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分析美学の諸問題 Problems of Analytic Aesthetics
分析美学の諸問題 Problems of Analytic Aesthetics ① 美学(芸術学)の目的 ② 芸術の定義(1) ⑤ 芸術への変容? ③ 芸術の定義(2) ④ 芸術の定義(3) ⑥ 「美」の可能性 ⑧ メタ倫理とメタ美学 ⑩ 芸術史の蓋然的展開 ⑦ 「美」からの逸脱 ⑨芸術、科学、倫理 ⑪ 観測選択効果と高階思考 ⑫ 超・非美的拡張 ⑬ 芸術的価値と文化 ⑭ 虚構 ⑮ 「芸術の定義」 第8章 芸術、科学、倫理 第◎章 「美」からの逸脱 非美的拡張の論理的帰結 ・手業、美的性質 ジャンルによる差異 ・広義の倫理性 独創性と個性、新しさ ・狭義の倫理性 ・主題、自律性、人工性 ・「芸術」と「芸術的」 第◎章 芸術史の蓋然的展開 ・規範倫理 ・科学と非科学 疑似科学、病的科学 ・哲学 ソーカル事件ふたたび ・メタ倫理の美学的適用可能性 ・芸術の境界事例 「コンセプチュアル・サイエンス」は可能か? コンセプチュアル哲学は? コンセプチュアル倫理は? 科学(哲学)・・・・・・ 真 知識 真・知 に貢献しない科学(哲学) cf. ソーカル事件 倫理・・・・・・・・・・・・ 善 徳・義務・幸福 善に貢献しない倫理 規範倫理←――→ メタ倫理 芸術・・・・・・・・・・・・ 美 創造・鑑賞 美に貢献しない芸術 メタ芸術・反芸術 宗教・・・・・・・・・・・・ 聖 信仰 聖に貢献しない宗教 啓示宗教←→自然宗教 世俗化 ○○・・・・・・・・・・・・ 愛 愛に貢献しない○○ Pと考える ↓ ●思考は信念か? ←→想像、疑い、拒絶・・・・・ Pと信じている ↓ ●Pは真理か? ←→虚偽、無意味 Pは真なる信念である (「近似的に真」も含む) ↓ ●Pが信念の原因であるか? ←→偶然の的中 ↓ (PであるがゆえにPと信じるようになったか?) ↓ ●Pと信念との因果関係が適切であるか? Pと知っている ↓ ●知識は体系化されているか? ←→雑学、経験則 Pと科学的に知っている ↓ ●対立仮説との比較(仮説検定)に勝ち残ったか? Pと確証 confirm されている ↓ ●Pを否定する仮説が残っている確率は低いか? Pと検証 verify されている 思考 信念 (近似的に)真なる信念 知識 科学的知識 確証された知識 検証された 知識 哲学 プロトサイエンス 周縁科学 異端科学 形式科学 先端科学 正統科学 自然科学 ・基礎科学 ・応用科学 主流科学 還元された正統科学 フリンジサイエンス 反証された正統科学 代替科学 疑似科学 社会科学 病的科学 トンデモ/オカルト 境界科学 人文科学 ポストモダニズム、ニヒリズム 反科学 反証された正統科学への固執 社会構築主義、相対主義 反証不可能なアドホック仮説 反還元主義 非科学 迷信、偏見、錯誤、原理主義 政治的・宗教的イデオロギー 視覚芸術 空 間 芸 術 概念芸術 聴覚芸術 ・ 抽象絵画 具象絵画 ・ オブジェ 彫刻 工芸 建築 ランドアート 人形 ・ デザイン イラスト 写真 ・ 書 ・ インスタレーション コンセプチュアルアート 総 合 芸 術 ・ 時 間 芸 術 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 園芸 茶道 マンガ ゲーム アニメ 舞踊 コスプレ 演劇 オペラ サイレント映画 映画 アクロバット パントマイム マジック 落語 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ 朗読 ・ ・ ・ ライブ演奏 ・ ライトノベル 小説 ・ 戯曲 評論 エッセイ 詩 ・ 具体詩 アフォリズム ・ サウンドスケープ 電子音楽 ・ 歌 器楽曲 ・ 作業仮説(科学方法論) 内容 伝える メッセージ (真) 経験的事実の解釈 法 検証不要 形式 デザイン 使う プレイグラウンド 反証可能性不要 (善) パフォーマンス (美) 探究の公理 ルールの必要性 スタイル (聖) 学界の多数派が依拠 唯物論、付随性、局 所性、斉一性原理、 オッカムの剃刀 主流科学 内容 メッセージ (真) 経験的事実との合致 検証 伝える 形式 使う パフォーマンス (美) 探究の合理性 文脈的整合性 デザイン スタイル (善) (聖) フェアプレイ 反証可能性 学界の多数派が支持 量子力学、相対論、 ネオダーウィニズム 検証された異端科学 内容 メッセージ (可能的に真) 伝える 形式 使う パフォーマンス (論理的には美) 信じがたかった 大陸移動説 必要性が不明だった (非ユークリッド幾何 学) デザイン スタイル (理論的には善) (パラダイム・シフト) 反証不能 原子論 アドホック 宇宙項 学界に政治的タブー 進化心理学 還元された正統科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (ほぼ真) パフォーマンス (美) 経験的事実と 近似的に合致 確証 便宜的な利用価値 整合性 デザイン スタイル (善) (聖) フェアプレイ 反証可能性 技術的に応用 ニュートン力学、 熱力学、電磁気学 先端科学 内容 伝える 形式 メッセージ パフォーマンス (可能的に真) (美) 経験的事実と 一致 未検証 主流科学の還元 オッカムの剃刀 整合性 デザイン (善) 使う 理論的に反証可能 スタイル (聖?) 