Comments
Description
Transcript
すべてのページ
FPD産業の現状並びに将来における人材ニーズに関する調査 Ⅰ 調査の概要 1.調査の背 景・目的 長引く景気の低迷により雇用情勢は全国的に厳しい状況が続いており、 全国 の完 全失 業率 は 5.5%(平 成 15 年1月 、 総 務 省 )、三 重 県の 有効 求 人 倍率は 0.76 倍 (平成 15 年1 月 、三 重労働局) となってい る。 こうした状況を改善していくためには、企業誘致や起業支援などにより 雇用の創出、増大を図る一方で、企業が求める雇用に関するニーズを的確 に把握し、県、市町村、国、関係団体が連携して求人求職者間のミスマッ チを解消し、計画的に人 材 を育成、 提供してい くことが必 要 である。 三重県ではクリスタルバレー構想を推進しているが、その中核的役割を 期待されているシャープ株式会社(以下シャープ)が県内工場の新設・増 設を進めており、電気、機械はもとより様々な業種への経済波及が見込ま れ、これに伴う雇用の創 出 が期待さ れる。 本調査ではシャープの新工場建設に伴って影響を受ける(効果が波及す る)事業所の将来にわたる雇用計画や求められる人材像を把握し、公共訓 練、高校教育などのカリキュラム、あるいは各種セミナーをはじめとする 求職活動を支援するため の 事業構築 、求職相談 などに反映 す ることに より、 雇用の促進を図ることを 目 的として 実施した。 2.調査方法 ・内容 調査期間 平成 15 年2月∼3月 対象企業 三重県内に立地するFP D (※)関連企業 65 社 把握の方法:三重県が把握している企業に、㈱百五経済研究所が独 自 に調査した企業を加えた 。 ※) F P D : Flat Panel Display( フ ラ ッ ト パ ネ ル ・ デ ィ ス プ レ イ ) の 頭 文 字 をと っ た 略 語。“フ ラ ット = 平 ら な”と い う 意 味か ら 平 面 の薄 型 -1- 表示装置を表す。いくつ か の分野に 分かれるが 、液晶(ノ ートパソコ ン、 携帯電話、液晶テレビ等の表示部)を用いたものや、プラズマを用いた もの(大型テレビ等)等が一般的である。三重県においては特に液晶関 連産業の集積が進んでい る 。 FPD関連企業の定義 ディスプレイパネル製造 企 業 シャープなど、ディスプレイパネル製造における中核企業。巨額の 機械設備投資を行い、主 に ディスプ レイパネル完成 ま での 工程のうち 、 前半の工程を担当する。 原材料・部材関連企業 製造において必要とされ る 原材料・ 部材等を製 造・供給す る企業。 下請企業 ディスプレイパネル製造企業が機械設備で生産したディスプレイパ ネル(基礎部分)に表示に必要なパーツを取り付け、半製品や完成品 に仕上げる。主に組立加 工 や検査な ど製造工程 の後半部分 を担当する 。 業務請負などとして、現場において必要とされる作業者を供給する 企業も含まれる。 製造装置関連企業 ディスプレイパネル製造企業に対して、製造に必要な機械装置を供 給する企業 関連サポート企業 機械装置のメンテナンス、製品の物流、社員食堂、構内清掃など直 接生産には関与しないが 必 要不可欠 な業務を担 当する企業 など。 -2- Ⅱ FPD産業の動向 1.ディスプ レイの分類 ディスプレイを主な技術 に より分類 すると、下 図のとおり である。 技術面から見た各種ディスプレイの分類 ディスプレイ ブラウン管 (CRT) フラットパネル・ ディスプレイ (FPD) 受光型 (非発光型) 液晶 (LCD) プラズマ・ディスプレイ (PDP) エレクトロ・ルミネッセンス (EL) 自発光型 フィールド・エミッション ・ディスプレイ (FED) 蛍光表示管 (VFD) 発光ダイオード (LED) その他 「各種資料に基づき作成 」 -3- 2.ディスプ レイ用デバ イスの市場 ・技術 動向 経 済 産 業 省 ( 技 術 調 査 室 「 技 術 調 査 レ ポ ー ト 」 平 成 14 年2月) によ る と 、 デ ィ ス プ レ イ 用 デ バ イ ス ( 液 晶 ( L C D )、 プ ラ ズ マ デ ィ ス プ レ イ ( P D P )、 エ レ ク ト ロ ・ ル ミ ネ ッ セ ン ス ( E L )、 フ ィ ー ル ド エ ミ ッ シ ョ ン デ ィ ス プ レ イ ( F E D )、 ブ ラ ウ ン 管 ( C R T )) の 世 界 の 用 途 別 市 場 及 び 技 術 動 向 は 次 の と おりである。 世界の用途別市場動向 ・世界のディスプレイ用 デ バイスの 市場は、2000 年の約 5.1 兆円から 2010 年には約 12 兆 円に拡大 する見込み 。 ・用途別の需要予測では 、 パソコン モニターが 2.6 兆円から 5.6 兆円へ、テ レビ が 1.5 兆 円 か ら 4兆 円へ 、 携帯 端 末 な どが 1兆 円 から 2 兆 円 へ、 車 載 パネルが 0.1 兆円から 0.3 兆円 へと それぞれ拡 大する見込 み。 ・ 規 模 別 で は 中 型 ( 中 小 型 テ レ ビ 、 パ ソ コ ン ) の 市 場 が 約 8.1 兆円と最も大 きな市場であり、大型(30 インチ 以 上 、 大型テ レビ) の市 場は約 0.3 兆円 から約 1.5 兆円へと伸び が大きい。 ディスプレイ用デバイス市場の現状と見通し(試算) 兆円 14 約 12 兆円 0.3 12 車載パネル用 0.5 1.5 10 小型 携帯電話・携帯情報 端末(PDA)用 2.2 8 約 5.1 兆円 6 0.2 4 ノートPC用 3.4 中型 デスクトップPC用 0.7 1.1 1.5 2 0 0.1 TV用(中小型) 2.5 1.2 1.5 2000年 2010年 0.3 ビデオカメラ・デジタ ルカメラ・電卓用等 -4- 大型 TV用(大型) 資料:経済産業省 技術別動向 ・ 2000 年の 市場シェア は、液晶 2.7 兆円、ブ ラ ウ ン 管 2.3 兆円、プラズ マ デ ィスプレイ 0.1 兆円。 ・ 2010 年に おいては、 液晶が 2.8∼6兆 円 、有 機ELが 2.5∼5.7 兆円に伸 び る と 予 測 さ れ 、 両 者 が 約 7.1∼ 9.9 兆 円 の 市 場 で シ ェ ア 争 い 。 ま た 、 プ ラズマディスプレイが 0.2∼0.6 兆円、 フ ィ ール ドエミッシ ョンディス プレ イが 0.5∼2.4 兆円 に伸 びる と予測 さ れ、 両者が 約 0.9∼2.7 兆円の市場で の シ ェ ア 争 い 。 ブ ラ ウ ン 管 市 場 は 約 1.1∼ 2 兆 円 の 市 場 規 模 と 予 測 さ れ て いる。 参考:既存ディスプレイ と の違い 今 ま で の 一 般 的 な 表 示 装 置 は C R T ( ブ ラ ウ ン 管 ※) で 、 ガ ラ ス 製 の 巨 大 な 真 空 管 で 作 ら れ て お り 、 表 示 部 分 の 大 き さ ( 例 え ば 32 型 な ど )に 応 じ て 全体が大きく、また重くなってしまう特徴がある。最近ではフラットテレビ など表面は平らに作られているものも多くなっているが、表示面積に応じて 奥行き等が大きくなるこ と は避けら れない。 それに比べてFPD の代 表 的な製品 で ある液晶 テレビやプ ラズマテレ ビは、 CRTに比べて奥行きはかなり小さく、表示面積が大きくなっても奥行きは さほど変わらないという 特 徴がある 。 しかし、価格面ではブラウン管テレビに比べて、液晶テレビやプラズマテ レビはかなり高価なものになっており、まだまだ気軽に買える値段とはいえ ない。今後は、低価格化による製品普及を目指し、製造装置の大型化や更な る製造技術の開発競争が ま すます熾 烈になって いくと予想 される。 ※) ブ ラ ウ ン 管 : 一 般 的 に 家 庭 に あ る テ レ ビ な ど に 用 い ら れ て い る 、 映 像 を 表示するためのデバイス( 装置)が 代表的であ る。技術的 に はCRT(Cathode Ray Tube) と い う が 、 通 常 は 発 明 者 の 名 前 を と っ て ブ ラ ウ ン 管 と 呼 ば れ る ことが多い。 各種 テ レ ビ(本 体)で の比 較 例 テレ ビ の 構造 奥行 き 重さ 消費 電 力 製品 名 ブラ ウ ン 管(32 型 ) 約 55cm 約 56 ㎏ 約 192W SH 社(32C-PD500) 液晶 (30V 型 ) 約 10cm 約 18 ㎏ 約 154W SH 社(LC-30BV3) プラ ズ マ (32V 型 ) 約 14cm 約 29 ㎏ 約 260W SA 社(PDP-32HD2) 有機 EL 現在 の と ころ 、 具体 的な テ レ ビ 製品 は 発売 さ れて い な い (各 社 の カタ ロ グよ り) ディ ス プ レイ 技 術の 性能 比 較 -5- 技術の種類 ブラウン管 (CRT) 液晶 (LCD) プラズマ・ ディスプレイ (PDP) エレクトロ・ ルミネッセンス (EL) フィールド・ エミッション・ ディスプレイ (FED) 現状 (実用化段階) 将来性など 低コストで高画質、耐久 性 が高い 薄く出来ないという欠点 あ り 将来的な発展の可能性は 低 い ノ ー ト 型 P C ・ 中小型を中心に広範囲の 利 用が見込 まれる 携 帯 電 話 な ど の 消費電力が低い、耐久性 が 高い 現状では輝度・動画描写 等 に課題 主流、大量生産 薄 型 ・ 大 画 面 T 大画面で展示用モニターや大型TV用に当 V 用 と し て 製 品 面普及が見込まれる、消 費 電力が大 きい 画素の高精細化が困難 化 携帯電話等のモバイル用機器以外にもTV 一 部 の 携 帯 電 話 用・PC用など広範囲な 利 用が見込 まれる 消費電力が低い、高画質 、 耐久性に 課題 で製品化 有機材料と無機材料があ る 大画面・薄型の技術で将来的に技術が確立 すればPDPにとって変 わ る可能性 がある 試作段階 消費電力はブラウン管よ り も低い、 高画質 将来的には中小型化の可 能 性あり 「経 済 産 業省 技 術調 査室 作 成資料」 を 一 部 修 正 TV用の主流 大量生産 4種類のディスプレイの 比 較 ディスプレイ 薄型化 大型化 低消費電力 応答速度 寿命 液晶 ○ ○ ◎ ○ ◎ ブラウン管 × ▲ ▲ ◎ ○ PDP ○ ○ ▲ ◎ ○ 有機EL ◎ × ○ ◎ ×(現状) ◎非常に優れてい る ○優れている ▲やや劣る ×劣る 資料:シャー プ -6- 3.液晶産業 の全体像 液晶とは 液晶とは、固体と液体の中間状態の性質を有する物質で、電圧のオン・ オフにより固体・液体の両方の性質を示すことを利用し、ディスプレイ材 料として用いられている。今日では、液晶という言葉はディスプレイを指 すことも多くなり、生活 に 浸透しつ つある。 液晶産業の特徴 液晶産業は半導体産業と並び日本を代表する産業である。半導体同様に 需給変動が大きく、また技術革新も激しい。巨額の設備投資が必要とされ る装置産業であることか ら 国際競争 も激化して いる。 また、プロセス(製造工程)移転が進みやすく、国内メーカーは韓国・ 台湾メーカーへの技術供与、生産委託という形で国際分業が進んでいる。 特に製造技術的に高度で な いものは 海外への移 転が進んで い る。 今までは、パソコン用が主たる市場であったが、携帯電話・モバイル情 報端末(PDA)・ テレ ビなど用途 が拡大し、 大規模 市場 が形成されつ つあ る。 液晶材料やガラスなどの化学的な分野をはじめとして、完成品に至るま でには関連する産業が多く存在することから、今後、さらに液晶産業が成 長すれば周辺産業の裾野 も さらに広 がることが 見込まれる 。 液晶産業の発展経緯 1960 年代後半に米国で 液 晶装置の 原型が登場 し、その後米 国各社が参 入 したがカラー表示や製造コスト面での問題をクリアできずに撤退していっ た。 日 本 で は 1973 年 に シ ャ ー プ が 液 晶 電 卓 量 産 化 に 成 功 し 、 国 内 各 社 の 開 発努力により液晶ディス プ レイの商 品化に成功 した。1988 年に業界初の 14 インチ型が登場し、国内 メ ーカーは 圧倒的な地 位を築いた 。 しかし、その後の国内メーカー各社の技術供与により、韓国・台湾メー カーの量産体制が整い、現在では世界シェアの大半を占めるようになって いる。 -7- 大型液晶パネル(10インチ以上)出荷枚数の企業別世界シェア 東芝・松下 3.8% その他 14.3% サムスン電子 (韓国) 17.0% 日立 5.2% 総出荷枚数 6,864万枚 ハンスター (台湾) 5.8% CPT (台湾) 7.1% シャープ 8.6% CMO (台湾) 9.7% LGフィリップス (韓国) 16.4% AUO (台湾) 12.1% (2002年 米ディスプレイサーチ社) -8- 参考:フラットパネルテ レ ビメーカ ーの展開 パネルメーカーとセット(完成品)メーカーの取引関係図 (国内向け2002年第4四半期) 液晶テレビの場合 セットメーカー (パネル調達先の構成比) パネルメーカー (供給規模) 100% シャープ (∼20万台) 10% シャープ 松下電器 100% 東芝 ソニー・ アイワ 100% 東芝松下 (∼5万台) LGフィリップス (∼5万台) 80% 100% サムスン 電子 サムスン電子 (∼1万台) 95% LG 電子 日立 100% 5% 日立 鳥取三洋 三菱 電機 100% 10% ADI 各社 (∼0.5万台) NEC 液晶テレビセットメーカー別出荷台数シェア (国内向け2002年第4四半期) 東芝 2.0% LG電子 1.9% 日立 三菱電機 1.2% 0.6% その他 0.2% サムスン電子 3.1% ソニー・アイワ 11.0% 松下電器 12.0% 国内 出荷台数 26万台 シャープ 68.0% (2002年世界総出荷台数135.1万台) 資料 ( 上 下):デ ィ スプレ イ サ ー チ -9- パネルメーカーとセット(完成品)メーカーの取引関係図 (国内向け2002年第4四半期) プラズマテレビの場合 セットメーカー (パネル調達先の構成比) 日立 パネルメーカー (供給規模) 富士通日立 (∼5万台) 100% 40% パイオニア ソニー 100% パイオニア (∼2万台) 60% NEC (∼2万台) 100% 東芝 100% ビクター 松下電器 (∼2万台) 100% 松下電器 プラズマテレビセットメーカー別出荷台数シェア (国内向け2002年第4四半期) ビクター 4.0% その他 1.0% 東芝 5.0% 松下電器 13.0% 国内 出荷台数 8万台 日立 41.0% ソニー 18.0% パイオニア 18.0% (2002年世界総出荷台数42.1万台) 資料 ( 上 下):デ ィ スプレ イ サ ー チ -10- 4.液晶業界 の動向 液晶業界の動向をいくつ か の事業分 野に分けて みると、次 のとおりで ある。 (1)液晶デバイス 液晶ディスプレイは、その特徴である薄型・軽量、省電力・省スペース、 表示の美しさなどを活かして、従来のブラウン管に変わるディスプレイとし て注目されている。液晶 テ レビ、ノ ートパソコ ン、モニタ ー、モバイ ル機器、 携帯電話などの大規模市 場 を中心に 幅広い分野 での需要増 が見込まれ る。 「液晶関連市場の広がり 」 AV機器 PA機器 液晶テレビ 液晶プロジェクター デジタルムービー デジタルカメラなど OA機器 ノートパソコン モニター コピー機 FAXなど PDA 電子手帳 電卓など 液晶素子 家電 エアコン 電子レンジ 電子ジャー 冷蔵庫など システム技術 薄膜作成技術 セル作成技術 カラー化技術 材料技術など 携帯電話 多機能電話 ハンディターミナル POSなど 車載機器 ゲーム・レジャー テレビゲーム 携帯用ゲーム機 パチンコなど 通信機器 健康 時計・センサー カーナビ スピードメーター 航空機用メーター カーステレオなど 体温計・血圧計 時計・ストップウォッチ 温度センサーなど 「液晶産業」(工業調査 会)を参考 に作成 -11- 国内メーカーの動向 かつては日本の市場占有率は5割近い状態であったが、現在では韓国、 台湾に次ぐ3位にまで落ちている。企業によっては自社生産を取りやめる 動きもあり、得意分野に 絞 って戦略 を立てる傾 向にある。 海外メーカーの動向 大規模投資により製品を大量生産し、市場占有率を高める戦略をとって いる。設備投資額を見ても、韓国・台湾などアジア勢が群を抜く状態が続 いている。 (2)液晶製造装置 国内メーカーの動向 製造装置産業は総合的な高い技術力が要求される、精密機械・メカトロ ニクス産業である。 液晶デバイス産業と製造 装 置産業は 、特性が全 く異なって いる。液晶 デ バイス産業がエレクトロ ニ クス産業 であるのに 対し、製造 装 置産業は 、総 合 的 な 高 い技 術 力 が 要求 さ れ る 精密機械・ メ カ ト ロ ニ クス 産 業 で ある 。 