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教育用電子計算機システムの更新について 濱田幸弘 明石工業高等専門学校 電気情報工学科 概要 本稿では、平成 20 年 2 月に更新した明石高専情報処理教育センターの教育用電 子計算機システムについて報告する。はじめに明石高専におけるサーバ、ネットワー ク機器、クライアント PC の更新の仕方について述べる。次に教育用電子計算機シ ステムの構成を述べ、ハードウェアとソフトウェアについて述べる。そして、ソフト ウェアの導入方法を紹介し、システムの運用について述べる。新システムの特徴は主 要サーバとクライアント PC 間を 1000BASE-T で接続したこと、クライアント PC を Linux/Vista のデュアルブートと Linux/XP の 2 タイプにしたこと、すべてのク ライアントに MS Office を導入したことなどである。 1 はじめに の機器は不定の周期で買取りにより更新しているが、 教育用電子計算機システムの更新時にリース契約の 明石高専ではサーバ群を学内全体向けのものと情 クライアント PC をいくつか置くことにした。それ 報処理教育センター内のものとに分類して、それぞ らには演習室 1 または演習室 2 のクライアント PC れ買取りにより 5 年または 6 年の周期で更新してい と同じソフトウェアが導入されており、授業で演習 る。学内全体向けのものが更新されたのは平成 19 年 室が使用されているときなど重宝である。 3 月で、情報処理教育センター内のものは平成 17 年 3 月である。 ネットワーク機器も学内全体向けのものと情報処 理教育センター内のものとに分類される。学内全体 向けのものは買取りにより平成 14 年 3 月に更新され 2 システムの構成 教育用電子計算機システムの構成は次の通りで ある。 た。明石高専ではそれを 10 年の周期で更新する予定 である。情報処理教育センター内のネットワーク機 • クライアント PC 器はさらに演習室内 LAN とそれ以外に分類される。 • モノクロレーザープリンタ 6台 • カラーレーザープリンタ 2台 用電子計算機システムの構成要素である)、後者は不 定の周期で買取りにより更新される。 • 日本語版 Microsoft Windows Vista Business 前者は 4 年の周期でリース契約により更新され (教育 情報処理教育センターには 1 クラスの授業が行え る演習室が 2 つ、演習室 1 と演習室 2 がある。2 つの 演習室のクライアント PC、プリンタ、演習室内 LAN が教育用電子計算機システムであり、それをリース 契約により 4 年の周期で更新している。 Edition 110 台 55 セット • 日本語版 Microsoft Windows XP Professional Edition 55 セット • 日本語版 Microsoft Office Standard 2007 110 セット 2 つの演習室に加えて、情報処理教育センターには 学生が自由に利用できる自習室と準備室、教職員が • 日本語版 Adobe Illustrator CS3 利用する事務室がある。自習室、準備室、事務室に • 日本語版 Adobe Photoshop Elements 5.0 Win- もクライアント PC とプリンタなどがある。これら dows 80 セット 75 セット • 日本語版 Adobe Acrobat 8 Standard 3 4567 75 セット 16 • 演習室内 LAN – 16 ポートスイッチングハブ 10 台 16 16 1000BASE−T 100BASE−TX 16 16 !" – カテゴリー 6 ツイストペアケーブル 必要本数 #$%&(')*,+ - PC .0/ PC #$%&(')*1+ - PC .0/ PC #$%&(')*1+ - PC 20/ 8 9 : 6<;=- >?/@ PC #$%&(')*1+ - PC 20/ 8 9 : 6<;=- >0/@ PC 図 1: 演習室 1 内の LAN 3 ハードウェア クライアント PC の仕様を表 1 に示す。システム更 4 ソフトウェア 新の準備段階で各学科・一般科目から出された、ハー ドウェアよりソフトウェアを充実させてほしいとの 55 台のクライアント PC を Fedora 8/Windows Vista のデュアルブート、別の 55 台を Fedora 8/Win- 意向に沿った仕様である。 dows XP のデュアルブートとした。OS のブートロー 表 1: クライアント PC の仕様 機種 HP dc7700 SF ダは GRUB である。 CPU Core2Duo E6400 2.13GHz 示す。あげられたものはすべてフリーソフトウェア/ メモリ 1GB オープンソースである。更新されたシステムに含ま HDD SATA 160GB キーボード 日本語 109 キーボード マウス ホイール付き光学マウス ディスプレイ 17 インチ液晶ディスプレイ レーザープリンタはモノクロ、カラーとも日本語 PostScript Level 3 に対応したネットワークプリンタ で、A3 用紙が印刷可能なものである。 図 1 に演習室 1 内の LAN を示す。演習室 2 内 の LAN はクライアント PC の台数が異なるだけ である。