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特定の債務

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特定の債務
不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
セミナーテーマ
確 実 で 効 率 的 な
家 賃 回 収 ・ 明 渡 し の 方 法 お し え ま す
弁 護 士 法 人
鈴 木 康 之 法 律 事 務 所
不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
講師紹介
弁護士法人
鈴 木 康 之 法 律 事 務 所
http://www.suzukiyasuyuki-lawoffice.com/
2010年4月に設立された弁護士法人。不動産管理会
社、家賃保証会社、メガバンク系カード会社等200
社の顧問を務めるとともに、携帯キャリア、通信販
売会社、金融機関、医療法人等、約250社から債権
回収業務の委託を受けている。
右記QRコードは、サイトURLとなります。
携帯、スマホなど、QRコードを使用でき
る端末でお使いください。
[講師]
弁護士 鈴 木 康 之
(Suzuki Yasuyuki)
同弁護士法人代表弁護士。慶應義塾大学経済学部卒、司法修
習55期(2002年弁護士登録)、第一東京弁護士会所属。サ
クセスホールディングス株式会社(東証1部)監査役、SB
Iライフリビング株式会社(東証マザーズ)社外取締役、株
式会社ジェイ・エス・ビー社外取締役
[講師]
弁護士 藤 田 悟 郎
(Fujita Goro)
同弁護士法人パートナー弁護士。中央大学法学部卒後、財務
省関東財務局勤務。同退職後、立教大学法科大学院卒、司法
修習61期、東京弁護士会所属。立教大学観光ADRセンター
センター員兼事務局長(現職)。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
【 前 半 テ ー マ 】
建物明渡とその実務
占有移転禁止の仮処分について
訴訟提起について
延滞家賃の請求訴訟について
強制執行手続について
[ 講 師 ]
弁護士法人 鈴木康之法律事務所
弁護士
鈴 木 康 之
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
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占有移転禁止の仮処分について
占有移転禁止の仮処分とは何か?
賃借人が建物の占有を第三者に移転することができないように、明渡訴訟を
提起前に、仮処分手続により、占有関係を固定してしまうこと。
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占有移転禁止の仮処分の必要性
家 賃 を 滞 納 して い る 賃 借 人 A の 部 屋 を 訪 ねて、 支 払 い の 催 促 を
しようとしたところ、表札には、Aの他に、Bという法人の表札
も掲げられていた。
A に 対 して 明 渡 訴 訟 を 提 起 し よ う と 思 う が 、 賃 貸 人 に 無 断 で B と
い う 法 人 も 入 居 さ せ て い る の で、 他 に 占 有 を 移 転 して し ま わ な い
だろうか?
建 物 賃 貸 人 が 賃 借 人 に 対 して 建 物 明 渡 訴 訟 を 提 起 し た 後 、 事 実 審 の 口 頭 弁 論
終 結 前 に 、 賃 借 人 が 第 三 者 に 対 して 建 物 の 占 有 を 移 転 し た 場 合 、 賃 貸 人 が
賃 借 人 に 対 して 勝 訴 判 決 を 得 た と して も 、 当 該 第 三 者 に 対 して は 、 建 物 の
強 制 執 行 を す る こ と は で き ず、 新 た に 、 当 該 第 三 者 を 相 手 に して 新 た な 建 物
明渡訴訟を提起しなくてはならなくなってしまう。
こ の よ う な 事 態 を 回 避 す る た め に 、 ① 債 務 者 に 対 して 係 争 物 の 占 有 移 転 を
禁 止 し 、 そ の 占 有 を 解 いて 執 行 官 に 引 き 渡 すべ き こ とを 命 じ ( 通 常 、 保 全 の
必 要 性 と の 関 係 で 債 務 者 に 使 用 を 許 容 す る こ とを 命 じ る よ う 申 し 立 て る 場 合
が 多 い 。 ) 、 ② 執 行 官 に 係 争 物 の 保 管 を さ せ て、 且 つ、 債 務 者 が 係 争 物 の
占 有 の 移 転 を 禁 止 さ れて い る 旨 及 び 執 行 官 が 係 争 物 を 占 有 して い る 旨 を 公 示
させることを内容とする仮処分の申し立てをすることとなる。
そ して、 占 有 移 転 禁 止 の 仮 処 分 決 定 を 得 て 保 全 執 行 を 済 ま せ て お け ば 、 本 案
訴 訟 の 口 頭 弁 論 終 結 前 に 被 告 か ら 係 争 物 の 占 有 を 取 得 し た 第 三 者 で あ って も、
そ れ が 占 有 移 転 禁 止 の 仮 処 分 執 行 後 の 承 継 取 得 で あ れ ば 、 被 告 宛 ての 判 決 に
よって強制執行ができる。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
占有移転禁止の仮処分においては、賃借人が建物の占有を他の第三者に対して
移転する行為をする恐れがある等の「保全の必要性」を疎明することが必要
とされる。
占有移転禁止の仮処分の態様は、①執行官保管・債務者使用、②執行官保管
のみ、③執行官保管・債権者使用の3類型に大別されるところ、①の賃借人
に 建 物 の 使 用 を 許 す 場 合 、 賃 借 人 の 損 害 は 比 較 的 小 さ い と 言 える の で、 保 全
の必要性はそれほど厳密に要求されないが、他方、②③の賃借人に建物の
使用を許さない場合は、賃借人に対する影響が大きい為、高度の保全の
必要性が要求されることになる。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
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担保金について
保全手続においては、債務者の被る損害を担保するために、担保金
を供託する必要があるが、この金額はどのくらいなのであろうか?
債 権 者 が 不 当 な 保 全 手 続 を 行 って き た 場 合 に 備 え 、 債 務 者 の 債 権 者 に 対 す る
損害賠償請求権の実現を優先的に保護するため、担保を立てることが発令の
要件又は保全執行実施の条件となる場合がある(民保14)。
占 有 移 転 禁 止 の 仮 処 分 に つ いて は 、 物 件 の 価 格 、 又 は 、 賃 料 を 基 準 に 担 保 金
が定められ、建物の場合には、一次的には賃料を基準にする。
そ して、 「 ① 執 行 官 保 管 ・ 債 務 者 使 用 」 よ り は 「 ② 執 行 官 保 管 の み 」 の 場 合
が、②よりは、「③執行官保管・債権者使用」の場合の方が、担保金が高額
になる。
賃借人に与える損害の程度が①∼③で順次大きくなるからである。
債務者使用
執行官保管のみ
債権者使用
賃料(月数)
居住用 3∼6ヶ月
店舗事業用 6ヶ月∼
24か月
36ヶ月
物件価格
(%)
1∼5%
10∼20%
20∼30%
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執行の効力
占有移転禁止の仮処分の効力は、当該仮処分執行後に占有を承継した者に
対 して は 、 そ の 者 が 善 意 で あ る か 悪 意 で あ る か を 問 わ ず、 そ の 効 力 が 及 ぶ
(民保62Ⅰ)。
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占有者不特定の場合
賃貸人が賃借人に対し何回も督促したものの、一向に賃料を支払わないので、
明 渡 訴 訟 の 提 起 も 視 野 に 入 れて 、 最 後 に アパ ー ト の 部 屋 ま で 督 促 を し に
行 っ た が 、 チ ャイム を 鳴 らす と 全 く 知 ら な い 人 物 が 出 て き て、 当 該 人 物
は知らないといってドアを閉じてしまった。
この場合、そもそも、占有者が不明で特定できないため、占有移転禁止の
仮処分をかけることができるのか?
