...

平成23年度東京都BCP策定支援事業 取組事例集

by user

on
Category: Documents
48

views

Report

Comments

Transcript

平成23年度東京都BCP策定支援事業 取組事例集
平成 2 3年度 東京都 BCP策定支援事業取組事例集
事業継続力が高い会社をつくる
!
∼都内75社・団体が取り組んだBCPの軌跡∼
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
1
強い会社、強い東京を作るために
平成23年3月11日に発生した東日本大震災は、日本の観測史上では最大のマ
グニチュード9を記録し、東北地方を中心に甚大な被害をもたらすとともに、
製品や資材の供給途絶、電力不足による計画停電など、我が国の、そして首都
東京の経済に大きな影響を及ぼしました。
BCP(Business Continuity Plan、事業継続計画)は、緊急事態を想定し、
事業の継続や早期復旧のために必要な対応策をまとめるものです。日本経済を
支える都内中小企業がBCPを策定し、高い事業継続力を備えておくことは非常
に重要です。
東京都では、平成22年度より、コンサルタントの派遣等により中小企業の
BCP策定支援を行う「東京都 BCP策定支援事業」を実施しています。平成23
年度からは、新たに、中小企業団体等へのBCP策定支援も開始し、単一企業の
取組から団体との連携へと拡げる取組を進めております。
このたび、平成23年度にBCP策定を行った70社及び5団体のBCP策定の取
組を事例集にまとめました。各企業・団体が策定したBCPの内容や、策定に当
たっての課題や対応策、策定を通じての効果など、策定現場の生の声をご紹介
しています。
BCPの策定は、策定過程で現状の経営内容や体制等を見直すことになり、経
営改善、組織力の強化など「現状の経営力の強化」にもつながるメリットがあ
ります。また、取引先から策定を要請される事例も増えており、対外的な信頼
を確保する上で、BCPを備えておくことは非常に重要になっています。
首都直下地震や集中豪雨による大洪水、新型インフルエンザなど、中小企業
の事業継続を脅かす様々なリスクが存在しています。本書が中小企業のBCP策
定の一助となり、多くの中小企業がBCP策定に取り組むことで事業継続力を高
め、「強い会社」「強い東京」につながることを願っております。
東京都産業労働局 商工部長
河内 豊
2
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCP
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
事業継続力が高い会社をつくる!
~都内75社・団体が取り組んだBCPの軌跡~
Contents
2
強い会社、強い東京を作るために
4
中小企業のBCPが機能した
8
東日本大震災の教訓を踏まえた
東京都産業労働局 商工部長 河内 豊
東日本大震災における実例と検証
東京都の防災対応指針
10
中小企業が抑えるべきBCPのポイント
14
平成23年度東京都BCP策定支援事業の概要
16
BCP 取組事例
102
守るべきもの、やるべきことを決め、体で覚える
事業継続力が高い会社をつくる!
業種別75社・団体の取組事例
「BCPが組織を強くする」
本事業受託企業 ニュートン・コンサルティング㈱ 代表取締役社長 副島一也
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
3
BCP
中小企業の
が機能した
東日本大震災における
実例と
検証
未曾有の被害をもたらした東日本大震災。
中小企業の中には、 壊滅的な被害を受けながらも
BCPによって事業を継続させることが
できた会社が何社かありました。
4
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
日和が丘から見た石巻市内の様子
震災関連倒産の累計592件の都道府
ています。産業別では、宿泊業・飲食店
県 別 の 内 訳 は、 最 多 が 東 京 の147件。
などを含むサービス業他が144件と最
次いで北海道43件、福岡30件、岩手
多で、製造業が138件、卸売業が103件、
2011年3月11日に発生した東日本
29件、大阪28件、福岡が26件、愛知
建設業が 98 件、小売業が 44 件と続い
大震災は、死者1万 5853人、行方不明
24件、静岡23件と、被害は全国に広がっ
ています。
東日本大震災の被害
者3283人、 住 宅 全 壊12万8746棟、
半 壊24万5239 棟(2012年 2 月23
東日本大震災関連破綻状況
日現在、警察庁調べ)という未曾有の被
害をもたらしました。都内でも、この震
災により死者7人、負傷者116人、住宅
全壊13棟、半壊164棟などの被害が出
全国
倒産:592件
破綻:033件
合計:625件
ています(2011年8月1日現在、東京
都総務局発表)。
企 業 に も 大 き な 影 響 を 与 え ま し た。
2012年2月7日時点で、国内における
「東日本大震災」の関連倒産は累計592
件に達し、その数は今なお増え続けてい
ます(東京商工リサーチ調べ)。これは、
「阪神・淡路大震災」の約4倍のハイペー
九州地区
倒産:48件
破綻:02件
東北地区
倒産:96件
破綻:05件
中国地区
倒産:12件
破綻:00件
関東地区
倒産:254件
破綻:019件
スになります。さらに、同時点で「倒産」
に集計されない事業停止や、破産など法
的手続きの準備を進めている「実質破綻」
が33件あり、同時点で倒産と実質破綻
を合わせた「経営破綻」は625件に達
しています。
北海道地区
倒産:43件
破綻:01件
北陸地区
倒産:24件
破綻:01件
四国地区
倒産:10件
破綻:00件
近畿地区
倒産:49件
破綻:03件
中部地区
倒産:56件
破綻:02件
(2012年2月7日現在)
出典:東京商工リサーチ
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
5
写真上:被災3日後の工場(写真提供:オイルプラン
トナトリ)
写真右:被災から1ヵ月後の工場。津波の傷跡は残
るものの、事業は再開していた
BCPを発動した会社
的な被害を受けながらもBCPを発動し、
わずか1週間程で事業を再開させまし
た。同社は、被災時でも継続させなくて
さて、このような被害に対していくつ
はいけない事業を明確に決めておくとと
かの中小企業は、BCP(事業継続計画)
もに、万が一、自社のプラントが使えな
によって、被災を乗り越えることができ
くなった場合には、県外の同業者に重油
ました。
の再生を依頼することをあらかじめ決め
BCPとは、Business Continuity
ていました。そのため、工場内の設備が
Plan(事業継続計画)の略です。地震
ほとんど使えない状況でも事業活動を行
や大規模災害などの不測の事態に対し、
い、被災を乗り越えることに成功しまし
企業の存続に影響を及ぼすような重要な
た。リサイクル業が震災時に担う役割は
事業(売上が多く、社会や市場に著しい
大きく、東日本大震災では、陸に打ち上
影響を与える事業等)を継続し、仮に中
げられた船や被災したガソリンスタンド
断しても早期に復旧するために策定する
から油を抜き取ることが安全上、急務で
計画のことです。
した。しかも、被災地を中心にガソリン
東 京 都 で は、 平 成22年 度 に 東 京 都
や重油など燃料不足が長期間続いたこと
BCP策定支援事業を開始し、初年度は
から再生重油の需要が高まり、廃油リサ
中小企業35社がBCPを策定しました。
イクルは地域社会の中できわめて重要な
この35社の中にも東日本大震災で、直接
責務を果たしました。
被害にあったり、あるいは取引先が被災
し、事業活動を行うことが困難な状況に
本社が使えなくても事業を継続
なりながらも、BCPによって危機を乗
BCP
中小企業の
が機能した
東日本大震災における
実例と
検証
6
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
り越えた企業が複数報告されています。
同じ宮城県の仙台市では、やはり中小
また、東日本大震災では、全国的に多
企業の建設業者が、津波の被害は受けな
数の企業が一斉にBCPを発動させまし
いものの、社屋が完全に使えなくなる中、
た。その中には、津波により壊滅的な被
外にテントを張り、地震のわずか1時間
害を受けながらも事業を継続させた中小
後から道路のパトロールなど行政の要請
企業もありました。
に応える見事な対応を見せました。この
会社は、BCPの中であらかじめ10mの
壊滅的な被害から1週間で事業再開
津波が来るかもしれないという想定を立
て、本社施設が使えなくなっても事業が
宮城県名取市で廃油リサイクル業を営
むある中小企業では、工場全体が壊滅
継続できるよう準備をしていました。
写真右:被災直後の事務所内
写真左:機械設備の位置を戻す作業など急ピッチで
復旧が進められた(写真提供:国分電機)
工場長・副工場長が不在でも冷静に対応
て情報の重要性を認識していたため、非
常用発電機でテレビやラジオをつけ10
もう1例、平成22年度に東京都の「B
mの津波が来るかもしれないということ
CP策定支援事業」に参加した配電盤の
を知ると、ただちに3㎞先のスーパーの
製造会社は、茨城県にある工場が工場長・
屋上まで社員全員を避難させる決断をし
副工場長が不在の中、被災する事態に見舞
ました。この柔軟かつ迅速な判断により
われました。しかし、BCP策定時に同じ
全従業員の命を守れたからこそ、その後
ような状況を想定した訓練をしていたお
の事業継続が達成できたのです。また、
かげで、1人の犠牲者も出すことなく、事
東京都のBCP策定支援事業に参加した
業を早期復旧させることに成功しました。
配電盤製造会社は、茨城工場が使えなく
なった場合は、鹿児島工場を代替拠点に
東日本大震災で問われた
BCPの課題
することをBCPで決めていました。し
かし、実際には鹿児島工場での代替生産
は見送り、茨城工場の復旧を待ちまし
中小企業の皆様にとって、BCPは「横
た。それは、従業員や設備を鹿児島工場
文字が多くて、難しそう」と思われるか
へ移転させるリスクより、現地のライフ
もしれませんが、東日本大震災で問われ
ラインの復旧を待った方が良いという経
たのは、難しいマニュアルや技術ではな
営トップの判断と、全社員の合意形成が
く、もっと根幹的な組織力であったり、
あったから達成できたのです。
トップの指揮調整力だったと言えます。
これらの例が示すとおり、さまざまな
BCPが 機 能 し た の は、 社 長 を 筆 頭 に、
ことを想定しても、実際に危機というも
社員一人一人が必死になって会社を守ろ
のは、その通りに起きません。想定外の
うと取り組み、経営者と従業員の太い絆
危機においても事前のBCPをもとに現
があったからのように思えます。
状を冷静に捉え、経営者が柔軟かつ適切
な判断を行い、全社員が結束して事業継
本当に大切なのは社員の力
続に取り組むことが重要です。
BCPを成功させた企業の多くが、「社
再度、うまく機能したBCPの事例を
員一人一人が何のために、何をすべきか
振り返ってみると、前述の廃油リサイク
が把握できていた」と話しています。東
ル業者は、BCPでは津波を想定してお
日本大震災の教訓を活かし、いつ起きる
らず、地震が発生した場合には工場の中
かもしれない首都直下地震や大洪水、新
で安全な場所に一時避難することを決め
型インフルエンザなどの危機に備えるこ
ていました。しかし、BCP策定におい
とが重要です。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
7
東日本大震災の
東京都の
教訓
を踏まえた
防災対応指針
東京の抱えるリスクを
直視した対策が必要
れた東京においても、液状化や大量の帰
宅困難者の発生など直接的被害のほか、
計画停電や物資の供給不足などの連鎖被
東京都では、2011年3月11日に発
害が発生しました。
生した東日本大震災の教訓を踏まえ、今
そこで、指針では発生の切迫性が指摘
後の都の防災対策の方向性を示す「東京
される首都直下地震だけでなく、東海・
都防災対応指針」を 2011年11月に策
東南海・南海連動地震など首都圏以外の
定しました。
地震や、台風や高潮などの自然災害が複
都では、震災対策において、これまで
合的に発生する可能性についても視野に
首都直下地震を想定していましたが、東
入れ、対策の方向性と具体的取組を示し
日本大震災では、震源から400キロ離
ました。
東京を襲う地震像
●首都直下では、陸側のプレートの下に、東から太平洋プレートが、南からフィリピン海プレートが沈み込んでいる。
また、これらのプレート境界では、プレート先端が跳ね上がることでM 8 クラスの海溝型地震が発生
●南関東では、200~300年間隔で発生する関東大地震クラスの地震の間に、M7クラスの直下型地震が数回発生すると想定
●首都圏以外の地震による電力供給停止や物流の途絶などの連鎖的被害の発生も懸念される。
首都直下地震
海溝型地震
●東京湾北部地震
(M7.3)
●大正型関東地震
(M7.9 程度)
●プレート境界
多摩地震
(M7.3)
など
●元禄型関東地震
(M8.1 程度)
など
連鎖的被害が懸念される地震
活断層で起こる地震
●立川断層帯地
震(M7.4)
など
東海・東南海・南海連動地震、東北地方太平洋沖地震、新潟県中越沖地震など こうした地震によるリスクに加え、 台風や高潮などの自然災害が複合的に発生する可能性も否定できない。
▼
こうした危険性を見据えた上で、災害への備えを固め直すことが必要
8
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
東京都防災対応指針に掲げる防災対策
多様な主体の連帯の強化
施策の複線化・多重化
首都直下地震への備え
1 地域の連帯の再生による防災隣組の構築
防災隣組の構築
1 木造住宅密集地域の不燃化に向けた総合的な対策の推進
木密地域の整備促進と意識啓発、消防水利の確保(再掲)
2 社会全体で取り組む帰宅困難者対策の再構築
徒歩帰宅者の発生抑制、一時待機施設等の確保、情報通信基盤の強化、帰宅支援策の強化
2 事業者と連携した大都市における防災拠点の整備促進
民間の活力も活用した防災拠点整備の促進、防災拠点等となる公園等の整備
3 発災時の安定的な情報通信の確保
行政機関内の情報連絡、外部機関との情報連絡、報道機関との連携、住民への情報提供、
情報通信基盤の強化(再掲)
3 東京湾沿岸の水害への備えの強化
被害想定の検証、水門等の耐性の検証、東京港の耐震性の向上、情報連絡体制の確保、避
難誘導
4 流通網の途絶に備える物流・備蓄対策の推進
物資の安定調達、燃料の安定調達、流通情報の提供、都民・事業者等による備蓄の推進、
物資の種類の整理、備蓄拠点の配置、物資受入・搬出等
4 発災後の医療機能確保に向けた対策の強化
医療機能の確保、医療機関情報の把握、広域的な医療連携、患者搬送に係る連携体制の構
築、多様な人員体制の整備等、高齢者・障害者等に対する支援の継続
5 首都東京の消防力の徹底強化と危険物対策の推進
消防力の向上、消防水利の確保、消防団の災害活動支援、危険物施設対策、高圧ガス施設
対策、化学物質対策
5 交通ネットワークの確保に向けた対策の強化
道路ネットワーク整備等、道路・橋梁の安全確保、交通規制、鉄道の安全確保と早期復旧
6 多様な主体の応急対応力の強化
都の初動態勢、警視庁の災害対処能力の向上、事業継続計画、防災訓練
7 強固な広域連携体制の構築による相互補完機能の確保
全国知事会等、九都県市、基礎的自治体
8 住民、事業者等の防災力の向上
災害時要援護者対策、ボランティア活動の環境整備、事業者の取組の促進、防災教育
9 住民の避難対策の充実
発災時の都外避難者への情報伝達、避難所のすみ分け、避難所の衛生管理、外国人への情
報提供、動物救護活動
三連動地震への備え
10 放射性物質による影響への対策の推進
国による対策の強化、安全基準の策定、都の体制整備等、風評被害への対応、安心安全の
ための相談・情報提供、安全な生活環境の確保
11 流通網の途絶に備える物流・備蓄対策の推進
物資の安定調達、燃料の安定調達、流通情報の提供
東京の防災対策の目指すもの
6 発災に備えたライフラインのバックアップの確保
上下水道、電気、ガス、通信の施設の耐震化・液状化対策等、トイレの確保及びし尿処理
7 高度な耐震性を備えた都市づくり
建築物の耐震化、緊急輸送道路沿道建築物の耐震化、エレベーターの耐震化、非構造部材
や家具類による被害防止、避難所の被害防止
8 住民の生活安定化のための対策の充実
がれき処理、秩序維持、り災証明、義援金配分、応急仮設住宅、災害救助法の適用、遺体
の取扱い
9 エネルギー確保の多様化による都市機能の維持
電力の確保、燃料の安定調達、事業の継続確保、情報連絡体制
10 長周期地震動対策の強化
長周期地震動による影響、危険物施設対策(再掲)、室内の安全確保
11 液状化対策
12 島しょの津波対策
防災隣組の構築」については、発災時に
官民を挙げて一時滞在施設を量的・質的
一人でも多くの命を救うためには、地域
に拡大します。
の防災力の向上が不可欠になります。現
施策の複線化・多重化
東京の防災対策の目的は、昼夜を問わ
在、東京には自主防災組織が約6700あ
ずあらゆる「都民」を対象にその生命の
りますが、構成員の高齢化や防災に関す
「施策の複線化・多重化」の促進につい
安全を確保するとともに、日本の頭脳・
るノウハウの不足などの課題に直面してい
ては、12 の項目を掲げています(上図表
心臓である首都東京の機能を維持するこ
ます。こうした問題の対応策として、地域
参照)。
とにあります。
の防災活動の中から先進的・効果的な取組
このうち①「木造住宅密集地域の不燃
防災対応指針では、これらの目的を達
を掘り起こし、
「東京防災隣組」として認
化に向けた総合的な対策の推進」は、ま
成するため、「多様な主体の連帯の強化」
定するとともに、モデル地区を選定し、祭
ちづくり施策や税制など新たな手法によ
と「施策の複線化・多重化」の2つの方
りや新しい情報提供ツールを活用するな
る整備推進と住民の意識改革により、木
向性の下に、対策をまとめています。
ど、活動の活性化を支援していきます。
造住宅密集地域の不燃化・耐震化を促進
②の「社会全体で取り組む帰宅困難者
するとともに、消防水利の確保など、火
対策の再構築」については、東日本大震
災への備えの強化を図っていきます。
「多様な主体の連帯の強化」は、住民
災では、発災時の外出者の行動ルールが
②「事業者と連携した大都市における
一人ひとり、学校や企業、市民団体など、
十分に浸透しておらず、事業者によって
防災拠点の整備促進」は、都市開発にあ
さまざまな主体それぞれが防災力を高め
従業員や利用者への対応がまちまちでし
わせて、民間の避難場所や発電設備の設
るとともに、連携を強めることで防災力
た。このため、都は、一斉帰宅の抑制や
置の誘導を進めるとともに、公園の整備
を高めるということで、11の項目を掲げ
駅等における利用者保護などについて定
拡充と発災時の機能強化を推進します。
ています(上図表参照)。
めた、帰宅困難者対策に関する条例を制
③「東京湾沿岸の水害への備えの強化」
このうち、①「地域の連帯の再生による
定し、施設内保護等を徹底するとともに、
は、水門や堤防等の耐震強化のほか、高
多様な主体の連帯の強化
潮対策センターの2拠点化など施設の
■都帰宅困難者対策 条例案(2013年4月施行)
1.一斉帰宅抑制の推進(努力義務)
●従業者の一斉帰宅の抑制、3日分の飲料水・食料等の備蓄
●駅、大規模な集客施設等の利用者保護
●学校等における児童・生徒等の安全確保
2.安否確認と情報提供
都と事業者等との連携協力による安否情報確認、災害関連情報等の提供のための基盤整備
3.一時滞在施設の確保
●都立施設及び都関連施設を一時滞在施設に指定、都民等へ周知
●一時滞在施設確保に向けた国、区市町村及び事業者への協力要請
4.帰宅支援
代替輸送手段や災害時帰宅支援ステーションの確保、災害関連情報の提供
バックアップ機能も強化していくことに
しています。また、広域避難も含めた的
確な避難誘導のあり方についても検討し
ていきます。
指針で示した内容は、都の「2020
年の東京」計画および実行プログラム、
24年度予算において具体化されており、
また、今後の地域防災計画の修正にも反
映させていきます。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
9
BCP
中小企業が押さえるべき
のポイント
守るべきもの、
やるべきことを決め、
体で覚える
BCPは決して難しいことではありません。
会社にとって大切なもの、 つまり人の命や
重要な経営資源、 会社の信頼を守る、
ただそれだけのことです。
10
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
5ステップBCP策定方式
STEP5までを一巡したら、
再度STEP1に戻り、BCPの
見直しや演習の実施を継続的
に行っていきます。
BCP基本方針の決定
●BCPの目的
●対象事業と復旧目標
STEP 5 においては…
実際に演習を実施し、
BCPの年間の活動計画
を定めます。
演習と改善
●演習、演習結果報告書
●年間運用計画
BCPの策定は、 事業継続に対する
トップの思いを共有しながら推進す
ることが重要です。
STEP 1 においては…BCPに取組
む目的およびBCPの対象とすべき
事業とその復旧目標を決めます。
STEP
1
STEP
5
トップの思い
を共有
●BCP取組の理由
●トップと現場の合同体制
STEP
BCP文書の作成
STEP
2
重要業務・経営資源の特定
●重要業務の復旧目標と経営資源
●災害緊急対応/危機対応
STEP
4
3
●BCP文書
●演習計画書
事業継続対策の決定
●予防・低減策
●事業継続策
STEP 4 に お い て は …STEP3
までに策定した内容の文書化を行
い、 検証や訓練のための演習計画
を策定します。
STEP 3 においては…経営資源
の被災想定に対して事前の予防・
低減策と災害発生後の事業継続策
を策定します。
STEP 2 においては…その事業
で優先的に復旧すべき業務とその
業務に必要な経営資源を特定し、
さらに災害発生直後の緊急対応の
方法も決めます。
中小企業にとってBCP(事業継続計
認し、共有できた」、「日常業務の見直し
ことの全社徹底がしやすい、小回りが利
画)に取り組むことは、大地震などの不
につながった」、「上下間、部門間の風通
く、などの点です。
測の事態から人の命を守り、仮に本社や
しがよくなった」など、日常的な業務改
平 成22年 度 お よ び23年 度 東 京 都
自社施設が被災して大きなダメージを受
善においても BCPに取り組んだことへ
BCP策定支援事業では、これらの中小
けてしまったとしても、会社にとって、
の評価の声が寄せられています。
企業の制約とメリットを考慮し、真に
また社会や市場にとって重要な事業を継
中 小 企 業がBCPに取り組む上で は、
事業経営に役立つことを目的とした5ス
続、あるいは早期復旧することによっ
ヒト・モノ・カネが十分でないこと、時
テップ BCP策定方式(上図)による支
て、会社の本来的な役割を全うさせると
間の余裕がないこと、計画作成ノウハウ
援を実施し、成果を上げています。
いう、日本の経済活動の原点を支える極
がないことなどさまざまな制約を克服す
こ れ ら の 実 績 か ら 分 か る こ と は、
めて重要なことと言えます。
る必要があります。他方、中小企業だか
BCPは決して難しいことではないこと
東京都では、平成22年度から東京都
らやりやすい面もあります。規模が小さ
です。BCPは会社にとって本当に大切
BCP策定支援事業により都内の中小企
いためにプロジェクト編成においてトッ
なもの、つまり人の命や重要な経営資源、
業 にBCPの 普 及を 図 っ て き ま し た が、
プが参加しやすい、全社的に人を揃えや
会社の信用を守る、ただそれだけのこと
同事業に参加しBCPを策定した企業の
すい、トップが決めれば決まる、決めた
です。
ほとんどが、東日本大震災後に行ったア
平成22年度35社の東日本大地震での対応状況
ンケートで、
「何のために、何をすべき
かを冷静に判断できた」、「電話がつなが
らないことを想定していたので慌てな
かった」など、BCPに取り組んだことに
よる成果を実感したと回答しています。
平成22年度と平成23年度の東京都
●BCP発動の有無
6社
29 社
発動した
発動しなかった
●初動対応の状況
BCP策定支援事業に参加された企業を
1)安否確認を冷静に実施できた
合わせると計 110企業・団体がBCPを
2)設備の被害状況確認を冷静に実施できた
策定したことになります。その多くの経
営者からは、
「わが社の存在意義を再確
3)ステークホルダー、関係者への連絡をタイムリーに実施した
32 社
31 社
31 社
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
11
動くのは現場の従業員です。
きちんと回すことが、BCPを体で覚え、
BCP策定の目的はBCP文書を作るこ
事業継続力を強化することにつながりま
とではなく、有事における企業の事業継
す。まずやってみる、そして改善してい
それでは、中小企業におけるBCP取
続力を高めることですから、非常時対策
くという姿勢が大切と言えます。
組のポイントは何でしょうか。中小企業
を実際に統率するトップ(特に社長)と
また、時間を限定して決めるためには、
がBCPを策定するに当たっては、トッ
対策活動を実際に実行する現場リーダー
何が大切で何のためにBCPに取り組む
プ(社長)と現場リーダーが必ず参画す
が、一緒になって自ら考えBCPを策定
かという目的を共有すること、プロジェ
ること、策定にかける日程と時間を決め
することが実効性の観点から極めて重要
クト・メンバー全員が本音で討議できる
守ること、できることからとにかく着手
と言えます。
こと、トップが割り切った意思決定を行
すること、最低年に1回は訓練をするこ
また、BCP策定を全社的な取組にす
うことが重要と言えます。社長の熱意と
と、などが重要です。これらを含め、中
ることで、会社を取り巻く環境を俯瞰し、
率先垂範が、全社員の自ら判断し自ら動
小企業がBCPに取り組むにあたって押
全社視点でのボトルネックを発見しやす
く力を高め、企業としての事業継続力を
さえるべきポイントをこれまでのBCP策
くなり、会社として最適な対策の策定に
高めます。
定経験から整理したものが以下の「中小
つながります。非常時には社長が不在の
企業における事業継続力強化への7つの
場合も多いと思われますが、社長代行者
心構え」です。
が参画することにより代行者による統率
7つの心構え
(1)トップと現場の合同体制で挑む
非常時において情報システムの利用が前
3
(2)必ず決める
提となる場合も多く見られますが、その
中小企業にはヒト・モノ・カネと時間
(3)知恵を絞り、できるところから取り
ような場合は情報システム担当者の参画
の余裕がありませんが、小回りが利くと
を検討することが望ましいと言えます。
いう強みがありますので、まずお金を掛
も円滑に行えるようになります。また、
掛かる
(4)人を最大限活かす
(5)頼れる協力関係を築く
(6)訓練・演習を日常活動に落とし込
む
(7)継続し広げ続ける
2
知恵を絞り、できる
ところから取り掛かる
けないでやれることに知恵を絞り、とに
かくやりやすいところから始め、試行錯
必ず決める
誤の中で学びながら、少しずつでも事業
継続力を強化していくやり方が合ってい
ると言えます。BCP策定の中で知恵を
BCPの策定は決めることが多いので、
出すためには、十分起こり得るが考えた
これ以降は、これらの7つの心構えの
細かいことにこだわると時間と労力がか
くもないことをあえて考えてみることが
1つ1つについて解説いたします。
かるばかりでBCP策定作業が途中で頓
効果的です。例えば、大地震により社会
挫しかねません。BCP策定の5ステッ
インフラ全部が停止したらどうなるか?
プ手順を踏みながら、ステップごとに日
震度6強の揺れが来たら建物・設備・装
程および決定事項を決め、その日に決め
置は一体どうなるか? 社員がけがをし
ることを決定し、与えられた時間内で討
たらどうするか? IT が使えなくなった
1
トップと現場の
合同体制で挑む
議を徹底する、そして5ステップ全体を
らどうするか? などを全員で活発に討
中小企業においては有事の際に意思決
まず 1 周回すことが重要です。重点を
議することが知恵をだし、できることを
定し指揮を執るのは社長であり、現場で
絞ってでも演習までの5ステップをまず
考え出す上で重要と言えます。
BCP
中小企業が押さえるべき
のポイント
守るべきもの、
やるべきことを決め、
体で覚える
12
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
4
の場合は災害対応に限界があります。そ
●避難訓練を火災訓練日や年末工場停止
の場合は被災圏外の同業他社の協力を得
日に合わせて行う
て、代替生産などの事業復旧を早期に図
ことなどがあります。また、有事におけ
ることが考えられます。その実現可能性
る災害対策本部の危機管理活動の実効性
中小企業はもともと少ない従業員でや
は、市場環境や生産・サービス技術また
を高めるためには、トップが参加する演
りくりしており、業務ごとの代替要員
は設備・装置の特性に依存しますが、日
習を定期的に実施することも重要です。
が不十分な場合が多いと言えます。従っ
常から業務委託先を検討する中で信頼で
例えば年に1回、トップが集まる経営会
て地震や新型インフルエンザ等の大災害
きるパートナーを探すことは意味がある
議後の時間を決め、演習を実施すること
が発生し、多くの従業員が勤務できなく
と思われます。
が考えられます。 人を最大限活かす
とが大切と言えます。
6
例としては、作業員の多能化や、営業員
話を聞いても訓練しなければ身に付き
事業継続力の強化のためには、BCP
以外によるお客さま問合せ対応、徒歩圏の
ませんし、しばらくやっていないと忘れ
策定の5ステップ全体をまず1周回すこ
社員による緊急対応と復旧活動の遂行な
ますので、訓練や演習の継続が事業継続
とが必要ですが、次はトップとプロジェ
どがあります。従業員に新たな役割を期
力の維持、強化に必須と言えます。しか
クト・メンバーのBCPにかける思いを
待することは、個々の従業員の意識と行
し、中小企業は人や時間の余裕が少ない
全社員に広げる努力が重要です。地震被
動の変化、ひいては企業の競争力向上に
ので、演習の段取りや準備のために特別
災映像などの視聴により危機感を共有
つながる積極的な取組となるでしょう。
な体制を組むことなく事業継続対策をで
し、BCPの内容と有効性の周知徹底を
きるだけ日常活動に落とし込むことが重
図り、社員同士の連携や部門間連携の必
要と言えます。例えば、
要性を共有します。
●安否確認メールを社内連絡に使う
また、社員の家族の安全確保も必要で
●有事の際のお客さまとの携帯メールに
すので、家庭での災害対策について社員
よる連絡方法を日常でも使用する
を啓蒙することも重要となっています。
災害時には、設備・装置等の保守サー
●有事における設備・装置の被災状況
日常活動に落とし込んだ BCPの取組を
ビス会社や物流会社等の外部委託先の
チェックを日常の設備・装置点検と結び
継続しながら、有事への柔軟な対応力を
迅速な対応が必要となりますので、これ
つける
個人として、組織として、会社として継
らの企業とは日常から事業継続の取組を
● IT の代替機や手作業への切替を日常
続していきます。さらにBCPの取組を、
共有し、深い信頼関係を築くことが重要
でも行う
他業務へ、他事業へ、他拠点へ、他リス
と言えます。また、特定のお客さまへの
●工場で5S を実施することにより負傷
ク(災害)へ、取引先へ、地域へ、と継続
依存度が高い場合は、お客さまと一緒に
リスクの低減と避難経路の確保を図る
して広げ続けることが自社の事業継続力
BCP対策を検討し、お客さまとの協力
●被災状況カードを作成しておき部門会
のさらなる強化につながると言えます。
関係を強化することも重要です。中小企
議などで短時間の被災シミュレーション
まさに継続は力なりと言えます。
業1社だけでは、特に拠点が1カ所のみ
を行う
なったり、パート社員が欠勤となった場
合は、放っておくと業務が停止しかねま
せん。そこで、今いる人に非常時対応に
おける新たな役割を期待し、育成するこ
5
頼れる協力関係を築く
訓練・演習を
日常活動に落とし込む
7
継続し広げ続ける
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
13
平成23年度
東京都BCP策定支援事業の概要
事業継続力が高い
会社をつくる!
BCP
策定支援
BCP
継続支援
BCP
を連携しつつ推進
普及啓発
「つなぐ」そして「伝える」
平成23年度東京都BCP策定支援事業は、 東京都の経済を支える都内中小企業が
強い会社になるよう “BCP未策定企業に対する策定支援活動”、 “当該事業に昨年
度参加した企業に対する継続支援活動” および “BCP普及啓発活動” の3種類のBC
P推進活動を連携しつつ実施してきました。BCP策定支援活動においては、 本年
度はBCP策定支援の対象に中小企業だけでなく、 中小企業団体等も参加いただき
ました。これにより、 組合を中心とした危機管理体制の構築や情報共有の促進を行
い、BCP策定の取組が業界単位でつながり、 広がるような取組にしています。 普
及啓発活動としては、OneDay セミナー、区市町村連携講座、BCP策定推進フォー
ラムを開催しました。以下に、それらの実施内容を紹介いたします。
コンサルタント派遣によるBCP策定支援活動
自社オリジナルBCPを5ステップで策定
団体に求められる緊急時の対応を検討
●3期に分けた支援(1期:6月~8月、2期:9月~11月、3期:12月~2月)
●今年度は新たに協同組合や社団法人等の中小企業団体等に対する支援を実施
●参加企業70社、中小企業団体等5団体、合計75社・団体
●70社の業種は、建設、製造、情報通信、運輸、卸売、不動産、サービス、学習支援
●参加企業・団体の多くは、3.11東日本大震災での体験からBCPへの取組を決定
●5ステップBCP策定方式による支援
●団体は会員の中小企業3社程度が同時期にBCPを策定し、ステップ1基本方針の策定とステップ5演習を
合同で実施
14
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
※5ステップについては11ページをご参照ください
情報交換会
OneDayセミナー
BCPの継続的改善をバックアップ
自社の取組発表、他社との情報共有
BCPのキホンを1日で学べる
ワークショップ
より多くの企業にBCPを身近に
(BCP継続支援活動)
●昨年度参加35社の継続的改善の支援
●BCP策定後の35社の活動状況調査結果の紹介
●1日で「BCPとは何か」「5ステップBCP策定方式」
の学習
●被災状況カードを使った簡便な演習方法の紹介と
訓練
●平成22年度BCP策定企業による体験スピーチ
●参加企業によるその後の取組状況の情報交換
●全3回開催(2011年7月、11月、2012年1月)
各社がBCPの取組を継続する上で大きな刺激と
なりました
●自社について簡易なBCPの策定
1日で自社がまずやるべき事を明確にすることが
できました
区市町村連携BCP講座
BCP策定推進フォーラム
自治体との連携でBCP普及
地域性を重視した情報提供
危機管理産業展併催イベントとして開催
東日本大震災対応でも活きたBCP
●「BCPとは何か」とBCP策定方式の解説および
災害シミュレーションの実施
●平成22年度BCP策定支援事業の成果発表としての
BCP策定推進フォーラムを開催(2011年10月)
●平成22年度BCP策定企業トップによる、自社の
BCP 取組実践事例の紹介
●4社の取組事例の発表
●主催区市の災害予測や防災計画の紹介
●有識者によるパネルディスカッション
●東京都中小企業BCP策定優秀賞の表彰
●9回開催:12区市(合同開催あり)
開催区市:文京区
目黒区
大田区
世田谷区
豊島区
北区
八王子市
三鷹市 4市合同(府中市、調布市、狛江市、稲城市)
防災と事業継続の相違および自助・共助の
重要性が明らかになりました
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
15
●BCP取組事例
|業種
|会社名/団体名
建設業
製造業
情報通信業
|対象リスク
|ページ
Case Study01 株式会社木村工業
地震
21
02 株式会社第一テクノ
地震
22
03 中央三洋設備株式会社
地震
23
Case Study04 旭建材工業株式会社
地震
25
05 株式会社伊佐野製作所
地震
26
06 岩岡印刷工業株式会社
地震
27
07 上原ネームプレート工業株式会社
地震
28
08 株式会社ウテナ
地震
29
09 株式会社クボプラ
地震
30
10 株式会社塩野製作所
地震
31
11 昭和化学工業株式会社
地震
32
12 株式会社精興社
地震
33
13 株式会社関口建材店
地震
34
14 株式会社ダイアナ
地震
35
15 株式会社大王製作所
地震
36
16 株式会社大成イーアンドエル
新型インフルエンザ
37
17 大成ファインケミカル株式会社
地震
38
18 タマチ工業株式会社
地震
39
19 東新プラスチック株式会社
地震
40
20 日本印刷株式会社
地震
41
21 株式会社ニレコ
地震
42
22 株式会社ハタダ.
地震
43
23 原田工業株式会社
地震
44
24 株式会社ユニフローズ
地震
45
25 株式会社米山製作所
地震
46
Case Study26 アノテーション株式会社
新型インフルエンザ
48
27 株式会社イースティル
地震
49
28 株式会社キュー・テック
地震
50
29 株式会社サンブリッジ
地震
51
30 システムビジョン株式会社
地震
52
31 株式会社出版文化社
地震
53
32 株式会社ゼネット
地震
54
33 株式会社中央ジオマチックス
地震
55
34 株式会社デザイン・クリエィション
地震
56
35 株式会社トリニティーセキュリティーシステムズ
地震
57
36 株式会社日本テクノ開発
地震
58
37 株式会社フォーラムエイト
地震
59
●BCPの概要をデータにまとめています
対 象 事 業
BCPの対象とする事業です。今回は、企業の存続に影響を与えかねない重要な事業1つを選定して BCP を策定していただいております。
対 象 リス ク
今回は、地震、水害、新型インフルエンザの中から1つだけ、最も自社に影響を与えかねない災害を選定して、BCP を策定していただいております。
被災シナリオ
対 策
16
上記リスクが発生した際、自社がどのような影響(被災)を受けるかをまとめております。
目標復旧時間内に復旧させるための具体的な予防・低減や継続の対策です。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
Contents
|業種
運輸業
卸売業
|会社名/団体名
|対象リスク
|ページ
Case Study38 株式会社オーティーエス
地震
61
39 三信倉庫株式会社
地震
62
40 七福運送株式会社
地震
63
41 多摩運送株式会社
地震
64
42 株式会社日本運輸機構
地震
65
43 株式会社ハーツ
地震
66
44 矢倉倉庫株式会社
地震
67
45 結城運輸倉庫株式会社
地震
68
46 株式会社若洲
地震
69
Case Study47 株式会社秋山製作所
地震
71
48 サクラファインテックジャパン株式会社
地震
72
49 株式会社スギヤマゲン
地震
73
50 株式会社田島
地震
74
51 タツミ産業株式会社
地震
75
52 富山科学工業株式会社
地震
76
53 株式会社ノルメカエイシア
地震
77
54 株式会社ヤブ原
地震
78
不動産業
Case Study55 国土管理株式会社
新型インフルエンザ
80
サービス業
56 株式会社アースアプレイザル
地震
81
57 株式会社カワコン
地震
82
58 株式会社寿エンジニアリング
地震
83
59 株式会社新発設計
地震
84
60 株式会社城南
地震
85
61 新栄測量設計株式会社
地震
86
62 関測量事務所株式会社
地震
87
63 株式会社測技社
地震
88
64 株式会社知財翻訳研究所
地震
89
65 株式会社東邦地形社
地震
90
66 株式会社東京地図研究社
地震
91
67 平木国際特許事務所
地震
92
68 富士水質管理株式会社
地震
93
69 株式会社双葉
地震
94
学習支援業
70 株式会社ティーアイジェー 東京日本語研修所
地震
95
団体
Case Study71 東京測量調査設計事業協同組合
地震
97
72 東京セメント建材協同組合
地震
98
73 社団法人東京都トラック協会
地震
99
74 一般社団法人日本医療機器工業会
地震
100
75 練馬測量業協同組合
地震
101
※業種は原則、日本標準産業分類の大分類に準拠していますが、専門・技術サービス等のサービス関連は「サービス業」に統一しています。
また、協同組合、協会等は産業分類によらず「団体」としています。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
17
●取組75社・団体の紹介
トップと現場、団体の
連携体制で挑む!
平成23年度東京都BCP策定支援事業に参加した中小企業70社と中小企業
団体等5団体の組織概要とBCPプロジェクト体制の概要を紹介します。
りました。従業員数の観点からは99人
し、さらに後継者に引き継ぐ ” という強
以下が7割を占めており、企業の創業以
い意志を感じます。
来年数については30年以上の企業が6
また、今年度は団体として協同組合や
中小企業70社全体の概要を見ると、
割を占めています。社長ご自身について
社団法人、財団法人など5団体が参加し、
業種は8業種にわたっており、運輸業、
は8割が創業者系経営者であり、“創業、
構成員企業と連携したBCPを策定しま
不動産業、学習支援業が今回新たに加わ
承継した企業を事業継続力が高い会社に
した。
組織概要
企業
■業種別企業数
■創業以来年数別企業数(70社)
学習支援業
1社 1%
建設業
3社 4%
14
12
11
10
卸売業
8社 11%
運輸業
9社 13%
(社)
14
不動産業
1社 1%
合計
70社
製造業
22社
31%
8
10
4
4
4
4
2
3代目以降
9社 13%
2
1
合計
70社
創業者
18社
26%
2代目
29社
41%
∼
100
∼
90
99
∼ 89
80
∼ 79
70
∼ 69
60
∼ 59
50
∼ 49
40
∼ 39
30
∼ 29
20
9
∼ 19
10
∼
1
0
社内外
14社
20%
8
7
6 5
情報通信業 サービス業
12社
14社
17%
20%
■社長の出身別企業数
(年)
■従業員数別企業数(70社)
団体
(社)
25
■構成企業数別団体数(5団体)
■設立以来年数別団体数(5団体)
(団体)
2
2
(団体)
2
2
23
20
15
9
10
8
1
1
1
1
0
0
∼
40
∼
60
39
59
99
∼
100
∼
20
19
2999
(社)
∼
10
∼
300
299
∼
3000
∼
100
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
0
99
(人)
0
∼
1
∼
300
299
99
∼
200
∼
75
74
199
∼
50
49
∼
100
∼
25
24
18
1
1
4
3
∼
1
0
12
11
5
2
(年)
BCP策定プロジェクト体制
■参加トップ人数
BCPプロジェクト体制について見る
■役職別人数の構成比
その他
2人 2%
役員
17人
23%
と、社長・代表者のフル参加が75%、
役員以上のフル参加が97%であり、ま
合計
75人
さにトップ主導の体制となっています。
参加人数は平均5.7人であり、合計429
社長
13%
一般社員
19%
人が参加しBCP策定能力を身に付けま
合計
429人
社長
56人
75%
役員
23%
管理者
45%
した。429人の内訳を役職別に見ると
経営者と管理者で8割を占め、職務別で
は製造・サービスや営業の現業部門が5
割となっています。まさにトップと現場
■職務別人数の構成比
■想定災害別組織数
で事業継続力が高い会社・団体をつくっ
新型インフルエンザ
3件 4%
ていると言えます。
想定災害については地震が72件と圧
社長
13%
総務・
管理・企画
営業
32%
合計
18%
429人
倒的に多く3.11東日本大震災の影響に
より地震に対する危機感の高まりが表れ
ています。
合計
75件
地震
72件
96%
製造・サービス
30%
情報システム
7%
水害 0件
■プロジェクト人数別組織数(75社・団体)
(件)
16
16
14
12
12
10
8
8
6
6
7
6
5
4
2
0
BCP策定の問い合わせ/
要求状況調査結果
今年度参加した75社・団体に対して平
成 24年2月に BCPの問い合わせ/要求
2
2
1
2
3
4
5
6
7
8
4
3
2
1
1
9 10 11 12 13 14 (人)
■BCP策定の問い合わせ/要求状況(75社・団体、平成24年2月現在)
問い合わせ/要求
取引先からの要求
取引先への要求
あった
20(27%)
19(25%)
なかった
55(73%)
56(75%)
状況について調査を行った結果、27%
が取引先からの問い合わせまたは要求を
受け、25% が取引先への問い合わせま
たは要求を行っています。もはやBCP
の策定は、1企業だけでなく企業間で連
携して取り組むべき課題と言えます。
問い合わせ/要求の内容
取引先からの要求
取引先への要求
口頭による問い合わせ
9
10
書面による問い合わせ
7
2
BCP策定の要求
5
5
BCP策定訓練への参加要求
1
5
取引条件にBCP策定を要求
3
1
25
23
回答数合計(1社複数回答あり)
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
19
BCP 取組事例
建設業
BCP
策定のポイント
建設業のBCP対象業務としては、①現在施行中の現場対応、②行
政との災害時協定に基づく復旧活動、③保守サービスが大きな柱と
なりますので、これらに関する特徴を概観します。
①現在施行中の現場対応:災害時には建設現場の危険性が高まるた
め、速やかな二次災害防止の対策が求められます。迅速な被災状況
の確認とそれに基づく対応が必要となり、災害発生時には対応責任
者が直接現場に直行することを前提とする場合もあります。
②行政との災害時協定に基づく復旧活動:事前に行政と災害時協定
を締結している場合には、社会インフラ復旧のため決められた作業
を行うこととなります。社会的な要請も強く、早急に対応すること
が期待されています。あらかじめ復旧担当箇所が決まっている場合
は、作業員と重機が現地に自動出動する場合もあります。
③保守サービス:災害後にニーズが急増するのが、既存物件の破損
等に伴う保守サービスです。発災後、速やかに顧客の被害状況を調
査しますが、復旧作業は電気・水道・道路等の社会インフラの回復
に依存します。また、建設用資材等の調達も必要となりますので、
復旧の完了までには時間を要することが予想されます。
発災時には、これらの業務の優先度を、被災の状況を鑑みながら柔
軟に判断し、限られた経営資源を配分していくことが肝要となりま
す。また、建設業には協力会社、建設用資材といった外部から調達
する経営資源も多く存在するため、BCP策定に当たってはこれら
への依存性を充分に考慮する必要があります。
20
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
01
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社木村工業
東日本に学び、
地域の道路水道を早期復旧
対 象 事 業
災害時緊急対応(①緊急道路啓開 ②水道管路復旧)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●水道管を切り落とした直後に発災
●作業員数名負傷、建機・ダンプ数台使用不可
対 策
Q
●危険予知活動の徹底
●安全確認記録の徹底
●緊急時避難ルールの徹底
●落下転倒防止策
●緊急通行車両確認標章を取得
●ルールに則った現場復旧作業
●水道局への状況確認
事業内容を教えてください。
代表取締役
木村 晃一
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
人ではなく会社の判断として、それを責
任者が指示することで、BCPの徹底に
公道部上水道施設の維持管理と土木工
当社は災害発生時には、東京都との協
もつながると考えます。
事が主事業で、その他に公園管理・清掃・
定により、緊急道路啓開工事(がれきを
また、平時でも緊急出動要請があるこ
警備などの委託事業を行っています。配
建機で片付けて幹線道路を通行可能にす
とから、災害時に自分達が出動するのは
水小管工事の実績を積み重ねて水道局単
る)を最優先で実施し、また、東京都水
あたりまえと考えていましたが、今まで
価契約工事事業者と認められ、現在では
道局との契約により首都中枢機関への水
は自分達が被災することを全く考えてい
水道本管から給水工事まで幅広い工事を
道管路復旧を実施します。こうした事情
ませんでした。
行う企業であり、東京都水道局より社員
から今回は断水工事中に水道管を切断し
災害時の緊急出動は予想以上に危険を
4 名がスーパー配管工として認定されて
た直後の発災という最も厳しい被災シナ
伴うので、単独で動くのではなく、情報
います。
リオを設定し、対策を検討しました。
を集め行政の指示で行動し、地域の生活
また漏水防止の緊急整備班を常時編成
通常の水道管工事実施時に、大災害が
インフラの早期復旧に取り組みます。
し待機させており、東日本大震災では、
発生した場合は工事を中断し、水道管が
3月18日に水道局の支援出動要請で宮
露出している現場を全力で復旧させ、緊
城県仙台市へ水道復旧隊のメンバーとし
急工事体制に切り替えることが必要にな
て7名が出動しました。
ります。そのため、まずは会社との通信
東日本大震災の被災地に3度訪れ、自
が途絶えても、現場にいる4つの工事班
分の中でどうすれば良いかを真剣に考え
が自主的に動ける行動ルールを作りまし
ていましたが、今回の取組で進むべき道
た。そして建機や土木資材を積載したダ
が見えてきました。東日本大震災の復興
3.11を経験してから数カ月後に新聞
ンプ数台からなる緊急出動班を編成し、
支援も重要ですが、あの経験を対岸の火
の記事をみて BCP、BCMを知りました。
出動するための条件・判断基準を整理し、
とせずに、将来の大震災への準備をする
東日本大震災では、会社が存続できず
迅速な出動を可能にするための BCPを
こと、事前にできることを全てやりきる
社員が生活できなくなり、家族友人知人
策定しました。従って自社の復旧につい
ことが重要ではないかと改めて感じまし
が亡くなり、その悲しみから逃れられず
ては、片付け等以外は緊急対応がある程
た。わが社が生き残れば、社員が生き残
「自分の命を大切にしない」という考え
度落ち着いてから徐々に再開したいと考
り、そしてその家族も救われ、なおかつ
えています。
近隣地域を救うことができるという考え
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
に至ってしまう人もいるという事実を知
り「どんな時でも社員の雇用を守り、仕
事を続けなければならない」と強く感じ
ました。自分に何が起きても、社員が働
ける場所として会社が存在すれば、皆で
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
に至ることができました。 今後は自社の
何か新たな気づきはありましたか?
