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在住者から見たバンコク食・豆事情 その後編
本文57頁参照
シンガポールの豆乳店 Mr.Bean
Mr.Bean 創業者のカン社長とロー取締役
どら焼き
バンコクのタイ・ヤマザキ
大戸屋のデザート豆乳あんみつ
タイ製の缶詰餡
小豆を使った神話の国のまちおこし
本文63頁参照
出雲ぜんざい
お土産用ぜんざい
地元のタウン誌“出雲ぜんざい”(平成19年末)
島根ふるさとフェア(広島市、平成20年)
日本ぜんざい学会壱号店(出雲大社神門通り)
豆 類 時 報 №61
2010.12
目 次
話
題
豆の日制定と母ちゃんビジネス……………………………………佐 藤 久 泰
2
行政情報
北のクリーン農産物(YES!clean)表示制度について ……北海道農政部
10
調査・研究
北海道の高品質豆類育種について 前編 ………………………田 中 義 則
17
京都府における小豆の機械化栽培確立に向けた取組……………杉 本 充
25
「ご当地グルメ篠山グランプリ」の開催
…………………………ご当地グルメ篠山グランプリ実行委員会
31
女満別における豆類生産の取組……………………………………前 田 英 典
37
米国農務省報告(2010年10月28日付け)豆類生産見通し………米国農務省
41
生
産 ・
流通情報
海外情報
中国黒龍江省における雑豆の生産及び研究の現状と課題……何寧・曹大偉 50
在住者から見たバンコク食・豆事情 その後編…………………前 田 由 佳
57
豆と生活
小豆を使った神話の国のまちおこし………………………………早 川 正 樹
63
豆類基金
コーナー
ペルー豆類事情に関する調査結果の概要…………………………村 崎 史 郎
71
業界団体
「豆の日」関連各種イベントの開催状況…………………………齋 藤 章
80
豆を活かす料理教室を各地で開催…………………………………川 北 壽 彦
84
落花生作況調査・需給懇談会余聞…………………………………板 野 徹
87
本 棚
『食のリスク学』中西準子著………………………………………後 沢 昭 範 91
資料箱「2025年における我が国の食料支出額の試算」……同 上 95
「食料の供給に関する特別世論調査」………………同 上 96
統計・資料
雑豆の輸出入通関実績…………………………………………………………… 98
豆類(乾燥子実)の年次別作付面積及び収穫量(全国)…………………… 99
編集後記
……………………………………………………………………………………… 100
--
話 題
豆の日制定と母ちゃんビジネス
佐 藤 久 泰
はじめに
いっても良いでしょう。
近年、豆類にはいろいろな成分と人体へ
この度、全国豆類振興会が、近年の豆類
の働きが少しずつ解明され、豆類の機能性
の需給をめぐる内外の厳しい情勢を打破し
が栄養学的に立証されるようになりました。
て、豆類及び豆類加工品の消費拡大と、豆
そこで豆類の栄養素や機能性成分の働きに
類関係業界の活性化を図るために「豆の日
ついて、注目されて来たのです。昔は豆と
=10月1日」を制定することを決め、申請
いえば、大豆では味噌、醤油、豆腐、小豆
の結果、日本記念日協会の認定を受けるこ
ではおしるこ、羊羹、おはぎや赤飯などで、
とが出来ました。
インゲン豆では甘納豆や煮豆が代表される
これを受けて、全国豆類振興会では「豆
食品でした。しかし、これら我が国の伝統
の日」を含む10月の1ヵ月間を「豆月間」
食品は、徐々に忘れ去られようとしていま
と位置づけ、(財)日本豆類基金協会の協
す。食事は洋風化するとともに、農家は生
力の下、豆類の普及に向けて様々な活動を
産者に変わってしまい、自家用にも余り利
行う一方、関連業界にも普及活動への協力
用しないなど、豆類を生産する農家も、自
を呼びかけていくことになったことは、関
家消費することが大変少ない現状がありま
係者の一人として大変喜ばしいことだと思
す。とくに北海道は、我が国最大の豆類の
います。
生産地でありながら、消費量は全国平均を
豆類の主産地である北海道の十勝などで
大きく下回り、最も消費量の多い北陸地方
も、多少の変化が見られていますので、そ
の0%に過ぎないのです。
れらについて以下に述べたいと思います。
全国の家庭で多く食べている豆類製品は、
近年健康食品としてマスコミなどの影響で、
1.母ちゃんビジネスの始まり
普及が伸びている納豆と飲みやすくなった
近年の農業情勢、とくに農産物の価格低
豆乳製品くらいで、他の製品は減少傾向と
下、担い手不足などが進み、農村の活性化
さとう ひさやす 佐藤久泰技術士事務所代表、
元北海道総括専門技術員
と所得向上を目指して、お母さん方が立ち
上がりました。十勝の主産地や一部地域で
--
農家のお母さん方が、豆類の加工、販売す
道農業の担い手である女性が、食と農に関
ることで盛り上がっているのです。
心の高い一般生活者と交流を深めながら、
いま、農家のお母さんたちが手作りされ
食と農に通じた「ひとおこし」、「うまいも
た農産物や、その加工品を「商品」として
のおこし」、「ふるさとおこし」、「大地おこ
売り出す「母ちゃんビジネス」が始まって
し」に関するアグリビジネスの企画、実践
いるのです。生産することや、加工品を作
力、技術向上と農家から食文化を様々な形
り出すことは出来ても、売ることに慣れて
で伝え、広げて行くとともに、女性の自立
いないお母さんたちには、大変難しいこと
に貢献することを目的として、00年6月
ですが、いろいろな取組が始まっています
に農園が参加して設立されました。
ので、まずそれらを紹介したいと思います。
「マンマ」は北海道弁で「ごはんを食べ
北海道の食の安全と安心に心を配り、土
る」、イタリア語で「お母さん」を意味し
作りにこだわって生産した農畜産物とその
ています。
美味しさを無駄なく食べてゆきたいと、お
活動内容は、交流、学習、教育、調査等
母さんたちが自家産豆類や豆類で製造した
ですが、とくに学習活動では、農村の地域
加工食品類を積極的に「直売市」、「愛食フ
に根ざした女性の起業化活動のステップ
エア」、「サッポロ・マルシェ」、「産地直送
アップ、楽しいカントリーライフの向上を
便」などで幅広く販売することを始めたの
目指した暮らしづくりがあります。中でも、
です。
起業化活動のステップアップでは、商品開
従来から国道や道道に面した位置にある
発、経営管理、労務管理などビジネス環境
農家の皆さんが、主として個人又はグルー
の向上についての学習プロジェクトに力が
プで直売所を設置して販売することが各
入っています。
地でみられました。また、地域によって
また、商品開発を行ったものは、直売市
は「道の駅」などに直売所を設けて 、 多く
や各種イベントに参加し販売するとともに、
の農産物を販売しているところなどもあり、
情報交換などを行って、より良い商品開発
いろいろな取組が見られていました。しか
に工夫を重ねているのです。
し、豆類については、小袋詰めや手作り味
噌を直売所で販売する程度で、他市町村や
3.積極的な豆類等の販売活動
全国に発信するには至っていませんでした。 (1)対面販売:サッポロ・マルシェ
「マンマのネットワーク」に参加農園の
2.「マンマのネットワーク」の設立
一部は、「サッポロ・マルシェ」(5~10月
「マンマのネットワーク」(正式名称:
毎月3日間、道庁赤レンガ前で開催)に参
北 海 道 女 性 農 業 者 倶 楽 部、http://www.
加、販売活動をしています。道庁赤レンガ
mannma-net.com/index.html) は、 北 海
前開催(00年度まで愛食フエアにも参
--
加)では、愛食フェアからのリピーターを
羊羹、大正金時の甘納豆などを製造販売
しっかり確保しているといえますが、目下
し、毎回売り切れるほどの好評を得ていま
のところ参加農園が少ないので、もっと豆
す。豆腐では、豆の香りのするお豆腐とし
類を扱う農園が増えることを望みたいと思
て、本別産の黒豆を原料とした「キレイマ
います。
メ豆富」、本別産の「とよまさり」銘柄を
原料とした「本別豆富」、大袖振り銘柄を
原料とした「おぼろ豆富」は大変好評で、
毎月3日間、道庁赤レンガ前で開催される
「サッポロ・マルシェ」(5~10月)では、
評判高く一番の売れ筋です。
サッポロ・マルシェに参加した「豆で張り切る母さ
んの会」
「サッポロ・マルシェ」に参加のしたの
は、次の3つのグループです。
本別町発「豆 で張り切る母さんの会」
黒豆を原料とした「キレイマメ豆富」
(JA 本別町女性部)、同じ本別町発の「ま
めっこ倶楽部」、北竜町発の「黒千石事業
協同組合」です。
「まめっこ倶楽部」は、7人の生産者が
メンバーで、自家生産した大豆、小豆、い
次に「サッポロ・マルシェ」で販売して
いる品目を、グループごとに紹介いたしま
んげん豆の各品種を、小袋詰めにしてお母
さんの顔写真付きで販売しています。
す。
「黒千石事業協同組合」は、その昔、軍
「豆で張り切る母さんの会」は、加工場
馬や農耕馬の越冬用高蛋白粗飼料である
である「本別まめ工房」で、原料はすべて
「青刈り大豆」品種として栽培されていた
本別産を用い、大豆は白系、青系、黒系
小粒種の「黒千石」に着目し、熟期が遅い、
を原料とした3種の豆腐と油揚げ、煮豆
倒伏する、低収であるなどの問題がありま
(青大豆、黒豆、金時豆、大福豆)、ワイン
したが、各地で10年ほどの取組により栽培
煮(くり豆、金時豆、大福豆)、大豆と小
技術を確立し、00年2月には、9地区の
麦「ホクシン」を原料とした味噌、「エリ
生産組合が集う、安定した生産・供給可能
モショウズ」と「きたのおとめ」を用いた
な事業協同組合に発展させました。黒千石
--
はナトリウムが一般品種の約5倍と多く、
箱」としての販売活動を全国に向け展開し
ポリフェノールも小豆の約2倍あるなど、
始めたのです。
機能性が高いことから「黒千石茶」、「黒千
この活動を通して「送り出す喜び」、「受
石きな粉」、「黒千石納豆」、「黒千石てん
け取る喜び」、「食べる喜び」を分かち合え
ぺ」などに加工するとともに、「黒千石」
るよう、生産地から心を込めて送り届けし
入り「切り餅」にして販売しています。ま
たいと張り切っているのです。「マンマの
た、自家焙煎でお茶にすることやまめご飯
こころ箱」の構成は、農畜産物とその加工
にも出来るので、「黒千石」を小袋(00g
品で、豆類だけなく、自家農畜産物とその
、1,000g)にして販売しています。そのほ
加工品を農場・グループ単位でセット販売
か、「サッポロ・マルシェ」開催期間中は、
する新たな試みなのです。勿論簡単レシピ
「黒千石」と北竜産「おぼろづき」を用い、
付きです。
独特の味付けをした炊きたての「黒千石の
まめご飯」は、大変好評を得ています(レ
「マンマのこころ箱」販売に当たっては、
シピはマンマのネットワークホームページ
次のような約束事を設けています。
に)。
①「マンマのこころ箱」は事業に賛同する
これらは対面 販売をしていますので、
人たちの真心によって行われます。
ラップで包んだ試食用を用意し、「黒千石
②商品の販売は賛同した会員の農場・グ
茶」の試飲とともに試食後、納得してお求
ループごとに販売すること。
めいただくという商法が効を奏しているよ
③商品は販売するマンマが責任を持ち、か
うです。
つ信頼を裏切らない商品であること。
な お、JA 中 札 内 は、 サ ッ ポ ロ・ マ ル
④商品の基準価格は、1箱,00円(道内
シェ及び愛食フェア(イトーヨーカドー)
は送料込み、道外は送料別)。
に参加し、枝豆をはじめとする豆類小袋を
⑤商品の発送、代金の回収、クレームなど
はじめ、数々の豆類製品を販売しています。
の対応は、注文を受けた会員の農場・グ
ループの個別責任とします。
(2)宅配:マンマのこころ箱
⑥商品の発送の際には、「こころ箱」の
一方、「マンマのネットワーク」本体で
シールを添付すること。シールは1枚0円
は、これまで2年間の準備期間を経て組織
で事務局が販売します。
的に取り組み、010年9月から新たな「宅
⑦農場・グループごとの商品は、事務局で
配」による販売活動を試み始めました。
とりまとめた後、資料化し HP やカタログ
これは、「むらのマンマ」と「まちのマ
にして販売促進に活用します。また、出来
ンマ」が食べることを通して心と心をつな
た資料は購入希望者へ参考資料として送付
ぎたいと願って名付けた「マンマのこころ
するので、事務局に届けた内容以外の商品
--
は原則として販売しないこと。
いて、先にあげた3種の手作り豆腐(キレ
⑧この事業は終了後(1月末)、販売実績
イマメ豆富、本別豆富、おぼろ豆富)のほ
を事務局宛に報告すること。
か、お母さんの手造り油揚げ、煮豆(ワイ
以上が商品販売に関わる約束事です。
ン煮(くり豆、金時豆、大福豆、ワイン煮
セット))、本別まめ美人(くり豆、青大豆
現在、「マンマのネットワーク」に登録
ミックス)、のーんびり羊羹、味噌などを
している農園は、0農場・グループ(農家
製造し販売しているのです。工房では豆腐
会員数の%、豆類は4農場・グループの
担当、味噌担当、菓子担当と責任を分担し
み)と少ないのですが、本年が初めての試
て製造に当たっています。
み(豆で張り切る母さんの会、まめっこ倶
楽部は通年販売ですが、他は平成年9月
1日~平成年3月1日まで発売)ですか
ら、これらの実績を見て今後増加するもの
と、事務局を担当する片山寿美子さんは、
大きな期待を持って見守っています。
勿論、「マンマのこころ箱」は、豆類以
外の農畜産物を取り扱っており、「サッポ
ロ・マルシェ」で販売しているものと重
「豆で張り切る母さんの会」の加工品 なっているものもあります。豆類に関する
ものを中心に豆類製品を全国に発信してい
「本別まめ美人」は、開封後にすぐその
る「マンマのこころ箱」に登録している農
ままおつまみやサラダに、つぶして呉汁に、
園と商品を少し詳しく紹介したいと思いま
かき揚げに、また、つぶして砂糖を加えず
す。
んだ餅にするなど、他用途に利用出来るも
のです。そのほか、「マンマのこころ箱」
豆で張り切る母さんの会
には入っていませんが、本別産大豆「とよ
JA 本別町女性部の「豆で張り切る母さ
まさり」と小麦「ホクシン」を用いて製造
んの会」には、お豆腐セット ( 手づくり豆
した「本別味噌」と、甘口、辛口、ごまの
腐、油揚げ、ミックス煮豆、サラダ用塩煮
ドレッシングを通年販売しています。ま
豆(本別まめ美人)、のんびり羊羹 ) があり、
た、本別産小豆「エリモショウズ」、「きた
「まめまめ辞典」として5項目あげて商品
のおとめ」を用い、甘さを控えた風味豊か
紹介するとともに、豆はバランスのとれた
な「のーんびり羊羹」をイベント限定で製
健康食品として資料で紹介しています。
造販売しています。
これらの商品は、「本別まめ工房」にお
--
まめっこ倶楽部
(小豆、大正金時、青大豆、黒豆)、D セッ
7名のお母さんたちで作った「まめっこ
倶楽部」では、自分たちが生産した豆を直
ト( 小 豆、 白 花 豆、 青 大 豆 )、E セ ッ ト
(小豆、大納言、大正金時、虎豆、白花豆、
接消費者に届けたいとの思いから「まめっ
青大豆、黒豆の中からお好み)などとして、
こ倶楽部」を設立し、A セット(0g ×
消費者の趣向を考慮した種類にした豆セッ
7 種 類 )、B セ ッ ト(00g × 4 種 類 )、C
トを用意しているのです。
セット(00g ×4種類)、D セット(00
~1,000g ×3種類)、E セット(7種類か
黒千石事業協同組合
らお好み)を、小袋詰めにし、小袋一つ一
黒千石事業協同組合の製品としては、黒
つに品種名、生産者であるお母さん方の
千石セット ( 黒千石大豆、黒千石きな粉、
メッセージと顔写真付きラベルを付けて販
黒千石茶、田から餅(黒千石入り切り餅)、
売しています。また、「まめっこ倶楽部」
おぼろづき(米)) があります。
紹介の資料には、大豆、黒豆、小豆、いん
黒大豆の中でも、イソフラボンやポリ
げん豆、それぞれについて個々に栄養性や
フェノールを多く含む機能性成分の多い黒
機能性成分を解説しています。
大豆「黒千石」とその加工品である「黒千
小袋詰めの豆類は、白あん、煮豆、スー
石茶」、「黒千石きな粉」、「田から餅(黒千
プに最適な白花豆・雪手亡を、煮豆・サ
石入り切り餅)」の「黒千石セット」、「黒
ラダなどによい大正金時、うずら豆、虎
千石納豆」やおぼろづき(白米、玄米)が
豆、黒豆を、餡、赤飯用によい小豆などを
あります。
A セット(小豆、大納言、大正金時、白
花豆、虎豆、青大豆、黒豆、)をはじめと
して、消費者の用途に応じた B セット(大
納言、大正金時、虎豆、黒豆)、C セット
黒千石事業協同組合の「黒千石納豆」
伊藤農園
伊藤農園「未来創食」は、自家産大豆と
「まめっこ倶楽部」の小袋詰めセット
小麦で作る「はるゆたか味噌」があります。
--
自家産春まき小麦の「ハルユタカ」を原料
ネットで小豆を中心に大豆、黒豆茶などを
とした麦麹と自家産大豆を用いた「はるゆ
小袋詰めとし、独自の商品名を付して通信
たか味噌」を製造して販売しています。そ
販売しています。一例を挙げると「プレミ
のほか、自家産小麦の「キタノカオリ」な
ア小豆」(大粒)、「宝石小豆」(自然乾燥)、
どパンや麺に向く品種を自家製粉した小麦
「晴れ晴れ小豆」(きたろまん)、「黒大豆」、
粉を、注文に応じて販売しています。
「青大豆」(音更大袖)、「福虎豆」、白イン
ゲン豆(大手亡)と黒豆茶(香り焙煎、和
(3)生産農家・JA によるインターネッ
ト・通販
み焙煎)を販売しています。ほかに自家産
の「ホクシン」を原料とした「しっかり小
「サッポロ・マルシェ」(主に赤レンガ
麦粉」や季節によりアスパラガス、新じゃ
前)及び「愛食フエア」(主にイトーヨー
がいもなども季節限定で通信販売していま
カドー)では、「マンマのネットワーク」
す。
には参加していませんが、江別市の「森林
豆類の小袋詰め販売は、JA 川西が以前
ファーム森林」、当別町の「大畑産地の野
から主に贈答用に販売していましたが、近
菜畑」が小袋詰め豆類を販売しています。
年、JA 中札内が小袋詰め各種を、JA うら
また、愛別町の「愛ふくふく」では、自家
ほろが00g の小袋詰めを販売することを
産「はくちょうもち」を用いた大福餅、切
始めた程度で、一般商社数社による小袋詰
り餅を製造販売しています。大福餅は自家
め豆類をデパートやスーパーで販売してい
産「はくちょうもち」と、自家産小豆を加
る実態があります。このように小袋詰めで
工した餡を用いており、試食が出来ること
販売することは、付加価値を高めることに
もあり、リピーターができ、毎回大福餅
なりますので、もっと豆類主産地の JA で
(白、よもぎ、黒豆、玄米など)は好評で、
考えて良いのではないかと思います。また、
売り切れになることが、しばしばありまし
JA 中札内は、大豆の極大粒品種「タマフ
た。
クラ」の甘納豆を愛食フエアで、JA うら
このほかに、北海道発で豆類を全国に発
ほろでは、フリーズドライ製法の「そのま
信している生産農家に、清水町の森田農
ま食べる十勝の豆」を大豆、いんげん豆で
場( 小 豆 ら い ふ:http://www.azukilife.
