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「化学」技術はお任せあれ! 特許審査第三部です。

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「化学」技術はお任せあれ! 特許審査第三部です。
「化学」技術はお任せあれ!
職場訪問(第11回)
:特許審査第三部です。
特許審査第三部
1.特許審査第三部とは
特許審査部では、発明内容を理解し、先行技術調査、特許性の判断を行うことで、特許
権付与の適否を決定しています。この特許審査部は、担当する技術分野によって特許審査
第一部から第四部まで分かれていますが、特許審査第三部では、「化学」の技術分野に関
する発明の審査を担当しています(経済産業省組織令第140条)
。
2.特許審査第三部の特徴
(1)担当する技術分野
特許審査第三部が担当する技術分野の「化学」ですが、「化学」と一言でいいましても、
形が見えないような化学物質のみを取り扱っているわけではありません。半導体メモリな
どの半導体素子、金属の鋳造技術、リチウムイオン電池や自動車のタイヤ等の形が見える
技術も取り扱っていますし、遺伝子組換え等に関するバイオテクノロジー技術や、排ガス
中のダイオキシン処理等のプラントや装置に関する技術など、「化学」を基礎としつつも
多種多様に展開された技術を審査対象としていることが、特許審査第三部の特徴の一つで
す。
このように多様な技術を効率良く的確に審査するために、特許審査第三部は、素材部門、
生命・環境部門、応用化学部門の3つの部門に分かれています。素材部門には、無機化学、
金属加工、金属電気化学、半導体機器の審査室があり、生命・環境部門には、医療、生命
工学、環境化学の審査室があり、また応用化学部門には、有機化学、高分子、プラスチッ
ク工学の審査室があります。各審査室の主要技術は以下の表のとおりです。
部門
審査室
無機化学
素
材
金属加工
金属電気化学
半導体
医療
生
命
・
環
境
応
用
化
学
生命工学
環境化学
有機化学
高分子
プラスチック工学
主要技術
非金属元素、無機化合物、単結晶成長、蒸着(PVD、CVD)
、触媒、触媒による廃ガス処理
ガラスの製造・組成・成形・表面処理、セメント・コンクリートの製造・組成・成形・表面処理、セラミックス(焼結体)の製
造・組成・成形・表面処理
圧延、鋳造、金属素材の製造、金属の表面処理、メッキ、電解
半導体の実装(ボンディング・容器・封止・リードフレーム・マウント基板)
、半導体特定処理(エッチング・膜の形成・試験・
測定)
粉末冶金、溶接・はんだ材料、製錬、精錬、合金製造、合金、熱処理、炉一般
電池(一次電池、二次電池、燃料電池)、導電ケーブル、絶縁材料、誘電材料
半導体素子(バイポーラ Tr、MOSFET、MESFET、JFET、HEMT、TFT、ダイオード、サイリスタ、IGBT 等)
、メモリ(DRAM、
SRAM、FRAM、ROM、EEPROM 等)
、超電導素子、圧電素子、その他電気的固体素子
集積回路(MOSIC、バイポーラ IC、CMOS、BiCMOS、一般の集積回路等)、固体撮像素子(CCD)、電極、配線、配線設計
(マスタースライス、ゲートアレイ等)、拡散、アニール、イオン注入、再結晶化、素子分離
医薬品(化合物含有医薬、生体物質含有医薬)、再生医療
有機化合物の一部(複素環式化合物、糖類多糖類及びその誘導体、ステロイド)
遺伝子工学、突然変異、DNA、RNA、ベクター、有機化合物の一部(ペプチド・蛋白質)
飲食料品の加工及び保存の一部、調味料、発酵、醸造、搾乳機、微生物、酵素、酵素又は微生物を含む測定・試験、バイオリア
クター、糖工業、動植物新種
水・廃水の処理、分離・イオン交換、固体廃棄物の処理、プラスチック廃棄物の分離・回収・処理、殺菌・消毒装置、化粧品
消火剤、沸騰、分離、混合、ろ過、排ガス処理、磁気分離及び静電分離、遠心分離及びサイクロン、気体の液化分離、化学処理
一般、空気の消毒・殺菌
有機化合物(生命工学、医薬化合物の技術を除く)、染料・染色、農薬、殺生物剤
石炭・石油、潤滑剤、洗浄剤、油脂・香料、肥料、火薬、液晶、化合物の物理・化学的用途(液晶、発光物質、他)
、顔料・CB・
木材ステイン、塗料・接着剤
有機高分子化合物、付加重合体・縮合重合体・ゴム、にかわ・ゼラチン
有機高分子化合物の組成物、ゴムの処理、高分子物質の処理
プラスチック加工一般、タイヤ
積層体、皮革、人工皮革、繊維・糸、織物、編物、不織布、ロープ、製紙、塗布・塗装方法
Webとっきょ 平成22年3月号(No.11)
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特許審査第三部が担当する技術の中で、特に世界的に注目されている最先端技術として
は、iPS細胞が挙げられます。iPS細胞は京都大学の山中伸弥教授らのグループによって世
界で初めて作製された細胞です。この細胞は、ほぼ無限の自己増殖能力と様々な細胞に分
化する多能性を有していることから再生医療への期待も高く、注目を浴びています。
また、環境問題に配慮した技術としては、再生可能な資源であるバイオマス資源を有効
活用したバイオベースポリマーやバイオマスエタノールなどがあり、工業廃水を浄化する
技術や下水処理場から排出される汚泥を処理する環境低負荷型技術も担当しています。
一方で、わたしたちの生活に身近な技術の中にも、特許審査第三部の担当技術が数多く
あり、例えば生活習慣病医薬、お菓子や飲料といった食品、コンパクト洗剤や化粧品等に
関する技術も担当しています。
(2)先行技術調査
最初にご紹介しましたが、特許の審査では、特許性を判断するために過去に同じ発明が
ないか等の先行技術調査をします。出願前に公開されている文献であれば日本の文献だけ
でなく外国の文献も判断材料になるので、先行技術調査では、国内特許文献、外国特許文
献、非特許文献が約5400万件蓄積された庁内データベースを使用して文献検索を行って
います。検索の漏れを防ぐために、専門の学術文献等も検索できる商用データベースを用
いて更に文献検索をすることもあります。例えば、特許審査第三部においては、化合物な
どの審査において頻繁にSTN等の商用データベースを使用しています。
このように、特許審査の際には、複数のデータベースを用いて先行技術調査を行うこと
により、国内や外国の特許文献だけではなく、学術文献等に記載されている先行技術も漏
らさず調査するように細心の注意を払っています。
(3)特許権の存続期間の延長の審査
通常、特許権の存続期間は特許出願の日から20年ですが、医薬品や農薬の一部の分野に
限っては、最長で5年まで特許権の存続期間の延長をすることができます。
この制度は、医薬品等は安全性の確認や臨床試験に多くの時間を必要とするため、特許
権の専有による利益を得られる期間が短くなってしまう場合があることから設けられまし
た。特許権の存続期間の延長登録出願がなされると、審査官は延長登録の要件を審査する
ことになります。この審査は発明を保護するという観点からみて重要な仕事であるととも
に、特許審査第三部の特徴の一つです。
3.おわりに
以上のように、特許審査第三部では、最先端技術から、環境技術、さらには生活に身近
な製品に関する技術など多くの分野を担当して特許審査を行っています。今後とも、技術
知識の習得や出願人の皆様とのコミュニケーションを行いながら、的確な特許の権利付与
を行うべく、日々の審査に努めてまいります。
Webとっきょ 平成22年3月号(No.11)
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