16 ポートスイッチングハブは 100BASE- TX/1000BASE-T を自動認識するイーサネットポー トを備えるものである。ケーブルはカテゴリー 6 のツ イストペアケーブルで張り替えられた。これによりク ライアント PC と情報処理教育センター内のサーバ は 1000BASE-T で通信することができるようになっ た。ただし、モノクロプリンタ・カラープリンタと スイッチングハブの間は 100BASE-TX である。 更新された教育用電子計算機システムには含まれ ないが、すべてのクライアント PC にヘッドホンが 備えられている。ヘッドホンは数年前、情報処理教 育センター経費で購入したものである。 表 2 に Fedora 8 の代表的な応用ソフトウェアを れないので表 2 にはあげていないが、Fedora 8 には 商用ソフトウェアが 1 つだけ導入されている。それ は RICOH TrueType フォントで、情報処理教育セ ンター経費で数年前に購入したものである。 表 2: Fedora 8 の代表的な応用ソフトウェア タイピング ブラウザ メーラ PDF 文書閲覧 オフィススイート プレゼンテーション 汎用エディタ HTML エディタ 組版システム コンパイラ コンパイラ コンパイラ、仮想マシン 統合開発環境 図形描画 グラフ描画 ビットマップ画像編集 画像処理 仮想マシン構築 ネットワークシミュレータ メッセージパッシング 統計解析 データマイニング Linux の導入、更新 Typist、trr Firefox Thunderbird、Sylpheed Adobe Reader OpenOffice.org MagicPoint Emacs Bluefish LATEX、YaTeX GNU C and C++ GNU Fortran 77 Java 2 SDK Eclipse Tgif Gnuplot Gimp ImageMagick VMware Player Network Simulator 2 MPI-2 R Weka SystemImager 表 3 に Windows Vista と Windows XP の応用ソ フトウェアを示す。商用ソフトウェアが多く、予算 の都合上、すべてのソフトウェアがハードウェアと Partimage は雛形機の HDD イメージをサーバ上に 保存する。その他のクライアントは SystemRescueCd により Linux を起動し、Partimage を実行して HDD 同数とは限らない。表 3 ではそのようなソフトウェ イメージをサーバからリストアする。サーバは情報 アに印「∗」をつけている。 処理教育センターにあるもの (Red Hat Enterprise 表 3: Windows の代表的な応用ソフトウェア タイピング ブラウザ ブラウザ メーラ PDF 文書閲覧 PDF 文書作成 オフィススイート オフィススイート マルチメディアプレーヤ CAD レイ・トレーシング ビットマップ画像編集 ビットマップ画像編集 ベクトル画像編集 ベクトル画像編集 仮想マシン構築 rkTTT Internet Explorer Firefox Sylpheed Adobe Reader Adobe Acrobat∗ OpenOffice.org MS Office QuickTime JW-CAD POV-Ray Gimp Photoshop Elements∗ Inkscape Illustrator CS3∗ VMware Player Linux 5 Server) に筆者が Partimage などを導入して 準備した。 クライアント PC への導入作業の大まかな手順は 次の通りである。 1. SystemRescueCD で Linux を起動 2. Windows(演習室 1 は Vista、演習室 2 は XP) をリストア 3. MBR をリストア 4. Fedora 8 をリストア 5. GRUB(ブートローダ) をインストール 表 3 にあげた以外に Windows XP 上には A&A 6. SystemRescueCD の Linux を停止 Vector Works が導入されている。これは建築学科が 7. Windows を起動して、ホスト名、IP アドレス、 デフォルトプリンタを変更 購入したもので、情報処理教育センターのクライア ント PC に導入して授業等で利用している。 その後、Vista についてはライセンス認証を行う また、Windows Vista と Windows XP 上には Symantec AntiVirus Corporate Edition が導入され ている。これは情報化推進室が学校全体の PC を対 8. Fedora 8 を起動して、ホスト名、IP アドレス、 デフォルトプリンタを変更 象にして契約しているものである。 一般科目 (英語) が購入した ALC NetAcademy は Windows XP 上の Internet Explorer でのみ利用で きる。 6 システムの運用 更新した教育用電子計算機システムはクライアン 5 ソフトウェアの導入方法 ト PC を中心とするものでサーバは含まれていない。 1 節で述べたように、情報処理教育センター内のサー はじめに Fedora 8、Windows Vista、Windows XP バは買取りにより更新している。