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Reb。Cup Rescue simuーati。〟 における Rescue MーKE

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Reb。Cup Rescue simuーati。〟 における Rescue MーKE
福井大学工学部研究報告第51巻第1号2003年3月
15
Mcm,Fac・Eng・Fukui Univ・,Vol・51,No.1(March2003)
RoboC叩Res㎝eSim阯ati㎝におけるRes㎝6MIKE▼ersi㎝0の設計と実装
森下草甜 久保長徳‡不経弘鮒
河原林友美ホ
小高知宏” 小倉久和州
Desig皿amd Imp1em㎝tatiom omes㎝e MIKE Version O im the RoboC叩Res㎝e Sim㎜13tiom
Ta㎞ya MO㎜SmTパ,Tak㎝ori KUEぴ,Himki SHIMORA‡
Tomomi MWARABAYASHI‡,Tomo阯m ODA鮎榊㎜d Hisa㎞z㎜OGURA榊
(ReceivedFebruary19.2003)
We designed a system,Rescue MIKE,and imp1em㎝ted to the RoboCup Rescue Simu1ation
System.The Rescue MIKE system aimsto communicatewith1argemmbers ofre1iefworkersand
contro11ers working in a rescue domain.The system has an abi1ity to report the situation of the
domain1ike a newscaster.Our system consists of mu1tip1c agents.The system co11ects information
from a simu1ated disaster scenario,and then produ㏄s a dia1ogue that fits to the actions of the
agents in the domain.We described the design po1icX imp1em㎝tati㎝of our systcm,and Rescue
MIKE s faci1itγRescue MIKE initia1version can provide aura1information that he1ps to exp1ain
the㎜fo1ding㎞ow1edge e1icitation about disaster re1iefc㎝tro1methods,automated re1iefsupport
systems,and pubユic education about the dangers of1arge natura1disasters such as earthquakes,
noods o】=vo1canic eruptions.
Keツ〃b〃∫:RoboCup,Rescue,Disaster,Dia1ogue
大規模災害において災害情報・予測・行動計画・
1. はじめに
災害救助は,社会的に重要な問題のひとつである.
ヒューマンインタフェースなどを統合することによ
って救助活動や意志決定を支援し,災害被害を最小
限に抑えることための情報管理や情報処理,伝達方
ロボカップ[1]のレスキュープロジェクト[2]・[3コの目
法,意志決定方法などの実践的な研究を目的として
的は,この問題をターゲットとして,人工知能やロ
いる.
ボティックスの最先端技術の開発を行ない,安全で
大規模災害においては,救助活動を行なうにあた
っても,避難行動を行なうにあたっても,様々な情
安心して暮せる社会を創り出すことにある.ロボカ
ップレスキューシミュレーションプロジェクトでは,
災害の現場を模擬したドメインと,そこで活動する
レスキューエージエントをコンピュータシミュレー
ションで行なうものである.
’大学院工学研究科システム設計工学専攻
州知能システム工学科
’System Design Engineering Course,Graduate Schoo1
ofEngineering
}Dept.ofHuman and Artificia1Inte11igent System
報があふれているだけでは何の役にもたたない.全
ての情報が全てのところにいきとどいた上で,それ
ぞれの組織,人が全ての情報を処理し,利用できる
ならば,全情報を配信すればよい.しかし,全体の
状況を把握し全体を指揮しつつ指示を出す人に必要
な情報と,現場で避難行動を行なう人やそれを直接
支援している人にとって,それぞれすぐに必要とし
ている情報はかなりかけはなれている.膨大な情報
からすぐに現場で必要な情報を取り出して行動をす
ることは基本的に困難である.我々の目的は,必要
ユ6
な情報を必要としている形で必要なところへ提示し,意
仮想災害空間において,主に,エージェントの行動決
志決定の支援を行なうことである.
定方法の模索などが行なわれている.
本論文で述べるシステムは,ロボカップレスキュー
レスキューシミュレーションプロジェクトの研究成
のシミュレーションシステムの状況をシミュレーション
果の公開評価を行なうシステムとして,レスキューシ
の観客にリアルタイムで実況するシステムである.こ
ミュレーションリーグがある.参加する各チームは研
れをサッカーの実況システムであるMIKE[41にちなん
究成果である防災工一ジェントをもちよって,シミュ
でRescue MIKE[5,6]と名付けた.RoboCup Rescue
レーション内で救助活動を行ない,その結果を競わせ
シミュレーションにおけるRescue MIKEシステムは,
る.毎年行なわれている世界大会の場では,多くの観
災害時に発生する様々な情報を,必要としている災害
客が観戦する中,各チームの競技が行なわれている.評
救助に関わる人,物に対して適切な情報として提供す
価の方法やルールははっきり確立していなくて,毎回
る枠組みのひとつであり,このプロジェクトでは自動
参加者などをまじえて,議論が行なわれて,よりよい
情報伝達システムの可能性を検討する.消防隊には火
ルール,評価方法などが検討されている.
