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ねじ種類と締結
ねじ種類と締結 1 ねじの基礎 ねじの名称 円筒にβ角を持った直角三角形を巻きつけると、 赤線の斜辺がつる巻線を描きます。 このつる巻線に突起をつけたものがねじです。 このときのβをリード角、Lをリードと言います。 ・リード:ねじを一回転したときに軸方向に移動する距離 ・ピッチ:隣りあう、ねじ山の距離 d つる巻線 ・リード(L)=条数×ピッチ よって1条ねじの場合は、リード=ピッチとなります リード角β 2条ねじ ねじの呼び:おねじの外径で表します。 有効径:ねじの山と谷の寸法が一致する仮想の 寸法で、強度計算や、ねじの精密測定に用いる 2 ねじの種類 メートルねじ ユニファイねじ 1.三角ねじ 1)メートルねじ: 最も一般に用いられるねじで、ねじ山角度60°で、並目と細目ねじがある。 2)ユニファイねじ 管用ねじ インチ系のねじで、ねじ山角度は60°で並目と細目ねじがある。 3)管(くだ)用ねじ 配管用のねじで、ねじ山角度は55°で平行ねじとテーパねじがある 2.角ねじ 正方形の断面をもつねじで、伝達力は大きいが、工作が困難。プレスやジャッキに使用される 角ねじ 3.台形ねじ 断面が台形をしたねじで、角ねじより工作容易。ねじ山角度は30°と29°があるが JISでは30°を規定している。旋盤の親ねじ、万力などの力の伝達用に使用。 4.のこ歯ねじ 台形ねじ 片側のみ30°の傾きをもつねじで、一方向の力が作用する場所に用いる。 5.丸ねじ ねじ山と谷底がアールをもっており、電球のソケット等の力の掛からない場所に使用 6.ボールねじ ねじ山の代わりに軸受の硬球を入れたねじで、摩擦係数が少なく、バックラッシュがほとんどない。 のこ歯ねじ 丸ねじ ボールねじ 3 ねじの表示方法 ねじの表示は、 ねじ山の巻き方向 + ねじの条数 + ねじの呼び + ピッチ + ねじの等級 で表わす。但し、巻き方向が右、条数は1条の場合は省略する。 1.メートルねじ 左 2条 M50×3 -6H (左2条ねじ、呼び径50mm、ピッチ2mm、細目ねじ、めねじ6級) 並目ねじの場合は、ピッチを記入しない 2.ユニファイねじ No4-40UNC -2A (右1条ねじ、ユニファイ並目ねじ、1インチ当り40山、2A級 ユニファイ細目ねじは、UNF。 3.管用ねじ テーパおねじ R3/4 (3/4インチ管用テーパおねじ)現場では6分という テーパめねじ Rc3/8 (3/8インチ管用テーパめねじ)現場では3分という 平行めねじ Rp1/8 (1/8インチ管用平行めねじ)現場では1分という 平行ねじ G3/4 (3/4インチ管用平行おねじ) 4.台形ねじ Tr10×2 (呼び10mm ピッチ2mmの台形ねじ) 4 ねじの等級 旧JIS ISO めねじ おねじ 適 用 メートルねじ 台形 ねじ 管用 ねじ ユニファイ ねじ 精密(1級) 5H 4h とくにあそびの少ない精密ねじ.面の粗さ、ねじ山の角 度、ピッチなどの誤差が小さく、使用中のなじみによっ て生じる締め付け力のゆるみ防止の効果がある. 中(2級) 6H 6g 機械、機器、構造体などに用いる一般用のねじ (ボルト,ナット,小ねじ類) 粗(3級) 7H 8g 建築工事、据え付け工事など、汚れや傷がつきやすい 環境で使用されるねじ 中 7H 7e 粗 8H 8c 中 A A 粗 B B 精密 3B 3A 中 2B 2A 粗 1B 1A 5 ボルト・ナットの強度区分 JISには、鋼・合金鋼のボルトの強度を3.6、4.6、4.8、5.6、6.8、8.8、9.8、 10.9、12.9の十種類が規定されています。 数字の意味: 10.9 ・・・ 10:引張強さ 1000N/mm2以上 9:降伏点が引張強さの90%以上 ナットの強度は、4、5、6、8、9、10,12の7種類が規定されています。 尚、ボルトの旧JISの4T、6T、7T、11Tは廃止されました 使用環境にあった、ボルトナットを使用すると同時に、ボルト材質に見合った 締付けトルクで締付けることが重要です。 