民事保全の申立てにおいては、原則として、申立書に当事者の氏名又は名称及び
住所を記載することにより当事者を特定することが要求される。しかしながら、
占有者を順次入れ替える、架空の法人名や屋号で占有して占有者を分からないよう
にする等の執行妨害にあった場合、上記原則を貫くと保全を断念しなくてはなら
なくなる。
そのため、占有者不特定のままでする占有移転禁止の仮処分が平成15年度改正に
より可能となった(民保25の2)。
債務者不特定の占有移転禁止の仮処分における要件は、通常の保全で要求
される①被保全債権の存在と、②保全の必要性の他、③係争物が不動産で
あ る こ と 、 ④ 債 務 者 が 不 特 定 で あ る こ と 、 ⑤ 債 務 者 を 特 定 す る こ とを 困 難 と
する特別の事情が必要となる(民保25の2Ⅱ)。
⑤ の 要 件 に つ いて は 、 占 有 者 不 特 定 の 占 有 移 転 禁 止 の 仮 処 分 が 、 上 記 原 則 論
の 例 外 で あ る こ と か ら 厳 格 に 解 釈 さ れて お り 、 債 権 者 は こ の 点 に つ き 、 十 分
な立証を要するとされる。具体的には、当該不動産の現地調査は不可欠で
あり、外観、表札、看板、ポストの郵便物の状況、水道や電気メーター等の
ラ イ フ ラ イ ン の 確 認 に 加 えて、 居 住 者 に 対 す る 質 問 や、 管 理 人 や 近 隣 住 民 に
対する聞き取りも必要とされることが多く、これらの調査結果を陳述書や
写真撮影報告書等の形式で裁判所に提出することになる。
な お 、 1 回 の 調 査 で 居 住 者 が 不 在 な どの 場 合 に は 、 再 度 の 調 査 を 要 求 さ れ る
こともある。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
保 全 執 行 の 段 階 に お いて は 、 執 行 官 が 現 地 に 赴 き 、 係 争 物 で あ る 不 動 産 の
占 有 者 を 特 定 し 、 そ の 者 の 占 有 を 解 い て 仮 処 分 命 令 を 執 行 す る こ と に な る。
執行官は、占有者を特定する必要があるときには、当該不動産に居る者に
対 して、 当 該 不 動 産 又 は こ れ に 隣 接 す る 場 所 に お いて 質 問 し 、 又 は 、 文 書 の
提 示 を 求 め る こ と が で き ( 民 保 5 2 Ⅰ 、 民 執 1 6 8 Ⅱ ) 、 こ れ に 対 して、 債 務 者
又 は 占 有 者 が 正 当 な 理 由 な く 陳 述 せ ず、 若 し く は 文 書 の 提 示 を 拒 み 、 又 は
虚偽の陳述をし、若しくは虚偽の記載をした文書を提出した場合には、6か月
以下の懲役または50万円以下の罰金に処せられる(民保67)。
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訴訟提起について
明渡しを求めるための賃貸借契約の解除
(1)契約解除の要件
賃借人との間の賃貸借契約を解除するには、どのような要件が必要か?
① 当該建物について賃貸借契約を締結したこと
② ①の契約に基づいて、当該建物を賃借人に対して引き渡したこと
③ 賃料不払いがあったと主張する賃料債務の発生時期が経過したこと
④ 上記③の期間に発生した賃料債務の支払時期が経過したこと
⑤ 賃貸人が賃借人に対して、上記③の期間分の賃料の支払いを催告し
たこと
⑥ 催告後相当期間が経過したこと
⑦ 賃貸人が賃借人に対して、上記⑥の期間が経過した後に、賃貸借契
約を解除する旨の意思表示をしたこと
⑤の催告の意思表示については、原則として、催告に応じて翻意して履行
する場合があり得ることから、解除の意思表示に先立って催告する必要が
ありますが、実務上は、相当期間を定めて未払家賃の支払いを催告すると
同時に、相当期間内に未払家賃が支払われなかった場合には、賃貸借契約
を解除する旨の意思表示を行うとして、催告と解除の意思表示を1回で
済ませることが一般的である。
この場合は、解除の要件は、上記⑤乃至⑦に変えて、以下の⑤⑥の立証が
必要となる。
⑤賃貸人が賃借人に対して、上記③の期間分の賃料の支払いを催告
するとともに、一定期間が経過した時に賃貸借契約を解除する旨
意思表示をしたこと
⑥上記⑤の期間が経過したこと
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(2)解除の意思表示
賃貸借契約を解除する旨の意思表示の書面はどのような内容を
記載するべきなのか?また、解除通知は、内容証明郵便だけで
送付してよいのか?
意思表示は、相手方に到達したときにその効力を生じる(民97Ⅰ)。
「貴殿は平成26年7月から同年10月までの賃料合計40万円の支払いを
遅延しております。つきましては本書面到達後5日以内に未払賃料全額を
お支払い頂くとともに、期間内に支払いがない場合には、貴殿との賃貸借
契約を解除いたしますので、その旨申し添えます。」という内容の内容証明
郵便を送付する。
しかしながら、内容証明郵便の場合は、郵便局員が手渡しするので、債務者
が居留守を使ったり、再配達期間中に連絡しないなどして受領を拒絶する
ことがある。
そこで、内容証明郵便には、「なお、貴殿の受領不能に備え、同日付で普通
郵便において、同様の通知を郵送しております。」と記載して、内容証明
郵便と同内容の書面を、ポストへ直接投函してくれる特定記録郵便(郵便
を送付したことが記録され、追跡サービスにより、債務者に到達したかも
チェックできる)で郵送する。
(3)解除が否定される場合
「あなたはこれまでの再三にわたる請求にもかかわらず、賃料を
3ヶ月も支払わないので、本書面を以って、直ちに賃貸借契約を
解除する旨通知します。」という解除の意思表示は有効か?
賃貸借契約は、賃貸人と賃借人との間の信頼関係を基礎とする継続的な
契約であるため、債務不履行の程度や態様が軽微な場合には、信頼関係の
破壊がないとして、解除が否定される場合がある。
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また、無催告解除の特約の有効性について判例は、特約の効力を無条件に
認めるのではなく、賃料の滞納を理由に当該賃貸借契約を解除するにあた
り、催告をしなくとも不合理とは認められない事情(背信性を基礎づける
具体的事実)がある場合に、有効との判断をしているため、あくまで有効性
が認められるのは例外的であり、原則通り、催告の上、解除の意思表示を
しておくことが望ましい。
(4)賃借人が死亡してしまった場合
賃借人が家賃を延滞し、再三催促しても支払いがなかった。業を煮やして賃借
人の部屋に行くと、部屋から異臭が漂うため、警察を呼んで
開錠してみたところ、実は、賃借人が死亡していたことが判明した。
こ の よ う な 場 合 、 ❶ 延 滞 賃 料 を 誰 に 対 して 請 求 で き る の で あ ろ う か、
ま た 、 ❷ 債 務 不 履 行 を 理 由 に 賃 貸 借 契 約 を 解 除 す る 場 合 、 誰 に 対 して
解除通知を出せばよいだろうか?
以下の各ケースごとに、相手方が誰になるのか?
① 相続人が1名の場合
② 相続人が複数人いる場合
③ 相続人が不明である場合
① 相続が1人の場合
この場合、賃借権に基づく権利及び義務は当該相続人が包括承継する
ことになるので、相続開始前に発生していた未払賃料は、相続人に対して
請 求 す れ ば よ く 、 ま た 、 賃 料 不 払 い を 理 由 と して 賃 貸 借 契 約 を 解 除 す る
のであれば、その相続人を相手に解除を通知する。
② 相続人が複数の場合
ア
相続開始前に発生していた未払賃料については、相続分に応じて各
相続人が負担する。
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これに対して、相続後の賃料等についてはどうなるのか?