災の情報,被災者に対しては避難経路など,沢山の情
報から必要な情報を必要としている場所,人に対して
音声,画像などを利用して提示することが最終目標で
ある.その手始めとして,べ一スとなるシステムとと
2.2 レスキューシミュレーションにおける
Res㎝e MIKEシステム
もに,観客にシミュレーションの全体の情報呈示を行
レスキューシミュレーションにおいて,我々のRes㎝e
なう初期バージョンの実装を行なった.このべ一スと
MIKEシステムは,意志決定支援を行なうことを目的の
なる予定のシステムとその動作をもとに問題点を明ら
ひとつとして,開発されている.現在のシミュレーショ
かにし,改良をすすめて完成を目指していく.
ンシステムは,災害空間のシミュレーションを計算機
初期バージョンの実装目標として,レスキューシス
上で行なってくれる.これを利用して,Rescue MIKE
テムとともに稼働し,ある程度の実況を生成できるも
システムでは,情報を収集し,必要な情報を提示する.
のを目指した.その概要を報告する.
この方法について検討を行なった.
我々はRes㎝e MIKEを,状況をモニタで表示する
2Rescue MIKEシステム
2.1 RoboCup Rescueシミュレーションの
概要
RoboCupのレスキューシミュレーションプロジェク
Viewer Systemや,ダメージ評価システムとしてRem−
sus(Rescue MIKE supo武system)[71,音声発信システ
ムのVoice Serverなどとともに動作するように設計し
た.図1に他のシステムやレスキューシミュレーショ
ンシステムとの関連を示す.
本システムは,情報を自然言語による音声を中心に
トは,コンピューター上で大規模災害空間のシミュレー
提示を行なう.音声による提示の利点として,手や目
ションを行ない,火災,地震などを起こし,消防工一
を使用しなくても,情報を伝達可能である点,ラジオ
ジェントによる火災の消火,救急工一ジェントによる
被災者の救助などを行なう.このように,災害時の行
や携帯電話,PDAなどで簡易に提供可能な点などがあ
る.もちろん必要ならば,画像等を利用しての情報提
動決定をシミュレートすることにより,よりよい災害
供も容易である.Rescue MIKEが情報を提示するため
救助方法の模索などを行なうプロジェクトである.さ
のもとになる情報は,Resc11e ServerのKemelから提
らに,実空間とのインタフェースも開発することによっ
供される情報である.Rescue Serverは人工密度が高め
て,実際の災害時に災害の情報や行動知識などを配信
の都市などの上での地震の影響をモデル化したもので,
することにより,PDAなどを使ったサポートや情報収
建物の倒壊や道路の交通,火災延焼,給水などドメイ
集補助,意志決定支援などを可能にする.シミュレー
ンの事象の影響を計算する多数のシミュレータを含ん
ションシステムは分散システムとなっており,都市の
でいる.また,サーバ内には多数の工一ジェント,例
GIS(地理情報システム)データに基づき,地震シミュ
えば,一般の生存者や消防章や救急隊などが存在する.
レータ,建物の倒壊シミュレータ,街路閉塞シミュレー
RescueServerのKemelはこれらのエージェントの行
タ,火災延焼シミュレータ,交通流シミュレータなどを
動や建物や道路交通,火災などの情報をデータとして
カーネルに接続し,災害状況や人の行動などをシミュ
一秒間に一度程の割合いでRescue MIKEに供給して
レートする.シミュレータとしては,様々なものが随時
くれる.
追加可能になっている.この災害状況の中に防災工一
今回のバージョンOにおいては,観客に対して全体
の状況の説明を行なう.観客が状況を理解することを
ジェントや被災者工一ジェントなどが存在する.この
17
簡単にするために,レスキューシミュレーションの説
明やビューワの見方などの説明も含んだ実況システム
としてのRβscue MIKEとした.
観客向けに実況を行なうにあたって,提示する情報
は対話形式で,会話を行なっているような提示方法を
実装した.これは,ただ情報を提示しただけでは,単
調ですぐに飽きてしまい,聞くに耐えなかったからで
2.3 Res㎝e MIKEシステムの構成
Rescue MIKEの内部構造を説明する前に,Res㎝e
MIKEを構成するRescue MIKE以外のシステムであ
る視覚情報を提供するViewer Systemと,予測情報を
提供してくれるRemsusと,音声情報を発信するVoice
Serverについて説明する.
