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YMCAブランドの 再生
YMCAブランドの 再生 日本YMCA同盟中期計画 2014 年度-2016 年度 Ⅰ. 前 文 01 1. “オールジャパンYMCA”の革新を 日本 YMCA 同盟はこれまで繰り返し中期計画を策定し、YMCA 運動・事 業の指針として遂行してきました。そこに蓄積された YMCA の先達たちの叡智と 努力は、それぞれの時代の YMCA 運動・事業を牽引し、成果を生み出してき ました。その精神は今後も引き継がれなければなりません。 いま果たすべき 社会的使命とは この豊かで強固な基盤に立ちつつも、日本 YMCA 同盟常議員会ならびに全 国 YMCA 総主事会議は、日本の YMCA は構造的・財政的問題を迅速かつ 抜本的に解決しなければならない局面にあるとの認識にいたっています。全国の YMCA が公益財団を始め法人移行をほぼ終えたいま、「新しい時代に対応し た YMCA のありようとは」、「いま果たすべき社会的使命とは」、またそれを「次世 代に引き継ぐためになすべきことは何か」という問いに答えていかなければなりませ ん。規模、事業、課題は異なっても、YMCA 組織・運動として問われていること は共通です。それゆえ、名称こそ“日本 YMCA 同盟”中期計画ですが、日本 YMCA 総体、“オールジャパン YMCA”の革新を方向づけ、ビジョンと道筋を示す 計画であるべきだと、策定委員会ではそのような理解をもって進めてきました。 2. YMCAブランドの再生こそ 策定過程において、全国 YMCA 総主事会議・戦略会議、日本 YMCA 同 盟理事会・評議員会・常議員会等との意見交換、ヒアリング、また全国 YMCA の中堅若手主事・スタッフへのアンケート等を通じて、YMCA が直面している問 題や現状認識をあぶりだしてきました。そこには解決されなければならない課題や YMCA の宝を再生 問題が山積し、長年の組織風土や制度、個別状況の違いがさらに問題を複 させるためには 雑なものとしていること、喫緊の共通課題としてはスタッフ養成、財政の健全化が あることが見てとれました。 しかしそれ以上に、これまで YMCA が、神から、そして先達から受け継ぎ、培っ てきた「宝」を発見するプロセスでもありました。 Ⅰ. 前 文 02 YMCA は、地域に拠点(会館・施設)を構え、会員・ユースボランティア・主 事を始めとする多くの人びとが集い協力し、国際的・地域的なつながり、ネットワ 天 国は、 畑に隠してある宝のよう ークのなかで多様なプログラムを展開しています。まさに、この世界において「神の なものである。 国」を物語る、類い希なる、国際的な青少年育成・社会教育団体です。これこ 人がそれを見つけると隠 そがYMCAの宝(ブランド)なのです。残念ながら、現在は多くの課題や問 しておき、喜 びのあまり、 行って持ち物をみな売り はらい、そしてその畑を買 うのである。 題によって、この宝が埋もれ、見えなくなっていると言わざるを得ません。 では、この YMCA の宝を再生させるためには、どうすればいいのか。中期計画 の遂行を通して、私たちが持っている宝(ブランド)とその意義(ミッション)をも マタイによる福 音 書 13 章 44 節 う一度捉え直し、それを内部の人びと、外部の人びとに共感できるものとして表 現すること(リブランディング)が求められています。 YMCA ブランドの再生とは、ロゴ・マークを新しくすることではなく、YMCA としての 価値を、すべての場面において機能的・情緒的に高めるように努め、時代の変 化にあわせてわかりやすく示すことを通して、関わる人の帰属意識(愛着・アイデ ンティティ)を育てていく不断の努力に他なりません。 3. 日本YMCA運動のガバナンスの強化 一つ一つの YMCA は決してかつてのような強さを持っていません。しかし、その 「土の器」のようなYMCAの中に「宝」が納められていることを意識し、YMC わたしたちは、 このような宝を土の器に Aのブランドを再生するとき、社会に希望と変革をもたらすのではないでしょうか。 納めています 日本 YMCA の制度・構造の革新のための全国的な意思決定力と実行力、そ コリントの信 徒 への手 紙 第 2 れを支え裏付ける日本 YMCA 運動のガバナンスの強化が私たち全員に試され 4章7節 ていると言っても過言ではありません。 YMCAの力と 可能性を結集する 世界のYMCAでは、「眠れる獅子を起こす Waking up the Sleeping Giant」をスローガンに、ユースを主体とした次世代のYMCA運動と、その先に ある世界平和の構築のために、いまこそYMCAの力と可能性を結集し、 “目覚めさせよう”としています。 