、先進国に留まらず途上国からの意見収集にも力を注ぐ必要
がある。
JMC environment Update
10
Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
2.政府による消費者の購買行動に直結する施策が必要である
さらに、IPP を推進する上で考慮されなければならないことは、全ての主体が議論の対象となるの
はもとより、今後はとりわけ製品の使用者である消費者への施策が重視される必要がある。この理由
は、これまで、往々にして行政や企業に対する施策は議論されてきたが、消費者への施策は議論され
る機会が少なかった。製品を提供する側の企業と、それを購入し使用する消費者とは車の両輪を形成
しているようなもので、双方が機能して初めてその目的が達成されるものと考えるためである。
現実には消費者への情報開示を強化するような対策が考えられているが、このような消費者にとっ
て受け身的な施策ではなく、消費者のより自主的な行動を促すような施策が望まれる。法律などで購
入を強制させることは、特に一般の消費者に対しては現実的ではない。新規購入や買い換えを促進さ
せるには、報奨金や減税など消費者の購買行為に対して何らかのインセンティブが与えられるように
することが検討されるべきである。
3.経済的手法は製品の購入に対して実施されるべきである
また、環境に配慮された製品の価格は、新規の材料や技術の導入、生産量等、様々な理由により、
現状では従来製品に比べて高くなるのが実態である。このような状況下で環境に配慮された製品を一
般の消費者に自主的に購入を促すのは難しいといえる。環境配慮製品の価格を従来製品と競争可能に
する施策は種々考えられるところであるが、それらは EU 市場に上市された製品自体やその流通段階
に対して、あるいは上述のとおり購入者の購買行動に対して行われるべきである。生産設備など企業
の生産過程にインセンティブを与え、結果として環境配慮製品に競争力を与える等の手法も考えられ
るが、この場合 EU に輸出している海外の企業と不公平が生じ、WTO 協定上の検討も必要となる。
4.実用的な LCA 手法を模索・提案すべきである
製品の環境情報の果たす役割の一つは、生産者自身が自ら製品の環境への影響を認識し、改善へと
導くことにあり、他の一つは消費者がこの情報を基に適正な製品を購入し適正に使用するよう方向付
けすることである。
本来このような目的に供される情報の精度は不必要に高い必要はなく、それぞれのレベルで判断可能
なものであればよい。企業がこのような情報を作成するにはコストがかからず簡便な方法が提供され
るべきであり、消費者にとっては複数製品の情報を容易に比較検討できるようにするべきである。
最近、信頼性の高い情報を得る手段の一つとしてよく LCA 手法が取り上げられるが、各業界や企業
で行われている各種製品の LCA の結果を見ると、一般的に製品のライフサイクルの全ステージに均等
に環境負荷がかかることはなく、むしろ、ある特定のステージ(製品種や取り上げる環境要因で異な
る)に大きく関与する場合が多い。従って、ライフサイクル全般にわたる膨大で複雑なデータの集積
で 100%の精度をねらうより、80 ∼ 90%の信頼度でよいから簡便な手法を模索・提案するべきであ
る。
データの集積手法や提供される環境情報項目は製品種に基因する要素が大きいがゆえに、全産業統
一的な手法ではなく各々の自主的な活動に任されるべきであり、取られるべき施策はここにインセン
ティブが置かれるべきである。
また、情報の基礎となる素材、部品、加工・組立、物流、リサイクル、廃棄などの基礎データはそ
れぞれの該当する業界が構築、公表すべきものであり、また、データの共通化に先んじてそれらの実
践を最優先とすべきである。データの共通化については、実施状況を見ながら段階を追って日米欧と
いった地域性をなくし世界標準化を進めるといった柔軟な対応で検討されるべきである。
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
5.製品ガイドラインは業界・企業に委ねるのが現実的であり、より効果的である
製品仕様に環境配慮要因を組み込むための共通のガイドラインは、効率性、普遍性の観点から有用
であると考えるが、本来このような事項は企業の専権事項であり、その策定等は業界・企業に任せら
れるべきものである。したがって、この問題を IPP でとりあげるのであれば、世界各国の活動例を参
考にしてほしい。例えば、日本においては、既に 1994 年に通商産業大臣(現経済産業大臣)の諮問
機関である産業構造審議会が「再生資源の利用の促進に資するための製品設計における事前評価マニ
ュアル作成のガイドライン」を発行している。このガイドラインはリサイクルを主体として作られて
いるが、評価手順、11 の評価項目(①製品が使用された後等の再利用部品又は再生資源としての利用
の容易化に関する評価、②製品が使用された後等の分解・分離の容易化に関する評価、③製品が使用
された後等の部品等の分別の容易化に関する評価、④製品が使用された後等の破砕・焼却の容易化に
関する評価、⑤処理時の安全性の確保等に関する評価、⑥製品への再利用部品及び再生資源の利用に
関する評価、⑦製品が使用された後等の収集・運搬の容易化に関する評価、⑧製品の減量化に関する
評価、⑨部品の長期使用化に関する評価、⑩包装材の再生資源としての利用の容易化等に関する評価、
⑪情報の記載に関する評価)
、評価手法などについて情報提供されている。
一方、これを受けて、家電、OA・IT 機器など業界団体においてもリサイクルに限定せず省エネ、
省資源、有害物質排除、情報開示等を主体とした業界毎のガイドラインを策定し傘下の企業の環境対
応をリードしている。これらガイドラインは状況の変化に合わせて随時改定されている。中小企業は
これに基づいて製品開発を進めているが、大手企業はさらに自社専用のガイドラインや基準を決めて
より環境に配慮した設計を推進している。
このように全産業的に適用されるガイドラインは、考慮されるべき環境項目を網羅的に整理するレベ
ルに留め、評価基準等は設定すべきではない。対応が必要とされる項目は製品ごとに異なるため具体
的な実施項目や基準は各々の業界・企業に委ねるのが現実的であり、より効果的であると考える。
以上
日 本 機 械 輸 出 組 合
貿易と環境専門委員会
委員長 松藤 洋治
JMC environment Update
12
Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
June 29, 2001
Mrs. Marianne Klingbeil,
Head of the Unit on Industry,
Internal Markets, Products, Voluntary Approaches
EU COMMISSION
A Statement of Opinions Concerning
The Green Paper on IPP (Integrated Product Policy)
Japan Machinery Center for Trade and Investment is a nonprofit organization established in
1952 in accordance with the Export and Import Trading Law. It comprises about 350 major
and medium-ranked companies engaged in exporting or investing in a broad range of
machinery, including manufacturers (of electronic and electrical products, office machines,
industrial machinery, etc.), traders (trading firms, engineering companies, etc.), and others.
This Committee of JMC views environmental issues from the trading perspective. It follows
up international debates concerning trade and environmental issues, assesses international
developments concerning the introduction of laws and regulations and institutions that might
distort trading, and considers possible responses to them in advance.
Environmental policies related to manufactured products have been positioned as an
important subject for our country’s machinery industry, which is trying to integrate
environmental considerations into its products. These policies, both internal and external,
have also been subjects of great interest to companies globalizing their business, since they
could greatly affect the trading activities of these companies.
The European Commission has called on the parties concerned, both within and outside the
EU, to present their opinions concerning the newly published green paper on integrated
product policy in an attempt to integrate the EU’s environmental policies related to products.
We would like to express our opinions below.
1. Global opinions should be reflected in various measures.
We hope that the process of examining various measures concerning products, including the
establishment of legislation, guidelines, panels, etc., should be open, in principle. These
measures, including legislation, etc., could greatly affect external companies, since products to
be launched onto the internal market of the EU include those manufactured by a large number
of external companies (with no local production facilities).
For these reasons, therefore, systems should be considered to ensure that the external
companies concerned are involved from the initial process of examining measures, including
legislation, etc., and that their opinions are reflected in the examination. In addition, greater
effort should be made to invite opinions from developing countries, not only from the developed
countries, since most of the products are manufactured in developing countries.
2.Government measures should be directly connected with the buying behavior of
consumers.
In addition to the involvement of all the parties concerned in the discussions, a greater focus
on measures concerning consumers, in particular, should be taken into consideration with
respect to the promotion of the IPP approach, since they are the product users. The reason for
this is that, the discussions so far have focused mainly on measures concerning governments
and businesses, and there have been few opportunities to discuss measures concerning
consumers. In our view, however, the businesses providing products and the consumers
JMC environment Update
13
Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
purchasing them are like the two wheels of a bicycle; both must function properly for smooth
operation.
Although it seems that measures for enhancing information disclosure to consumers are
actually under consideration, these would be relatively passive measures.
Measures
encouraging more voluntary action on the side of consumers would be desirable instead.
Laws controlling purchasing could be unrealistic to general consumers, in particular. It
should therefore be considered that some kind of incentives, including premiums, reduction of
taxes, etc., be provided to consumers in order to promote their purchasing of new or
replacement products.
3. Economic measures should be implemented with respect to product purchasing.
In reality, however, products integrating environmental considerations tend to be priced higher
than conventional products for various reasons, ranging from the introduction of new materials
and technologies to production volumes, etc. Under these circumstances, it seems difficult to
motivate general consumers to purchase products integrating environmental considerations.
Various measures could be worked out for making the prices of products integrating
environmental considerations as competitive as those of conventional products.
These
measures should concern the products launched onto the internal market themselves, the
distribution stages of these products, or the buying behavior of consumers, as mentioned above.
Incentives concerning the manufacturing processes employed by companies, including
production facilities, etc., could also be provided in order to make products integrating
environmental considerations more competitive. In this case, however, it would become
necessary to consider the aspects concerning the WTO agreement, since these incentives could
create inequality between internal businesses and external businesses exporting to the EU.
4. Practical LCA approaches should be sought and proposed.
On the one hand, environment information concerning products makes manufacturers aware
of the impact of their products on the environment and encourages them to make
improvements. On the other hand, it guides the consumer to make the right purchase and to
make proper use of products based on the information.
The accuracy of information serving this purpose does not necessarily have to be very high.
Such information should only be sufficiently accurate to indicate respective levels for
manufacturers and consumers to base their decisions on. Businesses should be provided a
simple and less costly way of creating such information, while consumers should be able to find
it easy to compare information concerning various products.
Life Cycle Assessment (LCA) has been increasingly adopted as a way of obtaining highly
reliable information recently. Most of the LCA results that industries and businesses
gathered for different products show, however, that the environmental burden does not
necessarily spread evenly throughout the full product life cycle. They tend, rather, to be
concentrated in particular life cycle stages (depending on the type of products or designated
environmental factors). Simple procedures should be sought and proposed, therefore, even if
they are only 80 to 90% accurate, rather than procedures ensuring 100% accuracy based on
huge volumes of complex data.
Since procedures for collecting data and items of available environmental information vary
widely from one product category to another, they should be left to the voluntary activities of
individual industries rather than applied uniformly to all industries. Incentive measures
should also be implemented on an individual basis accordingly.
JMC environment Update
14
Vol.3 No.2 (2001.7)
IPP(包括的製品政策)グリーンペーパーに関する意見書
In addition, fundamental data, including data on materials, parts, processing and assembling,
physical distribution, recycling, disposal, etc., should be created and disclosed by individual
industries, and the highest priority should be given to implementation of such activities, rather
than to data standardization. Data standardization should progress in a phase based on the
degree of implementation, and flexible approaches should be considered to move toward the
establishment of a global standard without regional variances between Japan, and the United
States and Europe.
5. It is more practical and effective for product guidelines to be left to industries and
businesses.
We consider common guidelines for integrating environmental considerations into product
specifications to be useful in terms of efficiency and universality.
Since matters of this kind should, in principle, be under the exclusive jurisdiction of businesses,
however, the establishment of guidelines, etc., should be left to industries and businesses. If
the IPP is to cover this matter, it is desirable to consider the experiences of many countries in
the world. For example, the Industrial Structure Council, an advisory council to Japan’s
Minister of International Trade and Industry (currently, the Minister of Economy, Trade and
Industry), issued “a guideline for creating a preliminary assessment manual concerning
product designs contributing to the promotion of utilization of recycled resources” in 1994.
This guideline, which focused on recycling, provided information, including assessment
procedures, eleven assessment items: ① easy use of reused products as reused parts or
recycled resources, ② easy disassembly or separation of used products, ③ easy separation of
parts, etc., from used products, ④ easy destruction or incineration of reused products, ⑤
safety assurance concerning processing, ⑥ incorporation of reused parts or recycled resources
into products, ⑦ easy collection and transportation of used products, ⑧ reduction of product
mass, ⑨ longevity of products, ⑩ easy conversion of wrapping or packaging materials into
recyclable resources, and ⑪ indication of information, assessment approaches, etc.
Following this, trade organizations representing the home appliances, OA and IT equipment
industries, etc., formulated guidelines, focusing respectively on energy saving, reduction of
resources consumption, elimination of hazardous materials, information disclosure, etc. By
establishing these guidelines, they are leading their fellow companies with respect to
environmental responses. These guidelines are also revised in accordance with changes in the
situation, as appropriate. Small and medium-sized enterprises have made achievements by
developing products in accordance with these guidelines, while major companies are promoting
more environmentally conscious designs by establishing their own guidelines or standards.
As this example shows, a common guideline to be applied to all industries should be limited to
listing environmental items of considerations, rather than establishing assessment standards,
etc. Since items requiring responses vary from product to product, the establishment of
specific items and standards should be left to individual industries and businesses. We
believe that this approach would be more realistic and effective.
Chairman Yoji Matsufuji
Committee on Trade and the Environment
Japan Machinery Center for Trade and Investment
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州グリーン調達ガイドライン
欧州委員会は「環境に優しい調達ガイドライン」を公表しました。同ガイドラインの
「Interpretative Communication(解釈通達書)」によれば契約審査手続きの各々の段階において、
いかに環境配慮が考慮されなければならないかを解説しています。以下にプレスリリースをご紹
介いたします。
詳 細 に つ い て は http://europa.eu.int/comm/environment/gpp/ を ご 参 照 く だ さ い 。
「Interpretative Communication」のフルテキストおよび「Frequently asked questions」を閲覧す
ることができます。
IP/01/959
Brussels, 5th July 2001
Commission issues guidelines for environment-friendly
procurement
The European Commission has clarified how Community law offers numerous
possibilities to public purchasers who wish to integrate environmental considerations
into public procurement procedures. The clarifications take the form of an
interpretative Communication that explains how environmental concerns may be
taken into account at each separate stage of the contract award procedure. As public
procurement amounts to over €1,000 billion every year across the European Union
(14% of EU GDP), ‘greening’ these purchases could contribute substantially to
sustainable development.
Internal Market Commissioner Frits Bolkestein said “This Communication explains in concrete
terms how current public procurement legislation enables public authorities to apply
environmental considerations to their purchasing, whilst at the same time ensuring value for
money for taxpayers and equal access for all Community suppliers.”
Environment Commissioner, Margot Wallström added “I would like to encourage public
authorities to seize the opportunities offered by this Communication to ensure that the public
not only benefits from savings through the purchase of energy efficient or recyclable goods, but
also from the contribution that green public procurement could make to environmental issues
such as combating climate change or improving waste management.”
Environmental criteria
The Communication interprets existing law, comprising EC Treaty Internal Market rules and the
public procurement Directives. It therefore refers both to public contracts that are covered by
the EC Directives on public procurement as well as those that are not covered by these
Directives but are nevertheless subject to Treaty rules. In doing so, it seeks to reconcile the
respective goals of protection of the environment and efficient and fair public procurement in
the Internal Market.
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州グリーン調達ガイドライン
The Communication examines the different stages in a public procurement procedure and
explains how, at each stage, the protection of the environment may be taken into account. For
example, when defining the subject matter of a contract, public purchasers can, like private
purchasers, decide to purchase environment-friendly products or services, defined according to
their environmental performance and the production process used. Similarly, the public
purchaser may specify the raw materials and the production processes to be used in the
contract.
Public authorities could, for example, request that energy for public buildings is supplied from a
renewable source, or that food for a school canteen comes from organic produce. From the
very start of the public procurement procedure, public purchasers can orient their policies
towards products and services that better protect the environment.
The Communication explains how contracting authorities can define technical specifications
related to environmental performance of a product in line with “Eco-label” criteria. It also sets
out in which conditions registration of an environmental management scheme can serve to
demonstrate aspects of suppliers’ and contractors’ technical capacity.
The Commission proposal for a Sixth Environmental Action Programme (see IP/01/102) has
identified public procurement as an area which has considerable potential for “greening” the
market through public purchasers using environmental performance as one of their purchase
criteria. This Communication will help to make such action a reality by clearly identifying the
legal options open to public purchasers who wish to go down that route.
Handbook
As a follow up to this interpretative Communication, the Commission intends to produce a
practical handbook on green public procurement. This will be aimed principally at local
authorities, and will contain examples of best practice in green public procurement throughout
the EU, as well as practical guidance on how to integrate the environment into day to day
purchasing without infringing Internal Market rules.
In order to promote and explain the possibilities set out in the interpretative Communication the
Commission will hold an information event in Brussels in the autumn.
This interpretative Communication is available on the Commission's Europa website:
http://simap.eu.int/ and http://europa.eu.int/comm/environment/gpp
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
連載
欧州環境規制動向
∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報 ⑮
I.