ある.そのため,簡単に情報提示に流れを持たせるた
めの工夫として,対話に着目し実装を行なった.レス
キューシミュレーションにおいて,工一ジェント違は
Keme1を介して,簡単な通信(会話)を行なうことが
できる.しかし,この会話は一定の限られた距離にお
いて,データが届くといったものである.工一ジェン
トによって実際に行なわれる通信はカーネルによって
提供されるが,工一ジェントの会話のための言語が定
義されているわけではないため,やりとりされている
データを解読することは一般に可能ではない.つまり,
工一ジェントの所属する組織,チームによってやりと
りされるデータは暗号化されているコードのようなも
のである.そのため,我々がRescue−MIKEで生成す
る対話は,シミュレーションでしかないが,工一ジェ
ント間でやりとりをしているものを聞いているかのよ
うに聞こえるよう生成した.つまり,工一ジェントの
コミュニケーションには基づかない,RescueMIKEが
観測した工一ジェントと事象を表現しているにすぎな
いものである.
2.3.1 レスキューピューワシステムの拡張
カーネルから提供される情報をもとにして,シミュ
レーション内での事象をモニタに表現するためにViewer
Systemが存在する.我々は,Res㎝e MIKEを開発し
ていく早期の段階で,生成される音声情報を簡単に理
解してもらうために,ViewerSystemとの連携が必要
であると考えた.災害シミュレーションにおいて,サー
バによってモデル化されている領域は非常に広大であ
り,物理的に遠い場所で並列的に起こっている多くの
事象が存在する.我々は,とりあえず,Rescue MIKE
が画面に情報を表示することを指示することができる
ようにするためのビューワ拡張プロトコルを導入して
もらうために,シミュレーションで表示のために使用
されているRoboCupRescueLogViewer181の開発者と
協力を行なった.通常のViewer Systemは図2に示す
ような,仮想災害空間全体を上空から見た状況を示し
ている.拡張プロトコルの導入により,次のような機
能を実現した.まず1つめの拡張プロトコルはズーム
レベルの調整とフォーカスする場所の変更である.2つ
R08則6So㎜r
めは,ハイライト機能である.着目させたいもの(工一
GlS
ジェントや建物など)をハイライトさせるように指定
A調nt
Slmula一σ
できる.最後に,画面上に吹き出しを出すことで,そ
こに文字を表示させることができる機能である.これ
灼ERNEL
によって,工一ジェントが話しているようにみせたり,
説明を表示させたりすることができる(図3参照).
V16帰r Sy81om
Vlowor So㎜r
l=I06cuo
KE
R060uo MlKE
R8mgu3
ROm8u3
2.3.2 Rems皿sによる被害の評価方法
我々はRes㎝e−MIKEが災害救助のドメインで,.必要
Simu1810r
Vl●w8r
Vo.co So∼or
な情報を生成するにあたって,現状の分析のみではな
く,ドメインにおける予測が必要であると考えた.シ
ミュレーション内で,工一ジェントの行動とその結果起
図1:Integration of Rescue−M11KE with the Res㎝e
Server,viewer system,ξ㎜d Remsus
りえそうなことを予測することは可能である.しかし,
災害シミュレーションにおいて,工一ジェントの行動
ひとつが直接影響をおよぽすものはたかがしれている.
現在のシミュレーション環境において大きく変化する
環境要因の主要な範例は火災である.そのため,我々
は火災の延焼について予測する能力がRescue MIKE
がドメインについて理解するために重要であると考え
た.その予測する能力を提供してくれるシステムとし
18
○一・伽}一・…・州・m・舳・・} 一 …厩…㎜㎜・□■
種類を切りかえれるように実装を行なった.また,長
い沈黙状態や,同時にたくさん発話することによる混
乱をさけるために,現在発話中かどうかを調べること
なども可能とした.現在は日本語と英語を音声によっ
て提供できるようになっている.
