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第4章 生物・化学兵器の拡散と対応 - 日本国際問題研究所 軍縮・不拡散
第4章 生物・化学兵器の拡散と対応 戸 崎 洋 史 はじめに 生 物・化 学 兵 器 1 の 歴 史 は 古 く 、化 学 兵 器 に つ い て は 第 一 次 世 界 大 戦 時 の 欧 州 に お い て 大 規 模に使用され、また第二次世界大戦終結までに、ほとんどの主要国が生物・化学兵器を開発 または保有していた。生物・化学兵器は、開発や製造に汎用品・技術が多く用いられ、核兵 器 と 比 べ る と 技 術 的 に も そ れ ほ ど 難 し く な く 、コ ス ト も 安 価 で あ る 。こ の こ と と も 相 俟 っ て 、 第 二 次 大 戦 後 、「 貧 者 の 核 兵 器 」と も 称 さ れ る 生 物・化 学 兵 器 は 、第 三 世 界 諸 国 に 拡 散 し て い った。生物・化学兵器の保有を公言する国は、ほぼ皆無であり、その正確な拡散状況は必ず し も 明 ら か で は な い が 、 冷 戦 終 結 時 ま で に 、 生 物 兵 器 に つ い て は 少 な く と も 5カ 国 程 度 が 、 化 学 兵 器 に つ い て は 約 20カ 国 が 、そ れ ぞ れ 開 発 ま た は 保 有 し て い る と み ら れ る( 生 物・化 学 兵 器 の 拡 散 状 況 に つ い て は 、 本 章 末 の 表 1を 参 照 )。 冷戦後、第三世界に拡散した生物・化学兵器に対する脅威認識が高まったが、その引き 金 と な っ た の は 1991年 1月 の 湾 岸 戦 争 で あ っ た 。米 国 を 中 心 と す る 多 国 籍 軍 は 、イ ラ ク に よ る生物・化学兵器使用の可能性を留意しつつ軍事行動を遂行しなければならなかった。湾 岸 戦 争 後 、 国 連 安 保 理 決 議 687に 基 づ き 実 施 さ れ た 国 連 イ ラ ク 特 別 委 員 会 ( UNSCOM) の 査察で、イラクの生物・化学兵器能力が想像以上に進んでいたことが明らかになり、第三 世界諸国への生物・化学兵器拡散が深刻な問題であると捉えられた。米国は、米国に敵対 的で、重要な地域における米国の利益を脅かす地域諸国、すなわち「ならず者国家」を、 冷戦後の世界秩序再構築を進めるうえで障害となると考えたが、その「ならず者国家」の 多くが生物・化学兵器を保有していたため、そうした兵器の脅威を他国以上に強く認識し た。 こうした国家への拡散問題に加えて、テロリストなど非国家主体による生物・化学兵器の 取得、ならびに生物・化学テロへの危惧も高まった。生物・化学兵器を含む大量破壊兵器テ ロ が 生 起 す る 可 能 性 は 冷 戦 期 よ り 指 摘 さ れ て き た が 2 、 オ ウ ム 真 理 教 に よ る 松 本 ( 1994年 ) お よ び 地 下 鉄 サ リ ン 事 件( 1995年 )は 、そ う し た テ ロ が 世 界 で は じ め て 実 行 さ れ た 事 例 で あ 1 生物・化学兵器の歴史、種類および使用事例などをまとめたものとして、井上尚英『生物兵器と化 学 兵 器 』 中 公 新 書 、 2003年 を 参 照 。 2 た と え ば 生 物 テ ロ の 問 題 に つ い て は 、 Jeffrey D. Simon, “Terrorists and the Potential Use of Biological Weapons: A Discussion of Possibilities,” prepared for the U.S. Armed Forces Medical Intelligence Center, December 1989, pp. 5-10を 参 照 。 50 り 、 国 際 社 会 に 大 き な 衝 撃 を 与 え た 。 ま た オ ウ ム 真 理 教 は 、 サ リ ン だ け で な く VXも 製 造 し 、 炭疽菌など生物兵器の取得も目指していたことが明らかになった。 生物・化学兵器に対する脅威認識の高まりを背景に、主として米国がイニシアティブをと り 、生 物・化 学 兵 器 不 拡 散 体 制 が 強 化 さ れ て い っ た 。1993年 に 署 名 さ れ 1997年 に 発 効 し た 化 学 兵 器 禁 止 条 約( CWC)は 、締 約 国 の 化 学 兵 器 開 発 、生 産 、貯 蔵 お よ び 使 用 を 原 則 と し て 全 面的に禁止するとともに、条約の義務の遵守を確保するために厳格かつ侵入的な検証措置を 備 え る 、画 期 的 な 条 約 で あ る 。1972年 に 署 名 さ れ 1975年 に 発 効 し た 生 物 兵 器 禁 止 条 約( BWC) は、生物兵器の開発、生産および貯蔵を原則として禁止するものであるが、検証措置を備え て い な い た め 、条 約 の 強 化 に 向 け た 取 り 組 み と し て 、1995年 よ り 検 証 議 定 書 交 渉 が 開 始 さ れ た 。化 学 兵 器 の 拡 散 防 止 を 目 的 と し て 1985年 に 発 足 し た 輸 出 管 理 レ ジ ー ム で あ る オ ー ス ト ラ リ ア・グ ル ー プ( AG)は 、冷 戦 後 、ス コ ー プ を 拡 大 し 、生 物 兵 器 関 連 資 機 材 も 規 制 対 象 に 含 めた。 こ う し た 努 力 に も か か わ ら ず 、生 物・化 学 兵 器 問 題 は 解 決 に は 至 ら ず 、21世 紀 を む か え た 。 そ の 最 初 の 年 、 米 国 に お い て 、 9月 11日 に 同 時 多 発 テ ロ ( 9.11テ ロ ) が 、 ま た 10月 に は 炭 疽 菌 を 用 い た テ ロ 事 件 が 発 生 し た 。 そ の 後 、 米 国 の ブ ッ シ ュ ( George W. Bush) 政 権 は 、「 テ ロとの戦争」を遂行していくなかで、とくに大量破壊兵器拡散問題に強い姿勢で臨むという 方 針 を 示 し た 。 2003年 3月 に は 、 イ ラ ク に よ る 大 量 破 壊 兵 器 廃 棄 義 務 違 反 を 理 由 と し て 、 米 国 が イ ラ ク に 対 す る 先 制 攻 撃 を 実 施 し 、 こ の イ ラ ク 戦 争 に よ っ て フ セ イ ン ( Saddam Hussein) 政 権 は 崩 壊 し た 。 本 章 で は 、 9.11テ ロ 以 降 、 国 際 安 全 保 障 情 勢 が 大 き く 変 動 す る なかでの、生物・化学兵器拡散問題、ならびにその不拡散体制の現状と問題点を概観し、生 物・化学兵器問題の今後の課題を考察する。 1. 生 物 ・化 学 兵 器 拡 散 問 題 : 9.11後 の 動 向 2003年 12月 、リ ビ ア は 、核 兵 器 開 発 を 含 む す べ て の 大 量 破 壊 兵 器 の 開 発 お よ び 保 有 を 放 棄 す る と 発 表 し 、 翌 年 1月 に は CWCに 加 入 し た 。 こ れ は 、 米 国 に よ る イ ラ ク へ の 先 制 攻 撃 、 な らびに国際社会による長年の経済制裁といった圧力と、米英による外交努力の成果であった といえる。 他 方 、 リ ビ ア の 事 例 を 除 く と 、 9.11テ ロ 後 に 生 物 ・ 化 学 兵 器 の 拡 散 状 況 が 大 き く 変 化 し た わけではなく、生物・化学兵器の取得を新たに目指した国も、逆に保有する生物・化学兵器 を廃棄した国も明らかになってはいない。米国による先制行動や体制変革といった圧力が、 「 な ら ず 者 国 家 」に よ る 生 物・化 学 兵 器 放 棄 を も た ら す の か 、逆 に そ う し た 圧 力 に よ っ て「 な 51 らず者国家」が米国を抑止するために生物・化学兵器の取得や保有に固執するのかも、現状 では明確ではない。 ま た 9.11テ ロ が 、 非 国 家 主 体 に よ る 大 量 破 壊 兵 器 取 得 の 関 心 あ る い は 可 能 性 を 著 し く 高 め た わ け で も な い よ う に 思 わ れ る 。ア ル カ イ ー ダ を は じ め と す る い く つ か の 非 国 家 主 体 は 、9.11 テ ロ 以 前 よ り 大 量 破 壊 兵 器 の 取 得 に 強 い 関 心 を 示 し て き た 。 ブ ッ シ ュ 政 権 は 9.11テ ロ 後 、国 家がテロリストに生物・化学兵器を供給するかもしれないと警告したが、通常はこうした連 携は考えにくい。国家がテロリストを信頼するとは思えず、またテロリストが「供給国」に 対 し て 生 物・化 学 兵 器 を 使 用 す る か も し れ な い か ら で あ る 3 。