製造するとともに、「白花ようかん」、「あ
com , e-mail:[email protected]) が
ずきようかん」、「十勝小豆羊羹」などを製
あります。ご主人は、元道職員で農務関係
造し、通販にも取り組んでいます。「豆の
の仕事をされた方で、実家の農業を継いだ
日」が制定されたことでもあり、今後他の
Uターン担い手です。ご夫人も元道職員
豆産地 JA のモデルになるものと期待した
で、農業経験のない方ですが、ご夫人が担
いと思います。
当してメルマガを発信しており、インター
--
このように北海道は、日本の食糧基地と
せにせずに農業団体が少しでも農家収入が
増加するよう、生産地でも積極的に身近な
地元で、加工による付加価値を付けて欲し
いものと思います。
その点、「マンマのネットワーク」が北
海道の安心・安全な自家生産物を「マンマ
のこころ箱」として、生産者が需要を掘り
起こし、全国に向け「産地直送型の宅配
便」を発信し始めたことは、大変意義深い
森田農場の「晴れ晴れ小豆」
ことだと思いますので、今後の発展を期待
して自負していますが、原料の素生産に
するものです。
とどまる農産品が多く、JA しほろの馬鈴
私が00年、00年に訪ねた中国の豆類
しょ加工や、JA めむろの馬鈴しょ加工・
主産地で、黒龍江省北部の虎林市にある
枝豆加工、JA 中札内の枝豆加工などがあ
八五四農場では、穀物の総生産量が1万ト
りますが、対面販売の JA 中札内や、JA
ンを生産している大きな公司(会社)です
うらほろの通販のように、農業団体による
が、北京や上海のニーズに応えるのだと、
付加価値向上は、一部でしか見られず、ま
現地で米、とうもろこし、大豆、小豆など
だ少ないように思います。
の一部を、北海道の小袋より量は多いので
すが、1.㎏、㎏の密封小袋詰めにして出
まとめ
荷していました。 以上のように、北海道でも豆類の小袋や
そのほか、八五四農場では、きくらげの
豆類の加工品を全国に発信するようになっ
栽培と加工、熊、鹿の飼育と熊の胆嚢を用
たことは、豆類以外も含みますが、北海道
いた焼酎、鹿の角を用いた焼酎なども生産
のお母さん方が、従来の生産者としての立
するなど、多角的な経営を営んでいました。
場から、需要拡大と豆類の機能性などを積
このように後進といわれる中国の奥地で、
極的に PR するとともに、付加価値を付け
ロシアとの国境にあるウスリー川に近い会
る工夫をし、直接消費者に販売することに
社においても、消費者ニーズに応える二次
立ち上がったことは、大きな進歩というこ
加工をしている現況を見ると、北海道の農
とが出来ると思います。
産物などはもっと地元で加工し、付加価値
近年、農業所得が著しく低下傾向を示し
ており、農家生活向上のためにも、農家任
を付け、農家所得の拡大に目を向けること
が大切だと思います。
--
行政情報
北のクリーン農産物 (YES!clean) 表示制度について
北海道農政部食の安全推進局
食品政策課 クリーン・有機農業グループ
○第Ⅱ期(8~12年度)は、土づくりを基
1.クリーン農業に取り組んだ経緯
北海道では、平成3年度(1991年)から環
本に、化学肥料や化学合成農薬の使用をで
境に配慮した農業生産を促進するため、全
きるだけ低減させる取組を促進した。
国に先駆け「クリーン農業」を提唱し、た
12年には、クリーン農業で生産された農
い肥等の有機物の施用などによる土づくり
産物を消費者が容易に認識できるよう、化
に努めながら、化学肥料や化学合成農薬の
学肥料・化学合成農薬の使用を低減した生
使用を必要最小限にとどめるなど、農業の
産集団を道クリーン農業推進協議会が登録
自然循環機能を維持増進させ、環境との調
し、農産物に YES!clean マークを表示す
和に配慮した農業の推進に取り組んできた。
る「北のクリーン農産物表示制度(以下、
また、食の安全・安心を求める消費者の
「YES!clean 表示制度」という)」を創設し
ニーズに応えながら、品質の高い農産物の
た。
生産に取り組んでいくことも求められてい
○第Ⅲ期(13~17年度)は、開発したク
る。
リーン農業技術を手引書や技術体系などと
道では3年度からクリーン農業の技術開
して取りまとめ、農業改良普及センターを
発に取り組むとともに、5年ごとに推進計
通じて普及・指導に努めながら、クリーン
画を策定し推進に努めてきた。
農業の取組を推進した。また、15年度には、
YES!clean 表示制度について、化学合成農
○第Ⅰ期(3~7年度)は、環境と調和し
薬や化学肥料の数値基準を設定する制度改
た持続的な農業への転換を進めるため、地
正を行った。
域の気象・土壌条件に即した栽培管理と、
○第Ⅳ期(18~22年度)は、YES!clean 農
化学肥料・化学農薬の適正な使用を促進す
産物の生産拡大に向け、農業者等への技術
ることとした。
指導や消費者等への PR 活動を推進すると
また、関係機関が一体となってクリーン
ともに、有機農業や、自然循環型畜産、家
農業を推進するため、「北海道クリーン農
畜排せつ物の適正処理・活用の促進などク
業推進協議会」を3年に設立した。
リーン農業の取組を総合的に推進した。
- 10 -
YES!clean マーク
2.クリーン農業の推進に向けた取組
① クリーン農業技術の開発・普及
こ れ ま で、 道 立 農 業 試 験 場 で322の ク
リーン農業技術を開発し普及を図ってい
る。(化学肥料使用量削減技術83、農薬使
用回数削減技術136、品質評価・向上技術
48、環境負荷抑制技術33、家畜糞尿の低コ
スト処理利用技術14、総合経済評価8)
② 推進計画の策定
クリーン農業を推進するための施策の実
施計画を策定し、5年ごとに見直し、平成
22年に5期目の計画策定を予定。
③ 推進体制づくり
道クリーン農業推進協議会や、地域にお
ける推進組織である市町村クリーン農業推
進協議会を通じて YES!clean 表示制度に
基づく登録集団の拡大を推進。
④ 技術資料の作成
北海道施肥ガイド、北海道農作物病害
登録集団は、生産した YES!clean 農産
虫・雑草防除ガイド、クリーン農業技術体
物やその容器包装類に、統一シンボルマー
系などを作成。
クと栽培情報を表示することができる。
⑤ 表示制度の創設(YES!clean マーク)
YES!clean 表示制度では、対象作物を66
クリーン農業により道内で生産された農
作物とし、21年度では水稲、馬鈴しょ、ト
産物で、一定の要件を満たすものを消費者
マト、かぼちゃ、たまねぎなど53作物が登
にお知らせする YES!clean 表示制度を12
録され、登録集団数は延べ366集団、構成
年に創設し、15年度に数値基準を設定する
員数は延べ11,375戸、栽培面積は20年度で
改正を行った。
15,063ha へと取組が広がってきている。
YES!clean 表示制度で登録を希望する生
産集団は、市町村クリーン農業推進協議会
表1 YES!clean 農産物作付面積の推移
を通じて道クリーン農業推進協議会に登録
を申請し、専門家による審査を経て登録集
団となるもので、「北のクリーン農産物表
示要領」に基づいて運用を行っている。
㪟㪈㪏
㪟㪈㪐
㪟㪉㪇
⊓㍳㓸࿅ᢙ
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- 11 -
3.「YES!clean 表示制度」の要件
かった場合、その農産物は YES! clean 農
YES!clean 表示制度には、「表示対象農
産物として出荷できない。
産物」と「登録集団」に関する要件がある。
④ 分別管理
他の生産方法で生産された農産物が混入
【表示対象農産物に関する要件】
① 道内での生産
しないよう、YES!clean 農産物は収穫、保
② 「登録基準」に適合した生産
管、出荷時には分別して管理すること。
○ 表示対象農産物は、水稲1、畑作物9、
野菜類49、果樹7の計66品目。
【登録集団に関する要件】
○ 登録基準で各作物・作型ごとに設定し
⑤ 管理体制の整備
た化学合成農薬と化学肥料の使用基準を
責任者(代表者、生産管理責任者、集出
満たしていること。
荷管理責任者)を設置すること。
YES!clean 表示制度では、農業試験場で
⑥ 栽培基準の作成
開発したクリーン農業技術を活用すること
登録対象作物について、生産集団が実践
により、慣行栽培と同等の収量・品質を維
する「栽培基準」を作成すること。
持しながら、化学合成農薬と化学肥料を必
⑦ 栽培協定の締結
要最小限とすることを前提として使用基準
生産集団と構成員との間で、栽培基準を
を設定している。化学合成農薬と化学肥料
守る栽培協定を締結すること。
の使用量(回数)は、作物・作型ごとに異
⑧ 栽培記録の作成
なり、慣行栽培と比較した削減率は、それ
構成員が栽培履歴の記帳を行うこと。
ぞれ30%台が中心となっている。
⑨ 生産の実績
○ 適正な施肥設計を行うため、土壌診断
全構成員が「登録基準」に適合した前年
を定期的に実施すること。(施設野菜は
の生産実績を有すること。
毎年、それ以外は3年に1回)
⑩ 地元指導体制の整備
○ 遺伝子組換え由来の種苗を使用しない
こと。
生産集団を指導する市町村クリーン農業
推進協議会が設置されていること。
○ この他、水稲では有人航空防除をしな
いこと、馬鈴しょでは茎葉枯凋剤を使用
4.YES!clean 表示制度の施肥基準
しないこと。
YES!clean 表示制度は、化学合成農薬と
③ 「栽培基準」に基づく生産
化学肥料の使用基準に加え施肥基準を設
登録集団は「栽培基準」を定め、これは
け、「総窒素施用量」の規制を行うととも
要領に基づく「登録基準」と同等、もしく
に、「たい肥等有機物施用量下限値」「化学
はそれ以上の削減率でなければならない。
肥料施用上限値」「たい肥施用量上限値」
また、自ら定めた「栽培基準」を守れな
を設定している。
- 12 -
① 総窒素施用量上限値:硝酸性窒素によ
準に適合しなくなった場合や、集出荷段階
る環境負荷を軽減し、適正な作物の生育
での事故により計画的な出荷が困難な場合
を図るため、化学肥料だけでなく、たい
には必要な措置を行うとともに、事故発生
肥など有機質資材を含めた全ての窒素成
報告書を速やかに提出。
分について上限値を設定している。
④ 看板等の掲示(任意)
② たい肥等有機物施用量下限値:土づく
YES!clean 農産物を栽培するほ場に、そ
りをするために必要な、たい肥等有機物
の旨を表示した看板を掲示。
施用量の下限値を設定している。
⑤ 栽培状況の点検
③ 化学肥料施用量上限値:YES!clean 表
以上のような「北のクリーン農産物表示
示制度では次により算出。
要領」において定める登録集団の遵守事項
化学肥料施用量上限値=総窒素施用量
等の適合状況については、登録集団の自主
上限値 - たい肥等有機物施用量下限値
点検を基本として、市町村協議会による確
に係る窒素換算量
認・指導などを適切に実施することにより、
④ たい肥施用量上限値:牛ふんたい肥に
本表示制度の信頼性向上を図ることとして
ついては、過剰に施用すると環境に負荷
いる。
を与えるため、上限値を設定。
登録集団が毎年度行う自主点検では、栽
培基準の履行状況、整備保管すべき関係書
類の整備保管状況などを点検し、その結果
5.登録集団の遵守事項 栽培基準などのほか、登録集団には次の
を市町村協議会へ報告することとしている。
事項を遵守することが義務づけられており、
市町村協議会は、登録集団の自主点検結
それらが守られない場合、道協議会から改
果をとりまとめ道協議会に報告するととも
善命令が出され、改善命令等に従わなかっ
に、現地確認調査を実施する。更に必要に
た際には登録抹消もある。
応じて、道協議会は市町村協議会及び登録
① 関係帳簿の整備
集団と連携して現地点検・指導を実施する
農産物の生産、出荷状況及び販売実績、
こととしている。
シンボルマーク等の使用、保管状況に係る
帳簿の整備。
6.YES!clean 表示制度の課題 ② 実績・計画の報告
生産面においては、YES!clean 農産物の
栽培基準、当年産の生産・出荷実績、次
生産が徐々に拡大しており、20年度の栽培
年産生産・出荷計画(毎年1月末日までに
面積は15,063ha となっているが、対象作
提出)
物の全道栽培面積に占める割合は5.7%と
③ 事故発生時の報告
未だ少ない状況にあり、新規登録集団の育
自然災害等の緊急的な理由により登録基
成とともに、栽培品目及び面積の拡大を
- 13 -
図っていくことが課題となっている。
ていく。
また、多様な消費者ニーズなどを背景に、
② 高度なクリーン農業技術の開発・普及
化学肥料や化学合成農薬の使用を5割以上
より安全・安心な農産物に対する消費者
削減する先進的な取組も広がっているが、
の多様なニーズに対応するため、収量・品
気象や土壌条件などにより収量や品質が低
質を維持しながら化学肥料・化学合成農薬
下するなどの課題があり、生産安定を図る
の使用を5割以上削減する高度なクリーン
ための技術の開発・普及が必要となってい
農業技術の開発・普及を進め、生産者を支
る。
援する。
流通・消費面においては、YES!clean 農
③ クリーン農業の環境保全効果の評価
産物に対する認知度が低い、購入を希望す
クリーン農業による温室効果ガス発生抑
る場合でも販売先がわからない、品目数が
制効果や、生物多様性の向上に向けた効果
限られる、入手しずらいなどの課題がある。
を客観的に評価する技術の開発を進め、そ
の結果を広くお知らせすることにより、ク
7.今後の展開
リーン農業に対する道民などの理解を進め
YES!clean 農産物の生産・流通・消費量
る。
を拡大するため、今後は次のような取組な
どを進める方向で検討する。
8.道内における豆類での取組状況
① YES!clean 表示制度の認知度の向上 現在、豆類(大豆、小豆、菜豆(白花
産地と流通企業や実需者とを結び付ける
豆、大手亡、大正金時))に取り組んでい
取組として、流通企業などとの交流会の開
る YES!clean 登録集団は、清水町、浦幌
催や、外食産業・食品製造業での需要拡大
町、上士幌町、名寄市、洞爺湖町、苫前町、
に向けたアンケート調査や YES!clean 農
北見市などの延べ13登録集団(実9登録集
産物情報の提供、学校給食における需要拡
団)であり、それぞれの取組内容や、「北
大に向けた現地懇談会の開催などを進め
のクリーン農産物表示要領」などの関連情
る。また、産地と消費者を結び付ける取組
報は、北海道クリーン農業推進協議会の
として、消費者と生産者との産地における
ホームページで公開されているので、参考
交流会やクリーン農業セミナーの開催、生
にしていただきたい。
産者が消費者と直接向き合うマルシェなど
(御使用のブラウザで「イエスクリーン」
での直接販売などを通じ、消費者の生の声
と検索してみてください。)
を聞くとともに、生産者の取組や努力につ
いて知っていただく。この他、メディアや
公共交通機関を活用した PR 活動を通じて
YES!clean マークの露出機会の拡大を進め
- 14 -
YES!clean 表示制度要領、パンフレット
YES!clean 農産物 ( 浦幌町産小豆 )
表2H22YES!clean 登録集団、作付面積一覧 )
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表3 YES!clean 農産物表示制度の登録基準(主要作型)
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- 16 -
調査・研究
北海道の高品質豆類育種について 前編
田 中 義 則
需要動向に即した豆類の計画生産が進めら
はじめに
北海道のえん豆を除く豆類栽培面積
は、2009年 で 約58,600ha で あ る。 そ の
れ、最近は栽培面積約6万 ha 前後で推移
している。
う ち 大 豆 が24,500ha で 全 国 の16.9 %、 小
本稿では2回に分け、前編では北海道豆
豆 が23,500ha で 全 国 の74.1 %、 菜 豆 類 が
類の栽培条件と1980年代までの安定生産に
10,200ha で全国の91.1%を占め、豆類は小
向けた品種改良を概括する。後編(62号掲
麦や馬鈴しょ、てん菜とともに北海道の基
載予定)では、1980年代以降の基幹品種を
幹作物である。しかし、これら畑作物4品
例に、安定生産のための障害抵抗性育種お
による輪作体系が確立する以前の1950年代
よび品質改善のための高品質育種の取組と
は、肥料など農業資材が少なくとも栽培で
今後の課題を概説する。
きる貴重な換金作物であったことから豆作
に偏重した時代であった。その後、1961年
1.豆類栽培からみた北海道の条件
の大豆輸入自由化による価格の暴落で大豆
北海道は、世界の気象区分では冷帯(亜
の栽培面積は急減し、小豆や菜豆の栽培面
寒帯)に属し、本州の温帯(温暖湿潤気
積も度重なる冷害や連作による土壌病害、
候)と比べ降水量は少なく冷涼な気候であ
さらに機械化栽培の遅れなどから減少した。
る。さらに北海道は、日本海側の対馬海流
さらにその後は、米生産調整に伴う水田転
(暖流)と太平洋側の千島海流(寒流)の
換政策、海外開発輸入や加工品輸入の増加、
影響および夏季に湿った暖気を運ぶ太平洋
国内の需要動向の影響を受け栽培面積およ
高気圧と寒気を運ぶオホーツク海高気圧と
び生産量は変動を繰り返してきたが、1984
の影響により、道南、日本海沿岸、太平洋
年の「畑作物作付指標面積」設定以降は、
沿岸、オホーツク海沿岸および内陸の5つ
たなか よしのり 地方独立行政法人 北海道立総
合研究機構農業研究本部 十勝
農業試験場
の地域に分けられる。このため、地域によ
り無霜期間の長さ、生育期間の積算気温や
平均気温などの条件が大きく異なり、必ず
- 17 -
しも豆類栽培に適した地域ばかりではない。
年)を策定し、作目ごとに栽培地帯区分を
大豆を例に同緯度(北緯42度)にある米国
設定し、適切な品種選択と適期播種を奨励
アイオワ州と道東十勝の気象条件を比較す
している。大豆は、主に積算気温と無霜期
ると、生育期間中(5月から9月)の降
間から6つの地帯に分かれる(図1と表
水量は北海道がわずかに多く(+34mm)、
1)。小豆は、主に平均気温と無霜期間か
逆に平均気温はかなり低く(-4℃)厳し
ら4つの地帯に分かれる。特に、小豆は降
い。そこで、北海道では、豆類の生態と気
霜被害に弱いためオホーツク海高気圧の影
象条件から「豆類地帯別栽培指針」(1994
響を受けやすい順に、早生地帯、早生~中
図1 大豆の栽培地帯区分
表1 大豆の栽培地帯区分
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図2 小豆の栽培地帯区分
表2 小豆の栽培地帯区分
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生地帯、中生地帯および晩生地帯に分けら
から道東と道央の2区分としている(図3
れる(図2と表2)。菜豆は、生育期間が
と表3)。多様な気候条件や冷害や高温多
短いことから道内畑作地帯一円での栽培が
雨などの気象災害、さらに病害の危険に対
可能であるが、夏期の高温に弱く、高温登
応しながら、安定多収と高品質を実現する
熟による小粒化などの危険性や成熟期に高
豆類の育種と栽培技術の開発が求められて
温となる地域では雨害が発生しやすいこと
いる。
- 19 -
Ⅱ
Ⅰ
図3 菜豆の栽培地帯区分
表3 菜豆の栽培地帯区分
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20万 ha 前後で推移した。1901年から1930
2.安定生産のための育種的対応
年の10a 当たり平均収量を見ると、大豆が
(1)豆類の収量性向上と収量変動要因
北海道の豆類栽培面積は、1889年(北海
106 kg、小豆が114 kg、菜豆が118 kg で
道庁が設置された年)にすでに4,069ha あ
あったが、その後30年間(1931年から1960
り、その後拡大し、1918年には最初のピー
年 ) で は そ れ ぞ れ100 kg、102 kg、101
クである221,900ha に達した(図4)。こ
kg と低下している。これは、この間の大
の年の栽培面積は、菜豆が135,000ha、大
冷水害や連作による地力低下、ダイズシス
豆が52,500ha、小豆が34,400ha であった。
トセンチュウ被害や土壌病害などが原因と
こ の 背 景 に は、 第1次 世 界 大 戦(1914~
されている。
1918年)の食料不足による欧州向けの菜豆
輸出需要があった。その後1940年まで約
その後20年間(1961年から1980年)では、
それぞれ153 kg、138 kg、162 kg と単収
- 20 -
1901 1911 1921 1931 1941 1951 1961 1971 1981 1991 2001
図4 北海道の豆類栽培面積と単収の推移
は向上した。この間の大豆は中生の褐目中
では、耐冷性に優れ安定多収高品質な「エ
粒で多収な「北見白」(1961年育成)や中
リモショウズ」(1981年育成)が今も基幹
生の晩・白目大粒でシストセンチュウ抵抗
品種であるが、中生で落葉病と萎ちょう
性の「トヨスズ」(1966年育成)、小豆は中
病に抵抗性の「きたのおとめ」(1994年育
生で高品質多収な「宝小豆」(1959年育成)
成)がこれに次いでいる。菜豆では金時類
や中生で茎疫病抵抗性の「寿小豆」(1972
の「大正金時」(1957年育成)と「福勝」
年育成)、菜豆は早熟・わい性・良質多収
(1994年育成)、手亡類の「姫手亡」(1976
の「大正金時」(1957年育成)や中生・半
年育成)から「雪手亡」(1992年育成)が
つる性・良質多収の「銀手亡」(1971年育
基幹品種となっている。
成)などが、基幹品種として品質と収量性
以上のように、いずれの豆類とも第2次
の向上に貢献した。また、1980年代から最
世界大戦(1939~1945年)後は、単収が着
近(2008年)までの平均収量は、大豆220
実に向上している。しかし、大豆を例に主
kg、小豆199 kg、菜豆192 kg とさらに向
要生産国と比較すると道産大豆の平均収
上した。この間、大豆では中生・白目大粒
量230kg/10a は、第4位のブラジルに次ぐ
多収でシストセンチュウ抵抗性の「トヨム
が、同緯度の米国アイオワ州の平均収量
スメ」(1985年育成)などから、最近では
318kg/10a との比較では大きな開きがある
早熟多収で耐冷性や病害など各種障害抵抗
(表4)。これには、海洋性と大陸性の気候、
性に優れた機械収穫適性の高い「ユキホマ
肥沃度の低い火山性土と作土が厚く有機質
レ」(2001年育成)に代わっている。小豆
に富むプレーリーの土壌など環境条件の違
- 21 -
いもあるが、品種や栽培など技術
表4 主要国と日本・北海道の大豆収量の比較
的な要因も考えられることから、 国(州・道)/ 年度
今後はこれら要因の解析と改善が
必要であろう。
北海道における豆類の収量性は、
輪作体系、施肥栽培技術および品
種改良により向上したが、年次に
よる収量変動は依然として大きい。
これは、北海道特有の冷害の影響
が最も大きく、特に感受性の高い
アルゼンチン
米国
(アイオワ州)
カナダ
ブラジル
パラグアイ
中国
日本
(北海道)
2003 2004 2005 2006 2007 平均
280 220 273 268 283 265
228 284 286 290 231 264
219 330 353 340 350 318
217 259 271 289 238 255
280 230 223 238 282 251
285 192 202 173 170 204
165 182 170 170 175 172
153 119 168 161 157 152
185 233 248 249 236 230
注)主要国の収量データ FAOSTAT http://faostat.fao.org/
米国アイオワ州の収量データ http://www.nass.usda.gov/
北海道の収量データ 農林水産統計
大豆や小豆は、ほぼ4年に1度の
冷害と10年に1度の大冷害を受けている。
すなわち生態育種が基本となる。生態育種
1993年の大冷害では、十勝農試でも「トヨ
では、主に開花期と成熟期の早晩により判
ムスメ」の収量は平年比36%、
「エリモショ
断される早晩性(熟性)を指標に行う(表
ウズ」は平年比67% であった。ほかの変動
5)、初期世代の現地選抜試験と中期世代
要因として、土壌病害ではダイズ茎疫病や
系統の系統適応性検定試験が最も重要であ
アズキ茎疫病、アズキ萎凋病、アズキ落葉
る。さらに、ゲノム解析の進んだ大豆では、
病がある。ウイルス病では、ダイズわい化
生態型を支配する熟性遺伝子(E1 ~ E4 座)
病とインゲンマメ黄化病がある。また、虫
に関する DNA マーカーが開発され、今後
害ではダイズシストセンチュウによる被害
の詳細な遺伝解析により地帯別に適切な熟
が大きく、最近では小豆にも被害が顕在化
性遺伝子を計画的に組合せる新しい生態育
している。また、豆類は湿害を受けやすく、
種が可能となる。このゲノム情報を基盤と
道央の転換畑では大豆や小豆、道東の冷害
した生態育種は、多収性、耐倒伏性、さら
年では特に菜豆が冷湿害による被害が大き
に機械収穫適性に係わる草姿を選抜形質と
い。このように豆類の収量変動を引き起こ
する草型育種にも発展が期待される。例え
す減収要因は多く、品種の抵抗性は未だ不
ば、大豆では主に分枝の多少や最下着莢位
十分であり、さらなる改良が必要である。
置など、小豆では蔓化の難易や胚軸長など、
菜豆では伸育型やわい性などがある。今後
(2)安定生産のための生態育種と障害抵抗
の豆類育種は、従来の生態育種を基本に、
性育種
安定多収と機械化栽培適性の向上を狙う草
豆類の収量および品質は、栽培環境条件
型育種が重要なポイントとなるであろう。
の制約を避けられない。そこで、安定生産
さらに、障害抵抗性育種が重要である
にはそれぞれの地帯に適応する品種の育成、 (表5)。特に、大豆と小豆では耐冷性が最
- 22 -
表5 豆類の育種目標となる重要形質
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- 23 -
も重要である。低温感受性が高い生育ス
枯病など多いが、育種対象とするのはイン
テージは大豆と小豆で多少異なり、大豆で
ゲンマメ炭そ病のみである。虫害抵抗性で
は花粉形成期および開花期、小豆では出芽
は、ダイズシストセンチュウ抵抗性が重要
直後、生育初期および開花着莢期であり、
である。これまで大豆では、最も道内で優
それぞれに対する選抜と評価を行っている。
占するレース3発生圃場に対応する抵抗性
まだしばらくは人工気象室や特設の検定圃
品種の育成が中心であったが、最近の実態
場での耐冷性検定試験となるが、近い将来
調査から既存の抵抗性品種にも寄生するセ
にはこれら形質の DNA マーカー選抜技術
ンチュウ発生圃場が多いことが明らかとな
が実用化されるであろう。また、土壌病害
り、今後はより高度な抵抗性を示すレース
抵抗性では、大豆のダイズ茎疫病、小豆の
1・3抵抗性品種が必要となっている。ま
アズキ茎疫病、アズキ萎凋病およびアズキ
た、ダイズシストセンチュウ被害は、小豆
落葉病が重要である。このうちダイズ茎疫
でも深刻であることから、小豆の抵抗性育
病、アズキ茎疫病およびアズキ萎凋病の被