EU
う求めている。
1. 欧州議会、欧州委の WEEE 案を修正
WEEE に関する指令は、RoHS 指令を補完するも
2001 年 5 月 15 日にストラスブールで開催され
のであり、生産者の個別責任および消費者(分
た本会議の第一読会で、議会は、廃電気電子機
別回収)にも若干の重点がおかれている。委員
器(WEEE)指令案および当該機器への特定有
会案では、生産者には自社製品の廃棄物に対し
害物質の使用制限(RoHS)に関する指令案につ
て処分責任が生ずる。一般家庭は無料で使用済
いて、フローレンツ(Karl-Heinz Florenz)議員
み製品を生産者に返却して処分してもらえる。
による 2 件の報告を基に修正意見を採決した。
WEEE は他の都市ゴミとは区別して分別回収さ
れる。この点に関して、議会が採択した修正案
RoHS に関する同議員の報告では、当該指令の
の一つは、年間 1 人当たり廃棄物回収量を委員
目的は、WEEE の製造、使用、加工、処分が環
会案の 4 ㎏ではなく 6 ㎏とする提案である。
境と健康に及ぼす危険性および影響を最小限に
押さえることにあると強調している。議会が修
廃棄物機器の関連コストについて、生産者は、
正を提案した結果、一部の照明関連機器が
市場シェアに応じて既存製品から派生するコス
WEEE 指令の適用外となり、したがって、当該
ト負担を 5 年間猶予される。委員会は、廃棄物
関連機器については、もう一方の RoHS 指令の
回収システムおよび同システムに対する費用負
適用範囲においても同様に扱われる。議会は、
担枠組みについて、指令発効後 5 年以内に定め
当該有害物質禁止措置の適用開始時期について、
ることに対して議会は、この期間を 30 ヶ月に
2008 年案ではなく 2006 年からの適用を熱望し
短縮するよう要求した。
ている。また、当該物質の一覧について、科学
的・技術的進歩に適応して、新たに追加してい
廃棄物処理施設は認可を受けなければならない。
くべきであると示唆している。
また、2005 年のリサイクルおよび再利用目標の
設定を提案している。廃棄物処理システムは、
委員会は、委員会案の中で、2003 年における当
生産者による集団および/または個別システム
該指令の見直しを規定しているが、議会は、こ
が導入される。最終的に委員会は、2005 年以降
の期限までに、HFC(ハイドロフルオロカーボ
の各 WEEE カテゴリー別目標を制定することに
ン)および他のハロゲン化物質の代替使用を確
なるが、議会は特に、洗濯機および冷蔵庫など
実なものとするために、特別な取組みがなされ
大型家電製品について一段とより厳しい目標設
ることを強く望んでいる。そして最終的には、
定を望んでいる。
当該指令が遵守されなかった場合に対する罰則
適用を要求するとともに、2006 年以降、鉛、水
議会は、今後 WEEE は普通の家庭ゴミと同じよ
銀、カドミウム、六価クロム、PBB(ポリ臭化
うに処分できなくなることについて、この規定
ビフェニール)および PBDE(ポリ臭化ジフェ
を消費者に周知徹底すべきであると強調してい
ニルエーテル)の使用の代替物質を見つけるよ
JMC environment Update
る。その目的達成のために、製品にシンボルマ
18
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
ークを付けて、ゴミ箱に処分できないことを表
6 月 7 日、8 日に開催された環境相理事会の議
示すべきであるとしている。この場合、この新
題 と な っ て お り 、 共 通 の 立 場 ( common
システムについて消費者に知らせるとともに、
position)[共同決定手続]の採択が期待されてい
廃棄物の分別すなわち WEEE と家庭ゴミの分別
る。
を怠った消費者には罰金を科すことになる。
前進であるとして、環境派にはおおむね歓迎さ
2. 欧州議会、PVC プラスチックに含まれる
鉛・カドミウム添加物の段階的使用禁止
を要求
れた。一方、業界の方では、エレクトロラック
欧州議会は、2001 年 4 月 3 日、PVC プラスチ
ス社が議会による生産者の個別責任原則支持を
ックの製造に添加剤として使用する鉛・カドミ
歓迎し、エコロジーに配慮した製品デザインお
ウムを段階的に禁止する法律の制定を求めた。
よびリサイクル業界における競争原理の重要性
また、代表者は執行部である欧州委員会に対し
を強調している。同社の環境問題担当副社長
て、危険物質の販売および使用に関する EU 指
Henrik Sundström 氏は、EU が包括的製品政策
令 76/769/EEC を修正して、PVC 安定剤である
(IPP)に関する指令に示された原則を本気で適
重金属の使用を禁止する提案を策定するよう強
用する気なら、閣僚理事会も同様に、生産者の
く求めた。
今回の決議は、エコロジーという点では重要な
個別責任原則を支持すべきであると主張してい
また、EU 域外国からの非適合製品の輸入を禁止
る。
するために、新しい法律の起草が必要であると
欧州環境団体(EEB)は、議会の決議について
している。議会の決議は、委員会がまとめた協
特に、生産者責任、分別回収、回収目標の強化、
議文書(欧州委員会の PVC 環境問題に関するグ
および当該指令を尊重しない者への罰則適用が
リーンペーパー、COM(2000)469、2000 年 7 月
は、委員会提案を「かなり改善させた」として、
に議会に送付)に回答したものである。
おおむね歓迎している。しかしながら、RoHS
に関する指令については、特に有害物質の段階
さらに、軟質 PVC 製品に使用されるフタレート
的使用禁止に関する「慎重なアプローチ
類について、議会は、プラスチック製玩具およ
(cautious approach)」に触れて、一部の物質
び乳児用品による子供への危険性に関して「市
は健康および内分泌系への影響が証明されてい
民に恐怖感が広がっている」と指摘している。
るのに、議会が一段と踏み込んだ対応をしなか
議会代表者は、現在進められているフタレート
ったのは残念であるとしている。一部のハロゲ
類に関する EU リスク評価の結果を待つことに
ン化難燃剤は、段階的使用禁止対象リストに含
同意したが、委員会および業界が西欧における
まれていない。また、その代わりに、HFC、PVC
フタレート類の年間生産量が約 90 万メトリッ
(ポリ塩化ビニール)および他のハロゲン化難
クトンに達するとのクレームを考慮して、代替
燃剤の使用を段階的に禁止する可能性をさぐる
物質を見つけるよう強く求めた。
た め に 、 レ ビ ュ ー メ カ ニ ズ ム ( review
mechanism)を導入する妥協案が採択されたこ
議会は、
2000 年 3 月の欧州 PVC 業界による
「PVC
とを指摘している。但し、段階的使用禁止措置
のライフサイクルを通じた環境への影響緩和に
の期限は、
(2008 年から)2006 年へと前倒しさ
寄与する」
試みについて、
「興味深く賞賛に値す
れた。さらに、小型製品の回収効果を高めるデ
るが、十分とは言えない」との見解を示した。
ポジット返金システム構想について、議会の支
欧州安定剤製造業者協会(ESPA: The European
持が得られなかったのは残念であるとしている。
Stabiliser Producers Association)という団体の
加盟企業は、カドミウムの段階的使用禁止を勧
EEB は、今後は閣僚理事会がこの問題に対して
められているが、合法的な存在であることには
前向きの姿勢を示す番であるとして、加盟国に
変わりない。鉛の使用は、業界による継続中の
対して早期の決定を強く求めている。同案は、
リスク評価の対象となっている。議会は、EU
JMC environment Update
19
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
レベルの目標設定は、
「業界の善意に委ねる」
の
ラスチックに関するより広範な戦略の一環とし
ではなく法律で定める問題でなければならない
て、EU はこの問題に取組む必要があると主張し
としている。
ている。さらに、廃棄物処分の差別化をはかる
ために、PVC 製品の表示に関する EU レベルの
PVC 廃棄物の回収/リサイクルに関して、同代
規則の必要性を強調している。量が多いこと、
表者は、
「正確な目標は、
…生産者との合意に基
回収が相対的に容易であることを理由に、議会
づき、モニターに関する取決めおよび実行規則
は、まず最初に必要な措置は建設業界で発生す
に準拠して確立され、…当該業界のオペレータ
る PVC 廃棄物--窓枠、配管、屋根の部材--のリ
ーが自主的協定で定められた目標を達成できな
サイクルと決定した。
い場合に初めて発効するものとする」と規定し
た法律であれば、承認する可能性もあると示唆
議会は、塩素を重金属から分離して塩化水素を
している。
再生させる化学的リサイクルの開発を待ちつつ、
「硬質」PVC は焼却よりむしろリサイクルある
この議論に対して、リーカネン(E. Liikanen)
いは埋立てを優先視する方向を支持してきた。
産業担当コミッショナーは今日まで、当該グリ
ーン・ペーパーは業界、NGO、そしてほとんど
焼却の場合、EU 排ガス法が義務づける塩化水素
の EU 加盟国の政府見解などからの多くの回答
を中和するプロセスでは、有害と分類される廃
を促したと述べている。同コミッショナーは、
棄物の総生産量が、かかるプロセスに投入され
近い将来、委員会が意図する戦略を規定する法
る PVC 量を上回る可能性がある。しかし「軟質」
制化に先立った通達をさらに提出すると約束し
PVC については、焼却の方が解決策として優れ
た。そして、委員会は、最近法制化された使用
ているとみている。議会は、塩素含有量が低い
済み自動車に関するコミットメントに基づき、
場合、焼却の方が「可塑剤、特にフタレート類
PVC 廃棄物問題を取り上げるとともに、「鉛、
の流出リスクのある埋立てより危険性が低くな
カドミウムおよびフタレート類などの PVC 添
る可能性がある」としている。
加物に重点をおく」と述べた。
また、業界が自主協定を遵守できない場合に初
3. EU 科学委員会、代替物質の安全性につ
いてフタレート類と同程度と発表
めて効力を生じる法律に関する議会案について
毒性・生態毒性学・環境科学委員会(CSTEE: EU’s
「興味深く言及した」
。そして、業界との環境協
定に関する別の通達の中で、この構想について
Scientific Committee on Toxicity, Ecotoxicity
and the Environment)によると、子供が口に入
「詳しく検討する」と約束した。
れる玩具および用品に軟化剤(可塑剤)として
使用されるフタレート類の主要代替物質は、代
替対象物質には望ましくないという 1。
イタリア代表の Guido Sacconi 議員は、同議会
の環境委員会で、採択した使用済み自動車に関
委員会は、CSTEE に対して「特定玩具および子
するアプローチは、
「安全性の高い素材、
特によ
り安全な処分に通じる素材を生産者に設計させ
供用品に含有される軟質フタレート類 PVC 代
ようという発想から、製品の設計に始まり最終
替物質の可用性(RPA、ETD/99/502498)
」に関
処分に至るまで製品のライフサイクルを通じた
する報告書の 2 つの章(第 6 および第 8)につ
生産者責任」を定めるものであるとして、この
いて見直しを求めていた。さらに、2 つの質問
アプローチに基づく PVC 政策に期待を寄せて
に対する回答を求めた。一つは「報告にある危
いる。
険性には調査に裏付けられた十分な正当性があ
るのか」
、もう一つは「調査の質は高いのか」と
しかし同議員は、その塩素含有量が高く、処分
1
段階に問題のあることを考慮して、PVC につい
て「徹底的な議論」が行われたにも拘らず、プ
JMC environment Update
20
下記のサイトを参照のこと。
http://www.europa.eu.int/comm/food/fs/sc/sct/out92_en.html
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
ラスチックに使用される BHT が健康にリスク
いう質問である。
を及ぼす可能性はない」としている。
調査は、3 歳未満の乳幼児が口の中に入れる玩
具および育児用品へのフタレート類使用禁止措
CSTEE は、DEHA の安全域は ATBC より低くな
置後の EU 市場の状況を概観することを目的と
るとする調査結果も否定している。
意見書では、
している。同措置は、1999 年 11 月に初めて導
「このことは 2 つの物質の溶出率が分かれば真
入され、その後 3 ヶ月毎に更新されている。同
実が明らかになるだけのことであり、影響に関
調査では、2 種類の主要フタレート類代替物質
するデータがさらに入手できれば、予備的影響
について検討が行なわれている。PVC 製育児用
評価の結果が真実であると分かるであろう」と
品に使用される o-acetylbutyl citrate(ATBC)と
している。
diethylhexyl adipate(DEHA)である。また、代
替プラスチックに使用される添加物のブチルヒ
さらに、意見書では、
「CTEE は、ATBC および
ドロキシトルエン(BHT)についても若干の検
DEHA の曝露評価はデータ不足で実施できない
討が行なわれている。
ので、健康を理由に ATBC は DINP より望まし
い場合もあるが、DEHA は望ましくない場合が
第 1 の質問に対し委員会は、ATBC および DEHA
あるとする示唆については、同意できない」と
の危険性について「当該物質に関する適切な曝
している。
露評価を実施することはできない」と意見書の
4. EU 調査の結果、住宅およびサービスで
GHG 排出 30%削減が可能
中で説明しており、
「十分な正当性に欠ける」
と
の結果を出している。
EU は、2010 年までに、家庭およびサービス業
次の第 2 の質問に対して、意見書では同調査の
界が排出する温暖化ガス(GHG)を 1990 年の
質を批判している。この点について委員会は、
水準から約 30%削減できるという。EU 資金に
「遺憾な点が多い」としている。さらに、かか
より行った最新の調査結果によると、かかる削
る 2 種類の物質に関する毒性情報は、1999 年 9
減の約半分から 3 分の 2 は追加費用なしで実施
月の委員会独自の調査を「ほぼそのまま」写し
でき、残る削減についても、そのほとんどが CO2
たものであり、今回の調査に「新たな価値はな
等価 1 トン当たり 50 ユーロ未満の方法で実現
い」としている。
できるという。
意見書では、さらに、子供用玩具への酸化防腐
EU 経済における GHG 排出を最低コストで削減
剤としての BHT 使用には徹底的なリスク評価
する政策の選択肢を検証する一連の研究の一つ、
を必要とする同調査の提案を拒否しているが、
「EU における家庭およびサービス分野の二酸
CSTEE は、代替プラスチックの使用による BHT
化炭素排出削減に関する経済的評価」
によると、
への曝露に関する情報は
「あった方が望ましい」
欧州連合内の家庭および官民のサービス分野は、
としている。
1990 年における EU 域内の総二酸化炭素排出量
にもかかわらず、委員会は、代替プラスチック
いるという 2。
の 39%、総 GHG 排出量の 30%の原因になって
に含まれる BHT 濃度が PVC に含まれるフタレ
ート類の濃度の 100 分の 1 と低いこと、また
京都議定書によると、基準年となる 1990 年に
BHT に よ る 「 無 有 害 性 影 響 量 ( NOAEL:
おける EU の家庭およびサービス産業に起因す
no-observed adverse effect level)
」は、玩具に
る排出量は、CO2 等価で推定 11 億 8,400 万トン
使用される di-iso-nonyl phathalate(DINP)と、
と推定した。具体的な排出削減政策・対策を講
医療機器に使用されるフタル酸ジ−2−エチル
2
ヘキシル(DEHP)とほぼ同じであることを指摘
している。したがって、科学委員会は、
「代替プ
JMC environment Update
21
当該調査については、下記サイトを参照のこと。
http://europa.eu.int/comm/environment/enveco/climate_chang
e/sectoral_targets.htm
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
じなければ、2010 年までにこの数字が家庭分野
として、比較的温暖な冬、フランスおよび英国
については約 12%、サービス分野については
におけるアジピン酸および硝酸の生産時の酸化
57%も上昇するだけである。
窒素(N2O)排出削減対策、英国 HFC 業界の HFC
排出量削減対策を挙げている。
いずれの分野においても、既存住宅の断熱およ
びエネルギーパフォーマンスの改善により、大
EU の排出量は減少傾向にある一方、同時期の米
幅な削減が見込める。家庭については、その他
国では 11%ほど増加している。ちなみに、米国
の選択肢として、エネルギー効率の良い新しい
が世界の排出量に占める割合は 40%、EU は
建築物、最先端の暖房システムならびにエネル
24%である。EEA は、2000 年の推定値によると
ギー効率の良い電化製品などが含まれる。
排出量は増加傾向にあり、
「安心の余地はない」
としている。現在の推定値によると、オースト
サービス分野については、高効率の新建築物や
リア、ベルギー、デンマーク、ギリシャ、アイ
冷却システム、
建築物エネルギー管理システム、
ルランド、イタリア、オランダ、ポルトガルお
改良型照明システム、改良型 OA 機器により、
よびスペインは、いずれも 1997 年の京都議定
大幅な排出削減余地が見込まれる。また、改良
書に定められた排出割合を大幅に上回る見込み
型冷蔵システムおよび代替発泡剤の使用により、
である。
フッ素化ガスの排出量削減余地も見込まれる。
、N2O の
京都議定書では、CO2、メタン(CH4)
この調査では、
これらの措置を適用することで、
他に、HFCs、perfluorocarbon(PFC)
、六フッ化
2010 年には CO2 等価排出量で 8 億 3,700 万ト
硫黄(SF6)の排出量を対象としている。京都
ンの達成が可能との結論を出している。また、
で対象となった 6 種類すべてのガスについて
電力供給システムが変化すれば、さらに間接的
EEA が分析するのは今回が初めてである。
な削減があるという。
表 1: GHG 排出量と京都目標との割合
5. 欧州環境庁、EUGHG4%減少にも拘らず
一層の削減が必要と発表
2001 年 4 月 20 日に欧州環境庁(EEA)が発表
した数字によると、GHG 排出量はこの 10 年間
1998 年∼
1999 年
0.0%
2.6%
ベルギー
- 3.4%
2.8%
- 7.5%
デンマーク
- 4.6%
(4%)
- 4.6%
- 2.1%
フィンランド
- 0.8%
- 1.1%
0.0%
フランス
- 2.2%
- 0.2%
0.0%
ドイツ
- 3.7%
- 18.7%
- 21.0%
ギリシャ
オーストリア
で 4%減少した 3。この削減により、EU は、2008
年∼2012 年までに排出量を 1990 年の水準から
8%削減するという京都議定書に定められた目
標の半分を達成した。しかし、EEA は、この削
1990 年∼ 京都および EU の
1999 年 「共同負担」目標
- 13.0%
減の一因は今後繰り返される可能性のない好都
- 0.7%
16.9%
25.0%
アイルランド
2.5%
22.1%
13.0%
合な要因によるものであり、なお一層の対策を
イタリア
0.9%
4.4%
- 6.5%
講じる必要があると警告している。ドイツなら
ルクセンブルグ
びに英国の排出量は、それぞれ EU 排出ガスの
オランダ
18.7%および 14%に相当し、エネルギー生産燃
料として石炭よりガスが好まれるにつれ、そし
て東独の多くの産業工場が統一後に閉鎖された
4.6%
- 43.3%
- 28.0%
- 2.9%
6.1%
- 6.0%
ポルトガル
2.9%
22.4%
27.0%
スペイン
6.1%
23.2%
15.0%
スウェーデン
- 2.6%
1.5%
4.0%
英国
- 6.5%
- 14.0%
- 12.5%
- 2.0%
- 4.0%
- 8%
結果、
両国は EU 全体像に大きな影響を与えた。
EU 合計
また、EEA は、このような削減に寄与した要因
3
下記のサイトを参照のこと。
http://org.eea.eu.int/documents/newsreleases/newsrelease200
10423-en
JMC environment Update
22
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
して、気候変動分野に「前向きに取組む姿勢」
表 2: CO2 排出量と 2000 年の目標値
であることを主張している。
1998 年∼
1999 年
1990 年∼
1999 年
京都および EU の
「共同負担」目標
0.4%
5.9%
0.0%
ベルギー
- 4.1%
2.6%
- 5.0%
デンマーク
- 5.4%
7.4%
(- 4.0%)
- 5.0%
フィンランド
- 0.6%
2.8%
目標値なし
フランス
- 1.5%
5.0%
目標値なし
ドイツ
- 3.3%
- 15.4%
目標値なし
までに建築分野において 22%以上のコスト効
ギリシャ
- 0.9%
16.7%
15.0%
率の良い省エネが可能である。私達は、京都目
アイルランド
4.7%
32.7%
20.0%
標を真剣に受け止め、具体的な行動を提案しな
イタリア
0.5%
4.3%
0.0%
ければならない」と、Loyola de Palacio エネル
ルクセンブルグ
5.2%
- 46.3%
0.0%
- 3.8%
(- 2.8%)
8.0%
(7.1%)
- 3.0%
ポルトガル
3.8%
31.2%
目標値なし
しなければならない。したがって、欧州委員会
スペイン
4.7%
24.3%
12.0%
は、全員の利益のために建築物のエネルギーパ
スウェーデン
- 2.9%
2.5%
0.0%
英国
- 2.2%
- 8.9%
0.0%
- 1.4%
- 1.6%
0.0%
オーストリア
オランダ
EU 合計
7. 欧州委、建築物のエネルギー効率改善行
動を提案
委員会は、2001 年 4 月 25 日、EU 域内の新築
および既存建築物のエネルギーパフォーマンス
改善を目的とする新指令を提案した。
「2010 年
ギー・運輸担当副委員長は述べた。さらに、
「気
候変動は共通の問題であり、私達は行動を共に
フォーマンス改善を確実なものとするため、立
法措置の提案を決定した。すなわち、なお一層
の環境保護、エネルギー供給の確保、安価なエ
出典:EEA
ネルギーコストを実現することである」と、述
べた。
6. EU 議長国ベルギー、持続可能な開発お
よび京都議定書を重視する意向
EU は、エネルギーを当然のものと重要視してい
2001 年 5 月 2 日、次期 EU 議長国ベルギーの
る。委員会が最近刊行した「欧州エネルギー供
Guy Verhofstadt 首相は、京都プロセスを「再び
給戦略に向けて」と題するグリーンぺーパーの
前進させる」ためにベルギーは「議長国として
中で示しているように、EU のエネルギー輸入依
できるすべてのこと」をすると述べた。また、
存率は、対策を講じなければ 2030 年には(現
同政府は、「持続可能な開発および生活の質向
在の 50%に対して)70%まで上昇するという。
上の必要性」を最優先課題として挙げている。
同時に、気候変動目標の達成は、EU の CO2 排
2001 年 7 月 1 日にスウェーデンに次いで任期
出量の 94%を占めるエネルギー分野において
半年の輪番制議長国となる同国は、持続可能な
重要な進展があるかどうかに左右される。
開発に関するイエテボリ戦略の実施に向けて
「弾みをつける第一歩を踏み出す」
ことになる。
EU は、エネルギー供給状況への影響力の範囲を
制限するだけであり、エネルギー利用における
さらにベルギーは、EU 運輸政策における環境的
経済性を可能な限り推進しなければならない。
側面の重視と、廃棄物の予防および持続可能な
エネルギー消費の 40%以上が建築物分野によ
管理ならびに環境に配慮した製品の推進に関す
るものであり、その大半は暖房、給湯、冷房お
る「共通の立場」の成立を目指している。また、
よび照明による消費である。この消費量の 22%
EU は、本年度後半にはエネルギー税および環境
以上という、コスト効率の良い節約が可能と推
税を再び議題に取り上げようとしている。
定される。
優先課題には挙げられていないものの結論に盛
このような可能性を現実のものとする取組みを
り込まれた案件として、
同国は、
「新たな局面に
強化するために、今回の指令案は、建築物分野
対して、必要であれば若干の修正を加え京都プ
におけるエネルギー利用の伸び率を引き下げる
ロセスを再び順調な軌道に戻す」努力をすると
JMC environment Update
ための明確な法的枠組みを規定している。この
23
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
枠組みは、加盟国間の協調を推進するものであ
る。しかしながら、実際の適用は、補完性の原
CAFE 計画は、政策立案に必要な科学的・技術
則に従って今後も各加盟国の責任に委ねられる。
的な情報、特に大気質に関するデータ、排出量
および大気質に対する予測、排出量削減対策お
主な内容を以下に示す。
よびそのコスト効果、総合評価モデルに関する
情報の作成、収集および検証の調整を目的とし
・ 包括的最小エネルギーパフォーマンス基準
ている。このような技術的分析の結果は、EU
( integrateminimun energy performance
法および国際的議定書の適用に利用される。ま
standards)を開発するための共通の方法は、
た、この方法によって、現在策定中の政策およ
加盟各国が建築物の種類ごとに採択する。
び新提案についても効果的な評価が可能となる。
この方法は、気候の違いを考慮に入れ、断
熱、暖房、換気、照明、建築物の向き、熱
EU の専門家は、粒子状の排出物・対流圏オゾン
再生、再生可能なエネルギー資源などを統
生成対策、酸性化・富栄養化対策の遂行、そし
合する。
て現在規制対象外の大気中の汚染物質への特別
・ この方法に基づく最小基準は、新築および
な配慮に重点をおくべきであると考えている。
改築後の面積が 1,500 ㎡を超える既存の建
9 つの章にわたる作業が並行して実施される。
築物に対して適用し、定期的に更新する。
すなわち、技術的分析、現行法適用に関する評
・ 新築および既存建築物に認証制度を導入す
価、見直しおよび/または適合化の準備、他の
る。エネルギーパフォーマンス改善方法に
分野別戦略および大規模燃焼施設など特定発生
関する助言など、建設、売却または賃貸に
源からの排出に関する戦略との連携確立、自動
際して、すべての建築物についてエネルギ
車オイル計画、揮発性有機化合物(VOCs)の排
ーパフォーマンス認証を与える。また、こ
出、長期戦略の定義、市民への情報公開、政策
のエネルギー認証は推奨室内温度ならびに
における科学的根拠・透明性・全関係者による
実際の室内温度に関する情報を公開し、公
参加の強化、プロセス当初からの EU 加盟候補
共建築物および市民が頻繁に利用する他の
国の参加、最後に、国際機関との整合性および
建築物に表示する。
協力である。
・ 有資格者による冷暖房施設の特定検査・評
CAFE 計画によって、遅くとも 2004 年までに、
価を実施する。
大気汚染に関する長期的なテーマ別戦略が策定
されなければならない。委員会は、通達の中で