BCPを外に発信していきたいと思います。
会社情報
災害対策本部や現場が下す判断の責任
集まり仕事ができ、家族の命が守れま
の重さを改めて考えました。災害時の
す。
判断いかんでは、けがや2次災害が起き
また災害時には、地元の道路・水道の
る可能性が十分あり、最悪の事が起こっ
早期復旧工事に緊急出動することも必要
てしまった場合に指示した者の精神的ダ
になります。こうした理由からBCPが
メージは多大になります。そのために判
必要であると考え応募しました。
断者の責任を軽減させるように、被災時
の判断基準をBCPに記載しました。個
称号
株式会社木村工業
本社所在地
東京都大田区中馬込3-8-3
設立
1969年7月
資本金
4,000万円
従業員数
64人
代表者
代表取締役 木村晃一
事業内容
水道施設、下水道施設、舗装、土木
一式、河川、ガス、造園、警備
URL
http://kimura-kougyou.com
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
21
02
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社第一テクノ
病院・官公庁の
非常用発電設備を早期復旧
対 象 事 業
発電設備のサポート事業
被災シナリオ
●社外で作業中の人員は全員帰社不能
●本社内の PC10 台故障、コンピューター・サーバー故障
●倉庫全焼
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●安否確認ツールの設定
●作業車の燃料を常時満杯にする
●データや書類等の整理方法の変更
●自社ビルに自家用発電設備の設置
●本社内の人員は緊急車両通行証の取得
●被災外の拠点は必要な部品を調達して神奈川事業所か静岡営業所へ配送
●協力会社、重要取引先への協力要請
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
向井 善彦
し、サポートしている自家用発電設備が
また、社内の現場点検では弊社のコン
作動しないことです。その中でも病院は
ピューター・サーバーの管理、PBXの
弊社は日常生活に欠かせない「水」や
古い建物を使用している場合もあり、建
被災確率の高さ、部品用倉庫の脆弱さが
「電気」に広く関わる技術者集団として
物の損壊により発電設備が損傷する可能
露呈したことで、その予防・低減策を検
事業展開をしております。上下水道をは
性が考えられることから、今回は病院に
討し、実施することができました。
じめとする水処理施設、ディーゼル・エ
設置してある自家用発電設備のサポート
今後の課題として、協力会社やお取引
ンジンやガスタービンを使用した自家用
業務を対象にした BCPを策定すること
先にも弊社のBCPの内容を理解し、実
発電設備、太陽光・小水力など再生可能
にしました。
践していただくことが重要だと感じまし
エネルギーを有効利用する発電設備など
災害時の発電設備の復旧作業には、人
た。
に関する計画・設計・施工およびメンテ
員はもちろんのこと、通信手段、工具・
ナンス(サポート)が中核事業です。
部品、そして現場までの移動手段として
また、設立当初からの事業である伊豆
それらを積載した車両が必須です。また、
諸島や小笠原諸島等の離島発電設備、農
発災時には一般車両は通行禁止になるた
今回の被災シナリオでは日中の時間帯
村集落地の排水処理施設など、その地域
め、迅速に緊急車両通行証を取得する必
での発災を想定しましたが、違う時間
に欠くことができない設備も取り扱って
要があり、このような緊急時の付帯業務
帯(例えば、午前2時など)や違う季節
おります。
についても併せて検討しました。
に発災した場合の BCP策定と、もうひ
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
また、サポート業務の1次受付は電話
とつの中核事業である上下水道施設など
で対応するので、緊急連絡を病院の衛星
「水プラント」のサポート事業の BCPを
電話からいち早く受信するために、発
早急に策定します。
弊社の中核事業はどれをとっても人々
災後は地方拠点に電話窓口を切り替え対
そして、1年サイクルで PDCAを実
の生活を支える重要な設備や施設である
応することにしました。そして特に故障
施し、BCPの実行力を向上させていき
ことから、BCPについては数年前より
の可能性が高いと思われる病院をリスト
ます。
経営会議などで話題になることはありま
アップし、こちらは連絡がない場合でも、
したが、具体的な策定までには至りませ
同じエリアからのサポート要請に対応す
んでした。東日本大震災を経験し、改め
る際に巡回を行い、状況の確認を実施す
て自社が「水」や「電気」というライフ
ることにしました。
ラインに広く関わる事業を展開している
ことを考えると、災害時にこそ事業を継
続できる準備をしておくことが、弊社の
Q
何か新たな気づきはありましたか?
社会的責務であると思い、BCP策定を
今回の検討の過程で、サポートの対象
決意致しました。
として基幹病院を最優先するということ
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
に迷いはありませんでしたが、その優先
順位については今まで特に考えたことが
ありませんでした。今回その優先順位を
災害時の弊社の一番の懸念事項は、基
設備の古い順にし、エリアごとにリスト
幹病院、銀行等のデータセンター、通
アップできたことは、ひとつの成果だと
信関連施設などの重要施設に弊社が設置
思います。
22
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
株式会社第一テクノ
本社所在地
東京都品川区南大井6-13-10
設立
1958 年11月
資本金
9,900 万円
従業員数
259人
代表者
代表取締役社長 向井善彦
事業内容
発電設備、 上下水道施設等の計
画・設計・施工・保守管理
URL
http://www.daii.co.jp
03
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
冷凍冷蔵設備メンテナンス
被災シナリオ
●社員負傷計5名
●社内乱雑化
●タワー駐車場停止、出庫不可
●倉庫倒壊
●サーバー破損
対 策
中央三洋設備株式会社
食料品供給の維持が
冷凍冷蔵設備保守の使命
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●協力会社を含む安否確認手段の構築
●各種耐震対策
●平地駐車場使用
●主要顧客への緊急連絡
代表取締役社長
牧 毅
Q
事業内容を教えてください。
BCPの対象事業としました。その中で
には役に立たないことがわかりました。
も特にメンテナンス業務は、災害時の食
東日本大震災後にはガソリンを給油する
当社は三洋電機製品の代理店として、
料品の供給をサポートすることにつなが
のに苦労して、ガソリン確保の重要性は
冷凍冷蔵設備、空調設備等を取り扱って
るため、通常業務より重要であると考え
充分わかっていたのですが、日頃から早
おり、関連する設備の設計・施工から
ております。そのため災害時には、新規
期給油することが有効であるということ
販売アフターフォローまでの業務をトー
受注はもちろん、施行中の案件も一時ス
を再認識しました。
タルに展開しています。さらに施工時に
トップさせ、被害を受けた設備の復旧に
は配管工事も行っており、建設業に分類
全力を挙げることにしました。
されます。近年は、インフルエンザ対策
まず発災直後からお客さまの被害状況
にも有効な空気清浄器も取り扱っていま
を確認します。そのためには人員と通信
当社の業務は食料品販売を支える、大
す。また、太陽光発電設備、ゴルフカー
手段が必須となるのですが、発災直後は
変に重要な業務であることを改めて実感
トレンタルにも参入し、多角化を図って
通信手段も制約を受ける可能性がありま
し、いち早く復旧することがすなわち、
おります。
す。今後は複数の手段を検討する必要が
社会貢献であることを再認識しました。
ありますが、現段階では携帯電話をメイ
組織的な指示命令系統についても重要
ンに一報を入れることにしました。
性は理解していましたが、今までは具体
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
そして状況がわかったお客さまから順
的運用までは深く考えていなかったよう
今回当事業に参加したのは、東日本大
次メンテナンスに向かうのですが、この
に思います。今回の策定で災害時に電話
震災を経験してBCP策定の必要性を感
段階ではさらに人員の確保が必要となる
が使用できない場合には、携帯メールや
じたからです。東日本大震災では、帰宅
ため、協力会社との連携によって必要な
災害伝言ダイヤル等を絡めて考えるとい
困難者が発生した程度で、被害らしい被
人員を確保できるよう、協力会社への要
うような具体的な検討をすることができ
害はなかったのですが、それでも外出者
請をしていく必要があると考えておりま
ました。
の安否確認に四苦八苦しました。これで
す。最後にこの緊急対応がひと段落した
今までの当社には危機対応のマニュア
は首都圏で大地震が発生した場合には対
段階で、通常業務にも対応できるように
ルはありませんでしたが、BCPを策定
応できないとの強い危機感を覚え、事業
します。
してみて、緊急時に書面に書かれたもの
継続の重要性を痛感しました。
これまでビルの防災訓練などには参加
し、対策としてヘルメットや避難はしご
Q
を見て対応することの重要性がよくわか
何か新たな気づきはありましたか?
りました。
は用意されていますが、自社独自に特別
これまで、災害についてほとんど考え
な対策は行っていませんでしたので、そ
ることをしてこなかったため、被災を想
うした点についても併せて検討したいと
定すること自体に大変苦労しました。実
称号
中央三洋設備株式会社
考えました。
際に被災シナリオを想定してみると、全
本社所在地
東京都台東区上野5-3-1
設立
1972年9月
り、被災シナリオを想定する重要性がわ
資本金
2,000 万円
従業員数
36人
かりました。
代表者
代表取締役社長 牧 毅
事業内容
冷凍冷蔵機器、 空調機器、 厨房
機器、プレハブ冷蔵庫、太陽光発
電の設備施工及びメンテナンス
URL
http://www.c-sanyo.com/
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
く対応できていないことが明らかにな
当社は大型の冷凍冷蔵設備の設計・施
緊急連絡網も整備しているつもりでい
工・メンテナンスまでを食料品関係のお
ましたが、携帯電話番号しか考慮してい
客さまに対して行っており、今回これを
なかったため、検討していく中で、実際
会社情報
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
23
BCP 取組事例
製造業
BCP
策定のポイント
製造業界では、東日本大震災やタイ大洪水によりサプライチェーン
が寸断された経験から、多くの大手製品メーカーは1次のみならず
2次、3次のサプライヤーまでのリスク対応状況の把握と、調達の見
直しを進めています。サプライヤーに対するBCP取組状況の調査や
BCP策定の要求も増加しており、中小企業としてもBCPへの取組
の必要性が高まっています。また、BCP の策定に当たっては、外部
に依存している重要な工程も対象とすることが肝要となっています。
一方、このような環境において BCP に主体的に取り組むことは、新
規受注獲得の営業力強化につながると考える企業も増えています。
中小企業のBCPの取組として、生産拠点を複数保有することは資金、
人材の面から容易ではなく、まずは基本的な「現有資産での復旧」
の検討が重要と言えます。その上で、自社が甚大な被害をこうむっ
た場合の対策として「他地域の親密な協力会社による代替生産」の
検討が考えられます。
現有資産を基に早期の復旧を実現するためには、人や設備・装置の
損傷の予防・低減策の徹底と多能工化や設備・装置の標準化・多重化、
自社による設備・装置点検・修理能力の向上などが重要となります。
他地域の協力会社による代替生産を実現するためには、技術や部品・
素材および設備・装置・治具等の共通性、生産能力の余裕度、平時
における取引実績など事前に十分な検討と親密な協力関係の構築が
必要となります。
社会インフラは生産にとって重要ですが、特に上下水道やガスは復
旧に長時間かかる可能性がありますので、自社への影響を深く認識
する必要があります。
24
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
04
取 組 事 例 ●
Case Study
旭建材工業株式会社
復興の礎となる建材の
早期提供を目指す
対 象 事 業
コンクリート製品の製造・販売
被災シナリオ
●本社内は集積物が落下し、工場は建屋が一部破損
●装置の破損・故障
●製品・部品の一部が破損
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●燃料の多様化(ガソリン、軽油、プロパン、電気)
●崩れにくい製品、型枠の集積
●損傷状況の迅速な確認と対応判断(自社修理、業者修理)
●代行者による製造の再開
●原材料(セメント、砕石、砕砂)の自社引取
備 考
取締役は消防署、警察署からの震災時支援依頼を受け付け、対応内容を決定。
これに応じ、フォークリフト等の重機を出動させる旨を事業継続策に組み入れ済み。
Q
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
五十嵐 力男
た。
いては、ある程度事前に対策を打つこと
また、災害時、弊社には防災協定によっ
も可能ですが、インフラ(水道)の停止
弊社は縁石や側溝、車止めブロックな
て、インフラ(道路)復旧という新たな
に関しては、被災した後は復旧状況を逐
ど、道路工事に必要となるコンクリー
責任が発生します。実際には本業の復旧
一把握するということ以外に対応手段が
ト製品の製造・販売、セメントや砂利な
と並行して行うのですが、人員・重機な
なく、事業継続の観点では課題を残す結
どの建築材料の仕入れ販売を行っていま
どはインフラ復旧作業への割り当てを優
果となりました。
す。また自転車の前輪をはめ込み固定す
先させるため、残った人員・重機で本業
る自転車用スタンド『駐輪石クルストー
の復旧作業を行わなければなりません。
ン』といったオリジナル製品の共同開発
そのためにはどれだけ多く人員と重機を
および施工も行っています。
確保できるかが重要なポイントです。
想定される被災状況を前提に何が支障
ついては従業員が出社できない、負傷
となるかを考えたとき、人が来ない、設
した場合の代行者は誰なのかを事前に特
備の損傷といったことはもちろん大きい
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
定しておくこと、誰がどのような手順で
のですが、何よりもインフラ(特に電気
弊社は、もともと地元の消防署と防災
被災状況を把握するのかを明確にしまし
と水道)が大きな障害となることがわか
協定を結んでおり、震災時には、火災が
た。また、自力で復旧できる部分を早期
りました。自社内の対応がいくらできて
多発した場合の消火水の不足を想定して
に見極め、破損機器の修理依頼のタイミ
もインフラが復旧しないことには事業再
井戸水の供給による消火協力や、重機お
ングを逸することのないよう計画しまし
開のめどが立たないということです。
よび人員提供などを行う予定です。
た。
しかし、今回のBCP策定によって具
また日頃から独自に、年1回の防災訓
今後はこれらに加え、地域貢献の実現
体化した、自社内のいろいろな懸念事項
練の実施、井戸の設置、建材の倒壊対策、
に向けさらに検討を進めてBCPの中に
を一つ一つ改善していくことが、インフ
自衛消防団の検討など、首都圏で発生が
組み込んでいきたいと考えております。
ラ復旧後の迅速な事業再開につながると
懸念されている大震災に対して危機感を
持ち、常に災害対策を意識してまいりま
した。
Q
思いますので、この機会を活かせるよう
何か新たな気づきはありましたか?
しかし、そういった個々の対応や対策
プロジェクトメンバー全員がおのおの
が総合的に整理され、社員に共有されて
の立場で積極的に発言、提案し、討議を
いる状況ではなかったため、この機に見
重ねたので、問題意識を共有することが
直しを図り、全社で共有する必要がある
できたと思っています。携帯用BCPも
と判断し、BCP策定に取り組むことに
コンパクトにまとめることができまし
しました。
た。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
経営資源分析では、誰がどの業務をど
の程度こなせるかを洗い出すことができ
ました。代替要員による緊急時対応につ
東京湾北部地震を想定し、まずは従業
いて、具体的に担当者の名前を挙げて検
員の安全を確保すると同時に、家族を含
討し、指示系統を明確にする方法はこれ
めた全員の生活基盤を脅かすことがない
までと違うアプローチでした。
よう手を打つことを最優先に検討しまし
ただ原材料の調達や、燃料の備蓄につ
に、さらに検討を重ねていきたいと思い
ます。
会社情報
称号
旭建材工業株式会社
本社所在地
東京都練馬区高松5-19-18
設立
1961年(創業1959年4月)
資本金
1,000万円
従業員数
30人
代表者
代表取締役 五十嵐力男
事業内容
道路用コンクリート製品製造・
販売、 建築材料仕入販売
URL
http://www.a-kk.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
25
05
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社伊佐野製作所
耐心・耐身強化で、
機械加工事業を継続
対 象 事 業
通信機器部品の製造
被災シナリオ
●従業員の約半数が負傷
●旧工場は半壊、新工場は一部破損
●各製造装置は一部破損
●サーバーは全損、PCの大半が破損
●被災圏内の協力会社や外注業者が被災
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
● CADデータのバックアップの保管場所の検討
●協力会社(4 社)の緊急対応対策の明確化
●基幹サーバーの設置場所の検討
●図面等をお客さまからメールにて再取得
●使用可能な PCをCAD用PCとして使用
●被災圏外の業者に外注および外転
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
伊佐野 裕一
とに一部の製品を除き、自社で製造し、
ついてもいろいろなパターンが存在する
品質検査の後、納品するという工程で、
ことを改めて痛感しました。今後の課題
弊社は、創業83年の歴史があり、主
通信機器部品を製造しています。工程に
としてさらに検討を進めていきたいと思
に通信機器関連の部品を製造する精密板
よっては外注業者において2次加工をす
います。
金加工を行っております。近年、携帯電
る場合もあります。今回のBCP策定の
話や各家庭でのインターネット動画サイ
対象事業はこの通信機器部品の製造とし
トなどの利用によって、通信データは増
ました。本事業の中で、最初に復旧させ
加するいっぽうです。それに伴い、その
る必要がある業務は設計で、必要となる
弊社のニーズにあったBCPを策定す
情報量に見合った通信設備も年々増設さ
のはCADシステムです。
ることができました。しかし、実際には
れ続けています。
今回の被災シナリオでは、本社工場や
BCPを発動する機会がなければと祈る
弊社は海底ケーブル用中継器や各基地
被災圏内の協力会社や外注業者が被災す
次第です。
局整備などのインフラ事業の中で必要な
る想定ですので、まず上流工程で使用す
地震大国である日本にいる限り、未曾
通信機器の筐体をお客さまのニーズに合
るCADシステムとして、被災を免れた
有の事態に備え、BCPを策定すること
わせて製造しています。
PCにCADソフトをインストールするこ
は必要不可欠であり、その重要性から今
とによってCADシステムの代替システ
後、企業体にも求められる事になってい
ムとします。
くであろうと思います。
そして、自社で納期内に対応できそう
社員およびその家族の安全確保、企業
以前から企業としてのBCP対応の考
にないものについては、被災圏外の協力
存続のためにさらに予防・低減対策を強
慮はしておりましたが、東日本大震災に
会社に外転し、これと並行して、被災し
化し、日々改善することが真のBCPに
より弊社の大切なお客さまも被災に遭わ
た製造装置を調整もしくは修理していく
なると感じました。
れ、また弊社でも帰宅困難になった社員
ことで、自社における製造工程を立ち上
が何名かいました。その際、社員を帰宅
げて、目標の復旧指標を達成するように
させるべきか否かの判断に困ったため、
しました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
どういう状況になったらどういう対応を
するかという判断基準や具体的な対応策
を明確にしたいと考えました。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
また、日本の産業界で大半を占める製
電気・水道・ガス・電話など、日常当
造業の一員として、このような不測の事
たり前にあるものがなくなってしまう
態に遭っても、1日でも早く復旧し、事
ことで、製造業が稼働しなくなる程ライ
業継続を果たして製品を供給すること
フラインは重要ですが、今回のBCP策
が、自分達の使命であると感じたのが
定によって、協力会社や外注業者などス
BCP策定に取り組んだ理由です。
テークホルダーとの連携を確立すること
称号
株式会社伊佐野製作所
本社所在地
東京都品川区東大井2-20-7
により、即座に復旧し稼働する事前準備
設立
1929年2月
資本金
2,000 万円
従業員数
24人
代表者
代表取締役社長 伊佐野裕一
事業内容
通信機器部品製造
URL
www.isano-ss.co.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
を導きだすことができました。
また、季節・時間帯により被害状況が
弊社では、お客さまからの図面データ
異なる現実を考慮に入れなければならな
をもとに作業指示書を作成し、これをも
いことや、水害やインフルエンザなどに
26
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
06
取 組 事 例 ●
Case Study
岩岡印刷工業株式会社
営業拠点の切替で
印刷事業の受注体制を継続
対 象 事 業
印刷事業
被災シナリオ
●東京営業部で震度6強、埼玉本社工場で震度5強
●営業部員全員が帰社、帰宅困難
●製版サーバーが全損
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●本社および営業部のPC設置場所の変更と落下防止策の実施
●製版サーバーの設置場所の変更と転倒防止策の実施
●営業拠点の埼玉本社工場への切り替え
●刷版以降からの業務の開始
代表取締役社長
岩岡 正哲
Q
事業内容を教えてください。
まの機会喪失につながる可能性がありま
み弱みがかなり明確に認識できました。
す。また特に仕掛品については納期が決
そしてこの被害状況をもとに、具体的
当社は企業が手掛ける商品、製品の手
まっているため、事業継続、迅速な復旧
な時間軸を通して、初動対応や復旧指標
引き、解説、ご利用ガイドの製造を通し
が重要となります。
を達成するための各部門の行動を検討し
て、顧客満足度の向上を図るサポートを
今回は営業の拠点である東京営業部の
ていきましたが、ここでは電気や通信、
行っています。利用者目線で読みやすさ
被害が大きく、担当者がお客さまとやり
交通網等の社会インフラが事業復旧へ及
を考え、書体選びから、組版、利用する
とりができなくなった想定で、対策を立
ぼす影響の度合いをあらためて認識させ
シーンに最適なサイズなどをご提案でき
てました。
られました。
るよう、印刷機を各種取り揃えて、加工
具体的には、その日のうちに埼玉本社
からジャストインタイムに対応した納品
工場の進行管理グループが直接お客さま
までをご提供しています。
と連絡を取る体制に移行することによる
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
営業拠点の埼玉本社工場へ切り替え、翌
BCP策定によって気付いた点(特に
日からは、生産可能な装置による生産開
弱点)を早急に改善、実施したいと思っ
始、出社可能な要員による生産体制、生
ております。これでようやくスタート地
当社は品質、環境、情報セキュリティ
産可能な品目から生産開始、全工程(編
点に立てたと思いますので、PDCAサイ
の3つのISO 認証を取得し、統合的マネ
集、刷版、印刷、製本)の内の刷版以降
クルを早く一巡できるようにします。
ジメントシステムとして活動を推進して
からの業務を開始することで目標の復旧
特に策定事業を中小企業支援事業とし
います。今回の BCPの策定には、従来の
指標を達成するようにしています。そし
て取り上げてくださった東京都には感謝
統合的マネジメントシステムがカバーし
て、これと並行して、破損した装置の修
と御礼を申し上げます。平時においては
ていない領域を補完するという目的で取
理依頼や材料の再調達、東京営業部員の
ともすると必要性を感じながらも優先順
り組みました。今後はさらに労働安全衛生
帰社・帰宅支援や東京営業部の修復およ
位が下がってしまうこうした手の回りに
マネジメントシステム(OHSAS18001)
び営業車の回収などを実施します。
くい分野に、人と時間と費用を短期集中
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
の取得を目指し、当社が目標とする「顧
客に安心、安全な製品をお届けし、社員
が誇りを持って働くことのできる存在感
のある会社」を目指していきます。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
で投下し形にすることは、中小企業の高
何か新たな気づきはありましたか?
いニーズのひとつだと思います。それを
実現した皆さんのご努力は大変だったと
机上の空論で終始することがないよう
思います。これからも足腰の強い企業育
に最も配慮しました。
成のためのプランを充実し、ご支援頂き
まず事業影響度分析によって、当社の
たいと思います。
事業内容を改めて考え直したところ、目
当社は地震によって東京営業部と埼玉
標復旧時間や目標復旧レベルを厳しく設
本社工場の2拠点に被害が出たという想
定する必要があることを確認しました。そ
定で BCPを策定しました。
してその事業を構成している業務、さらに
対象は中核事業である印刷事業としま
はその業務で使用している経営資源の状況
した。本事業では主に保険会社様や銀行
を洗い出すという作業は、今まで行ったこ
様が営業ツールとして使用する約款や重
ともなく、細かくて大変でしたが、対象リ
要事項説明書などを製作しており、これ
スクに対して具体的に被害状況を想定して
らの納品ができなくなった場合、お客さ
いったことにより、現状の経営資源の強
会社情報
称号
岩岡印刷工業株式会社
本社所在地
埼玉県入間郡三芳町北永井宮前157-3
設立
1975年10月
資本金
8,000 万円
従業員数
145人
代表者
代表取締役社長 岩岡正哲
事業内容
商業印刷の企画・取材・執筆から
製造・全国発送の業務
URL
http://www.iwaoka.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
27
07
取 組 事 例 ●
Case Study
上原ネームプレート工業株式会社
自動車の内外装部品の
品質と納期を守る
対 象 事 業
樹脂めっき
被災シナリオ
●施設:損傷を受けるが立ち入りは可能
●設備装置:一部破損
●システム:稼動不可、図面データ消失
●製品・部品・材料:完成品、仕掛品、部品在庫破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●被災状況確認シートによる迅速な被災状況確認
●社員に対する教育・訓練の定期的実施(※多能工化)
●機械設備業者とサプライヤーへの緊急連絡網の構築
●旭川事業所からの人員応援
●バックアップデータの活用
●旭川事業所による代替生産
事業内容を教えてください。
代表取締役
上原 洋一
破損、機械設備が故障してしまうという
に大変時間がかかりました。その結果を
想定で納期の遅れをできる限り短縮する
踏まえて、あたりまえですが一つ一つの
弊社は自動車内外装部品、マークやエ
必要が発生すること、また従業員とその
機械設備に対しての予備の購入や保管を
ンブレムの製造を行っています。マーク
家族の被災により出勤率が低下し、事業
検討しながら予防・低減策と事業継続策
やエンブレムはプロダクトが持っている
を継続するのに大きな影響が出るという
をまとめるのは大変な作業でした。
イメージに付加価値を加え、ブランドイ
想定で対策を検討しました。
しかしそういった細かい検討の過程
メージを高める《顔》と言えます。そう
完成品・仕掛品の破損に対しては、予
で、被災した時には具体的に「誰が、ど
いった意味で、自動車の内外装部品を作
防・低減策を中心としました。機械設備
うする」と問い直した時…個人(担当者)
ることを通して、お客さまである企業の
についてはその被災箇所の損傷具合に応
に依存していることがとても多かったこ
《顔》をつくるお手伝いをしていると自
じて復旧に必要とされるおおよその時間
とに気が付きました。それを受けて今後
を整理し、復旧の過程では、各業務につ
は事業継続の視点も新たに加えながら、
いて目標復旧時間に至るまでの担当者ご
代替者の育成・多能工化に取り組みたい
との役割分担を明確にしました。これに
と思います。
負しております。 Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
よって自社の被災状況を迅速に把握する
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
弊社は労働安全衛生法によって定めら
とともに、復旧の目安を早期に見通すこ
れている安全衛生管理組織による工場巡
とができるようになります。また万が一
視(不安全箇所の指摘・改善活動)や、
サプライヤーや協力工場等が被災した場
“演習をやっていない BCP を持つく
顧客指導による取引先企業災害防止協議
合に備えて各代替先まで検討を致しまし
らいなら、持たない方がマシ” との格言
会活動(輪番制にて各工場巡視および指
た。
を肝に銘じ、まずは全社員への教育そし
摘・改善活動)等、安全を重視した対応
そして従業員および家族の被災や社会
て演習から進めていきたいと考えており
を行っています。
インフラの停止等により想定される出勤
ます。
また、ISOを取得している関係で、個
率の低下は、他事業所からの応援で対応
予算にもよりますが備蓄も必要になり
別のトラブルに関する対応もこれまでに
します。今回各業務で必要となる人員と
ますし、予防・低減策の準備も必要にな
ノウハウとして蓄積しています。しかし
スキル、施設内で被災が想定される場所
ります。
東日本大震災を受け広範囲に影響が及ぶ
と従業員を特定したことに加えて、全従
まずはできるところから確実に進めて
場合、会社としてどのように顧客、従業
業員の自宅と会社の距離を洗い出しまし
いくことが肝要と考えます。
員、地域社会に対応しなければならない
た。これにより多能工化の優先順位が明
のかということについて検討していない
確になりましたので、今後対応していき
ことに気付き、特に顧客からの要望も強
たいと思います。
くあり、今回本格的に BCP 策定に取り
組みました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
弊社のコアビジネスである樹脂めっき
は、工程も多く機械設備の集合体である
今回は地震災害にあった場合の BCP
ため、事業を継続するために最も重要な
を策定しました。
業務の洗い出しと、その業務の経営資源
発災の際には完成品・仕掛品の一部が
分析(人・施設・装置・情報資産 ・・・)
28
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
上原ネームプレート工業株式会社
本社所在地
東京都台東区元浅草3-13-14
設立
1956年5月
資本金
9,000 万円
従業員数
300人
代表者
代表取締役 上原洋一
事業内容
自動車の内外装部品、
エンブレムなどの製造
URL
http://www.unp.co.jp
08
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社ウテナ
社内バックアップ体制強化で
化粧品の提供を維持
対 象 事 業
化粧品事業(国内セルフ)
被災シナリオ
●従業員または家族の被災による出勤率の低下
●サーバーの破損による受発注システムの停止
●サプライヤー(購買・生産・物流拠点)の一部被災
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●サーバー周辺の倒壊防止
●サプライヤー被災時の代替先調査
●業務スキルとスキルシートの活用による対応可能人員の明確化
●バックアップデータの活用による受発注システムの復旧とファクスの活用
●各サプライヤーの代替先の活用
●生産拠点からの配送
常務取締役
青﨑 正紀
Q
事業内容を教えてください。
受注出荷業務については通信手段が確
成度が高いBCPは策定することはでき
保できる場所であれば、業務を継続でき
なかったと感じています。ステークホル
1927年の設立以来、化粧品や医薬部
ることがわかりました。
ダーを念頭におき、幅広く自社内外の連
外品の製造販売業と、不動産賃貸業を営
また、製品発注業務については、原材
携を模索しながら合意し、具体的に文書
んでいます。
料と包材の供給が一時ストップした東日
化することの困難さをあらためて思い知
主力ブランドはスキンケア商品とヘア
本大震災時の経験を生かし文書化しまし
らされました。 ケア商品があり、数多くのブランドを展
た。その内容は、課題ごとにクロスファ
今回参加したメンバーは、被災時に中
開しており、幅広い年代のお客さまから
ンクションミーティング(サプライヤー
心的な役割を担ってもらうことになりま
長くご支持をいただいています。
含む)を開催し、その中で取引先被災状
すが、彼らを中心に全社員が理解し実行
況と原材料や包材の供給状況を把握し、
できるよう、取り組んでいきたいと思い
各商品別の生産・出荷スケジュールを調
ます。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
これまで防災対策として、毎年行う消
防訓練のほか、社内備品の転倒防止対
策、安否確認システムの導入、会社と自
整し決定することなどです。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
宅間の距離から想定される帰宅困難者の
BCP策定の過程で改めて事業や業務
確認、避難用品(ヘルメット・手袋・ホ
を分析し、必要となる経営資源への具
イッスル等)の配布、滞在用品(水・食
体的な対策を検討することに、たいへん
料・毛布・簡易トイレ等)の備蓄などを
苦労しました。個々の経営資源には依存
行ってきました。しかし実際に東日本大
関係があり、そのことに注意しながら対
震災を経験し、今のままでは不十分だと
策を検討しなければならなかったためで
感じ、BCPの策定に取り組みました。
す。その中で気付いたことは、BCPを
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
策定する際には「事業継続計画ライフサ
イクル」を想定し、ステップごとに状況
や目的、ゴールを明確にしながら、常に
今回は地震災害にあった場合のBCP
結論を出し合意していくことが重要だと
を策定しました。
いうことでした。
対象事業は売上の大半を占める中核事
以前に行っていた自社での危機管理
業の国内向け化粧品事業とし、対象業務
は、各部門で個々にマニュアルや実行計
はお客さまに商品を供給するために必要
画を策定していましたが、今回は事業に
不可欠な、受注出荷業務と製品発注(調
関わりのある全部門の責任者が集まり、
達および生産計画)業務を選定しました。
具体的に対策を検討し決定できたことが
今回のプロジェクトでは被災シナリオを
一番の違いだと感じています。
かなり厳しく想定し、その結果、事業の
継続に最低限必要な経営資源(帳票類、
機器、要員、代替要員)を、具体的に特
定することができました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
自社のノウハウだけではこれだけ完
会社情報
称号
株式会社ウテナ
本社所在地
東京都世田谷区南烏山1-10-22
設立
1927年4月
資本金
5,000 万円
従業員数
150人
代表者
代表取締役社長 岩倉具房
事業内容
化粧品・医薬部外品製造販売、
不動産賃貸業
URL
http://www.utena.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
29
09
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社クボプラ
板加工の技術継承と
多能工化で事業を継続
対 象 事 業
プラスチック機械加工
被災シナリオ
●工具棚の倒壊/治工具の破損
●生産設備の一部倒壊による破損/検査機器の破損
●完成品と仕掛品の一部破損 ●サーバー、PC の破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●生産設備周りの整理整頓、一部生産設備の固定
●バックアップデータの二重化
●図面の運用方法の変更と徹底
●多能工化の推進 ※自主的な朝練による技術習得機会の実施
●ステークホルダーとの迅速な緊急連絡体制の構築
●外注先の活用
●外部検査機器の活用 ※人員の移動による現地対応
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
久保 安宏
だと考えております。
務と並行してBCP策定を進めましたが、
被災シナリオから納期の遅れをできる
検討すべきポイントが分かりやすくまと
プラスチックの機械加工および板加工
限り短縮する必要性が発生すること、ま
まっていたので、通常業務でバタバタす
を行っています。一般的にプラスチック
た人員不足による加工業務への影響が発
る中でもBCP策定のために何をしなく
加工業者は機械加工か板加工のどちらか
生することを想定し、対応策を考えてい
てはいけないのかがよくわかりました。
に特化しているものですが、当社は機械
きました。
加工と板加工の両方に対応できることが
納期遅れの短縮には、生産計画をつか
特色です。特に板加工については職人の
さどる営業部の機能をいち早く立ち上げ
高い技術に裏打ちされたクオリティの高
て、被災した製品や仕掛品の出荷計画を
防災の備えが必要だとわかっていても
い製品を提供できると自負しています。
早急に立て直せるようにしました。
行動に移すにはハードルが高いと思って
また被災による人員不足については、
いましたが、BCP策定の支援を受け行
特に技術的に高レベルを要求される製品
動に移す具体的なステップが明確になり
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
については外部に依頼することが難しい
ました。
これまで特に防災対策は行っていませ
ため、従業員が自主的に実施している朝
今回、想定した被災シナリオは正直厳
んでしたが、東日本大震災を機に考え
練の成果が多能工化の実現にそのまま貢
しすぎるかな、とも思っています。でも
たほうがよいのかなと思うようになりま
献すると考えております。
厳しめに設定しておくことで最悪のケー
した。私は長年スカイダイビングをやっ
ているので、いつ何時何が起こるかわか
らない、生死が隣り合わせにある、とい
Q
スが発生したとしても事業を継続するた
何か新たな気づきはありましたか?
う感覚が染みついています。また、これ
BCP を策定している最中にも大雨で
は当社の自慢できる特徴の一つなのです
社員が通常の通勤ルートでは出社できな
が、社員が皆「クボプラは自分の会社だ」
い、入院のため一週間程度出社できない
と思って責任感を持って働いてくれてい
など、通常とは異なる対応が必要となる
ます。BCPを策定することで、どんな
事象が発生しました。これらはまったく
災害が起こっても大切な社員とその家族
の偶然の出来事ですが、普段からBCP
の生活を守る具体的な手立てにしたいと
を考えて業務を継続するために備えるこ
思いました。
とが大切だと改めて思いながら予防・低
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
と自体が訓練になっていると思います。
できました。地震などの災害発生時だけ
でなく、日常のトラブル発生時にも今回
のBCP策定の経験を活かせるのではな
を策定しました。
いかと思っています。
当社のBCP策定の目的は、いかなる
また、これまで防災計画等を社内で話
災害が起きても社員と家族の生活を守
す場合、アドバイスをくれる人もいな
り、安定した生活を実現することです。
かったのでコンサルタントの支援を利用
そしてその実現には顧客への影響を最小
し適切なアドバイスを受け、知恵をお借
限にとどめ、事業を継続することが必要
りできたのは有難かったです。通常業
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
と思いますし、最悪のケースで考えるこ
減策、事業継続策の検討を重ねることが
今回は地震災害にあった場合のBCP
30
めの対応をスムーズに実行できるだろう
会社情報
称号
株式会社クボプラ
本社所在地
東京都青梅市長渕4- 239
設立
1966年3月
資本金
2,000万円
従業員数
19人
代表者
代表取締役社長 久保安宏
事業内容
プラスチック総合加工および
関連事業
URL
http://www.kubopura.com
10
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社塩野製作所
機械加工事業の納期達成と
受注継続の両方を追及
対 象 事 業
機械加工事業
被災シナリオ
●マシニングセンタの40%が逆電流で破損
●三次元測定器が全損
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●マシニングセンタの予備ヒューズの備蓄
● PCの設置場所の変更
●完成品・仕掛品の棚の固定と保管場所の変更
●他のマシニングセンタからの流用によるヒューズの交換
●検査作業における手作業による測定
代表取締役社長
塩野 博万
Q
事業内容を教えてください。
フライス削り、中ぐり、穴あけ、ねじ立
特に意識していなかった電気・通信・道
てなどの異種の加工を1台で行うことが
路といった社会インフラの重要性にあら
当社は精密金属機械部品の製造を行っ
できる装置で、本事業においては中核と
ためて気付かされました。
ております。金属素材の精密加工が専門
なる装置です。今回は夜間稼働している
で、難削材や複雑形状も得意としており
マシニングセンタ(全マシニングセンタ
ます。多品種少量の製品を製造するため、
の 40%)の全てが逆電流でヒューズが
最新鋭の加工機(5軸マシニングセンタ
破損、同様に重要な装置である3次元測
災害時に、どのように動けばよいのか
他 ) を 24 時間稼動させて対応しており
定器が全損したという想定ですが、装置
が具体的にイメージできるようになりま
ます。
については破損を防ぐことよりも、それ
した。
主な製品は、航空機用精密機械加工部
をどうやって代替するかについて、いろ
BCP策定はできましたが、今後そろ
品、宇宙開発関係部品、人工衛星搭載用
いろと議論を重ねました。
えなければならない品物や、作らなけれ
機器、またコンピュータ機器用機械加工
特にヒューズの交換ですむマシニング
ばいけない文書も残っています。早急に
部品等です。
センタに関しては、破損したヒューズが
準備し、今回想定したシナリオとは違っ
調達できるまでの間、他の稼働させてい
た状況でのシミュレーションや演習を行
ないマシニングセンタからヒューズを流
い、いざと言う時に役立つような BCP
用します。また3次元測定器については、
にしていきたいと考えています。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
防災組織はありましたが、具体的な活
これが復旧する間は手作業による測定で
動は行っておりませんでした。
検査作業を実施することで目標の復旧指
以前からBCPには多少興味がありま
標を達成するようにしています。
したが、3月の東日本大震災で、他人事
ではないと痛感しました。幸いにも当社
には被害はありませんでしたが、この日、
Q
業務で必要な経営資源を整理できたこ
会社とは連絡が取れず、状況が把握でき
とにより、今まで漠然としていた災害時
ませんでした。
の脆弱性と、それに対する予防・低減策
また他社から、「今回の震災でBCPが
を明確にすることができ、それに伴い従
役に立った」 という話をうかがったこと
業員のリスクに対する意識も向上してき
もあり、BCPの策定に取り組みました。
ました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
私は海外に出張中で、いくら心配しても
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
被災シナリオの想定にあたっては、当
初マシニングセンタなどの装置が物理的
にどの程度の被害にあうのかを検討して
会社情報
当社の BCPは、中核事業である機械
いましたが、停電時には、稼働中の装置
称号
株式会社塩野製作所
本社所在地
東京都羽村市神明台4-4-16
加工事業を対象に、7日以内に納期ベー
の慣性により、逆電流が発生し、装置の
設立
1964年5月
スで 80%、受注ベースで 65%レベル
ヒューズが破損してしまうという新たな
資本金
3,500 万円
に復旧することを目指し、対策を検討い
発見がありました。また被災シナリオに
従業員数
76人
代表者
代表取締役社長 塩野博万
たしました。
もとづいた事業継続策の検討にあたって
事業内容
航空機部品製造
マシニングセンタは、目的に合わせて
は、あって当たり前くらいに思っていて、
URL
http://www.shiono-mfg.com
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
31
11
取 組 事 例 ●
Case Study
昭和化学工業株式会社
ろ過助剤などの
産業の必需品の安定供給を
対 象 事 業
パーライト製品の製造、販売
被災シナリオ
●本社 ・ 東京支店(目黒)および栃木工場が被災
どちらも建屋は問題ないが、施設内は物が散乱
工場も主要設備への損害はあるが自社での復旧は可能
●人的被害30%、PCは70% 損害、サーバーは損傷なし
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
【本社・東京支店】
●外部サービスは代替会社と別途契約または協定を締結 ●東京販売システムが動かない場合、大阪支店が手作業で受注業務を行う 【栃木工場】
●工場の事務所は耐震診断後、必要により耐震補強を行い、製造機器、装置の内包装機
はアンカー増強、基礎補修を行う
● LNG が届かない場合は、関西電力備蓄基地から輸送する
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
石橋 健藏
被災シナリオでは本社・東京支店とそれ
うかたちで、BCPを策定できてよかっ
らを製造している栃木工場の2カ所が同
たと思っております。コンサルタントの
当社は、珪藻土・パーライトの採掘・
時に被災したという想定で対策を検討し
第三者の視点とともに、細かく詰めてい
加工・販売を中心に、プール用塩素剤な
ました。
くといろいろな問題点もわかり、現実的
ど水処理化成品の販売 ( 総販売代理店 )、
栃木工場の経営資源の中でも、LNG
な解決策も検討することができました。
デオドラント、ユニットバスなど生活関
はろ過助剤の製造工程(焼成)に必須な
連用品の製造・販売を行っております。
ものです。それを貯蔵するタンクには予
中でも珪藻土・パーライト事業では、天
防・低減策として感震装置を設置済みで
然資源である珪藻土とパーライトを原料
すが、LNG については設備および規制
プロジェクトメンバーはほぼ全ステッ
にろ過助剤・建材・充填剤を開発・生産・
の関係上、備蓄を3日分しか持つことが
プに出席して策定を進めました(突発的
販売しており、特に珪藻土ろ過助剤で高
できません。そのため仮に供給が途絶え
な対応によって欠席せざるを得ない場合
いシェアを持っております。
ると備蓄分だけではライン稼働が 50%
はありましたが)。2カ月半と言う短い
でも2~6日で製造できなくなるという
期間でありましたが全社的な BCP策定
最大のボトルネックになります。よって
ができ、情報共有もできたのでよかった
もし長期契約している千葉の業者から
と思います。策定手順を教えていただい
今回の東日本大震災により、当社のろ
LNGが届かない場合は、関西電力備蓄
たので、いただいたツールを使い、今後
過助剤が上・下水道からビールなどの飲
基地から輸送することで対応するように
は自社のみで、パーライト事業に続き珪
料業界、食品業界や製薬業界などの産業
対策を改めました。
藻土事業と他工場にも展開していきたい
界において不可欠なものであることを改
また本社・東京支店の販売機能に関し
と思っております。
めて痛感致しました。
ては、予防・低減策として、耐震補強を
例えばビール製造などは発酵に3カ月
実施し、災害時には当該機能を大阪に移
かかりますが、その後ろ過ができないと
行することを顧客に事前に案内しておき
台無しになってしまいますし、ろ過助剤
ます。そして万が一、本社・東京支店に
の不足はその他あらゆる商品の生産を止
被害が出て、販売システムが稼働しない
めてしまうことになります。
場合には、大阪支店が受注販売機能を手
さらに当社はろ過助剤におけるマー
作業で代替することで事業継続を図るこ
ケット・シェアが高く、代替品の調達が
とにしました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
難しいため供給責任が大きく、そういっ
た社会的責任を果たすためには BCP策
定が急務であると考えました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
今回のような BCPの策定は自社だけ
では難しかったと思います。開始当初は
BCP策定の時間的制約から、栃木工場
地震に対する BCPを策定しました。
のパーライトろ過助剤のみに限定した方
対象事業は先に述べたとおり各産業の
が、確実に BCPが策定できると言われ
工程上必須であるパーライト製品のろ過
たのですが、建材用の製品も別ラインで
助剤と建築材料の製造・販売としました。
生産されるため、全パーライト製品とい
32
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
会社情報
称号
昭和化学工業株式会社
本社所在地
東京都目黒区下目黒2-23-18
設立
1933年11月
資本金
5億 9,800 万円
従業員数
連結210人
代表者
代表取締役社長 石橋健藏
事業内容
珪藻土およびパーライトの採掘、
加工、販売。プールなど水処理
用化成品の販売。デオドラント
など生活関連用品の製造、販売
URL
http://www.showa-chemical.co.jp
12
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社精興社
伝統の印刷技術を3拠点の
自立と連携で継続
対 象 事 業
出版印刷事業
被災シナリオ
●神田事業所(震度6強)
PC50台落下、SCALAB停止、i5破損
●朝霞工場(震度6弱)
紙、保管棚落下(在庫量100t)
●青梅工場(震度5強)
CTP1台、刷版1台、印刷機1台故障
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●紙倉庫の用紙積み方の検討
●バックアップの保存方法の検討
●緊急時の印刷機非常停止行動
●印刷・制作現場との状況確認
●事業継続可能な運送業者、製本会社との連携の取れた行動
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
青木 宏至
討しました。
確にしました。
当社は拠点が三つあり、それぞれ役割
印刷をする上で当たり前のように使用
1913年の創業以来、「優れた印刷物
が異なります。東京湾北部地震における
していた「水」が事業復旧の際には必須
で社会に貢献する」をモットーに、数多
被災状況は拠点によって異なり、災害発
であることに現場が気づき、貯水タンク
くの書籍を手掛けてきました。現在は活
生時には、通信手段が途絶えると予想さ
にどの位の水量があれば何枚印刷が可能
版から平版印刷・デジタル印刷に移行し、
れるため、「3拠点は先ずは自力で復旧
かを確認する機会になりました。
文字印刷(文庫本等)、カラー印刷(児童
を試みる」ことを基本方針にしました。
また、IT情報だけでなく、協力会社で
書等)、特殊印刷(会社案内等)と幅広く
お客さまとの企画・調整・制作を行っ
ある物流会社に委託している定期社内便
行っております。
「総合印刷会社」として、
ている神田事業所では、営業によるお客
が必須であること、また交通路分析から、
新技術・新製品の開発に取り組み、企画・
さまの意向確認および出版物の編集デー
神田と朝霞の間は 20kmで最悪の場合、
制作から納品までの一貫した生産管理シ
タを管理する情報システム「SCALAB」
社員が徒歩で移動可能であることも認識
ステムのご提供を目指しております。
と生産管理システム「i5」の対策を優先
できました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
しました。
文字書籍を印刷する青梅工場では、制
作部の編集作業継続策と工場の印刷設備
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
3.11の際の体験や、防火訓練の反省会
の保護策を、多色刷の朝霞工場では、印
工場、事業所で環境 ISOをけん引した
における意見などから、緊急に大規模地
刷設備の保護策と荷崩れが心配される紙
下地があり、その上で BCPに取り組み
震対策を策定する必要性を感じました。
倉庫の安全策、そして物流対策を検討し
ました。今回の策定では3拠点の担当が定
弊社の拠点は青梅(本社と文字組版印刷
ました。
期的に集まり、議論する機会が増えたこと
工場)、神田(営業と多色制作)、朝霞(多
継続策としては、電気・水・用紙・資
から、今後もこの活動が全社的な取組に
色印刷工場)にあり、3拠点それぞれで
材・運搬手段・製本機器の早期確保、印
なり、うまく回りそうだと確信しました。
立地と役割が異なることから、拠点ごと
刷設備の早期復旧手順の確立、各外注業
メンバーにとっては会社全体の業務を
にリスク対策が必要になる点が最大の懸
者の被災状況およびお客さまの意向の確
知る良い機会となり、他の拠点に後れを
念事項でした。そこで3拠点のリスクを
認・調整が重要になります。
取らないようメンバーの意識が強くなっ
確認したいと考え、BCP策定支援事業
に応募致しました。
弊社は ISO14001を取得し、社員が
Q
たと強い手ごたえを感じています。
何か新たな気づきはありましたか?
