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有機 - 新快速のページ
有機の基礎 炭素と炭素がすべて単結合…アルカン 炭素と炭素間 1 個二重結合…アルケン 炭素と炭素間 1 個三重結合…アルキン C が 2 個のものは C2 H6 エタン C2 H4 エチレン C2 H2 アセチレン 炭化水素 炭素原子と水素原子だけでできた化合物を炭化水素という。有機ではこの炭化水素が思い 切り出てくる。メタン,エタンあたりの名前と化学式は必ず覚えたい。 C の数 語幹 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 meth eth prop but pent hex hept oct non dec アルカン-ane Cn H2n+2 アルケン-ene Cn H2n アルキン-yn Cn H2n−2 アルコール-anoul Cn H2n+1 OH メタン エタン プロパン ブタン ペンタン ヘキサン ヘプタン オクタン ノナン デカン × エチレン プロピレン ブテン ペンテン ヘキセン ヘプテン オクテン ノネン デケン × アセチレン プロピン ブチン ペンチン ヘキシン ヘプチン オクチン ノニン デキン メタノール エタノール プロパノール ブタノール ペンタノール ヘキサノール ヘプタノール オクタノール ノナノール デカノール ※太字は「不規則活用」のもの ※プロピレンは「プロペン」ということも多い 表の使い方は簡単である。まず,炭素 C の数を見て語幹を探す。H の数に応じてアルカ ンかカルケンかアルキンかでその語尾をつければよい。C5 H10 なら,まず炭素原子が 5 個で 語幹が pent。そしてアルケンなので ene をつけて pentene。つまり「ペンテン」となる。炭 素原子が 1 個の場合,アルケンやアルキンは当然ながら存在しない。アルケンは炭素どうし の二重結合なので,炭素原子が 1 個では成立しないからである。また,英単語の一般動詞の ように中には「不規則活用」するものもあるので気をつけてもらいたい。メジャーなエチレ ン,アセチレンはこの「不規則活用」炭化水素である。 この表の法則を理解しておけば,有機化合物名が覚えられない という悩みは解決するはずである。 ●アルカン すべての炭素原子どうしが単結合でできた炭化水素。 語尾にアン (ane) をつける。分子式は Cn H2n+2 となる。 ●アルケン 炭素原子どうしで 1ヶ所だけ二重結合が存在するも の。炭素原子どうしが互いにもう 1 本ずつ手を出し合わなければ ならないので,水素原子を 1 個ずつ手放すことになるため,アル カンよりも水素原子が 2 個少ない。語尾にエン (ene) をつける。 ●アルキン 炭素原子どうしで 1ヶ所だけ三重結合が存在するも の。語尾にイン (yn) をつける。 c1088-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 不飽和結合炭化水素 二重結合 1 つでアルカン 三重結合 1 つでアルキン 二重結合が 1 つ増えると H 原子 2 個が「犠牲」になる 二重結合 1 本に水素分子 1 個が付加 付 加 炭素と炭素の間の二重結合の 2 本の「手」のうち 1 本は切 れやすい。切れることで様々な分子を結合することができる。 切れた「手」に別の物質が結合することを付加反応という。二 重結合 1 本に対し,原子 2 個が結合できるので,H2 ,Cl2 ,I2 などは二重結合 1 本につき 1 分子付加できる。とある炭化水 素 X にヨウ素を付加したとき,次のようになったとする。 X + 2I2 → XI4 このとき,炭化水素 X は二重結合を 2 本持つと解釈できる。 二重結合の数と分子式 炭化水素の分子式は Cn Hm となるが,m の値は炭素原子の数で決まる。環式ではなく,鎖 式のみを考えることとする。枝分かれのないアルカンは n 個の各炭素原子に水素原子が 2 個 ずつ結合しているのでまず 2n 個,さらに両端にも水素原子が 1 個ずつあるので +2,だか ら炭素が n 個のアルカンの場合は 2n + 2 個の水素原子を持つわけである。 二重結合を 1 つ持つ場合,アルカンと比べて 2 個の炭素原子が水 素を 1 個ずつ捨てることになるので,アルカンよりも水素原子が 2 個少ない。だから −2 で,Cn H2n となる。 以後,二重結合が 1 本増えるごとに水素原子が 2 個ずつ減る。こ の規則は必ず覚えるべきである。例えばヘプタジエンというものは 炭素が 7 個あり,二重結合が 2 本ある。まず炭素が 7 個のアルカン はヘプタン C7 H16 となる。ここから二重結合を 2 本増やすと水素が 4 個減るため,ヘプタジエンは C7 H12 となる。 カルボン酸やアルコール ここまでは炭化水素のみを扱ってきたが,入試ではカルボン酸や アルコールの炭素間二重結合の数を考えることが必要である。 直鎖飽和カルボン酸なら片方の端には水素原子,そして各 炭素に 2 個ずつの水素原子が結合しているので,COOH 以外 の炭素が n 個なら水素原子は 2n + 1 個である。それをもとに 示性式を書くと,Cn H2n+1 COOH と書ける。