8. 欧州委、欧州大気浄化(CAFE: Clean Air
for Europe)計画に関する通達を承認
その内容に含むべき項目を以下の通り提案して
いる。
委員会は、2001 年 5 月 4 日、欧州理事会およ
・ 加盟国における指令の実施状況、および大
び欧州議会に対する通達を承認し、欧州大気浄
気質計画の効果の監視
4
化(CAFE)計画を提出した 。今回の発表は、
EU の第 6 次環境行動計画案に示された大気汚
・ 大気質監視の改善、特に指標を利用した市
染対策を目的とする新しい技術的分析・政策計
民への情報公開
画の正式な開始を意味する。この CAFE 計画に
・ 将来的対策の優先順位の明確化、特に新指
より、2004 年までに、立法提案を背景に、大気
令あるいは改正指令による大気質に関する
質に関する包括的長期戦略案が策定されなけれ
敷居値および国家排出量上限の見直しと更
ばならない。
新。さらに、より良い情報収集、モデル化
および予想システムの設計
4
欧州委員会からの通達。欧州大気浄化計画:大気質を改善する
ためのテーマ別戦略に向けて(The Clean Air for Europe (CAFE)
Program: Towards a Thematic Strategy for Air Quality )、
COM(2001)245 最終。
JMC environment Update
さらに、委員会は、この新政策は欧州連合条約
に準拠しつつ、高次元の環境保護を確実なもの
24
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
と す る こ と を 目 指 し 、 予 防 の 原 則
(precautionary principle)に基づき、利用可能
精油所については、追加コストおよび CO2 排出
な科学的・技術的データ、および対策を講じた
量規模に関する情報がほとんどない。新しい石
場合とそうでない場合に生じる長所と短所をも
油 脱 イ オ ウ 技 術 ( petrol desulphurisation
考慮に入れるものであると、述べている。
technologies)の影響についても同様である。し
また、大気質に関する指令、すなわち指令
からイオウ含有量最大 10 ppm の無鉛ガソリン
96/62/EC、大気質の評価・管理に関する枠組み
が導入され、2011 年以降はイオウ分ゼロのガソ
指令、関連指令(外気中に含まれる無水イオウ
リンの使用が義務付けられる(イオウ含有量 10
(sulphur anhydride)
、二酸化窒素、窒素酸化物、
ppm 以上のガソリンは販売禁止)
。同委員会は、
粒子状物質および鉛の制限値を定めた指令
このような日程により、大気質の改善、燃料節
99/30/EC、および外気中に含まれる一酸化炭素
約の推進、総 CO2 排出量低下など様々な複合的
およびベンゼンの制限値に関する指令
メリットも得られると考えている。環境の質上
2000/69/EC)、およびオゾンに関する指令案に
の限界利点ならびに精油所の追加コストが増え
示された日程に従って進めていくことを目指し
るにもかかわらず、2005 年 1 月 1 日をイオウ
ている。また、大規模燃焼施設から排出される
含有量最大 10 ppm のディーゼル導入日と定め、
汚染物質排出および国家排出上限に関する指令
2011 年にイオウ含有量ゼロのディーゼルに移
案との密接な連携も確立されている。これらの
行することを提案している。同委員会は、断固
文書にはいずれも 2004 年頃に評価および改訂
として規制する方針を示唆するとともに、各種
が規定されており、したがって、委員会は、か
ディーゼル燃料の販売期間をできるだけ短縮し
かる評価の総括を CAFE 計画に統合することが
ようとしている。
たがって、今回の提案では、2005 年 1 月 1 日
重要であると示唆している。そして、2004 年は
EU の大気質政策にとって重要な年になると主
また、今回の新提案は、EU で販売され、オフロ
張している。
ード用車両および農業用トラクターに使用され
るディーゼルにも適用される。現在、この種の
9. 欧州委、イオウ分ゼロ燃料に関する指令
を提案
燃料のイオウ制限量は 2,000 ppm である。新提
委員会は、2001 年 5 月 11 日、2005 年 1 月 1
容イオウ含有量を 1,000 ppm まで引き下げねば
日からガソリンおよびディーゼルに適用される
ならないとし、500 ppm まで引き下げるのは加
環境仕様を完成させる指令案を提出した。同提
盟国の自由裁量とされている。
案では、遅くとも 2008 年 1 月 1 日までに、許
案は、2011 年 1 月 1 日までにイオウ分ゼロ燃
料(10mg/kg または 10 ppm 未満)の販売にし
委員会は、
遅くとも 2006 年 12 月 31 日までに、
か規定されていない(COM (2001) 241)
。
指令 98/70/EC が規定する燃料仕様を検討し、
必要に応じて、新指令その他の大気質に関する
新提案は、2000 年 12 月に閣僚理事会が(自動
EU 法の規定を考慮して変更を提言する。その場
車オイル II プログラムに関する通達について)
合、GHG 排出量の全体的上昇が生じないように、
出した結論の中で、委員会に対して、2005 年か
最大イオウ含有量 10 ppm のディーゼル燃料へ
ら燃料に適用する仕様案(指令 98/70/EC)の提
の全面移行の日程を変更する可能性がある。ま
出、イオウ含有燃料の段階的使用禁止を促すイ
た、この見直しでは、精製、燃料消費における
ンセンティブの提供、できる限りイオウ含有量
技術的進歩の状況および燃費の良い新車両の導
の低い燃料に関する基準設定を早急に求めたこ
入ペース状況が考慮される。委員会によると、
とに対する回答である。イオウ含有量を低下さ
この期限は、製油所および自動車メーカーが必
せることで、新車の燃費(ひいては CO2 排出量)
要な投資を実行するのに十分な時間的猶予を与
および既存車から排出される通常の汚染物質が
えるものでなければならないという。EU 執行部
削減できるはずである。
筋によると、2005 年 1 月 1 日には、よりクリ
JMC environment Update
25
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
ーンなエネルギーを必要とする新車にとって十
イオウの排出量削減を目的とし、さらに、共同
分な量のイオウゼロガソリンおよびディーゼル
体基準との適合を調べる燃料検査に関する規定
が、地域的な偏りなく市場に出ていなければな
が含まれている。国内法の採択および委員会へ
らないという。
の当該文書の通知期限は 2000 年 7 月 1 日に切
れている。ギリシャ、イタリアおよびスペイン
様々な割合でガソリンに混合されている
は 2000 年 11 月、2000 年 7 月の期限までに当
methyl tertio-butyl ether(MTBE)化合物は、一
該指令に基づく国内法の採択を怠ったとして、
部加盟国では主要な飲料水源となっている地下
正 式 注 意 文 書 (Commission Letter of Formal
水の汚染物資であることが明らかになっている。
Notice)(書面による 1 回目の警告)を送付され
MTBE は、1997 年に刊行された優先物質の第 3
た。これまで、回答してきたのはスペインだけ
リストに掲載されている。これらの物質は、既
である。同国は 2001 年 2 月、国王令(Royal
存物質のリスク評価および管理に関する理事会
Decree)案に対するスペイン議会の意見を待っ
規則 793/93 に基づき評価されている。MTBE リ
ているところであると知らせてきた。しかしな
スク評価は、CSTEE が最終的に承認し、ピアレ
がら、委員会は、採択された国王令を受取って
ビュー(peer review)を行っている。委員会は、
はいない。
容認できないリスクが識別された場合には、適
慮する。リスク評価の結果およびリスク削減戦
11. EU、一段と厳しい新車排ガステストを
導入予定
略に関する提言は、委員会の勧告として提出さ
EU は、自動車の排ガステストの方法を変更する
れるが、これは今年刊行されるはずである。現
予定である。欧州議会の環境および保健・消費
段階で委員会は、MTBE による地下水汚染問題
者保護政策委員会は、1970 年の自動車排ガスに
の最善の対処法は、ガソリンスタンドのガソリ
起因する大気汚染に関する指令から派生した現
ン貯蔵に使用される地下タンクをすべて有効な
行 EU 法の改定案に対する支持を表明した 5。
宜、懸念が示された分野のリスク削減措置を考
最善の技術基準に適合させ、かかる基準を厳し
て、ガソリンに含有される MTBE に関する指令
12. 財務閣僚、膠着状態にある EU エネルギ
ー税交渉の再開に合意
98/70/EC の修正は提案されていない。また、新
2001 年 4 月 20 日、EU 財務閣僚は、10 年近く
たな地下水の質に関する評価およびモニター計
閣僚理事会で膠着状態にあったスウェーデン提
画が水資源に関する枠組み指令 2000/60/EC の
案に合意した。
く執行することであると考えている。したがっ
範囲内で実施され、関連する対策も適宜策定さ
環境問題が重要な議題になる中、EU 議長国を務
れる可能性がある。
めるスウェーデンは、
具体的な税率は別として、
10. 欧州委、燃料のイオウ含有量をめぐりギ
リシャ、イタリア、スペインに対抗
エネルギー税の「骨格」に関する協議を再開す
るよう、他の 14 加盟国を説得した。
委員会は、2001 年 4 月 10 日、燃料のイオウ含
有量に関する EU 指令の適用が不適切であると
実際の税率について短期的には協議しないが、
して、3 加盟国に対して、違反手続を取る予定
ボルケスタイン(F. Bolkerstein)税制問題担当
であると発表した。そして、液体燃料のイオウ
コミッショナーは、最終的には取り上げなけれ
含有量に関する指令 1999/32/EC を実施するた
ばならないことを明らかにした。
めに必要な国内法の採択を怠ったとして、正当
な意見(reasoned opinions)
(書面による 2 回
目の警告)をギリシャ、イタリア、スペインに
5
送ることを決定した。同指令は、重油燃料や、
暖房用オイル、船舶用軽燃料など軽油について
最大イオウ含有量を定めることによって二酸化
JMC environment Update
26
自動車排ガスによる大気汚染に対策に関する理事会指令
70/220/EEC を修正する欧州議会および理事会指令案レポート
を参照すること。ドキュメントは下記のサイトを参照のこと。
http://www.europarl.eu.int/meetdocs/committees/envi/
20010424/431433en.pdf
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
同コミッショナーは、「欧州委員会は今日この
ものと期待される。ベルギーは、緑の党を含む
ような公約が成立したことを喜んでいるが、私
連立政権を樹立している。
達はこれが第一歩にすぎないことを理解してい
る」と述べた。
「現在、一部の加盟国の税率が低
しかしながら、特にスペインならびにアイルラ
すぎるため、税率の問題を取り上げなければな
ンドがエネルギー税に対して反対を繰り返し主
らないのである」という。
張していることから、このような新たな取組み
の結果、状況が打開するかどうかという問題は
委員会は、まず 1992 年に、EU が国連気候変動
残ったままである。
枠組み条約に定める公約を履行する方法として、
二酸化炭素税を提案した。同条約では、2000
「原則として、私達はエネルギー税には反対で
年までに GHG を 1990 年の水準で安定化させる
ある」と、アイルランドの Charles McCreevy 蔵
ことを求めている。
相は述べている。
「私達は周辺国であり、
輸送コ
ストも高いし…」という。
EU 全域における提案には、同理事会の全会一致
の承認が必要である。しかし、エネルギー税は
スウェーデンにとってはエネルギー税問題の打
これまでずっと英国が阻止してきた。
その結果、
開と言えるかもしれないが、EU 閣僚は、税問題
委員会は、
「エネルギー調和」
指令を提案すると
を担当する「ハイレベルな」作業グループを恒
いう、新たなアプローチを試みた。これは、EU
久的に設置するというスウェーデン案を拒絶し
平均税率を大きく下回る加盟国の精油税引き上
ている。
げを意図したものである。
スペインおよびアイルランドは同提案を一貫し
13. 欧州委、発癌性物質の販売に関する指令
の修正を提案
て阻止してきた。両国は、欧州通貨連合の加盟
委員会は、2001 年 5 月 14 日、発癌性、突然変
国としてインフレ管理責任があることを、エネ
異誘発性あるいは生殖機能に有害な物質と分類
ルギー調和提案の阻止理由として挙げてきた。
される特定有害物質の販売を制限する指令
76/769/EEC の 23 回目の修正案を提出した。同
2 年前、議長国を務めたドイツは、鉱油消費税
指令は、
当該物質および当該物質を含む調剤は、
の引き上げには長期的移行期間の設定が必要で
一般使用を目的として上市してはならないと規
あるという内容の妥協案を推進して、EU エネル
定している。
ギー調和案に関するコンセンサスの形成を試み
た。しかしながら、スペインは相変わらず同提
特定危険物質および調剤の販売ならびに使用制
案を拒絶した。
限に関する加盟国の法制、規制、行政規定の近
似化に関する指令 94/60/EC(指令 76/69/EEC
最近になって、委員会は、スペインの反対を回
の 14 回目の修正)によって、危険物質の分類、
避 す る 方 法 と し て 、「 協 力 強 化 ( reinforced
包装、ラベル表示に関する指令 67/548/EEC に
co-operation)
」という新メカニズムの利用を検
示した定義に基づき、発癌性、突然変異誘発性
討している。これは、12 月に交渉が行われたが、
あるいは生殖機能に有害な物質(カテゴリー1
まだ批准されていない新ニース条約の中で合意
または 2)と分類される物質リストが 1976 年指
されている。スウェーデンでの合意内容による
令付録 I に追加される。1998 年、委員会は、こ
と、エネルギー税の骨格に関する協議は今後数
れらの規定を科学的・技術的進歩に適合させる
ヶ月のうちに開始され、同国はその進捗状況を
という状況の中、新しく分類された 20 種類の
6 月末に経済・金融閣僚理事会に報告する。
物質をこのリストに追加し(指令 98/98/EC)
、
また 2000 年にはさらに 2 種類の物質を追加し
7 月に EU 議長国となるベルギーは、スウェー
た(指令 2000/32/EC)
。委員会によると、これ
デンと同様にエネルギー税問題に大いに取組む
らの物質も指令 76/769/EEC の添付リストにも
JMC environment Update
27
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
追加しなければならないという。
米国および日本との競争にさらされる国際市場
における欧州化学物質産業の競争力を維持する
委員会は、公衆保健および理事会が採択したガ
必要性を主張した。この産業閣僚理事会の結論
ン撲滅行動計画を根拠にその決定の正当性を主
については、環境閣僚理事会の 6 月の会合で検
張している。消費者による化学物質の使用は管
討される予定になった。
理できないので、委員会は、唯一の確実な安全
生殖機能に有害な物質とみなされる物質および
15. 欧州委、持続可能な開発に対する EU 戦
略を提案
調剤に消費者が入手できないようにすることで
委員会は 2001 年 5 月 15 日、2001 年 6 月 15
あると主張している。この提案は、共同体市場
日∼17 日のイエテボリで開催される欧州理事
の統一性の保持を目的とするものでもあり、し
会に関する通達を発表した。そして、その中で
たがって、共同体全域において、消費者による
3 本の柱から成る EU 持続可能な開発戦略の概
当該物質の使用を禁止することを目的としてい
要を示した。まず、政治決定に対する一貫性お
る。
よびコスト効果を高めるための一連の業界横断
確保手段は、発癌性、突然変異誘発性あるいは
的提案。これは、技術的革新および政治的意思
14. EU 産業担当閣僚、新化学物質戦略を
討議
決定への市民参加を促進するものである。
次に、
委員会が刊行した将来における共同体の化学物
可能な開発に関する最大の難問に対処するため
質政策に関する白書について討議した後、2001
の優先課題の目標設定と、EU レベルでの措置。
年 5 月 14 日と 15 日のエネルギー/産業担当閣
すなわち、気候変動、公衆衛生に対する脅威、
僚理事会に参加した EU 産業閣僚は、EU 戦略に
自然資源の枯渇および土地の利用などの課題で
関する一連の結論を発表した。討議の後、リー
ある。3 番目に、同戦略を実施し、進捗状況を
カネン(E. Liikanen)産業担当コミッショナー
測るために必要なイエテボリサミット後の措置。
は、各閣僚理事会がそれぞれの専門分野に応じ
今回の文書では EU 域内政策を対象とし、その
て同文書を検討するのが普通であると示唆した
後、域外政策に関する文書が発表される。委員
が、域内市場、産業、環境閣僚理事会の間でそ
会は、
「域外」に関する文書については 2002 年
の見解および要求の均衡をはかる必要があると
初めには用意できるので、2002 年 9 月の次回地
述べた。
球サミット(リオ+10)において EU はグロー
リスボンで示した戦略には含まれなかった持続
バル戦略を提案できると示唆している。
討議の焦点は企業間の競争力であった。ほとん
どの各国代表は、当該白書および委員会が提案
また、持続可能な開発は地球上にあるすべての
する手法を大筋で歓迎した。化学物質の登録お
国の目標であり、EU は域内ならびに国際的な場
よび認可に関する手続について、各国代表の中
においても、主要な役割を担わなければならな
には、コスト効果と費用対効果とのバランスを
いと述べている。この責任を果たすため、1992
考慮する必要があると強く主張する声もあった。
年の国連「リオ宣言」に調印した EU および他
また、各国閣僚は、導入するシステムは十分に
の調印国は、2002 年にヨハネスブルグで開催さ
柔軟性があり、企業に過剰な負担を課すもので
れる持続可能な開発に関する世界サミット(リ
あってはならないと強調した。同様に、一部の
オ+10)に間に合うように、1997 年の国連総会
代表の中には、同戦略が域内市場および商業的
第 19 回特別会議で、持続可能な開発に対する
規範に配慮した調整を必要とするのであれば、
戦略の策定を公約した。委員会は、リスボンサ
新機軸を犠牲に達成すべきものであってはなら
ミットならびにストックホルムサミットで、EU
ないこと、また中小企業にペナルティーを課し
は環境に配慮した持続可能な経済成長を遂げら
てはならないと強く主張する声があった。最後
れる、世界で最も競争力がありダイナミックな
に、国際的な側面について、同理事会は、非 EU
知価経済を構築しなければならないと、主張し
国との商業的関係を考慮すること、また特に、
た。
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
生に対する脅威、生物多様性の低下および交通
持続可能な開発に対する脅威の多くは、過去の
渋滞である。
生産技術の選択、土地利用の形態およびインフ
ラ整備に起因するものであり、短期間でこの流
気候変動については、EU は京都公約を達成し、
れを変えるのは難しい。委員会は、政策の調和
2010 年までに 1990 年の水準と比べて、平均で
を促進するために、政策立案の新しい手法を提
年 1%という大気中の GHG 削減を目指さなけれ
言している。EU 共通政策(共通農業政策、共通
ばならない。
漁業政策、共通運輸政策および一貫性に関する
・ 2010 年までに化石燃料の生産・消費に対す
政策)の中間見直しでは、これらの共通政策に
る補助金を段階的に禁止(必要に応じて、
よる持続可能な開発への寄与を高める方法を検
代替の雇用先の開発を支援する側面に立っ
討しなければならない。
た措置を導入)
より多くの持続可能な政策をより効果的に策定
・ 2002 年までにエネルギー製品税指令を採択。
していくため、異なる政策における様々な措置
さらに、その後 2 年以内に、欧州委員会は、
を見直しする場合に、措置を講じた場合と講じ
外部コストを全面的に国際化するとともに、
なかった場合の、潜在的な経済的、環境的、社
消費税の最低水準については少なくともイ
会的便益および費用を評価し、社会の中でもっ
ンフレ率分の物価スライドを目的として、
とも影響を受ける集団の適応を支援するために
エネルギー税に関する一段と厳しい環境目
も、
その集団を特定する必要がある。
委員会は、
標を提案する予定
2001 年 12 月にラーケンで開催される欧州理事
・ 2001 年末までに欧州 CO2 排出権取引制度を
会で、規則改善のための行動計画を提出する意
提案し、2005 年までに同システムを創設
向を示唆している。また、特にその利害が見過
・ バイオ燃料など代替燃料を促進。2010 年ま
ごされがちな消費者の代表を参加させて、より
でには乗用車およびトラックの燃料消費量
早い段階で一段と体系的な対話を実施すること
の少なくとも 7%を占めるようにしなけれ
により規則の質を改善し、その実施を加速化し
ばならない。また、欧州委員会は、2002 年
なければならない。また、科学技術も政治的意
の採択を目指して 2001 年には提案
思決定の指針として重要な役割を果たしている。
・ エネルギー需要を削減するための明確な対
最後に、委員会は、業界および消費者双方の習
策
慣や行動を変える必要があると強調している。
そういう意味では、市場価格は個人および企業
・ クリーンで再生可能なエネルギー源および
にサインを送るものであり、委員会は、その政
安全性の高い原子力エネルギー(すなわち、
策や立法案において価格インセンティブを与え
放射性廃棄物管理)に関する技術の研究、
る市場主導のアプローチを優先する。
開発および普及への支援を拡大
また、3 月に公表された準備文書の中で、EU に
EU は、委員会が指摘するように気候変動対策に
おける持続可能な開発を停止させる可能性のあ
は幅広い国際的協力が必要とされるため、他の
る主な動向を 6 つ示した。
すなわち、
気候変動、
先進工業大国がそれぞれ京都公約を達成するよ
公衆衛生に対する脅威、無責任な天然資源管理
う主張していく。
に対する圧力、
貧困および社会的阻害、
高齢化、
飽和および汚染である。5 月に公表された文書
第 2 の重点項目は、公衆衛生に対する脅威とい
では、(貧困と社会的阻害および高齢化社会の
う問題を取り上げることである。食品の安全性
社会的影響を主として取り上げた)リスボン、
および品質は共通の目標としなければならない。
ニース、ストックホルム・サミットで承認され
さらに付け加えるならば、この目標には、化学
た対策および目標に含まれなかった 4 つの分野
物質の生産および使用はヒトの健康および環境
に言及している。すなわち、気候変動、公衆衛
に著しい脅威を与えない場合に限ること、
また、
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
伝染病の発生および抗生物質耐性に関する問題
の取組み
に取組むという側面もある。主な対策提案を以
・ 共通農業政策を改革
下に示す。
・ 廃棄物を削減するために IPP の策定
・ 2002 年 に 欧 州 食 品 局 ( European Food
・ 2003 年までに、厳格な環境責任に関する EU
Authority)を創設
法の実施
・ 共通農業政策(Common Agricultural Policy)
を基に、量ではなく、健康に良い高品質な
最後に、第 4 の重点項目は運輸である。この点
製品および慣行に対して支援するよう方針
について、欧州委員会は、運輸および計画シス
を変更し、タバコ栽培に従事する労働者・
テムを改善し、経済成長が交通渋滞および汚染
栽培農家に対して変わりとなる収入源なら
の悪化に繋がらないようにすることが重要であ
びに経済活動の開発対策を導入するととも
ると主張している。地方および都市コミュニテ
に、タバコ農業への補助金を段階的に禁止
ィーの発展性の維持に対するより一層の配慮が
必要とされる。主な対策案を以下に示す。
・ 明確な食品ラベル表示による消費者情報お
・ 委員会は、2005 年までに空路を含めて各種
よび認識を改善
輸送形態にかかる料金にその社会コストが
・ 2003 年までに、職場での健康と安全を促進
反映されるように、2002 年には輸送料金に
するための包括的共同体戦略を策定
関する枠組みを提案
・ 2004 年までに新化学物質政策を実施するた
・ 公共輸送および鉄道へのインフラ投資を優
めのすべての法整備を実施
先。委員会は、2003 年の採択を目指して、
・ 2001 年末までに欧州委員会は、抗生物質へ
2001 年に欧州横断輸送ネットワークに関す
の耐性について情報提供の改善により鈍化
るガイドラインの改訂を提案
させ、農業における成長促進剤としての使
・ 2010 年における陸上輸送の割合が 1998 年
用を段階的に禁止し、そして人間および動
の水準を上回らないように、鉄道、内陸水
植物のケアにおける抗生物質の使用管理体
路および公共輸送による輸送を奨励
制の改善などにより、耐性ができるペース
・ 短距離海上輸送およびインターモーダル
を鈍化させるための欧州行動計画を提出
(複合輸送)事業を推進
・ 2005 年までに、欧州における伝染病発生の
・ 欧州レベルで鉄道および空路市場をさらに
監視および管理能力を整備する。
開放
責任ある天然資源管理が第 3 の重点課題である。
生物多様性の保護を改善することが必要であり、
持続可能な開発は重要な国際問題であり、気候
生息環境に対する負担を軽減しなければならな
変動や生物多様性が典型的な例であるが、持続
い。委員会は、2010 年までに、経済成長と資源
可能性に関する課題の多くは、解決に国際的な
利用・廃棄物発生の関係を断ち、生物多様性の
対策を要する。委員会は、先進国が持続可能な
損失を食い止めなければならないと強調してい
開発を率先して追求していかなければならない
る。そして、提案を以下に示す。
と考え、他の先進国にそれぞれが果たすべき責
任を受入れるよう呼びかけている。そして、EU
・ 2003 年までに、生物多様性の指標体系を確
はまず足元を正すべきであると考え、これによ
立
って、公表した戦略の中の本質的に「域内的」
・ 2002 年の共通漁業政策の見直しにおいて、
側面が正当化されるとみている。
乱獲を奨励する非生産的な補助金を排除。
EU 漁船団の規模および活動を世界的な持続
委員会は、持続可能な開発戦略の実施状況を毎
可能な開発に適合する水準にまで引き下げ
年春の欧州理事会に報告し、この目的のために
るとともに、結果として生じる社会問題へ
2002 年の春に開催されるバルセロナでの欧州
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
理事会では数種類の主要パフォーマンス指標を
・ すべての関係者(業界、NGO および消費者)
提案する。
を本格的かつ積極的に関与させて、持続可
能な開発戦略の効果的な実施を保証するプ
理事会がカーディフで導入した環境問題を分野
ロセスを設計しなければならない。
別政策に統合するプロセスは継続されなければ
ならない。また、広域経済政策ガイドライン
16. 欧州委、オゾン議定書の変更を希望
(Broad Economic Policy Guidelines)および雇
委員会は、2001 年 5 月 8 日、オゾン枯渇物質
用ガイドライン(Employment Guideline)によ