また、液晶デバイス産業 が 典型的な 装置産業で 空洞化(産 業の海外へ の 移転・流出)しやすいの に 対し、製 造装置産業 は200∼300の多数工程を 抱 える上、高度な技術の融 合 が必要で あることか ら空洞化し に くく、国 内企 業が関わる事業領域が多 い 。 さらに、液晶デバイス産 業 では、微 細化や大口 径化、プロ セス技術等 の 要素技術開発が重要であ る のに対し 、製造装置 産業は、プ ロ セスの統 合化 やそれに対するトータル ソ リューシ ョンの提供 など、総合 的 な技術が 問わ れることも多い。 特徴の比較 デバイス 産業の分類 産業の特徴 重要技術 エレクトロニクス産業 空洞化しやすい 大量生産、装置、技術等 の移転が容易 デバイス プロセス技術 -12- 製造装置 精密機械・メカトロニク ス 産 業 空洞化しにくい 多品種少量生産で納期長 く 、 海外移転は困難 プロセス技術 トータルソリューション (3)液晶デバイス用部 材 液晶部品、部材としては 、 カラーフ ィルタ、液 晶材料、I TO付ガラ ス基 板、ドライバIC(液晶 駆 動用IC )、配向膜 、偏光板、 バックライ ト等が 挙げられる。 カラーフィルタ モノクロの表示装置をカラー化するための3色(赤・緑・青) の合成フ ィルタで、液晶製造コス ト に占める 割合は比較 的高い。 凸版印刷や大日本印刷などが業界大手で、海外メーカーへの技術供与を 行なうなど、現地メーカ ー 向けの生 産体制づく りを進めて い る。 液晶材料 液晶ディスプレイの中に 入 っており 、光の通過・遮断を制 御する有機物 質。 ベンゼンやトルエンなど数十種類の有機物質を機能に応じてブレンドして いる。製造方法は各社様々で独自のノウハウがある。大手企業(チッソ、 メルク、旭電化工業など ) が市場の 大部分を占 めている。 ITO付ガラス基板 ガラス基板は液晶材料を 挟 むもので、製 品 によ りガラスの 種類も異な る。 高画質向け製品ほど価格も高くなる。用途によりシェアは異なるものの、 ガラスメーカーはコーニング、NHテクノグラスなど4社が市場を占めて いる。 ITO膜(透明電極膜)を真空蒸着させるには、ガラスメーカー・液晶 メーカー・専業メーカー の 3者によ る場合があ る。従来は 専 業メーカ ー(ジ オマテックや三容真空工業など)が主体であったが、最近ではガラスメー カーによる真空蒸着も拡 大 し競争が 激化してい る。 ドライバIC(液晶駆動 用 IC) 液晶を駆動させる半導体で、製品別(TFT向け、STN向けなど)に 機能が異なる。 配向膜 液晶材料分子の配列を制御するためにITO膜上に形成する膜。日産化 学工業やJSRなどが高 い シェアを 占めている 。 -13- 偏光板 光の透過遮断機能を持っており、偏光フィルムや保護フィルムなどから 形成され ている。 偏光フ ィ ルムは日 東電工 のシ ェ アが高く 、保護フ ィル ム は 富士写真フィルムが主力 企 業である 。 バックライト ディスプレイの背後から画面を明るくするライト。冷陰極管(細長い蛍 光灯のようなもの)から導光板を通じて光を拡散させ、拡散板により均一 に表示が出来るようになっている。反射板を用いて自然光を 反射させる反 射型等もある。 参考:製造工程の概略 一般的な製造工程 区 分 特 徴 工 程 内 容 前工程 ①アレイ工程 機械装置による 製造が中心 後工程 人手による 作業が中心 ②セル工程 A ③セル工程 B ④実装工程 ⑤検査工程 ガラス基板に画素ごとのパターンを 形成 配光膜形成・処理、貼合せ、液晶材 料の封入 液晶封入後の偏光板貼付 以 降 ドライバIC・バックライト等を取 り付けて、ディスプレイ と して完成 回路・外観・画質等の検 査 ①薄膜トランジス ター( TFT)を 作 り 込む ②2枚のガラス基 板を加 工して液晶 を封入する ③液晶封入後、偏 光板を 貼り付ける ④プ リ ン ト 板 上 に 実 装 し た 電 子 回 路 な ど を 液 晶 パ ネ ル に 取 り 付 け る 。 ま た 光 源 と な るバ ッ ク ラ イト な ど も 取 り 付 け 、 完成 品 (パソコンモ ニ タ ー や 携 帯電話など)に 組み込ま れる前の状 態 になる ⑤問題点がないか どうか の検査を行 なう -14- FPD産業に関係のある企業の構造図 サポート企業 物流担当 食堂担当 清掃担当 原材料・必要部材メーカー 原材料・必要部材メーカー メンテナンス担当 ITO膜メーカー 液晶材料メーカー 広視野角フィルム メーカー 薬品メーカー ガラスメーカー ディスプレイ パネルメーカー 協力工場 組立加工・検査等 1次下請企業 2次下請企業 3次下請企業 業務請負等 (人材派遣) -15- 偏向板メーカー カラーフィルター メーカー バックライト メーカー 5.中小企業 のビジネス チャンス FPD産業のどこに中小企業のビジネスチャンスがありそうかをみてみると 以下のとおりである。 (1)液晶デバイス 完成品メーカー シャープや日立など、完成品メーカーは大手が 中心となっている。一般 的に液晶デバイスの製造は巨額の設備投資が必要であることから、中小企 業の参入する余地は極め て 低いとい える。 協力会社 液晶製造の前工程は、大 手 デバイス メーカーの 一貫プロセ スとなる。 液 晶の取扱や梱包、輸送コ ス トを考え ると、一貫 プロセスが 望 ましい。 よっ て外注比率は低く、中小 企 業が関わ ることは難 しい。 一方、液晶封入封止後の 偏 光板貼付 からドライ バICやバ ックライト 等 の実装、検査までの後工 程 は、企業 戦略によっ て外注比率 が 異なる。 内製 化を進めるメーカーは徹 底 した一貫 プロセスで 対応してお り、中小企業が 関わることは難しい。し か し、外注 比率が高い メーカーで は 、関連生 産子 会社や独立系中小企業へ の 外注を進 めている。 後工程は、 自 動化が進 む前 工程に比べ、労働集約的 で あり、大 手デバイス メーカーも 人 件費削減 のた めに外注を進めている例 が 見られる 。 いずれにしても液晶産業 は 、大手グ ループ内で の閉じた分 業構造が特 徴 であり、自社の生産子会 社 や専属的 な独立系中 小企業が外 注 先となる 場合 が多い。特に大手は、後 工 程の製造 ノウハウの 流出を恐れ 、 外注先を 明ら かにしない傾向にある。 後工程の外注には、液晶 や ICに関 する深い知 識に加え、クリ ー ンル ー ム整備など設備投資力が 必 要となっ ている。ま た、大手デ バ イスメー カー は、協力会社の教育コス ト やスピー ド、企業秘 密の保持へ の 対応を考 慮し、 既存協力会社での増産を 優 先する傾 向にあるた め、新規参 入 が難しく なっ ている。 従って大手デバイスメー カ ーの増産 などで一時 的な仕事の 増加はあっ て も、なんらかのセールス ポ イント( 既存業者を 上回る技術 力 等)がな いと、 安定した受注を確保する こ とは簡単 ではないと 考えられる 。 -16- (2)液晶デバイス向け 部 材 液晶部材としては、液晶材料、透明電極(ITO)付ガラス基板、カラー フィルタ、ドライバIC 、 配向膜、 偏光板、バ ックライト 等が挙げら れる。 カラーフィルタは大手印刷会社、ドライバICは大手半導体メーカー、配 向膜は大手化学メーカーによる寡占化が進んでいるが、ITO付ガラス基板 加工、バックライト、偏光板製造等の各分野には中小・中堅企業が関わって いる。 液晶デバイスほどではないが、大手と一部の高度な技術を持つメーカーの 寡占状態にあり、独自技術を蓄積した企業の地位は高いことから、独自技術 がないと新規参入は困難 で あるとい える。 (3)液晶製造装置分野 前工程については、関連装置製造のために巨額の設備投資と技術の総合度 が必要であり中小企業の 参 入余地は 少ない。 後工程や検査装置については、比較的中小企業の参入の余地がある。全般 的に設備投資額が少なく市場規模が小さいため、大手が参入しにくい(規模 のメリットを発揮できな い )状況と いえる。 -17- Ⅲ 調査結果 FPD関連企業を対象に「FPD産業の現状並びに将来における人材ニーズ に 関 す る 調 査 ( 以 下 ア ン ケ ー ト 調 査 )」 を 実 施 し た 。 ま た 、 そ の 調 査 結 果 と あ わせて、ヒアリングや関連資料も参考にしながら、FPD産業に関係する事業 所の特色と課題について 取りま とめ た。 1.調査を行 なった事業 所の概要 (1)主たる業務内容 事業所の主たる業務内容 液晶関連(直接関与) 20 液晶関連(間接関与) 4 液晶以外のFPD関連(直接関与) 4 液晶以外のFPD関連(間接関与) 0 関連分野(技術系の分野) 4 関連分野(技術系以外の分野) n=38 6 0 5 10 15 20 25 (社) ★業 務 内 容 区 分 の 説 明 主 要 業 務 の 区 分 : 液 晶 関 連 、 液 晶 以 外 の FPD 関連、関 連 分 野 ( ※) ※) 関 連 分 野 と は 、 製 造 分 野 以 外 で 通 常 必 要 と さ れ る 業 務 関 与 の 区 分 : 直 接 ( 製 造 ・ 組 立 加 工 等 )、 間 接 ( 原 材 料 の 供 給 等 ) 関連分野の区分:技術系はメンテナンス等、技術系以外は物流・食堂・清掃等 と区分した アンケート調査から事業 所 の主な業 務を見ると 、FPD産業の中でも「 液 晶 関 連 」 分 野 で 「 直 接 生 産 」 に 関 与 す る 事 業 所 が 20 ヶ 所 ( 52.6% ) と 一 番多い。次いで、FPD産業を技術関係以外の分野で間接的にサポートす る事業所(物流・食堂・ 清 掃など) が多くなっ ている。 「 液 晶 関 連 」 は 、 該 当 す る 事 業 所 が 多 く 存 在 す る 一 方 で 、「 液 晶 以 外 の FPD関連」に携わる事 業 所は少な かった。 -18- (2)取扱製品分野(最 終 製品別) 事業所が扱う製品分野 AV機器 21 家電 11 ゲーム・レジャー 12 通信機器 19 OA機器 21 PA機器 14 車載用 15 センサー 5 時計 n=38 (複数回答) 6 健康 7 その他 14 (社) 0 5 10 15 20 25 取扱製品を最終製品の分野別に見ると、AV機器(テ レビ・ビデオカメ ラ等)とOA機器(パソコン・モニター等)が多く、次いで通信機器(携 帯電話・多機能電話等) が 多い。 液晶パネルなどの表示部 分(表示機 能)は様々 な製品に利 用されてお り、 最終製品の分野も上記のようなAV機器・OA機器を中心 と し ながら幅広 い分野で用いられている 。 -19- 2.事業所の 従業員の現 状 事業所内の部門を4つ(生産工程、専門・技術職、管理職、その他)に分 けて、それぞれの特色を み た。 なお、生産工程には「一 般 作業者」と「熟練作 業者」、専 門・技術職に は「品 質管理・設計・メンテナ ン ス」と「 企画・研究 開発」、管 理職には「技 術系 」 と「事務系」、その他に は「事務職 」「営業・販 売・サービ ス」「運転手 ・物 流 担当」「その他」を含ん でいる。 (1)現在の従業員数 従業員の構成 正社員 生産工程 (n=1,882) 契約社員・パート等 57.6 業務請負等 13.3 専門・技術職 (n=390) 29.1 84.1 8.5 7.4 2.1 管理職 (n=189) 97.4 その他 (n=418) 0.5 72.2 合計 (n=2,879) 20.3 65.9 0% 20% 12.8 40% 60% 7.4 21.3 80% 100% 注)従業員とは、各事業所で様々な業務に従事するすべての労働者を対象とし、自 社で直接雇用する場合(正社員、契約社員・パート等)と直接雇用しない場合(業 務請負等)の両方が含まれる。また、事業所の方針により従業員の内訳を公開して い な い と こ ろ も あ っ た ( 総 数 約 3,000 人) 現在業務に従事している従業員について、担当業務と雇用形態を軸にした 構成分布は、次のような 結 果となっ た。 全体をみると正社員は約 2 /3を占 めており、 残りは契約 社員・パート等 と 業務請負等で構成されている。しかし、各担当業務別にその構成をみると、 それぞれ特徴がみられる 。 -20- 生産工程 業務請負等の構成比率が全体の約3割を占めており、他の業務に比べて かなり比率が高いことが わ かる。ま た、契約社 員・パート 等 をあわせ ると、 全体の4割以上が正 社員 以 外の従業 員で構成さ れている。 各事業所の方針にもよるが、可能な限り正社員で業務を行い、許容範囲 を超える分に関しては外 注 対応(2次下請等へ の 発 注 など )とする場 合(主 として1次下請事業所に多い)と、許容範囲を超える分に関しては、契約 社員や業務請負などの正社員以外の従業員を増員して対応する場合(主と して2次下請以降の事業 所 に多い) の2つの対 応が見られ る 。 いずれの場合にしても基本的 に簡易な業務は契約社員や業務請負などの 正社員以外の従業員を中心として対応し、検査業務など重要度の高い業務 に関しては正社員を中心に対応するといった人員配置を行なっている点は 共通しており、いかに柔軟に受注に対応するかと同時に、可能な限り効率 の良い人員配置を行って、人件費等の経費を極力抑えようとしていること がうかがえる。 専門・技術職 生産工程に比べると全体 に 占める正 社員の構成 比は高い。 企画・研究開発部門に関しては、事業所にとって特に中核ともいうべき 重要な存在であり、正社 員 のみで他 の雇用形態 はみられな い 。 メンテナンス等の業務に関しては契約社員・パート等、あるいは業務請 負等といった雇用形態も 一 部みられ る。 管理職 圧倒的に正社員が多いのは、事業所を管理する立場を考えれば当然の結 果である。若干ではあるが業務請負等が占めているのは、生産工程に多い 業務請負等の従業員を統括する立場として存在していると考えられる。こ れは一般的な規定からすると、正社員は業務請負等の従業員を直接指揮す ることができないといっ た ことが影 響している と考えられ る 。 その他 その他の職は、上記の2つの職種と比べて契約社員・パート等が比較的 多い。人手は必要である が それほど 重要度の高 くない業務 内 容に関し ては、 比較的人件費が安くて済 む 雇用形態 を選択して いるものと 考 えられる 。 -21- (2)従業員の現状につ い て ①事業所全体での 従業員 の過不足 事業所全体での従業員の過不足 かなり過剰 8.3% かなり不足 13.9% やや過剰 5.6% 適正 38.9% やや不足 33.3% n=36 「 適 正 」 との評 価 が 4 割 近 く を 占め て お り 、 一 番 多 か った 。 し か し、「 か なり不足」と「やや不足」とあわせると約5割近い事業所が何らかの形で 従業員の不足を感じてい る ことがわ かる。 ②事業所全体での 従業員 の過不足 従業員の過不足状況(本社所在地別) かなり不足 合計 (n=36) 13.9 県内に本社のある 事業所(n=14) 14.3 県外に本社のある 事業所(n=22) 13.6 0% やや不足 適正 やや過剰 33.3 かなり過剰 38.9 5.6 8.3 57.1 18.2 28.6 45.5 20% 40% -22- 60% 9.1 80% 13.6 100% これを本社所在地にもとづき「県内に本社のある事業所」と「県外に本 社のある 事業所」 に分け て みると、「県内に本社 の あ る事 業 所」は 全体 的 に 不足感が 強くみら れる。 一 方、「県外に本 社の あ る事 業所 」 に関し ては 、 適 正から過剰と感じている 事 業所が多 く、その傾 向に大きな 違 いがみら れる。 ③今後3年以内の 増員計 画 今後3年以内に従業員を増員する予定(本社所在地別) ある ない 47.2 合計 (n=36) 県内に本社のある 事業所(n=14) 19.4 50.0 県外に本社のある 事業所(n=22) わからない 7.1 45.5 0% 33.3 42.9 27.3 20% 40% 60% 27.3 80% 100% 全体では、今後3年以内に従業員を増員(現状比増加)する予定につい て、半数 近くが「 ある」 と 回答して いる。「わか らな い」 と 回答し た事 業 所 の動向にもよるが、今後雇用が拡大する見込みはかなり大きいと考えられ る。 この項目に関しても本社所在地にもとづき「県内に本社のある事業所」 と「県外に本社のある事 業 所」に分 けてその特徴を み た。 「県内に本社のある事業 所 」は増員 を予定して いる事業所 が比較的多 く、 増員が「ない」とした事業所は少ない。従ってシャープ並びに関連事業所 の誘致を 含めたF PD関 連 産業の集 積が、「県内 に本 社の あ る事業 所」 に 好 影響を与えていることは 間 違いない といえる。 