種の取組と共に総合的な被害軽減技術の開
害発生は転換畑地帯で多く、アズキ落葉病
発が必要である。
は全地帯で見られる。何れの病害も病原菌
他に問題となる障害として、大豆の開花
のレース分化があることから、実用的には
期以降の湿害と低温により子実のへそおよ
複数のレース抵抗性を集積する必要がある。
びへそ周辺が褐色を呈する低温着色粒、ま
しかし、茎疫病原菌のレース分化は激しく、
た開花期後の長期低温で子実が裂開する低
ダイズ茎疫病の病原菌レースは道内で10以
温裂開粒などの生理障害がある。大豆の耐
上あることから、レース抵抗性の集積は現
湿性は、転換畑の排水不良地帯で顕在化す
実的に困難である。そこで、これに代り大
る生理障害であり、高温年には茎疫病、低
豆と小豆では茎疫病の圃場抵抗性育種を開
温年には冷湿害を併発し被害を拡大する。
始している。また、ウイルス病では、ジャ
最近では、この開花期以降の耐湿性と茎疫
ガイモヒゲナガアブラムシが媒介するダイ
病抵抗性を独立に検定し、転換畑向けの品
ズわい化病とインゲンマメ黄化病がある。
種特性として総合的に評価するシステムが
現在、このウイルス病に対しては、殺虫剤
整備された。また、低温着色と低温裂開粒
の種子塗末や播溝施用と生育初期の茎葉散
は、いずれも開花期以降の低温により子実
布により防除しているが、多発年には大き
の外観品質が著しく低下する生理障害であ
く減収することから抵抗性品種の開発が必
るが、それぞれ低温感受性期間が異なり、
須である。また、問題となる種子伝染性病
検定施設と労力的制約が大きく、一度に多
害には、インゲンマメ炭そ病、ダイズべと
数の系統を検定できず、その育種的対応に
病、ダイズ斑点細菌病、アズキ褐斑細菌
課題が残されている。
病、アズキ茎腐細菌病、インゲンマメかさ
- 24 -
調査・研究
京都府における小豆の
機械化栽培確立に向けた取組
杉 本 充
1.はじめに
ばつによる生産意欲の減退などにより、平
京都府産の「丹波大納言小豆」は大粒で、
成8年以降は生産量・生産面積ともに減少
煮ると風味や香りが良く、また腹切れせず
傾向にありました(図1)。
色合いが良いといった優れた特徴を持つこ
このような状況の中、京都府では平成17
とから、京菓子業界など実需者の高い評価
年に生産量の拡大を図るべく、「ブランド
を得ており、府民の食生活や京都の伝統文
京野菜等倍増戦略第2次プラン(小豆・黒
化を支える上でも欠かせないものとなって
大豆分野)」を策定し、集団栽培と受託組
います。
織等への省力機械化栽培の普及・定着によ
このため、京都らしい地域特産物として
る新たな産地づくりを進めて、安定した生
古くから定着してきましたが、生産者の高
産体制の確立と生産量の拡大に向けて施
齢化等の進展、台風や長雨による湿害や干
策・事業を推進してきました。
1200
作付面積( h a ) ・収穫量( t)
120
10a当たり収量
作付面積
収穫量
100
1000
80
800
60
600
40
400
20
200
0
0
昭60
昭62
平元
平3
平5
平7
平9
平11
平13
平15
平17
平19
図1 京都府における小豆の作付面積、収穫量および10a 当たり収量の推移
資料:農林水産統計から作成
すぎもと みつる 京都府農林水産技術センター 農林センター
- 25 -
平21
1 0 a 当たり収量( k g )
1400
本稿では、これまで京都府内で検討し、
受託組織や集落営農など営農集団による小
確立を進めてきた小豆機械化栽培技術につ
豆栽培を府内の産地全体で推進し、地域や
いて、その経過と概要を紹介し、残された
営農類型に応じた機械化技術の検討を進め
課題について述べることとします。
てきました。
2.小豆機械化栽培の検討経過
3.検討を進めてきた機械化技術
京都府で小豆機械化栽培の実証検討が本
(1)播種前管理技術
格的に始まったのは、府中北部に位置する
京都府における小豆の播種適期は7月20
大江町(現福知山市)の河守地区で平成11
~30日頃です。長梅雨などによって、播種
年に1区画1ha 以上の大規模ほ場整備が
作業の遅れや播種後の湿害発生を抑えるに
完了したことを契機に、大規模営農による
は、基本的には前作である麦収穫後から小
小豆の機械化栽培技術の確立が求められま
豆播種までの間、土壌排水に努めることが
した。小豆は開花期間が長く莢の成熟が不
必要です。オーガトレンチャによる明渠は
斉一になりやすいため、成熟した莢から順
耕起せずに作溝するため、くずれにくく、
次手収穫する体系で小規模に生産されてき
併せて作溝部分以外は不耕起状態が維持
ました。したがって大規模経営を図るため
されるため表面排水に優れます(写真1)。
には、従来人力に頼っていた収穫作業を機
また、明渠に弾丸暗渠を組み合わせること
械化し、労力軽減を図ることが必要となり
によって排水効果がより高くなることも確
ました。そこで、平成12年に大豆用のリー
認しています。
ル式コンバインによる収穫を検討したとこ
ろ、熟莢収穫の約1/50の作業時間という極
めて省力となることが実証され、また、茎
葉や泥の巻き込みによる汚粒も観察されな
かったことから、コンバインの有効性が確
認できました。
中山間地域を多く抱え、1戸当たりの経
営耕地面積が80a 程度と農業経営の基盤が
脆弱な本府においては、農作業の受託組織
写真1 オーガトレンチャによる明渠設置
づくり等を一層進め、米生産のさらなる効
率化と併せ、京菓子業界からの増産要望が
(2)播種技術
強く収益性が高い小豆や黒大豆等の省力・
ア.部分耕狭条密植栽培
安定生産を進める、京都ならではの水田営
播種部分のみを作溝ディスクで耕起する
農の確立を図ることが重要です。そのため、
専用播種機を用いた栽培法です(写真2)。
- 26 -
期待できる技術です。また、写真4のとお
り、うね立てはロータリ幅を基本とするた
め、コンバインの走行幅内の均平は維持可
能です。
写真2 専用播種機による播種作業
その他の部分は不耕起のまま生育期間中も
維持されるので、表面排水の効果は保たれ
ます。また、条間30cm の密植栽培とする
写真4 うね立て同時播種
ため、小豆が早く地面を覆い雑草発生を抑
説明:ロータリ後方でうねが形成されている。
えるとともに、中耕作業を前提としないの
で土壌表面の凹凸が発生せず、泥の巻き込
ウ.省耕起密植栽培
みが生じにくくなるため、コンバイン収穫
京都府で開発した「大豆の省耕起密植栽
に有利な栽培法です(写真3)。
培」の播種方法を小豆の機械化栽培へ応用
したものです。市販のロータリを用いて、
播種位置の部分のロータリ爪を外し、播種
する条直下の部分は不耕起状態を維持しつ
つ、残された爪で播種条以外を耕耘し、播
種条を覆土する技術です(図2、写真5)。
播種後、過剰な降水があった場合、耕耘さ
写真3 生育初期の状態
イ.耕耘同時うね立て播種
アップカットロータリを活用して、耕耘
と同時にうね立てを行い播種する技術で
す。うね立てにより湿害回避が目指せると
ともに、耕耘から播種まで一工程で行うた
図2 播種部分とロータリ爪の残し方
め、降雨リスクの回避と作業能率の向上が
説明:上は点線の刃を外す。下は播種後の状況
- 27 -
れた部分へ水が移動するため、過湿に強い
作物にも利用できるため、汎用性がありま
技術です。一方、作業者の感想から、作業
す(写真6)。
時の振動等が大きく、負担がかかるとの意
見がありました。これは、ロータリの爪を
(4)収穫技術
外すことによるものと思われます。した
ア . ビーンハーベスタ収穫体系
がってこの技術は、部分耕狭条密植栽培や
3ha 程度までの比較的小規模な営農の
アップカットロータリなど特別な装備を持
場合や、集落内の労働力が確保できる条件
たない経営において、湿害の懸念が高い場
がある場合では、ビーンハーベスタやビー
合に選択される方法といえます。
ンスレッシャによる小型の収穫機が活用で
きます。ビーンハーベスタによる株収穫で
はほ場からの持ち出し作業が必要となりま
す。また、ビーンスレッシャによる脱粒を
行う前には予備乾燥を行います(写真7、
写真8)。
写真5 実際の播種状況
(3)病害虫防除技術
大規模ほ場での防除はブームスプレーヤ
の利用が有効でした。ブームスプレーヤは
写真7 ビーンハーベスタによる収穫
小豆だけでなく、大豆等、他の土地利用型
写真6 ブームスプレーヤによる防除作業
写真8 ビーンスレッシャによる脱粒作業
- 28 -
イ . コンバイン収穫技術
現在では、こうした実証成果を基にコンバ
平成12年にコンバイン収穫を初めて検討
イン収穫技術のマニュアルが作成され、現
して以来、府中北部を中心に各地でコンバ
場で活用されています。
イン収穫技術の実証検討が進められました
(写真9)。その中で、①泥の巻込みによる
4.今後の検討課題
汚粒の発生、②刈り残し等の頭部損失や茎
小豆栽培において、播種前から収穫に至
葉排出部から出る後部損失といった収穫ロ
るまでの基本的な作業について機械化する
スの発生、が顕著に現れました。
ことはほぼ確立できたと考えられます。部
①の汚粒の発生原因としては、ほ場の凹
分耕狭条密植栽培では中耕作業を行わない
凸やコンバインの沈み込みによって収穫時
ため省力効果は著しく、コンバイン収穫等
の姿勢が不安定となったこと、さらに、刈
を組み合わせた体系で1ha 当たり作業時
刃の下げ過ぎなどによることが大きいもの
間(溝切・除草剤散布・播種・病害虫防
でした。そこで、部分耕狭条密植栽培や耕
除・生育期除草剤散布・収穫の計)は約17
耘同時うね立て播種技術の採用により、ほ
時間余りとなりました。
場面の凹凸を減らすとともに、普及セン
しかし現在も、機械化栽培を導入した営
ターが中心となってオペレータの研修会を
農組織の多くで、それぞれが掲げる目標単
開催し、作業技術向上が図られました。
収(1ha 当たり1~1.2t)が達成できない
また、収穫ロスに対しては、リフター
場面や、汚粒により品質が低下している状
(株を引き上げる装置)の先端部を地面側
況が見られます。これら単収の低下や汚粒
に曲げ、取込み角度を上げることによって
の発生は、雑草繁茂によって小豆との競合
頭部損失を低減させることが認められまし
が生じたり、雑草根に付着した土がコンバ
た。また、コンケーブ(機内に装備された
イン内に引き込まれたりすることが原因と
受け網)を格子タイプにすると、後部損失
なっており、雑草防除技術の確立は今なお
を減らせる可能性があることが判りました。
残された課題として、特に5~8ha 規模
の栽培面積を持つ営農集団を中心に、生産
現場から強く解決が求められています。
さらに、ヒロハフウリンホオズキやアサ
ガオ類など防除が困難な外来雑草が増加す
る傾向が見られます。これら外来雑草対策
も含めた、低コストで効果的な雑草防除技
術を確立することは、小豆の生産量安定と
品質向上にあたって急務となっており、現
写真9 大豆用コンバインによる小豆の収穫
在、その対策技術の確立に向けた研究を進
- 29 -
めているところです。
京都府農業総合研究所(2005)省力で湿害
に強い大豆の省耕起密植栽培技術 「普
参考文献
及に移す平成16年度試験研究成果」:1 藤田信也(2001)小豆の機械化栽培体系の
京都府農林水産技術会議
確立~大江町河守地区の事例をもとに~
京都府農林水産技術センター(2010)「京
「京都農総研経営研究資料:京経第62号」 都の丹波大納言小豆をしっかりつくろ
京都府農業総合研究所企画経営部
う」
河合 哉(2009)京都府中丹地域における
本永治彦(2004)地産地消により京の食
土地利用型作物の産地づくり 豆類時報
文化を育んできた小豆 豆類時報39:
57:23-27
24-26
京都府中丹東農業改良普及センター・京都
大橋善之(2008)京都府丹後地域における
府中丹西農業改良普及センター(2009)
「特産小豆をコンバインで収穫するため
に」
- 30 -
小豆の大規模省力化栽培技術 豆類時報
50:30-35
生 産 ・
流通情報
「ご当地グルメ篠山グランプリ」の開催
-ぼたん鍋に続く新ご当地グルメを発掘する-
ご当地グルメ篠山グランプリ実行委員会 事務局
を媒体として募集を行い、テレビ、ラジオ
1.趣旨
丹波篠山には、丹波篠山黒豆、丹波篠山
牛、丹波栗、山の芋、松茸等、全国に誇れ
のニュース等でも取り上げていただきまし
た。
る特産物はたくさんあるものの、「ぼたん
鍋」を除いては当地に出向いて食べてみた
募集の概要は、以下のとおりです。
◦募集期間
い「ご当地グルメ」と呼べるものがないの
が現状です。観光客数も「ぼたん鍋」シー
5月24日(月)~6月30日(水)
◦募集条件
ズン(11月~3月)と「秋の味覚」シーズ
和、洋、折衷は問わず。丼、一品物、ス
ン(10月、11月)の秋冬に偏っています。
イーツなど、篠山に行ったらこれを食べ
それ以外の季節に食を求めて篠山に足を運
たいという料理をイメージして、「丹波
ばれる方は多くありません。通年で集客す
篠山黒豆」、「丹波篠山山の芋」、「丹波篠
ることが篠山の課題となっています。
山牛」などの特産食材を使用すること。
そこで「丹波篠山にあれを食べに行こ
◦応募方法
う!」と言われるような「ぼたん鍋」に続
所定の応募用紙に、料理の名前、応募者
く新「ご当地グルメ」を発掘・開発する本
氏名、住所、アピールポイント、調理時
企画がスタートしました。
間、作り方等を記載のうえ、料理の写真
を添付して事務局に提出。
◦入賞特典
2.募集概要
ご当地グルメ篠山グランプリ実行委員
グランプリ(1名)30万円
会(篠山市商工会・丹波ささやま農業協同
準グランプリ(1名)10万円
組合・丹波篠山観光協会・篠山市飲食業組
審査員特別賞(1名)5万円
合・篠山市)を立ち上げ、審査員長及びア
ご当地賞(1名)5万円
ドバイザーとして料理・洋菓子業界でご活
躍中の林 裕人さんをお迎えしました。篠
3.応募数と応募者の分布
山市広報紙、篠山市ホームページ、新聞他
- 31 -
約1ヵ月余りの募集期間でしたが、90人
の個人またはグループから合計137点の応
窺がえるものも多くありました。年齢に関
募がありました。篠山市広報紙、新聞、テ
しては30歳代が最も多く、次いで40歳代と
レビニュース等による募集や告知は、市内
なっています。これらの年代は子育て中の
あるいは県内に限定されたものであり、多
年齢層であり、食に対する関心が高いので
くの応募は市内からのものでしたが、近隣
はないかと想像します。また、データは示
市外や、京都府、大阪府、遠くは千葉県や
しませんが、全体の約6割が女性からの応
高知県などの県外からも応募がありました。
募でした。(表1)
ホームページの影響力を改めて認識する結
果でした。
4.料理の分類と応募者の年齢分布
また、小学生や高校生、専門学校生など、
今回のレシピ募集では料理スタイルを特
幅広い年齢層から応募をいただき、その中
定しなかったため、多彩なレシピの応募が
には斬新なアイデアだけでなく、地域の食
ありました。それらをカテゴリー分けした
育に関する取組や伝統食文化との関わりが
結果を表2に示しました。
表1.応募者の地域と年齢層
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13
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30
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2
2
1
1
1
1
13
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1
2
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3
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49
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1
13
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28
- 32 -
20
9
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96
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1
1
1
1
1
1
3
2
1
1
3
1
3
137
また、黒大豆は、煮豆、水煮、きな粉、
表2 料理の分類とレシピ数
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ᢱℂߩಽ㘃
炒り豆、ペースト、煮汁、餡など、実に多
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38
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26
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18
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11
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4
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4
23
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137
ว⸘
彩な方法で使われていることも特徴と言え
ます。2位の山の芋も、おろし、短冊切り、
サイコロ切り、つくね、かけダレ、お好み
焼きの生地など、多彩な使われ方をしてい
るところは黒豆と似た特徴があります。黒
豆と山の芋は、篠山の伝統的かつ代表的な
特産食材であるということを再認識する結
最 も 多 か っ た の は、「 ケ ー キ、 餅、 デ
果でした。
ザート、饅頭、パン」としてカテゴリー分
けしたグループでした。昨今のスイーツ
6.審査
ブームを反映しているのかもしれませんが、
審査員長として料理・洋菓子業界でご活
黒大豆、小豆、栗といった篠山の特産物が、
躍中の林 裕人さんを、特別審査員として
スイーツ系の素材として適しているため、
野球解説者でタレントの亀山つとむさん
このような結果になったものと考えられま
(調理師免許保有)を迎え、篠山市の飲食
す。
業組合、観光大使(女性)等のメンバーを
加えた計11名の審査員により、以下の項目
を審査していただきました。
5.特産食材ランキング
主な特産食材について、使用されたレシ
ピ数を集計してみました。(表3参照)
① レシピの独創性
② 篠山らしさ(篠山に似合う、篠山を思
黒大豆は、137点の応募レシピのうち88
い浮かべる、篠山の特産物を活かしてい
点に使用されており、圧倒的多数で1位と
なっています。
る)
③ 市場性(値段と魅力のバランスが取れ
ている、アレンジしやすく、多くの店で
表3 特産食材ランキング
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出せる)
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88
④ 味
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⑤ 見た目
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5
員会スタッフによる試作審査を経て、以下
9
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4
の入賞候補7点が最終審査に残りました。
7.一次審査
応募レシピの中から、書類審査と実行委
- 33 -
◦篠山牛すじ丼
斉藤善隆
◦篠山牛しぐれ丼
岸本香里
◦『丹篠!鹿丼』(たんじょうしかどん)
愛遊会 Jr. 真砂野英之、松浦由美
◦山の芋たっぷり いもしし焼
愛遊会 Jr. 西尾和磨、森井実生
◦シシストロガノフ
鳥居翔平
◦フルーツ山の芋カレー
しののめ山の芋研究チーム
最終審査会/審査風景
代表 井関智晴
◦丹波ヌードル(黒豆ラーメンのとろろつ
け麺)
森本正人
匿名で審査を進めたのですが、結果的に
ンプリ 」、「 準グランプリ 」、「 審査員特別
賞 」、「 ご当地賞 」 は、以下の料理に決定
しました。
一次審査を通過した7点全てが篠山在住者
による応募でした。地元の特産物は地元の
グランプリ 「篠山牛しぐれ丼」
人が一番良く知っているということでしょ
受賞者:岸本香里さん
うか。
8.最終審査と表彰
2010年8月15日(日)デカンショ祭の
初日に一次審査を通過した7人(組)の候
補者が、市民センターに集まり、最終審査
に臨みました。最終審査では応募者自身が
調理を行いました。
篠山産コシヒカリに黒米を混ぜてほんのり
審査員による真剣な審査の結果、「 グラ
色をつけたご飯に、出汁で割った山の芋の
おろし、炒り卵、篠山牛と住山ごぼう(注)
で炊いたしぐれ煮をのせています。味も彩
りも食感もすばらしい特産物満載の丼です。
(注)
篠山市の住山地区で栽培されるごぼう。こ
の地区の排水の良い土壌がやわらかくて香
りのよいごぼうを育てると言われています。
最終審査会/調理風景
- 34 -
準グランプリ 「篠山牛すじ丼」
ご当地賞 「フルーツ山の芋カレー」
受賞者:斉藤善隆さん
受賞者:しののめ山の芋研究チーム(井関
智晴さん、田阪瑞樹さん、木村光貴さん)
篠山牛の牛すじとこんにゃくを甘辛く煮込
んだスジコンを篠山産コシヒカリのご飯に
山の芋のおろし団子、リンゴ、パイナップ
載せ、山の芋のおろしを掛けました。年中
ルが独特の食感を生み出すヘルシーなフ
たべられる安くて美味しい丼です。山の芋
ルーツカレーライス。山の芋チップスのパ
のおろしには、サイコロ状に切った山の芋
リパリ感も絶妙です。
が隠れており独特の食感が楽しめます。
審査員特別賞 「丹波ヌードル(黒豆ラー
メンのとろろつけ麺)」
受賞者:森本正人さん
表彰式/グランプリ受賞の岸本香里さんと林審査員長
チャーシューの代りに煮込んだ猪肉の煮汁
を鶏がらスープで割ったつけ汁に、黒豆
ペーストを練りこんだ手打ち麺を入れまし
た。トッピングには猪肉、山菜、糸唐辛子
を載せています。取り皿に入れた山の芋の
おろしと絡めていただきます。夏は冷やし
表彰式/受賞者
で、冬は暖かく。
- 35 -
表彰式は、会場を変えてたんば田園交響
まっています。二次募集(平成22年10月12
ホールで行われました。写真はその時の様
日~平成23年2月15日)の締め切り後、観
子です。
光グルメマップ等を作成し、キャンペーン
を展開する予定です。
篠山にお越しの節は、新名物「篠山まる
8.今後の展開
ごと丼」を是非ご賞味下さい。
“篠山まるごと丼”ルール(提供店とし
現在、当実行委員会では、グランプリ
「篠山牛しぐれ丼」と準グランプリ「篠山
牛すじ丼」をベースにして「篠山まるごと
ての遵守事項)
◦篠山産コシヒカリを使用すること
◦篠山産の肉を使用すること(篠山産牛肉、
丼(ささやままるごとどん)」ルール(下
猪肉、鹿肉)
記参照)を策定し、取扱店を募集していま
◦篠山産山の芋を使用すること
す。
◦篠山産の根菜類を使用すること(例:ご
一次募集(平成22年9月16日~9月27
ぼうなど)
日)では6店舗の参加があり、各店の工
◦食器はできるだけ篠山で生産される焼物
夫のもと「篠山うまいもん丼」「篠山牛す
(丹 波 立 杭 焼、王 地 山 焼 など)をご使用
じ丼」「篠山牛とろろ丼」などの料理名
で「篠山まるごと丼メニュー」の提供が始
- 36 -
たん ば たち くい やき
ください。
おう じ やま やき
生 産 ・
流通情報
女満別における豆類生産の取組
前 田 英 典
1.地域の概要
大空町女満別
(1)まちの概要
大空町は、平成18年3月31日、女満別町
と東藻琴村が合併して誕生しました。
北海道の北東部のオホーツク管内に位置
し、東は小清水町、西は北見市、南は美幌
町、北は網走市と接しており、網走国定公
園と阿寒国立公園に囲まれた自然豊かな純
農村地帯で、面積は343.62平方キロメート
15,924ha を有し、その半分程度の約7,450ha
ルです。
程度が、良質な農産物を生み出す農用地と
オホーツクの空の玄関女満別空港を控え、
なっています。
網走湖、藻琴山、メルヘンの丘、芝桜公園
比較的温暖な気候に恵まれていますが、
など四季の自然豊かな約8,300人の町です。
6~7月にかけては冷涼なオホーツク海性
基幹産業は農業で、麦類、馬鈴しょ、てん
高気圧の影響を受け盛夏を見ずして冷害に
菜、豆類、野菜でその他には日本最東端の
見舞われることがあります。
米など多岐にわたって栽培されています。
2.女満別農業の概要
(2)位置・地勢・気候
(1)面積・作物
JA めまんべつがある女満別地区は、東
耕地面積7,450ha の内、既存畑が5,890ha
部にゆるやかな傾斜状の台地、西部に丘陵
で水田が1,560ha からなっており、転作地
地、中央部には平坦な市街地と網走川流域
を含め畑作が、小麦・馬鈴しょ・てん菜・
一帯の平野からなっており、高台地区は洪
豆類・野菜で全体の96.8%を占め、水稲
積土、低台地区では泥炭土が多く、東西
(もち米)が3.2%となっています。
に12km、南北8.7kmの地形で総面積は
中でも、麦類・馬鈴しょ・てん菜・豆類
まえだ ひでのり 女満別町農業協同組合 経済部農産課長
は全国・全道に種子を供給しており、道内
でも有数の種子生産地帯です。
- 37 -
表1 女満別地区の作付面積
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256
2,583
590
1,909
1,331
403
364
7,436
㧴20
245
2,530
682
1,894
1,293
407
406
7,457
㧴21
239
2,537
769
1,863
1,257
420
366
7,451
組合員戸数は、322戸(H22年)で、畑
薯・てん菜)に次ぐ作物として適正輪作体
作専業農家が53%、複合44%、酪農専業
系確保のために豆類の作付規模を拡大して
3%である。農家一戸あたりの平均耕作面
きました。
積は23.1ha で、道内の畑作地帯としては
また女満別地区は、種子生産地帯である
規模は大きくないですが、高収益作物であ
ため、ジャガイモシストセンチュウ進入防
る野菜や畜産を取り入れながら経営を行っ
止対策の一環として、豆類等の非寄主作物
ています。
の作付けによりその低減効果を図るべく長
期輪作を推進してきました。
豆類の作付の主なものは、大豆・小豆・
(2)農業生産振興
当組合では、持続的に土地利用型農業を
金時となっています。
展開するため、基幹作物による適正輪作が
大豆については、平成5年に補助事業に
不可欠であり、土壌診断に基づく適正施肥
より汎用コンバインが導入されたことを受
を推進するとともに、圃場への有機物投入
けて作付面積が徐々に増加しましたが、天
および豆類を取り入れた輪作体系を推進す
候に左右され収入が安定せず、平成15年か
ることにより地力維持と生産性向上を図っ
ら17年までは一時面積は減少しました。そ
ております。
の後「ユキホマレ」の導入により収量が安
また安定的所得確保のため新規作物の導
定し、その後面積が増えつつあります。