炭素が 17 個で 二重結合が 2 本あるリノール酸は COOH の H 以外の水素は 17 × 2 + 1 の 35 よりも 4 個少ない 31 個であり,示性式を書 くと C17 H31 COOH となる。示性式で二重結合の本数を分かるようにしておいてほしい。 c2096-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 異 性 体 (I) 炭化水素 (改訂 2.0) Cn H2n+2 アルカンで直鎖と枝分かれを考える Cn H2n アルケンで直鎖と枝分かれ シクロアルカンもある Cn H2n+2 型のもの これはアルカンである。例えば C5 H12 で考えてみよう。初め に 5 個の C を一直線に並べる。まず,直鎖型のペンタンが考え られる。次に枝分かれしたものを考える。 枝分かれ方の探し方としては Cn なら n − 1 以下の個数の C を直線状に並べ,両端以外の C から枝を生やすように探せば間 違いなく挙げられる。4 個のとき,端から 2 番目に C をつなげ れば,2-メチルブタンで,C が 3 個のときは十字型の 2,2-ジメ チルプロパンとなる。C5 H12 は 3 つの構造異性体がある。 Cn H2n 型のもの これはアルケンの他,シクロアルカンも考えられる。アルケンの場 合,二重結合がどこにあるかで異性体が考えられる。例として C4 H8 の構造異性体,幾何異性体を考えたい。炭素が 4 個連続するものに は 1-ブテンと 2-ブテンが考えられる。2-ブテンにはシス,トランス の幾何異性体があることを忘れないように。シスは炭素間二重結合 を隔てた水素どうしが近いもの,トランスは遠いものである。また, 炭素が 3 個連続するプロピレン (プロペン) はどのように考えても 1 種類しかない。 環状のものはアルケンではなくアルカンになる。二重結合はもた ない。この場合も完全に環状になるものと途中で枝分かれがあるも のを考えることになる。四角形のものと三角形のものが 1 つずつと 考えられる。炭素原子の配列だけから考えた「骨格」は★印をつけ た 6 種類となる。あとは「肉付け」をすれば次の 6 種類が存在することが分かる。 異性体をすべて書くときはま ず炭素原子の骨格をあり得るも のをすべて書き出す。このよう にいきなり構造式を書こうとせ ず,ます下書きをすることを心 がければよい。他の分野よりも紙やノートを若干多く使ってしまうが,必ずこのようにする といい。時間と紙をもったいながると良い結果は出せない。 c2243-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 異 性 体 (II) アルコール・エーテル (改訂 2.0) はじめに骨格となる C を書く OH を右 (左) から順につけて数える 終わったら次の骨格を考える また OH をつける アルコール・エーテルを考える 基本は書き出すこと 異性体を挙げるとき,とにかく根性ですべて書き出すしかない が,少しだけラクをする方法はある。それは,炭素原子の数によっ て炭素の骨格を書き出すのである。C5 であれば,CCCCC と 5 個 C C C C C 連続,また のように 4 個連続,そして C C C のよ C C うに 3 個連続の「骨格」が考えられる。 では C4 H10 O の異性体を例にする。Cn H2n+2 なのですべてが単 結合といえる。O は 1 つなのでアルコールかエーテルということ が分かる。 ●アルコール系 まず 4 つの C の組み方は CCCC と直鎖型になる か,枝分かれするかの 2 パターンが考えられる。直鎖型のときは OH がどこに付くかで図のように 2 通りが考えられる。もちろん,一番右と一番左に OH が 付くのは同じものと考える。折り曲げたら同じである。炭素 4 つですべて単結合の場合,あ り得るアルコールは以下の 4 種類がある。 示性式で書くと C4 H9 OH,(CH3 )2 CHCH2 OH,第二級アルコールの C2 H5 CH(OH)CH3 ,第 三級アルコールの (CH3 )3 COH となる。 ●エーテル系 炭化水素の間に O をはさむ。O の左右の C の個数は 1 対 3 か 2 対 2 のどち らかである。2 対 2 はジエチルエーテルとわかる。 1 対 3 のものは 3 の方が枝分かれするものがある。枝分かれも含め,エーテルは上図の 3 通 りが考えられる。これにより,7 つの異性体が考えられる。とにかく異性体を挙げるときは 炭素の骨格のうちあり得るものをすべて洗い出すことが大切といえる。慣れればごく短時間 で数え上げられるようになる。 計算で異性体の個数を求める方法は事実上ないので,とにかく地道に練習するのみであ る。下書きと清書をするようにすれば,多少時間はかかっても確実性が上がる。 c2233-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ アルコールとエーテル アルコール −OH 水に溶けやすく,沸点が高い エーテル −C−O−C− 水に溶けにくく,沸点が低い お互い構造異性体になりやすい アルコール アルコール (alcohol) というと消毒液や酒に入っているものを思い出 すだろうが,これはエタノール C2 H5 OH(分子式 C2 H6 O) である。広 義には,OH 基ヒドロキシル基を有する炭化水素のことを指す。