一 方 、「 県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 」 は 「 な い 」、 又 は 「 わ か ら な い 」 の 回 答が多い 。「わか らない 」とする事 業所に 関し て は、 FP D 業界の 動向 変 動 が激しく予測が困難と考える場合や、本社あるいは統括事業所の意向が不 明であることが影響して い ると考え られる。 -23- (3)部門ごとの従業員 の 過不足に ついて 事業所内の部門を4つ(生産工程、専門・技術職、管理職、その他)に分 けて、また、正社員と正社員以外(契約社員・パート等、及び業務請負等) に分けて現状と今後の対 応 策をみた 。 全体的な傾向として、現 状 で不足を 感じている 部門につい ては今後増 員を、 また、現状で過剰と感じている部門に関しては今後削減を検討している事業 所が多い。それぞれの対応方針は当然の選択であると考えられるので、以降 は “現 状 を 適 正 と 考 え て い る 事 業 所 ”の 今 後 の 対 応 に つ い て 、 部 門 ご と に 特 徴を取り上げた。 ①各 部 門 の従業 員 の 過不 足 に つ いて ( 正 社 員) 各部門の今後の採用方針(正社員) 増員 生産工程 (n=11) 現状維持 54.5 専門・技術職 (n=9) 36.4 66.7 管理職 (n=12) 33.3 27.3 0% 40% 22.2 33.3 36.4 20% 9.1 11.1 33.3 その他 (n=11) 削減 36.4 60% 80% 100% 生産工程 現状を適正と判断している事業所の中には、その後の方針として「現 状維 持」 とし た事 業 所と 、「 増員」 を検 討して い る事 業所 に 分か れた。 F PD産業の成長やシャープの事業拡大を念頭においたうえで、今後業務 が拡大し従業員の「増員」が必要であると考える事業所が多いためとい える。 また、「削減」を検討す る事業所は かなり少な い結果 とな った。 -24- 専門・技術職 現状で適正と感じている事業所において、今後の対応方針として「現 状維持」を考えている事業所よりも「増員」を検討している事業所のほ うが多い結果となった。これは前述の生産工程同様に今後の業務拡大を 見込んでおり、それに対応して「専門・技術職」の「増員」を検討して いるものと考えられる。また、増員を検討している比率が一番高いのも この部門であった。 管理職 現状 を適 正と判 断 した事 業 所 に つい ては 、「現 状 維持 」を 主 流 とし なが らも「増員」あるいは「削減」を検討している事業所がそれぞれ同数ず つ あ る 。“生 産 工 程 ”や “専 門 ・ 技 術 職 ”と は 異 な り 、 直接 生 産 能 力 に 寄 与しにくい管理職につい て は対応が 分かれる結 果となった 。 その他 各部門の中では一番採用に消極的な傾向がみられる。生産に直接寄与 しない部門だけに、雇用 意 欲は低い と考えられ る。 -25- ②各部門の従業員 の過不 足について (正社員以 外) 正社員以外についても、正社員と同様に事業所内の部門を4つ(生産工 程、専門・技術職、管理 職 、その他 )に分けて 現状と今後 の 対応策を みた。 なお、正社員以外とは「契約社員・パート等」及び「業務請負等」であ る。 各部門の今後の採用方針(正社員以外) 増員 生産工程 (n=9) 現状維持 削減 44.4 専門・技術職 (n=3) 44.4 66.7 11.1 33.3 管理職 (n=3) 100.0 その他 (n=9) 44.4 0% 20% 33.3 40% 60% 22.2 80% 100% 生産工程 生産工程では、現状の従業員数を適正と感じている事業所の中にも今 後 の 対 応 策 と し て 「 増 員 」 を 検 討 し て い る と こ ろ が あ る 。 前 述 の “正 社 員 ”に つ い て も 現 状 の 従 業 員 数 を 適 正 と 判 断 し な が ら も 、 今 後 の 対 応 策 として「増員」を検討している事業所があり、今後の業務拡大を見込ん でいる事業所が多いと考 え られる。 技術・専門職 技術・専門職では、正社員以外という雇用形態上、この部門に対して 不足を挙げる事業所はなかった。中核部門となる技術・専門職に関して は、可能な限り正社員で対応していきたいと考えている事業所が多いた めと考えられる。 -26- 管理職 管理職では、正社員以外の雇用形態に不足を感じる事業所はなく、前 述 の “技 術 ・ 専 門 職 ”と 同 様 に 正 社 員 で の 対 応 を 考 え て い る 事 業 所 の 姿 勢がうかがえる。 その他 その他の職では、事業所の動向にはいろいろな選択がみられる。今後 の対応策として「増員」並びに「削減」を検討している事業所とも、対 象となる職種には事務職( 一般の事 務)を挙げ ている事業 所が多かっ た。 -27- 3.シャープ の大型設備 投資による 事業所 への影響 シャープの大型設備投資が、三重県内にあるFPD関連産業へ及ぼす影響 について各事業所の対応 を みた。 アンケート調査は、“2つの新工場 の稼動が業 務 拡大に与え る影響”と、“そ の影響を考慮した上での 今 後の従業 員の採用計 画”を中心に行なった 。 ま た 、 各 事 業 所 を 本 社 所 在 地 に も と づ き “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”あ る い は “県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”の 2 つ に 区 分 し て そ の 動 向 を み た 。 な お 、 対 象 工 場 は 現 在 建 設 が 進 ん で い る 亀 山 工 場 ( ※1 ) と 三 重 第 3 工 場 ( ※1 ) である。 ※1)対象工場 ・亀山工場(亀山市:2004 年1月 稼 動 予定、 大型液晶テレ ビを一貫生 産) ・三重第3工場(多気町:2003 年6月 稼 動予 定、システム 液晶(※2)を生産) ※2 ) シ ス テ ム 液 晶 : 液 晶 の ガ ラ ス 基 板 上 に シ リ コ ン 膜 を 形 成 す る 「 CG シリコ ン 技 術 」 を 使 っ て 液 晶 ド ラ イ バ 用 IC やコン ト ロ ー ラ 、 電 源 用 IC などの機能デ バイスを作りこんだもの。周辺デバイスを液晶パネル上に一体形成できること から、さらなる小型化・高性能化が可能となる。 (1)各工場の稼動が業務拡大(新規受注・受注増加・生産設備の拡大など) に与える影響について ①事業所の本社所 在地別 に見た場合 シャープの新工場稼動が業務拡大に与える影響 (本社所在地別) かなり 見込まれる 全体(n=35) やや 見込まれる 21.7 あまり 見込まれない 5.8 23.2 見込まれない わからない 27.5 21.7 3.6 3.6 県内に本社のある 事業所(n=14) 17.9 県外に本社のある 事業所(n=21) 35.7 24.4 0% 36.6 20% 40% -28- 39.3 7.3 60% 22.0 80% 9.8 100% 全体としての傾向 全体的 には「見込 まれな い 」とした 事 業所が一 番 多い もの の 、「 かなり 見 込 ま れ る 」 と 「 や や 見 込 ま れ る 」 を あ わ せ た “業 務 拡 大 を 見 込 む 事 業 所”が半 分近 く あ る 。「 わ から ない 」 と回 答し た 事業 所の今 後 の 動向に も よるが、シャープの大型設備投資が県内FPD関連 産業に好影響を与え る可能性が高いといえる 。 “県内に本社のあ る事業 所”の傾向 影 響 度 を 本 社 所 在 地 に も と づ い て み て み る と 、“県 内 に 本社 の あ る 事 業 所 ”は 「 か な り 見 込 ま れ る 」 か 「 見 込 ま れ な い 」 の は っ き り し た 回 答が 多 く 、「 や や 見 込ま れ る 」 ある い は 「 あま り 見 込 まれ な い 」 と いっ た中間的な回答はほとんどなかった。これは現在の取引関係が明確で あることから、中間的な 回 答がほと んどなかっ たものと考 え られる。 “県外に本社のあ る事業 所”の傾向 “県外に本社のあ る事業 所”に関しては、「か なり見込まれ る」と「や や見込まれる」をあわせた好影響を受ける内容の回答が6割以上ある 一 方 で 、「 わ か ら な い 」 の 回 答 は 少 な く 、“県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ” の回答とはかなり異なる 結 果となっ た。 こ れ は “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”が 組 立 加 工 中 心 の 下 請 的 存 在 で あ る の に 対 し て 、“県外 に 本 社 の あ る 事 業 所”は 必 要 部 材や 原 材 料 の 供 給に関与している事業所が多く、既存取引の延長線として今後の取引 増減の方向を把握しやす い ことが影 響している と考えられ る 。 -29- ②工場別に見た場 合 シャープの新工場稼動が業務拡大に与える影響 (工場別) かなり 見込まれる 全体の平均 やや 見込まれる 21.7 あまり 見込まれない 23.2 5.8 見込まれない わからない 27.5 21.7 2.9 亀山工場の 影響(n=35) 28.6 三重第3工場の 影響(n=34) 17.1 14.7 0% 29.4 20% 22.9 8.8 40% 28.6 32.4 60% 14.7 80% 100% 全体としての傾向(工場 別 ) 工 場 別 に み た 場 合 、“亀 山 工 場 ”と “三 重 第 3工 場 ”で は 、その傾向に やや違いが見られる。 “亀山工場”は「かなり 見込まれる 」とした積 極的な回答 とと もに「 わ からない」といった回答 が 比較的多 くなった。 一 方 、“三 重 第 3 工 場 ”で は 、「 や や 見 込 ま れ る 」 と し た 回 答 と 「 見 込 まれない」とした回答が 多 く、「わからない」 は少な い結 果 となった。 各工場別の特徴をもう少 し 詳細にみ ると次のと おりである 。 -30- a)亀山工場の場合 シャープの新工場稼動が業務拡大に与える影響 (亀山工場の場合) かなり 見込まれる やや 見込まれる あまり 見込まれない 見込まれない わからない 2.9 全体(n=35) 28.6 県内に本社のある 事業所(n=14) 17.1 14.3 22.9 28.6 28.6 57.1 4.8 県外に本社のある 事業所(n=21) 38.1 0% 28.6 20% 40% 19.0 60% 80% 9.5 100% “県内に本社のあ る事業 所”の傾向 “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は 「 か な り 見 込 ま れ る 」 と の 回 答 は 少 な く、「 わ からな い 」 と回 答 し た 事業 所が 半 数以 上あ る 。亀 山工 場は「大型 液晶テレビ」を取り扱うため、現在三重工場(多気町)との取引を中心 と し て い る “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”に と っ て も 、 液 晶 テ レ ビ を 取 り 扱っている事業所は積極的な回答を、また現状取り扱っていない事業所 では消極的な回答をしており、業務内容により回答に差が生じたと考え られる。 現時点で液晶テレビを取り扱っている事業所にとっては、亀山工場の 製品も既存業務の延長線上に該当するが、携帯電話など小型製品を中心 に取り扱っている事業所にとっては、パーツの構成や大きさがかなり異 なることから、まったく別の製品と考えられている。従って受注 にあた ってはクリーンルームの拡大など何らかの対応が必要になると考えられ る。 ま た 、 亀 山 工 場 は “液 晶 テ レ ビ の 一 貫 生 産 ”を 掲 げ て い る こ と か ら 、 組立加工などの下請業務が外部に発注されるかどうかといった点なども 「わからない」という回 答 の要因に なっている と考えられ る。 “県外に本社のあ る事業 所”の傾向 “県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は 「 か な り 見 込 ま れ る 」 と の 回 答 が 一 番 多く 、「 やや 見込 ま れる 」を 含める と6 割以上 の 事業 所が 業 務拡 大を見 込 ん で い る 。こ れ は 、 亀山 工 場 の 建設 に 合 わ せて “亀 山 ・関 テ ク ノ ヒル ズ ” -31- 工業団地を中心に、三重県内に進出を表明している事業所が大きく影響 していると考えられる。 b)三重第3工場の場合 シャープの新工場稼動が業務拡大に与える影響 (三重第3工場の場合) かなり 見込まれる 全体(n=34) やや 見込まれる 14.7 県内に本社のある 事業所(n=14) 29.4 21.4 県外に本社のある 事業所(n=20) わからない 32.4 14.7 42.9 45.0 20% 見込まれない 8.8 7.1 7.1 10.0 0% あまり 見込まれない 10.0 40% 60% 21.4 25.0 80% 10.0 100% “県内に本社のあ る事業 所”の傾向 業 務 拡 大 が 「 か な り 見 込 ま れ る 」 と 回 答 し た の は “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所”の 方 が 多 い。 し か し 、「 見 込 ま れな い 」 と し た 事 業 所 も か な り多 く 、「わ か ら な い」 を 選 択 した 事 業 所 の今 後 の 動 向に も よ る が 、業 務拡大を見込んでいる事 業 所が多い とはいえな い状況にあ る 。 三 重 第 3 工 場 に お い て 生 産 予 定 の “シ ス テ ム 液 晶 ”は 、 極 力 人 手 を 必要としない製造工程にその特色があるため、業務拡大を「見込まれ ない」とした事業所はそ の 特色を前 提に回答を 選択した可 能 性が高い 。 また、業務拡大を見込む確率が高い事業所ほど、現状の取引がシャー プとの専属取引に近い存 在 であると 考えられる 。 “県外に本社のあ る事業 所”の傾向 “県 外 に 本社 の あ る 事 業 所 ”に つい て は 、「 や や 見 込 ま れ る 」 と し た 事業 所 が かな り 多 く 、「 か な り 見込 ま れ る 」と 「 や や 見込 ま れ る 」 をあ わ せ た 業 務拡 大 に 影 響の あ る 事 業所 は 半 数 を超 え る 結 果と な っ た 。“県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は 必 要 部 材 や 原 材 料 の 供 給 に 関 与 し て い る 事 業所が多く、既存取引の延長線として今後の取引拡大を見込みやすい ことが影響していると考 え られる。 -32- ③本社所在地と各 工場に よる影響比 較一覧 シャープの影響(一覧) かなり 見込まれる やや 見込まれる 21.7 全体(n=35) 亀山工場が県内に 本社のある事業所に 与える影響(n=14) 5.8 23.2 14.3 三重第3工場が県内 に本社のある事業所 に与える影響(n=13) あまり 見込まれない 見込まれない わからない 27.5 21.7 28.6 21.4 57.1 7.1 7.1 42.9 21.4 4.8 亀山工場が県外に 本社のある事業所に 与える影響(n=21) 38.1 三重第3工場が県外 に本社のある事業所 に与える影響(n=20) 10.0 0% 28.6 45.0 20% 19.0 10.0 40% 60% 25.0 80% 9.5 10.0 100% “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は 三 重 第 3 工 場 の 方 が 業 務 拡 大 に 与 え る 影 響が 大 き いと考 え る のに 対 し て 、“県外 に 本社 の ある 事 業所 ”は 亀 山工 場 の 方に対して業務拡大の可 能 性の大き さを感じて いる。 全体をみた場合には特色の少ない回答にも思えるが、その中身を詳細に みてみると、それぞれ特 色 のある回 答結果であ ったといえ る 。 -33- (2)業務拡大により、 新 たに従業 員を増員す る予定につ いて ①従業員の増員予 定(亀 山工場の場 合) 従業員を増員する予定(亀山工場) ある 合計(n=33) ない 33.3 県内に本社のある 事業所の場合(n=14) 14.3 県外に本社のある 事業所の場合(n=19) 21.2 45.5 21.4 64.3 47.4 0% わからない 20% 21.1 40% 60% 31.6 80% 100% 亀山 工 場 に関 して は 、 前 述 の “業 務 拡 大 に 与 え る 影 響 ”と よ く 似 た 傾向 が み られ る 。 “県内に本社のあ る事業 所”については「わか らない」が 圧倒 的に多 く、 業務の拡大計画が明らかになってくれば、それに伴い増員計画もありえる ものと考えられる。 “県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は 、 新 規 進 出 の 事 業 所 に お け る 採 用 を 中 心 に従業員の増員がかなり 見 込まれる 。 -34- ②従業員の増員予 定(三 重第3工場 の場合) 従業員を増員する予定(三重第3工場) ある 合計(n=32) 21.9 県内に本社のある 事業所の場合(n=14) 21.4 県外に本社のある 事業所の場合(n=18) 22.2 0% ない わからない 25.0 53.1 35.7 42.9 16.7 20% 61.1 40% 60% 80% 100% 三重第3工場に関しては、従業員の増員予定は「わからない」とする回 答が一番多かった。 “県内に本社のあ る事業 所”の方が比較的態度 が明確であ るの に対して、 “県 外 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”は は っ き り し な い 回 答 が 中 心 と な っ た 。 こ れ は 前 述 の “業 務 拡 大 の 影 響 ”に 関 し て 「 や や 見 込 ま れ る 」 と の 回 答 が 一 番 多かったことと関係があると考えられる。業務拡大が「やや見込まれる」 がゆえに、増員する必要があるかどうかしばらく様子見の状況になってい ると考えられる。 全般的に「わからない」と回答した事業所が多い原因については次のよ うなことが考えられる。FPD産業自体は成長産業であるものの、世界的 な競争の中で非常に変動が激しく、業務量に関してなかなか安定的な方向 性を見出しにくいといっ た ことが考え る 。 業務量の増加に応じて従業員を増員した場合、その後業務量が減少して もそれに応じて従業員を削減するのは現実的にはなかなか困難である。従 って、業務量が増加して も 採用は抑 制しておか ざるをえな い 状況にあ る。 また、“県外に本 社のあ る事 業所”の 場 合は基 本的 に全 体の 事 業規 模が 大 き く 、 新 た な 採 用 に よ っ て 人 員 を 調 達 し な く て も 、社 内 の 他 の 事 業 所 と の 間での配置転換等により、全体の人員調整を図ることが可能であることも 「わからない」とした回 答 に影響し ていると考 えられる。 -35- (3)大型設備投資の影 響 を踏まえ た上での今 後の採用計画に つ いて 前述の大型設備投資の影響を踏まえた上で、今後の採用計画について調査 を行なった。なお、調査 に あたって は、 「雇用形態別 」 「学歴等別」 「 卒業学部・ 学 科 別 」 の 3 つ の 区 分 に も と づ き 、 ま た 採 用 の 時 期 を 「 平 成 15 年4 月∼ 16 年3月」と「平成 16 年4 月 以降」 に分 けてい る。 ☆3つの区分方法 とその 分類内容 ①雇用形態別(4 分類) 正社員(新卒)、正社員 (中途採用 )、契約社員 ・パート等 、業務請負 等 ②学歴等別(6分 類) 大学・大 学院 、工 業 高等 専門 学校、 短期 大学・ 専 門学 校、 公 共職 業能力 開 発校(※)、高等学校、中 途 採用 ③卒業学部・学科 別(大 学 ∼高校ま ですべての 学校を対象 、8分類) 機械系、電気系、電子系 、 生物・化 学系、その 他の理工系 、 上記以外の専門学科、総 合 学科(普 通科等)、学部・ 学科 は問わない ※) モ ノ づ く り の た め の 実 践 的 な 技 術 者 を 養 成 す る 学 校 で 、 三 重 県 で は 津 高 等 技術学校(所在地:津市高茶屋)が該当する。 ☆採用時期 a)平成 15 年 4月∼16 年3 月 に採 用を考えて いる採用見 込人数(人 ) b)平成 16 年 4月以降 の採用方針 (4 分類) なお、平成 15 年4月∼16 年3 月 に採用を 考 え て いる具体 的人数を回 答 し た事業所の構成内訳は以 下 のとおり である。 業務の分類 装置による製造が主体( 原 材料・部 材など) 人手による作業が主体( 組 立加工な ど) その他(上記以外) 合 計 事業所数 5 4 2 11 従業員数 約 3,150 人 約 1,600 人 約 70 人 約 4,820 人 た だ し 、 具 体 的 な 人 数 を 回 答 し た の は 11 事 業 所 と あ ま り 多 く な く 、 ま た 業務内容等にやや偏りが あ ることに 留意が必要 である。 -36- ①雇用形態別にみ た場合 a)雇用形態別の採用計 画 (平成 15 年4月∼16 年3月) 雇用形態別の採用計画(平成15年4月∼16年3月) 正社員(新卒採用) 194 正社員(中途採用) 52 契約社員・パート等 30 業務請負等 10 0 50 100 150 200 (人) 雇用形態別の構成比(平成15年4月∼16年3月) 業務請負等 3.5 正社員(新卒採用) 67.8 0% 20% 40% 60% 正社員 (中途採用) 契約社員 パート等 18.2 10.5 80% 100% 正社員と正社員以外の比 較 雇用形態別に採用予定人数をみた場合、一番採用予定人数が多いのは 「正社員(新卒採用)」となった。次いで「正 社員( 中途 採用)」となり、 新 卒 採 用 と 中 途 採 用 を あ わ せ る と、「 正 社 員 」 と し て 採 用 し た い 比 率 は 8 割を超える結果となった 。 一 方 、「 契約 社 員 ・ パ ー ト 等 」 や 「 業 務 請 負 等 」 は 対 象 人 数 が 少 な い 結 果 と な っ た 。 た だ し 、「 業 務 請 負 等 」 に 関 し て は 採 用 人 数 を “未 定 ”と し た 事 業 所 も あ り 、「 業 務 請 負 等 」は 従 業 員 数 調 整 の た め の 最 終 項 目 と み て いる事業所もある。 -37- 新卒と新卒以外の比較 新卒採用(「正社員(新 卒採用)」)と、中途採 用(「正社員( 中 途 採用 )」 + 「 契 約 社 員 ・ パ ー ト 等 」 + 「 業務 請 負 等 」) を 比 較 し て み る と 、 新 卒 採 用の方がやや多いものの 、 中途採用 の比率もか なり高いこ とがわかる 。 以前のような新卒採用を中心として補完的に中途採用を実施していた 時代ではなくなってきており、中途採用は新卒採用と同等の採用方法に なりつつある。 ヒ ア リ ン グ に お い て も 、“近 年 の 新 卒 者 は 以 前 に 比 べ て 辞 め や す い ”こ と か ら 中 途 採 用 を 重 視 す る 事 業 所 や 、“業 務 量 の 波 が 大 き く 、 必 要 に 応 じ て 短 期 的 に 雇 用 量 を 調 整 し た い ”と 考 え る 事 業 所 が あ る こ と が わ か り 、 契約社員や業務請負等へのシフトを図るといった考えがあることを認識 しておく必要がある。 -38- b)雇用形態別の採用方 針 (平成 16 年4月以 降 ) 雇用形態別の採用方針(平成16年4月以降) 積極的に採用したい 正社員(新卒採用) (n=14) 出来れば採用したい 28.6 正社員(中途採用) (n=9) 35.7 22.2 契約社員・パート等 (n=12) 10.0 0% 14.3 44.4 8.3 業務請負等 (n=10) 極力採用を控えたい 25.0 30.0 20% 21.4 33.3 41.7 30.0 40% 該当なし 60% 25.0 30.0 80% 100% 全体的な傾向 「 正 社 員 ( 新 卒 採 用 )」 に 関 し ては 、「 積 極 的 に 採 用 し た い 」「 出 来 れ ば 採用したい」との回答が多く、本格的な業務拡大を見込んでいる事業所 が 多 い と 考 え ら れ る 。 ま た 、「 契約 社 員 ・ パ ー ト 等 」 を 「 出 来 れ ば 採 用 し たい」と考えている事業 所 も多いこ とがわかる 。 業務の拡大を見込んでいるが、長期的な安定雇用には負担を感じてお り 、「 契 約 社 員 ・ パ ー ト 等 」 あ るい は 「 業 務 請 負 等 」 の 比 較 的 短 期 の 雇 用 形態を検討する事業所も 少 なからず みられる。 中途採用の動向 ま た 、 正 社員 の 中 途 採 用 に 関 し て は 、「 積 極 的 に 採 用 し た い 」 と の 意 見 はみられず、他の区分に比べて採用意欲はかなり低いといえる。この原 因としては、労働市場に必要なレベルの人材がいない、正社員としての 必要性がない、求人側と求職側との間で労働条件等のギャップが大きく 労働市場が成立しないな ど 様々な要 因が考えら れる。 しかし実際には、生産工程における作業者を中心とした県内労働市場 においては、比較的高度な能力を持った労働者はあまり必要とされてい ない可能性が高いと考え られる 。 -39- ②学歴等別にみた 場合 a)学歴等別の採用計画 ( 平成 15 年4月 ∼ 16 年3月) 学歴等別の採用計画(平成15年4月∼16年3月) 49 大学・大学院 高専 2 短大・専門学校 0 職能開発校 0 高校 143 中途採用 92 0 50 100 150 (人) 注)新卒採用については学歴別、中途採用に関しては学歴を問わずに回答。 新卒採用の場合 新卒者に限定して学歴等別にみた場合、採用予定人数は「高校生」が 圧倒的に多い結果となっ た 。 回答 事 業 所の 偏 り に よる 点 も 考 慮す る 必 要 はあ る が 、“組立 加 工 を 行な う事 業 所”(回答 事 業所 は すべ て県 内 に 本 社が あ る ) を 中心 に 、 生 産工 程 で の 主 要 な 作 業 者 と し て 高 校 生 へ の 需 要 が 高 い と い え る 。「 大 学 ・ 大 学 院」などを指定した事業所は、それぞれ1∼2名程度の採用を予 定 し て いるが、あまり事業所の 性 格に左右 されない結 果となった 。 中途採用の場合 中 途 採 用 (「 正 社 員 」「 契 約 社 員 ・ パ ー ト 等 」「 業 務 請 負 等 」) に 関 し て は 、 業 種 的 に は “組 立 加 工 を 行 な う 事 業 所 ”並 び に “そ の 他 の 事 業 所 ” にお い て は積 極的 な 採用 計 画が みら れ る 一 方で 、“原 材 料・ 必 要 部 材等 を 製 造 す る 事 業 所 ”に お い て は 採 用 予 定 が な か っ た 。 作 業 内 容 が 人 手 に 頼 る 要 素 が 高 い “組 立 加 工 を 行 な う 事 業 所 ”に お い て 、 中 途 採 用 に よ る 労 働力の確保はその容易さ並びにコストの面などから、必要不可欠な手段 として認識されていると い える。 -40- b)学歴等別の採用方針 ( 平成 16 年4月 以 降 ) 学歴等別の採用方針(平成16年4月以降) 積極的に採用したい 大学・大学院 (n=10) 出来れば採用したい 20.0 20.0 10.0 高専 (n=10) 短大・専門学校 (n=10) 30.0 30.0 職業能力開発校 (n=8) 中途採用 (n=10) 10.0 0% 30.0 30.0 30.0 30.0 50.0 35.7 37.5 28.6 30.0 14.3 30.0 20% 40% 該当なし 30.0 40.0 12.5 高校 (n=14) 極力採用を控えたい 21.4 30.0 60% 80% 100% 学 歴 等 別 に み た 場 合 、「 高 校 」 に 関 し て は 他 の 項 目 と 比 べ て 採 用 に 積極 的 な事業所が多いことがわかる。一般的に産業が拡大する過程では、機械設 備を中心とした生産形態においては増産時にそれほど人員の増加を必要と しないが、組立加工等人手を必要する部門においては生産能力の拡大はそ のまま人員の増加に繋が る ことが多 い。 こ の こ と か ら も “県 内 に 本 社 の あ る 事 業 所 ”を 中 心 に 、 組 立 加 工 や 生 産 現場に携わる事業所においては、高校生が比較的豊富で安価な労働力とし て期待されているためと 考 えられる。 -41- ③卒業学部・学科 別にみ た場合 a)卒業学部・学科別の 採 用計画( 平成 15 年4月∼16 年3月) 卒業学部・学科別の採用計画(平成15年4月∼16年3月) 新卒採用 中途採用 62 機械系 電気系 23 21 電子系 5 生物・化学系 その他の理工系 3 上記以外の専門学科 0 総合学科(普通科等) 22 学部・学科は問わない 58 92 (人) 0 20 40 60 80 100 120 140 160 新卒採用の場合 採用対象として事業所が注目している学部・学科は「機械系」が最も 多い結果となった。ただし、これは特定の事業所における数値がかなり 大きかったことも関係しており、他の項目との格差をそのまま受け入れ ると実際の傾向とはやや差が出る可能性がある。しかし、採用方針をみ ても「機械系」に対する採用意欲は高く、基本的に一番ニーズが高いと いうことは間違いなさそ う である。 次に 多か ったの は 、「学 部・ 学 科は問わ な い」 で ある 。一 般 事 務職 採用 のた めに 「総 合学 科 (普 通 科 等)」 を指 定する 場 合な どを 除 くと 、基本 的 にこの2つの項目にあまり違いはないといえる。従って就業分野はある 程度限定される可能性はあるものの、FPD関連の業界での就職を目指 すにあたって、必ずしも理系の専門分野を習得している必要はないとい える。 「電 気系 」「電 子 系」も 注目 さ れて おり 、 エレ ク トロ ニク ス 産 業で ある ことを考えると当然の結 果 であると いえる。 -42- 中途採用の場合 中途採用の場合、特定の学部・学科を必要とする回答はなく、知識で はなく経験を重視して採用をする傾向にあると考えられる。自由記入で も 、 中 途 採 用 に あ た っ て は “プ ラ ス ア ル フ ァ の 技 術 を 持 っ た 人 の み ”を 採用するなどの指摘がみ ら れた。 -43- b)卒業学部・学科別の 採 用方針( 平成 16 年4月以 降 ) 卒業学部・学科別の採用方針(平成16年4月以降) 積極的に採用したい 機械系 (n=14) 出来れば採用したい 35.7 電気系 (n=15) 13.3 電子系 (n=13) 15.4 生物・化学系 (n=10) 28.6 11.1 上記以外の専門学科 (n=9) 11.1 総合学科(普通科等) (n=11) 9.1 学部・学科は問わない (n=8) 0% 13.3 23.1 30.0 30.8 50.0 33.3 44.4 55.6 27.3 12.5 33.3 27.3 36.4 37.5 20% 14.3 26.7 30.8 11.1 該当なし 21.4 46.7 20.0 その他の理工系 (n=9) 極力採用を控えたい 50.0 40% 60% 80% 100% “F P D 産 業 ”に 対 す る 一 般 的 な イ メ ー ジ か ら は 、 必 要 と さ れ る 卒 業 学 部 ・ 学 科 は “電 気 系 ”あ る い は “電 子 系 ”と い っ た 印 象 が 強 い が 、 実 際 に は機械系に関して「積極的に採用したい」との回答が多かった。これは、 原材料や必要部材を製造 す る事業所 において、自社の生産 設 備の研究 開発、 改良、保守・運営管理などの分野で専門に担当する人材を必要とする ケ ー スがあると考えられる。 また、機械系は組立加工を中心とする事業所にとっても、部品の実装用 機械(基板等に部品を自動的に取り付ける機械)のメンテナンスや簡単な 治工具の開発など、自社の生産能力を高めるため、有益な人材であるとの 判断が働いていると考え ら れる。 ヒアリングでも、機械に関しては極力自社内で対応できる人材を持ちた い と の 考 えが よ く 聞 かれ た 。 現 場 の 機 械 は 電気 ・電 子 部品 が 組 み 込 まれ て い る も の が ほ と ん ど で 、 実 務 上 は “電 気 系 ”や “電 子 系 ”の 知 識 も 兼 ね 備 え -44- たメカトロニクス系の人 材 を要望し ていると考 えられる。 