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ATLAS飛跡検出器開発用 新型ビーム試験DAQシステムの構築
素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 日本物理学会 第69回年次大会@東海大学 2014年3月30日 ATLAS飛跡検出器開発用 ビームテストDAQシステムの構築 京都教育大学大学院 西村 龍太郎 高嶋隆一、安芳次A 、田窪洋介A 、海野義信A 、 池上陽一A 、寺田進A 、石島直樹B 、花垣和則B 、 留目和輝C 、陣内修C 、原和彦D 、 他アトラス日本シリコングループ 京都教育大、高エ研A 、阪大理B 、東工大C 、筑波大D 1 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory LHC アップグレード HL-LHC =10x LHC ATLAS LHC(Large Hadron Collider) CERNにある陽子・陽子衝突型円形加速器 重心系エネルギー8TeV→14TeV 2013年にはHiggs粒子発見 ~2023年のアップグレードによるLuminosityの 大幅向上 1×1034cm-2s-1→ 5×1034cm-2s-1 →被ばく線量の増大に耐えうる検出器の開発 2 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ATLAS検出器 内部飛跡検出器 ATLAS検出器 ATLAS Experiment © 2012 CERN SCT LHCの粒子衝突点の一つに設置された汎用粒子検出器 Luminosityの大幅向上に対応するためアップグレード予定 3 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 現行 SCT 新型 シリコンストリップ検出器(SCT) ストリップ長 128mm → 24mm, 48mm ストリップ間隔 80um → 74.5um センサー型 p-in-n → n-in-p 4 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ビームテスト SCTのアップグレードに向けて新しいセンサー・チップの試験を行う必要がある • 試験を行う場所によるシステムの違い →セットアップ・解析に手間がかかる →独自のDAQシステムが必要 • 試験の度に新たなDAQシステムを構築 SCTにおいては SingleChip用DAQ(BeamTest使用実績有) Module試験用DAQ(外部トリガー無) の2系統が存在 →簡易な修正・変更によって各試験に用いる ことのできる汎用DAQフレームワークが必要 • イベントビルドの機構はEUDAQを参考に 5 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 研究目的 飛跡検出器(SCT)の評価用DAQシステムを構築する。 また、DAQシステムに用いるソフトウェアについて モジュール化を進め、汎用性を高める。 6 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 目的達成に向けて DAQシステム SCTモジュールのコントロールに 必要な機能を SEABASボードに実装 SEABASボードを 制御するための ソフトウェアを開発 取得したデータを 記録・解析する ソフトウェアを開発 実際にシリコンストリップ検出器の ビームテストに用いることができるか試験 SEABAS・・・Soi EvAluation BoArd with Sitcp:SiTCP搭載SOI評価ボード SiTCP・・・ネットワークプロセッサ 7 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory DAQシステム概要 SCT モジュール 読出し Trigger Logic Unit SCTJDAQ ソフトウェア 8 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ABCn250 1Chip Module センサー • 本DAQシステムで使用 コネクタ • ABCn250を1つ搭載 ABCn250 ABCn250モジュール コネクタからチップへの配線 (チップのCH30,32・・・96に接続) 9 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ABCn250制御機能の実装 DAQ ソフトウェア データ パラメータ・コマンド ファームウェア (SEABAS) 010011011・・・・ 110010011・・・・ ABCn250 チップ • 先行研究(2012,田窪・遠藤)によるABCn250 Module試験用DAQシステム を基本とする • DAQ用ソフトウェアでパラメータ・コマンド生成 • ファームウェアは受け取ったパラメータ・コマンドを用いてABCn250を制御 10 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 外部信号によるデータ取得 トリガー信号 トリガーコマンド ファームウェア (SEABAS) 010011011・・・・ 110010011・・・・ ABCn250 チップ データ • 基本としたModule試験用DAQシステムは外部信号による データ取得に対応しない • 外部信号によるデータ取得機能をファームウェアに追加 11 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory Trigger Logic Unit (TLU) TLUに用いたSpartan 3AN Startar kit FX2拡張コネクタにNIM IOを増設 • 各測定機器の状態を確認し、トリガー信号の送信を制御する • イベントの識別に用いるTimeStampを生成するためのクロック 信号を配信する 12 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory タイムスタンプ 測定機器 TLU タイムスタンプ用 クロック(100kHz) Busyでなければ トリガー発行 Timestamp用カウンタ(24bit) TLUからのクロックで加算、コマンドで0に トリガー信号 (width:100ns,~2.5Mhz) トリガー 処理開始 トリガー信号 Busy信号 タイムスタンプ付 データ カウンタリセット コマンド PC カウンタ記録(24bit) トリガー受信時の値を保持 イベントビルド 13 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory DAQ用ソフトウェア (SCTJDAQソフトウェア) • ABCn250の制御・データ解析・記録などを行う • 各種機能を独立したモジュールとした ソフトウェアの構造を簡易に モジュールの組み替えによる機能の変更・追加 独立プロセスでの並列処理による高速化 • コントロールのためのGUIにCherryPy+Jqueryを使用 14 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory SCTJDAQソフトウェア概要 Event FragmentをEvent Numberと TimeStampで照合して統合 SBCn250 1Chip Moduleと SVX4 Telescopeから 読出しを行なう場合の構成例 15 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory SCTJDAQソフトウェア動作イメージ (GUIとABCn250モジュール) 16 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 試験方法 • Module試験用DAQシステムとの比較 ABCn250モジュールに対してL1 Delay Test、Strobe Delay Test、 Threshold Scan Testの3種の試験を行い、従来システムと結果 を比較 • 複数台のモジュールからの読出し ABCn250モジュール2台からの読出しを行い、1台のときと結果 を比較 • 疑似パルスによるL1 Delayテスト ABCn250モジュール2台のセンサーコネクタに疑似パルスを入 力し、L1Delayを変更しながら検出の様子を確認する 本発表ではこの結果について提示 17 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 疑似パルス入力用コネクタ • 微分回路 • NIM信号に応じたパルス をセンサーコネクタに入力 18 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 疑似パルスの波形 厳密な波形は不明だが、ヒットの検出の様子から、 以下のような波形になっていると予想される 疑似パルス 0V Vthn NIM信号 0V 19 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 疑似パルスによるL1 Delayテスト PipeLineの L1Delay値(0-255) 疑似パルス用 コネクタ 疑似パルス NIM信号 1kHz 100ns ABCn250 L1Trigger発行 コマンド 遅延(-1~4μs) TLU SEABAS 1kHz、100nsのNIM信号を二系統に分配し、 • 一方を疑似パルス入力用コネクタを介してABCn250モジュールに入力 • 他方をトリガー信号としてTLU経由でSEABASのNIM入力に入力 • トリガー信号を疑似パルスから-1~4μs遅延させ、トリガー100回あたりの 検出効率の分布がどのように変わるか確認 ストリップ チャネル ⇒検出効率の分布が40カウント/ μs(遅延時間)程度変化していれば期待通り にテスト出来ていると考えられる ※1つのL1Delay値につきトリガー100回分のヒットデータをプロット ※コネクタからチップへの配線は1つ置き(チップのCH30,32・・・96に接続) 20 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 試験結果 縦軸:L1Delay値 横軸:センサーストリップチャネル 左から順に遅延時間0,+1,+2,+3,+4μs (-1μsは除外) 21 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory まとめ 新たなSCTシリコンストリップ検出器ビームテスト用DAQシステム(SCTJDAQ)を 構築するにあたって、 • コマンドの実装は「ソフトウェアから受け取ったパラメータ・コマンドを用い てファームウェアがABCn250を制御する」方式とした • ビームテストに使用できるようにするため、外部トリガーを実装した • イベント情報識別のため、TimeStamp情報を付加する機能を実装した • DAQ用ソフトウェア(SCTJDAQソフトウェア)についても新規開発を行なった • ソフトウェアは各機能をモジュールに分割し、構造の簡易化、機能追加・ 変更の容易化、並列実行による高速化を図った 試験結果より • SCTJDAQは正常にABCn250 1Chipモジュールを制御し、データを処理でき ていることが確認できた 22 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 今後の課題 • 現在大阪大学で開発がすすめられているテレスコープ (SVX4)をSCTJDAQに組み込む →現在トリガーレート100Hzで正常動作を確認 • 各種機器を同期して1kHzで動作させる • ビーム試験による動作の確認 23 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ATLAS飛跡検出器開発用 ビーム試験DAQシステムの構築 BACKUPS 24 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory イベントビルド用モジュールの制作 ABCN Reader EFをイベントナンバーと TimeStampで照合して統合 Event Builder SVX4 Reader Event Logger Event Dispatcher Event Analyzer 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory イベントデータ構造 Event Header EF Length 1~N EF Data 1 EF Data 2 固定長 可変長 可変長 可変長 イベントナンバー、タイムスタンプ、 データの長さ、含んでいるEFの数 ・・・ ・・・ EF Data N 可変長 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ABCn250ファームウェアロジック 27 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory SCTシリコンストリップ検出器 • ベースボードをはさんでシリコンセンサーを 表裏 に40mradの角度を持たせて貼り付けてある • 通過した粒子の飛跡を二次元データとして取得 可能 28 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory SEABAS (Soi EvAluation BoArd with Sitcp) • • ネットワークプロセッサ(SiTCP)、ADC、DAC、NIM、FPGAを搭載 使用したいチップに合わせたドーターボードを取り付けることによって さまざまな検出器をテストすることができる汎用読出しボード NIM IN/OUT User FPGA SiTCP ドーターボード用 コネクタ 29 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 試験結果(従来DAQとの比較) 従来DAQシステム SCTJDAQシステム 縦軸:L1Delay値、横軸:センサーストリップチャネル 同一モジュールに対してL1 Delay Scan試験を実施。 