ヒド ロキシル基があると水素結合が形成され,分子間力が強くなる。その ため沸点は異常に高くなる。 ●級数と価数 アルコールには級数と価数がある。OH の数を価数と いう。級数はやや分かりにくいが,ヒドロキシル基が結合されている 炭素が持つ水素原子の数によって決定される。 第 1 級・第 2 級アルコールは酸化できる。第 1 級アルコールが酸化されるとアルデヒド,さ らに酸化してカルボン酸になる。また第 2 級アルコールは酸化されるとケトンになる。 エーテル 炭素原子の間に酸素原子が含まれている C − O − C のエーテル結合を持つ物質をエーテ ルという。水素結合がなく,水に溶けにくく,沸点が低い。エーテルの代表例としてはジエ チルエーテルがあり,エタノールを濃硫酸とともに 130 ℃程度で加熱すると次のような反応 により生成する。以下のような反応を脱水反応または縮合反応という。 このジエチルエーテルは麻酔性・引火性がある。 c1073-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ アルデヒドとケトン 第一級アルコールの酸化→アルデヒド 第二級アルコールの酸化→ケトン アルデヒドは銀鏡反応, フェーリング反応の両方 アルデヒドは還元力を有する アルデヒド 官能基 CHO で表現されるもの。第一級アルコールの 酸化によって得られるもので,水に可溶。右図に挙げる ものの名前は必ず覚えること。示性式では HCHO ホルムアルデヒド CH3 CHO アセトアルデヒド となる。ホルムアルデヒドはメタノールの酸化,アセト アルデヒドはエタノールの酸化によって得られるが,ア セトアルデヒドはアセチレンに水を付加しても得ること ができる。アセチレンに水を付加すると各炭素原子に H と OH が結合し,ビニルアルコールができる。しかしこ れは非常に不安定な物質であり,水素原子がさらに炭素 間二重結合に付加し,アセトアルデヒドになる。 アルデヒドは還元性を持ち,フェーリング反応および 銀鏡反応の両方を示す。 ケ ト ン 炭素原子 C と酸素原子 O が C = O のように二重結合しているものをカルボニル基とい うが,この炭素原子にある残りの 2 本の手に炭素原子が結合しているものをケトンという。 CO があれば何でもケトンになるわけではない。ケトンになるには分子全体として炭素原子 が 3 個以上必要である。エステルなどをケトンと見間違えないようにしてもらいたい。 高校化学で最も出題頻度の高いケトンはアセトンであり,示性式は CH3 COCH3 で表され る。アセトンは水によく溶ける液体で,ヨードホルム反応を起こす。作り方は主に次のもの がある。 ● 2-プロパノールの酸化 第二級アルコールを酸化してケトンにする方法。 ●酢酸カルシウムの分解 酢酸カルシウムは (CH3 COO)2 Ca である。 また,芳香族 (ベンゼン環を含む化合物) の分野で,クメンヒドロペルオキシドという化合 物からフェノールを合成するとき,副生成物として出てくるがそれらは別の項で扱いたい。 c1090-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ カルボン酸とエステル カルボン酸はカルボキシル基 −COOH カルボキシル基の OH と ヒドロキシル基の H で脱水すると エステルになる エステルは水に溶けにくい物質 カルボン酸 カルボキシル基 COOH を持つ物質をカルボン酸という。カルボキシル基そのものは親水 性があり,水に溶けて酸性を示す。炭酸よりも若干強い酸なので炭酸水素ナトリウム水溶液 を加えるとカルボン酸が炭酸を遊離させるので二酸化炭素が発生する。 エステル カルボン酸とアルコールを結合したもの。上のポイントのように,2 分子から 1 分子の水 が抜けて別の化合物ができることを脱水反応または縮合反応という。エステル結合を持つ化 合物の構造式は必ず書けるようにしておきたい。一番有名なエステルは,酢酸とエタノール でできる酢酸エチルであり,次のような反応式になる。 CH3 COOH + C2 H5 OH CH3 COOC2 H5 脱水反応を効率よく行うため,濃硫酸を加える。エステルの例を挙げる。 ●ギ酸と 2-ブタノールの場合 また,エステルに希硫酸や希塩酸などの希酸を加えたり,水酸化ナトリウム水溶液,水酸 化カリウム水溶液などの強塩基を加えたりするとアルコールとカルボン酸 (強塩基を加えた 場合はカルボン酸のナトリウムまたはカリウム塩) に戻すことができる。これを脱水・縮合 に対して加水分解という。読んで字の如く,水を加えて分解するのである。 c1074-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ マルコフニコフの法則 (改訂 1.0) 二重結合に HCl や H2 O を付加するとき 水素原子を多く持つ炭素原子に 水素原子が結合する法則 残り物は水素原子の少ない炭素に 付加する マルコフニコフの法則 プロピレンに塩化水素 HCl を付加することを考えてみる。炭素ど うしの二重結合をほどいてフリーになった「手」に H と Cl を結合 すればよい。すると右図のように,どちらの炭素原子に H が付加し, またどちらに Cl が付加するのかという悩みが発生してくるはずであ る。これを簡単に解決する法則がある。 