3Rescue MIKEの実装
3.1 実装の方針
Res㎝e MIKEは,意志決定支援を念頭に置いている
^二」 Q軌為鳥i;鵜脇5ホ、芯芸篇・鵜’舳’’⊥{.….}…帖’}…肘雨了一
陣舳舳帆・ω〃鵬新島満昆研山一一一山一山’’・出血・……血^…
図2:Viewerimage
ため,実況キステムのみになってしまわないように将
来を見越した設計を行なった.Res㎝e MIKEは内部に
工一ジェントを持つマルチエージェントシステムとし
て実装した.内部工一ジェント同士は,情報の交換と
表現にプロポジションというものを使用する.現在は,
簡単なタグと数字などで構成されているが,災害ドメ
インで使用可能な簡易表現言語を作成し,置きかえる
予定である.今後,やる作業が増えたり変更されるに
従って,工一ジェントの置き変えなどで対応を行なえ
る予定である.
3.2 システムの構成
VolcθSθ∼θr
N1atura.LanguagθGθnθr8tor
㎞㎜ P類ツ.二驚頂:線テ㍗
Viowgr
S6『Ver
Dirθctor agθn量
図3:Viewerimageshowinganagentspe創dng
Romsus
Continuiψ
agθn一
て,神戸大学で開発されたRだmsus[7】がある.このシ
ステムは,Res㎝e Serverのうちの火災のみについての
シミュレーション能力をもつものである.また,処理
Moni−or
aggntS
W〇一d Modθ1
88ckground
ag㎝tS
disastθr
knowledgθ
速度が要求されるため,火災の延焼などについても簡
略化するなど工夫がされている.R.es㎝トMIKEが火災
の予測情報が必要な場合には,RβmSuSに問い合わせ
Roscu6Kθm61
ることで,将来どのように延焼するかを答えてくれる.
図4:Architecture ofRes㎝e−MIKE
2.3.3 Voice Sewerによる自然言語の発語
音声で情報を提示するために,MicroSoft SAPI4の
我々が作成したRes㎝e MIKEシステムの枠組みを,
エンジンを使用して,文字情報を音情報に変換を行な
図4に示す.図4をもとに,Res㎝e MIKEの構成概要
うシステムも同時に開発した.図1中のVoiceサーバ
である.簡単なプロトコルでRes㎝e−MIKEと通信を
を説明する.
我々のシステムはシミュレートされた災害から情報
行ない実際に音声を外部にむけて発話する.複数の人
を収集し,提示情報を生成するために4種類の内部工一
数での発話を可能にするために,プロトコルで音声の
ジェントを使用する.つまり,Res㎝eM皿Eは4種類の
19
内部エージェントからなるマルチエージェントシステム
・Contin血ty.自然言語の提示情報を生成するに
である.Res㎝e MIKEのおおまかな処理のながれとし
て,R㈱cueKemelから現在の状況が伝達され,Rescue
あたって,情報提示の連続性がとても重要な要素
MIKE内部の災害情報の蓄積であるWor1d Mode1が更
新される.次にM㎝itorag㎝tによって収集,分析が行
tinuityエージェントはDirector工一ジェントに
よって選択されるプロポジションをどのように提
なわれ,プロポジション(述語)の形でDir㏄tor age皿t
示するかを決定する.
であることが初期の段階でわかってきた.Con.
に情報が集まる.表1にプロポジションの例を示す.
Dir㏄torag㎝tによって選択され,C㎝ti㎜ity agentに
よって整形し組合されたプロポジションは,自然言語
生成部で,自然言語に変換が行なわれ,発話システム
3.4 対話形式による発話
情報提示の一手法として,単調になってしまわない
であるVoi㏄Serverに送られる.自然言語への変換は,
ように対話形式を取り入れた.対話形式として,司会
現在は,プロポジションを簡単なテンプレートにあて
者と解説者,レポータによるニュースのような形式と,
はめることによって行なっている.テンプレートは英
現場と指令間の無線によるやりとりを表現したW創kiト
語と日本語の2パターンを作成済みである.
丁別kie形式[到の2つを用意した.これらの対話形式
は,単調さの改善以外に,自然言語による情報伝達の
3.3 Res㎝e MIKE内部工一ジェント
ための自然言語の実験の土台といったことを期待して
いる.
Res㎝e MIKEの4種の工一ジェントの機能の概要は
次の通りである.
3.4.1 ニュース形式による発話
・Mo皿itom.これら工一ジェントは災害エリアの
特定の場所をモニタしており,そのエリアの情報
これは,情報を提示するさいに,発話者に話しをふる
を他の工一ジェントに伝える.情報はプロポジ
司会者のようなものが,存在するようにContinuity工一
ションに変換して工一ジェント間でやりとりを行
ジェントがプロポジションをもとに発話するための情
なう.モニタエージェントは観測される低レベル
報を整形する方式である.例えば,(Fire−Statistics
な情報から,予測や状況の変化具合などの解析し
皿η7050),これは,NW(No汕West)で50の建
た結果といった高レベルな情報までを生成する.