6 ボルトの種類 1)ねじ込みボルト 押さえボルト、タップボルトとも呼ばれ、六角ボルトをねじ込んで取り付ける。 2)リーマボルト 部品を分解したとき、位置がずれたり芯が狂ったりして元通りに復旧できないと困る ときやボルトにせん断荷重が働くときに使用。部品にリーマ穴加工して、ボルトと しっくりはまる様にリーマボルトを用いる。 3)通しボルト 2つの部品にボルト外径より1~2mm大きな穴をあけてボルトとナットで締め付ける。 ネジ加工が出来ない薄板や加工工数を少なくするときに用いるが、組立上は、工具が 必要であり作業性は悪い。 4)植え込みボルト 機械を分解するときに、ボルトは本体に残しておきたいときに用いる。植え込みボルトは 平先方向を本体に埋め込みます。 5)両ナットボルト 通しボルトが、通らない構造のときに使用します。 ねじ込みボルト リーマボルト 通しボルト 植え込みボルト 両ナットボルト 7 ナットの種類 1)六角ナット 最も一般的に用いられるナットで厚みの違う3種類がある。 2種は、1種の高さの80%、3種は60%です。3種は、1種と 組合せてゆるみ止めに使用 2)蝶ナット 取付・取り外しを頻繁に行う箇所に用いる。 3)袋ナット ネジ部から流体が漏れるのを防いだり、メッキして外観を重視 するときに用いる 4)みぞ付ナット ネジの緩み止め対策で、割りピンを入れる溝が切ってある 5)丸ナット(菊ナット) ベアリングや回転軸の固定に使う 袋ナット 溝付きナット 六角ボルト 蝶ボルト 丸ナット 8 止めねじの種類 ねじ先形状 適用例 平先 丸先 棒先 とがり先 くぼみ先 使用基準 1. 取り付け位置を変える場合 2. ねじ先により傷が付くのが好ましくないとき 3. 他のねじに比較し、 保持力が劣る 1. 固定する位置が決まっている場合 2. 軸の先に穴を明けて固定する 3. 穴を明けて使用する場合の保持力は、 先端部のせん断力によるので固定力大 1. カラー、 プーリなど軸に手軽に位置決めする ことが可能であるが、 軸に食い込んでも問題 がない場合に使用する 軸に傷を入ると困る場合は、 1)軸を平らに加工したり 2)黄銅の押え金を入れます、 軸を平らに加工 黄銅の押さえ金 9 座金の種類 名 称 形 状 用 途 平座金 ボルト穴径が大きい所や、締め付け材料の耐圧力 が低い所に使用。 取付け・取外し頻度の多い箇所に使用 ばね座金 ばね作用があるので軸力を保持し、ゆるみ止めとし て使用。2種と3種(高荷重用)がある さらばね座金 ばね作用があるので軸力を保持できゆるみ止めとし て使用する。 1種(一般ボルト)、2種(穴付きボルト用) 歯付き座金 歯のばね作用を利用して、ゆるみ止めとして使用。 内歯用と外歯用がある。 角座金 木材用の座金 軸受用座金 転がり軸受用ナットと併用して使用する。 星座金ともいう こう配座金 傾斜した面に使用する。 こう配が5°(みぞ形鋼)、7°(I形鋼)用がある 10 各種緩み止め 1.ばねの反力を利用 2.ワイヤ、割りピンで回り止め 3.その他 ダブルナット 11 ねじの力学と緩み ねじを締めるとき F=W・tan(ρ+β) ねじを緩めるとき F=W・tan(ρ-β) 用語 F:締め付け力 T、N:斜面の分力 W:軸力 R、S:軸力の分力 β:ねじのリード角 ρ:摩擦角 (計算式の過程は省略) 締める時の力より緩める時の力が小さい 左図:ピンクの物体が自然に落ち始 める角度ρを摩擦角と言います。 中央:自然に落ちない角度にして、 振動を与えると落ちます。 右図:指で軽く押さえると、落下しま せん。(軸力) ねじで考えると、軸力があれば緩まない 12 ねじの緩みの分類 1.戻り回転しない緩み・・・・軸力低下による 1)初期緩み(表面の凸部がへたって軸力の低下) 2)陥没緩み(過大締め付けで締付け部の食い込み、弾性変形の低下) 3)微動摩耗による緩み(締結部同士が、相対的に滑りわずかずつ摩耗) 4)密封材の永久変形による緩み(フランジ接合部のガスケットの永久変形等) 5)過大外力による緩み(焼付き等の予想外の外力) 6)熱的原因による緩み(熱膨張係数の違う部材の締結で高温・低温時軸力低下) 2.