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96年景表法改正公聴会における意見

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96年景表法改正公聴会における意見
(説明)1996年景品表示法改正に先立ち1995年に行われた大阪における公聴会での発言の原稿
です。当日は、この原稿の通りに発言しています。
景品規制の改正について
大阪市立大学の泉水でございます。景品規制に関する関係告示等の改廃について、意見を申し上げさ
せていただきます。
今回提案されております改正告示案につきましては、基本的に賛成でございます。ただ、今回改正さ
れなかった点や運用基準・今後の業種別告示の改正などにつきまして、いくつかの意見がございますの
で、申し述べさせていただきます。
ところで、学説におきましては、景品提供は価格と品質による本来の競争(いわゆる公正な競争)を
阻害し原則として違法だという考え方から、景品が提供された場合買い手は商品と景品の全体を見て購
入するかどうかを判断するのであり景品提供は原則として適法であるという考え方まで、幅広い見解が
ございます。私は、どちらかというと後者に近い考えをとっているということをあらかじめお断りしま
すが、私のような考え方でも(そしてこれは今回の改正の元になった研究会の報告書の考え方でもある
のではないかと思いますが)、私のような考え方でも、買い手の商品選択を誤らせるような過大な景品を
つけたり、とりわけ景品獲得が偶然的で不確定なために買い手の購買心理を過度にゆがめるような懸賞
をつける販売方法には一定の規制が必要であると考えております。今回の改正はこのような考え方から
も基本的に妥当なものであると考えます。なお、先に述べましたような景品付販売の問題点は、買い手
が子どもである場合に大きいと思われます。したがいまして、私のような考え方でも、子供向け商品に
つきましては大人向け商品とは違った特別な規制が必要となります。この点は現在の業種別告示におい
て配慮されていると考えられますし、今後業種別告示が改正されます際にも配慮していただきたく存じ
ます。また、買い手の判断を誤らせないためには、景品やとりわけ懸賞の内容(すなわち賞金額、当選
本数、賞金総額、当選確率、具体的な抽選方法など)が買い手に正確に開示され、かつその内容が遵守
されるということが大前提になります。この景品・懸賞の内容の開示およびその遵守という点は、運用
その他で十分配慮していただきたく存じます。
改正案の中味に入らさせていただきます。
懸賞景品の上限金額の見直しおよび総付景品の上限金額の撤廃につきましては、改正案は妥当である
と思います。もっとも、取引価格の10分の1とか、10万円、20万円、30万円といった具体的な
数字が妥当かどうかは私には判断がつきかねますが、所得水準の変化についてのみ調整しあとは従来通
りというのはひとつのやり方であろうと思います。ただ、このような数字が妥当かどうかは、市場の状
況や物価の変動をつねに観察し、今後も必要があれば見直しすることを躊躇してはならないと考えます。
なお、総付景品の上限の撤廃につきましては、過大な景品につながるという批判があるかもしれません
が、取引価格の10分の1という制限がございますから、景品額が高くなるケースでは商品本体も高額
になっているのであり、購入者が景品につられて商品を購入するということはあまり考えられないよう
に思われます。
事業者景品告示は、事業者同士の行為に関するものであり、また流通構造の変化からも、不要な規制
であり、廃止することにされたのは妥当だと考えます。
百貨店特殊指定第8項も、一般の告示さえあれば十分であると思いますので、廃止することにされた
のは妥当だと考えます。また、景表規制は購入者(すなわち消費者)を保護するためのものであって、
中小小売業者を競争から保護するためのものでないということはいうまでもありませんし、また中小小
売業者を競争から保護するような規制になってはならないと思います。
オープン懸賞につきましては、取引に付随しない懸賞であること、諸外国におきましても基本的に規
制がないことから、規制を撤廃するのも一つの方法ではないかと思います。しかし改正案のように上限
を100万円から1000万円とすることは大幅な引き上げですし、総額規制もありませんから、結局
は撤廃に近い自由化ということでこれでもよいのではないかと考えております。
次に、運用基準について少し述べさせていただきます。