今後、詳細を作り込み、緊急時に動け
るよう訓練し、「震災があっても精興社
PDCAを回す取組を経験していることか
改めて拠点ごとに事情が違い、情報共
は大丈夫」といえるようにしていきたい
ら、BCPの取組にもその経験が役立つ
有が難しいと実感しました。工場が立ち
と思います。
一方、今回の取組が社員の教育に繋がる
上がっても神田事業所の営業に確認が取
ことも期待しておりました。
れないと作業が継続できないものもある
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
会社情報
ことから、社員間の連携と各拠点での情
称号
株式会社精興社
本社所在地
東京都青梅市根ヶ布1-385
報集約、連絡窓口の確立などのルール作
設立
1946年2月
資本金
1億円
従業員数
208人
代表者
代表取締役社長 青木宏至
事業内容
出版印刷、 商業印刷、自費出版
URL
http://www.seikosha-p.co.jp
りが必要だと感じました。
本BCPの対象は中核事業である出版
社内の基幹システム等が被災したこと
印刷事業で、その中でも今回は納期が決
をイメージし、復旧の優先順位を議論し、
まっている印刷物を優先させる計画を検
書き出すことで各事業所の復旧手順を明
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
33
13
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社関口建材店
生コンクリート供給の継続を
共助で実現
対 象 事 業
生コンクリート製造
被災シナリオ
●事務所棚の落下および室内乱雑、倉庫一部破損
●生コン製造にかかわる設備の破損
●インフラの被災状況は都の想定に準拠
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●工事現場での安全対策の徹底
●落下・転倒防止対策の実施
●外部サーバーの検討
●重要顧客、重要仕入先、金融機関と 2 日以内の対策協議
●トンパック(コンクリート凝固防止用土のう)を使用した緊急廃棄
●パートナープラントとの連携
代表取締役社長
関口 博明
Q
事業内容を教えてください。
の同業者間融通を事業継続策の柱としま
修会でコーラを利用した凝固防止の実験
した。社員や家族の安全確保は当然のこと
などを実施(1週間固まらなかった)す
弊社は生コンクリートの製造販売、お
として、災害時に自社だけが生き延びるの
るなど、本策定をきっかけに新たな可能
よび左官材料・コンクリート製品・建築金
ではなく、近隣住民や同業者が協力し合っ
性も見だせました。
物・建設土木資材・ガーデニング用品・ブロッ
て、復旧を果たすことを目標としました。
ク・レンガ等の販売を行っています。製造
具体的に言いますと、現在でもヘル
工程においては太陽光エネルギーの活用
メットや安全靴の着用などを義務付けて
やコンクリートを砕石として再利用する
いますが、これらをさらに徹底し、現場
BCP策定以前の足りなかった部分や
など、
エコロジーにも力を入れております。
で被災した場合は車内への避難、2次被
改善すべき点を文書にできたことが成果
害の防止として輪留めを実施し、身の安
だと思います。対策についてもより具体
全の確保に努めるようにします。
的な検討が進み、安否確認手段に関して
一方、事業継続策については、災害時
は自動車無線、通信手段として以前より
以前から自社なりの災害時対策は実施
に入手困難となることが予想される骨材
検討していた PC —ファクスなど、災害を
してきました。停電時にはソーラー発電
やセメントの供給を、近隣同業者同士で
想定することによって導入が現実味を帯
にて事務所を維持できるようにしており
融通し合うよう協議することを決めまし
びてきました。また自社内での演習につ
ます。また生コン製造に必要な水の確保
た。もちろん状況によっては当方が被災
いては、形がい化することのないよう、
と断水時の近隣への提供を想定し、雨水
した同業者に提供するということもある
毎月各社員が持ち回りで演習担当者とな
ドラム缶100本分の地下貯蔵タンクを
ため、その時に在庫しているものを対象
り、計画・実施することで浸透を図るこ
用意しており、井戸水も使用可能です。
に、エンドユーザーのニーズを考慮しつ
とに決めました。
さらに車の燃料は常時、半分以下にしな
つ、互いの被災状況によって判断をして
今後はBCPを発動した時点で、基本
い方針にしており、東日本大震災の折も
いくことになると思います。
方針である近隣同業者との業務提携がで
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
仕事が滞ることはありませんでした。
弊社は災害時には地域に貢献したいと
考えており、現行の事業やこれらの対策
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
きるかが最大の課題であり、さらには同
何か新たな気づきはありましたか?
業者との連絡が速やかに行われるよう訓
練することが演習の最大のテーマになる
が本当に有効かどうかを検証すべく、こ
当社は規模が小さいため、毎回の参加
と思います。今回東京セメント建材協同
の機会を利用してBCP策定に取り組も
者が少数ということもあり、組織立った
組合等で同業他社と同時にBCP策定を
うと考えました。
BCP策定とはなりませんでした。また
行ったことで、集合研修や合同演習で他
短期間で仕上げなければならず、対策に
社の意見を聞くことができ、新たな気付
ついてもっと検討を重ねたかったという
きがありました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
思いはあります。
今回はわが社の主要事業である生コン
ただ状況を細かく想定して検討する過
クリート製造を対象として、地震に対す
程で、生コン車の発災後の対応や従業員
るBCPを策定しました。
の生命安全対策など新しい発見がありま
大地震が発生した際、社員の身の安全を
した。
確保するため、日頃の安全対策を強化する
当初コンクリートの緊急廃棄にトン
ことを予防・低減策の中心に据え、試験機
パックの利用を検討しましたが、その後、
器メンテナンス業者への早期連絡、原材料
参加した東京セメント建材組合主催の研
34
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
本社所在地
設立
資本金
従業員数
代表者
事業内容
URL
株式会社関口建材店
東京都練馬区平和台2- 47- 1
1969年11月(創業1955年)
1,000万円
5人
代表取締役社長 関口博明
生コンクリート製造販売、コンクリート
二次製品製造販売、建築材料一式販売
http://members3.jcom.home.ne.jp/k.s.k
14
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
フランチャイズ事業
被災シナリオ
●外部勤務者(約10人)とは連絡不能
●本社一部損傷も立ち入りは可
●本社サーバー 10台中2台ダウン
● IT 7 システム中1システムダウン
株式会社ダイアナ
全国800のサロンの経営と
顧客サービスの継続
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
● IT 固有技術の研修、OJT の実施、マニュアル整備
●外部データセンターの脆弱性対策(二重化等)
●非常用電源の確保
● IT 関連業務の代替要員による継続
●時間外コールセンター対応
備 考
●情報システムに対する通常想定される障害対策は確立済み
●外部データセンターに依存している業務の脆弱性の見直しが必要
Q
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
徳田 充孝
今回当社は、首都圏直下型大地震を想
防・低減策や事業継続策を再検討し、書
定しBCPの策定を開始しました。本社
面やフローに落とし込むことができまし
プロポーションメイキングの総合コン
社員の初動対応に関しては前述の震災対
た。
サルティング企業として、全国約800の
応指針を活かすこととし、不足していた
なお、社員全員に配布した携帯用BC
サロン店舗を起点として、ボディメイク
事業継続策を新たに追加する方針で作業
Pは、A4用紙1枚に有事で使用できる
機能をもつ補整下着を中心に理想のプロ
を進めてまいりました。
連絡先や初期対応などの重要事項がコン
ポーションに近づくためのコンサルティ
本社が災害等で被災しても、全国にフ
パクトに網羅されており、実用的でかつ
ングを行っております。1986 年の創業
ランチャイズ展開している約800サロン
社員の防災意識の向上に有益でした。
以来、約87 万人以上の女性をコンサル
の事業基盤を守るために支援を絶やさな
ティングし、独自のノウハウと豊富な
いこと、そして各サロンに通っていただ
データ・経験に基づき外見と内面両方の
いているお客さまに理想のゴールデン・
美しさを兼ね備えた、しとやかで品格あ
プロポーションを目指していただくため
発災時の緊急対応、危機対応から事業
る女性(=淑女)を多数輩出してまいり
にサービスを継続することが最も重要だ
継続策まで策定することができ、また一
ました。
と考えております。
つ一つの経営資源に脆弱性やその予防・
当社のフランチャイズ事業にとって最
低減策、事業継続策を検討する過程でこ
も重要なリソースは、①人(社員、サロ
れまで気が付かなかったことも多くあり
ン店舗経営者、会員など)と② ITシス
ました。
従前より「自衛消防隊」を組織し、社
テム(受発注や納品、報酬計算などの業
集合研修での説明や最終日に実施した
員の生命の安全を最優先とした防災訓
務はすべて東京地区の ITシステムに依
演習を通してPDCAの重要性を理解す
練や防災教育を定期的に実施していまし
存している)であることが確認できまし
ることができました。今回は社員の一
た。また、昨年の東日本大震災を受け、
たので、それぞれ対策を検討しました。
部のメンバーで策定しましたが、策定し
Q
今まで何か防災対策などは
行われていましたか?
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
具体的な行動指針を織り込んだ震災対応
(※なお商品も、重要なリソースではあ
た BCPを社員全員に周知徹底すること、
指針(
「東日本大震災に伴い今後想定さ
りますが、主要な生産、物流拠点は西日
演習を行うことで見直し改善を図ってい
れる災害の対応および社員の行動につい
本にあり、今回想定している首都直下型
きたいと思います。
て」)を作成し社員に配布しました。
地震においては直接的な被害はわずかと
当社は、自社の防災対策に留まらず、
考え、前記①②を重視しました)
社会貢献型企業として志を共にするさま
ざまなステークホルダーの期待に応える
ため「危機に屈しない志と組織づくり」
Q
何か新たな気づきはありましたか?
を日ごろから意識し社内に経営トップを
緊急対応や危機対応の検討・文書化も
頂点とする「危機管理委員会」を設置し、
ある程度は完備していましたが、今回の
有事を想定して実際に「使えて」
「動ける」
BCP策定によって、実際に有事に「使
仕組みづくりや体制の構築・整備に注力
えて」「動ける」かという観点から、詰
しております。
めが甘い部分や見直しが必要な部分を発
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
会社情報
称号
株式会社ダイアナ
本社所在地
東京都渋谷区富ヶ谷1-35-23
設立
1986年7月
資本金
4億 5,000 万円
見することができ、見直しの契機として
従業員数
239人
代表者
代表取締役社長 徳田充孝
有益でした。具体的には、被災シナリオ
事業内容
フランチャイズ事業
URL
http://www.diana.co.jp
を想定することで脆弱性の具体的な予
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
35
15
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社大王製作所
事業所間の連携で
アクセサリー製造卸事業を継続
対 象 事 業
アクセサリー雑貨製造卸
被災シナリオ
●東京…震度6強、三郷…震度6弱
●東京本社半壊、サーバー全損、情報資産全損
●三郷事業所、PC半損
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●避難訓練、防災教育の実施
●バックアップデータの保管場所の検討
●複合機のキャスターの固定
●バックアップサーバーの切替
●大阪営業所への営業拠点の切替
●大阪営業所への製造拠点の切替
代表取締役社長
田代 肇
Q
事業内容を教えてください。
ち、ここで製造されたものを三郷事業所
事業継続策としては「システムを多重
に搬入してから、必要な場合は2次加工
化して止めない」というのが、ベストで
当社は創業52年目を迎え、人と自然に
を施し、出荷しています。また東京本社
はありますが、中小企業ではコストや人、
やさしい商品の提供と活動を目指し、ア
には各種サーバーが集中的に配置され、
運用面の課題もあり、むしろ目標期間内
クセサリー雑貨の製造卸を行っています。
ここから中国も含めた各拠点と結びつい
に業務を早期再開するように、代替機を
手芸・クラフトや鞄袋物関係の業者向け
ています。
使用した「復旧・リカバリ」に焦点をあ
にキーホルダー、携帯ストラップ、アクセ
以前は人の安全ばかりに目を奪われ、
て、ベターな方式で考えることが重要で
サリーパーツ製品などを、全国の観光地
とにかく社員(経営資源でいうところの
あり、結果として顧客の信頼へとつなが
や神社仏閣向けに縁起物や根付紐、お守
「人」)が安全でいてくれればとの思いが
りなどを、また、販促品・OEM 製造向け
ありました。しかし、コンサルタントの
にはキャラクターグッズ、コンサートグッ
指導のもと、詳細に分析を続けていくう
ズ、雑誌の付録などを納入しております。
ちに、実は経営資源である「情報」が最
るものと悟りました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
も脆弱であり、しかも広範囲に影響を及
BCPを策定しても、「作って終わり」
ぼすことが分かりました。
にしてしまう失敗パターンもあると聞
今回の被災シナリオでは、東京本社と
き、なるほどと思いました。当社も ISO
防災対策については、ISO14001を
三郷事業所が被害を受ける想定ですの
9001や ISO14001の認証取得のため、
認証取得する際に、緊急事態の準備およ
で、製品の搬入は大阪営業所に振りかえ、
一生懸命にマニュアルを作成し、継続的
び対応ということで、文書化した経緯が
必要な場合は大阪で2次加工し、出荷す
改善が肝要だと肝に銘じて活動をしてい
あるものの、環境に影響を与える可能性
るようにします。並行して、これらの受
るつもりですが、気がつくと惰性的な活
のあるものに限定されたものでした。ま
注案件を管理するためのサーバー機能も
動に陥っていることがあるからです。い
たこれとは別に毎年「安全の日」を設け
東京から大阪へ切り替えることによっ
ざというとき、BCPを機能させるため
て、全社で1時間ほどの労働安全に関す
て、目標の復旧指標を達成するようにし
には、計画通りに動けるか、日ごろから
る研修を実施するくらいでした。
ます。そして三郷事業所が立ち上がった
演習やテストを繰り返し、問題点があれ
今回 BCPの策定に取り組もうと思っ
後に、大阪営業所で受け入れていた業務
ば計画に反映していくPDCAの取組が
た最大の理由は2011年3月11日に発
を三郷へ移行し、東京のサーバー機能が
不可欠。
「BCPは作って終わりではない。
生した東日本大震災の際、社員への避難
回復した後に、再度、大阪から東京へ切
その後の演習・テスト、継続的改善が大
指示、安全確保が適切にできず、さらに
り替えるようにします。
切だ」と肝に銘じて、今度こそは効果的
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
は社外にいた社員の安否確認に半日を要
したことでした。経営者として最低限守
るべき「社員の安全への配慮」に欠けて
Q
なものにしていきたいと思います。
何か新たな気づきはありましたか?
会社情報
いたことを大変恥ずかしく思っていた矢
我々中小企業といえども、企業活動は
先に、東京都 BCP 策定支援事業のこと
いつのまにか全て ITの上に築かれていま
称号
株式会社大王製作所
本社所在地
東京都台東区日本堤2-11-6
を知り、即日取り組むことに決めました。
す。それにも関わらず、中小企業のそれ
設立
1961年3月
資本金
1億2,000 万円
必要最低限のハードとソフトで構成され
従業員数
32人
代表者
代表取締役社長 田代肇
ており、必要十分なシステムの可用性確
事業内容
アクセサリー雑貨製造卸
URL
www.daiomfg.co.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
当社は製造拠点を日本国内と中国に持
36
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
は、大企業とは違って現状の業務遂行に
保やデータ保護など皆無の状態でした。
16
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
塗料事業
被災シナリオ
●塗料関連営業部門全従業員の罹患
●物流業者稼働率が40%に低下
●仕入先稼働率が40%に低下
対 策
株式会社大成イーアンドエル
パンデミック発生時でも
舗装用塗料は必ず供給
対 象 リス ク
新型インフルエンザ
●外出・出張制限
●来訪者管理、入室制限
●社員感染状況のモニタリングと個別健康管理
●人員計画による重要業務の継続支援
●在庫量の調整
●代替物流業者の活用
取締役事業統括部長
工藤 信明
Q
事業内容を教えてください。
うと考えました。対象とする事業につい
可能な限り現状の仕組みを活かし、身
ても、彼らが担当している塗料事業を選
の丈に合ったものを作ることができた実
環境商品と景観商品の企画・開発・製
び、プロジェクトを通じた組織と業務の
感はありますが、まだ最後の詰めが甘い
造販売を行っています。主に、公園や家屋
理解の促進など、若手育成の効果も期待
と感じているので、今後も継続的に改善
に使用する景観用の舗装材、食品工場な
しました。
していきたいと思います。
どの防虫システム、道路の滑り止めや屋
今回は新型インフルエンザを想定して
上の防水用の機能性素材(コーティング)
いるため、施設や機器には大きな影響
などを取り扱っております。最先端の技
が発生しないので、予想される人員不足
術を駆使し、地球環境にやさしく、消費エ
に対し、お客さまへ製品を供給する上で
取引先とBCP の話ができるようになり、
ネルギーを抑えた製品を提供しています。
もっとも影響がある受注業務と出荷業務
信頼性を上げることができるようになりま
を止めないための対策を検討しました。
した。お客さまに安心いただき、複数購
また、出荷業務を支える外部委託の物流
買を検討する必要がなくなることは大き
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
サービスが低下することを想定し、代替
なメリットがあります。そして今回のプロ
グループ企業の中では地震に対する
先の確保や在庫管理方法の見直しも対策
ジェクトを通じて、社内の危機管理に対
BCPを策定しておりますが、弊社はま
として加えました。
する意識を変えることができました。
だ取り組んでいませんでした。それとは
別に3年前に新型インフルエンザ対策に
取り組み、文書を作成しましたが、実効
Q
また、今回は若手を中心としたプロ
何か新たな気づきはありましたか?
ジェクトとして取り組んだのですが、1
年目の社員を含む若手が事業内容を理解
性があるかということについては検証せ
プロジェクト開始前は、以前対応手順
し、経営陣と時間を共有することで、会
ずに時間が経過してしまいました。
を検討した新型インフルエンザが取り組
社の考え方を認識してくれたことも大き
東日本大震災や昨秋の大型台風襲来の
みやすいと思っていました。しかし、い
な成果だと感じています。
際には、経営陣の対応が場当たり的なも
ざプロジェクトを開始してみると、地震
ただ現段階では、やっとスタートライ
のとなってしまい、社員から非難轟轟(ご
や水害に比べて、実体験がないため、疫
ンに立てたという感じです。まだ改善す
うごう)でした。これらの経験から、事
病がまん延するとはどういうことか、具
べき点がたくさんありますが、全社員の
前に具体的な対応策を考えておくことの
体的なイメージが描きづらく苦労しまし
3分の1がBCP構築ノウハウを取得でき
必要性を実感し、また取引先からのBCP
た。それでもプロジェクトを進めていく
たため、時間はかかるかもしれませんが、
の取組状況についての問い合せにも答え
中で、新型インフルエンザの怖さが徐々
社内への共有と今後の運用は対応できる
られるよう、社内外に安心感を持っても
にわかってきて、参加メンバーの危機感
と確信しています。
らうためにもBCP策定を決意しました。
が高まり、イメージ先行にならず、実態
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
に即したBCPの策定ができました。
具体的には、感染状況を段階に分けて
検討したため、段階を踏んだ対策とその
今回は取組やすさの観点から、以前に
対策を実施するタイミングを明確に決め
対策を検討した新型インフルエンザを対
ることができました。そして、全社とし
象リスクとして選定しました。またプロ
ての対策と現場での対策をそれぞれ具体
ジェクトは社内の若手社員を中心とした
的に検討したため、実践的なものになっ
体制にし、身の丈に合ったBCPを作ろ
ていると思います。
会社情報
称号
株式会社大成イーアンドエル
本社所在地
東京都葛飾区西新小岩3-5-1
設立
1994年1月
資本金
3,000 万円
従業員数
12人
代表者
代表取締役 德倉俊一
事業内容
環境商品・景観商品の企画・製
造・販売
URL
http://www.taisei-el.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
37
17
取 組 事 例 ●
Case Study
大成ファインケミカル株式会社
オーダーメイド樹脂の供給維持
経営と現場を強く
対 象 事 業
アクリル合成樹脂の製造と販売
被災シナリオ
●配合タンクの配管やスチレンタンクが破損
●事務所のサーバーが破損、基幹業務システムが使用不能
●15㎥釜のプロセスコンピューターと計装パネルが破損
●運送業者は、来場不可
対 策
Q
対 象 リス ク
千葉県東方沖地震
●製造棟試験室・管理室転倒防止策、事務所転倒防止策
●グループウエア導入による従業員緊急連絡網の構築
● FAX不通時の東京営業所による受注
●資金・資産の事前確保
●早期復旧を考慮した設備導入(基幹業務システム・大容量発電機)
●検査機器が破損した場合は、製品サンプルを東京の研究所にて検査を実施
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
稲生 豊人
策定を行いました。本事業はお客様個別
まれ始めており、事業継続や減災の効果
のニーズに対応したオーダーメイドの製
はもちろん、こうした社員一人一人のリ
当社は、印刷・包装材料、コーティン
品を定期的に受注しており、もし当社の
スクに対する思考が生まれたことは、経
グ材料、電子材料、化粧品・医療材料
事業が中断してしまったら他社での代替
営体質の改善になり大きな成果だと思い
で使用されるアクリル樹脂を主体とした
は難しく、災害時においてもその供給責
ます。
オーダーメイドの合成樹脂の設計・開発、
任は大きいと考えます。よって今回は当
製造、販売までを行っており、汎用製品
該事業の原料調達、製造、品質検査、物
から個別顧客向け製品まで幅広い生産と
流、販売、資金(支払い・回収)までを
販売を手掛けております。
対象としました。
社内で作成していた BCPでは、東日
体制としては、千葉県の本社工場の製
経営資源については検査工程で使用す
本大震災発生時、実際に行動することが
造部門で4班2交代の24時間操業で効
る多くの試験機器がボトルネックと考え
できなかったのですが、今回の BCP は
率の高い生産体制を維持し、東京事業所
られるため、万が一破損した場合は東京
演習も行えたことで、リーダーから担当
で営業と研究開発業務を行っています。
の研究所にて検査工程を行うことにしま
に至るまで現実に動けるものになったと
した。また、製造設備の主たるものは6
思います。
基の反応釜ですが、耐震強度測定の実施
また当社は大成化工グループの一員で
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
を計画、配管などの修理を外注するエン
あり、親会社との連動・連携や各子会社
当社は危険物取扱事業所であることか
ジニアリング会社の同時被災に備え、第
との連携の仕組みが必要であるため、今
ら、消防法で規定されている基準に則っ
2候補を確保することにしました。
後はグループ全体としてBCPに取り組
た防災対策や訓練は行っておりました。
ただ消防法の「予防規程」 には、被害の
拡大防止策は定められているものの、事
業継続策については何も書かれておりま
Q
んでいきたいと思っており、その上でも
何か新たな気づきはありましたか?
当社の工場は反応釜で化学反応を制
せん。 御しながら、製品化を行います。また、
一方で、近年中小企業にもリスクを低
取り扱う原料は危険物であるため、厳重
減するような対応が強く求められるよう
な操業、防災の規定があります。しかし
になっていると感じておりました。その
2004 年の工場開始時からの操業規定、
ため数年前よりBCP策定の準備は進め
防災規程が、今回策定した BCPと整合
ていましたが、社内での取りまとめに時
性がとれなくなってしまったため、双方
間がかかっておりました。しかし3月の
の観点から修正しました。2011年12月
東日本大震災により早期の策定と定着が
に実施した全社防災訓練、BCP説明会
必要であることを痛感したため今回取り
には修正したものを活用し、安全確保か
組むことに致しました。 ら避難、運転状況確認、被害確認の実地
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
ます。
会社情報
大成ファインケミカル株式会社
本社所在地
千葉県旭市鎌数 9163-19
あさひ鎌数工業団地内
営業所
東京都葛飾区西新小岩3-5-1
設立
2004 年1月
訓練を行いました。その中でも多くの課
資本金
4,000万円
従業員数
60人
題が見つかったので、さらに修正を行っ
代表者
代表取締役社長 稲生豊人
事業内容
アクリル樹脂等の製造ならびに
販売(塗料用、インキ用、電子材
料、化粧品用、医療品用)
URL
http://www.taisei-fc.co.jp/
ています。
また、BCP策定の経験によって日々
社ブランド品および受託品事業のBCP
の業務内でもリスクを考慮した提案が生
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
らBCMとして定着させたいと考えてい
称号
今回は千葉県東方沖地震を想定し、自
38
マネジメント・システムとしてBCPか
18
取 組 事 例 ●
Case Study
タマチ工業株式会社
社員連携で精密加工の
サプライチェーン守る
対 象 事 業
自動車部品精密加工
被災シナリオ
●社長・常務、営業2名外出中
●レーザマーカ作業者孤立
●PC半数落下により使用不可、NAS破損
●加工機械全数使用不可
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●機器の転倒破損防止策を5S活動の中で検討
● CADバックアップデータ(NAS)の保護
●非常電源の確保検討
●被災時の社員生活、宿泊先の想定
●緊急時のお客さま、西富士工場との連絡方法確立
●加工、仕入れ先、物流業者との緊急時協力体制確立
事業内容を教えてください。
代表取締役
太田 邦博
の状況をお知らせできないために注文を
震への対応として「西富士工場の BCP
逸注してしまうことです。また仕掛品の
も至急に策定が必要」、本社で当たり前
タマチ工業株式会社の起源は祖父が
納期調整が迅速に行えない場合、納期が
と考えていた「機械加工するためには水
1912年に設立した太田工場で、100年
遅延し、お客さまに多大なご迷惑をおか
が必須」、「キーマンへの依存度が高く代
間一貫して自動車業界に携わってきまし
けしてしまいます。
行者がいない業務がある」、「外注協力会
た。レーシングカーのエンジン部品(シ
そのため今回は、中核事業である自動
社の BCPの意識はまだ低く、連携が必
リンダヘッド、カムシャフト等)の生産
車部品精密加工の中でも、品川本社内の
要」などです。
には高い技術力が要求されますが、最新
工場で行っている受注業務、生産管理業
また、平時は2拠点が離れていること
鋭の工作機械を駆使し、経験とノウハウ
務、設計業務、東京地区での製造業務(外
に不便を感じていましたが、BCPでは
で超精密加工を追及しています。最近は、
注)を対象にBCPを策定しました。
逆に利点として生かしたいと考えます。
自動車部品に加え、ロボット、航空宇宙
これらの業務に欠かせない経営資源と
機器、半導体製造機器、医療用機器など
しては社員、本社設備、資材、情報シス
の部品も製造しています。
テム、外注業者(加工を依頼)等があり
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
ます。今回事業継続の大きな方針として、
BCPは「あってしかるべきもの」と
この中の情報システム、本社設備、外注
の感想です。他の会社には、「社員の命
業者の被災状況によって、本社で対応す
を守り会社の存続を考える BCP が無い
災害が起きた場合でも大手自動車企業
る、あるいは代替拠点で製造する、外注
とおかしい」と伝えたいと思います。過
のサプライヤーとして部品供給や技術
する等の対応のレベルを決めました。そ
去に防災組織を検討した時は範囲が狭
開発を止めてお客さまにご迷惑をおかけ
してそれに付随する設計データの搬送や
かったのですが、BCPでは検討範囲の
してはいけません。3.11の後、富士宮
社員の移動、材料の配送などについても
ひな形が示されたことで、会社の個性を
直下型地震で社員の自宅が被災しました
併せて検討しました。
反映しながら自分の言葉で策定できまし
が、今後より大きな災害が発生しても社
員 100人の生活と安全を守るために、
「まずは人、次に組織と設備」を守り事
Q
た。会社や個々人の動きがはっきりし、
何か新たな気づきはありましたか?
社員全員が連帯して事業継続することの
重要性を改めて認識しました。今回策定
業を継続したいと考えています。
社員の多くは、誰かが作った規則に協
した BCPは、他の災害や停電等の緊急
今までは、会社として ISO9001を取
力するという意識はあるものの、BCP
事態にも使えると思います。今後、委員
得し品質管理に取り組んできましたが、
を自分の問題として考えてもらうのに
会活動や5S活動で定期的に BCPを継
防災対策はこれからです。個人の判断で
時間がかかりました。最初は、被災想定
続したいと考えます。
はなく、会社としての災害時の行動基準
の幅が広いのでどう設定するかが難しく
を定め、組織の判断で行動するようにし
迷いましたが、設定した内容で対策を決
たいと考えています。
めておけば、状況が違っても、その場
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
の判断基準になることがわかりました。
BCP も ISO取得と似ており、これから
いかに浸透させ、改善していくかが大切
当社にとって地震を想定した場合の一
と考えます。
番の懸念事項は、お客さまからの受注を
新たな気付きとしては、いろいろな弱
受けられない状態が続くこと、また自社
い点が浮き彫りになりました。富士山地
会社情報
称号
タマチ工業株式会社
本社所在地
品川区南大井4-10- 2
設立
1962年11月
資本金
2,000 万円
従業員数
100人
代表者
代表取締役 太田邦博
事業内容
精密機械加工(自動車部品、 医
療用機器)
URL
http://www.tamachi.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
39
19
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
合成樹脂成形加工
被災シナリオ
●出勤率の低下
●機械設備の一部破損
●本社工場の使用不可
対 策
東新プラスチック株式会社
生産体制の迅速な復旧で
プラスチック成形を継続
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●機械設備の周辺整理と一部固定
●支給部品在庫・購入品在庫・仕掛品の落下防止(保管方法の検討)
●機械設備の破損は復旧時間を見込み代替先活用
●外注先被災時は都外の代替外注先を活用
代表取締役
高橋 誠
Q
事業内容を教えてください。
を策定しました。弊社は合成樹脂成形加
とは収穫でした。ある意味そのいい加減
工の会社ですので、本事業を対象に、完
だった部分をしっかりと文書化できたこ
弊社は、東新興業株式会社のプラス
成品・仕掛品の一部破損、出勤率の低下
とは良かったですし、あるべき姿が見え
チック事業部として、昭和36年に開設、
によって納期が遅れてしまうという被災
てきたと感じています。
昭和39年姉妹会社として独立いたしま
シナリオを設定しました。本事業におけ
した。合成樹脂成形加工業者として設立
る迅速な供給再開には、社員と成形機を
以来、弱電、重電機器部品、自動車部品、
含む機械・装置、金型および原材料が必
OA機器部品、通信機器部品等、広範囲
要です。
先 日、 お 客 さ ま か らBCPの 有 無 を
なお客さまよりご愛顧をいただき、一貫
まずこれらについて、被災状況を確認
確認されたのですが、当事業(東京都
して製品の品質向上、常に技術の向上研
しますが、自社内で対応可能か、代替拠
BCP策定支援事業)に参加し、現在策
さんに努めており、当社の薄肉成形技術、
点(関係取引先)での対応が必要かを素
定中であることを伝えると、安心された
極細穴成形技術は、誇れる技術の一つで
早く判断するために、確認箇所の優先順
様子でした。早期に策定することの優位
す。
位を明確にしました。
性を活かし、営業戦略に活用できると感
その結果、代替拠点で対応するとなっ
じました。
た場合には、金型や原材料の移動準備、
しかし、現時点ではまだ半分は絵に描
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
そのために必要な情報の収集など早急に
いた餅と理解しております。今回、BCP
東日本大震災以前は金型をベルトで固
実施すべき事項を決定しました。
を策定することができましたが、それを
定する程度でしたが、以降は東北の状況
また自社で対応可能な場合には、製造
実際に使えるものにするために、東新プ
をかんがみて従業員の自宅から会社まで
部門をいち早く立ち上げ、タイムライン
ラスチックのBCPとしてどのように運
の距離を勘案し、4~5人が2~3日滞
にもとづいた担当者(代替要員含む)の
用できるかが重要と感じております。策
在できる程度の備蓄(水、食料、テント、
役割分担を決定しました。そしてそれを
定メンバーは工場内の危険個所などに気
寝袋、発電機)を用意しました。
明確にするために、従業員と機械設備の
付くことが多々あると思いますが、それ
また、コンピューター、電話、最低限
関係を示した「力量認定一覧」に通勤距
を全社に根付かせるためにも演習や教育
の照明が使える程度の発電施設があれば
離を加えた資料を作成しましたので、今
に取り組んでいきます。
良いと考え、発電機・小型コンプレッサー
後は日頃の技術習得にも活用していきた
(可動式)の購入まで対策を進めていま
したが、BCPについては正直、あまり
知りませんでした。そんな折、昨年度本
事業に参加された企業のお話を聞く機会
いと思います。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
があり、東日本大震災時、策定期間中で
言葉で表現できるような知識、「知っ
ありながら安否確認はもちろん従業員が
ている」「分かっている」ということを
自発的に行動できたといったお話をうか
文書に整理することは非常に大変でした
がい、参加することに決めました。
が、事業に必要な設備、要員等を整理し
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
今回は地震災害にあった場合のBCP
40
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
たことにより、特定の人に依存し、今ま
で把握されていなかった知られざる部分
を把握し、どのような改善を講じるのか
ということまでを考える機会となったこ
会社情報
称号
東新プラスチック株式会社
本社所在地
東京都八王子暁町1-40-2
設立
1961年7月
資本金
1,638 万円
従業員数
30人
代表者
代表取締役 高橋誠
事業内容
合成樹脂成形加工
URL
http://www.toshin-plastic.
co.jp
取 組 事 例 ●
20
Case Study
対 象 事 業
印刷事業(定期刊行物)
被災シナリオ
●生産本部30%負傷
●印刷機サーバーの破損、倒壊
●印刷データの消失 ●協力先の被災(都内7〜9割被災)
対 策
日本印刷株式会社
お客様のために定期刊行物の
品質と納期を守る
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●非常電源の増設
●データバックアップサーバの複数個所設置
●協力工場へのデータバックアップの移送
●紙データによる作業
●協力会社(印刷・製本・配送・デザイン・組版・派遣会社等)への協力可否の確認
代表取締役社長
猪俣 公雄
Q
事業内容を教えてください。
対象は印刷事業とし、今回はさらに製品
定され、復旧までに必要となる飲料水、
を定期刊行物としました。これは弊社の
食料などの社内備蓄を含め、社内の帰宅
弊社は、印刷事業を行っており、企画
主要製品であり、またあらかじめ納期が
困難者対応の見直しが必要でした。特に
から編集までの編集代行業務を特に得意
決まっているもので、災害時にも事業の
帰宅できず、精神的にも厳しい中、復旧
としております。加えてデザイン、コピー
継続が不可欠だからです。
作業を継続していくのがどれ程大変か、
ライティング、イラストレーションなど
本事業ではお客さまの大事な原稿、資
3月11日よりも長期間の交通機関・道路・
のクリエイティブな業務も手掛ける傍
料、情報をお預かりして編集データを作
電気・ガス・水道の停止を想像すること
ら、近年ではウェブデザインや電子ブッ
成します。そのためデータの保全が最重
で、改めて社員を守る体制の必要性と難
ク制作、デジタルコンテンツ制作も行っ
要項目であり、編集データを守ることが
しさに気付かされました。
ております。
できれば、万が一印刷設備が破損しても
主な製品としては、社史、記念誌、各
外注協力先で対応することが可能です。
種定期刊行物やパンフレット、集客用ダ
ついては災害時の協力体制を確固とし
イレクトメールなどがあり、企業をはじ
たものにするため、サプライチェーン
今後は、このBCPを土台とした演習
め、各種団体や学校等が主なお客さまで
におけるセグメントごとの問題点を抽出
の 実 施、 別 パ タ ー ン のBCP策 定 な ど、
す。
し、都内の既存協力先との連携強化とと
災害発生時に実際に活かせるよう、常に
もに、郊外にある新規協力先との相互支
PDCAを回していきたいと思います。
援体制も構築しました。
社員をはじめとするステークホルダー
データの保全強化のため、バックアッ
への告知と啓発活動も行い、協力先とも
今回 BCP 策定に取り組んだ理由は、
プシステムを複数分散型に変更、二重三
相互支援ができるように、連携体制を強
東日本大震災を契機に具体的な事業継続
重のバックアップ体制を整えました。さ
化して参りたいと思います。
計画の重要性を強く認識したためです。
らにデータの破損防止を、より確実にす
被災時に自社の社員を守り、1日でも早
るために、非常用電源の容量および設置
く事業を復旧し、お客さまに従来通りの
数の拡大に取り組んでおります。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
サービスを提供できる体制を平時から築
いておくことで、お客さま、協力先、社
員から、より信頼され、強く必要とされ
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
る企業に進化できるのではないかと考え
想定される被害に基づいて分析を進め
ました。
るに当り、社会インフラ、特に電力と交
また今回は東京都の BCP策定支援事
通網の復旧状況がボトルネックとなり、
業として、専門コンサルタントの指導を
思うように復旧対応が進まないことに気
頂けるということから、短期間に自社の
付かされました。結果的には自社内での
BCPを作り上げられるということも策
事業復旧による目標復旧時間の達成が困
称号
日本印刷株式会社
本社所在地
東京都千代田区外神田6-3-3
定を決めた大きな要因となりました。
難なため、協力会社・工場への印刷デー
設立
1968年3月
資本金
1,600 万円
従業員数
135人(パート等含む)
代表者
代表取締役社長 猪俣公雄
事業内容
印刷業
URL
http://www.npc-tyo.co.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
地震を想定したBCPを策定しました。
タ移送により目標復旧時間を達成する手
段を取りました。
加えて、交通機関の機能停止に伴い、
相当数の社員が帰宅困難となることが想
会社情報
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
41
取 組 事 例 ●
21
Case Study
株式会社ニレコ
迅速な部品調達で
制御装置製造を早期復旧
対 象 事 業
ウェブ事業(耳端位置制御装置(EPC・標準品)の製造)
対 象 リス ク
多摩直下地震
被災シナリオ
●デスクトップ PCの20台が破損
●顧客情報、受注残(データ)が利用不可能
●サ-バ-が倒壊
●製品、部品、材料:20%が破損
対 策
●災害時顧客対応マニュアルの作成
●顧客の問合わせに対する迅速な対応体制の構築
●サーバー・バックアップシステムの構築
●製品・半製品・部品・材料および設備・装置の迅速な確保
●調達先の分散
●実地を含む定期的訓練の実施
備 考
●発電機またはバックアップ電源を検討予定(充電・照明・サーバー・PC用)
Q
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
川路 憲一
定しました。売り上げが全体の約 4 割
なく、標準的な手順をあらかじめマニュ
を占め、急拡大しているスマートフォン
アル化することにより、より迅速で、的
当社は制御・検査装置のパイオニアと
やタブレット端末などの中小型パネル向
確な活動が可能となります。また、製
して、ウェブ制御装置やプロセス制御装
けの生産ラインでの需要増が期待できる
品や半製品、部品の荷崩れに対する良品
置、検査装置の開発、生産、販売を行っ
こと、および競争が激しいことがその理
チェックもあらかじめチェック基準を明
ております。これらの制御・検査装置は
由です。災害としては本社に一番影響が
文化しておくことにより、より迅速に行
顧客の生産ラインの仕様に合わせて組み
大きいと考えられる多摩直下地震を取り
うことが可能となります。BCPを作成
込まれ、そのほとんどがセミオーダーで
上げ、公表予測より厳しい震度6強を想
して分かったことですが、もしBCPが
す。
定しました。
無かったとすると何か起きた時に多数の
ニレコの強みは、研究・開発スタッフ
顧客の生産に必須の装置を提供してい
社員が混乱し、緊急対応にもっと長い時
と各拠点の営業担当、および販売代理店
るため、製造業務の早期復旧が特に重要
間がかかるのは間違いありません。いろ
との緻密な連携による「製販一体のマー
であり、そのために必要となる人員およ
いろな対策を考えましたが、大きな費用
ケティング」と「顧客ニーズに即応した
び半製品・部品・材料の早期確保策、さ
をかけなくても、すぐやれる事が多いと
製品開発と最新技術の提供」です。
らには製造や検査の設備・装置について
いうことにも気づきました。
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
万が一破損した場合の対応策を立てまし
た。
まず発災後の迅速な顧客対応のため
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
東日本大震災において、迅速な対応や
「顧客対応マニュアル」の作成と顧客対
東日本大震災の体験で災害対策の必要
明確な行動基準の必要性を強く感じ、ま
応情報の共有のシステム化を行い、そし
性は分かっていましたが、今回のBCP
たサプライチェーン寸断の問題も大き
て破損チェック基準を明確化しておくこ
策定の経験により、まず自分自身の身を
く、何らかの対策を考えなければならな
とにより使用可能な半製品・部品・材料
守る、その上で必要な行動を取るという
いと考えていました。そのような時に東
の早期確保を確実に行います。
ことについて自信のようなものが身につ
京経営者協会から東京都BCP策定支援
さらに設備・装置の破損については、
いたと感じます。今後は全社員に対して
事業の紹介があり、直ちに手をあげまし
自社での点検、簡易修理能力の強化と
教育や定期的な訓練を展開し、社員全員
た。従業員の安全を確保することとお客
メーカー・保守会社に対する緊急修理の
が同じ意識を持てるようにしたいと思い
さまの生産に必要な装置の供給を継続す
依頼を行いますが、今後は調達先の分散
ます。
ることは、当社の基本的な責務と考えて
の検討も行っていきます。
いますので、この機会を活かして社員の
緊急避難、帰宅方針等の見直しや、事業
継続に必要なデータ、設備・装置、外部
Q
何か新たな気づきはありましたか?
サプライチェーン、委託先工場などのリ
BCPに関することは全て初めての経
スクを考慮した対策を考えたいと思いま
験でしたので、ガイドしていただいた
した。
手順に従って必死になって皆で考えたと
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
今回はウェブ事業を対象にBCPを策
42
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
いうのが実感で、目から鱗(うろこ)が
落ちるような感じを何回も体験しまし
た。例えば、災害発生後、第一に必要な
顧客対応は営業の個人任せにするのでは
会社情報
称号
株式会社ニレコ
本社所在地
東京都八王子市石川町 2951-4
設立
1950年11月
資本金
30 億 7,200 万円
従業員数
247人
代表者
代表取締役社長 川路憲一
事業内容
自動制御装置および計測・検査
装置の製造・販売
URL
http://www.nireco.jp
取 組 事 例 ●
22
Case Study
対 象 事 業
量産品の社内製造
被災シナリオ
●サーバーの破損
●機械設備停止/検査機器破損
●完成品・仕掛品の一部破損
●社員の被災による出勤率低下
対 策
Q
株式会社ハタダ. 身近なところで便利を支える
精密ゴム部品を提供
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●バックアップデータ保管先追加
●機械設備の一部固定
●油圧ポンプ配管の破損防止策実施
●金型の保管方法の変更
●防災用品の整備
●メンテナンス業者への緊急連絡網構築
●協力会社での業務継続
●教育・訓練の定期的実施
事業内容を教えてください。
代表取締役
畑田 芳則
高価で希少な設備など代替の効かない経
くれました。
営資源が多いため、できる限り被害を顕
と は 言 え、 皆 で 話 し 合 っ た 結 果 を
弊社は、精密工業用ゴムのメーカーで
在化させないという予防・低減策に重点
BCPとして文書にどうまとめ上げるか、
あり、ゴム成形品、異素材組合せ部品等
をおいております。
という落とし込みはコンサルティングが
の製造を行っております。長年の経験・
事業継続策は、平時から付き合いのあ
なければ難しかったと思います。コンサ
ノウハウを基礎に、熟練の技術による使
る外注業者を活用します。さらに協力会
ルタントにはノウハウがあるので遠回り
用用途に合わせた材料の選定、材料の配
社にも支援を要請する場合を考慮し、先
しなくて済みました。今回のBCP策定
合、金型の製作、試作品の製作、量産ま
方の被災情報の収集および弊社の被災情
支援事業に手を挙げてよかったです。
で一貫した社内生産体制が強みであり、
報の提供など、迅速な情報共有が行える
お客様のニーズに合わせた特性を持つ製
よう既存のステークホルダー情報を再度
品をご提供しております。
整理し、全社で共有するようにしました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
これは弊社の業界だけに限ったことで
何かあった時でも準備ができているの
はありませんが、東日本大震災の後、原
で安心感があります。もちろん「実際に
材料の供給がストップするという事態が
冷静に対応できるか」という課題はあり
弊社はこれまでに ISO9001、JIS Q
起きました。幸いなことに弊社は今ま
ますが、一般的なハウツーではなく自社
9100、ISO14001の 認 証 を 取 得 し、
で積み上げてきた取引先との関係や数名
オリジナルの備えができたので、何もな
PDCAサイクルに乗せてマネジメントを
の担当者の経験から得たノウハウによっ
い状態より落ち着いて対応できるだろう
行っておりましたが、BCP については
て、供給をストップさせることなく対応
と思います。後は、みんなが自然にやっ
認識していたものの、具体的に取り組む
することができましたが、今回整理した
てくれると信頼しています。ISOでもき
には至ってはおりませんでした。
情報を活用することで対応できる人間が
ちんと運用されていると審査員に言って
そのような折、東日本大震災が発生し、
増え、より確実な事業継続につながると
もらっているので、私が気を緩めず内部
幸い弊社では特に被害は出ませんでした
考えております。
でチェックを続けたいと思います。
が、お客さまより、業務の継続について
また技術的な問題や取引上の問題で、
心配する問い合わせを数多く受け取りま
弊社にしかできない工程が残るのも事実
した。また災害発生時の安否確認や顧客
ですが、そこは同等の機械設備を有する
対応といった初動対応の重要性を改めて
協力会社に従業員を送り込み、機械設備
感じたことから、できるだけ早く BCP
をお借りすることで対応していきたいと
を策定することが必要と考えました。
思います。
Q
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
地震に対する BCPを策定しました。
実質2カ月で BCPを策定したことに
今回は試作品と量産品のうち量産品の
なりますが、非常に早かったと思いま
製造を対象業務としました。
す。社長としてはトップダウンで号令を
弊社の事業特性もありますが、生産設
かけるだけで、後は総務部長をはじめプ
備(※検査機器含む)だけでも80種類
ロジェクトに参加した全員が積極的に発
以上あります。またその中には、非常に
言し、具体的な行動目標に落とし込んで
会社情報
称号
株式会社ハタダ.
