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ちょっと役立つ造影検査に関する話題 - 造影剤と画像診断情報サイト

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ちょっと役立つ造影検査に関する話題 - 造影剤と画像診断情報サイト
ちょっと役立つ造影検査に関する話題
MRI編
Contrast Media in Practice (Ver.1.0)
監修・編著 :
桑鶴 良平(順天堂大学
放射線医学講座)
協 力 :
竹原 康雄(名古屋大学
放射線医学教室 )
発
鳴海 善文(大阪医科大学
放射線医学教室)
林 宏光(日本医科大学
放射線医学教室)
行 : 日本放射線科専門医会・医会
バイエル薬品株式会社
はじめに
今回、
「ちょっと役立つ造影検査に関する話題:MRI編」
を作成した。本著は約5年前に上
梓したCT編の続編ともいうべき小冊子である。CT編は、現場で実際に造影検査に関与する
医療関係者から、検査中や検査の問い合わせ時にとても役に立つと好評であった。MRI編
作成の要望も強く、その期待に答えた小冊子が出来上がった。
造影検査は臨床的に有用であり、多くの疾病の診断に欠くことができない一方で一定の
頻度で生じる副作用があるため、使用にあたり種々の注意が求められる。特に造影剤使用に
あたり、その有用性が副作用を上回ることおよび使用しない場合に患者に生じうる不利益を
上回ることが前提となる。そして副作用が生じた場合は速やかな対処が求められる。
造影検査はチーム医療により成り立っており、検査依頼医師、検査担当医師、看護師、診療
放射線技師、事務員、救急スタッフなど多くの職種が関わり合って成り立っている。関係ス
タッフは造影剤に関する知識を共有していることが望ましく、本小冊子はそういったスタッフ
を対象としている。
本小冊子の内容はCT編同様に検査前、検査時、検査後、副作用についての4章に分かれ
ており、MRI造影検査時に疑問が生じた時や質問を受けた時などに必要に応じてその項目
を読んでいただければ素早く正確に理解ができるように配慮している。また、MRI造影検査
についてのエッセンスがわかりやすく記載してあるため、MRI検査に関わるようになった時
に一読していただければ、MRI造影検査時に基礎的な知識を持って臨むことが可能である。
本小冊子は竹原康雄先生、鳴海善文先生、林 宏光先生のご指導を賜ると共に日本放射線
科専門医会・医会のご後援を戴いた。また、バイエル薬品株式会社のきめ細かいご協力に
より完成に至った。関係者の皆様のご支援に心から感謝の気持ちをお伝えしたい。
順天堂大学 放射線医学講座
桑鶴良平
2011年12月
CONTENTS
検査前
Q1
MRI検査で注意を要することは何ですか?
………………………………………………………………
6
Q1-1 MRI検査で注意を要するのは、
どのような患者さんですか? ……………………………………
7
MRI装置周辺の磁場分布は?
【MEMO】●MRI装置の磁場の強さは?
検査室に持ち込んではいけない所持品とは?
【MEMO】●MRI安全性のWedサイト
【MEMO】●金属探知機
Q1-2 MRI検査でスタッフが注意することは、
どのようなことですか? ………………………………
8
【MEMO】●MRI検査対応機器の全てが非磁性体か?
Q2
造影MRI検査で注意を要するのは、
どのような患者さんですか?
……………………
9
【MEMO】●eGFR(estimated glomerular filtration rate):推算糸球体濾過量
Q2-1 造影剤副作用の危険因子を持つ患者さんは、
どれくらいリスクが高いですか? ……… 10
Q2-2 問診票ではどのような項目を確認しますか? ……………………………………………………………… 11
「禁忌」
・
「原則禁忌」
・
「慎重投与」
【MEMO】●Gd造影剤の添付文書に記載されている
Q2-3 Gd造影剤の副作用を低減する方法はありますか? …………………………………………………… 12
前投薬にはどのようなことが行われていますか?
患者さんの不安を軽減するにはどのようなことが行われていますか?
どのような患者さんですか?
【MEMO】●Gd-EOB-DTPAを投与する患者さんで注意を要するのは、
Q3
腎機能障害のある患者さんへの造影剤投与にあたって、どんな注意が必要ですか? … 14
NSFとは何ですか?
NSFの危険因子にはどのようなものがありますか?
Q3-1 NSFの発症を防ぐには、
腎機能障害の重症度に応じて、
どのような対応を取ればよいですか?
………………………………………………………………………… 15
NSFの発症率はどのくらいですか?
Q3-2 NSFを治療するにはどのような方法がありますか? ………………………………………………… 15
Q3-3 Gd造影剤は腎臓に影響を及ぼしますか?…………………………………………………………………… 19
Gd造影剤による急性腎不全の報告はありますか?
Q4
小児に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか? ………………… 20
Q4-1 小児における造影剤投与量の目安はどれくらいですか?…………………………………………… 20
Q4-2 小児と成人では副作用発現率、
症状が異なりますか? ………………………………………………… 20
小児にGd-EOB-DTPAを投与した報告はありますか?
Q4-3 小児に造影剤を投与する際の鎮静方法には、
どのようなものがありますか? …………… 21
どのようにモニタリングしますか?
Q5
高齢者に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?
…………… 23
Q5-1 高齢者と成人とでは副作用発現率、
症状が異なりますか? ………………………………………… 23
検査前
Q6
妊婦に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか? ………………… 24
Q6-1 MRI検査は胎児に影響を及ぼしますか? …………………………………………………………………… 24
Q6-2 Gd造影剤は胎児に影響を及ぼしますか?…………………………………………………………………… 24
Gd-EOB-DTPAは胎児に影響を及ぼしますか?
【MEMO】●Gd造影剤およびGd-EOB-DTPAのFDA薬剤胎児危険度分類
Q7
授乳婦に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?……………… 26
Q7-1 造影剤はどれくらい乳汁中へ移行しますか? ……………………………………………………………… 26
造影剤はどれくらい乳児へ移行しますか?
【MEMO】●授乳中止に対する考え方
Q8
造影MRI検査を行うにあたり、
注意が必要な薬剤はありますか?……………………… 28
Q8-1 静注用鉄剤が投与された患者さんではなぜ注意が必要ですか? ……………………………… 28
(動物実験)
【MEMO】●リファンピシンのGd-EOB-DTPA造影MRIへの影響
Q9
…………………… 29
造影MRI検査にあたって食事制限・水分制限は行われていますか?
【MEMO】●磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)検査の場合
Q9-1 腹部MRI検査を目的とする患者さんで、
検査前に食事を摂ってきた場合、
どうしますか?
………………………………………………………… 29
【MEMO】●食物の胃通過時間
検査時
注意しておくことはありますか?…………… 30
Q10 MRI検査のセッティングにあたって、
MRI検査において患者さんに熱傷をきたさないようにするには?
【MEMO】●MRI検査中のモニタリング方法
MRI検査において表面マーカーとしてどのようなものが用いられていますか?
Q11 造影MRI検査で、投与する造影剤の量や種類により、副作用発現率に違いがありますか? … 32
Q11-1 造影剤投与量が増えると副作用発現率は高くなりますか? ……………………………………… 32
Gd-EOB-DTPAの投与量が増えると副作用発現率は高くなりますか?
どのような留意点がありますか?
Q12 造影剤を注入する際には、
……………………………… 34
Q12-1 造影剤の注入は、
どの部位から行うのが望ましいですか? ………………………………………… 34
Q12-2 他の薬剤投与に用いている静脈ルートから造影剤を投与してもよいですか? ………… 35
IVHカテーテルからGd造影剤を投与できますか?
【MEMO】●造影剤開封時の注意
Q12-3 注入速度が画像に影響を及ぼしますか? …………………………………………………………………… 36
【MEMO】●Ringing Artifact
Q12-4 造影剤が眼に入ったり、
服や検査機器などについた場合には
どんな処置を行えばよいですか? ………………………………………………………………………………… 36
検査時
Q13 血管外漏出発生時の処置について教えてください ………………………………………………… 37
造影MRI検査における血管外漏出の発現頻度はどのくらいですか?
Q13-1 具体的にはどんな処置が必要ですか? ………………………………………………………………………… 37
■参 考 ヨード造影剤血管外漏出時の症状
血管外漏出時には温罨法と冷罨法のどちらがよいですか?
血管外漏出を予防するにはどうすればよいですか?
【MEMO】●血管外漏出のリスクの高い患者さんおよび予防方法
Q14 Gd造影剤が他の検査に影響を与えることがありますか?…………………………………… 40
Q14-1 Gd造影剤は臨床検査結果に影響を与えますか? ……………………………………………………… 40
Q14-2 Gd造影剤はX線検査にどのような影響を与えますか? ……………………………………………… 41
造影MRI検査とヨード造影剤による造影X線検査を同日に施行する場合には?
(ヨード)
のX線吸収率
【MEMO】●GdとI
Q14-3 Gd造影剤が核医学検査にどのような影響を与えますか? ………………………………………… 41
造影MRI検査と核医学検査を同日に施行する場合は?
Q14-4 Gd造影剤は磁気共鳴胆管膵管撮影
(MRCP)
にどのような影響を与えますか? …… 42
Gd-EOB-DTPAがMRCPに与える影響は?
Q14-5 同日に造影MRI検査と他の検査を行う場合に、
どのようなことを考慮しますか? …… 42
検査後
投与後どれくらいで体外に排泄されますか? ………………………………… 44
Q15 Gd造影剤は、
Gd-EOB-DTPAの排泄は?
Q15-1 腎機能障害のある患者さんではどれくらいで造影剤が排泄されますか? ………………… 46
腎機能障害のある患者さんにおけるGd-EOB-DTPAの排泄は?
Q15-2 造影剤は血液透析でどれくらい除去されますか? ……………………………………………………… 47
Gd-EOB-DTPAは血液透析でどれくらい除去されますか?
副 作 用 につい て
Q16 造影剤による副作用発現に備えどのようなことが必要ですか? ………………………… 48
備えておくべき救急医薬品と器具には、
どのようなものがありますか?
アナフィラキシー様反応に対してステロイドは即効性がありますか?
【MEMO】●アドレナリンの投与経路
【MEMO】●βブロッカーを服用している患者さんにはどのような注意が必要ですか?
Q16-1 造影剤によるアナフィラキシー様反応が回復した患者さんは、
いつ帰宅させたらよいですか?
…………………………………………………………………………………… 50
その後、患者さんにはどのような指導が必要ですか?
Q16-2 造影剤による副作用はどれくらいの頻度で発現しますか?………………………………………… 51
Gd-EOB-DTPAの副作用にはどのようなものがありますか?
Q16-3 遅発性の副作用はどのくらいの頻度で発現しますか? ……………………………………………… 53
検査前
Q1
A
MRI検査で
注意を要することは何ですか?
検査時
MRI装置は強力な磁場を発生させるため、体内留置金属の
ある患者さんなどMRI検査が施行できない患者さんがいま
す。また、
酸素ボンベ吸着事故なども報告されており、
MRI
検査室に入るスタッフにも注意が必要です。新しい検査ス
タッフへの教育が重要です。
■ MRIガントリーに吸引される磁性体
(レンチ)
検査後
MRI装置周辺の磁場分布は?
最近の装置はアクティブシールド法を
採用することで、磁場のシールド性能
◎従来型とアクティブシールド型の外部磁場
が格段に向上したため、
マグネット開口
副作用について
部から距離が離れると急激に磁場強度
磁場強度
が低下する特徴をもちます。そのため、
マグネット近傍まで磁性体(掃除機、
酸 素ボンベ、工 具、モ ニター など)の
吸引に気づかず、突然引き寄せられる
従来型
アクティブ
シールド型
ので、一層注意を払わなければなりま
せん 1)。
6
アクティブシールド型では
マグネットに近づくと急激に磁場が強くなる
距離
検査前
MRI装置の磁場の強さは?