30 試験結果 (モジュール2台での読出し) 1台での読出し(上からA、B) 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 2台同時の読出し(上からA、B) 縦軸:L1Delay値、横軸:センサーストリップチャネル 31 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 試験結果(疑似パルス,モジュールA) 縦軸:L1Delay値 横軸:センサーストリップチャネル 左から順に遅延時間0,+1,+2,+3,+4μs (-1μsは除外) 32 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 試験結果(疑似パルス,モジュールB) 縦軸:L1Delay値 横軸:センサーストリップチャネル 左から順に遅延時間0,+1,+2,+3,+4μs (-1μsは除外) 33 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ※ ABCn250(ABCN ) ATLAS検出器アップグレードのた めに開発された新型SCTからデー タを読み出すためのチップ 1つのチップにつき128ch読み出 すことができる それぞれのチャンネルについて、 接続されているストリップのヒット の有無を検出することができる ABCn250 ビーム衝突256回前までのデータ 新型SCTストリップモジュール を記録でき、指定された回数だけ 遡ってデータを取り出せる ※ATLAS Binary Chip - Next 34 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory LHCにおけるビームの衝突間隔 • 各検出器内でビームは平均40Mhzで衝突する • これより各衝突イベント間の時間間隔は25nsになる • L1Delayが25ns刻みになっているのはこのため 1 T = より f 1 = 25 ×10 −9 s = 25ns 40 Mhz 35 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 実験全景 ドーターボード SEABAS ABCNチップボード 疑似パルス入力コネクタ 36 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory L1 Delay • L1 Delayとは、Level1 Triggerが実際のヒットからどの程度遅 れているかを表す数値 • ABCNチップがトリガーに対して適切にヒットを返すには適切 なL1 Delayの値を設定する必要がある • 1カウント辺り25nsずつ遡る • 疑似パルスを入力して適切なL1 Delayの値を調べるテストが L1 Delay Testである 37 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory Strobe Delay • L1 Delay値1カウント辺り25nsの長さがある • この25nsの間のどのタイミングのデータを返させるかを設定 する値がStrobe Delay • Strobe Delay TestはL1 Delay Testと同様に、疑似パルスを入 力して適切なDelayの値を調べるテストである 38 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory Threshold Scan • SCTを粒子が通過すると、生じた電荷がSCTからABCNに入力 される • この時入力された電荷によって生じた電位差をABCNはヒット として返す • 実際には周囲からのノイズによっても多少の電位差が生じる ため、電位に一定の閾値を設けて誤検出を少なくする必要 がある • Threshold Scanは疑似的に入力した電荷に対して閾値を変え ながらそれをヒットとみなす割合を調べ、適切な閾値を求め るテストである 39 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory BCC(Buffer Control Chip) BCCヘッダ 1111001100111011・・・・ BCC ABCN 1 11010111001001・・・・・・ ABCN 2 11010101001100・・・・・・ • ABCNチップからデータを高速に読み出すためのチップ • ABCNチップ2系統のデータをミックスして送信する • 受信側で逆の手順で再びデータを分離 40 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory 先行研究における コマンド実装のアプローチ • ATLAS実験アップグレード用シリコン検出器テストシステムの開発およびプロトタイプ 検出器の性能評価(岡村航,大阪大,2011) • ATLAS新型シリコン検出器開発用ビーム試験DAQの構築(岸田拓也,東工大,2012) ABCN制御コマンド : ファームウェア(SEABAS)内に実装 ABCN制御パラメータ : ソフトウェア(PC)内に実装 岸田版 ソフトウェアから受け取ったパラメータを用いて ファームウェアが実装されたコマンドでABCNを制御 • ATLAS実験アップグレードに向けた新型シリコン検出器モジュールの読み出し システムの開発(遠藤理樹,大阪大,2012) ABCN制御コマンド : ソフトウェア(PC)内に実装 ABCN制御パラメータ : ソフトウェア(PC)内に実装 田窪版※ ソフトウェアから受け取ったパラメータ・コマンドを用いて ファームウェアがABCNを制御 ※田窪洋介氏(KEK助教)が現在本系統のファームウェアをサポートしていること 41 による 素粒子物理学研究室 Experimental Particle Physics Laboratory ATLAS検出器 ATLAS Experiment © 2012 CERN ATLAS検出器(A Toroidal LHC ApparatuS:円環状磁場LHC測定器) ATLAS検出器はLHCの粒子衝突点の一つに設置された汎用粒子検出器 Higgs粒子や標準模型を超える物理現象の探索を行う ATLAS検出器の内部検出器にはシリコンストリップ検出器(SCT)が用いられ ている 42