考えられるのは 2-クロロプロパンと 1-クロロプロパンの 2 種類の 化合物が生成するが,主生成物は 2-クロロプロパンである。このよ うに,二重結合や三重結合に H が付加するとき,H が多い方の炭素 原子に H が付加する傾向がある。この法則をマルコフニコフの法則 という。しかしすべての H がこのように H の多い方の炭素原子に結 合するわけではない。あくまで主生成物は 2-クロロプロパンである が,副生成物である 1-クロロプロパンも少なからず発生する。プロ ピレンに水を付加する場合も同じく,真ん中の炭素原子に OH が結 合して 2-プロパノールが多く生成する。 また,このマルコフニコフの法則は付加するときの法則であるが,この反対で単結合から 分子を抜き出して二重結合,三重結合を作るときの法則もある。 ザイチェフの法則 次に 2-ブロモブタンを考えてみる。これを加熱して脱臭化 水素 (HBr) 反応を考える。このとき,臭素は左右どちらの水 素と化合して抜けていくかが問題となる。これを解決する法 則もある。左右を見て,結合している H が少ない方の炭素 原子から H を奪い取るということであり,これをザイチェフ の法則という。 この場合,cis-2-ブテンと trans-2-ブテンができる。もちろ ん,わずかではあるが,1-ブテンもできている。この 2 つの 法則は絶対的なものではなく,確率的な傾向である。 マルコフニコフとザイチェフの法則を統合すると,H を多 く持つ炭素原子はより H が多くなり,H を少ししか持たない炭素原子はより H が少なくな るといえる。まさに炭素の水素格差とでもいえよう。この法則を知らないと解けない問題も たまにではあるが,国公立・私立とも出題されているのが事実である。必ず覚えておいても らいたい。問題文に付加,もしくは脱離した場合,選択的にや優先的になどの用語があった らマルコフニコフとザイチェフの法則を使うことが多い。 c1235-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 銀鏡反応とフェーリング反応 (改訂 1.0) アンモニア性硝酸銀水溶液と フェーリング溶液 のキーワードがあった場合は アルデヒド基の検出を行っている ギ酸にも反応する 銀鏡反応 有機の分野でアンモニア性硝酸銀水溶液というキーワードが出 たら銀鏡反応と考えてよい。アルデヒドは還元剤であり,自分が カルボン酸に変化する気が満々なのである。アルデヒド以外にも 単糖類やスクロース以外の二糖類も水溶液中ではアルデヒド基を 形成するため反応する。試験管に入れて混合して加熱すると試験 管の器壁に単体の銀が付着して鏡のようになる。 反応式は基本的に覚えなくてもよいが,難関国立,私大医学やマニアックな問題が予想さ れる大学を受ける際は覚えておいたほうがいい。アンモニア性硝酸銀水溶液であるが,銀と アンモニアは錯イオンを作っている。 RCHO + 2[Ag(NH3 )2 ]OH → RCOOH + 2Ag + 4NH3 + H2 O フェーリング反応 銀鏡反応と同じくアルデヒドに陽性を示す。まず,フェーリング 液は硫酸銅 (II) 水溶液と酒石酸ナトリウム・カリウム,水酸化ナト リウムなどが混ざった水溶液を混合したもので,結局は Cu2+ を含 む。これを還元することによって赤褐色の酸化銅 (I) が沈殿する。 銀鏡反応と同じく,試験管で混合して加熱する。 さすがに反応式は書けなくてもよいが,沈殿して生成する赤褐色沈殿が Cu2 O というこ とは覚えておきたい。 RCHO + 2Cu2+ + 5OH− → RCOO− + Cu2 O + 3H2 O また,フェーリング反応と銀鏡反応は基本的にあまり区別せずに共通で覚えておけばよい が,フェーリング反応には弱点がある。グルコースなどの糖類やアセトアルデヒドなど脂肪 族アルデヒドにはよく反応するが,ベンズアルデヒドなど芳香族アルデヒドに対しては反応 が鈍い。フェーリング反応は芳香族アルデヒドには不向きなのである。だから,芳香族アル デヒドには主に銀鏡反応を用いる。 ギ 酸 さて,アルデヒド,糖類以外の有機物でも銀鏡反応やフェーリング 反応を起こすものがある。ギ酸である。たとえば「エステル A を加水 分化したら有機化合物 B と C に分かれた。B は酸性の化合物であり, 銀鏡反応を起こした。また,C はアルコールである」ときたら,この B はカルボン酸かつ,アルデヒドなのでギ酸ということがわかる。図の構造式のようにギ酸 はカルボン酸でありながら,ちゃっかりアルデヒド基も持つ。 c1273-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ ヨードホルム反応 (改訂 2.0) ヨードホルム反応は CH3 CO 基を持つ有機化合物で起こす CH3 COR + 3I2 + 4NaOH → RCOONa + CHI3 ↓ +3NaI + 3H2 O カルボン酸ナトリウムと CHI3 (黄色沈殿) 有機物を確定する重要事項 原子団 CH3 CO − R や CH3 − CHOH− を持つ化合物に,ヨウ素と水酸化ナトリウムを加 えて加熱するとヨードホルム (CHI3 ) という黄色沈殿ができる。これはヨードホルム反応と よばれ,構造決定で重要な役割を果たす。 