に関するモントリオール議定書の第 4 回修正を
り社会経済的側面に環境的側面が与えられたよ
受入れるよう閣僚理事会に求めた。同議定書で
うに、EU 持続可能な開発戦略に環境的側面を与
は、当該物質の検査方法を厳しくするよう求め
えるものでなければならない。この分野別環境
ている。
統合戦略は、EU 持続可能な開発戦略の具体的目
標に整合するものでなければならない。具体的
1987 年の採択以降、数回にわたり修正されてき
には、同委員会は、約 10 名の独立的立場の専
たモントリオール議定書は、オゾン枯渇物質の
門家が幅広い視点から見解を述べる、持続可能
使用および生産の削減あるいは中止を意図する
な開発「ラウンドテーブル」を設立する。この
ものである。EU は、同議定書の締約国であり、
円卓会議は、委員長に直接報告される。
ロンドン(1990)
、コペンハーゲン(1992)
、モ
ントリオール(1997)で合意した修正を採択し
EU 持続可能な開発戦略は、委員会の任期初めの
てきた。1999 年 12 月に北京で開催された同議
節目ごとに全体的な見直しを行う。2002 年から
定書の第 11 回締約国会議で、締約国は第 4 回
2 年毎に、この EU 戦略を評価するステークホ
修正を採択した。この修正によって同議定書に
ルダー・フォーラム(Stakeholder Forum)を開
含まれる規制提案を以下に示す。
催する。
・ 2004 年に先進国におけるハイドロクロロフ
ルオロカーボン(HCFCs)の生産を中止
ラーソン(K. Larsson)スウェーデン環境相兼
・ 2016 年に発展途上国における HCFCs の生産
環境閣僚理事会議長代行は、委員会の通達につ
を中止
いて、イエテボリ欧州理事会における交渉の良
・ 同議定書の締約国になっていない国との
い出発点になるとして歓迎の意を表した。
但し、
HCFCs 取引を禁止
同環境相は、EU は主要問題についてもっと意欲
・ 最近オゾン枯渇物質と特定されたブロモク
的でなければならないと感じ、イエテボリで取
ロロメタンを禁止
組みたいと示唆した EU の課題を以下に示す。
・ 検疫や出荷前検査に使用される臭化メチル
量の報告を義務化
・ 反持続可能性傾向を逆転させるために具体
的な目標を採択すべきである。
EU を代表して新規定を交渉した欧州委員会に
・ 気候変動対策を最優先課題とし、クリーン
よると、新措置はオゾン枯渇物質に関する EU
エネルギー源を使用、公衆衛生に対する危
政策、特に新しい制限措置を含む EC 規則
険との取組み、交通渋滞を緩和、および天
2037/2000 と整合するものであるという。同委
然資源管理に対して一段と責任ある姿勢を
員会は、EU に同修正承認の重要性を強調してい
取らなければならない。
る。EU が承認すれば、同修正の発効に必要な
20 の署名目標の達成に寄与することになる。
・ 気候変動対策に対する長期的な公約を明確
に再確認することによって、国際的なリー
17. 5 種類の製品群に関するエコラベル表示
基準見直し提案
ダーシップを発揮するとともに持続可能な
開発のグローバルな性格を訴えていかなけ
改正共同体エコラベル認定制度に関する欧州議
ればならない。
JMC environment Update
会および閣僚理事会規則(EC)No 1980/2000
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Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
では第 6 条において、欧州委員会は EU エコラ
する支持がある。例えば、オーストリアは、
「従
ベ ル 表 示 委 員 会 ( EUEB: European Union
来の証明責任負担の分配では不公正な結果が出
Eco-labelling Board)に対して数種類の製品群に
る可能性がある場合には」
、
裁判所が柔軟に証明
対するエコラベル表示基準を促進し、定期的に
責任負担を軽減するよう求めている。
見直すことを命ずると規定し、当該作業の完了
しかし、化学大手 Aventis は、
「証明責任負担が
期限も定めている。
…逆転した場合、被告は否認の証明−すなわち
・ 全目的型衛生用洗剤: 2001 年 9 月 30 日
・ 食器洗い用洗剤(手洗い用)
:
2001 年 9 月 30 日
・ 硬質床仕上げ材:
2002 年 3 月 31 日
・ テレビ:
2002 年 3 月 31 日
・ 掃除機:
2002 年 6 月 30 日
・ タイヤ:
2002 年 12 月 31 日
・ 旅行者用施設:
2002 年 12 月 31 日
自らの行為によって当該被害が生じる可能性は
なかったと証明することがほとんど不可能な状
況におかれる」と、警告している。
スウェーデンは、保険加入の義務化は時期尚早
という同委員会の見解を支持しているが、加盟
国の多くは、保険がかけらるかどうかを重要な
要素と見なしている。また、業界も、企業は環
18. 遡及的責任適用に対する反対意見が優勢
境責任に対して自己防衛する必要があると強く
委員会が 2000 年 2 月に刊行した白書に対する
主張している。
150 件の回答では、環境被害に対する責任は遡
欧州共同体産業連盟(UNICE:ユニセ)は、
「何
及的に適用すべきでないという意見が圧倒的多
らかの責任に対して、保険をかけられることは
6
数であった 。
絶対的前提条件と考える。
(また)
…リスクを明
環境ロビー団体は別として、何らかの措置が課
確に定義あるいは評価できないのであれば、保
せられる場合であっても遡及的適用はすべきで
険市場が適切な保険を提供できるとは思えな
ないというのが回答者の大方の意見である。同
い」と述べている。
制度は、予定されている責任指令発効後に発生
した行為に起因する被害だけを対象とすべきで
欧州の中小企業を代表する UEAPME は、保険共
あるとの主張である。
同出資の設立が必要であるとしている。
委員会は、インターネット上のサイトで、EU
一方、Comité Européen des Assurances(欧州
環境被害責任に関する白書についての意見の概
保険委員会)に代表される保険業界は、この分
略を公表している。同白書に次いで、今年後半
野の保険提供に熱心ではない。
保険業界は、
「資
には EU 環境責任指令案が提出されるはずであ
金的保証の取得を法的責任とせず、自主的な決
る。
定に基づいてリスク移転の機会を模索させると
いう、欧州議会が採択した現実的アプローチを
ベルギーおよびスウェーデンは、委員会に対す
歓迎する」という。しかし、同委員会は、汚染
る意見の中で、将来この指令が遡及的に適用さ
者負担原則が「保険業界も環境規則に関する適
れた場合、国内法のもとで過去の汚染(historic
切な基準として一般的に受入れるものである」
pollution)の取扱いを定める各加盟国の規定を
と補足した。
無効にするものであってはならないと、指摘し
ている。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
一部加盟国には、証明責任負担の軽減構想に対
6
JMC environment Update
32
詳細は下記サイトを参照のこと。
http://www.europa.eu.int/comm/environment/wel/main/index.
cfm
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
2. 新たな再生可能エネルギー源生産促進法
を計画
II. ドイツ
1. 政府、EU 廃車プログラム基金設立の
仕組みを検討
GHG 排出削減を期待して、同国は、木材、糞、
政府は、2007 年以降の廃車処分に関する EU 法
た電力に対する補助金を規制する「バイオエネ
あるいは有機廃棄物などの生体物質から生産し
ルギー政令(Bio-Energy Ordinance)
」を計画し
にかかる予想コストに備える基金を設立するた
ている。環境省の女性報道官によると、同規則
め、自動車業界に 2002 年から新車に対する課
は、昨夏に別の案が提出された時には議会を通
徴金を認めたいとしている 7。予備プランによ
過しなかったが、2001 年 3 月 7 日に政府が採
ると、政府は、この準備金に対し年間約 5 億ド
択したという。
議会の両院が新案を承認すれば、
イツマルク(2 億 2,700 万ドル)の税控除を業
同規則は 2001 年 6 月までに発効するという。
界に認める意向である。
その代わり、
消費者は、
2007 年以降使用済み自動車のリサイクル費用
新法は、燃料として利用可能な生体物質の種類
として追加料金を支払う必要がなくなる。
に関して基準を定め、再生可能なエネルギー法
(Renewable Energies Act)に基づき再生可能
Rainer Baake 環境次官と協議の上、自動車業界
なエネルギー源を利用する発電所に対する補助
はこれに原則的に合意した。しかしながら、一
金を規定するものである。
部の詳細については、
業界とも、
政府内部でも、
今後討議していかなければならない。EU 使用済
2000 年 4 月 1 日発効の再生可能なエネルギー
み自動車(ELV)に関する指令 2000/53/EC を実
法は、再生可能なエネルギー源を利用する電力
施するための新「使用済み自動車法
生産者が、法的保証価格で配電網に売電するこ
(altfahrzeuggesetz)
」に関する作業はまだ完了
とを義務付けている。事実上、配電網を運営す
していないと、同次官は述べている。この法律
る電力会社にかかるエネルギー源を強制的に助
は内閣が採択後、この夏には議会に提出される
成させるものである。例えば、太陽エネルギー
見込みである。
は、1 キロワット時 0.99 ドイツマルク(約 45
セント)という保証価格で配電網に売られる。
車の路上走行期間は平均 15 年と予想されてい
一方、風力発電の保証価格は 0.16 ドイツマルク
る。業界は、リサイクルコストを車 1 台当たり
(約 7 セント)である。
350 ドイツマルク(159 ドル)と推定している。
国内の自動車メーカー数社は、既存の走行車の
バイオガスや有機残留物など生物学的エネルギ
リサイクルコストに充当するため、1999 年およ
ー源を利用する電力には、発電所の規模に応じ
び 2000 年に準備金の計上を開始した。
て、1 キロワット時 0.17∼ 0.20 ドイツマルク
(約 8∼10 セント)という保証価格が認められ
フォルクスワーゲン社だけでも、同社の
た。
Betriebsrat が 2000 年 12 月に発表したデータに
よると、同社の車のうち 3,260 万台が欧州の道
新法は、「わが国のエネルギー政策の改定にお
路を走行していることから、最大 60 億ドイツ
ける新たな側面を意味する」と、トリッティン
マルク(約 27 億ドル)のコストを予測してい
(J. Trittin)環境相は声明の中で述べた。
「同法
る。Betriebsrat は、業務管理に携わる企業選任
は、木材や有機廃棄物など再生可能なエネルギ
の労働者代表の機関のことである。
ー源の利用による気候に優しいエネルギー生産
を促進するものである。
」また、バイオエネルギ
現段階では、2000 年以前に計上された基金に税
ーは、同国の風力エネルギーに似た役割を担う
控除が認められるかどうかは分からない。
ものと期待され、長期的には同国エネルギー消
費量の約 5 分の 1 をまかなう可能性があると述
7
べた。
使用済み自動車に関する指令 2000/53
JMC environment Update
33
Vol.3 No.2 (2001.7)
欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
昨年 10 月に刊行されたドイツ国家気候保護戦
DSD は現在、国内の全国規模の販売用包装回収
略 ( Germany’s National Climate Protection
およびリサイクル・システムを運営する唯一の
Strategy)によると、2005 年までに農業バイオ
企業である。1998 年の売上は 22 億ユーロであ
ガス発電所が 620 ヶ所から約 2,500 ヶ所まで 4
った。DSD 自体は廃棄物を回収せず、地元の回
倍増加し、2010 年までには 5,000 ヶ所まで増え
収業者を利用している。
る見込みである。
ドイツ包装材規制令は、EU 包装および包装廃棄
さらに同戦略によると、2010 年までにバイオエ
物指令 94/62/EC と同様に、販売時点あるいは
ネルギーによって、国内の二酸化炭素排出量は
その近くで、消費者からの使用済み販売用包装
年間 500 万トンから 1,000 万トン削減されると
を無料で引取るよう製造業者および小売業者に
いう。同環境相は、数十億マルクの投資と、古
義務づけている。但し、DSD のような包括的回
い木材の年間使用量が 100 万から 200 万トン、
収システムを利用する製造業者および流通業者
発電能力が 10 億から 20 億キロワット時の近代
はこの義務から免除されている。
的な木質燃料による発電所の早期建設を見込ん
DSD は、少なくとも 80%の市場シェアを誇り、
でいるという。
事実上独占的地位を享受している。
現在、
「自己
3. 欧州委、ドイツのグリーン・ドット・シ
ステムに反対
管理による解決」(引取り部分を第三者に委ね
2001 年 4 月の声明文で、委員会は、グリーン・
しかなく、業者には DSD のような商業的な力も
ドット(Der Groene Punkt)商標の創設企業で
市場での地位もない。
られない)による競争の機会は市場の周辺部に
ある Duales System Deutschland AG 社(DSD)
が、国内の包装廃棄物の回収およびリサイクル
委員会は、DSD の顧客が、DSD による実際に引
市場におけるその支配的な立場を濫用して、競
取りおよびリサイクル・サービスをしている包
争を制限していると述べた。この判決は DSD 商
装の量ではなく、グリーン・ドット商標のつい
標協定における 1 規定に異議を唱えるものであ
た包装の量に応じた料金を支払うものとすると
るが、同リサイクル・システムの存在および総
いう規定に異議を唱えている。同委員会による
合的機能については問題視していない。
と、回収やリサイクルは競合他社が実施してい
るのに DSD はそのサービスを提供していない
委員会は、DSD 採用の支払システムは顧客にと
状況下、グリーン・ドット商標の使用量に対し
って不利なものであり、当該市場への競合の参
て全額請求するのは、その支配的立場の濫用で
入を阻止するものであるという。また、当該ド
あるという。EU 執行部は、
「サービスの提供が
イツ企業がその濫用的行動を中止する措置を取
なければ無料」というのが EU の望む市場運営
れば、DSD システムの残る構造部分については、
の原則であるという。
好意的な決定を採択できると考えている。
委員会はまた、ライセンス料要件について、顧
モンティ(M. Monti)欧州競争担当コミッショ
客には DSD の競合他社と契約する現実的・経済
ナーによると、
「欧州委員会は、
廃棄物の再生な
的実現性がないことを意味しているという。
ど新しい規制緩和市場も含めて、競争に対する
DSD の競合他者が提供するサービスに料金を
市場開放を確実なものとすること、また新規参
支払いながら、顧客はさらに DSD に追加料金を
入者が支配的企業の行動の犠牲にならないこと
支払うか、あるいは包装、小売、商品系統を別々
を確実なものとする責任がある」と述べた。ま
に組織化しなければならなくなる。
た、
「今回の判決により、
サービス提供者の選択
に関する改善が図られ、環境義務を遵守する企
委員会は、
DSD が運営する支払いシステムが EC
業のコスト低下に繋がる」という。
条約第 82 条の意味する支配的立場の濫用であ
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
るとの結論を下した。同決定を受けて、DSD は
ネルギー使用者を含め、ほぼすべての該当分野
グリーン・ドットのついた販売用包装に関する
との間でかかる協定が成立した。これにより
当該部分について、今後同国で料金の請求がで
2010 年までに年間総量 250 万トン以上の炭素
きなくなる可能性がある。ドイツ包装法に規定
排出量削減が予想される。これは、エネルギー
する、引取りおよび回収部分が、競合システム
税(気候変動税)プログラム全体から予想され
であるか自己管理による解決であるかにかかわ
る総削減量の半分に相当する。
らず、他者によって適切に果たされていること
一方政府は、(ガスの価格上昇および原子力発電
が示された場合には適用されることになる。
所数箇所の大規模修理による閉鎖の結果)、発電
一部の企業は DSD のやリ方に懸念を示してい
所の石炭使用量が増加したことを主な理由とし
る。委員会は、このようにその支配的立場を濫
て、2002 年の国内 CO2 排出量が 2%増加したこ
用した企業には通常罰金を科すとしている。し
とを認めた。このような最近の逆転動向から関
かし今回の場合、DSD が欧州委員会従来の決定、
心をそらすために、閣僚らは、1990 年から 1999
あるいは欧州司法裁判所の判例法に基づいて、
年の間に CO2 排出量が 9%減少したこと、また、
同社の行動と連合条約に規定する EU 競争規則
1990 年以降 GHG ガスが全体で 14.5%減少して
との整合性を判断することは容易でないと認め
いることを強調した。しかし、今回の最新デー
ている。
タから、2010 年までに CO2 を 1990 年水準より
20%削減するという一方的な国家目標の達成
本決定で明確になったことを受けて、
委員会は、
を目指す政府にとって、現在直面する問題の厳
今後同様な事例が生じた場合には躊躇すること
しさが明らかになった。
なく手続を取り、必要に応じて罰金を課すとい
う。そして本決定により、委員会は、同国にお
さらなる進展は、今後の英国国内排出権取引制
ける使用済み包装の回収および再生分野におけ
度に大きく依存することになる。このことに対
る競争とサービスの質の向上を可能とする信頼
す る 提 案 は 、 イ ギ リ ス 産 業 連 盟 ( CBI:
性の高い条件整備ができたと主張している。
Confederation of British Industry)をスポンサー
とする特別諮問団体および政府のビジネスと環
境に関する諮問意委員会(ACBE: the Advisory
Committee on Business and the Environment)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
を媒介として企業の意見を取り入れながら、現
在まだ策定段階にある。今年後半には詳細が公
表される予定である。
III. 英国
2. 排出権取引に関する規則の告示が延期
1. エネルギー減税と引き替えに、多数の
気候変動協定が成立
政府は、世界初の産業用 GHG 排出に関する包
括的取引制度に関する規則の告示を少なくとも
政府と、10 のエネルギー集約型分野と 30 以上
の小規模分野に及ぶ総数 36 業界団体との間で、
4 ヶ月延期することになった。政府は、首相が
40 以上の気候変動協定(CCA: Climate Change
総選挙宣言したわずか数日前に同制度の枠組み
Agreement)が締結された。CCA に基づき、参
案を公表したが、日程が短すぎるとの懸念が広
加企業は、2001 年 4 月 1 日から家庭以外の全
がる中、2002 年 4 月から同制度を開始するとい
エネルギー使用者に適用される新エネルギー税
う公約に変更はないと主張した。
を 80%減税される代わりに、法的拘束力を有す
2000 年 11 月、政府は 2001 年 3 月に国内の排
る炭素排出量削減目標を受入れる。
出権取引規則を発表すると約束した。これが少
なくとも 7 月まで先延ばしされることになった
鉄鋼、化学薬品、製紙、セメントなど大規模エ
わけだが、
政府は今回の延期を正当化しようと、
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
開始を急ぐより時間をかけて適切な制度を整備
の原因となっている。また、ブローカーも、契
した方が重要であると強調している。
約に関する最初の規則を明確化することを理由
に遅れが生じた結果、排出権取引に対する関心
業界は大筋で合意しているものの、むしろ、1
が薄れるのではないかと懸念している。
月に終了した協議プロセスで浮かび上がった問
題の解決に、さらに詳細な変更を求めていると
さらに、京都議定書の運命にかかわる今後の交
いうのが理由のようである。
渉結果を待つために、政府が国内排出権取引規
則への政治的投資をどの程度制約してきたのか
政府は、潜在的参加者向けに「新しく誕生する
もよく分からない点である。このような考えに
枠組みの詳細」
を知らせるために発行された
「作
対する憶測を静め、交渉の場にのぞむ同国の信
業文書(working documents)」の中で、2003
頼性を守るため、政府は、京都議定書の共同実
年−2004 年頃から、同制度の参加企業に対する
施 お よ び ク リ ー ン 開 発 メ カ ニ ズ ム ( Joint
財政的インセンティブを提供するため、入札制
度により 4,300 万ポンドの利用が可能になると
Implementation and Clean Development
Mechanisms)に基づく GHG 排出削減プロジェ
認めている。
クトに対する民間の海外投資を奨励しようと、
環境・運輸・地域省と貿易産業省の共同で新た
また、企業が取引の基準とする過去の排出量の
な部局を開設することを認めた。
算出期間(いわゆる「既得権に基づく」規則)
について、2000 年までの 3 年間に制限する案を
ACBE が提案し、昨年 10 月の首相演説で公約し
保持した。このことが、最近になって排出量を
ているように、気候変動プロジェクト室(CCPO:
削減し、これ以上の削減圧力が一切かからない
the Climate Change Projects Office)の開設によ
かほとんどかからないような規則の策定を求め
って国内企業は、低炭素技術におけるビジネス
る企業にとって、不満材料となっている。
チャンスおよび市場を利用する支援が行われる。
CO2 以外の GHG の測定に関する国際的なガイ
3. 風力発電の増加
ドラインが全くないことはもとより、同制度の
2001 年 3 月 26 日、英国風力エネルギー協会
適用範囲に関して厳しい意見の相違があるにも
(BWEA: the British Wind Energy Association)
かかわらず、最新案では、同制度が京都議定書
は、同国は 2005 年末までに 125 万世帯の需要
の管理対象とする 6 種類の GHG をすべてカバ
を満たすのに十分な風力エネルギーを生産する
ーしなければならないという政府のこれまでの
と予測した。これは、国内総電力供給量の 1.6%
立場が繰り返されている。
に相当する。
ブローカーも政府も、同制度を開始してから 5
BWEA は、同国が欧州の風力資源全体の 40%を
年以内に、少なくとも 1,500 社が CO2 取引参加
有すると主張している。理論的には、同国の電
を希望すると予想している。また、取引の結果
力重要を 3 倍以上も上回るほどの資源である。
2010 年までに少なくとも年間 200 万トンの炭
政府の目標は、2010 年までに化石燃料以外の再
素排出量が削減されると現在でも確信している。
生可能なエネルギー源による国内電力生産の割
これは、2010 年までに CO2 を 1990 年水準から
合を 10%にすることである。
20%削減するという国内目標に必要な総削減
量 770 万トンの 4 分の 1 以上に相当する。
現在、国内初のオフショア風力ファームによる
3.8 メガワットを含め、409 メガワットの風力
批評家は、同制度が普及するとも、効果を発揮
するとも確信していない。この制度にいかに発
電を統合するか、すべての関係者間でコンセン
サスがまだ成立していないことが少なからずそ
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
発電容量が設置されている 8。さらに、2001 年
炭素税は、同国の現行エコ税である汚染行為に
末までに 119 メガワットが加わる予定である。
関する一般税(TGAP: General Tax on Polluting
これにより、4 年間で達成すべき新発電基地の
Activities)の延長として計画されたものである。
規模は約 1,500 メガワットとなり、2005 年末ま
同税は、2001 年以降ガソリンおよびディーゼル
でに同国の風力タービンによって年間 57 億電
燃料を除くあらゆる形態のエネルギーに課税さ
力単位(5.7TWh)の発電が達成されるはずであ
れる予定で、国内の民間企業 280 万社のうち
る。
44,000 社に影響を与えるはずであった。GHG
排出への効果を最大化するために、また、主に
大規模エネルギー需要企業を対象としながらも、
従業員が 30 人を超えるすべての企業に適用さ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
れるはずであった。但し、農家、漁師、木材会
社は同税を免除されていた。
IV. フランス
2000 年半ば、大多数の社会党および共産党議員
に、シラク(J. Chirac)大統領に忠実な中道右
1. 政府高官、炭素税の今後の適用をめぐり
対立
派政党の議員(MPs)が加わって、エコ税に反
対する意外な連立が形成された。
同連立勢力は、
政府の有力高官二人が、国家気候変動対策の一
単に政治的な理由から政府文書に反対し、それ
環として今年施行が予定されている、新しい
ぞれ選挙区の企業が同提案による最も大きい負
CO2 排出税の今後の適用をめぐり対立している。
担を免除されるような修正案を出している。
2000 年 12 月 8 日、下院の国民議会がようやく
ヴォワネ(D. Voynet)環境相が、2000 年末に
妥協文書を承認したが、この案はすぐに憲法裁
承認され、民間企業から 30 億仏フラン(4 億
判所が拒否するところとなった。大規模エネル
1,500 万ドル)の税収増が見込まれるエネルギ
ギー需要者を大幅な免除対象とするのは、「憲
ー税の本格的適用を求めているのに対して、フ
法上容認しがたい税制上の不公平」とみなした
ァビウス(L. Fabius)蔵相は、政府が同プロジ
のである。
ェクトを廃止し、企業の GHG 排出削減努力を
強制する別の方法を探すよう提案している。
同環境相は、初期提案の中で GHG 排出削減に
関する自主協定を政府と交渉する権利がすでに
2001 年 4 月 30 日、同蔵相とその配下の予算・
すべての企業に与えられており、これにより納
産業担当閣僚がジョスパン(L. Jospin)首相宛
税義務が大幅に緩和できると主張し、政府が大
てに送ったエネルギー税廃止を要求する機密通
規模エネルギー需要者に対する特別待遇を直ち
信文を仏マスコミが公表したことから、この政
に廃止するよう提案した。
府有力高官二人の対立が公になった。政府筋に
よると、この問題については、6 月に首相が最
このプランの下、企業は 2010 年までに排出量
終決断を下すことになるという。同首相がヴォ
削減達成を公約することになる。2001 年以降、
ワネ対ファビウス間の対立のどちら側を支持す
政府と自主協定を締結した企業は、2010 年の目
るかに拘わらず、政府はやはりエコ税計画を考
標値の超過分にしか課税されない。
え直す必要がある。
同計画は、
2000 年 12 月末、
フランスの最高司法機関である憲法裁判所(the
一方、同蔵相は、首相にとにかく同税を廃止さ
Constitutional Council)
が拒否しているのである。
せようとしているが、特に京都議定書に定める
国際的 GHG 削減公約を拒否したブッシュ
(G. W.
