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平成 27 年度 公益社団法人日本補綴歯科学会 東京支部総会・第 19 回
平成 27 年度 公益社団法人日本補綴歯科学会 東京支部総会・第 19 回学術大会 プログラム・抄録集 目次 1. 大会長挨拶・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2 2. 会場案内・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 3 3. 日程表,タイムスケジュール・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 4 4. 学術大会参加の皆様へ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 5 5. プログラム・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 7 6. 特別講演,生涯学習公開セミナー抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・12 7. 一般口演抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・16 8. 専門医ケースプレゼンテーション抄録・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・30 9. 協賛企業,協賛企業広告・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・33 -1- ご 挨 拶 公益社団法人日本補綴歯科学会 第19回東京支部学術大会 大会長 三浦 宏之 平成 27 年度公益社団法人日本補綴歯科学会東京支部学術大会を平成 27 年 11 月 28 日(土)、29 日(日)にお茶 の水の東京医科歯科大学M&Dタワー鈴木章夫記念講堂にて開催させていただきます。また、本学会会員および 地域の歯科医療にご貢献されている先生方を対象にした生涯学習公開セミナーも併催いたします。 2005 年にジルコニアが日本で認可されてからすでに 10 年が経過し、日常臨床に広く取り込まれるとともにコン ピューター技術の発展により歯科診療においてもデジタル化の波が大きく押し寄せております。昨年には CAD/CAM レジン冠が小臼歯部に保健適用され、さらに来年 1 月からレジンコアが新たに保健適用される予定に なっており、保健診療においてもメタルフリー修復が可能な範囲が大きく広がっております。 そこで、今回の学術大会では特別講演と致しまして、セラミック(ジルコニア) インプラントの第一人者であ る日本歯科大学病院総合診療科臨床教授で日本メタルフリー歯科学会理事長の本間憲章先生に「メタル フリー 歯科時代の インプラントについて」ご講演いただきます。 また、併催いたします生涯学習公開セミナーでは「金属アレルギー患者のメタルフリー修復について 新しい治 療材料と治療法について」と題して、第一線で活躍されている東京医科歯科大学歯科アレルギー外来臨床教授の 松村光明先生にご講演をいただきます。 さらに、一般講演26題、専門医ケースプレゼンテーション4題が予定されており、活発な討議が行われること と期待しております。 有意義な学術大会に向けて多数のご参加を賜りますようお願い申し上げます。 -2- 会場案内 東京医科歯科大学 湯島キャンパス 〒113-8510 東京都文京区湯島 1-5-45 ・JR 御茶ノ水駅 下車 ・東京メトロ丸ノ内線御茶ノ水駅 下車 ・東京メトロ千代田線 新御茶ノ水駅 下車 学会会場 M&D タワー 2 階 鈴木章夫記念講堂・ 共用講義室2 湯島キャンパス 懇親会会場 売店棟 B1 階 あるめいだ -3- 日程表,タイムスケジュール 2015年11月28日(土) 2015年11月29日(日) 歯学部附属病院 演習室 歯学部特別講堂 9:00 10 20 30 40 50 10:00 10 20 30 40 50 11:00 10 20 30 40 50 12:00 10 20 30 40 50 13:00 10 20 30 40 50 14:00 10 20 30 40 50 15:00 10 20 30 40 50 16:00 10 20 30 40 50 17:00 10 20 30 40 50 18:00 10 20 30 40 50 19:00 10 20 30 40 50 20:00 鈴木章夫記念講堂 M&Dタワー2階 共用講義室2 会場受付 専門医ポスター受付 ラウンジ 9:00 市民フォーラム 理事会 10 20 30 40 50 10:00 10 20 30 40 50 11:00 10 20 30 40 50 12:00 10 20 30 40 50 13:00 10 20 30 40 50 14:00 10 20 30 40 50 15:00 10 20 30 40 50 16:00 10 20 30 40 50 17:00 10 20 30 40 50 18:00 10 20 30 40 50 19:00 10 20 30 40 50 20:00 開会の辞 一般口演 O-1~O-3 専門医ポスター展示 一般口演 O-4~O-6 一般口演 O-7~O-10 専門医審査 CP1-4 一般口演 O-11~O-14 東京支部総会 ポスター撤去 一般口演 O-15~O-18 企業展示 一般口演 O-19~O-23 一般口演 O-24~O-26 特別講演 生涯学習 公開セミナー 閉会の辞 18:00~20:00 懇親会 於:東京医科歯科大学食堂棟1F あるめいだ -4- 学術大会参加の皆様へ 1. 駐車場のご用意はございませんので,お車でのご来場はご遠慮ください. 2. 参加者は学会受付にて当日会費 1,000 円をお支払いください. 3. 学術大会参加章には所属・氏名を記入の上,常時胸につけてご入場ください. 4. 学会会場におけるビデオ・写真撮影等は,発表者の著作権保護のため禁止となっております. 5. 質疑・討論のための発言者は座長の指示に従い,所定のマイクを使用して所属と氏名を告げた後,要領よ く簡潔に発言してください. 6. 専門医の申請・更新について 本学会専門医の申請あるいは更新を希望する場合は、受付にて会員証のバーコードリーダーを読み取り 機に通してください。会員証のない方は専門医研修カードを用意しておりますのでご記入のうえ、ご提出 ください。 7. 日歯生涯研修について 社団法人日本補綴歯科学会東京支部大会に参加(出席)した場合には,特別研修として 10 単位が取得 できます.なお,特別研修の単位登録には,受講研修登録用 IC カードが必要ですので,ご自身の日歯 IC カードを必ずお持ち下さい. その他の各プログラムの単位登録は会場に張り出された短縮コードをご利用の上,ご自身でご登録下 さい. 詳細は日本歯科医師会にお問い合わせください. 口演発表について 1.発表について 1) すべてコンピューター(PC)プレゼンテーション(単写)です. 2) PC の操作は演者が行ってください. 3) 発表時間は,発表 8 分,質疑応答 2 分です. 4) 発表開始と同時に演台上に,残り時間表示が始まります.終了時にベルでお知らせしますので,時 間厳守でお願いいたします. 5) 次演者は,発表予定時刻 10 分前には「次演者席」に着席してください. 2.コンピューターについて 1) 一般口演の方が使用する PC(Windows 7,Microsoft PowerPoint 2013)は,会場で用意いたしま す.Macintosh をご使用の場合は,自身の PC をお持ちください. 2) 発表予定時間の 60 分前までに会場受付にて,試写用の PC にてデータの内容の確認を行ってくだ さい. 3) 演壇上に PC を設置いたします.口演中の操作は演壇上にてご自身で行っていただきます. 4) プレゼンテーション用のデータの作成においては,動画や音声などの特殊効果の使用はできません. また,グラフ等におきましても,全てパワーポイント上に配置していただき,他のソフトへのリン ク設定は行わないでください. 5) フォント(字体)は文字化けを防ぐため Windows 標準搭載フォント(MS ゴシック,MSP ゴシッ ク,MS 明朝,MSP 明朝,Arial,Century,Century Gothic など)をご使用ください. 3.プレゼンテーション用のデータについて プレゼンテーション用のデータは USB メモリにてお持ちください.PC 持ち込みでの受付はございませ ん.また,トラブルに備えて,CD-R や USB メモリでのバックアップをご用意ください. -5- 専門医申請ケースプレゼンテーションについて 1.展示について 1) 受付は午前 10 時より行います.発表会場の受付で,申請者用のネームプレートを付けてください. 2) 当日の進行は以下の通りを予定しております. 準備 9 時 00 分~ 9 時 30 分 展示 9 時 30 分~ 12 時 30 分 審査・試験 10 時 20 分~ 11 時 30 分 3) 展示には縦 210cm ×横 90cm の展示板を 2 枚,資料提示用にテーブルを準備いたします.ポス ターの右隅に発表者の顔写真を掲示してください. 4) ポスターの取り付けは専用のプッシュピンをこちらで用意いたします.受付時に受け取ってく ださい. 5) エックス線写真のための小型シャーカステンを準備しております. 2.発表と審査について 1) 審査開始時刻の 10 分前には展示の前に待機してください. 2) 審査委員の指示に従い,10 分程度で内容の説明を行ってください. 3) 内容説明の後,審査委員の質疑に申請者ご自身が応答し審査を受けてください. 4) 展示は審査終了後,12:30~13:30 の間に速やかに撤去してください. 5) その他の事項は,学会ホームページの「専門医制度について」に準拠いたします. -6- プログラム 11月29日(日) 会場:M&D タワー2 階 鈴木章夫記念講堂 【午前の部】 9:30~開会の辞 9:40~10:10 一般口演1 座長 岡田大蔵(医歯大) 生涯研修コード【2205,2603,2608】 O-1 種々の支台築造法における歯根象牙質の応力分布状態に関する研究 ○大島ふじの,岡田大蔵,小椋麗子,進 千春,三浦宏之 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食機能保存学分野 O-2 上顎全部床義歯患者の圧痛閾値における三次元有限要素解析 ○髙松直也, 佐藤裕二, 北川 昇, 下平 修, 磯部明夫, 小谷祐子, 小川貴正, 小澤宏亮 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 O-3 咀嚼時咬合力のコントロールが StageⅡtransport の発現に及ぼす影響 ○小峯明子*,石田 瞭**,山下秀一郎* *東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座, **東京歯科大学口腔健康科学講座摂食嚥下リハビリテーション研究室 10:10~10:40 一般口演 2 座長 岩佐文則(昭和大) 生涯研修コード【2205,2802,2803】 O-4 顎関節炎に随伴した咬筋痛に対する活性型 satellite cell の役割 ○伊藤玲央,丸野充,斎藤弘人,浦田健太郎,李淳,黒崎俊一,新田栄治,祇園白信仁 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座 O-5 TNBS 誘発舌熱痛覚過敏発症に対する三叉神経節内 p38 リン酸化の役割 〇丸野 充,伊藤玲央,西尾健介,浦田健太郎,伊藤智加,遠藤憲史,伊藤克紀,祇園白信仁 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座 O-6 振動刺激を利用した睡眠時ブラキシズム抑制システムの開発 ○中村浩崇,小野康寛,吉田裕哉,安部友佳、高場雅之,菅沼岳史,葭澤秀一郎,中里友香理, 馬場一美 昭和大学歯学部歯科補綴学講座 10:40~11:20 一般口演 3 座長 桟 淑行(日大歯) 生涯研修コード【2604,3102】 O-7 ジルコニア表面処理の違いがメタクリルレジンとの接着耐久性に及ぼす影響 ○赤澤伸隆*,小泉寛恭**,***,中山大介**,***,野川博史**,岡崎智世*,渡部悠介**,浅野澄明****, 川本善和****,庄司 力****,松村英雄**,*** *日本大学大学院歯学研究科応用口腔科学分野, **日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座, ***日本大学歯学部総合歯学研究所高度先端研究部門, ****東京支部 -7- O-8 グレードおよび表面処理の異なる純チタンの疲労特性の比較 ○鈴木 薫 1,2,髙野智史 1,2,上田貴之 2,櫻井 薫 1 東京歯科大学 口腔科学研究センター 口腔インプラント学研究部門, 2 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座 O-9 サンドブラスト処理の違いが CAD/CAM 冠とコア用レジンの接着強さに及ぼす影響 ○新妻瑛紀*,新谷明一*,**,清水沙久良*,黒田聡一*, 亘理 薫***,波多野泰夫*,五味治徳* *日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座, **トゥルク大学, ***東北・北海道支部 O-10 親水性シリカコーティング剤のリコート法に対する検討 ◯吉嵜太朗*, 秋葉徳寿*, 家持剛*, 高橋亜希子*, 島田誠之**, 水口俊介* *東京医科歯科大学高齢者歯科学分野, **ジャパンナノコート 11:20~12:00 