む し ろ 、9.11テ ロ 以 前 か ら 指 摘 されてきた旧ソ連諸国、南アフリカあるいはユーゴスラビアなどから生物・化学兵器や関連 技 術 な ど が 不 法 流 出 す る 可 能 性 4 、あ る い は イ ラ ク 戦 争 後 に イ ラ ク が 秘 匿 し た 生 物・化 学 兵 器 が 流 出 す る 可 能 性 5の ほ う が 高 い と み ら れ た 。 2003年 の 米 ・ 中 央 情 報 局 ( CIA) 報 告 で は 、 ス テ ル ス ・ ウ イ ル ス や 遺 伝 子 組 み 換 え 生 物 兵 器 な ど 新 型 生 物 兵 器 が 開 発 さ れ る 可 能 性 を 指 摘 し 6 、バ イ オ 産 業 の 発 展 な ど 科 学 技 術 の 革 新 が 新 た な 脅 威 を 生 み 出 し 得 る こ と を 改 め て 印 象 付 け た が 、 こ れ も 9.11テ ロ 以 前 か ら 指 摘 さ れ る ポイントである。新型生物兵器の開発が、直ちに国や非国家主体の生物兵器取得可能性を格 段に高めるとも限らない。 加 え て 、 9.11テ ロ 後 、 生 物 ・ 化 学 兵 器 使 用 の 「 蓋 然 性 」 が 高 ま っ た と い う わ け で も な い よ うに思われる。国にとって、生物・化学兵器は、軍事的効果が不確実であること、敵による 甚大な報復を招きかねないこと、あるいは使用に対する禁忌感が低くはないことなどから、 依 然 と し て 使 い に く い 兵 器 で あ る 。使 用 す る と す れ ば 、国 や 政 権 の 生 存 が 危 機 に 瀕 し た と き 、 あるいは報復能力の弱い国や自国民を攻撃する場合などが考えられるが、それでも生物・化 学兵器の使用が明らかになれば、国際的な非難は免れない。 John Parachini, “Combating Terrorism: Assessing the Threat of Biological Terrorism,” testimony before the Subcommittee on National Security, Veterans Affairs, and International 3 Relations, Committee on Government Reform, U.S. House of Representatives, October 12, 2001, pp. 3-4を 参 照 。パ ラ キ ニ は 同 時 に 、「 通 常 」で は な い 状 況 に お い て 、あ る い は 国 内 の 一 派 が 未 承 認 で 、 国家がテロリストなど非国家主体に大量破壊兵器を供給し、大量破壊兵器テロを実行させる可能性が あることも指摘している。 4 Amy Sands, “Deconstructing the Chem-Bio Threat,” Testimony for the Senate Foreign Relations Committee, March 19, 2002 <http://cns.miis.edu/pubs/reports/asands.htm>を 参 照 。 5 Audrey Kurth Cronin, “Terrorist Motivations for Chemical and Biological Weapons Use: Placing the Threat in Context,” Report for Congress , RL31831 (March 28, 2003), p. 8を 参 照 。 Central Intelligence Agency, Directorate of Intelligence, “The Darker Bioweapons Future,” 3 November 2003. 6 52 生物・化学テロに関しては、そもそも非国家主体に対して抑止はほとんど機能しないこと に 加 え て 、 オ ウ ム 真 理 教 の サ リ ン 事 件 、 9.11テ ロ お よ び 炭 疽 菌 事 件 に よ り 、 生 物 ・ 化 学 兵 器 を 使 用 す る 心 理 的 障 壁 が 取 り 除 か れ た と し て 、使 用 の 蓋 然 性 が 高 ま っ た よ う な 印 象 を 受 け る 。 2003年 12月 の 国 連 の 報 告 で は 、ア ル カ イ ー ダ に よ る 大 量 破 壊 兵 器 テ ロ の 可 能 性 に つ い て 、以 下のように述べている。 「アルカイーダは、そのテロ活動を実行するために化学あるいは生物兵器の使用を依 然として検討している。……彼らはすでに、今後の攻撃において、化学あるいは生物 兵器を使用すると決定してきた。彼らが直面している唯一の抑制は、適切かつ効果的 に そ れ ら を 作 動 さ せ る た め の 技 術 的 な 複 雑 さ だ け で あ る 7 」。 他 方 で ア ル カ イ ー ダ は 、9.11テ ロ 以 前 か ら 大 量 破 壊 兵 器 テ ロ に 高 い 関 心 を 示 し て お り 8 、9.11 テ ロ を 境 に そ の 実 行 の 可 能 性 を 高 め た わ け で は な い 。 ま た 9.11テ ロ お よ び 炭 疽 菌 事 件 直 後 、 大量破壊兵器テロを騙った狂言は劇的に増大したものの、他方で実際に生物・化学剤などが 使われた事件の件数は減少し、その事件の多くも、テロというよりはむしろ犯罪に分類され る よ う な も の で あ っ た( 狂 言 も 含 め 、生 物・化 学 剤 が 用 い ら れ た 2002年 の 事 件 に つ い て は 本 章 末 の 表 2を 参 照 ) 9 。 7 Security Council Committee Established Pursuant to Resolution 1267 (1999) Concerning Al-Qaida and the Taliban and Associated Individuals and Entities, “The Monitoring Group’s Second Report Pursuant to Resolution 1455 (2003),” 1 December 2003, p. 38. Gary A. Ackerman and Jeffrey M. Bale, “Al-Qa’ida and Weapons of Mass Destruction,” Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, December 31, 2002 8 <http://cns.miis.edu/pubs/other/alqwmd.htm>; Kimberly McCloud, Gary A. Ackerman and Jeffrey M. Bale, “Chart: Al-Qa’ida’s WMD Activies,” Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, January 21, 2003 <http://cns.miis.edu/pubs/other/ sjm_cht.htm>を 参 照 。 9 2001年 に 、 そ う し た 狂 言 は 前 年 の 25件 か ら 603件 に 増 大 し た が 、 実 際 の 事 件 は 48件 か ら 25件 に 減 少 し た 。2002年 に は 、狂 言 は 71件 に 、実 際 の 事 件 は 23件 に 減 少 し た 。Adam Dolnik and Jason Pate, “2001 WMD Terrorism Chronology,” CNS Report , Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, September 18, 2002 <http://cns.miis.edu/pubs/ reports/cbrn2k1.htm>; Wayne Turnbull and Praveen Abhayaratne, “2002 WMD Terrorism Chronology: Incidents Involving Sub-National Actors and Chemical, Biological. Radiological, and Nuclear Materials,” Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, 2003を 参 照 。 生 物 ・ 化 学 テ ロ を 含 む 大 量 破 壊 兵 器 テ ロ に 関 し て は 、 本 報 告 書 第 1章 で も 言 及 されている。生物・化学テロに関しては、本章で脚注にあげたもののほかに、たとえば以下を参照。 加藤朗「非国家主体への拡散の可能性」納家政嗣、梅本哲也『大量破壊兵器不拡散の国際政治学』有 信 堂 、2000年 、62-81頁 。