賃借人の相続人が複数の場合には、各相続人が当該賃借権を共
同相続し、賃貸借契約上の債権債務、例えば、賃料債務、賃貸
借契約終了に基づく目的物の返還義務、債務不履行による損害
賠償義務は、何れも判例上、性質上の不可分債務とされている。
従 っ て 、 相 続 開 始 後 の 賃 料 請 求 は 、 共 同 相 続 人 の 1 名 に 対 し て、
又は全員に対して、同時又は順次に全部の履行を請求できること
になる(民法430・432)。
もっとも、共同相続人が負担する賃料等の債務に不履行があった
場合については、その履行を催告し、賃貸借契約を解除する旨の
意思表示は、共同賃借人全員に対して行わなければならない
(民法544Ⅰ)。
③ 相続人不明の場合
相 続 人 の あ る こ と が 明 ら かで は な い 場 合 に は 、 相 続 財 産 は 法 人 と な り
(民法951条)、賃借権は当該相続法人に承継される。
この場合、本来であれば、相続財産法人の相続財産管理人を家庭裁判所
に申し立てをして、選任しなくてはならない(民法952条)。
し か し 、 被 相 続 人 に 積 極 財 産 が 残 さ れて い な い 場 合 に は 、 建 物 の 明 け
渡 し が 遅 れ れ ば 遅 れ る ほ ど、 賃 貸 人 の 損 害 は 拡 大 して し ま う た め 、 対 策
が必要となる。
この対策として、
ア
被告を相続財産法人として、明渡訴訟と延滞家賃の請求訴訟を
提起するとともに、受訴裁判所に相続財産管理人の特別代理人
(民訴35)の選任を申し立て、これにより訴訟手続を進めること
を前提に、相続財産法人に対する賃貸借契約を解除する旨の意思
表示については、予め特別代理人が選任されることを念頭に
おいて、訴状において、相当期間内に未払賃料を支払うように
催告するとともに、相当期間内に支払われなかった場合には
解 除 す る 旨 の 意 思 表 示 を 記 載 し 、 特 別 代 理 人 へ 訴 状 送 達 す る。
これによって、前記条件付きの解除の意思表示が到達したこと
になる。
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イ
また、入居時に、高齢者で親族等の身寄りが存在せず、相続人が見当
たらない場合については、本人の承諾をとり、予め当該賃借人に遺言
書(または死因贈与契約書)を作成してもらい、その遺言書(又は死
因贈与契約書)で当該賃借権及び室内に存する動産について、特定遺
贈(又は死因贈与)する旨を定めておくことが望ましい(包括承継
では債務も相続してしまうためリスクが大きいので避ける)。
なお、遺言による方法については厳格な形式が要求されるため、契約
書に記載する方法では効力が認められない可能性があるので、契約に
条項を挿入する形式で占有の移転を意図する場合には、死因贈与(民
法554条)を活用する方が無難と思われる。
そして、この場合、死亡によって賃貸借物件の占有及び室内に存する
動 産 に つ き 贈 与の効力が発生するので 、解除して訴訟提起することなく
処理できる。
(5)解除後の賃借人等の行動とその対処方法
賃貸人が賃料を3ヶ月も延滞したために、「書面の到達後5日以内に延滞
賃料の支払いがないときには解除する旨」の意思表示を記載した内容証
明を郵送した。
その後、賃借人が以下のような対応に出た場合、賃貸人としてはどうする
べきか?
① 連絡がないまま、5日の催告期間が経過した場合
② 解除の内容証明が賃貸人に対して「保管期間経過」又は「宛て所に
尋ねあたりません。」との理由で戻ってきてしまった場合
③ 賃借人が賃貸借契約を継続して欲しいといって賃料を持参してきた
場合 ④ 賃借人が話し合いを求めてきた場合
① 連絡がないまま、催告期間が経過した場合
そのまま解除、訴訟提起へ移行。
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② 解除通知の内容証明が賃貸人に返送されてきた場合
内 容 証 明 郵 便 と 同 時 に 普 通 郵 便 で の 解 除 通 知 を 出 して い る の で、
内 容 証 明 が 保 管 期 間 経 過 等 の 理 由 で 戻 って き た と き に は 、 恐 ら く
受領拒絶であろうと判断し、解除の意思表示が普通郵便で到達
しているとして訴訟を提起する。
宛所に尋ねあたりませんとの理由で内容証明郵便が戻ってきた場合
に は 、 再 度 、 債 務 者 の 住 民 票 を 取 り 寄 せ て 、 転 居 先 を 調 査 し、
転居先に再度解除通知を発送する。
転 居 先 宛 て の 解 除 通 知 が 、 保 管 期 間 経 過 で 戻 っ て き た 場 合 は、
解除は有効と判断し、他方、宛所に尋ねあたりませんとの理由で
戻 っ て き た 場 合 に は 、 訴 状 の 送 達 時 に 解 除 を す る こ と を 念 頭 に、
訴状の公示送達を行う。
もっとも、占有移転禁止仮処分を行うときには、賃貸借契約終了に
基づく目的物の引渡請求権を被保全債権とするために、契約を
解 除 して お く 必 要 が あ る た め 、 解 除 の 意 思 表 示 自 体 を 公 示 送 達
しておく必要がある。
③ 賃借人が賃貸借契約を継続して欲しいといって賃料を持ってきた場合
催告期間が経過する前に延滞賃料の一部だけを持参した場合どうするか?
未払賃料の一部のみを持参したとしても、原則として賃貸借契約は解除
に な る 。 受 領 して も よ い が 、 解 除 に な る 旨 を 良 く 説 明 して お く こ と
が望ましい。
④ 賃借人が話し合いを求めてきた場合
延 滞 家 賃 の 支 払 い に 関 す 合 意 や、 違 反 の 場 合 の 退 去 を 合 意 して 合 意 書
に し た と こ ろで、 明 渡 を 強 制 す る こ と は で き な い 。 違 反 の 場 合 の 明 渡
し を 強 制 す る に は 、 裁 判 所 に お いて 起 訴 前 和 解 を 成 立 さ せる 必 要 が あ る
の で 、 事 前 に 賃 借 人 の 合 意 を 取 って 起 訴 前 和 解 の 申 し 立 て 、 そ の 場 に
おいて起訴前和解を行う。そうでない場合には、幾ら合意をしたところで、
訴訟提起をして債務名義と取得しないと強制執行できないため、訴訟手続
を 中 止 して し ま う の で は な く 、 話 し 合 い と 同 時 並 行 して 訴 訟 手 続 き を
進めるべき。
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実力行使による明渡しについて
賃貸物件内の賃借人の家財道具等を賃貸人が無理やり搬出した場合、損害
賠償請求の対象となり、また、住居侵入、窃盗罪などが成立することが
原則である。
も っ と も 、 一 定 の 場 合 に は 、 例 外 的 に 違 法 と は な ら な い 場 合 も 考 えら れ る が、
許容されるかは慎重に判断するべきである。
残 置 物 と 思 わ れ る 動 産 が 数 点 し か な く と も 、 寝 具 が 残 って い る 場 合
に は 、 未 だ に 賃 借 人 の 占 有 が あ る と 認 定 さ れ る こ と が 多 い た め、
このような場合は、実力行使は避けた方が無難。
残置物等の引出の中などに貴重品が入っていないかを確認する。
残 置 物 を 全 て リス ト 化 し 、 写 真 に 撮 っ た 上 で、 で き れ ば 下 取 業 者
数社に価格を算定してもらい、1∼2ヶ月保管する。
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明渡訴訟の提起について
(1)管轄裁判所について
賃貸借契約を解除後、いよいよ訴訟を提起しようと思うが、簡易
裁判所に提起するのか、それとも地方裁判所に提起すればよいの
か?訴訟を提起する場合には、必ず弁護士に依頼しなくてはいけ
ないのか?