磁場強度の単位は、
テスラ
(T)
またはガウス
(G)
が用いられており、1テスラは10,000ガウスに相当します。
現在の MRI 装置
0.2 ∼ 3T(2,000 ∼ 30,000G)
Q1-1
ピップエレキバン
約100G
約800G
MRI検査で注意を要するのは、
どのような患者さんですか?
下表のような患者さんです。また、患者さんが時計、磁気カードなどの所持品を検査室に持ち込まない
よう指導します。
◎MRI問診、確認事項
検査時
A
家庭用の冷蔵庫
2)
ⅰ. 禁忌
[ 心臓ペースメーカー装着、非磁性体である確認が取れない脳動脈瘤クリップ、体内に埋め込んだ
生命維持装置、体外の生命維持装置への依存、高度の閉所恐怖症 ]
ⅱ. 非磁性体との確認が取れない体内の金属
[ 心臓人工弁、外科用クリップ、ステント、インプラント、職業あるいは軍事活動による金属断片
(とくに強磁性体)など ]
[ 心停止の可能性が高い患者、閉所恐怖症、心不全、発熱、発汗能力の低下・喪失、
検査後
ⅲ. 特別な注意の必要性
意識がない・鎮静剤を大量に摂取・錯乱・確実なコミュニケーションが取れない患者 ]
ⅳ. 永久的な刺青、アイライン、金属性顔料を使用した化粧品
[ 微量の金属類が含まれている場合があり、火傷や画像に悪影響を及ぼす可能性がある ]
ⅴ. 妊娠
[ 胚または胎児への安全性が確立されていない ]
ⅵ. 造影剤を使用する場合、喘息または造影剤に対する副作用の既往
●
時計、携帯電話などの電子機器、磁気カード、ホルター心電図
●
金属を含む貼り薬(ニトロダームTTS、ニコチネルTTS)
●
ヘアピン、アクセサリー(ネックレス、ピアス、指輪など)
副作用について
検査室に持ち込んではいけない所持品とは?
● カラーコンタクト
その他の金属物(ピップエレキバン、金属類のついた衣類・下着、
メガネ、ベルト、はずせる
入れ歯、かつら、使い捨てカイロ、小銭、鍵、安全ピン、ライター、補聴器など)
7
検査前
MRI安全性のWebサイト
●
Frank Shellock の Web サイト http://www.mrisafety.com
MRIの安全性に関する最新かつ安全な情報を得ることができます。また、体内埋め込み装置あるいは
体内金属の名称を打ち込んで、安全性に関するデータベースを検索できます。
金属探知機
金属探知器による金属チェックを行っている施設もあります。ただし、金属探知機は、
小さな金属や深部にあ
検査時
る金属などを検知できない場合もあるので注意が必要です。
Q1-2
A
MRI検査でスタッフが注意することは、
どのようなことですか?
強大な磁場の危険性を医療機関内に周知させ、磁性体をMRI検査室内に絶対に持ち込ませないように
します。特に、MRI検査室にたまに来訪する医師・看護師・救急時の応援医師などの所持品(白衣ポ
ケットのはさみ、
ナイフ、
鉗子、
ヘアピンなど)
に注意し、磁性体チェックを常時確実に行えるよう、
MRI担
当技師または医師は、
常にMRI検査室全体を監視します。また、
救急時には磁場の危険を熟知しない医療
検査後
関係者が、
検査室に不意に侵入する可能性があるので特に注意が必要です2)。
MRI検査対応機器の全てが非磁性体か?
MRI検査対応の心電図モニターがマグネットに吸着した事例が報告されています。MRI検査対応機器の多
くは、
RFノイズの影響を抑え、
正確にモニターできるとの意味で、
全部品を非磁性体で構成しているわけで
はありません。
「MRI検査対応=非磁性体」
と勘違いしないようスタッフへの教育が必要です3)。
【参考文献】
1)高原太郎:INNERVISION 16(11):76-79(2001)
副作用について
8
2)日本医学放射線学会:放射線診療事故防止のための指針 Ver.4(2002)
3)日本放射線技師会 放射線機器管理士部会 監修 , 放射線機器管理シリーズ X 線・MRI・CT,
日本放射線技師会出版会(2007)
Q2
A
参照
Q2-1 P10
参照
Q3 P14
●小児
参照
Q4 P20
●高齢者
参照
Q5 P23
●妊娠中の女性
参照
Q6 P24
●授乳中の女性
参照
Q7 P26
●採血が予定されている患者
参照
Q14-1 P40
●血清ビリルビン値が
参照
MEMO P12
●血清フェリチン値が顕著に高い患者(Gd-EOB-DTPA)
参照
MEMO P12
●リファンピシン類を投与されている患者(Gd-EOB-DTPA)
参照
MEMO P28
●喘息
●Gd造影剤の副作用歴
●アレルギー歴
●ヨード造影剤の副作用歴
NSF を起こしやすい患者
検査後
副作用を起こしやすい患者
検査時
Gd造影剤による副作用の危険因子としては、
喘息の既往歴、
アレルギー歴、Gd造影剤の副作用歴、
ヨード造影剤の副作用
歴があげられます。また、重篤な腎障害のある患者さん、透
析の患者さんは、
腎性全身性線維症
(NSF:Nephrogenic
Systemic Fibrosis)
の危険因子とされています。このよ
うな患者さんでは、造影MRI検査を行う際に注意する必要が
あります。
そのため、
添付文書の
「禁忌」、
「原則禁忌」
の項目などを参考
とし、
問診などにより危険因子のチェックを行った上で造影
MRI検査の可否判断、副作用処置の準備などを十分に行う
ことが必要です。
検査前
造影MRI検査で注意を要するのは、
どのような患者さんですか?
●透析
●重篤な腎障害(eGFR
< 30mL/min/1.73m2)
●急性腎不全
その他
副作用について
3mg/dL を超える患者(Gd-EOB-DTPA)
9
検査前
eGFR(estimated glomerular filtration rate):推算糸球体濾過量
血清クレアチニン値は腎機能障害の指標として広く用いられてきましたが、年齢、筋肉、性別などにより変動
するため、
痩せた女性や高齢者では、血清クレアチニン値が正常でも、実際には糸球体濾過値(GFR)
が低下
している場合があります。
より正確な腎機能を評価するにはイヌリンクリアランスを測定することが望ましいとされていますが、
これら
の測定は煩雑なため、一般的にはGFR推算式(eGFR)が用いられます。日本腎臓学会から日本人のGFR
推算式が発表されています1)。
■ 日本人のGFR推算式1)
検査時
eGFR(mL/min/1.73 m2)=194 × Cr− 1.094× Age − 0.287
女性は× 0.739
Q2-1
検査後
A
※酵素法で測定された血清クレアチニン
(Cr)値を用いる。
※18歳以上に適用する。
造影剤副作用の危険因子を持つ患者さんは、
どれくらいリスクが高いですか?
副作用の発現率がおよそ2 ∼ 9倍高いと報告されています2)。
喘息やアレルギー歴のある患者さんでは副作用発現率がおよそ2倍、造影剤副作用歴のある患者さん
ではおよそ3 ∼ 9倍高いと報告されています2)。
■ 副作用発現の危険因子2)
危険因子
副作用発現率(例数)
あり
3.7%
(31/831)
なし
2.4%
(312/13,219)
あり
3.7%
(144/3,860)
なし
1.9%
(200/10,310)
喘 息
アレルギー歴
副作用について
10
Gd造影剤副作用歴あり
21.3%
(16/75)
ヨード造影剤副作用歴あり
6.3%
(54/857)
全症例
2.4%
(372/15,496)
A
問診票ではどのような項目を確認しますか?
検査前
Q2-2
一般に副作用発現の危険因子、患者さんの疾患、妊娠の有無などを確認します。
◎問診票の一例
【問診票】
1. 今まで、造影剤(注射)を用いた検査を受けたことがありますか?
□なし □あり:CT 検査、腎臓検査、胆嚢検査、血管造影、MRI 検査
2. その時、副作用はありましたか?
□なし □あり:発疹、吐き気、嘔吐、その他( )
□なし □あり:かぶれ・じんま疹・喘息・皮膚炎・アトピー・のみ薬・注射の副作用
4. 喘息であったり、過去に喘息といわれたことがありますか?
検査時
3. アレルギー体質、アレルギー性の病気がありますか?
□なし □あり
5. 現在、妊娠中、または妊娠している可能性がありますか?
□なし □あり □わからない
造影剤の添付文書の禁忌・原則禁忌を掲載している施設もあります。
Gd造影剤の添付文書に記載されている
「禁忌」
・
「原則禁忌」
・
「慎重投与」
(1)本剤の成分又はガドリニウム造影剤に対し過敏症の既往歴のある患者
(2)重篤な腎障害のある患者
検査後
【禁忌】
【原則禁忌】
(1)一般状態の極度に悪い患者 (3)重篤な肝障害のある患者
(2)気管支喘息の患者
【慎重投与】
(1)アレルギー性鼻炎、発疹、蕁麻疹等を起こしやすいアレルギー体質を有する患者
(2)両親、兄弟に気管支喘息、
アレルギー性鼻炎、発疹、蕁麻疹等を起こしやすい
アレルギー体質を有する患者
(3)薬物過敏症の既往歴のある患者
副作用について
(4)既往歴を含めて、痙攣、
てんかん及びその素質のある患者
(5)腎障害のある患者又は腎機能が低下しているおそれのある患者
(6)高齢者
(7)幼・小児
マグネビスト静注 添付文書2011年9月現在
11
検査前
Q2-3
A
Gd造影剤の副作用を低減する方法はありますか?
Gd造影剤の副作用を低減する方法は確立されていません。
有効性は確立されていませんが、
ヨード造影剤に準じて
「前投薬」
を行う場合があります。
また、患者さんの不安を軽減する工夫がなされる場合もあります。
前投薬にはどのようなことが行われていますか?
有効性は確立されていませんが、下記のような方法が行われています。
3)
検査時
■ 副作用予防のための前投薬(日本医学放射線学会 医療事故防止委員会)
①造影剤使用前の2回のコルチコイド投与
(造影剤使用の12時間および2時間前に32mg経口投与)
②造影剤使用1時間前のメチルプレドニゾロン120mg静注
③多剤併用
(造影剤使用13、
7、
1時間前にプレドニン50mg経口投与と1時間前にジフェンヒドラ
ミン50mg経口投与)
検査後
患者さんの不安を軽減するにはどのようなことが行われていますか?
一般に、
事前の十分な検査説明、
検査中の適度な会話、
音楽を流すなどの工夫がなされていま
す。Gd造影剤では検討されていませんが、
ヨード造影剤では不安感が大きいほど副作用の発現
BGMを聞かせることで副作用の発現率が低くなることが報告されています5)。
率が高いことや4)、
特にMRIはガントリーが狭いことから、
不安感や恐怖感を取り除くことが重要と思われます。
Gd-EOB-DTPAを投与する患者さんで注意を要するのは、
どのような患者さんですか?
副作用について
12
血清ビリルビン値が3mg/dLを超えた患者さんでは糞中排泄率は0.5%未満に低下し、
肝実質の信号増強
効果の減弱が認められています。また、血清フェリチン値が顕著に高い患者さんでは、肝臓のフェリチンに
よる磁化率効果により、肝実質の信号増強効果が減弱する可能性があります6)。
1)CKD 診療ガイド 日本腎臓学会編 2009
検査前
【参考文献】
2)Nelson KL et al.:Radiology 196(2):439-443(1995)
3)(社)日本医学放射線学会 医療事故防止委員会 : 造影剤血管内投与のリスクマネジメント(2006)
4)津留英子ほか:臨床看護 15(12):1815-1820(1989)
5)松平直哉ほか:映像情報 (M) 26(16):977-980(1994)
6)EOB・プリモビスト注シリンジ添付文書(2011 年 9 月)
検査時
検査後
副作用について
13
検査前
Q3
A
腎機能障害のある患者さんへの
造影剤投与にあたって、
どんな注意が必要ですか?