一般口演 4 座長 新谷明一(日歯大) 生涯研修コード【2603,2608,2698,3102】 O-11 レーザー積層造形法で製作したクラスプの疲労特性 〇加嶋 祐佳 1,高市 敦士 1,余語 良章 1,高橋 英和 2,若林 則幸 1 1 国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 口腔機能再構築学講座 部分床義歯補綴学分野, 2 歯学部口腔保健学科 口腔保健工学専攻 口腔保健再建工学講座 生体加工学分野 O-12 ミリング機と被削材の組み合わせがクラウンの適合精度に及ぼす影響 ○清水沙久良*,新谷明一*,**,黒田聡一*,波多野泰夫*,五味治徳* *日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座, **トゥルク大学 O-13 遊離端欠損部顎堤粘膜に対する光学印象の精度検証 ○田坂彰規*,****,三井智治*,****,笠原隼男*,高梨琢也**,松永 智***,****,阿部伸一***,山下秀一郎* *東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座, **東京歯科大学口腔インプラント学講座, ***東京歯科大学解剖学講座, ****東京歯科大学口腔科学研究センター O-14 臨床実習における 3D プリンターを用いた支台歯形態の評価と指導法の検討 〇四ツ谷護 1,4, 佐藤 亨 1, 梅原一浩 2, 宅間裕介 1, 腰原輝純 1, 小高研人 3,4,松永 智 3,4, 吉成正雄 4, 阿部伸一 3 1 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座 2 東北・北海道支部, 3 東京歯科大学解剖学講座 4 東京歯科大学口腔科学研究センター -8- 【午後の部】 13:00~13:40 一般口演 5 座長 笛木 賢治(医歯大) 生涯研修コード【2299,2606,2608,2699】 O-15 前がみの概念で対応した前後的すれ違い咬合の部分床義歯症例 ○石幡伸雄 石幡一樹 いしはた歯科クリニック O-16 薬物性歯肉増殖性患者に歯周補綴と短縮歯列を用いて改善が認められた一症例 ○唐木俊英 とうき歯科医院 O-17 Gysi 軸学説の再評価 ○永田和弘 東北大学 口腔システム O-18 口腔がん患者への顎補綴処置が口腔機能および口腔関連 QOL へ及ぼす影響 ○萩尾 美樹,石崎 憲,竜 正大,櫻井 薫 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 13:40~14:30 一般口演 6 座長 高津 匡樹(日大歯) 生涯研修コード【2608】 O-19 口蓋床の荷重が粘膜沈下量と疼痛に及ぼす影響 ―口蓋粘膜沈下量と荷重量の同時測定装置の開発― ○田中里実,佐藤裕二,北川 昇,下平 修,磯部明夫,小谷祐子,高松直也,石原 広 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 O-20 マルチセンタースタディによる色変わりガムを用いた義歯安定剤使用による咀嚼能力への影響の機能評 価 ◯大和田学 1,秋葉徳寿 1,市川哲雄 2,岩城麻衣子 1,大久保舞 1,岡崎定司 3,金澤 学 1,河相安彦 4, 木本克彦 5,木本 統 4,洪 光 6,駒ヶ嶺友梨子 1,近藤尚知 7,佐藤佑介 1,鈴木哲也 1,添田ひとみ 1, 坪井明人 6,西村正宏 9,西 恭宏 9,濵 洋平 1,馬場優也 1,濱田泰三 6,細井紀雄 8,村田比呂司 10, 山賀栄次郎 1,米山喜一 8,水口俊介 1 1 東京医科歯科大学, 2 徳島大学, 3 大阪歯科大学, 4 日本大学松戸, 5 神奈川歯科大学, 6 東北大学, 7 岩手医科大学, 8 鶴見大学, 9 鹿児島大学, 10 長崎大学 O-21 口腔乾燥状態が上顎全部床義歯の主観的評価と客観的評価に与える影響 ○椿田健介,佐藤裕二,北川 昇,中津百江,青柳佳奈,角田拓哉,高山真里,石原雅恵,西尾允秀 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 O-22 軟質裏装材を応用したインプラントオーバーデンチャーの維持力に影響を及ぼす材料特性 ○久保慶太郎,古池崇志,上田貴之,櫻井 薫 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座 O-23 義歯臼歯部における歯肉形成は必要か 〇齋藤五月 1,石上友彦 1,2,石島学 1,渋谷哲勇 1,安田裕康 1,石井拓 1,大林美穂 1,舘野敦 1, 月村直樹 1,2 1 日本大学歯学部歯科補綴学教室第Ⅱ講座 2 日本大学歯学部総合私学研究所臨床研究部門 -9- 14:30~15:00 一般口演 7 座長 菅沼岳史(昭和大) 生涯研修コード【2603】 O-24 インプラント支持のスクリュー固定式ジルコニア補綴装置の破壊強度 ○本田順一*,神尾伸吾*,小峰 太*,**,田中秀享*,藤井 宏*,吉成勝海*,古地美佳***, 松村英雄*,** *日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座, **日本大学歯学部総合歯学研究所 高度先端医療研究部門, ***日本大学歯学部総合歯科学分野 O-25 耐衝撃性義歯床用レジンの曲げ強さの検討 〇山田裕記 1,永井栄一 1,2,大谷賢二 1,2,梅川義忠 1,2,中林晋也 1,2,高橋侑子 1,千葉真子 1, 清水信行 1,石上友彦 1,2 1 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅱ講座, 2 日本大学歯学部総合私学研究所臨床研究部門 O-26 弾性率を考慮したレジン支台築造の検討 ○久保茉莉子,駒田 亘,大竹志保,稲垣祐久,大森 哲,三浦宏之 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 口腔機能再構築学講座 摂食機能保存学分野 15:10~16:10 特別講演 座長 三浦宏之(医歯大) 生涯研修コード【2609】 メタル フリー歯科時代の インプラントについて 本間 憲章 医療法人 本間歯科, 日本歯科大学病院 総合診療科 臨床教授 16:20~17:20 生涯学習公開セミナー 座長 三浦宏之(医歯大) 生涯研修コード【2603】 金属アレルギー患者のメタルフリー修復について 新しい治療材料と治療法について 松村 光明 東京医科歯科大学 歯科アレルギー外来 臨床教授 17:20 閉会の辞 - 10 - プログラム 11月29日(日) 会場:M&D タワー2 階 共用講義室2 専門医ケースプレゼンテーション CP-1 嚥下障害と高度顎堤吸収を伴う無歯顎患者に対し全部床義歯にて機能改善を図った症例 ○松本 圭史 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 CP-2 上顎カポジ肉腫術後骨欠損に対し顎補綴処置による機能回復を図った 1 症例 ○二瓶 伸也 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座 CP-3 嘔吐反射を有する多数歯欠如症例に対し磁性アタッチメントを利用した無口蓋義歯の1症例 ○吉井 崇之 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 CP-4 糖尿病を伴う重度歯周病患者に対して総義歯補綴治療を行った症例 ○李 淳 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座 - 11 - 特別講演 - 12 - 特別講演 メタル フリー歯科時代の インプラントについて For dental implants of metal-free dental practice 日本歯科大学病院 総合診療科 臨床教授 医療法人 本間歯科 本間 憲章 金属アレルギーの問題がさまざまな形で我々歯科医をはじめ国民の間に,報告されるようになってきた.現在 我が国では,インプラントと言えば,歯科医は,誰しもがチタン製インプラントであると認識している.そして チタンはアレルギーが無い,少ないとされてきた.しかし,近年,チタンもアレルギーを発症するという報告が 国内でもなされ,当時その論文の内容に,私自身 驚いたのである.そうだ やはりチタンも金属であったのだと 思い知らされ,私はインプラントの分野でも,大きな時代の変化が起こる気がした. 1970 年代,さまざまな材料で歯科インプラントが研究開発されていたが,ブローネマルクの偉大なる発見・ 厳格なプロトコール確率で,世界ではチタン製インプラントが主流になり,他の材料での研究が言わば停滞した と言えるかもしれない.今日 金属アレルギー特にチタンアレルギーの症例報告がなされるようになり,私は 世 界に目を向けてみた.するとメタルフリー インプラントが存在していたのである.多くはベンチャー企業であ るため,大企業に成長した既存のチタン製インプラント メーカーの陰に隠れている.更にセラミックはその製 造方法により強度や耐久性に各社製品にバラツキがあり,消えてゆく製品やメーカーもあった.その中でもスイ ス製セラミック インプラント(ジルコニア製)に,近年 充分信頼にたるものが存在する.EU や FDA の認可 を取得,欧米では既に 30000 本も埋入実績をあげている.私も臨床応用し,既に6年が経過し,金属アレルギー の患者,又それを危惧する患者に大変喜ばれている. もはやマスコミ等で報道された金属アレルギーの問題は,国民に様々な不安を抱かせつつある.もしチタン製 インプラントを薦めた患者に,「金属アレルギーの心配はないか」と質問を受けたら,大丈夫ですとは,言って いられない時代になった事は認識してほしい. 私はチタン製インプラントを否定するのではない.そのような患者に,選択肢として, セラミック(ジルコニア) インプラントの存在を教示・提案できるようになってほしいと感じるのである.メ タルフリー歯科を推奨するには,インプラントもメタル フリーを選択できねば理に叶わないと考えるからであ る. メタルに劣らない身体により親和性に優れ,しかも審美的な歯科材料があり得るという視点に立って設立 された日本メタルフリー歯科学会で発表させて頂いた.更に,フロリダで行われた第 1 回国際セラミック イン プラント学会で症例報告も発表させて頂いたが,その際 得た驚きの内容・情報もあわせて報告したいと思う. 私は従来のガソリンエンジン車からハイブリッド車への改良,更には電気自動車又は水素エネルギー車への変 化が時流であるかのように,歯科インプラントの世界でも,大きな,時代の変化が起こるような気がするのであ る. 人が生きている環境の変化と共に,それは金属アレルギーについて少し勉強すると,患者が次に求めるものは何 かという事を,長年の町医者生活から直感しているからに他ならない. ■略歴 千葉県松戸市出身. 1966 年 私立暁星学園高校卒, ■資格 1972 年 日本歯科大学卒業後,東京女子医大口腔外科学教室 医学博士 へ入局,村瀬正雄教授,河西一秀教授に師事. 日本メタルフリー歯科学会 理事長 1974 年 米国ミシガン大学に留学,更にカナダに渡り, ICOI 国際インプラント学会 認定医 指導医.アジア太平洋地 1975 年 マギル大学付属モントリオール 区 認定医審査委員 歴任 ジェネラルホスピ タルに勤務.医師・歯科医師の両資格をもつ口腔外 日本顎顔面インプラント学会 運営審議委員 科 日本口腔外科学会会員, 日本口腔インプラント学会会員 専門医 Dr.Keneth.C.Bentley に師事. 暁星歯学会 ICD 国際歯科学士会 Fellow 北米留学生活 3 年半の後帰国. 千葉市にて開業,順次 千葉県内に 5 ヶ所の歯科医院 を開設 医療法人社団 本間歯科 理事長,並びに医療法人 千 寿会 理事. 日本歯科大学 非常勤講師・ 臨床講師 を経て 現在 日本歯科大学附属病院総合診療科 会長 臨床教授 - 13 - 生涯学習公開セミナー - 14 - 生涯学習公開セミナー 金属アレルギー患者のメタルフリー修復 ‐新しい治療材料と治療法について‐ 東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科アレルギー外来 臨床教授 松村 光明 CAD/CAM オールセラミックスシステムが急速に進歩し,歯科界においても“21世紀のパラダイムシ フト”を迎えています.従来,歯冠修復用材料のみならず,欠損補綴用材料として歯科医療では,適合性, 強度などに非常に優れた物性を有する金属が広く用いられてきました.金属は適応範囲が広く,口腔内での 長期予後に優れているため,現在なお歯科医療の現場においては非常に重要な役割を担っています.一方で 歯肉や歯根の変色,歯根破折などの原因となること,口腔内にて溶出した金属や,食品中に微量に含有され る金属成分が経口的,経気道的,経皮的に摂取され,血流により全身に回り,様々な部位にアレルギー症状 を引き起こすことなどが懸念されています.実際,アトピー性皮膚炎,接触性皮膚炎,掌蹠膿疱症,扁平苔 癬,難治性痒疹といった疾患が全身性に生じ,その悪化因子として金属アレルギーが示唆される報告が多く 見られるようになっています.整形外科領域では骨折部位の固定にチタン製のプレートやボルト,血管外科 領域などでは人工生体材料としてステンレス製の血管拡張用バルーンやチタン合金製の動脈瘤クリップ,純 チタン,チタン合金及び Co-Cr 合金を併用した人工股関節などが,用いられています.歯科領域ではチタ ン製金属材料を用いたインプラントや外科手術後の固定用金属プレートなどが使用されます.現在,医療分 野において多用されている金属材料によるアレルギーの発症率は高くはありませんが,注意が必要です.