明 渡 訴 訟 に つ いて は 、 賃 貸 物 件 の 所 在 地 を 管 轄 す る 裁 判 所 に 提 起 す る こ と
と な る 。 訴 額 が 1 4 0 万 円 を 超 える 場 合 に は 、 地 方 裁 判 所 に 訴 訟 提 起 す る
ことになるが、訴額が140万円以下である場合には、地方裁判所にも
簡易裁判所にも訴えを提起できる。
地方裁判所においては、個人本人又は法人の代表者が出廷するか、代理人
としては弁護士が出廷しなくてはならない。
他方、簡易裁判所においては、弁護士のみならず認定司法書士でも代理人
となれるし、また、裁判所の許可を得て、本人の家族や法人の従業員も
代理人となれる。
な お 、 訴 額 の 計 算 に つ いて は 、 賃 貸 物 件 の 固 定 資 産 税 評 価 額 を 基 準 に して
算 定 す る 。 即 ち 、 賃 貸 物 件 の 固 定 資 産 税 評 価 額 の 2 分 の 1 に 対 して、 賃 貸
物 件 全 体 の 床 面 積 に 占 め る 明 渡 の 対 象 と な って い る 床 面 積 の 割 合 を か け る
ことにより算出することになる。
(2)明渡訴訟における流れについて
裁判所に訴状や証拠を提出して、訴訟提起をしたが、その後の
手続きはどうなるのか?
① 訴状が被告に送達される。
被告に訴状が送達されないと訴訟が係属しないため、裁判所が被告
の 住 所 に 訴 状 を 送 達 して も 届 か な い 場 合 に は 、 被 告 の 住 所 地 に
行 って 、 水 道 な ど の ラ イ フ ラ イ ン が 動 い て い る か 、 表 札 が あ る か、
ポストの郵便物がどのような状況になっているか等を確認し、近隣の人
に話が聞ければ被告の出入りを確認する等して、現地調査を行う。
転居先不明:公示送達
不在:書留に付する送達
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
② 第一回弁論期日
ⅰ 被告が答弁書を提出せず、出廷もしない場合
裁判所が次回期日を決め、次回期日に判決を下す。
ⅱ 被告が答弁書を提出し、期日にも出廷してきた場合
この場合、裁判所が和解を進めてくるのが一般的である。
賃借人が、延滞家賃を支払うので、これまで通り住まわせてほし
い旨を主張する場合があるが、基本的には、何度も滞納をする可
能性があるので、リスク排除のためには拒否したほうがよい。
和解期日は1∼2回程度で終了するのが通常であるので、それ以
上かかる場合には、和解を打ち切って判決にしてもらったほうが
よい。
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延滞家賃の請求訴訟について
債務者と連帯保証人の関係
(1)保証委託契約
(2)保証契約
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連帯保証人の責任の範囲
(1)物的範囲
連 帯 保 証 人 は 、 賃 貸 借 契 約 か ら 発 生 す る 賃 借 人 の 全 ての 債 務 に つ いて 責 任
を負う。
(2)時間的範囲
最初の賃貸借契約の時に連帯保証人となれば、賃貸借契約が更新された
場合(合意更新のみならず、法定更新も含む。)でも責任を負う。
例外) 賃料不払いが発生しているのに、賃貸人が連帯保証人に対して連
絡しないまま放置していた場合等
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
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強制執行手続について
明渡しの強制執行
(1)強制執行の流れ
訴 訟 提 起 を して 、 被 告 に 対 して 賃 貸 物 件 を 明 渡 せ と の 判 決 が 下 さ れ
たものの、被告は、未だに賃貸物件に居座っている。
この場合、次にどのような手続きを取るべきなのか? 強制執行は、
①強制執行の申し立て
②事前準備
③催告手続の実施
④強制執行の実施(断行)
⑤目的外動産の処理
という流れになる。
(2)事前準備
強制執行の申立てが適法に受理されれば、次に強制執行を進める上での
必要な準備を行う。具体的には、執行官が債権者に協力を求め、開錠技術
者 の 手 配 や 執 行 補 助 業 者 の 選 定 を 行 い 、 場 合 に よって は 警 察 へ の 援 助 申 請
や、 債 務 者 が 高 齢 者 で 身 寄 り が な い 場 合 等 に は 、 市 役 所 等 に 対 して 援 助
申請等を行う。
*執行補助者
明 渡 の 強 制 執 行 に お いて、 賃 借 人 の 家 財 道 具 等 を 賃 貸 物 件 か ら 搬 出 し、
保管、廃棄することを専門にしている民間業者。
(3)催告手続の実施
強 制 執 行 手 続 で は 、 必 ず 明 渡 し の 期 限 を 決 め て 賃 貸 物 件 に 出 向 き、
これらの内容を公示しなくてはならないのか?
催告は強制執行開始の要件ではないが、目的外動産が殆ど存在せずに
直ちに断行するような場合を除き、実施される。催告は、執行官が期限を
定 め た 上 で、 債 務 者 に 対 して 任 意 に 明 渡 し を す る よ う に 求 め る も の で あ り、
催告をしたときは、公示書その他の標識を掲示する方法により公示しなく
てはならないとされる(民執168の2)。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
こ の 催 告 に つ いて は 、 執 行 官 と 賃 貸 人 ( 多 く は 代 理 人 弁 護 士 ) が 日 程 を
打ち合わせて、現地に行き、賃貸人が居合わせれば開錠させ、不在であれば、
合伴又は開錠技術者により開錠することとなる。
こ の 時 に 、 執 行 補 助 者 を 同 行 さ せ、 断 行 に 際 しての 費 用 の 見 積 も り を して
もらう。
(4)強制執行の実施(断行)
強 制 執 行 を 実 施 し た 次 の ケ ース に お い て 、 賃 貸 物 件 内 に あ る 動 産
はどのように処理されるのか?