組立加工を中心とする事業所以外でも、原材料・必要部材等の生産にあ たっては必ず生産設備として機械装置が用いられていることから、機械系 (メカトロニクス系含む )に対する ニーズは強 いものがあ る と考えら れる。 ま た 、「 出 来 れ ば 採 用 し た い 」 と 考 え る 卒 業 学 部 ・ 学 科 に つ い て は 「電 気 系 」 が 多 く、 次 い で 「電 子 系 」 と な っ た 。「積 極 的 に 採用 し た い 」 と「 出 来 れ ば 採 用 し た い 」 を あ わ せ た 採 用 に 前 向 き な 回 答 で み る と 、「 機 械 系 」「 電 気系」「電子系」の工業 系学部に人 気が集中し ている 。 -45- (4)職種別に採用対象 と する学歴 ・雇用形態 について 職種別にみた採用対象( 概 略) 職種別の採用対象(概略) 大学等 生産工程 (n=28) 7.1 高校 42.9 50.0 専門・技術職 (n=32) 62.5 管理職 (n=24) 62.5 その他の職 (n=29) (複数回答) 12.5 20% 25.0 16.7 44.8 0% 中途採用 24.1 40% 60% 20.8 31.0 80% 100% 注)大学等には「大学院・大学、高専、短大・専門学校、職業能力開発校」を含 み 、高 校 は「 高 校 」の み 、中 途 採 用 に は「 正 社 員 、パ ー ト ・アル バ イ ト 、契 約 社 員 」 を含む。なお、管理職には将来の管理職(候補)としての意味合いも含まれる。 職種別にみた採用対象の 概 略は次の とおりであ る。 “生 産 工 程”は 「 中 途採 用 ( ※)」 と 「 高 校 」 で 大 部 分 を 占 め 、“専 門・技 術職”と“管 理職”は「大学等」が 過半数を占 めた。その 他 は「大学 等」「中 途採 用」「高 校」 の順と な って いる が、 いずれ か に特 化し た 希 望はみられな い。 ※) 中 途 採 用 : ハ ロ ー ワ ー ク へ の 求 人 登 録 や 各 事 業 所 の ホ ー ム ペ ー ジ の 採 用情報などをみると、中途採用の正社員に対するニーズは比較的多いと考 えられる。しかし実際には事業所側のニーズと求職者側のニーズには給料 や労働時間などの面で隔たりがあり、うまくマッチングできていない可能 性が高い。 -46- ①生産工程 (複数回答) 5.9 0% 21.4 54.6 35.3 40% 17.9 10.7 18.2 23.5 20% 契中 約途 社採 員用 中 途 採 ト 用 パ 9.1 23.5 60% 80% ︶ 上記以外の 採用対象 (n=17) 9.1 ︵ 主たる採用対象 (n=11) 42.9 中 正 途 社 採 員 用 ︶ 合計 (n=28) 3.6 3.6 高 校 ︵ ー 高 専 職 開 業 発 能 校 力 ︶ 大大 学学 院 ・ 専 短 門 大 学 ・ 校 ︵ 生産工程における採用対象 9.1 11.8 100% 注 )“上 記 以 外 の 採 用 対 象 ”と は 、“主 た る 採 用 対 象 ”以 外 の 採 用 対 象 を 指 す 。 生 産 工 程 に お い て は 、「 中 途 採 用 」・「 高 校 」 が 圧 倒 的 に 多 い 。“主 た る 採 用対 象”とし て は 「高校 」 が 最 も多 く、 次 いで 「 中 途 採用 ( 契約社員)」と なっている。 “上 記 以 外 の 採 用 対 象 ”に つ い て は 正 社 員 ・ 契 約 社 員 ・ パ ー ト 等 を あ わ せた「中途採用」が「高 校 」を上回 る。 全 体 で は 、採用 対 象 の 中 心 は 「 高校 」 に あ る と 思 わ れ るが 、「高 校」の 定 期採用の みでは不 十分で あ り、「中途採用 」に も 大き く依 存 してい ると 考 え られる。 実際 には 離職 者 (※)や 受 注量 の増 減 など との 兼 ね合 いに よ り、「中途 採 用」を用いて労働力の調 整 を図って いるものと 考えられる 。いずれに せよ、 比較的低コストでの労働 力 確保に重 点が置かれ ている。 ※) 離 職 者 : ヒ ア リ ン グ で も 、 離 職 率 の 高 さ を 問 題 視 し て い る 事 業 所 が 少 なくない。新卒を採用したものの、ある程度の経験を積んだり、技術や知 識を習得したりするまでに辞めてしまう確率が高まっている。その結果、 事業所としては育成に時間がかかる新卒の採用から、業務請負等への依頼 など必要に応じて比較的簡単に労働力を確保できる方法を選択する傾向に ある。 -47- ②専門・技術職 25.0 0% 25.0 15.0 20% 3.1 12.5 15.0 40% 9.4 16.7 10.0 60% 契中 約途 社採 員用 中 途 採 ト 用 パ 15.0 80% ︶ (複数回答) 9.4 41.7 上記以外の 採用対象 (n=20) 高 校 ︵ 主たる採用対象 (n=12) 18.8 中 正 途 社 採 員 用 ︶ 31.3 合計 (n=32) ︵ ー 高 専 職 開 業 発 能 校 力 ︶ 大大 学学 院・ 専 短 門 大 学 ・ 校 ︵ 専門・技術職における採用対象 6.3 9.4 8.3 8.3 5.0 10.0 100% 専 門 ・技 術 職 に お い て は 、“主 た る 採 用 対 象 ”と し て は “新 卒 ”に 重 点 が 置 か れ て い る 。 そ の 中 で も 「 大 学 ・ 大 学 院 」、「 高 専 」 な ど 専 門 知 識 を 学 ん でいる学校を採用対象と す る傾向が 見られる。 “上 記 以 外 の 採 用 対 象 ”に つ い て み る と 、 対 象 は か な り 分 散 し て お り 、 事業所の理想としては専門性の高さを求めるものの、現実的には事業所の 思惑 通 り には採 用 で きて い な い 可能 性が あ ると お もわ れる 。“中 途 採用 ”に 関しては相対的に少なく、企業競争力の中核となる部門だけに採用当初か ら “新 卒 採 用 ”を 中 心 に 確 保 し 自 社 で 育 成 し て い き た い と の 思 い が 感 じ ら れる。 -48- ③管理職 上記以外の 採用対象 (n=17) (複数回答) 4.2 16.7 16.7 85.7 5.9 0% 23.5 20% 17.7 40% ︶ 主たる採用対象 (n=7) 12.5 ︵ 16.7 高 校 契中 約途 社採 員用 中 途 採 ト 用 パ ︶ 29.2 中 正 途 社 採 員 用 ︵ ー 合計 (n=24) 高 専 職 開 業 発 能 校 力 ︶ 大大 学学 院・ 専 短 門 大 学 ・ 校 ︵ 管理職における採用対象 4.2 14.3 5.9 17.7 60% 23.5 5.9 80% 100% 管理 職 に つい て は 、“主 た る 採 用対 象”は 「大 学 ・ 大 学院」 が ほ と んど を 占め て い る。“上 記 以外 の採 用 対象 ”に つ いて は 比較 的 広範 囲 に わ たっ て い るが、“中途採用”については“正 社員”を対象とする 事 業 所 も比較的 多く 、 即戦力となれる人材であ れ ば比較的 採用のチャ ンスが大き い と考えら れる。 全体的にみると、やはり 比 較的高学 歴な人材に 対象が偏っ ている。 -49- ④その他 上記以外の 採用対象 (n=19) (複数回答) 15.8 0% 3.5 24.1 10.0 5.3 20% 10.0 6.9 40% 契中 約途 社採 員用 10.3 13.8 30.0 21.1 21.1 中 途 採 ト 用 パ 5.3 60% 10.0 15.8 80% ︶ 20.0 17.2 ︵ 主たる採用対象 (n=10) 6.9 中 正 途 社 採 員 用 ︶ 17.2 高 校 ︵ ー 合計 (n=29) 高 専 職 開 業 発 能 校 力 ︶ 大大 学学 院・ 専 短 門 大 学 ・ 校 ︵ その他の職における採用対象 10.0 15.8 100% その 他 に 関し て は 、“主 た る 採 用対 象”と して は 「 高 校」が 多 く な って い る。“上記以外の採用対 象”では「中 途採用( 契約社員+パ ー ト等+正 社員)」 を対象とするものが多く、ついで「短大・専門学校」となっている。採用 対象は広範囲に分散して お り、あま り高学歴志 向は見られ な い。 -50- (5)採用対象別にみた 採 用権のあ る部署につ いて 採用対象別の採用決定権 県内本社 県内事業所 県外本社 親会社 4.8 大学・大学院 (n=21) 23.8 高専 (n=18) 22.2 52.4 5.6 19.0 50.0 22.2 短大・専門学校 (n=16) 25.0 12.5 37.5 25.0 職業能力開発校 (n=15) 25.0 12.5 37.5 25.0 高校 (n=20) 25.0 中途採用(正社員) (n=20) 25.0 中途採用(パート等) (n=19) 20.0 10.0 21.1 中途採用(契約社員) (n=18) 20.0 45.0 36.8 27.8 0% 35.0 26.3 27.8 20% 40% 20.0 15.8 27.8 60% 16.7 80% 100% 注)採用権限のある部署が親会社となっている場合は、親会社で採用した後に、 出向という形で人員配置されているケースなども含まれている。 新卒採用について 採用決定権のある部署を採用対象者別にみると、学歴が高いほど県内 事業所に採用権限がない こ とがわか る。 ま た 、「 高 専 」「 短 大 ・専 門 学 校 」「 職 業 能 力 開 発 校 」 な ど の 回 答 数 が 他 の項目に比べて少ないのは、採用対象としていない事業所があるためで ある。 生産工程の中心となる「高校」においては、他の区分に比べれば比較 的県内に採用権限がある と いえる。 -51- 中途採用について 中途採用に関しては「正社 員 」と「 正社員以外(契約社員 +パート等 )」 では傾向に大きく差がある。正社員に関しては本社採用など、県内に採 用権限がない事業所が多いが、パート等や契約社員に関しては、比較的 県内事業所で採用を決め る ことがで きるとする 回答が多く なっている 。 -52- 4.製造業の 現場におい て必要とさ れる人 材像 (1)各事業所が求める 人 材像につ いて 採用時に各事業所が求め る 基本スキ ル(能力) に ついて、20 項目の中から 優先順位の高い5項目を 選 択する形 式で実施し た。 調査は、「大学等(大学 院・大学、高専、短大・専門 学校 、職業能力開発校)」 「 高 校 」「 中 途 採 用 ( 正 社 員 、 パ ー ト ・ ア ル バ イ ト 、 契 約 社 員 )」 の 3 つ に 区 分している。 な お 、 あ ら か じ め 用 意 し た 20 の 選 択 肢 は お お よ そ 4 つ の 項 目 ( 意 欲 、 思 考能力、管理能力、対人 能 力)に分 類できるこ とから、そ の傾向をみ た。 全体像 「 積 極 性 」「 意 欲・熱 意 」「 責 任 感」 の 3 項 目は 、 最 終 学歴 ・ 採 用 形 態に か か わ ら ず 上 位 を 占 め る 共 通 項 目 ( 以 下 “共 通 3 項 目 ”と い う ) で あ っ た 。 このことから企業側から見た採用対象者に対する基本的なニーズにはほと んど差がないことがわか る 。 な お 、「 積 極 性 」「 意 欲 ・熱 意 」「 責 任 感 」 の 3 項 目 は “意 欲 ・ や る 気 ”と いった個人の基本的能力に関するもので、働くことに対する意識を非常に 重要視しているといえる 。 全 体 で 次 に 多 か っ た の は 「 協 調 性 」( 高 校 ・ 中 途 採 用 は 4 番 目 、 大 学等 で は 5 番 目 ) で 、 こ れ は “対 人 能 力 ”に 関 す る 項 目 で あ る が 、 働 く に あ た っ ては職場内での人間関係 を うまく築 いてもらい たいとの思 い が感じら れる。 生産活動や研究開発、事務等、どの業務についてもチームワークは重要で あり、人間関係が良好でない場合には、企業活動においてマイナス要因と なるためであると考えら れ る。 これら以外の項目に関しては、最終学歴・雇用形態により特色が分かれ る結果となった。 -53- 大学等について 大学等 対人能力 コミュニケーション力 積極性 16 14 12 従順性 意欲 責任感 10 協調性 (単位:社) 根気強さ 意欲・熱意 8 6 折衝力 自主性 4 2 0 指導力 情報活用力 リーダー性 専門的知識 調整力 独創・斬新性 自信 管理能力 洞察力 決断力 現状分析力 企画立案力 思考能力 全 体 像 の と こ ろ で ふ れ た “共 通 3 項 目 ”以 外 で は 、「 専 門 的 知 識 」「 企 画 立 案 力 」「 情報 活 用 力 」と い っ た “思 考 能 力 ”に 関 す る 項 目 が 比 較 的 優 先 度 が 高 く 、 次 い で 「 リ ー ダ ー 性 」「 根 気 強 さ 」「 自 主 性 」 な ど 比 較 的 広 範 囲 に わ た る 能力が求められている。 事業所としても単なる作業者としてではなく、専門知識の活用や管理者と しての能力の発揮など、企業の中核を担う人材として成長して欲しいと期待 していることがうかがえ る 。 -54- 高校について 高校 対人能力 コミュニケーション力 積極性 16 意欲 (単位:社) 根気強さ 14 従順性 責任感 12 10 協調性 意欲・熱意 8 6 折衝力 自主性 4 2 指導力 情報活用力 0 リーダー性 専門的知識 調整力 独創・斬新性 自信 管理能力 洞察力 決断力 現状分析力 企画立案力 思考能力 高 校 に つ い て は 、 大 学 等 や 中 途 採 用 に 比 べ は る か に “共 通 3 項 目 ”並 び に 「協調性」が重要視され て いること がわかる。 基礎的な項目が重要視されている背景には、近年の高卒採用者に対しての “指 示 待 ち の 姿 勢 が 強 く 、 言 わ れ た こ と し か し な い ”、“時 間 に な れ ば 途 中 で も や め て し ま い 、 業 務 の 進 捗 に 対 す る 責 任 感 が 足 り な い ”、“自 己 中 心 的 で 周 囲との協調性に欠ける”などといっ た現場の声 を反映して いると考え ら れる。 それ以外では、「根気強 さ」や「自 主性」の意 欲に関 する 項目が再び登 場し、 次いで「コミュニケーシ ョ ン能力」 が求められ ている。 大学等や中途採用に比べると意欲に関する項目に回答が集中している。人 間としての基本的能力に対する要望が強いということは、採用する側から見 るとそれだけ現状に満足 で きていな い面がある と考えられ る。 -55- 中途採用について 中途採用 対人能力 コミュニケーション力 積極性 16 14 従順性 意欲 (単位:社) 根気強さ 責任感 12 10 協調性 意欲・熱意 8 6 折衝力 自主性 4 2 0 指導力 情報活用力 リーダー性 専門的知識 調整力 独創・斬新性 自信 管理能力 洞察力 決断力 現状分析力 企画立案力 思考能力 “共 通 3 項 目 ”並 び に 「 協 調 性 」 の 次 に 「 専 門 的 知 識 」 を 求 め て お り 、 即 戦 力 と し ての ニ ー ズ が強 い こ と がう か が え る。 そ の 他 では 「 自 主 性」「 根 気 強 さ」に関する項目や「コ ミ ュニケー ション能力 」、 「リーダー性」 「指導 力」 「独 創・斬新性」といった項 目 が続いて いる。 技術者としての思考能力や管理者としての能力など、中途採用であるがゆ えに即戦力として期待される面とあわせて、より早く職場へ溶け込む能力も 必要とされていることが わ かる。 -56- 参考:採用時に必要とさ れ る 大学等 積極性 16 14 12 10 8 6 4 2 0 コミュニケーション力 従順性 基本スキル(能力)の 協調性 比較一覧(その1) 折衝力 指導力 根気強さ 責任感 意欲・熱意 自主性 情報活用力 リーダー性 専門的知識 調整力 独創・斬新性 自信 決断力 洞察力 現状分析力 企画立案力 高校 コミュニケーション力 従順性 協調性 折衝力 指導力 積極性 16 14 12 10 8 6 4 2 0 中途採用 根気強さ 責任感 協調性 意欲・熱意 折衝力 自主性 指導力 情報活用力 リーダー性 意欲・熱意 自主性 情報活用力 独創・斬新性 自信 決断力 洞察力 現状分析力 企画立案力 根気強さ 責任感 専門的知識 調整力 独創・斬新性 自信 決断力 積極性 16 14 12 10 8 6 4 2 0 リーダー性 専門的知識 調整力 コミュニケーション力 従順性 洞察力 現状分析力 企画立案力 -57- 採用時に必要とされる基本スキル(能力)の比較一覧(その2) 高校 (n=18) 中途採用 (n=18) 12 4 9 16 12 自 主 性 0% 20% (複数回答)グラフ上の数字は回答企業数 独 創 ・ 斬 新 性 現 状 分 析 力 洞 察 力 12 11 7 専 門 的 知 識 4 9 決 断 力 6 15 自 信 8 14 13 7 40% 1 調 整 力 3 1 10 9 60% -58- ケ リ 企 画 立 案 力 性 指 導 力 折 衝 力 4 5 5 ダ コ シ ミ ョ ュ ン ニ 力 ー 大学等 (n=17) 責 任 感 情 報 活 用 力 ー ー 積 極 性 根 気 強 さ 意 欲 ・ 熱 意 2 111 3 1 2 111 4 80% 協 調 性 従 順 性 11 7 12 4 2 9 3 5 4 100% (2)入社時に最低限必要なITスキル(能力)について 入社時に各事業所が最低限求めるITスキル(能力)について、代表的な 項目8つについて、必要の有無及び必要と考える場合にはそのレベルを選択 項目の中から選択する形式で実施した。 