本社所在地
東京都大田区南六郷2- 38-18
設立
1955年4月
資本金
1,000万円
従業員数
50人
代表者
代表取締役 畑田芳則
事業内容
工業用精密ゴム製品製造・販売
URL
http://www.ha-ta-da.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
43
取 組 事 例 ●
23
Case Study
原田工業株式会社
全国のデポから、
車載アンテナの出荷を継続
対 象 事 業
車載用アンテナ及および周辺部品(OEM)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
● 1 階テナントより火災発生
●停電によりEDI、PCおよび基幹業務サーバーの停止
●社内 LAN・専用回線の一部不通
対 策
Q
●社員、お客さま、デポ、取引先等への緊急連絡先と手段を整備
●ノートPCによる受注取込データのバックアップ取得
●社用車やPC蓄電池による非常用電源の確保
●顧客と緊密な連絡をとり、緊急時の意向を確認する
●営業部顧客によっては被災地外の営業拠点にて出荷指示を代行
●デポでは出荷業務を優先し、在庫管理は本社復旧後にまとめて行う
事業内容を教えてください。
代表取締役
原田 章二
東京における大規模地震を想定した
きました。
BCPを策定しました。
お客様に対してBCPに対する考え方
HARADAグループは世界トップクラ
本社では、お客さまからの受注情報を
や自社の取組の概要を説明できるように
スのアンテナメーカーであり、中でも自
もとに、海外3工場、国内1工場へ生産
なったと思います。
動車用各種車載アンテナは国内・米国・
指示、生産された製品を、国内外のデポ
欧州の自動車会社で広く採用されていま
へ出荷指示をしています。多数のお客さ
す。
まへ多種の製品を指定の時間、場所に毎
生産拠点は、国内1工場、海外3工場
日数回に分けて出荷(かんばん納入)を
今回のBCP策定メンバーはBCPの初
で、生産した製品を日・米・欧・アジア
しており、もし供給が止まればお客さま
動において中心となって頑張ってもらう
の販売拠点を中心に事業展開をしており
に大きな影響を及ぼすことになり、被災
メンバーであり、今後も月1回など定期
ます。また、日本国内拠点では、営業、
時でも出荷指示を止めることはできませ
的に集まり、BCPの内容のさらなるブ
受注管理、製品開発、モノづくり、品質
ん。そこで今回はこの受注出荷管理業務
ラッシュアップ活動を継続していきたい
保証機能を有し、OEM での商品開発を
について事業継続策を検討しました。
と思っています。
行い自動車メーカーの工場に製品供給を
注文はお客様ごとのEDI で受けてお
今後は、今回対象事業のBCPの充実
行っております。
り、ITシステム無しでは受注業務はでき
化のほか、今回対象外の事業、さらには
ません。そのため顧客によっては営業担
国内および海外の各拠点へとカバー範囲
当が直接赴き、ファクスでデポへの出荷
を広げていき、グループ全体としての体
管理業務を代行します。これを実現する
制を構築していきたいと考えます。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
リスク管理の観点から、甚大な被害と
ためには、平常時とは違う人員配置が必
なる恐れのあるリスクについて2年前か
要となるため、社員・家族の安否確認、
ら検討してきました。消防体制、地震対
避難方法、帰宅困難者対応策をはじめ、
策基本マニュアル、緊急時行動フロー、
居住地から出社可能な社員を選定し、緊
緊急連絡網等の防災対策について整備し
急時の役割を確認しました。
てきましたが、東日本大震災では各自が
自己判断で行動したため、初動対応など
さまざまな混乱が生じてしまいました。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
中小企業庁のBCPガイドラインをも
当 初 自 力 でBCPを 作 成 し よ う と、
とに4月から BCP策定を開始しました
2011年4月より体制を発足しましたが、
が、BCP素人集団が手探りで進めてき
東京都 BCP策定支援事業の存在を知り、
たため、各種のマニュアルや行動フロー
外部のサポートを受けられ、短期間で策
称号
原田工業株式会社
はあるものの、それぞれの文書の整合性、
定ができるとのことでしたので参加しま
連係を取ることが難しく、行き詰まりを
した。思った以上に詳細な議論まで行う
本社所在地
東京都品川区南大井6-26-2
大森ベルポートB館4階
感じ、コンサルタントからの的確な助言
ことができ、良いたたき台となる文書が
設立
1958 年3月(創業1947年11月)
資本金
20億1,900 万円
を受けたいと考えました。
完成したと思います。今回の策定を通じ
従業員数
234 人
代表者
代表取締役 原田章二
事業内容
車載用アンテナ、アクチュエータ
及び各種自動車部品の製造販売
URL
http://www.harada.co.jp/
Q
44
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
て、BCP策定の過程でビジネスを見つ
める視点や、どの程度まで掘り下げて検
討していくべきかという加減が分かって
会社情報
取 組 事 例 ●
24
Case Study
株式会社ユニフローズ
医療機器の供給責任を果たす
要は仕入先との連携
対 象 事 業
医用機器製造事業(資材調達業務/製造業務)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●社会インフラ(電気、水道、通信、交通網)の停止
●社屋の一部倒壊、機械・設備・部品・ITインフラ等の破損
●社員の出勤困難
対 策
Q
●災害時における重要仕入先との連携推進
●部品在庫量および発注サイクルのさらなる適正検討
●社員の多能工化
●資材調達の代替交通手段の検討
●非常用電源の配備
●正確な情報収集(災害時に有効な通信手段の活用)
●重要仕入先への災害復旧助言/支援
事業内容を教えてください。
代表取締役
森川 秀行
東京湾北部地震を想定し、最も社会的
降が本当の意味での脅威であることが再
な供給責任が高い医用機器製造事業を対
認識できました。このような波が通常復
流体制御に特化した理科学機器・医用
象としました。
旧パターンと異なることも、提示された
機器・省力化機器等を自社開発、製造、販
災害に対する懸念事項としては、「社
ツールにそのまま事例を当てはめること
売しています。装置の高度化と小型化を
員の出社不能による生産性の低下」と「仕
が難しい要因の一つとなりました。
得意とし、医療機関や研究機関で多く利
入先からの資材供給停止」です。しかし
従来の防災計画と BCPの違いや、災
用されているほか、ユニットとしても多く
ながら弊社の立地は、多摩西部の比較的
害発生から収束までの各ステージ(災害
の機器に組み込まれ、国内外数十カ国で
地盤の固い地域にあることから、自社内
時緊急対応 → 危機対応 → BCP発動 →
採用されています。その中でも主力製品
については予防・低減策や事業継続策を
事業復旧計画)への移行のタイミングも
であるマイクロポンプは、検査や分析時
万全に講じることによって、前者のリス
イメージがつかみにくく、全体フロー図
の検体の少量化を可能とし、採血時の患
クはある程度回避できることが判明しま
を作成するなどの工夫をしながら理解を
者の負担軽減や薬品等廃棄物量軽減等、
した。
深めました。
医療現場を通じ社会へ貢献しています。
一方、製造に必要不可欠な重要部品に
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
ついては、高い技術とノウハウを共有し
た特定の企業様への依存度が高く、サプ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
ライチェーンの寸断は大きな脅威となり
弊社では以前より自家発電機の購入
東日本大震災が直接の動機です。
得ます。『1カ月以内にマイクロポンプ
等、防災対策を進めてきましたが、重要
発生当時、全社員参集の下、こんな持
の生産・出荷量を 95%のレベルで再開
性を認識しつつも、納期のない BCP策
論を話しました。
「有事にこそ普段どお
させる』ことを目標設定した場合、最大
定業務の優先順位は低くなりがちであ
りに働かなければ日本の産業は衰退す
の鍵は資材の継続的調達にあり、仕入先
り、あと一歩を踏み出せずにおりました。
る。被災された方に申し訳ないという気
の立地条件や保有する機械設備等を検
東日本大震災直後の計画停電等、直面し
持ちはもちろんあるが、立ち止まるわけ
討しつつ、災害時においてもサプライ
た現実的苦労が原動力となり、さらには
にはいかない。我々が働くことこそ間接
チェーンという生命線をつなぎとめる方
コンサルタントの皆様の情熱に後押しさ
的支援につながるのだ」と…。
策を多角的に考えました。
れ、ここに BCP第1版が完成しました。
自社製品の多くはお客さまであるメー
カーにユニットとして納品されています。
それは弊社の供給が止まるとお客さまの
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
製造が止まり、ひいては我々の製品・技
多品種少量生産のため、弊社の製造工
術を欲しているエンドユーザーの皆さま
程では多くの製品が時間差で流れていま
に、重大な影響を及ぼすことを意味して
す。災害発生をどの時点と想定するか、
います。
何をもって復旧とするのかの決定が難し
医用機器は人の命を支える製品です。
く、目標復旧時間や目標復旧レベルの設
社会的な供給責任があるゆえに、危機感
定に苦労しました。
を持って BCP策定に取り組みました。
また、弊社の場合、製造に必要な代替
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
手段が比較的容易に得られることが判
明したことから、災害発生直後よりもむ
しろ、部品在庫量の減少する1カ月目以
自社だけでは到底成し得るものでなく、
ご支援ご協力いただいた全ての皆さまに
深く感謝申し上げます。
会社情報
称号
株式会社ユニフローズ
本社所在地
東京都あきる野市山田405-3
設立
1985年2月
資本金
4,000 万円
従業員数
26人
代表者
代表取締役 森川秀行
事業内容
理科学機器・医用機器・省力化
機器の設計、 製造、 販売
URL
http://www.uniflows.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
45
25
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社米山製作所
ウォータジェット加工を続け
顧客の生産を止めない
対 象 事 業
ウォータジェット受託加工
被災シナリオ
●営業、工場、事務それぞれ1名勤務不可
●ウォータジェット加工機1台破損
●配管破損
●パソコンおよびデータ破損
●電力停止3日、上水道停止7日
対 策
対 象 リス ク
多摩直下地震
●落下破損防止策の実施
●営業初期対応、材料別加工法、プログラム作成の手順書作成と代行者の育成
●装置・配管の自社修復技術の強化
●データの定期的バックアップ(本社外保管)
代表取締役
米山 俊臣
Q
事業内容を教えてください。
あるため、今回は社員に対する対策を中
続に重要だと気づきました。 心に検討しました。
当社は ISO14001環境マネジメント
当社はウォータジェット受託加工の国
少人数で業務を行う当社にとって、社
の認証を取得していますが、トップか
内では数少ない専業会社として金属、ガ
員は営業、工場、事務のそれぞれに属人
ら現場までの全員参加や PDCAの重要
ラス、樹脂、石などあらゆる素材を加工
性が高く、いずれかが長期就業不可とな
性は共通と分かりましたので、今後は
しています。ウォータジェット加工とは
ると円滑な受託処理が困難になります。
ISO14001とBCPを合わせて回すこと
水と研磨剤に高圧を加えて加工を施すも
そこで、これらの社員が有事に行わなけ
により当社のPDCAマネジメントを推
ので素材に熱影響がない、加工力が掛か
ればならない処理の手順書を作成すると
進していきたいと思います。
らない、素材性能を破壊しないといった
ともに、平常時からお互いの業務の代行
特長があり、産業用装置、航空、宇宙、
を実施し、災害時に代行処理ができるよ
医療、素材、研究機関、プラント、オブ
うにしていきます。
ジェ等のお客さまから個別加工から量産
また、現場点検の結果、大地震により
当社だけが火事になって周りは一切無
加工まで受託しています。
装置や配管が破損する可能性もあると認
事というのが一番厳しい状況と思います
識しましたので、修理業者への緊急修理
が、そういう場合でも、何のために、何
依頼のほかに、自助努力として自社での
をどう考え、どう対応するのかというこ
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
点検・修理技術の習得を行っていきます。
との基本を示す「我が社のBCP」を手
当社の加工が止まるとお客さまの生産
さらにウォータジェット加工にはPC
に入れることができたと感じています。
が滞ったり、作業の延期につながったり
による加工データの作成と保管が必要で
ただし、定着に向けてはこれからが始ま
しますので、地震等の災害による当社工
すので、PC/HDD代替機の用意と社外
りなので、今後もこの取組を継続し、ほ
場の停止に対する危機感はもともとあり
でのデータの定期的バックアップを行い
かの社員が同じような経験をすることに
ました。代替加工拠点の確保も考えられ
ます。
より、当社の変化対応力の強化、ひいて
ますが、まず現工場での対策が重要と思
い、BCPにも注目していました。
そんな中、昨年度の東京都BCP策定
Q
は “強い会社” の実現につなげたいと思
何か新たな気づきはありましたか?
支援事業に参加した企業の社長による
今改めて思うことは、今までの状態で
東 日 本 大 震 災 で の 経 験 談 を う か が い、
東日本大震災のような大地震に本当に
BCPが有効であることを確信し参加を
直撃されたら、事業の継続は極めて困難
決めました。
だったということです。地震のほか、水
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
います。
害、円高やユーロ危機など、環境の激変
が続いており、これからも何が起きるか
分かりませんので、BCPに取り組んで
会社情報
称号
株式会社米山製作所
東京都西多摩郡瑞穂町箱根ヶ崎
東松原 24-10
BCP策定は今回が初めてであったた
有事への備えを築いていないと突発事態
本社所在地
め、まずは特定の顧客の受託加工に絞っ
にうまく対応できないと思いました。
設立
1980 年5月(創業1975年5月)
て検討しました。
例えば、人のバックアップや社員の家
資本金
1,000 万円
最も重要な経営資源は社員、設備・装
族の安全まで考えなければならないこ
従業員数
8人
代表者
代表取締役 米山俊臣
置、加工データなのですが、ウォータ
と、普段からお客さまとの密な連携が必
事業内容
ウォータジェット受託加工
ジェット加工機は3台あり代替が可能で
要なことなどの基本的なことが事業の継
URL
http://www.yoneyama.co.jp
46
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCP 取組事例
情報
通信業
BCP
策定のポイント
ここでは情報通信業のうち情報サービス業やインターネット関連
サービス業のBCPの特徴を概観します。
この業界の業務としては、企画、営業、アプリケーション開発、ア
プリケーションサービス、サービスサポート等がありますが、目標
復旧時間はアプリケーションサービスやサービスサポート業務が最
も短く数時間から数日、次いで営業、アプリケーション開発、企画
等の順に長くなる傾向があります。
この業界ではシステム障害対応としてシステムの二重化やデータの
バックアップ等の対策が一般的に行われていますが、中小企業にお
いては同じ場所(建物)で実施されていることが多いため、建物
自体が甚大な被害を受けた場合には機能しない可能性があります。
従って、主な事業継続策は、データおよびデータを取り扱う経営資
源の、被災を免れた場所や被災圏外への切替えになります。
具体的には、目標復旧時間の短いアプリケーションサービス、サー
ビスサポート業務、営業などについては、システムを IDC やクラ
ウドまたは被災圏外にある代替システムに切替える対策を、またそ
れぞれの業務処理も被災を免れた社員宅や被災圏外にある代替拠点
に切替える対策を検討します。この時に、通信や遠隔操作が必要に
なりますが、最近ではスマートフォンを使用して対応する企業も増
えてきています。
被災圏外に代替拠点を確保しておくことが難しい中小企業の場合
は、システムのクラウドへの切替え、紙媒体を使用した手作業での対
応、被災を免れた自宅での作業などが事業継続策の中心になります。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
47
取 組 事 例 ●
26
Case Study
対 象 事 業
人材派遣事業
被災シナリオ
●従業者の約4割が罹患
●10日間出社不能
対 策
アノテーション株式会社
親会社との連携で
人材派遣事業を継続
対 象 リス ク
新型インフルエンザ
●啓蒙活動
●情報収集
●感染防止策(手洗い、うがい、マスク着用の奨励もしくは徹底)の実施
●代替要員の確保
●業務の縮小・休止
●通勤手段の変更・時差出勤
●在宅勤務
代表取締役社長
魚見 賢太郎
Q
事業内容を教えてください。
りますが、お客さまへ出向いている要員
が多い場所にアルコール消毒液を設置
に関しては、基本的にはお客さまの事業
し、予防処置を行っておりましたが、今
当社は、親会社であるクラスメソッド
継続策に従うことになりますので、この
回のプロジェクトで、感染後の初動対応
株式会社が行っている開発・コンサル
あたりのところを事前に調整しておく必
など、予防以外の処置を策定できたこと
ティング・トレーニングの業務委託サー
要があります。 に成果を感じています。
ビスにおいて発生した客先での IT 技術
また当初はお客さまへ出向いている要
者派遣のニーズに対応できる IT スキル
員が罹患した場合を被災シナリオとし
を持つ人材を採用し、派遣するサービス
て、これに対する対策を検討していまし
を提供しています。
たが、感染拡大の過程でどういう状況に
当社スタッフがお客さまにご迷惑をお
なるかわからないと感じました。ついて
かけしないことをゴールとした、身の丈
は直接部門(派遣先のメンバー)が集中
に合う BCP を構築できたものと思って
的に罹患した場合や、間接部門のメン
います。事前予防が大切であり、お客さ
親会社のクラスメソッド株式会社に
バーが集中的に罹患した場合、その中間
まとのお取引の際に、当社の労務面の取
て、地震に対する BCP を策定しました。
の場合等の複数のシナリオについても併
組をお伝えすることで、お客さまとの信
また東日本大震災の後、さらなる防災対
せて検討してみました。
頼関係をより強固にできるとも感じてお
策を進め、緊急用備品の備蓄をより一層
その結果、間接部門のメンバーが集中
ります。また、中小企業に該当する当社
充実させました。
的に罹患した場合のほうが、お客さまや
でも BCP を策定できましたが、このこ
今回は、当社の業態(人材派遣業とし
派遣先のメンバーへの対応や支払への支
とが他の中小企業の励みになれば幸甚で
て、さまざまなお客さまとのお付き合い
障などのため、事業に対するダメージが
す。
に際し、不特定多数の方々と当社スタッ
大きいことが分かりましたので、こちら
フが接する)に鑑み、新型インフルエン
に対しては、親会社から代替要員を出し
ザ等への罹患を回避し、感染した場合で
てもらうことで、対応することにしまし
あっても顧客の業務への影響を低減でき
た。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
るよう、いわゆるパンデミックに対する
BCP を策定することにしました。
策定されたBCPの内容を
Q 教えてください。
当社の BCP は、新型インフルエンザ
が流行し、従業員の約4割が罹患して業
Q
苦労したポイントは、パンデミックは
業務内外を問わず、ある意味、常に感染
の恐れがありますので、どのレベルまで
会社情報
予防策を講じるか、また、講じないか、
これは会社としての独自判断に依るとこ
と重大な影響の出る約3割の派遣先のお
ろも大きく、当社における「適正な」レ
客さまに対して、継続して人材が提供で
ベルをつきつめることでした。そして、
きることを目指しています。
このような検討の中で、事業を継続でき
このための事業継続策としては、代替
ないことでいかに信用を失うか、あらた
要員の確保、業務の縮小・休止、時差出
めて気付いた次第です。当社は、これま
勤、在宅勤務等を実施していくことにな
では受付・入口・トイレ等、人の出入り
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCPを策定した感想を
お願いします。
苦労されたポイントは
ありましたか?
務ができなくなった状況でも、欠勤する
48
Q
称号
アノテーション株式会社
本社所在地
東京都新宿区下宮比町2-26 KDX飯田橋ビル 7F
設立
2011年7月
資本金
500万円
従業員数
3人
代表者
代表取締役社長 魚見賢太郎
事業内容
人材派遣業
URL
http://an.classmethod.jp
取 組 事 例 ●
27
Case Study
対 象 事 業
ASP事業
被災シナリオ
●社員の半数以上が出社不可
●ASPサーバーの半数が使用不可
●社内サーバーが全損
対 策
株式会社イースティル
システムの多重化で
金融市場情報の提供を継続
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●キャビネットの固定、オフィス内の避難通路の確保
●サーバールームのレイアウトの見直し
●社内サーバーのデータセンターへの移設
●電気と通信手段が確保できる場所での作業
●各データセンターでの作業
●社内インフラのバックアップデータセンターへの切り替え
代表取締役社長
源口 宏
Q
事業内容を教えてください。
いう状況で、データセンターに設置して
かを具体的に意識できました。こういっ
あるASPサーバーの半数がディスクの
た指針や評価軸が、被災シナリオを作る
株式・為替・金利や市況ニュースなど
破損により使用不可、さらには社内サー
ことで作成できることがわかったのは重
の、主に金融機関のプロフェッショナ
バーも全損したという設定で BCP の改
要な気付きでした。
ルが利用する金融市場に関する多様な情
善を行いました。対象は弊社の中核事業
ソフト面でも、被災シナリオをトラッ
報提供業務をアウトソーシングしていた
であるASP事業とし、翌営業日の朝 8
キングして、時系列で誰が何をどういう
だく事業を行っています。オンライン証
時までにフロント部分において100%レ
手順で実施するのかを机上訓練で逐次確
券向けでは万単位の個人投資家向けの情
ベルに復旧することを目指し、既存の対
認することができたため、不足している
報サービスや、ディーリングルームでも
策の確認と、人員について、居住地別の
チェックリストやマニュアルを洗い出せ
利用されている高度な分析機能を備えた
役割や担当の割り振り、必要な人員の数
ました。手順書などの資料に接する人の
サービス、あるいは格付機関でご利用い
など、具体的な対策を考えていきました。
理解力や解釈能力、あるいはその時に使
ただくデータベースの提供などが主な
当社のシステムはすべてバックアップ
える作業環境を含めたプロファイリング
サービスの種類となります。
システムが整備されているため、事業継
から、記載方法や指示すべき情報の粒度
続策としては、バックアップシステムへ
まで再考することができ、本当に使える
の切り替えが中心になります。具体的に
資料の作成方法を意識できたのは大きな
は、その日のうちに、郊外に居住してい
改善となりました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
金融市場にとって情報は血液のようなも
て被害を免れた社員がおのおの自宅から
のですので、アウトソーシングを受けてい
リモートで各システムの被害状況を調査
る情報サービスの可用性や信頼性について
し、その結果をそれぞれが全社員にメー
は厳しく取り組んでいます。これまでも地
ルで通知します。そして翌日には、デー
近々 ISO化されるBCPの内容を正し
震や感染症への BCP対策を講じてきてお
タセンターに徒歩で出向けるものはデー
く理解し、より品質の高い実効性のある
り、先の震災でも問題はありませんでした。
タセンターで、自宅からリモートで作業
BCPを策定できました。これによって、
ちょうど一昨年より実施してきたBCP
できるものは自宅で、バックアップシス
お客様である金融情報ベンダーや金融機関
の改善プロジェクトに従った一連の設
テムへの切り替えと、その後の対応業務
のプロフェッショナルであるご利用者が、
備・機器や業務アプリなどのハード面の
を実施することで、目標の復旧指標を達
より一層安心して当社サービスをご利用
改善にめどがたったことから、体制やド
成するようにしています。またこれと並
いただけるようになりました。今後も金
キュメントなどのソフト面を効果的で漏
行して、お客さま、ステークホルダーへ
融市場が求める高いBCPの要求基準を
れのないBCP対策へ改善すべき時期に
の情報発信を実施し、破損したリソース
超えるアウトソーシーとして社会インフ
ありました。そこで、外部のコンサルタ
の復旧を実施していきます。
ラの運用管理業務を担ってまいります。
ントのご指導をいただき、独りよがりの
解釈や判断を排除してソフト面を中心と
した見直しに着手した次第です。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
ハード面では若干の改良を除いて必要
な対策がなされていることを再確認でき
ましたが、被災シナリオを設定すること
今回は地震の発生をあえて営業時間外
で追加投資するとしたら、どのような経
と想定し、社員の半数以上が出社不可と
営資源の拡充が費用対効果から有効なの
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
会社情報
称号
本社所在地
設立
資本金
従業員数
代表者
事業内容
URL
株式会社イースティル
東京都中央区日本橋3-3-11
第一中央ビル 3F
2000年4月
2,000 万円
23人
代表取締役社長 源口宏
金融I
Tのアウトソーシング
www.estijl.com
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
49
取 組 事 例 ●
28
Case Study
株式会社キュー・テック
映像音声資産を守り
編集スタジオを早期復旧
対 象 事 業
アニメを含むパッケージ編集事業
被災シナリオ
●サーバーが停止、光ファイバー一部断線
●半数のPCモニター落下
●映像・音声資産のうち、作業中データの一部破損
●テープ落下、一部破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●オフィス/編集室内の安全確保と行動指針の策定
●テープ棚の転倒防止/テープの飛散防止
●テープレスキュー手順書の作成と訓練の実施 ● VTR 機器格納ラックの転倒・飛出し防止
●バックアップのノートPCによるテープ管理処理の代替
●主要編集室・機器の優先復旧
●技術・編集部門の連携による編集業務の早期再開
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
執行役員
梶尾 徹
を含むパッケージ編集事業」を対象とし
みたいと思います。
た BCP を策定しました。この事業はお
BCPに取り組む前は、何か起こった
当社は、映像・音声の編集技術を核と
客さまであるアニメ制作会社で制作され
場合にはその場その場で対応できるだろ
する総合ポストプロダクションです。ポ
た映像・音声データをお預かりし、当社
うと考えていましたが、被災シナリオと
ストプロダクションとは撮影・収録され
の技術者が複数の映像編集機器を使って
いう疑似体験を通して様々に検討を重ね
てきた素材をもとに、編集以降、完成ま
編 集 し 作 品 を 一 本 化、DVD/Blu-ray
ていくと、あらかじめ取り決めをしてお
での仕上げ工程を担う業務で、当社は特
の元となるマスターを作成するというも
くことの必要性を痛感しました。
にアニメーションを得意分野にしていま
のです。事業の継続にはお客さまからお
す。番組や DVD などパッケージ向け作
預かりした映像・音声データや作業中の
品の編集、DVD/ Blu-ray ディスク制作、
データ、それらの制作に使用する機器や
配信用映像、デジタルシネマ/3D 映像
装置が必要となります。
有効な BCP はトップマネジメントが
制作等、様々な分野に展開し、これらを
その中でも映像・音声データは、お客
重要になりますので、各部門責任者をリ
通じて皆さまに高品質な映像と音をお届
さまからお預かりしている資産であるこ
スクオーナーに任命し取り組みました。
けしています。
とから、破損・紛失を防ぐための予防・
各メンバーにはその必要性、そしてリス
低減策に重点を置いて BCP の内容を検
クオーナーとしての自覚を感じてもらえ
討しました。また、映像・音声データが
たと思います。今後は策定した実行計画
収録されているマスターテープにおいて
を着実に実行に移し、そして継続的に運
きっかけは東日本大震災です。幸いに
は、テープレスキュー手順書を作成し、
用していくことで社内に浸透させていき
も社員、社屋ならびに設備・機器等に大
テープ破損状況の早期確認と早期修復作
たいと考えています。
きな被害はありませんでしたが、災害発
業を行うことにしました。
生時にどのように行動するのかといった
そして、本社の 30 余りの編集室/音
基本的な部分をはじめ、対策がおろそか
声スタジオ/機械室と、各部屋にある映
になっていることを痛感しました。これ
像・音声編集機器については、汎用性と
を契機に、いつ起こるかわからない災害
コストの観点から優先的に復旧させる編
に対し、万が一の備えとなる行動パター
集室を選んだうえで、機器・設備・IT イ
ンのマニュアル化、社員の安全確保、そ
ンフラの災害予防対策を講じ、早期復旧
して被害状況に応じた復旧や、事業復旧
策を策定しました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
までの時間短縮が図れるような計画を策
定する必要があると考えました。何も無
いところからでしたので、専門家の支援
Q
何か新たな気づきはありましたか?
を受けながら、そのノウハウを盛り込ん
現場検証では、多種多様の被災の可能
だ BCP の整備と運用を実現しようと考
性が顕在化し困惑しました。それを受け
えました。
て各階ごとに対応策を整理し、優先的に
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
今回は当社の基幹事業である「アニメ
50
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
復旧させたい編集室を決め、予防・低減
策を立てました。また多数の帰宅困難者
が出ることが予測されるため、これから
備蓄・宿泊などの対応策の整備に取り組
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
会社情報
称号
株式会社キュー・テック
本社所在地
東京都港区赤坂6-14-15
設立
1989年4月1日
資本金
9,000万円
従業員数
200人
代表者
代表取締役社長 梶尾徹
事業内容
録音、 録画、デジタルデータ記
録物などの原盤の企画・制作、
収録・編集、プログラミング、
製造、 販売および賃貸など
URL
http://www.qtec.ne.jp
29
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社サンブリッジ
復旧の要は IT 技術、
クライド利用でサービスを維持
対 象 事 業
プロフェッショナルサービス事業
被災シナリオ
●社員外出者含め12名が負傷
●オフィスは天井落下
●キャビネット転倒
●機器ではデスクトップ PC50% およびノート PC20%が破損
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●安否確認の徹底
●在宅勤務の体制構築
●既存パートナーとの協力体制の構築
●自部門リソースの活用
●外部業者への委託による継続
代表取締役社長
小野 裕之
Q
事業内容を教えてください。
BCPを策定しました。
に、チーム内や外部委託業者との案件進
彼らの多くは、現場に常駐もしくは外
捗状況の共有の必要性を改めて実感しま
当社が事業展開しているプロフェッ
出していることが多いので、社外で被
した。
ショナルサービス事業では、クラウドを
災した際の行動指針と安否確認の徹底が
また、基本的なことだとは思いますが、
活用したアプリケーション提供サービス
大変重要になります。特に “自分がけが
非常時における社員の安否確認、連絡体
(SaaS)を中心に、ビジネスソリュー
をしない” ことで事業継続のスピードが
制、手段など、実際に機能するか検証し
ションの提案、コンサルティング、設計、
格段に変わるため、発災したら社員は安
たことがなく、心もとない状況であるこ
開発・導入サービス、運用などのサービ
否報告、システム・顧客の状況等の確認
とに危機感を覚えており、今後定期的な
ス、およびソフトウェアの販売を行って
を迅速に行い、リーダーに情報を集約し
訓練を実施していくことと致しました。
おります。
状況に応じて優先順位を決定していきま
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
す。
各プロジェクトはそれぞれ内容が異な
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
るために、担当者以外の社員対応が容易
率直な感想として、これからが始まり
今回の東日本大震災では、震源から距
ではないものもあります。ついては事前
だと思っています。
離のあった首都圏地区においてすら電話
にリーダーや社員、プロジェクトに参加
社員は日々の仕事に追われ、非常時に
の輻輳(ふくそう)により安否確認やお
している外部委託業者との案件進捗情報
どうすることが必要かというところにま
客さまとの連絡が数時間困難になり、ま
の共有、災害時対応の取決め、バックアッ
で、まだまだ意識が及んでいない状況で
た交通機関の停止により帰宅困難者対応
プ体制の確認、既存システムのマニュア
あり、東日本大震災のことも時間の経過
が発生するなど、自社内でも多くの課題
ル作成などを実施し、有事に迅速に対応
とともに、徐々に記憶から薄れていくか
があることを認識しました。
できるように致しました。
もしれません。
また当社の事業はクラウドを活用した
サービス提供ですが、ここ数年、事業継
続の観点からもクラウドサービスに対す
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
そのような中で、いかにして今回策定
した行動計画を社員一人一人の普段の意
識の中に定着させ、現実に災害などが発
る関心が高まっています。そこでまずは
事業の性質上、また企業規模からほと
生した場合にも、適切な行動が取れるよ
自分達が積極的にBCPに取り組むこと
んどのマネージャーがプレイングマネー
うにするかということが重要だと感じて
によって、その経験を活かし当社のお客
ジャーのため、お客さまの都合優先で、
います。
さまへもBCPの重要性を伝えることが
一堂に会するスケジュール確保が難し
使命の一つであると考えBCPを策定す
く、全員の意識合わせや BCPプロジェ
ることに致しました。
クトの進め方に課題がありました。結果
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
的にはチームごとにサービス内容が異な
ることから、本プロジェクトに参加でき
たチームの BCPが策定できたという結
今回対象としたプロフェッショナル
果となりました。今後は社内ミーティン
サービス事業では、事業継続の最重要課
グにてBCPの検討を行って参りたいと
題は社員や外部委託業者の技術者の確保
思います。また、今回の策定を通じて、
と、ネットワーク環境の確保であると認
当社の事業がいかに個人の専門性やスキ
識しており、その観点から地震に対する
ルに依存しているかを再認識すると同時
会社情報
称号
株式会社サンブリッジ
本社所在地
東京都渋谷区恵比寿南1-5-5
設立
1999年12月
資本金
9,000 万円
従業員数
50人
代表者
代表取締役会長 アレン マイナー
事業内容
プロフェッショナルサービス事業
URL
http://www.sunbridge.com
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
51
30
取 組 事 例 ●
Case Study
システムビジョン株式会社
情報資産の分散保管により
ソフト受託開発を継続
対 象 事 業
ソフトウェア受託開発事業
被災シナリオ
●近隣の火災による本社機能喪失
●社長出張中で3日後に帰社
●開発/試験用PC破損、ファイルサーバー破損
●情報資産一部消失
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●サーバー機器機種の統一と代替機器の準備
●開発テスト環境のバックアップ、納品物、開発成果物の分散保管
●代替サーバーによるサーバー環境復旧
●開発テスト環境のバックアップからの復旧
●社員宅PCによる開発テスト業務継続
代表取締役
島村 政之
Q
事業内容を教えてください。
して小さい企業でも身の丈にあった対策
ないと考え、役員の自宅あるいは主要な
を講ずることにより、事業が継続できる
お客様のオフィスをお借りして業務を再
当社は、コンピューターソフトウェア
事を示し、若い人達が起業に対して、自
開する対策を追加しました。
の開発事業(持ち帰り請負作業)を展開
信をもてるようにしたいと考えています。
今回のいろいろな検討の中で、被災シ
しており、主要業務領域は金融端末アプ
リケーション、金融端末通信ミドルウェ
アです。また、その他ウインドウズアプ
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
ナリオからもたらされる被災想定と、身
の丈に合った対策(投資)のバランスの難
しさおよびその重要性を痛感しました。
リケーション開発、ウェブシステム開発、
今回の対象事業はソフトウェア受託開
その上で第1版、第2版と順次充実させて
通信ミドル開発、データベース構築など、
発事業なのですが、事業継続策の最大の
いく必要性も理解できたと考えています。
さまざまなサービスを提供しており、主
ポイントは、ノウハウを有する社員の安
また、ISMSの中にある事業継続策と
要顧客とは20年来のお付き合いです。
全確保と、技術関連情報資産および納品・
今回策定した BCPとの整合性を取るた
そういったお客様のご信頼にお応えした
開発途中の成果物の保全、開発テスト環
めに若干の苦労をしましたが、結果とし
いと強く思っています。
境の保全にあります。
て “What” から “How to” に展開しきれ
その中でも社員は最も重要で、かつ簡
たと思っています。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
単には代わりがききません。ついてはま
ず社員・家族の安全確保のために、社員
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
東日本大震災時は、当社の事業に対す
が通勤可能となる交通機関復旧後に、本
る被害はそれほどありませんでしたが、
格的な復旧活動を開始しようと考えまし
おかげさまでBCPの第1版を何とか策
社会的混乱を目の当たりにしたことと、
た(納期が迫っている場合は別の対応を
定できました。BCP検討の過程で、何
社員の安全確保、帰宅に関する問題が発
行う必要はあります)。
と言っても社員が最大の “経営資源” であ
生したことにより意識が高まりました。
そして機器に関しては、開発テスト用サ
り、災害時の身の安全を計ることがすべ
また、震災後、同時期に取締役2名の身
ーバーは代替サーバーへの切替を容易にす
てであるとの認識を新たにしました。
内に不幸があり、経営者が数日間にわたっ
るための対策を、重要なデータに関しては、
また今回のプロジェクトはご支援を頂
て不在という事態となったため、対応に苦
バックアップの分散保管を検討しました。
きながら少数で策定したものであり、今
慮したこともあり、想定外の事態に対する
最後にさらに深刻な状況として、万が
後事業継続について社内コンセンサスを
備えが必要であると強く認識しました。
一本社機能を喪失した場合は、社長宅の
得ながら会社としての BCPに育ててい
一昨年、経営上の課題対応で中小企業
PCに開発テスト環境を構築する、さら
きたいと思っております。社員全員が本
振興公社の指導を受けた際に、東京都
に万が一のケースにはお客様の事業所、
BCPを理解することから始めて、実施
BCP策定支援事業の存在を知ったのが
機器を借用し、業務を継続できるように
できる方向にもっていくつもりです。
そもそもの始まりであり、ISMS資格再
協議を行わせて頂くことも考えました。
審査を控え事業継続計画をさらに充実さ
せたいと考えました。
今回のBCP策定にあたっては、まず中
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
小企業としての自社の存在意義を再確認
今回のBCPでは当初オフィス自体は
したいと考えています。またBCPの必要
利用可能とのシナリオにて事業継続策を
性を社会にアピールすることによって、
検討しました。しかし検討を進めるうち
営業力が強化されると思っています。そ
に、“オフィスの喪失は想定外” とは言え
52
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
本社所在地
設立
資本金
従業員数
代表者
事業内容
URL
システムビジョン株式会社
東京都大田区大森北4-8-4
河内ビル 2F
1987年11月
1,000万円
9人
代表取締役 島村政之
受託ソフトウエア開発
http://www.svnet.co.jp/
31
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社 出版文化社
お客様の歴史・文化を記録する
社史制作を継続
対 象 事 業
ヘリテージ・サービス事業(社史・記念誌の制作)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●経営者重傷(意識不明)
、負傷20%、帰宅困難者60%
● PC(サーバー、クライアント)
、PCモニタ、 複合機故障
●外部サービス(ライター、デザイナー、カメラマン、校正者、 印刷会社)との連絡不能
対 策
Q
●社員の防災訓練
●大阪に支払い業務システム導入、支払い業務指導
●デイリーで大阪へのデータバックアップ
●緊急連絡網、安否確認サイトの定期的な整備と訓練
●バックアップデータ(入稿前データ、基幹業務データ)の取得
●大阪ヘリテージ・サービス、支払い業務の切り替え、実行
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
浅田 厚志
今回対象としたヘリテージ・サービス
指示、事業継続策、事業復旧策をどのよ
事業の中では、特に社史の制作業務とそ
うなタイミングで誰に指示するかを決定
わが社は2つの事業を展開しておりま
れに付随するフリーランスのライターへ
するのに大変苦労しました。
す。ひとつは出版企画事業で単行本・雑
の支払い業務の早期復旧が重要です。
しかしこういった具体的な役割や担当
誌の企画・編集、もうひとつはヘリテー
社史はお客さまの創立○○周年の節目
者を決めることにより、今まで見えてこ
ジ・サービス事業で、社史・記念誌の企画・
として作成され、記念式典等の配布用な
なかった各社員の対応力・スキルの有無
編集・出版サービスを行っております。
どに活用されます。そのため、納期遵守
が浮き彫りになり、有意義なものになり
設立当初は書籍の編集・出版、自費出
が基本であり、遅らせるわけにはいきま
ました。演習を行うことによって判明し
版物の企画・制作、大手出版社への企画
せん。
た課題に対して、できる範囲での対応策
持込み業務から始め、すぐに資料に基づ
また、高品質な社史を作成するために
がすぐに導き出せたのと、今後の課題が
いて社史を作るための企業情報の整理・
は、お客さまからの資料、OBのインタ
検討できたことは非常に有益でした。
編集業務を開始しました。セミナー実施、
ビューなどが必要となりますが、それら
大手銀行系企業と社史を中心とした出版
をまとめるその業界に精通したライター
サービスの業務提携等を行い、現在では
の存在は欠かせません。しかしながら、
累計約700点の社史受注を頂けるよう
ほとんどのライターはフリーランスであ
ISO27001の中で事業継続計画のマ
になりました。
り、大災害が発生し、わが社からの原稿
ニュアルは作成していましたが、実際に
料の支払いが遅れた場合には、ライター
は具体的な行動指針にはなっていません
の生活に影響します。場合によっては原
でした。今回、BCPを策定して行く過
稿料の支払いが早い、他の仕事を優先し
程で、被災シナリオを設定し、業務影響
大阪で阪神淡路大震災、そして東京で
てしまう可能性があります。作業途中で
度分析・経営資源分析・事業継続策を通
東日本大震災を経験し、災害はいつ起
のライター変更などの状況を回避するた
して、仕組みを構築できたことは非常に
こってもおかしくないのだという危機
めにも大災害が発生しても支払い業務を
良い機会になりました。そして、事業
感がより一層強まりました。社内では
継続する必要があると考えました。
継続のために必要不可欠な人材育成と
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
ISO27001の事業継続の一環で、危機
管理手順などを準備してきましたが、取
組を強化していかなければならないとい
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
BCPの維持継続の活動が極めて重要で
何か新たな気づきはありましたか?
う思いが強まりました。しかしながら、
災害が発生した際には、社員・お客さ
いざ進めようとすると、どこから手を付
ま・関係会社との連絡手段、人員、デー
けていけばよいか分からず、社内で困っ
タのどれを欠いても、事業継続が危ぶま
ていたところ、東京都のBCP策定支援
あると実感しました。
会社情報
称号
株式会社出版文化社
れるのだということに改めて気付かされ
本社所在地
大阪府大阪市中央区久太郎町3-4-30
船場グランドビル8階
事業でコンサルタントの指導があるとい
ました。
う情報を知り、有事の際に、社員の生命
被災シナリオでは意図的に経営者を重
東京本部
東京都千代田区神田神保町2-20-2
ワカヤギビル2階
を守り、事業・サービスの継続できる仕
傷にし、有事の際に経営者が指示を出せ
設立
1986 年8月
資本金
5,000 万円
組みを構築したいと考えました。
ない状況で、社員がどう動けばいいのか
従業員数
60人
代表者
代表取締役社長 浅田厚志
事業内容
出版企画事業及びヘリテージ・
サービス事業
URL
http://www.shuppanbunka.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
を検討しました。これまでこういった状
況を想像したことがなかったので、代行
者の東京営業所長が避難指示、避難後の
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
53
32
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社ゼネット
クラウド上の代替えシステムで
ASP事業を継続
対 象 事 業
クラウドサービス事業
被災シナリオ
● ASP、開発、ファイルサーバーが使用不能
●従業員の一部が被災
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●安否確認システムの開発
●キャビネットのレイアウトの見直し
●キャスター止めの実施
●アプリケーションやデータのバックアップ保管場所の変更
● WiMAX を使用したノートPCからの操作
● ASP サーバー環境のEC2への切り替え
代表取締役社長
四元 一弘
Q
事業内容を教えてください。
被災想定としては、ASP、開発、ファ
不十分であることに改めて気付きまし
イルサーバーが使用不能、従業員の一部
た。そこで停電状況であっても、公衆無
弊社は金融系を中心にネットワークも
が被災した状況として、24 時間以内に
線 LAN(WiMAXなど)をテザリング機
含めたシステムインフラの構築、シス
通常の 80%のサービスレベルに復旧す
器として使うことで、安価にバックアッ
テム設計・開発、運用・保守に至るまで
ることを目指して対策を検討しました。
プセンター(アマゾン EC2)を活用し、
ICT(情報通信技術)ベンダーとしてワ
事業継続策としては、発災したその日
お客様にサービスを提供し続ける方法を
ンストップのソリューションをお客さま
のうちに、ワイヤレスで高速モバイルイ
確立することができました。
に提供しています。また、ITコンサルテー
ンターネットを実現できる WiMAXを使
ションや、弊社開発の販売管理システム
用したノート PC からの操作によって、
をインターネット経由でご利用いただけ
弊社のクラウドサービス(SaaS 型)を
るクラウドサービス事業、日本発の開発
提供している ASP のサーバー環境を、
BCP策定の上で、このたびの支援事
言語 Ruby を使った製品開発、E- ラーニ
アマゾンが提供しているクラウドサービ
業は大変参考になりました。今後は、策
ングによる教育事業等の展開にも力を入
ス(IaaS 型)である EC2 へ切り替え、
定 し た BCP の 運 用 と、 そ の 他 事 業 の
れております。
このアクセス先を顧客へメールで通知す
BCP 策定を行っていく予定です。課題
ることで、目標の復旧指標を達成するよ
といたしましては、本社の総務機能の
うにしています。
BCP 策定について、いまだ不明確な点
そして電気が復旧したのちに、使用不
があります。よいアドバイスを頂ければ
弊社はインターネット経由で販売管理
能となっている ASP、開発、ファイル
幸いです。また、予防・低減策のための
システムをご利用いただくクラウドサー
サーバーの被災状況を確認し、業者へ修
物品購入や、食糧や飲料水の備蓄などの
ビス事業を展開しております。サービス
理を依頼もしくは自社でパーツを調達し
費用負担もかかりますが、前向きに取り
を安定的に提供するためのバックアップ
修理します。
組んで参ります。
取得やサーバーの冗長化は実施しており
その後 ASP サーバーの修理が完了し
このたびは大変よい機会を与えていた
ましたが、大地震が発生した場合、自
た後に、EC2 からもとの状態に切り替
だき誠にありがとうございました。
社サーバーの倒壊によるデータ損失やシ
えるという手順で本格復旧を行います。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
ステム障害などサービスの継続が危ぶま
れる事態が想定されます。被災時であっ
てもシステムを継続稼働するための対策
Q
大地震により5日間の停電を想定致し
取り組んだ理由です。
ましたが、システム会社は停電では全く
策定されたBCPの内容を
教えてください。
弊社は地震に対するBCPを策定しま
ビジネスになりません。いかに電源を確
保しサービスを継続させるかが大きな問
題です。建物の管理上発電機等の使用は
制限されますし、蓄電池もかなりの投資
した。弊社の事業の中で、クラウドサー
になります。既存の設備でいかにこなせ
ビス事業は売り上げとしてはまだまだな
るかがポイントでした。
のですが、将来性を重視し本事業を対象
またクラウドサービス事業の BCP 策
としました。
定に際し、会社が被災した場合の対策が
54
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
が早急に必要と判断したことがBCPに
Q
Q
会社情報
称号
株式会社ゼネット
本社所在地
東京都豊島区南池袋2-30-17
朝日生命南池袋ビル 2F
設立
1999年4月
資本金
4,400万円
従業員数
120人
代表者
代表取締役社長 四元一弘
事業内容
情報システムのコンサル・設計・
開発
URL
www.zenet-web.co.jp
33
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社中央ジオマチックス
地図づくりにより
行政の災害復興実務を助ける
対 象 事 業
GIS 構築事業、緊急時支援業務
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●内勤の50%(空間情報)がけがなどの理由により出勤不能
●プロッターおよびサーバーも全損
●作業用デスクトップPCの大半が破損
対 策
Q
●スキルの共有化
●パートナー会社との支援体制の確立
●遠隔拠点でのデータバックアップの保管
●非常時用代替機(ノートPC)の用意
●遠隔拠点よりバックアップデータを取り寄せ、復旧
●代替機(ノートPC)の環境整備後、作業再開
事業内容を教えてください。
BCP 策定の対象事業として、データ
保全の必要性などを重視し、主力の一つ
代表取締役 CEO
田中 尚行
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
当社は「地図調製」、つまり地図づく
である GIS(地理情報システム)構築事
BCP策定を通じて社内で共通認識を
りを事業の柱として、官公庁や民間企業
業を対象としました。
もつことにより、一定の安心感が生まれ
に対し、アナログからデジタルに至るま
事業継続対応の大きな流れとしては、
たように感じます。最近多発している地
で、さまざまな空間情報を提供している
早期に状況確認を実施し、お客さまとの
震などにも、BCPという後ろ盾がある
地図専門会社です。具体的には、公図や
協議に基づき作業再開に備えるというも
ことで、心の準備をして対峙することが
関連する各種主題図の調査からデータ作
のです。このような対応を実現可能とす
できると思います。また、当社では防災
成、GIS に関するシステム開発やソフト
るために必要となる資源として、高度で
業務に関わりのある地図づくりをいろい
販売を行っています。地図表現や、白地
専門的なノウハウを有する社員、IT シ
ろやらせていただいておりますが、その
図に情報(主題)を彩色するノウハウな
ステムおよび各種データが挙げられま
ような事業を担う上での仕事に対する意
どの技術を代々受け継ぎ、育んできた自
す。またお客さまからの預かり情報など
識が変わってきました。
負があります。
も考慮に入れて対策を検討していきまし
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
た。
どんな場合でもまずは社員の人命の安
全が重要であるので、室内耐震補強策の
従来からハザードマップの作成を受託
実施や外出時被災者の緊急対応方針を決
するなど、仕事柄、防災や事業継続に対
めました。
する関心を早くから抱く環境にありまし
またその一方で、行政からの緊急支援
たので、防災要領を用意し、音声通信不
要請があった場合には、災害直後の測量
通の場合にはモバイルでの社内情報発信
現場に赴くわけではありませんが、組合
を行うこととするなど、BCP 的な意識
との連絡体制の下、災害発生直後の査定
による取組は既にある程度行っている、
による測量成果の地図化(地図調製、大
と思っておりました。
判紙印刷)を担うことを決めました。
他方で東日本大震災後、他の組合員と
共に、被災した同業者の話などを聞き、
お客さまにはやはり迷惑をかけるわけ
Q
何か新たな気づきはありましたか?
にいかず、成果物を形にして納めなけれ
思えば、これまで自社の事業全体を危
ばならない、そのためにも皆で団結した
機管理的な観点からきちんと見直したこ
い、という思いを強くするに至りました。
とがありませんでした。今回の BCP 策
BCP 策定が年間事業計画に組み込まれ
定では、事業を継続していく上での課題
たこともあり、組合の趣旨に賛同するか
を系統だって洗い出し、対応を検討して
たちで BCP を策定することとなりまし
た。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
会社情報
称号
株式会社中央ジオマチックス
本社所在地
東京都板橋区舟渡3-15-22
設立
1958年9月
いく作業を通じて、苦労というより新た
資本金
1,000 万円
従業員数
40人
な良い発見が多く、創造的な取組となり
代表者
代表取締役 CEO 田中尚行
事業内容
各種地図の作成および印刷・
各種地図のデータベース作成・
GIS 運用業務
URL
http://www.chuogeomatics.jp
ました。コンサルタントがうまく支援し
て下さって、効果的に導入させて下さっ
た、とも感じております。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
55
34
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社デザイン・クリエィション
災害時も使える
ベストセラーCADを届ける
対 象 事 業
CADソフトの販売とサポート
被災シナリオ
●外出2名、負傷者9名(サポート2名含む)
●東京本社事務所内天井崩落
●社内サーバーは70%がダウン、その他も停電のため使用不能 ●外部サーバー(全体の30%)は使用可能
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●外部サーバー/代替サーバーの活用
●業務の多能化
●地方拠点の活用
●社内システムのマスターCD作成
●東京以外の地方拠点(特に大阪)での受注活動継続
●受注DB復旧まで緊急出荷
事業内容を教えてください。
取締役管理本部長
佐藤 茂栄
要であるため、今回は後者に絞って事業
したが、コンサルタントによるプロジェ
継続を検討しました。
クトの進め方の巧みさもあり、うまく適
当社はソフトウェア・パッケージ(2
本事業を継続する上で、一番重要とな
用できました。社内に防災に強い人材が
次元/3次元 CAD、図面文書管理)の
るのが人員とデータです。人員について
いたこともあり、防災と事業継続が組み
開発、販売、保守サービスを提供してい
は、各人が他所業務、他部門業務ができ
合わさって実践的な BCPができたと自
ます。ソフトウェア・パッケージのう
るよう多能化、情報共有を進めることに
負しています。
ち、機械用 CADが 85%、土木用 CAD
しました。
が 8%、図面文書管理が7% です。
またデータに関してはサーバーの耐
特に2次元機械用 CADでは30年近い
震、免震は実施済みですが、最悪の状態
歴史と10万本に及ぶ累計出荷実績を有
に備えて外部サーバーの活用、代替サー
当初は、「開発」、「販売」、「サポート」
し、ユーザー満足度ナンバーワンCAD
バーによる復旧体制の整備を行うことに
全てにわたる BCPを策定したかったの
との評価をいただいています。
しました。
ですが、セッション5回という時間的制
販売業務については、本社の営業シス
約と、「販売・サポート」と「開発」の
テムが動かない想定で、営業販売機能は
時間軸の違いから除外せざるを得なかっ
地方拠点(特に大阪)が手作業で受注処
たのは残念でした。
過去の防災対策は十分と言えるもので
理を行うことで代替し、製品出荷も(基
しかし結果には満足しています。防災
はありませんでした。緊急連絡網は作っ
本的には小田原が拠点ですが、問題があ
用品も同時に整備し、より現実的でか
てはいましたが、不完全な部分がありメ
れば)大阪または他の拠点から対応しま
つ社員とその家族までをも考えた連絡手
ンテナンスもされていない状況でした。
す。
段の構築など、実用的な BCPができた
そんな中、東日本大震災に遭遇し、従
サポート業務についてはサポート DB
と思います。今後は自社で「開発」の
業員の安全確保や安否確認などの難しさ
を使わず、大阪、東京が個別に対応し、
BCPも策定を目指します。
を痛感しました。企業防災は具体的にど
ユーザー認証も簡易化して、緊急対応で
うあるべきか、社員の安全と企業の存続
サービスを実施し、業務を継続します。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
を両立させるにはどうすれば良いのか、
その方法を手探り状態で模索していた
時、本プログラムのことを知り応募させ
ていただきました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
苦労されたポイントは
ありましたか?