現在、情報処理教 のそれぞれについて雛形機を 1 台ずつ作成した。Fe- 育センターでは 6 台のサーバが稼働している。サー dora 8 は電気情報工学科の中井優一教員が、Windows バの役割を表 4 に示す。 Vista と Windows XP は筆者が雛形機を作成した。 表 4: 情報処理教育センター内のサーバ 雛形機以外のクライアント PC への導入作業は 役割 台数 情報処理教育委員会委員 8 人 (教員 7 人、職員 1 認証、ファイル、メール、WWW など 2 台 人) が SystemRescueCd[3] で起動する Linux 上の Partimage[1] を利用して行った。指定した期間の都 合のよい日時に 1 人が 12 台∼17 台について導入作 認証 (スレーブ) 1台 e-ラーニング (Moodle) 1台 業を行った。Linux の習熟度により、作業時間は半日 ALC NetAcademy 1台 から 1 日半であった。 マルチメディア配信 1台 クライアント PC のユーザ認証は LDAP により行 う。認証サーバは Windows のドメインコントローラ そのため、何人かの学生から文字化けについて質問 を受けた。 も兼ねており、Fedora 8 と Windows XP については Fedora 8 のカーネルや応用ソフトウェアの更新な 同じアカウントでログイン/ログオンすることができ どは SystemImager[2] を利用している。更新の手順 る。いずれの OS でもファイルサーバ上のユーザファ は次の通りである。はじめに 1 台のクライアント PC イルを利用することができる。Windows Vista はド について更新を行う。SystemImager はそのクライア メインに参加せず、すべての利用者が同じアカウン ント PC のファイルをディレクトリ構造もそのままに トでローカルコンピュータにログオンする。そして、 サーバ上に吸い上げる。2 回目以降の更新では、前回 必要に応じてファイルサーバにアクセスしてユーザ の更新後に変更されたファイルだけがサーバ上に吸 ファイルを読み書きする。 い上げられる。前回の更新後に削除されたファイル があればサーバ上でも削除される。次にその他のク ライアント PC で Fedora 8 を起動し、SystemImager 7 おわりに 本稿では、平成 20 年 2 月に更新した教育用電子計 算機システムについて報告した。 新システムで授業を行うようになって 3 箇月が経過 している。クライアント PC は、CPU が Pentium4 2.66GHz から Core2Duo E6400 2.13GHz に、メモ リが 512MB から 1GB に更新されたので動作が早く なっているのは確かである。しかし、最も顕著な違 いは Windows XP でドメインにログオンするときの ログオン完了までに必要な時間である。 従来のシステムのときもサーバ群は現在と同じ構 成で、Windows XP は各自のアカウントでドメイン にログオンしていた。移動プロファイルを採用して いることもあり、1 クラスの学生が一斉にドメインに ログオンすると、ログオン完了までに数分かかるこ ともあった。 新システムでは、1 ユーザがドメインにログオン するときに必要な時間と 1 クラスの学生が一斉にド の命令を 1 つ実行する。それにより変更のあったファ イルだけがサーバからダウンロードされる。また、削 除すべきファイルは削除される。ダウンロードする 際、クライアント PC のホスト名やネットワーク設 定は書き換えられない。 Windows のアンチウイルスソフトのウイルス定義 ファイル更新とスキャンは夜間 (17:00∼20:00) およ び土曜日 (10:00∼16:30) に勤務する非常勤職員 (1 名) が担当している。ウイルス定義ファイル更新とスキャ ンは 1 台ずつ行わねばならないが、比較的短時間で 終わることと中断がないため、毎日数台から 10 台に ついて更新とスキャンを行っている。 Windows Update は常勤職員 (1 名) が担当してい る。更新内容により長い時間を要するものもあり、か つ質問事項による中断がある場合があるため、授業 期間中に Windows Update を行うことは難しい。学 内に更新サーバを用意するなど、対策を検討する必 要がある。 メインにログオンするときに必要な時間に大差がな いくらいになっている。クライアント PC とサーバ 間を 1000BASE-T で接続したことが要因であろう。 新システムの Fedora 8 では Emacs の野鳥モード 参考文献 [1] “Partimage”, http://www.partimage.org/Mai n Page (YaTeX) を除いて文字コードは標準の UTF-8 が用 いられる。Emacs の設定ファイルを従来のシステム [2] “SystemImager”, http://wiki.systemimager. 用のものから変更して、新規登録ユーザに配付した。 org/index.php/Main Page しかし、従来のユーザについては設定ファイルの更 新を各自が行うように指示して、ファイルサーバ上 [3] “SystemRescueCd”, http://www.sysresccd.o で設定ファイルを一斉に更新することはしなかった。 rg/Main Page