ま た,金属だけでなく歯科材料一般によるアレルギーを,従来は安全であると考えられていた治療法及びその 使用材料に起因すると思われる医原性の合併症として捉えるのであれば,適切な検査法を用いて,アレルギ ーの診断が必要であると考えます.東京医科歯科大学歯学部附属病院歯科アレルギー外来では,歯科に限ら ない各医療分野からの依頼を受け,金属パッチテスト,メタルフリー修復では必須となったレジン系高分子 複合材料,その他治療用材料のパッチテストや,リンパ球刺激試験(血液検査),口腔内金属成分分析検査 などのアレルギー検査をもとに総括的な診断を行なっています. 本講演では,本学歯科アレルギー外来の診査,診断法や統計データをご紹介した後,外来で経験した多岐に 渡る歯科材料アレルギートラブルについて供覧し,新しいメタルフリー材料の使用法から考察したアレルゲ ンフリー・トリートメントのあり方を提案します. ■略歴 東京医科歯科大学歯学部附属病院 歯科アレルギー外来 医療法人社団優恒会 松村歯科医院 臨床教授 理事長/院長(東京医科歯科大学 1954 年 京都府出身 1980 年 東京医科歯科大学歯学部卒業 1987 年 同第2歯科補綴学大学院卒業 1990 年 医療法人社団優恒会 松村歯科医院開設(世田谷区) 同第2歯科補綴学教室入局 東京医科歯科大学 第2歯科補綴学教室 非常勤講師 1997 年 日本歯科補綴学会認定医・指導医 1999 年 東京医科歯科大学歯学部 歯科アレルギー外来 臨床教授 - 15 - 臨床研修施設指定) 一般口演 O-1~O-26 - 16 - O-1 種々の支台築造法における歯根象牙質の応力分布状態に関する 研究 ○大島ふじの,岡田大蔵,小椋麗子,進 千春,三浦宏之 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科摂食機能保存学分野 Stress distribution in root restored with different post and core systems Oshima F, Okada D, Ogura R, Shin C and Miura H Department of Fixed Prosthodontics, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University Ⅰ.目的 失活歯に対する支台築造法は従来,金属を用いた方法 が一般的であったが,近年,象牙質の弾性係数に近似し たコンポジットレジンがグラスファイバーポストとと もに使用されるようになってきた.これまで各種支台築 造については模型実験,有限要素法を利用した解析が多 く行われてきたが,生体において測定した咀嚼力を考慮 した研究は少ない.そこで今回,過去に報告した生体で 測定した咀嚼力を有限要素モデルに代入し,各種支台築 造法における咀嚼時の歯根内応力分布状態を解析した. Ⅱ.方法 汎用構造解析プログラムを用いて支台築造およびク ラウンによる歯冠修復を想定した単純小臼歯モデルを 作成した.支台築造部は金銀パラジウム合金(CP),金 属既製ポスト併用コンポジットレジン築造(SP)およ び3種類の弾性係数の異なるグラスファイバーポスト O-2 併用コンポジットレジン築造(FP3,FP29,FP45)の 計 5 種類とし,クラウンは全て金銀パラジウム合金とし た.このモデルの歯槽骨下壁を完全拘束し,咬合面中央 部の一点に生体で測定したビーフジャーキー咀嚼時の 三次元咀嚼力を代入し,歯頚部およびポスト先端部の象 牙質内応力分布状態を測定した. Ⅲ.結果と考察 歯根象牙質内応力値は CP,SP,FP3,FP29,FP45 の順に歯頚部で 10.5,13.4,14.6,14.3,14.2MPa,ポス ト先端部で 16.0,23.4,4.9,9.6,11.8MPa となった.金 銀パラジウム合金による支台築造では歯頚部の応力が 緩和される反面,ポスト先端部に応力が集中し,コンポ ジットレジン築造では歯頚部に応力が集中する反面,重 篤な歯根縦破折を惹起させる可能性のあるポスト先端 部の応力集中が緩和される傾向にあり,とりわけその傾 向は弾性係数の低いポストに強く表れる結果となった. 上顎全部床義歯患者の圧痛閾値における三次元有限要素解析 ○髙松直也,佐藤裕二,北川 昇,下平 修,磯部明夫,小谷祐子,小川貴正, 小澤宏亮 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 Three-dimensional finite element analysis in pressure pain threshold of maxillary complete denture patients Takamatsu N, Sato Y, Kitagawa N, Shimodaira O, Isobe A, Kotani Y, Ogawa T, Ozawa K Department of Geriatric Dentistry, Showa University School of Dentistry Ⅰ.目的 当講座では,ひずみゲージを貼付した超音波厚さ計の 探触子を用いて,疼痛を感じるまでの粘膜の厚さの変化 と荷重量を同時に測定可能なシステムを開発し,有歯顎 者,無歯顎者で口蓋部顎堤粘膜の性状解析を行ってき た.しかし,義歯設計に応用するには顎堤粘膜をモデル 化し,部位毎に性状を把握することが重要である.本報 では,上顎全部床義歯患者の粘膜性状を解明することを 目的に,探触子と無歯顎者の顎堤粘膜を再現した三次元 有限要素モデルを構築し,適切な弾性率の推定方法を検 討した. Ⅱ.方法 被験者は,先行研究で粘膜性状 (厚さ,弾性率),疼 痛閾値 (圧力,圧縮率,沈下量) を測定した 17 名の無 歯顎者の中から,顎堤粘膜の厚さが最小,中間,最大の 3 名を抽出した.解析部位は先行研究と同様に上顎左側 口蓋正中部,口蓋中間部,口蓋側方部の 3 ヶ所とした. 三次元有限要素解析ソフトウェアを用い,探触子モデ ル,顎堤粘膜モデルを構築した.探触子は 3D スキャナ にて形態を確認後,モデル化した.顎堤粘膜モデルは底 面を 10×10mm,厚さが個々の被検者の実測値の直方体と した.荷重量は一定とし,弾性率を変化させて,沈下量 を実測値との誤差 5%以内に収束するよう推定した.弾性 率の推定値を実測値と比較した. Ⅲ.結果と考察 全ての顎堤粘膜モデルにおいて,推定した弾性率は実 測値より小さな値を示した.また,部位間の差および個 人差が認められた.以上より,上顎全部床義歯患者の圧 痛閾値における三次元有限要素解析において,顎堤粘膜 の弾性率は,部位毎,被験者毎に設定する必要性が示唆 された. - 17 - O-3 咀嚼時咬合力のコントロールが StageⅡtransport の発現に及ぼす 影響 ○小峯明子*,石田 瞭**,山下秀一郎* *東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座,**東京歯科大学口腔健康科学講座 摂食嚥下リハビリテーション研究室 Influence of regulated masticatory occlusal force on the occurrence of StageⅡtransport Komine A*, Ishida R**, Yamashita S* *Department of Removable Partial Prosthodontics, Tokyo Dental College, **Department of Oral Health & Clinical Science, Division of Dysphagia Rehabilitation, Tokyo Dental College I.目的 近年,ヒトの摂食・嚥下運動を表現するためにプロセ スモデルが提唱され,咀嚼中にも食物は少しずつ中咽頭 に送られる StageⅡtransport(以下 StⅡ)の発現が明確化さ れている.本研究では,経鼻内視鏡と筋電図を用いて, 咀嚼中の咬合力を意図的に変化させた場合の StⅡの発 現様相について検討することを目的とした. II.方法 被験者は健常歯列を有する成人5名とし,被験食品に はピーナッツとグミゼリーを用いた.上咽頭部に設定し た経鼻内視鏡の小型カメラにより,咀嚼開始から嚥下に 至る過程での食塊の動態を観察した.画面内に食塊が映 り込んだタイミングを StⅡの開始,ホワイトアウトのタ イミングを嚥下とした.咀嚼回数の測定には左右咬筋浅 部から導出した筋電図波形を用い,総咀嚼回数(総回 数),咀嚼開始から StⅡ開始までの咀嚼回数(StⅡ前回 O-4 数) ,StⅡ開始後から嚥下までの咀嚼回数(StⅡ後回数) の3項目を算出した.被験者には通常の咀嚼(通常咀嚼) と 50%咬合力での咀嚼(50%咀嚼)の2パターンのタス クを課した.咬合力の制御には筋電図波形をもとにビジ ュアルフィードバック法を用いた. III.結果と考察 ピーナッツ,グミゼリーともに通常咀嚼と比較して, 50%咀嚼では,総回数,StⅡ前回数,StⅡ後回数のいず れも増加する傾向にあった.統計分析の結果,ピーナッ ツの総回数,StⅡ前回数,StⅡ後回数,およびグミゼリ ーの総回数において,両咀嚼間で有意差が認められた (Wilcoxon signed-rank test; P<.05).以上から 50%咀嚼と することで総咀嚼回数が増加し,それに伴い StⅡの発現 様相も影響を受けることが示唆された.また,ピーナッ ツでより顕著であったことから,この傾向は被験食品に よって異なることがうかがわれた. 顎関節炎に随伴した咬筋痛に対する活性型 satellite cell の役割 ○伊藤玲央,丸野充,斎藤弘人,浦田健太郎,李淳,黒崎俊一,新田栄治,祇園白信仁 日本大学歯学部歯科補綴学第一講座 Involvement of activated satellite cells in masseter muscle pain spread following temporomandibular joint inflammation Ito R,Maruno M,Saito H,Urata K,Lee J,Kurosaki S,Nitta E,Gionhaku N Departments of Complete Denture Prosthodontics,Nihon University School of Dentistry Ⅰ. 目的 臨床の現場において,顎関節症患者の多くは咬筋の圧痛 を訴える場合が多い.顎関節痛と咬筋痛との間に何らか の関与があると考えられるが詳細は不明である.最近, 三叉神経節 (TG) 内の活性型 satellite cell が顎顔面部の 異常疼痛発症に関与することが報告され,顎関節炎によ って引き起こされる口腔顔面痛にも活性型 satellite cell が関与する可能性が考えられるが詳細は明らかにされ ていない.そこで,顎関節炎に随伴する咬筋痛に対する TG 内活性型 satellite cell の役割を検討した. Ⅱ. 方法 深麻酔下にて SD 系雄性ラット (7W) の顎関節相当部 に Complete Freund’s adjuvant (CFA) を投与した後,受動 的開閉口運動 (1Hz, 30 min/day) を行い,顎関節炎モデ ルラットを作成した.顎関節 CFA 投与後,顎関節および咬 筋相当部への圧刺激に対する頭部逃避反射閾値を経日 的に測定した.CFA 投与後3日目サーモグラフィーを用 い,顎関節および咬筋相当部の顔面皮膚表面温度を計測 した.さらに,逆行性トレーサーを咬筋に注射し,咬筋投 射 TG ニューロン周囲の satellite cell 活性を glial fibrillary acidic protein (GFAP) 発現を指標とし,免疫組織化学的 に解析した. Ⅲ. 結果と考察 顎関節 CFA 投与後,顎関節および咬筋相当部への圧刺激 に対する頭部逃避閾値は有意に低下した.CFA 投与後3 日目,顎関節相当部の顔面皮膚表面温度が上昇し,咬筋 投射 TG ニューロン周囲の satellite cell の活性化が認めら れた.以上の結果から,顎関節炎により,satellite cell の活 性化を介した咬筋投射 TG ニューロン活動性亢進が誘導 され,結果的に咬筋痛が発症した可能性が示された. - 18 - O-5 TNBS 誘発舌熱痛覚過敏発症に対する三叉神経節内 p38 リン酸 化の役割 〇丸野充,伊藤玲央,西尾健介,浦田健太郎,伊藤智加,遠藤憲史,伊藤克紀, 祇園白信仁 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座 p38 phosphorylation in trigeminal ganglion neuron contributes tongue heat hypersensitivity induced by TNBS application Maruno M, Ito R, Nishio K, Urata K, Ito T, Endo N, Ito K, Gionhaku N Departments of Complete Denture Prothodontics, Nihon University School of Dentistry, Tokyo Japan Ⅰ. 目的 臨床において,舌に器質的変化がないにもかかわらず舌 の疼痛を訴える患者が存在する.本研究では,組織に器質 的な変化を起こすことなく,痛覚過敏を引き起こす疼痛 誘発物質 2,4,6-trinitorobennzenne sulfonic acid (TNBS)を 用いて,TNBS 誘発舌熱痛覚過敏発症モデルマウスを作 製し,舌熱痛覚過敏発症に対する三叉神経節(TG)ニュ ーロンにおける Mitogen-activated Protein Kinase の一つで ある p38 のリン酸化の役割を明らかにすることを目的と した. Ⅱ. 