会社情報
東日本大震災を経験し、従業員一人一
人の防災と企業存続に対する意識が高
まっていた折でもあったため、活発な意
見交換や提案がなされ、スムーズな策定
称号
株式会社デザイン・クリエィション
本社所在地
大阪府大阪市淀川区西中島
7-5-15
東京営業所
東京都中央区東日本橋2-24-14
日本橋イーストビル5F
設立
2004年3月
資本金
5,000 万円
CADパッケージ・ソフトウェアの開
ができました。
発、販売、サポート事業のうち、開発は
プライバシー・マークなどで計画策定
半年ごとにメジャーバージョンアップと
などには慣れていたので、書類作りの面
従業員数
42人
中間バージョンアップをリリースすると
では特に苦労は感じませんでした。
代表者
代表取締役 久保哲夫
いうように数か月単位で動く事業です。
BCP策定開始当初は、工場などの施
一方、販売、サポート事業は日々刻々動
設や設備を抱える製造業ではない業態の
事業内容
ソフトウェア・パッケージ(CAD
および図面文書管理)の開発、
販売、 保守サービス
きがあり災害時にも日単位での対応が必
当社にはマッチしないのではと思われま
URL
http://www.dcrea.co.jp/
56
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
35
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社トリニティーセキュリティーシステムズ
データセンター二重化で
セキュリティビジネスを継続
対 象 事 業
SOLサービス(セキュアバックアップ・サービス)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●データセンター被災によるサービス停止
●本社ビル立入不可
●オフィス機器、ITシステム 一部故障・使用不可
対 策
Q
●データセンターの分散化(二重化)
●パートナーや外部サービス業者との連携協議
●「非常用作業キット」の用意とこれを携帯する専属エンジニア配置
●バックアップサービス・システム使用
●任意の場所から監視と必要な作業を行うヘルプデスク機能を継続
●ホームページおよび携帯メールによる重要顧客への被災復旧状況の通知
事業内容を教えてください。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
代表取締役社長
村口 和孝
ト」を用いて任意の場所から必要な作業・
監視をできるようにするというアイデア
当社はセキュリティ/認証技術領域に
今回のBCPの最大のポイントは、種々
は、本社ビルの立入不可を想定したこと
おいて日本でもトップクラスの技術や特
のリスクに対応するために、バックアッ
から生まれました。
許を有しており、当技術を事業の中核と
プ・ サ ー ビ ス で 使 用 中 の デ ー タ セ ン
参加社員も、策定後は発災直後からい
して、セキュリティ関連ソフトウエアの
ターを二重化するか否かにありました。
つ何のために何をすべきかを明確に理
開発・販売と保守、セキュリティ診断サー
BCP検討会が経営会議の様相を呈し、
解できるようになり、事業継続の本質的
ビスと診断結果に基づくソリューション
最終的には経営理念まで立ち返って決断
な目的も深く認識できるようになりまし
の提案および実装、SOL サービス(セ
をしました。
た。
キュリティ保護機能を備えたクラウドに
また、本社オフィスが使えない、担当
よるデータバックアップ・サービス)、
技術者が外出中等の状況下でも、サービ
そしてセキュリティ・コンサルティング
スを提供しているシステムの稼働状況の
サービスの事業を展開しております。
確認や、必要な作業が任意の場所で実施
当社 “SOLサービス” は、情報システ
できるよう、システム面の仕組みの組み
ムスタッフのいない中小企業に貢献すべ
込みや、非常用作業キット(ノートPC、
く、“何があろうとお客さまのデータを
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
外部バッテリー、携帯電話・充電器、通
守り抜く” との強い思いのあるサービス
社内では地震対策や備蓄等、ITシステ
信カード等)を用意することにしました。
です。今回それを実現するためのBCP
ム に つ い て は、DISKのRaid化 や サ ー
当社のセキュリティ技術を駆使した事
が策定でき大変満足しています。
バーの二重化を既に実施していました
業継続策は、他企業の情報システムの
今後は、全社員への啓蒙・浸透活動の徹
が、備えとしてこれで良いのか不安でし
セキュアな遠隔操作にも有効なソリュー
底を実施していくと共に、BCPに裏打
た。
ションだと思います。
ちされた “SOLサービス” を、自信を持っ
また東日本大震災の際には業務が一時
混乱し、さらに復旧の最中に前社長が病
気で急死したこともあり、正常な状態に
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
戻すのに大変苦労しました。
最初は、(例えば被災想定など)何を
その一方で、お客さまから、データの
根拠にどのように発想すれば良いのか、
バックアップ・サービスのおかげで事業
そこから何を考えれば良いのか戸惑いや
継続につながったというお話を頂き、災
フラストレーションを感じましが、コン
害などで万が一当該サービスが止まって
サルタントのガイドに従って検討を進め
しまったら、お客さまに大変なご迷惑を
るうちに “目からウロコ” のように視界
おかけすると共に社会的責任も果たせな
が開け全体が見えるようになったと感じ
いと強く感じました。サービサーとして
ています。
の責任を果たすため、“何があろうとお
行政から出ている地震についての被災
客さまのデータを守り抜く体制を構築し
想定を参考に、極力 “想定外” を無くすよ
たい” との思いを実現すべくBCP策定に
う自社の状況を想定し、それに基づき自
取り組むことにしました。
分達の身の丈に合った対策を考えていき
ました。担当技術者が「非常用作業キッ
て中小企業のお客さまにご提案していき
たいと考えています。
事業継続のためのデータのバックアッ
プをご検討の際は、お声かけください。
会社情報
称号
株式会社トリニティーセキュリティ
ーシステムズ
本社所在地
東京都品川区西五反田1-13-7
マルキビル 3 階
設立
資本金
従業員数
代表者
事業内容
URL
1999年11月
2,500 万円
15人(子会社含め32人)
代表取締役社長 村口和孝
セキュリティ関連コンサルテーション、関
連ソフトウエアの開発と販売、データの
セキュアバックアップ・サービス等
http://www.trinity-ss.com
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
57
36
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社日本テクノ開発
アウトソーシングサービス継続のため
グループ内で技術を共有
対 象 事 業
アウトソーシング事業
被災シナリオ
●本社勤務社員の 5% が負傷
●本社サーバー10台中4台損傷、使用不可
● PC30台中6台損傷
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●グループメンバーによる相互支援(業務継続)
● IT・諸設備の転倒、倒壊に対する防止策の実施
●(将来的な)代替策の検討
●マネジャーにて代替担当者をアサイン
● IT機器の動作確認、修理依頼、オンサイトに移動して対応
備 考
● IT予備機、予備電源の確保については今後検討する
●お客さまとの調整次第で他の案についても検討していく
Q
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
長瀬 富士男
することが当社の使命であると思ってい
きるかの検討に時間をかけました。議論
ます。そのため対象業務の最大許容停止
を重ねるうちに参加者からいろいろな意
1985年に創業し、「お客様第一主義」
時間は 24 時間、目標復旧時間を12 時
見が出て、その中からいくつかの解決手
を徹底し、お客さまのご要望に沿った安
間と厳しい目標を設定しました。
段が見つかりました。まずはすぐに実施
心して使えるソフトウェアをご提案でき
これを実現するための重要な経営資
できることからはじめ、少しずつ完成に
るよう、努力し続けることを経営理念と
源は人と道具、すなわち IT機器であり、
向けて取り組んでいこうと考えています。
しています。
この2つに重点を置いて検討しました。
以前、自社でパンデミック用に作成し
現在ではアウトソーシング事業を中核
まず人ですが、通常は業務ごとに担当
た BCPが連絡網程度であったことから
として、システムインテグレーション、
者がおりますが、緊急時にはグループ内
考えると相当に進んだBCPとなり、大
コンサルティング、関連機器販売事業を
でカバーし合う体制にするようにしまし
きな前進であると同時に収穫でありまし
行っています。特にアウトソーシング事
た。
た。
業では、情報システムの維持管理、業務
次に IT機器は損傷などで使用できなく
支援・技術支援、ヘルプデスク、各種デー
ならないよう予防策を徹底的に行い、次
タ入力など多岐にわたった業務をご提供
に使用できなくなった場合の対策を講じ
しております。また作業もお客さま先と
るようにしました。また、目標復旧時間
発災時の緊急対応、危機対応から事業
自社内の両方で行っています。
までの停電対策として短・中期の対応策
継続対策まで策定することができ、また
についても立案し、計画を作成しました。
一つ一つの経営資源ごとに脆弱性やその
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
過去にパンデミックに対する BCP を
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
予防・低減策、事業継続対策を検討する
過程でこれまで気がつかなかったことも
多くありました。
策定しましたが、連絡網程度の整備で実
今回 BCP 策定の対象事業としたアウ
集合研修での説明や、最後に行った演
際に活用されたことはありませんでし
トソーシング事業の維持管理業務では、
習を通して PDCA の重要性を理解する
た。このたびの東日本大震災を契機に本
半数の社員はお客さま先で、半数は社内
ことができました。今回は社員の一部の
格的に BCP の構築を考えていたところ、
でお客さまと専用回線を利用して業務を
メンバーで策定しましたが、社員全員に
東京都の支援事業があることを知って応
行っています。そのためまずはお客さま
周知徹底すること、演習を行うことで見
募しました。
先で業務を行っている社員の安否確認と
直し、改善を図っていきたいと思います。
また、今後お客さまから災害発生時の
移動手段の確保をいかに迅速に行うかが
取組についての説明を求められることが
問題となり、電話・メール等による早期
想定されることも BCP策定の理由です。
連絡、交通機関の復旧や道路規制の解除
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
までの間の対応方法に苦慮しました。
もう一つ苦労した点は、電力供給の停
止や通信インフラが機能しない中、い
当社の中核事業であるアウトソーシン
かにして12時間以内に業務を再開する
グ事業では、システム運用・保守・改善
かということです。特に電力については
をご提供しており、今回想定した地震災
自社ビルではないため、発電機も含め自
害時にも素早くサービスを再開し、お客
家発電は容易には設置が難しい環境の中
さまに安心してご利用いただけるように
で、どのようにサービスを再開・継続で
58
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
株式会社日本テクノ開発
本社所在地
東京都墨田区錦糸1-2-1
アルカセントラル4F
設立
1985年4月
資本金
4,340 万円
従業員数
82人
代表者
代表取締役社長 長瀬富士男
事業内容
アウトソーシング、システムイン
テグレーション、コンサルティン
グ、 関連機器販売
URL
http://www.ntec-net.co.jp
37
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社フォーラムエイト
独自設計ソフトのサポート事業を
代替拠点で早期復旧
対 象 事 業
パッケージソフトの開発・販売・サポート事業
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●施設は一部損壊
●本社サーバー全損、PC:5 割破損
●本社重要情報:全損
対 策
Q
●社員の教育訓練を含む人材育成
●社内設備の固定、配置の検討
●キャビネットの内容の検討
●サーバーのバックアップ体制の確立と実施の徹底
●在宅勤務体制の確保
●地域(大阪支社、宮崎支社など)への移動を含めたフレキシブルな仮体制構築
●他部署との協力体制
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
伊藤 裕二
してくださっているお客さまからの問合
どう対処すべきなのかが明確になってい
せ、相談等の対応をしています。そのた
ない、もしくは個々人に理解されていな
当社はバーチャルリアリティや 3 次元
め本業務の停止はお客様の業務の停止に
いことが浮き彫りになりました。また、
構造物解析などの先進ソフトウェアと、
繋がりますので、早期復旧することが重
個人的には危機感を持っているものの、
豊富な実績を有する設計支援・CADソ
要になります。
行動プランが全く具体化されておらず、
フトの開発・販売・サポートを行ってい
お客さまからの問合せ電話、メール対
初動体制をはじめ、時々刻々と変化して
る独立系ソフトウェア企業です。土木、
応は他拠点で行っているので首都直下地
いく状況に対して、明確な対応方針を用
建築、交通、自動車分野など海外も含め
震では影響はありませんが、プログラミ
意できていない場面が多々あり、認識の
て精力的な展開を行っています。今後も
ングに関わる内容のものやカスタマイズ
甘さに愕然とした次第です。
アイデアと技術力を武器として、国内外
などのご依頼は、東京での対応が主とな
社員全員に、BCP活動の理解を得る
で皆さまのご期待にお応えできる企業を
ることから、東京で従業員が帰社した金
ことは無論のこと、個々人がBCPに従っ
目指してまいりたいと考えております。
曜日の夜中に地震発生という被災想定で
て、冷静かつ臨機応変に行動できる体制
BCPを策定しました。
作りと BCP策定の重要性を改めて認識
サポート業務については通信が確保で
しました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
きれば事業継続が可能であるため、サ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
当社が今後の営業戦略上、重要な事業
ポートチームのメンバーが通信可能なエ
であるバーチャルリアリティを活用した
リアへ移動(場合により大阪支社)するこ
ソフトウェア開発を推進するためには、
とにより事業を継続させますが、どんな
UC -1開発第1グループを対象に、被
BCPの策定は不可欠であると考えまし
問い合わせの内容にも対応できるよう、
災直後の初動体制、事業継続復旧活動に
た。例えば、経済産業省の業務を受ける
平常時からの人材育成が必要であること
ついて、時系列的にシミュレーションを実
にあたり、BCPやプライバシーマーク
がわかり、今後取り組むことにしました。
施し、BCPが正しく策定されているかを
などの目標設定があります。また、本事
業はクラウドコンピューティングを活用
しており、他社の資源に依存することか
Q
検証することで、BCP 策定の理由、根拠、
何か新たな気づきはありましたか?
問題点が明確になり、その重要性を理解す
ることができました。継続的な活動を行
ら、情報の取り扱いなどの基本的な対応
当社では、各部門長(グループ長)が
い BCPを昇華させていきたいと考えて
を身に付けておく必要があります。
その担当部署を掌握、問題が生じた場合
います。月並ですが「継続は力なり」と
会社組織的にも、東日本大震災におけ
には対応策を役員に相談し、指示を仰い
いうことで、全部署を対象としたBCP
る経験を踏まえ、災害に強い体制作りが
だ上で適宜対処していくことになってい
策定の横展開を行いたいと思います。
急務と判断したことも大きな要因となり
ます。この問題発生時の流れは、通常時
ました。
には何ら支障なく機能していると考えら
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
れますが、その大前提として、人的資産、
通信網、インフラなどが正常に機能して
いることが不可欠です。
BCP策定の対象であるパッケージソ
今回のBCP策定業務を通じて、東日
フトの開発・販売・サポート事業の中
本大震災のように、本来機能しているも
でも、サポート業務は自社で独自開発し
のが全く機能しない状況の中で、会社組
たパッケージソフトを購入し、日々利用
織が個々人に対して、具体的に何を望み、
会社情報
称号
本社所在地
設立
資本金
従業員数
代表者
事業内容
URL
株式会社フォーラムエイト
目黒区上目黒2-1-1
中目黒GTタワー 15F
1987年5月
5,000万円
140人
代表取締役社長 伊藤裕二
パッケージソフトの開発販売、
ソフトウェアの受託開発
http://www.forum8.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
59
BCP 取組事例
運輸業
BCP
策定のポイント
ここでは、運輸業のうち貨物自動車事業と倉庫業のBCPの特徴を
概観します。この業界は物流を通し日常の市民生活・産業を支えて
おり、また非常時には行政等の緊急物資輸送・集積要請にも迅速に
対応すべき社会的使命も帯びています。
運輸業 BCPの最大の特徴は、医薬品・飲食料・燃料などの積荷・
預荷特性により、荷主や行政から要請される目標復旧時間や荷物の
保全要件が大きく異なることです。BCPのポイントとしては、乗
務員の安否確認と車両・積荷の状況把握、安全な退避・帰庫、荷主
との迅速な連絡、燃料の確保、配車情報と帰庫車両による運行開始
などがあります。そのためには、乗務員との連絡手段の確保と “非
常時行動ガイド” に則った安全退避/積荷・車両保全が肝要です。
平時において、荷主と積荷保全要件や非常時要請事項等を協議して
いくことや荷主との連絡手段を多様に確保しておくことも重要と言
えます。帰庫時給油ルール、燃油の枠買い、インタンクによる燃料
の確保、道路情報収集体制の確立、他地域企業との庸車契約なども
考えておいた方がいいでしょう。
運送業務再開のためには本社(統括機能)や営業所(配車機能)の機
能回復も重要であり、参集ルール、他拠点からの応援、配車担当者の
複数選任、必要に応じ荷主と協働した緊急通行車両の事前届出等、
会社がとるべき行動を明確にしたBCPを作っておく必要があります。
保管・荷捌き等の倉庫業務においては、預荷の保全要件の明確化、
保全や迅速な復旧作業を可能にするための予防・減災策、復旧作業
体制の確保(人員、ロケーション情報、フォークリフト、自家発電
装置等)などが必要です。
60
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
38
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社オーティーエス
ファッション物流の継続を
リードする防災委員会
対 象 事 業
ファッション物流
被災シナリオ
●従業員の負傷(重傷者は全体の5%)による出社率低下
●江戸川区内の全ての拠点で停電
●社内に設置しているサーバーの破損
●什器の転倒、破損
●上下水道は1カ月使用不可
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●サーバーのデータセンターへの移設
●避難経路を妨げないフロアレイアウトの検討
●人員の安全確認後は必要最低限の社員を残し、電気の復旧まで倉庫内の整理を行うと
ともに、お客様、関連業者との連絡を取る
●電気の復旧後にエレベーターなど業務に必要となる機器類の動作確認を行い、業務を
復旧する
事業内容を教えてください。
(倉庫)で活動しています。電気が復旧
代表取締役社長
田中 優一郎
りました。
するまで、数日間は確実に自宅に帰れな
ただ、無事電気が復旧し業務を再開し
当社の中核事業であるファッション物
い社員が各センターで複数名出ることが
たら、多くの社員に出社してもらった方
流サービスは、商品の入荷から店頭納品
予想されましたので、復旧作業を行う社
がいいのかというと、話は単純ではあり
に至るまでの多彩な流通加工全てを代行
員にとってあえて環境条件の厳しい夏場
ません。当社は総勢480名の社員が働
しています。取扱商品は、ウェア・バック・
に東京湾北部を震源とする地震が起こっ
いていますが、上下水道の復旧は電気の
靴・ジュエリー・小物雑貨類など、ファッ
たら、という想定で BCPの被災シナリ
復旧よりかなり遅れる見込みなので、も
ションに関するもの全てです。徹底した
オを設定しました。
しかしたら働きながら近隣の避難所にト
在庫管理のもと、店頭にて販売するため
交通機関がまひし、食料や水の調達、
イレを借りに行く、という状況になるか
に必要な数々の業務を一貫して行い、販
トイレの利用等の制約がある中で、きち
もしれません。特に女性社員の方にこの
売促進・効率化・経費削減など多くのメ
んと必要な人員の配置を行うことができ
ような状況下で出社をお願いしてもよい
リットを提供します。
るのか、さらに被災から約一週間の間に
ものかなど、今後の課題として検討を続
何をすれば、いち早くファッション物流
けたいと思います。 Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
事業を再開できるのかを特に念入りに検
討しました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
防災対策はこれまでほとんど整備され
また、社内にあるサーバーの破損、もし
ていませんでした。
くは社屋の停電によるサーバーの稼働停止
今回のBCP策定はあくまでもスター
東日本大震災では荷崩れが若干あった
が事業を継続する上での大きな懸念事項
トだと考えています。今後も定期的な演
程度で大きな被害はありませんでした
として持ち上がりましたので、以前より検
習や訓練を通してPDCAを重ね、オー
が、電気などのインフラが停止すると事
討していたサーバーのデータセンターへの
ティーエスに相応しいBCP文書に更新
業継続ができないということを悟り、物
移設を今後の予防・低減策として盛り込
していくことが重要と考えています。全
流企業として事業を継続する責任を痛感
み、対応を進めていこうと考えています。
員で考えてBCPをブラッシュアップし
しました。
そこでお客さまへのサービスをいち早
く立ち上げるため、また災害対策に積極
Q
ていきたいと思います。
何か新たな気づきはありましたか?
また、BCP文書を作るための表面的
な検討項目だけでなく、実際の訓練を通
的に取り組んでいるという安心感をアピー
東日本大震災でインフラの重要性はも
じて対策を検討していったため、何かが
ルできたらという狙いもあり、震災後に
ちろん把握していましたが、いざ自社の
起きた時の対応方法がより具体的に策定
社内で防災委員会を立ち上げました。そ
BCPを検討してみると、電気、上下水
できたと思います。
の活動として防災マニュアルや緊急支援物
道が使えず、道路の寸断や鉄道が止まる
資の選考検討を行っている最中に、東京
と事業を復旧するための作業がここまで
都のBCP策定支援事業を知り、きちんと
制約を受けるのかと、インフラの重要性
したプログラムを介して事業継続につい
を改めて痛感しました。
て検討したいと考え参加を希望しました。
基本的に倉庫には大きな窓がないた
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
当社は江戸川区内の 5 つのセンター
め、電気がないと倉庫内の片づけ、機器
類の動作確認が満足にできないという前
提があります。電気の復旧が本格的な復
旧活動の必須条件であることが明確にな
会社情報
称号
株式会社オーティーエス
本社所在地
東京都江戸川区南葛西5-16-1
設立
1986年10月
資本金
6,000 万円
従業員数
480人
代表者
代表取締役社長 田中優一郎
事業内容
ファッション物流サービス
URL
http://www.e-ots.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
61
39
取 組 事 例 ●
Case Study
三信倉庫株式会社
災害対策本部の指揮で
倉庫業と水製造を再開
対 象 事 業
倉庫業、水製造業
被災シナリオ
●貨物散乱、一部破損
●シャッター、エレベーターの使用不可
●水製造プラント設備の破損
●水道水の供給停止
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●倉庫内の安全対策の徹底
●緊急時代替要員の確保および事前周知
●水製造プラント設備用被災状況チェックリストの用意
●緊急時対応マニュアルに従った顧客対応
●緊急時代替要員による復旧作業
●被害状況の早期把握とメンテナンス対応の実施
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
大竹 英明
業影響度分析を行った結果、災害時の需
に出社できるのか、顧客やメンテナンス
要を考慮して、水の製造についても策定
業者への対応を、非常時でも混乱するこ
弊社は都内に3拠点、仙台に1拠点を
範囲に含めることとしました。倉庫業に
となく行うためにはあらかじめ手順化し
置き、貨物の保管、流通加工、輸出入
ついては予防・低減策として、貨物のラッ
ておく必要があるなど、普段思い至らな
業 務、トランクルームなど幅広い物流
ピングやベルトによる固定、片寄らない
い点について具体的に議論できたのは、
サービスを展開しています。物流を通じ
積載など、庫内の安全を従来以上に徹底
新たな収穫だったと思います。
ての社会貢献を理念としており、社会イ
することにより被災時のダメージを最小
これまで東日本大震災の経験を踏ま
ンフラとしてお客さまのあらゆるニーズ
限に食い止めることを決めました。災害
え、備蓄や防災マニュアルの整備を進め
にこたえるべく多くのメニューを用意し
時においては誰がどの拠点に出社できる
てきました。今回の BCP 策定において
ています。特殊なものでは品川営業所に
のかを洗い出し、緊急要員体制で早期復
活用できるものもあり、決して無駄では
てアクアクララ株式会社様と提携しミネ
旧できるよう計画しました。
ありませんでしたが、意外にモレが多
ラルウォーターの製造を行っています。
一方、水製造業は水道が回復するまで
かったなという気付きがありました。
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
はプラントの復旧状況すら確認できない
という事態になりますから、それまでの
間、シュリンク・キャップ・ミネラルと
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
3 ~ 4 年ほど前から BCPというキー
いった原材料の確保、チェックリストに
まずは社員に見せるかたちができたと
ワードを耳にするようになり、独自でい
よるプラントの被災状況の把握とメンテ
いう段階ですので、これから全社で共有
ろいろ調べ、理解を深めてきました。災
ナンス対応を確実に行い、水道の回復と
し意識を高めていきたいと思います。少
害時への対応だけではなく、今後は入札
同時に製造が開始できる体制にしておく
なくとも BCPを作っておいて損はあり
条件になってくる可能性もあり、あらゆ
こととしました。
ません。災害に脅えて不安な気持ちで過
る意味でBCPを策定することが、会社
また、情報の集中、意思決定、拠点へ
ごすより、少しでも対策を具体化するこ
にとってのアドバンテージになるという
の指示を災害対策本部が適切にコント
とで平時から心のよりどころとなります
認識が強くなってまいりました。ところ
ロールするための手順を明確にしまし
し、他社へのアピールにもなります。迷っ
が、製造業の事例はよく目にするのです
た。
ているならすぐにでも BCP 策定に着手
が倉庫業について参考にできるものがな
く、何から着手したらよいのか手掛かり
が見つかりませんでした。たまたま、同
Q
苦労したポイント、
新たな気づきはございましたか。
業の矢倉倉庫様が東京都 BCP 策定支援
とにかく、被災状況を想定するのがつ
事業に参加されたことを知り、当プロ
らかったです。仙台での被災を体験して
ジェクトが有効であろうと思い、これを
いるので、それが首都圏で発生したらど
きっかけに策定を開始することとなりま
うなるのか、ある程度は予想できます。
した。
すべきでしょう。
会社情報
称号
三信倉庫株式会社
電気も水道も止まる、道路の封鎖で配送
本社所在地
東京都中央区京橋1-1-5
セントラルビル11階
もままならない、人も足りないという状
設立
1955年2月
資本金
1億 2,000 万円
れらを一つ一つ再現していく作業は決し
従業員数
47人
代表者
代表取締役社長 大竹英明
当初は主体事業である倉庫業を対象に
て楽しいものではありませんでした。し
事業内容
倉庫業、 不動産賃貸および管理
策定することを想定していましたが、事
かし、現実的に考えて、社員の誰がどこ
URL
http://www.loop-mx.co.jp
Q
62
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
況の中、やれることは限られており、そ
40
取 組 事 例 ●
Case Study
七福運送株式会社
印刷所へ必ず着車、
被災者へ安心届ける新聞輸送
対 象 事 業
新聞輸送事業
被災シナリオ
午後10時に震度6強の地震発生により、
●出勤率が6割、本社機能喪失
●ファクス不通により輸送回章の受信不可、燃料の入手困難、
●協力会社の印刷所への着車率50%
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●携帯メールアドレスリスト作成、車載用充電器の完備
●緊急時運転者行動ルール・管理者自動参集ルールの策定
●管内給油タンク設置、供給元との優先供給協定検討
●新聞社内へ対策室設置検討
●被災していない拠点からの応援
専務取締役
鈴木 祥太
Q
事業内容を教えてください。
具体的な業務としては新聞印刷所から
かける前に、やれることがあることも分
各販売店へ新聞を配送するのですが、ド
かりました。
一般自動車輸送事業として、主に新聞
ライバーと車、通信手段さえ確保できれ
輸送を行っています。具体的には、新聞
ば、なんとか対応が可能です。通常、従
社の印刷所構内での梱包、積込等荷さば
業員や運行中の車両は、緊急事態の際に
きから、新聞販売店への配送を常用契約
は、営業所に連絡をとって、次の指示を
今回は策定中に荷主である新聞社の意
として行っています。
仰ぐのが基本です。しかし災害時には、
向を確認する機会を持ちました。東日本
産業廃棄物回収、リサイクル事業も上
営業所が使えない、あるいは連絡がつか
大震災の対応で苦労された新聞社も、ま
記輸送の付随事業として実施(新聞梱包
ないということも予想されるため、今回、
だ気持ちが熱いままでしたのでタイミン
材、ビニール等)しているほか、引越サー
荷主である新聞社と話し合いを持ち、緊
グがよかったと思います。
ビス事業も行っています。
急時には、新聞印刷所へ集結することと
新聞社との話し合いの中で、弊社に何
し、これを会社の行動ルールとすること
ができて、何ができないかを提示できた
で、適正に自己判断して行動できるよう
ことで、給油タンクを設置するとか、新
にしました。
聞社社内に対策室を設置させていただく
防災対策については、特段、考えてい
もう1点、配送には燃料が重要な経営
とか、一部の対策については一緒に考え
なかったのが実態です。
資源ですが、その確保について新聞社も
ることができましたし、新聞社にとって
しかし東日本大震災で、社員の両親が
協力的でしたので、一緒に対策を検討し
も新しい気付きがあったそうで、弊社の
被災し、1カ月連絡できなかったことか
ていきます。
取組は、新聞社から高い評価をもらえま
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
ら、社員、家族の安否確認の仕組みの必
要性を痛感しました。また、燃料の供給
不足によりガソリンスタンドでの給油が
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
した。
何か新たな気づきはありましたか?
BCPがなくても災害対応はできると
思いますが、時間がかかると思います。
困難になりました。これらの経験から、
被災想定したものに対する対策の妥当
誰がいつ何をやるかを明確化できたこと
緊急事態にいち早く対応できる体制・仕
性・整合性の評価が難しいと感じました。
によって、対応が素早くできるように
組み作りの重要性を認識し、今回東京都
また、今回対象ではない事業を行ってい
なったと思います。
トラック協会からの声かけもあり、当事
る営業所と対象となっている事業を担当
今後は、訓練によって対応が強化され
業に参加しました。
している営業所のメンバー間の意識に温
ると思いますので、活動を継続していか
度差があり、意思統一や取組方が難しい
なければならないと思っています。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
点がありました。
緊急時の混乱した状況においては、連
弊社の最大の荷主は新聞社です。新聞
絡が難しいことから、適正な自己判断に
社は、不測の事態においても新聞の発
より行動できることが重要ですが、自分
行を通じて情報発信を続けるという強い
勝手にではなく、会社として統一的な行
意志を持たれており、輸送面で支えて欲
動ルールが必要であることに気付きまし
しいと要望されています。最重要顧客の
た。
このような期待と信頼にこたえていく
また、事前対策にはお金がかかるもの
ために、新聞輸送事業にフォーカスし、
もありますが、一方、会社としてのルー
BCPを策定しました。
ル作りや緊急連絡網の整備など、お金を
会社情報
称号
七福運送株式会社
本社所在地
東京都新宿区南元町12
設立
1951年6月
資本金
4,000 万円
従業員数
116 人
代表者
代表取締役社長 鈴木一末
事業内容
一般貨物自動車運送事業、
引越サービス
URL
http://www.729.co.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
63
41
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
運送・倉庫(保管・荷役)事業
被災シナリオ
●社会インフラの停止と交通規制
●燃料確保困難と輸送手段の一部喪失
●社員の出勤困難
対 策
Q
多摩運送株式会社
拠点間相互支援の備えにより
物流責任を果たす
対 象 リス ク
多摩直下型地震
●自動参集可能社員による迅速な緊急対応/危機対応体制構築
●携帯電話・メールによる社員緊急連絡網構築とPHSの活用拡大
●サーバー室免震化と燃料確保用インタンクの導入
●自家発電装置の導入
●営業所・保管倉庫機能維持(ポータブル発電機、自動参集)
●紙ベースの配車業務・ピッキング業務遂行
●被災していない拠点による応援(社員、車両他)
事業内容を教えてください。
常務取締役
星野 浩司
対象事業を運送・倉庫(保管・荷役)
部署が同じ価値観で展開できるので、災
事業とし、対象範囲を多摩地区に限定し
害対応力は強化されたと考えています。
当社は、三つの責任(社会・荷主・従
てBCPを策定しました。
また、現場の長である営業所長の力量、
業員とその家族への責任)を経営理念と
当社の取扱荷物は精密機器などの機械
所員のモラルやモチベーション、家族の
して、総合物流サービス(道路貨物運送、
物が多く、震災が起きた場合、運搬中止と
安全、取引先との良好なコミュニケー
通運、精密機器・重量物運搬搬入、倉庫・
なる荷物も多いため、お客さま・トラック
ションの維持についても非常に重要であ
流通加工、梱包、産業廃棄物収集運搬お
協会・行政などの緊急輸送要請に応えられ
ると認識しました。
よび中間処理、国際複合一貫物流、人材
る体制を築くことが第一義と考えました。
残された課題として、訓練の実施・継
派遣等)を提供しています。東京多摩地
最初に立ち上げる業務は受付業務で
続、メール・携帯等で実施予定の緊急連
区および国道16号線を中心に 26拠点、
す。受付業務には本社および各営業所機
絡が通信回線不通時にどうなるのか、交
名古屋、大阪、広島、福岡と計30拠点、
能(人員・通信手段)の復旧が必要です。
通規制が実施された時に、どのように帰
関連会社は国内10社、中国の瀋陽、大
幸いにも従業員は職住接近しており、人
庫・運行するのか等、引き続き検討して
連にも3社展開しております。
員確保は難しくないと判断しました。免
いきたいと考えています。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
震等の予防策を講じた上で、本社および
各営業所機能を迅速に立上げるため、連
絡方法・自動参集のルールを決めました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
直接の応募のきっかけは東京都トラッ
また通信手段については、停電中でも業
短期間で多摩運送のBCPの幹ができ
ク協会からの紹介でしたが、やはり東日
務立上げができるよう自家発電設備など
たことについて、皆さまに本当に感謝し
本大震災の経験が大きいです。
を整備することにしました。また燃料の
ております。今回は関係部門の責任者が
当社は大きな被害はなく事業継続は問
確保については、自家用地下タンクの設
集まり策定しましたが、BCPに関する
題ありませんでしたが、社内にはさまざ
置を検討しております。
認識ややるべきことが明確になりまし
まなリスクがあると思っています。事業
さらに、車両が足りない場合は、関東
た。また事業継続のために必要な部門間
継続のための対策を講じる必要があるこ
圏の他店所に応援を要請することにしま
のクロストレーニングが予想外にできて
とを痛感し、業態に合ったBCP策定が
した。
いたことは嬉しい誤算でした。今後は幹
必要であると考えました。
特に東日本大震災以降、お客さまから
燃料の確保を強く言われており、必要で
Q
だけでなく、葉を茂らすために、当社の
何か新たな気づきはありましたか?
あればコストをかけて取り組みたいと考
今回は本社の関係部門の責任者で検討
えていました。
を行ったため、事業継続対策に関する具
また、運送業は労働集約型の産業であ
体的なイメージを持つことができ、被災
り、社員がいかに集まるかが事業継続の
想定や各種対策についてある程度客観的
ポイントにもなるため、連絡および参集
に評価できました。予防策ももちろん大
方法の確立が必須であると考えていたこ
切ですが、事業継続では現場の人をどう
とも取り組んだ要因のひとつです。
動かすかが勝負になります。今回ある程
Q
64
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCPを引き続き発展・充実させていき
たいと考えています。当BCP策定事業
に参加して本当に良かったです。 会社情報
称号
多摩運送株式会社
本社所在地
東京都立川市富士見町6-49-18
設立
1949年9月
資本金
5,000 万円
従業員数
695人
度その動かし方も見えてきましたし、や
代表者
代表取締役会長 星野良三
代表取締役社長 齋藤貢
るべき事が共有され役割分担も明確にな
事業内容
貨物自動車運送事業
URL
http://www.tamaunsou.co.jp
りました。拠点・現場への展開も本社各
42
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社日本運輸機構
明確な現場行動規範により
輸送業務の継続を
対 象 事 業
一般貨物輸送(常用契約輸送業務)
被災シナリオ
●ドライバー30名帰庫不能(初期状況確認取れず)
●堤防決壊による浸水のため本社および本社倉庫は立入不能
●社内基幹システムは使用不能
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●乗務員常備セットの準備(携帯充電器、緊急避難拠点リスト、非常時心得等)
●荷主さまとの積荷保全に関する事前協議
●燃料、庸車等優先供給契約締結
●社員、自車情報の確認(安否、位置、燃料、交通/道路状況)と自発的な判断
●燃料確保(自車両タンク、優先供給契約先)および庸車要請
●紙媒体による運行計画策定
●代替道路通行可能であれば状況により運行開始
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
田口 典彦
とを第一に、次に「お客さまへの輸送機
えています。
能供給責任を果たす」と共に、災害時に
一方で、配送中の車両が災害にあった
当社の事業は一言でいうと一般輸送事
おける緊急物資の迅速な物流責任を担っ
時の対応策については万全の対策には
業全般となるのですが、主要業務として
ていきたいと考えております。
至っていません。常用契約輸送について
は、一つ目は月ぎめで車両・ドライバー
そのためには、オフィス内で就業中の
は配送ルートが特定できるので緊急避難
の専属契約、定期・定時の配送を請負う
従業員の安全確保のための地震、津波等
場所は事前想定ができることが救いで
常用契約輸送業務、二つ目は引越および
に対する予防策を講じるとともに、運行
す。これについても今後の活動計画の中
不用品(不要品)回収業務、そして梱包・
中のドライバー・車両の安全確保を行う
で更に確かなものにしていきたいと考え
発送・倉庫保管業務があります。
ことが重要であると考えました。自社拠
ています。
点への安全な帰庫や緊急退避のための事
いずれのケースも当社単独では想定し
前の備え、本社・事業所からの支援をど
きれなかったことであり、今回の事業に
のように行うか、またドライバーが独自
参加させていただいたことで、具体的な
東日本大震災発生時、私は若手経営者
で判断せざるを得ない状況下における行
検討になったと考えています。
対象の講演の最中であり、即各社各地域
動指針や判断基準を事前に決め、携帯さ
の被災状況などが話題となりました。東
せるなどの対策を実施することにしまし
日本に運輸会社は約 2,500 社あります
た。
が、ある県の代表は3日間連絡がとれず、
そして安全を確保した後、お客さまや
業界の中でBCPを先行して策定した
どこもトラックを出せない状況に陥った
行政のニーズに迅速に応えるためには、
ということで、今後、どう実行できるか
ことにより、緊急対応の備えの不備を痛
ドライバー・車両の現在地把握、配車可
にかかっています。ぜひかたちにしたい
感した次第です。
能性を判断し、配車計画の練り直しなど
と思いますが、後々、他の事例で良いも
当社は、トラック4台を工面、当局
の対応が必要となりますが、発災直後は
のができていたらぜひ教えていただきた
の 許 可 を 得 て 超 法 規 的 対 応 で 改 造 し、
平常時の運行能力を確保することが難し
いと思います。BCPに限らず、メンバー
570 のご遺体を東京に移送、火葬をし
い場合も考慮して、主要なお客さまと非
であるトラック協会全体で取り組み、共
たうえでお返ししましたが、緊急物資輸
常事態発生時の積荷保全や運行開始時期
有し、業界を守るため、会社としても行っ
送も含め業界としての社会的使命を果た
などについて事前にご要望を確認し調整
た方がよいことは今後も積極的に取り組
せるような備えの必要性を痛感していま
しておくことが必要だと痛感しました。
んでいきたいと思います。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
す。当社の立地条件は都内でも屈指の地
盤の脆弱な地域で、すぐ横を荒川が流れ
ており地震による津波・洪水には非常に
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
苦労されたポイントは
ありましたか?
会社情報
弱いにも関わらず、災害に対する危機管
本社事業所の立地上、従来からリスク
称号
株式会社 日本運輸機構
理と意識が低かったと反省しました。早
は感じていましたので、今回のBCP策
本社所在地
東京都墨田区墨田4- 5-1
急に改善したいと考えました。
定では液状化・津波の荒川遡上河川決
設立
1973 年6月
壊、本社事業所の立入不可との被災想定
資本金
8,800 万円
従業員数
160人
も加味して対策を検討しました。本社機
代表者
代表取締役社長 田口典彦
事業内容
一般輸送、引越サービス(ハト
のマーク)、梱包発送・倉庫保管、
旅客運送
URL
http://japan-t-s.js-group.jp/
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
能を他事業所にて代替する復旧策は、具
当社はBCPを策定するにあたり、「従
体的に検討するとなかなか難しく、課題
業員とその家族の生命と安全を守る」こ
は残っていますが、心構えはできたと考
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
65
43
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社ハーツ
緊急物資輸送のため
平時以上の稼働状況を実現
対 象 事 業
レンタルトラックサービス
被災シナリオ
●PCが落下、転倒し損傷(ノートPC以外は使用不能)
●データも一部喪失
●業務中の車両3台が交通規制エリア内で被災
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●GPS機能付き無線機の搭載
●高台への車庫の移転
● PC・プリンター(伝票用)の落下防止・HDDの配置変更
●従業員・協力業者への教育
●場所を限定されない移動式対策本部の開設
●ホームページに緊急時の連絡先を提示
●衛星電話・携帯電話での受付対応および伝票手書き
●業務委託先の活用によるドライバーと車両の確保
事業内容を教えてください。
●運転手と車両の不足
代表取締役
山口 裕詮
め、インターネットに接続できる環境
このような状況下でも、緊急物資の搬送
(PC含む)と衛星電話、そしてトラック
トラックを使った運送事業を行ってお
など社会的責任のある輸送業務が発生す
さえあれば業務活動を継続して行うこと
ります。主たる事業は、時間単位で利
る可能性があるため、一刻も早く業務を
ができることを策定支援が進む中で確認
用できる運転手付レンタルトラックサー
再開し、インフラの一端を担うものとし
することができました。
ビスの「レントラ便」になります。平成
て責務を果たすための環境を整える必要
ただし、従業員の適切な行動とその行
18年よりサービスを開始しております
があると考えました。
動を非常時にも実現できるような体制を
が、おかげさまで個人のお客さまにも気
そこで、どんなに遅くとも発災日を
実現するためには、継続的な従業員教育
軽にご利用いただける、引越し、宅配便
含む3日以内に通常業務に加えて、緊
が必要であると認識しております。
に次ぐ「第三の運送サービス」として順
急 支 援 物 資 の 運 送 業 務 を 実 施 す べ く、
調に成長しております。
100% 以上のサービスを開始できるレ
弊社は「レントラ便」をサービスする
ベルまで、業務を復旧することを目標に
企業として国土交通省国土交通政策研究
BCPを策定しました。
インフラを担う企業として「強くなっ
所より、イノベーションモデル調査企業
弊社のビジネスモデルでは受注が復旧
た 」 と 率 直 に 感 じ て お り ま す。 今 回、
に選ばれています。
できれば輸送業務が行える可能性が非常
BCPを策定することができましたが、
に高くなるため、発電機、インバーター、
実際に東京湾北部地震などにより自社が
衛星電話・携帯電話、ノートPC(通信
被災した際に効率的に動けるのかどうか
含む)を用意し対応することに決めまし
はこれからの課題と捉えております。実
これまでに特に防災対策は行ってきま
た。新たに購入が必要であった発電機と
際、どこまで活かせるのかは定期的な実
せんでしたが、東日本大震災発生の翌
衛星電話はプロジェクト終了前に装備を
地訓練を行うことも必要ですが、日常業
日より被災地に赴き私自身の目で被災地
ほぼ完了致しました。
務の中での教育や心がけなどが重要と理
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
の状況を見るに至り、自社が同じ状況下
に置かれた場合「どうなるかわからな
い」と考えたことがBCP策定に取り組
Q
何か新たな気づきはありましたか?
東京都BCP策定支援事業は集合研修
社を強い会社にすることが大きな目的で
も含めて計5回で策定から演習まで一
す。
連の手順で進めていくわけですが、業務
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
解しております。実際に継続し定着させ
むきっかけとなりました。収益よりも自
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
ていく中で、しっかりとした土台ができ
ると感じております。
上、事前にスケジュールを確定させるこ
とが非常に大変でした。しかしプロジェ
クトを進めていく中で、自社の守るべき
会社情報
東京湾北部地震 M7.3、震度6強とい
経営資源が明確になり、ボトルネックも
う災害が発生した場合に、下記のような
はっきりと確認できたことは、時間を捻
称号
株式会社ハーツ
本社所在地
東京都品川区南大井5-12-3
制約が発生すると仮定しました。
出する意義が十分にあったと思っており
設立
1995年10月
●社会インフラ(電気、固定通信、交通
ます。
資本金
1,300 万円
機関、交通規制)の停止
弊社のサービスであるレントラ便を
従業員数
17人
代表者
代表取締役 山口裕詮
●情報機器の故障による予約システムの
依頼されるのは個人のお客さまが多く、
事業内容
レントラ便事業
使用不能
ウェブ上からの予約が大半を占めるた
URL
http://www.rentora.com/
66
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
44
取 組 事 例 ●
Case Study
矢倉倉庫株式会社
物流は社会復旧を支える要
震災も想定内に
対 象 事 業
複写機等のサービス部品の緊急配送事業
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●作業要員、ドライバー不足
● PC・ファクス破損、NW専用線輻輳
●保守部品の仕入れ入庫受入の遅延
対 策
Q
●お客さまとの非常時対応の事前協議
●荷棚固定化、預荷落下防止等預荷の保全対策
●外注配送業者との協力支援体制の構築
●他拠点(倉庫、本社など)からの人的バックアップ
●紙媒体による在庫データ、ロケーションデータの確保
●他拠点からの自社配送の実施(外注配送能力が不足の場合)
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
三好 將義
ニーズにおこたえしております。中でも
また、災害時のフィールドサービス活
大手複合機メーカーの保守部品の保管と
動や工場からの保守部品供給について、
私どもは自社倉庫と物流システムを活
東京23区内への配送に関しては、部品
お客さまとの話し合いを行い、私どもだ
かしたトータルソリューションをご提供
の選定や在庫調整等の経験に基づく的確
けで対応できること、お客さまのご協力
させていただいております。預荷保管、
な判断、さらに迅速な配送ノウハウを強
が必要なことを明確にした上で相互の建
文書保管、作業スペースレンタル、キッ
みとしてお客さまの物流を包括的に担っ
設的な検討へ今後、こまを進めたいと思
ティングサービスおよび、これらに付随
ております。従って当社が負っている責
います。
した運送業務を営んでおります。
任は大きく、万が一事業が中断した場
都内には、平和島、大崎など倉庫を5
合には、メーカーをはじめ、エンドユー
つ有しており、それらを拠点とした都市
ザーの皆さまにも大変なご迷惑をおかけ
型物流サービスを私どもの強みとしてい
してしまいます。また当社が扱っている
倉庫業界でのBCPの普及はまだまだ
ます。
サービス部品は公共性が高く、自社とし
これからだと思います。今回BCPを策
ても重要なお客さまであるため、今回の
定してみて、事業を継続するために何を
BCPの対象事業としました。
守り、何を維持するのか、また想定する
本事業に必要な経営資源としては主に
事態に対してどう対応していくのかとい
お客さまから大切な荷物をお預かり
トラックとドライバー、部品、情報シス
うことについて認識ができ、さらに新し
し、それに伴うサービスをご提供してお
テム等で、これらが被災した場合につい
い視点から業務を見直すこともできまし
りますので、平常時より棚の転倒防止や
て具体的な対策を検討しました。特に速
た。
荷崩れ防止等を行い、また消火器の設置
やかな対応が必要となる外部配送業者と
そして物流によって社会インフラの一
場所を掲示するなどして荷物や商品の保
の事前協定や、部品の供給などについて
環を担う私どもの業界にも、BCPは不可
全に努めてまいりました。しかし災害時
お客さまであるメーカーとの確認を行う
欠なものだと実感致しました。今後は社
における配送事業の復旧・継続について、
ことが必要だと認識いたしました。
内への教育だけでなく同業界への普及に
具体的なイメージはできていませんでし
また、外部配送業者が機能しない場合
も尽力していけるよう策定を継続してい
た。
の対策などについても検討することがで
きたいと思います。
また、お客さまからBCP策定につい
きました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
て尋ねられることも増えてきたため、お
客さまからいただいている信頼の維持、
自分たちの対応力の向上と生き残りのた
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
会社情報
めにBCPを策定したいと考え応募しま
BCPを策定する中で当社のサービス
した。このBCP策定の実績をお客さまに
や強みを支える経営資源、また事業の継
称号
矢倉倉庫株式会社
アピールしていければとも考えています。
続のために維持すべきものは何かの可視
本社所在地
東京都大田区平和島3-4-1
管理事務棟内3階
設立
1985 年6月(創業1960年5月)
資本金
1,500 万円
従業員数
100人
代表者
代表取締役社長 三好將義
事業内容
普通倉庫業及び荷役・加工・梱
包業及びその請負事業 他
URL
http://www.yagura.co.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
化ができ、私どもにとって付加価値の高
い策定内容となりました。
対策の検討も、事業継続に対するリス
当社は都市型物流サービスのアウト
クのイメージを具体的に想定することが
ソーサーとして、今まで培ってきた知見
できたため、問題点の発見や対策の検討
や専門性を活かしてお客さまの様々な
が分かりやすくなりました。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
67
45
取 組 事 例 ●
Case Study
結城運輸倉庫株式会社
燃料油送で支える
首都の復旧・復興
対 象 事 業
運輸(油送)
被災シナリオ
震度6強の地震発生により
●営業所タンクローリー1割使用不可
●営業所乗務員2割出社不可
●インターネットサーバーへのアクセス不可5日
対 策
●緊急連絡網の整備
●電源の確保
●拠点、車両間の無線機による通信手段確保
●インタンクによる燃料確保
●被災していない拠点との連携
●車載無線を利用した車両の状況確認と運行指示
Q
事業内容を教えてください。
静岡以東の関東、東北地方に16 カ所
の事業所を配置して、一般貨物自動車運
送事業、倉庫業、港湾運送事業、通関業、
産業廃棄物収集運搬業などの事業を展開
対 象 リス ク
東京湾北部地震
常務取締役
結城 賢進
当事業には東京都トラック協会からの紹
と思いました。
介があり、よい機会だと思い、参加しま
また、策定期間が夏であればよかった
した。
のですが、弊社の繁忙期に重なりまし
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
たので、課題をこなす時間をやりくりす
るのに苦労したときがありました。営業
所の所長が参加できなかったのも残念で
しています。
今回は、運送事業のうちの売上の大き
す。
特に、タンクローリーによる石油製品
な油送にフォーカスしてBCPを検討し
車載無線は、同業他社では携帯電話に
の製油所や油槽所からサービスステー
ました。
替えている場合が多く、廃止しようと
ションや工場などへの油送の売上が大き
油送においては、タンクローリーと運
思っていましたが、緊急時においては、
いです。
転手と配送情報が重要経営資源です。営
通信連絡の強力な手段であることがわか
港湾荷役部門は現在行っている事業の
業所は製油所や油槽所の近隣に配置して
りました。危機管理という別の視点から
中でも古くから行っている事業で、内航
あり、また、運転手も多くが営業所近隣
は、評価が変わることに気付かされまし
船で輸送される鋼材を陸揚げし、倉庫で
に居住していること、日常の業務は営業
た。
保管、配送をしています。また、輸出入
所単位でまわっていること、車載無線が
貨物の通関業務の代行も行っています。
装備されていること、多くの営業所でイ
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
ンタンクに燃料が確保されていることな
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
どから、人が営業所へ参集すれば、当面
インターネット接続などにおいて外部
の業務は継続できます。
サービスへの依存性が高いことなど、メ
東日本大震災においては、弊社の仙台
また、交通渋滞や交通規制への対応に
ンバー間で問題点の認識を共有できたの
と小名浜、潮見(船橋)の3営業所が被
ついては、車載無線がありますので、営
はよかったと思います。
災しました。特に仙台営業所は、1階は
業所と連絡をとり指示を受けて行動する
また、災害時の対応について、分かっ
津波で水没し、社員は2階や屋上に避難
のを基本とし、連絡がとれない場合は、
ている気はしていましたが、BCPを検
しました。幸いなことに人災には至りま
緊急時の行動ルールを明確にし、適正に
討するときの議論を通して明確にでき
せんでしたが、倉庫は全滅、タンクロー
自主判断できるようにすることとしまし
たことや、見直す機会になったこともよ
リー5台が被災し、社員の通勤用自動車
た。
かったと思います。
はすべて流されました。
さらに、被災していない拠点との連携
各組織の責任者が各自の判断で災害対
により、顧客との連絡手段の確保や車両
応しましたが、会社として組織的な対応
および人員の支援体制の確立という方法
が素早くできず、災害時の準備ができて
を採用することで、事業継続を図ること
いないことを痛感しました。
としました。
社長の号令で、被災社員を含む全社員
に、その時何を感じたか、何をしようと
したか、何をすべきであったかを調査し
Q
何か新たな気づきはありましたか?
