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政治的機会構造論の理論射程

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政治的機会構造論の理論射程
政治的機会構造論の理論射程
一一社会運動を取り巻く政治環境はどこまで操作化できるのか一一
成元哲・角
一典
政治的アパシーや投票再率の低下などの「脱政治化Jと社会進動の量産生にみられるような「再政治化Jが問
時に遂行している今日的現象を鑑みると、より広い政治環境との関係において社会運動を考察する必要性が
高まっている。こうした問題意識から本稿は、「政治過程アプローチ j の鍵慨念である「政治的機会総造j
を手がかりに、現代日本の社会逮動を政治参加のー形態として位置づけ、直接・間接に政策決定過程にかか
わる非制度的な政治行動として捉えるための理論的枠組みを整理・彫琢することを目的とする。そこで、政
治的機会情造概念を独立変数や媒介変数として捉え、社会運動の発生や展開過程などを彼説明変数として類
型化しレビューを行う。
は、政治環境の変動との関係において社会運動
第 1節 問 題 の 所 在
を考察する必要性を高めているといえよう 。
振り返ってみれば、
6
07
0年代には「住民運
9
0年代に入り、廃棄物、原発、地球温暖化
976 :1
3
3)といわれる状況が
動の時代 J(水口 1
などの環境問題をはじめ、さまざまな問題をめ
創出され、住民運動に関する事例研究が活発に
く
‘
っ て社会運動が新たに注目を集めている。ま
行われた。そこでは、
f
住民の日常生活に根ざ
た、そのイッシューの多様性に加えて、活動形
した要求が、そのまま政治に向けてはっきりし
NGO/ NPO、住民投票運
た方向をとらないまま狭い地域のうちに沈殿
5年 体
動などのように多岐にわたっている。 5
し、解決を強いられる J(
秋元, 1974 :1
3
3
)日
9
0年代にお
本人の「非政治的な態度Jが、しばしば指摘さ
いて、こうした社会運動が重要な意味を持つよ
れてきた。また、住民は自らの意思を表出する
うになったのは単なる偶然ではないだろう。す
際、既存の政治に対する不信や拒否感から、既
なわち、政治的アパシーや投票率の低下にみら
存の制度政治と距維をとってきたともいわれて
れるように、間接民主主緩的政治制度の構造疲
いる 。 このようにこれまでの住民運動研究では
労に起因する「脱政治化Jが進む 一方、今日の
運動と政治との距離が強調され、両者の関係が
社会運動の叢生は、通常の制度政治とは異なる
必ずしも主要な関心とされてこなかった。 しか
論理による「再政治化Jが日本においても現れ
し、運動はその発生および展開過程において公
てきたということを示すものである(1
。
) この
式の制度政治との接点を持たざるを得ない。な
ように「脱政治化Jと「再政治化Jの同時進行
ぜならば、運動の要求が通常の政治制度によっ
態もボランティア、
制の殿様と連立政権時代を迎えた
ソシオロゴス
1
9
9
8N
o
.
2
2
-102-
て代表され、それが充足される場合、あえてコ
されており、運動と政治環境との伺係に焦点を
ストがかかる抗議運動を起こす理由がないから
当てたさまざまな研究が生み出されている。こ
である。
れらの研究は、政治体の公開性の程度、選挙同
当時は喰出する住民運動を記録し実態を把
盟の安定度、外部の支持者の有無などの政治的
握 (21することが先決であるという時代的制約
機会が、運動の生成や盛衰にとって決定的な重
もあって、こうした運動と政治環境との聞に働
9
9
6
b
)。
要性を持つことを強調する (Ta打ow1
本稿は、「政治過程アプローチJの鍵概念であ
く論理やその関係のメカニズムを詳細に検討し
特定化する作業が棚上げにされてきた。しかし、
政治的機会構造Jを手がかりに、現代日本
る f
こうした研究状況では、以下のような問題関心
の社会運動を政治参加の ー形態として位置づけ
0
7
0年代の公
には答えられない。すなわち、 6
9
7
7:
3
5
)、直接 ・間接に政策決定過程に
(篠原 1
0年代に
害 ・環境問題をめぐる住民運動と、 9
かかわる(部分的には)非制度的な政治行動 (3)
おける原発・産廃・基地問題をめぐる住民投票
として捉えるための理論的枠組みを整理・彫琢
運動や各種の NGO/ NPO活動とは、歴史的
することを目的とする。政治的機会構造という
にどのように連続/断絶しているのか、そし て
、
概念は、(1)社会変動は、それが政治によって
今なぜ住民投票のような運動形態・抗議戦略が
媒介される限りにおいて、運動の動員に関係す
周辺地域で顕著である 一方
、 NGO/NPOやボ
る。従って、社会運動はマクロな政治環境との
ランティア活動は都市部で目立つことなど、運
関係において理解されるべき極めて政治的な現
動形態および抗議戦略が地域的に差異を見せる
象であり、 (
2
)運動の生成・発展・笈退の一連
のか、さらに住民投票や市民オンフ・ズマン運動
運動セクターの盛衰は政治
のライフサイクルや i
などの抗議戦略が、今回大きな社会的インパク
的な諸条件の関数として理解されるべきであ
トを持つのはなぜなのか。今日のような「脱政
る、というこつの点を前提としている。また、
再政治化Jが同時進行するなかでの
治化j と f
この概念枠組みは方法論的に連動と政治環境に
多様な運動の叢生を解明することは、現代日本
関する個別の事例研究を越えた、体系的な比較
の運動と政治を考える上で必須であり、従って
研究や歴史研究が中心となっており、その意味
そのための分析視座が必要不可欠である。
では「脱政治化Jと「再政治化」の同時進行と
ところで、社会運動と政治環境との関係に関
いう今日的現象の体系的比較はもちろんのこ
する研究は、近年w¥米の政治過程アプローチに
と、戦後日本における「運動政治」の歴史的展
おける 一つのフロンティアとなっており、数多
開をも捉える有効な分析ツールを提供し得ると
くの優れた研究成果をあげている。社会運動研
考えられる。
0年代初
究における政治過程アプローチは、 7
以下では、まず欧米の社会運動論において政
i
s
i
n
g
e
r(
[
9
7
3
)らによって、都市政治と
期から E
治過程アプローチが登場した理論状況を確認し
抗議運動との関係を分析するために用いられて
た上で、そのアプローチの支柱である政治的機
きた。その後、このアプローチはさまざまな分
会構造という概念が生み出される背景について
野で広〈利用されるようになった。近年これら
検討する(第 2節)。そして、[異議申し立て者
の研究領域は、通常の制度政治とは区別される
、つまり「挑戦者
にとっての政治的機会構造 J
称
、
「争議の政治j、「運動政治j、「抗議政治Jと
から見た政治環境j という観点から、政治的機
u
4Eム
内ぺ
nU
(
I
<landermans1
9
9
1:
29)
。
会構造にはどのような次元や要素が含まれるの
かを確認したい(第 3節)。こ れを踏まえて、
そこで政治過程アプロ ーチ は、マクロの構造
政治的機会構造に関する先行研究を類型化して
変動とミクロの組織過程が媒介され、運動が形
レビューを行い(第 4節)、その概念が持つ可
成されるメゾレベルに分析の焦点を当てる 。こ
。
能性と課題を検討する(第 5節)
の媒介的なメゾレベルこそ、ほとんどの運動行
為が行われる水準であるにもかかわらず、研究
第 2節
政治過程アプ口ーチの理論的
者が最も知り得ていないレベルであるからであ
背景と政治的機会構造
la
l
.1
988 :
7
2
9
)。 こうした問題意
る (McAdam,e
識から、政治過程アプローチは、動員を行うに
さて、社会運動における政治過程アプロ ーチ
あたって機会と制約を形づくる政治環境と運動
とは何だろうか。これを最も包括的に定義する
組織の内部過程とに照準を当て (6)、運動形成
と、これまでの「新しい社会運動論」ゃ 「
資源
における政治的および制度的資源の重要性を強
動員論Jが相対的に看過してきた側面、すなわ
J
e
n
k
i
n
s& Klandennans1
9
9
5 :4)
、いわ
調する (
ち政治と社会運動との関連性に注目し、政治環
ゆる「社会的抗議の政治学 J(7)として登場し
境が運動に及ぼすインパクトと運動が政治環境
たのである 。
従来ヨーロッパにおいては、社会運動のアイ
Tarrow
に与える影響を強調する分析方法 (
デンティティに注目し、運動の非政治的または
1
988)を指す。
やや図式的にいうと、これまでの新しい社会
M
e
l
u
c
c
i1
9
8
9
反政治的な側面が強調されてきた (
運動論は「なぜ運動が起きるのかJという聞い
。 しかし 70年代後半以降、ラデイカルな
:
223)
にフォーカスをおき、高度に産業化された社会
抗議運動が停滞し、緑の党に代表されるように
内部に新しい抗議ポテンシャルが生成される背
運動組織が制度政治へ進出するようになると、
景 、 つ ま り 構 造 変 動 に 関 心 を 寄 せ て き た (4)
新しい社会運動論者も運動と政治との関係に注
(
M
e
1
u
c
c
i1
989 :3
)。そこにおいて社会運動は
目するようにな った (8)0 他方、アメリカの資
機造変動がもたらす新しいアイデンテイテイや