検査時
重篤な腎機能障害のある患者さんは、Gd造影剤による腎性
全身性線維症
(NSF:Nephrogenic Systemic Fibrosis)
の発症が報告されているので十分注意が必要です。
また、腎機能障害のある患者さんに投与する場合には、排泄
遅延から急性腎不全など、
症状が悪化するおそれがあるため
注意が必要です。
NSFとは何ですか?
NSFとは、重篤な腎機能障害患者さん、特に透析患者さんにおいて、Gd造影剤の投与数日から
数ヶ月後、時に数年後に皮膚の腫脹、発赤、疼痛などが急性ないし亜急性に発症する疾患です。
進行すると皮膚の硬化、筋肉表面や腱などに石灰化を生じ、関節が拘縮して高度の身体機能障
害に陥り、時に死亡例も報告されています。一般的に左右対称に生じ、下肢から発症することが
検査後
多く、上肢、体幹部に進展し、頭部、顔面への波及はないとされています。病変の主体は線維組
織であり、
皮膚のみならず皮下組織、筋肉まで及び、剖検例では横紋筋、胸膜、心、腎などの多臓
器に及びます1,2)。
最初の症例はCowperらにより1997年に発症したと報告され3)、2006年に初めてGrobnerら
によりGd造影剤とNSFとの関連性が報告されました4)。国内外の規制当局や学会から警告・注
意勧告、
ガイドラインなどが発表され、その後、適正使用が推進されたため、NSFの発症は
2005∼2006年をピークに減少しており、
現在では新たな症例はほとんど報告されていません。
NSFの危険因子にはどのようなものがありますか?
「腎障害患者におけるGd造影剤使用に関するガイドライン」5)では、
副作用について
以下の危険因子があげられています。
〈原則としてGd造影剤を使用せず、
他の検査法で代替すべき病態〉
・ 長期透析が行われている終末期腎障害
・ 非透析例でGFRが30mL/min/1.73m2未満の慢性腎不全
・ 急性腎不全
〈その他〉
・ Gd造影剤の大量投与、
反復性投与
・ 大きな組織障害
(活動性感染症、動静脈血栓症、大きな外科手術など)
・ 肝移植後または肝移植待機中の腎機能低下患者
・ エリスロポエチンの併用
・ 腹水や羊水など体腔内に液体貯留が認められる場合
14
A
NSFの発症を防ぐには、腎機能障害の重症度に応じて、
どのような対応を取ればよいですか?
検査前
Q3-1
5)
「腎障害患者におけるGd造影剤使用に関するガイドライン」
では、下表のように推奨されています。
■ 腎障害患者におけるGd造影剤使用に関するガイドライン5)
慢性腎臓病患者
透析患者
GFR(mL/min/1.73m2)
急性腎不全患者
30∼59
原則としてGd造影剤は使用しない
利益と危険性とを
(やむを得ず使用する場合には、
NSF発症報告の多い
慎重に検討し、
造影剤の使用を避ける)
最少量を使用する
5 or 4
60≦
検査時
0∼29
危険性が高いとする
根拠には乏しい
3
2 or 1
CKD stage
NSFの発症率はどのくらいですか?
の差は明確ではありません。しかし、現在までに入手可能なデータをみる限りにおいては、
検査後
NSFの発症確率を正確に推計することは容易ではなく、Gd造影剤間におけるNSF発症リスク
Gadodiamideに最も報告が多く、腎障害患者さんあるいは透析患者さんに投与された場合の
発症確率は概ね5%以下と推定されます。次いで、
Gadopentetate dimeglumineに報告が
多く、Gadoteridol、GadoterateによるNSF発症の報告はほとんどない5)とされています。
A
NSFを治療するにはどのような方法がありますか?
腎移植などによる腎障害の改善がNSFの進行を遅らせたり改善したりしたという報告はありますが、
それ以外には現在までのところ有用性が確認された治療法はありません。
ひとたび発症すると不可逆的で有効な治療法がないことから、
ガイドラインを遵守することが重要です5)。
副作用について
Q3-2
15
検査前
第2版 : 2009年9月2日改訂
腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン
NSFとガドリニウム造影剤使用に関する合同委員会
(日本医学放射線学会・日本腎臓学会)
【はじめに】
検査時
重篤な腎障害のある患者へのガドリニウム造影剤使用に関連して、腎性全身性線維症
(Nephrogenic Systemic
Fibrosis:以下、NSF)の発症が報告されている。NSFはガドリニウム造影剤の投与数日から数ヶ月後、時に数年後
に皮膚の腫脹や硬化、
疼痛などにて発症する疾患であり、進行すると四肢関節の拘縮を生じて活動は著しく制限さ
れる。現時点での確立された治療法はなく、死亡例も報告されている。
本ガイドラインはNSFのさらなる発生を防ぐことを目的としたものであり、
ガドリニウム造影剤の使用にあたって
は、以下の方針を推奨する。
【本文】
1. ガドリニウム造影剤は、腎障害の有無にかかわらず、診断のために不可欠と考えられる場合のみ使用されるべき
であり、投与にあたっては各々の医薬品添付文書に則り、
用法、用量を厳守すること。また、
CTや血管造影など
のX線検査のための造影剤として、
ガドリニウム造影剤を使用してはならない。
検査後
2. 造影MRI検査にあたっては、
緊急検査などでやむを得ない場合を除き、
腎機能
(糸球体濾過量:GFR)
を評価すべ
きである。臨床的には、
性別、年齢、
および血清クレアチニン値から推算GFR(推算糸球体濾過量:以下、eGFR)
を算出して腎機能を評価することが推奨される
(参考1)
。なお、
血清クレアチニン値は、
できるだけ造影MRI検
査日直近のデータを使用する。
3. 原則としてガドリニウム造影剤を使用せず、
他の検査法で代替すべき病態として以下のものがある。
●
長期透析が行われている終末期腎障害
●
非透析例でGFR が30mL/min/1.73m2未満の慢性腎不全
●
急性腎不全
4. 上記3に該当するが、
やむを得ずガドリニウム造影剤を使用しなければならない場合には、NSF発症報告の多い
ガドリニウム造影剤の使用を避けるのが望ましい
(参考2)。
5. GFRが30mL/min/1.73m2以上、60mL/min/1.73m2未満の場合には、
ガドリニウム造影剤使用後のNSF
副作用について
発症の危険性が必ずしも高くないとする意見もあるが、
実際にNSF発症の報告もあり、
ガドリニウム造影MRI検
査による利益と危険性とを慎重に検討した上で、
その使用の可否を決定する必要がある。なお、
使用に当たって
は必要最少量を投与すべきである
(参考2)。
6. GFRが60mL/min/1.73m2 以上の場合には、
ガドリニウム造影剤使用後のNSF発症の危険性が高いとする
根拠は乏しい。
7. 既にNSFと診断されている症例には、
ガドリニウム造影剤は投与すべきではない。
8. NSFならびにNSFとガドリニウム造影剤使用との関連については、
いまだ十分に解明されておらず、本ガイドラ
インは現時点で知り得た事実に基づくものである。今後新たな知見が得られることにより、本ガイドラインの内
容は適宜変更されるものである。
16
検査前
【参考】
1. eGFRに関する諸注意
1)
日本人を対象とした以下の推算式を用いるのが望ましい。
=194×Cr−1.094×Age−0.287
男性:eGFR(mL/min/1.73m2)
女性:eGFR(mL/min/1.73m2)
=194×Cr−1.094×Age−0.287×0.739
2)急性腎不全では腎機能が安定していないので、
eGFRによる評価は行うべきではない。
3)GFR推算式は成人用であり、18歳未満には適応されない。
4)GFR推算式は妊娠中には適応されない
(妊娠時の実測GFRデータがない)
。
5)eGFRの正確度はGFR実測値の±30%の間に75%の症例が含まれる程度である。正確な腎機能評価が必
要な場合にはGFR
(イヌリンクリアランス)、Ccr(クレアチニンクリアランス)
を実測する。CcrはGFRより高
6)筋萎縮のみられる患者(長期臥床などによる廃用性萎縮や筋ジストロフィー症、多発性筋炎、
筋萎縮性側索硬
化症などの筋萎縮性疾患)
などクレアチニン産生量低下が認められる症例では、GFRが高く推算される。
検査時
値となるので×0.715で補正し、1.73m2の体表面積補正値で評価を行う。
7)極端な体型、低栄養状態の症例、浮腫、胸水、腹水などの体液貯留時には誤差が大きくなる可能性がある。
8)血清クレアチニン値の変動に関する以下の点に留意する。
①血清クレアチニン値には10%程度の日内変動がある。
②血清クレアチニン値は、
激しい運動時や肉の大量摂取時には上昇し、
タンパク摂取制限時には低下する。
③シメチジン、
トリメトプリムは尿細管のクレアチニン排泄を減少させ、血清クレアチニン値を上昇させる可能
性がある。
2. NSFの発症確率を正確に推計することは容易ではなく、
ガドリニウム造影剤間におけるNSFのリスクの差は、
はっきりしない。しかし、現在までに入手可能なデータを見る限りにおいては、Gadodiamide(Omniscan)
に最も報告が多く、腎障害患者あるいは透析患者に投与された場合の発症確率は概ね5%以下と推定され
る。次 い で、
Gadopentetate dimeglumine(Magnevist)
に 報 告 が 多 く、Gadoteridol
(ProHance)
、
検査後
Gadoterate
(Magnescope)
によるNSF発症の報告はほとんどない。
3. NSF発症の確率を高める可能性のある因子として、
ガドリニウム造影剤の大量投与あるいは反復性投与などが
あげられる。そのほか、大きな組織障害
(活動性感染症、
動静脈血栓症、
大きな外科手術など)
、肝移植後または
肝移植待機中の腎機能低下患者、
エリスロポエチンの併用なども報告されている。
4. 腹水や羊水など体腔内に液体貯留が認められる場合には、
ガドリニウム造影剤が長期間滞留する可能性がある
ため、
ガドリニウム造影剤の使用については慎重であるべきである。
【参考文献】
1. Matsuo S, I mai E, Horio M, et al; Collaborators developing the Japanese equation for
estimating GFR. Revised equations for estimating glomerular filtration rate from serum
2. エビデンスに基づくCKD 診療ガイドライン2009. 日本腎臓学会編. 東京医学社 2009
3. Broome DR. Nephrogenic systemic fibrosis associated with gadolinium based contrast
副作用について
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agents: a summary of the medical literature reporting. Eur J Radiol 2008; 66: 230-234.
4. Penfield JG, Reilly RF. Nephrogenic systemic fibrosis risk: is there a difference between
gadolinium-based contrast agents?Semin Dial 2008; 21: 129-134.
5. Deo A, Fogel M, Cowper SE. Nephrogenic systemic fibrosis: a population study examining
the relationship of disease development to gadolinium exposure. Clin J Am Soc Nephrol
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17
検査前
6. Rydahl C, Thomsen HS, Marckmann P. High prevalence of nephrogenic systemic fibrosis
in chronic renal failure patients exposed to gadodiamide, a gadolinium-containing
magnetic resonance contrast agent. Invest Radiol 2008; 43: 141-144.
7. Reilly RF. Risk for nephrogenic systemic fibrosis with gadoterido(l ProHance)
in patients
who are on long-term hemodialysis. Clin J Am Soc Nephrol 2008; 3: 747-751.
8. Wertman Ba R, Altun E, Martin DR, et al. Risk of Nephrogenic Systemic Fibrosis:
Evaluation of Gadolinium Chelate Contrast Agents at Four American Universities.
Radiology 2008; 248: 799-806.
9. Cowper SE, Robin HS, Steinberg SM, et al. Scleromyxoedema-like cutaneous diseases in
検査時
renal-dialysis patients. Lancet 2000; 356: 1000-1001.
10. Gibson SE, Farver CF, Prayson RA. Multiorgan involvement in nephrogenic fibrosing
dermopathy: an autopsy case and review of the literature. Arch Pathol Lab Med 2006;
130: 209-212.