ました。個別の対応については、小冊子
事業継続への対策を検討するにあたっ
にして全員に配布し、全社的な体制と仕
ては、被災シナリオの想定次第であると
組みづくりを検討しているところです。
ころがありますので、バランスが難しい
68
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
結城運輸倉庫株式会社
本社所在地
東京都江東区深川1- 6 - 29
設立
1961年11月(創業1923年11月)
資本金
9,600 万円
従業員数
308人
代表者
代表取締役 結城幸彦
事業内容
一般貨物自動車運送事業、 港湾
運送事業、 通関業、 倉庫業、
産業廃棄物収集運搬業等
URL
http://www.yukiunyu.co.jp/
46
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社若洲
荷物を守り、納期厳守の
発送業務を早期復旧
対 象 事 業
物流加工事業(在庫発送業務)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●ライフラインは寸断、公共交通機関停止
●社長を含めけが人が多数
対 策
●業務の根幹となる施設には定期点検と保守実施
●ラック内の荷物の置き方の検討
●社内教育、演習の実施
●緊急時の重要顧客への状況報告
●通信が不通の際は関西事業部で対応できる体制を構築
●衛星電話の活用
代表取締役社長
岸上 忠彰
Q
事業内容を教えてください。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
のかなど、具体的な検討が行われていな
いことが発覚しました。
わが社は物流の総合アドバイザーとし
わが社の物流加工事業の中でも主要顧
今回策定した第2版では、それを実現
てお客さまのニーズに合わせた物流加
客の利用が多く、売上が大きい在庫発
するための対策として、社内体制の早期
工・事務代行から在庫発送、ダイレクト
送業務を BCP第2版の対象としました。
復旧、協力会社との連携、顧客との調整
マーケティング支援、キャンペーン支援、
本業務はお客さまから依頼のあった各種
などについて、明文化できたので、非常
入力代行、イベントサポートなどのアウ
帳票類・機密文書等の重要書類を指定の
に良かったと思います。
トソーシングサービスをご提供しており
発送先に期間内に発送準備を整え、物流
また BCP策定後に“演習”を実施する
ます。倉庫業からスタートし、顧客満足
業者に渡すまでの業務で、これが止まる
ことで、必要な内容が含まれているか、
度の向上のため、お客さまのご要望にお
と着荷が期日に間に合わなくなり、お客
部門間の認識、復旧作業手順が現実的な
こたえする中で、多岐にわたるサービス
さまの信用問題となってしまいます。
ものかを検証できることを実感しました。
を展開してきました。近年、機密文書
本業務を継続するためには主に人員と
を取り扱う業務が増えたことにより、P
電力が重要です。倉庫内は窓が少ないた
マーク、ISO(品質・環境)等の認証も
め、電力が途絶えると、復旧のための倉
取得しております。
庫内の片付けすらままなりません。さら
企業の社会的責任を果たすためには、
に棚の上段から荷物を下ろすためのリフ
平時から BCPを検討することは当然の
ト、また PCを使用するラベル印刷など
ことだと思います。今回は地震対策と
もできなくなってしまいます。これと同
して第2版を策定することができました
数年前にお客さまから「大きな災害が
時に倉庫内の片付け、発送準備作業を行
が、この取組はパンデミックや津波・水
発生した際の対策はどうなっています
う人員が通常より多く必要となります。
害など他のリスクに対しても活用できる
か?」と聞かれたことがきっかけで、大
このことから、停電時の照明などの対
という手ごたえを感じました。
災害が発生した場合に、いかにしてお客
策の検討、有事の際の人員確保のために
BCPを策定することは経営としても
さまからお預かりした大切な商品を守
平時から人材派遣会社に優先的に協力し
大変重要な課題であり、企業の社会的責
り、アウトソーシングサービスを継続さ
ていただける関係の構築、物流業者への
任を果たすため、今後ともこの BCPを
せるか、この対策を構築することが急務
災害時の対応確認を実施する予定です。
継続して見直し、改善していくことが重
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
であると考え、BCP策定委員会を発足
させ、中小企業庁のひな形を基に2010
年8月に BCP第1版を策定しました。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
要であると考えます。そして自社のみで
何か新たな気づきはありましたか?
はなく、協力会社、若洲地区の企業にも
広めていきたいと強く感じました。
東日本大震災では、幸い自社に大き
自社で策定した BCP第1版では、災
な被害はなかったものの、BCP第1版
害発生時の避難、BCPの運用体制、部
は見直しが必要だと感じました。緊急対
門ごとの役割、守るべき重要業務と事業
応については十分でしたが、具体的な復
継続に関わる必要資源、部門ごとでやら
称号
株式会社若洲
本社所在地
東京都江東区若洲2-3-7
旧手順等に関しては再度検討したいと考
なければならないことなどを盛り込んで
設立
1950年3月
え、今回の BCP策定支援事業に参加し
おりました。しかし東日本大震災を経験
資本金
8,050 万円
ました。
してみると、お客さまの荷物をご依頼ど
従業員数
120人
代表者
代表取締役社長 岸上忠彰
事業内容
総合物流サービス業
URL
http://www.wakasu.co.jp
おりに確実に発送するためには何をし
て、状況を誰に報告しなければならない
会社情報
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
69
BCP 取組事例
卸売業
BCP
策定のポイント
ここでは中小卸売業のBCPの特徴を概観します。
卸売業は生産から小売へのハブ(中継)の機能を果たす重要な位置
にあり、BCPの策定にあたっては商流に関わる様々なステークホ
ルダーや、それらを結ぶ情報を認識する必要があります。
卸売業者は災害時において、生産・小売・物流業者各々の被災状況
を速やかに収集・共有し、各拠点間での調整を効率的に行う役割を
担うため、有事の際の通信網確保が必要になります。また小売需要
への対応は事業の要であり、災害時にも受注活動の継続が要求され
るため、被災を免れた場所や他地域での代替受注、刻々と変化する
顧客要求を把握し迅速・柔軟に対応する営業を中心とした体制の構
築が重要です。
日々の商流を支えている基盤が情報システムであり、顧客・商品・
受発注・入出庫・在庫などの主要なデータをいかに正確かつ使用可
能な状態に保つかが重要です。このため、データおよびシステムの
二重化、IT拠点の分散、クラウドの活用等のバックアップ対策を整
備し、有事における復旧手順や切替え手順をBCPに組み入れます。
倉庫が被災した場合は、荷崩れした商品の出荷可能品の仕分けと棚
入れに注力するため、応援要員を含め人員の再配置が必要になりま
す。配送については有事の際の対応として、緊急通行車両証の事前
届出や代替ルートの検討、場合によってはメーカー直送などを計画
します。
70
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
47
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社秋山製作所
命に係わる手術用縫合材の
供給継続で医療へ貢献
対 象 事 業
縫合関連製品販売事業
被災シナリオ
●事務所、倉庫は棚、天井落下
●社員は30%程度負傷
●AS400サーバーは停電のため使用不可
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●特許関連、許可書等の重要書類を貸金庫または(購入予定の)耐火金庫へ収納
●湯島加藤ビルのショーケースの飛散防止フィルム
●販売管理基幹システムが停止の場合は手作業、伝票で営業活動を継続
●東京本社が稼働不可の時は、大阪営業所が販売業務を引き継ぐ
(大阪営業所は震災後東京と5時間連絡が取れなければ、自主的に引き取る)
代表取締役専務
中島 孝夫
対象事業は縫合関連製品販売なのです
と実感しています。BCP策定は営業戦
が、当社の製品は韓国および東京以外の
略的にも使えると思いますし、仕事の時
当社は縫合関連製品を販売しており、
関東圏で製造しています。また配送は外
間を使って取り組んだ価値は十分にあり
中でも手術用の縫合材は全体の売上の
部委託しているため、今回は販売受注処
ました。
70%を占めています。扱っている縫合
理業務の立ち上げを中心にBCPを策定
今後は、インフルエンザなども想定
材は主に手術用縫合糸(絹・ナイロンお
しました。
したBCPを作成するとともに、首都圏
よびポリエステル製等)、手術用縫合針、
まず、当社の最大の財産である社員を
直下型地震ではけがをする人も多いと思
針付縫合糸があり、縫合針については韓
守るため、事務所内の防災対策(耐震等)
われることから、縫合材(針、糸)の迅
国釜山の共同出資会社で生産し、全量輸
を実施します。
速な供給には、当社が会員になっている
入しています。
復旧に必要な資源としては、社員以外
日本医療機器工業会とも連携を図りなが
縫合糸については、国内に仕入先が2
には販売業務システムがあげられ、こ
ら、全力を尽くしたいと考えています。
社あり、針付縫合糸は下請け会社2社で
れは現状での耐震性は十分と思われます
セッティングされたものを当社が販売し
が、停電し使用不能となった場合には手
ています。
作業、紙伝票で対応することにしました。
そのほかには手術関連医療用具、ヘル
また、社員、インフラ、作業スペース
BCPは演習が大事ということが印象
ス関連製品、コンビウィズ育児関連製品
がダメージを受け、営業や納品活動がで
深く、今後も実践していきたいと思いま
などを扱っています。
きない場合には、ある程度の在庫を持つ
す。東日本大震災後ということもあり、
大阪営業所が東京分の営業活動をカバー
想定した被災状況がリアルに実感できる
することにしました。また東京での営業
ようになり、危機管理の意識が非常に高
活動が機能しても、道路被害、交通規制
まったと実感しています。
共同出資会社がある韓国は、地震がほ
のため、東京の倉庫からの輸送が制限さ
縦横の時系列で分析でき、BCPが明
とんどなく、もし東京や大阪が地震で被
れると予想されますので、仕入先、下請
確になり、BCPに関する取引先からの
害を受けたとしても、影響がでないため、
け先からの直送を多くして、対応するこ
問合せにも自信を持って取り組んでいる
すぐに生産、供給ができるという点が当
とも決めました。
と答えられるようになりました。自宅で
Q
Q
事業内容を教えてください。
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
社事業の強みです。
ただ、医療用製品は認可の関係で東京
経由でないと輸入できないので、東京で
Q
今回のBCP策定では当たり前のこと
とを考えておかなければなりません。
に気付かされました。例えば当社には、
そういった事情の中、東日本大震災で
安否確認や帰宅経路情報、備蓄などにつ
は当社としての被害はたいしたことは無
いての対策がありませんでした。今回そ
かったのですが、何らかの対策の必要性
れらの対策を決定することができました
を感じていたところに、日本医療機器工
が、今までのように何となくではなく、
業会からお声かけいただき、BCP策定
具体的に何を、どの順番で、どうするの
に取り組むことにしました。
かを明文化することによって、手を打つ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
も家族との連絡方法、避難場所などを確
何か新たな気づきはありましたか?
被害があった場合にどうするかというこ
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
べきところが明確になりました。
当初はBCP等の専門用語に戸惑いま
したが、徐々に慣れ、大変勉強になった
認するきっかけになったのは大変ありが
たかったです。
会社情報
称号
株式会社秋山製作所
本社所在地
東京都文京区本郷3-31-4
秋山ビル
設立
1953年9月
資本金
1,000 万円
従業員数
48人
代表者
代表取締役 秋山郁夫
事業内容
手術用縫合針等医療用縫合材料
http://akiyama-elp.com
URL
(リニューアル後、 移行予定)
(現在公開中)
http://www1.odn.ne.jp/akiyama
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
71
48
取 組 事 例 ●
Case Study
サクラファインテックジャパン株式会社
迅速な拠点切替で
病理診断機器メンテナンスを継続
対 象 事 業
メンテナンス事業(病理学的検査機器)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●ノーツ・ファイルサーバーの故障
● IT 情報資産データの破損
●固定電話10日不通
対 策
●ノーツサーバーの多重分散、情報資産の分散化
●フリーダイヤルオプショナルサービスの追加利用
●遠隔操作にてフリーダイヤル接続先(着信地)切替
●遠隔地(大阪)より災害時用HPトップページ切替
●遠隔地(大阪)への顧客対応指揮権限の委譲
備 考
PBX設置場所を変更予定
Q
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
石塚 悟
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
す。
さらには文書ができあがった時点で完
がんをはじめとする多くの病気の診断
BCPの策定対象事業の選定は少し迷
成したつもりになってしまい、その後の
と適切な治療のための最終診断として大
いました。売上や収益の維持、また、万
検証や訓練を十分に行わずに終わってい
きな役割を果たしている病理診断は、人
が一の場合にお客さまが一番困ることを
ましたので、そのままでは有事の際には
体から採取された組織をさまざまな工程
考慮する必要があり、その二つは一致す
十分に機能しなかっただろうと思います。
を経てスライド標本にし、顕微鏡での観
るものではありませんでした。しかし「有
察により病変の有無や病変の種類につい
事の時こそお客さまを最優先し社会的責
て判断するものです。
任を果たす。それが信頼につながり結果
当社は、病理診断、病理学的検査の一
として当社を選んでいただけるのだ」と
策定過程において得るものがたくさん
端を支える “パソロジー・トータル・ソ
の基本姿勢から「メンテナンス事業」を
ありました。対象事業の選定では改めて
リューション・プロバイダー” として、
選択するという答えはすぐに見つかりま
各事業のポジショニングができ、業務影
この病理診断に欠かせない病理標本作製
した。
響度分析ではメンテナンス事業の主業務
のための機器・器材、試薬ならびにその
通常、私どものグループが製造・販売
を再認識しました。また、事業継続策で
他関連商品の製造、販売、輸出、輸入お
した病理学的検査機器のメンテナンスの
は通信手段が絶たれることでできなくな
よびアフターサービスを行っています。
ご依頼は全国から本社(東京)のヘルプ
ることの多さに驚くと同時に、それゆえ、
デスクにいただき、本社より各エリアの
しっかりした計画と事前の周知・訓練が
グループサービス会社の担当者に派遣依
一人一人のその時の行動に影響してくる
頼しております。そのため、東京が被災
のだと痛感しました。パートナー企業と
当社の商品やサービスの供給が止まる
した場合でも対応を止めるわけにはいき
の協力の重要性も再認でき、良い機会を
と最終的に患者さまへご迷惑をお掛けす
ません。
いただけたと感謝しております。
ることになり、最悪の場合は命にかかわ
非常時に大阪からの遠隔操作によりヘ
社会的責任を果たすための BCPの存
る問題となる場合もあります。医療の一
ルプデスクの接続先を東京から切り替
在が、社員達に「自分達は継続すべき仕
端を担う企業として社会的責任を果たす
え、大阪から本社同様に指揮を執ること
事に従事しているのだ」という誇りとし
ために BCPが必須であると以前から認
により、震災時にも継続して全国のお客
て繋がれば嬉しく思います。
識をしていました。
さまへの対応を行うことを考えました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
3年前、新型インフルエンザが流行し
た際に中小企業庁のガイドラインなどを
参考にパンデミック対策の BCP策定を
Q
かつて自社で BCPを策定した際との
上の計画ができた段階で新型インフルエ
最も大きな違いは実効性の視点でした。
ンザの流行が終息に向かい、実効性のあ
自分達だけでは検討が困難な箇所はシ
るものとして完成させることができませ
ナリオを変えるなどして逃げてしまった
んでした。そんな折、東日本大震災が発
り、逆に作りやすい箇所は、とっさの判
生し、災害対策も含めてしっかりとした
断に任せるべき部分まで時間をかけて決
BCPを策定しなくてはならないと再認
め事を作り込んでしまったりして、少し
識をした次第です。
ずつ現実から離れていったように感じま
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
BCPを策定した感想を
お願いします。
会社情報
自社で策定したものとの違いは?
開始しました。しかし、目先の対応と机
72
Q
称号
サクラファインテックジャパン
株式会社
本社所在地
東京都江東区新大橋1-8-2
新大橋リバーサイドビル 101
設立
資本金
従業員数
2001年10月
9,900 万円
105人
代表者
代表取締役社長 石塚悟
事業内容
標本作製のための機器・器材、
試薬ならびにその他関連商品の
製造、販売、輸出、輸入および
アフターサービス
URL
http://www.sakura-finetek.com/
49
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社スギヤマゲン
臨床検査の現場へ
代替の効かない商品供給継続
対 象 事 業
試薬および衛生器材の加工・販売事業
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●建物は乱雑化、シーラー機3台破損
●冷凍冷蔵庫は停電で使用不可
●メインサーバー(本郷)と PC4台故障
対 策
Q
●クロストレーニングによる代替要員の育成、増員
●バックアップデータを2カ所で保管(経理データ)
●営業用車両の避難時取扱いルール
●代替スペースにて作業継続
●商品および原料の安全な場所への移動
●予備用シーラー稼働
●手作業による伝票作成
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
杉山 大介
そして作業場は外気・埃等を遮断した
一方で、安否確認ができない社員に対
環境が必須で、作業時は白衣・白帽・マ
して、いつどのタイミングで警察に届け
当社は1932年(昭和7年)より東京・
スク着用が必要で、室温が低めでなけれ
るのか、というような具体的な検討も行
本郷の地で医療用ガラス器具、理化学機
ばなりません。
う中で、今後、さらにさまざまな対応の
器等の販売業を営んでおり、今年(2012
ついては災害時に事業を継続するため
深掘りが必要であると感じました。
年)で創立80周年を迎えます。
には、人員と作業スペースの確保が重要
現在は臨床検査用の試薬および衛生器
となります。具体的な対策としては、社
材の加工・販売のほか、環境分析機器、
員の増員、さらなる作業習熟度の向上と
微生物検査器材、ステンレス容器、保
複数作業に対応する教育を行います。さ
このたびのBCP策定にてリスクを明
冷・保温輸送容器なども取り扱っており
らに、作業時の必需品や有事に代替とす
確に把握できましたので、お客さまと災
ます。
る作業場の検討と臨時設営用のクリーン
害時対策の具体的な確認を行うことがで
ルーム一式の備蓄、また、シーラーなど
きました。また、特定の社員に依存する
予備機の活用と手作業での伝票作業など
業務がありましたため、予防策として社
を検討致しました。
員の増員と多能工化としての教育を実施
当社で取り扱っております一部の商品
なお、夏の場合は、電力と空調設備が
致します。
は現在の市場では代替商品が存在しない
復旧または確保できるまでは作業を行わ
このように自分たちでは気付かないこ
ため、この商品の供給が途切れると、一
ないことと致しました。それは、暑い閉
とや対応のさらなる検討、策定した後の
部の実験や検査ができなくなります。ま
鎖された空間での作業を社員にはさせら
能動的価値などの多くの示唆をいただき
た、この商品は一般的にはお取引先様に
れない、という私の判断からです。
ました。策定作業の中では、資料やツー
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
多くの在庫をお持ちいただいておりませ
ん。それゆえ、需要の細かな動きに対し
て安定した供給対応を続けなければなら
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
ルがやや多く混乱しましたが、最後はス
何か新たな気づきはありましたか?
ムースに策定できたのではないかと思い
ます。
ない責任を当社は担っています。
ステップが進むにつれて、徐々に具体
今回教えていただいた手順に則ってほ
また社員への給与を支払い続けるため
的な対応を考えられるようになりまし
かの事業でもBCPを策定し社員全員に
にも、この事業を継続しなければならな
た。メンバーに主体性が出てきて、事前
周知徹底させていきたいと思います。
いと思い、このたびの応募に至りました。
に社内で打ち合わせを行うなど、「自分
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
たちでBCPを策定している」という実
感が湧いてきました。
災害時、営業担当が商品を積んだ社用
今回のリスクは地震を想定し、BCP
車をどのように扱えばいいのかなど、判
を策定する対象事業は、代替が利かない
断に迷うような場合についても検討し、
この商品の加工・販売事業を選びました。
いかなるときも自分の身の安全を第一に
本製品の加工作業は全て手作業で行って
行動して欲しいという思いを、BCPを
おり、また在庫を多く持てないため毎日
通じて明確に示すことができたことは良
計画的に大量な作業をしなければなら
かったと思います。また、この検討の過
ず、各社員の作業能力に大きく依存する
程で走行時の緊急時対応などについても
部分があります。
知ることができました。
会社情報
称号
株式会社スギヤマゲン
本社所在地
東京都文京区本郷2-34-9
設立
1990年3月
資本金
3,000万円
従業員数
18人
代表者
代表取締役社長 杉山大介
事業内容
試薬および衛生器材の加工・販売、
医療用ガラス器具・理化学機器等
の販売
URL
http://www.sugiyama-gen.
co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
73
50
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社田島
LPGの供給継続を通して
地域住民の生活を守る
対 象 事 業
LPガス供給事業
被災シナリオ
●立川本社、八王子営業所とも室内が散乱、被害甚大
●業務用自動車は34台中12台使用可能
● IT機器関連はすべて使用不可
●ガス充填所は使用不可、ローリーも交通規制により運行不可
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●要員の確保
●PCデータのバックアップの取得・管理
●ボンベ転倒防止
●稼働要員による組編成(20班)
、当該地点への派遣
●内勤応援要員の確保
●使用可能車両の確認、燃料残量チェック
●充填所内作業可否確認、使用可能充填所の選定
事業内容を教えてください。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
代表取締役社長
田島 裕之
で、より具体的に何をすれば良いかが分
かってきました。
当社は昭和 41年に田島燃料販売株式
都市ガスを利用できないお客さまに
緊急対応や危機対応の検討を通して、
会社として設立、LPガスの販売を始め
とって LPガスは、都市ガス同様に社会
平時と非常時の常識の違いも明確になっ
東京ガス様との代理店契約や各種協業を
インフラであり、その供給責任を考慮し、
たことは有意義でした。今後は重要取引
行ってきました。
「お湯と発電」をテー
LPガス供給事業を BCP策定の対象とし
先との被災時の具体的対応についても検
マに、環境にやさしく便利で経済的なエ
ました。
討していきたいと思います。
ネルギーと設備機器を提案するととも
今回は特に需要の多くなる冬場を想定
そして最後に被災シナリオを想定した
に、設計・施工・アフターサービスまで
し、目標復旧時間は3日と設定しました。
演習をすることで策定した BCPの検証
一貫して手がける総合エネルギーサービ
LPガスを供給するためには資格を持っ
ができ、今後の改善に向けてより一層の
スを立川地区をはじめ、主に多摩地区の
た人員、莫大な顧客情報、LPガス保管
理解を深めることができたと思います。
お客さまにご提供させていただいていま
施設、運搬する車が必要であるため、こ
す。
れらについてかなり時間をかけて議論し
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
また平成22年8月には給湯暖冷房設
ました。
備工事、東京ガス内管工事及び LPガス
まず人員については、LPガスは危険
BCP策定の過程では、これまで気が
内管工事の設計・開発・施工において
物のため運搬などの取扱には資格が必
付かなかったことも多くありました。そ
ISO9001認証を取得しました。
要であること、またお客さまからの問合
んな中でも本計画は本当に実行可能な対
せに対しては危険を避けるための案内の
策になっているかを数回見直したことも
徹底が必須であること、こういった要件
あり、初めてのBCPとしては良くでき
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
を満たしつつ、迅速・適切に対応するた
たと思います。
個別災害発生時には決められた活動や
めの呼集、動員対策を考えました。次に
今回は社員の一部のメンバーで策定し
連絡体制は持っていますが、広域、同時
顧客情報や施設については最悪のケース
ましたが、社員全員に演習を含めて周知
多発の災害対策は十分ではありませんで
を想定した上で予防・低減策に重点を置
徹底することで今後見直し、改善を図っ
した。東日本大震災では、当社には大き
き、車については稼働可能な車の管理や
ていきたいと考えています。
な被害はありませんでしたが、被災地の
配車、燃料確保、運行経路などについて
最後に、当事業を提供頂いた東京都と
状況が判明するにつれ、絶望感に襲われ
検討を行いました。
支援を頂いたコンサルタントの皆さまに
たものの、それでも何か準備しなくては
との思いが強くなりました。
首都圏でも自動車の燃料不足が問題に
Q
感謝いたします。
何か新たな気づきはありましたか?
会社情報
なったり、社会インフラの機能の問題が
集合研修ではBCPの全体イメージが
浮上したりした状況の中で、一般家庭に
良くつかめず不安を抱えてのスタートに
はもちろんですが、病院、学校、公共施
なりましたが、2回目以降は個別コンサ
設などにガスや水道などを供給するとい
ルということもあり全員が積極的に会議
う、生活に必要な社会的責任の強いサー
に参加できるようになりました。また、
ビスの一端を担っている以上、早期復旧
経営資源分析を通して各経営資源の脆弱
する責務があると強く考え、策定に取り
性を改めて理解することで予防策が明ら
組みました。
かになり、事業継続策を検討していく中
74
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
称号
株式会社 田島
本社所在地
東京都立川市柴崎町6-18-10
設立
1966年10月
資本金
8,400 万円
従業員数
103人
代表者
代表取締役社長 田島裕之
事業内容
LPG 販売、ガス工事、空調設備、
給排水設備、リニューアル工事、
家庭用発電設備
URL
http://www.tajima-net.co.jp
51
取 組 事 例 ●
Case Study
タツミ産業株式会社
災害時にも必要な包装容器を
食品販売店へ継続供給
対 象 事 業
包装資材販売事業(関東事業部、直販・量販店)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●本社社員85% 出社不可 ● PC・プリンター落下破損50% ●商品破損30%
対 策
●棚、ガラス、PC、プリンター等に対する耐震対策の実施
●データセンターの活用
●安否確認・緊急連絡システムの構築
●物流会社との緊急時対応協定の締結
●有事における情報の集中・共有体制の確立
●重要得意先との災害時における連携体制の確立
●物流拠点に近い社員による作業応援体制の確立
●緊急車両通行証の迅速な取得
備 考
Q
代表取締役社長
石関 慎一
関東が被災した場合は、関西、東北の拠点での代替受注・出荷がすでに可能
事業内容を教えてください。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
を一番強く感じました。そのためにも
“正確な情報をつかむこと” が重要だと思
私たちは、90年前に竹の皮を精肉店
災害時において、刻々と変化する状況
います。当社の今までのプロジェクトは
へ、経木を鮮魚店へ納める事業で創業し
下で迅速に意思決定を行うために、最新
部門単位であり、今回のような部門横断
ました。
情報に基づいて対策を実施し、情報の共
のプロジェクトは初めての経験でしたの
その後取扱商品とお客さまが拡大し、
有を行い、その結果によって次の対策を
で、部門を超えて “この人はこういう発
総合包装資材卸業へと変化してまいりま
検討し判断する、いわば「有事のPDCA
想や考えを持っている” ということがお
した。
を回す」ことをコンセプトとしました。
互いに分かり、社内の連携力が強化され
食品包装容器・資材・機器や店舗設備
そのために供給網を構成する営業・物
たのではないかと思います。
機器の提供のほか、販売プロデュースや
流、顧客、取引先、運送会社間で、各種
物流改善提案を行っており、関東、関西、
情報を収集・共有する仕組みを、災害対
東北、北海道に営業拠点と物流センター
策本部が担います。量販店様については
を持ち、事業展開をしております。スー
本部以外にも店舗ごとの被災状況や供給
短時間でしたが、大地震が発生した時
パーマーケットやコンビニエンスストア
ニーズを迅速かつ正確に把握するため、
に、何のために、誰が何をすべきか、そ
向けを中心とした直販部門と問屋向けを
確認すべき情報を明確にした「営業緊急
して平時において何をしておくべきか、
中心とした卸売部門があります。
対応シート」を準備することにしました。
ということを明確にすることができまし
要員不足に対しては柔軟な再配置ができ
た。今後は、今回参画のメンバー14人
るよう、最寄りの拠点への応援、自宅か
全員が今の気持ちを忘れずにリーダーと
らの顧客対応などの活動方針を決めまし
して周りへの語り部になり、また演習を
東日本大震災において石巻営業所が被
た。
積み重ねることにより社員全員に浸透さ
災し、災害に対する危機感が増したこと
また、被災地への食料供給には食品容
せていくことが重要と思っています。関
が一番大きな理由です。石巻営業所では、
器が欠かせませんから、その緊急性を警
東事業部でまず固めてから全社に展開
地元住民であるパートの皆さんが「すぐ
察署に申請し、委託先の配送会社が緊急
し、お客さまから必要とされる会社とし
に避難するように」と大声を出してくれ
車両通行証を速やかに入手できるよう、
て成長につなげていきたいと考えていま
たおかげで、幸いにも従業員は全員無事
事前に合意することとしました。
す。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
でした。倉庫は、柱と壁は残りましたが
室内に浮遊物がなだれ込み、商品は全滅
しました。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
ま た、 関 東 に お い て も 一 部 の 社 員、
短期間の割には討議、決定する中身が
パートとの連絡がとれず、帰宅困難者が
濃かったので、とにかくスケジュール
多く出たという苦い経験をしました。こ
をよくこなせたというのが正直な感想で
のようなことから災害時にも、社員の安
す。プロジェクトの中で各部署の代表が
全を守り、食料供給に不可欠な食品容器
自由に自分の意見を発言し、皆で討議し、
を供給するため、BCPに取り組むこと
合意形成してきたことで実践的な BCP
にしました。ISO、コンプライアンス、
を策定することができたと思います。
BCP等を実施することが企業価値につ
今回、“長と称する人は非常時にも冷
ながるとも思っています。
静に判断できること” が重要ということ
会社情報
称号
タツミ産業株式会社
本社所在地
東京都北区上十条2-13-1
ガーデニア3階
設立
1952年3月(創業1922年3月)
資本金
5,000万円
従業員数
230人
代表者
代表取締役社長 石関慎一
事業内容
食品包装資材卸売
URL
http://www.tatsumi-net.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
75
52
取 組 事 例 ●
Case Study
富山科学工業株式会社
研究開発と生産技術の現場に
理化学品供給を継続
対 象 事 業
精密機械器具販売(うち主要顧客の80%)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●サーバー、ドットプリンタ故障
●パソコン30%落下故障
●一部商品の破損
対 策
Q
●複数の通信手段による社員緊急連絡網の構築
●PC・サーバー・複合機の固定
●バックアップデータの保管運用の変更
●迅速な緊急対応および危機対応体制の構築
●手書き伝票による対応
●バックアップデータの活用によるサーバーの再構築
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
富山 裕明
に動けるようにするためのルールを決め
ことでスムーズに進めることができまし
ました。現在では、従業員への教育を行っ
た。 当社は、明治19年に理化学、医療用
た上で『携帯版BCP』を配布しており
また、普段何気なく使用している経営
ガラスの製造販売を開始したのが始まり
ます。
資源を細かく洗い出すのは正直大変でし
で、その後、理化学商社へと形を変えな
また被害状況の情報収集については
たが、アナログ回線や複合機など平常時
がら、常に最先端の研究開発と生産技術
「被害状況確認シート」を作成し、事業
にあまり役立つものではないと考えてい
の革新に対する支援を続けてまいりまし
を継続するために必要な経営資源をいち
たものが、被災時には通信手段として有
た。現在では科学機器、計測機器を主に
早く確認できる状態にしました。これは
効であることが確認できたことはよかっ
関東圏の研究所、工場へ販売しておりま
経営陣不在の場合にも、従業員が主体的
たと思います。
す。
に緊急対応を行うためのサポートとなる
通常業務と並行しての取組で大変で
と考えております。
したが、集合研修から実質2カ月程度で
さらに今回の被災シナリオよりももっ
BCPを策定できたことはよかったと感
と深刻な事態として、事務所への立入
じております。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
防災対策として緊急時の連絡方法など
が不可能となった場合についても検討し
をまとめたマニュアルの配布や、非常用
ました。その結果、本当に必要な最低限
の食糧や物資を本社ビルに準備するなど
の経営資源を絞り込むことができ、機器
の対策は行っておりました。ただ、東日
や装置などがなくても代替拠点での事業
今回こうした議論をしたことで、当社
本大震災の際には安否確認に手間取って
継続の可能性が大きいことがわかりまし
の最も大切な資産が従業員であることや
しまったこと、また外出先で被災した社
た。
事業継続に最低限必要な経営資源を明確
員のその後のバックアップ体制(被災後
そしてそのために必要となる顧客デー
にすることができたことはよかったと思
どのように過ごしたらよいかの指示)な
タなどの情報資産の保管方法を再検討
います。
どに不安を覚え、これまでの防災の備え
し、持ち出し用として別の場所にもう1
また、時間軸で必要となる経営資源を
を改めて見直すとともに BCP 策定を行
組保管することを決めました。
整理したことにより、発災後の10日間
う必要があると考えました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
については、予想以上に具体的な検討が
何か新たな気づきはありましたか?
できたと満足しております。その後の
サプライチェーンの問題は一部残るもの
東日本大震災を経験したこともあり、
の、今後継続して検討していきたいと思
地震についての BCPを策定しました。
やるべきことは理解しているつもりだっ
います。
当社の最も重要な資産は従業員とお客さ
たのですが、実際にプロジェクトが始
まです。そのため東日本大震災時の経験
まってみるとわかっていなかったという
も踏まえ、“ 絶対に無理をしない ” とい
のが正直な感想です。
うことを大前提に発災時の従業員の安否
特に被害想定の置き方や経営資源の
称号
富山科学工業株式会社
本社所在地
東京都中央区日本橋本町4-10-7
確認や被害状況などの情報収集の仕組み
洗い出しは自社だけで検討していたら、
設立
1967年12月(創業1886年)
づくりに加えて、お客さまとの連絡体制
きっと判断ができなかったと思います。
資本金
1,000 万円
を確立しました。
どの程度の想定とすることが妥当なのか
従業員数
21人
代表者
代表取締役社長 富山裕明
例 え ば、 安 否 確 認 は『 携 帯 版BCP』
ということについても、コンサルタント
事業内容
精密機械機具販売業
を活用し、連絡がとれない場合、自発的
の方にある程度前提を提示していただく
URL
http://www.tknet.co.jp
76
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
53
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社ノルメカエイシア
災害医療を継続し、
ひとりでも多くの人命を救う
対 象 事 業
災害医療関連用品の販売
被災シナリオ
●装置:PCの3分の1が破損、サ-バ-が全数破損
●アプリケ-ション:売上、会計、給与のすべてが利用不能
●情報資産:顧客、販売、会計、給与情報は利用不可能
●製品、部品、材料:3分の1が破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●サーバーバックアップの実行
●防災・救助対策用品の整備
●緊急車両稼働体制の整備
●発電機の燃料備蓄
●社員の安全確保
●手作業による出荷
●緊急車両通行証の取得
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
千田 良
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
今まで新型インフルエンザの発生に備
え、個人情報保護の観点から管理職のみ
私は、阪神淡路大震災で多くの友人知
当社では、首都直下型地震に対する
緊急連絡網を整備していましたが、地震
人を失い、この不幸な体験を繰り返す
BCPを策定しました。
を想定した場合は全社員の緊急連絡網が
ことのないよう、災害大国日本にはこ
対象事業は災害医療関連用品の販売で
必要であることがわかりました。
れから絶対に災害医療が必要になると、
すが、その中でも日赤・JICA・NPOか
また、メンバー全員で実施した現場点
1996年12月に日本で最初の、そして
らの緊急支援要請に応える「緊急出荷」
検では、机の下に身を隠すスペースがな
唯一の災害医療総合商社「ノルメカエイ
と代理店や一般医療機関への「通常出荷」
いこと、棚が転倒しやすいこと、ガラス
シア社」を立ち上げました。
とに分けて、まず優先順位の高い緊急出
が割れて飛散することなど、安全対策が
当社は主に救急災害用器材、手術室関
荷を3日以内(閉じ込め者の生存は発災
不十分だったことにも気付きました。
連機器、在宅介護用品および福祉用具を
後72時間が勝負と言われているため)、
BCPでは事業が停止した時の継続策
海外のメーカー(ノルウェー、イタリア、
通常出荷を6日以内に復旧することを目
だけでなく、予防策など事前にできるこ
フランス、アメリカ、スウェーデン、イ
標に対策を検討しました。
とはやっておくことも必要なのだと理解
スラエル、中国など)から輸入し、国内
具体的には、日赤・JICA・NPOとの
できました。
およびアジア諸国へ販売しています。
緊急連絡リストや緊急調達先リストの整
また、災害医療救助訓練を自治体、病
備、緊急車両申請マニュアルなどの事前
院、空港などで行うことで、災害医療に
準備を行い、緊急時の迅速な出荷可能製
ついて「正しい教育、正しい装備」をお
品の確認、緊急通行車両証の取得による
今回策定した BCPの内容を全社員で
伝えしております。
配送および病院・消防との連携により “一
共有し、大地震が発生した時に落ち着い
人でも多くの人命を救う” ことができる
て、まず自分自身の身の安全を確保し、
BCPを策定しました。
その上で必要な行動を取るということが
行政からの緊急支援要請への対応や自
できるようになると期待しています。
当社では、新型インフルエンザの発生
社配送できない場合の共同配送の調整に
これが始まりだと考え、今後、定期
を念頭にした緊急連絡網の整備と権限委
ついては、当社が会員になっている日本
的な演習の実施や対策の見直しにより、
譲の順位については作成済みでした。
医療機器工業会と事前に報告事項を決め
もっともっと使えるものになるようにブ
3月11日の東日本大震災では、7階
て状況連絡をするようにし、迅速な連携
ラッシュアップしていきたいと思ってい
のテナント(別会社)でキャビネットの
ができる体制を整備しました。
ます。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
転倒被害が発生し、当社としても何らか
の対策を考えなければならないと思って
いたところに、日本医療機器工業会から
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
東京都 BCP策定支援事業の紹介があり
これまで全国の被災地に対して災害医
直ちに手をあげました。
療における要員や物資の支援を何度も
私が出張などで不在のことも多いた
行ってきましたが、これは自社が被災し
め、首都圏で大地震が発生しても組織と
ていないからできたことで、今回 BCP
して有事の対応ができるよう、災害時の
を策定してみて改めて自社が被災地に
判断基準や体制を体系的に構築する必要
なった場合の充分な準備ができていな
があると思い応募しました。
かったことを痛感しました。
会社情報
称号
株式会社ノルメカエイシア
本社所在地
東京都台東区浅草橋3-19-3
セイワクレストビル
設立
1996年12月
資本金
9,900 万円
従業員数
17人
代表者
代表取締役社長 千田良
事業内容
災害医療機器、 災害用品の販売
URL
http://www.normeca-asia.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
77
54
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
建材卸売業(直販・量販店)
被災シナリオ
●負傷者5名
● PC落下損傷
●社員 85%が帰宅困難(出社困難)
対 策
株式会社ヤブ原
全国拠点からの建材出荷を
早期に実現
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●オフィスの耐震化策の実施
●社員自宅の耐震化策の啓蒙
●ビル管理会社との連携方法の確立
●主要得意先の被災状況と主力メーカー(工場)の被災状況、出荷見込みの早期把握
●営業による受注可否問合せ対応
●全国他支店倉庫からの代替配送
代表取締役社長
藪原 健三
Q
事業内容を教えてください。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
欠との認識を深めました。既存の防災規
定はどちらかというと一般的な内容です
当社は、左官材料の専門店として明治
建材卸売業者の使命として、得意先と
が、今回は得意先やメーカー対応を含め
34年に東京駅前にて開業し、今では湿
メーカーとの間に立って商品の流通機能
た、より具体的な活動を定めることがで
式内外装材(壁・床・天井)全般、各種
をいかに継続するかが課題となります。
きたと思います。
セメント、顔料等、建築材料、住宅設備
そのためには正確な情報に基づいた意思
また、今回は組合を含めた合同演習に
の販売および輸出入を行う建材・機械・
決定が必要であると考えました。そこ
参加できたので、みなさんが策定された
器具の総合商社として、全国8拠点で事
で、まず営業が手分けして主要得意先と
BCP についてうかがうことができ、同
業展開しております。主な得意先は全国
主力メーカーの被災状況を入手し、次に
じ業界でも企業個々にリスク、対策が異
の建材販売業者、建設会社、工務店およ
災害対策本部が主力メーカーから当社、
なることを改めて認識しました。
び左官工事店、官公庁、都市再生機構お
そして主要得意先へという流通網の全体
よび海外建設業者および工事会社(韓国・
把握とその後の出荷方針を決めます。ま
台湾・中国・香港・インドネシア・シン
た、全国の営業・物流拠点を有効に活用
ガポール・マレーシア・フィリピン・タ
し、災害時には代替受注、代替配送を実
今回は初めての取組なので、策定対象
イ・アメリカ・フランス・アルゼンチン等)
施することとしました。
を東京支店に絞りましたが、東京支店内
です。また、本社のあるヤブ原ビル(中
卸売業者としては、得意先、メーカー
だけではなく本社営業や総務、他支店と
央区八丁堀)の賃貸事業も行っておりま
双方のニーズから、一刻も早く業務を開
関連する活動を具体的に検討することが
す。
始する必要がありますから、出社困難な
でき、BCP全社展開の枠組みができた
状況に対しては、営業系社員は自宅にて
と思います。災害が発生した時にどんな
問合せ対応を行うことにしました。
被害が考えられるか、またどのような対
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
東日本大震災時の混乱を経験し、首都
直下型地震の際に現在の防災規定で本当
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
策をとるかの検討は思っていたより苦労
何か新たな気づきはありましたか?
しましたが、当事者自身が考えることの
重要性がよく分かりましたので、今後は
に対処ができるかどうか、また日頃実施
本社が都心にあるため、近隣には緊急
全社員に対する演習を通して、社員自身
している訓練の有効性が心配になり、災
避難場所として適当な場所が見当たら
が考え、自立的に行動できるようにして
害対策の見直しをしなくてはと思ってい
ないので、社内に留まる危険を明確に認
いきたいと思います。
ました。そのような時に東京セメント建
識するまでは社内に留まる方針にしまし
材協同組合から当 BCP策定支援事業を
た。また、休日に発災した場合、85%
紹介され、取り組むことにしました。今
の社員が出社不可となる可能性が高いの
回のプロジェクトの中で、いろいろと考
ですが、その場合にも自宅または最寄り
え討議することにより有事の際の判断力
の拠点での役割・活動を考えることがで
を強化し、建材卸売業としてだけではな
きるということが分かりました。
くテナントビル提供者としても、人命尊
災害対策本部が全体の被災状況を把握
重第一の立場から、災害リスクの優先度
するためには、主要得意先を担当する支
を明確にした具体的方策を確立したいと
店営業と、主力メーカーを担当する本社
思っています。
営業の情報連絡網が確実に機能すること
が必要で、そのためには実地訓練が不可
78
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
株式会社ヤブ原
本社所在地
東京都中央区八丁堀2-14-4
設立
1950年12月(創業1901年6月)
資本金
4,800 万円
従業員数
107人
代表者
代表取締役社長 藪原健三
事業内容
建材卸売業(湿式内外装材、建材等)
URL
http://www.yabuhara.co.jp
BCP 取組事例
不動産業
サービス業
学習支援業
BCP
策定のポイント
サービス業は業態が多岐に渡りますが、本年度参加企業についての
BCPにおける共通な重要要素としては①人、②データ、③期日へ
の対応が挙げられます。想定災害は、ほとんどが地震でしたが、サー
ビス業は人に依存しており、人と人との接触も多いため、新型イン
フルエンザのリスクも大きい業種であるといえます。
①人への対応:従業員およびお客様のオフィスへの出入りが頻繁で、
従業員が現場作業に出向いていることも多く、発災直後は従業員お
よび来社中のお客様の安全確保と安否確認が第一です。代替が困難
な専門職の安全性を高めることは、事業継続対策の前提としても重
要となっています。
②データへの対応:お客様の預かり情報やサービスに紐付く個人情
報を預かっていることが多いため、機密情報の漏洩防止が極めて重
要です。また中断した事業の再開のためにはデータの保全が前提と
なることが多いため、システムの冗長化やデータバックアップ策の
強化を検討する必要があります。
③期日への対応:お客様に約束した期日を災害時であっても守るこ
とが求められる場合や、あるいは当初期日の順守の代わりに特別緊
急対応を要請される場合には、これらに対応できる緊急出動体制の
確立が必要となります。
これらの特徴は不動産業と学習支援業についても多くが当てはまり
ます。さらに学習支援業の場合は、お客様対応として多数の学生の
安全確保のみならず、その親族への報告まで遅滞なく行うことが求
められています。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
79
55
取 組 事 例 ●
Case Study
国土管理株式会社
安心なマンション管理を
インフル発生時も継続
対 象 事 業
分譲マンション管理業務
被災シナリオ
●最大40%の欠勤率(自社および外部サービス会社も同様)
●2012年11月初め香港で発生 11月末日本国内で発生し、12月感染拡大
対 策
対 象 リス ク
新型インフルエンザ
●新型インフルエンザ対応教育(インフルエンザ情報、会社および家庭での予防対策、
備蓄など)の実施
●各感染レベルでの会社行動指針に従い、業務の継続、縮小、延期、中止、一部新規を
定義したサービスレベルと業務実施体制(人員計画)に従って、在宅勤務を含む緊急
勤務体制を実施 ●担当者、担当物件ごとの情報共有化(要員の代替可能化)
●個人は新型インフルエンザに対する個人行動指針に従い行動する
代表取締役
佐藤 陽一
Q
事業内容を教えてください。
ルエンザ」の爆発的な感染被害の方が深
で、どの業務をどのレベルまで行うかを
刻だということになりました。
決定していきました。
弊社は、主に建物管理、管理人派遣や
そこで新型インフルエンザの流行に
最終的にはお客さまにできるだけご迷
管理組合支援、苦情受付などを行う分譲
よってマンパワーが減少していく中でも
惑をおかけしないようにするためには最
マンション管理事業を中心に、ビルメン
サービス提供が継続できるよう、快適で
低限どの業務が必要なのかという観点で
テナンス事業、官庁施設運営事業、その
安心して任せられる管理会社を目指し
検討し、最後まで継続させる業務を管理
他不動産仲介事業、建物検査事業および
BCPを策定することに致しました。
組合支援業務と苦情受付業務とに決めま
損害保険代理店事業を行っております。
対象事業は分譲マンション管理事業に
した。
マンション業界は物件の供給が減少傾
致しました。本事業は管理受託数が約
向にあるため、業界内の競争は年々激化
160棟6,000世帯あり、社員はひとり
している状況です。
で十数件のマンションを担当しておりま
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
す。また業務の性質上、お客さまとの関
BCP策定前と策定後では雲泥の差で
係構築や調整など属人的な側面も決して
有事に対する手ごたえを感じています。
少なくないため、弊社の事業の中でも新
パンデミックに関する基礎知識として
漠然と防災対策の必要性は感じており
型インフルエンザが流行した場合の影響
インフルエンザについて知ること、策定
ましたが、会社の取組として特に何かを
が最も大きいと判断し、本事業に絞って
したBCPを全社で共有すること、その
行ってはおりませんでした。東日本大震
検討を進めていきました。
演習方法を身に付けることで揺るぎない
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
災直後、社内連絡システムや防災備蓄等
の必要性を痛感し、何か策はないかと考
えていた矢先に東京都のBCP策定支援
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
事業継続ができるのではないか、とい
う確信に近いものを得ることができまし
た。
事業のことを知り、社を挙げて策定する
感染拡大に伴ってどの業務(サービス)
この気持ちを社内で共有し、一丸と
ことに決めました。
をどのレベルまで縮小する、あるいは一
なって取り組んでいければと思います。
実は以前、あるフォーマットを使用し
旦停止するなどのサービスレベルの絞り
またこれに満足することなく、BCPの
て策定を試みたことがあるのですが、そ
込みが必要となるため、この作業にかな
見直し・演習を繰り返すことにより、状
の時はただ文字を入れただけのもので実
り苦労しました。どの業務も重要である
況に即した BCPを確立できればと考え
効性のあるものはできませんでした。
ことに変わりはないという思いから、今
ております。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
までは業務の優先順位など検討したこと
に追われて会社全体でこういった検討の
管理会社の経営資源の核はマンパワー
場を持つことがなかなかできなかったこ
です。弊社の社員はマンションの居住者
とも作業が難しいと感じる要因のひとつ
様やビルのテナント様など、不特定多数
になっていたのかもしれません。
の方々と接することが多いため、事業を
そこでコンサルタントのサポートを受
脅かす要素としては設備・インフラに顕
けながら、まずは通常行っている業務
著に影響がでる地震よりもむしろ、いっ
をすべて洗い出し、優先順位を一つ一つ
たん感染すると回復まで長い期間を要す
検討する作業から始めました。その次に
るために人的被害が大きい「新型インフ
要員が減って状況が厳しくなっていく中
80
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
がありませんでした。また、日々の業務
称号
国土管理株式会社
本社所在地
東京都新宿区西新宿3-9-12
西新宿ダイヤモンドビル
設立
1987年
資本金
1億円
従業員数
247人
代表者
代表取締役 佐藤陽一
事業内容
分譲マンション管理事業
ビルメンテナンス事業
官庁施設運営事業・不動産仲介業
建物検査業・損害保険代理店業
URL
http://www.kokudo-kanri.co.jp
56
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社アースアプレイザル
有事には環境リスク評価を
中断/継続案件に分類
対 象 事 業
環境調査等(ER/不動産鑑定/土壌汚染調査/アスベスト調査)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●建物内への立入は可能だが、天井、空調機落下
●サーバーは倒壊
●全PCの90%が倒壊し破損
対 策
Q
●社員に対する教育・訓練の定期的な活動
●社内のレイアウト変更やPC・棚の固定
●備品類の最低在庫量設定による運用管理
●バックアップデータの確保
●自社ウェブサイトからの被災状況等の広報
●緊急時資源投入チームによる事業再開のための資源の投入
●災害時営業戦略の実施
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
釼持 一郎
被災時には中断すべき案件と、継続すべ
とを認める体制ができていれば指示しな
き案件とに分けられます。今回のBCP
くても現場で見事に対処できると思いま
アースアプレイザルは、環境リスク評
策定では、災害時に継続すべき案件につ
した。そのためには、BCP を日常業務
価を通じて、不動産の適正価値判断の基
いてその対応までをまとめました。また、
に取り込む必要があります。 準を社会に提供する、環境ソリューショ
当社で特に重要な資産である個々の社員
今回業務の流れを再度整理することで
ン企業です。
が持っているノウハウと作業を行うPC
通常業務の中にも改善点を発見でき、災
平成14年の設立以来、多くのお客さ
を含む情報資産をどのように守るのか、
害時でも対応できる業務の方法に変更す
まに支えられて累計数千件の環境関連調
どのように復旧するのかについて対策を
るなど、通常業務の見直しにも役に立っ
査を手がけて参りました。土壌汚染調査
考えていきました。
たと感じています。既存の運用のなかで
から始まり、近年ではアスベスト調査・
非常時の行動指針としては、身の安全
すべてが解決できるものばかりではあり
分析およびコンサルティング、エンジニ
を確保すること、むやみに移動しないこ
ませんが、早速取り組んでいきたいと思
アリングレポートの作成、不動産鑑定、
とを決めました。BCP文書ではすべて
います。
資産除去債務対応サービスと事業領域が
を想定して網羅することはできないの
大きく拡がっています。
で、この行動指針を全ての従業員に理解
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
してもらうために防災訓練や安否確認の
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
訓練など継続的な教育を実施していきま
BCP策定は、経営計画そのものであ
す。
り、従業員全員が経営者の目線で考える
これまでにもインフルエンザの流行時
事業継続においては、4日目から事業
という当社運営方針の一環であると理解
に注意喚起や消毒薬の設置、マスクの装
の70%を回復するという目標を実現す
しております。事業を継続することは、
着、予防注射接種の推奨など予防対策は
るため、災害時営業戦略をもとに限られ
従業員、従業員の家族、顧客、株主への
しっかりやってきました。それが、東日
た資源(人員含む)を効率的に稼働案件
責任を果たすことであり、企業経営その
本大震災を受けてお客さまよりBCPの
に投入すべく、新たに作成した緊急時資
ものを意味します。
相談を受けるようになり、また、社内か
源配分マップを活用して対応していきま
顧客が安心して業務を依頼、実施でき
らも新しいビジネスの提案ができるので
す。
る体制を構築し、顧客に発信していきま
はという発案があり、まずは自分の会社
で作ってみてお客さまに提案できるよう
になりたいと考え、BCPの策定に取り
組むことにしました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
Q
す。
何か新たな気づきはありましたか?