源動員論も動員組織に内在的な要因に加えて、
c
a
r
r
i
e
r
s
) とし
生活スタイルを体現する担い手 (
運動組織を取り巻く外部環境、とりわけ政治体
て捉えられる 。他方、資源動員論は「いかに運
の公開性やエリート同盟者などの政治的機会が
動が生成・成功するのかJという問いにフォ ー
運動の生成や展開に重要な意味を持つという認
カスをおき、既存組織やネットワークなどの資
識から、運動と政治との相互関係に関心を寄せ
源の利用可能性に関心を寄せてきた 。 ここでは
9
9
5:9)
。こうした
るようになった (Koopmans1
運動は合理的なもの、つまり特定の利害を実現
意味で、社会運動の政治過程アプローチは、従
するために戦略的に振る舞う行為者として捉え
来の運動アプローチが運動と政治環境との関係
られる (5)。 これらのアプローチは連動の発生
をゆ心に収徴した結果登場したともいえるので
や展開に関する「なぜj や「いかにj という問
Tarrow1
9
8
8:
427・8
)
。
ある (
題を議論しているものの、 一体「なにjが人々
こうして 8
0年代後半以降、大西洋を挟んだ
をしてある状況を、運動参加が合理的であると
両大陸の間で、新しい社会運動論と資源動員論
見なきしめるのかには答えられない
が活発な交流を行い、数多くの共同作業が生み
1
0
4-
出された (9)。それら の共同作業における問題
論的に明らかにされたことはほとんどなか っ
関心は、先にも述べたように、「なに」が人々
た
。
を撹乱的な集合行為に駆り立てるのかというこ
i
s
i
n
g
e
rはさまざまな環境変数が政
そこで、 E
4)
。こ
とである (Klandennans& Tarrow1988 :1
治の行われるコンテキストをなし、このコンテ
れまでは一般に、社会の構造変動が抗議や動員
キストの要素がコミュニティの特定の政治的機
のためのポテンシャルを生み出すものと見なさ
会構造の構成要素として見なされるのであれ
れてきた 。し かし、構造変動それ自体は、動員
ば、このコンテキストと政治行動のパタ ーンと
の客観的なポテンシャ ルを創出するだけで、行
の連関が明らかになるはずだと考えた。すなわ
i
na
Cl
ion)を克服するこ
為者の無力感や無活動 (
ち、首長制度の相述、市議会議員選挙の方式、
とはできない。なぜなら、実際に社会運動が起
社会的技能と地位の分布、社会解体の程度とい
きるためには動員ポテンシャルが行おに転換さ
った要因が、個別的にまたは相互に関連して、
れなければならないからである (Gerhard&
政治的目標を追求する市民的活動をさまさ'まな
Ru
c
hl1
9
9
2 :5
5
6
)。 こうした動員ポテンシャル
仕方で妨げたり促進したりする 。いいかえれば、
を行為に転換させるとき に、段も重要なのが政
政府の応答性の程度やコミュニティ資源の水準
0
)である (
T
a
r
r
ow 1
989b :21
。
)
治的機会(1
といった環境袈因は、市民の政治活動が成功す
それでは、政治的機会構造とは一体何を意味
973 :1
1)
。例え
るためのチャンスをもたらす (1
Sl
rUClUr
eof
するのか。最初に政治的機会構造 (
ば、特定の集団にフォーマルな代表の機会を提
pol
i
l
i
c
alopporl
uni
l
ie
s
)という概念を作り出した
供したり、政府が市民のニーズや要求 に明 確に
のは、アメリカの政治学者 PelerEisingerであ
反応したりして、政府の構造が潜在的により高
る。彼は都市の政治環境と、黒人マイノリティ
い応答性を有権者に対して示すとき、織会の偽
i
n
l
e
n
s
iI
Y
)との
の抗議活動の発生や抗議の強度 (
973:1
2
)。個人と
造は相対的に開政的である (1
相関を説明するために、この概念を利用した。
集団が政治システムにおいて行動する仕方は、
E
is
i
ngerによると、政治環境の路変数と抗殻活
単に彼らが持つ資源の関数であるだけでなく、
動との複雑な相関関係は 、都市政治分析の関心
政治システム自体の公開性、弱点、 │
穆盤、資源
事であり続けた 。 そこにおける政治環境とは、
の関数でもある 。従って、政治的機会構造の概
フォーマルな政治構造の諸側面、要求に対する
念で理解される環境と、政治行動の問 には相互
r
e
s
p
o
n
si
ve
ne
s
s)の程度、社会的安
政府の応答性 (
作用ないし連関がある 。
定性などのように、論者によって多様に利用さ
s
i
n
g
erは、政治的機会併造を
このように Ei
g
ener
icl
erm)である。従来、政治
れる包指概念 (
「諸集団が織力にアクセスし政治システムを繰
環境を独立変数として扱 う研究者は、例えば自
(1
973 :2
5
)として定義し、都市
作できる程度J
治体制度の改革と低い投票率との関係、地方権
やコミュニティの政治的機会構造の特徴が抗脱
力の集中と都市改造の成功との関係、地方強会
運動の発生と相関していることを、アメリカ都
の代表性の低下と人種暴動の発生との関係など
6
8年の 6ヶ月間)のうち、
市の地方新聞(19
を検討してきた。しかし、こうしたコミュニテ
4
3紙をサンプルに立証している 。そこで彼は
イの多械な特性と政治行動のパターンとの連関
政治的暴力と区別して、抗議を政治システムに
(
I
i
n
k
a
g
e
s
)および環境変数どうしの連関が、理
おいて
-1
0
5-
f
相対的に権力のない人々 Jに政治的影
響力や交渉手段 (
b
a
r
g
ai
n
i
n
gl
e
v
c
r
a
g
e
)を提供する
もの、もしくは全国的なものではないが)シグ
ものであり、その意味で抗議とは、政治システ
4
)。その上で政
ナル Jとも定義する (1996a:5
ムにおいて要求を提出する行為 8が、自らの持
治的機会という概念のメリットを次のように指
つ資源の影響力を最大にして要求提出による費
摘している。
用を最小化しようとする、費用便益計算の所産
l
c
v
e
r
a
g
e
)
する急激な、しかし 一時的な影響力 (
1
9
7
3:1
3)
。また彼は、抗議
として捉えられる (
を獲得し、そして運動による優れた努力にもか
運動の浮沈はより広い政治システムにおける変
かわらず、それを失 ってしま うのかを理解する
動の関数であり、抗議が発生するということは、
上で有効であり、また動員がj
家い不満や強力な
当該社会における政治的機会情造が、排除され
資源を持つ人々から全く異なった状況におかれ
ている集団による政治的攻撃に対してフレキシ
た人々に、いかに拡散するのかを説明するとき
プルで、また脆弱であるという兆候で あると考
Ta
r
r
o
w1
994 :
8
5針
。
にも役立つ J(
973:
2
8
)。
えた (1
f
なぜ迎動が当局やエリ ー トに対
最近この概念はアメリカや西ヨーロッパの社
E
i
s
i
n
g
e
rが論文を発表してから 10年も経た
O
b
e
r
s
c
h
a
l
l1
9
9
6)、
会運動だけでなく、東欧ぷ命 (
ずに、こうした考・え方は社会運動の政治過程ア
旧ソ連の崩壊直前の民主化運動 (Zdravomyslova
t
e
n
c
t
)となった。政治
プローチの中心的な見解 (
1
996)、89年 の 中 国 の 民 主 化 運 動 (Zuo &
e
n
k
i
n
s& Peπow
過程モデルの提唱者(例えば、 J
Be
nf
o
r
d1
995)、日本の江戸時代の ー摂 (
Whi
t
c
1
977;McAdam1
982;Ta
r
r
o
w1
983;Ti
l
l
y1
978)
1995)、 中 央 ア メ リ カ の 農 民 運 動 (Brock
e
t
t
によると、運動のタイミングや成り行き (
f
a
l
e
)
)、イラン革ー命 (
Kurzman1
996)など、実に
1
991
は、主として変動する制度的構造と権力 側のイ
幅広い分析対象を説明するために用いられてい
デオロギー的傾向が反乱者を許容する機会にか
る。そこで次節以下では第 1節で述べた我々の
3
)。その後、政治
かっている (McAdam1996:2
問題関心を解明する上で有効な分析用具を確保
p
o
l
i
l
i
c
alop
por
l
uni
l
ys
t
r
u
cωr
e、以下
的機会構造 (
するために、まず POSにはどのような次元 ・
POSと略す)という 概念やその中心 的な前提
要素が含まれるのかを確認し 、欧米の POS論
は社会運動の主題となり、 90年代に入ってか
をデータを用いた実証研究に絞って概観する 。
らも数多くの研究を生み出している。
第 3節
近年 POSについて積極的に研究を行ってい
政 治的 機 会 構 造の諸 次 元
r
ow によると、 POSとは「成功 ヤ失敗に
る Tar
関する人々の期待に影響を及ぼすことによっ
3.1 政治的機会の構造的側面と流動的側面
て、人々が集合行為に着手するためのインセン
もともと社会運動の政治過程アプローチにお
ティブを提供する政治環境のー
nした(しかし
いて POS概念は、抗議活動の発生・展開や抗
必ずしもフォーマルなもの、もしくは'恒常的な
議形態 ・運動戦略などをより広い政治システム
994:
8
5
)。ま
ものではないが)次元j を指す (1
の変動の関数として捉えるために提唱された。