戻り回転がある緩み 1)軸回り方向の繰り返し外力による緩み 2)軸直角方向の繰り返し外力による緩み キーにがたがあれば、正逆転 で丸ナットが戻り回転する 3)軸方向の繰り返し外力による緩み 左右に力が繰り返し 掛かる例 13 ダブルナットの原理 シングルナット 下ナット締め 上ナット締め 下ナット戻し ダブルナット 1.シングルナットを締めたときは、2つの押し付け力 軸力=“ナットのねじ山の押付け力”+“ナット下面の押付け力”・・・ゆるみ防止 2.ダブルナットの下ナットを締付けたときは、シングルナット同じ 3.上ナットを締付けると、下ナットは上ナットからの力により、下に押されてねじ山の 押付け力がなくなるか減少する。上ナットが軸力を保持している。 4.上ナットを、固定し下ナットを戻し方向に戻すと、下ナットのねじ山の下側(赤矢印)が 当たり、ロックが成立する。 故に、上ナットは締付け用で厚いナット、下ナットはロック用で薄いナットを使う ※下ナットを固定し、上ナットを更に回しても下ナットのロックは機構は発生しない。 14 座金の目的 ボルトの締付けると、ボルトの頭部がボルトの軸方向に引っ張られ、 ボルト軸に近い座面の内周側に大きな力が作用する。右図 ボルトを解体して見ると座面のボルト穴付近が塑性変形し陥没しています。 この座面面積を拡大して、平均面圧を下げるのが座金の目的。 しかし、座金にある程度の厚みがないと、ボルトを締付けたときに 変形して、本来の機能が果たせなくなる。 代表的な例は、長穴部を締付けるとき(下図) 平座金を使用しない ときの座面の応力分布 薄い座金では変形する 15 嫌気性接着剤(ねじロック) 硬化条件 『嫌気性』とは一般的にはあまり耳慣れない言葉ですが、文字どおり「空気を嫌う」 すなわち『空気(酸素)と遮断』によって、はじめて固まる接着剤である。 嫌気性接着剤が固まるために必須条件『金属と接触』。つまり、金属がないと硬化しない。 接着機構 投錨効果(接着剤が被着材の表面にある空隙に浸入硬化し、釘又はくさびの ような働きをすることをいう。 ファスナー効果ともいいます。 ある程度、ねじ面に塗布しないと効果がない。(軸方向に長く) ・完全脱脂まで必要はないが、油分はない方が良い ・表面があらいほど高い強度がでる 投錨効果 ・温度:温度が高くなれば硬化が速くなる ・隙間:隙間が小さいほど硬化が早い ねじロックの塗布のイメージ 接着剤は熱に弱いので、高強度ねじロックを取り外すときは温度を200~250℃に 上げれば外れる。 16 トルクレンチ JISでは、次の4種類が規定されています。 1.プレート形 アームが力に応じてたわみ、ヘッドに固定の指針が動き、プレートの目盛でトルク値を表示し ます。JISは呼び230~10000まで11種類あります。 2.ダイヤル形 トルク値をダイヤル形の目盛で読むようにしたものです。 3.プレセット形 調節式の値の中から希望する値を予めセットしておき、トルクがその値に達した時、音や 感 触などで分かるようにしたものです。 4.単能形 ある値だけで使うように設定されたもので設定値を変更できません トルクレンチに力を加える場合は、必ず手方向中心を ハンドルの指定位置(中央部)にします。 17 軸直角振動全振幅試験結果 全ての条件に当てはまるわけではないが、ある条件下の結果 18 ヘリサート 1.アルミダイカストやプラスチックなどの、軟質材に挿入して、ねじ強度を上げる。 2.強い締め付けを必要とする箇所、繰り返し使用され耐久性を求められる箇所 3.不良ねじ、破損ねじの補修 挿入工具 19 まとめ ねじのゆるみを防ぐ基本は 1.材質に合った初期締付け軸力を大きく取る。(トルク管理) 2.締結体に掛かる、外力を小さくする 3.ばね条数の小さなボルトを選ぶ。(ボルトを弾性域で使用する) 4.適切な、ゆるみ止め部品を併用する。(ねじロック等) 20 参考文献 ねじの締結“新”常識のうそ 日経メカニカル 松木啓介著 沢 俊之著 21