方法 C57/BL6 雄性マウス(7W)の舌背に TNBS (10mg/ml)を 1 時間処置し,TNBS 誘発舌熱痛覚過敏発症モデルマウ スを作製した.浅麻酔下にて,TNBS 処置後 3 日目より,熱 刺激プローブを用いて,舌背に熱刺激を加え,熱刺激に対 する逃避反射潜時を経日的に計測した.さらに,あらかじ O-6 め舌に逆行性トレーサーであるフルオロゴールド (FG) を投与し,TNBS 処置 5 日後,4% paraformaldehyde を用い て灌流固定し,三叉神経節を摘出,凍結切片を作製し,FG 標識 p38 陽性またはリン酸化 p38 陽性 TG ニューロン数 を免疫組織学化学的手法により解析した. Ⅲ. 結果と考察 TNBS 処置後 5 日目より 15 日目まで舌への熱刺激に対 する逃避反射潜時は有意に短縮した.TNBS 処置 5 日 後,p38 陽性舌投射 TG ニューロン数に変化は認められな かったが,リン酸化 p38 陽性舌投射 TG ニューロン数は有 意に増加した.以上のことから,舌を TNBS 処置すること によって舌投射 TG ニューロンにおいて p38 がリン酸化 し,これらの TG ニューロン活動が亢進することによっ て舌に熱痛覚過敏が発症する可能性が示された. 振動刺激を利用した睡眠時ブラキシズム抑制システムの開発 ○中村浩崇,小野康寛,吉田裕哉,安部友佳,高場雅之,菅沼岳史,葭澤秀一郎,中里 友香理,馬場一美 昭和大学歯学部歯科補綴学講座 Development of sleep bruxism suppression system using stimulation of vibration Nakamura H , Ono Y , Yoshida Y , Abe Y , Takaba M , Suganuma T , Yoshizawa S , Nakazato Y , Baba K Showa University School of Dentistry Department of Prosthodontics 目的 睡眠時ブラキシズム(SB)に対するバイオフィードバ ックによる抑制効果 1)がこれまで報告されている.本研 究では,振動刺激を利用した SB 抑制システムを開発し たので,その概要と抑制効果について報告する. II. 方法 被験者は,神経疾患,精神障害,睡眠障害,常用薬の ない健常成人とし,SB の臨床診断基準(過去 6 ヶ月に 週 3 夜以上の睡眠同伴者による歯ぎしり音の指摘,象牙 質に及ぶ咬耗,起床時の咀嚼筋疲労感)のうち 2 つ以上 を満たす 4 名(男性 3 名,女性 1 名,平均年齢 29.8±4.3 歳) を動員した. SB 抑制装置のバイブレーションスプリント(VS)は, 上顎全歯列型スプリント内に咬合圧を検知する圧セン サーとしてピエゾフィルムを埋入し,スプリント前歯部 前方に小型振動装置を即時重合レジンにより接合して I. 製作した.SB 筋活動は,携帯型測定装置(Sleep Profiler) を用いて VS の振動刺激なしとありでそれぞれ1晩ずつ 計 2 晩測定し,SB の event 総数(回),event 総時間(s), 各 event の平均持続時間(s / event)について比較検討し た. III. 結果と考察 振動刺激を与えることにより,event 総数は,17.3±8.6 回から 13.5±5.9 回へ,総 event 時間は,12.8±7.3s から 8.3±3.6s へ,各 event の持続時間は 4.4±0.9s から 3.7±0.5s へと変化し,減少傾向が認められた.今後は被験者数と測 定日数を増やすとともに,振動間隔と強度についてさら に詳細な検討を行う予定である. IV. 文献 1) Nishigawa K, Kondo K, Takeuchi H, Clark GT. Contingent electrical lip stimulation for sleep bruxism: A pilot study. J Prosthet Dent 2003; 89: 412-7. - 19 - O-7 ジルコニア表面処理の違いがメタクリルレジンとの接着耐久 性に及ぼす影響 ○赤澤伸隆*,小泉寛恭**,***,中山大介**,***,野川博史**,岡崎智世*,渡部悠介**, 浅野澄明****,川本善和****,庄司 力****,松村英雄**,*** * 日本大学大学院歯学研究科応用口腔科学分野,**日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座, *** 日本大学歯学部総合歯学研究所高度先端研究部門,****東京支部 Influence of surface treatments on shear bond strength of a tri-n-butylborane initiated acrylic resin to Zirconia Akazawa N*, Koizumi H**,***, Nakayama D**,***, Nogawa H**, Okazaki T*, Watanabe Y**, Asano S****, Kawamoto Y****, Shoji T****, Matsumura H**,*** * Division of Applied Oral Sciences, Nihon University Graduate School of Dentistry, **Department of Fixed Prosthodontics, Nihon University School of Dentistry, ***Division of Advanced Dental Treatment, Dental Research Center, Nihon University School of Dentistry, ****Tokyo Branch Ⅰ.目的 ジルコニアに対する表面処理の違いがメタクリルレ ジンとの接着耐久性におよぼす影響を検討する. Ⅱ.方法 ジルコニア円形平板試料(カタナ,クラレノリタケデ ンタル)にアルミナブラスト処理(HAL,ハイアルミナ, 松風)もしくはトライボケミカル処理(ROC,ロカテッ クシステム,3M ESPE)を行った.処理後,クリアフィ ルセラミックプライマー(CP,クラレノリタケデンタ ル) ,アロイプライマー(AP,クラレノリタケデンタル) もしくはエスペジル(ES,3M ESPE)を製造者指示に従 い塗布した.プライマー処理は,未処理(UP)を含め計 4 条件とした.接着面にステンレス鋼製リングを設置し, メタクリルレジン(MMA-TBB)を筆積み法により充填 した.接着試験体は 37℃の精製水中に 24 時間保管し, O-8 水中熱サイクル 0 回もしくは 10,000 回を負荷後,せん断 接着強さを測定した. Ⅲ.結果と考察 HAL-CP および ROC-CP が他の群と比較し有意に高い 接着耐久性を示した.これより,ジルコニアに対してア ルミナブラスト処理またはトライボケミカル処理後に リン酸エステル(10-methacryloyloxydecyl dihydrogen phosphate, MDP)とシラン(3-methacryloyloxypropyl trimethoxysilane, MPTS)を含有するプライマーを塗布す る表面処理方法が最も優れていることが示唆された.ま た,HAL-AP は ROC-ES よりも有意に高い接着耐久性を 示した.すなわち,ジルコニア表面と MDP との結合が, シリカコーティングされたジルコニア表面と MPTS と の結合よりも接着耐久性において優れていることが明 らかとなった. グレードおよび表面処理の異なる純チタンの疲労特性の比較 ○鈴木 薫 1,2,髙野智史 1,2,上田貴之 2,櫻井 1 東京歯科大学 2 東京歯科大学 口腔科学研究センター 老年歯科補綴学講座 薫2 口腔インプラント学研究部門, Effects of grade and surface treatment of commercially pure titanium on cyclic fatigue property Suzuki K1,2, Takano T1,2, Ueda T2, Sakurai K2 1Division of Oral Implants Research, Oral Health Science Center, Tokyo Dental College, of Removable Prosthodontics & Gerodontology, Tokyo Dental college 2Department Ⅰ. 目的 臨床において,稀に純チタン製インプラントが破折す る症例が報告されている.これは咬合力による繰り返し 荷重によって疲労破壊を起こすことが原因のひとつで あると考えられる.本研究では,純チタンのグレードの 違いおよび表面処理が疲労特性に与える影響を明らか にすることを目的として,グレード 2(G2)およびグレ ード 4(G4)の純チタンの疲労特性を比較した. Ⅱ. 方法 G2 および G4 の純チタン丸棒 (直径 3mm,長さ 17mm) 各 50 本を試料とし,機械加工群(MS 群)と表面処理群 (SLA 群)とに分けた.表面処理はアルミナショットブ ラスト(250~300µm)および塩酸と硫酸による酸エッチ ングを行った.各群において静的荷重試験,繰り返し荷 重試験 1 および光学顕微鏡による組織観察を行った. Ⅲ. 結果と考察 静的降 伏荷重は G2 の MS 群 672±51N, SLA 群 724±100N,G4 では MS 群 1088±94N,SLA 群 1118±96N で,MS 群および SLA 群共に G2 と G4 間で統計学的に 有意差を認めた(P<0.05) .G2 の疲労降伏荷重では MS 群が 473±82N,SLA 群が 560±68N と,両群とも静的降 伏荷重よりも約 25%減少し,G4 では MS 群が 620±58N, SLA 群が 675±51N と,両群とも約 43%減少した.組織 観察ではグレード 2 にのみ双晶が認められた. 表面処理の有無に関わらず純チタングレード 4 は,純 チタングレード 2 と比較して疲労による強度低下が大き いことが示され,純チタングレード 4 は長期使用により 耐久性が低下する可能性が示唆された. Ⅳ. 文献 1 Collins JA.Failure of materials in mechanical design: Analysis,Prediction,Prevention.New York:John Wiley & Sons;1981,360-378. - 20 - O-9 サンドブラスト処理の違いが CAD/CAM 冠とコア用レジンの 接着強さに及ぼす影響 ○新妻瑛紀*,新谷明一*,**,清水沙久良*,黒田聡一*, 亘理 波多野泰夫*,五味治徳* 薫*** * 日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座,**トゥルク大学,***東北・北海道支部 The effect of various sandblasting conditions on bond strength to CAD/CAM resin block Niitsuma A*, Shinya A*,**, Shimizu S*, Kuroda S*, Watari K***, Hatano Y*, Gomi H* *The Nippon Dental University School of Life Dentistry at Tokyo, Department of Crown and Bridge **Department of Biomaterials Science,BioCity Turku Biomaterials Research Program Institute of Dentistry, University of Turku,***Tohoku Branch Ⅰ.目的 CAD/CAM 冠の接着には,適切な化学的処理に加え, 装着操作時に冠内面へのサンドブラスト処理が必要で ある.また,Minimal Intervention の概念の浸透から, レジンコアの使用もより一層増加することが予想され る.そこで本研究では,サンドブラスト処理の違いが CAD/CAM 冠とコア用レジンの接着強さに及ぼす影響 について検討した. Ⅱ.方法 本研究では、CAD/CAM レジンブロック(Cerasmart, GC),およびコア用レジン(Unifil Core EM,GC)をそ れぞれ被着体とした.セメントは,セルフアドヒーシブ レジンセメント(G-cem Cerasmart,GC),プライマーは, セラミック用プライマー(Ceramic PrimerⅡ,GC)を用 いた.サンドブラスト処理には,チェアサイド用サンド ブラスター(Micro EtcherⅡA,Danville Materials)およ O-10 び技工用サンドブラスター(Engel sand blaster,大榮歯 科産業株式会社)を用いた.実験条件は,チェアサイド 用サンドブラスターが,研削材粒径と噴射時間を組み合 わせた 9 条件,技工用サンドブラスターが,噴射時間の 変更による 3 条件とした.接着操作後,24 時間 37℃水 中にて浸漬し,圧縮せん断接着強さ(MPa)を測定した. Ⅲ.結果と考察 接着強さは,技工用サンドブラスターを 10 秒用いた 条件が最も高い値を示した.技工用サンドブラスターを 用いた条件は,チェアサイド用サンドブラスターを用い た条件より有意に高い接着強さを示した.接着強さは研 削材粒径を大きく,また噴射時間を長くするにつれ増加 する傾向が認められた. 