入支援や規模拡大・機械共同等によるコス
小豆は、耐冷性品種の「エリモショウ
ト低減を推進するとともに、産地としての
ズ」の作付が約67%で、落葉病抵抗性品
信頼を確保するため生産履歴の記帳徹底を
種「きたろまん」が約24%、残り9%が
推進し、安心できる農畜産物の生産と供給
「きたのおとめ」「サホロ」となっています。
を基本に、地域農業の振興に努めておりま
古くから小豆が作付けされている一部地域
す。
においては、落葉病の発生が見られること
から、今後とも小豆を安定的に生産してい
3.豆類の生産状況
くために、一定程度の落葉病抵抗性品種の
豆類の作付は、畑作3品(麦類・馬鈴
作付は必要と考えます。
- 38 -
表2 豆類の作付面積の推移
㧔න૏㧦ha㧕
㧴15
㧴16
㧴17
㧴18
㧴19
㧴20
㧴21
ᄢ⼺
86
59
65
92
94
112
119
ዊ⼺
395
444
374
351
305
348
360
㊄ᤨ
200
192
163
144
172
210
281
金時は、「大正金時」の作付が約50%で、
産を目指していきたいと考えております。
「福勝」が約14%、「福良」が36%となって
います。金時は馬鈴しょが作付出来ない地
4.豆類の集荷
帯において、秋まき小麦の前作作物として
豆類の集荷は、美幌町にあるホクレン北
位置づけされており、またコンバイン収穫
見地区穀物調製工場に搬入されます。当工
が進んだことにより面積は増えつつありま
場は、昭和45年に管内6農協(美幌町、き
す。
たみらい、津別町、女満別町、旧東藻琴村、
生産者の高齢化や経営規模拡大が進み、
旧西網走)が出資して効率的な加工を行う
他作物と収穫作業が競合することから、汎
ことを目標に建てられました。
用コンバイン、ピックアップスレッシャー
当工場に搬入された豆類は、受入時にサ
による収穫が主流になってきています。
ンプル抽出を行い、細かい品質・水分分
当地区においては、平成18年に小豆コン
析・規格ごとに仕分けを実施しています。
バイン組合を立ち上げ、道の補助を受け3
収穫作業の省力化により、汎用コンバイン、
台のコンバインが導入され、その後平成21
ピックアップスレッシャーによる収穫が主
年には、町の補助を受け14台のコンバイン
流になってきており、特に金時については、
導入により収穫作業の省力化体制が整備さ
皮切れ粒・損傷粒の発生や、異物・夾雑物
れ、今後さらに豆類の面積拡大が見込まれ
が多く混入しているものが増えてきている
ます。
また、多水分の機械刈りによる品質に影
響がみられることから、収穫作業省力化体
系への取組支援として、網走農業改良普及
センター美幌支所やホクレン北見支所と連
携し、良品質豆生産に向けた流通・栽培技
術講習会や収穫時における適性水分収穫の
徹底指導を実施することで、生産者の豆類
に対する意識向上を図り、上位等級品の生
- 39 -
収穫間近の小豆畑
ことから、作業速度やこぎ胴の回転数をこ
まめに調整するなど、生産者に収穫方法の
注意徹底を行っております。
受入時間は、秋がすすみ日が短くなると、
豆の粒張りや色を正しく見ることが出来な
くなるため、終了時間に制限を設定し対応
しております。
細かく仕分けされた原料は、貯留ビンご
とに分けられ、製品の規格統を一図るため
コンバインによる収穫作業
綿密に配合され製品のブレを最小限に押さ
えることで、調製を行った製品が年産通じ
じて実需の方々に販売しておりますが、今
て一定品位であることに大きく寄与してい
後も信頼される製品を提供すべく、安心で
ます。
きる農畜産物の生産と供給を基本に、生産
者をはじめ関係機関が一体となり高品質豆
5.今後の取組
類の生産に向けて取組んで参りたいと存じ
工場で調製された製品は、ホクレンを通
ます。
- 40 -
海外情報
米国農務省報告(2010年10月28日付け)
豆類生産見通し
米国農務省経済調査局
乾燥食用ビーン
第3位までは、1991年度、1999年度、1981
生産量は増加、価格は低下
年度である)。ノースダコタ州、ミネソタ
全般的に収穫時の天候条件に恵まれ、
州及びワシントン州では記録的な生産量が
2010年度の米国産乾燥食用ビーン(beans)
見込まれている。米国全体の乾燥食用ビー
生産量は、8月時点での第1回目の予測か
ン単位面積当たり収穫量(単収)は過去最
ら6%増加したものと推定されている。10
高の17.83cwt/ エーカー(1,988kg/ha)と
月中旬の時点での米国全体の乾燥食用ビー
予測され、これは前年度と比べて3%の増
ン全品目の推定生産量は3,260万 cwt(147
加、史上最高の単収を記録した2008年度に
万9,000t)となり、この値は平年並みだっ
比べて1%の増加である。作付面積及び品
た前年同期を29%上回っている。この推定
目別の推定単収に基づいて計算すると、少
どおりになれば、史上第4位の乾燥食用
なくともピント、ネイビー、グレートノー
ビーン生産量となる(ちなみに第1位から
ザン、ブラック、ガルバンゾー、ピンク及
表1 米国産乾燥ビーン:生産量(2007年~10年)
変化率
品目
%
ノースダコタ
ミシガン
ネブラスカ
ミネソタ
アイダホ
カリフォルニア
コロラド
ワシントン
ワイオミング
その他
米国計
f=米国農務省国立農業統計局10月予測
資料:米国農務省国立農業統計局『穀物生産』
- 41 -
百万 lb
ドル / ポンド
生産量
価格
1/ 市場年度平均農場価格
資料:米国農務省国立農業統計局『穀物生産及び乾物価格』
図 米国乾燥食用ビーン:生産量と平均農場価格1/
びダークレッドキドニーを含む8品目につ
10月中旬の時点で大部分の地域で収穫が
いて生産量が増加する見込みである。主要
最終段階に入り、この時期には生産者が販
生産州の作付面積及び単収からみると、ピ
売に積極的でないのが常であることから、
ント・ビーン生産量は過去最高であった
新物の乾燥食用ビーンの一般市場価格はな
1981年度の1,460万 cwt(66万2,000t)に近
かなか確定しない。大部分の乾燥食用ビー
い値となる見込みである。乾燥食用ビーン
ンの品目について、価格決定にかなり不透
品目別推定生産量は、12月10日付けの『作
明な要素が残っている。消費者物価の上昇
物生産報告』で米国農務省から発表される。
が続いている状況下で、業界関係者は多様
表2 米国産乾燥ビーン:月間生産者価格(2009年-10年)
品目
州
9月
10月
---
全乾燥ビーン
ピント
ネイビー
ブラック
グレートノーザン
ガルバンゾー
ライトレッドキドニー
ピンク
スモールレッド
ベービーライマ
9月
セント / ポンド - - -
10月
対前年比
10月
9月
---
% ---
全米
ノースダコタ / ミネソタ
ミシガン
ノースダコタ / ミネソタ
コロラド / ネブラスカ
ワシントン / アイダホ
コロラド / ネブラスカ
ワシントン / アイダホ
ワシントン / アイダホ
カリフォルニア
= 不詳
資料:米国農務省『農産物価格』及び米国農務省農産物市場局『ビーン・マーケット・ニュース』国立
農業統計局
--
- 42 -
表3 米国産乾燥ビーン:月間生産者価格(2009年-10年)
品目
8月
9月
---
8月
9月 1/
対前年比
8月
9月
セント / ポンド - - -
---
% ---
全米
カリフォルニア
コロラド
アイダホ
ミシガン
ミネソタ
ネブラスカ
ノースダコタ
= 不詳 1/ 一部予測
資料:米国農務省国立農業統計局『農産物価格』
--
な選択肢のいずれが有利なのかの判断がつ
低下の傾向が最も顕著なのはピント・ビー
くまでは、性急に大量の取引をしようとは
ン及びライマ・ビーンの生産者価格である。
しない模様である。消費者物価の上昇に加
市場におけるプラスの側面としては、カナ
え、メキシコ及びコスタリカといった国々
ダ及びその他の国々の生産量が不透明であ
での作柄の情報が入るに従って、輸出の展
ることから、ガルバンゾー・ビーンの市場
望が開けつつあり、さらに米国の乾燥食用
価格が前年同期をわずかに上回っているこ
ビーン市場を活気づける一助となってい
とが挙げられる。ピント・ビーンについて
る。10月第3週までに価格のばらつきがま
は、メキシコから引き続き強い需要がある
とまってきており、ほぼすべての地域で収
見込みであり、世界の穀物市場からの需要
穫が完了して、価格はこの時期に通常見ら
もあって、年度が進むにつれて価格が上昇
れる値動きを反映して、通年の変動の中で
する可能性がある。
最も低い時期を迎えているものと見られる。
前年同期とは異なり、この秋の乾燥食用
2009/10年度は輸出が減少
ビーンの収穫は大部分の州でこれといった
2009/10市場年度(9月から8月まで)
支障がなく、おおむね予定どおりに進めら
の米国の乾燥食用ビーン輸出量(種子用
れた。カントリーエレベーター及び倉庫に
を除く)は、前年度より7% 減少して889
新物の収穫物が運び込まれ、9月に始まっ
万 cwt(40万3,300t)であった。この数量
た2010/11年度当初の生産者価格は24.10ド
は2年前を9%上回っており、最近10年間
ル /cwt(53.10セント /kg)と推定されて
で2番目に多い量となっている。輸出量10
おり、前年同期を21%下回っている。
位までの輸出相手国のうち、米国からの輸
大部分の品目について市場価格が低下し
出量が減少しているのは2ヵ国だけであ
ているが、これまでのところ本年度、価格
る。しかし、より小規模の輸出先への輸出
- 43 -
表4 米国産乾燥ビーン穀物年度別輸出量
穀物年度 9月~8月
変化率
品目
%
ピント
ブラック
ネイビー
グレートノーザン
ガルバンゾー
ライトレッドキドニー
ベービーライマ
ダークレッドキドニー
ラージライマ
スモールレッド
クランベリー
マグ
ピンク
ブラックアイ
その他
計
資料:米国商務省国勢調査局データから経済調査局が作成
表5 米国産乾燥ビーンの穀物年度別輸出先国別輸出量 1/
9月-8月
変化率
輸出先
%
メキシコ
英国
カナダ
ドミニカ共和国
ハイチ
日本
スペイン
インド
ガテマラ
アンゴラ
フランス
イタリア
その他
計
1/ 商業ベース及び PL-480等の食料援助プログラムによるものを含む。
資料:米国商務省国勢調査局データから経済調査局が作成
量が広範囲にわたって減少していることか
輸出量は減少したが、イギリス、ドミニカ
ら、総輸出量が減少している。輸出量上位
共和国及びハイチへの輸出量は増加してい
の5ヵ国の中で、メキシコ及びカナダへの
る。乾燥食用ビーンの単位重量当たりの
- 44 -
輸出価格は、最近3年間大きく変化して
万3,000t)となって、最高記録であった前
おらず、2009/10年度の平均価格は33セン
年を上回った。メキシコへの輸出量がブ
ト / ポンド(73セント /kg)であって、前
ラック・ビーンの輸出量全体の93%を占
年に比べて3%の低下、2年前とほぼ同じ
めており、ハイチ(3%)及びグァテマ
である。価格及び品質がともに低下してい
ラ(2%)とともに輸出量上位の3ヵ国と
ることから、2009/10年度の乾燥食用ビー
なっている。新年度には、ドル安、米国産
ン輸出額は10%減少して2億9,300万ドルと
乾燥食用ビーンの値下がり、世界的な食料
なったが、それでも1982/83年度に匹敵す
援助需要の継続、メキシコをはじめとする
る史上2番目に高い値となっている。史上
各国での天候による作柄への影響の問題に
最高記録の乾燥食用ビーン正味輸出額(4
より、輸出量の増加が見込まれる。輸出量
億9,000万ドル)は1981/82年度に達成され
の決め手となる市場であるメキシコでは、
ている。
新年度もまた、最近2年間にわたって米国
主要14品目のうち6品目について輸出量
産ブラック・ビーンの市場を支えてきた大
が減少している中で、最も減少が顕著な
量の輸入を続ける可能性がある。
のはピント・ビーン(29%減)及びネイ
2009/10年度には、いくつかの品目の在
ビー・ビーン(11%減)である。両品目と
庫量が少なく、米国の乾燥食用ビーン輸入
も輸出が好調であった2008/09年度以降に
量は4%増加して310万 cwt(14万1,000t)
減少してきており、ピント・ビーンの場合
となった。増加はしたものの、2シーズン
は1994/95年度以来最高の輸出量であった
前の輸入量と比べると、5%減少している。
300万 cwt(13万6,000t) と い う 高 水 準 か
乾燥食用ビーン輸入額は、単位重量当た
ら減少してきている。ピント・ビーン輸出
りの価格が2%低下して47セント / ポンド
量の減少のほとんどが輸出量全体の54%を
(104セント /kg)となったにもかかわらず、
占めるメキシコへの輸出量の減少によるも
2%増加して1億4,400万ドルとなった。輸
のであった。メキシコは歴史的に見て変化
入量の増加の大部分はブラック・ビーン及
の激しい不安定な市場であり、天候関連の
びピント・ビーンに集中している。中国
不作が生じた場合に輸出が行われることが
(109%増)、カナダ(13%減)及びメキシ
多い。新年度には、メキシコでは在庫量が
コ(19%増)が前市場年度の輸入量上位3
少なく、霜害及び旱魃で今年の作柄に影響
位までの供給元であったが、この3ヵ国で
が生じる可能性があることから、輸出の機
米国の乾燥食用ビーン輸入量の75%を占め
会が生じる見込みがある。
ている。ブラック・ビーン、マング・ビー
ブラック・ビーンの輸出量は、最近2年
ン及びその他の多様な種類のビーンの輸入
間にわたって品目別の輸出量で第2位と
量が急増したことにより、中国が米国に対
なっており、4%増加して250万 cwt(11
する乾燥食用ビーン輸出国として第1位の
- 45 -
表6 米国の乾燥ビーンの穀物年度別輸入量
穀物年度、9月~8月
変化率
品目
%
ブラック
ガルバンゾー他
マグ
ピント
スモール・レッド
ネイビー
ダークレッドキドニー
その他 1/
計
1/ グア・ビーン(guar beans)を除く。
資料:米国商務省国勢調査局データから作成
/cwt(17.6セ ン ト /kg) で、 前 年 同 期 を
地位についた。
7%下回っており、前年までの5年間の9
月時点での価格の平均を10%下回っている。
乾燥食用ピー及びレンズマメ
レンズマメの価格は2007年10月以降、常に
生産量増加の一方で価格は低下
20ドル /cwt(44セント /kg)を上回って
乾 燥 食 用 ピ ー(peas) の 収 穫 面 積 は、
きている。本年度もまた最高記録の生産量
2010年度にはわずかに増加して84万2,900
となる見込みであることから、9月時点で
エーカー(34万1,100ha)と推定されている。
の米国産レンズマメの価格は前年同期に比
これと対照的にレンズマメ(lentils)の収
べて4%の低下、2007年から2009年までの
穫面積は、56%増加して63万9,000エーカー
9月時点での価格の平均と比べて9%の低
(25万9,000ha)と見込まれている。高単収
下となっている。
が見込まれることから、生産量は最高記録
1 億7,100万 cwt(775万7,000t) と い う
だった前年度を上回る可能性がある。2010
過去最高の生産量を反映して、2009年度産
年度の乾燥食用ピー及びレンズマメ生産量
の乾燥食用ピーの年度平均価格は8.90ドル
の第1回目の推定は11月9日付けの『作物
/cwt(19.6セント /kg)となり、前年度を
生産報告』で発表される。本市場年度のこ
34%下回った。レンズマメの年度平均価格
れまでのところ(7月から9月まで)で
もまた、過去最高の生産量590万 cwt(26
は、乾燥食用ピー及びレンズマメの価格は
万8,000t) を 反 映 し て、2008/09年 度 に 比
前年同期を下回っている。9月の時点では、
べて低下し、26.80ドル /cwt(59.0セント
乾燥食用ピー全品目の平均価格は7.97ドル
/kg)となった。乾燥食用ピー及びレンズ
- 46 -
マメのいずれの価格も、これらの作物に関
回り、2007/08年度及び2008/09年度の同期
して設定されているローンレートの基準を
の平均を39%上回った。インドが輸出量第
上回っている。2008/09年度には、2008年
1位の輸出市場であり、7月及び8月の輸
度の消費者物価が高く、乾燥食用ピー及び
出量の57%を占めている。カナダ及びパキ
レンズマメの生産量が少なかったことから、
スタンへの輸出量の合計が全体の13%を占
年度平均価格は乾燥食用ピー(13.40ドル
め、以上の3ヵ国が輸出量第1位から第3
/cwt(29.5セント /kg))及びレンズマメ
位となっている。これら3ヵ国への輸出量
(13.40ド ル /cwt(29.5セ ン ト /kg)) の い
の大部分がイエロー・ピー、その他のピー
ずれについても過去最高となった。
及びグリーン・ピーである。
2010年7月から8月までの米国産イエ
輸出量は引き続き多い
ロー・ピー輸出量は、前年同期を52%上
2010/11市場年度の初めの2ヵ月間(7
回っており、2007年度から2009年度の同期
月から8月まで)の乾燥食用ピー及びレン
の平均を61%上回っている。2010年7月か
ズマメを合計した輸出量(種子用を除く)
ら8月までのグリーン・ピー輸出量もまた
は、引き続き増加して、前年同期を52%上
前年同期を上回っており、2007年度から
表7 米国産乾燥ピー及びレンズマメ:月間生産者価格(2009年10月~2010年11月)
穀物年度
月
乾燥ピー
ヒヨコマメ
全体
大
小
オーストリアン・
ウィンター・ピー 全レンズマメ
セント/ポンド
7月
8月
9月
10月
11月
12月
1月
2月
3月
4月
5月
6月
7月
8月
9月 1/
変化率
対前年9月
= 不詳 1/ 2010年9月の価格は月中ばの平均
資料:米国農務省国立農業統計局『農産物価格』
--
- 47 -
表8 米国の乾燥ピー及びレンズマメの海外貿易量
7月-8月
穀物年度 1/
変化率 2/
品目
%
輸出
グリーン・ピー
イエロー・ピー
スプリット・ピー
オーストリアン・ウィンター・ピー
雑乾燥ピー
ヒヨコマメ
レンズマメ
種子用他
計 3/
輸入
グリーン・ピー
イエロー・ピー
スプリット・ピー
オーストリアン・ウィンター・ピー
雑乾燥ピー
ヒヨコマメ他
レンズマメ他
種子用他
計 3/
1/ 7月-6月 2/ 2009年10月から2010年11月の間の変化率 3/ 種子を含む。
資料:米国商務省国勢調査局データから経済調査局が作成
2009年度の同期の平均を8%上回っている。
録の持ち越し在庫量で生産減が相殺される
輸出先としては本年度もこれまでのとこ
ことから、カナダからの乾燥食用ピーの供
ろインドが支配的地位にあり、イエロー・
給量は、本年度は増加する見込みである。
ピー輸出量の76%、グリーン・ピー輸出量
2010/11市場年度の初めの2ヵ月間(7
の54%を占めている。イエロー・ピーの輸
月から8月まで)の米国産レンズマメの輸
出がこのような状態で今後も進むとすれば、
出量は前年同期に比べて25%減少しており、
本市場年度に海外に輸出される米国産乾燥
2009/10年度のような過去最高記録に達す
食用イエロー・ピーは記録的な量となる可
る動きにはなっていない。7月から8月ま
能性がある。乾燥食用ピーに対するインド
での輸出量ではインドが第1位であり、ハ
の需要は引き続き強いものと見込まれる。
イチ及びペルーがこれに続いている。カナ
しかし、米国は世界市場においてカナダと
ダでの生産量が過去最高記録となっており、
激しく競合することになるだろう。カナダ
世界的に需要が少ないことから、生産量の
では生産量が減少したものの、過去最高記
多かった米国のレンズマメの本市場年度の
- 48 -
価格は国内においても海外においても低下
する可能性がある。ヒヨコマメについては、
本年度は生産量が減少する見込みであるこ
とから、輸出量もまた前年同期を下回る
ものと推定される。2010/11年度の初めの
2ヵ月間の輸出量は19%減少している。カ
ナダ、スペイン及びパキスタンが輸出量上
位の国々である。 - 49 -
海外情報
中国黒龍江省における雑豆の生産及び
研究の現状と課題
何寧1)(He Ning)、曹大偉2)(Cao DaWei)1
1.中国及び黒龍江省における雑豆生産
黒龍江省は、商品食糧作物を生産してい
中国では、日本と同様、大豆以外の豆類
る中国で最も大きな省で、主な食糧作物は
は雑豆と呼ばれている。中国は世界的に
大豆、トウモロコシ、水稲などがあり、全
みて雑豆の主な生産国であり、播種面積
国の商品食糧生産量の約30%を占めている。
は280万から380万 ha、生産量は約450万か
表1が示すように、2000~2008年の黒龍江
ら580万トンで、播種面積も収穫量も年に
省における雑豆の播種面積は28.8万 ha か
よってかなりの変動がある(表1)。2008
ら48.4万 ha と幅が大きく、国際市場の動
年の通関統計によると、中国の雑豆の総輸
向と気象条件によって、播種面積も収穫量
出量は93万トンで、主な輸出豆類はインゲ
も共に大きく変動している。
ンマメ、アズキ、緑豆などである。
黒龍江省で栽培される雑豆の種類は少な
表1 中国及び黒龍江省における雑豆の播種面積と収穫量
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注:このデータは中国農業部編集した「中国農業統計」資料によるものである。中国農業出版社.北京2009.
1)カ ネイ 中国黒龍江省農業科学院外事処 副処長、研究員
2)ソウ ダイイ 中国黒龍江省農業科学院植物保護研究所、副研究員
- 50 -
表2 各地域の雑豆の面積及び収穫量(ウエイトと順位、2008年)
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く、主に生産されているのはインゲンマ
メ、アズキと緑豆の3種類である。中国全
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2.雑豆生産の現状
(1)インゲンマメ
土に占める黒龍江省の割合は、播種面積は
中国は世界的に見てインゲンマメの主要
9.6%、収穫量は9.5%で、それぞれ第3位
な生産国でもあり、総収穫量はインド、ブ
と第4位であり、中国の雑豆生産において
ラジルに次いで多く80万トンを超え、世界
重要な地位を占めている(表2)。
第3位である。インゲンマメは中国各地域
で栽培されているが、主な生産地域は東北、
華北、北西、西南などで、標高の高い寒冷
表3 中国における黒龍江省の雑豆生産の地位(2008年、万 ha、万トン)
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- 51 -
産省であり、アズキの品種資源も豊富で、
栽培面積も広い。主に黒龍江省の西部、東
南部の半山地域に分布しおり、例えば、宝
清、集賢、海論、海林、巴彦、望奎などで
ある。黒龍江省の2008年のアズキの播種面
積は6.5万 ha で、総収穫量は11.1万トンで
ある。アズキの収量は気象の影響によって
大きく変動することから、年による収穫量
インゲン豆の成熟期(黒龍省江)
の振れが大きい。単位面積当たりの平均収
地域で栽培されている。
量は約1,500 kg/ha であるが、多収地域で
黒龍江省における2008年のインゲンマメ
は2,500 kg/ha 以上に達することができる。
の播種面積は約17.8万 ha、総収穫量は31.2
栽培年の気象の影響に加えて、更に、国際
万トン(表3)で、80%以上は輸出されて
及び国内市場の価格の影響によって、黒龍
いる。黒龍江省のインゲンマメの栽培地域
江省のアズキの播種面積は、大きく変動し
は、西部、北西部の半乾燥地域及び北部の
ている。
寒冷地域に分布しており、例えば、チチハ
ル、嫩江納河、黒河、大興安嶺などの地域
(3)緑豆
である。黒龍江省のインゲンマメの単位面
中国農業部発表の統計によると、2000
積当たりの収量は多く、2,250kg/ha であ
年~2008年の緑豆の総播種面積の平均は
る。栽培条件に恵まれたところでは3,000
84.62万 ha で、 総 収 穫 量 の 平 均 は94.28万
~3,500kg/ha に達することができ、中国
トンである。黒龍江省は緑豆の主な生産省
におけるインゲンマメの栽培において最適
の一つであり、西部の乾燥地域で集中的に
な地域の一つであるといえる。近年、品種
栽培され、この中にある泰来県(郷)と杜
の改良と栽培技術の改善によって、インゲ
ンマメの栽培面積が大きく伸びただけでな
く、単収も増え、商品性もよくなった。イ
ンゲンマメを生産することは農家に多くの
経済的利益をもたらしていると同時に、黒
龍江省の農業の発展にも大きく貢献してい
る。
(2)アズキ
黒龍江省は中国で最も大きなアズキの生
- 52 -
緑豆の大面積栽培
爾伯特モンゴル族自治県は“中国緑豆の故
出量も多くになった。現在インドとブラジ
郷”と呼ばれている。2008年の黒龍江省の
ルに次いで世界第3位である。収穫量は82
緑豆の播種面積は4.4万 ha で、総収穫量は
万トンを超え、平均単収は1,350~1,500kg
4.2万トンである(表3)。2009年、私、何
/ ha で、世界の平均の617kg / ha より
が泰来、杜爾伯特、龍江、甘南及び梅里斯
2倍以上多い。
地域において緑豆の生産情況を調査したと
ころ、主な栽培品種は嫩緑1号、緑豊2号、
緑豊5号、白緑522号、白緑6号などがあ
ることが分かった。また、生育期間は90~
115日で、平均単位面積当たり収量は1,215
kg/ha であった。
3.中国及び黒龍江省における雑豆の輸出
雑豆の集荷場(黒龍江省竜江県)
中国は雑豆の世界四大輸出国であり、主
にインゲンマメ、蚕豆、アズキ、緑豆など
を輸出している。年間の輸出量は80万トン
で、世界の輸出量の9%を占める。中国は
生産する雑豆の種類では一番多い国であ
り、現在栽培されているのは20種類以上あ
る。この中に蚕豆、豌豆、緑豆、アズキ、
インゲンマメの5種類の播種面積は464万
ha で、雑豆総面積の94.3% を占めている。
2009年の5種類の播種面積は430万 ha で、
雑豆の集荷場(黒龍江省泰来県)
蚕豆は110万 ha、豌豆は120万 ha、緑豆は
90万 ha、インゲンマメは85万 ha、アズキ
は25万 ha となっている。
(2)アズキ
アズキは中国の伝統的な輸出農産物であ
り、30以上の国と地域に輸出している。主
な輸出国は日本、韓国、マレーシア、シン
(1)インゲンマメ
中国はインゲンマメの主要な輸出国であ
ガポール、フィリピンなどである。近年ア
る。特に食糧とする重要作物(水稲、コム
メリカ、イギリスなど、ヨーロッパ、米州、
ギ、大豆、トウモロコシ)の自給自足を実
アフリカなどの国にも輸出している。統計
現してから、商品作物であるインゲンマメ
によると、1986年~2005年の間の中国の
は急速に伸び、播種面積も大きくなり、輸
アズキ輸出量は2.5万トンから11.86万トン
- 53 -
の間である。2005年アズキの平均輸出価
になり、輸出量は14,758トンで、2007年同
格は745ドル / トンで、輸出量は約5.26万
期より38.2%を増加した。2009年1~2月
トンであった。しかし、2006年1~9月分
に、わが国のインゲンマメ、緑豆の輸出は
の輸出価格は大幅に下がり、平均471ドル
2008年同期より増加した。緑豆の輸出は