た、彼は「社会的または政治的行為者が、社会
従って、 POS論においては変動する制度的構
運動を行うために自らの内的資源を使うように
造や政権側の イデオロギー的傾向によって許容
させたりさせなかっ た りするような、一貫した
される機会が運動発生のタイミングとその後の
(しかし必ずしもフォ ーマルなものか恒常的な
成り行きを左右し (
独立変数としての POS)、
一1
0
6-
POSに応じて抗議形態や運動戦略および運動
期的変動とは独立した、変化しにくい国家機造
による政策インパクトが異なってくる(媒介変
であるとされているため、説明対象ではなく所
P
O
SI
I)
)
、という考え方が共有され
OSの次
ている 。 これらの研究で指摘される P
与の条件として扱われる 。 こうした視点から、
元や妥素を整理してみると、構造的一流動的と
戦略がそれぞれの固におけるエネルギ一政策に
文化的一制度的の 二つの輸に沿った四 つの政治
及ぼすインパクトの有効性が比較される (
1
3
)
。
数としての
ます影響や、その運動
国家構造が運動戦略に及 l
的{幾会が確認される (Gamson&Meyer1
9
9
6
)。
このような Kil
s
c
h
el
lの僧造的アプローチは、
まず、構造的一 流動的の軸に関していえば、
POSのなかで相対的に安定的な側面の役割を
前者は異なる国や地域の同一運動の戦略・戦術i
9
9
0)や Cooper(
1
9
9
6
)が指
強調するが、 Rucht(1
や政策へのインパクトにおける相違を説明する
摘するように、
ために、それぞれの国の
POSにおけるバリエ
POSの恒常的な要因は運動動
員のダイナミックなプロセスを理解する際には
。
) 後者は所与の国家に
ーションに着目する 112
あ ま り 布 効 で は な い o これに対し、 Ruchl
おける運動聞の比較や特定の運動の盛漢を分析
(
[
9
9
0
)は同盟関係の変化、社会的統制や抑庄の
POSの流
水準、エリート統合の筋線、公共政策の変化な
動的(co
n
j
u
n
c
l
u
r
a
l)な側面を倹討するものであ
どの、相対的に変化しやすい側面に焦点を当 て
る。前者が、特定の運動戦略や運動による政治
。
) また、 Tarrow(
1
9
8
9
b
)
(;j:、イタリアが成
る(14
システムへの影響に対する構造的要索が持つ重
熟資本主幾へと移行する過程で発生した、保守
要性を強調する 一方で、後者は時間とともに変
政治のヘゲモニーの終鷲と社会党の政権入りと
f
パワー資源Jを形成する
いう状況が、政府のエリ ー ト内の亀裂を露呈さ
政 治 的 ・ 社 会 的 ・経 済 的 プ ロ セ ス か ら な る
せ、なおかつ、新しい連立政権が抗議を抑圧す
P
OSのダイナミックな要素に注目する (Coopcr
る意志を低減させたため、新しい政治的要求の
1
9
96 :1
5・J7
)。
ための空間が開かれたと 主張する。さらに、
するために、時間とともに変動する
動する運動行為者の
前者の例として、 K
i
t
s
c
h巴
I
t(
1
9
8
6
)は四ヵ国に
Ruchlや Koopmans (
1
9
95
)は構造とエ ージェン
POSと運動
おける反原発運動の比較研究のなかで、反原発
シーとの問の相互作用、すなわち
運動の戦略やその運動の政策的インパクトのバ
戦略との問の相互関係にも っと注目すべきだと
リエーションは、政治的レジームのスタイルの
主張している 。
相違に起因すると指摘する。彼にとって政治的
しかし、本稿の問題関心からいえば、前者-の
レジームのスタイルは、特定の資源の俳図、制
構造的アプローチと{走者の流動的でダイナミッ
度的配置や社会的動日の歴史的経験を意味する
クな側面を強調するアプロ ーチは、必ずしも相
ものとして、特定の歴史的瞬間において抗議運
容れないものではない。前者の併造的で相対的
動の生成・発展を促進し、それ以外のときには
に安定的な
i
t
s
c
h
e
l
tが比較の
運動を抑圧する。具体的に K
は、運動の空間的比較に有効であり、{走者の流
対象としているのは、非制度的な挑戦者に対す
動的で変化しやすい
る政治シ ステムの 公開性と、 そのシス テムによ
動の時間的比較に有効であるからである。例え
る政策遂行能力である 。 しかし、そこでは政治
ば、アメリカ核兵器凍結運動の盛衰に関する研
的レジームが政策、政府、社会的同盟などの短
究のなかで、 Meyer(
1
9
9
0
)は安定的な側面と し
-107-
POS概念および POSの次元 ・要素
POSの次元・要素は、運
て制度情造と政党システムに、変化しやすい側
文化的価値と伝統的な社会的諸実践との問の歴
面としてエリ ー ト配置や公共政策の変化に 、そ
然とした矛盾のドラマ化、①急に押しつけ られ
れぞれ分節化して分析を行っている 。
た不満、③システムの脆弱性または非正統性の
ドラマ化、@挑戦者が自らの不満や要求をマ ッ
ピングしうる革新的なマスター・フレームの有
3.2 文化的側面と制度的側面
o
n&Meyer
無、として同定している 。そして、Gams
次に、文化的ー制度的の輸に関しては、前者
は POSの文化的側面、つまり、運動のイデオ
が政治的機会のフレ ーミ ングの重要性を強制す
ロギー資源や運動活動のポテンシヤルを噌大さ
彼 らは重要な分析
るのに対して、 McAdamは 「
せる文化的機会の拡大を強調する 。そして後者
的区分を不明確にする」と批判している (16)。
は、先に指摘した運動の盛安や運動成功に影響
「最も政治的な機会として擁護できる傍造変動
を及ぼす、制度的側面を強調するアプローチで
や織力変化のような要因は、それらの変動が解
ある。 3.1や次節で取りあげる POSの例は主
釈されフ レー ミングされる集会的過程と混同さ
に制度的側面を扱っているといえる。
れてはならない。このこつを分縦して扱うのは、
POSの文化的側面と制度的側面の関係につ
政治的機会の概念的正確さを保つためだけでは
いては、それが動員を行う挑戦者に認識される
なく、 二つの興味深い現象を見分けるためであ
機会か、それともそれとは区別される備造的 ・
る。すなわち、一つは集合行為にと って明 らか
制度的なものなのかをめぐって活発に鵠論され
に布利な政治的変動があるにもかかわらず、集
て い る (Kurzman 1996)。 こ れ に つ い て、
合行為を促す解釈が行われないケースで、もう
Gamson& Meyerは政治的機会には客観的に存
一つは挑戦者集団の織力関係に大した変化がな
在する側面 とそれが行為者によって社会的に構
いにもかかわらず、集合行為が起こるケ ースで
築される側面の両方があると指摘している
。要するに、抗議運動を行
ある (
l
7
リ (1996:26)
(1
9
9
6 :283)。 また彼らは、機会は文化的要素
うためには政治的機会だけでは不十分で、運動
を強く持っているため、政治制度の相違や政治
参加に関する個人および集団の
的行為者の間の関係にのみ注目すると重要な側
が必要であるということである(19)。政
ス(
18)J
面を見失うと 主張する 。
治的機会の文化的側面は、こうした認知的 プロ
を強調する
こうした政治的機会の文化的側面i
f
認知的プロセ
セスを支える背景としての意味を持つ。
社会運動の文化的資源や政治的機会の文化的
Brandは、支配的な文化的風土 (
c
u
l
t
u
r
a
1c
l
i
m
a
t
e)
の変化に注目し、 50年代の民営化と保守主義、
、
基礎に関する言及は、「 イデオロギー資源 J
60年代の改革 主義や文化的な革命的ムード、
「フレームおよびフレーミング ・プロセス Jゃ
7
0年代の景気後退や成長のためのエコロジー
政治文化など多様であるが、これらは運動を取
的限界に対する認識、 80年代の新保守主義と
り巻く政治的チャンスや制度的構造は一定で変
Z
e
i
t
g
ei
s
t
)を、それ
ポスト・モダンの時代精神 (
化していないが、運動行為が変化する場合を説
ぞれの時代に突出した機会の文化的側面として
S
w
i
d
l
e
r1
9
8
6:
明するという点で共通している (
5
)(
15)。
指摘している (1990:2
2
7
7
)。 ここでの政治的機会の文化的側面とは、
)
は文化的機会を拡大さ
また、 McAdam(1994
政治的アリ ーナの客観的構造とは区別され、特
せる要因に関する 一般的な類型を、 ① 突出した
定のイ ッシューが政治的討論や社会闘争におい
-108-
ていかにフレームされ扱われるかは、その国家
e
n
k
i
n
sandPerrow
として利用する(例えば、 J
々共同体の中 で長年培われてきた政治的伝統や
1
9
7
7
;McAdam 1
9
8
2など)。逆に、ある運動が
Joppke
文化に依存するということを合意する (
政策や文化に及ぼす長期的な影響を解明する研
1
9
9
3 :1
4
)。
立、運動が作り出す構造的機会に注目し、
究者 l
こうした文化的側面のなかにも、意識的、無
POSを従属変数として扱う(例え 1
;
(、Andrews
意識的に人々の政治活動の中身を規定し、政治
1
9
9
7など)。また、分祈方法によっては、 POS
制度の機能に E大な影響を与える政治文化のよ
との関連で同一運動の国際比較 (
K
r
i
e
s
ie
la
l
.