親水性シリカコーティング剤のリコート法に対する検討 ◯吉嵜太朗*, 秋葉徳寿*, 家持剛*, 高橋亜希子*, 島田誠之**, 水口俊介* * 東京医科歯科大学高齢者歯科学分野,**ジャパンナノコート Evaluation of recoating procedure of hydrophilic coating agent. Yoshizaki T*, Akiba N, Kamochi G*, Takahashi A*, Shimada M**, Minakuchi S* *Department of gerodontology, Tokyo Medical and Dental University, **Japan Nano Coat, Tokyo Ⅰ. 目的 義歯に対するシリカコーティングの課題として,その 耐久性が十分ではないことが挙げられるほか,コーティ ング剤の全般の課題として日常的に応用する現実的な方 法が確立されていない.本研究は安全で効果が持続する コーティング剤の開発を目的とし,リコート法の検討を 行った. Ⅱ. 方法 加熱重合した義歯床用アクリル樹脂を研磨した後,一 次コートとしてシリカナノ粒子を含むコーティング剤を ディッピング法にて2回処理を行った.揮発した後,義 歯ブラシを装着した摩耗試験器にてブラシ摩耗試験を行 った.対水接触角を接触角計にて測定した後,ナノプラ チナ(NP), ナノダイヤ(ND)を添加したシリカコーテ ィング剤で処理した.測定は各5ずつ,ND, NPの配合比 率で3群に分け,摩耗試験後のサンプルにリコートを行 った. リコートの効果を評価するため接触角の測定,ブラシ摩 耗試験は2セット行った. Ⅲ. 結果と考察 一次コート後の接触角は平均7.1°と高い親水性を示し た.ブラシ摩耗試験後では接触角の上昇を示した.その後 のリコートにより3群とも親水性を示し,コーティング 膜の復帰を確認した.リコート後のブラシ摩耗試験によ り,再び接触角の上昇を認めたが,再度リコート繰り返 すことで膜の復帰を確認した.これにより,材料による差 異はあれ,リコートによる親水性の回復が可能なことが 示唆された.混合したサンプルは,今回の添加比率では, 混和によるコーティングがより耐久性に影響するとは言 えなかった.本実験ではリコートによるコーティング膜 の復帰が可能なことを検討したが,その耐久性には課題 が残った.ナノ粒子を混合する固形分濃度や混和する比 率を検討することで,さらなるコーティング膜の強化が 期待される. - 21 - O-11 レーザー積層造形法で製作したクラスプの疲労特性 〇加嶋 祐佳 1,高市 敦士 1,余語 良章 1,高橋 英和 2,若林 則幸 1 1 国立大学法人 東京医科歯科大学 大学院医歯学総合研究科 医歯学系専攻 口腔機能再 構築学講座 部分床義歯補綴学分野 2 歯学部口腔保健学科 口腔保健工学専攻 口腔保健再建工学講座 口腔機材開発工学 分野 Fatigue strength of Co-Cr-Mo alloy clasps prepared by selective laser melting Kajima Y, Takaichi A, Yogo Y, Takahashi H, Wakabayashi N. Tokyo Medical and Dental University I.目的 レーザー積層造形法(SLM)を用いて義歯メタルフレーム を製作しようとする動きが注目を集めているが疲労強 度に関する検討は十分なされてない.本研究では SLM により製作した Co-Cr-Mo 合金製クラスプの疲労強度を 明らかとし,従来型の鋳造体と比較検討を行った. II.方法 引張試験片およびクラスプ形状の疲労試験片を SLM で 積層方向に対して 0 (L0),45 (L45),90 (L90) となる ように製作した.引張試験により機械的特性(0.2 %耐 力,引張強さ,伸び)を求めた.クラスプ形状の疲労試 験片は,表面粗さを測定した後に疲労試験に供し,クラ スプ先端部に 5 Hz で 0.25 mm 及び 0.5 mm の周期的変形 を 106 サイクル与えた.試料破断後,走査型電子顕微 鏡(SEM) にて破断面の観察を行い,また破断面近く の ク ラ ス プを 切 断し , 結晶方位解析装置(EBSD)で ク ラスプ内部の金属組織の相構成および結晶方位の 解析を行った. III.結果と考察 引張試験の結果,SLM で製作した試料はいずれも鋳造 体より有意に高い 0.2 %耐力及び引張強さを示した.疲 労強度では異方性が認められ,L90 の試料では鋳造体よ り有意に高い疲労強度を示した一方で,L0,L45 の疲労 強度は鋳造体より有意に低かった.L0 および L45 では クラスプ内面に階段状のステップが観察され,表面粗さ も L90 や鋳造体より有意に大きかった.L0 の結晶方位 は L90 と比較してばらつきが少なかった.このような表 面性状や結晶方位の違いが疲労強度の異方性に関与し ていると考えられる.以上の結果より,SLM で製作し たクラスプの疲労強度は異方性を有しているが,造形方 向に留意することで,既存の歯科鋳造を上回る疲労強度 を有したクラスプが製作可能であることが示唆された. ミリング機と被削材の組み合わせがクラウンの適合精度に 及ぼす影響 O-12 ○清水沙久良*,新谷明一*, **,黒田聡一*,波多野泰夫*,五味治徳* 日本歯科大学生命歯学部歯科補綴学第2講座 * トゥルク大学 ** Influence of the milling machines and CAD/CAM blocks on accuracy of crowns ○Shimizu S*,Shinya A*,**,Kuroda S*,Hatano Y*,Gomi H* *The Nippon Dental University School of Life Dentistry at Tokyo,Department of Crown and Bridge of Biomaterials Science,BioCity Turku Biomaterials Research Program Institute of Dentistry University of Turku **Department Ⅰ.目的 近年 CAD/CAM は,クローズドシステムからオープ ンシステムへ移行しつつある.良好な適合の修復装置を 製作するため,ミリング機は被削材と組み合わせて, CAD ソフトの設計に従い修復装置を削り出すことが求 められている.しかし,CAD/CAM を構成する機器・器 材の組み合わせは,製作される修復装置の適合精度に影 響を与えると考えられる.そこで本実験は,2 種のミリ ング機と被削材を用いて同一のデータからクラウンを 削り出し,その適合精度について検討を行った. Ⅱ.方法 支台は,歯型金型を用いた.スキャニングは,口腔内 スキャナー (CEREC Omnicam, Sirona) にて行った.クラ ウンの設計は,CAD ソフト (CEREC inlab, Sirona) を用 いて,全周の厚さ 1.0 mm,セメントスペース 120 μm を付与した.切削加工は,2 種のミリング機 (CEREC MC X, Sirona,以下 MC), (Aadva Mill LW-1, GC, 以下 LW) にて行った.被削材は,MC ではポーセレン ブロック (MARK Ⅱ, VITA),LW では CAD/CAM 用 レジンブロック (Cerasmart, GC) を用い, 各 6 個ずつ 計 12 個を製作した.クラウンの計測は,クラウン内面 をラボスキャナーにてスキャニングし,得たデータに対 し三次元データ検査ソフトウェア (GOM Inspect, Gom mBH) を用いて行った.計測部位は,咬合面内面から 2.0, 3.0, 4.0, 5.0 mm およびマージン部とした. Ⅲ.結果と考察 計測の結果,クラウンと歯型金型の差は,MC とポー セレンブロックでは 2.0 mm を除きマージン部に向か って大きくなる傾向を,LW と CAD/CAM 用レジンブ ロックでは小さくなる傾向を示した.これらの特徴 を 考慮し設計を行うことは,臨床応用の際に有用であ ると考えられる. - 22 - O-13 遊離端欠損部顎堤粘膜に対する光学印象の精度検証 ○田坂彰規*,****,三井智治*,****,笠原隼男*,高梨琢也**,松永 阿部伸一***,山下秀一郎* 智***,****, *東京歯科大学パーシャルデンチャー補綴学講座,**東京歯科大学口腔インプラント学講 座,***東京歯科大学解剖学講座,****東京歯科大学口腔科学研究センター Accuracy of morphological measurement using oral scanner for free-end partially edentulous region Tasaka A*, ****, Mitsui T*, ****, Kasahara T*, Takanashi T**, Matsunaga S***, ****, Abe S***, Yamashita S* *Department of Removable Partial Prosthodontics , **Department of Oral and Maxillofacial Implantology, ***Department of Anatomy, ****Oral Health Science Center, Tokyo Dental College I.目的 近年のデジタルデンティストリーの普及に伴い,口腔 内スキャナーを用いた光学印象の技術革新が目覚しく, フルカラーの 3D 画像としてスキャニングすることが可 能となった.得られた画像データから歯冠補綴装置を製 作できるワークフローはすでに確立されつつある.一 方,可撤性義歯は粘膜に対する機能的な印象採得が必要 となるため,この領域には口腔内スキャナーは未だに応 用されていないのが現状である.そこで,本研究では口 腔内スキャナーを用いた欠損歯列に対する光学印象法 の確立を目標として,まず遊離端欠損部顎堤粘膜に対す る光学印象の精度を検証した. II.方法 シミュレーションモデルには粘膜付き下顎部分歯列 欠損模型 P25-TP49(ニッシン社製)を選択した.基準 データとして歯科技工用スキャナーD900(3Shape 社 O-14 製)を用いて模型の 3D スキャニングを行った.光学印 象には口腔内スキャナーTRIOS(3Shape 社製)を用い た.CAD ソフト Dental System(3Shape 社製)上で, 基準データに対する光学印象データの重ね合わせを行 い,光学印象の精度検証を試みた. 基準データと光学印 象のデータの矢状断面に生じた差異について,その最大 値および差異の積分値の2変量を分析対象とした.歯科 医師5名が同一模型を5回計測し,術者間比較を行っ た.統計処理には一元配置分散分析を用い,有意水準を 0.05 に設定した. III.結果と考察 差異の最大値および積分値のいずれも術者間に有意 差は認めなかった.今回のデータの誤差はこれまでに報 告されている粘膜の被圧変位量の範囲内に十分収まっ ており,遊離端欠損部顎堤粘膜に対する光学印象の可能 性を示唆する結果となった. 臨床実習における 3D プリンターを用いた支台歯形態の評価と 指導法の検討 〇四ツ谷護 1,4, 佐藤 亨 1, 梅原一浩 2, 宅間裕介 1, 腰原輝純 1, 小高研人 3,4, 松永 智 3,4, 吉成正雄 4, 阿部伸一 3 1 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座,2 東北・北海道支部 3 東京歯科大学解剖学講座,4 東京歯科大学口腔科学研究センター Evaluate the preparation design of an abutment tooth using the 3D printer in the clinical education and examination of the instruction method Yotsuya M1,4, Sato T1, Umehara K2, Takuma Y1, Koshihara T1, Odaka K3,4, Matsunaga S3,4, Yoshinari M4, Abe S3 1Department 3Department of Fixed prosthodontics, Tokyo Dental College, 2 Tohoku-Hokkaido Branch, of Anatomy, Tokyo Dental College, 4Oral Health Science Center, Tokyo Dental College Ⅰ.目的 クラウンブリッジ治療に関する学生教育では,理想的 なデザインをどのようにイメージし,どれくらい支台歯 形態の必要条件を理解するかが重要となる.しかしなが ら学生の理解度には個人差があるため画一的に教育し ていくのは難しい。本研究では,従来と比較して,近年 広く普及しているデジタル技術を応用した,より効果的 な支台歯形成習得法について検討することとした. Ⅱ.方法 対象は臨床基礎実習終了後の本学学生 20 名と指導医 局員 13 名とした.指導教材として上顎中切歯・上顎小 臼歯・上顎大臼歯に対して前装冠・オールセラミックク ラウン・全部金属冠を想定した 3 種類の 3D 支台歯モデ ルを 3D プリンターにて製作した.評価として,学生に は支台歯形態に関する理解度について,指導医局員には 指導教材としての有効性についてアンケート調査を行 った. Ⅲ.結果と考察 支台歯形態に関する学生の理解度は,“支台歯軸面テ ーパー” , “辺縁形態”および“補綴装置に必要な形成量” について「大変理解に役立った」と回答した学生が多く, 指導医局員においても同様の傾向が見られた.しかし, “クラウンの着脱方向”や“隣接歯および対合歯とのク リアランス”に関しては学生の理解度があまり高くない 結果となった.アンケート結果から,今回製作した天然 歯形態と理想的支台歯形態を別の色で重ね合わせた3D 支台歯モデルは視覚教材として有効に活用されたと考 えられる.