① 断行時において、債務者が在宅している場合
② 断行時において、債務者が不在の場合
目 的 物 に 対 す る 債 務 者 の 占 有 を 解 いて 債 権 者 に 引 き 渡 す た め に は 、 賃 貸
物件内にある明渡執行の目的ではない動産(目的外動産)を取り除く必要
がある。何故なら、目的外動産が賃貸物件内に存在する場合には、例え
催 告 後 断 行 時 ま で の 間 に 、 債 務 者 が 賃 貸 物 件 か ら 任 意 退 去 し た と して も、
当該賃貸物件に対する債務者の占有が継続することになるため、これを
回避する必要があるからである。
な お 、 当 該 趣 旨 か ら して、 差 押 え 禁 止 動 産 で あ って も 、 目 的 外 動 産 と して
処理することができると考えられている。
① 断行時において債務者が在宅している場合
執 行 官 は 債 務 者 に 対 して 、 建 物 か ら の 退 去 と と も に 、 目 的 外 動 産 を 建 物
から搬出するように求める。債務者が目的外動産を搬出するトラック等
を用意していない場合には、執行官は債務者に、(ア)当面の生活に必要で
あって即時に搬出できる動産、(イ)後日引き取る予定で執行官の保管を希望
する動産、(ウ)廃棄する動産を選択させた上で、目的物動産から搬出させる。
(イ)の動産については、執行官は、保管場所、保管料、保管期限、債務者が
保管期限内に引き取らないときの売却又は廃棄の実施予定日と売却の場所
についての定めをした上で、保管人を選任して、保管替え手続により、目的
外動産を保管し、保管期限内に債務者が目的外動産を引き取らない場合には、
動産執行に準じて売却又は廃棄の手続きを取ることになる。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
② 断行時において債務者が不在の場合
債 務 者 が 断 行 時 に 不 在 で、 執 行 官 や 債 権 者 に 対 して、 目 的 外 動 産 の 所 有 権
放 棄 や 廃 棄 処 分 を 委 託 して い な い 場 合 に は 、 執 行 官 は 、 目 的 外 動 産 を 見 て、
保管するべきか(客観的な換価価値がある、客観的な換価価値はないが
ア ル バ ム の よ う に 家 族 に と っ て 価 値 が あ る 、 商 業 帳 簿 の よ う に 法 律 上、
保 管 期 間 が 定 め ら れて い る も の は 保 管 す る の が 通 常 ) 、 廃 棄 す る べ き か を
選択する。
なお、保管するとされた動産に関しては、① ­(イ)の執行官保管を希望する
動産と同様、保管替の手続きを取る。
ま た 、 債 務 者 が 長 期 不 在 の 状 況 で、 目 的 外 動 産 を 引 き 取 る 見 込 み が な い と
認定できる場合には、執行官は目的外動産を断行期日に売約する方法(即時
売 却 の 決 定 と 即 時 売 却 ) や、 断 行 日 か ら 1 週 間 未 満 の 日 に 売 却 す る 方 法
(近接日売却)で処理することができる。但し、高価品が存在すると認め
ら れ る 場 合 に は 、 即 日 売 却 、 近 接 日 売 却 は 認 め ら れず、 保 管 替 え 手 続 に
より、目的外動産を保管することとなる。
(5)債務者を特定しないでの付与された承継執行文に基づく強制執行
強制執行の段階において、占有者が特定できない場合であっても、
強制執行ができるのか?
占 有 移 転 禁 止 の 仮 処 分 決 定 を 得 て い る 場 合 で あ って も 、 現 に 占 有 す る 者 を
相手とする承継執行文の付与を受けるためには、承継人を氏名、住所等
によって特定しなければならないのが原則(民執規16条1項1号)であるが、
占有者を入れ替えたりする執行妨害に対応するために、例外的に承継人
を 特 定 し な い 承 継 執 行 文 ( 債 務 者 欄 に 「 本 件 命 令 執 行 の 時 に お いて 本 件
不動産を占有する者」と記載することとなる。)を付与することができる
ようになった。
但 し 、 こ のよ う な 承 継 執 行 文 の 付 与 の た め の 要 件 と して は 、 ① あ ら か じ め
不動産の占有移転禁止の仮処分の執行がなされ、保全の当事者恒定効に
より、その債務名義に基づく明渡執行が可能であること、②不動産を占有
す る も の と 特 定 す る こ と が 「 著 しく 困 難 」 とす る 特 別 の 事 情 が あ る こ と が
必要(民執27条3項)。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
この明渡執行は、執行文付与の日から4週間を経過する前に着手する
必要があり(民執27条4項)、また、不動産の占有を解くときに、その
占有者を特定することができる場合に限りすることができ、この執行が
なされた時には、不動産の占有を解かれた者が承継執行文の債務者となる
(民執27条4項、5項)。そのため、執行官が執行の際に、不動産に居る
者に対して質問し、文書の提示を求めるなどして(民執168条2項)占有者
の 特 定 に 努 め る が 、 そ れで も 特 定 が で き な い 場 合 に は 、 執 行 不 能 と な る。
(6)賃借人が死亡していた場合の強制執行
賃 借 人 が 死 亡 し た 以 下 の ケ ース に お い て 、 訴 訟 や 強 制 執 行 の 手 続 き
はどうなるのか?
① 訴訟を提起して口頭弁論が終結する前に、被告が死亡していた。
② 事実審の口頭弁論終結後、強制執行を開始する前に債務者が死亡
していた。
③ 強制執行の申し立てを行い、手続開始後に債務者が死亡していた。
① 事実審の口頭弁論終結前に債務者が死亡していた場合
ア
訴訟中に債務者の死亡が判明した場合、訴訟手続は中断し、相続人
や相続財産管理人等がその訴訟手続きを受け継ぐため問題ない。
イ
死亡の事実が分からず、死亡した債務者名義での債務名義が出さ
れ た 場 合 に は 、 当 該 債 務 名 義 の 効 力 は 承 継 人 に は 及 ば な い た め、
承継人に対して別訴を提起する等して新たな債務名義を取得する
必要がある。
→ 前述した【10P】を参照
② 事 実 審 の 口 頭 弁 論 終 結 後 、 強 制 執 行 開 始 前 に 債 務 者 が 死 亡 し た 場 合
債 務 名 義 に 表 示 さ れて い な い 者 を 当 事 者 と して 強 制 執 行 を 行 う に は、 予 め
執 行 文 付 与 機 関 に 、 相 続 の 事 実 を 証 明 す る 文 書 を 提 出 して 、 相 続 人 に
対する承継執行文の付与を受けて、強制執行をする(民執23条1項3号、2項)。
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③ 強制執行開始後の死亡
前 述 のよ う に 、 債 務 者 が 死 亡 し 、 そ の 相 続 人 に 対 して 強 制 執 行 を す る に は、
相続人に対して承継執行文を得て強制執行をすることが原則(民執27条2項)
であるが、強制執行の開始後に債務者が死亡した場合には、債権者側の
利 便 性 を 考 えて、 承 継 執 行 文 付 与 の 手 続 を 経 る こ と な く 、 相 続 人 を 債 務 者
として手続を続行することができる(民執41条1項)。
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2
延滞家賃回収のための強制執行
明渡訴訟と同時に、延滞賃料の請求訴訟を併合提起した場合、延滞
賃料の強制的な回収はどのように行うのか?