Bush)米国大統領政権に同国が抗議しているこ
8
風力発電による電力を 1 単位使用した場合の CO2 排出削減量は
860 グラムである。現在、風力発電による CO2 排出削減量は年
間約 100 万トンである。
JMC environment Update
とを考慮すると、国としては政治的に支持でき
ない解決法というのが大方の見方である。
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
億仏フラン(100 億ドル)がかかるという。
2. 仏議会の委員会、新たに重金属の監視を
要求
最後に、塗料に関して同報告書では、欧州では
2001 年 4 月後半に議会の有力委員会が公表し
もはや法律的に使用されていない鉛基剤の塗料
た報告書によると、過去 10 年間に導入された
の存在により、全国で約 80 万世帯が健康およ
規制によって、国内のカドミウム、鉛、水銀な
び環境に対するリスクを引き起こしているとい
どの重金属汚染は大幅に緩和されたが、当該毒
う。また、政府は、この塗料問題の解決に、さ
性物質は依然として自然環境にあまりにも蔓延
らに 480 億仏フラン(68 億ドル)かかると試算
しているという。
している。
同国が重金属を含有する消費財の処分を十分規
3. 大統領、地球環境庁の創設を要求
制してこなかったとして、議会の科学的選択・
シラク大統領は、2001 年 5 月 3 日、世界保健
技術評価局(the Paliamentary Office for the
機構(the World Health Agency)に似た権限を
Evaluation
of
Scientific
Choices
and
Technologies)のメンバーは、車のバッテリー
有 す る 地 球 環 境 庁 ( Global Environmental
や消費財に使用される乾電池や蓄電池、照明器
よう呼びかけた。大統領が新たな国際的協調に
具、使用済みペンキなど、疑わしき且つ潜在的
基づく環境行動を呼びかけたのは、同国のオル
に有害な製品のリサイクルおよび効果的な処分
レアン市で行われた広範な政策に関する演説の
を義務付ける取組みの強化を、社会党主導の政
中でのことであった。演説の中で、仏および EU
府に強く求めた。
環境法の全面適用、中央官庁業務の「環境」監
Agency)を国連傘下機関として早急に創設する
査、特に原子力および気候変動など、エネルギ
同国が広範な製品のリサイクルを義務化する
ー政策に関する国家的議論、そして仏憲法への
EU 指令を国内法制化に最初に取り組み始めた
「環境に関する章」
の追加についても言及した。
1999 年以来、電池の処分は主要問題である。
「 重 金 属 が 健 康 と 環 境 に 与 え る 影 響 ( The
左派および環境派政治家は、2002 年半ばに予定
Effects of Heavy Metals on Health and the
Environment)」と題する議会報告書は、2000
される大統領選までちょうど 1 年という時期に
年以降導入された業界主導の取組みは十分では
を嘲笑しているが、
大統領に動じる様子はない。
おける大統領自身がいう環境運動への「転向」
なかったと示唆し、法律の条文を強化するよう
政府に求めている。
また、大統領は、地球が直面する環境的ジレン
マは「この数年でその規模においても速度にお
そして、製造業者は過去 10 年間、電池に含ま
いても変わった」ことは何もなく、この問題が
れる水銀その他の重金属の含有量を大幅に削減
「国家元首レベルで取り上げる時期が到来し
したと賞賛する一方で、流通業者は依然として
た」というのは当然のことといった。
業界主導のリサイクル・プログラムを介して再
生されるよりもはるかに大量の電池を販売して
大統領の政敵は同意しながらも、なぜこの問題
いるという。
さらに、
「一部公的機関に対する警
が任期 7 年の最初の 6 年間にはほとんど取り上
戒強化は避けられない」としている。
げられなかったのかと疑問を呈している。この
ような政治的不満にもかかわらず、通路をはさ
同報告書の核心部分をなす電池を巡る議論とは
んで両側に対峙する政治家はいずれも、以前に
別に、議会の委員会は、同国が特に水質に関す
比べて環境責任や予防原則などの概念を国内法
る EU 指令にある鉛基剤のパイプを既存の住宅
に統合しようという大統領の意思表明が、次期
から排除するという規定を遵守した場合の影響
大統領選に向けたキャンペーンのトーンを変え
分析も実施し、問題のパイプが国内の全住宅の
たこと、そしてかかる概念が今後の水利用、原
約 5%に使用されており、
その対策には最高 700
子力エネルギー規制、環境課税に関して議会で
JMC environment Update
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欧州環境規制動向∼在ブラッセル弁護士モニタリング情報⑮
の審議に大きく影響してくる可能性があると認
中である。
めている。
中でも、一般家庭および企業への戸別巡回によ
る電池回収案を検討している。他に検討中の制
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
度として、
電池売場に回収箱を設置する方法や、
一般家庭ゴミの定期的回収に合わせた路上回収
や、
および現在のボトル・リターン方式に似た、
V.
電池を返却すると返金されるデポジットを消費
デンマーク
者に支払ってもらう方法などがある。
1. 政府、新たな電池回収・リサイクル処理
制度を策定
この制度は 2002 年に政府の承認が得られると
期待されている。行政命令のため、議会の承認
デンマーク環境保護庁(EPA)関係者によると、
は必要ない。
政府は、リサイクル電池の割合を 75%まで引き
上げることを目指し、新たな電池回収・リサイ
2. 臭素系難燃剤
クル戦略を策定中であるという。政府は、電池
回収に問題が生じているため、リサイクル対策
同 EPA は最近、臭素系難燃剤に関する新しい行
の改善方法を模索しているという。
動計画を発表した。
同国では 1970 年代に自主的電池回収・リサイ
同計画は、国際的に最大の懸念事項となってい
クルが開始されたが、1996 年 4 月 1 日発効の
る臭素系難燃剤の段階的使用禁止を目的として
政令(No. 92/1996)により、地方自治体に、政
いる。短期的には、PBB と PBDE というグルー
府が有害物質とみなす電池を企業ならびに一般
プに属する物質の取組みが含まれる。長期的に
家庭の両方から回収することを義務付けた。
は、問題のある臭素系難燃剤をすべて特定し、
段階的に使用禁止とする。「現在私達は、PBB
また、この政令により、単位当たり 80 セント
および PBDE が健康に与える影響を完全に把握
の有害物質含有電池税が初めて導入されたとい
しているわけではないが、予防の原則
う。税収は、電池の回収・リサイクルに使われ
(precautionary principle)の適用が特に問題と
ている。同 EPA は、電池の回収・リサイクル業
なる。私が認識しているのは、人間および環境
者を 20 社認定し、ニッケルカドミウム、ニッ
の中にこれらの物質が発見されているというこ
ケル水素、リチウム、および酸化銀の電池を有
と、そして劣化速度が緩やかで、今後長年にわ
害物質含有電池に分類した。EPA によると、一
たり自然環境中に存在するという事実である。
般的に、電池には大量の重金属、特に鉛が含ま
食品や環境中の濃度が実験動物に害を及ぼす基
れており、さらに水銀、カドミウム、ニッケル
準にほど遠いとしても、今行動を取れば、おそ
が含まれているという。
らくこのリスクを減らし、おそらく長期的には
完全に排除できるかもしれない」と、ゲイド(S.
Gade)EPA 長官はいう。
同関係者によると、地方自治体に対する要求事
項や追加的課税措置をもってしても、電池回収
同 EPA は、消費者も多少対象とするが、国内の
は十分機能していないという。中央政府は、地
方自治体に対し独自のリサイクル・プログラム
小売業者に向けて、2001 年秋から大規模な啓蒙
を立案する自由を与えたものの、現在、このよ
キャンペーンを始める予定である。また、臭素
うなプログラムによる電池回収率は 35%以下
系難燃剤の代替物質の開発および試験プロジェ
にとどまっている。回収率を高めるために、同
クトも開始される。2000 年 12 月には、EPA と
政府は、様々な地方自治体で成功している回収
デンマーク・プラスチック連合が、プラスチッ
制度を一部参考にしながら、新たな政令を策定
ク製品に使用される臭素系難燃剤の消費状況お
よび臭素系難燃剤に起因する問題を明らかにす
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の期間に 1.6%も増加した。CO2 排出量の増加は
るため協力し始めた。
2.5%であった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
国連気候変動条約への同国の報告では、この増
加の主因は輸送部門にあるという。この増大は
CO2100 万トン以上に相当する。CO2 換算された
GHG 排出量は 7,070 万トンに達する。
VI. スウェーデン
この年次報告書に、
初めて、
フッ素化物質の HFC、
1. 電気電子機器の廃棄物処理に関する新規
則
FC、SF6 が言及された。これらの物質は、1 ト
ン当たりの換算で、CO2 より地球温暖化影響が
スウェーデン環境庁(EPA)は、電気電子製品
大きい。オゾン枯渇物質の代替物資として使用
の廃棄物処理に関する規則および一般的指針を
される HFC だけでも、ゼロに近い水準から CO2
発表した。同国では、2001 年 7 月 1 日に当該
換算で 375,000 トンに相当する水準にまで増加
製品に対する拡大生産者責任が発効した2。また、
した。
同じ 7 月 1 日に発効した規則は、処理オペレー
ションおよび作業者は、ISO-9000 シリーズ、
1990 年から 1999 年の GHG 排出量に関する数
ISO-14000 シリーズ、あるいは同等のシステム
字は、年間の温度変化を考慮していない。いわ
に従って認証を受ける義務があると規定してい
ゆる平年訂正という新しい手法が開発されてい
る。処理に従事する者は、適切な資格を有し、
る。1990 年の冬が比較的温暖で、水力発電所に
また関連する訓練と経験を有し、そのことを文
とって水が豊富にあったことはすでに知られて
書で証明できることとされている。また、利用
いることである。すなわち、CO2 排出量は相対
可能な最善の事前処理技術を選択すること、そ
的に低水準となるはずである。
の選択理由が文書で証明できることとされてい
る。有害廃棄物に分類される構成部品は、ブラ
京都議定書に従って、EU の温暖化ミッションを
ウン管、液晶ディスプレイ、臭素系難燃剤を含
2008 年から 2012 年までに、1990 年と比較し
むプラスチックと同じように、電気電子製品廃
て 8%削減しなければならない。EU 諸国は、同
棄物から取り除かなければならない。
国が同時期に 4%排出量を増加させる可能性が
あると判断しているが、同政府は 1990 年から
同国の生産業者は、当該規則への適合には年間
2010 年の間に 2%削減という目標を公表してい
2,000 万∼3,000 万ユーロを要し、年間の回収量
る。
はすぐに 75,000 トンに達すると推定している。
一般家庭用向けに、約 1000 箇所の有人回収ポ
3. 水銀ゼロの低エネルギーランプ
イントが計画されており、さらに、国民約 50
水銀を使用しない世界初の低エネルギーランプ
万人は近隣地域に設置された地元の小規模な回
がスウェーデン企業 LightLab によって開発され
収施設を利用できる。
た。これは、家庭およびオフィス用で、今後 2
2. エネルギー分野が減少する一方、二酸化
炭素排出量は増加
年間のうちに市販される予定である。これは電
エネルギー生産に起因する CO2 排出量は減少し
を発生させて光を作るというものである。光源
界放出技術に基づき、炭素陰極を使用して電子
ている。同じことが、同国のゴミ埋立て施設か
は、輝度を失うことなく、ダイオードサイズの
ら発生するメタンの量にも当てはまる。しかし
ものも作ることができる。このようなことは現
ながら、GHG 総排出量は、1990 年から 1999 年
在の小型蛍光灯では不可能である。
2
これまで、数百個のランプで一連のテストを行
廃棄物に関する政令および WEEE 処理規則の第 21 条∼第 25 条
を参照のこと。
JMC environment Update
い、製造業者数社との交渉が進められている。
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同社は、光の強度とエネルギー消費量との関係
を拒否したため、法的手続を取った。一日単位
は少なくとも現在の低エネルギー電球と同じく
で罰金を課すと威嚇したほか、同政府は、EPZ
らい優れているという。価格も見合ったものに
が 2003 年末までに同原子力発電所を閉鎖する
なるという。
という書面による確約を求めている。
水銀の使用を避けて省エネも実現するというの
そして、EPZ が 2004 年までに発電所の運転を
は、環境という視点からは、願ったりかなった
停止するのであれば、今年閉鎖に向けた準備を
りといえる。同国は、水銀の段階的な全面的使
開始しなければならないので EPZ に圧力をかけ
用禁止を望んでいるが、多くの光源に対して水
ている。同政府はまた、EPZ に対して、2004 年
銀に代る有効な代替物質がまだ市販されていな
1 月以降履行すべき新規契約を締結しないよう
いことも分かっている。予定されている RoHS
民事訴訟も起こしている。
指令の枠組みの中で、各種蛍光灯の水銀削減が
□
どの程度進められるかについて、現在、EU 加盟
国間で協議が行われている。
(本弁護士情報は、競輪の補助金を受けて実施
したものです)
政府は、長期的には、環境中の水銀を段階的に
使用禁止とする国際協定を望んでいる。国連環
境 計 画 ( UNEP ) の 運 営 評 議 会 ( Governing
Council)は、2 月に世界化学物質戦略案を採択
した。UNEP は 2003 年までに報告書を発表する
予定である。水銀およびその環境への影響に関
する世界評価も 2003 年までに公表される。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
VII. オランダ
1. 政府、EPZ 原子力発電所に対する法的手
続を開始
政府は、オランダ南部の電力会社(EPZ)に対
する法的手続を開始し、Borssele にある原子力
発電所を 2004 年 1 月 1 日以降も運転した場合
には 1 日当たり 200 万ギルダー
(809,716 ドル)
支払うよう同社に要求している。Borssele は国
内で現在でも使用されている唯一の原子力発電
所である。EPZ は、2007 年まで発電所を運転し
たいとしている。
オランダ経済省は、Den Bosch 地裁に訴えた。
国対電力会社訴訟の審理が始まる。裁判の日程
はまだ決まっていない。同省は、EPZ が 2004
年までに Borssele 発電所を閉鎖する協定の遵守
JMC environment Update
41
Vol.3 No.2 (2001.7)
連載
米国における環境関連動向
~在ワシントン/コンサルタントによるモニタリング情報 ⑩
● はじめに
本報告は製品の貿易と環境問題のミクロ情報に焦点を当て、製品に対する有害化学物質規制のほか、
製品の貿易と環境規制動向、回収、リサイクル、環境に関する国際標準化、米国における環境ビジネ
ス動向、環境問題に関する米国のキーパーソンなど、米国企業の企業経営と環境をめぐる数々の問題
を包括的に分析する。
特に、今回の報告では、注目される「環境に優しい設計」のほか、パソコンのリサイクル事業、ディ
ポジット制度を通じた鉛蓄電池回収の現状、環境ラベルの現状などをまとめている。また、環境問題
に関する米国のキーパーソンについては、連邦議会上院での与野党逆転劇の主役であり、共和党離党
直後、環境公共事業委員会の委員長に就任したジム・ジェフォーズ議員を取り上げる。
今号のポイント
・ 米国の各企業は現在、「環境に優しい設計」を合言葉に、環境負荷の少ない材質や技術を導入した
製品作りを進めており、製品のエネルギー効率や、製品そのものの材質などに工夫を凝らしてい
る。
・ IT 革命の影響で、古くなったパソコンや周辺機器の処理が社会問題化しつつある中、古くなった
パソコンを郵送すれば、新しいパソコンが割引で購入できるというリサイクル事業に注目が集ま
っている。
・ 米国に拠点を置くパソコンメーカーの場合、一般的に、米国内に比べ、米国以外の国では自社回
収・リサイクルに熱心であるといい、同じ企業でも国外、国内と環境保護姿勢が異なっていると
いう指摘がある。
・ 飲料ボトル回収とともに、ディポジット制度を通じて、鉛蓄電池の回収は米国で完全に定着し、
非常に高いリサイクル率を誇っている。
・ 全米を対象とした包括的な環境ラベルが存在しなかった米国でも、環境保護団体、EPA などのイ
ニシアティブで、少しずつ、環境ラベルが定着し始めているが、環境ラベルの基準のあいまいさ
を指摘する声も多い。
・ 連邦議会上院での与野党逆転劇の主役だったジム・ジェフォーズ議員は、共和党離党直後、環境
公共事業委員会の委員長に就任し、連邦議会の今後の環境立法の主役として、リーダーシップを
発揮するとみられている。
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
1. 米国企業の企業経営と環境問題
環境に優しい設計
米 国 の 各 企 業 は 現 在 、「 環 境 に 優 し い 設 計
(environmental friendly design)」を合言葉に、
環境負荷の少ない材質や技術を導入した製品作
りを進めている。
テリステーション」を発表し、現在も生産を続
けている。「インテリステーション」の現在のシ
リーズ商品である「E Pro」には、3.5 ポンド
の再生プラスチックが利用されている。
IBM の場合、再生品を利用した方がコスト面で
もプラスであるとする見方が社内でも多いとい
われており、リサイクル製品利用が進む原因と
なっている。米国の企業の多くがリサイクル材
料や製品を利用したくても、高品質のリサイク
ル材料や製品の定期的な調達が比較的難しいと
いわれている。これは、リサイクル製品の価格
が一定しないため、リサイクル事業者の数が増
えず、リサイクルシステム自身の確立が比較的、
遅れているためである、といわれている。
ヒューレットパッカードはここ数年、環境に与
える影響の少ないプリンター作りに力を入れて
いる。ポイントとなるのは、プリンターそのも
のの材質や、利用中のエネルギー効率などであ
り、ヒューレットパッカードの主力製品である、
「レーザージェット」の新製品の企画の段階か
ら、環境に優しいデザインの担当者
(Environmental Product Steward)が設計に加
わり、各種のアイディアが新製品に応用される。
しかし、IBM の場合、ニューヨーク州エンデイ
コットに自社リサイクル工場を開設し、リサイ
クル製品活用の核として活用しているのが特筆
される。同工場では年間 4,000 万ポンドの家電
製品(主にメインフレームコンピュータなど)
が処理され、再利用されている。
ヒューレットパッカードの「環境に優しいデザ
イン」の担当者である、マーティ・マージネー
リ氏はこれまで7年間、環境負荷の少ない材質
や技術を導入した設計を進めてきた。例えば、
トナーのインクを紙に吹き付ける際に、以前は
ハロゲンバルブを利用した部品を使っていたが、
これを電気の消費量が少ないセラミック加熱部
品に取りかえる設計などを担当した。また、セ
ラミック加熱部品の場合、電気を入れたままに
しておくと、自然にスリープモードに切り替わ
るため、電力の節約に貢献するという。
また、設計・組み立て段階から各種の工夫を行
っており、環境に優しい設計に重点を置いてい
る。例えば、部品の接合に、ねじボルトではな
く、手で簡単に取り外しが可能なスナップフィ
ット型やスロットに組み込むタイプのものを利
用したり、プラスチックなら、どの樹脂を使っ
ているか、記載している。そのほか、電磁波シ
ールド用に、これまで使われてきた金属基盤の
塗料の代わりに、取り外し可能な金属ライナー
を利用し、解体が容易になるように工夫を施し
ている。さらに、各種部品の調達段階から、各
納入業者に有害物質をできるだけ使わないよう
に、徹底している。
同氏の各種の工夫で、1996 年型の「レーザージ
ェット5si」は 24 ページを印刷するのに、125
ワット必要だったが、2001 年夏新発売した「レ
ーザージェット 4100」では、25 ページを印刷
する電力量は、5 分の 1 以下の 21 ワットに抑え
ることができる、という。
ヒューレットパッカードとともに、環境に優し
い設計で知られているのが、IBM であり、各種
製品の材料や部品にリサイクルしたものを積極
的に利用している。特に、プラスチックの再利
用に力を入れており、現在、IBM の製品に使わ
れているプラスチックの 10%は再生品である
という。また、1999 年からはプラスチック部分
の全てを再生品樹脂を利用したパソコン「イン
JMC environment Update
2. 米国における環境ビジネス動向
(1) パソコンのリサイクル事業
古くなったパソコンを郵送すれば、新しいパソ
コンが割引で購入できるという新しいタイプの
リサイクル事業をイリノイ州シカゴの業者、ユ
ナイテッド・リサイクル・インダストリーズ
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
(2) パソコンのリサイクル規制の動向
IT 革命の影響で、米国内ではここ数年、古くな
ったパソコンや周辺機器の処理が社会問題化し
つつある。パソコンについては、法人利用を対
象にした、有害物質を含んでいるパソコンのモ
ニター(ブラウン管)を含む回収が、一部の州
で義務付けられている。
(United Recycling Industries)が 6 月から開始
し、話題になっている。
この事業は「エレクトロニック・テークバック・
プログラム(Electronic Take-Back Program)」
と呼ばれ、配送サービス UPS を使って、古くな
ったパソコンやモニター、キーボード、モデル
などの周辺機器をそのまま捨てるのではなく、
ユナイテッド・リサイクル・インダストリーズ