しかしながら単独支台歯モデルでは隣接歯や 対合歯との3次元的な位置関係をイメージすることが 難しく,隣接歯を含む歯列模型モデルの必要性が示唆さ れた. - 23 - O-15 前がみの概念を適用した前後的すれ違い咬合の部分床義歯症例 ○石幡伸雄,石幡一樹 いしはた歯科クリニック A Case Report of PD with anteroposterior non-vertical stop Occlusion treated by the Concept of anterior Mastication without Limitation in Mandibular Movement ○Ishihata N, Ishihata K Ishihata Dental Clinic Ⅰ.目的 上下顎に 10 本以上の残存歯のあるすれ違い咬合症例 は、経過が悪い。前後的すれ違い咬合の症例にアイヒナ ーと前がみの考え方を適用して、前がみが顎口腔系に害 を与えないかみ方であることを臨床的な面から調べた。 Ⅱ 方法 患者:59 歳女性 初診:昭和 59 年 主訴:咀嚼霜害 残存歯:876 4567 8 321 1 3 上下顎顎堤状態:極めて貧弱で支持を得られるとは思 われない。 上記の患者に対して、初めは右側智歯を利用して右側 歯列でバイトが保てると考え、アイヒナーの考えに基づ き強固な設計のコーヌスデンチャーで対応しようとし た。この頃はまだ前がみの概念は形成できてなかった。 しかし、下顎右側 8 の破折により3年で計画は失敗。完 O-16 全な前後的すれ違い咬合状態となった。この時期に顎口 腔系に害を与えないとされる前がみの概念がある程度 形成されたので、この症例にその概念を適用して再びコ ーヌスデンチャーを制作して経過を観察した。 Ⅲ 経過ならびに結果 この前がみの概念に基づいて制作されたコーヌスデ ンチャーは、経過観察途中、前歯の数回の脱落、下顎右 側犬歯内冠のコアごと脱離などが生じたものの 27 年以 上という長期にわたってほぼ患者の満足する良好な経 過を辿っている。現在でも義歯は使用され続けている。 Ⅳ 考察 かみ癖を固定化しない前がみという概念は、欠損補綴 処置の中でも最も困難とされる上下顎に残存歯 10 本以 上の前後的すれ違い咬合の症例においても長期にわた って適用できることが示されたことによって、まさに顎 口腔系に害を与えないかみ方であることが示された。 薬物性歯肉増殖性患者に歯周補綴と短縮歯列を用いて改善が認 められた一症例 ○唐木俊英 とうき歯科医院 A Case Report of Periodontal Prosthetics and Shortened Dental Arch for Chronic Periodontitis Patient with Drug-induced Gingival Overgrowth. Toki T Tohki Dental Clinic I.緒言 狭心症と高血圧床による薬物性歯肉増殖症を伴った 慢性歯周炎患者に対して,歯周治療,矯正治療,歯周 補綴,短縮歯列を用いて良好な経過が得られたので報 告する. II.症例の概要 患者は57歳男性,2009年7月,歯牙の動揺,歯 肉よりの出血と咀嚼障害を主訴に来院された.2005 年より狭心症と高血圧症と診断され,Ca拮抗薬(アダ ラート)を服用していた。レントゲンより、歯根1/2 ~1/3の骨吸収がみられ,5年前まで30年間喫煙歴 があった.全顎的に歯肉の増殖と,歯肉炎が見られ,審 美障害と咀嚼障害が認められた. III.治療内容 全身疾患があるため,なるべく侵襲の少ない歯周基 本治療を行い,感染を除去して歯肉を改善した.その 後,矯正治療で歯牙を補綴を行ううえでよい位置に移 動して,短縮歯列のプロビショナルレストレーション で機能と審美に問題がないのを確認したうえで,最終 印象,咬合採得を行い,歯周補綴の最終補綴に移行し た. IV.経過ならびに考察 最終補綴物装着後,メインテナンスを定期的に行って いるが,良好に経過している.重度慢性歯周炎罹患の患 者には,徹底的な感染の除去とプラークコントロールが 必須である.今回,薬物性歯肉増殖症を伴う広汎型重度 慢性歯周炎患者に対して,徹底的な歯周基本治療,矯正 治療,補綴治療,厳密なメンテナンスプログラムによっ て,補綴装置と歯周組織の安定を図ることができた. V.文献 菅野太郎,弘岡秀明,木村幸平.はたして大臼歯は歯列 維持のために必要か?日本補綴歯科学会雑誌;2004, 48(3):441-456 - 24 - O-17 Gysi 軸学説の再評価 ○永田和弘 東北大学 口腔システム A reevaluation of Gysi’s axis theory Nagata K Tohoku University. Advanced Prosthetic Dentistry I 目的 Gysi の軸学説の作図法は難解であり、多くの研究者た ちを悩ませてきた。演者は元東大教授田村次郎博士の導 きにより、三角関数や三垂線の定理などを使用しない初 等幾何学の範囲で、Gysi の作図法の正当性を得たので紹 介するとともに、軸学説の再評価を行いたい。 II 方法 Gysi は 2 つのケースを示しているに過ぎない。 1型:顆頭と切歯点各々の矢状傾斜度と側方角の4要素 が得られた場合 2型:顆頭と切歯点の矢状傾斜度と咬合面上の口角部ゴ シックアーチの計4要素が得られた場合 Gysi の軸学説の作図法は、Gysi の定理と石原の定理を 使用すれば簡単に説明できる。 Gysi の定理:咬合面や顆頭面に投影された楕円の接線は 回転軸の各々の面との交点を中心点とすれば、円の接線 に置き換えることができる。 石原の定理:顆頭の運動方向は矢状顆路傾斜度に直角に 咬合面に矢状方向に投影すれば、運動方向を咬合面に再 現できる。切歯の運動方向は矢状切歯路角に直角に顆頭 面に矢状方向に投影すれば、運動方向を顆頭面に再現で きる。咬合面と顆頭面に各々2 点の運動方向が得られて 軸が求められる。 III 結果と考察 この 2 つの定理により、剛体上の2点の運動方向が分か れば、その剛体の回転軸が得られる。 Gysi 軸学説は、Hall の円錐説や Monson の球面説と並ん で咬合パターンの類型であり、証明が必要な仮説と考え られてきた。Gysi 軸学説は剛体の運動(移動+回転)から 移動分をゼロとみなした条件の下で成り立つ幾何学的 表現である。 。 O-18 口腔がん患者への顎補綴処置が口腔機能および口腔関連 QOL へ及ぼす影響 ○萩尾 美樹,石崎 東京歯科大学 憲,竜 正大,櫻井 薫 老年歯科補綴学講座 Effect of Maxillofacial Prosthetic Treatment to Oral Cancer Patients on Oral Function and Oral Health - Related Quality of Life ○Hagio M, Ishizaki K, Ryu M, Sakurai K Department of Removable Prosthodontics and Gerodontology, Tokyo Dental College I 目的 口腔がん外科的治療後の患者の QOL は,著しく低下 する.これまでに上顎への顎補綴治療による口腔機能や 口腔関連 QOL の向上は明らかとなっているが,その他 の部位については明らかとなっていない.本研究は,上 顎欠損および下顎・舌・口底欠損に対する顎補綴治療に よる口腔機能の変化および口腔関連 QOL への影響を明 らかにすることを目的とした. II 方法 対象は,上顎欠損患者 25 名および下顎・舌・口底欠 損患者 25 名の計 50 名とした.対象者の咀嚼機能,嚥下 機能および構音機能といった口腔機能と, 口腔関連 QOL を補綴治療前後に評価した.治療前後の各口腔機能と口 腔関連 QOL についての比較を Wilcoxon の符号付き順位 検定にて,治療による口腔関連 QOL の変化に影響を及 ぼす口腔機能の検討をロジスティック回帰分析(ステッ プワイズ法)にて行った(α=0.05).本研究は東京歯科 大学市川総合病院倫理審査委員会の承認を得て実施し た(承認番号 I-14-46). III 結果と考察 上顎欠損症例においては,咀嚼機能,嚥下機能および 構音機能について,下顎・舌・口底欠損症例においては, 嚥下機能について,治療前後でそれぞれ統計学的有意差 を認めた.ロジスティック回帰分析により,心理的不快 感には咀嚼機能が,身体的障害には構音機能が,ハンデ ィキャップには嚥下機能がそれぞれ抽出された.これは 欠損部位により異なる口腔機能障害が生じることおよ び顎補綴治療により回復する口腔機能に違いがあるこ とが,口腔関連 QOL の変化に影響を与えたと考える. IV 文献 M Yamazaki et al. Japanese version of the Oral Health Impact Profile (OHIP-J). J Oral Rehabil 2007;34:159-168 - 25 - O-19 口蓋床の荷重が粘膜沈下量と疼痛に及ぼす影響 ―口蓋粘膜沈下量と荷重量の同時測定装置の開発― ○田中里実, 佐藤裕二, 北川 石原 広 昇, 下平 修, 磯部明夫, 小谷祐子, 高松直也, 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 The influences of load to palatal plates on mucosa subsidence and pain. -The development of a simultaneous measurement system for palatal mucosa subsidence and loadTanaka S, Sato Y, Kitagawa N, Shimodaira O, Isobe A, Kotani Y, Takamatsu N, Ishihara H Department of Geriatric Dentistry, Showa University School of Dentistry Ⅰ.目的 良質な全部床義歯治療においては, 義歯支持粘膜の 性状を客観的に評価することが極めて重要と考えられ る. そこで当講座では, 疼痛を生じるまでの荷重量と 粘膜の厚さの変化について同時に測定可能なシステム を開発し, 有歯顎者と無歯顎者の義歯支持粘膜の性状 (厚さ・弾性率)と疼痛閾値(圧力・沈下量・圧縮率)の関 係を解析した. その結果, 有歯顎者に比べ無歯顎者の 粘膜は小さな荷重量で大きな沈下量を示したことから, 支持能力が低い可能性が示唆された. 本研究では, 実 際の義歯を想定した装置を開発し, 有歯顎者での疼痛 発生時の口蓋粘膜沈下量と咬合力を同時に測定した. Ⅱ.方法 被験者は著明な口蓋隆起がなく, 口蓋粘膜に異常を 認めない有歯顎者 3 名とした. 上顎には, 疼痛発生時の 沈下量を測定する超音波厚さ計と, 咬合力を測定する O-20 小型圧縮型ロードセルを組み込んだ, 常温重合レジン 製の疑似口蓋床を装着した. また, 疑似口蓋床の沈下 量を測定するための上顎の基準として, 金属板を付与 した熱可塑性レジンシート製の前歯部用シーネを用い た. 下顎には, 疑似口蓋床に咬合力を加えるための加 圧用シーネを装着した. 被験者には, 疼痛が生じるまで咬合し, 疼痛発生時 に信号発生器のスイッチを押下するよう指示した. 信 号発生器のランプ点灯時の口蓋粘膜沈下量と咬合力を 測定した. Ⅲ.結果と考察 超音波厚さ計と小型圧縮型ロードセルを用いること で, 疼痛発生時の口蓋粘膜沈下量と咬合力を同時に測 定することができた. これにより, 全部床義歯におけ る適切なリリーフ量の客観的な評価の可能性が示唆さ れた. 義歯安定剤利用ガイドライン構築に関する 多施設無作為化比較試験—咀嚼能力への影響— ◯大和田学 1,秋葉徳寿 1,市川哲雄 2,岩城麻衣子 1,大久保舞 1,岡崎定司 3,金澤 学 1, 河相安彦 4,木本克彦 5,木本 統 4,洪 光 6,駒ヶ嶺友梨子 1,近藤尚知 7,佐藤佑介 1,鈴木哲也 1, 添田ひとみ1, 坪井明人 6,西村正宏 9,西 恭宏 9,濵 洋平 1,馬場優也 1,濱田泰三 6, 細井紀雄 8,村田比呂司 10,山賀栄次郎 1,米山喜一 8,水口俊介 1 1 東京医科歯科大学, 2 徳島大学, 3 大阪歯科大学, 4 日本大学松戸, 5 神奈川歯科大学, 6 東北大学, 7 岩手医科大学, 8 鶴見大学, 9 鹿児島大学, 10 長崎大学 Multicenter Randomized Clinical Study of Denture Adhesive to Establish the Guideline: The Effect of a Denture Adhesive on Masticatory Performance Ohwada G1), Akiba N1), Ichikawa T2), Iwaki M1), Okubo M1), Okazaki J3), Kanazawa M1), Kawai Y4), Kimoto K5), Kimoto S4), Hong G6), Komagamine Y1), Kondo H7), Sato Y1), Suzuki T1), Soeda H1), Tsuboi A6), Nishimura M9), Nishi Y9), Hama Y1), Baba Y1), Hamada T6), Hosoi T8), Murata H10), Yamaga E1), Yoneyama Y8), Minakuchi S1) 1) Tokyo Medical and Dental Univ., 2) Tokushima Univ., 3) Osaka Dental Univ., 4) Nihon Univ. Matsudo, 5) Kanagawa Dental College, 6) Tohoku Univ., 7) Iwate Medical Univ., 8) Tsurumi Univ., 9) Kagoshima Univ., 10) Nagasaki Univ., I.