11. Kuo PH, Kanal E, Abu-Alfa AK, et al. Gadolinium-based MR contrast agents and
nephrogenic systemic fibrosis. Radiology 2007; 242: 647-649.
12. Sadowski EA, Bennett LK, Chan MR, et al. Nephrogenic systemic fibrosis: risk factors and
incidence estimation. Radiology 2007; 243: 148-157.
13. Prince MR, Zhang H, Morris M, et al. Incidence of nephrogenic systemic fibrosis at two
large medical centers. Radiology 2008; 248: 807-816.
検査後
14. Perez-Rodriguez J, Lai S, Ehst BD, et al. Nephrogenic Systemic Fibrosis: Incidence,
Associations, and Effect of Risk Factor Assessment: report of 33 cases. Radiology
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15. Hope TA, Herfkens RJ, Denianke KS, et al. Nephrogenic systemic fibrosis in patients with
chronic kidney disease who received gadopentetate dimeglumine. Invest Radiol 2009;
44: 135-139.
16. Othersen JB, Maize JC, Woolson RF, et al. Nephrogenic systemic fibrosis after exposure
to gadolinium in patients with renal failure. Nephrol Dial Transplant 2007; 22:
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17. Agarwal R, Brunelli SM, Williams K, et al. Gadolinium-based contrast agents and
nephrogenic systemic fibrosis: a systematic review and meta-analysis. Nephrol Dial
副作用について
18
Transplant 2009; 24: 856-863.
A
Gd造影剤は腎臓に影響を及ぼしますか?
検査前
Q3-3
Gd造影剤を適正に使用した場合、
腎機能に及ぼす影響は少ないとされています6、7)。
ただし、Gd造影剤はほぼ全量が腎臓から排泄されるため、腎機能障害のある患者さんでは、
排泄が遅れることが報告されています8)。
Gd造影剤による急性腎不全の報告はありますか?
Gd造影剤による急性腎不全の報告は極めてまれであり9)、そのほとんどがヨード造影剤の代替
として血管造影などに用いられた場合の報告です10、11)。
検査時
腎機能障害例に対するX線検査のために、Gd造影剤を使用すべきでは
12)
ありません 。
【参考文献】
1) 日本磁気共鳴医学会 安全性評価委員会 監修:MRI 安全性の考え方:239-245(2010) 秀潤社
2) Tsushima Y et al.:Br J Radiol 83(991):590-595(2010)
3) Cowper SE et al.:Lancet 356(9234):1000-1001(2000)
5) NSF とガドリニウム造影剤使用に関する合同委員会(日本医学放射線学会・日本腎臓学会)
:
腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン 第 2 版(2009 年 9 月改定)
検査後
4) Grobner T:Nephrol Dial Transplant 21(4):1104-1108(2006)
6) Ledneva E et al.:Radiology 250(3):618-628(2009)
7) Prince MR et al.:JMRI 5(6):162-166(1995)
8) Schuhmann-Giampieri G et al.:Invest Radiol 26(11):975-979(1991)
9) 原田なつみ ほか:日本医放会誌 61(10):552(2001)
10) Gemery J et al.:AJR 171(5):1277-1278(1998)
11) Schenker MP et al.:J Vasc Interv Radiol 12(3):393(2001)
12) ESUR Guidelines on Contrast Media Ver.7.0(2008)
副作用について
19
検査前
Q4
A
小児に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?
検査時
小児は腎機能をはじめとする生理機能が未熟な上、意思疎通
が上手くできないことが想定できるため、患児の状態を十分
に観察するなど特段の注意を払う必要があります。
MRIは体動による影響を大きく受けるため、
撮像時に安静が
保てないと良好な画像を得ることができません。また、撮像
時に大きな音が発生し、
患児の不安も強いため、小児のMRI
検査では不安を取り除く工夫や、
鎮静を目的とした薬剤の投
与が行われる場合もあります。
■ 小児造影MRI施行時の注意点
理 由
モニタリング装置を用いた注意深い観察
小児では身体の異常を上手く表現できない場合があるためです。
注入に際し穿刺部位の注意深い観察1)
小児の血管は細く血管外漏出のリスクが高いと考えられるためです。
薬剤による鎮静の考慮
体動によるアーチファクトを防ぐためです。 参照
検査後
注意点
Q4-1
副作用について
A
小児における造影剤投与量の目安はどれくらいですか?
成人と同じく0.2mL/kgが投与されています。新生児・乳児は成人と比べて体重あたりに占める細胞外
液量が多く、
造影剤を減量すると十分な造影効果が得られない可能性があります2)。
Q4-2
A
Q4-3 P21
小児と成人では副作用発現率、症状が異なりますか?
一般に副作用の発現率に違いは認められておらず、
小児に特有の副作用も認められていません3、4)。
しかし、小児では生理機能が未熟であるため、
常に慎重に検査を行うことが重要です。
小児のNSF症例はごく少数であり、6歳未満の小児では報告されていません。
しかし、小児のNSF発現の可能性が低いとする十分な根拠はないことから、
成人と同様に重篤な腎障害患者さんへの
使用について注意喚起がされています5)。 参照
20
Q3 P14
検査前
小児にGd-EOB-DTPAを投与した報告はありますか?
肝芽腫、肝血管腫、肝細胞線腫などの診断を目的として、3 ∼ 15歳の小児に投与した報告が
あります6、7)。
小児に造影剤を投与する際の鎮静方法には、
どのようなものがありますか?
Q4-3
可能な限り自然入眠、
ビデオ閲覧、家族付き添いなどの薬物以外の鎮静方法を活用しますが、
検査時
A
協力が得られない場合は薬剤による鎮静が必要となる場合もあります8)。
すべての鎮静剤には呼吸抑制、気道閉塞、無呼吸などの合併症を引き起こす可能性があることから9)、鎮静剤の使
用にあたっては、保護者への説明、鎮静前の食事制限、検査中のモニタリング、検査後の対応など十分な注意が必
要です10)。
■ 効率よく催眠・鎮静させるための方法10)
検査前の指導
●
午前の検査では普段より1∼ 2時間早く起こすようにし、
午後の検査なら昼寝をさせないようにする。
●
来院途中の交通機関の中で眠らせないように注意する。
●
鎮静剤を用いる場合は、
嘔吐による誤嚥、窒息を避けるため、検査前最低3時間は絶食とする。
●
保護者は静かな場所で子供が安心して眠れるように、
眠るまでずっと傍に居るようにする。
●
入眠の確認後、5分程度待ってから検査室へ移動する。
●
眠りにくい場合は移動用ストレッチャーの上で寝かせる。耳栓をすると覚醒しにくい。
検査後
検査当日、来院時の指導
検査後の指導
●
覚醒を確認してから帰宅させる。
●
当日はふらつきが残ることもあり、転倒・衝突などの事故に注意するよう指導する。
■ 鎮静に使われる主な薬剤 9、10)
経口剤・坐剤
●
シロップ)
抱水クロラール
(エスクレ 坐薬)
● ミタゾラム(ドルミカム)
● ヒドロキシジン(アタラックス
● ジアゼパム(セルシン)
●
●
-P)
ケタミン(ケタラール)
チオペンタールナトリウム(ラボナール)
副作用について
静脈注射剤
●トリクロホスナトリウム
(トリクロリール
どのようにモニタリングしますか?
パルスオキシメーターや心電図などによりモニタリングが行われます。また、
患児の鼻先にティッ
シュペーパーを付けて、呼吸の確認をしたり、足背動脈で脈拍を触知することもあります。
21
検査前
【参考文献】
1) Siegel MJ:Eur Radiol 15(Suppl 4):D32-D36(2005)
2) Elster AD:Radiology 176(1):225-230(1990)
3) Nelson KL et al.:Radiology 196(2):439-443(1995)
4) Dillman JR et al.:AJR 189(6):1533-1538(2007)
5) ACR Manual on Contrast Media Ver.7(2010)
6) Marrone G et al.:Pediatr Radiol 41(1):121-124(2011)
7) Meyers AB et al.:Pediatr Radiol 41(9):1183-1197(2011)
8) 近藤陽一:小児内科 39( 増 ):79-80(2007)
9) 長村敏生:小児内科 40(2):441-443(2008)
10) 藤田和俊ほか:日本小児放射線学会雑誌 23(1):25-32(2007)
検査時
検査後
副作用について
22
Q5
A
検査時
一般に高齢者では腎機能・循環動態などの生理機能が低下
している可能性が高いため、造影剤副作用予防の観点から、
腎機能のモニタリング、脱水状態の補正など特段の注意を
払う必要があります。
検査前
高齢者に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?
■ 高齢者造影MRI施行時の注意点
注意点
理 由
加齢に伴い腎機能が低下し、造影剤の排泄が遅延する可能性があ
検査前・後での腎機能のモニタリング
るため、検査前・後で腎機能に異常がないかの注意深い確認が必
要です。
脱水状態の補正
Q5-1
A
いよう注意が必要です。
血管外漏出のリスクが高いと考えられるためです。参照
Q13 P37
検査後
注入に際し穿刺部位の注意深い観察
高齢者では脱水傾向が認められるため、検査前に脱水状態にならな
高齢者と成人とでは副作用発現率、症状が異なりますか?
一般に副作用の発現率に違いは認められておらず、
高齢者に特有の副作用も認められていません1)。
しかし、高齢者では生理機能低下や生体の防御機能の低下が考えられるため、
常に慎重に検査を行うこ
とが重要です。
副作用発現率(例数)
∼ 30 歳
0.68%
( 7/1,027 例)
31 ∼ 50 歳 0.61%
(10/1,629 例)
51 ∼ 70 歳 0.36%
(10/2,812 例)
71 歳∼
0.45%
( 5/1,114 例)
副作用について
■ 年齢によるGd造影剤の副作用発現率1)
P=0.49 χ2検定
【参考文献】
1)氏田浩一ほか:日本磁気共鳴医学会雑誌 30(1):10-14(2010)
23
検査前
妊婦に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?
Q6
A
検査時
妊婦に対するMRI検査の安全性は確立されていないこと
から、診断上の有益性が危険性を上回ると判断される場合
のみにMRI検査を施行するべきです。また、
動物実験におい
て造影剤の胎仔への影響は認められていませんが、
妊婦への
造影剤投与に関する安全性も確立されていません。
Q6-1
A
MRI検査は胎児に影響を及ぼしますか?
現在のところMRIによる明らかな胎児への危険性は報告されていませんが、
超音波検査など他の検査法
で代替できないかどうかを検討し、
それでもなお、
MRI検査が必要な場合は、
診断上の有益性が危険性を
上回ると判断される場合にのみMRI検査を施行するべきです。一般的には、
細胞分裂が盛んな器官形成
検査後
期(妊娠4 ∼12週)
は極力避けることが望ましいとされています1-3)。
Q6-2
A
Gd造影剤は胎児に影響を及ぼしますか?
動物実験4、5)および臨床6)においてGd造影剤の胎盤通過性が報告されていますが、
催奇形性は認められてい
ません7、8)。また臨床において妊婦にGd造影剤を投与した報告では健常児を出産したとされていま
すが 9-11)、使用経験が少なく、妊婦に対する安全性は確立していません。
Gd造影剤は胎盤を通過して胎児循環へ入り、
胎児の腎臓から羊水に排泄されます。その後は比較的長
い期間、羊水中に貯留する可能性があるため、
NSFのリスクが高まる可能性があります。 参照
Q3 P14
■ 妊婦にGd造影剤を投与した報告6、9-11)
副作用について
造影目的
症例数
炎症性腸疾患の診断6)
2
子宮あるいは
胎盤異常の疑い9)
24
11
造影検査時の
妊娠期間
投与量
(mmol/kg)
胎児の転帰
妊娠 3 ヶ月
0.1
妊娠満期で健常児出産
妊娠 5 ヶ月
0.1
妊娠満期で健常児出産
妊娠16 ∼ 37週
0.1
全例健常児出産
多発性硬化症のフォロー
検査時妊娠していることに
気づかずGd造影剤投与10)
1
約9日
0.2
39週目に健常児出産
副甲状腺腫瘍の術前診断11)
1
妊娠32 ∼ 34週の間
不明
40 週目に健常児出産
検査前
Gd-EOB-DTPAは胎児に影響を及ぼしますか?