集合研修も含めて計5回のスケジュー
会社情報
ルを事前に確保することが非常に大変
でした。事務局も私を長時間拘束するこ
とに抵抗があったようですが、策定し終
今回は地震に対する BCP を策定しま
わった今では、緊急時に意思決定を行う
した。
人物がプロジェクトに参加することは必
当社の提供するサービスは、不動産の
要なことであったと理解しております。
適正価値の判断基準として、またM&A
BCPは、非常時のことであり特別な
や事業の再編、売却など、重要な経営判
対応と考えがちでありますが、常日ごろ
断材料として必要となります。そのため
から現場を鍛え、信頼し、社員のやるこ
称号
株式会社アースアプレイザル
本社所在地
東京都千代田区神田淡路町2- 4
設立
2002年2月
資本金
2億 5,450 万円
従業員数
30人
代表者
代表取締役社長 釼持一郎
事業内容
不動産に関する環境リスクの調査
分析、レポート、対策、 管理およ
びコンサルティング
URL
http://www.earth-app.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
81
57
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社カワコン
若手技術者の育成が
地域密着の測量業を支える
対 象 事 業
測量事業
被災シナリオ
●公共交通機関の停止、幹線道路の車両通行規制による
班長クラスを中心にした従業員の出社率低下
●本社設置サーバーの破損
●測量に使用する車両2台の破損
対 策
Q
対 象 リス ク
川崎市直下型地震
●キャビネットなど什器の固定により避難経路を確保する
● PC、サーバーなど IT機器の固定により破損を防止する
●サーバーデータのバックアップを外付けHDDで行う
●発電機の燃料は満タンに近い状態で保管する
●班員を育成することで、班長業務の代行を可能にする
●発電機を使用して被災後2日目を目途に IT機器の動作確認を開始する
●サーバーデータのバックアップを利用して必要最低限のデータをPCに取り込む
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
大川 勉
納されており破損の心配は少ないため、
を社内で共有できるようにしたらいいの
「技術者」と測量データを処理する「PC」
かということは判断に悩みました。弊社
測量業務、土地調査といった補償コン
の確保が重要なポイントになりました。
はプライバシーマークを取得しておりま
サルタント業務を中心に不動産に関する
まず、技術者の確保は若手の技術者を
すので、プライバシーマークのルールも
調査、開発など幅広い分野のサービスを
育成し、出社率の低下が予想される班長
守りつつ、BCPとして有効な仕組みに
総勢14名の専門知識を持った技術者に
の業務を代行させる方針としました。会
するバランスを考慮し、各従業員と直属
より提供し、自治体、官公庁の他に民間
社から徒歩圏内に多くの従業員が住んで
の上長を基本的な連絡経路といたしまし
不動産会社にお付き合いいただいており
いるので、若手技術者を教育していくこ
た。それ以外ではBCPは生活に密着し
ます。直接、個人のお客さまにサービス
とで事業継続の力をつけると同時に、人
ている分イメージがわきやすく、分かり
を提供するわけではありませんが、弊社
材の育成にもつながると考えています。
やすかったと感じています。
が携わった公共施設やマンションなどを
もう一つ、PC の確保については発電
利用していただくことで地域の皆さまの
機を利用して動作確認を行うことで、電
お役に立てていると考えています。
気という重要インフラの供給状態に制約
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
を受けることなく、素早く業務を再開さ
災害発生時にやるべきことの基準がイ
せる手順を整えることができました。
メージできるようになったため、何も分
その他に地域支援に関する方針も
からない状態よりは安心感があります。
東日本大震災を経験してみて、何か災
BCP文書の中に記載しました。これか
おそらく東日本大震災がなければBCP
害が起きてもいざとなると、何をどうす
ら町会をはじめとする地域の組織と連携
を策定しようと考えなかったと思うので
ればいいか分からないことに改めて気が
しながら支援内容を更に充実させて、地
すが、今ではBCPを作って従業員の命
付きました。従業員の安否確認の手順な
域の皆さまに貢献できる頼られる企業へ
を守る方針を明確にすることが社長の責
ど災害時にやるべきことをマニュアルと
と成長していきたいと考えています。
任の中に含まれていると感じています。
して明確にしたいと思いました。
また、弊社の場合、行政が主要なお客
さまであると同時に、地域に何か協力で
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
また、短期間でのBCP策定は慌ただし
いところもありましたが、動きやすい中
小企業だからこそ対応できたのだと思い
ます。
きないかなという思いもあり、以前より
繁忙期の最中に策定したため通常業
川崎市に防災協力事業所として登録する
務と並行してBCPの打ち合わせがすぐ
といった活動も行っておりました。
にやってくるという慌ただしい状態だっ
そこで、今回は従業員の安否確認など
たのですが、参加メンバーが頑張ってく
のマニュアルの整備と、より一歩踏み出
れました。理想を言えば、打ち合わせに
した地域への協力、支援を進めるための
参加していない従業員にステップごとに
称号
株式会社カワコン
足掛かりとして、BCPを策定すること
BCPで検討している内容を話したかっ
にしました。
たのですが、時間をとれなかったので、
本社所在地
神奈川県川崎市高津区梶ヶ谷
3-14-23
東京支店
東京都豊島区西池袋3-30-1
これは4月以降の課題と考えています。
設立
2003年11月
資本金
2,500 万円
絡網を整えることは必須になりますが、
従業員数
13人
代表者
代表取締役社長 大川勉
主要業務の「測量」についてBCPを
個人情報保護の観点からどのように連
事業内容
測量
策定しました。測量機器は頑丈な箱に収
絡先となる携帯電話番号などの個人情報
URL
http://www.kawacon.jp
Q
82
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
また、安否確認を行う上で従業員の連
会社情報
58
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社寿エンジニアリング
被災地の道路・橋などの
緊急調査要請に応える
対 象 事 業
土木設計コンサルタント業務、災害時緊急要請への対応
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●支店長は外出中にて不在
●データ破損
●在勤中のほぼ全員が帰宅困難、負傷者あり
対 策
Q
●社員、客先、協力会社との緊急連絡体制の強化
●データバックアップ体制の再構築
●オフィスの安全化の推進
●早期の災害対策本部体制の構築
●災害時顧客緊急連絡による要請の把握、要員の派遣
●システムの速やかな復旧(他拠点でのバックアップなど)
事業内容を教えてください。
取締役東京支店長
齋藤 壽仁
の要は、社会インフラの設計経験を有す
地震時に棚からの落下物による被害を予
る設計技術者や彼らを支える社員と各種
防するなど、できることからしっかり実
土木設計コンサルタント業を営んでお
設計データであることから、予防・低減
施する必要性を痛感しました。
ります。主力業務は道路の設計で、その
策においてそれらの保全策や、社員の安
そのほか、データのバックアップは従
ほか土地造成、許認可申請や河川(水工)、
否確認・連絡を行える仕組みの確立を重
来から対策を講じておりましたが、被
トンネル、橋、公園の設計や関連するシ
点的に検討しました。
災時に本社を使えない場合などに備え、
ステム開発などを手がけております。日
事業継続対応としては、前述のような
拠点間でバックアップを取るなど対応
本では設計と施工は別業者が担当してい
公官庁からの緊急要請への対応と、自社
を強化することを決めました。総じて、
るため、建設工事は行っていませんが、
の設計事業の再開について、実現可能性
BCPは地震災害だけでなく、不慮の事
設計を手がけた社会インフラは全国に存
を探りながら具体的に対応の検討を進め
故などへの対応にも共通する部分がある
在し、それらの品質に対し一定の社会的
ました。その際に、平常業務の陣頭指揮
ということに気付けたのもよかったと思
責任ある立場であると考えております。
をとっている私が不在の場合でもどのよ
います。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
うに指揮系統を維持していくか、またそ
のために事前に対策を講じておくべき項
目を明らかにしました。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
従来より、新潟県中越沖などの大災害
更に災害直後はまず災害時の緊急出動
BCPを策定したことで、災害時の心
時には行政の出動要請を受け、自治体、警
要請に対応することが求められますが、
構えができましたし、また災害対応の備
察、建設会社の方と共同し、道路などの危
それが一段落し終えたところで、平常時
えとして何をすべきかが明確になり、危
険箇所を判断し、立ち入り禁止地区を定
の土木設計コンサルタント事業を再開で
機管理への第一歩を踏み出せたと思いま
めたり、処置の必要性判断などの対応に
きるように備えておく必要があることを
す。仕事柄、災害発生直後の時期に、被
従事しており、被災の現場を目にする機
確認し、事業再開に向けた環境復旧の方
災した道路や橋りょうの使用の可否を判
会が多かったのですが、どこか別世界の
針についても検討しました。
断するなどの社会的貢献を求められる立
ことのように感じていたかもしれません。
東日本大震災の際には千葉県と北上川
などに出動しましたが、自社の事務所内
Q
場にあります。社内全体にそういう自覚
何か新たな気づきはありましたか?
が芽生えてきたのでしっかり取り組める
ようにして、お客さまに安心していただ
けるようにしたいと思います。
でも棚が倒れるなどの被害があり、その
最 初 はBCP策 定の仕組みについ て、
ような中で緊急対応を行う大変さを実感
概念は分るのですが具体的にどう作るの
しました。
か、理解するのに苦労しました。またメ
そんな折、東京測量調査設計事業協同
ンバーは皆、多忙な仕事と並行していた
組合において地震被災のビデオを見る機
ので、両立はやはり大変だったと思いま
称号
株式会社寿エンジニアリング
会があり、東京都の本事業のことを知り、
す。それにも関わらず真摯(しんし)に
できる対策は講じておきたいと考えた次
BCP策定に取り組んでくれたことにつ
東京支店
東京都千代田区東神田1-10-4
新川ダイユウビル 10F
第です。
いては非常に感謝しています。
設立
1990年8月
資本金
1,000 万円
従業員数
6人
代表者
代表取締役社長 齋藤まり子
事業内容
土木設計・システム開発・データ
入力(業種:建設コンサルタント)
URL
http://www.kotobuki-eng.co.jp/
Q
BCP検討の過程や重要と判断した
点を教えてください。
対象事業は基本的に一つですが、事業
今回、これまで危機管理について漠然
と意識はあっても、細やかな対応ができ
ていなかったことに気付きました。まず
オフィスの整理整頓をしっかり進め、大
会社情報
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
83
59
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社新発設計
上水道のライフライン設計業務を
早期に立ち上げ
対 象 事 業
設計事業、共同受注測量事業、緊急支援事業
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●社員の50%は出社困難
●サーバー、PC、複合機、測量機器は損傷
●社外の社員とは連絡取れず
対 策
Q
●防災・救命訓練への積極的参加、救急箱の充実
●機器等の固定
●オフィス内の整理整頓の徹底、不用物の廃棄
●迅速・適確な状況把握
●状況に応じた、必要要員と必要機器の調達
●有事の際の組合および組合員会社15社との連携体制を確立し、活用する
事業内容を教えてください。
代表取締役
髙橋 英明
事業としての共同受注測量事業、③同じ
震対策をどのようにするかは、比較的参
く組合連携事業である緊急支援事業の3
考例がよく出ておりますから、当初は簡
創立以来、一貫して、東京都内全域に
事業をBCP対象としました。東京湾北
単かと思いましたが、現実にそれらを全
わたる上水道の管路布設設計を行ってお
部地震を想定し、①に関しては、定めら
て耐震化・固定化するとなると、オフィ
り、お客さまからも技術的に高い評価を
れた手順と記入フォームによる被災時の
スの壁や床に傷が残るとか、機器を固定
受けております。現在では、管路の耐震
社内および現場の迅速・適確な状況把握
してしまうと使い勝手が悪くなるとかの
化設計・施工管理にも業務の幅を広げ、
と、状況に応じた技術要員・必要器材の
問題があり、具体的な方法までは決定で
社会貢献事業の一翼を担っております。
調達を実行することにより、被災後2週
きませんでした。しかし、BCP策定の
また、その他にも、一般の地上測量はも
間で60%の仕掛設計業務再開という高
この時にやらなければと思い、今回、オ
とより、最近は公園、学校グラウンド施
い目標を実現できる対策としました。
フィス移転を機に環境を整えようと決意
設の設計も手がけております。
また、②に関しては、当社が所属する
をしました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
練馬測量業協同組合との有事の際の相互
連絡・支援システムを構築することで、
相互扶助の基本精神に基づき、被災によ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
仕事の関係上、過去の災害においては、
り中断した共同受注測量事業を適時に立
年度末の非常に忙しい時期に BCPの
復旧活動に少なからず従事してきました
上げます。
策定をするということで社員に参加をし
が、今まで意識はしていても防災対策は
さらに、③に関しては、行政(練馬区)
てもらったわけですが、最初は乗り気で
全くと言っていい程講じてきませんでし
から組合への緊急測量等の緊急支援要請
なかった者が、ステップが進むにつれ、
た。まして、BCPという言葉すら知り
に対しても、組合に対し、当社社員の
その重要性を理解し、徐々にモチベー
ませんでした。
安否状況および被災状況・業務遂行能力
ションが上がっていきました。また、社
今回、BCPについて紹介され、地震
に関する情報を迅速に提供することによ
員の防災意識向上においても、とても意
とインフルエンザを現実に体験してきた
り、スムーズな受け入れを可能とします。
義がありました。最近は同業者に、今こ
ことにより抱いていた経営的な危機感を
再認識いたしました。また、当社では経
営者を含め社員の若手化をしていかなけ
Q
のようなことをやっておりますよ、と話
何か新たな気づきはありましたか?
をしております。
ればならない時期に来ており、そのため
当社のBCPは、東京湾北部地震を想
には、社員の団結とモチベーションをど
定していますが、対策を検討するにあた
のように上げていくかが数年来の課題で
り、問題は大きく二つありました。第1
した。これらの課題を解決するには、こ
に社員及び家族の安否確認。第2は地震
の BCP策定が今一番にやるべき事では
発生時におけるシステムデータの破損で
ないかと思い、即決で策定することに致
した。有事の際の混乱した中で、この二
しました。
つの課題に対して、どのような実行可能
称号
株式会社新発設計
本社所在地
東京都練馬区練馬1-5-4
な解決策があるのかを考えるには苦労い
設立
1978年5月
資本金
1,500 万円
りで、なんとか第1版としての解決策を
従業員数
20人
代表者
代表取締役 髙橋英明
まとめることができました。
事業内容
土木設計、 測量
URL
http://www.shiba-sekkei.co.jp/
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
今回は①自社単独事業である設計事業
(上水道管路設計)、②所属組合との連携
84
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
たしましたが、参加した社員たちの頑張
また、社内の家具、什器、備品等の地
会社情報
60
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
河川・地上測量
被災シナリオ
●技術者5人外出中2人負傷
●現場との連絡困難
●サーバー内の情報資産が破損
対 策
株式会社城南
河川増水避難勧告の資料となる
河川測量を守る
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●食料と小銭、手動充電器付携帯ラジオを常に携帯する
●各種耐震対策を実施する
●技術部長と連携して社員の安否情報を収集し、稼働可能な要員を把握することにより、
作業再開に向けて行動予定の見直しを行う
●サーバー破損の場合は代替機器を使用する
代表取締役社長
水本 章浩
Q
事業内容を教えてください。
た、この事業は長期にわたってサービス
重ねた結果、通信の確保が当社の復旧に
を提供する当社の売り上げの柱でもあり
与える影響が極めて大きいことを再認識
当社は創業50年を迎える測量会社と
ます。よって今回 BCP策定の対象事業
しましたので、対策を強化していきます。
して、河川測量と地上測量全般を行って
とし、中でも平常時に行う低水流量観測
います。内容は基本測量、公共測量、民
を優先して対策を検討しました。
間測量、調査に大別されます。
測量事業を継続するためには技術者、
なかでも河川測量を得意としており、
機材、車が必要で、観測結果のデータも
家族が災害に対する意識が高いため、
平時の河川の流量を定期的に観測してお
重要です。しかし保管場所等の関係で機
普段から家族の連絡先メモ(今回策定し
く低水流量観測と、増水時の流量を観
材と車は破損の可能性が低いことが確認
た携帯用BCPのようなものです)を持
測する高水流量観測によって得たデータ
でき、総勢10名という少人数で事業を
ち歩いており、外出時には水や食料や小
は、大雨等の増水時に自治体が避難勧告
行っている点を考慮し、主に社員を守る
銭を常に携帯するようにしています。そ
の発令を検討するときの資料となってい
対策を検討しました。
れでも、被災の想定をしないと、災害時
ます。さらにこれら報告結果の蓄積が治
さらに、お客さまからお預かりした
に何をすべきかが全く見当がつかないこ
水事業の検討資料になります。
データや測量データのバックアップにつ
とがわかりました。
いては大地震を想定してさらなる強化を
普段は予期もしていなければ、準備も
検討していきます。
しておらず、考えることさえありませ
また、当社では加盟している東京測量
んでしたが、改めて真剣に考えることに
長年、河川の流量観測を手がけてきた
調査設計事業協同組合が受注した共同受
より、災害への対応力を身に付けたいと
せいか、防災の意識は高い方だと思って
注案件にも参加しておりますが、今回の
思います。今までは自分の身を守ること
いますが、これまでは防災訓練を実施す
検討によって、河川測量の復旧で確保し
だけでしたが、このプロジェクトにより
るくらいで、防災対策は特に行っており
た経営資源で並行して対応できることが
会社の事業継続を強く意識するようにな
ませんでした。
確認できました。
り、災害に強い会社にしたいと考えてい
Q
今までに何か防災対策などは
おこなわれていましたか?
ところが3年前に落雷によりサーバー
がダウンし、また雨漏りによる漏電も発
生して、電気系統のトラブルにより業務
Q
何か新たな気づきはありましたか?
測量には大きな装置は必要なく、技術
てデータのバックアップ取得の必要性を
者と器材があれば何とかなるものなの
認識し、実施するようになりました。
で、まずは社員の身の安全と安否確認が
今回、漏・停電だけでなく大地震の発
事業継続を左右すると言っても過言では
生の可能性も高いと気になっていまし
ありません。
た。
まして当社は、10人規模の会社なの
策定されたBCPの内容を
教えてください。
BCPを策定した感想を
お願いします。
ます。
に支障が生じた経験があり、それによっ
Q
Q
で、1人が業務をできない状況になった
ときの事業への影響が非常に大きいこと
に気付きました。社員の身の安全がいか
当社は河川測量については長年の実績
に大切であるかを痛感しました。
によって蓄積されたノウハウをもってお
また、以前よりそのように感じていま
り、大きな強みだと考えております。ま
したが、今回BCP策定のために検討を
会社情報
称号
株式会社城南
本社所在地
東京都品川区南大井3-4-8
設立
1961年10月
資本金
2,160万円
従業員数
10人
代表者
代表取締役社長 水本章浩
事業内容
基本測量、公共測量、民間測量、
調査
URL
http://www.jonan.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
85
61
取 組 事 例 ●
Case Study
新栄測量設計株式会社
区への支援として
被災直後の査定測量を行う
対 象 事 業
測量事業(自社受注・共同受注)
被災シナリオ
●社屋は一部損壊、室内乱雑化、立入りは可能
● PCや複合機の大半、測量機器の半数以上が損壊
●データマスターⅢ内の保存蓄積データが破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●オフィス安全化(ガラス飛散防止、棚の固定・連結)
●機器類の設置・保管方法の見直し(場所、配置、固定)
●データバックアップ方法の改善
●携帯メールなどによる安否・被災状況連絡体制の構築
●現場作業員の被災時対応方針の作成
●作業計画の見直し検討を実施(人員不足の場合、協力業者に応援を依頼)
●顧客との作業計画の打ち合わせを実施
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
羽田 慎一
BCPの対象事業を、本業である測量
取り組むことになったため、特に文書化
事業(自社受注・共同受注)と、災害時
作業を一手に引き受けた事務局には負担
当社は測量業を営んでいます。事業と
の緊急時支援要請の受入(自社単体・組
がかかっていたと思います。
しては、一般測量、用地測量といった測量
合経由)の両方としました。
他方で、新たな気付きとして、これま
事業のほか、補償コンサルタント事業や建
当社の事業は一つですが、自社単独で
でも地震・津波のニュース映像などは見
設コンサルタント事業を手掛けています。
受注している案件と共同受注案件に大別
たことがありましたが、今回コンサルタ
主要顧客は東京近郊の官公庁であり、なか
されます。また、災害時には行政から、
ントの方の説明をうかがい、自社につい
でも地元の江戸川区に対しては、近隣の同
緊急時支援として被災地の現地走査作業
て検討を進める中で改めてご提供いただ
業者と構成した「協力会」を通じて、地場
の要請があると想定しており、区から地
いた映像を拝見してからは、悲惨さが身
の業者として実績を積んでまいりました。
元企業である当社に(「協力会」経由で)
に迫ってきて軽く考えてはいけないと思
要請がある場合と、組合経由の場合が考
うようになりました。BCP策定に取り
えられます。これは、自社単独の動きの
組んで、こちらの意識が変わったという
みならず団体の一員としての非常時対応
ことだと思います。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
2年ほど前に知人企業がTVで取り上
を行うことであり、組合の共同受注案件
げ られ た 際 にBCPと い う 概 念 を 知 り、
の信用力向上に貢献でき、ひいては自社
平成21年の新型インフルエンザ大流行
の競争力にもプラスになると思います。
時には、区から事業継続に関する危機管
また、災害時の緊急要請に対して、両
これまでは個々人が資料を作成して隣
理体制の確認を受けたこともありまし
方のケースを一元的に検討することで、
の人などに見せることはあっても、オー
た。地震については、オフィスレイアウ
自社と組合の相乗的な相互扶助の在り方
プンな場で討議と文書化を同時進行で
トの大幅見直し、通路の確保、背の高い
を確認することができると考えています。
行ったことはなかったので、なかなか面
棚や荷崩れを起こすような物を極力置か
ついてはこれらの要請に迅速に対応で
白い経験になり、その後会社の風土とし
ないようにするなどの対策は行っていま
きるよう人員とデータおよび機器につい
ても、検討課題を明示してオープンな場
したが、特に防災対策を重視していたわ
て対策を検討していきました。
で議論を行うことが定着するようになり
けではありませんでした。
ただ3月11日以降、BCPの必要性を
強く認識するようになりました。なぜな
Q
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
ました。
何か新たな気づきはありましたか?
今後は演習を行う時に、例えば実際に
避難経路の確認をするなどの体を動かす
ら、お客さまや時代の要望の変化により、
苦労した点としては、こうした理論に
ような実践的要素を取り入れて、より現
今や有事でもできるだけ早い復旧を実現
基づく検討作業に社員が慣れていなかっ
実味を感じつつ取り組んでいくことを考
する必要があるからです。これに応える
たことです。営業の役割も担う私はとも
えています。
べくBCP策定に取り組むことは、平時
かく、それ以外の社員は日ごろ論語調の
からの体制のアピールにもなりますし、
文書に親しんでいるわけでもなく、最初
今回の取組のように組合と連動を図るこ
の頃は、アジェンダやコンサルタントか
称号
新栄測量設計株式会社
とで、組合や、他社との機材・人の相互
ら受け取る資料を読んで理解はできるも
本社所在地
東京都江戸川区鹿骨1-17-8
応援も可能となると考えています。
のの、そこから生まれる考えを他者に伝
設立
1964年4月
資本金
1,300万円
従業員数
15 人
代表者
代表取締役社長 羽田慎一
事業内容
測量
Q
86
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
えるには、文書としてどうまとめたらい
いのかなど、戸惑いがかなりありました。
また、通常業務と両立してBCP策定に
会社情報
62
取 組 事 例 ●
Case Study
関測量事務所株式会社
組合・協力会社との連携で
測量業務の早期再開
対 象 事 業
測量事業
被災シナリオ
●技術者1名負傷、出社困難
●社屋、倉庫内散乱、キャビネット一部転倒
●サーバー破損、デスクトップ PC、複合機全損
●測量機器など破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●防災教育の徹底
●現場での避難場所の確認
●キャビネット、PC等の転倒、落下防止策、固定化
●バックアップデータの保護保管
●委託先、外注先の複数化
●代替要員のアサイン、協力会社要員への協力依頼
●予備機材(PC)の使用、代替手順に基づいた回復
事業内容を教えてください。
ての経営資源に対して被害を事前に防ぐ
ための対策について考えました。
代表取締役
関 雅公
たいと思います。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
当社は主に測量事業を行っており、そ
その上で被害が発生した場合、また社
のうちの調査業務では土地建物の登記簿
会インフラの停止、特に電力・交通機関
などの調査・埋設物インフラ調査・土地
の停止、道路の交通規制に対していかに
いざという時にすべきことが事前に分
履歴など、さまざまな測量・開発計画等
事業を継続するか、人の面では平時にも
かっていることで精神的に安定し、落
の基礎資料を提供しています。
協力をいただいている協力会社社員の応
ちついて行動できる自信につながりまし
また申請手続き業務では農地転用・国
援を第一に考えました。
た。
有地売払い・道水路用途廃止・公共用地
また、今回の BCP策定は組合と合同
社員に避難場所・現場での安全確保や
寄付・道路位置指定(廃止)・開発行為
で行ったことで、組合との連携を今まで
安否の連絡方法、食料などの備蓄の確保
許可等の申請手続きを知識・経験を積ん
以上に密にすること、すなわち他の組合
などを知らせることによって、災害時に
だ技術者(測量士)が迅速かつ正確に行っ
員の協力も含めた対策を講ずることに
おける大きな安心感を与えられたように
ています。
よって、1社単独での BCP策定よりも、
感じます。これらを通して社内の結束が
より確実に社員、事業、会社を守ること
強化されると思います。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
これまでは特別な防災対策は行ってい
ませんでしたが、東日本大震災と福島第
ができるBCPになったと思います。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
一原発の事故という未曾有の大災害を目
コンサルタントに現場点検をしていた
のあたりにして事業の継続、ひいては会
だいた際のコメントや予防・低減策の検
社の存続ということに非常に大きな危機
討から、安全性の確保・向上には労力と
感を覚えていました。
費用が掛かることが良く分かりました。
このような状況の中、普段から漠然と
その後、実際に防災用品などを見にいっ
考えていた防災設備などを積極的に見直
たり調べたりしましたが、その種類の多
し始めた矢先に、今回東京都が支援して
さに驚くとともに、非常に高価であるこ
下さる BCP策定の取組があることを知
とも知りました。けれども代用品や既存
り、また当社が組合員となっている練馬
のものの利用方法を少し工夫することな
測量業協同組合も参加することになり、
どによって、十分効果があるということ
組合とあわせて取り組むことにしまし
も分かりましたし、また、材料の購入先
た。
の複数化や代替品の利用なども有効だと
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
気付きました。
会社情報
今回の BCP策定を通して、人的被害
称号
関測量事務所株式会社
本社所在地
東京都練馬区春日町6-16-20
が最大の問題点であり、常日頃より防災
設立
1956 年4月
資本金
4,000 万円
従業員数
5人
代表者
代表取締役 関雅公
主に練馬区内で測量事業を行っていま
に備える意識と心構えが大切であるこ
すが、東日本大震災ではオフィス内で軽
と、それには防災教育が重要であるとい
微ですが被害が出たこともあり、今回想
うことを改めて実感しました。今後は社
定した地震ではまず人命を第一に、すべ
内でのさらなる意識向上を目指していき
事業内容
測量および調査・設計事業
URL
http://www.seki-sokuryo.co.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
87
63
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社測技社
被害の迅速な把握で
資源の早期確保による再開
対 象 事 業
測量事業(共同受注含む)
被災シナリオ
●帰宅困難者および負傷者3割
●現場作業中の技術者とは半数が連絡不可
●サーバー・PC・測量機器が落下し一部破損
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●測量現場近辺の避難場所の事前確認
●事務所オフィス家具、測量機器の転倒・落下防止策の実施
● IT機器関係は落下防止策、固定、設置方法の見直し
●可能な技術者が会社に連絡、対応策検討、代替者を現場に派遣
●測量機器は使用可能な機器を点検後使用
● IT機器は通電後、使用可能な機器を確認、業務再開
事業内容を教えてください。
代表取締役
太田 寛人
社内にいる場合は緊急避難場所および避
ていなかったため、当初あまり実感があ
難場所は特定できますが、現場において
りませんでしたが、今回検討を進めてい
民間の建設会社、設計会社等から測量、
は事前に近くの避難場所の確認と避難経
く中で改めて連携の重要性を認識するこ
調査および土木・建築設計、監督、製図
路を把握することで最低限、身の安全を
とができました。検討したことについて
業務を受託し事業を行っています。また、
図れるようにしました。その後に各自が
訓練も含めて取り組んでいかなければと
練馬測量業協同組合の組合員として練馬
安否確認責任者に安否と今後の行動予定
考えています。
区からの共同受注測量業務も行っていま
を連絡するように決めました。
す。測量事業は基準点測量、地形測量、
また、事業の再開には測量機器と測量
応用測量と幅広く行っており、また調査
技術者、車が不可欠ですので機器の破損
では地積調査を行っています。
防止策の徹底や応援技術者による代替、
経営資源分析および事業継続計画の検
エコアクション21の認証を取得し、
空き車両の確保による技術者の移動(送
討・作成、ならびにBCP文書の作成は
平成19年度より環境への取組みを積極
迎)を迅速に行えるような対策を立てま
個別コンサル形式で行っていただいたこ
的に行っております。
した。あわせて事務所内の被害を低減す
とで事前に設定した被災シナリオに基づ
るために、棚の固定、駐車場も含めて機
いて、自社の業務で想定されるリスクに
材の落下防止対策などを実行に移してい
合った対策を立てられたと思います。
く予定です。
また、今回作成したBCPでは地震だ
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
これまで防災対策などは特に行ってい
ませんでした。けれども東日本大震災を
受け、また今後、首都圏における大規模
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
けでなく、他の緊急事態にも応用できる
仕組が構築できたと思っています。
今後はPDCAを繰り返すことで現実
地震の発生確率が高いと想定されている
これまでは地震をはじめとして災害な
的にかつ継続していけるものにしたいと
こともあり、こういった非常事態を身近
どが発生した際、会社はもちろん、個人
考えています。
なものとして考える必要が急務であると
としてどう行動すれば良いかを明確には
感じていました。
していませんでした。そのため最初のう
そうした矢先に、当社が参加している
ちは具体的に何をどうすれば良いのかに
練馬測量業協同組合が BCPを策定する
ついて、参加メンバーの間で意見や考え
ことになり、自社はもちろん、組合を核
が食い違う場面があり、それらを一つず
に地元業者で連携し、災害に強い仕組み
つ整理し決定していくことは、容易では
を作りたいと考え、BCP策定に取り組
なく、なかなかスムーズには進みません
むことにしました。
でした。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
また人命を守ることなどはBCP以前
の当たり前のことと考えていましたが、
その方法についても今回の検討の中でオ
地震 に 対 するBCPを 策 定 し ま し た。
フィス、現場、外出先等によってそれぞ
当社の事業は大きく現場での測量業務と
れ異なり、それぞれについて対策を考え
社内でのデータ作成に大別できます。就
なければならないことも分かりました。
業時間内は社員のほとんどがいろいろな
これまでは災害発生時に組合・組合員
現場に出て作業をしています。そのため
間で業務連携などについて特に検討をし
88
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
株式会社測技社
本社所在地
東京都練馬区富士見台2-40-5
設立
1982年11月
資本金
1,000 万円
従業員数
16人
代表者
代表取締役 太田寛人
事業内容
測量事業(基準点測量、 地形測
量、 応用測量、 地積調査ほか)
URL
http://sokugisha.co.jp
64
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社知財翻訳研究所
特許翻訳を継続し、
出願人企業の知的財産を守る
対 象 事 業
翻訳事業/特許出願用日英翻訳(図面を含む)サービス
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●社内 ITインフラおよび PCメール使用不可
●被災当時社長・専務は外出中
●サーバーのHDDが破損
対 策
Q
●BCPシステム、社内外関係者との緊急連絡網の構築
●主要取引先との事前対策の合意形成
●緊急業務復旧における役割分担・協力体制の明確化
●社内および社外関係者との緊急連絡実施
●ファイル(紙)の整理による案件状況の早期把握
●業務経験者らによる部門間支援
●バックアップシステムからの復元と予備機への切替
事業内容を教えてください。
代表取締役社長
浜口 宗武
顧客への責任を果たす③地域社会 ・ 周囲
ぞれの立場で、事業継続に対する強い問
への貢献を目的に BCP を策定しました。
題意識を既に持っていたことです。事業
国際特許の申請時に不可欠な特許申請
対象は、当社の一番の柱である「特許出
継続のキーとなる業務が何なのか、どこ
明細書など知的財産関連文書を専門に扱
願用日英翻訳(図面作成を含む)サービ
に脆弱性がありそれをどうカバーするの
う翻訳会社です。従来、国際特許の申請
ス」です。本サービスには高品質と納期
か、「他人任せではなく自分が責任者と
は欧米向けが中心で、私たちの仕事も日
厳守が常に求められており、それらが守
して取り組む」というメンバーの強い意
-英の翻訳がほとんどでしたが、近年は
れないと特許権取得の可否に影響を及ぼ
欲に接し、このタイミングでBCP策定
中国語をはじめアジア言語への翻訳需要
す可能性があります。被災下で事業を継
に取り組んでよかったと思いました。
も増えています。特許翻訳には、語学力
続するには仕掛データと経験豊富な人材
のほか技術面・法律面でも高度な専門性
が重要と考え、対策を検討しました。
が求められますが、当社は正社員翻訳者
事業継続策としては、各担当チームで
による社内翻訳体制をもち、強く広い権
は案件状況の早期把握を行い、システ
現場のリーダーたちと話し合いながら
利を表現する高品質翻訳をご提供してい
ムのバックアップデータをサーバーから
一つ一つ認識の共有を図っていったた
ます。
ノートPCに繋ぎ替えたBCP(緊急用)
め、経営陣の思いと現場の現実的な視点
システムや携帯メール、自社ウェブサイ
の双方を反映したBCPが策定できまし
トにて早期に第一報を発信します。それ
た。策定したBCPの内容・方針を全社
から関係者間で状況説明、納期調整、担
員に周知し、また定期的に演習を行っ
一昨年に制震ビルにオフィスを移し、
当者変更などを行った上で、案件の作業
て各自の練度を高め、組織としてより
有事の初動対応の文書化も行っていまし
優先順位に従い納期厳守を実現します。
迅速な対応ができるようにしていきたい
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
た。しかし東日本大震災をきっかけに、
被災下で事業を継続することの困難さと
重要性を改めて認識し、有事の初動対応
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
だけでは不十分と考え、BCP策定の取
特許翻訳は、1件1件異なる内容を、
組を開始しました。知的財産は大企業に
高度の専門性を備えた担当者が行うもの
とってももちろん重要ですが、中小企業
ですので、そう簡単には代わりが利きま
にとっては時として会社の将来の生命線
せん。それでも被災時に事業を継続する
ともなる貴重な資産です。このような重
ためにはどんな準備が必要か、という点
要な資産をお客さまからお預かりする立
が悩みどころでした。そのため、現場
場として、専門家の助言を受けて実効性
のリーダーたちが策定プロジェクトメ
の高い BCPを作ろうと、東京都の募集
ンバーとして長時間の検討会に毎回フル
に応募しました。
参加し、検討会後も業務の見直しや対策
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
の詳細な煮詰めを繰返し行いました。短
期集中での策定となり、通常業務で忙し
い中、メンバーもその周囲の社員も大変
地震を想定し、①社員および関係者(家
だったと思いますが、皆非常に前向きに
族、協力翻訳者、協力会社等を含む)の
取り組んでくれました。
安全確保と支援②社業を安定・維持し、
嬉しかったのは、メンバー全員がそれ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
と思っています。また、今後は、今回対
象としなかった事業についても検討を進
め、全社一体としてのさらなる事業継続
能力向上を図っていく所存です。
会社情報
称号
株式会社知財翻訳研究所
本社所在地
東京都新宿区西新宿6-10-1
日土地西新宿ビル 7F
設立
1976年12月
資本金
1,000 万円
従業員数
79人
代表者
代表取締役社長 浜口宗武
事業内容
知的財産関連書類の翻訳
(情報サービス業)
URL
http://www.chizai.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
89
65
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
測量事業
被災シナリオ
●本社建物が一部損壊
●測量機器・PCの20%が破損
●一部データが消失
対 策
Q
株式会社東邦地形社
いち早く復旧し、
官庁の緊急調査依頼に応える
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●携帯メールを中心とした緊急連絡網の整備
●外出時の緊急行動方針の決定
●データバックアップシステムの構築
●発電機による電力の確保(携帯電話・機器の充電式電池)
●さいたま支店での代替作業
●組合事務局との緊急時連絡(被災状況、緊急支援)
●共同受注案件に関する他組合員との進捗・被災状況共有
事業内容を教えてください。
昭和25年の設立以来、測量業として
約 60年の実績があり、今では測量事業
と地理情報サービス事業を行っておりま
代表取締役
下重 勝雄
災害に遭った時の心構えをしっかり持つ
現場やお客さま先にいることが多いので
ようにしたいとも考えました。
すが、あらかじめ被災を想定し対策を考
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
えておくことにより社外の社員はもとよ
り、社内にいる経営管理者も慌てないで
冷静に考え、行動できると思いました。
す。測量事業は、長期にわたり携わった
大災害発生時にも「社員の安全を第一
本社のある渋谷駅周辺のビルは倒壊の
港北ニュータウンや、竜ヶ崎ニュータウ
に確保する」「お客さまにご迷惑をおか
リスクが小さいということが分かりまし
ンでの業務経験を生かし、地上測量全般
けしない」との思いのもと策定を進めま
たので、被災時に本社にいる社員は基本
(骨格測量、路線測量、現況測量、用地
した。測量事業の継続には、人、機材、デー
的に本社に留まり、待機することにしま
測量、区画整理等)を、東京、千葉、茨城、
タ、車両が必要不可欠であり、まずはそ
した。本社は組合事務所に比較的近いの
埼玉地域で行っており、また地理情報
れらをどうやって守るかについて検討し
で、被災時の組合への支援や組合事務所
サービス事業は、GISエンジンを導入し、
対策を決めました。
の代替拠点になることも重要と思ってい
業務支援システムの企画・提案・開発や
具体的な事業復旧については、重要顧
ます。
情報処理サービスを提供しています。
客や組合への緊急連絡により、お互いの
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
被災状況を共有し、今後の業務対応方針
を協議します。その際、技術者などが不
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
足する場合は協力会社や組合に応援を依
測量業の特性で作業現場が関東の各地
東日本大震災において、7、8階オフィ
頼、本社での作業が難しい場合はさいた
に散らばっている状況に対して、被災時
スでは棚などが動いたとか、現場に出て
ま支店を活用するという代替策を取るこ
における対策を人、機材、データ、車両
いた社員との緊急連絡網がうまく機能し
とにします。さらに停電中にも測量用発
等の観点から具体的に定めることができ
なかったなどの問題が生じ、社員の安全
電機を用いて携帯電話や IT機器などの充
たと思います。ただBCP文書の対策は
確保や安否確認の仕組みの確立の重要性
電と夜間照明を賄う予定です。
あくまで1つのパターンであり、実際は
を痛感しました。
以上の取組により、災害時にもいち早
その通りになるとは限らず、臨機応変な
また、本社が渋谷にあり、大災害時に
く測量業務を復旧し、受注済業務を再開
判断と行動が不可欠と思っています。そ
交通まひの影響が大きいため、さいたま
するとともに、組合と連携して官公庁か
のためにも、携帯BCPに基本事項を盛
支店を分散拠点として活用することもイ
らの緊急要請にこたえるつもりです。
り込むことと全社員対象の訓練が重要と
メージするなど、何らかの手を打たねば
と思いつつ、具体的な準備はできていま
せんでした。
Q
思っています。
何か新たな気づきはありましたか?
ちょうどそのような時に東京測量調査
最初は BCPそのものを分かっていな
設計事業協同組合から東京都BCP策定
かったのですが、プロジェクトが進むう
支援事業への参加の呼びかけがありまし
ちに分かってきたというのが本音です。
た。実はBCPそのものは分かっていま
現場点検を行って、社内は危険が一杯
せんでしたが、自分たちがやろうとして
だということを改めて認識しましたが、
いたことと同じと理解しましたので直ち
少し考えればそれほどお金をかけなく
に参加を決めました。参加にあたっては、
てもいろいろな対策を打てるということ
災害発生時の行動計画を作成する中で、
にも気付きました。技術者や営業は測量
90
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
会社情報
称号
株式会社東邦地形社
本社所在地
東京都渋谷区神宮前6-19-3
設立
2006年11月(創業1950年6月)
資本金
1,200万円
従業員数
18人
代表者
代表取締役 下重勝雄
事業内容
測量業(骨格測量、 用地測量、
確定測量)
URL
http://www.tohogis.co.jp
66
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社東京地図研究社
地図情報処理業のバトンを
在宅作業者に託す
対 象 事 業
情報処理事業
被災シナリオ
●本社は半数、飯田橋支所は全員が出社不能
●府中本社はオフィス内散乱、飯田橋支所はビルに入室不可能
●PC7台破損、サーバーディスク1台故障、VPN 切断
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●飯田橋支所のビル管理体制確認および入館手段の検討
●在宅作業担当者の特定と当該環境の構築
● GIS用バックアップ機の設定
●交通機関停止の際は徒歩もしくは自転車にて出社
●顧客データのバックアップからの復元
●在宅環境における作業継続
代表取締役社長
塚田 野野子
Q
事業内容を教えてください。
度になりますので情報の鮮度が命となり
ばと思っています。これまでは日常業務
ます。首都直下型地震を想定した場合、
を優先するあまり、「被災したらどうな
当社は創業以来半世紀にわたって、測
お客さまのご厚意により、ある程度の猶
るか?」という視点で物事を捉える機会
量、調査、地図編集、データ作成、デー
予はいただけるとしても、3週間以上の
がなかったのですが、今回はじっくり考
タ運用など、時代とお客さまのニーズに
業務停止は許されませんので、目標復旧
えるきっかけになりました。
合う技術とサービスを展開しながら、さ
時間を2週間としました。
集合研修では他社の状況を知ることが
まざまな地図や地理空間情報に関する
当事業の特徴は、各種データとPCが
でき、非常に良い刺激になりました。成
業務を行ってきました。昨今では、GIS
動作する環境さえあればある程度継続可
功例だけではなく失敗例からも学ぶべき
(Geographic Information System:
能であることです。この点に着目し、電
点があると思いますので、多くの事例
地理情報システム)の設計・構築・運用
源の復旧とともに、即座に着手できるよ
を紹介していただけるとありがたいです
や、お客さまからお預かりした地図デー
う、あらかじめ在宅作業が可能な従業員
ね。
タのメンテナンスといった情報処理事業
を特定しておき、そのために必要な作業
の占める割合が増えております。
環境を構築することにしました。現在、
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
事業拠点は府中本社と飯田橋支所の2カ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
所にあり、双方でバックアップを取って
今回は、策定メンバーたちと議論し、
いますので、完全にデータを失う事態は
意識を共有できたことが大きなステップ
一昨年の新型インフルエンザ流行を
回避できると考えています。在宅作業者
につながりました。まずは考えずに取り
きっかけに、BCPについての関心が高
へのデータ提供手段は、メールを想定し
組んだ方が良いと思います。改善点を認
まったのですが、どうしても本業が優先
ていますが、通信インフラが回復しない
識するだけでも効果があります。昨今、
されますので、具体的な検討がなかなか
場合は外部媒体にて自転車、もしくは徒
日増しに災害に対するひっ迫感が高まっ
進まない状況でした。そんな折、東日本
歩輸送することにしました。
てきていますので、検討がひと段落して
大震災に直面し、事前に想定していな
かったこともあって、帰宅困難者の対応
や外出者との安否確認など、緊急時の対
Q
から対応策を講じるのではなく、同時進
何か新たな気づきはありましたか?