また、調査は、「大学等(大学院・大 学、高専、短大・専門学校、職業能 力 開 発 校 )」「 高 校 」「 中 途 採 用 ( 正 社 員 、 パ ー ト ・ ア ル バ イ ト 、 契 約 社 員 )」 の 3つに区分している。 調査対象としたITスキルとその概要 IT スキル パソコン ワープロ (ワードなど) 表計算 (エクセルなど) インターネット ① ② ③ ① ② ③ ① ② ③ ① ② データベース プレゼンテーション ネットワーク プログラム 具体的な操作 内容の例 基本操 作(ソフト起 動・入力・印刷等) ネットワーク(社内 LAN 等)を活用 可能 社内の指 導・管理が可 能 文章入 力・印 刷などが可能 書式設 定・フォントの活用、図 表の添付 表計算とのリンク、マクロの活用 データ入力、各 種グラフの表 示 セル・シートの書式 設定、簡 単な関 数 マクロ・分析ツールの活用、関数 付数式 情報収 集(ホームページの閲 覧等)、電 子メールの利 用 HTML ・ CGI 等でホームページ作成 アクセス等を用いて各 種データベースを構築 プレゼン用の資料 作成・プレゼン操作 社内ネットワーク(LAN など)を構築 Linux、C 言語、Java 等を利 用可 能 -59- ITスキル別にみた場合 パソコンについて ITスキル(パソコン) 基本操作(ソフト起動・入力・印刷等)が可能 ネットワーク(社内LAN等)を活用可能 社内の管理・指導が可能 大学等 (n=16) 43.8 37.5 18.8 5.9 高校 (n=17) 94.1 中途採用 (n=13) 76.9 0% 20% 40% 15.4 60% 80% 7.7 100% 「大学等」においては、基本操作は最低条件で、ネットワークの活用や 社内での管理・指導が可能なレベルまで求める企業もある。パソ コンを触 ったことがある程度では不十分であり、ネットワーク(社内LAN:社内 に おい て 複数 台 の パ ソコ ン ・ O A機 器 が ネ ッ ト ワ ー ク で 繋 が っ て いる 状 態 ) 構成ぐらいは理解できないと実務上支障をきたす可能性がある。 「高校」においては基本操作が出来れば十分との回答がほ とんどであり、 それほど高度な内容は要求されていない。 「中途採用」に関しては、大学等と高校の中間に位置する 結果となった。 基本操作が中心ではあるが、一部もう少し高度なレベルを要求する企業も あった。 -60- ワープロについて ITスキル(ワープロ) 文章入力・印刷などが可能 書式設定・フォントの活用、図表の添付等が可能 エクセルとのリンク、マクロの活用等が可能 大学等 (n=16) 31.3 37.5 31.3 5.9 高校 (n=17) 76.5 中途採用 (n=13) 17.6 61.5 0% 20% 30.8 40% 60% 80% 7.7 100% 「大学等」においては、文章の入力 等 の基礎的レベルでは 不十分であり、 書式設定や図表の添付など書類(報告書等)として一通りの体裁を整える ことができる能力が必要とされている。またそれ以上のレベルとして、エ クセルとのリンクなど他のデータを効率良く活用する能力も必要とされて いることがわかる。 「高校」においては、文章入力・印刷など基礎的な操作ができればほぼ 十分といえる。 「中途採用」に関しては、パソコンの能力と同様に高校以上大学等未満 といった要求レベルになっている。 -61- 表計算について ITスキル(表計算) データ入力、各種グラフの表示等が可能 セル・シートの書式設定、簡単な関数等の利用が可能 マクロ・分析ツールの活用、関数付数式の利用が可能 大学等 (n=15) 26.7 60.0 高校 (n=17) 13.3 76.5 中途採用 (n=12) 17.6 66.7 0% 20% 25.0 40% 60% 80% 5.9 8.3 100% 「大学等」においては、データの入力・表示といった基礎的な内容では 不十分であり、各種書式設定や簡単な関数の利用などある程度データを活 用する能力まで必要とされている。 「高校」においては、データ入力・各種グラフの表示など基礎能力を持 っていればほぼ十分であるといえる。 「中途採用」に関しては、前述同様に高校以上大学等未満といった要求 レベルになっている。 -62- インターネットについて ITスキル(インターネット) 情報収集、電子メールの利用 HTML、CGI等でホームページ作成 大学等 (n=14) 100.0 高校 (n=12) 100.0 中途採用 (n=11) 100.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% この項目に関しては、「大学等」から「高校」・「中途採用」に至るま で、情報収集(インターネットを用いて各種ホームページを検索・閲覧す るなど必要な情報を収集する能力)・電子メールの利用といった基礎 能力 があれば良いとする回答であった。 -63- その他 の項目 に つい て ITスキル(その他) データベース(アクセス等を用いて各種データベースを構築可能) プレゼンテーション(プレゼン用の資料作成・プレゼン操作が可能) ネットワーク(社内ネットワーク(LANなど)を構築) プログラム(Linux、C言語、Java等を利用可能) 大学等 (n=7) 10.0 高校 (n=2) 70.0 33.3 中途採用 (n=3) 20.0 33.3 25.0 33.3 50.0 25.0 (複数回答) 0% 20% 40% 60% 80% 100% 「 プ レ ゼ ンテ ー シ ョ ン 」 に つ い て、「 大 学 等」 に お い て 必 要 性 を 感 じ る 企 業 が比 較 的多 い 。「 ワー プ ロ ( ワー ド な ど )」 や 「 表 計 算( エ ク セ ルな ど )」 といった前述の主要アプリケーションソフトに比べれば必要性は低いもの の、かつてのOHPを中心とした資料からプロジェクターを用いて見せる 資料へのニーズが高まってきているといえる。 それ以外の項目(データベース・ネットワーク・プログラミング)につ いては、ほとんど必要性を求める意見はなかった。 -64- 最終学歴・雇用形態別にみた場合 大学等 パソコンや主要ソフトに関しては、基礎的な操作能力のみではなく、 ある程度使いこなせる能力が必要であるといえる。また、プレゼンテー ションソフト(パワーポイントなど)に関しては、ITスキルに限定さ れ る も の で は な く 、 実 務 能 力 の 1 つ と し て プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン 能 力 (“見 せ る 資 料 ”を 活 用 す る 能 力 ・ 技 術 ) の 必 要 性 が 高 ま っ て き て い る こ と の 表れといえる。 高校 各項目ともほとんど基礎的なレベルを求められており、活用・応用レ ベルに関しての要求はほとんどなく、基礎的な操作を指導する必要がな い程度には習得しておいて欲しいと考えているようである。 中途採用 各項目とも高校に比べれば求めるレベルは高いものの、大学等に求め るレベルには至らない内容の回答が多く、基本的には高校と同様である がやや中級レベルへの期待もあるといった内容となっている。 -65- (3)新規採用するにあたって必要と考える認定資格等について 新規採用にあたって、各事業所が必要と考える認定資格等について、必要 度を2つの分類(取得が必要・取得を推奨)に、必要な時期を2つの分類(入 社までに・入社後に)に分けて、自由記入方式で実施した。 また、調査は、「大学等(大学院・大 学、高専、短大・専門学校、職業能 力 開 発 校 )」「 高 校 」「 中 途 採 用 ( 正 社 員 、 パ ー ト ・ ア ル バ イ ト 、 契 約 社 員 )」 の 3つに区分している。 全般的に原材料・必要部材を供給する事業所では、資格保有の要望が多か った。一方、組立加工を中心とする事業所の場合には、技術系の作業者を除 く一般作業者に対してほとんど資格面での要求はないようである。 また、「大学等」「高校」「中途採用 」の区分による違いはほとんどみられ な かった。しかし、中途採用に関しては新卒以上に即戦力としての要求度が高 いことから、業務に関係する資格の有無が採用時に与える影響は比較的大き いとみられる。 必要性と事業所のスタンス 共通意見としては、入社後に業務上取得が必要となる資格に関して、で きれば在学中に取得しておいてもらいたいが、資格がなければ採用しない というわけではなく、あくまでもあるほうが良いというスタンスと考えら れる。 ただし、授業の延長線上として在学中に資格取得の機会があるにもかか わらず取得できていない場合には、やや評価が落ちるものとみられる(採 用時に人物的に同等であれば、今後必要な資格を保有していない人材より も、保有している人材を 採 用するのは当然の選択となる)。 共通項目 全 体 の 傾 向 と し て は 「 危 険 物 取 扱 者 」( 旧 法 で は 「 危 険 物 取 扱 主 任 者 」) を挙げる事業所が圧倒的に多い。この資格に関しては、甲種、乙種、丙種 の3種類の資格があるが、一般的に要求されているのは乙種第4類が多い。 これはガソリン・アルコール類・灯油・軽油・植物油など引火しやすい 液体を対象としたもので、各事業所においても一番必要とされやすい資格 であるといえる。取扱危険物が乙種第4類の一部に限定された丙種という -66- 資格もあり、ガソリン、灯油、軽油等の取扱だけであればこちらの資格の 方が取得は容易である。これ以外に関しては各事業所により取扱物(危険 物)が異なるため、共通性はない。 また、資 格取得 の時期に関し ては入 社後に必要とな ること から、「でき れ ば在学中に取得をして欲しい」といった意見が多い。 参考:危険物取扱者の概要 種類 甲種 乙種 丙種 取り扱える危険物 立合い権限・保安監督者 全類(第1∼6類すべて) すべて可能 取得した類のみ 取得した類のみ可能 第4種の一部のみ※ 不可 受験資格 必要 不要 不要 ※ガソリン、軽油、灯油、重油、潤滑油など パソコンについて 必要資格としての要望はあまりないが、ある程度使える能力を求める声 は圧倒的 に多い 。パソコン操作 やワー プロ(ワードな ど)・ 表計算 (エク セ ルなど)・イン ターネットなど を扱え る能力は当然必 要とい う時代 環境に な ってきており、学歴・職種を問わずに要求されているといえる。 求めるレベルに関しては、前述のITスキル(能力)に記 載。 ①入社までに取得が必要な認定資格等 自動車運転免許 主に通勤手段として必要とされている。一部には業務用(営業など) としても必要だが、職業ドライバー(物流担当など)としての資格は別 要件である。 語学力(英語等) 事業所によっては業務上必要とされる場合もある。FPD産業はグロ ーバルな産業であることから、各事業所における製品流通の過程で必要 とされる場合がある。また、技術系の職種になると文献等が英語という ケースもよくあることから、読む・書く・話すの各要素とも要求されて いる。 要求レベルに関して具体的な意見は少なく、資格として必要というよ -67- りはパソコン同様に使える能力が求められているといえるが、なかには 文系の新卒者にはTOEIC(※)で 700∼800 点を求める 企 業 もある 。 ※)TOEIC(Test of English for International Communication): 国際的なコミュニケーションの場で必要とされる英語能力を正確、客観 的に評価する世界共通のテスト。リスニング部門とリーディング部門か ら構成されており、10∼990 点のス コ アで評価する。 スコアとコミュニケーション能力の関係 ランク(点数) コミュニケーション能力の概要 A(860 点以上) Non-Native として十分なコミュニケーションができる ど ん な 状 況で も 適 切 なコ ミ ュ ニ ケー シ ョ ン がで き る 素 地 B(730 点以上) を備えている 日 常 生 活 ニー ズ を 充 足し 、 限 定 され た 範 囲 内で は 業 務 上 C(470 点以上) のコミュニケーションもできる D(220 点以上) 通常会話で最低限のコミュニケーションができる E(215 点以下) コミュニケーションができるまでに至っていない 資料:(財)国際ビジネスコミュニケーション協会 ②入社までに取得を推奨する認定資格等 電気関係の資格 工場等において所定の電力を受電する場合に必要とされる保安・監督 者等の資格。工場等の規模により異なるが、第3種電気主任技術者(電 圧 5 万ボルト未満)や第 1 種電 気 工 事 士(最大電力 500 キロワット未 満 ) などが求められている。 技能検定 労働者の有する技能を一定の基準によって検定・公証する技能の国家 検定制度。約 140 の職種があり、その中に各種 作業等の区分と技術に応 じた等級制度がある。 FPD産業に関係する分野においても電気・電子機器の組立、各種加 工・製作技術など幅広く存在するため、各事業所が求めるものには差が あると思われる。また、調査においても具体的な資格名の指摘はなかっ た。 -68- ③入社後に取得が必要な認定資格等 入社後に取得が必要な資格については、特に意見はな かった。従って、 次 の “入 社 後 に 取 得 を 推 奨 す る 認 定 資 格 等 ”を 除 く と 、 担 当 業 務 に 応 じ て 会社から個別に指示されるものと思われる。 ④入社後に取得を推奨する認定資格等 薬品関係の資格 必要部材供給メーカーの中には、化学系の材料を扱うところが多く、 「 毒 劇 物 取 扱 責 任 者 」、「 特 定 化 学 物 質 等 取 扱 責 任 者 」、「 有 機 溶 剤 取 扱 責 任 者 」、「 高 圧 ガ ス 製 造 保 安 責 任 者 」 な ど 薬 品 を 取 り 扱 う 上 で 必 要 と さ れ るものが多い。 語学力 FPD産業はグローバル産業であるが、全体的にみると韓国、台湾、 中国における生産量が非常に多いことから、前述の英語のみでなく、中 国語(特に会話能力)を求める声もある。 その他 「フォークリフトの免許」を必要とする事業所もあった。原材料を供 給する事業所を中心に重量物の移動は必須の作業であるためと考えられ る。 -69- (4)生産に関与する従業員を新規採用するにあたって、既に取得している ことが必要であると考える技術面での能力について 生産工程に関与する従業員を新規採用するにあたって、既に習得している 必要のある重点項目に関しては、次のような結果が得られた。 全体的な傾向 全体的な傾向としては、個別の製造技術に関する専 門性が重要視されて いるというよりは、比較的幅広く基礎的な知識を必要としている傾向がみ られる。 調査の前提条件が新規採用するにあたってということもあり、生産活動 における基礎的項目に関心が集まったといえる。採用の対象別にみた場合 には、おおよそ次のような傾向が見られた。 大学等は 、例え ば設計・開発 など比 較的高度な分野 に関す る要求 が高い 傾 向にある。 高校生は、高度な内容というよりは、5Sに関するも のや、ISOに関 するものなど基礎知識としての内容を要求する傾向にある。 中途採用は、特に指定がないものも多く、各事業所 において必要に応じ てといった感じが見受けられる。 生産工程順にみた場合 設計・開発工程 設計・開 発に関 し ては、「回 路 設計 」、「部 品設 計 」に 対する 関 心が 比較 的高いといえる。その中でも、「電気回路」 ・ 「電子回路」に対する関心と、 CADに対する関心が高かった。 長期化する厳しい経済環境の中で、企業間の競争力を高め独自の存在 価値を示 して い くた めに 、 設計・開 発 の能 力を 高 めて いき た いと 考える の は当然の選択肢であるといえる。 シ ャー プ から “協 力会社 も 設 計 から 生 産 ま で一 貫 業 務 が 出 来 る よ うに ” 求められているとの声もあ り 、大企業との取引関係を強化していくには、 “何 か と 融 通 の 利 く 便 利 な 取 引 先 ”と い う 存 在 か ら “企 画 ・ 提 案 力 の あ るなくてはならない取引先”へと変化していく必要があると考えられる。 