うに、相対的に恒常的で、変化するにしても漸
1
995や sr
o
c
k
eu 1
991
)
、類似の運動の地域開比
次的にしか変動しない構造的なものと、特定の
E
i
s
i
n
g
e
r1
9
7
3
)、平和運動と反原発運動など
較(
イッシュー・サイクルのよ うに、変化しヤすい
9
9
1)などのクロス ・
の運動聞の比較(Joppke1
ものとがある 。
セクショナル分析と、長期的な歴史分析(同一
国家における社会運動の変遷を一世紀単位で分
第 4節 政 治 的 機 会 栂 造 論 の 類 型 化
h
o
r
l
e
r& T
i
l
l
y1
9
7
4や T
i
l
l
y1
9
9
5)
析する方法、 S
や短期的な趨勢分析(暫定的に 5
0年朱満とす
このように抗議運動と政治環境との関係に照
989bや Cooper1
996) などの時
ると、 Tarrow1
系列分析に分類できる (20)。
i
絡を合わせる POS研究とい って も、実はさま
ざまな政治的機会の次元や要素があり得る。だ
具体的な実証研究を念頭においてレビューを
から、一口に POSとい っても、研究者が何を
行うならば、便宜的な整理ではなく、それぞれ
問題としているかによって、政治的機会のうち
の研究者が何を説明するために POSに注目す
どの側面に注目するかカf異なってくる。また、
るのか、またその聞いを解明するためにどのよ
研究者が社会運動のどのよ うな側面に関心を持
うな POSの次元・要素に熊携を合わせるのか
っかによって POSの定義やその傍成要素も異
p
r
o
b
l
e
m
a
l
i
c
s
)に注目する
といった、問題情制 (
なる。だが、いずれにせよ、こうした研究は、
必要がある 。そこで、我々は第 1節で述べたよ
運動の発生や成功にとって政治的および制度的
1
断絶、
うに、特定の運動どうしの歴史的連続 /
機会の重要性を強調する点 で共通しているので
今日住民投票のような運動形態・抗議戦略が注
T町 ow1
9
8
9
a
)。
ある (
目される理由、運動形態の地域的多様性、抗議
今回 、多 様 な 拡 が り を 見 せ て い る 欧 米 の
戦略の社会的インパクトなどを、より広い政治
P
OS論を包括的にレビュ ーする ことは困維で
環境との関係で分析するために、これまでの先
あるから、何 らかの方針で先行研究を分類 し:
考
行研究のなかで最も実証研究の蓄積が多い方法
祭するしかない。とはいえ、 POS論を分類す
(
21)、つまり P
OSを「独立変数j か「媒介変数
るとしても、既述のような POSの次元 ・要紫
として提えた上で、それが分析する「紋説明変
に注目する分類方法以外にもさまざまな分類基
数j に従って類型化を行う 。 そのため我々は
準があり得る。例えば、運動発生や時間ととも
POSが説明する「被説明変数j を、(1)運動の
に変動する運動の影響力を分析する研究者は、
2
)動員水準、 (
3)
運動の帰結、 (
4)動員
発生、 (
特定の挑戦者を登場させる政治環境のダイナミ
5
)抗議形態・運動戦略、
や伝掃のタイミング、 (
ツクな側面を記述するために、 POSを独立変数
1
)から
に額型化し検討する (22)0 (
J
-109
-
(
3
)までは社
f
逆 U字モデル Jが支持され
会運動のライフコースの上での位相の変化をあ
が発生しており、
らわす。それに対して (
4)
は 、社会運動セクタ
i
s
i
n
g
e
rの業綿は、
ることが判明した。こうした E
ー全体が一つの抗議の波を形成しており、そこ
OS
都市における POSの開肱度を操作化し、 P
における運動組織の防にはさまざまな影響関係
が抗議活動に及 l
ます影響を倹証した点で、今で
や相互作用が存在することを想定している。そ
も方法論的な意義を持つといえよう。
社会運動研究における政治過程アプローチの
れらの相互作用や影響関係を時間の彼点から分
4)
で ある 。 (
5
)は抗議形態・運動
類したのが、 (
2
3
)の一人である McAdam(1982 :51)
提唱者 t
c
o
n
v
cn
t
i
o
n
al
)
行
戦略として制度的・通念的な (
は
、 E
i
s
i
n
g
e
rや Ti
l
l
y(1
978)の研究を継承しつつ、
為形態から暴力的な行為形態までの連続体とし
広範なデータソースに基づいて公民権運動の
て考えられる。
発 生 (24)を分析している。その際、彼は挑戦者
の POS、組織の強さ、認知的解放、の 三つの
4.
1 運動の発生
要因聞の相互関係 (
2
5
)を検討する (
1
982 :51
)
。
f
発生j を理解しようとす
彼は「産業化や都市化などの社会経済的変動は
る研究者は、運動初期の展開を挑戦者に有利な
既存の織力関係を再編することによって間後的
政治的機会の拡大に関連させて分析する
にしか反乱を促進 J(1
9
8
2:
4
1)
せず、従って権
(
M
c
A
d
a
r
n1
996 :2
9
)0 POS概念を運動分析に
9
6
0年代初期の黒人反乱を盛
力関係の再編が 1
導入する研究のなかで最も多いのが、社会運動
り上げたと主張する。これを説明するために彼
の発生に関するものである。
は黒人にとっての P
OSの変化を指摘し、具体
特定の社会運動の
P
OSとの関連で運動発生を分析した先駆的
的には①黒人投票権の抵要性の地大、②黒人禁
な研究が、上述したとおり E
i
s
i
n
g
e
rの研究であ
をめぐる民主党の政策転換、 ①生起しつつある
る。彼はア メリカの 4
3者I
S
市における P
OSと抗
第三世界への影響力をめぐるソ連との冷戦状況
議活動の発生やその強度との相関を説明するた
下の政治圧力、をあげている (
1
9
8
2 :1
5
6
・
1
6
0)
。
めに、地方紙半年分の人組問題をめぐる抗議イ
Mc
Ada
mの公民権運動に関する分析は従来の集
ベント・デー タを収集し、都市間比較を行った。
合行動論や資源動員論を批判的に検討するとと
OSが相対的に
このデータに基づき、抗議は P
もに、社会運動理論にパラダイム革新をもたら
閉じている都市で発生するという
f
線形モデルJ
連動研究に多大な影響を及 l
ました。
し、その後の i
と
、.
抗鵠 l
立政治システムが開き始めたときに発
それに影響された 一つが、 C
o
s
l
a
i
nによるア
c
u
r
v
i
l
i
n
e
a
r
)モデル」、
生するという「逆 U字 (
9
6
0年
メリカの女性運動研究である 。彼女は 1
というこつの仮説が検討される。そこで彼は都
代の女性運動が政治誇台に躍進した原因を分析
OSの開紋度を測る尺度として、
市における P
するために、ニューヨーク ・タイムズの年次索
①首長の形態(市長制かシティ ・マネージャー
引 (1950-1986年):を利用し検討している。そ
制か)、②マイノリテイにとっての代表選出の
こでは女性運動がアメリカ政治変動のなかで生
機会(集住度)、③選挙での影響力(パルチザ
成したことが強調される 。それによると、とり
ン ・システムの布無)をあげている。こうした
OSは、①女性運動に冷
わけ女性にとっての P
尺度を変教化して抗議水準との相関を分析した
淡であったアイゼンハワ一大統領の任期満了、
結果、開放度が中程度の都市で最も多くの抗議
②ケネデイが重要な有権者として女性に関心を
-110-
f
抗議を起こす p
o
s
Jを、①将箪統
示したことによって開欣され、その結果、女性
のなかで、
1
9
9
2:
2
6
4
3)
。
運動が開花されたのである (
治、②地元の侍人口規模におけるバリエ ーショ
分析対象のスケールから見て上記の運動研究
ンで測定する。分析の結果、彼は利害と機会
(
i命の発生をその背後にある
とは異なるが、 1
(
P
O
S
)の両方が抗搬を行う傾向を J
也大させる
POSとの関連で分析する点 で共通しているの
が、郡レベルにおいては利害より機会が若干上
be
r
s
c
h
a
J
Jの研究である。彼は 1989年の東
がO
回り、藩レベルにおいてはその逆であると指摘
欧革命(ポーランド、ハンガリ一、東ドイツ、
1
9
9
5;2
3
7
)。
する (
チェコスロパキア)の~&生を POS 、フ レーミン
4
.