宮 坂 直 史「 大 量 破 壊 兵 器 テ ロ リ ズ ム の 諸 形 態 と そ の 展 望 」『 国 際 問 題 』第 505 号 ( 2002年 4月 )。 生 物 テ ロ の 歴 史 に つ い て は 、 W. Seth Carus, “Bioterrorism and Biocrimes: The Illicit Use of Biological Agents Since 1900,” Working Paper , Center for Counterproliferation Research, National Defense University, August 1998 (February 2001 Revision)も 参 照 。 53 生物・化学テロが発生する蓋然性が、必ずしも高くはない要因としては、①多くの非国家 主体は、目的を達成するのに生物・化学兵器を含む大量破壊兵器を用いた大量殺戮ではなく 通常の攻撃方法で十分であると考えること、②生物・化学兵器でなく通常の攻撃方法でも大 量殺戮が可能なこと、③生物・化学兵器を使い慣れていない非国家主体は使用のリスクを負 うことに躊躇すること、④生物・化学テロにより非国家主体はその支援者を失う可能性があ ること、⑤生物・化学テロを実行すれば、政府からの激しい報復を受けて組織壊滅につなが りかねないこと、⑥生物・化学兵器使用に対する禁忌感が依然として根強いことなどがあげ ら れ て い る 10 。9.11テ ロ が 非 国 家 主 体 に 大 き な イ ン パ ク ト を 与 え た こ と は 想 像 に 難 く な い が 、 これを受けて、テロリストの多くがこうした要因を考慮しなくなったとは考えにくい。 このように、生物・化学兵器の拡散状況には大きな変化はみられず、また生物・化学兵器 使 用 の 蓋 然 性 も 高 ま っ た よ う に は み え な い 。 に も か か わ ら ず 、 9.11テ ロ お よ び 炭 疽 菌 事 件 以 降、国際社会、とりわけ米国において、生物・化学テロに対する脅威認識が高まった。これ は、一つには、生物・化学兵器を含む大量破壊兵器テロが「蓋然性は低いが重大性の高い脅 威 11 」で あ り 、そ の 脅 威 の「 現 実 性 」が 再 認 識 さ れ た た め で あ っ た と い え る 。炭 疽 菌 事 件 は 、 大きな人的被害をもたらしたわけではなかったが、生物テロが心理的あるいは経済的に大き な イ ン パ ク ト を 持 つ こ と を 改 め て 明 ら か に し た 12 。 同 時 に 米 国 が 、 生 物 ・ 化 学 兵 器 を 含 む 大 量破壊兵器テロの脅威を強調したことも、国際社会の脅威認識に影響を与えたと思われる。 ブッシュ政権は、テロと大量破壊兵器の結びつきに対して強い懸念を示し、大量破壊兵器 を保有するテロ支援国家としての「ならず者国家」の脅威を喧伝していった。ブッシュ大統 領 は 、2002年 1月 の 一 般 教 書 演 説 で 、大 量 破 壊 兵 器 を「 テ ロ リ ス ト に 供 給 す る か も し れ 」ず 、 「同盟国を攻撃したり、米国を脅迫しようと試みたりするかもしれない」として、北朝鮮、 イ ラ ク お よ び イ ラ ン を 「 悪 の 枢 軸 ( axis of evil)」 と 名 指 し し 、 こ れ ら の 各 「 政 権 は 、 大 量 Simon, “Terrorists and the Potential Use of Biological Weapons,” pp. 11-14; Richard A. Falkenrath, “Confronting Nuclear, Biological and Chemical Terrorism,” Survival , Vol. 40, No. 3 10 (Autumn 1998), pp. 51-53; Jeffrey D. Simon, “Biological Terrorism: Preparing to Meet the Threat,” Joshua Lederberg (ed.), Biological Weapons: Limiting the Threat (Cambridge, Massachusetts: The MIT Press, 1999), pp. 239-242; Parachini, “Combating Terrorism,” p. 5; Cronin, “Terrorist Motivations for Chemical and Biological Weapons Use,” pp. 6-7を 参 照 。 11 Falkenrath, “Confronting Nuclear, Biological and Chemical Terrorism,” p. 44. 12 Audrey Kurth Cronin, “Terrorist Motivations for Chemical and Biological Weapons Use: Placing the Threat in Context,” Report for Congress , RL31831 (March 28, 2003), p. 5は 、生 物・化 学テロは、大量殺戮の可能性はあるが、それは最悪のケースの場合であり、一般的には恐怖やパニッ クを高めるのにより効果的であると論じている。 54 破壊兵器を追い求めることによって、世界の平和に重大かつ増大する危険を与えて」いると 非 難 し た 13 。ボ ル ト ン( John R. Bolton)国 務 次 官 も 、「 テ ロ 支 援 国 家 と 大 量 破 壊 兵 器 拡 散 の 間 の 強 い 結 び つ き は 明 ら か に な っ て 」お り 、「 わ ず か の 例 外 を 除 き 、テ ロ 組 織 は 、国 家 の 支 援 な し に は 大 量 破 壊 兵 器 を 取 得 で き な い 14 」と し て 、「 な ら ず 者 国 家 」と 大 量 破 壊 兵 器 テ ロ と の 結びつきを強調した。 ブッシュ政権は、様々な場で生物・化学兵器の拡散懸念国を名指しして非難した。ボルト ン 国 務 次 官 は 、 2001年 11月 の BWC運 用 検 討 会 議 に お い て 、 イ ラ ク と 北 朝 鮮 が BWCに 違 反 し て お り 、イ ラ ン 、リ ビ ア 、シ リ ア お よ び ス ー ダ ン の 生 物 兵 器 開 発 を 懸 念 し て い る と 述 べ た 15 。 ま た 米 国 は 、2003年 4月 の CWC運 用 検 討 会 議 に お い て 、シ リ ア 、リ ビ ア お よ び 北 朝 鮮 が 化 学 兵 器 を 保 有 し て い る と 名 指 し し 、さ ら に CWC締 約 国 で あ る イ ラ ン に つ い て も 、条 約 に 違 反 し て 化 学 兵 器 を 保 有 し て い る と 主 張 し た 16 。 他 方 で 、 こ れ ま で の と こ ろ 、 大 量 破 壊 兵 器 拡 散 問 題 に 関 す る ブ ッ シ ュ 政 権 の 最 優 先 課 題 は 、イ ラ ク 問 題 お よ び 核 兵 器 拡 散 問 題 で あ る 。米 国 は 、 生物・化学兵器の拡散懸念国に対して、チャレンジ査察の要請、安保理への報告、あるいは 先制行動など、具体的な行動をとったわけではない。米国は、生物・化学兵器拡散問題を、 現状ではその拡散が懸念されると名指しした国に対する政治的圧力の手段として用いている ともいえる。 George W. Bush, “The President’s State of the Union Address,” Washington D.C., January 29, 2002 <http://www.whitehouse.gov/news/releases/2002/01/20020129-11.html>. 13 John R. Bolton, “The New Strategic Framework: A Response to 21st Century Threat,” U.S. Foreign Policy Agenda: An Electronic Journal of the U.S. Department of State , Vol. 7, No. 2 (July 2002), p. 5. 14 John R. Bolton, Under Secretary for Arms Control and International Security, “Remarks to the 5th Biological Weapons Convention Review Conference Meeting,” Geneva, Switzerland 15 November 19, 2001 <http://www.state.gov/t/us/rm/janjuly/6231.htm>.