例えば分子式が C3 H6 O の有機物 A,B で A はヨードホルム反応 に陽性 (反応するという意味) で,B は反応せず,代わりに銀鏡反応 を起こしたとする。A を考えると,ヨードホルム反応を起こしたの で,CH3 CO を持つと考えられる。残りの C1 個と H3 個を合理的 につなげると,CH3 COCH3 である。これはアセトンである。 B は CH3 CH2 CHO でプロピオンアルデヒドとなる。 図的に覚えてもらいたいが基本的にアセトがつくものと,2-アル コールは,ヨードホルム反応を起こすものが多い。構造式を書いて から判断するようにしてもらいたい。 ●アセトアルデヒド ヨードホルム反応,銀鏡反応,フェーリング 反応すべてを起こすものはアセトアルデヒドである。これも問題の 解答時間短縮のためにぜひ覚えておきたい。 ●反応を示す例 アセトン・エチルメチルケトン・アセトフェノン・ エタノール・2-プロパノール・2-ブタノール…など ヨードホルム反応は入試では頻繁に出る。例えば,Cx Hy O2 で表されるエステル A を分 解したらカルボン酸 B とアルコール C になった,とあって,C がヨードホルム反応するな ら,端から 2 番目の炭素に OH がつくものとその時点で分かってしまう。 ヨードホルム反応を起こさないもの 一見ヨードホルム反応を起こすように見えるが, 実際は起こさないものが多い。見分けられるように したいものである。CH3 CO− と続くとどうしても 酢酸 CH3 COOH を考えてしまう人もいるかと思う が,酢酸はヨードホルム反応を起こさない。 CH3 CO − R の R が水素もしくは炭化水素基でなければヨードホルム反応を起こさない。 酢酸エチルなどの酢酸エステルも同じである。R の部分が O で始まるからである。という のも,ヨードホルム反応では上記の「要点」の通り,副生成物として R の部分を酸化してカ ルボン酸ナトリウムが発生するが,酢酸系はすでにカルボン酸であるため,この反応自体が 進行しない。つまり,CHI3 を落としてカルボン酸ナトリウムを作れないため,ヨードホル ム反応を起こさない。 c2236-3 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 有機化合物の構造決定 着眼点はこの 2 つ ①炭素原子の数とそのゆくえ ②加水分解後の各物質の性質 炭素の数に着目しながら フローチャートを自分で描く 頻出の例題 入試では頻繁に出題されるこのタイプの問題を見たとき,必ず問題用紙の広いスペースを 探してフローチャート (過程地図) を描いて考えるようにしたい。頭の中だけで考えるのは あまりにも無謀な作戦である。 例題 分子式 C11 H14 O2 で表される有機化合物 A がある。これに希硫酸を加えて加水分解 したら有機化合物 B と C に分かれた。B は芳香を持ち,酸化して生成する D を脱水した E は,ナフタレンを触媒下で酸化しても得られる。C を酸化した F は酢酸カルシウムの熱分解 によって CO2 とともに生成する。A の構造式を書け。 ■解答■ ではフローチャートを描いてみる。右下に分かる範囲で Cn と,炭素の数を書い ておくとさらに分かりやすくなる。 まず,E と F はすぐに決定できる。ナフタレンを酸化すると無水フタル酸となるので,E は確定する。また酢酸カルシウム (CH3 COO)2 Ca を熱分解すると,アセトン CH3 COCH3 と二酸化炭素が生成し,酸化カルシウム CaO が残る。よって F はアセトンと確定できる。 そうすると酸化し,アセトンになる前の C は,2-プロパノールと分かる。C の炭素数は 3 な ので,B の炭素数は 11 − 3 = 8 となる。D を脱水すると無水フタル酸になるということなら D はフタル酸といえる。また,B を酸化するとフタル酸になるなら,B はカルボキシル基と 炭化水素基をベンゼン環のオルト位に持つことが分かる。先ほどの考えより B の炭素数は 8。よって B はベンゼン環に COOH と CH3 をオルト位で持つ化合物と分かる。 このように図を描いて考えると安全に正解までたどり着ける。またこのタイプの問題では ヨードホルム反応や銀鏡反応も行われることが多い。例えば上記の問題で C は酢酸カルシ ウムの熱分解としたが,ヨードホルム反応でヒントが与えられることもある。入試でよく出 るのはエステルの加水分解がダントツである。 c1082-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ オ ゾ ン 分 解 (改訂 2.0) 炭素どうしの二重結合は 酸化によって切られる 1 つの二重結合から 2 つのカルボニル基 構造確定で必要な考え方 酸素による解離 オゾン分解そのものの仕組みは本来覚えなくてもよいが,難関 大ではたまに出題されるのでどのようなものか慣れておく必要は ある。問題文にオゾン分解については明記されている。内容は右 図のようなものである。 アルケンの二重結合が切れると,切れた炭素のところには変わ りに O が二重結合で結合されることになる。つまり,二重結合 1 つをオゾン分解すると,カルボニル基 2 つができる。カルボニル 基というのは,アルデヒド,エステル,ケトン,カルボン酸などにある C = O 結合の総称 である。オゾン分解後はケトンかアルデヒドになることが多い。 