Ⅰ. 前 文 03 いまこそ、自らのうちに持っているそれぞれの多くの「宝」を、キリストの体なる あなたがたは キリストの体であり、 YMCA運動として意識し、輝きを取り戻すこと。日本 YMCA運動が新しく また、一 人 一 人は される道、YMCA ブランドの再生は、そこにあります。 その部 分です コリントの信 徒 への手 紙 第 1 12 章 27 節 4. 一つの変化がうねりを起こす これからの 3 年間において、日本の YMCA が直面する多岐にわたる問題をすべ て解決することは不可能です。しかし、一つのことが変化することで、影響が波及 し、全体を変えていく大きな原動力が生まれます。限られた計画と取り組みであ っても日本 YMCA 全体にうねりを起こす革新を期待し、その実現に向けてすべて のYMCA が互いの状況や立場を尊重しながら協働していくことを切に求めます。 以上のことを、次の2つの基本姿勢として提示します。 「全部は出来ない。しかし、全部に通じる」 「新しいことはしない。しかし、新しくする」 Ⅱ. 5 つの重点項目 04 次の 5 つの事柄に重点的に取り組むことを提案します。 YMCAブランド の再生 5.日本YMCA運動 としてのガバナンス強化 4.全国YMCAの財 政健全化、ガバナンス強 化 3.全国的広報戦略の 策定 2.スタッフ研修の充実、 強化 1.YMCA全事業のリ ブランディングとミッションの 明確化 Ⅲ. 具体的な計画について 05 3ヶ年の段階的な計画実行を提案します。 1. YMCA全 事 業 の ① 2014 年 度 から、若 手 中 堅 世 代 のスタッフによる「ブランデ ィング広 報 戦 略 タスクチーム」を組 織 する。 リブランディングと ミッションの明 確 化 ② 上 記 チームに専 門 家 を交 え、YMCA ブランドのフレーム (活 動 領 域 )を作 成 し、イメージ表 出 方 法 (キャッチフレ ーズ、ビジュアル等 )を示 す。ロゴ刷 新 のニーズがあれば刷 新 する。 全 事 業 を、YMCA の使 命 ③ ブランディングに関 して、トップリーダーシップの意 識 変 革 を促 および社 会 的 意 義 (ミッショ ン)から捉 え直 し、すべての し、研 修 と共 にマニュアル化 を進 め、現 場 周 知 を図 る。 ④ 「YMCA ミッション委 員 会 」を強 化 し、ブランドの“背 骨 ”とな 場 面 において価 値 の最 大 化 に努 める。 るキリスト教 基 盤 を今 日 的 文 脈 において確 立 する。 ⑤ 寄 附 (ファンドレイジング)の推 進 と連 動 し、目 安 としてパ YMCA 内 外 に わかり やす く、 ブリックサポートテスト(PST)*の目 標 設 定 と効 果 測 定 を 効 果 的 に表 出 する。 2. スタッフ研 修 の 充 実 、強 化 進 める。 ① 2015 年 度 を目 標 に「新 ・日 本 YMCA研 究 所 」(仮 称 )を立 ち上 げる。 ② 同 研 究 所 ではステップⅠ~Ⅲを捉 え直 し、各 種 専 門 職 (保 育 ・学 童 ・高 齢 者 事 業 等 )の研 修 システムや、外 次 世 代 の YMCA 運 動 の担 い手 養 成 に注 力 する。 部 団 体 及 びキリスト教 会 (界 )等 との研 修 協 力 、海 外 留 学 研 修 等 、研 修 を統 合 的 に再 構 築 する。 とくに、社 会 が必 要 とする ③ YMCA 規 模 や性 別 等 の諸 条 件 に関 わらず、すべてのスタ 働 きを、課 題 発 見 から解 ッフが働 きやすい環 境 を作 り、研 修 に参 加 できる支 援 の仕 決 まで、主 体 的 にコーディ 組 みを整 える。 ネート、ファシリテートでき るスタッフを育 てる。 ④ 並 行 して、次 世 代 担 い手 として若 手 役 員 候 補 者 の発 掘 と養 成 、ユースボランティア研 修 の充 実 も検 討 する。 Ⅲ. 具 体 的 な計 画 について 3. 全 国 的 広 報 ① 06 統 一 的 なブランドイメージに基 づいて、広 報 の効 果 的 な共 同 化 を可 能 なところから進 める。 戦 略 の策 定 ② “ニュースを創 る努 力 ”を事 業 開 発 から展 開 までに盛 り込 む。 ブランディングの観 点 と ③ 若 い世 代 に求 心 力 をもつ広 報 を研 究 し、多 様 なメディア をタイムリーに活 用 する。 スケールメリットに基 づき、 広 報 戦 略 を立 案 し、恒 ④ アドボカシー(政 策 提 言 他 )機 能 を再 認 識 し、国 内 外 の YMCA オピニオンを受 発 信 する。