ボ ル ト ン 国 務 次 官 は 、 翌 年 5 月 の 演 説 で 、こ れ ら の 国 に 加 え て 、「 キ ュ ー バ が 、少 な く と も 限 定 的 な 攻 撃 的 生 物 戦 研 究 お よ び 開 発 努 力 を 有 し て い る と 考 え て い る 」と も 述 べ て い る 。John R. Bolton, Under Secretary for Arms Control and International Security, “Beyond the Axis of Evil: Additional Threats from Weapons of Mass Destruction,” Remarks to the Heritage Foundation, Washington, DC, May 6, 2002 <http://www.state.gov/t/us/rm/9962.htm>. 16 Stephen G. Rademaker, Assistant Secretary of State for Arms Control, U.S. Department of State, “National Statement to the First Review Conference of the Chemical Weapons Convention,” April 28, 2003 <http://www.opcw.org/cwcrevcon/doc/NAT/UnitedStates_s.pdf>. こ れ に 対 し て イ ラ ン は 、「 根 拠 の な い 主 張 」と し て 、化 学 兵 器 の 保 有 を 否 定 し た 。 “The statement by the delegation of the Islamic Republic of Iran, exercising the right of reply in response to the US delegation statement” <http://www.opcw.org/cwcrevcon/doc/NAT/Iran_reply_2_US.pdf>. 55 2. 生 物 ・化 学 兵 器 不 拡 散 体 制 を め ぐ る 動 向 と 問 題 点 ( 1) CWC CWCの 締 約 国 は 160カ 国 ( 2004年 1月 現 在 ) に 達 し て い る が 、 化 学 兵 器 を 保 有 し て い る と みられる北朝鮮や中東諸国が条約に加入していない。条約の普遍性の確保が重要な課題の一 つであるが、その達成は容易ではない。化学兵器を保有する国は、その主たる動機である国 内外からの安全保障上の懸念が緩和あるいは解消されるまでは、その保有を放棄しないであ ろう。また、化学兵器の保有に全く関心はないにもかかわらず、財政的および人的資源に欠 けるため条約履行に必要な措置をとるのが難しいこと、あるいは他の重要な問題を抱えて CWC加 入 の 優 先 順 位 が 低 い こ と な ど か ら 加 入 に 至 っ て い な い 国 も あ る 。 化 学 兵 器 禁 止 機 関 ( OPCW) 執 行 理 事 会 特 別 会 合 は 、 2003年 10月 、「 普 遍 化 ア ク シ ョ ン プ ラ ン 」 を 承 認 し 、 締 約 国 お よ び OPCWが 、CWCの 普 遍 化 を 達 成 す る た め に 未 加 入 国 へ の 働 き か け を 強 化 す る な ど 積極的に取り組むよう求めている。 不 遵 守 は 、CWCが 直 面 す る 第 二 の 問 題 で あ る 。一 つ は 、い わ ゆ る 技 術 的 不 遵 守 で あ り 、た と え ば 、CWCの 下 で 申 告 が 求 め ら れ て い る 施 設 や デ ー タ に 関 し て 未 申 告 あ る い は 申 告 の 内 容 が 不 十 分 な 国 が あ る 。不 遵 守 に 関 す る 、よ り 重 要 な 問 題 は 、CWCに 違 反 し て 化 学 兵 器 を 保 有 す る 締 約 国 の 存 在 が 疑 わ れ て い る こ と 、な ら び に CWCに 規 定 さ れ た「 遵 守 を 確 保 す る た め の 措 置 」( 第 12条 )で は 違 反 を 効 果 的 に 抑 止 し う る と は 考 え に く い こ と で あ る 17 。化 学 兵 器 を 秘 密 裡 に 製 造 し 秘 匿 す る こ と は 、難 し く は な い と さ れ る 。CWC第 12条 で は 、条 約 違 反 に 際 し て 、 違 反 国 の 条 約 上 の 権 利 お よ び 特 権 の 制 限 ま た は 停 止( 2項 )、締 約 国 会 議 に よ る 国 際 法 に 適 合 す る 集 団 的 な 措 置 の 勧 告 ( 3項 )、 な ら び に 国 連 へ の 注 意 喚 起 ( 4項 ) を 定 め て い る 。 不 遵 守 問題の解決は、最終的には国連安保理による非軍事的あるいは軍事的措置の実施に委ねられ て い る が 、 大 量 破 壊 兵 器 拡 散 が 国 際 犯 罪 と は な っ て い な い な か で 18 、 不 拡 散 義 務 に 反 す る 行 動をとったというだけで「平和に対する脅威」であると決定されるとは考えにくいし、軍事 的措置の実施が容認される可能性はさらに小さいであろう。 第三に、査察の問題があげられる。産業査察については、締約国間の信頼醸成と透明性の 向上、産業界における化学兵器関連の規範意識の醸成や維持、チャレンジ査察に備えた査察 17 「 CWCを 交 渉 し た 国 は 、 義 務 的 な 制 裁 に 合 意 す る こ と 、 あ る い は い か な る 懲 罰 を 課 す か を 明 記 す る こ と に 消 極 的 で あ っ た 」 と さ れ る 。 Jessica Eve Stern, “Co-operative Security and the CWC: A Comparison of the Chemical and Nuclear Weapons Non-Proliferation Regimes,” Contemporary Security Policy , Vol. 15, No. 3 (December 1994), p. 44. 18 Barry Kellman, “WMD Proliferation: An International Crime?” The Nonproliferation Review , Vol. 8, No. 2 (Summer 2001), pp. 93-101を 参 照 。 56 員の知見と技術の維持や向上、チャレンジ査察の発動に寄与し得る情報の蓄積などといった 効 用 が あ げ ら れ て い る 19 。 他 方 で 、 産 業 査 察 が 拡 散 防 止 に ど れ だ け 意 味 が あ る の か を 疑 問 視 す る 見 方 も あ る 。締 約 国 は 、化 学 兵 器 関 連 の 施 設 をOPCWに 申 告 し な い で あ ろ う し 、そ う し た 未 申 告 施 設 は 「 産 業 」 査 察 の 対 象 と は な ら な い か ら で あ る 20 。 チャレンジ査察は、未申告活動の探知を主眼としたものだが、これまで実施されたことは な い 。米 国 は 、チ ャ レ ン ジ 査 察 を 要 請 し な い 理 由 と し て 、OPCWの 運 営 上 の 問 題 を あ げ て い る が 21 、 実 際 に は 機 微 情 報 の 提 示 に 消 極 的 な こ と 、 あ る い は 米 国 に 対 し て 報 復 的 に チ ャ レ ン ジ 査 察 が 要 請 さ れ る 可 能 性 が あ る こ と な ど を 懸 念 し て い る と み ら れ る 22 。「 条 約 違 反 の 証 拠 が 圧 倒 的 で な け れ ば 、締 約 国 は チ ャ レ ン ジ 査 察 を 要 請 す る の は 政 治 的 に 困 難 か も し れ な い 23 」 が、今後もチャレンジ査察が発動されない状況が続けば、違反への抑止力としての価値が低 下するのではないかとも懸念されている。 第 四 に 、米 露 の 化 学 兵 器 の 廃 棄 が 、条 約 の 規 定 ど お り に は 進 ん で い な い と い う 問 題 が あ る 。 米国については、新しい環境規制が定められたこと、あるいは老朽化化学兵器から化学剤を 抜 き 取 る 技 術 が 難 し い こ と な ど が 、 遅 れ の 原 因 と さ れ て い る 24 。 ロ シ ア に つ い て は 、 主 と し て 廃 棄 の た め の 資 金 不 足 が 遅 延 の 原 因 と な っ て い る が 、化 学 兵 器 を 隠 し て い る の で は な い か 、 あ る い は 次 世 代 化 学 剤 を 開 発 し て い る の で は な い か と の 疑 念 も 持 た れ て い る 25 。 