○Back読。und。.この工一ジェントは一般的な災害
物が70%燃えていることを示しているプロポジション
情報を提供する.例えば,『災害で生き残るにはど
うレたらいいのか』,r災害の原因について』,r初
期消火の重要性』など,また,RemSuSによる火
である.これを普通に変換し発話させると,次のよう
になる.
“70%燃えている建物が北西地域には50あ
ります.’’
炎の被害予想といった情報なども扱う.さらに,
レスキュープロジェクトの説明やビューワの見方
これに,質問と応答のためのプロポジションを追加し
(赤色が何を示すなど)といった,現状の説明以外
を請け負う.災害知識データベースに,様々在情
てやることで,次のように整形を行なう.
報が記述されていて,その中から情報を取り出し
てきて,Dir㏄tor工一ジェントにプロポジション
として提示する.
・Di爬。tor.Director工一ジェントはMonitor工一
ジェントやBackground工一ジェントが生成した
プロポジションをもとにして,何を提示するべき
かを選択する工一ジェントである.自分自身で提
司会者:“北西地域の火災の状況はどうです
か?”
レポーター:“70%燃えている建物が50ほ
どあります.”
司会者:“わかりました,何かありましたら
報告してください.”
質問や応答にもバリエーションをもたせることによ
示情報のもとになる情報は生成しないが,提示
り,同じ情報の提示であってもかなり平坦さがなくな
情報のフローコントロールを行なう.サッカーの
るものと考える.
MIKEではそれぞれのプロポジションに優先度が
設けられていて,それによって提示情報を選択し
ていたのだが,Rescue−MIKEにおいては,トメ
イン上での多様性のために,提示情報の連続性を
検討することのほうをまず研究することが重要で
あるとわかった.
3.5Walkie Ta1kie MIKE
2つ目は,同じように会話形式を用いるが,無線での
やりとりのように整形を行なう方法であるlgl−W創kie一
20
表1:Examplesofpropositi㎝s㎝dutteredsentencesinRes㎝e−MIKE
Example sentence from text temp1ate
Proposition
“There are50roads that are70%b1ocked
(R◎a.d」∋1ock」Statist ics [area] [1eve1] [c◎unt])
in the NW.,,
“There are50bui1dings that are70%
(Fire_Sta.tistics [area] [1eve1] [c◎r■1nt])
bumi㎎in the NW.”
(C◎11apse_Statistics [aエea] [1eve1] [count])
‘‘
shere are50bui1dings70%co11apsed in
the NW.,’
(Disaster地㎝1・dg・[㎞㎝1・dgei皿dexn㎜ber])
(Indexes to sentences on typica1disaster
knowledge)
(Exp1ain[ind眺n㎜ber])
(Exp1㎜ations on the viewer,simu1ation,
Rescue−MIKE)
(A㎜o㎜ce[type])
“This dialogue wiI1be brought to you by
Rescue−MIKE.”
“An earthquake has occurred.”
“The rescuers wi11now start to dea1with
the dis㏄ter.”
“20minutes have passed since the eaれh一
quake occumed.”
Ta1kieプロトコルを用いて発話するための情報を整形
仮定2W砒ie−ta1kie pmt㏄o1
する.こちらは,例えば以下のような形になる.
ωα脇e一切脇θプロトコルは少なくとも工一ジェントλ,
β,cのうちの誰かが発話をする.そして工一ジェント
Controuer;“There are50bui1ding;s bum−
ing in tbe north west district”
CoIltrouer:“Red5,how,s the趾e with you?”
Red5:“There are50bui1dings on fire here!,,
のうちのひとりはすくなくとも事実aについての性質
についてなにか言及すること
この単純な仮定をもとにいくつかのプロトコルを生
成した.最も簡単なものとしては,例えば,工一ジェ
ントλが事実aについて報告をするといったものがあ
る.表2にwa1kie−ta1kieプロトコルと英語での発話の
wa1kie−ta1kieプロトコル[5,61は,次の仮定をもと
に生成される.
仮定1W砒ie−ta1kieにおける仮定
・ドメイン内でおきるイベントに関連のある事実a
例を示す.
Contimity工一ジェントはどんなプロポジションを
与えられたとしても,発話するためにこの表2のリス
トを用いて変換を行なう.そして,Voiceサーバに対し
て,発話と効果晋の発生のためのデータを送信する.効
果音とは,無線機があたかも使わえて会話が行なわれ
.事実aを観測可能なエージェントλ
・事実aを観測不可能なエージェントβ
・ドメイン内の指令をだすエージェント0
この仮定に基づいて,次のようなプロトコルを生成
する.
