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5.ブドウの光反射マルチ栽培・垂直枝配置栽培の経営試算
平成 27 年度 広島県立総合技術研究所農業技術センター研究成果情報集 Ⅰ普及に移し得る成果 5.ブドウの光反射マルチ栽培・垂直枝配置栽培の経営試算 1.背 景とねらい ブドウ生 産 者 の収 益 性 を改 善 するために,収 量 増 加 を実 現 する光 反 射 マルチ栽 培 および垂 直 枝 配 置 栽 培 の技 術 を開 発 しました。しかし,これら 技 術 では,収 量 増 加 は 実 現 するものの,慣 行 栽 培 よりも防 草 シート,光 反 射 シートおよび棚 の改 良 などの資 材 費 が増 加 するうえ,房 数 や枝 数 が増 えるため作 業 時 間 も増 加 します。そこで,費 用 対 効 果 を明 らかにするために,これら技 術 を導 入 した場 合 の経 営 試 算 を行 いました。 2.成 果の内 容 1) 必 要 資 材 :光 反 射 マルチ栽 培 では,防 草 シート,光 反 射 シートおよびその設 置 用 資 材 ,増 加 する房 数 分 の果 実 袋 等 が新 たに必 要 となり,垂 直 枝 配 置 栽 培 では棚 の 改良 資材 等が新たに必要 となります(表 1)。一 方で,シート利 用 により,草刈 機や地 表面 管理のための資 材が不 要となります(表 2)。 2) 作 業 時 間 :光 反 射 マルチ栽 培 では,慣 行 栽 培 と比 較 し房 管 理 およびシートの交 換 等 の作 業 時 間 が増 加 する一 方 で,草 管 理 および土 壌 管 理 の作 業 時 間 は減 少 しま す(表 3)。垂 直 枝 配 置 栽 培 の作 業 時 間 は,光 反 射 マルチ栽 培 と比 較 し,枝 管 理 , 房管 理,垂直 枝 部分 の被覆の作 業時 間が増加します。 3) 経 営 試 算 :光 反 射 マルチ栽 培 は,慣 行 栽 培 と比 較 し, 経 営 費 および家 族 労 働 時 間が増 加 しますが,売 上 高 ,所 得および家 族 労 働 時間 当 たり所 得も増 加し,収 益 性 が向上します(表 4)。垂直 枝配 置栽 培は,光反 射マルチ栽培 と比較し,経 営費 およ び家 族 労 働 時 間 がさらに増 加 しますが,売 上 高 ,所 得 および家 族 労 働 時 間 当 たり 所得も増加し,収 益 性 が向上します。 3.普 及上の留意 点 この試 算 結 果 は,広 島 県 経 営 指 標 および所 内 試 験 結 果 を基 に行 った目 安 であり, 地 域 およびほ場 条 件 ごとに収 量 設 定 ,単 価 および資 材 費 は異 なるため,各 栽 培 条 件 に合わせて個別に検 討する必要 があります。 -9- (果 樹 研 究 部 ) 平成 27 年度 広島県立総合技術研究所農業技術センター研究成果情報集 Ⅰ普及に移し得る成果 4.具 体的データ 表 3 ブドウ「シャインマスカット」における各 栽 培 方 式 導 入 時 における 10a 当 たり作 業 時 間 (2014 年 ) 表 1 各 栽 培 方 式 導 入 で新 たに必 要 となる 10a 当 たりの資 材 (2014 年 ) 資材名 防草シート 光反射 マルチ 栽培 光反射シート 果実袋 半鋼線 補修テープ 果実袋 垂直枝 ポリフィルム 配置栽培 z 誘引テープ 棚資材 z 使用 使用量 単位 期間 (年) 5.0 巻 17 10.0 巻 3 9.0~15.0 束 1 1.0 巻 17 25.0 巻 3 12.0 束 1 2.0 巻 1 0.1 箱 1 1.0 式 17 光 反 射 マルチ栽 培 より増 える資 材 表 2 光 反 射 マルチ栽 培 導 入 で不 要 となる 10a 当 たりの資 材 (2014 年 ) 使用 費目 資材名 使用量 単位 期間 (年) 小農具費 草刈機 1.0 台 7 農薬費 除草剤 0.1 本 1 肥料費 樹皮堆肥 2.4 t 1 軽油 36.0 L 1 動力 ガソリン 5.0 L 1 光熱費 混合 11.0 L 1 作業内容 慣行 整枝・剪定 芽かき・新梢管理 施肥 防除 着果管理 袋かけ 除草 潅水・敷き藁 収穫・出荷 土壌管理 被覆・除去 園内管理 シート交換 12.0 z 22.0 4.5 9.0 68.0 8.0 5.0 4.4 80.0 14.0 40.0 14.0 280.9 合計 y (比率) z y 光反射 マルチ 12.0 22.0 4.5 9.0 97.9 11.5 4.4 115.2 2.8 40.0 14.0 36.0 369.3 (132) 垂直枝 配置 15.0 29.1 4.5 9.0 122.4 14.4 4.4 144.0 2.8 60.0 14.0 36.0 455.6 (162) 単 位 は時 間 /10a。 括 弧 内 数 値 は慣 行 100 とした場 合 の比 率 。 表 4 ブドウの光 反 射 マルチ栽 培 および垂 直 枝 配 置 栽 培 の経 営 試 算 (2014 年 ) 慣行経営指標z ピオーネ シャインマスカット トンネル トンネル 想定収量(kg/10a) 売上高(千円) 経営費(千円) 所得(千円) 家族労働時間(時間)x 雇用労働時間(時間) 所得/家族労働時間(円/時間) z y x 20a 1,600 2,626 1,729 898 508 53 1,765 30a 1,800 5,278 2,810 2,468 763 80 3,236 光反射マルチ栽培導入 経営体 合計y 110a 22,769 15,432 7,337 3,263 343 2,249 ピオーネ トンネル シャインマスカット トンネル 20a 30a 2,080 2,600 3,414(130) 7,624(144) 1,974(114) 3,427(122) 1,440(160) 4,196(170) 564(111) 873(114) 131(247) 235(294) 2,554(145) 4,807(149) 垂直枝配置栽培導入 経営体 合計 110a 25,903 16,295 9,608 3,428 575 2,803 シャインマスカット トンネル 経営体 合計 30a 110a 3,190 9,073(172) 27,353 4,037(144) 16,905 5,036(204) 10,448 930(122) 3,486 437(546) 777 5,413(167) 2,997 広 島 県 経 営 指 標 (認 定 農 業 者 1.1ha 型 )を用 いて試 算 。光 反 射 マルチ栽 培 導 入 および垂 直 枝 配 置 栽 培 導 入 の場 合 についても,同 指 標 を基 に収 量 ,必 要 資 材 および作 業 時 間 を修 正 して試 算 。 括 弧 内 数 値 は慣 行 100 とした場 合 の比 率 。 他 に「シャインマスカット」加 温 ハウス 20a,「ピオーネ」加 温 ハウス 20a,「ベリーA」保 温 メッシュ 10a, ベリーA トンネル 10a の収 支 を含 む。 労 働 時 間 は,作 型 ごとの所 要 労 働 時 間 に基 づき配 分 し,雇 用 労 賃 は 900 円 /時 間 とした。 - 10 -