と り わ け 、 ロシアによる化学兵器廃棄の促進は、同国から化学兵器が不法に流出するのを防止するとい う意味でも、喫緊の課題である。他方で、米露の化学兵器廃棄が進むと、そのための査察活 19 浅 田 正 彦 、杉 島 正 秋「 化 学 兵 器 の 拡 散 と 拡 散 防 止 」納 家 政 嗣 、梅 本 哲 也『 大 量 破 壊 兵 器 不 拡 散 の 国 際 政 治 学 』 有 信 堂 、 2000年 、 128頁 。 20 浅 田 、杉 島「 化 学 兵 器 の 拡 散 と 拡 散 防 止 」、127頁 。新 井 勉「 化 学・生 物 兵 器 の 軍 縮・不 拡 散 体 制 へ の イ ン プ リ ケ ー シ ョ ン 」 日 本 国 際 問 題 研 究 所 『 9.11テ ロ 攻 撃 以 降 の 国 際 情 勢 と 日 本 の 対 応 』 2002年 、 122頁 。 産 業 査 察 に つ い て は 、 化 学 産 業 が 発 達 し て 申 告 す る 施 設 が 多 く 、 し か も CWCを 誠 実 に 遵 守 し ている先進国に過度の負担を強いるものであるとの批判もある。 21 Seth Brugger, “U.S. May Request Chemical Weapons Convention Inspections,” Arms Control Today , Vol. 32, No. 2 (March 2002) <http://www.armscontrol.org/act/2002_03/ cwcmarch02.asp>. Michael Moodie and Isabelle Williams, “The CWC Review Conference: Issues and Opportunities,” Special Report , Chemical and Biological Arms Control Institute, No. 6 (2003), p. 22 26. 23 Jonathan B. Tucker (ed.), “The Conduct of Challenge Inspections under the Chemical Weapons Convention,” proceedings of an Expert Workshop held on May 29-31, 2002, Washington D.C., Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, p. 22. 24 Seth Brugger, “U.S. to Miss Chemical Weapons Convention Deadline,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 9 (November 2001) <http://www.armscontrol.org/act/2001_11/ cwcnov01.asp>を 参 照 。 25 Sands, “Deconstructing the Chem-Bio Threat”を 参 照 。 57 動 が 増 大 し 、OPCWの 多 く の 資 源 が 向 け ら れ る こ と に な り 、OPCWの 他 の 活 動 を 圧 迫 す る の で は な い か と い う 懸 念 も あ る 26 。 第 五 に 、 化 学 兵 器 不 拡 散 が 孕 む 「 南 北 問 題 」 が 指 摘 さ れ て い る 。 CWC第 11条 で は 、「 化 学 に 関 す る 活 動 の 分 野 に お け る 国 際 協 力 」が 謳 わ れ 、こ れ が CWCに 安 全 保 障 上 の 関 心 を 持 た な い国に加入のインセンティブを与えている。しかしながら、そうした国際協力を期待する非 同 盟 諸 国 は 、先 進 国 が 十 分 な 協 力 を 行 っ て い な い と し 、と く に AGに よ る 輸 出 管 理 が そ の 障 害 に な っ て い る と 批 判 し て い る 。こ れ に 対 し て 、AGメ ン バ ー 国 は 、CWCと AGで は 輸 出 管 理 の 対 象 と し て カ バ ー す る 範 囲 が 異 な っ て い る こ と や 、AGの ほ う が 運 用 上 の 柔 軟 性 に 富 ん で い る こ と な ど を あ げ て 、 AGを 維 持 す べ き で あ る と 主 張 し て い る 27 。 最 後 に 、最 も 重 要 な 問 題 の 一 つ と し て 、テ ロ 問 題 の 取 り 扱 い が あ げ ら れ よ う 。OPCW事 務 局 は 、 CWCが 「 OPCWに 対 テ ロ リ ズ ム 闘 争 に 携 わ る 権 限 を 与 え る 条 項 を 含 ん で 」 お り 、「 条 約の世界的な加入、ならびにその包括的な履行が化学テロに対するより効果的な世界的行動 を 促 進 し 、そ れ に 伴 う リ ス ク を 低 減 す る で あ ろ う 28 」と し て い る 。た と え ば CWC第 7条 で は 、 条約で禁止された活動に関して国内法制を制定し、罰則を規定して犯罪化することが義務付 けられている。これは、各国レベルで非国家主体による化学兵器の取得、ならびに化学テロ を 防 止 す る の に 資 す る 。し か し な が ら 、多 く の 締 約 国 が 法 制 化 を 完 了 し て い る わ け で は な く 、 「化学テロへの対抗にとくに関連する条約の様々な条項は、相当多くの締約国によって、い ま だ 完 全 に は 履 行 さ れ て い な い 29 」と 指 摘 さ れ て い る 。加 え て 、OPCW事 務 局 長 は 、「 我 々 は 、 対 テ ロ( counter-terrorism)機 関 で は な い 30 」と 繰 り 返 し 述 べ て い る 。そ こ に は 、OPCWが 直面する財政問題が影響を与えているものと思われるが、核テロ問題への対応に積極的な姿 勢 を 示 す 国 際 原 子 力 機 関 ( IAEA) と 比 べ る と 、 OPCWが 必 ず し も 積 極 的 で は な い よ う な 印 象を受ける。 Ian R. Kenyon, “The Chemical Weapons Convention and OPCW: The Challenges of the 21st Century,” The CBW Conventions Bulletin , No. 56 (June 2002), pp. 1-2; Stockholm International 26 Peace Research Institute (SIPRI), “Maintaining the Effectiveness of the Chemical Weapons Convention,” Policy Paper , October 2002, pp. 14-15を 参 照 。 27 Moodie and Williams, “The CWC Review Conference,” p. 35を 参 照 。 28 “Initial Considerations Regarding the OPCW’s Contribution to the Global Struggle against Chemical Terrorism,” struggle.html>. 29 Secretariat Background Paper <http://www.opcw.org/resp/html/ Ibid. “Statement by the Director-General of the Technical Secretariat of the OPCW, Amb. Rofelio Pfirter,” at the Symposium, Towards the Elimination of the Chemical Weapons: Roles of the 30 OPCW and Japan , United Nations University, Tokyo, 1 October 2003. 58 2003年 4∼ 5月 に 開 催 さ れ た 第 1回 運 用 検 討 会 議 で は 、上 述 し た よ う な 問 題 を 含 む 、CWCが 抱 え る 問 題 に つ い て 締 約 国 が 議 論 し 、最 終 的 に「 政 治 宣 言 31 」が コ ン セ ン サ ス で 採 択 さ れ た 。 ( 2) BWC 151の 締 約 国( 2003年 11月 現 在 )を 有 す る BWCに は 、検 証 措 置 が 規 定 さ れ て い な い こ と か ら 、 前 述 の よ う に 、 1995年 よ り 特 別 グ ル ー プ ( AHG) に お い て BWC検 証 議 定 書 交 渉 が 行 わ れ て き た 。