また、「治工具の考案」についても比較的関心が高い結果となった。 -70- 製造 「 機 械 加 工 」「 自 動 化 」「 生 産 管 理 」 に 対 す る 関 心 が 比 較 的 高 い 。 内 容 的には個別の項目というよりは生産を極力自動化する仕組(制御システ ムやメカトロニクスなど)と、その管理方法について事業所のニーズが 高いといえる。 組立・検査 材料試 験の中 で、「 検査 デ ータ 処理」 に 対する関心が 比較 的 高か っ た。 研究・開発や生産工程においては、検査データにもとづき新たな対応策 を検討・実施していくことが繰り返されており、そのための手段として 重要視されているものと考えられる。 保全 保全に関しては「電気設備・機械設備の運用」に対する関心が高かっ た。生産活動を行なっている以上、それに関係する電気・機械設備のト ラブルはそのまま生産能力に大きく影響するため、各事業所にとっても 関心度の高い項目であるといえる。 全般的知識 全 般的 知 識 に 関 し て は、 5 S ( ※1 ) 並 び にI S O (※2)につい て 多 くの事業所が関心を寄せている。さらには生産管理手法のひとつである 「統計」や「QC手法」をあげる事業所もいくつかあった。 ヒアリ ングで も、「 生産 管 理」 は関心 の あるテ ーマ だ が実 際 に現 場 を知 ってからでないと、本当に活用するのはなかなか難しい。できれば実社 会にでて現場を知ったあとで学べる機会があると、学習の効果を発揮し やすいとの指摘もあった。 ※1 ) 5 S : 整 理 、 整 頓 、 清 掃 、 清 潔 、 躾 ( し つ け ) の 頭 文 字 を と っ た もので、生産工程における基本中の基本として昔から生産工程の現場で 提 唱 さ れ て い る 内 容 で あ る 。 企 業 に よ っ て は 、 安 全 ( Safety) あ る い は 習 慣 を 付 け 加 え て “6 S ”あ る い は “5 S + 1 S ”と し て い る と こ ろ も 多い。 ※2)ISO:国際標準化機構が定めた国際的な規格で、ISO9000 シ リーズは品質保証など品質マネジメントシステムについて、またISO -71- 14000 シ リ ー ズ は 環 境 負 荷 や 環 境 リ ス ク の 低 減 を 図 る 環 境 マ ネ ジ メ ン ト システムとして、それぞれ取得の推進が図られている。 大手企業を中心に取引条件の1つに掲げるところも多く、事業所での 関心も高いといえる。また取得を目指すことにより、事業所内での問題 意識の高まりや業務改善につながるケースも多い。 ヒアリン グにお い ては、「多 能 工」 や 「セ ル生産 」、「改善」 と いっ た項 目に関心を持っている事業所も多い。 「多能工」や「セル生産」に関しては、実際に取組をした効果が出て おり高い評価を与える事業所と、生産能力増強(生産性向上)のために 取組を検討しているが現状の従業員の意識・技術レベルでは導入は困難 とみている事業所がある。 また、「改善 」に 関 して は 常に 会社の 目 標に掲 げて お り、 自 社の 競 争力 の源泉になっているとする事業所もあった。取組を始めたのはかなり以 前であるが、契約社員やパート等にまで「改善」の重要性を指導する研 修 が あ り 、 全 員 に “改 善 意 識 ”を 浸 透 さ せ な い と 本 当 の 効 果 は 発 揮 で き ないと、会社をあげて取り組むことの重要性を強調していた。 -72- 5.人材像についての要望・問題点 大学等 “以 前 に 比 べ て 学 力 の 低 下 が み ら れ る ”、“応 用 へ の 展 開 が で き る よ う な 基 礎 学 力 が 欲 し い ”と い っ た 学 力 ・ 思 考 力 に 関 す る 要 望 が 多 く 、 学 校 に お い て しっかりと基礎学力を身につけて欲しいとの思いが感じられる。 高校 人間性に関することや、学力に関すること、働くことの意義など、各事業 所ともさまざまな分野にわたって問題を感じているといえる。 人 間 性 に 関 し て は 、“挨 拶 ”、“礼 儀 作 法 ”、“マ ナ ー ”、“社 会 性 ”な ど の キ ー ワードが多く、各事業所とも社会人として実社会に出る(企業に入る)には、 ま だ ま だ 準 備 が 不 足 し て い る と 感 じ て い る よ う で あ る 。 実 際 に “途 中 で 仕 事 を 投 げ 出 し た り 、 叱 ら れ る と 反 発 し た り す る ”な ど の 事 例 も 見 ら れ る よ う で ある。 学 力 に 関 し て は 大 学 等 と 同 じ よ う に “学 力 の 不 足 ”を 感 じ て お り 、“在 学 中 に し っ か り と 学 ん で 欲 し い ”と い う こ と や 、“高 校 に よ っ て 知 識 レ ベ ル に 格 差 がある”と感じている企業もある。 コミュニケーション能力が不足する要因として、携帯電話やパソコン、テ レビゲーム等の普及により他人と直接交流を持たなくなりつつあることや、 それに関連して、文章表現力に乏しく、伝えたいことをうまく文章(報告書 等)に出来ないという指摘もあった。 ま た、 働 くこ と の 意 義に 関 し て は、“収 入 を得 る 手 段 と し て の み で は な く 、 職場を自己実現の場として仕事に対して貪欲に取り組んで欲しい”といった、 より高い目的を持って企業に来て欲しいとの声もある。 更には現場で働くための“体力”が不足しているとの声もある。 中途採用 “即 戦 力と し て 活 躍 でき る 専 門 知 識 や 技 術 な ど の 、 プ ラス ア ル フ ァ を 期 待 ” し て い る 一 方 で 、“若 手 の 一 部 に ビ ジ ネ ス マ ナ ー が 欠 如 し て い る ”、“自主 性 ・ リ ー ダ ー シ ッ プ に 欠 け る ”、“コ ス ト 意 識 ・ 問 題 意 識 が 不 十 分 ”と い っ た 、 高 い期待値に対する現実の格差を指摘する声もある。 その他 障 害 者 の 雇 用 ( ※) に 関 し て 課 題 を 感 じ て い る と の 意 見 も あ っ た 。 雇 用 し -73- た 障 害 者 に 対 し て “い か に 適 し た 仕 事 ”を 提 供 し 、 実 務 の 上 で 企 業 に 貢 献 し てもらうことができるかといったことがそのポイントである。 ※) 障 害 者 の 雇 用 : 障 害 者 の 雇 用 の 促 進 に 関 す る 法 律 に よ り 、 一 般 的 な 民 間 企 業(常用労働者数 56 人以 上の規模 の企 業)については、1.8%の法定雇用 率 が 適用されているが、2002 年の 実雇 用率は 1.47%であった 。 参考:礼儀作法・ビジネスマナー・コミュニケーション能力等について 礼儀作法に関しては、本来学校や会社で教えるものではなく、日常生活を通 じて子供の頃から徐々に学んでいくべきものであると考えられていたが、今日 においては教育の必要もでてきている。 また、コミュニケーション能力に関しても、企業サイドでは業務上必要な自 己主張(個人のエゴを主張するのではなく、個性・能力を発揮するもの)をど んどん歓迎しているにもかかわらず、個人の側からは“出るくい は打たれる”、 “自 己 主 張 す る よ り も 横 並 び の 方 が 問 題 を 生 ま な く て 良 い ”、“文 句 を い わ な い 人 材 が 求 め ら れ て い る ”と い っ た 考 え が 強 く 残 っ て お り 、 両 者 の 間 に あ る 認 識 のずれを早急に正す必要があるといえる。 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 能 力 に つ い て は 、“自 己 表 現 ・ 意 思 疎 通 が 出 来 な い ”“何 を考えているのかわからな い”、といった点がよく指 摘される。これは自分の 考 えをうまくまとめて伝えられない点に問題がある。今の若者の日本語は、上の 世代にとっては一種の外国語であるといった声もよく聞く。また、単なる若者 言葉の使用といった点だけでは なく 、“他の者と意思 疎通をはかろうとする意 欲 がない”ようにもみうけられる。 しかし仲間内での意思疎通には何ら問題がなくても、対外的な(仲間内以外 への)意思疎通には支障がある。伝えたいことを簡潔に整理して理論整然と伝 達できないと、企業内においては業務に支障が生じることになる。 ここ数年コミュニケーション能力やビジネスマナーについての研修が増加し ているが、その背景には前述のような状況があると考えられる。また、長引く 不況にもかかわらず最近企業は研修費を増やす傾向にある。増加の主たる内容 は研修対象者の拡大や研修メニューの拡充、自己啓発費用の企業負担拡大とい った項目が上位を占めている。企業にとっても厳しい経営環境の中で業績を向 上させていく方法を常に模索しており、設備投資などモノへの投資から従業員 の質を向上させていくソフトへの投資が極めて重視される傾向にある。 -74- 研修対象についても、初期の頃には新入社員向けのものが中心であったが、 最近では中堅社員向けのものも増加しており、若手社員にとって社内における 身近な目標となるような中堅社員の育成に力を注ぐ傾向がみられる。 県としても、企業の人材育成への支援をどのように行なっていくか検討が必 要である。 -75- 6.三重県等への要望 三重県等への要望 就職セミナーや企業説明会の実施 3 各種試用制度に対する助成・支援 2 従業員の自己啓発に関する助成・支援 5 インターンシップ実施企業への助成 0 正社員への登用制度に対する助成 0 各種支援制度に関する情報案内 1 学校教育における職業教育の実施 2 専門の就職指導員の学校への配置 企業ニーズを反映した実用性の高い 授業カリキュラムの作成 社会人としての最低条件の確保 0 2 10 産学連携による人材育成 n=25 (複数回答) 2 公設試験場での研修の実施 1 0 2 4 6 8 10 12 (件) アンケートから 三重県等への要望に関しては、「社会 人としての最低条件の確保」に対す る 要望が一番多かった。アンケート調査票における自由記入やヒアリングにお いても関連する意見が多くあったことから、各事業所が一番切実に感じてい る問題であるといえる。 自由記入やヒアリングにおいては、より具体的な問題点が明らかになって いる。礼儀作法やコミュニケーション能力、ビジネスマナーなど社会人とし て当然求められるであろう最低限の常識の欠如を指摘する声が多い。ビジネ スマナーは礼儀作法やコミュニケーション能力を基礎として成り立っている ものであることから、習得にあたっては前提条件である礼儀作法等を理解し ている必要があるといえる。 次いで多かった意見は、「従業員の自 己啓発に関する助成・支援」である 。 企業競争力を向上させていくには、社内における業務の一環としての従業員 教育だけではなく、従業員が自主的に勉強をしてもらうことも必要であると 感じている。それを効率良く効果的に進めていくには、勉強の機会(情報・ 時間など)の提供や費用の(一部)負担など、何らかの形で支援が求められ ている。 -76- 一方、「インターンシップ実施企業へ の助成」などは関心が薄い結果とな っ た。しかし、一番関心が高かった「社会人としての最低条件の確保」を充足 していくには、インターンシップの実施は非常に重要な項目であると考えら れる。職場体験を通じて実際の社会を知ることは、社会に出てから必要とさ れていることを学ぶ上で絶好の機会である。 従って、実際にはまったく関心がないのではなく、受け入れる事業所側の 負担が大きいことから積極的な受入対応は困難であり、この点を解決するこ とができれば関心の高い項目に変わる可能性を秘めていると考えられる。 ヒア リ ングか ら ①各種助 成製 度に ついて 好評な 意見 ・若年 者トラ イ アル 雇用 事業 30 歳未 満の 若年者 を短期 間 、試 行的 に雇 用する 際 に一 定の奨 励 金( 最 大5万 円×3 ヶ月 )が支給 さ れ る制度 。 ・求職 者資格 取 得サ ポー ト( 事業) 助 成金 求職者 が資格 取 得の ため に民 間訓練 施 設の 実施す る 講座 を受 講し た 場 合費用 の一部 助 成( 受講 費用 の 80%相当額 で 212 千円が限度 ) が 受 け られる 制度。 対 象資 格は フォ ークリ フ ト資 格・ ク レ ーン 資格 ・大 型自 動 車免許 ・大型 特 殊免 許の なか から1 つ 選択 できる 。 不評な 意見 ・中小 企業高 度 人材 確保 助成 金ほか、仕組 ・ 利用 条 件 が わか りに くいも の 理由 それぞ れの理 由 は、 好評 なも のは仕 組 みが 簡単で 利 用方 法・ 条件 がわか り やすい ことに 尽 きる 。一 方不 評なも の はそ の裏返 し で、 制度 が複 雑でわ か り にくい といっ た こと があ げら れる。利 用可 能かど う かが わか りに くいも の は、 途中で 利用を 断 念す るケ ース もある よ うで ある。 また、 制度( 所 轄機 関) によ り相談 窓 口が 分かれ て いる こと から 、すべ て の制度 を調べ る のは 大変 で、 結果と し て最 適な条 件 の制 度が 選択 出来た か ど うかが わから な いと いっ た不 満が残 る ケー スもあ る よう であ る。 担当機 関 と -77- の相談 時に担 当 者と なか なか スムー ズ に連 絡が取 れ ない など の指 摘もあ っ た。 ②環境 県外か らの転 入 など によ り新 たな従 業 員が 増えた 場 合に おい て一 番関心 が 高 いのは 、生活 環 境に 対す るも のであ る 。通 勤時間 等 への 配慮 もあ るが、 買 物 の 場所や 病院、 学 校な どに つい ての関 心 が特 に高い 。 住環境 日常生 活にお け る買 物の 場所 や娯楽 施 設な どの充 実 度は 居住 地選 択の大 き な要素 になっ て おり 、場 合に よって は 工場 のある 地 元自 治体 には あまり 居 住 せず近 隣の都 市 的自 治体 への 居住を 好 む傾 向も見 ら れる 。 教育環 境 特に子 供のあ る 世帯 にお いて は教育 環 境に ついて の 関心が高く、教 育 水 準 の高い 地域へ の 居住 を好 む可 能性が 高 いと いえる 。 従っ て、 地域 によっ て は 長期的 な視点 で 教育 環境 の向 上を図 ら ない と、新 規 居住 者か ら選 別を受 け て しまう 可能性 が ある との 心配 の声が あ る。 参考資料:昼夜間人口比率(※)の推移(多気町とその周辺地域) 多気町の場合、1995 年のシャ ープ 三 重第一工場稼働以降、 周辺市町村か ら人が流入しているのがわかる。 昼夜間 120 人口比率(%) 多気町とその周辺市町村の昼夜間人口比率の推移 三重県 松阪市 多気町 明和町 大台町 勢和村 玉城町 度会町 110 100 90 80 70 1990年 1990 年(%) 1995年 1995 年(%) 2000年 2000 年(%) 昼 間 人 口 (人 ) 「国勢調査」より 夜 間 人 口 (人 ) 三重県 97.1 97.1 97.6 1,811,295 1,856,634 松阪市 103.2 102.2 101.4 125,502 123,727 多気町 93.1 96.1 110.4 11,987 10,859 明和町 77.6 78.5 79.6 17,747 22,300 大台町 94.4 93.1 93.6 6,862 7,332 勢和村 78.6 79.1 79.6 4,205 5,281 玉城町 93.9 96.5 97.2 13,883 14,284 度会町 80.9 77.5 77.9 7,182 9,218 ※) 昼 夜 間 人 口 比 率 : 100%を 超 え る と 昼 間 の 人 口 の 方 が 夜 間 の 人 口 よ り 多 い こ と を 表 す 人 口 の 意 味 : 昼 間 人 口 (従 業 地 ・ 通 学 地 )、 夜 間 人 口 (常 住 地 )、 人 口 は 2000 年 の 数 値 -78- Ⅳ 調査のまとめ 1.雇用の現状 変わりつつある雇用形態 成長路線にあるFPD産業ではあるが、県内に本社のある事業所(主とし て組立加工・検査業務を担当)を中心にみた場合、現状は以下のとおりであ る。 受注量増減の波は非常に大きく、企業としての収益性を考えると正社員を 中心とした従来型の長期安定雇用は非常に困難な状況になってきている。 