まず、景品の定義等でございます。実質的に同一商品の付加や一定範囲の自他共通割引券・金額証や
見本などに景品規制を及ぼさないようにした点やメーカーが小売店へ応募用紙を設置する場合に取引付
随性を否定する点など、規制の緩和がなされておりますが、基本的に妥当な改正であると考えます。
ただ、景品の定義等につきまして、明確化が図られていますが、なおかなり複雑であると思います。
例えば、
「スーツを1着買えばもう1着が無料」とする場合、運用基準の4(5)で景品類に該当するのか、
1
6ウで景品類に該当しない「値引」となるのか、私にはすぐに判断できません。また、このような定義
をする場合、限界事例の線引きが非常に微妙にならざるをえないということは十分に理解いたしますが、
今後機会あるごとに規制の内容をだれでもわかるように示されることが、ひいては景品規制の順守にも
つながるのではないかと思います。
それから、取引価格の算定につきましては、取引価格がわからない場合には100円とするという点
が維持されました。また、店舗への入店者に対して景品を提供する場合における取引価格も原則は10
0円であります。そういたしますと、入店者に漏れなく景品を提供する場合や入店者に先着順で景品を
提供する場合、総付規制を受け、景品の上限は100円となると思われます。また、クレジットカード
の会員に新規会員を紹介してもらいその場合に景品を与えるという場合にも、取引価格は100円とな
り景品の上限は100円ということになる思われます。このような私の理解が正しいと致しますと、私
は、このような規制は厳格にすぎると考えます。入店者への景品の場合、入店者は事実上商品を購入せ
ざるをえないような特殊なケースはともかく、一般には取引付随性が低い場合が多いと思います。この
ような場合に取引付随性を肯定しかつ取引価格100円とするいうのは、懸賞の場合にはそれなりの合
理性があるのかもしれませんが、総付規制としては過剰な規制ではないかと思います。
最後に、改正後の問題ではございますが、今後見直しが行われるであろう業種別告示につきまして少
し述べさせていただきます。真偽のほどはわかりませんが、新聞業、酒類業、不動産業、銀行業などに
つきましては業界の特殊性から規制を残すべきだという意見があるということを耳にしたことがござい
ます。確かに、たとえば酒類業の場合に未成年者への影響などを配慮するということであればそれは理
解できることでございますが、しかしながら過去の業界の市場行動に過度に引きずられて過剰な規制を
残すことにならないよう注意が必要だと思います。先に述べました新聞、酒類、不動産、銀行といった
業種は過去におきまして法律上または事実上価格競争が存在しないか価格競争が相当程度制限されてい
た業種でございます。これらの業種で景品競争を厳格に規制することは、わずかに残っている価格競争
類似の競争をも消滅させることになる、しかも景品類の提供を法で制限しても値下げにはつながらない
のであり、このような業種こそ景品提供を規制することは望ましくないという考え方もありえます。こ
のような考え方が妥当かどうかはともかく、これらの業界においては価格競争が存在しないか大幅に制
限されているために、その逃げ道として過大な景品付販売が行われたという面があったことは否定でき
ないと思われます。また、景品規制は企業間の活発な競争を緩和するための規制となったり、中小企業
を大企業からの競争から隔離・保護するための規制となってはならないことはいうまでもありません。
将来のことでございますが、先に述べました業種、たとえば酒類や銀行業におきましても規制緩和がす
すみ将来価格競争が活発になりますと、価格競争という本来の姿の競争があるがゆえに、過去における
ような過大な景品競争のインセンティブは減少し、特別に厳格な景品規制を行う必要性はなくなってい
くように思われます。新聞業につきましても、再販制度のために販売店に価格設定の自由がなかったた
めに、販売店間の部数獲得のための唯一の競争手段として過去においてあのような過大な景品競争や無
料紙といった不透明で不健全な競争が起こったのだと思われます。新聞業界が景品競争や無料紙といっ
た不健全な競争から価格競争という公明正大な競争に移行するためにも、現在検討されております新聞
業における再販制度の撤廃を早い時期に実現されますよう強く希望いたします。
以上が私の意見でございます。
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