2001年 11月 の 第 5回 BWC運 用 検 討 会 議 に お け る 議 定 書 の 採 択 を 目 標 と し て 、同 年 4月 に は 議 長 テ キ ス ト 32 と し て 議 定 書 案 が 提 示 さ れ た 。 し か し な が ら 、 ブ ッ シ ュ 政 権 は 、 7月 の AHGに お い て 、 BWCの 強 化 に つ な が ら な い と し て 議 長 テ キ ス ト に 反 対 す る こ と を 明 確 に した。その理由として米国があげたのは、生物関連施設は小規模で数も膨大であり、変更も 頻繁になされることなどとも相俟って、秘密裡の生物兵器関連施設を探知できるような検証 措置を構築するのは難しいこと、検証措置は、生物兵器の取得を模索する国ではなく、西側 諸国や正当なバイオ産業に過度の負担を強いるものになりかねないこと、ならびに国家安全 保 障 あ る い は 商 業 上 の 機 微 情 報 が 漏 れ る 危 険 性 が あ る こ と な ど で あ っ た 33 。 ブ ッ シ ュ 政 権 の 姿 勢 は 、議 定 書 推 進 派 に 強 く 批 判 さ れ た 。推 進 派 は 、「 議 定 書 は 、決 定 的 証 拠( smoking gun)を 見 つ け る よ う に は 設 計 さ れ て い な い 」が 、「 ラ ン ダ ム に 選 択 さ れ た 透 明 性 の た め の 訪 問( transparency visits)お よ び 明 確 化 の た め の 訪 問( clarification visits)の 抑 止 価 値 は 大 き い 34 」 と 主 張 し た 。 ま た 議 定 書 は 、 秘 密 保 護 に も 十 分 に 配 慮 し た も の で あ る 31 RC-1/3, 9 May 2003. 32 BWC/AD HOC GROUP/CRP.8, 3 April 2001. 33 Donald Mahley, U.S. Special Negotiator for Chemical and Biological Arms Control Issues, “Statement by the United States to the Ad Hoc Group of Biological Weapons Convention States Parties,” Geneva, Switzerland, July 25, 2001 <http://www.state.gov/t/ac/rls/rm/ 2001/5497.htm>. 米 国 が 議 定 書 交 渉 を 拒 否 し た 理 由 に 関 し て は 、こ の 他 に 、Alan P. Zelicoff, “An Impractical Protocol,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 4 (May 2001) <http://www.armscontrol.org/act/ 2001_05/zelicoff.asp>; Robert P. Kadlec, “First, Do No Harm,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 4 (May 2001) <http://www.armscontrol.org/act/2001_05/kadlec.asp>; Kathleen C. Bailey, Why the United States Rejected the Protocol to the Biological and Toxin Weapons Convention , National Institute for Public Policy, October 2002, pp. 9-17も 参 照 。な お 、BWC検 証 議 定 書 へ の 積 極 的 で は な い 姿 勢 は 、 ク リ ン ト ン ( Bill J. Clinton ) 前 政 権 期 か ら 続 く も の で あ っ た 。 Jonathan B. Tucker, “Strengthening the BWC: Moving toward a Compliance Protocol,” Arms Control Today , Vol. 28, No. 1 (January/February 1998) <http://www.armscontrol.org/ act/1998_01-02/tucker.asp>を 参 照 。 Barbara Hatch Rosenberg, “Allergic Reaction: Washington’s Response to the BWC Protocol,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 6 July/August 2001 <http://www.armscontrol.org/act/ 2001_07-08/rosenbergjul_aug01.asp>. 34 59 と さ れ た 35 。 こ れ に 対 し て 、 反 対 派 の 一 人 で あ る ム ー デ ィ ー ( Michael Moodie) は 、 未 申 告 施 設 を 探 知 で き な い よ う な 検 証 措 置 で 違 反 国 が 抑 止 さ れ る か 、極 め て 疑 わ し い と 反 論 し た 36 。 米 国 は 、検 証 議 定 書 作 成 と い う 伝 統 的 な ア プ ロ ー チ で は な く 、BWCを 強 化 す る た め の 新 し い ア プ ロ ー チ を 検 討 す る と し て い た が 、 そ の 具 体 的 な 提 案 は 、 2001年 11月 1日 に ブ ッ シ ュ 大 統 領 が 明 ら か に し た 。 そ こ で あ げ ら れ た 7項 目 は 、 ① 禁 止 さ れ た 生 物 兵 器 活 動 に 対 す る 厳 格 な 刑 法 、② 生 物 兵 器 使 用 疑 惑 を 調 査 す る 国 連 の 手 続 き 、③ BWC遵 守 の 懸 念 に ア ド レ ス す る 手 続き、④国際的な疾病管理の改善、⑤病原体の安全および遺伝子操作のための国内監視メカ ニズム、⑥生物科学者の倫理的行動規範、⑦病原体研究、使用あるいは改良などの責任ある 行 動 の 促 進 で あ っ た 37 。 第 5回 運 用 検 討 会 議 に お い て 、 ボ ル ト ン 国 務 次 官 は 、「 生 物 兵 器 に よ る複雑かつ危険な脅威を取り扱うために、伝統的な軍備管理措置を超える必要がある」とし て 、新 し い ア プ ロ ー チ の 必 要 性 を 強 調 す る と と も に 、「 な い よ り は ま し 、と い う 議 定 書 の 時 代 は 終 わ っ た 」 と し て 、 検 証 議 定 書 交 渉 の 継 続 に 反 対 す る 姿 勢 を 、 改 め て 明 確 に 示 し た 38 。 この運用検討会議は、検証議定書交渉の取り扱いについて意見がまとまらなかったことか ら 、 翌 年 ま で 中 断 さ れ る こ と と な っ た 。 2002年 11月 に 再 開 さ れ た 会 議 で は 、 BWC強 化 プ ロ セ ス を 継 続 さ せ る た め 、 条 約 強 化 の た め の 3カ 年 作 業 計 画 が 合 意 さ れ た 。 こ れ は 、 次 回 運 用 検 討 会 議( 2006年 )に 向 け て 、毎 年 、締 約 国 会 合 お よ び そ の 準 備 の た め の 専 門 家 会 合 を 開 催 し 、 以 下 の 5分 野 に つ い て 順 次 検 討 し 、 共 通 の 理 解 と 実 効 的 な 措 置 を 促 進 し て い く こ と を 目 的としている。 ① 条約の禁止事項を実施するための国内措置 ② 病 原 体・毒 素 の 安 全 管 理・管 理 体 制 を 確 立・維 持 す る た め の 国 内 措 置( バ イ オ セ Marie Isabelle Chevrier, “A Necessary Compromise,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 4 (May 2001) <http://www.armscontrol.org/act/2001_05/chevrier.asp>; Barbara Rosenberg, “US Policy 35 and the BWC Protocol,” The CBW Convention Bulletin , No. 52 (June 2001), p. 2; Graham S. Pearson, “The US Rejection of the Protocol at the Eleventh Hour Damages International Security against Biological Weapons,” The CBW Conventions Bulletin , No. 53 (September 2001), pp. 6-7; Mark Wheelis and Malcolm Dando, “On the Brink: Biodefence, Biotechnology and the Future of Weapons Control,” The CBW Conventions Bulletin , No. 58 (December 2002), pp. 3-4を 参照。 