に送り、各種部品などのリサイクルを目指して
いる。
しかし、一般消費者向けに対しては、日本の家
電リサイクル法や欧州の WEEE(Directive on
Waste from Electrical and Electronic Equipment
廃家電指令)に相当する包括的な規制は米国で
はまだ、存在せず、ほとんどの州では使用済み
パソコンは粗大ゴミとして廃棄されているのが
現状である。
対象は一般のほか、中小企業で、いまのところ、
イリノイ州周辺の中西部各州(イリノイ、ウイ
スコンシン、インディアナ、ミズーリ、ミネソ
タ、ミシガン)に限られているものの、今後、
地域を拡大していくとしている。送料とリサイ
クル処理代は 27 ドル 99 セントとなっている。
ユナイテッド・リサイクル・インダストリーズ
とコンパックが提携し、パソコンのリサイクル
を希望する消費者(事業者)には、リサイクル
処理代の代わりに、コンパックの製品が割引で
購入できる仕組みになっている。
環境保護団体の全米リサイクル連合(National
Recycle Coalition)によると、1999 年に 2,000
万台の家庭用パソコンが廃棄されたが、そのう
ち、中古販売、もしくは、リサイクルされたの
は、230 万台分であるという。
このような現状の中、マサチューセッツ州では、
一般を対象にしたモニター(ブラウン管)の回
収を全州の中で初めて、義務づけ、他州でも規
制導入が検討されており、現在、各州の規制の
動向が注目されている。
ユナイテッド・リサイクル・インダストリーズ
は、送られたパソコンを検査し、そのうち、ま
だ、そのまま使えるものを選別し、学校などの
公共機関に寄付する。そのまま使えない状態の
場合は、部品やプラスチックやガラスなどを取
りだし、リサイクルするほか、パソコンに含ま
れる鉛、水銀、カドニウムなどの有害物質は EPA
(環境保護局)のガイドラインに従い、ユナイ
テッド側が処理する。いずれの場合も、ハード
ドライブに残された各種情報は一度、消去され、
プライバシー重視を心がける、としている。
(3) パソコンメーカーの自主回収・リサイクル
米国の家電、パソコンメーカーは環境に優しい
デザインなどを導入し、環境保護に努めている
ものの、環境保護団体の「シリコンバレー有害
物質連合(Silicon Valley Toxics Coalition)」の
最新の調査によると、米国に拠点を置くパソコ
ンメーカーの場合、一般的に、米国内に比べ、
米国以外の国での社回収・リサイクルに熱心で
あるといい、同じ企業でも国外、国内と環境保
護姿勢が異なっているという。
ユナイテッド・リサイクル・インダストリーズ
は 1952 年に創業し、ここ数年、IT 関連機器の
リサイクルに力を入れてきた。今回のパソコン
回収事業を行うため、ユナイテッドは既に、
ISO9002 を取得し、現在、ISO14001 の取得を
急いでいる。
JMC environment Update
例えば、デルコンピュータの場合、ドイツ、ス
ウェーデン、ノルウェー、オランダ、台湾では、
自社回収・リサイクル制度を導入しているが、
米国内では制度を始めていない。同様に、アッ
プルコンピュータの場合も、ドイツでは、自社
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
トリッジも再生産している。ゼロックスによる
と、リサイクルによって、年間「最低でも数百
万ドルは節約が可能である」と指摘している。
回収・リサイクル制度があるが、米国内では制
度を取り入れていない。
一方、IBM は 2000 年末、ペンシルバニア州当
局と協力し、パソコンの自社回収・リサイクル
制度を導入し、注目されているものの、IBM は
欧州で同様の制度を既に 1989 年から始めてい
る。また、米国の場合は、消費者が 29 ドル 99
セント負担しなくてはならない。しかし、「シリ
コンバレー有害物質連合」によれば、欧州、そ
して日本では無料で IBM が自社回収・リサイク
ルを行っているとしている。
ゼロックスは 1990 年代はじめから、企業 PR で
はなく、コスト削減の一環としてリサイクルに
力を入れ続けており、リサイクルで削減できる
費用は年々、増えつづけているという。このよ
うに、リサイクルが自社の利益拡大につながる
ケースについては、自主回収・リサイクルも今
後、さらに普及するとみられている。
3. ディポジット制度を通じた鉛蓄電池
回収の現状
欧州に比べ、リサイクルが非常に遅れていると
いわれている米国でも、ディポジット制度を通
じて、回収が定着している分野がいくつかある。
そのうち、最も代表的な飲料ボトル(ガラス、
アルミニウム、ペットボトルなど)とともに、
一般的になりつつあるのが、鉛蓄電池の回収で
あり、非常に高いリサイクル率を誇っている。
このように、国ごとの規制が異なることもあっ
て、同じパソコンメーカーでも米国内では自社
回収・リサイクル制度にあまり積極的ではない、
といわれている。そのため、「シリコンバレー有
害物質連合」は議会に対し、積極的なリサイク
ル立法を訴えつづけている。「シリコンバレー
有害物質連合」のテッド・スミス会長は「メー
カーの自主規制に任せておく段階ではリサイク
ルは進まない。欧州や日本のような政府規制が
必要である」と繰り返し、主張している。
ディポジット制度を通じた鉛蓄電池の回収は多
くの州で既に自主的に導入されている。鉛蓄電
池1つ当たり、5ドルから 10 ドルがディポジ
ットの額であり、消費者は新しい鉛蓄電池を購
入後、一定期間以内(1カ月が一般的)に業者
に持ち込めば、リファンドとして、ディポジッ
トと同じ額を受け取ることができる。もし、消
費者がリファンドを申請しない場合、多くの州
では金額は業者に帰属する。
それでも、前述のように、IT 革命の影響で、古
くなったパソコンや周辺機器の処理が社会問題
化するなか、企業による自主回収も少しずつ、
普及するとみられている。また、ユナイテッド・
リサイクル・インダストリーズのような IT 関連
機器のリサイクル事業は今後、急伸が見込まれ
る環境ビジネスとして、注目されている。
一方、パソコンメーカーではないものの、米国
では、ゼロックスのように、メーカー自主リサ
イクル事業そのものを、ビジネスモデルに組み
入れた好例があり、世界的に注目されている。
ゼロックスは、顧客リースの際、コピー機を自
主回収し、部品やプラスチックなどをリサイク
ルし、再び、他の製品に利用している。
現在、ディポジット制度を通じた鉛蓄電池の回
収を義務化しているのは、次の 11 州である。
ゼロックスは 1999 年の 1 年で、1 億 5,000 万
ポンドの量の機器を他の製品からリサイクルし
たほか、機器として再利用が不可能なものから
抽出した材料で、170 万ポンドのトナーやカー
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
4. WEEE(廃家電指令)に対する米国の反応
欧州議会が 5 月に通過させた WEEE(廃家電指
令)の修正案に対し、米国の産業界からは、反
発の声が上がっている。
表 1:ディポジット制度を通じた鉛蓄電池の回収
を 義務化している州(EPA 調べ、2001 年)
州
アリゾナ
アーカンソー
コネチカット
アイダホ
メイン
ミネソタ
ニューヨーク
ロードアイランド
サウスカロライナ
ワシントン
ディポ ジ
ッ ト 額
5 ドル
10 ドル
5 ドル
5 ドル
10 ドル
5 ドル
5 ドル
5 ドル
5 ドル
5 ドル
申請しない場合
期間
業者
業者
業者
業者
業者
業者
業者
州 8 割、業者 2 割
業者
業者
30 日
30 日
30 日
30 日
30 日
30 日
30 日
7日
30 日
30 日
修正案には、2008 年1月までに段階的に禁止す
るという鉛などの有害物資の使用期限を、2 年
早め、2006 年1月とすることなどが盛り込まれ
ている。
特に、反対の声を強めているのが、米国の半導
体業界であり、「半導体産業が鉛などの有害物
質を出している量は限られており、欧州議会は
問題の本質を再検討すべきだ」(ナショナルセ
ミコンダクター)などと指摘している。WEEE
に関しては常に反対の姿勢をとりつづけている
全 米 家 電 協 会 ( American Electronics
Association)も欧州の厳格な規制に対する批判
をさらに強めている。
ディポジット制度を通じた鉛蓄電池の回収は非
常に成功しているといわれており、EPA による
と、全米の鉛蓄電池の回収率は既に 1990 年代
から 90%を超えており、ここ数年は 96%から
98%に達しているといわれている。回収の手間
は違うが、この数字は、飲料ボトル回収で全米
をリードする 10 州における、飲料ボトル回収
率(下表参照)よりも高く、ディポジット制度
を通じた鉛蓄電池の回収は完全に定着している。
一方、「シリコンバレー有害物質連合」をはじめ
とする、米国の環境保護団体は欧州の動きを支
援しており、米国内でも同様の厳格な規制を望
むとしている。
表 2:ディポジット制度を義務化した 10 州における
飲料ボトル回収率(EPA 調べ、2001 年)
州
回収率
開始年
カリフォルニア
アルミニウム 88%、
ガラス 76%、PET50%
1987
コネチカット
缶 88%、プラスチック 70
~90%
1980
デラウエア
不明
1982
アイオワ
アルミニウム 95%、
ガラス 85%
1979
メイン
ビール 92%、ワイン
80%、ジュース 75%
1978
マサチューセッツ
全体で 85%
1983
ミシガン
全体で 93%
1978
ニューヨーク
ビール 81%、ワイン
63%、ジュース 72%
1983
オレゴン
全体で 85%
1972
バーモント
全体で 85%
1973
JMC environment Update
5. 環境ラベルの現状
これまで全米を対象とした包括的な環境ラベル
が存在しなかった米国でも、環境保護団体、EPA
などのイニシアティブで、少しずつ、環境ラベ
ルが定着し始めている。EPA の TRI 報告制度や、
カリフォルニア州の「Proposition 65」に定めら
れた各種報告制度のような有害物質の開示規制
と対照的に、環境ラベルは、環境への負荷が少
ないというプラスの面を強調した開示制度であ
るため、企業にとって PR につながり、経済効
果もあるため、注目が集まっている。
米国の代表的な環境ラベルが、環境保護団体の
グリーンシール(Green Seal)が認定している、
「グ リ ーン シー ル (正 確に は Green Seal of
Approval)」である。グリーンシールは 1990 年
代から、競合する他の商品に比べ、環境に優し
い製品に対し、ラベルをつけ、環境保護を訴え
46
Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
また、窓を生産する事業者で構成される全米窓
意匠評価協議会(National Fenestration Rating
Council)は、窓のエネルギー効率についての評
価基準を作り、国内の 2 万 5,000 タイプの窓が
評価の対象となっている。このような業界団体
ごとの環境評価も環境ラベル普及運動の一環と
して、今後、注目されるとみられている。
ている。
「グリーンシール」の認定の仕組みは、メーカ
ーが認定を希望する特定商品の評価をグリーン
シール側に依頼する形をとっており、評価費用
と1年ごとに継続モニター費用をグリーンシー
ルは徴収する。「環境に優しい」と判断された
場合は、「グリーンシール」が与えられる。同時
に、グリーンシールがまとめた環境に優しい商
品を集めたカタログに掲載される。
「グリーンシール」の対象となる製品は、エア
コン、蛍光灯、リサイクル紙、ホース、窓、ド
ア、コーヒーのフィルター、トイレなど、多岐
にわたっており、家電に限定しないのが特徴と
なっている。
米国では、欧州や日本に比べると、環境ラベル
について、遅れているといわれて続けてきた。
これは、日本のエコマークのような全米規模の
国内標準といえるような環境ラベルがないとい
う理由のほか、環境ラベルの基準のあいまいさ
や、環境保護よりも商品の販促に近いとみられ
る環境ラベルが少なくない点などが理由として
挙げられている。
また、「環境に優しい」とする基準については、
例えば、1) 有害化学物質を放出しない、2) エ
ネルギー効率が良い、3) 野生動植物への影響が
少ない、4) 天然資源を有効に活用している、5)
地球温暖化を防止する――などが挙げられてい
る。
全米規模の国内標準については、1996 年、EPA
は「消費者ラベルイニシアティブ(Consumer
Labeling Initiative)」というパイロットプログ
ラムを開始し、環境ラベルについての消費者の
購買行動などを調査したものの、基準作りには
至らなかった。
グリーンシールによると、評価するための検査
施設や検査器具がそれぞれ異なるため、費用は
各製品によって異なるとしている。グリーンシ
ールは非営利団体であるため、利益目的では費
用を徴収していないという。各製品の基準は 3
年ごとに再検討される。
環境ラベルの基準があいまいである点について
は、例えば、紙コップの場合、ごみの生成量が
減るために、ポリスチレン加工が好ましいとす
る意見がある一方で、エネルギー効率などを考
えると必ずしも他製品に比べて「環境に優しい」
とは言いきれず、議論は続けられている。
「グリーンシール」に比べて、対象製品のタイ
プは限られるものの、一般的に比較的良く知ら
れている環境ラベルが、パソコンなどを対象に
EPA が認定している「エネルギースター(Energy
Star)」である。「エネルギースター」の対象と
なる製品は、パソコン、プリンター、コピー機、
タイプライター、テレビ受信機などであり、エ
ネルギー使用量が少ないと EPA が認定した製品
について、ラベルが提供されている。テレビ受
信機については、松下電器など、日本メーカー
の数々の製品が EPA からエネルギースター」の
認定を受け、ラベルを取得している。
基準のあいまいさで、環境ラベル付けを中止し
たのが、米国内最大の小売チェーンであるウォ
ルマートである。ウォルマートは 90 年代はじ
め、「環境に優しい」とみられた商品群に独自ラ
ベルをつけ、販売したが、基準があいまいであ
り、開始から 3 年で、独自ラベルの添付を中止
し、現在に至っている。
JMC environment Update
一方、環境保護よりも商品の販促に近いとみら
れる環境ラベルも少なくない。例えば、サイエ
ンティフィック・サーティフィケーション・シ
ステムズ(Scientific Certifications Systems)と
いう民間企業がプラステックバック、塗料、ア
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
ップを発揮するとみられている。本来なら、そ
れまでランキング委員だったハリー・リード
(Harry Leed)議員が環境公共事業委員会の委
員長に就任するはずだったが、同議員が多数派
党院内幹事(Majority Whip)としての職務に専
念するため、ジェフォーズ議員に委員長職を受
け渡した。
クセサリーなど、各種の製品の環境に対する影
響 を 分 析 し 、「 エ コ プ ロ フ ィ ー ル
(Eco-Profiles)」の名前で報告している。エネ
ルギー効率や生物分解性の度合いなどをまとめ
ているものの、いまのところ、分析の対象とな
っている製品が非常に限られており、分析を希
望する企業は、あくまでも企業のマーケティン
グの一環としてとらえているケースが多いと、
指摘されている。
環境公共事業委員会では、EPA 廃止論者として
知られているボブ・スミス(Bob Smith)議員
がこれまで委員長だったが、ジェフォーズ議員
が委員長に就任することになり、環境立法の流
れが変わるとみられている。
連邦取引委員会(FTC)は 1992 年から「グリー
ンガイド(Green Guides)」という環境に与え
る負荷を分類したガイドラインを提供しており、
こ れ に は 「 環 境 に 優 し い ( environmental
friendly)」「生物分解性(degradable)」「リサイ
クル可能(recyclable)」などの基準が含まれて
いる。しかし、何を持って、「環境に優しい」の
かという、言葉があいまいなため、2001 年夏現
在、ガイドラインそのものの改訂を進めている。
改訂のポイントとなるのが、単純化の是正と、
明確な基準作りであり、改訂された場合、遅れ
ていた米国の環境ラベルそのものの普及につな
がると言う見方もあり、今後の動向が注目され
ている。
各委員会の運営にはまだ、具体的な大きな変化
は出ていないものの、積極的な環境保護政策を
盛り込んだ法案などが論じられる可能性が指摘
されている。特に、環境保護に積極的であると
言 わ れ る 、 民 主 党 の ト ム ・ ダ シ ュ ル ( Tom
Daschle)院内総務が多数派指導者(Majority
Leader)となり、法案の審議日程などを決める
権限を獲得しているため、上院全体が環境保護
立法を通過させやすい環境になりつつある。そ
のため、環境保護には疎いと指摘されている、
ブッシュ政権の環境政策そのものの行方にも影
響し始めている。
6. 環境問題に関する 米国のキーパーソン
ジム・ジェフォーズ(Jim Jeffords)
上院議員
ジム・ジェフォーズ議員(バーモント州選出)
は 5 月末、それまで所属していた共和党からの
離党を決め、無所属となったため、共和・民主
両党が 50 議席ずつを占めていた連邦議会上院
の勢力構成は、民主 50、共和 49、無所属 1 と
なり、民主党が 1994 年の中間選挙以来の多数
を回復した。そのため、上院の委員長職が民主
党に移動し、多くの場合、ランキング委員(委
員会内の野党のトップ)だった議員がそのまま
委員長に就任している。
ジム・ジェフォーズ議員は、物静かな正確と共
に、これまで、共和党内では非常に穏健な議員
として知られている。離党前には、健康・教育・
労 働 ・ 年 金 委 員 会 ( Committee on Health,
Education, Labor and Pension)の委員長を務め
ていたため、環境立法ではこれまで、ここ数年、
あまり目だったとは言えないものの、環境保護
や妊娠中絶賛成などの政策では民主党に非常に
近い立場を貫いてきた。
実際、コングレッショナルクオータリー誌によ
ると、2000 年、議会内の主要投票で共和党の多
数が賛成する法案に反対したのは 45%に達し
ているほか、保守度をはかる「アメリカ保守連
合(ADA)」の同年のレーティングでも 36%と
なっている(ADA は利益団体であり、団体の支
持する法案についての各議員のとった立場を毎
この連邦議会上院での与野党逆転劇の主役だっ
たジム・ジェフォーズ議員は、共和党離党直後、
環境公共事業委員会の委員長に就任し、連邦議
会の今後の環境立法の主役として、リーダーシ
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
米国における環境関連動向~在ワシントンコンサルタントによるモニタリング情報⑩
年、評価し、レーティングを作っている)。
そのため、環境保護団体のシェラクラブが 2000
年の再選を支援しているのが特徴的である(共
和党全議員の中で、同年、シェラクラブが再選
を支持したのは 10 人だけである)。
環境公共事業委員会の共和党側に現在、ジェフ
ォーズ議員と同様に、積極的な環境保護を訴え、
離党が噂されているリンカン・チェイフィー
(Lincoln Chafee)議員もおり、共和党穏健派
をいかに環境立法に巻き込んでいくか、ジェフ
ォーズ議員の委員会運営に期待されている(66
歳、ハーバード大卒)。
□
(本コンサルタント情報は、競輪の補助金を受
けて実施したものです)
JMC environment Update
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Vol.3 No.2 (2001.7)
インタビュー
有機野菜のような電気製品づくりを目指して
∼環境配慮型企業経営の考え方∼
松下電器産業株式会社
森 和弘 代表取締役常務に聴く
(本稿は、当組合会報「JMC ジャーナル」2001 年 6 月号に掲載されたシリーズ「インタビュー」記事を
そのまま転載したものである。なお、氏は先の同社株主総会で役員を退任されました。
)
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松下電器産業㈱は、1918 年の創業以来、堅実な
経営をつづけ、
現在では松下電器グループとして、
家電、産業・情報機器、部品類に至るさまざまな製
品について年間 7 兆円の規模で生産販売を行って
いるグローバル企業です。
去る 4 月 12 日、大阪門真の生産技術本部にお
いて、森和弘 代表取締役常務・環境本部長から、
環境問題に取り組む企業の考え方、あり方、モノ
作りについて、組合本部国際業務部門環境・安全
グループ・グループ・リーダー 今村哲男、大阪支
部マネージャー和田安司がお話を伺いました。
蔵庫、エアコンディショナー、洗濯機等の家電製
品によって、豊かに、便利に生活したいと求めら
れたのです。我われは機器を供給することによっ
て利益を得て、会社を発展させてまいりました。
1918 年の創業以来、我われの企業活動が、世の中
に貢献こそすれ、
害を及ぼすというようなことは、
少し以前まで殆ど意識せずに活動してきたと思い
ます。労働条件、災害問題など小さい個々のレベ
ルでは多少問題はあったと思いますけれど、少な
くとも製品を作るレベル、供給するレベルにおい
ては「地球環境を破壊する」という認識は持って
いなかったと思います。いってみれば、我われは
大いに世の中に貢献しているのだという誇りを持
って活動してまいりましたけれども、気が付いて
みると、大量に供給した個々の製品が、その役目
を終えて廃棄されるときにはゴミの山となり、莫
大な量になっていたのです。
これは誰の罪ということではないと思います。
敢えて申し上げれば、我われは、無意識のうちに
加害者になり、また、豊かさを享受されていた消
費者の方がたも無意識のうちに加害者になってお
られた。従って、環境への配慮については、企業
も消費者も、双方がしっかりと現実を認め、解決
に当たらなければならない問題ではないでしょう
か。
環境問題は、100 年、200 年という単位で考え
なければなりません。
それでも地球にしてみれば、
ほんの一瞬のことに過ぎないのです。けれども、
21 世紀を迎えて、地球環境と共存することに充分
—— 本年 4 月から「家電リサイクル法」がス