2 動員水準
グ1
2
6
1、動員の三つの要点を中心に分析してい
9
8
0年代の東欧革命における政治的
る。彼は 1
特定の社会運動や運動インダストリーの発生
i
機会の拡大は、国内レベルより国際レベルの 1
以降から消滅直前までのライフコースを展開過
が重要であると指摘する 。それを 検証するため
程として見なすならば、その展開過程における
OSを次のように分けて検討してい
に彼は、 P
c
a
p
a
c
i
t
y
)を説明す
動貝水準の盛衰や動員能力 (
f
囲内レベルの制度構造Jとして
るために、 POS概念は利用可能であろう。例
る。それは、
9
8
9年の挑戦者
①一党支配国家(ー) (記号は 1
is
i
n
g
c
rは運動の発生以外に、抗
えば、先述の E
にとっての機会の方向性を指す)、②正統性の
説活動の強度におけるバリエーションをも分析
欠 如 ( +)、③エリ ートの分裂 (+)、「圏内レ
している。また、近年のヨーロッパにおける新
ベルの短期的なイベント Jとして@改革の失敗
r
i
e
s
i
しい社会運動の国家間比較を行っている K
伐の腐食(+)、「国際レベルの制度
(+)、⑤椴j
ら (1
9
92
;1
995)の 研 究 は 、 運 動 活 動 の 強 さ
構造j として⑤体制同盟システム(ー)、①ゴ
(
s
t
r
e
n
g
t
h)を分析するために POS慨念を利用す
ルバチョフの要素(+)、「国際レベルの短期的
i
s
i
n
g
e
rの研究を継承
るという点で、基本的に E
イベント j として@他の同盟国の改革(+)、
McAdam1
9
9
6:2
9
)。
しているといえる (
K
r
i
e
siらは 1975-1988年の西欧 4ヶ国(ドイ
@他の 同盟国における反対運動の成功(+、
)
1
9
9
6:
9
5
)。
である (
ツ、フランス、オランダ、スイス)における新
T
i
l
ly以来の社会運動の歴史研究に触発され
しい社会運動の抗議イベント・データを整備
ると同時に、運動分析に合理的選択理論を導入
し、各国に おける動良水準や行為形態の相違や
h
i
t
eの百姓 ー撲に 関する研究であ
したのが W
時系列的な変化を比較検討している。そのため
1590-1877年)のー
る。彼によると、江戸時代 (
に POSの要素として、①フォーマルな制度的
僕の発生頻度やその激 しさ(強度)は 、経済社
情造、②インフォーマルな手続きとエリートの
会的変動や政治システムの変化のなかでの個人
支配的戦略、①同盟構造、@社会的亀裂構造を
の選択に大きく左右される 。彼は、食繊不足、
K
r
i
e
s
ie
ta
J
.1
9
95:x
v
i
)。
あげていゐ (
インフレ、失業や低賃金などの経済的な諸条件
r
i
e
s
iらの研
研究対象や分析期間において、 K
が一撲に及ぼす影響を比較する。また、個人の
究と対照的なものに「社会運動の歴史社会学 j
f
利害j を都市化、経済的!脆弱性や一人当たり
の分野を位置づけることができる。つまり、前
の生産性で測定し、人々が経済社会的変動にい
者が 60年代以降の新しい運動が研究対象・期
かに合理的に対応するのかを検討している 。そ
間である一方、後者は数世紀にわたる長期的な
ム
唱E
趨事与を工業化や都市化などのマクロ変数との関
題独自の POSとして①イッシューの顕著さ、
連で分析する 。 {走者の創始者である Ti
l
l
yは
② 政府との対比における運動の立場の信頼性、
POS概念を主に政治・経済組織における大規
③ 迎動が政府の政策に反対する代弁者として機
模で激しい転換を扱うために用いる 。社会運動
能する程度に注目するとともに、運動一般に関
の歴史社会学は扱う対象や期間という点で幅広
連する POSとして@利害や意見を表出する手
く長期的である代わりに、 POS概 念 を 分 節
段としての議会外活動に対する高い志向性、⑤
i
l
l
y
化・特定化しにくい 。例えば、 Snyder&T
政府の政策パッケージに対する国際的圧力を指
はフランスの抗議の i
皮を分析する際、全国選挙
摘している (
1
9
9
6:1
78
)。
が近づくにつれ、紛争が増えると指摘している
(
1
9
7
2 :5
2
9
)。ここで彼らは選挙という政治的
4
.
3 運動の帰結と政策へのインパクト
機会が時間とともに変動する点に注目してい
c
o
n
s
e
q
u
e
n
c
e
s)(
2
7)とは特定の
社会運動の帰結 (
る。 また、 Sho
r
t
e
r& T
i
l
lyは
、 1830-1968年の
目標を追求する迎動が最終的に到達する地点、
フランスにおけるストライキ活動のピークは国
すなわち運動の成功/失敗、またはその運動が
家レベルの政治権力をめぐる競争が異常なほど
政治過程や特定の政策に与えるインパクトのこ
激しいときに訪れることを、公文書、定期刊行
とを指す。運動の締結やその政策的インパクト
物、新聞などから集められた 2000件のイベン
に関する研究のなかで古典として扱われるの
トを通じて倹証している (1
9
7
4 :3
4
4
)。 このよ
が
、 J
e
n
k
i
n
s& P
e
r
r
o
w(
19
7
7
)や K
i
l
s
c
h
e
l
t(
1
9
8
6
)で
うに体制危機や全体が政治的に不安定な時期に
ある。
は、既存の支配集団や連合のヘゲモニーが損な
J
e
地i
n
s&P
e
r
r
o
wは Ca
i
lf
o
m
i
aの農場労働者の
われることによって、すべての挑戦者の相対的
運動成功を分析する 。彼らは 1
9
4
67
2年の期簡
な地位を高めることになる 。
を、第 1期 0946-1955)、第 2期 (
1
9
5
6
1
9
6
4、
)
先の Kr
i
e
s
iらや T
i
l
l
yらのイベント分析に比
第 3期 (1965-1972)の三期に分ける 。 そして、
べ、やや記述的であるが POSと動員水準との
第 I期の全米農場労働者組合 (NFしU)の失敗と
関係を分析する点では共通しているのが、 Zuo
第 3期の農場労働者連合 (
UFW)の成功を分か
&Benfordと Cooperの研究である。
つ決定的な要因として 、反乱者のプッシュとは
Zuo &
B
e
n
f
o
r
dは
、 1
9
8
9年の中国民主化運動の急浮上
明らかに区別される (
1
9
7
7 :2
6
6
)、①外部の持
と関連した動員過程を分析する際に、 POSと
続的な支持と②政治エリート側の分裂/寛容度
フレーム戦略の両方を強調する。彼らは POS
との組合せが存在するときに、成功が訪れると
として、①イデオロギー領j
或における統制の緩
結論づける (
1
9
7
7:
2
5
1
)。
和、②中央指導部の内部分裂などをあげ、これ
また、ヨーロッパ 4カ国の反原発運動の戦略
らの要素が運動参加者の意味づけ作業に媒介さ
と運動の持つ政策へのインパクトの相違を説明
れるときに運動が盛りょがることを指摘する
する Ki
t
s
c
h
el
t(
19
8
6
)は、政治システムへの入力
(
1
9
9
5 :1
3
5・6)
。一方
、 C
ooperは 1
9
4
5年から
(運動の要求に対して開放的か否かの政治的公
統合以降までの期間にドイツの平和運動の盛衰
開性を表す要素として、①政党の教やその分裂
を POS、イデオロギー的資源、組織の三つの
の度合い、②行政と独立した議会の政策立案能
要紫から説明する。そこで彼女は、安全保障問
力、③利益集団と行政府の媒介様式、@政策妥
A
L
内
,
.-EA
協や合意形成プロセスに結びつくための要求集
続の社会運動に与える影響を理解するために
約のメカニズム、の 4つの要素)と、出力(運
は、抗議サイクルとの関係を検討すべきである
動の要求を政策に実行する能力として、①国家
と主張する。そこでの争議形態は撹乱性
機械の集権化の度合い、②市場参加者に対する
(
di
s
r
u
p
t
i
v
e
n
e
s
s)の度合いによって、通念的、敵
政府のコントロール能力、③司法の相対的自立
対的、暴力的に分けられる 。 これらを踏まえて、
性、の 3つの要素)の機造によって説明する
Tarrowは POSを①政治体の公開性の程度、②
(
1
986 :
6
34
)。
政治的配置の安定度、③運動に好意的なエリー
ト同盟の有無、@エリート内部の分裂に整理し
4
.