実 務 上 は 、 建 物 明 渡 の 強 制 執 行 の 申 立 て と 合 わ せ て、 延 滞 賃 料 の 回 収 の た め
に、動産執行の申し立てがなされるケースが見られる。
執 行 官 は 、 催 告 の 時 点 に お いて、 ① 賃 貸 人 の 生 活 必 需 品 、 ② 客 観 的 な 換 価
価値があり、生活必需品ではなく差押えができる動産、③動産等の無価値な
動産の3つに分類する。
① に つ いて は 、 一 般 に 債 務 者 の 生 活 を 保 障 す る た め に 、 生 活 必 需 品 等 の 動 産
や66万円以下の現金の差押えは禁止されている(民執131Ⅰ①③、施行令1)
ため、生活必需品の差し押さえはできない。
か と い って 、 賃 貸 物 件 内 に 置 い て お く と 、 債 務 者 の 占 有 を 解 い て 債 権 者 に
引 き 渡 す こ と が で き な く な る こ と か ら 、 執 行 官 が 指 示 し た 期 間 中 保 管 し、
期間内に債務者が取りに来たら返却し、来なければ売却又は廃棄する。
もっとも、債務者が長期間不在で賃貸物件内で生活実態が全く認められ
な い 場 合 に は 、 生 活 必 需 品 を 差 押 え 禁 止 とす る 必 要 は な い 為 、 生 活 必 需 品 で
あっても差押ができる。
② に つ い て は 、 執 行 官 が 催 告 時 に 動 産 差 押 えを 行 い 、 断 行 日 に こ れ を 売 却
して 、 買 受 人 に 建 物 内 か ら 搬 出 さ せ る こ と で 、 債 務 者 の 占 有 を 解 き 、 明 渡
執 行 を 完 了 さ せる こ と が で き る 。 も っ と も 、 動 産 執 行 の 申 立 が な さ れ る 場 合、
賃貸人の家財道具を買おうとする人は少ない為 、通常は債権者が買い取る
こととなる。
③については、断行時にゴミとして廃棄する。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
【 後 半 テ ー マ 】
民 法 改 正 と 賃 料 保 証 賃料保証・保証会社の検討
賃料保証の概要
賃料保証の実行
賃料保証の検討
民法改正と賃料保証
[ 講 師 ]
弁護士法人 鈴木康之法律事務所
パートナー弁護士
藤 田 悟 郎
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1
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賃料保証の概要
賃料保証とは
賃料保証:
一般的に賃借人が賃料等(賃料本体のみならず、管理費や原状回復費用など
賃貸借契約上賃借人が負うべき債務。)を支払期日までに支払わなかった場
合に、保証人(保証会社)が代わりに賃料等を支払うこと。ただし、法律用
語ではない。
目的:
賃貸人は、安定した賃料収入が期待できる。
賃借人は、経済的信用力のない人物でも保証人の資力を利用して、賃貸することが
できる(信用力の補完)。また、賃料等が支払えない場合でも、保証人に代わって
支払ってもらうことができる。但し、賃借人は結局保証人に対して未払分を支払わ
なければならず、また、後述のとおり保証人が支払ってくれたことが必ずしも賃貸
借契約の解除を防げるわけではない。
2
保証の種類
(1)保証債務の種類
①連帯保証
通 常 は 「 保 証 」 と い う と こ の 連 帯 保 証 を 指 す。 た だ し 、 民 法 上 は 「 連 帯
保 証 」 と 「 保 証 」 は 異 な る も の と して 扱 わ れて お り 、 「 保 証 」 の ほ う が
保 証 人 に と って 催 告 の 抗 弁 ( 民 法 4 5 2 条 ) 、 検 索 の 抗 弁 ( 民 法 4 5 3 条 ) が
認められるため、債権者にとって不利となる。
な お 、 以 下 に お いて は 特 に 断 り が な い 場 合 に は 「 保 証 」 と は 全 て 「 連 帯
保証」の意味で使用している。
②共同保証
同一の債務について数人が保証債務を負担すること。通常は保証人全員が
「連帯保証」をすることが通常であり、単純に連帯保証人が複数存在
していると理解すれば足りる。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
③根保証
一定の範囲に属する不特定の債務を保証するもの。
現 行 民 法 で は 、 「 貸 金 等 根 保 証 契 約 」 と して、 貸 金 の 場 合 の み が 規 制
の 対 象 と な って い る が 、 後 述 の と お り 民 法 改 正 に よ り 変 更 さ れ る
可能性がある。具体的には個人保証の場合、保証契約締結時において
極度額(保証上限額)を決めておかなければ保証契約が無効となる
おそれがあるなど。
④身元保証
雇用契約に関して被用者の身元を保証する契約。
⑤賃貸借契約の保証
賃貸借契約から生じる賃借人の債務について保証するもの。
保証債務の内容が比較的明確であり、また想定外の債務保証となる
おそれが少ないことから、身元保証に比べて保証人の責任が重い。
Ex.賃貸借契約を更新しても更新後の賃料についても保証が及ぶ。
(2) 保証人の種類
①個人保証
賃 借 人 の 親 族 な ど、 賃 借 人 の 個 人 的 関 係 に 基 づ き 、 個 人 と して 連 帯
保証人となる方法。
[特徴 ]
保証料が発生しない
保証債務の履行は保証人の資力に影響される
賃貸人からの取立行為を要する
②機関保証
専ら賃貸人側が用意した保証会社を連帯保証人とする方法
[特徴 ]
保証料が必要
確実に保証債務が履行される
賃貸人から特段の取立行為を要しない
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
後述するが、民法改正においてこの個人保証と機関保証の区別が
大 き な 違 い と な る こ と が 予 想 さ れ る 。 結 論 と して 、 個 人 保 証 は 使 い
づ ら く な り 、 機 関 保 証 の 役 割 が 増 大 す る こ と と な る こ と が 見 込 ま れ る。
本 テ ー マ を 選 択 し た 理 由 の ひ と つ。 つ ま り 、 今 後 賃 貸 業 界 に お いて、
「保証」がひとつの注目点となることは間違いない。
その中でも、機関保証(保証会社)の選択が重要な要素となる。
3
当事者の契約関係
賃貸人
使用収益
させる義務
協力義務
賃料支払債務
保証債務
支払義務
賃借人
保証人
保証料
支払義務
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保証債務
履行義務
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4
契約の仕組み
(1)賃貸借契約
① 当事者
:賃貸人と賃借人
② 内 容
: 物件の賃貸借についての取り決め
(物件内容、賃料、禁止行為等)
③ 主 な 義 務 : 賃 貸 人 は 使 用 収 益 さ せ る 義 務 ( 修 繕 義 務 )
賃借人は賃料支払義務
(2) 保証委託契約
① 当事者
:賃借人と保証人
② 内容
: 賃借人が保証人になってくれるように依頼する契約
③ 主 な 義 務 : 賃 借 人 は 保 証 料 支 払 義 務
保証人は保証債務支払義務
(3) 保証契約
① 当事者
:賃貸人と保証人
② 内容
:保証人が賃料等について保証する契約
③ 主 な 義 務 : 賃 貸 人 は 協 力 義 務
保証人は保証債務履行義務
但し、実務上は複写式の契約書を用いて、賃貸人、賃借人、保証人の3者間にお
いて上記全ての契約を一度に締結することが多い(この場合、裏面
の記載がそれぞれ異なっている)。
ただし、この場合でも、上記3つの契約として分類・把握される。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
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1
賃料保証の実行
賃料滞納の発生
(1)賃料の滞納
支払日に支払がない場合
仮に支払日後すぐに支払があっても遅滞に変わりはない
そのため後日に備え、賃料の支払状況は厳密に管理すべき
(2)督促
賃貸人側からできるだけ連絡を取る。