動物実験においてわずかな胎盤通過性が認められていますが、生殖試験では造影剤による
母獣、胎仔への影響(催奇形性など)は認められていません12)。
Gd造影剤およびGd-EOB-DTPAのFDA薬剤胎児危険度分類
FDA薬剤胎児危険度分類(Pregnancy Category)
において、
Gd造影剤およびGd-EOB-DTPAはカテゴ
リー Cに分類されています。
類は動物実験やヒトでの研究の結果をもとにA、
B、C、D、Xの5つのカテゴリーに分類されています。
検査時
FDA薬剤胎児危険度分類とは、
米国のFDAによる胎児に対する薬剤の危険度を示す評価基準です。この分
■ FDA薬剤胎児危険度分類基準
第1トリメスター(妊娠初期)の対照試験で胎児への危険性が否定され、胎児への
危険性はほとんどないと考えられるもの。
カテゴリー B
ヒトでの対照試験はないものの、
動物試験では胎児への危険性が否定されている
もの。または、動物試験で胎児への有害な作用がみられるものの、
妊婦での対照
試験で胎児への危険性が否定されているもの。
カテゴリー C
動物試験で催奇形性や胎仔毒性が認められているが、
ヒトでの対照試験はないもの。
またはヒト、
動物のいずれの試験も参考となるデータのないもの。
カテゴリー D
ヒト胎児への危険性は明確であるが、一定の条件下(生命の危機にある場合や
重篤な疾患であり、
より安全と考えられる薬剤が使用できない、
または効果が期待で
きない場合など)
で、その危険性を考慮しても使用による利益が容認されるもの。
カテゴリー X
ヒトまたは動物試験で胎児異常が示されている、
または、
ヒトでの使用経験で胎児
への危険性が明らかなもの、
またはこの両者であるもの。いかなる利益を考慮し
ても明らかに危険性が大きいもの。
1) 興梠征典:日本医事新報 4379:91(2008)
2) 小川理世ほか:画像診断 27(7):811-822(2007)
3) 赤坂好宣ほか:画像診断 27(7):833-840(2007)
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副作用について
【参考文献】
検査後
カテゴリー A
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12) EOB・プリモビスト注シリンジ インタビューフォーム(2011 年 9 月)
25
検査前
授乳婦に造影MRI検査を行う場合、
どのような注意点がありますか?
Q7
A
Gd造影剤は極わずかながら乳汁中への移行が報告されて
いるので、授乳を24 ∼ 48時間避けるよう指導してくださ
い。その間は搾乳することを推奨する報告もあります1)。
検査時
Q7-1
A
造影剤はどれくらい乳汁中へ移行しますか?
授乳婦18例にGd-DTPAを静注
(0.2mL/kg)
したところ、
24時間後までの乳汁中への移行量は投与
量 の0.04%以 下
(0.001 ∼ 0.04%)
と報 告されて います2)。また、授 乳 婦1例にGd-DTPAを静 注
(0.2mL/kg)
したところ、乳汁中のGd濃度は投与5時間後にピークとなり、24時間後には1μmol/L
以下に低下し
(下図)、33時間後までの乳汁中への移行量は投与量の0.011%と報告されています3)。
6
乳汁中Gd濃度(μmol/L)
検査後
3)
■ 乳汁中のGd濃度推移(一部改変)
5
4
3
2
1
0
0
10
20
30
40
時間(hr)
副作用について
26
造影剤はどれくらい乳児へ移行しますか?
乳児が授乳することにより、
乳汁中へ移行したGd造影剤が消化管から吸収される量は極わずか
であり、
乳児への移行量は授乳婦に投与した量の0.0004%未満と推算されています2)。
検査前
授乳中止に対する考え方
当初、ESUR:European Society of Urogenital Radiology
(欧州泌尿生殖器放射線学会)
ガイドライン
では造影剤の乳汁への移行は微量であり、授乳により乳児の消化管から吸収される量はさらに少なく、造影
剤の乳児に対するリスクは極めて低いことから、授乳は通常どおり継続してもよいとされていましたが、現在
ではNSFの問題から、造影剤投与後24時間は授乳を避けるべきと変更されています4)。
【参考文献】
1)Rofsky NM et al.:JMRI 3(1):131-132(1993)
3)Schmiedl U et al.:AJR 154(6):1305-1306(1990)
検査時
2)Kubik-Huch RA et al.:Radiology 216(2):555-558(2000)
4)ESUR Guidelines on Contrast Media Ver.7.0(2008)
検査後
副作用について
27
検査前
Q8
A
造影MRI検査を行うにあたり、
注意が必要な薬剤はありますか?
Gd造影剤と相互作用のある薬剤は報告されていません。
しかし、MR画像に影響を及ぼすために注意が必要な薬剤と
して静注用鉄剤があります。
検査時
Q8-1
A
静注用鉄剤が投与された患者さんでは
なぜ注意が必要ですか?
鉄欠乏性貧血治療薬であるコロイド性の静注用鉄剤を肝細胞癌患者さんに投与後、T1強調画像、T2
強調画像によるMR画像を撮像し、
肝臓と肝腫瘍のコントラストノイズ比(CNR)
が測定された結果、
鉄剤
投与後少なくとも24時間まで両画像のCNRに影響がみられています1)。
検査後
リファンピシンのGd-EOB-DTPA造影MRIへの影響(動物実験)
ラットを用いた動物実験において、
リファンピシンおよびGd-EOB-DTPAを静注すると、
Gd-EOB-DTPAの
肝実質の信号増強効果の低下が報告されています。これは、
リファンピシンが有機アニオントランスポーターを
介したGd-EOB-DTPAの肝細胞への取り込みを阻害することによると考えられています2)。
【参考文献】
1)Suto Y et al.:Br J Radiol 69(819):201-205(1996)
2)Kato N et al.:Invest Radiol 37(12):680-684(2002)
副作用について
28
Q9
A
検査時
一般に、
造影CT検査に準じて、
水分制限は行われていません。
ただし、
「嘔吐をきたした際の誤嚥」
や
「消化管・腹部・
(骨盤
部)
を検査の対象とする際の診断の妨げ」
を予防する目的で
は、検査前の1食を制限することがあります。
検査前
造影MRI検査にあたって
食事制限・水分制限は行われて
いますか?
磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)検査の場合
食事や水分摂取によって描出が悪くなることがあるため、
食事制限に加えて水分制限も行われる
場合があります。
腹部MRI検査の開始が、食後間もないようであれば検査開始時間を少しずらした方がよいとされてい
ます。検査前に食事を摂ってきてしまった場合、蠕動運動や残渣が画像に影響を及ぼす可能性があり
ます。また食事を摂っている場合には胆嚢が収縮しています。
食物の胃通過時間
胃がその内容物を十二指腸に排出する速度は摂取した食物の種類によって異なります。炭水化物に富む
食物の胃内停滞は数時間で、蛋白質の多い食物でやや長くなり、
脂肪を含む食品ではさらに長くなります。
300
200
150
副作用について
標準食(不活性ペクチン)
蛋白質
蛋白質+脂質
250
試験食排出量(mL)
A
検査後
腹部MRI検査を目的とする患者さんで、
検査前に食事を摂ってきた場合、
どうしますか?
Q9-1
100
50
0
0
20
40
60
80
100
(分)
(流動食300mLを摂取)
(Brooks FP:Integrative lecture:Response of the Gl tract to a meal. Undergraduate Teaching Project. American Gastroonterologica Association. 1974)
29
検査前
Q10
A
MRI検査のセッティングにあたって、
注意しておくことはありますか?
検査時
MRI検査のセッティングによっては、患者さんに熱傷をきた
したり、造影剤の投与ルートが外れたりするおそれがあるた
め注意が必要です。検査中にちょっとでも異常を感じたら
遠慮せずに知らせること、
また、知らせる手段を患者さんに
説明しておく必要があります。
■ セッティングにおける注意点
●
ケーブルの配置をチェックし、手や足を組まない
熱傷防止 ………………………… 熱傷を防止するために、
ように指導します。
●
造影剤投与ルートの外れ防止 … 検査着やケーブル、造影剤投与ルートが引っかかっていないかを確認し
ながら、ベッドをガントリー内に移動させます。
検査後
●
騒音対策 ………………………… MRI検査では傾斜磁場の高速な切り替えによって音が発生するため、大
きな音がすることを事前に伝え、
耳栓、ヘッドホンなどの減音器具を装着
してもらいます。
MRI検査において患者さんに熱傷をきたさないようにするには?
モニタリング装置のケーブルや人体によるループ形成のため、
誘導電流が発生し熱傷を生じた
と報告1-3)されていることから、ループを形成しないように注意するほか、体幹部の検査の際には
ズボン型検査着を着用することも一つの方法です2)。検査中にちょっとでも異常を感じたら、遠
慮せずに知らせるよう患者さんに説明しておく必要があります。
副作用について
30
検査前
■ ケーブルおよび人体によるループ形成の例
ケーブル
皮膚の接触によるループ形成
検査時
ケーブルによるループ形成
MRI検査中のモニタリング方法
MRI検査では患者さんの状況が観察しにくいことから、
容体の変化を把握するために、呼吸障害時、麻酔下、
鎮静下、
造影剤使用時、
小児などにおいては、
脈拍、
呼吸状態などをリアルタイムで監視するパルスオキシ
メータ
(SpO2、脈拍数)、心電図モニター、呼吸モニターなどを必要に応じて使用します。
MRI検査時、
位置確認のために表面マーカーが使われる場合があります。このマーカーとして、
検査後
MRI検査において表面マーカーとしてどのようなものが用いられていますか?
口臭予防の「ブレスケア」
を使用した報告があります。T1強調画像、T2強調画像のいずれにお
いても適度な信号強度を呈し、
毒性もなく、安価ということで、
テープなどで貼って使用されてい
アダラートカプセル6)、
ユベラックス3007)などを使用した報告もあります。
ます4、5)。その他、
【参考文献】
1)畑 雄一:日磁気共鳴医会誌 19(5):303-310(1999)
2)奥田智子ほか:日磁気共鳴医会誌 24(2):88-91(2004)
3)興梠征典:日獨医報 49(S):S39-S46(2004)
5)伊藤良剛ほか:日本農村医学会雑誌 55(3):488(2006)
6)須賀俊博ほか :Neurol Surg 22(5):499(1994)
7)三浦恵吾:薬局 42(2):101-102(1991)
副作用について
4)VERSUS 研究会 監修 , 改訂版 超実践マニュアル MRI, 医療科学社 (2010)
31
検査前
造影MRI検査で、
投与する造影剤の量や種類により、
副作用発現率に違いがありますか?
Q11
A
検査時
Q11 -1
A
投与する造影剤の量や種類が異なることで、副作用の発現
率に差はないと考えられていますが、NSFの発症報告例数
は、造影剤投与量の多かった症例が多く、造影剤の種類に
よって異なっています
(Q3参照)。
造影剤投与量が増えると副作用発現率は高くなりますか?
Gd-DTPA 0.2mL/kg投与群
(通常量)
と0.6mL/kg投与群
(3倍量)
を比較した報告において、
副作用
発現率に差は認められていません1)。
しかし、重度腎障害の患者さんにおいてヨード造影剤の代替としてGd造影剤 80mL
(0.88mL/kg、通
また
常量の4.4倍)
による腎動脈造影を行ったところ、急性腎不全をきたした症例が報告されており2)、
検査後
Gd造影剤の大量投与や反復投与とNSF発症との関係が示唆されているため、
投与にあたっては用法・
用量に従い、適切に使用することが求められます3)。参照
Q3 P14
■ Gd-DTPA 0.2mL/kg 投与群と 0.6mL/kg 投与群の副作用発現率1)
10
副作用発現率(%)
8
副作用について
6.0%
(6/100 例)
6.0%
(6/99 例)
0.2mL/kg投与群
0.6mL/kg投与群
6
4
2
0
Gd-EOB-DTPAの投与量が増えると副作用発現率は高くなりますか?