タートしました。メーカー活動について以前とは
異なった意識を持って経営にあたられなければ
ならないと思いますが、環境問題についてのお考
えを伺えますか。
森常務 当社は、1972 年、本社に環境管理室を発
足させています。
「環境」
という言葉が使われる以
前は、同じような意味で「公害」という言葉が使
われていたと思います。我われのように、いろい
ろな原材料等を使って製品に加工するメーカーの
活動は、国民の生活を豊かに、便利にしていくと
いう活動ですから、以前の「公害」という言葉は
余り適切ではないように思っていました。
松下電器は、電気製品をできるだけ安く消費者
に供給することを目標に企業活動を続けてまいり
ましたし、また、消費者の方がたは、テレビ、冷
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有機野菜のような電気製品づくりを目指して ∼環境配慮型企業経営の考え方∼
配慮することは、社会から信頼される企業として
当然の責務といえます。
当社の製品は、先に申し上げた身近な家電製品
から部品・デバイス、産業用機器まで幅広く、し
たがって環境影響もさまざまです。メーカーとし
て持続発展可能な社会の構築に貢献するために、
製品のライフサイクル全体で環境負荷を減らすこ
とが最優先事項であると考え、いま、一層の高循
環型商品の開発を目指して努力しているところで
す。
いま製品のキャビネットや電線の被覆等に使われ
ています。理想をいえば、プラスティックを使わ
ずに他の材料を使えばいいわけですが、コストが
かかり過ぎるという場合、お客さんが納得して、
その価値を認めて買ってくれるとは限りませんし、
企業としては、このようなところもある程度考慮
しなければなりません。また、急に言われても技
術的に直ぐに対応出来るということでもありませ
ん。現在は、出来る範疇で地道に対応を積み重ね
て、基本の技術ベースを固めている段階です。理
想的な商品開発は一朝一夕に出来るものではない
のです。現状は、我われの日常の取り組みそのも
のが環境への取り組みになっていると思います。
—— 歴史的に見ると、日本人は、生来使い捨
てではなく、何につけても工夫するという、循環
型の生活をしていたように思いますけれども…。
—— 松下電器グループの環境問題への取り組
みをお話下さい。
森常務 現在から振り返って見ると、第二次世界
大戦前もそうですし、戦後もある時期まで、日本
は物質的に余り豊かとは言えない時代を過ごして
いました。そのような時代を、日本人は、貧しい
ながらも衣食住についていろいろ工夫して生きて
きたと思います。松下電器の小売店の多くは、ま
だ規模も小さく、家電製品を販売し、かつ修理も
するという街の電気屋さんでした。どちらかとい
うと修理業が生計の母体だったと思うのです。だ
から、気が付かないうちに、修理をしながらモノ
を大事に使うというよいサイクルが出来ていたと
思います。ところが何時の間にか、食べ物、着る
物、家電製品など、生活必需品の殆どのモノが潤
沢になり、何時の間にか行き過ぎてしまい、無駄
遣いという意識が薄れてしまっているように思い
ます。
—— このごろの電化製品が壊れ難い。長期間
使用に耐えるというのも資源節約の一面でもあ
ると思いますが…。
森常務 消費者が、よい製品を選んで購入されて、
長くお使いになるということは、
企業にとっても、
消費者にとっても、無駄なエネルギーを使わずに
済むのですから、
。総体的に見れば、資源の節約と
いうことになります。
—— 最近、環境経営という言葉が新聞や雑誌
で多く取り上げられています。環境経営の課題に
ついては、いかがお考えになっておられますか。
森常務 たとえば、プラスティック材料などは、
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森常務 松下電器グループは、「生産・販売活動
を通じて社会生活の改善と向上を図り、世界文化
の進展に寄与すること」を使命として掲げていま
す。その理念を示した綱領をはじめとする経営理
念を基礎として、
1991 年 6 月、
「松下環境憲章
(環
境管理基本方針)
」を制定しています。少し長いの
ですが、その「環境宣言」を申し上げると、
「私達
人間には宇宙万物と共存し、調和ある繁栄を実現
する崇高な使命が与えられている。我が社はこの
人間に与えられた使命を自覚し、企業としての社
会的責任を遂行するとともに、この地球がバラン
スのとれた健康体であり続けるために環境の維持
向上に万全の配慮と不断の努力を行う」という宣
言で、①社会的責任の遂行、②環境マネジメント
の確立と維持向上、③環境目的・目標の策定、④
法規制・条令などの順守、⑤環境マネジメントプ
ログラムの確立、⑥監査、経営者の見直し、環境
評価、⑦教育・訓練の実施、⑧環境方針の公開と
いう 8 項目の行動指針も制定しています。
松下電器グループの環境に関わる方針・政策を
審議する場として、
中村邦夫社長を議長とした
「環
境会議」を設けています。
「環境会議」は、
「グリ
ーンプロダクツ
(高循環型商品)
推進委員会」
、
「鉛
フリーはんだプロジェクト」
、
「クリーンファクト
リー(CF)推進委員会」
、
「地球を愛する市民活動
推進委員会」の四つの委員会からなっています。
先ほど申し上げた高循環型商品の開発は「グリ
ーンプロダクツ(高循環型商品)推進委員会」が
進めています。有害物質という面から、電気製品
には、どの製品でも殆どプリントで電気回路を使
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有機野菜のような電気製品づくりを目指して ∼環境配慮型企業経営の考え方∼
っていますから鉛は大きな問題です。我われは、
2002 年度末までに全製品で鉛はんだを全廃する
という全社方針に対応し、その活動を強化するた
め「鉛フリーはんだプロジェクト」を発足させて
います。既に、MD プレーヤー(SJ-MJ30)をはじ
め、1999 年度末までに 4 品種 13 機種で鉛を使わ
ないはんだを採用しています。
「クリーンファクトリー(CF)推進委員会」で
は、地球温暖化防止と環境リスクの未然防止を一
層推進するために努力しています。
環境問題の解決には、個人のライフスタイルに
まで踏みこんだ変革が必要との考えから「地球を
愛する市民活動推進委員会」
を発足させています。
で合弁会社を設立して、使用済み電話機の回収・
リサイクルを進めています。これまでに 5 万個を
超える電話機をリサイクルし、付属品 10 トン余
りを回収しています。
その他の地域の国ぐにでも、それぞれの国の規
制に積極的に対応していくこととしています。
—— 先ほどの「地球を愛する市民活動推進委
員会」をもう少し詳しくご紹介下さい。
森常務 「地球を愛する市民活動推進委員会」
(Love the Earth 活動:LE 活動)の発足には、製
品を作る立場の松下の社員も高い環境意識を持と
うという啓蒙の意味もあります。社員一人ひとり
が高い環境意識を持つことが、結果的に製品にフ
ィードバックされると思います。Love the Earth
活動も 1998 年 2 月から全社で推進して、
今年は 3
年目になりますが、参加者も増え、環境家計簿で
ライフスタイルの改善に取り組んだり、地域を清
掃したり、植林したり、活発な活動を展開してい
ます。
環境家計簿というのは、
家庭で使用する水、
電気、ガス、ガソリン等のそれぞれの使用量から
CO2 の排出量を算出し、前月や前年同月等のデー
タと比較して行動計画をチェックするものです。
その他には「ボランティア活動資金支援制度」
があります。この界隈の道路際にもボランティ
ア・グループが植林しました。費用も大分かかり
ますが、当社は、植林のような活動が世界的に広
がればいいと考えて、
率先して行っているのです。
—— 御社では、国内ではリサイクル専門の工
場を設けられたと伺いました。海外では環境に関
しての法律は強化の方向にありますが、対応につ
いてはいかがでしょうか。
森常務 リサイクルについては、使用済み製品の
リサイクル事業を推進する「リサイクル事業推進
室」で対応しています。製品の逆ルートは、営業
の方で担当し、工場へ製品が戻ったところで我わ
れが引き受けることになります。
2000 年 4 月に設
立したリサイクル専門の㈱松下エコテクノロジー
センター(兵庫県加東郡社町)には、回収した製
品を解体しながら、新商品の設計段階でリサイク
ルに際して配慮すべき点、解体についての問題点
等をフィードバックして、次の商品に活かすため
に、リサイクルの研究機関を設けてあります。我
われは、法律で謳われていることを最低限のこと
として、全社を挙げて可能な限りの努力と投資を
していくつもりです。
海外では、北米の場合、厳格に整備された環境
関連の法規制があるので、定期的にセミナーを開
催して有害物質管理法や有害物質排出一覧等の順
守について学んでいます。勿論、環境規制に従っ
た製品作りをしていることは申し上げるまでもあ
りません。
ブラジルでは、
1999 年 7 月から使用済みの鉛蓄
電池やニカド電池等の回収・リサイクルが義務付
けられました。
欧州では、当社の全欧州の製造会社と販売会社
に環境管理責任者を任命して課題解決を図ってい
ます。対応を更に進めるため 1999 年には「欧州
環境委員会」を発足させています。
イギリスでは、携帯電話の主要メーカーと共同
JMC environment Update
—— 御社の『環境報告書』は、環境レポート
大賞「環境庁長官賞」
(1999 年)を受賞されてい
ます。その他にも環境への取り組みについて表彰
を受けておられますね。
森常務 私も、環境本部長を兼任しているので環
境に関して一所懸命努めています。社内向けに叱
咤激励するばかりではなく、全社挙げて環境問題
に真摯に対応していることを、外の方がたに知っ
ていただくのもよいことではないかと思っていま
すので、毎年度の『環境報告書』をはじめ、
『パナ
ソニック環境対応部品・部材カタログ』を作った
り 、「 鉛 フ リ ー 化 の 取 り 組 み 」 に つ い て は
http://www.mec.panasonic.co.jp/guide/eco/lead-f
ree/index.html でご紹介しています。
昨年は大阪で「松下の環境展示会」を開催しま
した。機会あるごとに、いろいろな方がたにご意
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有機野菜のような電気製品づくりを目指して ∼環境配慮型企業経営の考え方∼
見を伺い、松下電器グループの活動を報告してご
批判を仰きたいと思っています。当社のホームペ
ージ内に、環境ホームページ「松下電器グループ
の 環 境 保 全 活 動 」( 日 本 語 ・ 英 語 )
http://www.matsushita.co.jp/environment/を開設、
『環境報告書』とその補完記事、グリーン調達の
概要などを掲載しています。我われの努力を認め
ていただいて、時にはお誉めをいただくと次の活
力が湧いてきます。昨年は、少し成果があったと
申し上げることができると思います。
—— 「有機野菜のような電気製品づくりを目
指して」というお話にも触れてください。
—— 過日、JEITA(
(財)電子情報技術産業協
会)の「環境フォーラム」で森常務の「メーカーの
活動について 20 世紀を振り返えり、20 世紀、21
世紀の企業経営と環境側面」というプレゼンテー
ションを伺って大変感銘を受けました。なかでも
「モノ作り」についてのお話が印象的でした。
森常務 私の故郷は四国の松山です。私たちが子
供の頃、つまり感受性が強く、精神的に刺激を受
け易い頃は、まだ、日本中どこでも衣食住に関し
てモノが不足しているような時代でした。子供な
がらも、それぞれの人が、それぞれの立場でモノ
を大事にしているように見受けました。大工さん
は小さな木切れにいたるまで木材を大事に扱って
いました。魚を獲った人は、雑魚でも竹輪や蒲鉾
に加工していました。
私の父は、
教育者でしたが、
日常の生活にいろいろと工夫と努力がありました。
私は、芋のつるを食べたり、葉っぱを食べたり、
誰もが工夫して一所懸命に生きていた時代の生活
を見て育ったのです。
私が松下電器の生産技術部に入った時にも、材
料を大事に使いました。少ない材料をどのように
活かして有効に使うか。
豊かな感性。
知恵と工夫。
これこそが
「日本の生産技術」
、
「日本のモノ作り」
を強くした
「根源」
ではなかったかと思うのです。
農業には長い歴史がありますが、何といっても日
本は土地が狭い。収穫を増やす、生産性を上げる
ためには知恵を絞っての工夫が必要でした。祖父
なども、明治時代に耕地整理に苦労して、米の一
反当たりの生産性を上げたり、現在の農業共同組
合のはしりのような仕事をしています。多くの日
本人が賢く堅実に働いてきたのです。近代になっ
て、そういう歴史を持つ人たちの子孫が企業に入
り、原材料を手にした時、
「軽薄短小」といわれる
知恵を働かせたいろいろな商品が生まれたのだと
思います。このような姿勢は、見方によっては、
JMC environment Update
環境に優しいということではないでしょうか。
それが何時の間にか、コストダウンなどの競争
に追われながら、本来のあるべき姿を忘れてしま
ったように見受けます。我われの次の世代が心配
です。我われのいまあるのは、先輩たちのご苦労
と蓄積があるからです。我われが、昔も今も変わ
らずに持っているものは知恵と工夫しかありませ
ん。伝統を活かす「モノ作り」に早く気付いても
らいたいと思っています。
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森常務 私は、松下電器がどのような考えで製品
を作っているのか、どのように環境問題に取り組
んでいるのかを、外の方がたに具体的にご理解い
ただくためのキャッチフレーズが欲しかったので
す。
安全で健康にも良い有機野菜をづくりは、畑も
無農薬で、自然にもやさしい土地でなければ作れ
ない。我われの工場は有機野菜を作る畑。そこで
作られる製品は消費者にとっても安心して使える
電気製品というわけです。そのようなイメージで
「有機野菜のような電気製品づくりを目指して」
と申し上げたのです。我が社のキャッチフレーズ
としていかがでしょうか。
—— 最後に、私どもへのご意見、ご助言をお
聞かせ下さい。
森常務 いま、東南アジアをはじめとして、日本
発の「日本式モノ作り」
、
「日本式製造」を行って
いる国は少なくないと思います。これからは環境
に関して、機械でも設備でも、技術でも、考え方
でも、
「日本式」
、
「日本発」
というのはどうでしょ
う。組合も、そのための努力をされては如何でし
ょうか。
—— 本当に有難うございました。松下電器グ
ループの益々のご発展を祈念します。
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調査団報告
1.中国・韓国・台湾の製品安全関連基準・認証制度現地調査を終えて
基準・認証問題専門委員会
委員長 岡崎 憲二
はじめに
中国・韓国・台湾の製品安全関連基準・認証制度については、① 中国における所管の異なる 2 つの
官庁の統合及び二重規制の撤廃、② 2001 年 7 月の韓国新制度の導入に従った規制品目の拡大及び
認証の強制化、③ 2003 年 1 月からの台湾新制度の輸入前型式認証の義務化、④ 各国の機械に関
する規制、等の現状と動向に関する調査を産業界より求められていた。
日本機械輸出組合「基準・認証問題専門委員会」では、このような要望を受け、これらの東アジ
アの基準・認証制度の明確化のために、ミッションを組み現地調査を行った。本調査の詳細につい
ては、当組合として、関連セミナー〔東京:7/25 経団連会館 国際会議場、大阪:7/26 輸出繊維会
館地下ホール〕の開催、及び別途報告書刊行を予定しているので、ここでは概要を紹介したい。
1.調査団及び期間
基準・認証問題専門委員会委員長の私、岡崎が団長を引き受け、メンバーとして同委員会アドバ
イザーの仲野 孚(まこと)氏(元三菱電機㈱環境・品質部推進グループ主幹)、㈱エーペックス・インタ
ーナショナル第一業務部企画・営業課課長代理の加藤 隆美(たかよし)氏、中国(北京・上海)のみの同
行である㈱エーペックス・インターナショナル経営企画室中国ビジネス開発プロジェクト主任の胡
肖玖(こ しょうめい)氏、当委員会事務局の国際業務部門環境・安全グループマネージャーの
尾花 覚氏、の計 5 名の派遣団を組み、5 月 27 日(日)∼ 6 月 9 日(土)
(14 日間)の間、中国・
韓国・台湾を訪問し調査を行った。
2.訪問先
中国(北京、上海):
国家質量監督検験検疫総局(審議官級)
、中国 EMC 認証センター(副センター長)
、中国機
械安全認証センター(所長)
、第三研究所(所長)
、上海質量技術監督局(所長)
・現地(北京)日系企業
ソニー(中国)
・現地日系企業との Meeting
三洋電機(中国)、ブラザー北京事務所、ミノルタ北京支社、シャープ北京事務所、日立(中
国)、キヤノン北京駐在員事務所、キヤノン(香港)、エプソン(中国)、松下電器(中国)、
〔日
立 IT(日本より)〕
、ソニー(中国)
韓国(ソウル):
情報通信部電波研究所(所長、事務官)
、産業資源部技術標準院(部長、課長)韓国産業技術試験
院(KTL)(所長)
、産業安全保健研究院(KOSHA)(次長)
台湾(台北):
経済部標準検験局(BSMI)(部長、課長)
、労工安全衛生研究所(所長、部長)
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中国・韓国・台湾の製品安全関連基準・認証制度現地調査を終えて
3.調査結果概要
a) 中国
中国では、来年 1 月の WTO 加盟を目指し制度・組織改革を推進しており、二重規制撤廃のため
の認証の一元化を図っている。全ての認証を 1 ヶ所で行うことは合理的且つ理想的な体制といえ
る。さらに試験所も新たな設備投資がなされており、着々と準備が進んでいる様子が覗える。
① 国家質量技術監督局(CSBTS)と国家出入境検験検疫局(CIQ)を統合した新組織(国家質量監督検
験検疫総局)
WTO加盟に備え、国際ルールに合わせた体制をつくるため、4月17日に、品質検査を担当する2
つの機関、国家質量技術監督局と国家出入境検験検疫局は正式に統合し、
「国家質量技術監督
検験検疫総局」が発足した。国家質量監督検験検疫総局(AQSIQ)の局長/大臣級、副局長/
副大臣級(4名)は決定済みで、現在、組織は国務院に申請中である。
② 今後認証を統括する組織
認証業務は、国家質量監督検験検疫総局の中の「国家認証認可管理委員会」が一本化で実施し、
本委員会は国務院から認証業務の全権を委譲されている。1月のWTO加盟までには二重規制の
問題は解決される見通しである。
③ 新認証制度
・現在、新認証制度を運用するために8つのグループを作り、品目、申請手順・規格、費用、
マークの統一を検討している。新認証制度は、WTO加盟と同時期に運用を開始する。審議官
より、中国のWTO加盟を日本政府に応援して欲しい旨の要望があった。
・認証強制品目は、国家質量監督検験検疫総局と対外貿易経済合作部と合同で発表される(第
3研究所より年末頃になりそうとの情報有り)
。
・別々で行っていた対象品目を1つに統一するため、強制品目が増える可能性もあり、一部機
械が強制品目に入る予定である。また、強制品目は段階的に導入され、猶予期間が設けられ
る。
・新認証マークはGBマークが予定されていたが、GB規格のマークと混同する恐れがあるとの
ことで、再検討されている(マークの公募)。統一マークの側に、認証機関のマークを併記す
ることになりそうである。
・認証機関に関しては、国家認証認可管理委員会が、製品毎で分けるか、今のままにするかを
検討中である。EMC認証センターが存続するかどうかは未定であるが、安全に関係しない製
品のEMC認証を行う案もある。
・将来は自己認証を考えているが、現在は中国企業のレベルが高くないため、強制をしないと
徹底しない。輸入品を自己認証にすると、国内企業から文句がでる。
・日本のSマークがあるが、日本と中国の試験機関とのMOUを促進し、中国の試験所も認めて
欲しいとの要望が、審議官よりあった。
b) 韓国
従来より韓国の製品安全関連制度は、日本の制度に類似させてきたため、現在急ピッチで、欧
州のCEマーキングに類似した制度への移行を目指し、IEC規格を韓国規格(KS)に導入しつつある
も、その手続きは、日本と同様に法改正が伴い広範囲且つ複雑になっている。実現できればアジア
では優位性を持つとの自負が感じられた。また、EMCの所管を巡り、産業資源部(日本でいう経済
産業省)と情報通信部〔日本でいう総務省(郵政)〕の意見調整は難航している。
① EMC認証の情報通信部への一本化状況(EMC認証は情報通信部、安全は産業資源部で所管)
情報通信部長官が金大統領と近く、昨年、情報通信部主導で全ての機器のEMCは情報通信部、安
全は産業資源部で管轄することに関し合意されたが、その後、ITE産業の落ち込みもあり情報通
信部の発言力が低下している。情報通信部は、
「産業資源部の担当官が変わったこともあり意見
調整が難航しているが、2001年6月には意見調整を終え、国会に電波法改正を国会にかける予定
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中国・韓国・台湾の製品安全関連基準・認証制度現地調査を終えて
であり、遅くとも来年1月1日からは、別々に認証が要求されることになる」と言っているが、産
業資源部は、
「ユーザーの便宜を図って一ヶ所で認証を行うことが望ましいと考えている。情報
通信部は2つのマークを望んでいるが、産業資源部は1つのマーク(EKマークで安全・EMCをカバ
ー)を望んでいる」と異なった意見を主張しており、EMC認証の情報通信部への一本化状況は実
現しないかもしれない。
② PL 法と今後の認証制度
PL法は2002年1月1日に発効を予定しており、認証は2003年までに全ての製品をIEC規格に対応し
た形で対象とする予定で、その後も引き続き3年間は移行期間として認証強制とし、それ以降は
非強制とする予定である。
③ コンピュータ安全認証強制時期
コンピュータ、ネットワークコンピュータの安全認証は、2001年7月1日を2001年10月1日に延期
される(近々公表)
。
④ CIPSR 20の入力イミュニティ限度値の問題
CISPRに対する日本案を流用、あるいはPALに対応した入力イミュニティ限度値の部分を削除し
て適用することが検討されている。改定されない場合は、現在のKS規格を適用する。
⑤ IEC 61000-3-2、61000-3-3 の施行予定