36 Michael Moodie, “Building on Faulty Assumptions,” Arms Control Today , Vol. 31, No. 4 (May 2001) <http://www.armscontrol.org/act/2001_05/moodie.asp>. George W. Bush, “Strengthening the International Regime against Biological Weapons,” statement, November 1, 2001 <http://www.whitehouse.gov/news/releases/2001/11/20011101.html >. 37 John B. Bolton, Under Secretary for Arms Control and International Security, “Remarks to the 5th Biological Weapons Convention RevCon Meeting,” Geneva, Switzerland, November 19, 38 2001 < http://www.state.gov/t/us/rm/janjuly/6231.htm >. 60 キュリティ) ③ 生 物 兵 器 の 使 用 の 疑 惑 及 び 疑 義 の あ る 疾 病 の 発 生 に 対 処 し 、調 査・被 害 の 緩 和 を 行うための国際的対応能力の強化(危機対処) ④ 感 染 症 の 監 視・探 知・診 断 に 対 処 す る た め の 国 内・国 際 的 努 力 の 強 化( 疾 病 サ ー ベイランス) ⑤ 科学者のための行動規範 2003年 締 約 国 会 議 で は 、 こ の う ち ① と ② が 議 論 さ れ 、 2004年 に は ③ お よ び ④ が 、 2005年 に は⑤が取り扱われる。 こ れ ら 5分 野 は 、 効 果 的 に 実 施 さ れ れ ば 、 国 家 の み な ら ず 非 国 家 主 体 に よ る 生 物 兵 器 の 取 得や使用の脅威を低減するのに資するであろう。しかしながら、政治的拘束力はあっても法 的 拘 束 力 は な い 措 置 が 想 定 さ れ て い る こ と は 、留 意 す べ き で あ ろ う 。BWCの 下 で 過 去 に 行 わ れ て き た 信 頼 醸 成 措 置( CBM)は 、参 加 国 お よ び 実 施 の レ ベ ル が と も に 低 く 、拡 散 防 止 に 効 果的であったとはいえない。異常な疾病の調査についても、受入国の同意や協力なしには実 施 で き な い 。こ の た め 、法 的 拘 束 力 の な い CBMで は 生 物 兵 器 の 脅 威 に 対 応 す る に は 必 ず し も 十 分 で は な く 、 法 的 拘 束 力 の あ る 文 書 に 基 づ い て 実 施 さ れ る べ き で あ る と の 主 張 も あ る 39 。 3. 今後の課題 生物・化学兵器問題への対応に関して、考慮しなければならないのは、第一に、これらの 兵器は第三世界諸国を中心にすでに拡散していること、さらにテロリストなど非国家主体に よる取得も難しくはないことである。生物・化学兵器の一層の拡散を防止する努力はもちろ ん重要だが、すでに拡散した生物・化学兵器をどう廃棄に向かわせるか、さらには生物・化 学 兵 器 の 使 用 を い か に 抑 止 し 、 使 用 さ れ た 場 合 に ど う 対 処 す る か ―強 制 措 置 を 含 む 遵 守 の 確 保 、 使 用 疑 惑 に 対 す る 迅 速 な 調 査 、 効 果 的 な 防 護 な ど ―も 問 わ れ て い る 。 第 二 に 留 意 し な け れ ば な ら な い の は 、「 レ ジ ー ム は 現 実 の 変 化 に 対 し て 、即 応 し て 変 わ る も の で は な い 40 」 と い う こ と で あ る 。 生 物 ・ 化 学 兵 器 不 拡 散 体 制 は 、 生 物 ・ 化 学 兵 器 禁 止 の 規 範を醸成し、そのためのルールを提供するものであり、今後も重要な役割を担うことはいう までもない。同体制の普遍性および遵守の確保は、生物・化学兵器の禁止に関する規範を高 39 Marie Isabelle Chevrier and Iris Hunger, “Confidence-Building Measures for the BTWC: Performance and Potential,” The Nonproliferation Review , Vol. 7, No. 3 (Fall-Winter 2000), pp. 24-42を 参 照 。 40 山 本 吉 宣 『 国 際 的 相 互 依 存 』 東 京 大 学 出 版 会 、 1989年 、 175頁 。 61 め、その信頼性を維持することに資するであろうし、不拡散義務が国内的にも実施されるこ と で 生 物・化 学 テ ロ の 防 止 に も 役 立 つ で あ ろ う 。普 遍 性 の 増 大 お よ び 達 成 は 容 易 で は な い が 、 これを主張し続けることが、国際社会が生物・化学兵器の取得や使用を許容しないという姿 勢を明確に示すうえでも必要である。 他方で、科学技術の発展はめざましく、伝統的な拡散防止措置だけでは、そうした進歩に ついていけないケースもあろう。また伝統的な不拡散措置は、主として国を対象としたもの であり、非国家主体による脅威に必ずしも効果的に対応できるわけではない。だからこそ、 そうした現実を踏まえた新しいアプローチも必要となるのである。 第三に、生物・化学兵器問題は、国際問題であるとともに国内問題でもあり、国際問題と 国内問題の中間に位置する、いわばトランスナショナルな問題である場合もある。国家によ る生物・化学兵器の取得は、主として他国の脅威を想定したものであるという意味で、第一 義的には国際問題だが、そうした兵器が国内で使用されるケースもあろう。国際テロや国家 支援テロはトランスナショナルな問題の典型だが、生物・化学兵器は移転が難しくないこと もあり、そうしたテロに使用されるかもしれない。生物兵器については、国境を越えて伝染 し、被害が拡大する可能性もある。だからこそ、生物・化学兵器拡散問題には、国際的およ び国内的な対応が、ともに不可欠である。 この関連で、新しいアプローチとして提案された措置の多くは、主として各国が個別に実 施するものであり、とくにブッシュ政権は法的拘束力のある文書の作成を想定していない。 時間と妥協の繰り返しを余儀なくされる条約化交渉を経るよりも、適時に必要な措置を講じ ていくほうが効果的な場合もあるが、国際的な連携あるいは調整がなされれば、そうした措 置 の 効 果 が 一 層 高 ま る で あ ろ う 41 。 テロを含めた生物・化学兵器使用の蓋然性は、必ずしも高いわけではなく、いたずらに脅 威を過大評価すべきではない。他方で、生物・化学兵器は、国家のみならず非国家主体でも 製造し、使用し得るし、使用されれば甚大な被害をもたらし得る。生物・化学兵器の脅威を 完全に封じ込めることは難しいかもしれないが、拡散および使用の可能性、ならびに使用さ れた場合の被害を極小化するための努力が求められる。そこでは、伝統的なアプローチと新 しいアプローチを、国際的にも国内的も、できることから着実に実施していくことが必要で 41 た と え ば 、バ イ オ セ キ ュ リ テ ィ に 関 し て は 、国 内 法 制 に 適 用 す る た め の 詳 細 な ガ イ ド ラ イ ン を 発 展 さ せ る べ き で あ る と い う 提 案 が あ る 。 Jonathan B. Tucker, “Biosecurity: Limiting Terrorist Access to Deadly Pathogens,” Peaceworks , United States Institute of Peace, No. 52 (November 2003)を 参照。 62 ある。 