/ トンで、輸出量も3.94万トンしかなかっ
51,769トンで、輸出の金額は3,561万ドルで
た。日本はわが国アズキの主な輸入国であ
あった。これらの緑豆は30以上の国に輸出
り、毎年アズキに対する需要量は約10万ト
し、この中にベトナムに1.56万トン、イン
ンで、日本国内の収量は約7万トンである
ドに1.11万トン、日本に0.93万トン、フィ
ので、年間の輸入量は、通常、3万トンで
リピンに0.6万トンをそれぞれ輸出した。
ある。その中で90%は中国から輸入し、約
3,000トンはアメリカとカナダから輸入し
4.黒龍江省における雑豆研究の現状
ている(日本商社がアメリカとカナダで契
黒龍江省における雑豆研究を主とする部
約栽培したアズキを収穫後日本に売るそう
門としては、黒龍江省農業科学院作物育種
である)。中国では日本に輸出するアズキ
研究所の雑豆研究室(ハルビン市)と黒龍
は主に河北省の天津アズキと黒龍江省の宝
江省農業科学院チチハル分院の雑穀研究室
清紅が最も有名である。そのほかに唐山紅、 (チチハル市)がある。長年雑豆の育種と
東北紅、 西紅及び江蘇省の启東大紅袍な
栽培に関する研究を行ってきており、これ
どの品種もある。近年来日本への輸出量が
までに多くの優良品種の育成を行うととも
少なくなり、輸出の価格も下がっている。
に、栽培試験を継続的に行い、多くの成果
を上げてきている。これらの育種と栽培試
験の成果が普及に移され、黒龍江省におけ
(3)緑豆
わが国の緑豆の多くは大連港と天津港を
る雑豆栽培の発展を支えてきたといえる。
経て輸出されている。大連港から輸出する
主な品目は東北緑豆で、天津港から輸出す
(1)黒龍江省農業科学院チチハル分院雑穀
る主な品目は 西と山西の緑豆が多い。東
研究室
北地域の各省はわが国緑豆の主な輸出地域
黒龍江省農業科学院チチハル分院(元黒
であり、この中で吉林省は例年輸出量が最
龍江省農業科学院嫩江農業科学研究所)は、
も多い地域である。中国の緑豆は世界60の
黒龍江省西部の風砂乾燥地域にある。この
国と地域に輸出され、日本は中国緑豆を輸
地域は黒龍江省の雑穀の主な生産地域でも
入する一番大きな国であり、わが国の緑豆
ある。雑穀研究室は1958年に設立され、緑
は日本が輸入する全量の35%を占めてい
豆、アズキ、インゲンマメのほか、粟、黍
る。2008年1~5月に中国緑豆の総輸出量
の新品種を育成する任務も担当している。
は6.96万トンで、黒龍江省は中国の第2位
50~60年代から育種に必要な有用な品種資
- 54 -
源の収集を行い、収集した品種資源と在来
研究部門である。研究室は4名の研究員
品種を材料として、集団選抜育種と系統選
から構成される。これまで10品種を育成
抜育種により雑穀の新品種を育成してきた。
し、普及に移してきた。研究室は国家科学
70~80年代から品種資源の収集、整理、研
技術援助計画、農業部農業分野科学研究項
究と利用を進め、交配育種を主とする多収
目、国家現代農業技術体系などの多項目の
品種の育種を始めた。90年代に入ると、放
研究課題を担当している。雑豆の多収益を
射線育種を開始し、これまで粟16品種、黍
めざした良質栽培技術ではインゲンマメの
8品種、緑豆6品種、アズキ2品種、イン
肥料と水の調和メカニズムの研究を進めて
ゲンマメ2品種を育成した。このような取
いる。これまで、インゲンマメの標準栽培
組の中で緑豆新品種“緑豊5号”と粟新品
技術を編集し、また、技術論文を40編発表
種“嫩選15号”は、2001年と2002年におい
した。国家科学技術進歩一等、二等賞、三
て“黒龍江省科学技術進歩三等賞”を得た。
等賞及び黒龍江省科学技術委員会成果賞を
また、2001年以降に科学研究項目13項目を
相次いで10項以上を獲得した。
完成させた。この中に国レベルの研究項目
が3項目、省レベルの研究項目が5項目、
5.黒龍江省雑豆産業の課題
地域レベルの研究項目が5項目ある。現
1点目は、良質品種の育成スピードが遅
在“国家食用豆現代産業技術体系チチハル
いことである。
総合試験センター項目”、中国農業部公益
黒龍江省では、これまで新品種の育成に
的科学研究専門項目“食用豆類資源の初級
取り組み、多くの成果をあげてきたが、こ
核心見本と新品種組み合わせ栽培技術研究
れまでのところ雑豆生産ための有望な品種
及び集積模範”と黒龍江省科学技術庁の重
が育成されているとはいえない。現在栽培
点項目“良質耐乾性雑穀作物品種の育成及
されている主な栽培品種は倒伏抵抗性が弱
び模範―黍資源の新品種育成”の研究課題
い、成熟期が揃わないといった問題がある。
を担当している。現在この研究室は研究職
つまり機械化栽培に適さないといったこと
員6人がいる(研究員1名、副研究員2名、
が問題としてある。このことは雑豆の新品
研究実習員3名)。
種育成の基礎的研究の取組が不足している
ことを示していると見られている。それで、
(2)黒龍江省農業科学院作物育種研究所雑
機械化適応性が高く、かつ良質品種の育成
を促進することによって生産面の課題を解
豆研究室
黒龍江省農業科学院作物育種研究所の雑
決してはいけないと考えている。
豆研究室は、黒龍江省における雑豆資源の
収集、検定、保存、新品種の育種選抜、多
2点目は、一戸当たりの栽培面積が小さ
収栽培技術について研究開発をする唯一の
いことである。
- 55 -
黒龍江省では農家を生産単位として雑豆
4点目は、収穫後の加工に課題を抱えて
を生産しているのが一般的である。また、
いることである。
多くの雑豆は瘠せた土壌や周辺地域あるい
収穫後の加工技術は遅れ、機械化のレベ
は灌漑施設のない旱魃地域で栽培している。
ルは低く、科学的な管理システムが不十分
生産条件が悪く、自然災害に対する抵抗力
で、基礎設備の建設などは改善する必要が
も弱い。特に近年都会へ出稼ぎに行く若者
ある。加工分野では栄養と機能性の両面を
が多くになり、労働力の減少によって、雑
持った新しい食品の開発が遅れており、し
豆の栽培は粗雑になっている。つまり深土
たがって製品の付加価値は低い。また、収
耕起を行うことが少なくなっており、さら
穫後の加工に課題を抱えていることもあっ
に肥料、農薬等の施肥が少ないため、大規
て、なかなか国内の消費と国際市場の需要
模栽培になってないと同時に、収益も低
を満たすことができない。
かった。また、耕作方法、植栽密度、施肥、
病虫害防除などが不適切で、収量が低い結
5点目は、雑豆生産を奨励する施策が足
果になっている。このため、今後は標準的
りないことである。
な技術の組合せによる栽培技術の普及を図
政府は大豆、トウモロコシと水稲のよう
るとともに、安全、多収、高利益の大規模
な大面積栽培作物に対して、補助金等を出
化による農業に力を入れていかなければな
す施策があるが、雑豆には政府からの補助
らないと考える。
金がない。それで、雑豆の生産が長期的に
発展することを期し、雑豆産業の国際市場
3点目は、自家採取の種子を使う農家が
競争力を高めるために、政府部門は雑豆分
多いことである。
野を大面積栽培する作物と同じように対応
農家は、一般的に今年収穫した種子を来
するよう提案したいと考える。
年使っているような状態であり、品種の混
ざりなどが多い。一部分は在来種と現地で
育成した品種を使っている。これらの品種
主要参考文献
は耐病性が強いが、収量が少なく、機械化
[1] 中 华 人 民 共 和 国 农 业 部、 中 国 农 业 统
栽培に適していない。導入した外来品種は
计 资 料 [S]、 北 京: 中 国 农 业 出 版 社、
収量性と品質はよいが、耐病性が弱い。育
2000-2008
種者にとって今後の研究課題にもなるだろ
[2] 黑龙江省统计局、黑龙江省统计年鉴 [S]、
う。また、栽培技術の標準化と基準的な生
北京、中国统计出版社、2000-2009
産技術を普及させる取組が不足しているこ
[3] 矫江等、农村经济发展与农民增收 [M]、
とから、生産現場における指導を十分に行
北 京: 中 国 农 业 出 版 社、2008、10:
う必要があると考えている。
71-80
- 56 -
海外情報
在住者から見たバンコク食・豆事情
その後編
前 田 由 佳
害もなく既に営業再開されています。
はじめに
昨年12月および今年3月の本誌掲載の続
一般には政治的に不安定な国の通貨は安
編として、今回もタイ・バンコク在住一消
くなるものでしょうが、あの混乱中もバー
費者視点からの豆関連情報をお届けします。
ツは、円に対して微上昇傾向が続いていま
いした。また、政治的リスクが消えた訳で
もないのに、日本をはじめ海外からの投資
タイの混乱と経済
前回の記事が出た直後ごろから、所謂親
はその後まだまだ増加傾向。自動車メー
タクシン派活動が活発化し、デモ隊(通称
カーの小型車等、日本からの生産シフトが
「赤服」)がバンコク繁華街中心部を封鎖し、
相次いでいることなどもその状況をよく示
4月から5月にかけて、現政権側と衝突が
すものではないでしょうか。
あったことは皆様のご記憶にも新しいこと
でしょう。
現在もバンコクは非常事態宣言下(2011
年1月まで予定)ですが、宣言前と私たち
今回は、スーパーの野菜売り場が全て
の暮らしは何ら変わりないかのようです。
空っぽになっている光景も目にしましたが、
夏休みにはバンコクへの日本人ツアー客は
翌日にはまたいつものように商品が満載さ
少なかったものの、リピーターの日本人個
れていました。数日間にわたる衝突の翌日
人旅行者はかなりお越しだったようです。
には、何事もなかったかのように街を闊歩
物価の上昇傾向は緩やかながら継続して
するバンコキアンの姿がありました。マイ
いますが、バンコクの小売店頭を再度見て
ペンライ(気にしない)精神の中にあるタ
回ったところ、昨年同期と比べても野菜や
フさを見た思いでした。
肉類の価格はしっかり上昇の一方、大豆・
前回記事でご紹介した伊勢丹バンコク店
小豆、豆腐製品などは、横ばあるいは微増
はデモ隊が陣取った場所から程近く、数ヶ
という感じです。豆は以前の価格急騰が一
月間休業を余儀なくされたものの、火災被
定したようであり、加工食品は元々利幅が
まえだ ゆか タイ・バンコク在住
非常に大きかった高級品は少し利幅を小さ
くしたり、実質内容量を微妙に減量したり
- 57 -
するなどして「設定価格」を維持している
ほか、スムージーやソフトクリームなどの
商品が多いように見えます。
豆乳を原料に使ったデザート類もあります。
タイ政府は、外国からの投資を広く受け
入れる一方で、地方ごとに設定されていた
そして、パンケーキと呼ばれる今川焼き風
の軽食も販売されています。
シ ン ガ ポ ー ル で Mr.Bean を 運 営 す る
最低賃金を国で統一的にしようとしていま
す。実現すれば、バンコクでも20%以上、
スーパービーン社より輸入したカナダ産大
今低い地方では最高60%近くの最低賃金上
豆を元に同レシピで作られているそうです
昇率となるようです。一方で雨季の終わり
が、やはり使用する日本の水は軟水である
にタイの農作中心地帯や南部を洪水が襲っ
ことから、「本家よりさらにおいしいかも
たので、これによる農産品の減少による農
しれません。」とご担当の粟野氏が笑顔で
家の収入源、農産物の価格上昇と、今後は
言われるほど、絞りたてのおいしい豆乳が
確実にその影響が生じてくるでしょう。
提供されていました。今年酷暑時にはまだ
喉が渇いたから豆乳を立ち飲みしよう、と
いう発想のお客様は少数派だったそうで、
日本は豆乳ブームになりつつある?
前回、東京・渋谷にシンガポールの人
ソフトクリームなどデザート等のほうが人
気豆乳チェーン店 Mr.Bean が、開店とお
気だったとか。その場所柄のためか、意外
伝えしました。また、「こだわり豆乳飲料
にも夕刻のパンケーキの持ち帰り販売が多
続々」(2010年10月30日付読売新聞衛星版)
いのだそうです。豆乳のファストフード文
でも、日本での豆乳飲料・大豆飲料の伸び
化開花はこれからで、年度内に首都圏に3
が報じられています。豆乳ブーム?なのか
店舗目まで開店するそうです。
と渋谷のお店でお話を聞きました。
豆乳のライバルはコーヒー
なぜ今日本で豆乳なのか?数々の疑問を
シンガポール発の豆乳チェーン店
一日250万人が乗降する渋谷駅、東急西
ぶつけるべく、本家シンガポールのスー
口コンコース2階。間口数メートルの店舗
パービーン社にカン社長をお訪ねしました。
とその傍らに立ち飲み用のテーブルが数
バンコクでもそうですが、華人系の方に
セットという「エキナカ」の外観。多く
は朝散歩や太極拳、体操のため広場等へ出
の日本人にもさまざまな生活のシーンで
かけ、帰路に豆乳と揚げパンを求め、揚げ
『Soya Milk(豆乳)』を楽しんでいただき
パンを豆乳に浸して食べるという朝食習慣
たいという東急グルメフロント(東京都目
の方がいます。豆乳が健康にいいことは広
黒区)が開設した同店では、豆乳をアイス
く知られていますが、従来店は早朝一度に
でもホットでも楽しむことができ、またバ
まとめて絞った豆乳を猛暑に販売するので、
ニラやタピオカ、チョコなどの豆乳飲料の
豆乳の傷みも勘案し朝のみ販売です。
- 58 -
1995年シンガポールのホーカーズ(屋台
どうして初の海外進出が、隣国マレーシア
村)で同社は創業しました。朝食スタイル
や台湾等同じ華人系文化の強い国でなく日
も多様化し、朝はコーヒーや紅茶等をとる
本なのかということでした。これについて、
人も増える中、昼でも夜でも一日中新鮮絞
カン社長は次のように答えて下さいました。
りたてでおいしい添加物なしの豆乳が飲め
「確かに既に豆乳を飲む習慣を持つ人が多
るお店を作ろうと、ビジネス展開。今では
い国は当社の市場として魅力的です。でも
シンガポールの主なターミナル、ショッピ
今日本に進出することが今後のビジネス展
ングセンター等同国内50店舗余りを展開し
開に大きく役立つと思ったからです。例え
ているのです。(口絵1) 同業態のチェー
ば同じ野菜等でも、中国産と日本産が並ん
ン店は同国内に数社ありますが、健康・環
でいれば、高価でも日本産を買う消費者が
境志向のブランディングで他社との差別化
シンガポールには多いのです。なぜなら安
を図っているそうです。ライバルは?と伺
全・安心であり、健康にいいからです。日
うと、某米系コーヒーチェーン店の名を挙
本の品質の高さは群を抜いています。店頭
げられました。飲み物として広く豆乳を広
で調理販売する今川焼きや鯛焼きのような
めたい、朝でも昼でも夜でもフレッシュな
もの一つとっても、日本人はほぼ均質にお
絞りたての豆乳を届けたいという思いがそ
いしそうなキツネ色の皮を焼きあげ、ど
こにあるのだそうです。(口絵2)
れをとってもほぼ同じ量のあんこが均等
に入った商品に作り上げていく。しかし、
我々にはこれは結構難しいことで、焼き上
日本食からのひらめき
なぜ、同店ではパンケーキを販売して
がりや、餡が多い少ないや偏りなど、商品
いるのか……意外な答えが返ってきまし
としてばらつきが大きく出てしまいがちで
た。豆乳と一緒によく食べられる揚げパン
す。日々どうやって品質を一定に保ち提供
は、油脂で揚げていることからカロリーも
し続けるか、これが難しいのです。シンガ
高く、健康面で気になるものだったそうで
ポールでも日本食は健康によいと言われ人
す。そこで参考になったのが、日本の今川
気です。日本で私たちがビジネスを展開す
焼き。鉄板で焼かれたその「パンケーキ」
ることで、私たち自身も日本市場に通用す
なら餡もさることながら、ハム&チーズ等
る高い品質管理などを学べますし、また日
様々な具材に応用可能であり、栄養バラン
本での実績があれば、さらなる会社のブラ
スの取れた揚げパンよりヘルシーな軽食に
ンドイメージの高揚にも繋がると考えてい
なるということで導入されたのだそうです。
ます。既に当社のお客様は華人系に限らず
多様な文化背景の方に広がっており、おい
しく新鮮で健康にいい豆乳を届けたいとい
海外進出第一弾はなぜ日本なのか?
同社への私の大きな疑問のもう一点は、
う当社の狙いは今後各国でも展開できるも
- 59 -
のと考えてます。一日に一杯豆乳を是非
店舗に配送していますが、アンパンなどは
摂って、健康を保ってください。」
オーブンが設置されているような店舗では
私の住むバンコクにも早く出店してくだ
さいとお願いし、同社を後にしました。
店ごとに焼き上げて販売しているそうです。
工場でも、店舗でも、日本では当たり前の
ようにできるレベルのことが、この国では
かなり注意をして、厳しく社員指導、管理
月産12万個のドラ焼き
さて、話をタイ・バンコクに戻しましょ
し続けないとなかなか維持できないそうで
う。今回は小豆あんに注目しつつバンコク
す。日々同様なパンやお菓子がお店に並ん
の街を取材してみました。まず訪問したの
でいることは、我々消費者にとっては当た
はタイの日系企業はタイ・ヤマザキ社。大
り前のように思うことですが、それを実現
手製パン業ヤマザキのタイ法人で、1984年
するために日本の倍以上の管理指導が必要
から創業されており、現在までに6販売
になっているそうです。
チャネル、計70店舗がバンコクを中心に広
がっています。(口絵3)
真の日本食を出すチェーン店
バンコクの日本人街スクンビット地区内
もう一つ今回取材させていただいたのは、
のみならず、周辺部にも店舗展開してお
「ごはん処大戸屋」を展開する、ベタグロ
り、バンコキアンにはお馴染みのパンメー
大戸屋社。日本の外食チェーン大戸屋が当
カーですが、同社の松尾氏によると、「タ
地の食肉大手と共同で2005年に設立、現在
イじゃ中堅パンメーカーですよ」。 3チャネル20店舗余を展開中です。
製品を大別すると食パン、惣菜パン、デ
タイでは日本食は根強い人気があります
ニシュ、和菓子などと分けられるそうです
が、中には、砂糖入りの緑茶が当然のよう
が、和菓子の2大商品はドラ焼き(月産12
に出される「タイ的な日本食」店があるの
万個)と大福(7-8万個)で、その生産
です。
量の多さに驚きました。かつてはドラ焼き
大戸屋はデパート、ショッピングモール
はもっと多く生産されていたそうですが、
等にありますが、日本ではあまりない出店
その後競合他社やパン店が数多くドラ焼き
先として、総合病院をあげることができま
に参入にしたことにより生産量が減少した
す。バンコクの私立病院には、語源を同じ
結果、この数値なのだそうです。
くするホテルのようにレストランやコー
バンコクでの「餡もの」は3~4万人と
ヒーショップ、ちょっとしたショッピング
いわれるバンコク在住日本人のみならず、
モール、銀行が併設されていることも多く、
広くタイの方にも受け入れられているとい
通院のついでだけでなく、ランチを食べた
うことがよくわかります。(口絵4)
り、コーヒーを飲みに病院へ行くというよ
同社では、和菓子類は主に工場生産し各
うなことも結構あるのです。
- 60 -
さて、同店はその名のとおり食事がメ
着する商品は1-2種あればいいほうで、
ニューの大半ですが、デザートとして、抹
なかなか難しい作業だとか。日本人のみな
茶パフェ、餡みつ等も提供されています。
らず、桜にあこがれるタイの人々もぐっと
日本人には食事直後というより、おやつ等
掴んだ桜アンパンなどは、成功例の一つだ
として頂くことが多いようにも思われるメ
そうです。が、実は4月は暑いタイでも一
ニューもありますが、タイの方は食後にご
番暑い頃、足の速い餡など食品への気遣い
注文され、ぺろりと平らげる方も意外と多
はこの頃普段以上になるそうです。
いのだとか。特にタイの方には抹茶味が今
タイの方の味覚は辛いものに強いばかり
大人気で、日本同様お茶の苦味とあわせて
でもなく、辛さを引き立てるための糖利用
餡の甘さとの対比を楽しめる商品に人気が
や、甘いものを沢山の糖でより甘くしよう
あるようです。(口絵5)
という傾向が一般に強く、砂糖もたっぷり
というタイ料理も多いものです。
そんなタイの方も召し上がる商品の開発
縁の下には日系製餡工場あり
さて、ヤマザキさんも大戸屋さんも前回
ですから、基本は日本人の味覚でおいしい
ご紹介した Soy's さんとは違い、自前で
かどうか評価するのだそうですが、最終的
餡は製造しておられません。実は両社とも
にタイ人、日本人の共通の着地点を探すの
バンコクから1時間ほどの街に工場のある
がタイ・ヤマザキ流。とても意外なことも
日系の製餡会社から餡を調達しているのだ
偶に起こるそうで、日本人スタッフが程よ
そうです。一般向けの缶入り粒餡も作られ
いおいしさと思ったものを、タイ人スタッ
ており、日系スーパー等の店頭では日本か
フが食べて「甘すぎる」と言われ、調整し
らの輸入品よりも手ごろな価格でこのタイ
直すことがあるのだとおっしゃいます。味
製缶入り粒餡が並んでいます。(口絵6)
覚は本当に難しいものです。
業務用は粒餡・こし餡だけでなく、作る商
一方の大戸屋の場合、日本人と共にレシ
品に合わせた餡の練り固さの異なるタイプ
ピ開発スタッフのタイ人の方も試すそうで
のものがあるようで、タイ・ヤマザキの場
すが、最終的には、日本人の意見を優先さ
合では9種類の餡を調達していると言いま
せてレシピ決定されるそうです。これは徹
す。
底的に真の日本の味を守るというのに必要
なことと考えているそうで、同社はそれだ
けでなく、日本からの駐在社員が各々の店
2社の対象的な商品開発と味覚差
消費者が飽きやすいのは日本もタイも同
に配置されていて、日々提供している商品
じことで新商品開発は必須。タイ・ヤマザ
を管理している徹底ぶりです。事業パート
キでは、概して1ヵ月半の間に10種類程度
ナーのタイ食肉会社も日本側に日本の味の
の商品開発を行うそうです。開発しても定
確実な実践を強く求めているのだそうです。
- 61 -
るようで、それが餡を遠ざけることになっ
欧米人の餡好きたち
バンコクにはアジアのみならず、世界中
ているのかもしれません。
からの駐在者家族などいろんな文化背景の
人達がいます。欧米人は餡は苦手なのかも
最後に
と前回書きましたが、餡を食べていた外見
アジア系でなさそうな方に尋ねてみました。
日本駐在中に餡を知ったという人も居れ
今回も見聞きしたことを雑多に書き並べ
てしまいましたが、要点を再掲して結びに
かえたいと思います。
ば、バンコクで知ったという人、茶道を学
1)日本食は単なる流行なだけでなく、健
び和菓子を知ったという人など餡を口にし
康面で食材やその調理法も注目されてい
たきっかけは様々です。
る。
では、なぜ好き、食べるのかと聞いてみ
2)安全・安心な日本の食材は消費者に魅
ると、甘くて健康にいいからという声が圧
力的であるように、食品ビジネス関係者
倒的。そのほかにベジタリアンなので餡な
には、日本の食品関連業から高い品質を
ら豆だから大丈夫という方もいました。
維持する方法等、学ぶべき事項が多い。
視覚的な印象は口にするまでに相当大事
3)アジア経済発展に伴い、健康的な食に
なようです。和菓子の美しさに目を奪われ
た人は、それを食べることに興味をもち意
お金をかける人が増えている。
4)政治の不安要因より経済成長に期待し
外と抵抗なく口にし、餡は豆製品と知った
ている市場の流れがある。
後は、いろんな姿の餡を食べてみようと思
5)文化・味覚の壁を乗り越えることはあ
えるようです。でも、あんみつのように餡
る意味大変だが、壁を越え易くする手法
そのままの姿を最初に目にした人には、嗅
はある。
覚、食感等含め心のハードルが相当高くな
- 62 -
豆と生活
小豆を使った神話の国のまちおこし
早 川 正 樹 ると言われています。このことから、10月
はじめに
毎年旧暦10月には、出雲地方では寒風が
吹き荒れ、天候が悪くなることから「お忌
を出雲地方では「神在月」、他の地域では
「神無月」と区別されているのです。
み荒れ」と言われています。
旧暦10月10日の夕刻、出雲大社(いずも
1.神話の中の『五穀の誕生』
おおやしろ)から西方へ約1kmにある日
出雲地方の人々は、自分たちが住んでい
本海の稲佐の浜に大勢の信者や観光客が集
る所を「神々のふるさと」という人がいる
まって来ます。全国から八百万の神々がお
ほど、また子供たちは物心つくころから地
越しになるのを迎える「神迎神事」に参列
元の神楽(かぐら)に親しんでいるほど、
するために全国の津々浦々からやってくる
出雲神話の中で生活しているといっても過
人々です。浜には篝火と神聖な斎場がしつ
言ではありません。
けい ひつ
られ、警 蹕 の流れるなかを神々が「竜蛇
また行政も、平成24年の「古事記編纂
神」の先導でお越しになる時、いちじんの
1300年」を、観光の目玉と捉え、すでに活
風が吹き、その場にいる人々は、神々がヒ
動を開始しています。
モロギに移られるのを実感します。
そんな古事記の神話の中にも、『五穀の
その後、絹垣で覆われた神籬(ヒモロ
ギ)は、大国主大神(オオクニヌシノオオ
誕生』について以下のように書かれていま
す。
カミ)がお待ちになる出雲大社へと向かい
須佐之男命(スサノオノミコト)の乱暴
ます。お越しになった八百万の神々は、翌
に耐えかねて、天照大御神(アマテラスオ
かみはかり
日から7日間に亘り「神議」を行い、次の
オミカミ)が岩屋に隠れてしまった『天の
年の様々なことを話し合います。“縁結び”
岩屋』事件。
や“農産物の出来具合”などを話し合われ
はやかわ まさき 出雲観光協会 誘致開発マネー
ジャー 兼 日本ぜんざい学会 広報部長
八百万の神々の策略が功を奏し、無事解
決し明るさが戻ったとはいえ、須佐之男命
をこのまま野放しにしておくわけにはいか
ない。そこで八百万の神々は集まり、須佐
- 63 -
之男命をどうしたものかと話し合い、須佐
八束水臣津野命(ヤツカミズオミヅヌノ
之男命にたくさんの贖罪の品物を出させ、
ミコト)という神様が、「出雲の国は狭い
ひげと手足の爪を切り、穢れを祓い清めた
布のような未完成な国だ。最初に小さく
うえで、高天原から追放することに決めま
作りすぎた。だから縫い足そう。」とおっ
した。
しゃって、朝鮮半島の新羅の御崎の余った
高天原を追われた須佐之男命は、道すが
土地に綱かけて引いてきたのが杵築(現在
ら大気都比売神(オオゲツヒメノカミ)の
の出雲市大社町)の御崎である。… 中略 もとへ立ち寄り、食べ物を求めました。そ
…
こで大気都比売神は、鼻や口、尻の穴など
また、北陸の能登の珠洲市あたりの御崎
からいろいろな美味しい食材を取り出し、
の余った土地を綱かけて引いてきたのが美
それを調理して出しました。その様子をう
保(現在の島根半島の最東端)の崎である。
かがっていた須佐之男命は、汚れた食事を
このことが意味することは、時の出雲王
出されたものと勘違いし、すぐさま大気都
国(出雲朝廷)が主宰した神集いに参集し
比売神を殺してしまいました。
た神々が、日本国内(主に日本海側)はも
殺された大気都比売神のからだから様々
な物が生まれました。頭からは蚕が、両の
ちろん韓半島からも馳せ参じていたことを
示すものです。
目からは稲の種が、両の耳からは粟が、鼻
言い換えれば、出雲王国は日本海を使っ
からは小豆が、陰部からは麦が、尻からは
て広く交易していた大国であり、韓半島を
大豆が生まれました。そこへ神産巣日神
経て製鉄法(たたら)や農業の種などが渡
(カミムスヒノカミ)が現れ、それらを五
来して来たということを表していると思い
穀の種として葦原中国(アシハラノナカツ
ます。
クニ)へ持っていくよう須佐之男命に命じ
ました。
百済系の官僚で占められている大和朝廷
に提出する「出雲國風土記」に、新羅系の
これが、地上における養蚕と農業のはじ
まりとなりました。
神々の寄り合い評定を記すには、「国引き
神話」という夢物語で表現するしかなかっ