4 動員や伝播のタイミング
ている (
1
9
9
4:8
58
9
)。
社会運動の発生・展開・帰結に関する上記の
Zdravomysl
ovaは、旧ソ連のサンクト・ペテ
三つの被説明変数は、動員に関する時間の要素
ルスブルグにおけるこつのタイプの社会運動組
を捨象し、 一時点における運動の展開を分析し
不可能な動員の発展や
織を対象に、突然で予測l
ている。一方、 POSとの関連で運動組織聞の
それの伝播および運動形態の変化を、 POSの
影響関係や相互作用を適切に捉えるためには、
変化との関連で分析する。そこで彼女は 「
政治
時間の要素を考慮に入れなければならない。そ
サイクル (
p
o
l
i
l
i
c
a1c
y
c
1
e)Jという概念を、ペレ
のためには社会運動セクター全体が一つの抗議
ストロイカ時代 (
1
985-91年)における 「
改革サ
の波を形成し、お互いに影響し合いながら展開
イクル Jゃ「抗議サイクル」を指すものとして
するという「抗議サイクル (
p
r
o
t
e
s
tc
y
c
l
e
s
)Jの
使用している (1
996 :1
2
3
)。政治サイクルにお
考え方を導入する必要があるだろう。これまで
ける改革は抗議の機会を制限し、政治討論が部
の運動研究において、動員や伝矯のタイミング
分的に許容され、非公式の組織が作られる 。改
は最も解明されていない研究領域の ーっとされ
革がはじまってまもなく抗議サイクルがスター
てきたが(
T
ily1
978 :1
42)、近年 Ta
r
r
owをは
トし、抗議サイクルの上昇局面で POSの範囲
じめとする研究者がこうした課題に活発に取り
が拡大・変化する。サイクルのなかで変動する
組んでいる。
POSが新 たな機会を作り出し、集会行為のテ
クニックが開発され、抗議がソ連会土に広がる 。
Tarrowは 1965-1975年までのイタリアにお
ける大衆動員や抗議の時代に関する定式に基づ
これが運動のマスター・フレームを生み出し、
いて、抗議サイクルの研究を行っている
公式的なシンボルが形成される。この社会運動
(
1989b)
。動員に関する時間の要素を重視する
のフレーミングが、今度は POSを拡大させる
Tarrowは
、 POSを動員や連動の伝織のタイミ
(
1996: 1
2
6)
。つまり、先に抗議サイクルに参
ングと関連させ、抗議サイクルのなかで先発運
加するラデイカルな社会運動組織はアイデンテ
動(
e
a
r
l
yr
i
s
e
r
s
)と後発運動 (
I
a
t
e
c
o
m
e
r
s)の関係
ィテイ・フ レームを構築するのに成功するので
(
2
8
)、および運動組織問の競合から、社会運動セ
ある。当局は運動が作り出した新しいシンボル
クターにおける新しい支持をめぐる戦術的革新
を事後的に採用する。しかし、ラデイカルな組
や制度化/ラデイカル化をもたらす側面を、景
織の破壊的な戦術やその戦略フレームは、行為
気循環の論理とのアナロジーで理論化している
の動員のためには有効でない。他方、改革主義
(
1
994Ch
a
p到。彼は特定の争議形態の歴史が後
的な運動組織のシンボリック・フレ ー ミングは
u
内ぺ
'aA
抗議サイクルのピークのときに選挙動員に適合
指摘する。彼らによると、選挙に現れる政治的
9
0年選挙の民主的な成功を支援する。こ
配置の不安定性がケネデイ政府の公民権支持政
のように、彼女はソ連の政治サイクルにおける
策を生み出した。当 時、差別政策を 支持する白
POSとフレーミングの相乗作用の効果を強調
人有織者が占める
するのである。
しつつある有椀者数を挽回するために新しい支
し
、
f
手堅い南部j を尖い、減少
r
o
c
k
e
l
lも中央アメリカ 4カ国の農民
また、 B
持ソースを採し求めた民主党の試みが、投票行
反乱を比較分析する際に、動員のタイミングに
動の変化をもた らすとともに、政治動員全体を
注目し、 POSの要素として ① 「抗議サイクル
1
9
7
7Chap.
4
)。
拡大させたのである (
T
i
l
lyは工業化や都市化、国民国家建設とい
における一時的な位置j を入れている (1991 :
f
集合
2
5
4
)。そ れ以外の POSの要紫としては、②運
った近代化が集合行為に及ぼす影仰と、
動を支援する外部の同盟の有無、③反乱を抑圧
行為のレパートリー jの変濯を明らかにするた
する政織の能力、 @エリートの分節化とその内
めに、イギリスやフランスを対象にイベント分
部の紛争、⑤有意味なアクセス・ポイントの有
析を行っている 。そ の際、逮捕者の数、都市化
無を指摘している。
率、 GNP、工業労働者数、物価などの変化を
1
0
0年単位で分析し 、集合行為のレパートリー
4.5 抗議形態・運動戦略
の歴史的な趨勢との関係を明らかにしている
社会運動を最も狭い意味での制度改革から革
(
1
9
7
8
;
1
9
9
5
)。ここでの集合行為のレパートリー
命に至るまでの連続体として考えるならば、
とは、「所与の人々は共通の利害に基づく行為
POSと抗議形態・運動戦略との一般的な関係
のために、かなり限定され、また礁立された手
は識別できる。 K
i
l
s
c
h
e
l
tがいうように、政治シ
段のセットを利用する傾向があるという観察に
ステムへのアクセスが容易で政策決定の公開性
T
r
a
u
g
O
l
l1
9
9
5:4
3
)。こ
基づいた概念jである (
が高い国家では、運動はロピイング、商願、国
のレパートリー概念の特徴として、集合行為の
民投票キャンペ ーン 、選挙協力などの同化的
時系列上の連続性と、より長期にわたる抗議形
(
a
s
s
i
m
il
a
l
i
v
e
)戦略を採用し、確立された制度的
態の根本的な変動との両方を強調することがあ
ルールの範囲内で活動しようとする。なぜなら、
T
i
l
l
y1
9
9
3
)。
』ずられる (
確立された制度が政策形成や遂行段階において
T
i
l
l
yは運動組織聞の連│犯を数也-紀にわたっ
複数のアクセス・ポイントを提供するからであ
て分析し、運動の基盤がローカルからナショナ
る。これに比べ、政策形成過程が閉鎖的な政治
ルなものに拡大したことを明らかにした。彼に
体における社会運動は、確立された意思表出の
8世紀と 1
9世紀との聞
よれば、イギリスでは 1
回路がないため、デモ、敷地や道路の占拠など、
に、抗設の性格やスタイルが彦)
1的に変化し、 1
9
c
o
n
f
r
o
n
t
a
l
i
o
naJ)な戦略をとる
非制度的で対決的 (
t
佐紀にはナショナルな社会運動が支配的にな
(
1986:6
8
)
。
る。これ以前の抗議は単一のコミュニティに限
3
0年代と 6
0
定され、なおかつ集団の要求の標的である特定
年代において、選挙における政党の力の変化が、
の状況または行為者に対抗するものであった。
従来代表されなかった社会集団を政治システム
8世紀に支配的な争眼形態は穀物収奪や
また 1
に笠場させるための戦略の変化をもたらしたと
食糧暴動、関所の攻撃、祭りなどであったが、
P
i
v
e
n& Clowardはアメリカの、
一114-
1
9世紀には、こうした抗議のタイプはほとん
は産業化や都市化などの社会変動は既存の権力
ど消え、より直接的ではない集合行為の形態、
関係を再網することによって間接的にしか反乱
つまり、デモ、集会、公的集会などが現れた。
を促進しないことを前提としている (McAdam
これらはいくつかの地械を同時に巻き込み、最Ij
ie
la
l
.1
9
9
2
)
。その上で POS概念は、
1
9
82;K巾 s
奪された集団または排除された集団の名の下
変動する制度的傍造や政権側のイデオロギー的
T
i
l
l
y
で、国家当局に挑戦するものであった (
傾向によって許容される機会が運動発生のタイ
1
9
95;
3
2
3
8
)
。
ミングとその後の成り行きを左おし、 POSに
応じて抗隈形態や運動戦略および運動による政
これまでの議論から、 POSという概念を独
策インパク卜が異なってくる、ということを強
立変数か媒介変数として利用する場合、その彼