情報通信部令第105号30条により2000年10月に告知されており、2002年1月1日以降強制となる。
⑥ 日本のLabとのMOU
情報通信部は、基本方針として外国のLabは認めないとの立場をとっており、MRA締結を前提に
日本のCABを認めることになる。一方、産業資源部の政策はオープンであり、外国のLabとのMOU
を試験所に推奨しており、KTLでは、NCBとのMOUを締結している(従って、日本としては、情
報通信部へのEMC認証の一本化はないほうが望ましい)
。
⑦ IEC規格への整合化
2003年までにはIEC規格を取り入れたKS規格を暫定規格にし、3年間はこの暫定規格を適用する。
その後、暫定規格を廃止するための法改正を行い、完全にIEC規格と整合した形のKS規格を導入
する。暫定規格を現在作成中で、年間2000規格作成を目標としている。
c) 台湾
台湾の新制度は、2003年1月より欧州のCEマーキングに類似した制度となり、中国国家規格
(CNS)のIEC規格への国際整合化は進んでいる。また、台湾側から日本との相互承認協定締結促
進の要望があったが、どうしても政治的な背景から、MRAは困難な状況にあるため、こちらから
は認証機関、試験機関とのMOU締結促進を促した。
① 海外の品質保証認証機関のISO 9000証明書受け入れ
海外の品質保証認証機関のISO 9000証明書受け入れは、CNABの認定(台湾内のみ)を受けるか、
Co-registration Agreementを結ぶかが必要である。現在、BSI、UL、ABI、PSBとCo-registration
Agreementを結んでいる。現在、RPCを改定中で、将来は工場検査を含める予定である。
② 海外試験所及び製造者試験所のEMCデータ受け入れ
海外試験所等のEMCデータ受け入れは、現在トーキンのデータを受け入れており、JQAとはMOU
のために監査に行く段階である。
MOUのスコープは、
ITE以外に拡大する予定は事情によりない。
日本の電安法では強制認証を要求しており、台湾のデータの受け入れが前提となる。
③ 機械の認証制度
次の装置は、労働安全衛生法の下、工業安全衛生技術発展センターの強制認証の対象である。
1) プレス機器又はせん断機、2) フォークリフト、3) 木材加工用丸のこ盤、4) クレーン、5) 研
磨機
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中国・韓国・台湾の製品安全関連基準・認証制度現地調査を終えて
4.今後の対応
① 適宜、経済産業省及び関連機関に報告を行う。
② 入手した情報の中には、重要且つ動きの速いものも多く含まれているため、報告書完成を待たず
して関連セミナーを開催する〔東京:7/25経団連会館、大阪:7/26輸出繊維会館〕
。
③ 最終報告書は、収集した情報に加え、制度・組織改革のタイムリミットである来年1月(中国のWTO
加盟)迄の動向をフォローし、その情報もレポートに盛り込み、2月頃に刊行する。
後書き
先ず、韓国の新空港の仁川(Incheon)空港に入ったが、とにかく大きく広い空港で出口までは相当
時間がかかる。また、検疫も厳しくなっているようで、尾花氏は贈り物が検疫の対象となり、トラ
ンクを開け、折角包んである贈り物の包みを破り中身を提示していたようで、さらに時間がかかっ
た。特に、仁川空港から北京に向けて出発する際には、仁川空港が広すぎる上、表示が分かりづら
いため、大きな空港を彼方此方歩き廻り、Boarding Check を見つけ出すのに15分程かかってしまっ
た。
北京では、2008年のオリンピックの開催地誘致のため、インフラの整備が進んでおり、数年前に
訪問した時と比べ、高速道路、ホテル、一般住宅、アミューズメント(民族村)等の建設は急ピッチに
進んでおり、特に、高速道路は各方面が建設され綺麗になっていた。また、北京も上海もホテルの
内装は清潔であり、朝食レストランのメニューも豊富でしかも、どれを食べても美味しく充実して
いた。
ただ、街中ではまだ数少ない西洋風のカフェバーでアイスコーヒーを注文し飲んでいた人もいた
が、中国ではホットコーヒーでさえも邪道?であり、折角飲むのであれば、中国茶が一番である。
今回のミッションの収穫の1つに、中国では、関係調査員としてエーペックス・インターナショナル
の胡さん(北京出身)も同行して戴いていたこともあって、その都度中国茶を所望してきたことで、調
査団員全員が中国茶通になったことである。特に、印象深かったのは、胡さんの案内によって出向
いた、北京の現代的な中国の洒落た茶屋や、上海の街中の川の中に建っている茶屋に行ったことで、
若く綺麗な女性のお茶の入れ方も丁寧な面持ちで、お湯をふんだんに使いながら、急須と(丸い器と
細くて小さい器の2種の)湯飲み茶碗を温めながらの飲茶は茶道の心に触れたとでもいうような、美
味しくしかも心地良いものであった。特に、後者は建物自体が古風で趣があるもので、注文した烏
龍茶もまた山の崖淵に存在しその量もあまりとれない貴重なものということで、さらにその味わい
もいっそう深いものがあった。
胡さんから戴いたものには芳ばしい烏龍茶と黒茶があるが、特に、黒茶の飲み方は手間暇が必要
で、先ずお茶の葉自体を蒸し器で5分程蒸し、干して乾燥させてから、通常のやり方でお茶を入れて
飲むといった、もう一段階凝ったもので、ダイエットにも宜しいとのことで、未だ試していないが、
今から飲茶する日を楽しみにしている。
おわりに
最後にこの場を御借りして、今回の訪問に当たって、ホテル予約、アポ、通訳、移動等々非常に
お世話になったTDK(韓国)、及びソニー(中国)の皆様に改めて感謝して終りたい。
以上
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2.中国の環境関連現地調査報告
環境・安全グループ
欧米では製品および材料への有害物質の使用制限、使用禁止等についてさまざまな議論が展開され
ており、製品に対する有害物質規制の制定が加速化されてきている。
中国においても最近、生態環境保護を目的とする輸出入電池製品の水銀含有量に関する規制、香港
では省エネラベルの貼付など製品に関わる制度も確立されてきており、さらに環境会計導入の可能性
を模索しているとの情報も伝わっている。そこで、これらのことを踏まえ、電気電子機器関連の日系
企業が多数進出している香港・広州を中心に循環型社会を目指した環境政策にどれだけ取組んでいる
か、その環境法規とその運用、環境側面からたみた企業活動における問題点等について実態把握を行
うべく、現地調査の実施を行なった。
1.
2.
日 程:
派遣者:
平成 13 年 5 月 12 日(土)∼5 月 19 日(土)
坂 邦良 氏(日本機械輸出組合香港事務所所長代理)
(現地同行者)
金丸 一也(日本機械輸出組合 国際業務部門 環境・安全グループ補佐)
香港、中国(広東省)
3.
4.
訪問国:
訪問先
香港: ① Hong Kong Admiralty Government Publication Centre
② 貿易発展局ビジネスセンター
③ ㈱西原衛生工業所/西原衛生研究所
香港駐在員事務所 工学博士(水道部門)所長 長 英夫 氏
④ 香港日本人商工会議所 事務局長 松井 弘志 氏 マネージャー 原 香里氏
⑤ 香港センターJETRO Hong Kong
⑥ Sharp Roxy (H.K) Ltd.
General Manager Chan, Pui Tim Peter 氏
Senior Manager Wong, Sze Hong 氏
Senior Officer Y.S.Lo,Irene 氏 Officer Chu,Yin Wah
⑦ New Asian Invesco Ltd.
董事総経理 森 一道 氏
中国(広東省)
① 華南投資顧問有限公司 総経理 矢島 夏樹 氏
② 松下・万宝(広州)空調器有限公司、松下・万宝(広州)圧縮機有限公司
総会計師 村田 幸雄氏、主任顧問 中村 教宏氏、工程師 Ma xiao Hong 氏、
経済師 Chen Gan En 氏、統括課長 Peng Qing Yi 氏、課長 Gan Guo Hua 氏
調査結果ポイント
1. 中国
工業化の進展による環境問題
① 工業系の事業活動に伴う工業固形廃棄物(産業廃棄物)および有害廃棄物
② 燃料(石炭等)を燃焼する際に伴う汚染物質の大気中への排出
③ 石炭からの排出物質は粉塵、二酸化硫黄、窒素酸化物等
④ 交通の発展による自動車からの排ガス
⑤ 工業排水の排出によって水銀、クロム、カドミウム、鉛などの重金属等が自然環境に排出
都市の大規模化などによる環境問題
① 人口増加および工業の発展などに伴う都市の急速的な膨張
② 生活ゴミ、建設と交通による騒音。騒音発生源としては、道路交通、生活騒音、工業及び建設騒
音
これからの法整備
一部、電池製品等に環境を配慮した規制がみられたが(製品への環境配慮というよりは、むしろ生
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中国の環境関連現地調査
態、人体への安全性が優先された規制とみた方がよいのかもしれないが)
、環境問題の多くは大気、水
質といったかつての高度成長期に日本が経験した公害問題であり、日本における「家電リサイクル法」
や「容器包装リサイクル法」など、また、欧州で成立が近い電気・電子機器における有害物質の使用
制限など、製品にかかるきめ細やかな法的整備はこれからのようである。
課 題
中国では、近年の急激な経済発展および生活の多様化・高度化に伴い、テレビ、エアコンなど主要
な家電製品等は確実に主要都市(北京、上海、広州、深セン等)に浸透しており、中国国民の生活に
とってはなくてはならないもになってきている。沿岸部と内陸部との収入格差は存在しているが、そ
れらの収入格差が将来縮小し、中国内陸部の 8 億ともいわれる膨大な人口に、沿岸部の人間と同様の
生活様式が浸透すれば、膨大な量の都市廃棄物(廃家電等)が排出されてくることは間違いない。こ
れらのことを考えると、循環型社会を目指した環境政策取組への潜在的要因はあり、環境に配慮した
製品づくりへの規制、リサイクル、廃棄物の減量化、資源の有効利用(省エネ等)等、循環型社会へ
向けての取組について考えておかなければならない課題である。
2.香 港
都市型高密度汚染による環境問題
香港は中国のような大きな製造拠点としての役割(中小工場は存在する。
)というよりはサービス主
体の経済活動が中心であり、金融、銀行、小売り、ホテル、飲食業、観光、保険、不動産、交通、通
信、など広範な業種に及ぶサービス産業によって成り立っている。さらに、ビジネス・マネージメン
ト、コンサルティングなど、国際ビジネスに重要かつ本質的な実践的ノウハウを提供するアジアの中
心的な地域としての地位を確立している。香港における環境問題は狭い土地に多くの住民が居住する
ことによる都市型高密度汚染である。したがって、騒音、大気汚染、廃棄物、水質汚染といった、都
市生活に密着した公害型の環境問題である。しかしながら、中国の大陸の問題とは土地環境、生活環
境、経済環境とも異なるので、公害型の環境問題としては同傾向ではあるが、その質・量ともに異な
るものであろう。
対応と運用
香港環境保護署はこれら環境問題への対応として大気汚染規制条例、廃棄物処理規制条例、排水汚
染規制条例、騒音規制条例等を制定し環境問題解決への取組を実施している。香港の CENTRAL、
ADMIRALTY、WAN CHAI、CAUSEWAY BAY 周辺の大通りを歩くと自動車(ダブルデカー、バス、ミニ
バス、タクシー、自家用車、トラック、オートバイ等)が多く、交通量の激しさが確認でき、排気ガ
スの多さはかなりのもである。
人口の多さと狭い土地への集中的な交通量の流入が主な原因であろう。
大気汚染取締条例こそ制定されているが、その運用効果を得るのはこれからのようである。
省エネラベル
その他、香港では、香港特別行政府電気・機械役務局(EMSD)が定める「省エネラベル」制度が
あり、省エネラベルの貼付を普及させることで、産業界の省エネ機運を高めたいようである。今回の
インタビュー等で知り得た情報においては、香港においても中国同様に、日本、欧州のような循環型
社会を目指したきめ細やかな法的整備はこれからの課題のようである。しかしながら、香港の「省エ
ネラベル」制度については、冷蔵庫、エアコン、小型蛍光灯、乾燥機、複写機、炊飯器/多機能機器等
と対象範囲は拡大傾向にあり、製品に関わる省エネについての関心は極めて高いと思われる。
おわりに
中国においては、深刻化している廃棄物、大気汚染、水質汚濁等の問題について制定された環境基
準に従った適切な運用を実施し、それに対応した効果が得られるよう当局の指導に期待がかかるとこ
ろである。また、製品にかかわる環境配慮、環境保護にはどうしてもコスト高の技術および新規材料
等の採用が不可欠となり、生産コストおよび製品価格の増加につながってしまい、生産者にとっては
競争力の低下を招き、利潤を上げにくくしてしまう。この辺りは利潤を最優先に考えている中国にと
っては、環境配慮製品への取組の足枷になっているのではないだろうか。いずれにせよ、日本、欧州
のような循環型社会を目指したきめ細やかな法的整備はこれからの課題である。
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
1. 貿易関連環境問題対策委員会
<通算第 64 回委員会、平成 13 年度 第 2 回委員会(7/6;組合会議室)>
・米国の PRTR(TRI:有害物質排出目録)を巡る現状について
―― 東京海上火災保険㈱リスクマネジメント業務部 参与 志田慎太郎氏より、TRI の概要および現状
(TRI 制度、TRI が企業に及ぼした影響、導入後の企業の評価、TRI の拡大計画等)について説明
を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施
・日本で初めての“グリーン電力制度”について
―― 日本自然エネルギー㈱ 代表取締役社長 正田 剛氏より風力発電の実績を「証書」にし、この
「証書」をもって使用電気の一部を風力発電にしたとみなす、
「グリーン電力証書システ
ム」について説明を伺った後、意見交換ならびに質疑応答を実施
・
「WEEE & RoHS/EEE の最近の動向について
―― 事務局より去る 6 月 7 日、8 日にルクセンブルグで開催された欧州環境相理事会における合意(共
通の立場)について説明があった後、意見交換および情報交換を実施
・最近の環境報告書提供に伴うコメントについて
―― 各委員より提供された環境報告書(NEC、東芝、富士通、ミノルタ、日立製作所)の概要につい
て説明があった後、質疑応答を実施
2. 貿易と環境専門委員会
<平成 13 年度 第 3 回委員会(6/26;組合会議室)>
・IPP GREEN PAPER について
―― 欧州の製品関連環境政策について欧州委員会が広くステークホルダーより意見収集を行なってい
ることから、当委員会としてもコメントを発信するべく継続検討を行なってきたところ、今般、
最終案を固め、6 月 29 日に提出を完了した。
・貿易と環境に関する海外動向について
―― 事務局より去る 6 月 7 日、8 日にルクセンブルグで開催された欧州環境相理事会における合意(共
通の立場)について説明があった後、意見交換および情報交換を実施
3. 環境法規専門委員会
<平成 13 年度 第 3 回委員会(6/22∼23;カシオ計算機研修センター「ヴィラ・コスタ志摩」
)>
・各社の環境方針について
―― 環境報告書作成および 6 月の環境強化月間に伴い、各委員より各社の環境方針、環境問題への取
組状況等について説明があった。
・欧州環境規制に関する定期レポートの内容分析
―― 各委員が担当地域ごとに企業活動への影響、解釈上のコメント等について報告、その後、質疑応
答および意見交換を実施
・環境法規に関する情報交換
―― WEEE & ROS/EEE を巡る最近の動向、PCB 規制等を中心に情報交換を実施
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環境・安全グループ担当委員会の活動状況
4. 環境問題関西委員会
<平成 13 年度第 2 回委員会(5/30:大阪支部会議室)>
・神戸製鋼所の環境への取組について
―― 宮川委員より同社の環境経営に対する社内組織、中期計画の概要、鉄鋼業の自主行動計画数値目
標、廃棄物発生量と資源化状況、環境創造プロジェクト等ついて説明を伺った後、質疑応答を実
施
・欧州の動向について
―― 事務局より欧州議会本会議(第一読会)で採択された WEEE/RoHS 指令案の主な修正意見につい
て説明し、情報交換を実施
多木委員(ミノルタ)より欧州委員会が採択した「将来の欧州化学政策戦略に関する白書」による化
学規制見直し関連EU法規類の要約を説明、意見交換を実施
その他オーストラリア、米国の環境関連の情報交換を実施
<平成 13 年度第 3 回委員会 (6/29:三洋電機㈱ 本社 会議室)>
・三洋電機グループの環境保全活動の取組みについて
―― 三洋電機㈱品質・CS・環境グループ担当部長 鷲見晋吾氏より、環境ボランタリープラン、国内サ
ブサイト(24 サイト)EMS の統合化、環境行動計画 Action E21 の取組み紹介等について説明を伺
った後、質疑応答を実施
・欧州の動向について
―― 事務局より WEEE と RoHS の両指令案の制定までの今後の手続、欧州議会本会議(第一読会)
、理
事会(第一読会)において採択された修正内容のポイント等について説明し、情報交換を実施。
蛇抜委員長よりプロポジション 65 の動向等最近の米国の環境規制動向について説明、情報交換を
実施
<平成 13 年度第 2 回委員会社事業場見学会(6/29:三洋ミュージアム>
・三洋電機(株)本社にあるサンヨーミュージアムにおいて三洋の歴史、環境問題への取組み等につい
て見学、懇談を実施
5.海外製造物責任(PL)問題対策委員会
<平成 13 年度第 1 回委員会(6/8:大阪支部会議室>
・委員長の選出について
―― 委員長の選任について諮った結果、宮内秀典氏(三洋電機貿易㈱人事総務部 法務グループ 担当
課長)が再任
・ここ数年の米国の PL 訴訟から学ぶ − PL と製品安全 −」について
―― 九州大学大学院法学研究院 教授 北川俊光氏より最近の米国判例にみる企業責任と製品安全対応
策について講話を伺った後、質疑応答を実施
・平成 13 年度事業について
―― 平成 13 年度海外 PL 問題対策事業実施要領(案)について検討した結果、原案通り承認
6.基準・認証問題専門委員会
<平成 13 年度第 1 回 WG(7/6:組合会議室>
・MRA ワーキンググループ
―― 「日欧相互承認ガイドブック」を作成するため MRA WG を発足させると共に、作成方針等につい
て意見交換を実施
・R&TTE ワーキンググループ
<平成 13 年度第 1 回 WG(7/6:組合会議室>
―― 「CE マーキングガイドブック − R&TTE 指令編 −」を作成するため R&TTE WG を発足させると
共に、作成方針等について意見交換を実施
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事務局便り
◇WEEE と RoHS 指令案を巡る審議の動向が加速され、内容的にも欧州議会の約 100 に及ぶ修正意見
の採択と、これに対する欧州委員会の修正提案、環境相理事会の共通の立場採択を見込んだ政治
的合意とフォローがなかなか大変であるが、組合ブラッセル事務所からの貴重な情報提供のお陰
でなんとか今号も情報発信できました。
◇上記の 4 つのテキストを比較整理することは、
「秋の陣」即ち、欧州議会と理事会のそれぞれの
第二読会における審議動向用の参考資料になるのではないかと、今号の編集と並行して
「environment Update」増刊号の発刊を準備中です。予算外の増刊ですので印刷費実費程度のご
負担をいただく予定ですがご利用下さい。
◇「有機野菜のような電気製品づくりを目指して」というキヤッチフレーズにより「物づくり」と
「環境問題」について、本年 4 月に松下電器産業(株)森和弘常務取締役(先の株主総会でご退任)
からお話を伺い、組合会報に掲載した内容を転載しました。お話は氏の故郷、松山での少年時代
の生活にまで及び、
「美しい日本」と人々の心豊かな暮らしぶりを思い描きながらお聞きしてお
りました。環境問題ではよく江戸の生活ぶりを学べといわれますが、江戸の町や江戸時代に限ら
ず、それ以降(我々に世代からみて)ついこの間までは、自然と人々の生活の知恵がかみ合って
賢く生きてきたのではないでしょうか。
◇毎年 7 月中旬はいつ梅雨明けかが最大関心事です。梅雨明け直後の山行は晴天が続き「夏山 joy」
そのものだからです。その原点は、東京オリンピックの年の一学期終業式に雨の中夜行で向かっ
た八ヶ岳縦走、起点となる天狗岳直下のテント場で雷雨を避けて黒百合ヒュッテに宿泊したとこ
ろ、翌朝から梅雨が明け、重装備の上に強い日差しを受けて苦しみながらも尾根を吹き抜ける涼
風に深く吸い込んで主脈を南下、最終日の清里駅からの C56 型 SL で帰路に就くまでの 5 日間の
高校生活最後の満喫した夏山山行にあります。 ところが今年は実質的には 6 月末から早や梅雨
明けということで、なんだかリズムが狂いそうだし、焦りも出てきます。今号が皆様のお手元に
届く頃には、槍ヶ岳や穂高岳周辺を彷徨しているかもしれません。
(TI)
◇6 月 29 日に三菱電機の環境報告書説明会が同本社 9 階会議室にて開催されました。説明会は伊藤
常務取締役(4 月にご就任されたばかりとか)のご挨拶にはじまり、環境レポートの概要説明、
半導体事業所における環境対策、プラスチィックリサイクルへの取組等についてご説明がありま
した。参加者の中には長崎のハウステンボスからはるばるご参加された方もおり、環境報告書へ
の関心の深さが伺えました。
プラスチックリサイクルへの取組については、現在取組んでいるケミカルリサイクル技術の開発
状況の紹介がありました。同技術は冷蔵庫断熱材のケミカルリサイクルに適用するもので、同社
によれば、冷蔵庫断熱材はウレタンフォーム(発泡材)で製造されており、同材は熱硬化性樹脂
であり、マテリアルリサイクルが基本的に困難であるため、断熱用廃ウレタンフォームを原料で
あるポリオールに分解し、ケミカルリサイクルをしようとするものです。同技術開発は NEDO の
委託および助成を受けて開発中のもので、実用化に向けて取組んでいるとのことでした。技術的
なことを理解するには限界がありましたが、循環型社会を目指して取組んでいる真剣さがヒシヒ
シと感じられました。
(K.K)
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