ていることをあらわすノイズ音である.これによって,
簡単に発話者の切り替えを表現することができる.
21
表2:Examp1es ofWalkie−ta1kie protocols and corresp㎝ding dialogues
Protoco1
Examp1e dia1ogue
λreports a to0.
λ:
“We are r㎜ni㎎out ofwater here.”
λreports a to C,
λ:
“We are r㎜ning out ofwater here.,,
C acknowledges.
o:
“OK,wait for further instmctions.,,
C wamsλabout a.
c:
‘‘
C wamsλabout a,
c:
“Red3,look out for the warehouse趾e in your area.”
λacknow1edges.
λ:
‘‘
λasks O about a,
λ:
“ControI,we need check on the丘re around us..’’
C responds.
c:
“Red3,looks1ike it,s spreading to the warehouse..
C asksλabout a,
c:
“Red3,te11me about the丘re in your area.”
λresponds.
λ:
C asksλabout a,
c:
λr㈱ponds,
λ:
C acknowledges.
o:
βasks C about a,
β:
“Contro1,how is the situati㎝in the West?”
C responds.
o:
“The丘re has spread to the warehouses there.,,
βasks C about a,
β:
“C㎝tro1,how is the situati㎝in the West?”
C responds,
c:
“The趾e has spread to the warehouses there.,,
βacknow1edges一
β:
“Roger”、
βasks O about a,
β:
C asksλabout a,
c:
λresponds.
λ:
qed3,1ook out for the warehouse丘re in your area.,,
OK,we have it covered.,,
“It,s spreading to the warehouse..
Take c㎝e.,,
Not loo㎞ng good.”
“Red3,teu me about the丘re in your area‘.”
“It,s spreading to the warehouse..
Not looking good.”
“Understood”.
“C㎝tro1,how is the situati㎝in the West?,,
‘‘
shat,s where Red3is.
Red3,how are you doing there?,,
“The fire is spreading to the warehouse_
4 レスキューシミュレーション競技
における稼働状況
Not looking good.’’
シミュレーションなどと比較すると,観客が何を行なっ
ているのか理解が非常に難しいといった点があった.意
志決定支援システムのためのプロトタイプの実況シス
2002年の6月,RoboCupの世界大会が日本と韓国
テムのったない実況だったが,本システムはこの状況
で行なわれた.レスキューシミュレーションリーグは
を変える点で役立ったと考える.サッカーシミュレー
福岡ドームで行なわれ,我々のRes㎝e MIKEも実況
ションが行なわれている場合でも,サッカーのMIKE
システムとして変則的なチームとして参加し,観客が
が登場した時は音がついたというだけでもかなり盛り
実際にいる状況でversion Oのデモンストレーションを
上がっていたので,レスキューでも受けいれられると
行なってきた.
今後の開発のモチベーションになると思われる.
これまで,レスキューシミュレーションについては,
レスキューシミュレーション競技におけるログをも
実況を行なうといった枠組はなかったため,レスキュー
のゲームは,実際に人間が何か説明をしないかぎり,静
とにしたRescue MIKEの日本語と英語の発話をいく
つか示す.これらは,妻1で例を示したプロポジショ
かにたんたんと進行していたのであったが,我々のシ
ンをテンプレートにあてはめて生成されている.
ステムによって,自動的に実況が行なわれ,少しはわか
りやすくなったのではないかと思われる.レスキュー
シミュレーションは,並行して行なわれているサッカー
ニュース形式日本語版
南西地区の負傷者の情報をお願いします.
22
南西部では1人の負傷者がいます.また1
A:There are26buildings co11apsed he凪
人が建物の下敷になっています.
C:Understood.
南西地区の状況をおつたえしました.
B:Contro1,how is the situation in the
WeSt?
北西地区の建物の倒壊状況を報告して下さ
C:We have about4injuries here.
い.
B:Roger.
北西部では13軒の建物が倒壊しています.
引き続き北西部での情報収集をお願いしま
A:Contro1,we have107co11apsed bui1d−
す.
ingsin the southeast area.
C:OK,wait竈。r further instructions.
地震発生から12分経過しました.
地区全域の負傷者の情報をお願いします.
地区全体では50人の負傷者がいます.その
うち4人が重症者です.また50人が建物の
下敷になっています.死亡者は2人です.
避難の際には,ブレーカを落し,電気器具
のコンセントを抜いてください.
5 考察
まず,目標にむかう第1段階として,情報を収集し,
そこから提示する情報を生成する初期バージョンを設
計し観客に現状を説明するシステムを実装した.提示
する情報は,簡単な全体の情報や現状の説明である.