目的 義歯安定剤の効果,使用基準を明らかにするために日 本義歯ケア学会 Denture Adhesive (DAG)委員会主導に より,10 施設共同による前向き無作為割り付け臨床試験 を行うこととした.現在も進行中であり,本発表では途 中経過報告として,義歯安定剤使用による咀嚼能力への 影響を報告する. II.方法 クリームタイプ(歯科用ポリグリップ無添加,グラク ソ)を使用する群,パウダータイプ(ポリグリップパウ ダー無添加歯科用,グラクソ)を使用する群,コントロ ール(生理食塩水,大塚製薬)を使用する群の合計 3 群 に無作為に割り付け,ベースライン(介入前)及び 4 日 間(8食)の使用後に咀嚼能力評価をおこなった.咀嚼能 力評価には,色変わりガム(キシリトールガム咀嚼力判 定用,ロッテ)を用いた.色変わりガムは 100 回/100 秒 の自由咀嚼をさせたのち,直ちに色彩色差計(CR-13, コニカミノルタ)で測色し,CIELAB 表示系の L*,a*, b*を求め,咀嚼前試料から色差 ΔE を算出した.3 群間 の比較は分散分析をおこなった(有意水準 0.05) . 本研究には開示すべき利益相反はなく、各研究施設倫 理委員会の承認を得て行われた. III.結果と考察 参加を呼びかけた 183 名のうち同意の得られた 96 名 (平均年齢 76 歳,男性割合 49%)はクリーム群 28 名, パウダー群 32 名,コントロール群 36 名の3群に無作為 に割り付けられた.各群の介入前後の ΔE の差はそれぞ れ,クリームタイプ群 2.24,パウダー群 2.07,コントロ ール群 4.49 であり,介入前と比較し介入後の ΔE は若干 の増加を示したが,3 群間における ΔE の差に有意差は 認められなかった(P>0.05).現段階では有意差は検知 されておらず今後も本臨床試験を継続していく. - 26 - O-21 口腔乾燥状態が上顎全部床義歯の主観的評価と客観的評価 に与える影響 ○椿田健介, 佐藤裕二, 北川 昇, 中津百江, 青柳佳奈, 角田拓哉, 高山真里,石原雅恵 西尾允秀 昭和大学歯学部高齢者歯科学講座 The Influence of Oral Dryness on Subjective and Objective Evaluation of Maxillary Complete Denture ○Tsubakida K, Sato Y, Kitagawa N, Nakatsu M, Aoyagi K, Kakuda T, Takayama M, Ishihara M, Nishio T Department of Geriatric Dentistry, Showa University School of Dentistry Ⅰ.目的 超高齢社会を迎え,難症例の全部床義歯装着患者が増 加傾向にある.その原因として口腔乾燥症や高度な顎堤 吸収が挙げられ,維持力の低下・義歯性潰瘍の増加・治 癒遅延などの弊害を生じると考えられている.しかしな がら,これらに関しての研究は非常に限られている. 本研究では,口腔乾燥状態が上顎全部床義歯の主観的 評価と客観的評価に与える影響を明らかにすることを 目的とした. Ⅱ.方法 被験者は上顎全部床義歯装着者 25 名とした. 口腔乾燥状態の主観的評価(12 項目)と客観的評価(臨 床診断基準,唾液湿潤度測定,安静時唾液分泌量測定), さらに装着義歯の主観的評価(9 項目)と客観的評価(維 持力測定)を行った.上顎義歯の維持力測定はデジタル プッシュプルゲージを用いて中切歯切縁を斜め後ろに O-22 45°外側に加圧し,義歯が脱離した際の荷重を記録し た.なお,本研究は昭和大学歯学部医の倫理委員会の承 認(2013-043)を得ている. Ⅲ.結果と考察 口腔乾燥状態の臨床診断基準では,正常 11 名,軽度 14 名で,中程度と重度はいなかった. 軽度の口腔乾燥の被験者は,発音で有意に不満が多か ったが,今回の被験者のように,重度,中程度の口腔乾燥 が含まれない場合には,維持力を含めてその他の評価に 有意な差は認められなかった. 以上の結果より,軽度の口腔乾燥は義歯の主観的・客 観的評価に大きな影響を与えないことが示唆された. 軟質裏装材を応用したインプラントオーバーデンチャーの維持 力に影響を及ぼす材料特性 ○久保慶太郎,古池崇志,上田貴之,櫻井 薫 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 Influence of Material Properties of Soft Relining Materials on Retention of Attachment for Implant Overdenture Kubo K, Koike T, Ueda T, Sakurai K Department of Removable Prosthodontics and Gerodontology, Tokyo Dental College I.目的 インプラントオーバーデンチャー(IOD)を 訪問歯科 診療で管理するには,短期間で簡便に調整ができる方法 が望まれる.そこで我々はアタッチメント部に軟質裏装 材を用いた IOD システムに着眼した.本研究は,アタッ チメントの維持力に影響を及ぼす軟質裏装材の材料特 性を明らかにすることを目的とした. II.方法 直径 2.5mm のメタルボールアンカーをメールに,9 種 類の軟質裏装材をフィメールとした組合せの維持力を 計測した.また,9 種類の軟質裏装材のショア A 硬さ, 引張り強さ,弾性ひずみ,表面粗さの測定を行った.統計 解析は,維持力は一元配置分散分析後に Scheffe 検定を, 維持力と材料特性の相関は相関分析(pearson の積率相 関分析)後に重回帰分析を行った(α=0.05) . III.結果と考察 軟質裏装材 9 種類をフィメールとした時の維持力は, 1.3-5.4N であった.材料特性のそれぞれの平均値は,シ ョア A 硬さ 8.0-48.8,引張り強さで 1.0-4.8MPa,弾性ひ ずみで 8.5-22.0%,表面粗さで 0.79-0.94µm であった.軟 質裏装材 9 種類の維持力と材料特性との相関関係は,シ ョア A 硬さ(r=0.90) ,引張り強さ(r=0.83) ,弾性ひず み(r=-0.75),表面粗さ(r=0.10)であり,表面粗さ以外 の材料特性において維持力と強い相関を認めた.ステッ プワイズ法による重回帰分析を行った結果,維持力に最 も関連がある軟質裏装材の材料特性は,ショア A 硬さで あった. 維持力測定結果から,軟質裏装材の種類により維持力 が異なることが分かった.高い維持力が発揮される軟質 裏装材の材料特性として,ショア A 硬さと引張り強さが 高く,弾性ひずみが小さいことが示唆された. - 27 - O-23 義歯臼歯部における歯肉形成は必要か 〇齋藤五月1,石上友彦1,2,石島 学1,渋谷哲勇1,安田裕康1,石井 大林美穂1,舘野 敦1,月村直樹1,2 拓1, 1 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅱ講座 日本大学歯学部総合歯学研究所臨床研究部門 2 Is it necessary for buccal flange form of dentures? Saito S1,Ishigami T1,2,Ishijima M1,Shibuya N1,Yasuda H1,Ishii T1,Obayashi M1, Tateno A1,Tsukimura N1,2 1Department 2Division of Partial Denture Prosthosontics, Nihon University School of Dentistry of Clinical Research, Dental Research Center, Nihon University School of Dentistry Ⅰ.目的 義歯装着後のメインテナンスにおいて,義歯清掃指導 を行ったにもかかわらず,臼歯部人工歯歯頚部周辺にデ ンチャープラークが付着していることを目にする。その 原因として,臼歯部での食物の停滞などの問題を含め, 臼歯部人工歯歯頚部の歯肉形成の問題が考えられる。 そこで,本研究では,プラークの停滞性と清掃性の観 点から,臼歯部人工歯における歯肉形成の必要性を検討 した。 Ⅱ.方法 被験者の上顎臼歯部を印象採得し,人工歯とレジン床 からなる臼歯部人工歯歯頚部を再現した試験体を製作 した。通法の歯肉形成を行った試験体,歯肉形成を全く 行わず,人工歯歯頚部の陥凹を可及的に排除した試験体 を用い,以下の実験を行った。 試験体を両側上顎臼歯部に 12 時間装着し,プラーク O-24 を染色液にて染色した。その後,デジタルカメラで記録 した画像を用いて,プラーク付着面積の定量と部位的な 傾向を評価した。 その後,同様の試験体を用いて,清掃性の評価を行っ た。義歯ブラシにて同一の術者が 15 往復刷掃し,再度 画像の記録を行い前述と同様の項目について評価した。 Ⅲ.結果と考察 歯肉形成を行った試験体と歯肉形成を行わない試験 体では、歯肉形成を行わない試験体はプラーク付着量が 少なく、プラーク残存量も少なかった。 今回の実験により清掃性の面からは義歯臼歯部人工 歯の歯肉形成は不必要であることが示唆された。 IV.文献 1)浜田泰三:デンチャープラークコントロール,48~73, 永末書店,京都,1983. インプラント支持のスクリュー固定式ジルコニアクラウンの 破壊強度 〇本田順一*,神尾伸吾*,小峰 松村英雄*,** 太*,**,田中秀享*,藤井 宏*,吉成勝海*,古地美佳***, *日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座, **日本大学歯学部総合歯学研究所高度先端医療研 究部門,***日本大学歯学部総合歯科学分野 Fracture strength of screw-retained zirconia-based restorations supported with dental implants Honda J*, Kamio S*, Komine F*,**, Tanaka H*, Fujii K*, Yoshinari K*, Furuchi M***, Matsumura H*,** * Department of Fixed Prosthodontics, Nihon University School of Dentistry, ** Division of Advanced Dental Treatment, Dental Research Center, Nihon University School of Dentistry, *** Department of Comprehensive Dentistry and Clinical Education, Nihon University School of Dentistry リコーンガイドと金型を用いて前装部を製作した. また,MONO はスキャニング用ワックスパターンを 製作し,歯科用 CAD/CAM により製作した.その後, MONO,PLZ,ILZ は,レジン系装着材料を用いて アバットメントに接着した.全ての試料をインプラ ント体にスクリュー固定し,アクセスホールは仮封 用レジンにて封鎖した.製作した試料は,万能試験 機を用いて破壊強度試験を行った. III.結果と考察 MONO の破壊強度は他の上部構造と比較して有 意に高い破壊強度を示した,一方,PFM,PLZ,お よび ILZ の破壊強度に有意差は認められなかった. これより,MONO がインプラント支持のスクリュー 固定式上部構造として高い破壊強度を有すること, PLZ,ILZ は PFM と同程度の破壊強度を有すること が示唆された. I.目的 インプラント支持のスクリュー固定式ジルコニ アクラウンの破壊強度を明らかにすることを目的 とした. II.方法 下顎第一大臼歯に対するインプラント治療を想 定し,インプラント体をポリエステル樹脂に植立し た.上部構造は,単層構造からなるジルコニアクラ ウン(MONO) ,陶材焼付冠(PFM) ,ジルコニアフ レームに陶材を前装したもの(PLZ)およびジルコ ニアフレームに間接修復用コンポジットを前装し たもの(ILZ)の計 4 条件とした.ジルコニアフレ ームは歯科用 CAD/CAM により製作し,PFM は UCLA アバットメント上に直接ろう型形成後,鋳接 によりフレームワークを製作した.フレーム製作 後,PFM,PLZ,ILZ は同一の形態になるよう,シ - 28 - O-25 耐衝撃性床用レジンの曲げ強さの検討 〇山田裕記¹,永井栄一¹,²,大谷賢二¹,²,梅川義忠¹,²,中林晋也¹,²,高橋侑子¹, 千葉真子¹,清水信行¹,石上友彦¹,² ¹日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅱ講座 ²日本大学歯学部総合歯学研究所臨床研究部門 Bending strength of impact resistance denture base resin Yamada Y¹, Nagai E¹,², Ohtani K¹,², Umekawa Y¹,², Nakabayashi S¹,², Takahashi Y¹, Chiba M¹, Shimizu N¹, Ishigami T¹,² ¹Department of Partial Denture Prosthodontics, Nihon University School of Dentistry ²Division of Clinical Research, Dental Research Center, Nihon University School of Dentistry Ⅰ.