学界の支持が増加中 多世界解釈、 超ひも理論 応用科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (可能的に真) パフォーマンス (美) 経験的事実と 一致 未検証 探究の合理性 整合性 デザイン スタイル (善) (聖?) フェアプレイ 反証可能性 学界の支持が変動 常温核融合、地球温 暖化、遺伝子工学 異端科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (可能的に真) パフォーマンス (美) 経験的事実と 一致 未反証 先端科学の対立仮説 整合性 デザイン スタイル (善) (俗) フェアプレイ 反証可能 学界が懐疑的or留保 光速変動説、 隠れた変数理論 周縁科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (可能的に真) パフォーマンス (美) 経験的事実と 一致 未反証 主流科学の拡張 許容性 デザイン スタイル (善) (俗) フェアプレイ? 反証可能(?) 学界が懐疑的or軽視 SETI、タキオン、ワー ムホール、オメガ点 反証された正統科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (美) 経験的事実と 不一致 反証 探究の合理的根拠 あり 整合性 デザイン スタイル (善) (俗) フェアプレイ 反証可能性 学界の多数派が転向 天動説、定常宇宙論、 熱素説、自然発生説 反証された異端科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (美) 経験的事実と 不一致 反証 探究の合理的根拠 あり 整合性 デザイン スタイル (善) (俗) フェアプレイ 反証可能性 学界の多数派が否定 ティティウス・ボーデ の法則、大数仮説 失敗した異端科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (美) 経験的事実と 不一致 反証 探究の合理的根拠 あり 整合性 デザイン スタイル (善) フェアプレイ 反証可能性 (俗) 方法に過誤、捏造 STAP細胞 代替科学 内容 メッセージ (ほぼ偽) 事実との一致より効 伝える 果重視 効果は検証 形式 使う パフォーマンス (美?) 主流科学を補完? 臨床的意義あり デザイン スタイル (確信犯) (俗) ある意味フェア? 反証は不要? 学界の多数派が留保 トランスパーソナル心 理学、代替医療 病的科学 内容 メッセージ (ほぼ偽) 経験的事実と 伝える ほぼ不一致 未反証 形式 使う パフォーマンス (醜) 主流科学と矛盾 恣意性 デザイン スタイル (善) (俗) フェアプレイ 反証可能性 学界の多数派が否定 超心理学、ID、 ネオ・ラマルク説 境界科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (醜) 経験的事実と 不一致 反証 主流科学と無矛盾 恣意性 デザイン スタイル (錯誤) (俗) フェアプレイ?? 反証可能性?? 学界の多数派が否定 UFO、血液型性格診 断、ユング心理学 疑似科学 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (醜) 経験的事実と 不一致 反証 主流科学と矛盾 イデオロギー性 デザイン スタイル (偽善) (俗) アンフェア 反証不可能 学界の多数派が否定 創造科学、ホメオパ シー、波動科学 疑似科学、境界科学 内容 伝える 形式 メッセージ (偽) (醜) 「反証された仮説」に 固執 「パズル解き」からの 逸脱 全体論、価値論 デザイン (偽善or錯誤) 方法論的逸脱 使う パフォーマンス アドホック補助仮説 微小な統計的意義 スタイル (俗) 学界の多数派を敵視 陰謀説、被害妄想 非科学(迷信) 内容 伝える 形式 使う メッセージ (偽) パフォーマンス (醜) 経験的事実と 不一致 反証 探究を意図せず イデオロギー性 デザイン スタイル (悪) (俗) アンフェア 反証不可能 学界は無視 降霊術、占星術、 六曜、アニミズム 意味情報(構造、論理) 美的情報(肌理、身体性) 内容(現実の個性) ①メッセージ(科学) ③パフォーマンス(芸術) 形式(可能な普遍性) ②デザイン(哲学) ④スタイル(宗教) 