応がうまく機能しませんでした。この経
ハードとしての社屋の構造にリスクが
験を受けて、本格的に改善する必要があ
あることを再認識しました。今回対象と
ると思っていたところ、当支援事業の
なった情報処理事業については、在宅作
存在を知り、これを機にBCP策定を通
業という手段で継続する計画を立てるこ
して自社を見つめ直し、強み・弱みをあ
とができましたが、地図調製業で必要と
りのままに認識しようと参加を決めまし
なる大型プロッタなどの装置を、脆弱な
た。
環境でどう保護していくのか、費用対効
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
果はどうか、また、予防・低減策として
機器設備を完全に固定した場合、可動性
や柔軟性とのジレンマをどう解決してい
今回策定対象とした情報処理事業のう
くのかなど難しい問題が多々あります。
ち、地図データのメンテナンス業務の納
ここは一気に全てを解決するのではな
期は、平均2カ月、短いと1~2週間程
く、少しずつベターな策をとっていけれ
行で対策を進めていくこと、加速度をつ
けていくことが大切だと感じました。
会社情報
称号
株式会社東京地図研究社
本社所在地
東京都府中市四谷1-45-2
設立
1962年3月
資本金
1,000 万円
従業員数
33人
代表者
代表取締役社長 塚田野野子
事業内容
情報処理、地図調製、測量・調査
URL
http://www.t-map.co.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
91
67
取 組 事 例 ●
Case Study
平木国際特許事務所
災害時にも、
顧客の一刻を争う出願を行う
対 象 事 業
工業所有権取得代理事業
被災シナリオ
●社内 ITインフラおよびPCメール使用不可
●被災当時所長、副所長2名が外出中
●一部データ破損・書類の一部散逸の恐れ(預かり情報含む)
対 策
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●所員安否確認システムの導入
●オフィス安全化対策・備蓄品の再整備
●関西オフィス担当者向け「災害時マニュアル」を作成
●関西オフィスからの緊急時顧客連絡
●早期の被災状況および顧客連絡結果の確認により、緊急案件を切り分け、
緊急案件については手作業により対応
所長
平木 祐輔
Q
事業内容を教えてください。
対象事業については、権利化に至る各
くのリスク要素の一つ一つを洗い出す大
段階における、業務停止時の顧客損失の
変さはあったと思います。しかし、工業
当特許事務所は、所長が特許庁におい
大きさを検討して選択しました。対象と
所有権取得の相手方は国であるので、有
て審査長・審判長歴任後に創設し、当初
する権利の種類は、同じ人員が顧客の知
事の救済の程度などについて不確定要素
はバイオテクノロジーの技術分野を得意
的財産の権利化を支援するという意味で
が否めないという特徴を反映してか、同
としていましたが、現在では機械、電気、
は共通するので、あえて絞り込むことは
じ仕事をしていても、立場によって重視
化学、バイオのすべての分野および意匠、
しませんでした。
するポイントや感じるところが違うとい
商標の権利化から訴訟関係に至るまで広
予防・低減策としてオフィス安全化や
うことは新たな気付きでしたし、メン
く対応しています。さらに、総合特許事
備蓄品の再整備の実施、事業の要である
バーが一堂に会して行った討議によって
務所として、外国特許庁への出願および
所員一同の安否確認の仕組みの導入、工
得られた気付きは、平時の業務対応にも
外国から日本特許庁への出願の双方につ
業所有権取得に係る書面などの電子デー
活かせると考えます。
いても、内外の一流クライアントから多
タ保全策の強化を進めることとしまし
くのご依頼を頂いております。
た。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
その上で、有事に行政からの救済を受
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
けられない出願業務(国内・外国出願手
BCPを策定したことで、従来から実
続)を遅滞なく行うことを最優先します。
施してきた、点としての震災対応同士
以前からビルや事務所での防災訓練を
具体的には、本社(または関西営業所)
が線で結ばれた気がしています。また、
実施し、入居している高層階から階段で
から重要顧客に緊急連絡をとり、その結
BCP策定において、議論・検討に時間
降りる機会を設けたりはしていました。
果に基づき緊急性の高い案件については
を多くとりましたが、これ自体が非常時
しかし、東日本大震災の際に、事務所
手作業にて対応し、その他の案件は電気
の疑似体験となったと思います。総じて
の建屋がかなり揺れ、停電はしませんで
およびシステムの復旧を待ちます。この
実際の震災時の対応が非常に客観的に分
したがエレベーターが翌朝まで停まりま
ような対応を取ることで、震災時の手続
りましたので、災害時には想定通りには
した。相当数の所員が帰宅を控えました
停止によりお客さまの法的権利を権利化
ならないでしょうから、全てはできなく
が、買い出しに出たところ、荷物を持っ
できないリスクから守ります。
とも、少なくとも頭が白くならずに、的
て階段を上る際に苦労しました。さらに
帰宅の途につくも、帰れず事務所に戻る
者や徒歩帰宅を余儀なくされる者が出る
Q
確に対応することができると思います。
何か新たな気づきはありましたか?
など、組織としての対応方針整備の必要
当初、当事務所は単一事業所で協力会
性を認識しました。
社もあまりなく、業務内容や事業がシ
また、特許庁の法定期限は結果的に延
ンプルなのでやることがないのでは、と
長されましたが、大地震発生時でも事業
思っておりましたが、いざやってみると、
を止めることはお客さまの利益を損ない
多くの検討すべき課題が出てきて、自ら
(2012年5月1日より)
東京都港区愛宕2-5-1
愛宕グリーンヒルズMORIタワー 32F
かねないことを再確認し、危機感を新た
の業務を見直す機会にもなりました。
設立
1984年10月
にした次第です。
今回、対象事業を担当するグループの
資本金
—
Q
92
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
リーダーがほぼ全員フル参加しました
が、事前の打合せや討議を行う時間が取
れない中で、会議の限られた時間内に多
会社情報
称号
平木国際特許事務所
本社所在地
東京都港区虎ノ門4-3-20-19F
従業員数
57人
代表者
所長 平木祐輔
事業内容
特許出願等に伴う出願業務手続
URL
http://www.hiraki-patent.co.jp
68
取 組 事 例 ●
Case Study
富士水質管理株式会社
各営業所の自主的な
給排水設備事業継続が目標
対 象 事 業
給排水設備保守点検、同付帯工事
被災シナリオ
●作業中の業務担当者が2名負傷
●事務所内の書棚が倒壊、書類散乱、PC1台破損
●倉庫内散乱
対 策
Q
対 象 リス ク
東京湾北部地震
●拠点および社員(協力会社含む)の自宅の地震対策の徹底
●作業現場における安全帯とヘルメット着用の徹底
●連絡マニュアルの整備と定期演習の実施
●ガソリンスタンドとの災害協定締結の検討
●速やかな安否確認による稼働可能要員の把握
●協力先への支援要請(営業所長)
●他営業所への支援要請(本社対策本部)
事業内容を教えてください。
総務部長
鳥越 一宏
アプローチとしては、お客さまからの要
事務室や倉庫の巡回点検、IT機器や通信
望にできるだけ早く対応することが重要
ネットワークの現状分析を通じ、地震や
当社は給排水設備メンテナンスを本業
と考え、そのためには何が必要かを考え
停電に対するさまざまな脆弱性が浮き彫
としており、給水ユニットおよび付帯設
ていきました。
りになりました。例えば、従来は安全と
備、浄化槽、ディスポーザー処理装置、
当社の事業は、作業員が工具を持参し
考えていたサーバーのデータバックアッ
厨房向け除害施設等を主な保守の対象
て現場に赴けば一定の成果が出せるもの
プ体制の不足など、特に緊急性の高い問
としています。現在、9つの営業所があ
で、人が一番の資産と考えています。ま
題については既に改善を終え、安全性を
り、関東甲信地域の全てをカバーしてい
ずは、その大切な社員を守るため、出先
高めることができました。
ます。
における地震発生時の行動基準の制定、
今回は東京営業所を対象としたBCP
昭和49年の創業以来積み重ねてきた
現場の業務活動を支える営業所の地震対
を策定しましたが、このBCPを全営業
経験と確かな技術、24時間365日の緊
策が必要と考えました。
所に展開することが最終的な目標です。
急出動体制などにより、設備メーカーや
次に、緊急時の社員や取引先とのコ
ビル管理会社などのお客さまから強いご
ミュニケーション手段、連絡網情報、機
支持をいただいています。
器道具類の整備など、ソフトとハードの
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
両面から対策を進めたいと考えました。
当社にとっては初めての本格的な
また、従業員の自宅の地震対策にも注目
PDCA型のルールづくりでしたが、コア
し、会社から何らかのサポートをしてい
業務に直結する BCPという課題で取り
ビルのテナントやマンションにお住ま
きたいと思います。
組み成果物を得られたことは、非常に幸
いの方など、エンドユーザーの皆さまに
このほかにも、営業所の要員が不足す
運でした。社長以下、社員に対して具体
とっては、給排水設備は文字通りライフ
る場合の支援体制、ガソリンの確保な
的な意識付けをすることもできました。
ラインにほかなりません。特に発災時に
ど必要な対策がありますが、演習を含め
今後は成果物を完成に近づけるため
あっては、一刻も早い給水設備の復旧が
PDCAサイクルを回していく中で整備
に、行動計画、年間スケジュールをしっ
大きな使命です。これまでも緊急連絡体
し、ルールを維持成長させていきたいと
かり検討し、特に予防策に対する行動計
制の構築や小型発電機の購入など、個別
考えています。
画は速やかに実施していきたいと考えて
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
の対策は行ってきましたが、東日本大震
災をきっかけにBCPの必要性を痛感し
ていました。そのような中で東京都の支
Q
います。
何か新たな気づきはありましたか?
援事業を知り、申し込んだ次第です。
当社の営業所は関東甲信の各都県に分
また当社は、これまで明確に定められ
散しています。従って、災害発生時に被
たPDCA型ルールの経験がなく、BCP
害の拡大を防ぎ、速やかに業務を復旧す
という本業に直結する課題で取り組むこ
るためには、各営業所が自主的に状況判
とは、将来に向けた重要な布石となると
断して行動を起こす必要があると考えま
考えました。
した。このため、特に初期動作は本社 ・
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
地震 に 対 するBCPを 策 定 し ま し た。
本部がリードするのではなく、営業所が
独立した単位として機能するBCPの構
築を目指しました。
また、BCP策定のプロセスで行った
会社情報
称号
富士水質管理株式会社
本社所在地
東京都世田谷区宇奈根1-22-4
設立
1974年12月
資本金
1,000 万円
従業員数
50人
代表者
代表取締役社長 白山隆一
事業内容
給排水設備等保守点検、 同付帯
工事
URL
http://www.fuji-kanri.co.jp/
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
93
69
取 組 事 例 ●
Case Study
株式会社双葉
都市開発・まちづくり事業の
早期再開を支える
対 象 事 業
まちづくり支援事業(調査・計画・測量・土木設計・補償業務)
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●地理空間部オフィスが2階以上立入不可
●本社、茨城支店は棚の転倒、PC破損等の被害あり
●測量機器、サーバー3台、PC14 台等破損
●紙データ、権利データ、地図データ破損
対 策
●施設の安全対策の実施
●車中の備蓄(飲料水・食料)
、車の避難ルールの策定
●データ・バックアップ対策の増強
●緊急連絡方法の確立
●車・機材・データの所在地・状況の把握
●顧客への緊急連絡
取締役会長
野﨑 茂和
BCP検討の過程や重要と判断した
点を教えてください。
が、意外に多くの物やデータに依存して
都市計画総合コンサルタントとして、
東京湾北部地震を想定し、当社の特徴
という時にも冷静に判断できるベースが
まちづくり部門、測量部門、補償部門の
であり強みでもある、まちづくり支援事
できたと思います。データのバックアッ
3つの部門があります。昭和23年の創
業を対象にBCPを策定しました。本事
プは従来から対策をとってきましたが、
業当初から土地区画整理の測量に携わっ
業にとって必要なのは、人員と測量器
本社のある目白地域全体が火災に見舞わ
てきましたが、昭和56年からは、まち
材、データおよび ITシステムなのですが、
れるリスクも無視できないことが分かり
づくり部門として都市計画、まちづくり
まずは社員とその家族の安全対策を検討
ましたので、茨城支店システムの活用を
支援、区画整理、開発企画、土木設計の
しました。
考えることにしました。
業務、補償部門として建築物等の調査 ・
また、社外で仕事をする技術者も多く
積算、土地収用に係る支援業務、測量部
いるため、迅速な安全確認を行うと同時
門として区画整理測量、公共測量、地理
に、その現場にある作業車や、測量器材、
空間情報システムの企画開発等を行って
測量データ等の安全確保を行うことにし
BCPの 考 え 方 は、ISOや Pマ ー ク の
います。
ました。
延長と思っていましたが、実際は違うと
そのため、本社サーバーや各データの
いうことが分かりました。BCPには標
破損に備えてバックアップシステムをよ
準的な答えが無く、要は考える過程が重
り強化し、代替システムとして茨城支店
要と気付きました。BCPは有事の際の
阪神 ・ 淡路大震災以降、防災マニュア
のシステムを活用できるよう整備しまし
あるべき姿をイメージし、その実現対策
ルを策定する必要があるということは認
た。さらに、本社が使用不可能となった
を考えますが、その過程や結果は日常の
識していましたが、具体的な行動は取っ
場合には、茨城支店を IT のみならず測
経営の改善にも役立つと思います。
ていませんでした。そこに今回の東日本
量機材や作業スペースのバックアップ拠
また、従来頭に無かったことを意識付
大震災が起こり、災害対策本部を立ち上
点として使用することを明確にしまし
けするためには社員全員の訓練が不可欠
げ社員の安否確認、食料等の備蓄をしま
た。
なこともよく分かりました。
Q
Q
事業内容を教えてください。
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
したが、特にルールを決めていたわけで
はありませんでした。そのような中、経
営者会議において「災害時の対応を整備
Q
Q
最初は被害をどこまで想定するべきか
討を始めたちょうどその時に、東京測量
迷いましたが、阪神淡路大震災の被災ビ
調査設計事業協同組合からBCP策定支
デオや首都直下地震の被災想定情報の提
援事業の案内があり、直ちに参加するこ
供を受けて、今まで考えなかったような
とにしました。災害時にも社員とその家
被害を想定する必要性を理解しました。
族の安全を確保し、顧客に迷惑をかけな
そして、そういう意識で改めて社内を点
いため、事業を継続するため、企業とし
検してみると、いろいろな所に倒壊や破
て、社員としてどういう動きをすべきか
損、けがのリスクがあることに気付きま
を明確にしたいと考えました。
した。
また、事業や業務で用いている経営資
源を洗い出すのは初めての経験でした
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
何か新たな気づきはありましたか?
すべきではないか」との声が挙がり、検
94
いることが明らかになったことで、いざ
会社情報
称号
株式会社双葉
本社所在地
東京都豊島区目白3-14-8
設立
1948年4月
資本金
3,000 万円
従業員数
53人
代表者
代表取締役社長 柿崎啓二
事業内容
建設コンサルタント(都市計画、
区画整理、 測量、 補償)
URL
http://www.futaba-gc.co.jp
70
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
留学生・在日外国人向け日本語教育
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●液状化により20㎝水没
●副理事長・所長不在
●所外学生連絡取れず、全員帰宅困難
●サーバー、PC等機器使用不可
対 策
Q
株式会社ティーアイジェー東京日本語研修所
留学生の安全を守り
母国の保護者へ緊急報告
●上級学生に他の学生への通訳の協力を事前に依頼(中国語・韓国語)
●緊急時の連絡項目の設定と連絡体制の構築
●学生の安全な避難と保護者へ報告
●学生の指導と緊急生活支援
●発電機購入、連絡手段の確立
事業内容を教えてください。
所長
広瀬 万里子
た。「学生、職員・講師の生命を守る仕
大きくなりました。しかし、この策定に
組み、保護者への正確な情報を提供でき
取り組んだことで、改めて「外国人学生
進学を目指して来日する留学生や日本
る仕組み」を軸に災害時の対応力を高め、
を守り、保護者への責任を果たす」とい
に居住している外国人に日本語教育を
事業の早期復旧ができるようBCP策定
う使命を皆で再確認でき、所内であいま
行い、将来母国や日本で意義ある仕事に
支援事業に参加しました。
いにしていた課題がはっきりして、ITの
従事する社会人の育成を目指していま
す。学生は留学生が 80%、在日外国人
が 20%で、ほとんどの学生は中国人で、
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
強化策、属人化していた業務を多能工化
するなどの改善策が検討できました。自
分達だけでは、短期間でここまでの形に
寮や徒歩圏に住んでいます。
地震を想定し、対象事業である留学生・
はできません。後はこれを改善していく
進学コースは、専門学校・大学・大学
在日外国人向け日本語教育事業を早期再
ことだと思います。学校のPRに使える
院等の日本の高等教育機関に進学を希望
開するためのBCPを策定しました。
めどもつきました。
する留学生の日本語教育および進学指導
当社は教育機関であり、海外から大切
を行い、生活日本語コースは、日本で生
なお子さんをお預かりしています。その
活する外国人のための日本語教育を行っ
ため東京湾北部地震のような大災害を想
ています。また、外国人が勤務している
定した場合には、まず学生たちの生命・
今回のBCP 策定は第一歩であり、今
企業や留学生が在学している大学への講
安全を守り、被災情報の収集と発信を的
後、区の防災課や外国人課等との情報共
師派遣や、日本語学習教材の開発・出版
確に行い、被災後の学生一人一人の生活
有、学生への携帯 BCPの配布、属人化
も行っています。
を支援することが最優先事項であると考
している業務のマニュアル化などの対策
え、対策を検討していきました。
を検討します。
これらを迅速に行うために、本BCP
BCP年間運用計画では、4半期ごと
策定中に、学生にアンケート調査を実施
の「職員による進捗評価」で管理サイク
3.11の 際、 外 国 人 学 生 の 安 否 確 認、
し、学生のニーズ、被災時の連絡方法な
ルを回したいと考えます。
保護者から殺到する個別の問い合せの
どの確認をしました。その上で、まずは
当支援事業のおかげで短期間でBCP
応対に追われました。地震後2週間で
学生たちに策定したBCP方針の徹底・
が策定できました。まだ完璧ではあり
約 60%の学生が一時帰国し、その手続
参加・協力依頼をすると同時に、緊急時
ませんが、今後の演習や訓練を定期的に
の支援をし、さらに原発事故後の不安が
の連絡体制と上級生への通訳の協力依
実施することにより、より効果・実効性
大きくなる中で帰国できない学生たちを
頼、保護者への報告の手順などの体制を
の高いものに改善していきたいと思いま
教師が引率して10日間神戸に移動させ、
整えました。さらに食料・生活用品の備
す。
その間に保護者との相談を含め、自分の
蓄などを行い、学生の生活支援も行った
身の処し方を決めさせました。これらの
上で、早期の授業再開を目指します。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
対応を通して、私たちは「外国人に対す
るサービスを行っていること」を改めて
認識しました。
Q
何か新たな気づきはありましたか?
また、一連の行動は、その場で考え判
初めの段階ではBCPの考え方を理解
断し実行しましたが、あらかじめ方針が
するまでに時間がかかりました。現業の
定められていれば、対応・行動もよりス
中での短期集中作業、準備会議の調整な
ムーズにできたのではないかと感じまし
ど、職員が少人数のため事務局の負担が
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
会社情報
称号
株式会社ティーアイジェー
東京日本語研修所
本社所在地
東京都葛飾区新小岩1-17-10
設立
1991年10月
資本金
3,000 万円
従業員数
20人
代表者
理事長 徳倉眞治
事業内容
外国人向け日本語教育、教材出版
URL
http://www.tij.ne.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
95
BCP 取組事例
団体
BCP
策定のポイント
本年度参加の団体としては、協同組合、一般社団法人、財団法人
がありますが、団体としてのBCPを考える上では①団体通常業務、
②社会的責務、③相互扶助、④団体組織力強化という4つの視点が
特徴的です。
①団体通常業務:電力、固定電話/FAX、交通機関等の社会インフ
ラが停止した場合には団体の通常業務が中断する可能性が高くなり
ますので、そのような場合にどうすべきか、団体通常業務ごとに仮
復旧、縮小、停止等の対応方針を決めておく必要があります。
②社会的責務:団体によっては行政との災害時協力協定や行政から
の緊急支援要請に対して、団体として緊急に対応する仕組みの確立
が求められます。具体的には、団体本部が情報ハブとして機能し、組
合員・会員が実働部隊として出動しますので、行政との連絡方法の
取り決めや団体本部と組合員・会員との間の緊急連絡網の構築、出
動資源(車両、
重機、
人等)の調整ルールの事前合意が必要となります。
③相互扶助:団体の定款や協定に基づき災害時の相互扶助を実行す
るためには、団体本部が情報ハブとして、組合員・会員の被災状況
と応援要請を把握し、被災組合員・会員に対する応援を働きかけ、
調整することが必要となります。また、地域密着型の団体では、地
域への貢献として被災時の避難、消火、救護等における支援を重視
しているところもあります。
④団体組織力強化:団体本部と組合員・会員が BCP策定に共同で
取り組み、その成果を共有することにより、団体内におけるBCP
普及啓発の促進と、団体としての組織連携力の強化を図ることがで
きます。
96
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
71
取 組 事 例 ●
Case Study
対 象 事 業
共同受注契約業務、緊急時支援業務
被災シナリオ
●組合員会社の火災1社
●測量等機器・PC・プリンターの破損
●調査データの損失
東京測量調査設計事業協同組合
組合員相互扶助と緊急測量調査で
地域復興に貢献
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●携帯メールによる組合緊急連絡網の整備
●施設内の耐震策の強化
●防災協定の締結(組合内および他組合間)
●組合員の被災状況の迅速な把握
●相互扶助の精神と組合協定に基づく組合員間の相互支援(人・機材・資材)
●防災協定に基づく他組合からの応援
参 加 企 業
新栄測量設計㈱、㈱東邦地形社、㈱中央ジオマチックス、㈱双葉
Q
事業内容を教えてください。
代表理事
山崎 賢治
BCP策定によって、非常時に緊急時
加した協定が成立したことは、BCPの
支援要請の早期受入れなど、社会的貢献
有効性を高める上で大きな前進となりま
当組合は、測量業を中心に事業を営む
に即応できる組織であることを発注機関
した。BCPの持続性の観点からもよかっ
中小企業組合員13社(平成24年2月現
を含め広く社会に認識してもらうことを
たと思います。
在)からなる官公需適格組合であり、東
目的の一つに掲げています。
また、組合と組合員4社が合同で実施
京都区や中央官庁から中小企業単体より
そのためには、組合事務所が災害時に
した演習が非常に効果的だったと思いま
高いランクで格付けされています。組合
健全に機能することが大前提となるた
す。参加者全員がBCP策定内容をお互
傘下の総社員数は277人であり、多種
め、組合と組合員が連携できる対策を決
いに学び、理解を深め、多くの改善の気
多様な資格者が在籍しております。主な
定しました。
づきを得ることができました。BCPを
経済事業としては、共同受注事業があり
組合が各組合員の人的、物的被災状況
共同で策定したことにより、組合・組合
ます。単体企業では参加が難しく規模の
を早急に取りまとめ、組合内での相互扶
員間のコミュニケーションが強化され、
大きな案件に組合が入札参加し、落札し
助の調整を行うなどして体制を立て直す
また一体感が大きく盛り上がったことも
た場合は組合が契約元となり、受託した
ことに重点を置いています。
大きな成果だと思っています。
業務を組合員に配分します。
この仕組みを基に、被災地域の緊急時
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
支援要請に共同で、できる限り力を結集
して対応することを決めました。また、
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
共同受注案件の遂行を即時に再開できる
策定すべき項目について短時間で、具
2007年新潟県中越沖地震発生後の
よう調整します。これらの合意を今後も
体策を判断・決定していくことは困難を
「全国測量設計協同組合情報交流会」に
継続していく意思の表れとして、組合と
伴いましたが、自分たちの実情に合った
おいて、新潟地域を活動拠点とする組合
全組合員との間で、新たに「事業継続計
BCPを策定できたことに大きな誇りと
からBCP策定の必要性の声が挙がりま
画に関する協定書」を締結しました。ま
自信を持つことができました。
した。これを契機として組合は2009年
た、組合が大きな被害を被った場合に備
首都圏広域被災の場合は、組合単独で
より事業計画に「BCP策定」を盛り込
えて他地域の測量組合との「広域応援協
の取組にも限界があります。今後は全国
んできましたが、取組が思うように進ま
定」の締結も推進しています。
の組合と調整し、「広域応援協定」締結
ない中、東日本大震災が起きました。
組合事務所ではキャビネットが倒れ、
プリンターが落下するなどの被害が発生
Q
を拡大し、災害発生時に社会貢献できる
何か新たな気づきはありましたか?
体制を強化していく所存です。
したことから、災害時でも団結して早期
組合事務局に時間的な余裕が無く、討
に事業を復旧し、測量業者としての期待
議と文書作成の時間を確保するのに苦労
にこたえる必要性を強く感じた次第です。
しました。5回の集中的な検討で組合事
称号
東京測量調査設計事業協同組合
今回の東京都BCP策定支援事業を知
務局と組合員4社のBCPを同時に策定
本部所在地
東京都新宿区西新宿3-9-14
り、この機会を是非活用したいと組合員
でき、ありがたく思っております。さら
設立
1995年7月
に参加を募り、希望した4社と共に参加
に、組合と組合員間における相互扶助活
出資金
1,690万円
従業員数
2人
動についてBCP策定期間中に合意され
組合員数
13社
することを決めました。
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
たことを受けて、「事業継続計画に関す
る協定書」の締結について理事会で検討
を進めました。その結果、全組合員が参
団体情報
代表者
代表理事 山崎賢治
事業内容
測量・測量関連業・情報処理関連業
URL
http://www.tosoku-kumiai.
join-us.jp
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
97
72
取 組 事 例 ●
Case Study
東京セメント建材協同組合
組合の共同購入・共済損保・
広報機能を早期復旧
対 象 事 業
組合員サポート業務、広報業務
被災シナリオ
●事務局1名負傷、理事長は自社におり不在
●組合事務所室内乱雑化、PC落下・破損
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●組合職員・役員の携帯電話メールを用いた緊急連絡網の構築
●組合員とのPCメールを用いた連絡網の構築
●転倒・落下防止策、ガラス飛散防止策の実施
●水・食糧・救急用品等の備蓄
●メーカー、共済組合、損害保険会社の被災状況と再開予定の確認(緊急時問合せシート)
●組合員の被災状況情報の収集と対応策の検討
備 考
●東京消防庁との災害時協力協定の実行は、管轄消防署からの直接の依頼に基づき
各企業が実施
参 加 企 業
Q
理事長
森田 光隆
㈱関口建材店、旭建材工業㈱、㈱ヤブ原
事業内容を教えてください。
東京都にある建材関連企業の協同組合
として設立から91年経つ歴史ある組合
で、組合員として約270社が加入して
上および社会貢献につなげたいとの狙い
えるのに苦労しました。しかし 5 ステッ
もありました。
プの進め方といろいろな事例の紹介によ
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
り、組合および組合員の実態に即した内
容を策定できたと思います。組合員との
日常のコミュニケーション手段は固定電
います。組合員の業種は、建材卸・販売、
組合は組合員に貢献するために存在し
話・ファクスで今後もなくならないと思
生コン・コンクリート製品製造販売等で、
ますので、組合員サポート業務機能の早
われますが、今回初めて組合員のPC・
歴史ある企業が多く組合員の結びつきは
期復旧が主たる目的となりますが、同時
携帯電話メールの使用状況を調査したと
強いと言えます。
にBCPを策定する機会を最大限に活か
ころ、利用している組合員もかなりいま
組合の事業は組合員をサポートする、
し、組合と組合員との結び付きを強化し
すのでメールの活用も検討する時期に来
建材商品の共同購入・販売事業、共済代
ようと考えました。通常、組合員や組合
たとも感じています。組合会館の耐震診
理所事業・損保業務の提携(委託)、労
役員との連絡は固定電話やファクスを用
断をすることにしましたが、これも今回
働保険事務組合事業があり、そのほか広
いておりますが、大地震発生時には使用
のBCP検討を踏まえて決定したことで
報業務や建材商品・施工研修などを行っ
不能となる可能性が高いので、まず組合
す。
ております。阪神淡路大震災後の平成8
役員・職員については携帯電話メールを
年3月に「震災時における消防活動業務
用いた緊急連絡網を構築することにしま
の協力に関する協定」を東京消防庁との
した。これだけでも大きな進歩といえる
間で締結し、災害時に生コン車による消
でしょう。
始める前はBCPの意味や防災との違
防用水運搬などの支援を提供することで
組合員サポート業務である、建材の共
いもよく分かっていなかったのですが、
合意しています。
同購入や共済・損害保険の事務代行を早
体系的に進めていただいたおかげで、組
期に復旧させるため、メーカーや共済組
合の実態を再確認しながら、何が問題で
合、損害保険会社の被災状況と事業再開
どうするべきかを自ら考えることができ、
予定日を的確に把握し、迅速に組合員へ
本当にやってよかったと思っています。
今まで組合としてBCPについて話し
連絡する必要があります。そこで企業・
今回得たBCPに対する認識や具体的な
合ったり、取り組んだことは無かったの
組合ごとに「緊急時 問合せシート」を
成果を今後の組合の運営や組合員サポー
ですが、東日本大震災を目の当たりにし、
事前に作成し、有事に活用することにし
トに役立てていきたいと思っています。
東京も首都直下地震や水害等の災害が起
ました。そのほか予備PCのバックアッ
きる可能性があるのではないかとの危機
プ化、組合ホームページによる業務再開
感を強めました。また、東京消防庁と災
告知、組合会館の耐震診断などの対策を
害時協定を締結していることもあり、災
決めました。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
害時対応の確立の重要性も感じていまし
た。そんな中、東京都がBCP策定支援
事業の取組に力を入れていることを知
Q
何か新たな気づきはありましたか?
り、これは組合員と組合の危機管理を強
東京に大地震が発生した状況や組合事
化する絶好の機会と判断し、組合員3社
務局機能が停止することなど今まで考え
と共に参加することにしました。BCP
たこともなかったので、一体何が起きる
に取り組むことで、当組合の認知度の向
のか、何をすればよいのかをゼロから考
98
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
団体情報
称号
東京セメント建材協同組合
本部所在地
東京都渋谷区東2-10-8
設立
1933年2月
出資金
3,100万円
従業員数
3人
組合員数
269社
代表者
理事長 森田光隆
事業内容
建築材料販売
URL
http://www.kenzaikumiai.com
73
取 組 事 例 ●
Case Study
社団法人東京都トラック協会
緊急物資輸送要請に応え
市民の生活を守る
対 象 事 業
緊急輸送対策事業
被災シナリオ
●平日夜間の発災(協会職員は帰宅後)
●協会職員の出社困難
●支部、会員事業者との通信一部停止
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●協会職員の自動参集ルール(参集拠点含む)策定
●施設内耐震性強化、自家発電装置の対象機器見直し
●通信手段の多重確保(総合会館以外)
●緊急輸送連絡メモの定期的更新と行政などが実施するの訓練への参加
●別拠点(支部)参集職員は当該支部で緊急輸送業務に従事
参 加 企 業
七幅運送㈱、多摩運送㈱、結城運輸倉庫㈱
専務理事
綿引 正明
Q
事業内容を教えてください。
資を緊急輸送拠点や避難所等に緊急輸送
かったと思います。協会施設の震災対策、
するという役割を担っています。
自家発電装置の活用、通信手段、職員の
東京都の運送事業者の団体として、会
その要請に迅速にこたえるためには、
総合会館への参集イメージと緊急輸送対
員事業者の事業の発展に資するとともに、
人員と通信手段の確保がキーとなります
策本部の速やかな立ち上げの要件や問題
都民・利用者へのサービス向上対策、交
ので、通信手段として衛星電話や緊急回
点の把握と対応策の検討ができました。
通安全対策、環境対策等「社会との共生」
線の確保等、複数準備しています。
一方で、さらに対応能力の完成度を高め
を図り、トラック輸送産業が発展してい
しかし、夜間・休日に発災した際の対
ようとするとコストがかかることも分か
くための諸事業を展開しています。具体
応は、これまで検討してこなかったこと
りました。また、今回の BCP策定を契
的には環境対策事業、交通安全対策事業、
から、今回は被災シナリオを夜間の発災、
機に、さらに職員のモチベーションの高
輸送サービス向上対策事業、経営基盤向
主拠点である総合会館に職員がいない想
揚を図っていきたいと思っています。
上対策事業、緊急輸送対策事業等です。
定にしました。すると社会インフラ停止
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
状況における職員の参集と主拠点に参集
できない場合の通信手段に問題があるこ
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
とが分かりましたので、これに対しては
最重要課題であると認識した、会員事
東京都トラック協会は、「災害対策基
協会の 4 支部を緊急時の参集拠点と定
業者の事業継続能力を高めていくため
本法」に基づく「指定地方公共機関」と
め、職員の自動参集体制構築や、緊急時
に、今後下記の行動を取っていきたいと
して東京都に指定されています。東京都
の通信手段の強化(衛星携帯電話の幹部
考えています。
との「災害対策用貨物自動車供給契約」
への配備等)も実施することにしました。
● BCP 策定支援事業への参加会員事業
の締結、緊急物資輸送訓練の実施、情報
今回のBCP策定のなかで、実際に緊
者との事業継続計画の情報交換・交流会
連絡体制の整備等により災害発生に備え
急物資輸送を担う会員事業者が、素早く
の開催
てきました。また、都内には緊急輸送司
事業を立ち上げることができるよう、事
●協会の緊急輸送システム検討委員会で
令室をはじめ緊急輸送要員の待機所など
業継続能力を高めていくことが最も重要
詳細を報告し、会員事業者への啓発と情
の施設を整備しています。東日本大震災
な課題であることを、あらためて痛感し
報発信
でも東京都の要請を受け、救援物資輸送
ました。
また、現在行政において「災害に強い物
を行い現在も継続しています。
過去に幾度も緊急時の対応を行ってき
ましたが、いずれも東京圏は被災してい
Q
流」の検討が行われており、当協会とし
自社で策定したものとの違いは?
ても必要な情報発信を行い、対応能力を
一層強化していきたいと考えています。
ませんでした。そのため首都圏で、特に
当協会では、緊急輸送基本計画をはじ
夜間・休日に発災した場合の対応に不安
めとして必要な要綱・要領を策定済み
があり、今回参加しました。
であり、「緊急輸送連絡メモ」として携
称号
社団法人東京都トラック協会
帯可能な手帳形式の冊子を毎年8月に更
本社所在地
東京都新宿区四谷3-1-8
設立
1966年10月
正味財産
98億円
職員数
60人
代表者
会長 大髙一夫
事業内容
都民・利用者へのサービス向上、
交通安全、 環境、 緊急輸送等の
各対策事業
URL
http://www.totokyo.or.jp
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
新・作成し、関係の役員・職員に配布し
てきました。東日本大震災時の対応も含
当協会は災害時には、東京都から緊急
め過去、行政の要求レベルを満たしてき
物資輸送の要請を受けて、支部を経由し、
たとの自負はありました。
会員事業者から車両等の手配を行いま
今回の検討では、協会としての非常事
す。広域輸送拠点や備蓄倉庫等から、物
態への対応能力を再点検できたことがよ
会社情報
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
99
取 組 事 例 ●
74
Case Study
対 象 事 業
医療関連機器の緊急供給/情報発信
対 象 リス ク
東京湾北部地震
被災シナリオ
●建物は損壊(倒壊はしない)
●事務所の電気系統破損
●事務局長負傷入院
一般社団法人日本医療機器工業会
行政からの医療機器緊急要請に
確実に対応
対 策
●デスクトップ PC、固定光インターネットをノートPC、無線インターネット接続に
変更
●PC・携帯メール、携帯電話、自宅電話も含めた連絡網を構築
●会員企業・団体の被災状況確認、緊急供給支援、行政からの緊急情報発信
参 加 企 業
㈱秋山製作所、㈱ノルメカエイシア
Q
事業内容を教えてください。
理事長
松本 謙一
当工業会のBCPの目的は、「日本医療
に会社の連絡先、個人の携帯電話情報に
機器工業会職員及び訪問会員の安全確
加え、自宅連絡先まで載せた場合、個人
日本医療機器工業会は人工呼吸器、麻
保」、「医療機器の緊急時安定供給のため
情報の扱いなど、検討の必要性を感じま
酔機器、吸引器、手術用メスなどの医療
の支援」、「災害時の会員及び行政へのタ
した。
機器を製造、販売する企業および団体を
イムリーな情報の発信」です。
またBCP策定の過程で、停電時の PC、
会員とした組織です。政策部会、安全部
特に生命維持関連医療機器 ( 人工呼吸
携帯電話の電源供給が全く考えられてい
会、総務部会の3部会と人工呼吸器委員
器、吸引器、酸素濃縮器、人工呼吸器関
なかったことにも気付きました。
会、ISO / TC121国内委員会など16の
連)などの生命維持にかかわる医療機器
そして、最も考えなくてはならなかっ
各種専門委員会などにより、会員企業の
は、災害時には緊急性、重要性が一層増
たことは 「家庭と業務」、また「工業会
意見・要望などを集約し、政策提言およ
すため、傘下の企業や団体と連携し、行
と個々の会員企業」のどちらを優先させ
び情報提供を行います。また厚生労働省、
政および医療機関の情報のハブとして、
るのかなど、判断に迷う場合の対応につ
経済産業省など関係省庁への協力、災害
少人数の事務局が機能するための対策を
いてでした。
時には行政および医療機関と協力し、緊
考えました。
急時安定供給対応支援なども行います。
当工業会は会員企業・団体数が139
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
と多いため、緊急時には携帯メールで
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
の全会員に対する連絡は不可能なので、
BCPがなかった時に比べて、対策な
PCメールを情報ハブとして、災害時・
どを具体化することができ、対応に多少
BCP策定に取り組んだきっかけは、東
停電時にも使えるようPC、インターネッ
自信がつきました。今後は PDCAを回
日本大震災の際に、行政、医療機関など
トのインフラを、ノートPC、無線イン
すこと、定期的な訓練や連絡網の見直し
との連絡窓口として大変苦労したためで
ターネット接続に変更し、停電時用ノー
の重要性を認識しました。
す。限られたメンバーで 24時間体制で
ト PCのバッテリーの購入などの対応に
実際の災害時には、演習の数倍の安全
対応し、何とか非常事態を乗り切りまし
より、常時使いながら運用費用は現状と
確保の必要性や業務がなだれのように起
た。その一方で、会員個々の機密保護や
ほとんど同等とする対策としました。
こり、それを判断し、処理していかなけ
安全対策の面など課題が多々あり、もう
少し地に足がついた対応ができなかった
ものかと反省が残りました。各会員企業
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
も同じような思いではないかと思います。
団体でのBCP作成は、個別企業の場
こういった緊急の業務が工業会として
合とは大きく異なり、主従の関係もなく、
重要であることをかんがみて、定款に「災
主体性を持った顧客である多数の会員企
害等緊急事態発生時の関係官公庁、関
業にどうアプローチをするかという点で
係団体並びに医療機関との連携及び対策
難しい面がありました。
の実施」を追加したのですが、これを会
工業会事務局という形態は情報の「ハ
員企業とともに具体化するという使命を
ブ的存在」で、今回のBCP策定によっ
持って応募致しました。
て、その重要性を改めて認識しましたが、
Q
100
策定されたBCPの内容を
教えてください。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
同時に工業会と会員企業の間のインフラ
面・連絡網が未整備であったことも分か
りました。その際に今後連絡用のリスト
ればと思うと、もっと詳細な検討が必要
で、事務局および会員企業との連帯感を
失わないように継続していきたいと思い
ます。
団体情報
称号
一般社団法人 日本医療機器工業会
本社所在地
東京都文京区本郷3-39-15
医科機器会館 5F
設立
2009年7月/1974年 「日本医
用機器工業会 (JAMEI)」
会員数
135社 4団体
代表者
理事長 松本謙一
事業内容
医療機器産業発展のための各種
政策提言と情報提供
URL
http://www.jamdi.org
取 組 事 例 ●
75
Case Study
練馬測量業協同組合
測量を通して練馬区の
安心・安全な街造りに貢献
対 象 事 業
測量の共同受注業務
被災シナリオ
●理事長は不在で連絡不可
●副理事長が軽傷
●事務所内は棚、パソコン1台が転倒して書類は散乱
対 象 リス ク
東京湾北部地震
対 策
●キャビネットなどの転倒防止策の実施
●バッテリー、発電機による電源確保
●組合と組合員間の緊急連絡網の早期策定
●副理事長(事務局長・管理課長)による代行
●整理整頓、作業スペース確保後業務再開
●組合員安否・被災状況確認、応援可能会社メンバーにてチーム編成後各社に派遣
参 加 企 業
関測量事務所㈱、㈱測技社、㈱新発設計
Q
事業内容を教えてください。
代表理事
太田 正行
組合では組合員相互扶助に基づく支援
ずは自らの安全確保を行い、家族、同僚
を行うことをモットーとしており、すべ
などの安否の確認ができてはじめて次の
練馬区に本社を置く測量、設計・調査
ての組合員と組合の被災状況情報の共有
行動に移れます。これを可能にするため
業務を生業とする会社が集まり、昭和
が災害発生時の対策の第一歩と考えまし
には今後の訓練に次ぐ訓練が最も重要で
53年に「練馬測量業協同組合」として
た。このためにまず「安否・被災状況連
あることが、演習を通して実感できまし
発足し、平成24年2月現在15社が加盟
絡フォーム」を作成し、相互にそれぞれ
た。
しています。
が確認した結果を連絡します。
官公需適格組合として地元の練馬区か
それを受けて次に、組合が練馬区から
ら受託(共同受注)した測量業務を、傘
受託した共同受注業務の作業を再開する
下の組合員15社に配分・管理を中心と
ために、各組合員からの被災状況をまと
練馬測量業協同組合が将来にわたり存
した事業を展開しています。また、測量
めます。そして、被災した組合員の要請
続するためには、まず組合員の存続が第
以外にも区民の安全・安心パトロール事
に対して、人員や機器の貸し出しなどの
一条件です。組合が存続していれば発災
業に協力しています。
応援が可能な組合員の調整を行い、対応
時には全組合員が相互扶助の原則に立ち
することにしました。
返り、練馬区をはじめとするお客さまの
さらに、区の緊急支援の要請に対して
お手伝いができると確信しております。
Q
今回BCP策定に取り組まれた
理由を教えてください。
Q
BCPを策定した感想を
お願いします。
は組合員の力を結集し、対応するための
これはまさに「組合の使命」と言えま
これまでは特に対策などは行っていま
対策を立てました。
すし、日常の業務に対しても積極的な取
せんでしたが、同業者で独自に『事業
今後は、関東地区の当業種・官公庁適
組を実践することを表明したことにつな
継続計画』を作成したという話は聞いて
格組合で組織する「関東地区測量設計事
がります。これこそが、組合、組合員の
いました。当組合では時期を見て始めれ
業協同組合」との間で災害時の応援支援
存在価値を高めることになります。
ばいいだろうと先延ばしにしていました
協定を締結し、より強固な対策を講じて
が、東日本大震災で練馬区が支援してい
いきます。
る宮城県亘理町の被災状況を見て愕然と
なり、日頃お世話になっている地元の
方々のお手伝いをするためにも組合・組
Q
苦労されたポイントは
ありましたか?
合員が存続していかなければならないと
当組合のような業態は日常、現場・
痛感しました。
フィールド作業を行う人、作業台で図面
そこで理事会の了承と、傘下の組合員
と向き合っている人、あるいはPCで図
3社の協力を得て東京都の BCP策定支
面を描く人など、さまざまな場所、形態
援事業に申し込みました。
の仕事をしています。また、道路上での
Q
策定されたBCPの内容を
教えてください。
団体情報
作業もあり、今まではしいて言えば交通
称号
練馬測量業協同組合
災害くらいしか想定をしていませんでし
本社所在地
東京都練馬区豊玉北6-3-3
設立
1978年3月
出資金
2,640 万円
た。
練馬区では都および区の努力もあり水
地震は発災時間、場所、規模も想定が
従業員数
2人
害対策は大分進んでいるため、今回は迷
難しく、これまでなら「想定外」で済ま
組合員数
15社
わず地震を想定したBCP策定に決めま
されたことを、いかに対応できるように
代表者
代表理事 太田正行
した。
するかを考えることに苦労しました。ま
事業内容
練馬区からの測量業務の共同受
注ほか
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
101
BCPが組織を強くする
~震災やあらゆる災害に負けない組織を作る~
本事業受託企業 ニュートン・コンサルティング㈱ 代表取締役社長 副島一也
昨年の東日本大震災からちょうど1
年を迎えようとしています。地震の多
い日本では従来から地震対策の取組は
非常に進んでいて、東日本大震災後も
社会インフラの復旧や支援物資の供給
ばと思います。
1
まずはやってみる、
という文化を持っている
などは迅速に進められました。しかし
BCPを策定していくには事業の影
の取組については、企業や自治体、そ
取るべき対策などおよそ正解がないと
ながら、災害対応の先にある事業継続
の他の組織等でもまだまだ十分進んで
いないのが実情です。そうした状況
下、平成23年度、東京都で75の組織
がBCP策定を実施したことは非常に
意義深いものがあったと感じます。日
本の組織でBCPの取組が進んでいな
いのは、BCPの考え方がまだまだ一
般的に浸透しておらず、また、その価
値が認められていないからだと感じま
す。BCPへの取組が万が一に備えて
の単なる守りの対策と思われており、
平時においての価値が見えない為、優
先度が低いのでしょう。東京都 BCP
策定支援事業においてBCPを策定し
継続的な活動として根付かせている組
響度や危惧すべきリスクの優先順位、
もいえる選択や意思決定を次々と行う
に取組む組織の参考にしていただけれ
にも大きく寄与するのです。
3
営業に大いに
役立てている
営業に役立てています。自社のBCP
てみる」という柔軟な姿勢が必要で
す。まずはやってみた上で、演習を実
施し、必要な改善を繰り返すことが重
要です。こうした姿勢を持つ組織は、
有事に対して柔軟に対応する能力を高
めることに成功していて実効力の高い
BCP の活動を行っていると言えます。
2
経営トップ自らが
指揮を執っている
と言っても過言ではありません。有事
3つの共通点を示し、これからBCP
一体感を高め、組織力を強化すること
60点主義でもいいので「まずはやっ
ことに成功していると実感していま
点が見られます。ここでは特に顕著な
と現場が一緒に進める取組は、組織の
BCPに適切に取組んでいると自信
めようとすると頓挫してしまいます。
BCP策定に取組むに当たってその
す。そうした組織にはいくつかの共通
事の際には機能しません。そして経営
必要があります。100点主義で次に進
織は「BCPが組織を強くする」こと
に価値を見出し、組織経営に役立てる
務局に任せきりにしたBCP策定は有
成否はスタート時にほぼ決まっている
の際、実際に指揮を執る経営トップ
と実際に動く現場のメンバー双方が
BCP策定に真剣に取り組むという覚
悟が必要です。経営トップが BCP事
を持っている組織はその活動を大いに
取組内容をまとめ、報告書として取引
先に提示したり、ホームページ上で公
開したりして、信用力向上に役立てて
います。特に日本では東日本大震災以
降多くの企業が自社の購買先の見直し
を行っています。1社購買に頼ってい
る場合は2社購買体制を取ろうとし、
購買先にはBCP策定を要請していま
す。BCPは明らかに平時から営業に
貢献するツールと位置づけられるよう
になったと言えます。当該支援事業に
参加された企業様の中にもこうした前
向きな取組をされていらっしゃる企業
様がたくさんいらっしゃいます。
また、
東日本大震災の際に積極的に情報開示
をしたことで取引先の新規開拓や自社
のアピールにつなげてビジネス拡大に
成功されています。
以上、見てきた通り、BCPの活動
を通してあらゆる災害に適切に対応で
きる能力を高め、また、平時にも組織
力強化や営業力強化としてその活動
の価値を高めていくことが有用です。
BCPは経営と現場を繋ぎ組織を強く
するツールだと断言できます。BCP
を単なる計画であり事務局が策定する
一過性のプロジェクトであると捉える
のではなく、経営と現場が一体となっ
て「組織を強くする」継続的な活動と
して意識し、あらゆる組織にBCPが
根付いていくことを願ってやみません。
102
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
東京発 チーム事業継続 ウェブサイト
http://www.sangyo-rodo.metro.tokyo.jp/shoko/keiei/BCP/bcp/index.htm
BCP策定支援企業の取組事例の詳細などをご紹介しています。
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集 平成24年3月発行
登録番号(22)254
発 行 東京都産業労働局商工部経営支援課
〒163‐8001 東京都新宿区西新宿2‐8‐1 電話03
‐
5320‐
4783
事業委託先 ニュートン・コンサルティング株式会社
〒102‐0083 東京都千代田区麹町3‐3‐8 丸増麹町ビル5F 電話03
‐
3239
‐
9209 E-mai [email protected]
平成23年度 東京都BCP策定支援事業取組事例集
103
Fly UP