シミュレーションにおいて,起きたことをすべて話
ニュース形式英語版
How is the肚e in the west b1ock?
No bui1dings㎜=e s1ightly bumed a皿d were
extinguished.
OK,Please1et us know if things change.
The RoboCup Resc皿e Simu1atiOn PrOject
is attempting to app1y IT㎜d AI to the
problem of dis的ter re1ief
Pu舳ngoutε㎜y丘resimmediate1y wi11keep
丘re damage to a minimum.
On the screen,Pa1e b1ue meξ㎜sε㎜extin−
すには,発話のスピードが問題となりリアルタイムに
情報提示を行なうことが不可能になる.さらに,情報
の提示がだんだんと続いたり,沈黙状態があったりす
ると,とても聞くに耐えないものとなる.ただ起こっ
たことを順番に話させる単純な初期の開発システムに
おいて,観客に対して試合の状況を説明し理解を助け
るという目標のためには,発話の連続性がかなり重要
な要素となることが判明した.これを解決するひとつ
の方法として,このバージョン0では,発話を会話形
式にすることを試みた.会話形式として2つの方法を
実装した.
プロポジションから自然言語への変換は現在は簡単
なテンプレートによるものであるが,プロポジション
guished bui1ding.
が複雑な意味を表現可能にするためにも一工夫する必
要がある.現段階では,災害の情報と自然言語が分離
Te11me about the couapsed bui1dings in
されてはいるが,表現の数を増加させると,プロポジ
the northeast b1ock.
ションの数が増加してしまう.次のバージョンでは,災
8bui1dings have s1ight1y co11apsed.
害情報を表現する簡易言語,簡易文法などを定義し,そ
Thank you for keeping us updated.
れによって工一ジェント同士の情報伝達を行ない,そ
れを翻訳して自然言語と対応をとるような仕組みを考
W阯ike一㎜kie英語版
A:There are1bui1dings buming in the
Centra1a工ea.
えている.このためにも,現バージョンにおいて,災
害時の情報表現や伝達に必要となる知識の洗い出しが
必要となる.
M㎝itor工一ジェントは複数存在しており,担当エリ
C:OK,wai“or further instructions.
アの情報の収集を行なっている.現段階のRes㎝eServer
C:Red4,te11meabout theco11apsedbui1d−
の情報はすべて手にいれることができるので,Monitor
ings with you.
工一・ジェントがエリアごとに情報を収集し統合する手
とR.es㎝トMIKEの関係では,災害が起きているエリア
間だけであるが,将来を見越して分散可能な設計にし
23
た.これは,後に情報が災害現場のセンサや各救済者,
において,コンピューターによって会話を生成する能
被災者などからばらばらに集まってくる場合のことを
力がロポツトと効果的にコミュニケーションをするこ
考慮してのことである.現段階では,収集可能な情報
とを可能にするならば,人間の救済活動者を支援する
はしばらく増加しそうにないので,この情報を分析,統
ことができる.
EXp1㎜atiOn: チームがどれだけ効果的に災害を
合する知識の蓄積と実装が必要である.
現状では,Monitor工一ジェントが収集した情報を
それほど加工することなく統計データをそのまま発話
扱えるかを競争するRoboCupの競技において,観客
しているものが多くある.現状のレスキューシミュレー
た,Rescueプロジェクトの説明や,災害についての教
ションにおいても,避難経路の表示や,消火活動の提
育支援などにも応用がきくと考える.
に音声と画像で状況などを説明することができる.ま
案などは情報の処理しだいで可能である.このような
比較的高度な情報処理や推論なども,意志決定支援シ
ステムに必要であると考えるため,今後随時,実装を
6 まとめ
行なっていく予定である.
現在は実際にシミュレーション内で行動している工一
ジェントに指示を与えることは不可能であるが,意志
決定支援システムとしての実験として,今後工一ジェ
ントに指示を与えて,行動を行なわせる実験を行なっ
ていく必要がある.そのため,このプロジェクトと並
行してシミュレーション内でレスキュー活動を行なう
チームの作成にもとりかかっている.チームが作成で
きた後には,チームの工一ジェントのコミュニケーショ
ンにプロポジションと同形式を用いることで,実際の
会話を行なうことが可能になる.圧縮コードで通信を
行なうことと比較すると伝達効率が落ちることが予想
Res㎝e.MIKEのバージョン0について述べた.本
バージョンでは,観客を対象にした実況システムにつ
いて実装を行なった.簡単な情報を対話形式に変換を
行なって,2002年6月に開催された福岡のRoboCup
の世界大会で観客対して実際にデモを行なった.2005
年までの目標は,防災工一ジェントと被災者工一ジェ
ントを対象とした適切な情報提供である.今後は,目
標を目指して,推論などによる高度な提示情報の生成
といった情報の分析と,どこでどんな情報が必要とさ
■
れるのかといった情報の流れなどについて検討し実装
を行なっていく予定である.