たと想像できます。(出雲 神在月の謎にせ
2.出雲國風土記の「国引き神話」と出雲
まる 安達巌 著:三一書房)
への神集い
733年 に 編 纂 し 大 和 朝 廷 に 提 出 さ れ た
3.「ぜんざい」に関する古文献
「出雲國風土記」の意宇郡(おうのこおり)
八百万の神々が出雲の地に参集され、こ
かみありさい
の条に、いわゆる「国引き神話」が載って
の時に執り行なわれるのが『神在祭』とい
います。
われる祭事です。出雲での「神議」のため
要約すると以下のとおりです。
に参集された内外の神々に、出雲朝廷が歓
- 64 -
待用として用いた小麦団子が「神在餅(じ
豆をもて餻(もち)を煮て賀せり。これ
んざいもち)」であり、その延長線上にあ
を神在餅といふ。いま俗にぜんざいもち
るものが今も女性が大好物としている「ぜ
ひといふは、転訛せるなりと。されば出
んざい」であり、「神在(ジンザイ)」が
雲にては神無月といふを忌みて、神有り
訛ったものです。(出雲 神在月の謎にせま
の月といふも、これによりて云ふなりと
る 安達巌 著:三一書房)
いへり。伊勢にてしる粉もちといふ。上
総にてはじざいもち、土佐にてはじんざ
ここで、古くからの「ぜんざい」に関す
い煮、京・江戸にては善哉餅(ぜんざい
る古伝を挙げておきます。
もち)といへり。
(注)原文のまま。(ふりがな)は筆者加筆
④「塵泥」
①「祇園物語」
(寛永年間:1624年~1643年)
出雲の国人(くにひと)談に、出雲に
出雲國に神在(じんざい)もちいと申
ては、十月諸神来り集まり給ふとて、餅
事(もうすこと)あり。京にてぜんざい
をつきて赤小豆の粉を付けて、神に供へ
もちいと申ハ。これを申あやまるにや。
奉る。是をジンザイモチといふ。ジンザ
十月にハ日本國の諸神ミな出雲國にあつ
イモチは神在餅と書くといへり。他国に
まり玉ふゆへに。神在(かみあり)と申
てあづき餅をゼンザイモチといふ。ジン
なり。その祭に赤豆をにて汁をおほくし。
ザイモチの誤り也といへり。
すこし餅を入まいらせ節々まつり候を。
⑤「雲陽誌」(享保2年:1717年) ※ 秋鹿
神在(じんざい)もちいと申よし。
郡宮内 佐陀大社の条
②「梅村載筆」
(林羅山著:1583年~1657年)
赤小豆をすりて煮たる餅を、ぜんざい
ある人の云此祭日(注:十月の神在
祭)俚民白餅を小豆にて煮家ことに食こ
もちと云ふ事は誤りなり。しんざい餅と
れを神在餅といふ、出雲の國にはしまる、
云べし、神在とかくなり。出雲国の大社
世間せんさい餅といふはあやまりなり。
は、むかしより十月には諸神相会し玉ふ
と云ならはせり、故に余は神無月と云に、
出雲にては神在月といひて、祭りにかの
餅を煮てまつる事なり、これを学びて神
在餅と云か。
③「倭訓栞」(寛文十年:1670年)
出雲国秋鹿(あいか)郡佐太(さた)
社に、毎歳十月十六日より廿五日まで祭
儀あり。これを神在祭(じんざいまつ
り)といふ。土俗誦経念仏を禁じ、赤小
- 65 -
出雲大社 御仮殿(平成25年、正遷宮)
め「日本ぜんざい学会」の商標登録もいた
4.「日本ぜんざい学会」の誕生
出雲地方では、昔から“ぜんざい”は、
“じんざい”が訛ったものという言い伝え
がまことしやかに言われていました。
しました。5月には、「出雲ぜんざいの日」
を日本記念日協会に登録申請し、10月31日
を「出雲ぜんざいの日」にする承認を受け
出雲市内でホテルを経営する田邊達也は、
ました。
“ぜんざい”で何とかまちおこしができな
余談ですが、なぜ10月31日が「出雲ぜん
いものかと、仲間や行政(食育担当)や商
ざいの日」かというと、1つにはその日が
工会議所と様々な“ぜんざい”を試食して
神在月に当たるから、そしてもう1つは
試行錯誤を繰り返していました。
“1031”が“せんさい”に語呂合わせ
そんな時に相談した島根県立古代出雲歴
になるからです。
史博物館の品川学芸員から、“ぜんざい”
また、学会の会員募集も始めました。ま
の始まりが出雲の国の『神在祭』の際に振
ず、田邊が塾長を務めている「出雲まちづ
る舞われた「神在餅」に由来するという
くり人づくり和話塾(わ~わじゅく)」の
数々の古文献を紹介されたのです。
塾生を中心に正会員(ボランティアで学会
この文献に突き当たったことが、“ぜん
を応援する会員)を募集しました。
ざいでまちおこし”をしようとするきっか
因みに、この塾の目的とするところは、
けになった第一の要因だったと思います。
「わ~わ(出雲の方言で我々という意味)
平成19年2月、田邊は『ぜんざい発祥の
のまちを、わ~わの知恵と情熱で活性化し、
地は、出雲』をコンセプトにした「日本ぜ
全国に誇れるまちづくりや、観光客にも住
んざい学会」を立上げ、出雲市内で和菓子
民にも優しい人づくりを目指し、塾生個々
を製造している老舗の坂根屋の社長に相談
の優れた技を結集したプロフェッショナル
し、まちおこし活動を実践していきます。
(玄人)集団として“出雲のオンリーワン”
まず“出雲ぜんざい”の条件を、「小豆は
を開発し、全国に発信していく」でありま
出雲産の大納言小豆を使うこと。餅は紅白
した。
の丸餅(餅粉を使った白玉団子も可とす
る)」としました。
次には、“ぜんざい”で商売をする飲食
店や和菓子屋などの事業会員を、学会の活
次に、たくさんの人々に“出雲ぜんざ
動を資金的に支援していただく賛助会員を
い”を味わってもらおうと考え、行政のイ
募りました。かくして、平成19年7月1日
ベント(2月の出雲くにびきマラソン、5
に「日本ぜんざい学会」の設立総会を開催
月のにっぽん丸入港祝いや、全国市長会中
するに至りました。この時点での会員数は、
国支部総会)に参加して振舞い事業を行
正会員19名、事業会員20社、賛助会員7団
い、一定の評価をいただくことができまし
体・個人でした。
た。また、他のぜんざいと差別化を計るた
- 66 -
同日開催した設立祝賀会には、学会顧
るさとフェア」や、出雲市内で開催され
る「出雲ブランド・食の祭典」にも出展し、
地元の食の紹介にもひと役買ってきました。
出雲・食の祭典(出雲ドーム)
問を引き受けていただいた出雲市長を始
め、地元選出の県会議員、市会議員、島根
県や出雲市、島根県観光連盟、商工会議所
島根ふるさとフェア(平成21年)
や JA、観光施設の方々など、総勢155名の
皆様にお祝いしていただき、今後の学会活
動に意を強くしたと同時に、活動の責任の
重さも痛感したものでした。
5.「日本ぜんざい学会」のこれまでの活動
(1)各地のイベントに出展
学会の活動は、まず各地のイベントに出
展し、“ぜんざい発祥の地は、出雲”を広
「日本ぜんざい学会」設立祝賀会(平成19年)
く知らしめることから始まりました。
出雲市内だけでなく、松江市内や玉造温
泉にも出掛けました。松江城では3日間に
(2)サイトの開設
亘り、国際ジャズフェスティバルの会場で
純和風のスイーツの販売をしました。
学会の設立に併せて、平成19年7月ホー
ムページを立ち上げました。学会からのお
東京・日本橋にある島根県のアンテナ
知らせや学会新聞を掲載している他、ブロ
ショップや、横浜市・みなとみらいのパ
グ「ぜんざい食べ隊」を併設して旬の情報
シ フ ィ コ 横 浜 で 開 催 さ れ た「 旅 フ ェ ア
を発信しています。
2008」にも出展販売し、全国に向けて
の発信もいたしました。
(3)マスコミを使った広報活動
また、広島市内で開催される「島根ふ
- 67 -
学会設立前に、東京と大阪の雑誌や新聞
各社を訪問し、“ぜんざい発祥の地は、出
(5)小豆の生産農家の拡大
雲”というコンテンツを紹介し、取材に来
出雲産の大納言小豆は、丹波産の大納言
ていただくよう要請して回りました。
にはまだまだ程遠いものがありますが、結
◆旅行雑誌・・旅行読売、るるぶ、まっぷる、
構大粒でぜんざいにした時ホクホク感があ
旅の手帳、西の旅、じゃらん(関西版)
りお客様に喜ばれています。
◆情報雑誌・・コロンブス、WaSaBi、
東京人、ぴあ
学会の「出雲ぜんざい」のコンセプト
は「出雲産の大納言小豆と紅白の丸餅」な
◆旅行新聞・・観光経済新聞、旅行新聞、
トラベルニュース
のですが、学会設立当時は半年も過ぎれば
出雲産の大納言小豆は底を付く状況でした。
◆一般新聞・・産経新聞、毎日新聞、東京
事業会員の和菓子屋と出雲市の農協などの
新聞、夕刊フジ
努力により、現在は38軒の農家に大納言小
この時の各社訪問は、後に各社の取材に
豆を作付けしてもらえるようになりました。
つながり、また他のマスコミからの取材依
それでも10ヵ月を過ぎると品薄になる状況
頼も年々増加し、学会の活動を全国に発信
で、奥出雲産の小豆で補なっています。
する大きな力になったことは否めません。
出雲の名物でもある「そば」の栽培に比
べると手間も掛かるということで充分な栽
培農家数には達していませんが、少しずつ
(4)旅行商品への取組
旅行商品は、かつてのような神社仏閣、
名所旧跡などを観る(See)形態に、趣味
でも小豆を作っていただける農家を拡大し
ていくのが今後の課題でもあります。
趣向を満足させたり自ら体験したりする
(Do)形態をプラスするようになってきて
(6)直営店の開業と、門前町の活性化
います。
平成19年10月25日に、「日本ぜんざい学
その一つのコンテンツとして、旅先での
会壱号店」(直営店)を出雲大社の門前
「地元ならではの食・スイーツ」としてぜ
町(神門通り)に開店し、学会のアンテナ
んざいを組み込んでもらう営業活動も行な
ショップとしての活動が始まりました。
神門通りは、かつては JR 大社線の大社
いました。
現在では、山陰地区への路線を持つ航空
駅から出雲大社正門までの約1km の参詣
会社のホールセール商品(個人型旅行商
道として沢山の参拝客が往来していました
品)や、大手旅行会社の出雲地方向けの旅
が、平成2年の JR の廃線によって人通り
行商品に「お楽しみクーポン」として組み
が途絶え、空き家も目立つようになってい
込んでいただき、他の「食」とチョイスす
ました。壱号店の開業以来、地元や町外の
る形でお客様に喜んでいただいています。
新規参入が増え(11店舗が新規開店)、そ
(現在、4社が商品化しています)
れに伴なって町歩きをする観光客も目に見
- 68 -
えて増えてきています。また、神門通り
会の「特別会員」として認定し、事業会員
の店舗の有志が集まって「神門通り甦り
が生徒の活動のお手伝いをすることにしま
(よみがえり)の会」を新たに立上げ、毎
した。女子生徒の柔軟な発想力が功を奏し、
月1回の「軽四朝市」や祭事に併せて様々
ハート形や注連縄を模した紅白の餅を考案
な「おもてなしイベント」を企画するなど、
したオリジナルぜんざいが、島根県教育委
地元の人々の意識改革にも一役買っている
員会の「産学官連携による課題研究事業」
ことは「出雲ぜんざい」効果の一つと思い
に採択され、商品化を加速し、大手コンビ
ます。
ニ(ファミリーマート)の店頭に並ぶとい
う快挙を達成するまでになりました。
(7)行政の取組
10月31日が「出雲ぜんざいの日」として
(9)ぜんざいマップの作成
記念日登録されたことは前述しましたが、
平成19年と20年の10月31日は、出雲市内の
幼稚園から中学校までの給食にデザートと
して「ぜんざい」が出されました。このこ
とは、出雲市民に“ぜんざい発祥の地は、
出雲地方にお越しになる観光客などに、
「出雲ぜんざい」を味わったり、お土産と
してお買い求めいただくための資料として、
「ぜんざいマップ」を作成して観光案内所
や各店舗に置いています。
出雲”だということを認識してもらうと同
また、出雲路の名物の一つ「出雲そば」
時に、郷土愛の醸成にも繋がる食育の一環
の店でも“そばがき”や“そば団子”を
として行政が学会の取組を是とした大きな
使った「出雲ぜんざい」を販売している店
事業だったと評価しています。
があり、それらもマップに掲載してお客様
また、市内外から出雲市にお越しになる
お客様へのお土産として「レトルトぜんざ
への情報ツールに利用していただくことに
しました。
い」を採用しており、これも「出雲ぜんざ
い」の全国発信にとって大きな助力になっ
(11)愛Bリーグへ加盟
ていると思います。
今年9月18日~19日の2日間、厚木市内
で開催された「B級ご当地グルメの祭典!
B-1グランプリ in 厚木」には首都圏で
(8)女子高校生のぜんざい
学会の活動に呼応するかのように、島根
県立出雲商業高等学校の経済調査部の女子
の 開 催 だ っ た こ と も あ り、2日 間 で43万
5000人の来場者がありました。
生徒が部活動の一環として「縁結びぜんざ
い」を開発しました。
この大会を主催しているのが「B級ご
当地グルメでまちおこし団体連絡協議会」
学会はこの活動をバックアップする意味
(通称:愛Bリーグ)です。この団体の存
から、平成21年7月15日に日本ぜんざい学
在を始めて知ったのは、学会発足前に最初
- 69 -
に東京の雑誌、新聞社を訪問した時、観光
経済新聞社の編集長の談からでした。
「××グルメグランプリ」などの“食”に
関わるイベント、お祭りが大流行です。し
以来数年、地元で出雲ぜんざいを使った
かも、どのイベントもたくさんの人々が訪
まちおこし活動を展開した後、平成20年12
れ大盛況です。当分、“食”関連のイベン
月に加盟申請書を提出、翌21年5月の総会
トは続くだろうと思われます。
で準会員として加盟承認されました。それ
「景気が悪くなればなるほど“B級グル
と同時に、愛Bリーグ近畿・中国支部会
メ”に人が集まる」という人もいますが、
(現在は、近畿・中国・四国支部会に改称)
現実をみればあながち間違っているとも言
の会員にも加盟承認され、支部会員との連
えません。
B 級グルメの草分け的存在の「富士宮や
携で様々な活動のノウハウを吸収すること
ができました。
きそば学会」が先日10周年記念会を開催し
この間の連携活動は、日本ぜんざい学会
ましたが、過去9年間の経済波及効果は
がまちおこし活動を実践していく上で一段
439億円に上ると推計されています。その
スキルアップできた原動力になったと思い
内訳は、麺の製造・販売、やきそば店の売
ます。そして平成22年4月の総会で晴れて
上げの他に、キャベツやソースなどの関連
正会員に承認され、B-1グランプリ初出
素材、テレビや新聞などのメディア、そし
展の権利を得て、今秋厚木大会に初出場し
て県内外から訪れてくる観光客とその波及
ました。
範囲は広大です。富士宮市も2004年から
2日間で、今まで経験のしたことのない
「フードバレー構想」を掲げ、生産者や企
3200食強を売り上げましたが、売上げより
業と連携して食を通じた町づくりに取り組
も全国の人々に“ぜんざい発祥の地は、出
んでいます。
雲”だということをアピールできたことが
大収穫だったと思っています。
我が「日本ぜんざい学会」も、地域の行
政・生産者・商工業と連携し、「地産地消
のまちづくり」を目指して、地道に一歩一
歩継続した活動を目指していこうと思って
おわりに
最近全国各地で、「○○食の祭典」とか
います。
- 70 -
豆類基金
コーナー
ペルー豆類事情に関する調査結果の概要
村 崎 史 郎 (財)日本豆類基金協会では、平成22年度
よって異なるが0.6~4t / ha である。
の海外豆類事情調査を平成22年9月18日
(土)から26日(日)まで、沼田晃一団長
(1)海岸地帯(コスタ)での豆類生産の特
以下6名により、ペルーを対象に実施した
徴 のでその概要を報告する。
豆類の栽培面積は4万7,900ha で、収穫
量は乾燥豆類6万 t、生鮮さや豆のキマメ
1.ペルーにおける豆類の生産、輸出等の
約13万 t となっている。高品質の豆類が採
状況
れるコスタのランバイエケ州、ピウラ州、
2009年 の ペ ル ー 豆 類 栽 培 面 積 は21万
リマ州バランカ郡では、乾燥豆の分類工場、
6,000ha で あ り、 乾 燥 豆 が25万1,000t、 生
生鮮豆3の冷凍工場、缶詰加工工場が整備
鮮 さ や 豆 1 が17万6,000t 生 産 さ れ て い る。
されており、輸出が推進され、結果として
(表1及び表2) この生鮮さや豆を生鮮粒
状豆2(さやを除いた状態)で計算すると
8万 t になる。生鮮粒状豆として栽培され
るのは、国内需要向けのソラマメとエンド
ウ、輸出向けのキマメである。乾燥豆とし
て収穫されるものの中で、多く栽培されて
いるのは、インゲンマメ、エンドウ、ソラ
マメ、ササゲの4種類で全体の89% を占め
る。乾燥豆の単収は、品種、生産地などに
1
この報告では、生鮮さや豆とはサヤインゲ
ンのようにさやごと野菜として食される豆を
いう。
2
生鮮粒状豆とはグリーンピースのように莢
を取り除いた生鮮の豆をいう。
3
生鮮豆とは生鮮さや豆及び生鮮粒状豆をい
う。
むらさき しろう (財)日本豆類基金協会 企画調査部長
- 71 -
ペルーの地形
表1 ペルーにおける豆類の生産量、主産地及び収穫時期
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雇用拡大、農家収入の増大をもたらしてい
作物を栽培している会社が、土壌の肥沃性
る。コスタ北部では、稲作用の灌漑用水に
と衛生、病虫害管理の観点から豆類との輪
優先権が与えられ、その結果として土壌中
作にも関心を持つようになっている。
の塩分含量が急激に増え、土壌の質が急速
に劣化し始めている。
(2)山岳地帯(シエラ)での豆類生産の特
コスタでは10年ほど前から、農産物の輸
徴
出を行っている大手農業会社が、荒地に地
シエラにおける豆類生産は、14万5,600ha
下水を使って灌漑を行い、近代技術を導
の農地で約14万 t の乾燥豆と6万 t の生鮮
入してアヒ(トウガラシ)、ブドウ、果樹、
豆が採れる。ケチュア地帯ではトウモロコ
綿花、トウモロコシなどを栽培している。
シとの輪作で、主につる性のエンドウ、ソ
こうした、高い技術力・競争力がある輸出
ラマメ、レンズマメが栽培されている。山
- 72 -
表2 ペルー豆類生産の推移 (30年間 )
(単位:ha,t,kg/10a)
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間のユンガ地帯の平野にも水のある場所が
(4)ペルーでの豆類消費
あり、アルビア(白いインゲンマメ)、カ
ペルーにおける乾燥豆類の年間1人当た
ナリオ(黄色いインゲンマメ)といった豆
り消費量は1996年の6.3kg から2008年には
がかなり栽培されている。
8.25kg へ増加している。また、政府の給
食プログラムによって貧困層での豆類の消
(3)熱帯雨林地帯(セルバ)での豆類生産
費が増加している。また、高所得層でも健
の特徴
康食品として豆類の消費が増えており、今
熱帯雨林地域高所のサンマルテイン州、
後とも国内消費は増加傾向である。
ウカヤリ州、ワヌコ州で2万1,500ha の農
地で、バナナ、キャッサバ等と混作されて
(5)豆類の輸出
いる。なお、ササゲとインゲンマメは、川
ペルーの豆類の輸出は1990年代に始まり、
水のない乾季に、低地部の集落に近い川底
2008年には、42ヵ国へ27種類の豆を輸出し
でも栽培されている。
た。主なものは、生鮮キマメの缶詰と冷凍
- 73 -
品、生鮮野菜としてのキヌサヤ、乾燥豆で
イ)、ヒヨコマメ、レンズマメ等が500g あ
は第1位ササゲ、第2位ラージライマ(ラ
るいは1ポンド(454g)の袋入りで売ら
イマメ)、第3位はカナリオである。なお、
れていた。ほかに、カット野菜と一緒の棚
豆類は農産物の中では、1位アスパラガ
で、野菜としてサヤインゲン、サヤネンド
ス、2位パプリカ、3位ブドウ、4位アー
ウに加え、ソラマメのむき身も売っていた。
ティーチョークに続く5位の輸出品目であ
(表3)
る。ペルーで栽培されている10種の豆類の
また、庶民が買い物に行く市場「メルカ
ド MERKADO」を視察した。豆は、穀物
うち、8種が輸出用に栽培されている。
豆類の輸出は、政府の「豆類輸出振興特
商の商いで、米、麦、トウモロコシ、など
別プログラム」に沿って、1996年の2,900t、
と一緒に並ぶ。1キロ当たり3~5ヌエボソ
390万 ド ル か ら、2008年 に は5万2,900t、
ルの値札が立っており、先のスーパーに比
6,610万ドルへと大幅な増加となり、米国
べ約半額の値段であった。値引き交渉すれ
が最も重要な輸出先で49%を占め、以下、
ば、相当負けてくれるとのこと。
英国(3.7%)、ポルトガル(2.9%)、プエ
ルトリコ(2.9%)、コロンビア(2.8%)の
順になっている。
(6)豆類の輸入
ペルーでは、国内需要を賄いきれないた
め、何種かの豆類を輸入している。エンド
ウ、レンズマメ、その他豆類の輸入は、数
年前から増える傾向にあり、1996年の3万
5,000t、1,900万 ド ル か ら2008年 に は 4 万
写真1 リマ市内の市場メルカドの乾物屋(豆を販売)
3,000t、金額にして3,100万ドルを輸入して
注)値札数字は、1kg 当たりのヌエボソル(S/.= 約30円)
いる。
(2)ランバイエケ州豆関係者セミナー
2.主な訪問先での調査概要
ランバイエケ州チクラヨ市のホテル会議
(1)スーパーや市場メルカド
室において、当調査団の訪問を歓迎して、
乾燥豆などは、米等の穀物や雑穀、乾燥
バレイショ等と同じ棚に並べられており、
ランバイエケ州内の豆類生産関係者がセミ
ナーを開催し、これに参加した。
インゲンマメ(カナリオ、アルビア、カバ
近年ペルーではアスパラガス等の農産物
レロ等)、ライマメ(ラージ、ベビー)、ソ
輸出が盛んなためか、ランバイエケ州は小
ラマメ、エンドウ、ササゲ(ブラックア
規模な経営が中心でありながら大規模農業
- 74 -
表3 リマ市のスーパー(PLAZA VEA)での乾燥豆の販売価格
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経営が盛んでササゲ、キマメ、インゲンマ
州を分担している。研究員は10人、補助技
メ等の豆生産が多いことから、日本向けの
術者、作業員等を含め総勢75人で試験・研
小豆生産に強い関心があり、栽培、我が国
究を実施している。圃場はトウモロコシ→
での小豆価格、加工品について質問、輸出
綿→豆→トウモロコシの輪作体系で回して
の要望等があった。
いる。豆はこの試験場で担当しているが、
団員の一文字桂次さん持参の甘納豆を、
日本での豆の利用形態の例として、セミ
人員、研究費ともに少なく貧弱な体制で育
種までは手が回らないとのこと。
ナーの会場で参加者に試食してもらったと
小豆栽培圃場は、大変乾燥しているため、
ころ、大変好評で、製造方法を教えて欲し
点滴灌漑のパイプが巡らされ、中国産とカ
いとの要望があるほどであった。
ナダ産の種子を用いて栽培していた。圃場
の特質もあるのか、塩類が土壌表面に出て
(3)国立農業研究所ビスタ・フロリダ試験
おり、茎や葉はいずれも貧弱な姿であった。
場
チクラヨ市カレテラにある農業省付属の
国立農業研究所(INIA)のビスタ・フロ
リダ試験場を訪問し、所長から概要の説明
を受けた後、小豆の試験栽培の圃場を視察
した。
ビスタ・フロリダ試験場は、ペルーに24
ある INIA の試験場のうち最も圃場面積の
大きい試験場で、総面積350ha の圃場面積
270ha であり、ペルーの北部海岸地帯の4
写真2 国立農業研究所ビスタ・フロリダ試験場で
の小豆栽培
- 75 -
イ.大規模キマメ栽培圃場
(4)ランバイエケ州パコラ地方の農場
チクラヨ市中心部から約30~40km 北の
視察した大規模にキマメを栽培している
ランバイエケ州のパコラ(Pakora)地方
圃場は、1枚で27ha あり、経営している
で豆等の食品加工会社 Procesadora S.A.C
会社は全体で約3,000ha の農地で各種作物
(元農業大臣アルフォンソ・ベラスケス氏
を栽培していて、この畑はごく一部とのこ
経営)が試験栽培している小豆の試験栽培
と。このような大規模栽培でも、生鮮莢の
圃場の視察と大規模キマメ栽培圃場の視
収穫作業は手作業であり、水さえ与えれば
察を行った。水稲の栽培が多く灌漑施設
何回も収穫可能で、収量は10t/ha とのこ
が多くある。この地区は、インゲンマメ
とである。用水の手当は、井戸水をポンプ
等いろいろな豆を生産しているが、ササ
アップしてホースで畑まで引いてきて畝立
ゲ(ブラックアイ)が最も多い、キマメ
てた畝間に給水している。
(Pigeonpea)の栽培も多く、生鮮豆を缶
詰等に加工して出荷している。キマメ缶詰
は主に北米に輸出されている。
ア.小豆の試験栽培圃場
2~5ha の小規模農家を対象に小豆の
試験栽培を実施している。圃場の土壌は、
非常に細かい粘土質で、乾季のため表面が
固くひび割れるほどであった。圃場は畦が
写真3 缶詰で出荷されるキマメの大規模圃場(27ha)
あり、一枚は20~30a ぐらいの面積で、用
水はアンデスからの川水や伏流水を井戸で
(5)ランバイエケ州議会
ポンプアップして用いている。
ランバイエケ州政府庁舎に伺い、議会議
試験栽培の小豆は栽培時期が二通りあり、
長ベコラ氏と次席のロハス氏を表敬訪問し
一つは花がついた時期、もう一つは収穫の
た。議長からは、ランバイエケ州は、遙か
時期のものであった。花の時期の小豆は、
昔のモチカ文化の時代には、豆がとても重
草丈はせいぜい30cm ぐらいだが、試験場
要な作物で広く栽培されていた。ところが
圃場のような塩害は見受けられなかった。
近年、栽培面積の多い作物である稲作とサ
収穫時の圃場は、小豆1株に25莢ぐらいつ
トウキビはともに、用水を沢山使う作物で
いて、粒は小さいが1莢に7~8粒入って
あり雨の降らない土地柄から、土壌の塩類
おり、収量は80~90kg/10a 程度であった。
集積をもたらす作物である。この州の将来
の農業を考えると、塩類集積の課題がある
ので、今後、豆作を広く行いたいとの話が
- 76 -
あった。
(6)国際食品博覧会
ペルー農業省、輸出協会(ADEX)等が
主催する国際食品博覧会(xpoalimentaria
Peru2010; 開 催 日 9 月22、23、24日 ) が
リマ市内で開催されており、豆の取扱等を
見学した。博覧会全体は284ブースに分か
れて、農産物、加工品、水産物、酒を主体
写真4 ペルー農業大臣ラファエル・クエベド氏
(中央)表敬 に、機器、機械や銀行輸送等の間接部門ま
でが出展していた。
豆は概ね、トウモロコシ、キヌア、米、
乾燥トウガラシなどと一緒に展示され、商
(8)ラ・モリーナ国立農業大学
談も行われており、これら乾物と同じよう
リマ市内に立地し、1902年に設立された
に流通しているものと思われる。また、ア
ペルーの農業、畜産、森林、漁業、食品
ンデス特産のマカ、サカインチ(別名イン
工学等の教育・研究分野で指導的役割を
カピーナッツ)などペルー特産食品や、マ
担っている大学であり、学生数は約5,000
ンゴー等の熱帯果実、アスパラガス、パプ
人、本部キャンパスは140ha で、南アメリ
リカ等の野菜、ペルー産のワインやピスコ
カ有数の農業大学である。
Jesus Abel Mejia Marcacuzco 学長及び
も展示され、ペルーの作物、食品加工品の
Jorge Aliaga Gutierrez 副学長を表敬した。
多様性と輸出志向がよく分かった。
また、大学院穀物豆コースの主任教授で
あるカネマラ Félix Camarena M. 博士及
(7)ペルー農業省
リ マ 市 ラ・ モ リ ー ナ 地 区 に あ る 農 業
び アメリア Ing. Mg.Sc.Amelia HuaringaJ.