Gd-EOB-DTPA 0.05mL/kg投 与 群(半 分 量)、0.1mL/kg投 与 群(通 常 量)、0.2mL/kg
投与群(2倍量)
を比較した欧州の第2相臨床試験
(n=33)
において、いずれの群にも副作用は
認められませんでした4)。
32
1)Haustein J et al.:Radiology 186(3):855-860(1993)
検査前
【参考文献】
2)Gemery J et al.:AJR 171(5):1277-1278(1998)
3)NSF とガドリニウム造影剤使用に関する合同委員会 ( 日本医学放射線学会・日本腎臓学会 ):
腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン 第 2 版 (2009 年 9 月改定 )
4)Reimer P et al.:Radiology 199(1):177-183(1996)
検査時
検査後
副作用について
33
検査前
Q12
A
検査時
Q12 -1
A
造影剤を注入する際には、
どのような留意点がありますか?
ボーラス投与
(急速注入)
の際には、注入圧が比較的高くなる
ため、留置針を用い耐圧性の高い延長チューブを使用しま
す。また、
確実に血管を確保し、ルート内に三方活栓を用いて
いる場合にはルートの開放を確認します。注入開始直後は
穿刺部位を注意深く観察します。
造影剤の注入は、
どの部位から行うのが望ましいですか?
手背や足の静脈を使用せず、肘静脈から注入するのが望ましく、
できれば右肘静脈を用いて注入します。
Gd造影剤は、
1回の検査における投与量が少ないため、
(特にDynamic StudyやMR Angiography
などでは)生食による後押しを行うことが望ましいとされています。
検査後
■ 造影剤の注入部位
左肘静脈からの投与の場合、
左腕頭静
脈でのうっ滞や頸部静脈への逆流の
可能性があるため、
鎖骨下静脈に直接
移行する右尺側皮静脈に続く右内側
肘静脈が理想とされています1,2)。
副作用について
34
A
検査前
他の薬剤投与に用いている静脈ルートから
造影剤を投与してもよいですか?
Q12 -2
他の薬剤投与に用いている静脈ルートからGd造影剤を投与すると、他剤との配合変化の可能性がある
ことから新たなルート確保が望ましいと思われます。ただし、
新たなルート確保が困難であり、
他の薬剤
と同じルートからGd造影剤を投与しなければならない場合は、
投与前にルート内を生理食塩液でゆっく
りフラッシュするなどして薬剤どうしの接触を避けるようにします。また、
自動注入器を用いてGd造影剤
を投与する場合、非耐圧性のチューブでは破損のおそれがあるため、高速注入を行わないなどの注意が
必要です。
検査時
IVHカテーテルからGd造影剤を投与できますか?
IVHカテーテルからGd造影剤を投与した報告3)はあります。しかし、IVHに使用されるカテーテ
ルの耐圧性は高くないため、
造影MRIを施行する際には原則的に同ルートからの投与は避ける
べきと考えられます。
造影剤開封時の注意
一度、
チップキャップをはずしてしまうと、無菌状態が保てなくなります。
■チップキャップとは?
検査後
チップキャップ*
*
シリンジの先端部分に
取り付けてあるゴム栓をさしてます。
副作用について
35
検査前
Q12 -3
A
注入速度が画像に影響を及ぼしますか?
Gd-EOB-DTPAの高速注入によるringing artifact(blurring)
が報告されています4、5)。
Gd-EOB-DTPAは投与量が少ないので、ringing artifactを軽減するために、
注入速度は1∼2mL/秒
が推奨されています5)。
■Gd-EOB-DTPAによるringing artifact
検査時
Ringing Artifact
高コントラストの辺縁部に縞模様状に出現するアーチファクトで、
これはデータ収集に際し、
高周波成分を十
分に収集しきれないことにより生じます。一定の時間、
造影剤濃度が維持できない場合などにみられ、
truncation artifact、
Gibb’
s phenomenonなどとも呼ばれます6)。
検査後
Q12 -4
A
造影剤が眼に入ったり、服や検査機器などについた
場合にはどんな処置を行えばよいですか?
Gd造影剤は水溶性であるため、誤って眼に入ったり、
衣服や検査機器などについたときには、微温湯、
水、
または生理食塩液で洗浄してください。
Gd造影剤
(100倍希釈)
を点眼して用いたMR涙道造影の報告7、8)があり、それらの報告では特に合併症
は報告されていません。Gd造影剤が誤って眼に入った場合、生理食塩液などによる洗浄を行っていただ
くことでその影響は少ないと思われます。また、Gd造影剤は水溶性であるため有機溶媒にはほとんど溶
副作用について
けないので、
衣服に付着した場合、
有機溶媒を用いるドライクリーニングでの除去は困難です。Gd造影
剤が付着してから時間が経過するほど除去しにくくなりますので、早めに水洗いすることが肝要です。
【参考文献】
1)片田和博 監修:MDCT 徹底攻略マニュアル:38-39(2005) メジカルビュー社
2)北島美香ほか:臨床画像 17(9):988-997(2001)
3)Keijer JT et al.:American Heart Journal 130(4):893-901(1995)
4)竹原康雄ほか:日獨医報 54(2):37-49(2009)
5)Tanimoto A et al.:European Radiology 19(suppl.5):S975-S989(2009)
6)長谷川真:臨床画像 11(9):96-100(1995)
7)Goldberg RA et al.:Am J Opthalmol 115(6):738-741(1993)
8)Hoffmann KT et al.:Neuroradiology 41(3):208-213(1999)
36
Q13
A
検査時
Gd造影剤の血管外漏出の報告は極めて少ないですが1、2)、
血管外に漏出した場合には発赤、腫脹、
水疱、
疼痛などがあら
われることがあり、
一般にヨード造影剤の血管外漏出時に準
じて対症療法が行われます。
Gd造影剤の場合、
ヨード造影剤と比べて投与量が少なく、
こ
れまで血管外漏出による重篤症状は報告はされていません。
検査前
血管外漏出発生時の
処置について教えてください
造影MRI検査における血管外漏出の発現頻度はどのくらいですか?
Gd造影剤を用手的に静注した時の血管外漏出の発現頻度は0.05%
(15/28,340例)
であ
り、
ヨード造影剤を自動注入器で静注した時の発現頻度0.31%
(181/57,739例)
に比べると
低いことが報告されています2)。
検査後
Q13 -1
A
具体的にはどんな処置が必要ですか?
血管外漏出が生じた際には直ちに注入を中止し、
下記のような処置が行われています。
■ 血管外漏出時の処置3)
処置の方法
具体的な処置・対応
漏出がみられた患肢を心臓より上に拳上
冷罨法(氷嚢)の実施(1回15∼60分間、1日3回、
1∼3日間を推奨)
疼痛の緩和
疼痛が持続する場合、
皮膚障害が発現した
場合の処置
● 消炎鎮痛剤
(ジクロフェナクナトリウムなど)内用
● 冷罨法
皮膚障害の軽減
副作用について
基本的処置
● ステロイド剤の外用あるいは内用
● 水疱が持続する場合は、穿刺排液
37
検査前
■参考 ヨード造影剤血管外漏出時の症状
ヨード造影剤の場合には、血管外に漏出した造影剤の量によって異なりますが、皮膚の疼痛、腫脹、水疱などのほか、
大量の造影剤が漏出した重篤例では皮膚の潰瘍、壊死やコンパートメント症候群※などが報告されています3、4)。
※ コンパートメント症候群
筋膜と骨で囲まれた閉鎖された区域(コンパートメ
ント)の内圧が上昇し、血流灌流異常をきたした
疎血状態をコンパートメント症候群といいます。初
期には疼痛 (Pain)、麻痺 (Paralysis)、異常感覚
(Paraesthesia)、無 脈 (Pulselessness)、蒼 白
(Pallor) などの 5P の徴候を呈します5)。なお、6
時間以上放置すると筋壊死をきたし、遅くとも 12
検査時
時間以内に減圧しないと肢切断などの重大な後遺症
の可能性があることが報告されています6)。
血管外漏出時には温罨法と冷罨法のどちらがよいですか?
機序からすると、温罨法は血管拡張によって漏出液の吸収を促進すると考えられ、一方、冷罨法
は血管収縮によって炎症反応を少なくすると考えられます。最近の報告では、炎症を抑えるた
検査後
め、冷罨法を行うことが多いようです3、7)。
Cohanらは1∼3日間の1日3回、
15∼60分間の冷罨法を推奨しています。
なお、
皮膚が障害されていると、水分が組織を軟化させる可能性があるため、局所をぬらさない
ようにします8)。
【冷罨法の例】
副作用について
“ぬれタオル”
をビニール袋に入れて用いた例
血管外漏出を予防するにはどうすればよいですか?
血管外漏出を予防するには、適切な注射器具や穿刺部位を選択し、確実に血管内に針が留置さ
れていることを確認した後に注入します。また注入中は患者さんの様子を注意深く観察し、
患者
さんに変化を認めた場合には、直ちに造影剤の注入を中止します。さらに検査後も、
穿刺部位を
注意深く観察します。
38
検査前
血管外漏出のリスクの高い患者さんおよび予防方法
■ リスクの高い患者さん
コミュニケーションの取れない患者さん
高齢者、幼・小児、意識のない患者さん
注入する四肢に循環異常のある患者さん
アテローム動脈硬化性末梢血管疾患、糖尿病性血管疾患、
結合織疾患、静脈血栓または機能不全など
その他
高度に衰弱した患者さん、慢性疾患のある患者さん、
同じ静脈が何回も穿刺されている場合
検査時
■ 予防方法
予防方法
注射器具の選択
備 考
金属針よりもポリエチレン製やテフロン製留置針が好ましい
神経や腱から離れた軟部組織に囲まれた部位を選択する
注射部位の選択
手背・手関節・肘窩などは体動により漏れやすく、漏出により機能障害が
生じる可能性があるためできるだけ避ける
脂肪組織が多い前腕内側での血管確保が望ましい
穿刺後は血液の逆流を必ず確認する
血液の逆流が不良の場合には注射部位の変更を考慮する
穿刺後の観察
患者さんに疼痛や違和感がないかを確認する
穿刺部位の痛みや違和感があった場合は、すぐに知らせるよう説明する
検査後
血管内留置の確認
【参考文献】
1)Prince MR:Radiology 191(1):155-164(1994)
2)Cochran ST et al.:AJR 176(6):1385-1388(2001)
3)中村仁信:日獨医報 46(3・4):306-309(2001)
4)多田信平:日獨医報 42(1):83-88(1997)
5)片山仁:ドクターサロン 40:216-219(1996)
7)佐藤みつ子ほか:山梨医大紀要第 16:15-19(1999)
8)Cohan RH et al.:Radiology 200(3):593-604(1996)
副作用について
6)松田潔:救急医学 18(4):457(1994)
39
検査前
Gd造影剤が他の検査に
影響を与えることがありますか?
Q14
A
検査時
Gd造影剤の投与によって、臨床検査結果(血清カルシウム、
血清鉄)
に影響を与えたとの報告や、
X線検査および核医学
検査などの画像に影響を与えたとの報告があります。超音
波検査については問題となるような影響は報告されていま
せん。
Q14 -1
A
Gd造影剤は臨床検査結果に影響を与えますか?