表1 アルジェリア アルゼンチン キューバ エジプト エチオピア インド インドネシア イラン イラク イスラエル カザフスタン 北朝鮮 韓国 リ ビ ア d) ミャンマー パキスタン サウジアラビア 南アフリカ スーダン シリア タイ ベトナム ユーゴスラビア 台湾 「 ○ 」: 保 有 CWC 批准 批准 批准 批准 批准 批准 批准 署名 批准 批准 批准 署名 批准 批准 批准 批准 批准 批准 批准 ― 第三世界諸国への生物・化学兵器拡散状況 化 学 兵 器 1991 a) 2000 b) ? ? ? ? △ △ △ △ △ ? △ △ ○ ○ △ △ ? △ △ △ △ △ △ △ △ △ △ ? ? ? ? △ ○ △ ? △ △ ○ △ △ 「 △ 」: お そ ら く 保 有 2002 c) ? ? △ △ △ ○ △ BWC 批准 批准 批准 署名 批准 批准 批准 批准 批准 ○ △ △ △ ? ○ ? △ 「 ? 」: 保 有 疑 惑 批准 批准 批准 署名 批准 批准 批准 批准 署名 批准 批准 批准 ― 生 物 兵 器 1991 a) 2000 b) ☆ ☆ 2002 c) ☆ ☆ ☆ ☆ △ △ ○ ☆ ☆ ○ △ △ △ △ ☆ ☆ △ ☆ ☆ △ △ ? ☆ 「 ☆ 」: 研 究 ・開 発 ( 疑 惑 を 含 む ) a) Steve Fetter, “Ballistic Missiles and Weapons of Mass Destruction: What Is the Threat? What Should be Done?” International Security, Vol. 16, No. 1 (Summer 1991), p. 14. b) Robert Shuey, “Nuclear, Biological, and Chemical Weapons and Missiles: The Current Situation and Treads,” CRS Report for Congress , RL30699 (updated August 10, 2001), p. 8. c) “Chemical and Biological Weapons: Possession and Programs Past and Present,” Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies [http://cns.miis.edu/research/cbw/possess.htm]; “Chemical Weapons Proliferation,” The Henry L. Stimson Center, 2002 [http://www.stimson.org/cbw/?SN=CB20011220137]; “Biological Weapons Proliferation,” The Henry L. Stimson Center, 2002 [http://www.stimson.org/cbw/?SN=CB2001121274] d) リ ビ ア は 、2003年 12月 に す べ て の 大 量 破 壊 兵 器 の 開 発 お よ び 保 有 を 放 棄 す る と 発 表 し 、翌 年 1月 に は CWCに 加 入 し た 。 63 表2 月日 1月 1月 3日 生 物 ・ 化 学 剤 が 用 い ら れ た ( 狂 言 を 含 む ) 事 件 ( 2002年 ) 1月 14日 1月 29日 2月 5日 2月 8日 2月 13日 2月 14日 2月 23日 場所 米国各地(中絶を行う病院など) 米国上院 コソボ ストラスブール(仏) ハラレ(ジンバブエ) ハラレ(ジンバブエ) リンカーン(米ネブラスカ州) 米コロラド州 米国最高裁判所(ワシントン) ブーラワーヨ(ジンバブエ) チェコ(内務大臣) ジンバブエ議会 オ ー ク ラ ン ド ( NZ) ローマ ピタリト(コロンビア) 剤 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 青酸カリ 不明 3月 1日 英国 水酸化ナトリウム 1月 4日 1月 7日 1月 9日 1月 10日 状況など 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 保 有( 9人 の モ ロ ッ コ 人 が 逮 捕 ) 使 用( FARC反 乱 軍 が 、水 処 理 プラントに投入) 使 用( ス コ ッ ト ラ ン ド の 民 族 解放戦線のメンバーと主張 する男が、アロマテラピー ボトルに剤を入れて、ブレ ア 首 相 の 妻 な ど 4人 に 送 付 ) 3月 9日 コロンビア 砒素 3月 11日 シカゴ 青酸カリなど 保 有( 死 亡 し た FARC反 乱 軍 兵 士が砒素で汚染された弾丸を 保有) 保 有( 当 局 は 、保 有 者 が 無 差 別暴力や無政府主義を動機 としていたと見る) 3月 18日 3月 21日 3月 22日 3月 27日 4月 11日 4月 14日 4月 18日 4月 26日 ガスリーシティ(米アイオワ州) モスクワ(パレスチナ大使館) ビクトリア(カナダ) 米アラバマ イスラエル スコットランド グロズヌイ キャンベラ(豪州) イスラエル 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 シアノイド 炭疽菌 青酸カリ 炭疽菌 青酸カリ 4月 29日 5月 5月 3日 5月 9日 5月 14日 リュブリャナ(スロベニア) オランダ 米フロリダ州 ? コロンビア 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 シアノイド 不明 5月 19日 5月 23日 5月 30日 5月 31日 6月 1日 ジンバブエ 米アーカンソー州 南アフリカ プーン(インド) 米カリフォルニア 米テネシー州 殺虫剤 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 不明 6月 13日 6月 16日 米マサチューセッツ州 イスラエル 炭疽菌 不明 7月 グロズヌイ 炭疽菌 64 狂言 狂言 狂言 狂言 計画(青酸ガス散布) 狂言 脅迫(ウオッカへの混入) 狂言 保 有( ヨ ル ダ ン 川 西 岸 地 区 で 発 見) 狂言 狂言 狂言 取得の計画(ハマス) 使 用( コ ロ ン ビ ア 軍 が FARCに よる使用を主張) 使 用( 紅 茶 へ の 投 入 、7名 死 亡 ) 狂言 狂言 狂言 狂言 使 用( 法 医 学 者 が 、不 明 の 化 学 剤を散布される) 狂言 取 得 の 計 画( ハ マ ス が 化 学 兵 器 使用を計画と報道) 計 画( チ ェ チ ェ ン 反 乱 軍 の 使 用 7月 19日 8月 トゥウィード(豪州) パキスタン 炭疽菌 シアノイド 8月 1日 イスラエル シアノイド 8月 2日 ロシア 水銀 デンバー(米コロラド州) 9月 13日 9月 19日 9月 20日 9月 25日 9月 30日 10月 3日 10月 14日 10月 15日 10月 16日 10月 17日 10月 18日 11月 11日 11月 25日 米・ゴア元副大統領オフィス 米マサチューセッツ州 在デンマーク米大使館 在ルクセンブルグ米大使館 在フランクフルト米総領事館 在イタリア米大使館 在ボルドー米総領事館 ドミニカ共和国 在ドミニカ共和国米大使館 在ベルギー・イスラエル大使館 IMF本 部 ( 米 ワ シ ン ト ン ) 米国務省 デンバー(米コロラド州) カナダ カナダ カナダ 米ワイオミング州 豪州議会 南アフリカ 砒素、アジ化ナト リウム、青酸カリ 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 マスタードガス 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 炭疽菌 Tetranium 12月 3日 12月 22日 NATO本 部 ケベック州(カナダ) 炭疽菌 炭疽菌 8月 27日 9月 5日 9月 11日 計画をロシア特殊部隊が察知) 狂言 保 有 ( Lashlar-e-Jhangvi活 動 家) 計 画( ハ マ ス が 青 酸 ガ ス 散 布 を 計画したとして軍事部門リー ダーを逮捕) 保 有( チ ェ チ ェ ン 反 乱 軍 と の つ ながりが疑われる) 保有 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 狂言 計 画( 極 右 白 人 至 上 主 義 者 グ ル ープのメンバーが大都市の水 道に投入することを計画) 狂言 狂言 注 ) こ の 表 は 、 Wayne Turnbull and Praveen Abhayaratne, “2002 WMD Terrorism Chronology: Incidents Involving Sub-National Actors and Chemical, Biological. Radiological, and Nuclear Materials,” Center for Nonproliferation Studies, Monterey Institute of International Studies, 2003を も と に 作 成 し た 。 65