省にて、ラファエル・クエベド(Rafael
教授からペルーの豆事情について講演いた
Quevedo Flores)農業大臣を表敬訪問し
だいた、概要は、以下のとおり。
た。副大臣にもご同席いただき、本調査団
・インゲンマメのカナリオ品種(黄色でペ
の目的を説明したのち歓談した。農業大臣
ルーの主要輸出品種)や他もマメについ
から、インゲンマメはペルー原産でもあり
て大学で研究プロジェクトがある。
豆は大事な作物である。今後、農産物の輸
・ペルー原産の豆は、インゲンマメ、ライ
出、特に豆に期待している。豆について、
マメ、ルピナス・ムタビリス、タチナタ
日本の需要、栽培技術、加工技術を知りた
マメ、クズマメ(根茎を食す)であり、
いとの話があった。
うち経済的に利用している豆はインゲン
- 77 -
マメ、ライマメである。他にも、海外か
日(Lunes de Lenteja)」があるように、
らペルーへ導入されたダイズ、ササゲ、
豆は所得の低い層を中心に、国民の食生
キマメ、リョクトウ、ヒヨコマメ、レン
活に深く日常的に組み込まれている。
ズマメ、ソラマメ、エンドウ、フジマメ
が栽培され、多種・多様な豆が気候条件
に応じて栽培されている。
・ポップコーンのように熱をかけると爆裂
膨張するポッピングビーンと言われる
ヌーニャ Nuna というインゲンマメの
種類があり、アンデスの高地で栽培され
ている。
・ルピナス・ムタビリスに注目している。
写真5 山羊肉の煮込みと豆の煮込み
(ペルー豆料理の例)
タンパク含量が40%、脂質含量が20% と
ダイズに比肩できる高タンパク高脂質の
・ペルーの経済規模は広島県とほぼ同じ規
豆であり、標高3,000~3,800mの高地で
模である。南米ではブラジルとペルーの
栽培できるが、アルカドイドを2~4.4%
経済が大変好調である。ペルー人は、日
含有している。
系人も多く、日本製品への信頼も厚く大
・豆の品種改良の中心機関は、隣国コロン
変に親日的な国である。
ビアのカリにある国際熱帯農業研究セン
・ペルー国民は、ブラジルにシンパシーを
ター(CIAT)であり、CIAT が開発し
感じている。なお、チリ、エクアドルと
て品種も多く栽培されている。また、経
は過去の戦争の経緯もあり、ライバル視
済的に成り立つより良い品種作出のため
している。
に本大学や農業省の交配技術を用いて品
・ペルー経済は、近年の非鉄金属相場が好
種改良に努めている。
調なこともあり、輸出が好調である。輸
出品は銅、亜鉛、銀等が多いが、魚粉、
アスパラガス、アーティーチョーク、パ
(9)JETRO リマ事務所
ペルーで人気のサッカー、バレーボール、
プリカ等の農産物も増加している。貧富
サーフィンといったスポーツを話題にしつ
の差は大きいものの、他の国と違い貿易
つ、石田達也所長からペルーと日本の関係
の利益が一般の国民にも回ったため、国
についてご説明いただいた。主な内容は以
内消費も好調である。
・日本とチリの EPA 交渉が現在進められ
下の通り。
・ペルーには、月曜日に豆と食べるとお
金 持 ち に な る と い う 格 言、「 豆 の 月 曜
- 78 -
ており、ペルーは農水産物の輸出に大変
関心を持っている。
の重要な産地となる素地を持っていると思
3.調査結果のまとめ
ペルーは輸出主導で好調な経済を維持し
われた。
ており、活気に満ちていた。近年、農業分
また、ペルーはバレイショ、トウモロコ
野でもアスパラガス、パプリカ等の輸出が
シ、トマト、トウガラシの原産地でもあり、
増大しており、豆類についても輸出志向が
豆を始め多様で新鮮な食材が豊富なうえ、
強く感じられた。また、ペルーはインゲン
植民地時代以降に形成されたペルーの食文
マメやライマメの原産国であって古くから
化は大変魅力的であった。ペルーには「豆
栽培してきた歴史もあり、また、今回調査
の月曜日」という格言があり、豆は様々な
した北部海岸地帯には、灌漑をすれば優良
料理に使用されて日常的に豆が食べられて
な農地となる土地が広がっていることから、
いた。
生産技術、流通等に課題は多いものの、豆
- 79 -
「豆の日」関連各種イベントの開催状況
齋 藤 章 全国豆類振興会では、一般消費者の方々
1.全国イベント
に豆をもっと身近な食べ物として食生活の
■行事名:ビーンズ・フォーラム2010
中に取り入れていただくとともに、豆類関
~豆の日の集い~
係業界の活性化を図っていくため、平成22
■主催者:全国豆類振興会及び(財)日本
年6月に、10月13日を「豆の日」と制定
豆類基金協会
し、日本記念日協会に記念日としての登録
■開催日:平成22年10月13日(水)
も行いました。その由来は、旧暦9月13日
■開催場所:新宿明治安田生命ホール(東
の十三夜の月見の日に豆をお供えして食べ
京都新宿区)
る「豆名月」という古来からの風習に因ん
■内容:第一部では、まず食文化史研究家
だものですが、新暦では毎年日付が変動す
の永山久夫氏が、「『豆』は日本人の不老長
るため、月遅れの10月13日とされました。
寿食」と題し、古来からの日本人と豆の関
全国豆類振興会では、この「豆の日」を
係について講演を行いました。その中で、
一般消費者に広く認知していただくため、
豆には「幸せホルモン」と呼ばれ、免疫力
(財)日本豆類基金協会と連携して、新聞、
を向上させる効果もあるセロトニンの生成
雑誌、ポスター等を利用した広報活動を展
に必要なトリプトファンや、成長ホルモン
開するとともに、東京において全国イベン
の増加に必要なアルギニン、その他ビタミ
トを開催しました。また、各地域の豆類関
ン B1、イソフラボン、サポニンなど健康
係団体にもイベントの実施を呼びかけた結
の維持増進に役立つ成分が豊富に含まれて
果、北海道、関西、九州の各地域において、
いることから、豆類や大豆発酵食品を中心
「豆の日」協賛の地域イベントが開催され
とした食文化が日本人の健康で明るく文化
ました。これら「豆の日」関連の各種イベ
的な生活や長寿を支えてきたと考えられる
ントの概要について、一括してご紹介しま
こと、今後はこのような「豆力」(まめぢ
す。
から)の素晴らしさを世界に発信すべきこ
となどが紹介されました。
さいとう あきら (財)日本豆類基金協会 振興部長
- 80 -
作れる豆料理のレシピや調理プロセスにつ
いて画像を交えながら紹介されました。
第二部では、第一部に出演された加藤、
牧野両氏に「パティスリーミツワギンザ」
のシェフ・パティシエ岡本公一氏が加わり、
全国豆類振興会の薮光生広報委員長がコー
ディネーターとなってトークショーが行わ
れ、豆の素晴らしさは、バランスの良い栄
養素と機能性を持っていること、色々な食
ビーンズ・フォーラム2010 永山久夫氏講演
材との相性が良いためあらゆる料理に応用
引き続き、北海道立総合研究機構の加藤
できること、おいしく安価であること、料
淳氏が「豆の栄養と機能性」と題して講演
理が面倒であればすぐに食べられる加工食
し、大豆に多く含まれるイソフラボンには
品があることなどと総括されました。
女性ホルモンと類似した働きがあり、更年
期障害や骨粗しょう症予防に役立つこと、
小豆ポリフェノールは抗酸化活性が非常に
高く、ラットやヒトによる実験結果から血
圧、血糖値、コレステロール、中性脂肪の
増加を抑制する働きがあり、メタボリック
症候群対策として有効と考えられることな
どが紹介されました。
さらに、料理研究家の牧野直子氏が「簡
単豆クッキング」と題して講演し、簡単に
ビーンズ・フォーラム2010「豆まめトークショー」
2.地域イベント
(1)北海道地域
■行事名:北海道・豆トークショー2010
~豆料理が導く健康家族~
■主催者:ホクレン農業協同組合連合会及
び(社)北海道豆類価格安定基金協会
■開催日:平成22年10月23日(土)
■開催場所:ホテルニューオータニ札幌
講演「簡単豆クッキング」で紹介された豆料理
(北海道札幌市)
- 81 -
■内容:第一部「豆トークショー」では、
「豆料理が導く健康家族」と題し、料理研
(2)関西地域
■行事名:あんこと和菓子のいい話
究家の東海林明子氏と HBC ラジオキャス
■主催者:神戸ビルマ会(神戸雑豆輸入組
ター山根あゆみ氏の対話により、豆の利用
合)
法、豆の戻し方や下ゆでした豆の保存方法、
■開催日:平成22年10月29日(金)
豆の調理方法等に関する説明が行われまし
■開催場所:神戸凮月堂ホール(兵庫県神
た。
戸市)
■内容:平成22年3月に刊行され、「豆類
時報」第60号の「本棚」でもご紹介した
「あんこの本」の著者であるライター・編
かん さん み
集者の姜 尚 美 氏が、「あんこが苦手だった
私が、『あんこの本』を書いた理由」と題
して講演し、ある時、あんこを食べて深い
味わいに感動し、それ以来、この感激を突
き詰め、多くの人と分かち合うためこの本
北海道・豆トークショー2010「豆トークショー」
を書いたとし、和菓子職人のたゆまぬ努力
や豆の魅力について力を込めて語られた上、
また、第二部「豆料理試食会」では、ホ
今後このような店や商品がさらに増えれば、
テルニューオータニ札幌の舘野一博洋食料
もっと豆が食べられるようになるのではな
理長から8種類の豆料理について説明があ
いかと話されました。
り、その後、参加者全員による試食が行わ
引き続き、全国和菓子協会専務理事の藪
れ、大盛況裡に終了しました。
光生氏が「和菓子産業の現況と問題点、そ
して未来」と題して講演し、全国和菓子協
北海道・豆トークショー2010「豆料理試食会」
あんこと和菓子のいい話 姜尚美氏講演
- 82 -
会で実施している各種調査や国の統計等を
第二部では、このシンポジウムの一環と
使いながら豆消費の現状や豆をめぐる業界
して作品の募集と審査が行われた豆料理コ
の状況等を紹介された上、関係者の今後と
ンテストの受賞6作品の紹介と表彰が行わ
るべき方向等についての提案がなされまし
れた後、審査委員長を務めた土山氏から総
た。
評があり、特に一般の部で最優秀賞を受賞
された有馬和美さんの「豆入りミートロー
フ」は、そのまま商品になるほど完成され
(3)九州地域
■行事名:第4回九州豆シンポジウム
た料理であると評価されました。
「こんなにやさしい豆料理」~プロの料理
人による豆料理の紹介~
■主催者:西部穀物商協同組合
■開催日:平成22年9月11日(土)
■開催場所:ホテル熊本テルサ・テルサ
ホール(熊本県熊本市)
■内容:第一部では、ホテル熊本テルサ総
支配人土山憲幸氏が「こんなにやさしい豆
料理」と題して講演を行い、豆は調理に手
間がかかると言われるが実際は簡単である
こと、豆は様々な料理に利用でき、色々な
形で永く食べ続けると健康になるので、1
日に1回は豆を食べるべきであること、自
分で工夫しながら色々な料理に使うことが
肝要であることなどが紹介されました。
九州豆シンポジウム「豆料理コンテスト」表彰式
- 83 -
一般の部の最優秀賞「豆入りミートローフ」
豆を活かす料理教室を各地で開催
川 北 壽 彦 全国豆類振興会では、豆類の需要拡大を
理を指導してもらうこととし、それにより
図るため、従来から「豆料理コンテスト」
豆料理を作ろうとする人の輪を広げていこ
や「ビーンズセミナー」などを開催し、広
うとしたものです。
く一般消費者に豆が優れた食品であること
そのため、民間の料理教室とタイアップ
を訴え、その普及啓発に努めてきました。
して、「豆を活かす料理教室」を平成22年
しかし、豆類は調理に手間がかかるなど一
1月~2月に、全国主要都市の41教室で開
般家庭での消費は伸び悩んでおり、どうす
催しました。この料理教室には全体で852
れば豆をもっと多くの家庭で食べてもらえ
名の生徒が参加し、受講者からは「豆は栄
るか試行錯誤した結果、これまでとは違っ
養豊富で 、 健康性に優れていることがよく
たアプローチで消費拡大の事業に取り組も
理解できた」、「豆に対する認識を正すこと
うと、平成21年度に新たに豆料理教室開催
ができた」などの感想が寄せられ、大変好
事業を始めました。この企画のねらいにつ
評でした。これを受けて第2回目の豆料理
いては、既に平成22年3月発行の豆類時報
教室は、開催場所を拡大して、本年7月か
(No.58)において藪光生氏(全国豆類振
ら8月にかけて開催しております。
興会広報委員長)が詳細に述べております
この豆料理教室の特長は、先に述べたと
が、効率的・効果的に豆類の普及を促して
おり、第1段階として各地の料理教室から
行くために、料理に興味を持っている人達
一人ずつ先生方が参加する事前勉強会を
を対象として、家庭料理の中に豆を使う人
東京と大阪で開催して、「豆の栄養・健康
を増やしていくことが大切と考え、豆料理
性」及び「新しい豆料理」について講習を
教室の開催を計画したものです。その実施
受けてもらい、その先生が、次の段階とし
にあたっては一工夫を加え、まず料理教室
て、自分の料理教室に戻り生徒に指導する
の先生達に、豆の健康性について認識を高
ことにあります。このため、先生が豆に関
めてもらい、手軽に美味しくできる豆料理
して充分な知識をもって講義できるととも
を知ってもらった上で、その生徒達に豆料
に、従来にないレシピによるおいしい豆料
かわきた としひこ 全国豆類振興会事務局長
理を教えることができ、より充実した講座
になっております。
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本年度の事前勉強会は、東日本地区の講
います。
習を7月7日にホームメイド協会の有楽町
今回実習した豆料理は、次の4品の洋風
校で、西日本地区は7月12日に大阪梅田校
メニューです。
で開催し、61教室61名の講師が受講してお
①豆入りミートソースとなすのオーブン焼
ります。まず、藪光生氏が「豆の健康性・
き(金時豆)
機能性について」について 、 次いで牧野直
②ミックスビーンズとシーフードのサラダ
子氏(料理研究家)が「豆を使った料理に
③白いんげん豆のビシソワーズ
ついて」、 それぞれ1時間の講義及び料理
④白いんげん豆のジェラート)
のデモンストレーションを行っています。
生徒達からは、簡単にできて豆を使っ
その後、この会に参加した61名の講師が、
ているとは思えないおいしい料理であり、
8月1日から31日にかけて各地の教室にお
豆料理といえば、煮豆など和風の甘いメ
いて、1,100名を超える生徒に対し、新た
ニューのイメージであったが、豆の新しい
に習得した豆料理を実演しながら指導して
魅力を発見したなどの発言があり、好評で
した。
講座修了後のアンケートでは、「栄養が
豊富である」が68%、「健康的でよい」が
63%、「豆の栄養・機能性の良さを理解し、
またいろんな料理に使える」が53%、「意
外と調理が簡単」が30%、「保存ができて
便利」が26%など、この講座を受講して豆
料理に対し良いイメージを持った回答が多
く寄せられました(複数回答)。
藪光生氏による豆の健康性・機能性の講義
このアンケートによる感想の主なものを
さらに列記しますと、
・豆でこんなにバライティ豊かな料理が作
れることに驚きました。より積極的に摂
取して健康的な生活をおくりたいです。
・豆を利用して肉の量を減らすことができ、
体に良いので、家庭でも作っていきたい。
・普段よく使う大豆や小豆ではない料理で、
レパートリーが増えました。
・「まとめて茹でて保存」を教わり 、 思い
切って豆1袋を買ってみます。
牧野直子氏による料理講習
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・なかなか手が出ませんでしたが 、 意外と
い世代に少ないといわれる豆の消費を伸ば
作りやすく、すぐにでも作ってみます。
し、将来的な豆類の普及・消費につながっ
・冊子もわかりやすく 、 これから豆料理を
ていくことが期待されます。
いろいろ作りたいと思います。
・小豆の栄養価などにびっくりしました。
・豆が体に良いことは知っていましたが、
何がどのように効果をもたらすのか 、 知
りたかったことを勉強できて良かったで
す。
この教室に通う生徒は 、 若い女性や主婦
の方がほとんどであり 、 豆料理のレパート
リーを増やし、家庭においても子供達に豆
料理を食べさせる機会を増やしていくので
はないかと考えられ、そのことによって若
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名古屋校における教室風景
落花生作況調査・需給懇談会余聞
板 野 徹 今年も落花生の収穫を目前に控えた9月
の調査地である山武市五木田圃場に一行を
16日、輸入商社、加工業、主産県の生産・
乗せたバスが到着したときは土砂降り状態
行政・研究各分野の方約60名の参加の下、
でしたが、バスの中で地元普及センターや
主産地千葉県下で本年産落花生の作況調査
農家の方から説明を伺っているうちに雨も
と需給懇談会を開催しました。例年、初日
小止みとなり、圃場の調査も何とか実施で
に千葉と茨城両県の産地圃場で作況調査を
きました。この一帯は九十九里沿岸の砂地
行い、2日目に需給懇談会を開催していま
地帯です。調査圃場は5月末播種の千葉半
したが、今年は千葉県下での単日の日程と
立種ですが、今年は7月10日以降9月8日
なりました。この時期、早場米地帯である
の台風が来るまでの2ヵ月間は雨らしい雨
千葉県では落花生と米の両方を扱う方が多
がありません。日照には恵まれましたので、
いことを考慮して日程を単日とし、また行
灌水した圃場ではその効果が高く、実の着
事を簡素化することによって従来参加者に
き具合は良好だとのことですが、灌水をし
求めていた経費の一部負担をやめ、地元関
なかった圃場では極端に不作のようです。
係者の多数参加を期待したものです。遠路、
九州、中国や関西方面の加工業の方の参加
もいただき、例年になく大勢の参加者数と
なりましたが、地元千葉県下の加工業、生
産者の方の参加が少なかったのは、企画し
た側から見るとやや思惑はずれでした。開
催日程や持ち方などが周知されていないの
ではないかとも考えられ、来年以降の課題
収穫期の落花生
であると認識しました。
当日は朝から生憎の雨模様となり、最初
九十九里方面での作況調査は初めてのこ
いたの とおる
(財)全国落花生協会専務理事
とで、それなりに新しい知見も得られまし
た。八街周辺では掘り取り、島立て乾燥の
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後、ボッチに積み上げて1ヵ月程度の自然
引き続いて、旭市内の伊勢鎌数大神宮の
乾燥をしますが、この地域では1週間程度
落花生記念碑を尋ねました。人の背丈の倍
の島立て乾燥の後は半生の状態で脱莢し、
ぐらいの高さの石の記念碑は、萬右衛門と
専用ハウスの中で自然乾燥するそうです。
同じくこの地で落花生の栽培を広めた金谷
ハウスは通風をよくするため雨よけタイプ
総蔵を顕彰したものです。総蔵は明治11年
で、腰が開いているのでカラスの食害にあ
に千葉県令から落花生の種子を手に入れ、
うそうですが、防鳥ネットを敷設するとコ
地上に花が咲き地下に実が着いて縁起が悪
ストもかかります。ハウスの面積には限り
いと敬遠する農民に、自ら栽培し、他の作
があり、そのうえマットに広げた莢は水分
物に比べて有利であることを実証して見せ
が多いので、乾燥が進むまでは時々反転攪
ました。これによって栽培が広まり、地域
拌しなければなりません。余談ですが、子
の農民の生活がめざましく向上したことか
供の頃に道路の両脇に並べた筵に広げて乾
ら、明治17年に落花生耕作組合がその功績
燥している籾を、時々反転攪拌していたの
を顕彰したものです。「干潟郷落花生記」
を思い出します。昭和20年代、私が育った
とある題額は、勝海舟、高橋泥舟と並び幕
片田舎では自動車はめったに走ることもな
末の三舟と言われた山岡鉄舟(鉄太郎)に
く、道路で籾の乾燥をすることもできたも
よるもので、当時の超大物が関与している
のです。
ことからも、その功績の評価のされ方が伺
われます。
ところで、この五木田集落、現在は平成
の大合併で山武市となっていますが、旧成
東町、その昔は南郷村と言われた所です。
南郷村は千葉県で最初に落花生を栽培した
牧野萬右衛門が生まれ育った地です。萬右
衛門は明治9年、横浜の清国商人から落花
生の話を聴き、郷土の風土に適した作物で
あるとの認識を持ち、神奈川県下を尋ね歩
き、中里村(現逗子市)で落花生の種を入
手し、自分で栽培して見せた。当初、地域
の農民は作ろうとしなかったようですが、
その利点が理解されるに従い栽培が増えた
そうです。このことからは、落花生の栽培
は千葉よりも神奈川が先であったと思料さ
金谷総裁を顕彰した記念碑
れます。
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ついでながら、この一帯は「干潟」、
「椿」、
ら、この碑文からは日本に落花生が伝わっ
「椿海」等と言う地名が付いていますが、
たのは1703年頃と理解され、不確かであっ
江戸時代は匝瑳、海上、香取3郡にまたが
た点が明らかになった気がします。何事も
る「椿の海」と呼ばれた潟がありました。
調べてみることですね。この「農業雑誌」
伊勢鎌数大神宮は寬文年間の干拓によっ
がどの書物を指すのかは寡聞にして知りま
て造成された干潟八万石の総鎮守として、
せん。ご存知の方はお教え下さい。
320数年前に伊勢神宮から勧請されたと
言われます。地図を見た上での私の勝手な
なお、金谷総蔵が千葉県令から頂戴した
推測ですが、この地域から九十九里に流れ
落花生の種子は、明治政府が欧米から取り
出る新川は、椿の海を干拓するために開鑿
寄せて全国に植栽を奨励していた各種の農
した排水河川ではないでしょうか。個人的
産種苗の内の一つで、アメリカ産とされて
な趣味としていつか踏査研究してみたいと
います。当初千葉県では、落花生から油を
思います。
絞り、房総沖で豊富に獲れる鰯を使って欧
米人が好む油漬けを製造し、欧米に輸出す
さてこの碑文中から2つのことが伺えま
る構想で栽培の奨励をしていました。しか
す。1つは、「落花生はアフリカ地方に産
し油漬けの技術が伴わず、やむを得ず東京
する」旨の記述です。アフリカが原産地と
に持って行ったところ良い値で売れたこと
は記述されていませんが、当時はそのよう
から食用として栽培となったと『千葉県
に理解していたのではないかとも考えられ
らっかせい百年誌』に記されています。落
ます。であるとすれば、現在の学説では落
花生には先人の遺徳と併せて今日までには
花生の原産地はブラジル、ボリビア、アル
その時代、時代の様々な巡り合わせがあり、
ゼンチンの国境が接する(厳密には3国の
歴史を紐解くのも面白いものです。
国境が接する地点は無く、3国に国境が接
するのはパラグアイです。)辺りとされて
午後には雨もあがり、毎年調査している
いますから、当時の知見は現在とは異なっ
富里市内の圃場を視察しました。この圃場
ていたと言えます。2つには、「農業雑誌
は6月上旬播種のナカテユタカ種で、生分
に元禄末年に中国から伝わった」旨の記述
解性マルチを使った栽培をしています。マ
です。これまで私自身がいくつかの書物か
ルチが未分解でかなり残っていると見受け
ら得た知識では、日本には既に江戸時代に
ましたが、次の作物の作付けまでには分解
南京豆と呼ばれていたように中国から伝
しているそうで、問題はないとのことです。
わったとの説がありますが、栽培までされ
管理している A さんのお話では、白絹病
たのか、またいつ頃のことかは不明、とし
に対する有効な農薬が開発されていないの
てきました。元禄期は1688~1703年ですか
が悩みの種とのことです。この圃場も灌水
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施設が整備されており、7月と8月に各1
問題であるのか、60人もの出席者の会合で
回灌水したので収量は期待しているとのこ
慎み深い日本人に活発な議論を期待するの
とです。
