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QCDの研究における多倍長精度演算の ニーズと応用例
QCDの研究における多倍長精度演算の ニーズと応用例 永田桂太郎*, 中村純 広島大学 情報メディア教育研究センター (*4/1 KEK理論センター) 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 Contents • はじめに. 背景 • 多倍長精度演算の例 – 高次多項式の零点 – 高次多項式の展開 – ill-conditionな固有値問題 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 2 はじめに. 背景. 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 3 はじめに. ü 宇宙初期, 高エネルギー実験(RHIC, LHC) ü 中性子星などの高密度天体の構造 ü QCDの有限温度密度下での性質の理解が重要 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 4 量子色力学(QCD) e ⇡, ⇢, · · · q QCD(色) SU(3) α O(1) クォークとグルーオン p, n, · · · QED(電荷) U(1) α 1/137 荷電粒子と光子 • QCD(量子色力学) • SU(3)非可換ゲージ理論 • クォーク 原子核 10^-15[m]スケール • 結合定数が大きい:摂動計算が利用できず数値解析が重要 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 5 格子QCD Z= Z DU [det ]N f e SG – 4次元ユークリッド空間 リンク変数 – リンク上にゲージ場(リンク変数U) クォーク場 – サイト上にクォーク場 (グラスマン数) – 連続極限でQCDを再現するように格子作用を構成する – クォーク場は積分消去され、行列式として現れる クォーク-グルーオン作用 ゲージ相互作用 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 6 格子QCD Z= Z DU [det ]N f e SG – 温度:時間方向の境界条件 – 密度 : ディラック行列の時間方向(クォークの時間方 向の伝搬)に化学ポテンシャルを導入 Z = Tre (H µN ) 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 7 格子QCD Z= Z DU [det ]N f e SG – Uの多重積分 : モンテカルロ法で実行 • フェルミオン行列式 det Δ : – 大規模行列式 – 通常(零密度)は分子動力学的手法を用いて処理し、倍精 度で計算可能. Z = Tre (H µN ) • 有限密度QCD – ボルツマン因子が複素数(符号問題: MC法の破綻) – 符号問題の回避法の1つ : カノニカル法 – 多倍長精度演算が必要 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 8 多倍長精度演算の例 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 9 高次多項式の零点 Z(µ) = N X Zn e n= N Z = Tre (H µN ) 1 0.01 0.0001 Re[Zn] • x=exp(μ/T)の多項式 • Z(mu)=0の解は相転移に関係 (Lee-Yang 零点). • N=O(10 100) • Znはnとともに指数的に減少. • 多数の零点を高精度に求める計算 が必要. nµ/T 1e-006 T/Tpc=0.93, Ns=10 T/Tpc=0.93, Ns=8 T/Tpc=1.08, Ns=10 T/Tpc=1.08, Ns=8 1e-008 1e-010 1e-012 -30 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 -20 -10 0 n 10 20 30 10 高次多項式の零点 Z(µ) = N X Zn e nµ/T n= N • アルゴリズム. – 減次法(IMSL): 1つ零点を求め、組立除法. 次数の増加 につれて精度が低下. 今の場合精度が不十分. – 留数定理を利用したアルゴリズム. • Znの値は広い範囲に渡るため, Z(mu)の高精度計算が必要. – 多倍長精度ライブラリFMlibを利用 h"p://myweb.lmu.edu/dmsmith/FMLIB.html 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 11 高次多項式の零点 • 多項式の根を求める問題 = 留数積分の0/1判定問題 Z(µ) = Y (⇠ X 1 Z0 ⇠n ) ! = Z ⇠ ⇠n • 零点の存在領域の分割を再帰的に繰り返し、全ての零点を 求めるプログラム. • 全ての零点を欲しい精度で求めることができる. • 高速化が課題 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 12 フェルミオン行列式の変形 • det D : クォークのつくる閉ループからなる • det Dを時間方向について変形する公式 – クォーク数を固定した場合の分配関数Znを求めること が出来る – 符号問題の回避に利用できる. det Q = A1 A2 · · · AN t / det(Q + eµ/T ) Y = ( n + ⇠) X = cn ⇠ n 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 13 高次多項式の展開 Y ( n + ⇠) = X cn ⇠ n n • 多項式を展開し, λnからcnを求める問題. • cnの値は広い範囲に渡る, O(1) O(e^N). 倍精度ではオー バフロー. • 各cnの有効桁数は倍精度で収まる. 必要なのは大きな指数 部. • 演算量が多い. 最大次数N=12 x Ns^3. • 高速化は必須. 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 14 高次多項式の展開 • アルゴリズム Y ( n + ⇠) = X cn ⇠ n n – van der Monde行列 – 分割統治法 • 逐次展開法(ベクトル化が容易) 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 15 高次多項式の展開 • 変数cn Y ( n + ⇠) = X cn ⇠ n n – 4倍精度演算(環境に依存) – Library(FMlib) (ベクトル化阻害要因になる) • 新しい変数の導入 a : 仮数部(倍精度 a=(0, b]) n n : 指数部 (整数) x=a⇥b b : 基数(整数、固定) – 四則演算などをInterface operatorを用いて定義 – 反復の多いループ内ではべた書きにして関数呼び出しを 抑制 – 可読性やチューニングに時間がかかる 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 16 ill-conditioned な固有値問題 Q = A1 A2 · · · ANt / ĀNt • 複素一般行列の固有値問題 • 固有値はNtに指数的に依存する(T=1/(a Nt)). • 条件数 min = (1/a)Nt max ln | | • 高速な多倍長固有値(行列)計算があるとうれしい. (Lapack やArpackなど) 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 17 まとめ • 物質や宇宙の起源の解明を目指して有限温度密度 のQCDシミュレーションを行っている. • 有限密度格子QCDでは多倍長精度演算が出現する ことがある。 – 高次多項式の零点 – 高次多項式の展開 – ill-conditionな固有値問題 – 相転移の解析で多倍長精度計算が有用. 潜在的 なニーズもあるはず. • (多項式の零点分布についても情報求む.) 多倍長精度フォーラム第3回, 工学院大学新宿校舎, 2013 March 8 18