調する 。 以 下 で は こ う し た POS慨 念 の 理 論
説明変教は運動の発生、動員水準、帰結、タイ
的・方法論的意義と可能性を確認しておこう 。
ミング、運動形態 ・抗犠戦略に類型化できるこ
まず、 POS概念の意義としては、社会運動
とがわかった。このように POSの被説明変数
を取り巻く公式の制度政治や織力構造、及びそ
に注目した類型化は、社会運動の歴史的変遷、
の相互関係に注目することにより、政治システ
運動形態の地域的多機性、抗議戦略の社会的イ
ムの変動との関連で運動の発生・展開のダイナ
ンパクトなどを、より広い政治環境との関係で
ミズムや抗議形態 ・運動戦略の相違を 、時系列
分析する上で示唆に富んでおり、またそれらを
的な比較やクロス・セクショナルな分析を通じ
今後の実証研究に応用する際に、どのような
て検討するための有効な手段を提供することが
POSの次元や要素に注目すべきかという問題
あげられる 。「脱政治化Jゃ「再政治化j が問
に対しでも、重要な指針を提供しうると考えら
時進行している今日、運動政治、争議の政治と
れる。
いわれ、通常の制度政治と異なる特僚を持つ
「運動パワ ー」を理解する上で実践的な意義を
第 5節 : 政 治 的 機会 構 造 論 の 意 義 と 可
持つといえるだろう。実際、刊本における社会
能性
運動は市民の脱政治化に歯止めをかける有効な
レとして利用されることが、特に 9
0年代
ツー J
これまで見てきたように、さまざまな政治環
の住民投票運動や NGO/ NPO活動 な どの経
境の変数が社会運動の行われるコンテキストを
験からもうかがえる。こうした意味で Meyer&
形成し、このコンテキストの要素が特定の運動
T
a
r
row(
19
9
8
)がいうように、次世紀は「社会
の発生や展開を形づくる POSを構成するもの
運動の世紀Jとなる可能性があるといえよう 。
また、 POS論の最も重要な理論的な意義と
、 Ei
s
i
n
g
e
r(
1
9
7
3
)
と考えられてきた。この POSを
は市民の政治活動が成功するための「チャン
して、我々は社会運動の発生や成功を挑戦者か
スJ
、Tarrow(1
9
9
6
)は特定の目的を追求するた
らの「プッシュ要因 J(
J
e
n
k
i
n
s&Perrow1
9
7
7;
めに自 らの内 的資源を動員する 「シグナル J
、
Tarrow 1
9
9
4
)ではなく、政治的機会の「フ.ル要
Kurzmanはオープンであることを認識すると、
因」によって説明しようとすることを強調して
人々が入って行く「ドアのようなもの J(1996;
おきたい。オルソン以来、社会運動の発生・成
1
6
5
)として表現してきた 。 こうした POS概 念
功に関する研究は運動組織やネットワークが作
-115-
り出す運動参加へのインセンティプに注目して
究成果である。
きた。もちろん運動組織やネットワークによる
E
主
「プッシュ要因 j から運動の発生・成功を説明
(
1)西欧先進諸国においては 、 1970年代か ら政治不
することも重要な意義を持つが、しかしそれだ
イ
3・政党不信とともに、環境運動、平和運動など
けでは運動の発生や展開過程を説明しきれない
の新しい社会運動の興隆によって、「脱政治化j と
ことは当然である。こうした意味で、 POS概
新しい政治」論を笠場
「再政治化Jの同時進行が f
立政治的機会の「プル要因 Jを検討するとと
念l
させているという。これについては小野(1996)を
もに、 POS概 念 を 中 心 に 組 織 資 源 や フ レ ー ミ
t
f
!
l
i
。
ングを統合する試みとして、社会運動理論のパ
(
2
) こうした住民運動全体の慨略的な実態を犯嬢す
ラダイム転換を促す可能性を秘めているといえ
るという研究スタイルの代表例としては、(財)地
よう。
973)、秋元(1974)
、大和田・大内
方自治協会 (1
(
1
9
7
6)
、町村(1987,1
9
8
9)、似回貝(1
989,1
9
9
1
)な
さらに方法論的な意義としては、まず我々の
どを参照されたい。
問題関心からいえば、戦後日本の地域運動、と
りわけ公害・環境運動をめぐる研究への適用で
(
3
)こうした定義 l
iO
f
f
e(
1
9
8
5:8
2
6
)とT町
.OW(
1996b
:8
7
4
)を怠照したものである。
ある 。 この分野では、これまで多くの記述的な
文献が蓄積されたが、理論的な比較研究はほと
(
4)こ こで誤解を避けるために確忽しておくが、
んど存在しない。こ うした比較研究および歴史
Me
l
uc
ciは Ha
b
erma
sをはじめとする新しい社会運
研究のための理論的および方法論的用具を開発
動請のこうした併進論的アプローチを批判してい
ngerによって提起され
するための試みが、 Eisi
l
u
c
ciは資源動口論が主とし
る。それと同時に、 Me
た POS論 の そ も そ も の 問 題 関 心 で あ っ た 。
誇造変動が個
て運動の生成・展開過程に注目し、 1
POS論 で は 、 新 聞 や 雑 誌 な ど か ら 抗 議 イ ベ ン
人のアイデンティティや生活世界にどのようなイ
トのアグリゲート・データを収集し、またそれ
ンパクトを与えるかを考慮していないことを批判
に関連するさまざまな社会指標、経済政治統計
している。
を駆使して、綴密な検証作業を行うイベント分
(
5
)欧米の新しい社会運動翁や資源動只論に関する
析 が 主 流 に な っ て い る 。 POS論 が そ の 射 程 に
紹介は、高緩(1985)らの特集『思想 J737号
、 1
草
持 っているこ うした分析方法は、今後の日本の
原稽(1989)、石川(1988)、社会運動論研究会稽
社会運動の比較分析に大いに貢献しうると考え
(
1
9
卯)などを参照されたい。
られる。
(
6
) 政治過程アプロー チのこうした 「二重の焦点
(
d
u
alf
o
c
u
s
)Jに関しては、 Andr
c
w
s(
1
997:8
0
0
-1
)
事秀雄、水i
事弘光、
(付記)本稿は、儲口直人、中 i
井上治子、道場鋭{きの各氏との共同研究の一部で
を多照。
(
7
) これは J
e
n
k
in
s&KJ
anderma
n
s
,e
d
s白(1
9
9
5
)が編集
した本のタイトルである。
あり、 ~45 回関東社会学会大会、第 70 回日本社
会学会大会、東北社会運動研究会 (
9
7年 1
2月 1
1
(
8
) こうした流れの代表的な研究としては、 C
.Off
e
B) での報告が原型となっている。1$稿段階では
(
1990)を多照。また、ヨーロッパにおける新しい
町村敬宏、氏や出口陽司氏に有益なコメントをいた
r
i
e
si
社会運動の体系的な比較研究を行っている K
だいた。また、本稿は文部省科学研究費による研
グループ 1
1、f
社会的および文化的な変動 1
1、それ
-116-
が政治によって媒介される限りにおいて、社会運
開放↑生は抗議集団が戦略を組織する仕方 に影響を
K
I
i
e
s
i,e
ta
.
l1
9
9
2:2
3
9
)と
、
動の動員に関係する J(
及l
ます。開政的なシステムでは同化に結びつき、
彼 らの理論的スタンスを明 らかに している。
閉鎖的なシステムではより対立的な方向に向かう 。
さらに、出力に関しでも国家の性質 l
i重要である。
(
9
) こうした共同作業の代表的なものは以下である 。
K
a
t
z
en
s
t
ei
n& Mu
cle
r,e
d
s
.(1987)、K
l
a
n
d
c
r
m
a
n
s,
強 くて開放的な国家は、革新的な政策を実行しや
K
r
i
e
s
i& T
a
r
r
o
w
.e
d
s.(1988)、 Dalon& Kuechl
e
r,
i
l
s
c
h
e
l
lの POSモデルは社会的抗
すい。こうした K
e
d
s
.(
1
9
9
0
)
.Ru
c
h
le
d
.(1
9
9
1
)、J
e
nk
in
s& K
la
n
d
e
r
m
an
s
.