目的 義歯による補綴治療を長期にわたり,その機能を継 続的に維持,管理することは重要なことである. しかし,不適切な義歯使用や落下による義歯の破損 で,それが妨げられることも多い.破損した義歯床に 有効的な修理を行うと,研究的には約 80%の曲げ強さ まで回復した 1)が,臨床では,過酷な口腔内環境など によりさらにその強さは下がると考えられる.そこで 破損しにくい強度を有するレジン床義歯が求められて いる. 本研究は,義歯床用レジンの弾性率,曲げ強さおよ び破壊エネルギーにより,従来型義歯床用レジンと耐 衝撃性義歯床用レジンを比較検討したので報告する. Ⅱ.方法 義歯床材料として、従来型床用加熱重合レジン 1 種 (アクロン,ジーシー) ,耐衝撃性床用加熱重合レジン O-26 2種(プロインパクト,ジーシーおよびアルファレジン, ニッシン)を用いた.実験は各材料をメーカーが推奨す る粉液比および操作方法で混和を行い,板状に成形し, 重合した.重合したレジン板は#800 までの耐水研磨紙 を用いて 64×10×3.0 ㎜に調整,研磨を行った.その後, 37℃の水中に 48 時間浸漬したものを試料とした.曲げ 強さの測定は万能試験機(5567 型 INSTRON/インスト ロンジャパン Co.Ltd. )を用いてクロスヘッドスピード 5.0 ㎜/s,支点間距離 40 ㎜にて行った. Ⅲ.結果と考察 耐衝撃性床用レジンは強度の観点から義歯破損に対す る有用な材料であることが示唆された. Ⅳ.参考文献 1)大谷賢二ほか.義歯床修理時の圧力の相違が修理後の 機械的強度に及ぼす影響.日歯医療管理誌 2012;47(1) 51-56 弾性率を考慮したレジン支台築造の検討 ○久保茉莉子,駒田 亘,大竹志保,稲垣祐久,大森 哲,三浦宏之 東京医科歯科大学 医歯学総合研究科 口腔機能再構築学講座 摂食機能保存学分野 Resin Core Buildups in Consideration of Bending Elastic Modulus Kubo M, Komada W, Otake S, Inagaki T, Omori S, Miura H Fixed Prosthodontics, Department of Restorative Sciences, Division of Oral Health Sciences, Graduate School, Tokyo Medical and Dental University I.目的 近年,従来のメタルコアに加え,グラスファイバーポス トを併用したレジン支台築造が多く用いられている.本 実験では,より構造的強度を向上させる目的で,築造体 ポスト部には弾性率の低いレジンを,築造体上部には弾 性率の高いレジンを用いたレジン支台築造を行いその 破壊強度を検討した. II.方法 牛歯(下顎前歯)を根管処置した後,下顎小臼歯歯根を 想定して加工した.レジン支台築造は,ポスト孔に低弾 性率のレジンを注入し,ファイバーポスト(ビューティ コアファイバーポスト,直径 1.0mm,松風)を挿入した 後,築造体上部はモールドを用いて高弾性率のレジンに て築造した.築造体ポスト部と上部のレジンの組み合わ せは,ビューティコアフローペースト(弾性率 9.9MPa) -ビューティコアペースト(13.4) (松風,以下 FP) ,ビ ューティコア LC ポストペースト(5.5)-LC インジェ クタブル(10.8) (松風,以下 LI) ,ビューティコア LC ポストペースト-LC ペースト(15.4) (松風,以下 LP), ポスト部・上部ともにクリアフィル DC コア(14.6) (ク ラレノリタケデンタル,以下 DC)とした.支台築造し た試料をアルミチューブにアクリルレジンを用い包埋 し,歯軸に対し 45 度の角度で荷重を加え,破壊時最大 荷重を測定した. III.結果と考察 破壊時最大荷重(MPa)は,FP:1009.4±299.4,LI: 1240.6±348.9,LP:1379.7±258.3,DC:896.5±235.0 で, LP が FP 及び DC に対し有意に高い値を示した.ポスト 部に弾性率の低いレジンを用い築造体上部に弾性率の 高いレジンを用いたレジン支台築造システムは,歯根に かかる応力の集中を緩和させ,より高い荷重に抵抗しう る可能性が示唆された. - 29 - 専門医ケースプレゼンテーション CP-1~CP-4 - 30 - CP-1 嚥下障害と高度顎堤吸収を伴う無歯顎患者に対し全部 床義歯にて機能改善を図った症例 ◯松本 圭史 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅲ講座 Functional recovery using complete dentures for an edentulous patient with dysphagia and severe residual ridge resorption : A case report Yoshifumi Matsumoto Department of Fixed Prosthodontics, Nihon University School of Dentistry Ⅰ. 緒言 義歯不適合による咀嚼困難を主訴として来院した,嚥 下障害がある患者に対して,全部床義歯にて機能改善を 行い,良好な経過が得られた症例について報告する. Ⅱ. 症例の概要 患者は 81 歳の男性.他院で複数回の義歯調整を受け るも,痛みによる摂食困難が改善されないため,大学病 院での治療を希望され来院した.患者は約 7 年前に中咽 頭がんによるリンパ節摘出手術の既往があり,継続的な 嚥下障害を認めた.上下顎には全部床義歯が装着されて おり,下顎義歯咬合平面は患者の舌背よりも低位で,床 縁は全体的に短く,機能時に大きく動揺した.上顎顎堤 は前歯相当部フラビーガム,下顎は顕著な顎堤吸収を認 めた. CP-2 Ⅲ. 治療内容 下顎義歯の粘膜調整を行った後,通法どおり印象採得 を行った.旧義歯咬合平面が患者の舌背よりも低位であ ったため,舌背を考慮し咬合床製作を行った.咬合高径 を決定した後,ゴシックアーチ描記法にて水平的顎間関 係の決定を行い,装着を行った.嚥下機能障害は当病院 摂食機能療法科と連携し機能改善を行うこととした. Ⅳ. 経過ならびに考察 義歯装着後,複数回の調整を行った後は良好な経過を 得ており,摂食機能療法科では引き続き,筋機能リハビ リテーション,食事療法,嚥下訓練を行っている. 本症例は,咬合平面設定に十分な配慮を行い,また垂 直的,水平的顎間関係の模索を十分に行った事,摂食機 能療法科と連携し,筋機能リハビリテーション等を行っ たことが,術後安定が得られている一要因と思われる. 上顎カポジ肉腫術後骨欠損に対し顎補綴処置による機能回復を 図った1症例 ○二瓶 伸也 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 Functional rehabilitation using dento-maxillary prosthesis for maxillary defect from surgical removal of Kaposi’s sarcoma Nihei S Department of Removable Prosthodontics and Gerodontology, Tokyo Dental College Ⅰ. 緒言 複雑な欠損腔を有する上顎骨半側および口蓋 骨 一 部 欠 損 症 例 に 対 し ,顎 義 歯 を 装 着 す る こ と に より口腔機能を回復した症例を経験したので報 告する. Ⅱ. 症例の概要 患 者 は 43歳 男 性 で , 平 成 23年 9月 に 当 院 口 腔 外 科にてカポジ肉腫の診断のもと右側上顎骨およ び 一 部 口 蓋 骨 を 切 除 し ,さ ら に 重 度 歯 周 疾 患 の た め 24, 25, 26, 27番 歯 以 外 の 残 存 歯 を 抜 去 し た 。 術前に製作しておいた保護床を術直後より装着 し ,創 傷 の 治 癒 を 待 つ 目 的 で 調 整 を 加 え な が ら 使 用 さ せ , 3ヶ 月 後 顎 義 歯 製 作 し 装 着 し た . Ⅲ. 治療内容 顎義歯新製にあたっては個人トレーを用い健 側 顎 堤 お よ び 欠 損 腔 の 精 密 印 象 採 得 を 行 っ た .維 持 は ク ラ ス プ に よ り 残 存 歯 に 求 め た .装 着 時 に は 義歯の取り扱いと食事摂取の仕方について指導 を 行 っ た .ま た 上 下 顎 義 歯 製 作 と 並 行 し て 構 音 訓 練 を 行 っ た . 装 着 後 1ヶ 月 経 過 時 に 鼻 腔 へ の 水 分 流入が認められたため嚥下造影検査にて侵入部 位 を 確 認 し ,粘 膜 調 整 材 で オ ブ チ ュ レ ー タ ー の マ ー ジ ン 部 を 封 鎖 し ,症 状 の 軽 減 を 確 認 後 ア ク リ ル レジンに置換した. Ⅳ.経過ならびに考察 フェイススケールは初診時20であったが装着後6ヶ月 に3へと改善した.咀嚼スコアは初診時30%が装着後6ヶ 月には80%へと変化した.装着後12ヶ月の嚥下造影検査 において鼻腔内への食物や水分の流入は確認できない. 現在1ヶ月に1度の定期観察中であり良好に経過してい る. - 31 - CP-3 嘔吐反射を有する多数歯欠如症例に対し磁性アタッチメントを 利用した無口蓋義歯症例 ○吉井 崇之 東京歯科大学老年歯科補綴学講座 Case of roofless denture using magnetic attachment for patient of numerous missing teeth with strong vomiting reflex Yoshii T Department of Removable Prosthodontics and Gerodontology, Tokyo Dental College Ⅰ.緒言 強い嘔吐反射を有する多数歯欠如症例に対し,磁性ア タッチメントを利用した無口蓋義歯を装着し,良好な結 果が得られたので報告する. Ⅱ. 症例の概要 74 歳の女性.上顎総義歯の維持不良と前歯部の審美不 良とを主訴に来院した. メントのキーパーが装着されていた.上顎義歯は無口蓋 形態で,義歯には磁石構造体が組み込まれておらず,上 下顎ともに維持不良のためクッションタイプの安定剤 を使用していた.顔貌は前歯部の豊隆が大きく口唇が突 出していた. Ⅲ.治療内容 まずプラークコントロールを徹底し,嘔吐反射の生じ は予後不良のため抜去し、残りの残存歯のキーパーは再 CP-4 製作し装着した.義歯製作においては筋圧形成後に精密 印象を行い,垂直的顎間関係の記録には下顎安静位を, 水平的顎間関係の記録にはタッピング運動を利用して 咬合採得を行った.義歯床後縁の位置は調整した旧義歯 を参考に設定し,辺縁封鎖の目的でビーディングを付与 した. 新義歯装着後に数回の調整を行った.3 週後には 疼痛などの症状が消失し,問題なく使用できるようにな ったため,義歯に磁石構造体を装着した. Ⅳ.経過ならびに考察 嘔吐反射も生じず,また義歯の維持力、審美性ともに患 者の満足を得られた.現在 3 年半が経過し 4 ヶ月毎の定 期検診を行っているが,問題は生じていない. 本症例で 整により検討した適切な義歯の後縁を設定することで, 強い嘔吐反射を有する多数歯欠如症例に対し良好な予 後を得ることができたと考えられる. 糖尿病を伴う重度歯周病患者に対して総義歯補綴治療を行っ た症例 ○李 淳 日本大学歯学部歯科補綴学第Ⅰ講座 A Case of Complete Denture Prosthodontic Treatment for Severe Periodontal Disease Patient with Diabetes Lee J Department of Complete Denture Prosthodontics Nihon University School of Dentistry Ⅰ.諸言 即時に患者の審美的要求と有歯顎時の咬合関係をで きるだけ保持する目的で,即時義歯を装着する症例は少 なくない.今回、義歯装着経験の無い重度歯周病患者に おいて,全ての歯を同時抜去し,総義歯補綴治療により 機能と審美性の回復を行い,良好な結果を得たので報告 する. Ⅱ.症例の概要 患者は,初診時 57 歳男性.歯肉と歯の動揺による疼 痛および咀嚼・審美障害を主訴に来院.検査の結果,口 腔内は,1 7 2 が欠損するのみで,全顎的に多量のプ ラークと歯石の沈着,歯の動揺と歯槽骨の高度な吸収を 認めた.全身既往歴として糖尿病に罹患し,血糖値もや や高値を示したことから,糖尿病に関連した全顎重度歯 周病を起因とした咀嚼・審美障害と診断した. Ⅲ.治療内容 歯周基本治療を徹底したが,全顎的な歯周病の病態の 改善が大きく望めなかった為,全ての歯を抜去し総義歯 補綴治療を行うこととした.外科的処置が行えるまでの 内科的処置の期間,上下顎に義歯床順応用のレジン床を 装着した.抜歯を麻酔医の管理の下で行った後,即時総 義歯を装着し,裏装と義歯調整を行い暫間義歯として使 用した.その後,金属床総義歯を通法に従って作製し, 最終補綴物として装着した. Ⅳ.経過ならびに考察 義歯床順応用のレジン床を装着後に、即時総義歯を装 着したことで, 装着当初より機能回復に対する不満が小 さく, 最終義歯への移行も順調に行えたものと考えられ る. 最終義歯装着後も経過は良好である. - 32 - 協賛企業 石福金属興業 株式会社 株式会社 杏友会 株式会社 クラレノリタケデンタル 株式会社 ジーシー 株式会社 松風 デンツプライ三金株式会社 株式会社 トクヤマデンタル ペントロン ジャパン株式会社 株式会社 モリタ 和田精密歯研 株式会社 (50音順) - 33 -