はとうてい無理な事柄と観念すべきなのか、
静かな懇談会に終始しました。これと併せ
て冒頭にも記しましたが、地元関係者の参
加者が一人でも多くなる懇談会とすること
が来年の課題であると銘じたところです。
また、今年の異常とも言える猛暑・干天
の下では、潅水をはじめとした管理や圃場
の立地等によって、畑毎の落花生の作柄や
品質の差が大きいと見込まれます。従って
収穫直前の落花生畑
今後とも作柄・品質についてのフォローと
現地圃場での作況調査に引き続き、富里
ともに、消費者に納得のいく製品を提供す
市内のホテルで需給懇談会を開催しました。
るためには、収穫・調製、加工段階での選
需給見通しを協議する必要性は薄らいでお
別が重要となり、そのためのプロの目がこ
り、各分野で持っている情報の交換に軸足
れまで以上に求められる年となりそうです。
を置いた懇談会と言えます。会の持ち方の
表 落花生総供給量の推移
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(単位:むきみ換算百トン) ᐕ
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- 90 -
後 沢 昭 範
もの。安全は、科学に基づき、一定のレベ
『食のリスク学』 中西準子著
日本評論社、平成22年1月発行、250ペー
ルを技術とルールで確保するものでしょう。
ジ、2,000円
一方、安心は、安全と思えば安心するので
しょうが、心情的なもので、個々人の信頼
感・価値観・理解度が深く関係します。一
緒に連呼すると響きは良いのですが、時と
おちい
して底なし沼に陥ります。幾ら対策をして
もまだ不安、コストは度外視、合理的理由
でも対策レベルは下げられず…といった事
態まで起こります。
この症状は、特に食の分野で極端なよう
です。行政サイドも、ようやく今年の農業
白書などに見るように“食の安全・消費者
近年、あらゆる場面で、また、あらゆる
とな
の信頼の確保”のような言い方で、両者の
立場から“安全・安心”が声高に唱えられ
距離をとる場面も見えて来ましたが、一旦、
ます。如何に国民目線で進めているか…、
慣用句化した“安全・安心”は容易に離れ
き づか
どれ程お客様に気遣っているのか…、こん
ません。
なに私達は心配しているのに…。大切なの
ところで、そもそも“安全”とは何なの
は確かですが、いささかキャッチフレーズ
でしょうか?何に対する安全か?何を避け
化し、氾濫気味と言った方がいいかも知れ
るのか?何処まで求めるのか?絶対的なの
ません。
か?客観的な判断基準は?…普段、当然の
多くは、それを善とする観念的なイメー
4
ような気分で口にしていますが、その概
4
ジ、もしくは思いとして使われており、ど
念・領域・位置付けは、実は意外に漠とし
うも正確な意味や影響等をよくよく考えて
ており、何を以て安全と言い切るかは、時
言っているとは思えません。
代により、国により異なります。また“安
そもそも“安全”と“安心”は別次元の
全は何よりも大事!”と言いながら、日常
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やすやす
的に易々と便利さや利益を優先したり、一
をチェック出来ることが重要”と著者は言
部の安全を選択して他の安全を犠牲にして
います。やや専門的になりますが、リスク
います。安全は相対的なものでもあるので
の考え方と算定方式も示され、色々な事例
す。
を読みとって行きます。そこで示される
しかし、個人レベルではいざ知らず、政
客観的な数値に、“そういうことだったの
策的には、それでは困ります。客観的な判
か!”と目を見張ります。
断基準が不可欠です。そこで登場するのが
また、リスクの削減対策を講じる際に
“リスク”の考え方。安全を、逆にリスク
注意すべきは「リスクトレードオフ」で
から捉えてみると、より客観的・定量的に
す。あるリスクを削減すると別のリスクが
把握・評価し、管理することが可能になり
発生したり、増える場合があります。例え
ます。
ば、かって米国で、穀類の殺菌剤・二臭化
本書は副題を〔氾濫する「安全・安心」
エチレンが発癌性を理由に禁止された年の
をよみとく視点〕とし、4章から成ります。
夏、猛暑でカビが一斉に発生して落花生等
著者は東大等の教授を経て、現在、(独)
のアフラトキシンが大きな問題になり、一
産業技術総合研究所の安全科学研究部門長。
体どちらの発癌リスクが大きいのか大論争
環境工学・環境リスク評価の専門家で、公
になりました。また、ペルーで、水道水の
害問題に深く関わって来られ、今日の環境
塩素処理で発生するトリハロメタンの発癌
リスク学を築いたことで知られます。「都
リスクをゼロにしようとして塩素消毒を中
市の再生と下水道」、「環境リスク学」等の
止したところ、コレラが蔓延して罹患80万
著書が多数あります。今年度の文化功労者
人、死亡7千人の大惨事になりました。馬
に選ばれたことで、ご存じの方もおられる
鹿げた話しに聞こえますが、日本でも、自
と思います。
治体によっては必要以上にトリハロメタン
内容の一部を、ほんの要点ですが、ご紹
を恐れ、リスクトレードオフの考慮を欠い
介しましょう。
たまま、学校給食用の野菜の次亜塩素酸ナ
〔第1章 . 食の安全…その費用と便益〕は、
トリウム消毒を止めてしまい、それが腸管
大学のシンポジウムの講演からです。
出血性大腸菌 O-157のカイワレ事件に関係
食の安全は、反対概念の“リスク”で定
していると言われます。発癌リスクを避け
義し直すと「定量的な把握と評価」が可能
ようとして、感染症リスクを大きくしてし
になります。社会政策として安全対策を講
まった例です。
じる場合、“自分達は何を下げようとして
要は、関連するリスクが全体として最小
いるのか、何を避けようとしているのかを
になるような管理が大切なのです。“特定
はっきりさせる。そして一定の対策をとっ
のリスクだけに囚われて、それをゼロにし
た時に、そのリスクがどの程度減ったのか
ようとするのは必ずしも正しい解ではな
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い”と著者は警告します。言われてみれば、
回収し、誠意ある会社と思われながら、早
程度の差はあれ、これに類するものが随分
く忘れてもらいたい…”と、当面の無難な
あります。そうなる背景には、何かある度、
対応に追われます。買い手市場の中、イ
一点集中的に危険を訴え、責任を追求する
メージを損なう訳にはいかないという売る
メディアの断片的・感情的な報道や主張、
側の弱さなのでしょう。本当は、定量的な
それを聞いた市民の大合唱という現象、さ
リスク評価に基づく必要範囲の対応で十分
らに、そのような記事でないと読者が読ん
なはずなのですが…。“全量回収するのが
でくれないという事情もあるようですが…。
良い企業ということではない”という著者
「リスクと費用の関係」でも同じような
の指摘は耳に残ります。
ことが言えます。例えば BSE の全頭検査
〔2. 食べもの情報 vs. リスク…対談〕は、
です。発生直後で情報が少ない時は、まず
食べ物や栄養が健康や病気に与える影響を
はリスクを大きめに見積もった対策が必要
過大に評価したり信じる「フードファディ
ですが、その後、情報が増えてリスクが少
ズム food faddism」という概念を、初め
ないことが判明すれば、当然、見直すこと
て日本に紹介した群馬大教授の高橋久仁子
4
4
になります。しかし、“ともかく全部 検査
氏との対談です。
するから安心!”が擦り込まれていたため、
ここでは、食べ物に関して、体に良いに
食品安全委員会のリスク評価で“全頭検査
つけ、悪いにつけ、科学的に見ておかしな
でも、21ヶ月齢以上の検査でも、食肉汚染
情報やコマーシャルが氾濫している現状に
のリスクは、無視できる~非常に低い”と
ついて、事例を紹介しながら、問題点・背
の結果が出ても、“全頭でないと不安!納
景・あるべき姿を説いて行きます。
得出来ない!”の声止まず、産地側は全頭
例えば砂糖…。砂糖は良いも悪いもない、
検査を続けざるを得ないといった事態に
昔からの立派な食品ですが、“砂糖はこん
なっています。もっと大きなリスク管理に
なに悪い”と熱心な有害論者が極論を展開
振り向けるべき費用と手間が浪費されてい
すれば、対抗上、“砂糖は記憶力を高める”
るとも言えましょう。
などと砂糖を商う側もキャンペーンを張る
近年、国内を騒がせた「食品の安全問題
などの応酬がありました。また、“砂糖無
や食品によるリスクの問題」は、「何かが
使用”を売りにする少々高値な加工食品の
心配される」という程度のもので、殆どが
代替甘味料はどうなっているのか…、
“シュ
実体的なリスクはないものでした。そう言
ガーレス”の表現で食品のカロリーゼロを
えば、検出!違反!回収!…と、あれだけ
錯覚させるキャッチコピーの際どさ…等々、
大きな報道の割には、それが原因で何かが
話題は尽きません。また、妙なアミノ酸信
4
4
4
起きたという報道はとんと耳にしません。
仰、リノール酸に続くオレイン酸神話、意
企業側も“ともかくお詫びして迅速に全量
味のよく分からないバランス栄養食品…。
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消費者の飽くなき健康願望が火元なので
うということですが、ゼロを求める市民活
しょうが、消費者も、マスコミも、企業も、
動側からは、企業の利益のためか!と非難
ふわふわと、この種の話しに乗ります。よ
されます。リスクが非常に低いにも拘わら
く目に止まる健康食品なるものも、それに
ず片っ端から化学物質の使用を禁止すれば、
よる治療効果を過信して医療を軽視しかね
当然、生活面や産業面への影響が出てきま
ない問題や、効く効かない以前に害がない
す。“リスク評価は、企業側からも市民活
かを確認した方が良さそうなものもありま
動側からも批判されながら続ける覚悟が必
す。
要”と著者の言です。
“食品の効果の空騒ぎみたいなもの”と
また“自然は安全!植物からとったから
の著者の言葉が、言い得て妙です。食の安
体に良い!”等々のメッセージの間違い、
全問題が、従来の受動的危険から能動的危
さらに、あるかないか分からないような小
険とでも言うべき領域に移ってきたことを
さなリスクに対して大騒ぎするのに、実態
意識する必要があります。
のあるリスクについて、“風評被害を防ぐ
〔3. 食をめぐる論争点…わたしはこう考
ために”の言い訳の下に、行政もマスコミ
える〕は、サイエンスライターの松永和紀
も市民団体まで口を噤んでしまうケースな
氏との対談で、食の安全問題の論争点を取
ど、色々見えてきます。これらの問題も、
り上げます。
リスクを数値で表すことによって可視化さ
中国のギョウザ事件、バイオ燃料、有機
れます。
農業、さらには食品安全委員会と、話題は
ブ ロ グ の URL は http://homepage3.
広がります。何処の国にもある“国産なら
nifty.com/junko-nakanishi/ で す。 環 境
安全・安心”のアピールに絡み勝ちな国産
の問題、食の問題について、毎週発信され
奨励の思惑、また、コンセンサスを得るた
ており、ご覧になると参考になります。
めに市民が参加する意義の一方で、専門家
著者は、“本書を通して、読者に「リス
の役割との混同への懸念など、考えさせら
クの概念」を身に付けて欲しい”と言いま
れる問題が提起されます。
す。リスクの数値算定は専門家に任せると
〔4. さまざまな食の問題〕は、著者のブ
して、ともかくリスクを使う見方に慣れる
ログ「雑感」の中から、食の安全に関する
ことでしょう。“リスク評価をすることに
記事の一部を抜粋したものです。
よって見えてくる食の問題に目を開いても
安全性評価は産業にとって不可欠です
らえれば幸い”と言います。
が、短期的には企業生命を失わせかねない
読み進むにつれ、“目から鱗”の連続で
こともあります。“安全のお墨付き”が本
す。各章それぞれ、講演・対談・インタ
音の企業からは警戒されます。“リスク評
ビュー・ブログを中心としており、読み易
価に基づく管理”とは、許容レベル内で使
く、分かり易い本です。
つぐ
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雑に絡みますが、総務省の「家計調査」等
「2025年における我が国の食料支出額の試
の過去のデータを基に、品目別の支出額に
算」
ついて要因別影響を明らかにして試算して
農林水産省 農林水産政策研究所、平成22
います。
年9月27日公表
「試算結果のポイント」は、以下のよう
です。
ことほ
世界に冠たる長寿をひたすら寿ぎ、片や、
①この20年間で、日本の人口は6.7%減少
結婚で縛られないフリー&リッチなシング
するが、食料支出額は73.6兆円→72.2兆
はや
ルライフを持て囃す…、そんな時代は過ぎ、
円となり、家計の食料支出から見た市場
今や「少子・高齢化」を社会の重い問題と
規模はほぼ現状を維持する。
して意識せざるを得なくなりつつあります。
②これは、家計の支出構成が、生鮮食品
しかし、ここまで来てしまうと舵は切ろう
(穀類、魚介類、肉類、乳卵類、野菜、
にも容易には切れません。更なる少子・高
海草、果物)から加工度の高い調理食品
齢化の進行が予想される中で、農林水産省
など(調理食品、菓子類、飲料、油脂調
の農林水産政策研究所から興味深いレポー
味料)にシフトすることによる。生鮮
トが公表されました。
食品の支出割合は26.8%→21.3%に減少。
まず、背景として、国立社会保障・人
一方、調理食品のそれは12.0%→16.6%、
口問題研究所の「日本の将来推計人口」
菓子類は6.7%→7.4%、…と増加する。
(2005年→2025年)によれば、「65歳以上」
③全世帯の中で支出割合が高まる“高齢者
が20.2%→30.5%と3割を占め、また世帯
世帯・単身世帯”の消費動向が、全体消
構成で見ると、伴侶に先立たれた独居老人
費に及 ぼす影響度合いが高まる。高齢
や未婚中年を含む「単身世帯」が29.5%→
化に伴う世代交代と単身世帯の増加が、
36.0%と1/3を占めるようになります。
調理食品へのシフトをもたらす。
このような状況の中で、日本の食料消費
さらに、「将来試算を踏まえた食品産
がどのように変化して行くのか、これを品
業・農業の課題」として、“食料消費ニー
目ごとの支出額の変化という形で定量的に
ズの変化への対応や新たな需要の掘り起こ
分析したものです。
し”、“1,700万人に及ぶと言われる朝食欠
食料消費には、コーホート効果〔出生年
食の改善”、それから“介護食を含め、高
がほぼ同じグループ(コーホート)の嗜好
齢者が飲食し易く健康に配慮した新商品や
が反映される〕、加齢効果〔個々の消費者
メニューの開発”、“高齢単身世帯への食料
の加齢に伴って変化する〕、時代効果〔年
の円滑供給”等々が提言されています。
齢や世代に関係なく社会全体が時代ととも
本レポートは、分かり易いグラフを加え
に同じ方向に変わって行く〕等の影響が複
た簡潔な解説文と提言から成ります。豆を
- 95 -
使った食品の開発や販売戦略を練るに当た
り、念頭に置かざるを得ない情報です。
を感じている。
③その不安の理由として、複数回答です
概要は、農林水産省ホームページの9月
が、トップが「異常気象や災害による海
の報道発表資料、または農林水産政策研究
外の不作の可能性…59%」、次いで「長
所ホームページからダウンロード出来ます。
期的に見て、地球環境問題の深刻化や砂
是非ご覧下さい。
漠化の進行などによる食料の増産の限界
…50%」、「国際情勢の変化による輸入量
の減少や停止…48%」、「世界の人口の急
「食料の供給に関する特別世論調査」
内閣府 政府広報室、平成22年10月14日公
激な増加による食料需要の大幅増加…
表
39%」、「途上国の経済成長に伴う畜産物
需要の増加が大量の穀物需要を起こす…
内閣府では“基本的な国民意識の動向
37%」など。
や政府の重要施策に関する国民の意識を
④食料の生産・供給のあり方に対する意識
把握するため”、ほぼ毎月、各種テーマの
では、9割の人が「出来る限り国内で生
「世論調査」を実施しています。調査方法
産すべき」との認識。
は、一種の抽選で選んだ全国20歳以上の男
⑤今後の我が国の食料自給率に対する認識
女3000人(テーマによっては5千人、1万
では、9割の人が「高めるべき」との認
人)を対象に、調査員による個別面接で行
識。
います。結果は、その都度、公表されてい
⑥食料自給率向上のための施策に対する意
ます。
識では、「国内生産の拡大に向けた取組
今年9月に、「食料の供給に関する特別
を図る」が5割、「むしろ消費面からの
世論調査」として、具体的には“食料自給
取組を図る」が4割です。
率に関する国民の意識”について世論調査
⑦食料自給率向上のための行動については、
が行われ、結果が10月に公表されました。
「ご飯を中心とした日本型食生活を心掛
内容は、食料自給率に関する7問への回
ける…76%」がダントツ。「買い物や外
答です。同様の調査が平成12、18、20年に
食時に国産食材を積極的に選ぶ…47%」、
も行われており、この間の意識の変化も表
「米を原料とするパンや麺などの米粉製
とグラフで分かります。要点を見てみま
品を積極的に選ぶ…32%」との回答も増
しょう。
加。
①現在の食料自給率は、75%の人が低いと
感じている。
先進諸国の中でも際だって低い我が国の
食料自給率(カロリーベース40%)。これ
②将来の食料輸入に対し、9割の人が不安
を如何にして引き上げるかが農政上の大き
- 96 -
な課題となっていますが、こと食料自給率
よ!となれば、自給率が下がるのは当然で
は、供給側の問題もさることながら、食べ
しょう。加えて、この間に、当時1億人弱
る側の問題が大きく響きます。
だった日本の人口が3300万人も増えたこと
何年か前、話題になった、懐かしさ漂
も見逃せません。オーストラリア1国の人
う映画「ALWAYS 三丁目の夕日」の舞
口が2000万人程であることを考えれば大変
台、昭和30年代半ば…。当時の食料自給率
なことです。よく日本と比較されるイギリ
はおおよそ8割でした。それが半減してし
スの自給率が高い理由の一つに、イギリス
まった理由は、供給側から見れば、その後
料理の評判はイマイチですが、当のイギリ
の高度経済成長以降の農地の転用と耕作放
ス人が頑固に伝統的な食事の内容を変えな
棄地の増加、担い手の減少と高齢化、背景
かったことが大きいとも言われます。
には農業の収益性の問題、さらに遡れば平
その意味で、今回の特別世論調査の問⑥
地が少ない、そもそも国土が狭い等々々と
と⑦の回答には、興味深いものがあります。
なりますが、食べ方の変化から見れば、そ
また、時を追っての国民意識の変化やブレ
れまでカロリー源の半分を賄っていた米消
も、その時々の世相と考え併せてみると、
費が半減し、一方で油糧作物から絞る植物
通奏低音のように食料確保への不安がある
油や大量の飼料穀物で育てる畜産物の消費
のは確かですが、“人の意識の移ろい易さ”
が格段に増え、小麦の消費も増えています。
も透けて見えます。
元々、小さな棚田や谷地田までフルに使っ
詳しくは、内閣府のホームページに掲載
て米を作り、それを主食にして、ようやく
されていますが、特に、今回の「特別世論
一定の自給率を確保していた国です。国民
調査」については、農林水産省のホーム
の生活が豊かになるにつれ、日本で作りに
ページにも要約・解説版が掲載されており、
くいものでも食べたい!それにお応えせ
この方が判り易いかもしれません。
- 97 -
統計・資料
雑豆の輸出入通関実績 2010年 (7~9月期・豆年度計)
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(資料:財務省関税局『日本貿易統計』より)
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統計・資料
豆類(乾燥子実)の年次別作付面積及び収穫量(全国)
資料:農林水産省大臣官房統計部「農林水産統計」
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編 集 後 記
「話題」で佐藤久泰さんが紹介されている取組は、どれも素晴らしいものばかりです。中で
も、食文化を様々な形で伝え、拡げるとともに、女性の自立を目的に設立された「マンマの
ネットワーク」は夢をお持ちです。参加農園は、まだ多いとは言えませんが、大きなうねりに
なっていくことは確実でしょう。生産は大切であることは言うまでもありませんが、販売は、
経営にとって重大な意味を持つだけでないようです。佐藤さんの原稿を読んで、家族やグルー
プにビジョンというか、夢があることが大切だなと思いました。その夢を人に語り、共感を得
ていくことが、また重要です。夢がないと、日々の行いは単なる作業、労働になってしましま
す。そこには疲れだけしか残りません。マンマのネットワークや他のグループ・農場は夢を持
ち、活動されています。
中国の何寧さんから黒龍江省の雑豆について紹介して頂きました。昨年開催された「十勝小
豆研究会」でお会いし、是非にと執筆をお願いしました。黒龍江省における雑豆の生産と輸出
に関する現状と課題、更に雑豆の育種を中心に研究の成果などを紹介して頂いています。何さ
んは日本だけでなく、米国、ヨーロッパ諸国を相手に雑豆研究に関する連絡調整、交渉に当
たっておられるようで、多忙な中で執筆して頂きました。黒龍江省には、雑豆の分野において
も才能ある方がおられると思いました。ますますのご活躍を祈っています。
京都府の杉本さんに小豆の機械化栽培の確立に向けての取組を紹介して頂きました。価格の
高い丹波大納言小豆であっても機械化・省力化は必要であることは言うまでもありません。問
題はそれをどう進めるかです。播種前の管理技術としてのオートトレンチャによる作溝、播種
部分のみを耕起する播種方法、部分耕狭条密植栽培、大豆の省耕起栽培技術の小豆への応用な
ど、一つひとつの技術を開発し、機械化・省力化に取り組まれています。小豆の機械化・省力
化を図るために、技術体系全体の中から確立すべき技術内容を明らかにし、それを解決してい
くという方針を取られています。このように報告されれば、当たり前のようですが、杉本さん
らが進められている技術開発の方法は、これまで他のところで行われてきた方法とは違うよう
に思います。技術開発の成功とその普及を願っています。
バンコクの前田さんから「在住者からみたバンコク食・豆事情 その後編」を書いて頂きま
した。前回(No.58)の続きです。シンガポールの豆乳チェーン店が東京・渋谷に出店したと
いうのは、驚きです。日本出店の理由は、前田さんのインタビューによると、「今日本に進出
することが今後のビジネス展開に大きく役立つと思ったからです。例えば同じ野菜でも、中国
産と日本産が並んでいれば、高価でも日本産を買う消費者がシンガポールには多いのです。な
ぜなら安全・安心であり、健康にいいからです。日本の品質の高さは群を抜いています。」と
チェーン店の社長が語ったとのことです。日本への出店で、力を磨き、チェーン店の名を高め
るという、少し無謀とも思える目的を持っての出店です。この社長に脱帽するとともに、日本
の品質の高さに対する信頼、これは疑いようがありません。この「日本」というブランド力を
活かさない手はないです。
(谷口敏彦)
発 行
編 集
財団法人
日本豆類基金協会
〒107-0052
東京都港区赤坂 1-9-13
三会堂ビル 4F
豆 類 時 報
№ 61
TEL:03-5570-0071 2010 年 12 月 20 日発行
FAX:03-5570-0074
財団法人
日本特産農産物協会 〒107-0052
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