比色分析法
(キレート滴定法)
で血清カルシウムや血清鉄を測定した場合、
比色分析法で用いるキレート
試薬とGd造影剤が反応し、みかけ上、血清カルシウム1-7)や血清鉄1)の測定値が低くなることが報告され
ています。
検査後
したがって、血液検査を行う場合には、Gd造影剤を投与する前か、Gd造影剤がほぼ全量排泄される24
時間以上経過してから採血することが望ましいと考えられます。
詳細は各添付文書を確認下さい。
■ 各Gd造影剤の使用上の注意「臨床検査結果に及ぼす影響」の記載
一般名
使用上の注意「臨床検査結果に及ぼす影響」の記載
Meglumine
Gadopentetate
本剤投与後 24 時間以内に血清鉄を比色分析法(キレート滴定法)で測定した場合、
測定値が低くなることがある。[添加物としてキレート剤であるジエチレントリアミン
五酢酸を含有している。]
Gadodiamide
Hydrate
本剤は比色分析法(キレート滴定法)による血清カルシウム測定値に影響を与える
ことがあり、
また、他の電解質の測定値(例えば鉄)
にも影響を与えることがある。従っ
て、本剤投与後 24 時間以内にはそのような測定方法を用いないことが望ましい。
副作用について
Meglumine
Gadoterate
本剤は血清鉄の測定値に影響を与えることがある。
Gadoteridol
記載なし
Gadoxetate Sodium
記載なし
(2011年12月現在)
40
A
Gd造影剤はX線検査にどのような影響を与えますか?
検査前
Q14 -2
Gd造影剤のX線吸収率は300mgI/mL濃度のヨード造影剤の1/2 ∼ 1/3に相当すると報告されてい
ます8)。実際にヨード造影剤の換わりにGd造影剤を使用して血管造影やCTを施行した報告9、10)や、Gd造
影剤投与1時間後に単純CTを施行したところ、
膀胱、
腎盂に造影効果を認めたとの報告があります11)。
腎障害患者におけるGd造影剤使用に関するガイドライン12)やESUR
ガイドライン13)では、
X線検査にGd造影剤を使用することは推奨できない
としています。
検査時
造影MRI検査とヨード造影剤による造影X線検査を同日に施行する場合には?
同日に異なる造影検査を行う場合の安全性は確立されていません。
Gd造影剤はX線画像に影響すること、
ヨード造影剤はMR画像に影響することがそれぞれ報告
されています。Gd造影剤の投与量はX線検査で用いられるヨード造影剤の投与量に比べて少
なく、
X線画像への影響も少ないと考えられるため、同日に造影検査を行う場合には、造影MRI
検査、造影CTの順番に検査を行う方が影響は少ないと考えられます。ただし、Gd造影剤とヨー
ド造影剤の体内動態は酷似するため、造影剤が貯留するような部位や病変では、
読影に際して注
意が必要となります。
検査後
GdとI
(ヨード)のX線吸収率
Gdの原子番号は64、Iの原子番号は53であり、Gdの方がX線吸収率は高くなります。しかし、Gd造影剤は
1分子中にGd原子が1つ、
ヨード造影剤は1分子中にI原子が3つ存在し、
濃度はGd造影剤(Gd-DTPA:Gd
として0.5mmol/mL)
よりもヨード造影剤(iopamidol 300mgI/mL:Iとして2.36mmol/mL)
の方が高
いことから、製品としてはヨード造影剤の方がX線吸収率は高くなります。
Q14 -3
Gd-DTPAによる造影MRI検査4時間後にクエン酸ガリウム
(67Ga)
を投与し、
4日後にシンチグラフィを
施行したところ、本来、腫瘍や炎症部位に集積する67Gaの骨への集積が増加したことが報告されてい
ます14)。
副作用について
A
Gd造影剤が核医学検査にどのような影響を与えますか?
造影MRI検査と核医学検査を同日に施行する場合は?
67
Gaシンチグラフィ検査後に造影MRI検査を行うか、
もしくはGd造影剤がほぼ全量排泄される
24時間以降に67Gaシンチグラフィを施行することが望ましいと考えられます。
一方、
動物実験においてGd-DTPAは67Gaの集積に影響を与えなかったとする報告15)もあります。
41
検査前
Q14 -4
A
Gd造影剤は磁気共鳴胆管膵管撮影(MRCP)
に
どのような影響を与えますか?
Gd造影剤のT2短縮効果により、脈管系の信号を抑制させ、
MRCPで胆管や膵管の描出能が向上するこ
とが報告されています16、17)。
Gd-EOB-DTPAがMRCPに与える影響は?
Gd-EOB-DTPAは約40%が胆汁中に排泄されることから、Gd-EOB-DTPAのT2短縮効果に
より、胆 管 の 信 号 強 度 が 低 下したり、消 失 することが 報 告されて います18、19)。そ の ため、
検査時
Gd-EOB-DTPA投与前にMRCPを撮像することが望ましいと考えられます。
一方で、Gd-EOB-DTPA投与約90秒後にMRCPを撮像することで、
胆管の信号強度にほとん
ど影響を与えなかったとする報告もあります20)。
Q14 -5
検査後
A
同日に造影MRI検査と他の検査を行う場合に、
どのようなことを考慮しますか?
同日に複数の造影検査を施行した場合の生体や画像に及ぼす影響についての報告は極めて少ないた
め、十分な検査間隔をあけることが理想的です。しかし、
日常臨床においては同日内、あるいは短期間に
複数の造影検査を実施せざるをえない場合もあります。その場合、一般論として、①生体への影響が
少ないと考えられる検査を優先する、②体内滞留時間が短い造影剤を優先し、必要最小量を投与する、
③後に行われる画像への影響が少なくなる検査の組み合わせを考慮することが大切であり、
施設ならび
に患者さんの病状や状態に応じて、
適宜調整して施行することが求められます21)。
同日内に複数の造影剤を投与することへの安全性は確立されていません。
可能であれば、
同日内の造影検査は避けることが原則です。
副作用について
42
1) Proctor KA et al.:Am J Clin Pathol 121(2):282-292(2004)
検査前
【参考文献】
2) Prince MR et al.:Radiology 227(3):639-646(2003)
3) Doorenbos C et al.:N Engl J Med 349(8):817-818(2003)
4) Williams SF et al.:Mayo Clin Proc 80(12):1655-1657(2005)
5) 高尾晶子ほか:医学検査 55(12):1312-1318(2006)
6) 永井直治ほか:日本臨床検査自動化学会会誌 34(3):302-306(2009)
7) Davenport A et al.:Am J Kidney Dis 47(2):350-352(2006)
8) 荒尾信一ほか:川崎医療短期大学紀要 13:27-30(1993)
9) Hammer FD et al.:Eur Radiol 9(1):128-136(1999)
10) Albrecht T et al.:Br J Radiol 73(872):878-882(2000)
11) Bloem JL et al.:Radiology 171(2):578-579(1989)
12) NSF とガドリニウム造影剤使用に関する合同委員会 ( 日本医学放射線学会・日本腎臓学会 ):
検査時
腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン 第 2 版 (2009 年 9 月改定 )
13) Thomsen HS et al.:Eur Radiol 12(10):2600-2605(2002)
14) Hattner RS et al.:J Nucl Med 31(11):1844-1846(1990)
15) Baker RJ:Nucl Med Commun 23(2):139-145(2002)
16) Kanematsu M et al.:AJR 178(3):755-761(2002)
17) 池田耕士ほか:臨床放射線 42(8):911-913(1997)
18) 津田雅視ほか:臨床画像 24(12):1440-1446(2008)
19) Nakamura Y et al.:Magn Reson Med Sci 8(4):143-148(2009)
20) Kim KA et al.:Radiology 256(2):475-484(2010)
21) 林 宏光ほか:臨床画像 24(12):104-111(2008)
検査後
副作用について
43
検査前
Gd造影剤は、投与後どれくらいで
体外に排泄されますか?
Q15
A
検査時
腎 機 能 が 正 常 な 場 合、
Gd造 影 剤 は、投 与2時 間 後までに
60%以上が、6時間後までに80%以上が尿中に排泄され、
投与24時間までにほぼ全量が尿中に排泄されます1)。
ただし、腎機能が低下している場合では排泄が遅延すること
が知られています2)。
■ Gd-DTPA静注後の血漿中Gd濃度推移と累積尿中排泄量1)
0.05mmol/kg(n=6)
0.10mmol/kg(n=5)
検査後
血漿中濃度(mmol/L)
1.5
0.20mmol/kg(n=6)
1.0
0.5
0
0
1
2
3
4
24
投与後時間(hr)
副作用について
尿中排泄量(% of dose)
100
50
0.05mmol/kg(n=6)
0.10mmol/kg(n=4)
0.20mmol/kg(n=6)
0
1 2
4
6
10
15
投与後時間(hr)
44
20
24
検査前
Gd-EOB-DTPAの排泄は?
Gd-EOB-DTPAは、
健常人において、投与後4日目までに57%が尿中に、39%が糞中に
排泄されました3)。
■ Gd-EOB-DTPA静注後の血漿中Gd濃度推移3)
500
400
300
検査時
血漿中濃度(μmol/L)
0.1mL/kg
(n=6)
200
100
0
2
4
6
8
投与後時間(hr)
■ Gd-EOB-DTPA静注後の尿中排泄率、糞中排泄率および総排泄率
尿中
糞中
計
80
排泄率(%)
検査後
0.1mL/kg
(n=6)
100
60
40
20
0
0
1
2
4
6
24
48
72
96
投与後時間(hr)
副作用について
45
検査前
Q15 -1
A
腎機能障害のある患者さんでは
どれくらいで造影剤が排泄されますか?
腎機能障害のある患者さんでは、腎障害の程度に応じて血中消失半減期の延長がみられ、
また尿中排
泄率が低下することが報告されています。特に、
クレアチニンクリアランスが20mL/分未満の重篤
な腎障害患者さんにGd造影剤を投与した場合、血中消失半減期が30時間以上に延長し、尿中排泄率
は63.1±12.6%であったと報告されています2)。
■ 腎機能障害の程度とGd-DTPAの血中消失半減期
検査時
腎障害の程度
血中消失半減期
(クレアチニンクリアランス)
(時間)
正 常
1.56±0.19
軽 度(60 ∼ 80mL/分)
1.5 ∼ 2
中等度(40 ∼ 60mL/分)
<4
重 度(20 ∼ 40mL/分)
<10
重 篤(<20mL/分)
<30
検査後
腎機能障害のある患者さんにおけるGd-EOB-DTPAの排泄は?
血液透析を必要とする重篤な腎障害のある患者さんでは、
正常な患者さんと比べてAUC
(area under the blood concentration time curve:血中濃度曲線下面積)
の上昇および
血中消失半減期の延長がみられています4)。
■ 腎機能障害の程度とGd-EOB-DTPA投与後のAUC、血中消失半減期、
尿中排泄率および糞中排泄率4)
中等度(n=6)
副作用について
46
腎障害の程度
正常(n=6)
(クレアチニンクリアランス:
30 ∼ 50mL/ 分)
重篤(n=4)
AUC(μmol・L/時間)
160±20
237±69
903±275
血中消失半減期(時間)
1.8±0.2
2.2±1.0
20.4±7.0
尿中排泄率(%)
48±5
44±15
NA
糞中排泄率(%)
31±17
40±14
55±26
軽度(n=6)
中等度(n=6)
重度(n=6)
(Child-Pugh A)
(Child-Pugh B)
(Child-Pugh C)
160±20
252±63
210±49
259±81
血中消失半減期(時間)
1.8±0.2
2.0±0.3
1.9±0.3
2.6±0.9
尿中排泄率(%)
48±5
65±23
56±23
61±20
糞中排泄率(%)
31±17
21±14
21±17
6±7
肝障害の程度
正常(n=6)
AUC(μmol・L/時間)
A
検査時
Q15 -2
検査前
■ 参考:肝機能障害の程度とGd-EOB-DTPA投与後のAUC、血中消失半減期、
尿中排泄率および糞中排泄率4)
造影剤は血液透析でどれくらい除去されますか?