オゾン分解の例 実際の問題は組成式や分子式などの計算から始まるが,ここではオゾン分解だけに特化し たものを考えてみたい。 例題 分子式 C10 H12 で与えられる物質 A がある。これをオゾン分解したら,B,C が生成 した。B はベンゼン環を持ち銀鏡反応を示した,C はヨードホルム反応を起こしたが,銀鏡 反応は起こさなかった。C を還元すると分子式 C3 H8 O3 のアルコールとなった。A の構造式 を答えよ。 ■解答■ まず B はアルデヒド基を持ち,ベンゼン環を持つ。炭素の合計は 10 であるが, ベンゼン環には 6 個含まれる。そしてアルデヒドもあるため,B は最低でもあと 1 個の炭素 原子を持つ。C はアルデヒド基を持たないが,ヨードホルム反応をするということから,炭 素数は 3 つ以上と分かる。合計 10 個で B が 7 個以上の炭素を持つため,C の炭素原子の数 は 3 しかあり得ない。以上より C は CH3 COCH3 (アセトン) と推測できる。 この 2 つを連結して,構造式は次のようになる。カルボニル基の O で連結すると思えばよい。オゾン分解はこのように,分解されて 生成した化合物を 1 つずつ構造式ではっきり描いておく。そして連結 すれば難しいことはない。 c2257-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 油 脂 グリセリン (1,2,3-プロパントリオール) と 高級脂肪酸 (C の多いカルボン酸) との エステル エステル結合が 3 つある 油脂と脂肪酸は別物。混同しないこと 油脂とは 油脂と脂肪酸を混同している人が非常に多い。むしろ区別できて いない人の方が多い。まずはグリセリン C3 H8 O3 を覚えてほしい。 プロパンの各 C にそれぞれヒドロキシル基が 1 個ずつついている 3 価アルコールであり,分子量は 92 である。その 3 個の OH 基に対し, 高級脂肪酸がエステル結合したものを油脂とよぶ。高級脂肪酸とい うのは C を多くもつカルボン酸であり,次のようなものがある。以 下のものは覚えてもらいたい。 パルミチン酸 C15 H31 COOH (飽和) ステアリン酸 C17 H35 COOH (飽和) オレイン酸 C17 H33 COOH (二重結合 1 つ) リノール酸 C17 H31 COOH (二重結合 2 つ) リノレン酸 C17 H29 COOH (二重結合 3 つ) 一般的に使われる語路合わせとして「バス降りれん」というものがある。パルミチン酸, ステアリン酸,オレイン酸,リノール酸,リノレン酸の順で,パルミチン酸のみが C が 15 個であり,ステアリン酸からは 17 個となる。二重結合はステアリン酸から 0 個,1 個,2 個, 3 個の順である。C と H の数で二重結合が何本あるかを分かるようにしておきたい。 油脂というのはグリセリンの 3 つのヒドロキシル基 OH すべてに脂肪酸が結合したものの ことであり,1 つの油脂の中にはエステル結合が 3 個ある。 計算方法 パルミチン酸とオレイン酸のみからなる油脂 の分子量が 858 であったとき,油脂を構成する 脂肪酸の比を求めよ,というのはどうだろうか。 分子量はパルミチン酸が 256,オレイン酸が 282 である。1 つのグリセリンにパルミチン酸が n 個結合しているとすれば,オレイン酸は 3 − n 個となる。グリセリンと脂肪酸で脱水すると油脂と水ができるので,図のように考えると 92 + 256n + 282(3 − n) = 858 + 18 × 3 のような式が立てられる。ここでこの式から n を求めれば n = 1。つまり 1 つのグリセリン に平均してパルミチン酸が 1 個でオレイン酸が 2 個結合している油脂ということが分かる。 また,油脂が苦手な人は右上図のように線を描いて考えるとやりやすいかもしれない。グ リセリンをアルファベットの E やカタカナのヨのような形で描けばイメージがつかみやす い。とにかく油脂には 3 つのエステルがあることを忘れないように。 c32-5 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ けん化価とヨウ素価 (改訂 1.0) けん化価 油脂 1g をけん化するための 水酸化カリウムの mg 数 ヨウ素価 油脂 100g に付加する ヨウ素の g 数 モル数に注目 油脂を扱う場合もモル数中心で話を進めればよい。リノール酸のみを 脂肪酸にもつ油脂を考える。リノール酸の油脂は図のような構造で,ま ずはこの油脂の分子量を出す。リノール酸 C17 H31 COOH は 280,グリ セリンは 92,エステル化の脱水により水が 3 つ抜けるので,これらを考 m えたら 280 × 3 + 92 − 54 = 878 となる。ここで油脂 m[g] とあったら [mol] となる。 878 けん化価 塩基を使って油脂のエステルを切断してできあ がった脂肪酸との塩のことをセッケンといい,この ように加水分解することをけん化という。油脂を完全にけん化するには油脂のモル数の 3 倍 の KOH が必要である。油脂 1g をけん化するのに必要な KOH の mg 数をけん化価という。 1 上記の油脂を有効数字 3 桁で考えてみる。まず分子量は 878 なので 1g は [mol]。