従来の産業における雇用は、比較的安定した受注を背景に正社員を安定的 (定期的)に採用して、社内で時間をかけて人材育成することが可能であっ た。しかし長引く景気低迷や、消費動向の変化が早くなってきていることと あわせて、FPD産業は比較的歴史が浅く、またその進化のスピードも急激 で大手メーカーの生産動向の変化も大きい。その影響を受ける県内関連事業 所においても、受注量の変動が大きい状況にある。 そのような環境下において、正社員を中心とした従来型の長期 雇用では変 化への対応力が弱く、各事業所にとって問題であった。その対応として、各 事業所においては次のような動向が見られる。 動向①:主に1次下請の事業所の動向 人員構成は正社員を中心としたままで、事業所の許容範囲を超える受注 量は外注する(2次下請以降に依頼する)ことにより調整をはかる。作業 者は自社社員中心で比較的勤続年数も長いことから、作業者の質は比較的 高くまた均質であるといえる。 動向②:主に2次下請以降の事業所の動向 正社員の雇用をできるだけ抑え、契約社員・パート・業務請負等の増減 による生産能力の調整で受注量の変化に対応する。このケースには外注可 能な2次下請をあまり持っていない1次下請も含まれる。正社員以外の作 業者は短期間で入替わる場合も多く、作業者間の能力格差が生じやすい。 -79- 参考:各事業所が感じる産業界の現状 参考意見(その1) 組立加工の作業者などをみた場合、高卒などの新卒若年労働者を中 心に責任感や労働意欲あるいはコミュニケーション能力に欠ける人材 が多く、何かあるとすぐに辞めてしまう傾向が強いと感じているよう である。せっかく社員を育成しようとしても途中で辞めてしまうこと から、採用する側にも考え方の変化が見られる。かつては新卒を採用 し社内で育成するという考え方が中心であったが、最近では社会経験 のある中途採用者の方が初期育成(社会人としてのマナー・常識の習 得など)の負担が少なく、その後の技術育成にも都合がよいとの判断 で、新卒採用中心から中途採用へと重点を移していく動きもみられる。 参考意見(その2) 就労に対する意欲低下の背景には、現在の管理職世代とは大きく異 なる環境で育ってきたことが影響しているとも考えられる。モノがあ ふれる時代に育ち苦労しなくても自由にいろいろなモノを手に入れる ことができる環境や、三重県自体が比較的裕福ですぐに職につかなく ても生活に困らない土地柄であることも影響しているとの意見が多 い。その結果、求人がある割には実際の求職応募者が少なく、また、 やや保守的な土地柄から中高年を中心に正社員以外の就職スタイルを 否定的に見る傾向なども影響している可能性がある。 一 方 で 、 若 年 労 働 者 を 中 心 に “フ リ ー タ ー ”と い う 就 職 形 態 に あ こ がれるものも多く、あえて定職につかないことを目指す風潮があるこ とが就労意欲の低下に影響を与えているとの意見も多い。 参考意見(その3) 一部の事業所においては 、シャープ並びに関連企業の新工 場誕生(従 業員等の募集開始)に伴って既存の従業員(正社員だけではなく契約 社員やパート・業務請負等を含む)の流出を懸念する声がある。雇用 条件(特に金額面)や事業所としての対外的な知名度など各種労働条 件を勘案すると、新規進出工場における従業員の募集(シャープ本体 に限らず、 協力会社としてシャープあるいは関連事業所に人員を派遣するような ケースも含む)に伴い、実務経験豊富な労働者として求人側のニーズ を満たしやすい用件を兼ね備えている点を心配している。 既存労働者の上位企業へのシフトが発生した場合、一番困るのは経 験豊富な従業員の欠員が生じた既存事業所であり、その結果再び従業 員の育成あるいは必要人員の確保を余儀なくされることになる。実際 に想定されるような上位企業へのシフトが生じるのかどうか、はっき りとはわからないが、産業集積が進み労働市場が拡大すれば需給バラ -80- ンスの調整過程で従業員の移動が生じる可能性は十分にあると考えら れる。 参考意見(その4) 最近の若者は使いにくいとの声が多い一方で、若者の変化は時代の 流れであり嘆いてばかりではなく事実として受け入れる必要があり、 経営者はいかにそれに対応していくかが求められているとの意見もあ る。 他県の例ではあるが、現代の若者をうまく活用している例を紹介す る。 <栃木県にある“アイ電子工業”の例> 同社は携帯電話の組立などを請け負うEMS(電子機器の製造受 託サービス)会社である。当然受注量の変動が大きく、それに応じ た労働力の調整が必要とされる状況にあるため、若者のフリーター とリタイアしたシニア層をうまく活用している。また、業務請負に 関しては、頭数だけはそろっても派遣されてくる人は入替わりも多 く、業務の連続性がないため、なかなかスキル向上が望め ないとい う不満をもっている。 ①フリーターの活用 そこで、ウィークリーワーカー、マンスリーワーカーという制度 を独自に導入している。ウィークリーワーカー制度は1週間単位の 雇用契約で給料も1週間単位で支払うが、この1週間という期間設 定がポイントになっているようである。無職であった人が職につい たとき、通常は月給制であることから給料は当然1ヶ月先となる。 最初はいい かなと思ってはじめた仕事もイメージと異なる場合には、最初の給 料をもらうまでの1ヶ月間は我慢して働く。 この我慢の期間は雇用側も労働者側も本当は実りのない時間を過 ごすことになる。それが1週間単位であれば、お互いに無駄な時間 が短縮されることになる。また、1週間無遅刻無欠勤であれば皆勤 手当がでる。これも期間が1週間であるがゆえに勤労意欲を引き立 てる効果があるという。1ヶ月であれば挫折しやすいが、1週間で あればまだがんばりが続くという仕組みだ。その後は隔週ぐらいで 時給 10 円程度の昇給を繰り返すことにより、労働者にインセンティ ブを与えている。 2∼3ヶ月続けば仕事を続ける意欲があると判断し、マンスリー ワーカーへの昇格を持ちかける。それがうまくいけばその中から ま じめで能力のあるものを正社員に登用することにより、本人のやる 気と周囲へのPR効果も期待できる仕組みとなっている。 ②シニア層の活用 もうひとつシ ニア社員を活 用した“玄人 集団”という 組織がある 。 -81- 大手企業をリタイアした、あるいはリストラされた経験豊富なシニ ア層をパートタイマーとして雇用し、若者中心の作業場に数十人に 1人の割合で組み入れていく。若者中心の職場にベテラン社員が入 ることにより徐々に職場のルールを若者に浸透させていく。 最初は何もできないと思われていた人たちも、実はルールを教わ っていないだけで、徐々にいろいろなことを指導されていくうちに シニア層との間に師弟関係が築かれ職場が活性化していく。若者は 仕事を覚え成長することにやりがいを感じ、シニア層は若者が成長 していくことにやりがいを感じるといった良い関係が築かれていく というものである。 フリーター等に対しては現状では社会的評価が低いが、これは企業 での扱い方にも問題がある。現状では雇用の調整弁的存在であるが、 事業所によっては優秀な人材を正社員に登用しているケースもあり、 正社員以外の社員への評価・処遇が改善すれば、就職に対する考え方 も変わる可能性があると いえる。 -82- 参考意見(その5) 学校の先生に対しては、製造業の現場を知らないがゆえに、あまり 就職に関する指導がうまくできないのではないか。職場とはどうゆう ものなのか、そこには学校とはまったく異なる別のルールがあること などを、身をもって経験し生徒に伝えていかないと、いつまでたって も生徒(新卒者)は学校と社会のギャップに苦労する。生徒による職 場体験も重要ではあると考えるが、学校の先生にも製造業の現場を体 験してもらうことにより、今後の就職活動により大きな効果が期待で きるのではないだろうか。 -83- 2.雇用創出の見込み 事業所の基本方針 既存事業所の場合には、組立加工や検査など後工程を担当する事業所を中 心に、比較的人手に頼る要素が強いことから、雇用に関するニーズは強いと いえる。 ただし、この業務において必要とされているのは、正社員を安定的に長期 雇用する従来型の雇用形態ではなく、必要なときに必要なだけの人材を確保 する(人手が必要でなくなれば当然削減する)といった、どちらかといえば 短期的な雇用形態が中心となっている。FPD産業がいくら成長産業である とはいえ、厳しい経済環境の中で価格競争にさらされており、できるだけ固 定費としての人件費を抑えたいという思いがある。 当面の動向 新設される亀山工場において、関連企業として三重県内に進出してくる事 業所などでは、それぞれ1∼2百名程度の労働者を必要としている様子(最 終的にはシャープ本体の社員とあわせて合計で 1,000 名程度)である 。 当面(稼動前)は、各社とも基幹社員として現場の中核を担えるような人 材を数名から数十名程度募集している。その人材を既存事業所において養成 し、新事業所における生産現場の中核とする考えである。 生産工程における従業員については、新事業所の立ち上げを早 期に成功さ せる必要があることから、他事業所の既存社員による応援体勢を重視してい るようである。ある程度生産が軌道に乗ってくれば新卒採用の可能性も高い が、現時点では新卒採用よりも同業種あるいは関連業務における経験がある 人材を中心に採用を検討している様子である。 また、正社員としての雇用だけではなく、業務請負等としての募集も多く みられる。従って、今後中核を担う基幹社員は正社員としての雇用を中心と しながらも、それ以外の一般労働者においては基幹社員ほどには正社員とし ての雇用の機会は多くないと考えられる。 今後の動向 亀山工場については、今回新設される工場以外にも拡張スペースがあるた め、今後工場の拡大に伴い必要とされる従業員数も増加する可能性は高い。 ただし、現状以上に生産効率の向上が図られる可能性や、なるべく外部に 仕 事 を 出 さ な い “一 貫 生 産 ”プ ロ セ ス の 関 係 に よ り 、 生 産 能 力 の 増 強 を 図 る -84- 際に従業員数がそのまま増える可能性(工場が倍になれば従業員も倍になる など)は、あまり大きくないと考えられる。 三重工場に関しては、今回建設されている三重第3工場により既存工場用 地をすべて使い切ってしまうため、新たな用地を確保しない限り工場の 更 な る新設は難しい。ただし、既存工場内での生産能力増強の可能性は十分にあ る。 従って、今後は工場内部における生産能力の向上にもとなう従業員の増員、 あるいは生産量増加にともなう組立加工など下請会社の従業員増は見込まれ る。 ただし1次下請会社ではなく、コスト安定を図るため2次あるいは3次下 請会社での従業員増が中心となる可能性が高い。この結果、下位の下請事業 所になるほど、受注量の変動による人員へのしわ寄せが大きくなるという懸 念がある。 一方、原材料を供給する事業所に関しては、受注量の増加への対応は機械 設備の生産能力によるところが大きく、組立加工関係の業種ほどには従業員 数に与える影響が大きくない(あまり従業員の増員を必要としない)といえ る。 -85- 3.求められる人材像 ア ン ケ ー ト 調 査 並 び に ヒ ア リ ン グ に よ り 明 ら か に な っ た “事 業 所 が 求 め る 人材像 ”は、“仕事 に対 す る 積極的 な ( 前 向きな ) 意 欲 ・責 任感 ”が最 低 限 必 要 な 条 件 で あ り 、 そ の 必 要 条 件 を ク リ ア す れ ば “業 務 に 関 す る 知 識 や 技 術 能 力の保有”などの十分条件を満たす人材が求められることになる。 従って、まずは働くことに関しての意識づけが求められることになる。そ の上で他者と良好な人間関係を築ける協調性や、そのために不可欠なコミュ ニケーション能力などが求められる。そういう面ではスポーツに限らず何か に打ち込んでいた人に対する評価はかなり高い。目標を持ってそれに向かっ て努力する過程で、いろいろなことを学んでいる点が評価されているといえ る。 新卒を中心にみた場合、各事業所においてはそれぞれ異なる業務知識が求 められている。従って学校などに対して標準的な業務知識を持った人材の育 成を求めているというよりは、様々な技術や業務知識などを学ぶための能力 を有する人材の育成を期待しているといえる。その能力さえ身につけてもら えれば、あとは各事業所において十分対応が可能ということである。 組立加 工や検 査工程 を中心 とした事業所 におい ては、“まじ めにこ つこつ 業 務 を こ な す ”タ イ プ の 人 材 が 求 め ら れ て い る 。 具 体 的 に は 、 組 立 加 工 で は そ の正確さや速さが要求されている。また、検査工程においては根気強さを大 前 提 に 、“目 の 良 い 人 ( ※)”が 求 め ら れ て い る 。 液 晶 デ ィ ス プ レ イ の 検 査 工 程 にお い ては 、“表 示ム ラ ”や“ド ッ ト 欠 け”と い っ た 非 常 に 細 か な問 題 点 の チェック機能が要求されている。現状における機械を用いた自動検査は、総 合的に人間の目によるチェック能力を上回るレベルには達しておらず、まだ まだ人手に頼る要素が多くなっている。 ※) 目 の 良 い 人 : こ の 表 現 に は 当 然 “視 力 の 良 い 人 ”と い う 意 味 で 、 細 か い ものをしっかり見ることが出来る能力が求められる。しかしそれ以外にも、 わずかな違いを見抜く注意力といった要素も含まれる。 ま た、“目の 良 い 人 ”や “ま じ めで こ つ こ つ”と い っ た 要素 に 加 え 、交 代 勤 務 が 多 い こ と か ら “体 力 的 な 要 素 ”も 要 求 さ れ る 。 一 方 、 業 務 に お い て は あ まり高度な知識は要求されない。どちらかといえば高度な知識よりも組立業 -86- 務における処理能力や検査工程における適性などの方が重要視されていると いえる。 各事業所においては各人の適性とは別に、労働力の総数確保にも重点が置 かれている。 業務内容としては労働集約的要素が大きいため、とりあえず人手が必要と 感じる事業所も多い。しかもその確保にあたっては正社員としてだけでなく、 契約社員やパート等あるいは業務請負等への依存度が近年特に高まりつつあ る。 正社員として雇用した場合、一人前の戦力として育つまでに時間がかかる ことや、その途中での離職率が高いこと(その結果として人材育成に費やし た努力が無駄になってしまうこと)などが、現時点で事業所に求められてい る変動が大きい受注量への臨機応変な対応とマッチしていないからである。 その結果、業務経験のある人材が比較的多い業務請負等への依存度が高ま っている。業務請負等の契約に関しては一般的に試用期間があり、当初の募 集条件をクリアした人材の中でも実務的に不適切な人材については交代の請 求が可能 である 。このことは 新卒採 用の場 合と大 きく異なる点 であり 、“業 務 経 験 者 が 多 い ”、“合 わ な い 人 材 は 交 代 可 能 ”、“必 要 な 時 期 だ け 必 要 な 人 員 の 確保が可能”といった利用する側のメリットがある。 上記のような状況を勘案すると、事業所は高度な知識・技能を持った労働 者よりも、就労意欲が高く責任感があり、安定した戦力となりえる人材を求 めていると考えられる。社会人としての基礎ができていれば、その後の人材 育成は各事業所で十分対応可能であると考えているといえる。 学校での学習内容は、基礎的な知識が把握できていれば十分であるとの意 見が多く、どちらかといえば知識面よりも現場での対応能力(状況に応じた 判断力や応用能力)に重点が置かれている。従って高校生を中心とした若年 新卒者に求めるものは、技術レベルでは特に難しいものはなく、一社 会人と しての人間性が極めて重要であると考えられる。 しかし、学習内容に関して何ら求めていないのではなく、社会人としての 基礎条件を満たした上で、はじめて技術的な内容の要求が生じてくるものと 考えられる。 従って、事業所が本当に求めているものは、何を学ぶかが重要なのではな く、物事の概要把握とともに考え方を学ぶこと(学んだ考え方を有効に活用 -87- できるようにすること)が重要になってくる。 トヨタの“改善 (カ イゼン )”に代表 され るよう な、 現 状を 打破 し 改善 し て 行くことにより企業としての力を向上させることが必要とされている。 そ れ を支えているものが現状を認識する能力とともに、どうすればよくできるか といった改善を考え出す発想力が求められているといえる。 “モ ノづくりが 大好 きな人 ”(モノづ くり に打ち 込め る人、 他の こ とに は 目 もくれなくなるような人)がいないと本当に良いものは出来ない。また自社 の技術力向上を図る上でも必要不可欠である。 各事 業 所 が本 当 に 必 要 と し て い るの は 、“モ ノづ く り が 大 好き な 人 ”。すべ て の 想いを まとめ る と、 この 一言 に尽き る と思 われる 。 -88-