1回あたり3時間の血液透析により約70%が除去され、3回の透析でほぼ全量が除去されます5)。
■ 血液透析後のGd-DTPA残存率5)
40
Gd-DTPA残存率
(%)
30
25
検査後
透 析 膜 :Fresenius F60
透析時間 :3時間
血 流 量 :250mL/分
35
20
15
10
5
0
初回透析
(投与2時間後)
第2回透析
(投与24時間後)
第3回透析
(投与48時間後)
透析患者さん
(2例)
において、
Gd-EOB-DTPA投与1時間後から血液透析を開始し、
約3時間
透析することにより、投与量の約30%が除去されました4)。
副作用について
Gd-EOB-DTPAは血液透析でどれくらい除去されますか?
【参考文献】
1)吉川宏起ほか:画像診断 6(9):959-969(1986)
2)Schuhmann-Giampieri G et al.:Invest Radiol 26(11):975-979(1991)
3)EOB・プリモビスト注シリンジ インタビューフォーム(2011 年 9 月)
4)Gschwend S et al. : Invest Radiol 46(9):556-566(2011)
5)Lackner K et al. : Contrast media in MRI:International workshop Berlin February 1-3:321-326(1990)
47
検査前
Q16
A
造影剤による副作用発現に備え
どのようなことが必要ですか?
検査時
緊急時に迅速で組織的な対応ができる体制の構築が必要で
す。これには、救急処置に必要な医薬品および器具の準備、
二次救命処置(ACLS)
チームへの連絡体制の整備、放射線
部内での役割分担や緊急時のマニュアルの作成、
緊急事態
対応のための定期的なシミュレーションの実施などがあげら
れます1)。
また、
MRI検査室では、
磁性を帯びた医療器具は持ち込むこ
とができないため、
MRI検査室専用の非磁性である救急備
品を準備する必要があります。磁性体の処置器具が必要と
される場合には患者さんをMRI検査室から退避させること
を考慮する必要があります2)。
検査後
備えておくべき救急医薬品と器具には、
どのようなものがありますか?
アナフィラキシー様反応の第一選択薬であるアドレナリン
(エピネフリン)
をはじめとする下記の
ような救急医薬品および器具を用意する必要があります。医薬品は使用期限や補充、
器具につ
いては充電が必要なものは充電が完了しているか確認する必要があります。またACLSチーム
に相談して必要なものを決めるとよいでしょう。
一例
医薬品(製品例)
酸素 ■ アドレナリン0.1%(アドレナリン注0.1%シリンジ)
H1拮抗薬(ポララミン注5mg)
■ アトロピン(アトロピン硫酸塩注0.5mg、
アトロピン注0.05%シリンジ)
■ β2 作動薬 定量噴霧吸入器タイプ
■
■
(サルタノールインヘラー 100μg、
アイロミールエアゾール100μg)
■
副作用について
■
抗痙攣薬(セルシン注射液 5mg/10mg) ■ グルカゴン(グルカゴンGノボ注射用)
乳酸リンゲル液(ラクテック注)
医療機器、医療用具
■
各種モニター(血圧、
心電図、酸素飽和度)■ バッグバルブマスク ■ 挿管セット
アナフィラキシー様反応に対してステロイドは即効性がありますか?
ステロイドは効果発現までに4 ∼ 6時間かかるとされ、
即効性は期待できません。症状の遷延化
と遅発性反応(再燃)
を抑制することを期待して投与されます。アナフィラキシー様反応の第一
選択薬はアドレナリンです1、3)。
48
検査前
アドレナリンの投与経路
アドレナリンの皮下注は即効性に欠け、
静注はhyperadrenalism
(高血圧や頻脈)
を起こしやすいことによ
り、中等度以下のアナフィラキシー様反応には筋注が推奨されています。大腿外側前面が安全性と有効性か
ら推奨されています1)。
βブロッカーを服用している患者さんにはどのような注意が必要ですか?
一般にβブロッカーを服用している患者さんでは、
アナフィラキシーの発生頻度が高く、
アナフィラキシーが
発生した場合の重症度も高くなるといわれています4)。また、
アナフィラキシーが発生した場合に投与する
受容体非依存性に陽性変力・変時作用と血管収縮作用、内因性カテコラミン放出作用をもつグルカゴンの静
検査時
アドレナリンの効果が減弱する可能性があるとされており、
アドレナリンの効果が認められない場合には、
β
注が推奨されています1)。
Gd造影剤での報告はありませんが、βブロッカーを服用している患者さんにアナフィラキシー様反応が
発現し、
アドレナリンの効果が認められない場合には、
グルカゴンの静注が推奨されます1、4)。
検査後
副作用について
49
検査前
Q16 -1
A
造影剤によるアナフィラキシー様反応が回復した患者さんは、
いつ帰宅させたらよいですか?
アナフィラキシー様反応は、一度、症状が改善した後、
しばらくして
(1 ∼ 8時間)、症状が再燃する二相性
(遅発性)反応が5 ∼ 20%の症例に現れることがあります。したがって、中等度以上の症状を呈した症例
では、
たとえ症状が改善しても24時間は入院させ経過を観察することが望ましいと考えられます5、6)。
その後、患者さんにはどのような指導が必要ですか?
検査時
副作用歴は必ずカルテに記載し、
再発防止のため画像診断検査を今後受ける際には必ず主治医や
検査室スタッフに造影剤による副作用が起こったことを申し出るように患者さんに指導します。
日本放射線科専門医会・医会
(JCR)
が発行している
「患者保管型 造影剤副作用カード」
を患者
さんにお渡ししている施設もあります。
JCRのホームページ
(http://www.jcr.or.jp/kzfcard/card.html)
で紹介されています。
◎患者保管型 造影剤副作用カード
検査後
■Gd造影剤
21 オムニスキャン
22 プロハンス
23 マグネスコープ
24 マグネビスト
【その他】
25( )
■肝特異性造影剤
31 リゾビスト
32 EOB・プリモビスト
【その他】
33( )
副作用について
50
A
造影剤による副作用はどれくらいの頻度で発現しますか?
検査前
Q16 -2
Gd造影剤による副作用発現率は、
軽度な副作用を含めると0.04 ∼ 2.4%と報告されています7、8)。
一方、重篤な副作用発現率は0.0025 ∼ 0.0052%と報告されています9、10)。
■ 副作用の発現頻度と種類8)
調査期間:1992年4月∼ 9月
調査例数:脳・脊髄撮影(15,224例)
、躯幹部・四肢撮影および検査部位不明(272例)
副作用発現率:2.4%(372例/ 15,496例)
副作用の種類
発現例数
発現率(%)
71
0.46
頭痛
68
0.44
眩暈
29
0.19
注射部位反応
28
0.18
錯感覚
26
0.17
悪心 / 嘔吐
23
0.15
疼痛
21
0.14
無力症
19
0.12
発疹
14
0.09
血管拡張
11
0.07
蕁麻疹
11
0.07
10 例未満の症状
51
0.33
合計
372
検査後
嘔気
検査時
副作用の症状
2.4
副作用について
51
検査前
Gd-EOB-DTPAの副作用にはどのようなものがありますか?
Gd-EOB-DTPAの主な副作用は血管拡張(熱感、潮紅)、悪心などであり、承認時および市販
直後調査においてもGd-EOB-DTPAに特異的と考えられる副作用は認められていません11)。
■ EOB・プリモビスト注シリンジ 市販直後調査11)
市販直後調査で報告された副作用例数および件数は46例69件であり、
重篤な副作用はアナフィラキ
シー様反応の1件でした。
調査期間:2008年1月25日∼ 7月24日
検査時
収集数
器官別大分類
副作用名
免疫系障害
例数
1
1
アナフィラキシー様反応
神経系障害
3
感覚鈍麻
2
頭痛
1
1
浮動性めまい
眼障害
4
眼充血
1
眼瞼浮腫
3
1
結膜充血
検査後
耳および迷路障害
1
1
耳不快感
心臓障害
1
1
動悸
呼吸器、胸部および縦隔障害
17
くしゃみ
2
咽喉刺激感
1
咽喉頭不快感
2
2
咳嗽
呼吸困難
10
発声障害
1
1
鼻漏
胃腸障害
18
副作用について
悪心
9
上腹部痛
1
腹痛
1
8
嘔吐
皮膚および皮下組織障害
10
そう痒症
3
紅斑
2
全身性皮疹
1
発疹
3
麻疹様発疹
1
2
蕁麻疹
全身障害および投与局所様態
5
4
異常感
1
無力症
臨床検査
1
血圧上昇
52
件数
1
日本におけるGd造影剤の1988年9月 ∼ 2002年末までの出荷本数と厚生労働省への副作用報告の
検査前
■ 重篤な副作用と死亡の発現頻度10)
結果を集計し、推定検査数に対する比率の概算では、重篤な副作用は約1.9万例に1例、死亡例は
約83万例に1例と報告されています10)。
調査期間:1988年9月∼ 2002年末
総出荷数
9,175,323
推定検査数
9,175,323
重症副作用件数
480(0.0052%)
死亡件数
11(0.00012%)
検査時
なお、報告された症例の中には以下の症例も含まれている。
1)高齢者、悪性腫瘍など、原疾患が重篤な症例
2)合併症などで患者状態の不良なことが症状発現に寄与した可能性のある症例
3)アレルギー素因や併用薬の関与も考えられる症例
4)担当医によって、本剤との因果関係が不明と判断された症例
5)情報が不十分で詳細な評価困難であった症例
Q16 -3
Gd造影剤投与後の遅発性の副作用については、
ヨード造影剤と比べ、
詳細に検討された報告はほとんど
ありません。しかし、Nelsonらの報告によると、Gd-DTPAが使用された15,496例において、投与後
検査後
A
遅発性の副作用はどのくらいの頻度で発現しますか?
1時間以降に167例(1.1%)の副作用が報告されています。症状は、
悪心、嘔吐、頭痛、
眩暈、
注入部位
反応などであったと報告されています8)。
また近年、重度の腎機能障害患者さん、特に透析患者さんへのGd造影剤投与によるNSFの発症が報
告されており、Gd造影剤の投与数日から数ヶ月後、時に数年後に皮膚の腫脹や硬化、疼痛などにて発
症するといわれています12)。
参照
Q3 P14
【参考文献】
1) 日本医学放射線学会 医療事故防止委員会:造影剤血管内投与のリスクマネジメント (2006 年 3 月 )
3) 太田 凡:救急・集中治療 17(8):815-819(2005)
4) 馬屋原 拓:救急・集中治療 17(8):853-855(2005)
5) 中 敏夫:救急医学 35(4):438-442(2011)
6) 紙尾 均:救急・集中治療 22(7・8):803-809(2010)
副作用について
2) 日本放射線学会:放射線診療事故防止のための指針 Ver.4(2002)
7) Niendorf HP et al.:Eur J Radiol 13:15-20(1991)
8) Nelson KL et al.:Radiology 196(2):439-445(1995)
9) Hunt CH et al.:AJR 193(4):1124-1127(2009)
10) 鳴海善文ほか:日本医放会誌 65(3):300-301(2005)
11) EOB・プリモビスト注シリンジ 市販直後調査
12) NSF とガドリニウム造影剤使用に関する合同委員会 ( 日本医学放射線学会・日本腎臓学会 ):
腎障害患者におけるガドリニウム造影剤使用に関するガイドライン 第 2 版 (2009 年 9 月改定 )
53
ちょっと役立つ造影検査に関する話題
MRI 編
Contrast Media in Practice(Ver.1.0)
<非売品>
2012 年 1 月 25 日 第 1 版 第 1 冊 発行
監 修・編 著 /桑鶴 良平(順天堂大学 放射線医学講座)
協
力 /竹原 康雄(名古屋大学 放射線医学教室)
鳴海 善文(大阪医科大学 放射線医学教室)
林 宏光(日本医科大学 放射線医学教室)
企 画・発 行 /日本放射線科専門医会・医会
バイエル薬品株式会社
〒530-0001 大阪市北区梅田2丁目4番9号
編 集・制 作 /エルゼビア・ジャパン株式会社/ ELMCOM
本書の無断複写は著作権法上での例外を除き禁じられています。
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