(東 北 アジアの平 和 、 常 的 かつ機 動 的 に実 行 子 どもの貧 困 、環 境 ・人 権 問 題 等 ) できる体 制 を作 る。 ニュース性 を備 えたタイ ⑤ 広 報 専 従 スタッフの配 置 を進 める。同 盟 、各 事 業 分 野 、 各 地 区 、各 Y 等 、順 次 検 討 する。 ムリーな企 画 実 行 と発 信 を行 う組 織 風 土 を確 立 す る。 4. 全 国 YMCAの 財政健全化、 ガバナンス強 化 ① 2014 年 度 より「全 国 YMCA コンサルテーションチーム」を 専 門 家 及 び近 隣 YMCA 総 主 事 、同 盟 より組 織 し、すべ ての YMCA を巡 回 する。 ② 「加 盟 ・退 除 基 準 YMCAガバナンスチェックリスト 」を設 け、すべての YMCA において実 施 する。 ③ 全 国 協 力 及 びブランド管 理 の観 点 から、個 別 の運 営 及 すべての YMCA が持 続 ・ 発 展 可 能 となるようサポー トに務 め、財 政 の健 全 化 を 進 める。 法 人 移 行 後 のガバナンスの 整 備 と強 化 、コンプライアン スを遵 守 する風 土 を作 る。 び事 業 体 質 に関 して、必 要 に応 じて助 言 ・指 導 を個 別 に 行 える体 制 を整 える。 ④ 地 域 や規 模 に応 じて、総 務 ・財 務 等 の事 務 共 同 化 ・効 率 化 等 の道 筋 、提 案 を示 す。 ⑤ 若 い人 が担 いたい、作 りたいと思 う、新 しい YMCA の姿 を 探 る。 Ⅲ. 具 体 的 な計 画 について 5. 日 本 YMCA 07 ① 同 盟 協 議 会 、日 本 YMCA 大 会 を、全 国 運 動 の課 題 と 方 向 性 について共 有 し、協 議 、決 定 する機 会 とする。 運 動 としての ガバナンス強 化 ② 全 国 YMCA 総 主 事 会 議 ・戦 略 会 議 、同 盟 常 議 員 会 、 同 盟 各 種 委 員 会 等 の各 意 思 決 定 ・執 行 機 関 の機 能 ・ 位 置 づけの見 直 しと関 連 づけを行 う。 ③ 「日 本 YMCA 同 盟 中 期 計 画 推 進 委 員 会 」(仮 称 )を YMCA の多 様 性 を生 かしつつ、全 国 運 動 として の一 致 と協 力 のための意 思 決 定 の仕 組 み、仕 掛 け作 りを進 める。 設 置 し、適 宜 本 計 画 の実 施 ・評 価 ・軌 道 修 正 を行 う。 ④ 本 計 画 の目 的 と遂 行 状 況 に照 らし合 わせて、同 盟 機 能 機 構 の段 階 的 改 編 を行 う。 ⑤ 2017 年 度 以 降 の次 期 中 期 計 画 策 定 に関 しては、各 YMCA の計 画 との連 動 性 を考 慮 して、2016 年 6 月 の 日 本 YMCA 同 盟 中 第 5回 同 盟 協 議 会 にて共 有 する。 期 計 画 を確 実 に遂 行 す る。 * パ ブ リ ッ クサ ポー トテスト (P S T ) 広 く 市 民 か ら 支 援 を 受 け て い る か ど う か を 判 断 す る た め の 基 準 で 、 公 益 社 団 法 人 ・ 公 益 財 団 法 人 に 寄 附 した 場 合 の 所 得 税 額 の 特 別 控 除 ( 税 額 控 除 ) の 適 用 が 認 め ら れ る 法 人 は 、実 績 判 定 期 間 に お い て 以 下 の 2 つ の 要 件 の う ち 、 い ず れ か を 満 た す 必 要 があ る ( 行 政 庁 から要 件 を 満 た して い る 旨 の 証 明 が必 要 ) ( 措 令 2 6 の 28 の 2 、措 規 1 9 の 10 の 4 ) 。 < 要 件 1 > 3 ,0 0 0 円 以 上 の寄 附 金 を 支 出 した 者 が 、平 均 し て 年 に 1 00 人 以 上 い る こと 。 < 要 件 2 > 経 常 収 入 金 額 に 占 め る 寄 附 金 等 収 入 の 割 合 が 、1 / 5 以 上 で あ る こと 。 ■日 本 YMCA同 盟 中 期 計 画 策 定 委 員 会 中 道 基 夫 (委 員 長 )、黄 崇 子 、神 﨑清 一 、太 田 直 宏 、菅 谷 淳 事 務 局 :島 田 茂 (総 主 事 )、横 山 由 利 亜 (全 国 協 力 ) 2014 年 3 月 22 日 第 306 回 理 事 会 ・第 335 回 同 盟 常 議 員 会 ・第 7 回 評 議 員 会 承 認 (2014 年 4 月 25 日 版 )