議運動の国ごとに違いを説明するのに大いに意味
e
d
s
.(1
9
9
5
)、 M
e
y
e
r&T
a
r
r
o
w
.e
d
s
.(
1
9
9
8
)など。
l
a
mらl
i政治シ
があると給総づけている。他方、 F
(
10)新しい社会選動論者と資源動員論者の共同研究
ステムと反原発進動との関係に関する K
i
l
s
c
h
e
l
lモ
においては、「政治的機会構造J以外にもいくつか
デルは、この両者の間のダイナミァクな相互作用
重要な概念を用いている。例えば、当該社会の社
を無視していると批判し、 POSの流動的な要素、
会運動組織全体を包括する概念として「社会運動
すなわち危機管理戦略、亀裂構造に基づく争様、
f
多組織フィールドJ
、また運動参加
エリートの反応、意思決定過程などにより注目す
セクター j や
の社会心理学といえる
r
r
fイデオロギー的パッケー
9
4
:・
5
'6
)。
べきであるとしている(19
r
ジJ 合意の動員 J フレーム調整 J 集合的アイデ
)RuchlI
ま別稿で政治的機会構造を、①政党システ
(
14
Jな ど で あ る 。 こ れ は 社 会 運 動 論 の 新
の政策遂行能力、①所与
ムへのアクセス、①図書Z
ンティティ
たな統合の試みともいえる。かつて、長谷川(1985
の挑戦者に関する同盟構造、@所与の挑戦者に関
:1
3
0
1
)は 「 社 会 心 理 学 ア プ ロ ー チ j との対比で
するコンフリク i
、構造として定義している (1
996:
「資源動員論的アプロ ーチ j を捉えたり、資源動員
1
9
0
9
1
)。
論の「政治社会学モデル」と「経済社会学モデル J
(
15
)もちろん B
r
a
n
dは、時代精神すなわち文化的成
を比較したりしたが、今 8はそうしたアプロ ーチ
土という概念は説明のためのアドホ
が上記の概念在学を中心に合流しつつあるといえる。
あることを認め、より体系的な検討を試みている。
その際、彼は風土と運動のフレーミング戦略との
その概念苦手のなかで最も中心的な概念が本稿で取
り上げる
γ クなもので
f
政治的機会情造j である。
970年代は景
相互作用に注 gする 。彼によると、 1
(
1
1
)独立変数としての POSと媒介変数としての POS
気後退や成長のためのエコロジー的限界に対する
の区分については、 Gamson&M
eyer(1996:275)
認識の士智大が、人々の聞にシンプルで自然的な生
参照。
活株式への渇望を生み出すとともに、官僚主義ヤ
(
1
2
)ヨーロッパの国民国家間の比較研究 (
K
i
l
s
c
h
el
!
産業主義に対する広範な批判を生み出す悲観的な
1
986;附l
e
s
ie
ta
.
l1
992,1
9
9
5
) がこれに該当する。
ムードを{乍り出したと主張する (
1990:3
1
)。 こ れ
(
1
3
)Ki
l
s
c
h
el
t(
1
9
8
6
)の
、 P
OSの入力と出力を比較し
連動の関心 l
立、国家政策や政治的織力の
により、 i
翠重力のバリエーションを説明するモデ
各国の社会i
配置から、生活の質や集合的アイデンティティの
OS研 究 に 大 き な 影 響 を 与 え た 。
ルは、その後の P
問題に移行した。また Hi
r
s
c
h
m
a
n(1
9
8
2
)と伺様に、
v
e
r
b
y(1
9
9
0
)は西ドイツ、フランス、ス
例えば、 O
Br
a
n
dは、サイクルの形態に従って文化的風土は
ウ主ーデンにおける平和運動の事例を用いて、入
変化するものと把握する。ただ、彼が風土の重要
構造がさまざまな平和
力の機会情造と出力の機会 t
性を主張するのは、それが政治的空間の開放/閉
運動にもたらす影響を検討する。政治システムの
鎖に関連しているからである。しかし彼も認める
-EA
t
円
ように、社会的ムードや文化的風土が、特定の動
れからの研究方向として、「従属変数j としての
員やフレーミング努力とどう関速するのかに関し
POSや
、 POSの国際的コンテキストなどを指摘し
ては、まだ特定化されていない。
ているが、現状ではその研究上の蓄積は浅いとい
9
9
6
:3
4
3
7
)。
わさ.るを得ない (McAdam1
(16)McAdamは、有利な POS(ま社会運動のための憎
レを悦 l
比するが、それ自体は運動
造的ポテンシャ J
(22) 本仰の鎖型化、つまり POS を i皮説明~数から分
に着手するための十分条件ではないということを
類する方法は、 M.:Adamからヒントを待た。しか
次のように主張している。「機会と行為とを煤介す
し、彼は POSの彼説明変数として、(1)集合行為
るのは人々であり、また彼らが状況に対して付与
2
)
1
翠動活動の成柴 (oul
come
s
)、
のタイミング、 (
する主観的意味である J (
19
8
2
:4
8
)。
(
3
)運動形態 (movemen
lf
o
r
m
)、の三つに分類して
1
996:29・
3
1
)。また、彼のいう集
いるだけである (
(
1
7
)このような政治的機会とその機会に対する認識
とのミスマッチを、イラン革命を事例に分析して
主、「運動発生のタイミング j
合行各のタイミング l
いるのが Kurzm
a
n(
1
9
9
6
)である。
だけに限定されている。これは本槙の分類では(1)
(
18) r~ 知的プロセス J に関しては、 Eycrm a n &
に骸当する。
立、我々の分類の(1)
本績で取りあげる先行研究 l
J
a
m
i
s
o
n(
1
9
9
1
)参照。また、 K
l
a
n
d
er
mans(
1
9
8
4
)の
f
合意の動員 j ヤ McAdam(
1
9
8
2
)の「認知的解放J
から (
5
)までのうち、必ずしも一つだけに限定され
も類似の概念であるといえる。
ないし、複数のカテゴリーにまたがっている研究
(
1
9
)このことに対しては、近年続ねコンセンサスが
f
専られている。
が多い。しかし、殺キの問題関心はそれらの研究
J
o
h
nS
l
on&K
la
n
de
rman
se
d
s
.(1
9
9
5
)
が何を説明するために POS慨念を利用するのかに
を参照。
あり、そこで明示される POSはどのようなもので
(
2
0
)さらに時系列分析は、 累積 された時系列データ
あるかを特定することであるから、それらの研究
を利用するイベント分析 (
O
l
z
a
k1
9
9
2
)と、インタ
のなかで最も中心的な問いに絞って分績を行った。
P
i
v
e
n&
ビューなどを通したケ ース聞の比較分析 (
(
2
3
)社会運動の政治過程アプローチというネ ー ミン
Cloward 1
9
7
7)に分照できる。近年の政治過程アプ
グl
立
、 McAdamの出陸作『政治過程と織人反乱の
ローチ、とりわけ政治的機会情造会分析する際の
発展、 1930・1970J (1982)で初めて後示された
方法論的特徴が、イベント分析の利用 である。イ
(
Taπow1
9
96b:8
7
4
)。彼の作品の優れている点 l
立
、
ベント分析は、もともと家族研究や人口学:で用い
公民俗運動に関する抗議イベン トや、それと関連
f
t近の運動研究におい
する行政や司法の対応、世S
量調査、主張組織の会
て用いられるイベント分析とは、一貸した基準で
貝数、外部か らの資金援助といったデータを収集
新聞や公文書などを用いて抗織イベントのデータ
し、それらを統計的に検証して運動のダイナミズ
を集め、コ ー ド化してデー タペースを整備し、そ
ムを鮮やかに締き出した部分である。
られていた手法であるが、
れにより社会運動の動態を針Z
量的に分析する手i
去
(
2
4
)McAdam l
i公民権運動の「徒主主」の他に、運動
を指す。国際比較やマクロ分析の増大とともにイ
の「発展/衰退Jに関するモデルも提示している
ベントを用いた研究は樽大 し
、 87-93年に掲載
(
1982:5
2
)。
された拾文で最もよく使われた方法論となってい
(
2
5
)これについては長谷川(1991:2
5
4
.
6
)容照のこと。
る(
C
r
i
s
la
n
dMcCanhy,
1
9969
5
.
6
)。
(
2
6
)フレームの概念は、ゴフマンのフレーム分析を
運動研究に応用した概念であり、個人や集団が司I
(
21
)近年のレビュ ー倫文で McAdamは
、 POS鈴のこ
-118-
象や出来事を意味づけすることによって、経験を
(
2
8
)本稿は McAdam(
1
9
9
5
)の研究を、具体的な実証
組織 し行 為をガイドすることを可能にする解釈図
研究よ りも 、パースペクテイブの提示を試み てい
式のことである (
Snowe
ta
.
l1
9
8
6
:464
・
81
。
)
るという判断から省略した。そこで彼は抗議サイ
(
2
7
)POSを独立変数として扱う本稿のレビ ューの 1
1
クルにおける先発連動 (
i
n
i
t
i
a
t
o
rmovements)
が後発
S
十とは笑ーな って 、Andrew
s(1
9
9
7
)は ミシシッピ州
運動 (
s
p
i
n
o
f
fmovements)に与える影響を考察する
における 公民権運動を独立変数として扱い、それ
ために、{云備やネットワークに!渇する理論的考察
が政治過程にもた らす長期的な帰結 (
黒 人選挙主主
を行った上で、それをアメリカ公民権運動で例示
録者数、選也された黒人公務員の数な ど) を級審
している (
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