水酸化カ 878 3 3 リウムはその 3 倍の [mol] が必要である。KOH = 56 なので必要な KOH は × 56[g]。 878 878 これを mg に換算すれば 3 ↑ ×56 ↑KOH のグラム ×1000 ↑ミリグラム = 191.3 191 □ 878 KOH のモル ヨウ素価 ヨウ素や臭素は二重結合を発見するとすぐに付加する癖がある。 ヨウ素 I2 や水素 H2 ,臭素 Br2 など,手が 1 本の原子でできた分子 が付加するときは,二重結合 1 本に 1 分子が付加することをしっか り覚えてもらいたい。油脂 100g に対して付加するヨウ素の g 数をヨ ウ素価という。上の油脂なら二重結合を 2 個もつリノール酸が 3 つ あるので,油脂 1 個当たりの持つ二重結合の数は 2 × 3 = 6 個である。つまり I2 は 6 個付加 することになる。 100 100 では 100g で計算する。100g は [mol] であり,二重結合のモル数は × 6[mol] だか 878 878 100 ら必要なヨウ素のモル数も × 6[mol] となるので,これを g 数にすれば完了である。 878 100 ↑ ×6 ↑ヨウ素モル ×254 ↑ヨウ素グラム = 173.5 · · · 174 □ 878 油脂モル けん化価やヨウ素価の定義は知らなくても水酸化カリウムは何 mg か,とか付加するヨウ 素は何 g かなど,問題文に書かれていることもある。水酸化ナトリウムや臭素を使うことも あるので,問題をよく読んで式量には注意してもらいたい。 c1234-2 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ フェノール 芳香族 C6 H5 OH がフェノール 3 つの合成方法を覚える 水中でわずかに電離し, 非常に弱い酸性を示す フェノールは置換反応が起こりやすい フェノール合成 フェノールは融点が 41 ℃なので,常温では固体だが,水に入れると凝固点降下の原理よ り融点が下がって液化する。水中では炭酸よりもやや弱い酸性を示す。また,ベンゼン環を 持つため付加反応はしにくいが,置換反応は起こりやすい。ベンゼン環に直接ヒドロキシル 基が結合した,フェノール族の化合物に対して塩化鉄 (III) 水溶液を加えると青紫色を呈す る。合成するには主として 3 通りあるが,すべて覚えてほしい。 ●クメン法 現在主流の方法。まずベンゼンをプロピレンに付加する。マルコフニコフの法 則により,2-フェニルプロパン,要はクメンができる。 そしてこのクメンを酸化すると,C−H 結合の間に O が 2 つ,−O−O−(ペルオキシド結 合) が入り込み,クメンヒドロペルオキシドという長い名前の物質になる。ここに硫酸を加 えるとアセトンとともにフェノールが生成する。この方法をクメン法という。 ●アルカリ融解 ベンゼンスルホン酸と強アルカリ性の水酸化ナトリウムや水酸化カリウム とともに融点まで加熱し液状にして反応させる。融点まで加熱するので水酸化ナトリウムの 固体を使う。間違っても水酸化ナトリウム水溶液とは書かないでほしい。反応すると副生成 物として亜硫酸ナトリウムが生成する。 ●クロロベンゼンの加水分解 これもよく用いられている。ベンゼンの水素原子を塩素で置 換しクロロベンゼンを作る。クロロベンゼンに水酸化ナトリウム水溶液を高温高圧下で作用 させることで Cl が ONa に置き換わる。つまりナトリウムフェノキシドが合成される。これ を塩酸などで中和すればよい。 フェノールの合成方法はよく出題される。この 3 つは確実に覚えておくべきである。 c1083-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ ベンゼン環と窒素 (改訂 2.5) ベンゼン→ (ニトロ化) → ニトロベンゼン→ (還元) →アニリン→ (ジアゾ化) →塩化ベンゼンジアゾニウム 塩化ベンゼンジアゾニウムは熱に弱い カップリングするとアゾ化合物に ニトロベンゼンとアニリン ベンゼンに対し,混酸とよばれる濃硝酸と濃硫酸の混合物を作 用させると,硝酸とベンゼン環の H の 1 つで脱水反応が起こり, ニトロ化が起こる。 このとき,ニトロベンゼンは混酸には浮くが,水中には沈む。ニトロベンゼンを温めると m-ジニトロベンゼンという爆発性のあるヤバい化合物ができるので 60 ℃以下で行わなけれ ばならない。次にニトロベンゼンをスズと塩酸で還元すると,アニリンができる。 ここでできたベンゼン環に NH3 Cl がついたものはアニリン塩酸塩とよばれる。これを強 酸などで中和すればアニリンとなる。アニリンは水に溶けにくいが,アンモニアと同じよう に窒素原子と水素原子を持つため水溶液中で塩基性となる。さらし粉 CaCl(ClO) · H2 O と反 応して赤紫色になる。塩基性なので,酸と反応する。アニリンを空気中で放置すると次第に 酸化され,褐色になる。また二クロム酸カリウム水溶液などの酸化剤などで酸化すると真っ 黒になるが,これをアニリンブラックという。 ジアゾ化・ジアゾカップリング アニリンに対し,亜硝酸ナトリウムと塩酸を反応させる。 ここで出てくる C6 H5 N2 Cl は塩化ベンゼンジアゾニウムという長い名前であるが,しっか り覚えてもらいたい。これはジアゾ化である。