認識 What(意味論的側面) 表現 Who(語用論的側面) 創造 How(構文論的側面) 適応 Where(環境的側面) ……………………………………………………………………………………………………… 歌詞、タイトル 歌唱法、奏法 メロディ 楽器 ……………………………………………………………………………………………………… 題材 描法・色彩 構図 画材 ……………………………………………………………………………………………………… テーマ 文体 ストーリー ジャンル ……………………………………………………………………………………………………… 対局者・勝敗 表情・消費時間 棋譜 棋戦 内容の変更その1(意味内容の変更) メッセージのみを変更すると・・・・・・ (デザイン、パフォーマンス、スタイルは固定) 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は悪である ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪である ↓↓↓↓↓ 広島・長崎への原爆投下は人命救助の一例である 人命救助は善である ∴ 広島・長崎への原爆投下は善である 内容の変更その2(美的内容の変更) パフォーマンスのみを変更すると・・・・・・ (メッセージ、デザイン、スタイルは固定) 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は悪である ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪である ↓↓↓↓↓ ヒロシマ・ナガサキへの核攻撃は無差別テロに他ならない 無差別テロは人道に反する ∴ヒロシマ・ナガサキへの核攻撃は人道に反する 形式の変更その1(意味形式の変更) デザインのみを変更すると・・・・・・ (メッセージ、パフォーマンス、スタイルは固定) 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は悪である ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪である ↓↓↓↓↓ 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は無警告の殺傷行為の一種である 無警告の殺傷行為は悪である ∴広島、長崎への原爆投下は悪である 形式の変更その3(美的形式の変更) スタイルのみを変更すると・・・・・・ (メッセージ、パフォーマンス、スタイルは固定) 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は悪である ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪である ↓↓↓↓↓ 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例です 無差別爆撃は悪です ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪です 形式→内容(美的形式→美的内容)の変更)その2 スタイルを変更すると・・・・・・ (メッセージ、デザイン、パフォーマンス?は固定)(美的情報は翻訳困難) 広島・長崎への原爆投下は無差別爆撃の一例である 無差別爆撃は悪である ∴ 広島・長崎への原爆投下は悪である ↓↓↓↓↓ The Atomic Bombing of Hiroshima and Nagasaki is a carpet bombing Carpet bombing is wrong ∴ The Atomic Bombing of Hiroshima and Nagasaki is wrong 文献 Kendall L. Walton “Categories of Art” (1970) Joseph Margolis ed. Philosophy Looks at the Arts: Contemporary Readings in Aesthetics (Temple U. P., 1987) Alex Neill, Aaron Ridley Arguing about Art (Routledge, 2002) 赤瀬川原平『超芸術トマソン』ちくま文庫 トーマス・クーン『科学革命の構造 』みすず書房 カール・ポパー『科学的発見の論理 上、下』恒星社厚生閣 ポール・エドワーズ『輪廻体験――神話の検証』 太田出版、2000 伊勢田哲治 『疑似科学と科学の哲学』 名古屋大学出版会、2003 戸田山 和久『「科学的思考」のレッスン』 NHK出版、2011 山本弘『ニセ科学を10倍楽しむ本』 楽工社、2010 石川幹人『超心理学』 紀伊國屋書店、2012 イアン・スティーヴンソン『前世を記憶する子どもたち』 日本教文社、1990