特に個人保証の場合には保証人に対して、いきなり保証履行請求をする
のではなく、とりあえず督促をはさんでおいたほうが無難
但し、法律上は保証人に対していきなり請求しても問題はない
(3)保証履行請求
保証会社(保証人)に対して保証債務の履行を請求
保証会社の場合にはルールがあらかじめ設定されている。
【例】毎月●日、●日経過後、1ヶ月経過は免責など
個人保証人に対する請求には特に時間的制限はない。
但し、賃料の消滅時効期間は5年。
2
保証履行の実行
(1)保証債務の履行
保証会社が賃貸人に対して賃料等相当額の保証債務を支払う。
保証会社から賃借人に対して、求償債権が発生する。
保証会社が賃借人に対して、督促行為を行う。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
3
その後の法律関係
①賃貸人と賃借人
家賃遅滞(滞納)の事実
後の契約解除(信頼関係破壊の一事情)となり得る。
②賃借人と保証会社
保証会社が賃借人に対して督促、回収
③賃貸人と保証会社
保証履行された後に賃借人から支払があっても、まずは保証会社の求償債権
に充当されることが通常。
4
契約解除と建物明渡訴訟
(1)信頼関係破壊の法理
最 高 裁 判 所 が 示 し た 法 理 論 。 賃 貸 借 契 約 のよ う な 継 続 的 契 約 関 係 に あ る 場 合
には、単に債務不履行があった(賃料滞納があった)だけでは、契約を解除
で き な い ( 正 確 に 言 う と 、 信 頼 関 係 を 破 壊 して い な い 特 段 の 事 情 が あ れ ば、
解除が認められない。)
1ヶ月の賃料滞納があっても契約解除ができない。
裁判例では、3ヶ月滞納があれば(継続していれば)解除は認められる。
Cf. 契約書の記載、賃料滞納状況などから総合的に勘案される
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
(2)保証履行との関係
保 証 債 務 の 履 行 が あ っ た 場 合 に は 、 賃 貸 人 は 賃 料 相 当 額 の 支 払 を 受 け る。
信頼関係破壊の法理上は、賃貸借契約の解除につきネガティブな要素と
なり得る可能性がある。
もっとも、大阪高裁平成25年11月22日判決では、
「本件保証委託契約のような賃貸借保証委託契約は,保証会社が賃借人
の賃貸人に対する賃料支払債務を保証し,賃借人が賃料の支払を怠った
場合に,保証会社が保証限度額内で賃貸人にこれを支払うこととするも
のであり,これにより,賃貸人にとっては安定確実な賃料収受を可能と
し,賃借人にとっても容易に賃借が可能になるという利益をもたらすも
のであると考えられる。
しかし,賃貸借保証委託契約に基づく保証会社の支払は代位弁済であっ
て,賃借人による賃料の支払ではないから,賃貸借契約の債務不履行の
有無を判断するに当たり,保証会社による代位弁済の事実を考慮するこ
とは相当でない。
なぜなら,保証会社の保証はあくまでも保証委託契約に基づく保証の履
行であって,これにより,賃借人の賃料の不払という事実に消長を来す
ものではなく,ひいてはこれによる賃貸借契約の解除原因事実の発生と
いう事態を妨げるものではないことは明らかである。」
と判示しており、保証履行が継続されていても、賃貸借契約の解除は可
能である旨述べている。
(3)保証会社の対策
保証会社としては保証債務の負担をできるだけ軽減するために、早期の解除、
建物明渡を望む。
保 証 履 行 と 早 期 解 除 、 明 渡 と の ジ レン マ が 発 生 す る 。 つ ま り 、 保 証 履 行
はしなければならないが、保証履行したことにより賃貸借契約の解除が
制限されてしまうおそれがある。
これを解決する手段として、各社工夫をしている場合がある。
Ex. 履行保証が数ヶ月連続した場合には、いったん履行保証をストップ
し、契約解除後にまとめて履行保証をする。または、履行保証した
金銭を一時的に「預かり金」として処理するなど。
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賃料保証の検討
賃料保証のメリットとデメリット
(1)賃貸人
メリット:
安定的・確実な賃料収入が期待できる。
催促、取立、訴訟等の面倒な事務を保証会社が行う。
デメリット:
保証会社が賃貸借に介入する。
(2)賃借人
メリット:
経済的信用力を補完できる。 代わりに払ってもらえる?
デメリット:
保証料の負担、専門家である保証会社からの介入。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
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保証会社選択の基準
①コンプライアンス
保証会社は早期解除、明渡に強い利害がある。
賃借人に対する過度な行為に及ぶ危険性あり
か つ て、 「 賃 貸 住 宅 に お け る 賃 借 人 の 居 住 の 安 定 確 保 を 図 る た め の 家 賃
保証債務保証業の業務の適正化および家賃等の取り立て行為の規制等に
関 す る 法 律 案 」 ( い わ ゆ る 追 い 出 し 規 制 法 案 と い わ れ、 家 賃 保 証 会 社 の
登 録 制 や、 家 賃 滞 納 者 の デー タベース 化 、 過 剰 な 取 立 て 行 為 や 追 い 出 し
行 為 の 禁 止 を 内 容 と して い た 。 ) が 、 国 会 に 提 出 さ れ 審 議 さ れ た が そ の
後廃案。
こ れ は 、 当 時 、 家 賃 保 証 会 社 が 過 度 な 取 立 て や 追 い 出 し 行 為 を 行 って
いたことが社会問題となったため。
②保証料
但し、保証料は賃借人が負担するケースがほとんどである。
③保証履行条件
④免責条件などの各種条件
意 外 と 免 責 条 件 が 多 岐 に 渡 って い る ケ ース も あ る の で、 具 体 的 に どのよ う な
事 実 が あ る 場 合 に 免 責 と な る の か な ど、 免 責 条 件 に つ い て 分 か ら な い 点 を
明 ら か に し 、 メ モ で も よ い か ら 残 して お く ほ う が 後 日 の ト ラ ブル 防 止 に
役立つ。
⑤財務状況
保証会社が保証に入る場合には、別途個人保証を立てるなどしない
ケ ース が ほ と ん で あ り 、 そ の た め 、 保 証 会 社 が 倒 産 し た 場 合 、 賃 貸 物 件
は保証のない状況となってしまう。
対 策 と して は 、 保 証 会 社 に プ ラス して 個 人 保 証 を 入 れ る か 、 あ る い は
賃貸借契約において保証人が破産等した場合には、別途の保証人を立てる
義務を賃借人に負わせる等の備えをしておくことが考えられる。
もっとも、保証会社の財務状況を外部から確認することは困難であるため、
保 証 会 社 選 択 時 に お いて、 で き る だ け 経 済 的 信 用 性 が 高 い と 思 わ れ る
保証会社を選択すべき。
今 後 、 民 法 改 正 の 影 響 も あ り 、 保 証 会 社 の 需 要 が 高 ま る こ と が 予 想 さ れ、
保証会社も乱立する可能性があるため注意が必要。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
3
賃料保証のトラブル事例
(1)賃借人と保証会社
①督促、取立におけるトラブル
Ex.
賃借人、保証人に対し、執拗な取立てを行う。
②明渡におけるトラブル
Ex.
部屋の伴を無断で取替える、勝手に部屋に入り荷物を出す
(2)賃貸人と保証会社
①協力義務をめぐるトラブル
Ex.
早 期 契 約 解 除 、 早 期 明 渡 の 手 続 き に 対 し 、 賃 貸 人 が 協 力 せ ず、
保証履行が長期間にわたってしまう
②免責をめぐるトラブル
Ex.
原状回復費用が不合理・高額である
(3)賃貸人と賃借人(賃料保証関係に限る)
①支払先と充当関係
Ex.
賃借人が支払を怠ると、保証会社が保証履行し、以後は保証会社
か ら の 請 求 と 賃 貸 人 ( 管 理 会 社 ) か ら の 請 求 が か ぶ る こ と が あ る。
そ の 場 合 、 賃 借 人 と して ど こ に い く ら 支 払 う か 混 乱 す る ケ ース が
ある。
②話の食い違い
Ex.