できるが,人がいりまじっている場合でも可能な人に
理解できる速度での人に対する情報伝達の可能性の検
謝辞
討を行なえると考える.
このバージョンOをもとに次のような点について本
本システム開発のきっかけを与えて頂き,かつ,貴
システムのこれからの可能性についてまとめる.
重なアドバイスを頂いた,Ia皿趾ank氏,桑田喜隆氏,
K11ow1edge elicitation:災害ドメインで必要とさ
れる知識や表現を抽出するにあたって,守秘や様々な
田所論氏,田中久美子氏,中西智也氏,松原仁氏,
また,協力を頂いたRoboCup Rescueシミュレーショ
問題で,実際の災害時の通信などをもとにして,扱わ
ンの関係者の方々に感謝する.
れる情報,効果的な情報提示,コミュニケーション,情
報の伝播などがどうなっているのかといったことを会
話などをもとに分析することが難しい.我々は,人工
参考文献
的に会話を生成することによって,実際の救済活動者
111RoboCup.
からのフィードハックを得ることは可能ではないかと
Robocup home page, 2000.
http:!/www.r◎boc1ユp・co皿.
考える.
Sim11ati011:レスキューのサーバが提供するコミ
ュニケーションシステムは非常に簡潔なものである.
[2]Hiroaki Kitεmo,Satoshi Tadokoro,Itsu㎞Noda,
Hitoshi Matsub㎝a,Tomoichi T曲hashi,Atsushi
Shinjoh,and Susumu Shimada.R.oboCup−Rescue:
我々の内部工一ジェントによる会話の生成,後にのべ
るWa1kiト丁副kieプロトコルなどは,実装可能な代替を
Search and rescue for1aTge sca1e disa認ters as a dσ一
提供することができる.これによって,災害ドメイン
mainfo・mu1ti−agentresea・ch.In〃㏄θθ伽9801
内での会話のデータ収集も可能となる.さらに,自然
∫E冴〃0oψmεη㏄oηMαm,助8比m3,σmd0ψぴ一
言語を利用した情報伝達のシミュレーションを色々と
ηθ前。8C8バグ0二g9ノ,1999.
行なうことも可能であると考える.
Re1iefsupport:実際の災害時にロボットなどがい
りまじって作業を行なうことが考えられる.その場合
[3]田所論北野宏明監修.ロボカップレスキュー.共
立出版,2000.
24
[4]K.Ta皿a1⑫一Ishii,I・Noda,I・Fr∼㎜k,H.Nak鴫hima,
K.Hasida,㎜d H.Matsubara.MIKE:An auto−
matiC COmme皿ta』ly SyStem fOr SO㏄er.In Pm㏄劫一
伽g30ヅ∫0Mlλ8−98,pp.285−292.1998.A1so avai1−
ablefromE1ectrotechnic釧Laboratory船TechR伴
po竹ETL−97−29.
[5]T. Morishita, I. 趾㎜k, T. Kubo,
T.Kaw肌abayashi,H.Shimora,T.Nakanishi,
S.Tadokoro,K.Tana㎞一Ishii,and H.Matsubara.
Simu1ating inter−agent communication in disaster
re1ief scenarios㎝ initi副 imp1ementa.tion of
rescue−mike.In〃㏄θεa伽g30ヅ3∫0醐002.82002.
[6]T. Morishita, I. Frank, T. Kubo,
T.Kaw趾abayashi,H.Shimora,T.Na㎞nishi,
S.Tadokoro,K.Tana㎞一Ishii,㎜d H.Matsubara−
SimuIating inter−agent communication via walkie−
taIkies in disaster re1ief scena工ios.In∬λ五丁2002
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[7]TomoyaNa㎞mishi.Persona1communication,May
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〔8]Yoshita㎞Kuwata and Atsushi Shinjo−An exten−
sion of RoboCup Rescue system towards the rea1−
time sh趾ing of disaster information.In曲8比m
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[9]I.Frank,K.Tan山一Ishii,H.Matsubara,㎜d
E.Osawa.Wa1kie−taIkie MIKE.Inハ㏄eed物8
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2001.To appea山.
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