ここで,−N2 Cl の部分を −N ≡ N+ Cl− と書 くことも多い。両方知っておくのが便利である。この反応は必ず 5 ℃以下に冷却しながらし なければならない。加熱すると,塩化ベンゼンジアゾニウムが分解されて窒素が発生する。 C6 H5 N2 Cl + H2 O → C6 H5 OH + HCl + N2 その後この塩化ベンゼンジアゾニウムにナトリウムフェノキシド C6 H5 ONa を作用させる と,ベンゼン環が連結される。これを (ジアゾ) カップリングという。ここで生成されるの は p-ヒドロキシアゾベンゼン,またの名は p-フェニルアゾフェノールである。オレンジ色 (入試では赤橙色) を示し,染料として使わる。N=N 結合を持つ染料をアゾ染料という。 このあたりは長いが,一連の流れを覚えておいてもらいたい。 c2503-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ 安 息 香 酸 (改訂 2.0) 安息香酸 C6 H5 COOH 炭酸水素ナトリウムを加えると 二酸化炭素を発生して塩になる トルエン,エチルベンゼンを酸化しても 安息香酸が生成する 安息香酸 ベンゼン環に直接カルボキシル基 COOH が結合したもの である。キシレン,エチルベンゼンなど,ベンゼン環にア ルキル基のついたものを二クロム酸カリウム水溶液などで 酸化した場合,アルキル基がどれだけ長くて多くても安息 香酸になる。入試では本当によく出るので理由はともあれ, まずは覚えてほしい。 安息香酸 C6 H5 COOH は炭酸よりも少し強い酸であり,炭 酸水素ナトリウムと反応することを必ず覚えてほしい。カ ルボキシル基の H が Na になった塩の安息香酸ナトリウム C6 H5 COONa は弱塩基を示し,水に溶けやすい。 ●フタル酸 ベンゼン環にカルボキシル基を 2 つ置換した ものもよく出題され,オルト位のものをフタル酸,メタ位 のものをイソフタル酸,パラ位のものをテレフタル酸とよぶ。フタル酸はカルボキシル基ど うしの距離が非常に近く,加熱されると容易に分子内脱水を起こして無水フタル酸になる。 異性体を見分けるときにこの考え方が必要となる。 フェノールとの関係 炭化水素基としてのベンゼン環をフェニル基という。ベンゼ ン環の水素原子 1 個が OH に置換された物質がフェノールであ る。これは水に少しだけ溶けて酸性を示す。炭酸よりも弱い酸 のため,炭酸水素ナトリウムとは反応しない。フェノールが炭 酸水素ナトリウムの炭酸イオンに勝てないのである。しかし, 水酸化ナトリウム水溶液とは普通の中和反応を起こしてナト リウムフェノキシドという塩になる。アルコキシドの一種で水 によく溶けて強い塩基性を示す。 安息香酸なら炭酸水素ナトリウムと反応する。カルボン酸の 方が炭酸よりも酸性として強いため,炭酸水素イオンを追い出 すことができる。そして Na と H がチェンジする。 C6 H5 COOH + NaHCO3 → C6 H5 COONa + H2 O + CO2 イラストでは分かりやすくするため H2 CO3 (炭酸) の形で書い たが,実際には二酸化炭素と水になり,安息香酸は安息香酸ナ トリウムになる。安息香酸とフェノールが混ざった溶液に炭酸水素ナトリウム水溶液を加え ると安息香酸が塩になって水層に移動する。これは頻出なので必ず覚えるべきである。 c2263-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■ サ リ チ ル 酸 (改訂 2.7) o-C6 H4 COOH(OH) アルコールで COOH が反応→エステル化 無水酢酸で OH が反応→アセチル化 塩化鉄 (III) 水溶液で赤紫色に 炭酸水素ナトリウムで二酸化炭素発生 サリチル酸を作る まず,サリチル酸の合成から覚えてもらいたい。ナトリウムフェノキシドに対し,高温高 圧の力をもって CO2 を作用させるとオルト位の水素原子がカルボキシル基に置換される。 さらにナトリウムイオンがヒドロキシル基からカルボキシル基に移ってサリチル酸ナトリウ ムができる。これを酸性にすれば,サリチル酸ができる。 このとき,高温高圧にしなければ置換は起こらず,単なる中和反応になるので注意。 サリチル酸を反応させる サリチル酸はカルボキシル基とヒドロキシル基の両方を持つので,カルボン酸とアルコー ル両方の性質を併せ持つという,なかなか珍しいものである。FeCl3 水溶液で紫色を示し, 炭酸水素ナトリウムを加えると二酸化炭素を発生する。 ●メチルエステル化 濃硫酸を加えてメタノールを反応させると,アルコール+カルボン 酸=エステルの反応で,カルボキシル基が反応して次のようにサリチル酸メチルが生成す る。消炎・鎮痛作用があり,肩こりなどに効く。 ●アセチル化 酢酸,普通は無水酢酸を使う。無水酢酸を反応させてアセチル基 CH3 CO− を作る反応をアセチル化という。生成するものをアセチルサリチル酸という。解熱・鎮痛作 用があり,頭痛薬などに使われている。このとき酢酸が脱離することが重要。 必ず OCOCH3 と書くようにしたい。COOCH3 とはまったく違ったものとなる。計算問題 よりも性質を問うような問題が多いため,正確に覚えてもらいたい。常温においてサリチル 酸メチルは液体であり,アセチルサリチル酸は固体である。 c2704-1 ■新快速のページ 講義ノートシリーズ 化学■