当 事 者 が 3 者 と な る の で 、 そ れ ぞ れ ど の よ う な 会 話 を し た か、
混乱することがある。例えば賃貸人が賃借人に猶予等を与えて
しまった場合や、賃借人が修繕要求をしていた場合に、保証会社
が情報を知らずにトラブルとなるケースもある。
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民法改正と賃料保証
1
民法改正の状況(平成26年8月現在)
現在約120年ぶりの大幅な民法改正作業が進行中
法務大臣の諮問機関である法制審議会の中の「民法(債権関係)部会」にて
審議中。
改正対象は、債権法関係(民法典第3編「債権」を中心に関連する箇所)
のみ。
Cf. 物権関係や、親族法相続法については対象外
平成25年2月に「中間試案」の公表
平成26年8月26日に「民法(債権関係)の改正に関する要綱仮案」
決定(法務省HPにて公開。)
2
スケジュール
平成26年8月26日
:改正要綱仮案の決定
部会にて改正要綱案 㱺 法制審議会にて改正要綱策定
3
平成27年2月
:法務大臣に改正要綱の提出
平成27年3月以降
:改正法案の国会提出
平成28年以降
:施行か?
民法改正の影響
(1)保証関係
①根保証の制限拡大
想 定 さ れ て い る 民 法 改 正 に よ り 最 も 影 響 を 与 え る と 思 わ れ る 事 項。
これまでは、根保証契約についての規制は貸金に関する根保証
だけであった。これを、今回の改正では根保証一般について広げる
こ と が 想 定 さ れて お り 、 賃 料 保 証 に お いて も 一 部 規 定 に 適 用 が
及ぶものと考えられる。
改正要綱仮案では、次頁のとおり記載されている。
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35
不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
根保証
(1) 極度額(民法第465条の2関係)
民法第465条の2の規律を次のように改めるものとする。
ア
一定の範囲に属する不特定の債務を主たる債務とする保証契約
( 以 下 「 根 保 証 契 約 」 と い う 。 ) で あ って 保 証 人 が 法 人 で な い も の
(以下「個人根保証契約(仮称)」という)の保証人は、主たる
債務の元本、主たる債務に関する利息、
違 約 金 、 損 害 賠 償 そ の 他 そ の 債 務 に 従 た る 全 ての も の 及 び そ の 保 証
債 務 に つ いて 約 定 さ れ た 違 約 金 又 は 損 害 賠 償 の 額 に つ いて、 そ の
全部に係る極度額を限度として、その履をする責任を負う。
イ
個人根保証契約は、(ア)の極度額を定めなければ、その効力を
生じない。
ウ
民法第446条第2項及び第3項の規定は、個人根保契約における
(ア)の極度額の定めについて準用する。
これは、具体的にいうと、個人保証の場合には、保証契約締結時に
極 度 額 ( 保 証 上 限 額 ) を 定 め な け れ ば 保 証 契 約 が 効 力 を 生 じ な い、
とするものである。もちろん、保証上限額をあらかじめ高額に
設 定 して お く な ど して 対 応 す る こ と は 可 能 で あ る が 、 そ の 場 合
個人保証人が保証契約の締結を躊躇する可能性があり、結局は
個人保証離れを加速させることにつながりうる。法人である保証
会社の場合には適用がない。
なお、報道等で話題となった、公正証書による保証契約は、貸金等
根保証のみに適用されるものであり、賃貸借契約については適用
されない。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
②保証人への情報提供
これも、個人保証と機関保証により適用に差が出るものである。
改正要綱仮案では、以下のとおり記載されている。
(2) 契約締結時の情報提供義務
契約締結時の情報提供義務について、次のような規律を設けるものとする。
ア
主たる債務者は、事業のために負担する債務についての保証を委託
するときは、委託を受ける者(法人を除く)に対し、次に掲げる
事項に関する情報を提供しなければならない。
(あ)財産及び収支の状況
(い)主たる債務以外に負担している債務の有無並びにその額
及び履行状況
(う)主たる債務の担保として他に提供し、又は提供しようと
するものがあるときは、その旨及びその内容
イ
主たる債務者が(ア)の説明をせず、又は事実と異なる説明を
したために委託を受けた者が(あ)から(う)までに掲げる事項
について誤認をし、それによって保証契約の申込み又はその承諾
の意思表示をした場合において、主たる債務者がアの説明をせず、
又は事実と異なる説明をしたことを債権者が知り、又は知ること
が で き た と き は 、 保 証 人 は 、 保 証 契 約 を 取 り 消 す こ と が で き る。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
(3)保証人の請求による主たる債務の履行状況に関する
情 報 提 供 義 務 請 求 に よ る 履 行 状 況 の 情 報 提 供 義 務 に つ いて、 次 のよ う な
規律を設けるものとする。
債 権 者 は 、 委 託 を 受 け た 保 証 人 か ら 請 求 が あ っ た と き は 、 保 証 人 に 対 し、
遅 滞 な く 、 主 た る 債 務 の 元 本 及 び 主 た る 債 務 に 関 す る 利 息 、 違 約 金、
損 害 賠 償 そ の 他 そ の 債 務 に 従 た る 全 ての も の に つ いての 不 履 行 の 有 無
並 び に こ れ ら の 残 額 及 び そ の う ち 履 行 期 限 が 到 来 して い る も の の 額 に
関する情報を提供しなければならない。
(4)主たる債務者が期限の利益を喪失した場合の情報提供義務
主 た る 債 務 者 が 期 限 の 利 益 を 喪 失 し た 場 合 の 情 報 提 供 義 務 に つ い て、
次のような規律を設けるものとする。
ア
主たる債務者が期限の利益を有する場合において、主たる債務者
がその利益を喪失したときは、債権者は、保証人(法人を除く)
に対し、主たる債務者がその利益を喪失したことを知った時から
2箇月以内に、その旨を通知しなければならない。
イ
債権者は、アの通知をしなかったときは、保証人に対し、主たる
債務者が期限の利益を喪失した時からその旨の通知をした時までに
生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生じて
いたものを除く。)に係る保証債務の履行を請求することができ
ない。
つまり、個人保証人に対しては、ⅰ契約締結時(但し、事業のために負担する
債務に限られる。)、ⅱ保証人の請求があったとき、ⅲ期限の利益を喪失した
とき(つまり滞納した場合)のそれぞれにおいて情報提供する義務が発生
することとされている。
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不 動 産 実 務 セ ミ ナ ー
ⅰ に つ いて は 、 事 業 の た め に 負 担 す る 債 務 に 限 ら れ る た め 、 単 な る 住 居
と して の 契 約 に お い て は 適 用 さ れ な い が 、 適 用 が あ る 場 合 に お い て は、
主 債 務 者 ( つ ま り 賃 借 人 ) が 保 証 人 に 対 して 説 明 し な か っ た り 事 実 と
異 な る 説 明 を し た こ と を 債 権 者 ( つ ま り 賃 貸 人 ) が 知 って い た り 知 る
ことができた場合には、保証契約を取り消すことができることとなる。
ⅱ、ⅲについては、「事業のために負担する債務」という制限がないため、
住 居 の 賃 貸 借 で も 適 用 が あ る 。 こ の う ち ⅱ に つ いて は 、 条 文 上 は 個 人
保 証 人 に お いて も 保 証 会 社 に お いて も 適 用 が あ る こ と と な る が 、 実 際 に
情報提供請求をなすのは個人保証人となるものと思われる。
ま た 、 ⅲ に つ いて は 、 個 人 保 証 人 の み の 適 用 と な る う え 、 通 知 を し な
か っ た 場 合 に 債 権 者 に 不 利 益 が 課 さ れ る 旨 明 確 に 定 め ら れて い る た め
注意が必要である。
(2)賃貸借関係(今回のテーマから外れるため項目のみ)
① 賃貸借の存続期間(20年から50年)
② 賃貸人たる地位の移転の明文規定
③ 賃借人による妨害排除請求権の明文規定
④ 敷金の明確化
⑤ 原状回復ルールの明確化
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